説明

不織布含浸化粧料

【課題】 エモリエント効果の高い液状の化粧油を肌上に均一に塗布できる化粧料を提供すること
【解決手段】 炭化水素系油剤を含まない化粧油を不織布に含浸することを特徴とする化粧料。トリグリセライドを主成分とする植物由来の油脂類を30質量%以上含有する化粧油であることを特徴とする不織布含浸化粧料。実質的に炭化水素系油剤を含まない化粧油を不織布に含浸した後、肌に適用する化粧料の使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧油を不織布に含浸することを特徴とする化粧料に関するものであり、更に詳しくは、炭化水素系油剤を含まない化粧油を不織布に含浸することを特徴とする化粧料であり、肌に対し均一に塗布することができ、エモリエント効果が高い化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧油は皮膚の乾燥を防ぎ、エモリエント効果を付与するために使用されている。肌上で伸ばしやすくするため、あるいは閉塞性を付与する目的で流動パラフィンなどの炭化水素系油剤を化粧油には配合されてきた(特許文献1参照)。しかし、炭化水素系油剤を多量に配合すると、肌への浸透性がよくない場合があった。このため、炭化水素系油剤を含まない化粧油も提供されているが、伸びがよくないため、肌に均一に塗布されないという問題点があった。また、化粧油による閉塞性が十分ではないため、使用後のエモリエント効果も十分ではなかった。そのため、化粧油を効率よく肌に塗布でき、かつ使用後にエモリエント効果を付与できる化粧料が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】特開2003−95849号公報(第1頁〜第6頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エモリエント効果の高い液状の化粧油を肌上に均一に塗布できる化粧料を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる実情に鑑み、本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、実質的に炭化水素系油剤を含まない化粧油を不織布に含浸することで肌への浸透性がよく、肌に高いエモリエント効果を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、実質的に炭化水素系油剤を含まない化粧油を不織布に含浸することを特徴とする化粧料に関するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の化粧料は、肌への浸透性がよく、エモリエント効果が高い化粧料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の構成について説明する。
本発明に用いられる化粧油は、炭化水素系油剤を含まなければ、特に限定はされない。炭化水素油剤を含有しないことにより、肌への浸透性に優れる。本願でいう炭化水素系油剤とは、オゾケライト、スクワレン、スクワラン、セレシン、パラフィン、パラフィンワックス、流動パラフィン、プリスタン、ポリイソブチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等をいう。化粧油に炭化水素系油剤を含まないと、肌への浸透性がよい化粧料が得られる。
【0009】
本発明でいう実質的に炭化水素系油剤を含まないとは、炭化水素系油剤を加えないという意味であり、例えば美容剤等に含まれる微量の炭化水素系油剤が含まれていたとしても、問題としない。
【0010】
また、本発明に用いられる化粧油に配合される成分は、特に限定されないが、トリグリセライドを主成分とする天然植物由来の油脂類を含むことが好ましい。例えば、トリグリセライドを主成分とする天然植物由来の油脂類としてはメドウフォーム油、アボカド油、オリーブ油、アーモンド油、キョウニン油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サフラワー油、大豆油、茶実油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ローズヒップ油、ブドウ種子油、エゴマ油、マカデミアナッツ油、落花生油、ボラージ油、モルティエレラ油、オレンジ油、セージ油、などが挙げられる。これらの中でも、より優れたエモリエント効果やべたつき感や油膜感のない使用感を得るためには、メドウフォーム油、アボカド油、オリーブ油、アーモンド油、マカデミアナッツ油、などが好ましい。また、トリグリセライドを主成分とする天然植物由来の油脂類の含有量が化粧油全体の30質量%(以下、単に「%」とする)以上であると、エモリエント効果が良好となり、またべたつき感や油膜感のない使用感を得ることができるため、好ましい。
【0011】
本発明の化粧油は、液状であり、ブルックスフィールド型回転粘度計を用い25℃において、1〜1000mPa・sが好ましい。この粘度範囲であると、不織布への化粧油の含浸性に優れる。
【0012】
本発明に用いられる化粧油に配合されるその他の成分としては、具体的には、ミツロウ、カルナウバワックス、ゲイロウ、モクロウ等のロウ類、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ロジン酸等の脂肪酸類、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン類、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類、モノステアリン酸グリセリル、トリステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン等の親油性界面活性剤類、パラアミノ安息香酸エチル、パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等の油溶性紫外線吸収剤類、香料等が挙げられ、これらを一種又は二種以上組み合わせて用いることができる。
【0013】
特に、本発明の化粧油には、油性成分の安定化、特に着色、変臭の抑制を目的として、酸化防止剤を配合することができる。酸化防止剤としては、例えば、β−カロチン、アスタキサンチン、レチノールまたはその誘導体、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ビタミンEまたはその誘導体等が挙げられる。その含有量は、成分により異なるものであるが、0.0001〜5%程度が好ましい。
【0014】
本発明で使用される不織布は、特に限定されないが、材質として、化学繊維であるレーヨン、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、オレフィン系繊維、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられ、天然繊維では、綿、麻、パルプ、絹、羊毛等が挙げられる。不織布の製法、形状などは特に限定されない。不織布の目付け(単位面積あたりの重量)は10〜300g/mが好ましく、特に好ましくは30〜200g/mとすることが望ましい。化粧油の含浸量は、不織布の重量に対して、3倍〜50倍、特に好ましくは、5倍〜30倍とすることが望ましい。
【0015】
本発明の化粧料の用途は、あらかじめ化粧油を不織布に含浸させたもの、あるいは、使用直前に化粧油を不織布やコットンに染み込ませて使用する方法が挙げられる。また、化粧油を含浸した不織布含浸化粧料の使用方法としては、皮膚の必要な部分(具体的には、顔面全体、目元部分、口元部分等)に不織布を載せ、一定時間放置後、皮膚より不織布を除去する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0016】
次に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0017】
実施例1〜3および比較例1〜2:不織布含浸化粧料
表1に示す組成および下記製法にて化粧油を調製した。この化粧油を顔型のコットン製の不織布(目付け:40g/m、重量:1.45g)に14g含浸させた化粧料の(1)エモリエント効果、(2)肌への浸透性について下記の方法により評価し、結果を併せて表1に示した。
【0018】
【表1】

