不織布製造方法
【課題】液引き込み性が良く、液体が残留し難い不織布の製造方法を提供すること。
【解決手段】加熱処理後の表面が凹凸形状となり、凸部である領域の方が凹部である領域よりも繊維が密集するように、熱融着性を有する熱収縮性繊維が配された繊維ウェブを、前記熱収縮性繊維が溶融可能、且つ、熱収縮可能な温度で加熱処理するステップと、前記加熱処理するステップにより形成された前記凹凸形状の凸部が押しつぶされるように、前記繊維ウェブを厚さ方向に押圧するステップと、を有する不織布製造方法。
【解決手段】加熱処理後の表面が凹凸形状となり、凸部である領域の方が凹部である領域よりも繊維が密集するように、熱融着性を有する熱収縮性繊維が配された繊維ウェブを、前記熱収縮性繊維が溶融可能、且つ、熱収縮可能な温度で加熱処理するステップと、前記加熱処理するステップにより形成された前記凹凸形状の凸部が押しつぶされるように、前記繊維ウェブを厚さ方向に押圧するステップと、を有する不織布製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不織布の液引き込み性の向上や液体の残留を抑止することを目的として、不織布に配合する繊維の種類や、不織布の構造について様々な工夫がなされている。
【0003】
例えば、不織布をセカンドシートとして、液透過性の表面シートと液保持性の吸収体との間に配した吸収性物品であれば、表面シート上の液体をセカンドシート内部に引き込み易く(液引き込み性が良い)、引き込んだ液体がセカンドシート内部に残留することなく、吸収体へ移行する(液体残留の抑止)ことが課題となる。
【0004】
そこで、セカンドシート(液透過性のシート)が多層構造からなり、吸収体側に位置する第1の層に高熱収縮性の繊維(コイル状繊維)を含ませ、表面シート側に位置する第2の層の平均繊維密度よりも第1の層の平均繊維密度の方が高くなっている吸収性物品が提案されている。(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−33236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のセカンドシートでは、コイル状繊維が偏って配された場合、例えば、第1の層と第2の層の境界付近において、第1の層内にコイル状繊維が存在しなければ、第2の層と第1の層とで繊維密度に差が生じず、第2の層の液体を第1の層に引き込むことができないおそれがある。そうすると、第2の層内(セカンドシート内)に液体が残留してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、液引き込み性が良く、液体が残留し難い不織布の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するために、主たる本発明は、加熱処理後の表面が凹凸形状となり、凸部である領域の方が凹部である領域よりも繊維が密集するように、熱融着性を有する熱収縮性繊維が配された繊維ウェブを、前記熱収縮性繊維が溶融可能、且つ、熱収縮可能な温度で加熱処理するステップと、前記加熱処理するステップにより形成された前記凹凸形状の凸部が押しつぶされるように、前記繊維ウェブを厚さ方向に押圧するステップと、を有することを特徴とする不織布製造方法である。
【0009】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液引き込み性が良く、液体が残留し難い不織布の製造方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書及び図面には、少なくとも次の事項が開示されている。
【0012】
即ち、加熱処理後の表面が凹凸形状となり、凸部である領域の方が凹部である領域よりも繊維が密集するように、熱融着性を有する熱収縮性繊維が配された繊維ウェブを、前記熱収縮性繊維が溶融可能、且つ、熱収縮可能な温度で加熱処理するステップと、前記加熱処理するステップにより形成された前記凹凸形状の凸部が押しつぶされるように、前記繊維ウェブを厚さ方向に押圧するステップと、を有することを特徴とする不織布製造方法である。
このような不織布製造方法によれば、例えば、不織布における平均繊維密度よりも高い繊維密度である高密度領域と平均繊維密度よりも低い繊維密度である低密度領域とを有し、且つ、前記高密度領域と前記低密度領域とが不織布の厚さ方向の一方側から他方側に連通した不織布を製造することができる。
【0013】
かかる不織布製造方法であって、前記加熱処理するステップにおいて、前記繊維ウェブを前記厚さ方向の片側から支持部材により支持した状態で加熱処理すること。
このような不織布製造方法によれば、支持された側の反対側の面に凹凸が形成され、逆に、支持された側は熱収縮性繊維の移動が規制されるため凹凸が形成されない。即ち、繊維ウェブの片面だけに形成された凸部を押圧するため、不織布に形成される高密度領域において、支持された側の反対側の繊維密度を支持された側の繊維密度よりも高くすることができる。
【0014】
かかる不織布製造方法であって、前記押圧するステップにおいて、前記繊維ウェブは前記温度で加熱された状態で押圧されること。
このような不織布製造方法によれば、凸部を押しつぶすことが容易となる。
【0015】
かかる不織布製造方法であって、前記押圧するステップにおいて、前記繊維ウェブの厚さが前記凹部の厚さ以下となるように前記繊維ウェブを押圧すること。
このような不織布製造方法によれば、略均一な厚さの不織布を製造することができる。
【0016】
かかる不織布製造方法であって、前記凸部である領域の繊維量は、前記凹部である領域の繊維量の2倍以上であること。
このような不織布製造方法によれば、不織布に形成される高密度領域が不織布の厚さ方向の一方側から他方側へ連通しやすい。
【0017】
かかる不織布製造方法であって、前記加熱処理するステップにおいて、前記繊維ウェブは、前記厚さ方向の両側から前記温度の熱風が噴きあてられるように加熱処理されること。
このような不織布製造方法によれば、繊維ウェブの両面に凹凸が形成されるため、不織布の高密度領域において、どちらか一方の面の繊維密度の方が高くなることがなく、不織布の両面における各繊維密度を同程度にすることができる。
【0018】
===不織布について===
〈比較例の不織布〉
まず、本実施形態の不織布製造方法により製造される不織布とは異なる比較例の不織布1について説明する。図1は、比較例の不織布1の断面図を示す図である。比較例の不織布1は、上層2(第2の層に相当)と下層3(第1の層に相当)から構成され、上層2から下層3へ液体が移行し易くなることを目的として、下層3の平均繊維密度が上層2の平均繊維密度よりも高くなっている。
【0019】
ここで、比較例の不織布1の下層3は、熱融着性を有する高熱収縮性繊維を含む繊維ウェブ(繊維間が融着する前のもので、繊維同士に自由度がある)により形成される。また、下層3は、繊維ウェブが厚さ方向及び面方向にテンションがあまり加わらない状態で加熱処理され、繊維間が熱融着することにより形成される。高熱収縮性繊維のように加熱処理による収縮率が高い場合(例えば、加熱処理時の温度に対する収縮率が70%以上)、高熱収縮性繊維は加熱処理により周囲の繊維を取り込みながらコイル状に捲縮する。一方、比較例の不織布1の上層2は、熱融着性を有する高熱収縮性繊維を含まない(又は、下層3よりも少量しか含まない)繊維ウェブを加熱処理することにより形成される。そのため、高熱収縮性繊維が周囲の繊維を取り込みながらコイル状に捲縮した繊維(コイル状繊維A)を有する下層3の平均繊維密度は、上層2の平均繊維密度よりも高くなる。
【0020】
しかし、比較例の不織布1の下層3内において、コイル状繊維Aが均等に存在するとは限らず、コイル状繊維Aが偏って存在してしまうおそれがある。特に、下層3は、テンションがあまり加わらない状態で製造されるため、厚さ方向に厚みがある(嵩高である)。ゆえに、例えば図1に示すように、上層2と接触する下層3の上面側の領域Xに、コイル状繊維Aが存在しない可能性がある。そうすると、上層2の繊維密度と領域X(下層3)の繊維密度に差が生じず、上層2中の液体を毛管力により下層3の領域Xに引き込むことができない。
【0021】
逆に、図1の領域Yのように、多数のコイル状繊維Aが集まってしまった場合には、領域Yの繊維密度が高くなりすぎてしまう。そうすると、多量の液体や粘度の高い液体では、繊維間を透過することができず、不織布1中に液体が残留してしまったり、面方向に液体が拡散してしまったりする。
【0022】
そのため、例えば、比較例の不織布1が吸収性物品のセカンドシートとして、液透過性の表面シートと液保持性の吸収体との間に、上層2が表面シート側となるように配置されたとしても、表面シートやセカンドシート内に液体が残留してしまうおそれがある。そうすると、使用者に不快感(ベタベタ感)を与え、着用者の肌も汚してしまう。
【0023】
そこで、液引き込み性が良く、液体が残留し難い不織布の製造方法を提供することが本実施形態の目的となる。以下、本実施形態の不織布製造方法により製造される不織布10について説明する。
【0024】
〈本実施形態の不織布製造方法により製造される不織布10の概要〉
図2Aは、本実施形態の不織布10の上面図であり、図2Bは、本実施形態の不織布10の斜視図である。図3Aは、本実施形態の不織布10の断面図であり、図3Bは、断面の拡大図である。
【0025】
本実施形態の不織布10は、不織布10全体の平均繊維密度よりも高い繊維密度である高密度領域11と、平均繊維密度よりも低い繊維密度である低密度領域12とを有する。そして、高密度領域11と低密度領域12は、図2Aに示すように、不織布10の面方向に分散して形成されている。
【0026】
また、図3Aに示すように、本実施形態の不織布10は略均一な厚さであり、高密度領域11は不織布10の厚さ方向における一方側(上面)から他方側(下面)へ連通している。同様に、低密度領域12も一方側から他方側へ連通している。更に、高密度領域11では、図3Bに示すように、一方側の繊維密度よりも他方側の繊維密度の方が高くなっている。
【0027】
図4は、本実施形態の不織布10の液体透過の様子を示す図である。なお、不織布10の下面に高密度領域11よりも高密度な吸収体(不図示)が配置され、不織布10の上面に滴下された液体が、不織布10を透過して吸収体へ移行する様子を以下に説明する。
【0028】
不織布10上に多量の液体が滴下された場合、液体は、まず、繊維が余り存在せず、透過に対して抵抗が少ない低密度領域12内を通って吸収体へ移行する。多量の液体が滴下されたとしても、低密度領域12が厚さ方向に連通しているため、大部分の液体が素早く吸収体へ移行することができる。その結果、不織布10の上面上(面方向)に液体が拡散してしまうことを防止することができる。
【0029】
そして、大部分の液体が移行した後に、不織布10の上面に残留している少量の液体を高密度領域11の毛管力により不織布10内部(高密度領域11内部)に引き込むことができる。そして、高密度領域11では、上面よりも下面の方が、繊維密度が高いため、毛管力により、高密度領域に引き込んだ液体を確実に吸収体へ移行することができる。
【0030】
それだけでなく、大部分の液体が透過した後に、低密度領域12中に残留してしまっている液体を、毛管力により高密度領域11内に引き込み、最終的には、その液体を吸収体へ移行することができる。また、不織布10上に少量の液体しか滴下されなかった場合においても、高密度領域11の毛管力により、液体を高密度領域11内に引き込み、吸収体へ移行することができる。
【0031】
その他、粘性の高い液体の場合、多数の繊維が抵抗となって高密度領域11内を透過することができないが、低密度領域12内であれば、粘性の高い液体であっても、繊維により阻害されることなく吸収体へ移行することが出来る。
【0032】
即ち、本実施形態の不織布10では、不織布10の上面から下面にかけて連通した高密度領域11と低密度領域12が、不織布10の面方向に分散しているため、液体の量や液体の粘性に関わらず、液体を拡散させることなく透過させることができ、且つ、不織布10の上面や不織布10内部に液体を残留させてしまうことを防止することができる。つまり、本実施形態の不織布10は、低拡散性、低残留性であり、液引き込み性の良い不織布である。
【0033】
なお、不織布10における平均繊維密度よりも繊維密度が高い高密度領域と、平均繊維密度よりも繊維密度が低い低密度領域の全てが、不織布の一方側から他方側へ連通していなくともよく、少なくとも1つの高密度領域11及び1つの低密度領域12が一方側から他方側へ連通していれば上記の効果が得られる。
また、高密度領域11だけでなく、低密度領域12においても、一方側よりも他方側の方が、繊維密度が高くなっていても構わない。この場合、液体は、低密度領域の毛管力を利用して透過することができる。
【0034】
ここで、具体的な繊維密度について説明する。但し、繊維密度は測定しにくいため、繊維密度の代替数値として、「繊維の平均空間面積」を用いる(詳細は後述)。
高密度領域11の平均空間面積を、300μm2以上であり1000μm2以下とし、好ましくは、400μm2以上であり800μm2以下であるとする。高密度領域の上面と下面において繊維密度に差がある場合、上面側の平均空間面積と下面側の平均空間面積との差は、50μm2以上であり200μm2以下とし、好ましくは、60μm2以上〜100μm2以下であるとする。
低密度領域の繊維間面積は、600μm2以上であり8000μm2以下とし、好ましくは、800μm2以上であり1000μm2以下であるとする。低密度領域の上面と下面において繊維密度に差がある場合、上面側の平均空間面積と下面側の平均空間面積との差は、50μm2以上であり200μm2以下とし、好ましくは、60μm2以上100μm2以下であるとする。
そして、低密度領域12と高密度領域11との平均空間面積の差は、150μm2以上であり7000μm2以下であるとし、好ましくは、200μm2以上1000μm2以下であるとする。
その他、繊維密度の代替数値として、「繊維間距離」を用いることができ、高密度領域11における繊維間距離は、例えば、15μm以上であり95μm以下であるとし、低密度領域12における繊維間距離は、例えば、85μm以上であり390μmであるとする。
【0035】
〈製造方法及び構成繊維について〉
加熱処理後の表面が凹凸形状となり、凸部である領域の方が凹部である領域よりも繊維が密集するように、熱融着性を有する熱収縮性繊維が配された繊維ウェブを、熱収縮性繊維が溶融可能、且つ、熱収縮可能な温度で加熱処理し、加熱処理により形成された凹凸形状の凸部が押しつぶされるように、繊維ウェブを厚さ方向に押圧することで、前述のような不織布10を得ることができる。
【0036】
なお、繊維ウェブには、1種類に限らず、複数種類の熱融着性を有する熱収縮性繊維を配合してもよい。ここで、熱収縮性繊維とは、例えば、収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料を成分とする偏芯芯鞘型複合繊維、又はサイド・バイ・サイド型複合繊維が挙げられる。収縮率の異なる熱可塑性ポリマー材料の例としては、エチレン−プロピレンランダム共重合体とポリプロピレンの組合せ、ポリエチレンとエチレン−プロピレンランダム共重合体の組合せ、ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートとの組合せ等が挙げられる。これらの中でも、加熱処理時の温度(例えば145℃)に対する収縮率が過度に高まり過ぎず、且つ、制御しやすい偏芯芯鞘複合繊維であることが好ましい。なお、偏芯芯鞘複合繊維の芯の位置を中心からずらす距離(偏芯)を調整することで、収縮率の制御が可能となる。
【0037】
以下、繊維ウェブを厚さ方向の下側から支持部材により支持した状態で加熱処理する不織布製造方法について説明する。図5Aから図5Dは、本実施形態の不織布製造方法を示す図である。まず、カード装置(不図示)により、熱融着性を有する熱収縮性繊維22と、熱融着性繊維23とを混綿した原料を開繊することで、所定厚さの繊維ウェブ21を連続的に形成する。また、成形された繊維ウェブ内において、熱収縮性繊維22と熱融着性繊維23は必ずしも均等に存在する訳ではなく、熱収縮性繊維22が集まっている領域とそうでない領域が形成される。なお、複数種類の熱収縮性繊維から繊維ウェブを形成してもよい。また、カード法だけでなく、エアレイド法によって繊維ウェブを形成してもよい。
【0038】
そして、図5Aに示すように、繊維ウェブ21を通気性ネット20(表面が平面である板状の支持部材、また、網の目構造となっている)上に載せた状態で、所定温度により加熱処理する。即ち、繊維ウェブ21は下方側から支持された状態で加熱処理される。
