説明

不織布

【課題】不織布の表裏面の構造が異なっていながら一体的であり、不織布としての強度を維持しつつ柔軟性の良好な不織布を提供すること
【解決手段】本発明の不織布は、第1樹脂成分とそれより融点の高い第2樹脂成分からなる熱融着性複合繊維を含み、前記熱融着性複合繊維どうしが接する部分が融着されて繊維融着部が形成された不織布であり、該不織布は、前記熱融着性複合繊維が並列状態で固定化された部位を有する第1面、及び第2面を有し、第1面は、前記繊維融着部の個数に対する、繊維が並列状態で固定化された部位の数の割合(百分率)が5〜30%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱融着性複合繊維を用いた不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、並列に繊維が配列された不織布としては、トウ繊維のような一方向に配列した長繊維であるフィラメントを用い、間欠的にフィラメントどうしの接合部を形成することで、フィラメントの自由な動きを抑制せず、繊維本来の柔軟性を不織布において反映し、柔軟にしてクッション性に富む技術の提案がなされている(特許文献1参照)。また、トウ繊維のようなフィラメントを基材である不織布に固定して強度を高めるとともに凹凸構造を有する複合不織布を得ることも提案されている(特許文献2参照)。
これらの不織布においては、一方向に配置した繊維を部分的に固定することで、固定部間の繊維の自由度を高くして柔軟度を維持する構成とされている。
【0003】
このように、これまでに提案されている繊維を並列に配列した不織布では、不織布化には繊維同士を結合するある程度大きな接合部形成が必要とされた。また、接合部間には固定部を有しないため、不織布の強度や製造時の操作性に難があった。また、不織布の表裏面が同じ構造となるため、異なる機能を付与するには異なるシート物との接合が必要であり、接合部間では離間部分が形成されてしまう。
【0004】
これらの不織布とは別に、使用する繊維の太さによって繊維と繊維により形成される隙間の大きさを制御し、片面側から反対の面側に隙間の大きさを累進順序に制御する技術も提示されている(特許文献3参照)。しかしこの不織布は、繊維の太さにより不織布の表面特性が変化するため、柔軟性や肌触り等への対応が困難である。
また、熱によって伸長する繊維を用いて圧接着部間に凸部を形成する技術(特許文献4参照)も提示されている。この技術においては、凹部となっている圧接着部がドット状の比較的少ない領域を占有しているだけであることから繊維の伸長による凸形成が効果的におこなわれるが、繊維の伸長方向を規制することはなく、元々の繊維交絡状態のまま嵩高な構造が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−151152号公報
【特許文献2】特開2002−65736号公報
【特許文献3】特開平5−247816号公報
【特許文献4】特許第3989468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の課題は、不織布の表裏面の構造が異なっていながら一体的であり、不織布としての強度を維持しつつ柔軟性の良好な不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1樹脂成分とそれより融点の高い第2樹脂成分からなる熱融着性複合繊維を含み、前記熱融着性複合繊維どうしが接する部分が融着されて繊維融着部が形成された不織布であって、前記不織布は、前記熱融着性複合繊維が並列状態で固定化された部位を有する第1面、及び第2面を有し、第1面は、前記繊維融着部の個数に対する、繊維が並列状態で固定化された部位の数の割合(百分率)が5〜30%である不織布を提供することにより前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、不織布の表裏面の構造が異なっていながら一体的であり、不織布としての強度を維持しつつ柔軟性の良好な不織布を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態である不織布の一部を示す斜視図である。
【図2】図1に示す不織布の製造方法を示す模式図である。
【図3】図1に示す不織布及びその製造過程での状態を示す模式図であり、(a)はヒートエンボス後、熱風処理前の状態を示す断面図、(b)は不織布の断面図である。
【図4】(a)繊維が並行状態で固定された部位(並行融着部)を示す電子顕微鏡写真であり、(b)並行融着部以外の繊維融着部を示す電子顕微鏡写真である。
【図5】並列状態で融着した部分を示した電子顕微鏡写真であり、(a)は本発明の不織布の第1面の写真であり、(b)は本発明の不織布の第2面の写真であり、(c)は従来の不織布の第1面の写真である。
【図6】本発明の不織布の第1面を撮影した電子顕微鏡写真であり、(a)繊維同士が融着した融着交点をマーキングしたもの、(b)第1繊維とその交点をピックアップしたもの、(c)第2繊維とその交点をピックアップしたものである。
【図7】本発明の不織布の第1面を撮影した電子顕微鏡写真であり、(a)第3繊維とその交点をピックアップしたもの、(b)第4繊維とその交点をピックアップしたもの、(c)第5繊維をピックアップしたものである。
【図8】繊維間距離の計測方法を示す図であり、(a)は、図7(c)に示した第1〜第5繊維を示す線を繊維の太さに調整した状態を示す図、(b)は、太さ調整後の繊維を抽出した図、(c)は、それらの繊維に囲まれた領域を示す図である。
【図9】(a)並列融着部、及び(b)融着点の数え方を示す図である。
【図10】ジグザグ構造を形成している繊維交点を通る繊維を示した図であり、(a)は本発明の不織布の第2面の写真であり、(b)は本発明の不織布の第2面の写真からジグザグ構造をピックアップした図であり、(c)は本発明の不織布の第1面の写真より繊維をピックアップした図であり、(d)は従来の不織布の第1面の写真より繊維をピックアップした図である。なお、ジグザグ構造は太い線で示している。
【図11】本発明の他の実施形態を示した電子顕微鏡写真であり、(a)は不織布の第1面の写真であり、(b)同じ不織布の第2面の写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の不織布の第1実施形態の斜視図が示されている。
第1実施形態の不織布10は、単層構造をしている。不織布10は、第1面10a及び第2面10bを有している。不織布10は、第2面10bがほぼ平坦となっており、第1面10aが多数の凸部11及び凹部12を有する凹凸形状となっている。凹部12は、不織布10の構成繊維がエンボス加工により圧接着されて形成された圧接着部15を含んでいる。凸部11は凹部12間に位置している。凸部11内は、不織布10の構成繊維で満たされている。繊維を圧着する手段としては、熱を伴うか又は伴わないエンボス加工、超音波エンボス加工などが挙げられる。
【0011】
