説明

不織布用共重合体、不織布用共重合体組成物、及び不織布

【課題】加工性、糸引き性、伸縮性、及び柔軟性に優れた不織布を製造することが可能な不織布用共重合体を提供する。
【解決手段】少なくとも2つの、芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、共役ジエン化合物に由来する構成単位及び芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を含む重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体を水素添加してなる、所定の条件を満たす不織布用共重合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布用共重合体、及び不織布用共重合体組成物、並びにこれらを用いて得られる不織布、及び貼付材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、伸縮性を有する不織布を開発することに関する要望は各種業界において盛んである。このため、種々の材質からなる不織布が多数提案されている。これまでに、繊維の捲縮を利用した伸縮性不織布が開発されており、この伸縮性不織布を湿布基布として用いること等が提案されている。しかし、この伸縮性不織布の伸縮性等の物性については、未だ改良の余地があった。
【0003】
また、ポリアミド、ポリオレフィン、又はポリエステル系のエラストマーを用いて得られた不織布がある。しかし、これらのエラストマーを用いて得られた不織布の伸縮性は十分であるとはいえなかった。なお、ポリウレタンを用いて得られた不織布は、伸縮性の面からは良好なものである。しかし、加工時の熱安定性に乏しく、また、分解ガスが発生し易いという問題があるため、加工性を改良する必要があった。
【0004】
上記のような問題を解消するための関連技術として、水添ジエン系重合体と、結晶性低分子量ポリオレフィンとを含有する、伸縮性の不織布が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、オレフィン系共重合体、及び熱可塑性エラストマー樹脂を所定の割合で含有する組成物を用いて得られる不織布が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2で開示されている不織布であっても、伸縮性、及び加工時の糸引き性が十分であるとはいえなかった。また、例えば身体に貼付して用いる貼付材等の弾性部材としては、柔軟性が十分であるとはいえず、身体の動きに十分に追従することができないという問題があった。
【特許文献1】特開平11−12908号公報
【特許文献2】特開2003−250879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、加工性、糸引き性、伸縮性、及び柔軟性に優れた不織布を製造することが可能な不織布用共重合体、並びに不織布用共重合体組成物、加工性、糸引き性、伸縮性、及び柔軟性に優れた不織布、並びに貼付材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、特定のブロック構造を有するブロック共重合体を水素添加することにより得られる水添ジエン系共重合体を用いることによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明によれば、以下に示す不織布用共重合体、不織布用共重合体組成物、不織布、及び貼付材が提供される。
【0009】
[1]少なくとも2つの、芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、共役ジエン化合物に由来する構成単位及び芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を含む重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体を水素添加してなる下記(1)〜(6)の条件を満たす不織布用共重合体。
(1):前記重合体ブロック(A)と前記重合体ブロック(B)の質量比が、(A)/(B)=5〜45/95〜55である。
(2):前記重合体ブロック(B)のビニル結合含量が、60%以上である。
(3):前記重合体ブロック(B)に含まれる芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の割合が、5〜45質量%である。
(4):重量平均分子量が、5〜50万である。
(5):水添率が、80%以上である。
(6):230℃、21.2N荷重で測定されるメルトフローレートが、5〜100g/10分である。
【0010】
[2](イ)前記[1]に記載の不織布用共重合体と、(ロ)ポリオレフィン系樹脂と、を、質量比で、(イ)/(ロ)=55〜99/45〜1(但し、(イ)+(ロ)=100)の割合で含有する不織布用共重合体組成物。
【0011】
[3]前記[1]に記載の不織布用共重合体からなる不織布(以下、「第一の不織布」ともいう)。
【0012】
[4]前記[2]に記載の不織布用共重合体組成物からなる不織布(以下、「第二の不織布」ともいう)。
【0013】
[5]前記[3]又は[4]に記載の不織布と、前記不織布の少なくとも一方の面上に配設される粘着剤層と、を備えた貼付材。
【発明の効果】
【0014】
本発明の不織布用共重合体は、加工性、糸引き性、伸縮性、及び柔軟性に優れた不織布を製造することが可能であるという効果を奏するものである。また、本発明の不織布用共重合体組成物は、加工性、糸引き性、伸縮性、及び柔軟性に優れた不織布を製造することが可能であるという効果を奏するものである。