なお、具体例として、繊維ウェブ21をコンベアにより搬送しながら、上面側から所定温度の熱風を噴きあてて加熱処理する方法が挙げられる(後述)。また、所定温度とは、熱収縮性繊維22が溶融し、かつ、熱収縮する温度である。例えば、繊維ウェブ21に噴きあてられる熱風の温度は、138℃以上152℃以下の範囲とし、好ましくは142℃以上150℃以下とする。上面側方向からの熱風の風速は、0.7m/s程度が好ましい。
【0039】
その結果、図5Bに示すように、繊維ウェブ21内の各繊維は溶融しながら他の繊維と融着し、繊維間が熱融着した繊維布24(ここでは加熱処理前の繊維ウェブと区別するため繊維布24とする)が形成される。また、通気性ネット20で支持された側と反対側の繊維布24の面(自由面)には、凹凸構造(海島構造)が形成される。一方、繊維布24の支持された側の面(支持面)は、通気性ネット20の表面に沿って、ほぼ平面な状態となっている。
【0040】
加熱処理の際に、繊維ウェブ21の自由面側の熱収縮性繊維22は、収縮動作が抑制されないため、周囲の繊維(熱融着性繊維23など)を巻き込みながら、面方向に自由に収縮する。即ち、凹凸構造における凸部25は、熱収縮性繊維が集まっている領域であり、また、熱収縮性繊維22の熱収縮に乗じて、熱収縮性繊維22に取り込まれた繊維を多数有する。そのため、凸部25である領域の目付け(繊維量に相当)は、繊維布24における平均目付けよりも高い目付けとなっている。一方、凹部26は、もともと熱収縮性繊維22があまり存在せず、熱融着性繊維23が周囲の熱収縮性繊維22に取り込まれて移動してしまった領域であり、凹部26である領域の目付けは、前記平均目付けよりも低い目付けとなっている。即ち、凸部である領域の方が凹部である領域よりも繊維が密集する。また、加熱処理により、凹部26に存在していた繊維が凸部25に移動するため、凸部25と凹部26は隣り合って形成される。
【0041】
その後、図5Cに示すように、繊維布24の凹凸構造が形成されている自由面側を厚さ方向に凸部25が押しつぶされるように押圧する。このとき一定の強さで凹部26の厚さ以下まで押圧すると、図5Dに示すように、略均一な厚さの不織布10が得られる。また、押圧する際に、繊維布24が所定温度で加熱された状態であると、凸部が押しつぶされやすく、凹凸形状であった自由面側をより平面形状にすることができる。そして、凸部25が押しつぶされた領域が高密度領域11となり、凹部26であった領域が低密度領域12となる。また、凸部25と凹部26が隣り合って形成されるため、高密度領域11と低密度領域12も面方向に隣り合って存在するといえる。
【0042】
また、繊維布24の自由面側の凸部25を押圧することで、高密度領域11が形成されるため、自由面側の繊維密度の方が支持面側の繊維密度よりも高くなっている。即ち、図5Dの自由面が前述の図3Bに示した不織布10の下面に相当し、図5Dの支持面が前述の図3Bに示した不織布10の上面に相当する。
【0043】
以上のように不織布を製造することで、不織布10における平均繊維密度よりも高い繊維密度である高密度領域と、平均繊維密度よりも低い繊維密度である低密度領域とを有し、高密度領域と低密度領域が不織布10の厚さ方向における一方側から他方側へ連通した不織布を得ることができる。即ち、上記の製造方法により、液引き込み性が良く、液体が残留し難い不織布が得られる。
【0044】
また、繊維ウェブを下側から支持した状態で加熱処理することで、繊維ウェブの片面(自由面側)のみに凹凸形状が形成されるため、高密度領域11において、自由面側の繊維密度の方が支持面側の繊維密度よりも高くなるように不織布10を製造することができる。
【0045】
また、高密度領域11と低密度領域12とが面方向に分散し、高密度領域11が不織布の厚さ方向に連通した不織布が好適に製造されるために、繊維ウェブ21が加熱処理された時点(図5B)の凸部25の目付け(2Xg/m2)が凹部26の目付け(Xg/m2)の2倍以上となるようにするとよい。そのために、「繊維物性」と「製造条件」をコントロールすれば、所望の繊維の凹凸構造を形成することができる。
【0046】
具体的な繊維物性として、加熱処理による所定温度を145℃とする場合、用いる熱収縮性繊維の145℃における熱収縮率を10%以上60%以下とし、好ましくは15%以上40%以下とする。
なお、熱収縮率の測定方法として、例えば、(1)測定する繊維100%で200g/m2の繊維ウェブをカード機にて作成、(2)250×250mmの大きさにカット、(3)ウェブをクラフト紙に挟む(熱風が直接当たらないため、且つ、繊維が滑り易く熱収縮しやすいように)、(4)145℃のオーブン内に5分間放置、(5)熱収縮後の長さ寸法を測定、(6)熱収縮前後の長さ寸法差から算出することで、熱収縮率を算出することができる。
【0047】
熱収縮性繊維22の繊維長は短いほど移動し易いが、移動し過ぎると、高密度領域11と低密度領域12の密度差が大きくなりすぎてしまうため、繊維長は25mm以上であり70mm以下とし、好ましくは25mm以上40mm以下とする。ゆえに、繊維ウェブは、比較的に長繊維を使用するカード法で成形することが好ましい。なお、熱収縮性繊維22の繊維太さは、1Dtex以上11Dtex以下程度が望ましい。
【0048】
また不織布10における熱収縮性繊維量は30重量%以上100重量%以下とし、好ましくは70重量%以上100重量%以下とする。熱収縮性繊維22が上記の割合で配合されている場合には、不織布10の面方向に高密度領域11と低密度領域12を分散させて形成することができる。
【0049】
そして、製造条件をコントロールするとは、例えば、加熱処理時の熱風圧(風速)を高めれば、繊維ウェブ21が通気性ネット20に押さえつけられるため、繊維は移動しにくくなり、熱風圧(風速)を低めれば、繊維は移動しやすくなる。また、温度によっても熱収縮率を変えることができ、繊維の移動状態によって風速や温度を調整することが可能である。
【0050】
以下、2種類の熱収縮性繊維が混合された繊維ウェブ21から不織布10を製造する方法について、詳しく説明する。図6は、不織布製造装置の一例を示す図である。まず、不織布製造装置は、開繊工程においてカード装置50により第1熱収縮性繊維51Aと第2熱収縮性繊維51Bとを混綿した原料を開繊することで所定厚さの繊維ウェブ21を連続的に形成する。なお、第1熱収縮性繊維51A、又は、第2熱収縮性繊維51Bのどちらか1種類の熱収縮性繊維だけで繊維ウェブ21を形成することもできる。
そして、繊維ウェブ21は、第1搬送工程においてコンベア52、53により加熱装置54の入り口まで搬送される。この第1搬送工程上の繊維ウェブ21は、繊維同士の自由度を維持した状態である。
【0051】
次に、繊維ウェブ21は、加熱装置54の内部でコンベア55により速度S1で搬送されながら加熱処理される。具体的には、コンベア55により搬送されている繊維ウェブ21の上面側から所定温度の熱風を噴きあてて加熱処理する。所定温度とは、第1熱収縮性繊維51Aと第2熱収縮性繊維51Bが溶融し、かつ、熱収縮する温度であり、この熱風により、繊維ウェブ21は支持部材20に押さえつけられた状態で加熱される。そのため、支持部材20が当接する側の繊維ウェブ21の熱収縮性繊維は、摩擦等により熱収縮が抑制される。
こうして、繊維ウェブ21の支持部材20側は平面形状となり、支持部材20側と反対側の自由面側は凹凸形状となる。なお、加熱処理により、繊維ウェブ21(繊維布24)は、繊維同士が融着した状態となる。
【0052】
その後、ロール56により凸部が押しつぶされるように繊維ウェブ21を押圧する。ロール56は、第1搬送ロール57A、第2搬送ロール57Bとの間に位置する繊維ウェブ21の自由面と当接するように配置される。そして、繊維ウェブ21はロール56により一定の強さで押圧され、略均一な厚さの不織布10が形成される。ここで、ロール56は、所定温度に加熱されていることが好ましく、所定温度に加熱されたロール56が繊維ウェブ21の自由面に当接することで、凸部が厚さ方向に好適に押しつぶされる。こうして形成された不織布10は、最終的には巻取り部58に巻取られる。
【0053】
次に、図6とは異なる押圧方法について説明する。図7は、図6と比べて、搬送ロール57A、57Bの配置が異なる。図6では、第1搬送ロール57Aと第2搬送ロール57Bとの間の繊維ウェブ21がロール56と当接する。これに対して、図7の第1搬送ロール57Aは、第1搬送ロール57Aとロール56とにより繊維ウェブ21を挟むようには配置されておらず、図7の繊維ウェブ21は図6の繊維ウェブ21に比べて、ロール56と当接する距離が短く、図7の不織布10は、図6の不織布10よりも弱い力で押圧されることになる。つまり、搬送ロール57A、57Bの配置を調整することで、繊維ウェブ21を押圧する力を調節することができる。
【0054】
図8では、加熱装置54の出口近傍にロール59を配置して、加熱処理されたばかりで、所定温度を維持した状態である繊維ウェブ21の自由面にロール59を当接させる。これにより、凸部を好適に押しつぶすことができる。また、図9に示すように、ロール61により繊維ウェブ21を押圧する前に、加熱装置60により、再度、繊維ウェブ21を加熱処理してもよい。
【0055】
他に、図10に示すように、ロール等により押圧処理することなく、巻取り部58により不織布10(繊維ウェブ21)を径方向に積層するように巻き取ることで、繊維ウェブ21の自由面に形成された凸部を厚さ方向に押しつぶすこともできる。特に、平面形状である繊維ウェブ21の支持面側と、凹凸形状である繊維ウェブ21の自由面側とが対向するように巻き取られるため、均一に繊維ウェブ21の自由面側を押圧することができる。
【0056】
更に、図11では、加熱装置54の前半部分において、通気性のある上側支持部材62を水平方向に対して所定の角度をなすように配置し、繊維ウェブ21と上側支持部材62が当接しないようにする。一方、加熱装置54の後半部分では、上側支持部材62を水平方向に対して平行に配置し、繊維ウェブ21の上面と上側支持部材62が当接するようにする。また、下側支持部材63は水平方向に対して平行に配置し、加熱装置54における入口から出口まで繊維ウェブ21を下面側から支持する。
【0057】
このような加熱装置54に搬入された繊維ウェブ21は、加熱装置54の前半部分において、下面側を支持された状態で、上側支持部材62を通気した熱風が噴きあてられ、その結果、繊維ウェブ21の上面側に凹凸形状が形成される。その後、加熱装置54の後半部分において、繊維ウェブ21は、下側支持部材63と上側支持部材62とに挟み込まれるようにして搬送され、繊維ウェブ21の上面側に形成された凸部が押しつぶされるように押圧される。
【0058】
〈不織布製造方法の変形例〉
前述の不織布製造方法とは異なり、この変形例では、繊維ウェブ21に対して、厚さ方向の両側から所定温度の熱風が噴きあてられるように加熱処理する。例えば、加熱装置内(不図示)に、繊維ウェブ21の上側と下側に、通気性のある支持部材がそれぞれ配置され、繊維ウェブ21に対して、下側から所定温度の熱風を噴きあてると共に、上側からも所定温度の熱風を噴きあてることで、繊維ウェブ21を加熱処理する。即ち、加熱装置内の繊維ウェブ21は、下側の支持部材から離間された状態で、且つ、上側の支持部材からも離間した状態で加熱処理される。なお、繊維ウェブ21に対して、上側と下側から交互に熱風を噴きあててもよい。
【0059】
即ち、前述の不織布製造方法では、加熱処理によって、自由面側にのみ凹凸形状が形成されるのに対して、この変形例では、繊維ウェブ21の下側が支持部材に支持されることなく加熱処理されるため、繊維ウェブ21の両面に凹凸形状が形成される。そして、両面に凹凸形状が形成された繊維ウェブ21を押圧することで、前述の不織布の高密度領域11のように、自由面側の繊維密度の方が支持面側の繊維密度よりも高くなり、高密度領域のうちの繊維密度が高い領域が片面側(自由面側)に偏って形成されることがなくなる。つまり、変形例により製造された不織布では、厚さ方向の一方側の繊維密度の方が他方側の繊維密度よりも高くなった高密度領域もあれば、逆に、他方側の繊維密度の方が一方側の繊維密度よりも高くなった高密度領域もあり、高密度領域のうちの繊維密度が高い領域が不織布の両面に均等に形成される。
【0060】
〈分散指数(平均吸光度の標準偏差)について〉
本実施形態の不織布製造方法により製造される不織布10では、面方向に高密度領域11及び低密度領域12が分散して形成される。この分散度合いを、例えば、分散指数(平均吸光度の標準偏差)で示すことができる。
「分散指数」である「平均吸光度の標準偏差」とは、不織布10の下から照射した際の不織布の明暗ムラ(ばらつき)を示す値である。所定の測定器(例えば、フォーメーションテスター(品番:FMT−MIII、野村商事株式会社製))を用いることで測定及び算出することができる。測定条件は、例えば、カメラ補正感度が100%、2値化閾値±%:0.0、移動画素が1、有効サイズが25×18cmで、製造工程において支持部材により支持された面を表側にして測定することができる。また、その他の公知の測定方法でも分散指数を測定することができる。
そして、本実施形態の不織布10における分散指数は250以上であり450以下であるとし、好ましくは280以上であり410以下であるとする。
【0061】
仮に、分散指数が250よりも小さい場合には、高密度領域11と低密度領域12とが均一状態に近づきすぎる、即ち、高密度領域11と低密度領域12の密度差が少なくなるため、それぞれの領域による効果(低密度領域12の低拡散性と、高密度領域11の液引き込み性及び低残存性)を得られないおそれがある。逆に、分散指数が450よりも大きい場合には、繊維の密度むらが大きくなり過ぎてしまい、例えば、高密度領域11の密度が極端に高くなってしまうおそれがある。そうすると、不織布10内部に引き込んだ液体を高密度領域11にて、留まってしまうおそれがある。一方、低密度領域では、極端に繊維が少なくなり、少量の液体は、低密度領域内に残留してしまうおそれがある。そうすると、例えば、表面シートと吸収体の間に分散指数が450よりも大きい不織布を配置した吸収性物品では、表面シートから引き込んだ液体は高密度領域内に残留し、液体が吸収体へ移行しない。そして、高密度領域内の液体がオーバーフローしてしまうと、密度差による毛管力は働かなくなり、多量に排泄されたり、繰り返し液体が排泄されたりすると、セカンドシートや表面シートで液体が広く滲んで残留してしまう。
【0062】
そのため、本実施形態の不織布10における分散指数を250以上であり450以下として、繊維ウェブの加熱処理の際に繊維が移動せずに高密度領域11と低密度領域12が形成されていない不織布や、極端に高密度な領域が形成されてしまった不織布を除外することができる。つまり、繊維ウェブの加熱処理の際に繊維が適度に面方向に移動したために、高密度領域11と低密度領域12が面方向に分散して形成され、且つ、高密度領域11と低密度領域12の密度差が適当である不織布10を、本実施形態の不織布10として得られることができる。
【0063】
===吸収性物品について===
〈吸収性物品の概要〉
以下、本実施形態の不織布製造方法により製造された不織布を用いた吸収性物品について説明する。図12Aは、吸収性物品の一例である生理用ナプキン30の斜視図であり、図12Bは、生理用ナプキン30の断面図である。
本実施形態の吸収性物品(生理用ナプキン)30は、少なくとも一部が液透過性の表面シート31と、液不透過性の裏面シート33と、表面シート31と裏面シート33との間に配置される液保持性の吸収体32と、表面シート31と吸収体32との間に配置されるセカンドシート10を有する。
【0064】
また、本実施形態の吸収性物品30のセカンドシート10として、前述の不織布10を用いる。即ち、吸収性物品30のセカンドシート10には、セカンドシート10における平均繊維密度よりも高い繊維密度である高密度領域11と、平均繊維密度よりも低い繊維密度である低密度領域12が形成され、高密度領域11と低密度領域12は共に表面シート31側から吸収体32側へ連通している。そして、高密度領域11と低密度領域12は、セカンドシート10の面方向に分散するように形成されている。
【0065】
更には、前述の不織布10の高密度領域11では、一方側よりも他方側の方が、繊維密度が高くなっており(図3)、高密度領域11のうちの繊維密度が高くなっている側(他方側、反ネット面)が吸収体32側に向くように、表面シート31と吸収体32の間に不織布10(セカンドシート)が配置されている。即ち、吸収性物品のセカンドシート10の高密度領域11では表面シート31側よりも吸収体32側の方が、毛管力が高まる。
【0066】
〈生理用ナプキン〉
本実施形態の吸収性物品30は、生理用ナプキン、パンティーライナー、オムツ、失禁パッド、陰唇間パッド等として利用することができる。以下、生理用ナプキン30を例に挙げて説明する。表面シート31が人体の肌側、裏面シート33が下着側となるように、生理用ナプキン30は装着される。図12Bに示すように、セカンドシート10(不織布)には、表面シート31側から吸収体32側へ連通している高密度領域11と低密度領域12が、セカンドシート10の面方向に分散するように形成されている。また、表面シート31、セカンドシート10、吸収体32の順に繊維密度が高まるとする。そのため、表面シート31上の液体は、毛管力によりセカンドシート10へと移行し、更にセカンドシート10から吸収体32へ移行する。そして、液体は最終的には吸収体32に保持される。