一方、圧接着部15を除く繊維と繊維が接する部分における繊維と繊維の固着は、後述する繊維の融着成分によってなされており、この融着によって実質的に不織布とされている。
【0012】
凸部11と凹部12とは、不織布の一方向(図1中X方向)に亘って交互に配置されている。更に当該一方向と直交する方向(図1中Y方向)に亘っても、交互に配置されている。凸部11と凹部12とがこのように配置されていることで、不織布10を例えば使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの使い捨て衛生物品の分野における表面シートと用いた場合に、着用者の肌との接触面積が低減して蒸れやかぶれが効果的に防止される。
【0013】
本実施形態の不織布10における圧接着部15は、ヒートエンボス加工によって形成された熱圧着部であり、図1に示すように、格子状に形成されている。
より具体的には、圧接着部15として、互いに平行に且つ所定の間隔で形成された多数本の第1の線状エンボス15aと、互いに平行に且つ所定の間隔で形成された多数本の第2のエンボス15bとを有している。第1のエンボス15aと第2の線状エンボス15bとが15〜90度程度の角度をなして互いに交差している。第1の線状エンボス15aどうし間の間隔及び第2の線状エンボス15bどうし間の間隔は、2〜20mm、特に3〜10mm程度とすることが好ましい。線状エンボスは、本実施形態のように連続線状のものに代えて、ドット間の距離が5mm以下、好ましくは2mm以下の破線線状のもの等であっても良い。不織布10には、圧接着部15によって囲まれた区画領域が形成されており、各区画領域の中央部は、該区画領域を囲む圧接着部15ないし凹部12に対して相対的に隆起して凸部11となっている。個々の区画領域22の面積は、0.25〜5cm2、特に0.5〜3cm2あることが好ましい。
【0014】
本実施形態の不織布10は、構成繊維として、第1樹脂成分とそれより融点の高い第2の樹脂成分からなる熱融着性複合繊維を含んでいる。また、圧接着部15以外の部分に、その熱融着性複合繊維どうしが接する部分が融着されて形成された繊維融着部〔図4(a)、(b)参照〕が形成されている。
【0015】
本実施形態の不織布10は、例えば芯鞘構造繊維のように熱融着成分(第1樹脂成分)とそれより融点の高い高融点成分(第2樹脂成分)よりなる繊維のウエブ内に、熱によって伸長する繊維が配されていることによって、該熱融着成分により繊維どうしの接する部分が融着されて繊維融着部が形成される際に、第1面10aと第2面10bとに異なる構造が生じている。即ち、第1面10aにおいては、繊維が並列に配列し前記融着成分による融着によって並列状態が固定化されている部分がより多く存在しており、結果として繊維間の隙間の距離(以下繊維間距離とする)が大きくなり、第2面10bにおいては、並列状態の融着は少なく大部分が繊維交点での融着に留まる構造体であるか、平面的に蛇行した(波状にうねった)繊維が含まれており、繊維間距離が相対的に小さくされている。一方、第1面10aと第2面10bの間においては、第1面および第2面の構造を有しないか、存在量が少ないため、繊維間距離が両者の中間にあると思われる。
【0016】
このような特異な構造は、熱によって伸長する繊維が配されていることのほかに、ウエブから不織布へと至る工程において幾つかの抑制が繊維に働く事によって形成されていると推定している。
本実施形態の不織布10においては、繊維が熱によって伸長する前に、原料として用いるウエブにエンボス加工により圧縮凹部(圧接着部15)を形成してあり、しかも圧縮凹部の面積率は3〜30%程度であるが、ドット状、破線状、連続線状であるに係わらず圧縮凹部によって0.5〜5cm2程度の取り囲まれた領域が形成されている。圧縮凹部の底面がウエブの断面視における第2面10b寄りに形成されることと、第2面10b側には搬送支持体などが存在して、第2面10b側への隆起が第1面10a側への隆起よりも抑制されることによって、熱による伸長性が発現した場合、繊維は取り囲まれた領域内で伸長するしかなく、第1面側の立体的な方向に伸びるか、平面的に折畳まれると考えられる。
【0017】
第1面10aにおける繊維が並列に配列した形状は、熱伸長性の繊維が配されたウエブの厚み方向の何れの位置においても繊維の長さが伸び、元来与えられていた捲縮も解除されることによっておこっている立体化の動きが第1面10aにおいて最大限のばされ、その状態においてさらに熱融着性成分が繊維の交点において融着性を発現するとともに熱融着成分の樹脂が集まろうとして繊維自体を引き寄せることで交点から並列状態が作り出されると考えられる。一方で、第1面より厚さ方向に内面部分では、繊維の伸長および繊維間の融着が形成されるものの、周囲に他の繊維があることから、繊維が自由には動けず、交点付近での融着にとどまっていると見られる。
【0018】
不織布10は、第1面10aに、熱融着性複合繊維が並列状態で固定化された部位(繊維が並列状態で固定化された部位)を有している〔図4(a)参照〕。
ここで、「並列状態で固定化された部位」とは、繊維の交差角度が30°未満で、繊維の融着部分の長さL1が当該融着部分の太さP1の2倍以上になっている部分をいう。このような繊維の並列状態は、通常の繊維交点における繊維の太さの1から2倍程度の融着部分形成に比べ繊維の太さの3倍以上にも達する。繊維の太さ3.3dtex×51mmの芯鞘構造繊維(芯成分:ポリエステル、鞘成分:高密度ポリエチレン)に対し、約2mm×1.5mmの範囲での電子顕微鏡を使った観察による並列状態で固定された部位の検出頻度が通常の繊維を用いた場合0〜4ヶ所であるのに対し、本発明では、5ヶ所以上、より多くは8ヶ所以上確認され、並列で固定(すなわち融着)される長さも長く、繊維の太さに対して3〜10倍、好ましくは5〜10倍(最大長さにおいては繊維の太さの10〜20倍)となされている。
【0019】
不織布10の第1面10aは、繊維融着部の個数に対する、繊維が並列状態で固定化された部位の数の割合(百分率)が5〜30%である。当該割合が30%以下であると、繊維と繊維の融着が少なく、繊維の動きの自由度が高いため、不織布の柔らかさ・肌触り等に優れる。他方、当該割合が5%以上であると、繊維と繊維の隙間(繊維間距離)が大きくなる部位を全体的に形成することが可能となるため、圧力等の外圧による構造変化が起こり難く、特に吸収性物品用途では、液残り性や液通過性等の吸収性の向上が容易な構造体となる。このような観点から、前記割合(百分率)は、5〜30%であることが好ましく、10〜20%であることがより好ましい。
なお、繊維融着部の個数は、「繊維が並列状態で固定化された部位」に該当する繊維融着部と、「繊維が並列状態で固定化された部位」に該当しない繊維融着部との合計である。また、図4(b)は、「繊維が並列状態で固定化された部位」に該当しない繊維融着部の典型的な一例である。
【0020】