【0015】
本発明の第一及び第二の不織布は、加工性、糸引き性、伸縮性、及び柔軟性に優れているという効果を奏するものである。また、本発明の貼付材は、加工性、糸引き性、伸縮性、及び柔軟性に優れているという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。なお、単に「本発明(本実施形態)の不織布」というときは、第一の不織布と第二の不織布のいずれをも意味する。
【0017】
1.不織布用共重合体
本発明の不織布用共重合体の一実施形態は、少なくとも2つの、芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、共役ジエン化合物に由来する構成単位及び芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を含む重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体を水素添加してなる下記(1)〜(6)の条件を満たすものである。以下、その詳細について説明する。
(1):重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の質量比が、(A)/(B)=5〜45/95〜55である。
(2):重合体ブロック(B)のビニル結合含量が、60%以上である。
(3):前記重合体ブロック(B)に含まれる芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の割合が、5〜45質量%である。
(4):重量平均分子量が、5〜50万である。
(5):水添率が、80%以上である。
(6):230℃、21.2N荷重で測定されるメルトフローレートが、5〜100g/10分である。
【0018】
(重合体ブロック(A))
(A)ブロックは、芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を主体とする重合体ブロックである。この(A)ブロックは、実質的に芳香族ビニル化合物に由来する構成単位からなる重合体ブロックであれば、共役ジエン化合物に由来する構成単位がその一部に含まれていてもよい。(A)ブロック中の芳香族ビニル化合物に由来する構造単位は、通常80質量%以上であり、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0019】
芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等を挙げることができる。なかでも、スチレンが好ましい。
【0020】
(重合体ブロック(B))
(B)ブロックは、共役ジエン化合物に由来する構成単位と、芳香族ビニル化合物に由来する構成単位とが含まれる重合体ブロックである。この(B)ブロック中の芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の含有割合は、5〜45%であることが好ましく、10〜40%であることが更に好ましく、10〜30%であることが特に好ましい。5%未満であると、糸引き性が悪化する傾向にある。一方、45%超であると、柔軟性が悪化する傾向にある。
【0021】
共役ジエン化合物の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、ミルセン、クロロプレン等を挙げることができる。なかでも、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
【0022】
(B)ブロックのビニル結合(1,2−ビニル結合、及び3,4−ビニル結合)含量は、60%以上、好ましくは65%以上、更に好ましくは78%以上である。(B)ブロックのビニル結合含量が60%未満であると、この不織布用共重合体を用いて得られる不織布の柔軟性が不足してしまう。なお、(B)ブロックのビニル結合含量の上限値については特に限定されないが、99%以下であることが好ましい。
【0023】
(ブロック共重合体)
本実施形態の不織布用共重合体は、水添前共重合体であるブロック共重合体を水素添加することにより得られるものである。このブロック共重合体のブロック構造の具体例としては、下記構造式(1)〜(3)を挙げることができる。
(A−B)m …構造式(1)
(A−B)m−Y …構造式(2)
A−(B−A)n …構造式(3)
【0024】
前記構造式(1)〜(3)中、「A」は、重合体ブロック(A)(以下、「(A)ブロック」ともいう)であり、「B」は、重合体ブロック(B)(以下、「(B)ブロック」ともいう)であり、「Y」は、カップリング剤の残基である。また、「m」は、2〜5の整数であり、「n」は、1〜5の整数である。
【0025】
ここで、前記構造式(1)〜(3)で表されるブロック共重合体中の2つ以上の「(A)ブロック」は、同一であってもよく、組成、又は分子量等が異なるものであってもよい。同様に「(B)ブロック」がブロック共重合体に2つ以上含有される場合は、2つ以上の「(B)ブロック」は同一であってもよく、組成、又は分子量等が異なるものであってもよい。更には、(A)ブロック及び(B)ブロック以外の、例えば、共役ジエン化合物が水添された重合体等の、他の重合体ブロック(以下、「(C)ブロック」ともいう)が、ブロック共重合体末端、又はブロック共重合体鎖中に、1又は2以上共重合されていてもよい。
【0026】
ブロック共重合体を構成する(A)ブロックと(B)ブロックの質量比は、(A)/(B)=5〜45/95〜55、好ましくは(A)/(B)=10〜35/90〜65、更に好ましくは(A)/(B)=15〜30/85〜70である。(A)/(B)=5/95未満であると、拘束相が無くなり成形が困難である。一方、(A)/(B)=45/55超であると、柔軟性が悪化する。