【0019】
(製法)
A:成分(11)と成分(6)を混合し、60℃に加熱し溶解する。
B:Aを室温まで冷却し、成分(1)〜(5)、成分(7)〜(10)、成分(12)を添加し、均一混合する。
【0020】
(評価方法)
実施例1〜3および比較例1〜2の各試料について、(1)エモリエント効果、(2)肌への浸透性について、下記の方法により評価を行った。
【0021】
〔エモリエント効果;試験方法、評価方法〕
専門評価パネル10名により、顔面に塗布し5分放置し、不織布をはがした後のエモリエント効果を下記基準にて5段階評価し、さらにその平均点から判定し、結果を表1に示した。
【0022】
[評価基準]
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:不良
1点:非常に不良
[判定基準]
◎:平均点4.5点以上
○:平均点3.5点以上4.5点未満
△:平均点2.5点以上3.5点未満
×:平均点2.5点未満
【0023】
〔肌への浸透性;試験方法、評価方法〕
専門評価パネル10名により、顔面に塗布し5分放置し、不織布をはがした後の使用感(肌への浸透性)を下記基準にて5段階評価し、さらにその平均点から判定し、結果は合わせて表1に示した。
【0024】
[評価基準]
5点:化粧油が肌に染み込む感じがする
4点:少し化粧油が肌上に残る感じがする
3点:かなり化粧油が肌上に残る感じがする
2点:ほとんど化粧油が肌に染み込まない感じがする
1点:まったく化粧油が肌に染み込まない感じがする
[判定基準]
◎:平均点4.5点以上
○:平均点3.5点以上4.5点未満
△:平均点2.5点以上3.5点未満
×:平均点2.5点未満
【0025】
表1の結果から明らかなように、(1)エモリエント効果、(2)肌への浸透性に優れた不織布含浸化粧料であった。
【0026】
実施例4:不織布含浸化粧料
(成分) (%)
1.マカデミアナッツ油 49.0
2.トリオクタン酸グリセリル 20.0
3.オリーブ油 20.0
3.ホホバ油 5.0
4.N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(オクチルドデシル、コレステリル)5.0
5.天然ビタミンE 0.5
6.フェノキシエタノール 0.5
【0027】
(製法)
A:成分(1)〜(7)を室温にて混合溶解させ、化粧油を得た。この化粧油を顔型のレーヨン製の不織布(目付け:60g/m、重量:2.4g)に15g含浸させ、不織布含浸化粧料を得た。
【0028】
実施例4の不織布含浸化粧料は、(1)エモリエント効果、(2)肌への浸透性に優れた不織布含浸化粧料であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に炭化水素系油剤を含まない化粧油を不織布に含浸することを特徴とする不織布含浸化粧料。
【請求項2】
トリグリセライドを主成分とする植物由来の油脂類を30質量%以上含有する化粧油であることを特徴とする請求項1に記載の不織布含浸化粧料。
【請求項3】
実質的に炭化水素系油剤を含まない化粧油を不織布に含浸した後、肌に適用する化粧料の使用方法。

【公開番号】特開2006−248911(P2006−248911A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63719(P2005−63719)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】