【0067】
図13Aから図13Dは、表面シート31に向けて排泄される液体40の吸収挙動を示す図である。また、本実施形態の生理用ナプキン30では、表面シート31の上面側に凹凸が形成されているとする。
【0068】
図13Aに示すように、生理用ナプキン30の表面シート31に経血等の液体40が排泄されるとする。このとき、表面シート31の液体40は凹部(溝部)に溜まるため、液体40の面方向への拡散が抑制される。そして、液体40は、表面シート31よりも繊維密度が高いセカンドシート10へ移行する。このとき、流速の速い多量の液体が表面シート31に排泄された場合には、まず、液体40の大部分が、繊維による抵抗が少ない低密度領域12内を通過して、吸収体32へ移行する。このため、図13Bに示すように、多量の液体が排泄された場合においても、低密度領域12が厚さ方向に連通するため、液体40を素早く吸収体32へ移行することができ、液体40が表面シート31、及び、セカンドシート10において、面方に拡散してしまうことを防止することができる。即ち、本実施形態の生理用ナプキン30は、液体40の拡散が抑制される(スポット性がよい)。また、表面シート31の凹部に開孔部を形成してもよい。こうすると、表面シート31からセカンドシート10へ液体をより好適に移行することができる。
【0069】
図13Cに示すように、大部分の液体が吸収体32へ移行した後、表面シート31内に残留している液体40をセカンドシート10の高密度領域11の毛管力により、セカンドシート10(高密度領域11)内部へ引き込むことができる。そして、高密度領域11内においても、表面シート31側よりも吸収体32側の方が、繊維密度が高くなっているため、毛管力により、引き込んだ液体を吸収体32へ移行させることができる。なお、セカンドシート10の高密度領域11の最も繊維密度が高い領域(吸収体32側の領域)よりも吸収体32の繊維密度の方が高いとする。そうすれば、セカンドシート10の最下面(吸収体32との境界部)に到達した液体もセカンドシート10内に残留することなく吸収体32へ移行することができる。
【0070】
また、液体40の大部分は、液体40が排泄されてから直ぐに、セカンドシート10の低密度領域12を通過して吸収体32へ移行するが、表面シート31から移行してくる液体の量が少なくなると、表面シート31からの液体の勢いがなくなり(流速が遅くなる)、液体40が低密度領域12中の繊維と繊維の間に残留してしまうおそれがある。しかし、本実施形態の生理用ナプキン30のセカンドシート10(不織布)では、高密度領域11と低密度領域12が隣り合って形成され、お互いの一部の繊維が絡まりあっているため、低密度領域12内に残留している少量の液体40を高密度領域11の毛管力により引き込むことができる。そして、引き込んだ液体40は高密度領域11の毛管力により吸収体32へ移行される。
【0071】
以上をまとめると、本実施形態の吸収性物品(生理用ナプキン30)は、表面シート31の凸部により、表面シート31上に排泄された液体が面方向に拡散してしまうことが抑制され、また、表面シート31からの液体の大部分は、表面シート31から吸収体32まで連通している低密度領域により、素早く吸収体32へ移行することができるため、面方向に液体が拡散してしまうことを抑制することができる。
【0072】
そして、大部分の液体が吸収体32へ移行した後に、表面シート31や低密度領域12に残留している少量の液体は高密度領域11に引き込まれる。そして、引き込まれた液体は、高密度領域11内における密度差と、高密度領域11と吸収体32とにおける密度差による毛管力で、吸収体32へ移行することができる。即ち、表面シート31やセカンドシート10内に液体40が残留することなく、吸収体32に吸収される。
【0073】
つまり、本実施形態の吸収性物品(生理用ナプキン30)は、液体が拡散することなく透過され、且つ、液引き込み性が良く、液体が残留し難い吸収性物品である。そして、液体が確実に吸収体32へ移行するため、液体排泄後に、表面シート31とセカンドシート10は所定の状態まで乾燥することができる。その結果、液体により使用者の肌を汚してしまったり、使用者に不快感(ベタベタ感)を与えてしまったりすることを防止でき、且つ、繰り返し液体が排泄されたとしても、表面シート31状に液体が溢れてしまう(面方向に拡散してしまう)ことなく、再び、液体が吸収体32に吸収される。
【0074】
また、少量の液体しか排泄されなかった場合にも、高密度領域11により液体を確実に吸収体32へ移行することができる。また、粘性の高い液体であっても、繊維による抵抗が少ない低密度領域12を透過することで、液体を吸収体32へ移行することができる。即ち、本実施形態の吸収性物品(生理用ナプキン30)では、表面シート31に排泄される液体の粘性や液体量に関わらず、液体を吸収体32に吸収させることができる。
【0075】
不織布に用いる繊維を先に示したが、その繊維自体が不透明性、特には白化性の高い繊維であることが好ましい。不透明性にすることによって、経血など色の濃い体液を吸収した場合でも、体液自体の色を隠蔽できるため視覚上清潔感を保たれやすい。さらには、表面シート31に開孔が設けられている場合、開孔部から吸収体に広がった経血が見えやすくなるが、セカンドシート自体が、白化性が高いと、開孔部からでも隠蔽性を得ることが出来る。
【0076】
具体的に示すと、光の透過を抑制する微粒子状の光線透過抑制剤を含有する繊維にて不織布を作成する。不透明化させる光線透過抑制剤として、例えば、無機フィラーを例示できる。この無機フィラーとして、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、アルミナ、マイカ、ガラス粉、シラスバルーン、ゼオライト、及び珪酸白土等を例示することができる。これらは2種類以上を組み合わせて含有させても良い。特に、一般に繊維製造段階の工程性等の面から、二酸化チタンが好ましい。そして、この光線透過抑制剤の平均粒径として、例えば、0.1μm以上2μm以下、更には0.2μm以上1μm以下の範囲である場合が好ましい。十分な隠蔽性(白さ)を得るためには、繊維重量における光線透過抑制剤としての二酸化チタンの含有率は1重量%以上、更には2重量%以上であることが好ましい。
【0077】
また、不織布を構成する繊維が芯鞘型複合繊維である場合、例えば、芯部における光線透過抑制剤の含有率は2重量%以上10重量%以下であることが好ましい。2重量%より小さいと隠蔽性を得られにくく、10重量%より大きいと繊維自体が柔らかくなりすぎて嵩を得られにくい。
【0078】
なお、生理用ナプキン30では、前述の1枚の不織布10をセカンドシートとして用いているが、これに限らず、複数のセカンドシート(不織布10)を、表面シートと吸収体の間に配しても構わない。このとき、高密度領域11と低密度領域12のうちの少なくとも1つずつは表面シート31側から吸収体32側へ連通するように、複数のセカンドシート(不織布10)が重ねられているとする。また、例えば、低密度領域12及び高密度領域11の繊維密度がそれぞれ異なる不織布10を積層して利用する場合には、厚さ方向に密度差が生じるため、毛管力により液体を下方(吸収体側)へ引き込むことができる。
【0079】
また、高密度領域11のうちの繊維密度が高くなっている側(自由面、反ネット面)が吸収体32側に向くように、表面シート31と吸収体32の間に不織布10(セカンドシート)を配置するとしているがこれに限らない。ここで、不織布10の自由面側(図5D)には、厚さ方向に連通していない高密度領域も形成されているため、自由面側は、支持面側(ネット面)に比べて、高密度領域が偏って形成されているといえる。逆に、支持面側は、自由面側に比べて、低密度領域が偏って形成されているといえる。
【0080】
前述の通り、セカンドシート(不織布10)の低密度領域が偏って形成されている面(支持面側)を表面シート31側に配置した場合、表面シート31における液体を吸収体32側に速やかに移行させることが可能である。逆に、低密度領域が偏って形成されている面を吸収体32側に配置した場合、表面シート31に含まれる液体を好適に引き込んで吸収体32側に移行させることができる。また、繊維(熱収縮性繊維)が密集した多くの領域が表面シート31に接すると、表面シート31とセカンドシートとの摩擦が高くなり、接合のための接着剤の使用量を低減できる場合がある。また、表面シート31とセカンドシートの繊維が絡み合いやすくなり、吸収性物品においてヨレが生じる場合でも、表面シート31とセカンドシートがずれにくくなる場合がある。このように、不織布10の配置向きを調整することで、同じ不織布10でありながら、異なる機能を発揮させることができる。
【0081】
また、不織布10を折り畳んだ状態で、セカンドシートとして使用することができる。このとき、高密度領域11と低密度領域12のうちの少なくとも1つずつは、表面シート31側から吸収体32側へ連通するように、不織布10が折り畳まれているとする。この場合、例えば、高密度領域11が偏って形成される面を内側にして折り畳むことで、高密度領域が偏って形成される面が向き合うようになり、表面シートから移行した液体を一時的に保持可能な領域を形成することができる。
【0082】
以下、本実施形態の吸収性物品の不織布(セカンドシート)以外の構成物について詳しく説明する。
【0083】
〈表面シート〉
表面シート31の液透過性領域は、例えば、多数の液透過孔が形成された樹脂フィルム、多数の網目を有するネット状シート、液透過性の不織布、又は織布等で形成される。前記樹脂フィルムやネット状シートは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。
【0084】
開孔径(液透過孔径)は0.05mm以上3mm以下の範囲内、ピッチは、0.2mm以上10mm以下の範囲内、開孔面積率は、3%以上30%以下の範囲内であることが好ましい。セカンドシート10の低密度領域12と一体的に複数の開孔を形成することもでき、開孔の配列は千鳥状、格子状、波状など、特に限定されない。開孔の形状としては、丸型、楕円型、四角型等が挙げられ、開孔の周縁に弁が備えられていても良い。また、多数の液透過孔を形成すると共に、シリコーン系やフッ素系の撥水性油剤を塗布して、その外面に体液が付着しにくいものとしてもよい。
【0085】
表面シート31の液透過性領域が不織布である場合、レーヨン等のセルロース繊維、合成樹脂繊維等から形成されたスパンレース不織布、前記合成樹脂繊維で形成されたエアースルー不織布等を用いることができる。
他に、素材として、ポリ乳酸、キトサン、ポリアルギン酸等の生分解性が可能な天然物を用いることもできる。
【0086】
表面シート目付は15g/m2以上100g/m2以下が好ましく、20g/m2以上50g/m2以下がより好ましく、30g/m2以上40g/m2以下が特に好ましい。目付が15g/m2よりも小さいと表面強度が十分に得られず、使用中に破ける恐れがある。また100g/m2よりも大きい場合、過度のごわつきが発現し、使用中に違和感を生じる。更には、長時間使用の場合には、40g/m2を超えてしまうと、液体を表面シート31で保持してしまいベタベタした状態で維持され続け、不快に感じるようになってしまう。また、密度は0.12g/cm3以下で液透過性であれば特には限定されない。密度がこれ以上の場合、表面シートの繊維間をスムーズに透過することが難しい。経血の場合、尿等にくらべ粘性が高いので密度が低いものが好ましい。
【0087】
〈裏面シート〉
裏面シート33は、液不透過性のシートであり、吸収体32に吸収された排泄物が外へ漏れ出すのを防止できる材料が使用される。また、透湿性素材とすることにより、装着時のムレを低減させることができ、装着時における不快感を低減させることが可能となる。
このような材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等を主体とした液不透過性フィルム、通気性フィルム、スパンボンド等の不織布の片面に液不透過性フィルムをラミネートした複合シート等が挙げられる。好ましくは、疎水性の不織布、不透水性のプラスティックフィルム、不織布と不透水性プラスティックフィルムとのラミネートシート等を用いることができる。また、耐水性の高いメルトブローン不織布を強度の強いスパンボンド不織布で挟んだSMS不織布でも良い。
【0088】
〈吸収体〉
吸収体32は、経血等の液体を吸収して保持する機能を有するもので、嵩高であり、型崩れし難く、化学的刺激が少ないものであることが好ましい。例えば、フラッフ状パルプもしくはエアレイド不織布と高吸収ポリマーとからなる吸収体材料を例示できる。
フラッフ状パルプの代わりに、例えば、化学パルプ、セルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維を例示できる。パルプは目付500g/m2、ポリマーは目付20g/m2(ポリマーは全体に分散している)で、パルプとポリマーが全体に均一に分布した混合体を、目付け15g/m2のティッシュで包んだものが挙げられる。
エアレイド不織布としては、例えば、パルプと合成繊維とを熱融着させ又はバインダーで固着させた不織布を例示できる。高吸収ポリマー(SAP)としては、例えば、デンプン系、アクリル酸系、アミノ酸系の粒子状又は繊維状のポリマーを例示できる。吸収体32の形状及び構造は必要に応じて変えることができるが、吸収体32の全吸収量は、吸収性物品としての設計挿入量及び所望の用途に対応させる必要がある。また、吸収体32のサイズや吸収能力等は用途に対応して変動される。
【0089】
===不織布の評価===
〈人工経血による吸収性の評価方法〉
サンプルの吸収性を評価するために、人工経血にて液残存性、拡散性及びリウェット性を評価することができる。
ここで、人工経血の組成は以下の通りである。
イオン交換水1リットルに対して以下を配合する。(1)グリセリン80g(2)カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)8g(3)塩化ナトリウム(NaCl)10g(4)炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)4g(5)色素 赤色 102号8g(6)色素 赤色 2号2g(7)色素 黄色 5号2g
測定器具として、例えば、1)オートビュレット(メトローム社(株)725型)、2)SKICON、3)色彩計、4)穴あきアクリル板(中央に40mm×10mmの穴、長さ×幅=200mm×100mm、重量130g)、5)はかり、6)定規、7)人工経血、8)ストップウォッチ、9)ろ紙を用いる。
【0090】
評価サンプルは以下のように調製する。表面シートを、長さ×幅=100mm×60mm(任意)にカットし、目付と厚みを測定する。次いで、測定サンプルである不織布を、長さ×幅=100mm×60mm(任意)にカットし、目付と厚みを測定する。吸収体として、NBパルプ吸収体を15gsmのティッシュで包み、100mm×60mmにカットする。そして、エンボス加工にて表面シート、不織布、吸収体を接合する。ヒンジエンボス(内々38mm)とする。
【0091】
評価手順は以下の通りに行う。1)穴の中央がサンプルの中央に合うようにアクリル板を重ねる。2)オートビュレットのノズルをアクリル板から10mm上の位置に合わせる。3)下記条件にて1回目の人工経血を滴下する(速度:95ml/min、滴下量:3ml)。4)滴下開始からストップウォッチをスタートし、表面から人工経血の大半が無くなったら(動きが止まったら)ストップし吸収速度を測定(A)。5)ストップと同時に、別のストップウォッチをスタートし、表面シート内の人工経血がなくなったら(動きが止まったら)ストップし全乾速度を測定(B)。6)アクリル板を外す。7)滴下開始後1分経過して、拡散範囲とSKICON値(表面乾燥性)と色彩計(白度)を測定(C、D、E)。8)2回目の人工経血を滴下する(速度:95ml/min、滴下量:4ml)。9)滴下開始からストップウォッチをスタートし、表面から人工経血の大半が無くなったら(動きが止まったら)ストップし吸収速度を測定(F)。10)ストップと同時に、別のストップウォッチをスタートし、表面シート内に人工経血がなくなったら(動きが止まったら)ストップし全乾速度を測定(G)。11)アクリル板を外す。12)滴下開始後1分経過して、拡散範囲とSKICON値(表面乾燥性)と色彩計(白度)を測定(H、I、J)。13)ろ紙とアクリル板をサンプルの上に載せ、50g/cm2おもりを更に載せ、1.5分放置。14)1.5分後、ろ紙の重量を測定し、1回目のリウェット率測定(K)。15)ろ紙とアクリル板をサンプルの上に載せ、100g/cm2おもりを更に載せ、1.5分放置。16)1.5分後、ろ紙の重量を測定し、2回目のリウェット率測定(L)。