【0027】
((イ)不織布用共重合体(水添ジエン系共重合体))
本実施形態の不織布用共重合体の重量平均分子量(Mw)は、5〜50万、好ましくは7〜30万、更に好ましくは9〜20万である。Mwが5万未満であると、この不織布用共重合体をペレット化する場合にブロッキングし易くなるとともに、得られる不織布どうしの粘着性によりロール引き出し性が低下してしまう。一方、Mwが70万を超であると、成形加工性が低下する。
【0028】
また、本実施形態の不織布用共重合体の水添率は、80%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上である。水添率が80%未満であると、この不織布用共重合体を用いて得られる不織布の伸縮性、柔軟性、耐熱性、及び耐候性が不十分となる。
【0029】
本実施形態の不織布用共重合体の、230℃、21.2N荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)は、5〜100g/10分、好ましくは7〜70g/10分、更に好ましくは10〜50g/10分である。MFRが5g/10分未満であると、流動性が劣り成形が困難である。一方、MFRが100g/10分超であると、ドローダウン等の、押出成形性に問題を生ずる恐れがある。
【0030】
また、本実施形態の不織布用共重合体に含有される、芳香族ビニル化合物に由来する全ての構成単位の割合(以下、「全芳香族ビニル化合物単位含有量」ともいう)は、5〜70質量%であることが好ましく、13〜65質量%であることが更に好ましい。全芳香族ビニル化合物単位含有量が5質量%未満であると、糸引き性が悪化する傾向にある。一方、全芳香族ビニル化合物単位含有量が70質量%超であると、柔軟性が悪化する傾向にある。
【0031】
(その他の成分)
本実施形態の不織布用共重合体には、必要に応じて、粘着付与樹脂を配合することもできる。この粘着付与樹脂としては、ロジン系樹脂、ポリテルペン系樹脂、合成石油系樹脂、クマロン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、スチレン系樹脂、イソプレン系樹脂等を挙げることができる。なかでも、ロジン系樹脂、ポリテルペン系樹脂、合成石油系樹脂が好ましく、脂肪族構造、及び/又は脂環族構造を有する樹脂が更に好ましい。
【0032】
脂肪族構造、及び/又は脂環族構造を有する樹脂としては、ロジン系樹脂では、部分水添ロジン、完全水添ロジン、及びこれらの誘導体;ポリテルペン系樹脂では、環状テルペンの単独重合体、環状テルペンの共重合体、及びこれらの水素添加物;合成石油系樹脂では、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、脂肪族−脂環族共重合樹脂、及びナフサ分解油と各種テルペンとの共重合体の水素添加物等を挙げることができる。これらの粘着付与樹脂は、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0033】
本実施形態の不織布用共重合体には、更に必要に応じて、パラフィン系オイルや液状の低分子量ポリオレフィン等の液状添加剤を添加して、加工性を向上させることもできる。また、伸長性や柔軟性を阻害しない範囲内の量であれば、各種の添加剤を添加することができる。添加剤としては、酸化防止剤、耐候剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブリード・ブルーム防止剤、シール性改良材、結晶核剤性、難燃化剤、防菌・防かび剤、分散剤、軟化剤、着色防止剤、有機繊維、複合繊維、無機ウィスカー、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク、アスベスト、マイカ、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、ハイドロタルサイト、カオリン、ケイソウ土、グラファイト、軽石、エボ粉、コットンフロック、コルク粉、硫酸バリウム、ポリマービーズ等の充填剤、若しくはこれらの混合物、又は他のゴム質重合体を挙げることができる。他のゴム質重合体の具体例としては、SBR、NBR、BR、NR、IR、1,2−ポリブタジエン、AR、CR、IIR等を挙げることができる。
【0034】
更には、必要に応じて熱可塑性樹脂を添加することもできる。この熱可塑性樹脂の具体例としては、ジエン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、POM等を挙げることができる。
【0035】
(ブロック共重合体の製造方法)
本実施形態の不織布用共重合体の水添前共重合体であるブロック共重合体は、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素溶媒;又はベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;等の不活性有機溶媒中、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物、又は芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とこれらと共重合可能な他の単量体を、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用いてリビングアニオン重合することによって、製造することができる。
【0036】