また、不織布10の第1面10aは、第2面10bに比して、繊維の融着点の数が少ないため、繊維が並列状態で固定化された部位(以下、並列融着部ともいう)の数が同じ程度であっても、並列融着部の割合は多くなる〔図4(a)(b)及び図5(a)(b)参照〕。不織布構造への影響度の観点から、並列融着部の割合が高いことで全体構造制御の役割を果たせると考えているが、吸収性物品への適用の観点からは、並列融着部が全体的に分散配置されて不織布全体が機能を発現できる構造として、並列融着部の割合及び並列融着部の数の両方が高いことが好ましい。
不織布10の第1面10aは、繊維融着部の個数に対する、繊維が並列状態で固定化された部位の数の割合(百分率)が、第2面10bの対応する割合に対して、5%以上大きいことが好ましく、10%以上大きいことがより好ましい。不織布10の第2面10bの対応する割合は、0〜5%、特に2〜4%であることが好ましい。また、第2面における並列融着部の倍数(平均長さ)は、2〜5倍であることが吸収性を向上させ得る繊維間距離を形成できる点から好ましい。なお、図5は、並列融着部、及びそれ以外の繊維融着部を示す電子顕微鏡写真であり、並列融着部は、その上ないし近傍に略同じ長さの長方形を描くことにより示され、並列融着部以外の繊維融着部はその上に小円を描くことにより示されている。
【0021】
第1面が並列状態で固着された部位を多く有することによって、繊維間の間隔が広がり、疎な空間を形成しやすい。そのため、得られる不織布は柔軟性やクッション性が良好となる。繊維間の間隔は、(並列融着部平均長さ、並列融着部総長さで示される)並列状態で固着された部位の数が増えるまたは固着された長さが長くなると広がる傾向を有する。一方、第2面では、並列状態が第1面より少ないまたは、融着された長さの総量が少ないことにより、繊維間の間隔は第1面より小さいため、繊維の交差部分が第1面にくらべ多くなっている。このため、第2面では不織布としての強度を得やすい構造となっている。さらには、平面的に折畳まれた構造の繊維が形成されやすいため、より並列状態での固着が起こり難いだけでなく、交差部分と交差部分の間に繊維が折畳まれた構造(繊維が曲がった構造)を有しやすく、柔軟性が損なわれ難い。また、第1面と第2面における繊維間の間隔が上記のように異なることによって、吸収性物品の表面シートとして、第1面を肌当接面側、第2面を非肌当接面側に配置することで、液の移動の起こりやすい毛管勾配が形成されやすい。
【0022】
第1面と第2面における繊維の結合状態の観察には、走査型電子顕微鏡を使用し、繊維と繊維の並列状態での固定が判別できる程度の大きさで画像を取り込み、2mm×1.5mmの範囲で、個数及び固定距離を測定する。
図5には本発明の一実施形態である不織布の第1面及び第2面、並びに従来繊維による不織布の第1面の拡大写真を示している。前述した並列融着部は、本発明の一実施形態の不織布における第1面では10ヶ所〔図5(a)〕、同じ不織布の第2面では4ヶ所〔図5(b)〕、従来繊維による不織布では3ヶ所〔図5(c)〕であり、同じ面積で比較したときに、前述した並列融着部が、第1面に、第2面及び従来不織布それぞれよりも多く形成されている。異なる面積では同じ面積となるように換算することにより比較できる。
また、繊維の太さが異なる不織布の比較では、基準となる繊維の太さを決め、基準とした繊維の太さに換算する。(本実施形態では繊維径が25μmであり、比較形態が28μmであるため、25μmを基準径として算出した。表1参照)
【0023】
また、本実施形態の第1面における並列状態の最大長さは341μmであり、平均長さは160μm、総長さ1598μmであった。一方、第2面及び従来不織布では最大でも各々134μmと低く、また、平均長さ、総長さも低い値であった。以上のことから、従来技術あるいは繊維の伸長が抑制された場合であっても、並列状態の形成は100μmを超えない程度は形成されるが、100μmを超える形状は形成されにくく、最大長さが150μm、より好ましくは300μmを超える最大値を有することが、並列状態形成による効果を発現するために好ましいと考えられる。
【0024】
前述したように、第1面と第2面では繊維の配列に違いが見られ、このことが繊維間距離の違いとなって現れている。繊維間距離の計測は、特開平5−285171号記載の「繊維空間径の測定」に準ずるが、以下に説明する手順でおこなうことが好ましい。
【0025】
繊維間距離測定用の画像は、走査型電子顕微鏡(例えばJEOL製)を使用することが焦点深度や繊維とその間の隙間の特定の容易さから好ましく、画像解析装置としてはNEXUS製NEWQUBE(ver.4.20)を使用し(CCDカメラやスキャナーを通して、あるいは電子データ等により直接)画像を取り込み、電子顕微鏡画像に表示されている寸法表示(図6及び図7では100μm)をキャリブレーションに使用し、各計測を実施した。なお、第1面10aは、該面10aに垂直な方向から該面10a(好ましくは圧縮凹部から最も離れた凸部11の中央部)を撮像し、第2面10bは、該面10bに垂直な方向から該面10b(好ましくは圧縮凹部から最も離れた凸部11の中央部に対応する部分)を電子顕微鏡で撮影した。
本発明の表面シートの第1面の電子顕微鏡の撮影画像である図6及び図7を例として説明すると、第1のステップで融着交点のマーキング、第2のステップで交点の順列化と繊維の配列のための線形化、第3のステップで線形線の太さと形状の調整、第4のステップで画像解析ソフトによる二値化と繊維間距離の算出で進める。また、画像より交点のマーキングと選別、及び繊維の配列には、マイクロソフト社で提供されているマイクロソフトオフィスパワーポイント2003を使用した。
【0026】
第1のステップでは、図6(a)に示すように、繊維どうしが融着した部分(繊維融着部、以下、「融着交点」ともいう)を中抜き円でマーキングしている。融着は、繊維の交差位置において図4(b)のように繊維の太さが太くなっているか交点において繊維の形状が喪失している(繊維の境界線が見えない状態や繊維の急な変形等)ことを判断基準とした。このような繊維の変化と不織布構造を捉えるため、20μm程度の太さの繊維による不織布では、2mm×1.5mmの範囲の大きさが好ましい。また、同一視野を傾斜方向から撮影した画像を使用すると、繊維交点が融着している様子が確認できるので補足的に活用するともできる。
【0027】
第2のステップでは、マーキングした融着交点をA〜Dにランク分けし、図6(b)〜図7(c)に示すようにして、繊維間距離を計測するための繊維の選定をおこなった。
ランク分けは、最上部にある繊維の融着交点を交点Aとし、交点Aにおいて上(第1面の表面側)となる繊維を仮に繊維Aとして選別する。仮の繊維Aは、通常複数の融着交点を有するから、繊維A上の融着交点をマーキングし、仮の繊維Aにおける融着交点の80%以上が融着交点で上となっていた場合、最上位の繊維である繊維Aとする。同様の手順で測定画面上の最上位繊維である繊維Aとその交点Aを選別する。
繊維Aを有していた不織布では、その交点Aは必ず他の繊維と融着しており、この交点Aで繊維Aと融着し繊維Aではない繊維を繊維Bとし、交点A以外の繊維Bの融着交点を交点Bとし選別する。交点Bで融着交点を有する繊維のうち、繊維A、B以外の繊維を繊維Cとし、以後同様に繊維Eまでを選別する。