【0092】
上記AからLにおける測定結果から、下記評価結果を得ることができる。
1)1回目(3ml滴下):吸収速度[sec](A)、全乾速度[sec](B)、拡散範囲(MD×CD)[mm](C)、SKICON値[μS](D)、白度(E)[−](E)
2)2回目(4ml滴下(計7ml)):吸収速度[sec](F)、全乾速度[sec](G)、拡散範囲(MD×CD)[mm](H)、SKICON値[μS](I)、白度(E)[−](J)
3)(1)リウェット率1回目(50g/cm2下)(K)、(2)リウェット率2回目(100g/cm2下)(L)
【0093】
〈人工尿による吸収性の評価方法〉
サンプルの吸収性を評価するために、人工尿にて吸収速度、表面乾燥速度、拡散状態及びリウェットを評価することができる。
測定機器等として、例えば、(1)人工尿、(2)ビュレットとロート(滴下速度が80ml/10secになるようにビュレットを調整する)、(3)ビュレットスタンド、(4)円筒(直径60mm 550g)、(5)ろ紙(例えば、アドバンテックNo.2・100mm×100mm)、(6)3.5kg/100cm2の重り、(7)ストップウォッチ、(8)電子天秤、(9)定規、(10)はさみ等を用いる。
【0094】
上記人工尿の配合は、イオン交換水10リットルに対し(I)、尿素を200g(II)、塩化ナトリウム(塩)(III)、硫酸マグネシウムを8g(IV)、塩化カルシウムを3g(V)、色素:青色1号を約1g配合して調製する。評価用のサンプルは、市販の使い捨てオムツ(商品名;ムーニーLサイズ、ユニ・チャーム株式会社製)の不織布を取り除き、所定のトップシートと、セカンドシートとしての不織布(例えば、高密度領域が偏って形成される自由面側がトップシートに対面するよう配置)を用いて調製する。
【0095】
評価手順は以下のようにして行う。例えば、以下の手順における評価を10分間1サイクル)として3回繰り返して評価することができる。(1)リウェット滴下位置に、マジックで印をつける。(2)サンプルの重量とリウェット滴下位置の厚みを測定する(サンプル重量が合っているか確認)。(3)滴下位置の上方10mmの位置にビュレットを固定する。(4)ビュレットを滴下位置(円筒の中央)に置き、人工尿を滴下する。と同時に、ストップウォッチで吸収速度の測定を開始する。(5)円筒内の人工尿が完全に吸収され、表面から無くなったら、ストップウォッチを一時停止する。(6)トップシートに残っている液体が完全に中間シート側に移行したら再度ストップウォッチを一時停止する。(7)50g前後のろ紙の重量(A)を量り、記入する。(8)滴下開始5分後に、(7)の重量測定済みろ紙を、ろ紙の中央位置と滴下位置を合わせてサンプル上に置き、その上に重りを重ねる。(9)滴下開始8分後(重りを置いてから3分後)、重りを外して、ろ紙の重量(B)を測定し、記入する。(10)2回目以降がある場合、滴下開始10分後、次回の測定を開始する。(11)測定を3回繰り返す。(12)測定回数を全て終了したら、各回の拡散長を測定する。
【0096】
拡散長は、肌面側における吸収体表面で拡散している縦方向の一番長い箇所を吸収体に平行に定規をあてて測定する。リウェット量は、「リウェット後ろ紙重量(B)―ろ紙重量(A)」により測定する。
【0097】
〈本実施形態の不織布の評価〉
実際に不織布を製造し、分散指数や吸収性の評価を行った。不織布の製造条件や評価結果等を以下に説明する。図14は、実施例における不織布の構成及び平均吸光度の測定結果を説明する表であり、図15は、実施例Dにおける不織布を重ね合わせた場合における平均吸光度の測定結果を説明する表であり、図16は、実施例における不織布の人工尿による吸収性の評価結果を説明する表であり、図17は、実施例における不織布の人工経血による吸収性の評価結果を説明する表であり、図18は、実施例Dにおける繊維間の平均空間面積の測定結果を説明する表である。
【0098】
本発明における不織布を以下の条件で製造した。
(1)繊維構成
図14の表に記載した繊維構成により、実施例AからE、比較例A、Bの不織布を製造した。
【0099】
(2)製造方法
(a)図14の表に示した繊維構成を速度20m/分のカード機によって開繊し繊維ウェブを作成する。そして、繊維ウェブを幅が450mmとなるようにカットする。
(b)繊維ウェブをMD300mm×CD300mmにカットした状態で20メッシュの通気性ネット上に載せ、速度3m/分で搬送し、温度145℃(418.15K)、風速0.7m/s、長さ1.5mの加熱装置(オーブン)内を約30秒で加熱しながら搬送する。
(c)反ネット面の凹凸を押圧する。
【0100】
(3)高密度領域と低密度領域の混在比率(分散度)の測定
図14に示す表に記載の通り、各種不織布における分散指数を測定した。分散指数の測定結果も図14の表に示す通りである。
実施例AからEにおける分散指数は、287から396の範囲内であった。上述した分散指数の範囲である250以上であり450以下であった。ここで、比較例Aは熱融着性繊維のみで構成され平面方向において粗密が略均一な超低密度シートである。この比較例Aにおける分散指数は204であった。比較例Bも熱融着性繊維のみで構成され平面方向において粗密が均一な超高密度シートである。この比較例Bにおける分散指数は206であった。
また、図15の表に示すように、実施例Dの不織布を重ね合わせた不織布についての分散指数を測定した。図15の表の測定結果より、実施例D、実施例Dを2枚重ねた不織布である実施例D2及び、実施例Dの不織布を3枚重ねた不織布である実施例D3における分散指数は、それぞれ大きな差異がなく近似した範囲の値であった。これにより、本発明における不織布を複数枚重ねた不織布も、1枚の不織布と同様の吸収性を有することが期待される。
【0101】
(4)吸収性の評価
A人工尿による吸収性の評価
上述の評価方法に沿って、実施例A、E、比較例A、Bについて、人工尿による吸収性の評価を行った。図16の表に示される評価結果より、実施例A、Eをセカンドシートとして使用した吸収性物品は、吸収速度が速く、かつ、表面シートから吸収体への液体の移行(液ハケ速度)が速い。これに比べて、比較例Aは、吸収速度は速いものの、表面シートから吸収体への液体の移行は遅い。また、比較例Bは、表面シートから吸収体への液体の移行は速いものの、吸収速度は遅い。
上記より、実施例A、Eの不織布をセカンドシートとして用いた吸収性物品は、吸収速度が速く、かつ、表面シートから吸収体への液体の移行が速い。つまり、実施例A、Eの不織布は液体が透過する際の拡散性が低く、表面シートから吸収体への液体の移行を妨げない。
【0102】
B.人工経血により吸収性の評価
上述の評価方法に沿って、実施例D1、D2、比較例A、Bについて、人工経血による吸収性の評価を行った。つまり、実施例D1、D2、比較例A、Bを、吸収性物品におけるセカンドシートとして用いた吸収性物品の吸収性の評価を行った。ここで、実施例D1は、実施例Dにおける自由面(反ネット面、高密度領域が偏って形成されている面)を内側にして折り重ねた不織布であり、実施例D2は、実施例Dにおける自由面(反ネット面、高密度領域が偏って形成されている面)を外側にして折り重ねた不織布である。吸収評価用サンプルにおける表面シートとして、以下の表面シートを使用した。
【0103】
<表面シートの繊維構成>
上層に高密度ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートの芯鞘構造で、平均繊度3.3dtex、平均繊維長51mm、親水油剤がコーティングされた繊維Aを、下層側に高密度ポリエチレンとポリプロピレンの芯鞘構造で平均繊度3.3dtex、平均繊維長51mm、親水油剤がコーティングされた繊維Bと高密度ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートの芯鞘構造で、平均繊度2.2dtex、平均繊維長51mm、親水油剤がコーティングされた繊維Cとを50/50の割合で混合した繊維を使用した。上下層の比は16:9でトータルの目付は30gsmである。
【0104】
<表面シートの製造方法>
速度20m/分のカード機によって開繊し繊維ウェブを作成し、幅が450mmとなるように繊維ウェブをカットする。繊維ウェブをスリーブの上に載せ、速度3m/分の20メッシュの通気性ネット上に搬送する(上層側がメッシュに対面する)。その後、前記通気性ネットで搬送した状態で温度125℃、熱風風量10Hzで設定したオーブン内を約30秒で搬送させる。
【0105】
<評価用サンプル調製>
吸収評価用サンプルの試作内容は、上記表面シート、実施例D1、D2、比較例A、Bそれぞれを、長さ100mm×幅70mmにカットする。そして、厚みが5mmになるように調整した500g/m2のフラッフパルプを16g/m2のティッシュで挟んだ吸収コアに重ね、最も幅が狭い部分が38mmになるように設定したヒンジエンボスにて吸収コアと表面シートとセカンドシートである上記各不織布を接合して、評価用サンプルを調製した。
【0106】
<測定方法及び測定結果>
上記調製した各サンプルについて、上述の評価方法の説明に記載の手順に沿って吸収性の評価を行った。測定結果は、図17の表に記載の通りである。図17の表に示すように、実施例D1、D2における不織布をセカンドシートして使用した吸収性評価用サンプルは、比較例A、Bにおける不織布をセカンドシートとして使用した吸収性評価用サンプルに比べて、全般的に浸透時間は短く、全乾燥時間は短く、表面拡散面積も少ない。
【0107】
特に、実施例D1、D2における不織布をセカンドシートとして使用した吸収性物品サンプルは、比較例A、Bにおける不織布をセカンドシートして使用した吸収性評価用サンプルに比べて、特に全乾燥時間が短く、表面拡散面積が狭い。これらのことから、実施例の不織布をセカンドシートとして用いた吸収性評価用サンプルは、液体が透過する際の拡散性が低く、表面シートから吸収体への液体の移行を妨げない。
【0108】
また、表面の乾燥性に優れているといえ、更には繰りかえし乾燥性を有しているといえる。更に、表に示すように、実施例D1、D2における不織布をセカンドシートして使用した吸収性評価用サンプルは、比較例A、Bにおける不織布をセカンドシートとして使用した吸収性評価用サンプルに比べて、リウェット率が低い。本発明における不織布をセカンドシートとして使用した吸収性物品は、リウェット率が低い吸収性物品とすることができる。表面シートからの液体を好適に吸収体側へ移行させているといえる。
【0109】
ここで、比較例Aのような均一な低密度不織布は、吸収速度は速いが、表面シート中に液が入ってからの乾燥速度が遅い。また、低密度であるため毛管現象も起こりにくく、表面シート上に液が取り残されやすくなる。そのため、表面シートの乾燥性が悪い。また、比較例Bのような均一な高密度不織布は、吸収速度が遅くなり、表面シートの中に液が入りにくくなる。実施例における不織布を用いることで、低密度領域での吸収速度、高密度領域での液引き込み性により表面シートから吸収体への液体の移行を妨げないようにすることが可能である。
【0110】
(5)繊維密度(繊維の平均空間面積)の評価
実施例Dの高密度領域と低密度領域における繊維の平均空間面積を測定した。1)サンプル品(実施例D)の観察面を上にして観察台に載せる。2)所定の測定器(例えば、デジタルマイクロスコープ、品番:VHX−100、キーエンス株式会社製)を用いて、繊維面を撮影し、繊維の二値化画像を得る。3)二値化画像中の空間面積(繊維が存在しない領域の面積:μm2)を、二値化画像中に存在する空間の数で割った値が、繊維の平均空間面積(=空間面積/空間個数)である。
【0111】
図18の表に示すように、実施例Dの高密度領域の平均空間面積は低密度領域の平均空間面積よりも小さく、それぞれの平均空間面積が、前述の好ましい値の範囲内に含まれている。また、高密度領域と低密度領域の平均空間面積の差も、前述の好ましい範囲内に含まれている。そして、支持面側(一方側)の平均空間面積は自由面側の平均空間面積(他方側)大きく、支持面側(一方側)よりも自由面側(他方側)の方が、繊維密度が高くなることが分かる。
【0112】
即ち、前述の製造方法や繊維構成に基づいて製造した実施例Dは、高密度領域と低密度領域を有し、高密度領域と低密度領域は一方側から他方側に連通し、且つ、高密度領域において、一方側よりも他方側の方が、繊維密度が高くなっている不織布である。そのため、実施例Dは、上記の評価試験からも分かるように、高密度領域と低密度領域のそれぞれの性質を兼ね合わせた不織布となる。
【0113】
以上、前述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨に逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】比較例の不織布の断面図を示す図である。
【図2】図2Aは本実施形態の不織布の上面図を示す図であり、図2Bは本実施形態の不織布の斜視図を示す図である。
【図3】図3Aは本実施形態の不織布の断面図であり、図3Bは断面の拡大図である。
【図4】本実施形態の不織布の液体透過の様子を示す図である。
【図5】図5Aから図5Dは本実施形態の不織布の製造方法の概要を説明する図である。
【図6】本実施形態の不織布製造装置の一例を示す図である。
【図7】図6と異なる押圧方法を示す図である。
【図8】図6と異なる押圧方法を示す図である。
【図9】図6と異なる押圧方法を示す図である。
【図10】図6と異なる押圧方法を示す図である。
【図11】図6と異なる押圧方法を示す図である。
【図12】図12Aは本実施形態の生理用ナプキンの斜視図であり、図12Bは本実施形態の吸収性物品の断面図である。
【図13】図13Aから図13Dは表面シートに向けて排泄される液体の吸収挙動を示す図である。
【図14】実施例における不織布の構成及び平均吸光度の測定結果を説明する表である。
【図15】実施例Dにおける不織布を重ね合わせた場合における平均吸光度の測定結果を説明する表である。
【図16】実施例における不織布の人工尿による吸収性の評価結果を説明する表である。
【図17】実施例における不織布の人工経血による吸収性の評価結果を説明する表である。
【図18】実施例Dにおける繊維間の平均空間面積の測定結果を説明する表である。
【符号の説明】
【0115】
1 比較例の不織布、2 上層、3 下層、A コイル状繊維、
10 不織布、11 高密度領域、12 低密度領域、
20 支持部材、21 繊維ウェブ、22 熱収縮性繊維、
23 熱融着性繊維、24 繊維布、30 生理用ナプキン、
31 表面シート、32 吸収体、33 裏面シート、40 液体、
50 カード装置、51A 第1熱収縮性繊維、51B 第2熱収縮性繊維、
52 コンベア、53 コンベア、54 加熱装置、55 コンベア、
56 ロール、57A 第1搬送ロール、57B 第2搬送ロール、
58 巻取り部、59 ロール、60 加熱装置、61 ロール、
62 上側支持部材、63 下側支持部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不織布の液引き込み性の向上や液体の残留を抑止することを目的として、不織布に配合する繊維の種類や、不織布の構造について様々な工夫がなされている。
【0003】
例えば、不織布をセカンドシートとして、液透過性の表面シートと液保持性の吸収体との間に配した吸収性物品であれば、表面シート上の液体をセカンドシート内部に引き込み易く(液引き込み性が良い)、引き込んだ液体がセカンドシート内部に残留することなく、吸収体へ移行する(液体残留の抑止)ことが課題となる。
【0004】
そこで、セカンドシート(液透過性のシート)が多層構造からなり、吸収体側に位置する第1の層に高熱収縮性の繊維(コイル状繊維)を含ませ、表面シート側に位置する第2の層の平均繊維密度よりも第1の層の平均繊維密度の方が高くなっている吸収性物品が提案されている。(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−33236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のセカンドシートでは、コイル状繊維が偏って配された場合、例えば、第1の層と第2の層の境界付近において、第1の層内にコイル状繊維が存在しなければ、第2の層と第1の層とで繊維密度に差が生じず、第2の層の液体を第1の層に引き込むことができないおそれがある。そうすると、第2の層内(セカンドシート内)に液体が残留してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、液引き込み性が良く、液体が残留し難い不織布の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するために、主たる本発明は、加熱処理後の表面が凹凸形状となり、凸部である領域の方が凹部である領域よりも繊維が密集するように、熱融着性を有する熱収縮性繊維が配された繊維ウェブを、前記熱収縮性繊維が溶融可能、且つ、熱収縮可能な温度で加熱処理するステップと、前記加熱処理するステップにより形成された前記凹凸形状の凸部が押しつぶされるように、前記繊維ウェブを厚さ方向に押圧するステップと、を有することを特徴とする不織布製造方法である。