重合開始剤として用いられる有機アルカリ金属化合物の具体例としては、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物等を挙げることがでる。なかでも、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等の有機リチウム化合物が好ましい。有機アルカリ金属化合物の使用量については特に限定はなく、必要に応じて種々の量を使用できるが、モノマー100質量部に対して、通常は0.02〜15質量部用いられ、好ましくは0.03〜5質量部用いられる。
【0037】
重合温度は、一般に−10〜150℃、好ましくは0〜120℃である。更に、重合系の雰囲気は、窒素ガス等の不活性ガスで置換されていることが望ましい。重合圧力は、モノマー、及び不活性有機溶媒を液相に維持するのに十分な圧力とすればよく、特に限定されない。また、重合系にモノマーを投入する方法は特に限定されない。例えば、一括、連続的、間欠的、又はこれらを組み合わせた方法によって、重合系にモノマーを投入することができる。
【0038】
また、上記の方法で得られたブロック共重合体に対してカップリング剤を作用させ、ブロック共重合体の分子鎖を、カップリング剤の残基を介して結合させて得られた共重合体を、水添前共重合体として用いることもできる。カップリング剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、1,2,4−トリビニルベンゼン、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、ベンゼン−1,2,4−トリイソシアナート、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、テレフタル酸ジエチル、ピロメリット酸ジアンヒドリド、炭酸ジエチル、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、(ジクロロメチル)トリクロロシラン、ヘキサクロロジシラン、テトラエトキシシラン、テトラクロロスズ、1,3−ジクロロ−2−プロパノン等を挙げることができる。なかでも、ジビニルベンゼン、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、テトラクロロシランが好ましい。
【0039】
(不織布用共重合体(水添ジエン系共重合体)の製造方法)
本実施形態の不織布用共重合体は、上記の方法で得られたブロック共重合体を部分的又は選択的に水素添加することにより製造することができる。水素添加反応の条件等について特に限定はない。水素添加反応は、通常、20〜150℃、0.1〜10MPaの水素加圧下、水添触媒の存在下で行われる。水添率は、水添触媒の使用量、水素添加反応時の水素圧力、反応時間等を変えることにより、任意に調整することができる。
【0040】
水素添加触媒としては、元素周期表Ib、IVb、Vb、VIb、VIIb、VIII族金属のいずれかを含む化合物、例えば、Ti、V、Co、Ni、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Pt原子を含む化合物を用いることができる。より具体的には、例えば、Ti、Zr、Hf、Co、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、Re等のメタロセン系化合物;Pd、Ni、Pt、Rh、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒;Ni、Co等の金属元素の有機塩又はアセチルアセトン塩と有機アルミニウム等の還元剤とを組み合わせた均一系チーグラー型触媒;Ru、Rh等の有機金属化合物又は錯体;水素を吸蔵させたフラーレンやカーボンナノチューブ等を挙げることができる。なかでも、Ti、Zr、Hf、Co、Niのいずれかを含むメタロセン化合物は、不活性有機溶媒中、均一系で水素添加反応できる点で好ましい。更に、Ti、Zr、Hfのいずれかを含むメタロセン化合物が好ましい。特に、チタノセン化合物とアルキルリチウムとを反応させた水素添加触媒は、安価で工業的に特に有用な触媒であるので好ましい。なお、水素添加触媒は、一種のみ用いてもよいが、二種以上を併用することもできる。
【0041】
水素添加反応後は、必要に応じて触媒の残渣を除去し、又はフェノール系又はアミン系の老化防止剤を添加し、その後、反応溶液から水添ジエン系共重合体(不織布用共重合体)を単離する。水添ジエン系共重合体の単離は、例えば、反応溶液にアセトン又はアルコール等を加えて沈殿させる方法、反応溶液を熱湯中に撹拌下投入し、溶媒を蒸留除去する方法等により行うことができる。
【0042】
なお、本実施形態の不織布用共重合体は、アミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、酸無水物基、エポキシ基等の官能基が導入されたもの、即ち、変性水添ジエン系共重合体であってもよい。この変性水添ジエン系共重合体の具体例としては、以下に示す共重合体((a)〜(f))を挙げることができる。
【0043】
(a)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とを、アミノ基を有する有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、得られた共重合体を水素添加した共重合体。
【0044】
(b)ビニル芳香族化合物と、共役ジエン化合物と、アミノ基を有する不飽和単量体とを、有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、得られた共重合体を水素添加した共重合体。
【0045】