最上部にある繊維は、第1繊維1Aとし、画像内の融着交点の80%以上で上部に位置する繊維とする。なお、上記手順において融着交点が上である割合が80%未満であった場合は、測定サンプルでは繊維A及び融着交点Aを有さず、繊維Bが第1繊維、繊維Eが第4繊維となる。また、「融着交点の80%以上で上部に位置する」とは、ある一本の繊維に着目したときに、その繊維の長手方向に存する複数の融着交点(他の繊維との融着点)のうちの80%以上において、その繊維が、当該他の繊維の上を通っていることを意味する。また、同一視野を傾斜方向から撮影した画像を使用すると、繊維交点が融着している様子が確認できるので補足的に活用するともできる。
【0028】
第2繊維1Bは少なくとも一箇所の融着交点Aを有している。第3繊維1Cは、融着交点Aがなく、融着交点Bを少なくとも一箇所有する繊維とする。第4繊維1Dは、融着交点A及び融着交点Bを有さず、第3繊維1Cとの融着交点Cを少なくとも一箇所有する繊維であり、第5繊維1Eは、融着交点A,B,Cを有さず融着交点DとEを有する繊維である。融着交点Dより繊維が延びていても、融着交点Eを有さない場合、第5繊維とはしない〔図7(c)参照〕。このようにして、第1〜第5繊維1A〜1E(または第1〜第4繊維)を決定する。
【0029】
繊維及び交点のマーキングは、以下の方法で実施した。
繊維については、選別中では電子顕微鏡の画像上の繊維より充分細い破線を使用して繊維を同定し、交点については抜き円の内部を繊維と同じ色とすることで、同定されていないもの及びランクの区別をおこなった。特に第1繊維1Aについては、交点の割合が重要であるため、交点が上である場合と下である場合で、円の外側の色を変えて区別した。繊維と交点が同定できたものについては、破線を実線とし、異なる繊維の同定へ進んだ。
(本実施形態の計測時は、第1繊維及び交点を赤、第2繊維及び交点を青、第3繊維及び交点を桃色、第4繊維及び交点を緑、第5繊維及び交点を黒としたが、図6及び図7では、第1繊維の交点を○とし、上である交点を●とし、第2繊維の交点を□、第3繊維の交点を◇、第4繊維の交点を△、第5繊維の交点を×とした。また、繊維と交点を区別し易くするため、繊維の太さ程度にパワーポイントの線を太く表示し、(b)第1繊維(破線)とその交点、(c)第1繊維(実線)第2繊維破線、(d)第1/第2繊維(実線)第3繊維破線・・・とした。)
【0030】
第3のステップでは、繊維の太さ相当まで線の太さを変形させて、繊維のネットワーク形状を得た。〔図8(a)、(b)参照〕。
【0031】
得られた繊維ネットワーク図は、画像解析ソフトに取り込んで処理した(第4のステップ)。処理手順は、二値化による繊維の選別、次いで二値画像の逆転による繊維により形成される空間投影形状の特定、そして、繊維で囲まれていない周辺部位の除去の後、繊維により囲まれた個々の面積を測定した〔図8(c)参照〕。面積測定時にノイズである微小な点を除去するため、本計測では1〜5画素(ピクセル)を除去し、平均面積を計測した。得られた平均面積より、円と見做した場合の円の直経を算出し、この値を繊維間距離とした。
【0032】
上述した、不織布10の第1面10a又は第2面10bにおける、繊維融着部の個数に対する、繊維が並列状態で固定化された部位の数の割合(百分率)は、上述した好ましい繊維間距離の測定方法より得た融着交点より求める。
繊維間距離を計測する際に特定した交点のうち、繊維の交差角度が30°未満で、融着部分の長さが繊維太さの2倍を超えている交点を並列融着部とし計測をおこなった。図9では、10ヶ所の並列融着部を矩形で示し〔図9(a)〕、並列融着部を含む交点は67ヶ所〔図9(b)〕であった。
【0033】
本発明における第1面の平均繊維間距離は、100〜150μmが好ましく、第2面の平均繊維間距離は60〜120μmが好ましく、第1面の平均繊維間距離より第2面の平均繊維間距離を差し引いた平均繊維間距離の差は、20〜70μm、特に30〜50μmであることが、不織布の強度と形状安定性による風合いの点から好ましい。同様のエアスルー法で形成した不織布の場合、第1面と第2面にエアスルー法により得た平均繊維間距離の差は20μmより小さく、平均繊維間距離も小さい。第1面では、繊維間距離が大きいことから、繊維によって区切られる空間投影面積の数も少なく、第2面より疎な構造となっていることがこの点からも理解できる。
【0034】
本発明における不織布は、図3(b)に示すように、第1面10a側に形成される凹部12aが第2面10b側に形成される凹部12bより深くなされていることが好ましい。凹部を形成する方法としては、熱エンボス法、超音波エンボス法による繊維同士の融着部が形成される方法が好ましく、通常の融着繊維よりなる不織布にこれらの方法で凹部を形成しても凹部の深さは、片側面側のみに凸状型による凹部形成をおこなった場合であっても殆ど同じ深さの凹部が形成される。しかし、本発明品では、第1面と第2面における繊維の融着状態に違いが生じているため、第1面側から凸状型による凹部形成をおこなうと、第1面側の凹部が第2面側よりも深い凹部となる。これは、第1面側が疎な構造であること、第2面側の融着点数が多いこと、第2面側がより均一な構造であることにより、このような構造になると考えられる。
【0035】
凹部の計測は、各々の頂部(最大高さ部分)を通る不織布の断面を拡大し、第1面の頂部から凹部表面までの高さd1、及び第2面の頂部から凹部表面までの高さd2を計測することでおこなう〔図3(b)参照〕。計測には、電子顕微鏡を使用しても良いが、観察の容易さから、キーエンス製VH−3000マイクロスコープによる拡大と、キャリブレーション設定後の2点間計測法による計測をおこなった。
【0036】
第1面の凹部の深さd1は不織布厚みTの60〜99%、第2面の凹部の深さd2は不織布厚みTの0〜40%であることが好ましく、第1面の凹部12aの深さd1は0.3〜1.5mm、第2面の凹部12bの深さd2は0〜0.3mmであることが、柔軟性及びクッション性の点から好ましく、吸収性物品の表面シートとしては低液残り性と低拡散性、さらには液の移行性の点から好ましい。
【0037】
本実施形態の不織布10は、その構成繊維の原料として、加熱によってその長さが伸びる繊維(以下、この繊維を熱伸長性繊維という)を用いている。熱伸長性繊維としては、例えば加熱により樹脂の結晶状態が変化して伸び、それとともに繊維に形成された捲縮加工の捲縮が解除されて見かけの長さが伸びる繊維である。本実施形態の不織布10に特に好ましく用いられる熱伸長性繊維としては、鞘成分の融着条件下で芯成分の樹脂の伸長が行われる組合せが好ましく、具体的には、鞘成分として高密度、中密度、ないしは直鎖状のポリエチレンと、ポリプロポレンやポリエステルの組合せが好ましい。
以下に、この熱伸長性複合繊維を用いた不織布10の好ましい製造方法を、図2を参照しながら説明する。
【0038】