【0009】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液引き込み性が良く、液体が残留し難い不織布の製造方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書及び図面には、少なくとも次の事項が開示されている。
【0012】
即ち、加熱処理後の表面が凹凸形状となり、凸部である領域の方が凹部である領域よりも繊維が密集するように、熱融着性を有する熱収縮性繊維が配された繊維ウェブを、前記熱収縮性繊維が溶融可能、且つ、熱収縮可能な温度で加熱処理するステップと、前記加熱処理するステップにより形成された前記凹凸形状の凸部が押しつぶされるように、前記繊維ウェブを厚さ方向に押圧するステップと、を有することを特徴とする不織布製造方法である。
このような不織布製造方法によれば、例えば、不織布における平均繊維密度よりも高い繊維密度である高密度領域と平均繊維密度よりも低い繊維密度である低密度領域とを有し、且つ、前記高密度領域と前記低密度領域とが不織布の厚さ方向の一方側から他方側に連通した不織布を製造することができる。
【0013】
かかる不織布製造方法であって、前記加熱処理するステップにおいて、前記繊維ウェブを前記厚さ方向の片側から支持部材により支持した状態で加熱処理すること。
このような不織布製造方法によれば、支持された側の反対側の面に凹凸が形成され、逆に、支持された側は熱収縮性繊維の移動が規制されるため凹凸が形成されない。即ち、繊維ウェブの片面だけに形成された凸部を押圧するため、不織布に形成される高密度領域において、支持された側の反対側の繊維密度を支持された側の繊維密度よりも高くすることができる。
【0014】
かかる不織布製造方法であって、前記押圧するステップにおいて、前記繊維ウェブは前記温度で加熱された状態で押圧されること。
このような不織布製造方法によれば、凸部を押しつぶすことが容易となる。
【0015】
かかる不織布製造方法であって、前記押圧するステップにおいて、前記繊維ウェブの厚さが前記凹部の厚さ以下となるように前記繊維ウェブを押圧すること。
このような不織布製造方法によれば、略均一な厚さの不織布を製造することができる。
【0016】
かかる不織布製造方法であって、前記凸部である領域の繊維量は、前記凹部である領域の繊維量の2倍以上であること。
このような不織布製造方法によれば、不織布に形成される高密度領域が不織布の厚さ方向の一方側から他方側へ連通しやすい。
【0017】
かかる不織布製造方法であって、前記加熱処理するステップにおいて、前記繊維ウェブは、前記厚さ方向の両側から前記温度の熱風が噴きあてられるように加熱処理されること。
このような不織布製造方法によれば、繊維ウェブの両面に凹凸が形成されるため、不織布の高密度領域において、どちらか一方の面の繊維密度の方が高くなることがなく、不織布の両面における各繊維密度を同程度にすることができる。
【0018】
===不織布について===
〈比較例の不織布〉
まず、本実施形態の不織布製造方法により製造される不織布とは異なる比較例の不織布1について説明する。図1は、比較例の不織布1の断面図を示す図である。比較例の不織布1は、上層2(第2の層に相当)と下層3(第1の層に相当)から構成され、上層2から下層3へ液体が移行し易くなることを目的として、下層3の平均繊維密度が上層2の平均繊維密度よりも高くなっている。
【0019】
ここで、比較例の不織布1の下層3は、熱融着性を有する高熱収縮性繊維を含む繊維ウェブ(繊維間が融着する前のもので、繊維同士に自由度がある)により形成される。また、下層3は、繊維ウェブが厚さ方向及び面方向にテンションがあまり加わらない状態で加熱処理され、繊維間が熱融着することにより形成される。高熱収縮性繊維のように加熱処理による収縮率が高い場合(例えば、加熱処理時の温度に対する収縮率が70%以上)、高熱収縮性繊維は加熱処理により周囲の繊維を取り込みながらコイル状に捲縮する。一方、比較例の不織布1の上層2は、熱融着性を有する高熱収縮性繊維を含まない(又は、下層3よりも少量しか含まない)繊維ウェブを加熱処理することにより形成される。そのため、高熱収縮性繊維が周囲の繊維を取り込みながらコイル状に捲縮した繊維(コイル状繊維A)を有する下層3の平均繊維密度は、上層2の平均繊維密度よりも高くなる。
【0020】
しかし、比較例の不織布1の下層3内において、コイル状繊維Aが均等に存在するとは限らず、コイル状繊維Aが偏って存在してしまうおそれがある。特に、下層3は、テンションがあまり加わらない状態で製造されるため、厚さ方向に厚みがある(嵩高である)。ゆえに、例えば図1に示すように、上層2と接触する下層3の上面側の領域Xに、コイル状繊維Aが存在しない可能性がある。そうすると、上層2の繊維密度と領域X(下層3)の繊維密度に差が生じず、上層2中の液体を毛管力により下層3の領域Xに引き込むことができない。
【0021】
逆に、図1の領域Yのように、多数のコイル状繊維Aが集まってしまった場合には、領域Yの繊維密度が高くなりすぎてしまう。そうすると、多量の液体や粘度の高い液体では、繊維間を透過することができず、不織布1中に液体が残留してしまったり、面方向に液体が拡散してしまったりする。
【0022】
そのため、例えば、比較例の不織布1が吸収性物品のセカンドシートとして、液透過性の表面シートと液保持性の吸収体との間に、上層2が表面シート側となるように配置されたとしても、表面シートやセカンドシート内に液体が残留してしまうおそれがある。そうすると、使用者に不快感(ベタベタ感)を与え、着用者の肌も汚してしまう。
【0023】
そこで、液引き込み性が良く、液体が残留し難い不織布の製造方法を提供することが本実施形態の目的となる。以下、本実施形態の不織布製造方法により製造される不織布10について説明する。
【0024】
〈本実施形態の不織布製造方法により製造される不織布10の概要〉
図2Aは、本実施形態の不織布10の上面図であり、図2Bは、本実施形態の不織布10の斜視図である。図3Aは、本実施形態の不織布10の断面図であり、図3Bは、断面の拡大図である。
【0025】
本実施形態の不織布10は、不織布10全体の平均繊維密度よりも高い繊維密度である高密度領域11と、平均繊維密度よりも低い繊維密度である低密度領域12とを有する。そして、高密度領域11と低密度領域12は、図2Aに示すように、不織布10の面方向に分散して形成されている。
【0026】
また、図3Aに示すように、本実施形態の不織布10は略均一な厚さであり、高密度領域11は不織布10の厚さ方向における一方側(上面)から他方側(下面)へ連通している。同様に、低密度領域12も一方側から他方側へ連通している。更に、高密度領域11では、図3Bに示すように、一方側の繊維密度よりも他方側の繊維密度の方が高くなっている。
【0027】
図4は、本実施形態の不織布10の液体透過の様子を示す図である。なお、不織布10の下面に高密度領域11よりも高密度な吸収体(不図示)が配置され、不織布10の上面に滴下された液体が、不織布10を透過して吸収体へ移行する様子を以下に説明する。
【0028】
不織布10上に多量の液体が滴下された場合、液体は、まず、繊維が余り存在せず、透過に対して抵抗が少ない低密度領域12内を通って吸収体へ移行する。多量の液体が滴下されたとしても、低密度領域12が厚さ方向に連通しているため、大部分の液体が素早く吸収体へ移行することができる。その結果、不織布10の上面上(面方向)に液体が拡散してしまうことを防止することができる。
【0029】
そして、大部分の液体が移行した後に、不織布10の上面に残留している少量の液体を高密度領域11の毛管力により不織布10内部(高密度領域11内部)に引き込むことができる。そして、高密度領域11では、上面よりも下面の方が、繊維密度が高いため、毛管力により、高密度領域に引き込んだ液体を確実に吸収体へ移行することができる。
【0030】
それだけでなく、大部分の液体が透過した後に、低密度領域12中に残留してしまっている液体を、毛管力により高密度領域11内に引き込み、最終的には、その液体を吸収体へ移行することができる。また、不織布10上に少量の液体しか滴下されなかった場合においても、高密度領域11の毛管力により、液体を高密度領域11内に引き込み、吸収体へ移行することができる。
【0031】
その他、粘性の高い液体の場合、多数の繊維が抵抗となって高密度領域11内を透過することができないが、低密度領域12内であれば、粘性の高い液体であっても、繊維により阻害されることなく吸収体へ移行することが出来る。
【0032】
即ち、本実施形態の不織布10では、不織布10の上面から下面にかけて連通した高密度領域11と低密度領域12が、不織布10の面方向に分散しているため、液体の量や液体の粘性に関わらず、液体を拡散させることなく透過させることができ、且つ、不織布10の上面や不織布10内部に液体を残留させてしまうことを防止することができる。つまり、本実施形態の不織布10は、低拡散性、低残留性であり、液引き込み性の良い不織布である。
【0033】
なお、不織布10における平均繊維密度よりも繊維密度が高い高密度領域と、平均繊維密度よりも繊維密度が低い低密度領域の全てが、不織布の一方側から他方側へ連通していなくともよく、少なくとも1つの高密度領域11及び1つの低密度領域12が一方側から他方側へ連通していれば上記の効果が得られる。
また、高密度領域11だけでなく、低密度領域12においても、一方側よりも他方側の方が、繊維密度が高くなっていても構わない。この場合、液体は、低密度領域の毛管力を利用して透過することができる。
【0034】
ここで、具体的な繊維密度について説明する。但し、繊維密度は測定しにくいため、繊維密度の代替数値として、「繊維の平均空間面積」を用いる(詳細は後述)。
高密度領域11の平均空間面積を、300μm2以上であり1000μm2以下とし、好ましくは、400μm2以上であり800μm2以下であるとする。高密度領域の上面と下面において繊維密度に差がある場合、上面側の平均空間面積と下面側の平均空間面積との差は、50μm2以上であり200μm2以下とし、好ましくは、60μm2以上〜100μm2以下であるとする。
低密度領域の繊維間面積は、600μm2以上であり8000μm2以下とし、好ましくは、800μm2以上であり1000μm2以下であるとする。低密度領域の上面と下面において繊維密度に差がある場合、上面側の平均空間面積と下面側の平均空間面積との差は、50μm2以上であり200μm2以下とし、好ましくは、60μm2以上100μm2以下であるとする。
そして、低密度領域12と高密度領域11との平均空間面積の差は、150μm2以上であり7000μm2以下であるとし、好ましくは、200μm2以上1000μm2以下であるとする。
その他、繊維密度の代替数値として、「繊維間距離」を用いることができ、高密度領域11における繊維間距離は、例えば、15μm以上であり95μm以下であるとし、低密度領域12における繊維間距離は、例えば、85μm以上であり390μmであるとする。
【0035】
〈製造方法及び構成繊維について〉
加熱処理後の表面が凹凸形状となり、凸部である領域の方が凹部である領域よりも繊維が密集するように、熱融着性を有する熱収縮性繊維が配された繊維ウェブを、熱収縮性繊維が溶融可能、且つ、熱収縮可能な温度で加熱処理し、加熱処理により形成された凹凸形状の凸部が押しつぶされるように、繊維ウェブを厚さ方向に押圧することで、前述のような不織布10を得ることができる。
【0036】
なお、繊維ウェブには、1種類に限らず、複数種類の熱融着性を有する熱収縮性繊維を配合してもよい。ここで、熱収縮性繊維とは、例えば、収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料を成分とする偏芯芯鞘型複合繊維、又はサイド・バイ・サイド型複合繊維が挙げられる。収縮率の異なる熱可塑性ポリマー材料の例としては、エチレン−プロピレンランダム共重合体とポリプロピレンの組合せ、ポリエチレンとエチレン−プロピレンランダム共重合体の組合せ、ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートとの組合せ等が挙げられる。これらの中でも、加熱処理時の温度(例えば145℃)に対する収縮率が過度に高まり過ぎず、且つ、制御しやすい偏芯芯鞘複合繊維であることが好ましい。なお、偏芯芯鞘複合繊維の芯の位置を中心からずらす距離(偏芯)を調整することで、収縮率の制御が可能となる。
【0037】
以下、繊維ウェブを厚さ方向の下側から支持部材により支持した状態で加熱処理する不織布製造方法について説明する。図5Aから図5Dは、本実施形態の不織布製造方法を示す図である。まず、カード装置(不図示)により、熱融着性を有する熱収縮性繊維22と、熱融着性繊維23とを混綿した原料を開繊することで、所定厚さの繊維ウェブ21を連続的に形成する。また、成形された繊維ウェブ内において、熱収縮性繊維22と熱融着性繊維23は必ずしも均等に存在する訳ではなく、熱収縮性繊維22が集まっている領域とそうでない領域が形成される。なお、複数種類の熱収縮性繊維から繊維ウェブを形成してもよい。また、カード法だけでなく、エアレイド法によって繊維ウェブを形成してもよい。
【0038】
そして、図5Aに示すように、繊維ウェブ21を通気性ネット20(表面が平面である板状の支持部材、また、網の目構造となっている)上に載せた状態で、所定温度により加熱処理する。即ち、繊維ウェブ21は下方側から支持された状態で加熱処理される。
なお、具体例として、繊維ウェブ21をコンベアにより搬送しながら、上面側から所定温度の熱風を噴きあてて加熱処理する方法が挙げられる(後述)。また、所定温度とは、熱収縮性繊維22が溶融し、かつ、熱収縮する温度である。例えば、繊維ウェブ21に噴きあてられる熱風の温度は、138℃以上152℃以下の範囲とし、好ましくは142℃以上150℃以下とする。上面側方向からの熱風の風速は、0.7m/s程度が好ましい。
【0039】
その結果、図5Bに示すように、繊維ウェブ21内の各繊維は溶融しながら他の繊維と融着し、繊維間が熱融着した繊維布24(ここでは加熱処理前の繊維ウェブと区別するため繊維布24とする)が形成される。また、通気性ネット20で支持された側と反対側の繊維布24の面(自由面)には、凹凸構造(海島構造)が形成される。一方、繊維布24の支持された側の面(支持面)は、通気性ネット20の表面に沿って、ほぼ平面な状態となっている。
【0040】
加熱処理の際に、繊維ウェブ21の自由面側の熱収縮性繊維22は、収縮動作が抑制されないため、周囲の繊維(熱融着性繊維23など)を巻き込みながら、面方向に自由に収縮する。即ち、凹凸構造における凸部25は、熱収縮性繊維が集まっている領域であり、また、熱収縮性繊維22の熱収縮に乗じて、熱収縮性繊維22に取り込まれた繊維を多数有する。そのため、凸部25である領域の目付け(繊維量に相当)は、繊維布24における平均目付けよりも高い目付けとなっている。一方、凹部26は、もともと熱収縮性繊維22があまり存在せず、熱融着性繊維23が周囲の熱収縮性繊維22に取り込まれて移動してしまった領域であり、凹部26である領域の目付けは、前記平均目付けよりも低い目付けとなっている。即ち、凸部である領域の方が凹部である領域よりも繊維が密集する。また、加熱処理により、凹部26に存在していた繊維が凸部25に移動するため、凸部25と凹部26は隣り合って形成される。
【0041】
その後、図5Cに示すように、繊維布24の凹凸構造が形成されている自由面側を厚さ方向に凸部25が押しつぶされるように押圧する。このとき一定の強さで凹部26の厚さ以下まで押圧すると、図5Dに示すように、略均一な厚さの不織布10が得られる。また、押圧する際に、繊維布24が所定温度で加熱された状態であると、凸部が押しつぶされやすく、凹凸形状であった自由面側をより平面形状にすることができる。そして、凸部25が押しつぶされた領域が高密度領域11となり、凹部26であった領域が低密度領域12となる。また、凸部25と凹部26が隣り合って形成されるため、高密度領域11と低密度領域12も面方向に隣り合って存在するといえる。
【0042】
また、繊維布24の自由面側の凸部25を押圧することで、高密度領域11が形成されるため、自由面側の繊維密度の方が支持面側の繊維密度よりも高くなっている。即ち、図5Dの自由面が前述の図3Bに示した不織布10の下面に相当し、図5Dの支持面が前述の図3Bに示した不織布10の上面に相当する。
【0043】