(c)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とを、有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、得られた共重合体の活性点に、アルコキシシラン化合物を反応させた共重合体とし、その共重合体を水素添加した共重合体。
【0046】
(d)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とを、有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、得られた共重合体の活性点に、エポキシ化合物又はケトン化合物を反応させた共重合体とし、その共重合体を水素添加した共重合体。
【0047】
(e)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とを、有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、得られた重合体に水素添加した共重合体に、(メタ)アクリロイル基含有化合物、エポキシ基含有化合物、及び無水マレイン酸から選ばれる少なくとも一種を溶液中又は押出機等の混練機中で反応させて得られる共重合体。
【0048】
(f)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とを、有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、カップリング剤として、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、ベンゼン−1,2,4−トリイソシアナート、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、テレフタル酸ジエチル、ピロメリット酸ジアンヒドリド等を用いることにより、分子鎖の中央に−OH基、−NH−CO−基、−NH−基、−NH2基等の官能基を導入した共重合体。
【0049】
本実施形態の不織布用共重合体が、上述の変性水添ジエン系共重合体である場合に、この変性水添ジエン系共重合体中に占める官能基の割合は、変性水添ジエン系共重合体を構成する分子に対して、0.001〜10モル%であることが好ましく、0.005〜8モル%であることが更に好ましく、0.01〜5モル%であることが特に好ましい。
【0050】
2.不織布用共重合体組成物
次に、本発明の不織布用共重合体組成物について説明する。本発明の不織布用共重合体組成物の一実施形態は、(イ)前述の不織布用共重合体と、(ロ)ポリオレフィン系樹脂とを、質量比で、(イ)/(ロ)=55〜99/45〜1(但し、(イ)+(ロ)=100)の割合で含有するものである。以下、その詳細について説明する。
【0051】
((ロ)ポリオレフィン系樹脂)
(ロ)ポリオレフィン系樹脂は、一種以上のモノオレフィンを、高圧法と低圧法のいずれかの重合法で重合することにより得られる樹脂である。(ロ)ポリオレフィン系樹脂の好適例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリブテン−1を挙げることができる。(ロ)ポリオレフィン系樹脂は、単独重合体であっても、他のモノマーを共重合した共重合体であってもよい。この共重合体を構成する他のモノマーの具体例としては、エチレン(主たる重合体がポリエチレンである場合を除く)、プロピレン(主たる重合体がポリプロピレンである場合を除く)、1−ブテン(主たる重合体がポリブテン−1である場合を除く)、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等の直鎖状α−オレフィン;4−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン等の分岐状α−オレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等のジカルボン酸やそのモノエステル;メチルメタクリレート、エチルアクリレート等のアクリル酸やメタクリル酸のエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の飽和カルボン酸のビニルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸等の酸無水物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル;1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン等のジエンモノマー;その他、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド等を挙げることができる。
【0052】
これら他のモノマーは、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。前記共重合体に占める、これらの他のモノマーに由来する構成単位の割合は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。前記共重合体の共重合様式は、ランダム型、ブロック型、若しくはグラフト型、又はこれらの混合型等、いずれであってもよい。
【0053】
(ロ)ポリオレフィン系樹脂として用いられる共重合体の好適例としては、プロピレン−エチレン共重合体、1−ブテン−プロピレン共重合体、1−ブテン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルメタクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−n−ブチルアクリレート共重合体等を挙げることができる。
【0054】