先ず、所定のウエブ形成手段(図示せず)を用いてウエブ20を作製する。ウエブ20は、熱伸長性複合繊維を含むものであるか、又は熱伸長性複合繊維からなるものである。ウエブ形成手段としては、例えば(a)カード機を用いて短繊維を開繊するカード法、(b)溶融紡糸された連続フィラメントを直接エアサッカーで牽引してネット上に堆積させる方法(スパンボンド法)、(c)短繊維を空気流に搬送させてネット上に堆積させる方法(エアレイ法)などの公知の方法を用いることができるが、繊維の伸長性の発現の容易さと伸長性発現後の構造形成の容易さの点から、(a)のカード法を用いることが好ましく、使用する繊維の長さは、25〜70mm程度であることが好ましい。
【0039】
ウエブ20は、ヒートエンボス装置21に送られ、そこでヒートエンボス加工が施される。ヒートエンボス装置21は、一対のロール22,23を備えている。ロール22は周面に多数の凸部が形成されている彫刻ロールである。ロール23の受けロールであり、基本的に表面が平滑であり、ロール22との間でウエブ20を加圧する。各ロール22,23は所定温度に加熱可能になっている。
【0040】
ヒートエンボス加工は、ウエブ20中の熱伸長性複合繊維における低融点成分である融着成分の融点以上でおこなわれ、高融点成分の融点未満の温度で行われることがより好ましい。またヒートエンボス加工において、不織布の第1面となる側を凸部を有するロール23側とし、熱伸長繊維に熱が加えられないようにすることで、熱伸長性繊維の伸長開始温度未満の温度で行われる。このヒートエンボス加工によって、ウエブ20中の熱伸長性複合繊維が圧接着される。これによってウエブ20に所定のパターンで圧接着部15が形成されて、ヒートボンド状ウエブ24となる。
本実施形態における熱圧着部(圧接着部)は、前述した並列状態を形成するための繊維の起立基点として形成されるため、個々の圧接着部は面積が0.1〜3.0mm2程度の円形、三角形、矩形、その他の多角形、それらの組み合わせ、あるいは圧接着部は幅が0.1〜3.0mm程度の連続した直線、曲線であり、ヒートボンド状ウエブ24の全域に亘って規則的にかつ熱圧着部によって囲まれた領域を形成するよう配置されている。但し、立体賦形を発現し、繊維の並列状態を形成するための、圧接着されていない状態の熱伸長性複合繊維がある程度存在する囲まれた領域を形成している必要があり、エンボス率は1〜20%、更に好ましくは2〜10%であることが不織布の第1面と第2面の構造の違いを効果的に形成し得る点から好ましい。ここで、囲まれた領域とは、伸長繊維の伸長性が平面方向に分散されない程度に繊維が固定された部分であり、繊維の配向方向をさえぎるよう繊維の配向方向に連続する曲線または直線が形成されていることが好ましい。
【0041】
図3(a)にはヒートボンド状ウエブ24の断面の状態が模式的に示されている。ヒートエンボス加工によって、該不織布24には多数の圧接着部15が形成されている。圧接着部15においては、熱及び圧力の作用によって熱伸長性複合繊維が圧着されているか、或いは溶融固化して融着しており、第1面及び第2面に凹部が形成されている。一方、圧接着部15以外の部分においては、熱伸長性複合繊維は第1面において圧着・融着等を起こしていないフリーな状態になっている。なお、図3(a)及び図3(b)において、第1面は上面側であり、第2面が下面側である。
【0042】
再び図2に戻ると、ヒートボンド状ウエブ24の第2面では、伸長性を少し発現した弱伸長状態となる程度に図2における平滑ロール23が加熱されているか暖められていることが好ましい。第2面において弱伸長状態とされることで、ウエブ構造が第2面において密となり第1面と第2面の表面構造を変化させることができる。ここで弱伸長状態とは、完全に伸長性が発現した場合の10〜50%の伸長性である意味であり、元の繊維長の3〜10%程度伸長させることが製造工程における安定性及び不織布構造の制御のし易さから好ましく、その点から平滑ロール23の表面温度は繊維の融着性成分の融点以下であり、融点の20℃以下であることが好ましい。具体的には繊維の融着成分として融点120〜140℃のポリエチレンでは、60〜100℃である。また、第2面の表層から第1面側への弱伸長状態の制御には、平滑ロール23との接触時間を制御する、即ち平滑ロールへの抱き状態を制御すればよい。
【0043】
このようにして得られるヒートボンド状ウエブ24は熱風吹き付け装置26に搬送される。熱風吹き付け装置26においてはヒートボンド状ウエブ24にエアスルー加工が施される。即ち熱風吹き付け装置26は、所定温度に加熱された熱風28がヒートボンド状ウエブを貫通するように構成されている。さらに熱風のウエブ内の貫通性向上とウエブをネット面に抑えておく点から、ネット面側には吸引装置を併用することが好ましい。
【0044】
エアスルー加工は、ヒートボンド状ウエブ24中の熱伸長性複合繊維が加熱によって伸長する温度で行われる。且つヒートボンド状ウエブ24における圧接着部15以外の部分に存するフリーな状態の熱伸長性複合繊維どうしが接する部位で熱融着する温度で行われる。尤も、斯かる温度は熱伸長性複合繊維の高融点成分の融点未満の温度で行う必要がある。
【0045】
このようなエアスルー加工によって、圧接着部15以外の部分に存する熱伸長性複合繊維が伸長し捲縮も伸ばされている。熱伸長性繊維はその一部が圧接着部15によって固定されているので、伸長するのは圧接着部15以外の部分である。エアスルー加工では、金網などの支持体27上にウエブを積載するため、ヒートボンド状ウエブ24の支持体27側となる第2面側は、前述した弱伸長状態による構造の変化による抑制に加え、エアスルー加工時の熱風吹き付けや吸引による抑制、ウエブ自体による抑えつけ等の要因により、繊維が伸長し捲縮が解除されても、繊維が直線的になりにくく平面的に蛇行するように形成されやすく、繊維同士は交差した状態で接しやすくなると推定している。このような蛇行は、弱伸長状態とされた後におこるため、伸長の度合いがそれほど大きいものではなくウエブ構造を乱す程強い力とはならず、第2面は平坦に保たれやすい。また、圧接着部が多く形成されるほど繊維が固定されるため、蛇行の程度はより大きくなる傾向にある。
【0046】
一方、ヒートボンド状ウエブ24の支持体27と反対側である第1面側は、第2面側のような抑制がなく、繊維は厚み方向に伸長し捲縮が解除されて直線的な形状となり、近接した繊維であって同じような方向に延びている繊維が融着成分の溶融によって集まりやすいと見られ、その結果、繊維と繊維が並列状態で固定される部分が第1面において第2面より多いと推定している。
【0047】
このため、第1面においては厚み方向に隆起した凸構造が形成され、繊維と繊維が並列状態で固定されるため、第1面においては繊維と繊維により形成される隙間が大きく、平面的に蛇行し繊維と繊維が交差し易くその交差数も多くなる第2面では繊維と繊維の隙間は小さくなる。第1面から第2面になるに従い伸長性及び捲縮の解除に何らかの制約がかかりやすくなるため、この繊維と繊維の隙間は小さくなる傾向がある。なお、図3(b)のような厚み方向への隆起は、圧接着部の形成によってより起こり易くされている。
【0048】