以上のように不織布を製造することで、不織布10における平均繊維密度よりも高い繊維密度である高密度領域と、平均繊維密度よりも低い繊維密度である低密度領域とを有し、高密度領域と低密度領域が不織布10の厚さ方向における一方側から他方側へ連通した不織布を得ることができる。即ち、上記の製造方法により、液引き込み性が良く、液体が残留し難い不織布が得られる。
【0044】
また、繊維ウェブを下側から支持した状態で加熱処理することで、繊維ウェブの片面(自由面側)のみに凹凸形状が形成されるため、高密度領域11において、自由面側の繊維密度の方が支持面側の繊維密度よりも高くなるように不織布10を製造することができる。
【0045】
また、高密度領域11と低密度領域12とが面方向に分散し、高密度領域11が不織布の厚さ方向に連通した不織布が好適に製造されるために、繊維ウェブ21が加熱処理された時点(図5B)の凸部25の目付け(2Xg/m2)が凹部26の目付け(Xg/m2)の2倍以上となるようにするとよい。そのために、「繊維物性」と「製造条件」をコントロールすれば、所望の繊維の凹凸構造を形成することができる。
【0046】
具体的な繊維物性として、加熱処理による所定温度を145℃とする場合、用いる熱収縮性繊維の145℃における熱収縮率を10%以上60%以下とし、好ましくは15%以上40%以下とする。
なお、熱収縮率の測定方法として、例えば、(1)測定する繊維100%で200g/m2の繊維ウェブをカード機にて作成、(2)250×250mmの大きさにカット、(3)ウェブをクラフト紙に挟む(熱風が直接当たらないため、且つ、繊維が滑り易く熱収縮しやすいように)、(4)145℃のオーブン内に5分間放置、(5)熱収縮後の長さ寸法を測定、(6)熱収縮前後の長さ寸法差から算出することで、熱収縮率を算出することができる。
【0047】
熱収縮性繊維22の繊維長は短いほど移動し易いが、移動し過ぎると、高密度領域11と低密度領域12の密度差が大きくなりすぎてしまうため、繊維長は25mm以上であり70mm以下とし、好ましくは25mm以上40mm以下とする。ゆえに、繊維ウェブは、比較的に長繊維を使用するカード法で成形することが好ましい。なお、熱収縮性繊維22の繊維太さは、1Dtex以上11Dtex以下程度が望ましい。
【0048】
また不織布10における熱収縮性繊維量は30重量%以上100重量%以下とし、好ましくは70重量%以上100重量%以下とする。熱収縮性繊維22が上記の割合で配合されている場合には、不織布10の面方向に高密度領域11と低密度領域12を分散させて形成することができる。
【0049】
そして、製造条件をコントロールするとは、例えば、加熱処理時の熱風圧(風速)を高めれば、繊維ウェブ21が通気性ネット20に押さえつけられるため、繊維は移動しにくくなり、熱風圧(風速)を低めれば、繊維は移動しやすくなる。また、温度によっても熱収縮率を変えることができ、繊維の移動状態によって風速や温度を調整することが可能である。
【0050】
以下、2種類の熱収縮性繊維が混合された繊維ウェブ21から不織布10を製造する方法について、詳しく説明する。図6は、不織布製造装置の一例を示す図である。まず、不織布製造装置は、開繊工程においてカード装置50により第1熱収縮性繊維51Aと第2熱収縮性繊維51Bとを混綿した原料を開繊することで所定厚さの繊維ウェブ21を連続的に形成する。なお、第1熱収縮性繊維51A、又は、第2熱収縮性繊維51Bのどちらか1種類の熱収縮性繊維だけで繊維ウェブ21を形成することもできる。
そして、繊維ウェブ21は、第1搬送工程においてコンベア52、53により加熱装置54の入り口まで搬送される。この第1搬送工程上の繊維ウェブ21は、繊維同士の自由度を維持した状態である。
【0051】
次に、繊維ウェブ21は、加熱装置54の内部でコンベア55により速度S1で搬送されながら加熱処理される。具体的には、コンベア55により搬送されている繊維ウェブ21の上面側から所定温度の熱風を噴きあてて加熱処理する。所定温度とは、第1熱収縮性繊維51Aと第2熱収縮性繊維51Bが溶融し、かつ、熱収縮する温度であり、この熱風により、繊維ウェブ21は支持部材20に押さえつけられた状態で加熱される。そのため、支持部材20が当接する側の繊維ウェブ21の熱収縮性繊維は、摩擦等により熱収縮が抑制される。
こうして、繊維ウェブ21の支持部材20側は平面形状となり、支持部材20側と反対側の自由面側は凹凸形状となる。なお、加熱処理により、繊維ウェブ21(繊維布24)は、繊維同士が融着した状態となる。
【0052】
その後、ロール56により凸部が押しつぶされるように繊維ウェブ21を押圧する。ロール56は、第1搬送ロール57A、第2搬送ロール57Bとの間に位置する繊維ウェブ21の自由面と当接するように配置される。そして、繊維ウェブ21はロール56により一定の強さで押圧され、略均一な厚さの不織布10が形成される。ここで、ロール56は、所定温度に加熱されていることが好ましく、所定温度に加熱されたロール56が繊維ウェブ21の自由面に当接することで、凸部が厚さ方向に好適に押しつぶされる。こうして形成された不織布10は、最終的には巻取り部58に巻取られる。
【0053】
次に、図6とは異なる押圧方法について説明する。図7は、図6と比べて、搬送ロール57A、57Bの配置が異なる。図6では、第1搬送ロール57Aと第2搬送ロール57Bとの間の繊維ウェブ21がロール56と当接する。これに対して、図7の第1搬送ロール57Aは、第1搬送ロール57Aとロール56とにより繊維ウェブ21を挟むようには配置されておらず、図7の繊維ウェブ21は図6の繊維ウェブ21に比べて、ロール56と当接する距離が短く、図7の不織布10は、図6の不織布10よりも弱い力で押圧されることになる。つまり、搬送ロール57A、57Bの配置を調整することで、繊維ウェブ21を押圧する力を調節することができる。
【0054】
図8では、加熱装置54の出口近傍にロール59を配置して、加熱処理されたばかりで、所定温度を維持した状態である繊維ウェブ21の自由面にロール59を当接させる。これにより、凸部を好適に押しつぶすことができる。また、図9に示すように、ロール61により繊維ウェブ21を押圧する前に、加熱装置60により、再度、繊維ウェブ21を加熱処理してもよい。
【0055】
他に、図10に示すように、ロール等により押圧処理することなく、巻取り部58により不織布10(繊維ウェブ21)を径方向に積層するように巻き取ることで、繊維ウェブ21の自由面に形成された凸部を厚さ方向に押しつぶすこともできる。特に、平面形状である繊維ウェブ21の支持面側と、凹凸形状である繊維ウェブ21の自由面側とが対向するように巻き取られるため、均一に繊維ウェブ21の自由面側を押圧することができる。
【0056】
更に、図11では、加熱装置54の前半部分において、通気性のある上側支持部材62を水平方向に対して所定の角度をなすように配置し、繊維ウェブ21と上側支持部材62が当接しないようにする。一方、加熱装置54の後半部分では、上側支持部材62を水平方向に対して平行に配置し、繊維ウェブ21の上面と上側支持部材62が当接するようにする。また、下側支持部材63は水平方向に対して平行に配置し、加熱装置54における入口から出口まで繊維ウェブ21を下面側から支持する。
【0057】
このような加熱装置54に搬入された繊維ウェブ21は、加熱装置54の前半部分において、下面側を支持された状態で、上側支持部材62を通気した熱風が噴きあてられ、その結果、繊維ウェブ21の上面側に凹凸形状が形成される。その後、加熱装置54の後半部分において、繊維ウェブ21は、下側支持部材63と上側支持部材62とに挟み込まれるようにして搬送され、繊維ウェブ21の上面側に形成された凸部が押しつぶされるように押圧される。
【0058】
〈不織布製造方法の変形例〉
前述の不織布製造方法とは異なり、この変形例では、繊維ウェブ21に対して、厚さ方向の両側から所定温度の熱風が噴きあてられるように加熱処理する。例えば、加熱装置内(不図示)に、繊維ウェブ21の上側と下側に、通気性のある支持部材がそれぞれ配置され、繊維ウェブ21に対して、下側から所定温度の熱風を噴きあてると共に、上側からも所定温度の熱風を噴きあてることで、繊維ウェブ21を加熱処理する。即ち、加熱装置内の繊維ウェブ21は、下側の支持部材から離間された状態で、且つ、上側の支持部材からも離間した状態で加熱処理される。なお、繊維ウェブ21に対して、上側と下側から交互に熱風を噴きあててもよい。
【0059】
即ち、前述の不織布製造方法では、加熱処理によって、自由面側にのみ凹凸形状が形成されるのに対して、この変形例では、繊維ウェブ21の下側が支持部材に支持されることなく加熱処理されるため、繊維ウェブ21の両面に凹凸形状が形成される。そして、両面に凹凸形状が形成された繊維ウェブ21を押圧することで、前述の不織布の高密度領域11のように、自由面側の繊維密度の方が支持面側の繊維密度よりも高くなり、高密度領域のうちの繊維密度が高い領域が片面側(自由面側)に偏って形成されることがなくなる。つまり、変形例により製造された不織布では、厚さ方向の一方側の繊維密度の方が他方側の繊維密度よりも高くなった高密度領域もあれば、逆に、他方側の繊維密度の方が一方側の繊維密度よりも高くなった高密度領域もあり、高密度領域のうちの繊維密度が高い領域が不織布の両面に均等に形成される。
【0060】
〈分散指数(平均吸光度の標準偏差)について〉
本実施形態の不織布製造方法により製造される不織布10では、面方向に高密度領域11及び低密度領域12が分散して形成される。この分散度合いを、例えば、分散指数(平均吸光度の標準偏差)で示すことができる。
「分散指数」である「平均吸光度の標準偏差」とは、不織布10の下から照射した際の不織布の明暗ムラ(ばらつき)を示す値である。所定の測定器(例えば、フォーメーションテスター(品番:FMT−MIII、野村商事株式会社製))を用いることで測定及び算出することができる。測定条件は、例えば、カメラ補正感度が100%、2値化閾値±%:0.0、移動画素が1、有効サイズが25×18cmで、製造工程において支持部材により支持された面を表側にして測定することができる。また、その他の公知の測定方法でも分散指数を測定することができる。
そして、本実施形態の不織布10における分散指数は250以上であり450以下であるとし、好ましくは280以上であり410以下であるとする。
【0061】
仮に、分散指数が250よりも小さい場合には、高密度領域11と低密度領域12とが均一状態に近づきすぎる、即ち、高密度領域11と低密度領域12の密度差が少なくなるため、それぞれの領域による効果(低密度領域12の低拡散性と、高密度領域11の液引き込み性及び低残存性)を得られないおそれがある。逆に、分散指数が450よりも大きい場合には、繊維の密度むらが大きくなり過ぎてしまい、例えば、高密度領域11の密度が極端に高くなってしまうおそれがある。そうすると、不織布10内部に引き込んだ液体を高密度領域11にて、留まってしまうおそれがある。一方、低密度領域では、極端に繊維が少なくなり、少量の液体は、低密度領域内に残留してしまうおそれがある。そうすると、例えば、表面シートと吸収体の間に分散指数が450よりも大きい不織布を配置した吸収性物品では、表面シートから引き込んだ液体は高密度領域内に残留し、液体が吸収体へ移行しない。そして、高密度領域内の液体がオーバーフローしてしまうと、密度差による毛管力は働かなくなり、多量に排泄されたり、繰り返し液体が排泄されたりすると、セカンドシートや表面シートで液体が広く滲んで残留してしまう。
【0062】
そのため、本実施形態の不織布10における分散指数を250以上であり450以下として、繊維ウェブの加熱処理の際に繊維が移動せずに高密度領域11と低密度領域12が形成されていない不織布や、極端に高密度な領域が形成されてしまった不織布を除外することができる。つまり、繊維ウェブの加熱処理の際に繊維が適度に面方向に移動したために、高密度領域11と低密度領域12が面方向に分散して形成され、且つ、高密度領域11と低密度領域12の密度差が適当である不織布10を、本実施形態の不織布10として得られることができる。
【0063】
===吸収性物品について===
〈吸収性物品の概要〉
以下、本実施形態の不織布製造方法により製造された不織布を用いた吸収性物品について説明する。図12Aは、吸収性物品の一例である生理用ナプキン30の斜視図であり、図12Bは、生理用ナプキン30の断面図である。
本実施形態の吸収性物品(生理用ナプキン)30は、少なくとも一部が液透過性の表面シート31と、液不透過性の裏面シート33と、表面シート31と裏面シート33との間に配置される液保持性の吸収体32と、表面シート31と吸収体32との間に配置されるセカンドシート10を有する。
【0064】
また、本実施形態の吸収性物品30のセカンドシート10として、前述の不織布10を用いる。即ち、吸収性物品30のセカンドシート10には、セカンドシート10における平均繊維密度よりも高い繊維密度である高密度領域11と、平均繊維密度よりも低い繊維密度である低密度領域12が形成され、高密度領域11と低密度領域12は共に表面シート31側から吸収体32側へ連通している。そして、高密度領域11と低密度領域12は、セカンドシート10の面方向に分散するように形成されている。
【0065】
更には、前述の不織布10の高密度領域11では、一方側よりも他方側の方が、繊維密度が高くなっており(図3)、高密度領域11のうちの繊維密度が高くなっている側(他方側、反ネット面)が吸収体32側に向くように、表面シート31と吸収体32の間に不織布10(セカンドシート)が配置されている。即ち、吸収性物品のセカンドシート10の高密度領域11では表面シート31側よりも吸収体32側の方が、毛管力が高まる。
【0066】
〈生理用ナプキン〉
本実施形態の吸収性物品30は、生理用ナプキン、パンティーライナー、オムツ、失禁パッド、陰唇間パッド等として利用することができる。以下、生理用ナプキン30を例に挙げて説明する。表面シート31が人体の肌側、裏面シート33が下着側となるように、生理用ナプキン30は装着される。図12Bに示すように、セカンドシート10(不織布)には、表面シート31側から吸収体32側へ連通している高密度領域11と低密度領域12が、セカンドシート10の面方向に分散するように形成されている。また、表面シート31、セカンドシート10、吸収体32の順に繊維密度が高まるとする。そのため、表面シート31上の液体は、毛管力によりセカンドシート10へと移行し、更にセカンドシート10から吸収体32へ移行する。そして、液体は最終的には吸収体32に保持される。
【0067】
図13Aから図13Dは、表面シート31に向けて排泄される液体40の吸収挙動を示す図である。また、本実施形態の生理用ナプキン30では、表面シート31の上面側に凹凸が形成されているとする。
【0068】
図13Aに示すように、生理用ナプキン30の表面シート31に経血等の液体40が排泄されるとする。このとき、表面シート31の液体40は凹部(溝部)に溜まるため、液体40の面方向への拡散が抑制される。そして、液体40は、表面シート31よりも繊維密度が高いセカンドシート10へ移行する。このとき、流速の速い多量の液体が表面シート31に排泄された場合には、まず、液体40の大部分が、繊維による抵抗が少ない低密度領域12内を通過して、吸収体32へ移行する。このため、図13Bに示すように、多量の液体が排泄された場合においても、低密度領域12が厚さ方向に連通するため、液体40を素早く吸収体32へ移行することができ、液体40が表面シート31、及び、セカンドシート10において、面方に拡散してしまうことを防止することができる。即ち、本実施形態の生理用ナプキン30は、液体40の拡散が抑制される(スポット性がよい)。また、表面シート31の凹部に開孔部を形成してもよい。こうすると、表面シート31からセカンドシート10へ液体をより好適に移行することができる。
【0069】
図13Cに示すように、大部分の液体が吸収体32へ移行した後、表面シート31内に残留している液体40をセカンドシート10の高密度領域11の毛管力により、セカンドシート10(高密度領域11)内部へ引き込むことができる。そして、高密度領域11内においても、表面シート31側よりも吸収体32側の方が、繊維密度が高くなっているため、毛管力により、引き込んだ液体を吸収体32へ移行させることができる。なお、セカンドシート10の高密度領域11の最も繊維密度が高い領域(吸収体32側の領域)よりも吸収体32の繊維密度の方が高いとする。そうすれば、セカンドシート10の最下面(吸収体32との境界部)に到達した液体もセカンドシート10内に残留することなく吸収体32へ移行することができる。
【0070】
また、液体40の大部分は、液体40が排泄されてから直ぐに、セカンドシート10の低密度領域12を通過して吸収体32へ移行するが、表面シート31から移行してくる液体の量が少なくなると、表面シート31からの液体の勢いがなくなり(流速が遅くなる)、液体40が低密度領域12中の繊維と繊維の間に残留してしまうおそれがある。しかし、本実施形態の生理用ナプキン30のセカンドシート10(不織布)では、高密度領域11と低密度領域12が隣り合って形成され、お互いの一部の繊維が絡まりあっているため、低密度領域12内に残留している少量の液体40を高密度領域11の毛管力により引き込むことができる。そして、引き込んだ液体40は高密度領域11の毛管力により吸収体32へ移行される。