(ロ)ポリオレフィン系樹脂は、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。なお、(ロ)ポリオレフィン系樹脂の、230℃、21.2N荷重で測定されるMFRは、0.01〜200g/10分であることが好ましく、0.1〜100g/10分であることが更に好ましい。
【0055】
(不織布用共重合体組成物)
本実施形態の不織布用共重合体組成物は、(イ)不織布用共重合体と、(ロ)ポリオレフィン系樹脂とを、質量比で、(イ)/(ロ)=55〜99/45〜1、好ましくは(イ)/(ロ)=60〜99/40〜1、更に好ましくは(イ)/(ロ)=70〜99/30〜1の割合で含有するものである。なお、(イ)+(ロ)=100である。(イ)不織布用共重合体と、(ロ)ポリオレフィン系樹脂とを上記の質量比でブレンドした本実施形態の不織布用共重合体組成物は、単独の(イ)不織布用共重合体に比して流動性が向上し、加工性に優れたものとなる。なお、(イ)/(ロ)=55/45未満であると、柔軟性が悪化する原因となる。
【0056】
(その他の成分)
本実施形態の不織布用共重合体組成物には、必要に応じて、粘着付与樹脂、パラフィン系オイルや液状の低分子量ポリオレフィン等の液状添加剤、その他各種の添加剤や熱可塑性樹脂を添加することができる。なお、添加することのできる成分としては、本実施形態の不織布用共重合体で述べたものと同様のものをあげることができる。
【0057】
(不織布用共重合体組成物の製造方法)
本実施形態の不織布用共重合体組成物は、例えば、(イ)不織布用共重合体と、(ロ)ポリオレフィン系樹脂とを溶融混練することによって製造することができる。混練に際しては、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、ロール等を用いることができる。なお、先述の各種添加剤及び各種重合体は、例えば、これらの添加剤等を(イ)不織布用共重合体や(ロ)ポリオレフィン系樹脂に予め配合する、或いは、(イ)不織布用共重合体と(ロ)ポリオレフィン系樹脂との混練の際に配合する等すればよい。
【0058】
3.不織布
次に、本発明の第一の不織布、及び第二の不織布について説明する。本発明の第一の不織布の一実施形態は、前述の不織布用共重合体からなるものである。また、本発明の第二の不織布は、前述の不織布用共重合体組成物からなるものである。このため、本発明の第一の不織布、及び第二の不織布は、加工性、糸引き性、伸縮性、及び柔軟性に優れたものである。従って、本発明の不織布は、湿布基布等の貼付材として好適である。また、ウレタン弾性繊維等に比して熱安定性に優れているため、加工時のガス発生や分解の問題もない。更には、耐候性も良好であるため、あらゆる用途に使用できる。具体的には、前記貼付材の他に、外科用・工業用等の各種マスク;クリーンルーム用エアフィルター、血液フィルター、油水分離フィルター等の各種フィルター;バッテリー用電極セパレーター;衣料用絶縁材や保温材、防護服、使い捨て下着等の各種衣料資材;ワイパー、吸油材・油水分離材、シーツ、おむつ、合成皮革、手術用ガウン、医療用使い捨て製品等の医療用品その他の衛材;作業服、建築用断熱材等の各種断熱材;コーヒーバッグ、米飯包装用シート等の食品包装材料;エレクトレット加工を施したエレクトレットフィルター;自動車用天井表皮材、防音材、基材、断熱材、クッション材、スピーカー防塵材、エア・クリーナー材、インシュレーター表皮、バッキング材、接着不織布シート、ドアトリム等の各種自動車用部材;複写機のクリーニング材等の各種クリーニング材;カーペットの表材・裏材、農業捲布、木材ドレーン材、スポーツシューズ表皮等の靴用部材、カバン用部材、工業用シール材、ワイピング材等種々の用途に好適に使用することができる。
【0059】
(不織布の製造方法)
本実施形態の不織布は、各種の成形法によって製造することができる。具体的には、「メルトブローン」と称される直接成形法が好適である。このメルトブローンとは、熱可塑性の材料を溶融紡糸し、これを高速の気体によって繊維流としたものをシート状に捕集して不織布を製造する方法をいう。このメルトブローンの場合、各成分や液状添加剤等を押出機等で事前に混練して組成物を得、得られた組成物を不織布製造用の押出機に供給して製造することが可能である。また、計量・混合した各成分等を、直接的に不織布製造用押出機へ供給して製造することもできる。
【0060】
各成分や液状添加剤等を押出機等で事前に混練して組成物を製造するには、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の従来公知の混練機、又はこれらを組み合わせた混練機を使用することができる。この組成物の製造に際しては、各成分を一括で混合してもよく、任意の成分を予備混合した後に残りの成分を添加して混合してもよい。最も好ましい混合装置は、一軸又は二軸の押出機である。一軸又は二軸の押出機を用いることよって、連続的に効率よく混練することができる。
【0061】
本実施形態の不織布は、通常の不織布材料であるポリプロピレン等と同等の容易さで成形することが可能である。従って、溶融粘度、ポリマー吐出量、噴射流体の量等を適宜変更することにより、任意の性状の不織布を得ることが可能である。また、エレクトレット加工を施すことも可能であり、エレクトレット加工を施した場合には、エレクトレット不織布を得ることができる。
【0062】
4.貼付材
次に、本発明の貼付材について説明する。本発明の貼付材の一実施形態は、前述の不織布と、不織布の少なくとも一方の面上に配設される粘着剤層とを備えたものである。このため、本実施形態の貼付材は、加工性、糸引き性、伸縮性、及び柔軟性に優れたものである。
【0063】
(粘着剤層)