以上のように、不織布10においては、圧接着部15において、不織布10の構成繊維である熱伸長性複合繊維が圧接着されており、圧接着部15以外の部分、具体的には主として凸部11において、熱伸長性複合繊維どうしの交点が圧接着以外の手段であるエアスルー方式によって熱融着で接合され、第1面側では繊維と繊維が並列状態で固定された部位が第2面より多く形成されている。その結果、第1面の繊維と繊維の隙間は第2面よりも平均であっても最大値であっても大きくなされており、不織布10は様々な用途に利用できる。例えば、清掃用のシートとしては、第2面による捕集性と第1面による捕集能の高さに加え、立体構造によるクッション性や不織布の柔軟性によって、対象物への密着性を高めることができる。また、吸収性物品用の表面シートとしては、第1面を表面側とした場合の凹凸形状による柔軟性や接触面積の低下、そして第1面から第2面への液の毛管勾配による伝達性の良さ、第2面の平滑性による吸収面との接触が良好に保たれることによる吸収性に優れたものとなる。
【0049】
本発明の実施形態の不織布における第2面では、繊維の伸長及び捲縮の解除によって平面的に折畳まれることによる蛇行する現象がみられるが、凹部における圧接着部付近にある繊維はこのような蛇行現象が見られない。蛇行現象が発現しない長さは30〜130μmであり、繊維の太さの1.2〜5倍である。このような構造が形成されるのは、圧接着部によって繊維の一端が固定されているため、固定されている部位から離れないと繊維が蛇行できるほどの自由度が確保できないためと考えられ、このような構造によって、吸収性物品の表面シート用途では、繊維と繊維のランダムな隙間が形成されにくく、圧接着部に向かう(あるいは離れる)構造となることから、第2面における圧接着部からの液の移動を起こしやすい構造となる。特に、圧接着部が吸収体と直接接するように構成された場合、より液の移動効果を高めることができる。
【0050】
第1面10aに、第2面10bより多くの並行融着部を形成させる観点から、エアスルー加工は、エンボス加工により押圧された部分が第1面側に凸部をより形成するよう工夫した状態で行うことが好ましい。凸部をより形成しやすい工夫としては、ロール23として周面が柔軟なロール、例えばコットンロールを用いたり、エンボス装置から熱風吹き付け装置へのウエブ24の搬送を第2面10b側からの吸引を行いつつ行ったり、エンボス直後に吸引状態を維持しながらエアースルー処理したりすること等が挙げられる。
【0051】
図10には、図5〜図8より導いた融着交点にかかわる繊維のうち、蛇行状態にある繊維を太くなして示した(a)第2面における繊維の配置と(b)第2面における角度の図を示している。円は直経100μm(繊維の太さの4倍)で、円の中心を蛇行部分の頂部においたとき頂部から円と繊維の交点を結んだときの角度を繊維の曲がりによるなす角度としており、その角度が100°以下の部分を示している。第2面における繊維は、計測範囲内において5ヶ所以上の繊維の曲がりによるなす角度を有するが、図10の(c)第1面、及び(d)通常繊維による不織布では、複数個所形成されていない。
【0052】
また、従来不織布における圧接着部では、繊維が集まりランダムな隙間が多数形成されるが、本発明の不織布における第1面では、圧接着部から繊維は立ち上がった構造とされており、厚み方向に繊維が離れた構造をとりやすく、第2面と同様に繊維と繊維のランダムな隙間が形成されにくく、液を保持し難い構造となる。
【0053】
第1面における繊維同士の並列融着部は、数が多いだけでなく繊維の太さに比して長い。従来の不織布においても部分的に並列状態となった固定部分を有するが、解繊後の繊維は3次元的にランダムに配置されることや繊維の捲縮によって、隣接する繊維同士が長い距離で並列する状況はほぼできない。
【0054】
先に述べた通り、不織布10は熱伸長性複合繊維を含んでなるものであるか、又は熱伸長性複合繊維からなるものである。不織布10が熱伸長性繊維を含んでなるものである場合、不織布10に含まれる他の繊維としては、熱伸長性複合繊維の熱伸長発現温度よりも高い融点を有する熱可塑性樹脂からなる繊維が挙げられる。当該他の繊維は、不織布10中に好ましくは5〜50重量%、更に好ましくは20〜30重量%含まれる。一方、熱伸長性複合繊維は、不織布10中に50〜95重量%、特に70〜95重量%含まれることが、第1面及び第2面における構造の違いを実現しやすい点で好ましく、第1面の構造の形成をより容易にする点から、特に好ましくは、不織布10は、熱伸長性複合繊維からなる。
【0055】
熱伸長性複合繊維の詳細について説明すると、該熱伸長性複合繊維は、芯鞘構造型の複合繊維であり、芯構造と鞘構造の重心が略同じである断面構造であることが好ましい。本実施形態で用いる熱伸長性複合繊維は、伸長するとともに繊維の捲縮が解除されるものであることが、上述した構造の不織布を得るための繊維として好ましく、芯構造と鞘構造の重心がずれている偏芯型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維では、熱風による不織布化において繊維自体による捲縮が発現しやすいためである。
【0056】
熱伸長性複合繊維は、第1樹脂成分の融点又は軟化点より10℃高い温度での伸長率が0.5〜20、特に3〜10%であることが、凹凸形状が顕著な不織布10が得られる点から好ましい。
【0057】
このような熱伸長率を有する熱伸長性複合繊維を得るためには、後述するように、熱伸長性複合繊維の紡糸後に、該複合繊維に対して加熱処理又は捲縮処理を行い且つ延伸処理を行わないようにすればよい。尚、熱伸長率を前記の温度で測定する理由は、繊維の交点を熱融着させて不織布を製造する場合には、第2樹脂成分の融点又は軟化点以上で且つそれらより10℃程度高い温度までの範囲で製造するのが通常だからである。
【0058】
熱伸長率は次の方法で測定される。熱機械分析装置TMA−50(島津製作所製)を用い、平行に並べた繊維をチャック間距離10mmで装着し、0.025mN/texの一定荷重を負荷した状態で10℃/minの昇温速度で昇温させる。その際の繊維の伸長率変化を測定し、第2樹脂成分の融点又は軟化点より10℃高い温度での伸長率を読み取って熱伸長率とする。
【0059】
紡糸後に行われる加熱処理の条件は、本発明の複合繊維を構成する第1及び第2樹脂成分の種類に応じて適切な条件が選択される。例えば、本発明の複合繊維が芯鞘型であり、芯成分がポリプロピレンで鞘成分が高密度ポリエチレンである場合、加熱温度は50〜120℃、特に70〜100℃であることが好ましく、加熱時間は10〜500秒、特に20〜200秒であることが好ましい。加熱方法としては、熱風の吹き付け、赤外線の照射などが挙げられる。
【0060】
紡糸後に行われる捲縮処理としては、二次元状及び三次元状の態様の機械捲縮を行うことが簡便である。本発明においては偏芯タイプの芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維に見られる三次元の顕在捲縮を用いる場合、その配合料は20%以下であることが好ましい。機械捲縮には熱を伴う場合がある。その場合には、加熱処理と捲縮処理とが同時に施されることになる。