【0071】
以上をまとめると、本実施形態の吸収性物品(生理用ナプキン30)は、表面シート31の凸部により、表面シート31上に排泄された液体が面方向に拡散してしまうことが抑制され、また、表面シート31からの液体の大部分は、表面シート31から吸収体32まで連通している低密度領域により、素早く吸収体32へ移行することができるため、面方向に液体が拡散してしまうことを抑制することができる。
【0072】
そして、大部分の液体が吸収体32へ移行した後に、表面シート31や低密度領域12に残留している少量の液体は高密度領域11に引き込まれる。そして、引き込まれた液体は、高密度領域11内における密度差と、高密度領域11と吸収体32とにおける密度差による毛管力で、吸収体32へ移行することができる。即ち、表面シート31やセカンドシート10内に液体40が残留することなく、吸収体32に吸収される。
【0073】
つまり、本実施形態の吸収性物品(生理用ナプキン30)は、液体が拡散することなく透過され、且つ、液引き込み性が良く、液体が残留し難い吸収性物品である。そして、液体が確実に吸収体32へ移行するため、液体排泄後に、表面シート31とセカンドシート10は所定の状態まで乾燥することができる。その結果、液体により使用者の肌を汚してしまったり、使用者に不快感(ベタベタ感)を与えてしまったりすることを防止でき、且つ、繰り返し液体が排泄されたとしても、表面シート31状に液体が溢れてしまう(面方向に拡散してしまう)ことなく、再び、液体が吸収体32に吸収される。
【0074】
また、少量の液体しか排泄されなかった場合にも、高密度領域11により液体を確実に吸収体32へ移行することができる。また、粘性の高い液体であっても、繊維による抵抗が少ない低密度領域12を透過することで、液体を吸収体32へ移行することができる。即ち、本実施形態の吸収性物品(生理用ナプキン30)では、表面シート31に排泄される液体の粘性や液体量に関わらず、液体を吸収体32に吸収させることができる。
【0075】
不織布に用いる繊維を先に示したが、その繊維自体が不透明性、特には白化性の高い繊維であることが好ましい。不透明性にすることによって、経血など色の濃い体液を吸収した場合でも、体液自体の色を隠蔽できるため視覚上清潔感を保たれやすい。さらには、表面シート31に開孔が設けられている場合、開孔部から吸収体に広がった経血が見えやすくなるが、セカンドシート自体が、白化性が高いと、開孔部からでも隠蔽性を得ることが出来る。
【0076】
具体的に示すと、光の透過を抑制する微粒子状の光線透過抑制剤を含有する繊維にて不織布を作成する。不透明化させる光線透過抑制剤として、例えば、無機フィラーを例示できる。この無機フィラーとして、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、アルミナ、マイカ、ガラス粉、シラスバルーン、ゼオライト、及び珪酸白土等を例示することができる。これらは2種類以上を組み合わせて含有させても良い。特に、一般に繊維製造段階の工程性等の面から、二酸化チタンが好ましい。そして、この光線透過抑制剤の平均粒径として、例えば、0.1μm以上2μm以下、更には0.2μm以上1μm以下の範囲である場合が好ましい。十分な隠蔽性(白さ)を得るためには、繊維重量における光線透過抑制剤としての二酸化チタンの含有率は1重量%以上、更には2重量%以上であることが好ましい。
【0077】
また、不織布を構成する繊維が芯鞘型複合繊維である場合、例えば、芯部における光線透過抑制剤の含有率は2重量%以上10重量%以下であることが好ましい。2重量%より小さいと隠蔽性を得られにくく、10重量%より大きいと繊維自体が柔らかくなりすぎて嵩を得られにくい。
【0078】
なお、生理用ナプキン30では、前述の1枚の不織布10をセカンドシートとして用いているが、これに限らず、複数のセカンドシート(不織布10)を、表面シートと吸収体の間に配しても構わない。このとき、高密度領域11と低密度領域12のうちの少なくとも1つずつは表面シート31側から吸収体32側へ連通するように、複数のセカンドシート(不織布10)が重ねられているとする。また、例えば、低密度領域12及び高密度領域11の繊維密度がそれぞれ異なる不織布10を積層して利用する場合には、厚さ方向に密度差が生じるため、毛管力により液体を下方(吸収体側)へ引き込むことができる。
【0079】
また、高密度領域11のうちの繊維密度が高くなっている側(自由面、反ネット面)が吸収体32側に向くように、表面シート31と吸収体32の間に不織布10(セカンドシート)を配置するとしているがこれに限らない。ここで、不織布10の自由面側(図5D)には、厚さ方向に連通していない高密度領域も形成されているため、自由面側は、支持面側(ネット面)に比べて、高密度領域が偏って形成されているといえる。逆に、支持面側は、自由面側に比べて、低密度領域が偏って形成されているといえる。
【0080】
前述の通り、セカンドシート(不織布10)の低密度領域が偏って形成されている面(支持面側)を表面シート31側に配置した場合、表面シート31における液体を吸収体32側に速やかに移行させることが可能である。逆に、低密度領域が偏って形成されている面を吸収体32側に配置した場合、表面シート31に含まれる液体を好適に引き込んで吸収体32側に移行させることができる。また、繊維(熱収縮性繊維)が密集した多くの領域が表面シート31に接すると、表面シート31とセカンドシートとの摩擦が高くなり、接合のための接着剤の使用量を低減できる場合がある。また、表面シート31とセカンドシートの繊維が絡み合いやすくなり、吸収性物品においてヨレが生じる場合でも、表面シート31とセカンドシートがずれにくくなる場合がある。このように、不織布10の配置向きを調整することで、同じ不織布10でありながら、異なる機能を発揮させることができる。
【0081】
また、不織布10を折り畳んだ状態で、セカンドシートとして使用することができる。このとき、高密度領域11と低密度領域12のうちの少なくとも1つずつは、表面シート31側から吸収体32側へ連通するように、不織布10が折り畳まれているとする。この場合、例えば、高密度領域11が偏って形成される面を内側にして折り畳むことで、高密度領域が偏って形成される面が向き合うようになり、表面シートから移行した液体を一時的に保持可能な領域を形成することができる。
【0082】
以下、本実施形態の吸収性物品の不織布(セカンドシート)以外の構成物について詳しく説明する。
【0083】
〈表面シート〉
表面シート31の液透過性領域は、例えば、多数の液透過孔が形成された樹脂フィルム、多数の網目を有するネット状シート、液透過性の不織布、又は織布等で形成される。前記樹脂フィルムやネット状シートは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。
【0084】
開孔径(液透過孔径)は0.05mm以上3mm以下の範囲内、ピッチは、0.2mm以上10mm以下の範囲内、開孔面積率は、3%以上30%以下の範囲内であることが好ましい。セカンドシート10の低密度領域12と一体的に複数の開孔を形成することもでき、開孔の配列は千鳥状、格子状、波状など、特に限定されない。開孔の形状としては、丸型、楕円型、四角型等が挙げられ、開孔の周縁に弁が備えられていても良い。また、多数の液透過孔を形成すると共に、シリコーン系やフッ素系の撥水性油剤を塗布して、その外面に体液が付着しにくいものとしてもよい。
【0085】
表面シート31の液透過性領域が不織布である場合、レーヨン等のセルロース繊維、合成樹脂繊維等から形成されたスパンレース不織布、前記合成樹脂繊維で形成されたエアースルー不織布等を用いることができる。
他に、素材として、ポリ乳酸、キトサン、ポリアルギン酸等の生分解性が可能な天然物を用いることもできる。
【0086】
表面シート目付は15g/m2以上100g/m2以下が好ましく、20g/m2以上50g/m2以下がより好ましく、30g/m2以上40g/m2以下が特に好ましい。目付が15g/m2よりも小さいと表面強度が十分に得られず、使用中に破ける恐れがある。また100g/m2よりも大きい場合、過度のごわつきが発現し、使用中に違和感を生じる。更には、長時間使用の場合には、40g/m2を超えてしまうと、液体を表面シート31で保持してしまいベタベタした状態で維持され続け、不快に感じるようになってしまう。また、密度は0.12g/cm3以下で液透過性であれば特には限定されない。密度がこれ以上の場合、表面シートの繊維間をスムーズに透過することが難しい。経血の場合、尿等にくらべ粘性が高いので密度が低いものが好ましい。
【0087】
〈裏面シート〉
裏面シート33は、液不透過性のシートであり、吸収体32に吸収された排泄物が外へ漏れ出すのを防止できる材料が使用される。また、透湿性素材とすることにより、装着時のムレを低減させることができ、装着時における不快感を低減させることが可能となる。
このような材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等を主体とした液不透過性フィルム、通気性フィルム、スパンボンド等の不織布の片面に液不透過性フィルムをラミネートした複合シート等が挙げられる。好ましくは、疎水性の不織布、不透水性のプラスティックフィルム、不織布と不透水性プラスティックフィルムとのラミネートシート等を用いることができる。また、耐水性の高いメルトブローン不織布を強度の強いスパンボンド不織布で挟んだSMS不織布でも良い。
【0088】
〈吸収体〉
吸収体32は、経血等の液体を吸収して保持する機能を有するもので、嵩高であり、型崩れし難く、化学的刺激が少ないものであることが好ましい。例えば、フラッフ状パルプもしくはエアレイド不織布と高吸収ポリマーとからなる吸収体材料を例示できる。
フラッフ状パルプの代わりに、例えば、化学パルプ、セルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維を例示できる。パルプは目付500g/m2、ポリマーは目付20g/m2(ポリマーは全体に分散している)で、パルプとポリマーが全体に均一に分布した混合体を、目付け15g/m2のティッシュで包んだものが挙げられる。
エアレイド不織布としては、例えば、パルプと合成繊維とを熱融着させ又はバインダーで固着させた不織布を例示できる。高吸収ポリマー(SAP)としては、例えば、デンプン系、アクリル酸系、アミノ酸系の粒子状又は繊維状のポリマーを例示できる。吸収体32の形状及び構造は必要に応じて変えることができるが、吸収体32の全吸収量は、吸収性物品としての設計挿入量及び所望の用途に対応させる必要がある。また、吸収体32のサイズや吸収能力等は用途に対応して変動される。
【0089】
===不織布の評価===
〈人工経血による吸収性の評価方法〉
サンプルの吸収性を評価するために、人工経血にて液残存性、拡散性及びリウェット性を評価することができる。
ここで、人工経血の組成は以下の通りである。
イオン交換水1リットルに対して以下を配合する。(1)グリセリン80g(2)カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)8g(3)塩化ナトリウム(NaCl)10g(4)炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)4g(5)色素 赤色 102号8g(6)色素 赤色 2号2g(7)色素 黄色 5号2g
測定器具として、例えば、1)オートビュレット(メトローム社(株)725型)、2)SKICON、3)色彩計、4)穴あきアクリル板(中央に40mm×10mmの穴、長さ×幅=200mm×100mm、重量130g)、5)はかり、6)定規、7)人工経血、8)ストップウォッチ、9)ろ紙を用いる。
【0090】
評価サンプルは以下のように調製する。表面シートを、長さ×幅=100mm×60mm(任意)にカットし、目付と厚みを測定する。次いで、測定サンプルである不織布を、長さ×幅=100mm×60mm(任意)にカットし、目付と厚みを測定する。吸収体として、NBパルプ吸収体を15gsmのティッシュで包み、100mm×60mmにカットする。そして、エンボス加工にて表面シート、不織布、吸収体を接合する。ヒンジエンボス(内々38mm)とする。
【0091】
評価手順は以下の通りに行う。1)穴の中央がサンプルの中央に合うようにアクリル板を重ねる。2)オートビュレットのノズルをアクリル板から10mm上の位置に合わせる。3)下記条件にて1回目の人工経血を滴下する(速度:95ml/min、滴下量:3ml)。4)滴下開始からストップウォッチをスタートし、表面から人工経血の大半が無くなったら(動きが止まったら)ストップし吸収速度を測定(A)。5)ストップと同時に、別のストップウォッチをスタートし、表面シート内の人工経血がなくなったら(動きが止まったら)ストップし全乾速度を測定(B)。6)アクリル板を外す。7)滴下開始後1分経過して、拡散範囲とSKICON値(表面乾燥性)と色彩計(白度)を測定(C、D、E)。8)2回目の人工経血を滴下する(速度:95ml/min、滴下量:4ml)。9)滴下開始からストップウォッチをスタートし、表面から人工経血の大半が無くなったら(動きが止まったら)ストップし吸収速度を測定(F)。10)ストップと同時に、別のストップウォッチをスタートし、表面シート内に人工経血がなくなったら(動きが止まったら)ストップし全乾速度を測定(G)。11)アクリル板を外す。12)滴下開始後1分経過して、拡散範囲とSKICON値(表面乾燥性)と色彩計(白度)を測定(H、I、J)。13)ろ紙とアクリル板をサンプルの上に載せ、50g/cm2おもりを更に載せ、1.5分放置。14)1.5分後、ろ紙の重量を測定し、1回目のリウェット率測定(K)。15)ろ紙とアクリル板をサンプルの上に載せ、100g/cm2おもりを更に載せ、1.5分放置。16)1.5分後、ろ紙の重量を測定し、2回目のリウェット率測定(L)。
【0092】
上記AからLにおける測定結果から、下記評価結果を得ることができる。
1)1回目(3ml滴下):吸収速度[sec](A)、全乾速度[sec](B)、拡散範囲(MD×CD)[mm](C)、SKICON値[μS](D)、白度(E)[−](E)
2)2回目(4ml滴下(計7ml)):吸収速度[sec](F)、全乾速度[sec](G)、拡散範囲(MD×CD)[mm](H)、SKICON値[μS](I)、白度(E)[−](J)
3)(1)リウェット率1回目(50g/cm2下)(K)、(2)リウェット率2回目(100g/cm2下)(L)
【0093】
〈人工尿による吸収性の評価方法〉
サンプルの吸収性を評価するために、人工尿にて吸収速度、表面乾燥速度、拡散状態及びリウェットを評価することができる。
測定機器等として、例えば、(1)人工尿、(2)ビュレットとロート(滴下速度が80ml/10secになるようにビュレットを調整する)、(3)ビュレットスタンド、(4)円筒(直径60mm 550g)、(5)ろ紙(例えば、アドバンテックNo.2・100mm×100mm)、(6)3.5kg/100cm2の重り、(7)ストップウォッチ、(8)電子天秤、(9)定規、(10)はさみ等を用いる。
【0094】
上記人工尿の配合は、イオン交換水10リットルに対し(I)、尿素を200g(II)、塩化ナトリウム(塩)(III)、硫酸マグネシウムを8g(IV)、塩化カルシウムを3g(V)、色素:青色1号を約1g配合して調製する。評価用のサンプルは、市販の使い捨てオムツ(商品名;ムーニーLサイズ、ユニ・チャーム株式会社製)の不織布を取り除き、所定のトップシートと、セカンドシートとしての不織布(例えば、高密度領域が偏って形成される自由面側がトップシートに対面するよう配置)を用いて調製する。
【0095】
評価手順は以下のようにして行う。例えば、以下の手順における評価を10分間1サイクル)として3回繰り返して評価することができる。(1)リウェット滴下位置に、マジックで印をつける。(2)サンプルの重量とリウェット滴下位置の厚みを測定する(サンプル重量が合っているか確認)。(3)滴下位置の上方10mmの位置にビュレットを固定する。(4)ビュレットを滴下位置(円筒の中央)に置き、人工尿を滴下する。と同時に、ストップウォッチで吸収速度の測定を開始する。(5)円筒内の人工尿が完全に吸収され、表面から無くなったら、ストップウォッチを一時停止する。(6)トップシートに残っている液体が完全に中間シート側に移行したら再度ストップウォッチを一時停止する。(7)50g前後のろ紙の重量(A)を量り、記入する。(8)滴下開始5分後に、(7)の重量測定済みろ紙を、ろ紙の中央位置と滴下位置を合わせてサンプル上に置き、その上に重りを重ねる。(9)滴下開始8分後(重りを置いてから3分後)、重りを外して、ろ紙の重量(B)を測定し、記入する。(10)2回目以降がある場合、滴下開始10分後、次回の測定を開始する。(11)測定を3回繰り返す。(12)測定回数を全て終了したら、各回の拡散長を測定する。