粘着剤層は、透過性に優れた塗工層であることが好ましい。粘着剤層を構成する粘着剤の具体例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゲル状粘着剤等を挙げることができ、使用目的によって適時選択される。例えば、貼付材を、経皮吸収製剤として用いる場合には、薬物が最も効果的に皮膚より吸収され、かつ、皮膚への刺激性が低くなるように粘着剤を選択すればよい。また、粘着剤層には、用途に応じて経皮吸収性の薬剤を含有させてもよい。
【0064】
(貼付材の製造方法)
不織布の表面上に粘着剤層を設ける方法としては、不織布に直接粘着剤を塗布する方法や、離型紙上に粘着剤層を形成させ、この離型紙を不織布に積層した後、この粘着剤層を転写する方法等が利用できる。なお、不織布の表面の全体又は部分的に、線状、網目状、ドット状等のパターンで粘着剤層を配設することもできる。なお、粘着剤層の厚さは、0.01〜2mmとすることが好ましく、0.015〜1mmとすることが更に好ましい。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
【0066】
[水添率]:四塩化炭素溶液を使用し、270MHz、1H−NMRスペクトルから算出した。
【0067】
[メルトフローレート(MFR)]:JIS K7210に準拠し、230℃、21.2N荷重で測定した。
【0068】
[全結合スチレン含量]:四塩化炭素溶液を使用し、270MHz、1H−NMRスペクトルから算出した。
【0069】
[(B)ブロック中のスチレン含量]:以下に示す式を用いて、仕込み量から算出した。
(B)ブロック中のスチレン含量(%)=((B)ブロックに含有されるスチレンの仕込み合計量)/((B)ブロックの仕込み合計量)×100
【0070】
[(A)/(B)比]:以下に示す式を用いて、仕込み量から算出した。
(A)/(B)比=((A)ブロックの仕込み合計量)/((B)ブロックの仕込み合計量)
【0071】
[ビニル結合含量]:赤外分析法を用い、ハンプトン法によりビニル結合(1,2−結合、及び3,4−結合)含量を算出した。
【0072】
[重量平均分子量(Mw)]:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(室温GPC、カラム:GMH−XL(商品名)、東ソー社製)を用いて、ポリスチレン換算で求めた。
【0073】
[加工性]:メルトブローンにおける加工性及び糸引き性を、以下に示す基準に従って評価した。
◎:加工性及び糸引き性良好であり、幅広い条件で良好な不織布を得ることができた。
○:加工性及び糸引き性に問題なく、通常の条件で不織布を得ることができた。
△:加工性及び糸引き性にほとんど問題なく、繊維が若干凝集・膠着する等、難渋しながらも、不織布を得ることができた。
×:溶融時の流動性が低い、又は噴出した繊維が凝集・膠着する等、通常の条件で均一な不織布を得ることができなかった。
【0074】
[伸度、10%伸張時の応力]:幅2.5cm、長さ20cmの試験片を、不織布の縦方向と横方向について各3枚ずつ用意した。引張試験機(商品名「オートグラフAG−G」、島津製作所社製)を使用し、チャック間を10cmに設定し、前記試験片の1枚を固定した。引張速度300mm/minで伸張し、最大伸度を測定した。また、その時の10%伸張時の応力を測定し、目付量(g/cm2)当たりの不織布の応力に換算し、10%伸張時の応力(g/cm)/(g/cm2)とした。この操作を各方向の試験片で3回行い、それぞれの相乗平均値を求めた。
【0075】
(実施例1)
内容積50リットルのオートクレーブに、脱気・脱水したシクロヘキサン25kg、スチレン450gを仕込んだ後、テトラヒドロフラン300g、及びn−ブチルリチウム3.5gを加え、50℃からの断熱重合を20分行った。反応液を20℃とした後、1,3−ブタジエン3250g及びスチレン1000gを加えて断熱重合を行った。転化率がほぼ100%になった後、更にスチレン300gを加えて重合を行った。重合が完結した後、水素ガスを0.4MPa−Gの圧力で供給して20分間撹拌し、リビンアニオンとして生きているポリマー末端リチウムと反応させ、水素化リチウムとした。反応液を90℃とした後、特開2000−37632号公報記載のチタノセン化合物を使用して水添反応を行うことにより、水添ジエン系共重合体(H−1)を得た。
【0076】
得られた水添ジエン系共重合体(H−1)の全結合スチレン含量は35%、ビニル結合含量は74%、水添率は98%、MFRは30g/10分、及び重量平均分子量は13万であった。なお、(B)ブロック中のスチレン含量は23%であり、水添前共重合体の(A)/(B)比は15/85であった。
【0077】
(実施例2、実施例3、比較例1〜5)
モノマー量、テトラヒドロフラン添加量、触媒量、重合温度、重合時間等を変更したこと以外は、前述の製造例1と同様の方法により、表1に示す水添ジエン系共重合体(H−2、H−3、R−1〜R−5)を製造した。また、これらの水添ジエン系共重合体の物性値測定結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
(実施例4)
上記製造例で得た水添ジエン系共重合体(H−1)を、一軸押出機を使用して溶融混練することによりペレットを得た。不織布製造用押出機を使用して得られたペレットを溶融した後、メルトブローン紡糸装置を使用して、目付量が200g/m2の不織布(実施例4)を得た。得られた不織布(実施例4)の加工性は「○」、縦方向の伸度が750%、横方向の伸度が710%、縦方向の10%伸張時の応力が1.0(g/cm)/(g/cm2)、及び横方向の10%伸張時の応力が0.9(g/cm)/(g/cm2)であった。
【0080】
(実施例5〜6、比較例6〜10)