【0061】
捲縮処理に際しては繊維が多少引き伸ばされる場合があるが、そのような引き延ばしは本発明にいう延伸処理には含まれない。本発明にいう延伸処理とは、未延伸糸に対して通常行われる延伸倍率2〜6倍程度の延伸操作をいう。
【0062】
熱伸長性複合繊維としては上述した同芯タイプの芯鞘型であることが好ましく、この場合、第1樹脂成分が芯を構成し且つ第2樹脂成分が鞘を構成していることが、熱伸長性複合繊維の熱伸長率を高くし得る点から好ましい。第1樹脂成分及び第2樹脂成分の種類に特に制限はなく、繊維形成能のある樹脂であればよい。特に、両樹脂成分の融点差、又は第1樹脂成分の融点と第2樹脂成分の軟化点との差が10℃以上、特に20℃以上であることが、熱融着による不織布製造を容易に行い得る点から好ましい。熱伸長性複合繊維が芯鞘型である場合には、鞘成分の融点又は軟化点よりも芯成分の融点の方が高い樹脂を用いる。第1樹脂成分と第2樹脂成分との好ましい組み合わせとしては、第1樹脂成分をポリプロピレン(PP)とした場合の第2樹脂成分としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレンプロピレン共重合体、ポリスチレンなどが挙げられる。また、第1樹脂成分としてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂を用いた場合は、第2成分として、前述した第2樹脂成分の例に加え、ポリプロピレン(PP)、共重合ポリエステルなどが挙げられる。更に、第1樹脂成分としては、ポリアミド系重合体や前述した第1樹脂成分の2種以上の共重合体や混合物も挙げられ、また第2樹脂成分としては前述した第2樹脂成分の2種以上の共重合体や混合物なども挙げられる。これらは適宜組み合わされる。これらの組み合わせのうち、ポリプロピレン(PP)/高密度ポリエチレン(HDPE)を用いることが好ましい。この理由は、両樹脂成分の融点差が20〜40℃の範囲内であるため、不織布を容易に製造できるからである。また繊維の比重が低いため、軽量で且つコストに優れ、低熱量で焼却廃棄できる不織布が得られるからである。
【0063】
第1樹脂成分及び第2樹脂成分の融点は、示差走査型熱分析装置DSC−50(島津社製)を用い、細かく裁断した繊維試料(サンプル質量2mg)の熱分析を昇温速度10℃/minで行い、各樹脂の融解ピーク温度を測定し、その融解ピーク温度で定義される。第2樹脂成分の融点がこの方法で明確に測定できない場合は、第2樹脂成分の分子の流動が始まる温度として、繊維の融着点強度が計測できる程度に第2樹脂成分が融着する温度を軟化点とする。
【0064】
本発明の複合繊維における第1樹脂成分と第2樹脂成分との比率(重量比)は10:90〜90:10、特に30:70〜70:30であることが好ましい。この範囲内であれば繊維の力学特性が十分となり、実用に耐え得る繊維となる。また融着成分の量が十分となり、繊維どうしの融着が十分となる。
【0065】
熱伸長性複合繊維の太さは、複合繊維の具体的用途に応じて適切な値が選択される。一般的な範囲として1.0〜10dtex、特に1.7〜8.0dtexであることが、繊維の紡糸性やコスト、カード機通過性、生産性、コスト等の点から好ましい。吸収性物品の表面シートとして用いる場合の複合繊維の太さは、融着交点の形成性の観点から0.1dtex以上、特に0.5dtex以上であることが好ましく、毛管勾配による吸水機構の観点から10dtex以下、特に8dtex以下であることが好ましい。
【0066】
次に本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態においては、不織布に形成した熱圧着部によって完全に囲まれた領域が形成される形態とし、製造時に熱風温度を低く・熱風処理時間を長くし、ネット面側から吸引装置による熱風処理性を向上した以外は第1の実施形態と同様とした。
図11(a)及び(b)には得られた不織布の第1面及び第2面の電子顕微鏡写真(複数の写真を組み合わせた写真)を示している。図5と同じ計測方法で同程度の面積における換算結果で第1面における並列状態の個数は8ヶ所で、最大長さは485μmであったが、平均長さが200μm、何れの並列状態部位においても94μmを超える長さが得られており、第2面における蛇行形状も確認できた。
【0067】
第1面及び第2面の特徴的構造を促進させる構成としては、第1面と第2面の間に熱伸長性がなく2次元捲縮性の融着繊維層を配することにより、第1面の起点形成と第2面の構造抑制を発現しやすくできる。また、第2面に偏芯タイプの芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維に見られる三次元の顕在捲縮の熱伸長性複合繊維を配することで、吸収性物品の表面シートとして用いた場合、液の透過性、特に高粘性物の通過性・保持性に優れたものとなる。さらに従来不織布における三次元の顕在捲縮性繊維は、嵩高な構造体による利点を有しながら、毛羽の発生し易さや不織布強度に難点があったが、第1面を肌側とすることで、表面シートとしての性能を充分発揮しながら、利点を損なわない構造体を形成できる。
【0068】
本実施形態の不織布は、その凹凸形状、嵩高さ及び高強度を生かした種々の分野に適用できる。例えば使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの使い捨て衛生物品の分野における表面シート、セカンドシート(表面シートと吸収体との間に配されるシート)、裏面シート、防漏シート、あるいは対人用清拭シート、スキンケア用シート、さらには対物用のワイパーなどとして好適に用いられる。
【0069】
前記のような用途に用いられる場合、本発明の不織布は、その坪量が15〜60g/m2、特に20〜40g/m2であることが好ましい。またその厚みが1〜5mm、特に2〜4mmであることが好ましい。但し、用途により適切な厚みは異なるため、目的に合わせ適宜調整される。
【0070】
本発明の不織布は、吸収性物品の表面シートとして好ましく用いられる。
吸収性物品は、主として尿や経血等の排泄体液を吸収保持するために用いられるものである。吸収性物品には、例えば使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等が包含されるが、これらに限定されるものではなく、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
【0071】
吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。吸収性物品は、一般に、着用時に着用者の肌に当接する肌当接面及びそれとは反対側(通常、ショーツ等の衣類側)に向けられる非肌当接面を有し、表面シートは、肌当接面側に配され、裏面シートは、非肌当接面側に配される。
本発明の不織布を表面シートとして用いる場合、第1面側を着用者の肌側に向けて用いることが、液残り量の低減によるドライ感の向上や柔軟性等の点から好ましい。