【0096】
拡散長は、肌面側における吸収体表面で拡散している縦方向の一番長い箇所を吸収体に平行に定規をあてて測定する。リウェット量は、「リウェット後ろ紙重量(B)―ろ紙重量(A)」により測定する。
【0097】
〈本実施形態の不織布の評価〉
実際に不織布を製造し、分散指数や吸収性の評価を行った。不織布の製造条件や評価結果等を以下に説明する。図14は、実施例における不織布の構成及び平均吸光度の測定結果を説明する表であり、図15は、実施例Dにおける不織布を重ね合わせた場合における平均吸光度の測定結果を説明する表であり、図16は、実施例における不織布の人工尿による吸収性の評価結果を説明する表であり、図17は、実施例における不織布の人工経血による吸収性の評価結果を説明する表であり、図18は、実施例Dにおける繊維間の平均空間面積の測定結果を説明する表である。
【0098】
本発明における不織布を以下の条件で製造した。
(1)繊維構成
図14の表に記載した繊維構成により、実施例AからE、比較例A、Bの不織布を製造した。
【0099】
(2)製造方法
(a)図14の表に示した繊維構成を速度20m/分のカード機によって開繊し繊維ウェブを作成する。そして、繊維ウェブを幅が450mmとなるようにカットする。
(b)繊維ウェブをMD300mm×CD300mmにカットした状態で20メッシュの通気性ネット上に載せ、速度3m/分で搬送し、温度145℃(418.15K)、風速0.7m/s、長さ1.5mの加熱装置(オーブン)内を約30秒で加熱しながら搬送する。
(c)反ネット面の凹凸を押圧する。
【0100】
(3)高密度領域と低密度領域の混在比率(分散度)の測定
図14に示す表に記載の通り、各種不織布における分散指数を測定した。分散指数の測定結果も図14の表に示す通りである。
実施例AからEにおける分散指数は、287から396の範囲内であった。上述した分散指数の範囲である250以上であり450以下であった。ここで、比較例Aは熱融着性繊維のみで構成され平面方向において粗密が略均一な超低密度シートである。この比較例Aにおける分散指数は204であった。比較例Bも熱融着性繊維のみで構成され平面方向において粗密が均一な超高密度シートである。この比較例Bにおける分散指数は206であった。
また、図15の表に示すように、実施例Dの不織布を重ね合わせた不織布についての分散指数を測定した。図15の表の測定結果より、実施例D、実施例Dを2枚重ねた不織布である実施例D2及び、実施例Dの不織布を3枚重ねた不織布である実施例D3における分散指数は、それぞれ大きな差異がなく近似した範囲の値であった。これにより、本発明における不織布を複数枚重ねた不織布も、1枚の不織布と同様の吸収性を有することが期待される。
【0101】
(4)吸収性の評価
A人工尿による吸収性の評価
上述の評価方法に沿って、実施例A、E、比較例A、Bについて、人工尿による吸収性の評価を行った。図16の表に示される評価結果より、実施例A、Eをセカンドシートとして使用した吸収性物品は、吸収速度が速く、かつ、表面シートから吸収体への液体の移行(液ハケ速度)が速い。これに比べて、比較例Aは、吸収速度は速いものの、表面シートから吸収体への液体の移行は遅い。また、比較例Bは、表面シートから吸収体への液体の移行は速いものの、吸収速度は遅い。
上記より、実施例A、Eの不織布をセカンドシートとして用いた吸収性物品は、吸収速度が速く、かつ、表面シートから吸収体への液体の移行が速い。つまり、実施例A、Eの不織布は液体が透過する際の拡散性が低く、表面シートから吸収体への液体の移行を妨げない。
【0102】
B.人工経血により吸収性の評価
上述の評価方法に沿って、実施例D1、D2、比較例A、Bについて、人工経血による吸収性の評価を行った。つまり、実施例D1、D2、比較例A、Bを、吸収性物品におけるセカンドシートとして用いた吸収性物品の吸収性の評価を行った。ここで、実施例D1は、実施例Dにおける自由面(反ネット面、高密度領域が偏って形成されている面)を内側にして折り重ねた不織布であり、実施例D2は、実施例Dにおける自由面(反ネット面、高密度領域が偏って形成されている面)を外側にして折り重ねた不織布である。吸収評価用サンプルにおける表面シートとして、以下の表面シートを使用した。
【0103】
<表面シートの繊維構成>
上層に高密度ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートの芯鞘構造で、平均繊度3.3dtex、平均繊維長51mm、親水油剤がコーティングされた繊維Aを、下層側に高密度ポリエチレンとポリプロピレンの芯鞘構造で平均繊度3.3dtex、平均繊維長51mm、親水油剤がコーティングされた繊維Bと高密度ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートの芯鞘構造で、平均繊度2.2dtex、平均繊維長51mm、親水油剤がコーティングされた繊維Cとを50/50の割合で混合した繊維を使用した。上下層の比は16:9でトータルの目付は30gsmである。
【0104】
<表面シートの製造方法>
速度20m/分のカード機によって開繊し繊維ウェブを作成し、幅が450mmとなるように繊維ウェブをカットする。繊維ウェブをスリーブの上に載せ、速度3m/分の20メッシュの通気性ネット上に搬送する(上層側がメッシュに対面する)。その後、前記通気性ネットで搬送した状態で温度125℃、熱風風量10Hzで設定したオーブン内を約30秒で搬送させる。
【0105】
<評価用サンプル調製>
吸収評価用サンプルの試作内容は、上記表面シート、実施例D1、D2、比較例A、Bそれぞれを、長さ100mm×幅70mmにカットする。そして、厚みが5mmになるように調整した500g/m2のフラッフパルプを16g/m2のティッシュで挟んだ吸収コアに重ね、最も幅が狭い部分が38mmになるように設定したヒンジエンボスにて吸収コアと表面シートとセカンドシートである上記各不織布を接合して、評価用サンプルを調製した。
【0106】
<測定方法及び測定結果>
上記調製した各サンプルについて、上述の評価方法の説明に記載の手順に沿って吸収性の評価を行った。測定結果は、図17の表に記載の通りである。図17の表に示すように、実施例D1、D2における不織布をセカンドシートして使用した吸収性評価用サンプルは、比較例A、Bにおける不織布をセカンドシートとして使用した吸収性評価用サンプルに比べて、全般的に浸透時間は短く、全乾燥時間は短く、表面拡散面積も少ない。
【0107】
特に、実施例D1、D2における不織布をセカンドシートとして使用した吸収性物品サンプルは、比較例A、Bにおける不織布をセカンドシートして使用した吸収性評価用サンプルに比べて、特に全乾燥時間が短く、表面拡散面積が狭い。これらのことから、実施例の不織布をセカンドシートとして用いた吸収性評価用サンプルは、液体が透過する際の拡散性が低く、表面シートから吸収体への液体の移行を妨げない。
【0108】
また、表面の乾燥性に優れているといえ、更には繰りかえし乾燥性を有しているといえる。更に、表に示すように、実施例D1、D2における不織布をセカンドシートして使用した吸収性評価用サンプルは、比較例A、Bにおける不織布をセカンドシートとして使用した吸収性評価用サンプルに比べて、リウェット率が低い。本発明における不織布をセカンドシートとして使用した吸収性物品は、リウェット率が低い吸収性物品とすることができる。表面シートからの液体を好適に吸収体側へ移行させているといえる。
【0109】
ここで、比較例Aのような均一な低密度不織布は、吸収速度は速いが、表面シート中に液が入ってからの乾燥速度が遅い。また、低密度であるため毛管現象も起こりにくく、表面シート上に液が取り残されやすくなる。そのため、表面シートの乾燥性が悪い。また、比較例Bのような均一な高密度不織布は、吸収速度が遅くなり、表面シートの中に液が入りにくくなる。実施例における不織布を用いることで、低密度領域での吸収速度、高密度領域での液引き込み性により表面シートから吸収体への液体の移行を妨げないようにすることが可能である。
【0110】
(5)繊維密度(繊維の平均空間面積)の評価
実施例Dの高密度領域と低密度領域における繊維の平均空間面積を測定した。1)サンプル品(実施例D)の観察面を上にして観察台に載せる。2)所定の測定器(例えば、デジタルマイクロスコープ、品番:VHX−100、キーエンス株式会社製)を用いて、繊維面を撮影し、繊維の二値化画像を得る。3)二値化画像中の空間面積(繊維が存在しない領域の面積:μm2)を、二値化画像中に存在する空間の数で割った値が、繊維の平均空間面積(=空間面積/空間個数)である。
【0111】
図18の表に示すように、実施例Dの高密度領域の平均空間面積は低密度領域の平均空間面積よりも小さく、それぞれの平均空間面積が、前述の好ましい値の範囲内に含まれている。また、高密度領域と低密度領域の平均空間面積の差も、前述の好ましい範囲内に含まれている。そして、支持面側(一方側)の平均空間面積は自由面側の平均空間面積(他方側)大きく、支持面側(一方側)よりも自由面側(他方側)の方が、繊維密度が高くなることが分かる。
【0112】
即ち、前述の製造方法や繊維構成に基づいて製造した実施例Dは、高密度領域と低密度領域を有し、高密度領域と低密度領域は一方側から他方側に連通し、且つ、高密度領域において、一方側よりも他方側の方が、繊維密度が高くなっている不織布である。そのため、実施例Dは、上記の評価試験からも分かるように、高密度領域と低密度領域のそれぞれの性質を兼ね合わせた不織布となる。
【0113】
以上、前述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨に逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】比較例の不織布の断面図を示す図である。
【図2】図2Aは本実施形態の不織布の上面図を示す図であり、図2Bは本実施形態の不織布の斜視図を示す図である。
【図3】図3Aは本実施形態の不織布の断面図であり、図3Bは断面の拡大図である。
【図4】本実施形態の不織布の液体透過の様子を示す図である。
【図5】図5Aから図5Dは本実施形態の不織布の製造方法の概要を説明する図である。
【図6】本実施形態の不織布製造装置の一例を示す図である。
【図7】図6と異なる押圧方法を示す図である。
【図8】図6と異なる押圧方法を示す図である。
【図9】図6と異なる押圧方法を示す図である。
【図10】図6と異なる押圧方法を示す図である。
【図11】図6と異なる押圧方法を示す図である。
【図12】図12Aは本実施形態の生理用ナプキンの斜視図であり、図12Bは本実施形態の吸収性物品の断面図である。
【図13】図13Aから図13Dは表面シートに向けて排泄される液体の吸収挙動を示す図である。
【図14】実施例における不織布の構成及び平均吸光度の測定結果を説明する表である。
【図15】実施例Dにおける不織布を重ね合わせた場合における平均吸光度の測定結果を説明する表である。
【図16】実施例における不織布の人工尿による吸収性の評価結果を説明する表である。
【図17】実施例における不織布の人工経血による吸収性の評価結果を説明する表である。
【図18】実施例Dにおける繊維間の平均空間面積の測定結果を説明する表である。
【符号の説明】
【0115】
1 比較例の不織布、2 上層、3 下層、A コイル状繊維、
10 不織布、11 高密度領域、12 低密度領域、
20 支持部材、21 繊維ウェブ、22 熱収縮性繊維、
23 熱融着性繊維、24 繊維布、30 生理用ナプキン、
31 表面シート、32 吸収体、33 裏面シート、40 液体、
50 カード装置、51A 第1熱収縮性繊維、51B 第2熱収縮性繊維、
52 コンベア、53 コンベア、54 加熱装置、55 コンベア、
56 ロール、57A 第1搬送ロール、57B 第2搬送ロール、
58 巻取り部、59 ロール、60 加熱装置、61 ロール、
62 上側支持部材、63 下側支持部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱処理後の表面が凹凸形状となり、凸部である領域の方が凹部である領域よりも繊維が密集するように、熱融着性を有する熱収縮性繊維が配された繊維ウェブを、前記熱収縮性繊維が溶融可能、且つ、熱収縮可能な温度で加熱処理するステップと、
前記加熱処理するステップにより形成された前記凹凸形状の凸部が押しつぶされるように、前記繊維ウェブを厚さ方向に押圧するステップと、
を有することを特徴とする不織布製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の不織布製造方法であって、
前記加熱処理するステップにおいて、前記繊維ウェブを前記厚さ方向の片側から支持部材により支持した状態で加熱処理することを特徴とする不織布製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の不織布製造方法であって、
前記押圧するステップにおいて、前記繊維ウェブは前記温度で加熱された状態で押圧されることを特徴とする不織布製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の不織布製造方法であって、
前記押圧するステップにおいて、前記繊維ウェブの厚さが前記凹部の厚さ以下となるように前記繊維ウェブを押圧することを特徴とする不織布製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれに記載の不織布製造方法であって、
前記凸部である領域の繊維量は、前記凹部である領域の繊維量の2倍以上であることを特徴とする不織布製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の不織布製造方法であって、
前記加熱処理するステップにおいて、前記繊維ウェブは、前記厚さ方向の両側から前記温度の熱風が噴きあてられるように加熱処理されることを特徴とする不織布製造方法。
【請求項1】
加熱処理後の表面が凹凸形状となり、凸部である領域の方が凹部である領域よりも繊維が密集するように、熱融着性を有する熱収縮性繊維が配された繊維ウェブを、前記熱収縮性繊維が溶融可能、且つ、熱収縮可能な温度で加熱処理するステップと、
前記加熱処理するステップにより形成された前記凹凸形状の凸部が押しつぶされるように、前記繊維ウェブを厚さ方向に押圧するステップと、
を有することを特徴とする不織布製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の不織布製造方法であって、
前記加熱処理するステップにおいて、前記繊維ウェブを前記厚さ方向の片側から支持部材により支持した状態で加熱処理することを特徴とする不織布製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の不織布製造方法であって、
前記押圧するステップにおいて、前記繊維ウェブは前記温度で加熱された状態で押圧されることを特徴とする不織布製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の不織布製造方法であって、
前記押圧するステップにおいて、前記繊維ウェブの厚さが前記凹部の厚さ以下となるように前記繊維ウェブを押圧することを特徴とする不織布製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれに記載の不織布製造方法であって、
前記凸部である領域の繊維量は、前記凹部である領域の繊維量の2倍以上であることを特徴とする不織布製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の不織布製造方法であって、
前記加熱処理するステップにおいて、前記繊維ウェブは、前記厚さ方向の両側から前記温度の熱風が噴きあてられるように加熱処理されることを特徴とする不織布製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図4】
【図13】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図4】
【図13】
【公開番号】特開2008−266813(P2008−266813A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108601(P2007−108601)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
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