表2に示す水添ジエン系共重合体をそれぞれ使用したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、目付量が200g/m2の不織布(実施例5〜6、比較例6〜10)を得た。得られた不織布の各種物性値の測定結果、及び評価結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
(実施例7)
上記製造例で得た水添ジエン系共重合体(H−1)の90部と、ポリオレフィン系樹脂としてPP−1の10部とを、一軸押出機を使用して溶融混練することによりペレットを得た。不織布製造用押出機を使用して得られたペレットを溶融した後、メルトブローン紡糸装置を使用して、目付量が200g/m2の不織布(実施例7)を得た。得られた不織布(実施例7)の加工性は「◎」、縦方向の伸度が700%、横方向の伸度が680%、縦方向の10%伸張時の応力が1.5(g/cm)/(g/cm2)、及び横方向の10%伸張時の応力が1.4(g/cm)/(g/cm2)であった。
【0083】
(実施例8〜10、比較例11)
表3に示す種類の水添ジエン系共重合体、及びポリオレフィン系樹脂を、それぞれ表3に示す量で使用したこと以外は、前述の実施例7と同様にして、目付量が200g/m2の不織布(実施例8〜10、比較例11)を得た。得られた不織布の各種物性値の測定結果、及び評価結果を表3に示す。なお、表3の記載中、「PP−1」、及び「PE−1」は、以下に示すものである。
【0084】
「PP−1」:プロピレン−エチレンランダム共重合体、商品名「MG03B」、日本ポリプロ社製、MFR:30g/10分(190℃、21.2N荷重)
「PE−1」:低密度ポリエチレン、商品名「LJ902N」、日本ポリエチレン社製、MFR:45g/10分(190℃、21.2N荷重)
【0085】
【表3】

【0086】
表2に示すように、実施例4〜6の不織布は、比較例6〜10の不織布に比して、加工性に優れているとともに、伸縮性が良好であることが明らかである。また、実施例4〜6の不織布は、10%伸張時の応力が小さく、優れた柔軟性をも有するものであることが明らかである。
【0087】
また、表3に示すように、水添ジエン系共重合体(不織布用共重合体)に特定のポリオレフィン系樹脂をブレンドした場合には、伸縮性、及び柔軟性を高く維持しつつ、加工性が更に向上することが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の不織布は、貼付材;外科用・工業用等の各種マスク;クリーンルーム用エアフィルター、血液フィルター、油水分離フィルター等の各種フィルター;バッテリー用電極セパレーター;衣料用絶縁材や保温材、防護服、使い捨て下着等の各種衣料資材;ワイパー、吸油材・油水分離材、シーツ、おむつ、合成皮革、手術用ガウン、医療用使い捨て製品等の医療用品その他の衛材;作業服、建築用断熱材等の各種断熱材;コーヒーバッグ、米飯包装用シート等の食品包装材料;エレクトレット加工を施したエレクトレットフィルター;自動車用天井表皮材、防音材、基材、断熱材、クッション材、スピーカー防塵材、エア・クリーナー材、インシュレーター表皮、バッキング材、接着不織布シート、ドアトリム等の各種自動車用部材;複写機のクリーニング材等の各種クリーニング材;カーペットの表材・裏材、農業捲布、木材ドレーン材、スポーツシューズ表皮等の靴用部材、カバン用部材、工業用シール材、ワイピング材等として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの、芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を主体とする重合体ブロック(A)と、
少なくとも1つの、共役ジエン化合物に由来する構成単位及び芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を含む重合体ブロック(B)と、
を含有するブロック共重合体を水素添加してなる下記(1)〜(6)の条件を満たす不織布用共重合体。
(1):前記重合体ブロック(A)と前記重合体ブロック(B)の質量比が、(A)/(B)=5〜45/95〜55である。
(2):前記重合体ブロック(B)のビニル結合含量が、60%以上である。
(3):前記重合体ブロック(B)に含まれる芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の割合が、5〜45質量%である。
(4):重量平均分子量が、5〜50万である。
(5):水添率が、80%以上である。
(6):230℃、21.2N荷重で測定されるメルトフローレートが、5〜100g/10分である。
【請求項2】
(イ)請求項1に記載の不織布用共重合体と、
(ロ)ポリオレフィン系樹脂と、
を、質量比で、(イ)/(ロ)=55〜99/45〜1(但し、(イ)+(ロ)=100)の割合で含有する不織布用共重合体組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の不織布用共重合体からなる不織布。
【請求項4】
請求項2に記載の不織布用共重合体組成物からなる不織布。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の不織布と、
前記不織布の少なくとも一方の面上に配設される粘着剤層と、
を備えた貼付材。

【公開番号】特開2007−154013(P2007−154013A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350268(P2005−350268)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】