吸収体及び裏面シートとしては、当該技術分野において通常用いられている材料を特に制限無く用いることができる。例えば吸収体としては、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体又はこれに吸収性ポリマーを保持させたものを、ティッシュペーパーや不織布等の被覆シートで被覆してなるものを用いることができる。裏面シートとしては、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネート等の液不透過性ないし撥水性のシートを用いることができる。裏面シートは水蒸気透過性を有していてもよい。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。そのような部材は当業者に公知である。例えば吸収性物品を使い捨ておむつや生理用ナプキンに適用する場合には、表面シート上の左右両側部に一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
【0072】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、圧接着部15の形成に熱を伴うエンボス加工であるヒートエンボス加工を用いたが、これに代えて熱を伴わないエンボス加工や、超音波エンボス加工によって圧接着部を形成することもできる。或いは接着剤によって圧接着部を形成することもできる。
【実施例】
【0073】
(実施例1)
鞘がポリエチレン(PE)、芯がポリプロポレン(PP)の熱伸長性の芯鞘型複合繊維(伸長前の繊維の太さ4dTex)を用いて、カード法によりウエブを形成した。そのウエブにヒートエンボス加工を施し、第1の線状エンボス15aと第2の線状エンボス15bとが65度の角度をなして交差する格子状の圧接着部15を形成した。第1及び第2の線状エンボス15a,15bそれぞれの線幅は0.5mmとし、第1の線状エンボス15aどうし間及び第2の線状エンボス15bどうし間の間隔はいずれも6mmとした。圧接着部15に囲まれた領域の面積は0.735cm2であった。
得られたヒートエンボス状ウエブに対して、熱風吹き付け装置によりエアースルー方式の熱風処理を施し、実施例1の不織布を得た。熱風処理は、処理温度(=熱風処理装置内の温度)138℃、処理時間11秒とした。また、熱風を吹き付ける側とは反対側(ネット面側)からの吸引は特に行わなかった。
【0074】
(実施例2)
熱風処理の処理温度を135℃、処理時間は24秒とし、また、熱風を吹き付ける側とは反対側(ネット面側)からの吸引を行いつつ熱風処理を行った以外は、実施例1と同様にして、実施例2の不織布を得た。
【0075】
(比較例1)
鞘がポリエチレン(PE)、芯がポリプロポレン(PP)の芯鞘型複合繊維(非熱伸長性,繊維の太さ3.3dTex)を用いてカード法によりウエブを形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の不織布を得た。
【0076】
実施例1,2及び比較例1の不織布について、ネット面側を第2面として、第1面及び第2面それぞれにおける、繊維間距離、融着点の数、並列融着部(表1中「並列部」と略記)の数等を測定し、結果を表1に示した。
【0077】
【表1】

【0078】
(液残り評価)
実施例1,2及び比較例2の不織布シートを、それぞれ、150×70mmの大きさに切り出して表面シートとした。
200g/m2のパルプを、そのパルプの上下面に16g/m2の吸収紙が配された状態で150×70mmの大きさに切り出したシート物を、吸収体として使用した。
評価器具として、200×100mm、厚み8mmのアクリルプレートの中央にφ10mmの注入孔と、一時的に液を留め置き注入孔に液を通すための内径23mm、高さ50mmの円筒(注入孔との間には角度30度の傾斜部を形成)を取り付けたものを使用し、評価液として、(株)日本バイオテスト研究所より入手した馬脱繊維血液(粘度7cp程度、TOKI SANGYO Co.LTD製VISCOMETER TVB−10Mによる測定)を使用した。
【0079】
評価前の重量を計測した表面シートを、第2面(ネット面)側を、吸収体側に向けて吸収体に積層して、評価サンプルを作成した。
評価器具と加重調整用重りにより3g/cm2加重となるようにして、評価サンプルの上に評価器具を重ね、ビーカー等を使用して評価液3gを評価器具の円筒部分に注入し、1分間静置した。注入1分後に表面シートの重量を計測して、評価前の重量との差分を算出した。3回の測定結果を平均した値を液残り量として、表1中に示した。
【0080】
表1に示す結果から、本発明の不織布は、比較例の不織布に対して液残り量が大幅に少ないことが判る。
【符号の説明】
【0081】
10 不織布
11 凸部
12 凹部
15 熱圧着部(圧接着部)
20 ウエブ
21 ヒートエンボス装置
22,23 ロール
24 ヒートボンド状ウエブ
26 熱風吹き付け装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂成分とそれより融点の高い第2樹脂成分からなる熱融着性複合繊維を含み、
前記熱融着性複合繊維どうしが接する部分が融着されて繊維融着部が形成された不織布であって、
前記不織布は、前記熱融着性複合繊維が並列状態で固定化された部位を有する第1面、及び第2面を有し、第1面は、前記繊維融着部の個数に対する、繊維が並列状態で固定化された部位の数の割合(百分率)が5〜30%である不織布。
【請求項2】
第2面よりも第1面の方が前記割合(百分率)が大きい、請求項1記載の不織布。
【請求項3】
前記不織布は、その坪量が20〜100g/m2であり、第2面よりも第1面の方が繊維間距離が大きい請求項1又は2記載の不織布。
【請求項4】
前記不織布は、第1面及び/又は第2面に凹部を有し、該凹部には、エンボス加工により繊維が融着された圧接着部が形成されている請求項1〜3の何れかに記載の不織布。
【請求項5】
前記不織布は、第1面の凹部と第2面の凹部とが同じ平面位置に形成されており、第2面の凹部よりも第1面の凹部の方が深さが深い請求項4記載の不織布。
【請求項6】
前記不織布は、単一の層からなる請求項1〜5の何れかに記載の不織布。
【請求項7】
前記熱融着性複合繊維は、紡糸後に延伸処理を施していない複合繊維である請求項1〜6の何れかに記載の不織布。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の不織布を第1面側を肌当接面側に用いる吸収性物品用表面シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−102456(P2011−102456A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132341(P2010−132341)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】