不良記録素子の検出装置及び方法、並びに画像形成装置及び方法
【課題】テストパターンの読取画像に歪みが発生する場合にも不良記録素子を正確に特定する。
【解決手段】複数の記録素子を有する記録ヘッドによって記録媒体上に記録されたテストパターン102の読取画像データを取得する。読取画像データの画像内容を表す読取画像上でテストパターンの一部を含む基準領域Sを設定し、読取画像上で基準領域と比較する比較領域C1を設定する。基準領域Sに対して比較領域C1を相対的にシフトさせながら、当該比較領域C1と基準領域Sとの相関演算を行い、相関演算の結果から基準領域内の画像に対する比較領域内の画像のずれ量を補正するため歪補正値を特定する。求めた歪補正値を用いて読取画像の画像歪みを補正し、補正後の読取画像に基づいて記録ヘッドにおける不良記録素子を特定する。
【解決手段】複数の記録素子を有する記録ヘッドによって記録媒体上に記録されたテストパターン102の読取画像データを取得する。読取画像データの画像内容を表す読取画像上でテストパターンの一部を含む基準領域Sを設定し、読取画像上で基準領域と比較する比較領域C1を設定する。基準領域Sに対して比較領域C1を相対的にシフトさせながら、当該比較領域C1と基準領域Sとの相関演算を行い、相関演算の結果から基準領域内の画像に対する比較領域内の画像のずれ量を補正するため歪補正値を特定する。求めた歪補正値を用いて読取画像の画像歪みを補正し、補正後の読取画像に基づいて記録ヘッドにおける不良記録素子を特定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の記録素子を有する記録ヘッド(例えば、インクジェットヘッド)によるテストパターンの記録結果から不良記録素子を特定するための検出技術、並びにこれを適用した画像形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
記録用紙などの記録媒体に画像を記録する方法として、画像信号に応じて記録ヘッドからインク滴を吐出させ、そのインク滴を記録媒体上に着弾させるインクジェット描画方式がある。このようなインクジェット描画方式を用いた画像描画装置としては、インク滴を吐出する吐出部(複数のノズル)を記録媒体の1辺の全域に対応するようにライン状に配置し、記録媒体を吐出部に直交する方向に搬送することで、記録媒体の全域に画像を記録可能なフルラインヘッド型の画像描画装置がある。フルラインヘッド型の画像描画装置は、吐出部を移動させることなく記録媒体を搬送することで、記録媒体の全域に画像を描画することができるため、記録速度を高速化するのに適している。
【0003】
しかしながら、フルラインヘッド型の画像描画装置は、吐出部を構成する記録素子(ノズル)の製造バラツキや経時劣化など、様々な原因で、記録媒体上に記録される実際のドット位置が理想的なドット位置からずれてしまい、記録位置誤差(着弾位置誤差)を生じることがある。その結果、記録媒体に記録した画像にスジ状のアーティファクトが発生するという問題がある。このような記録位置誤差に起因するアーティファクトの他にも、液滴が吐出しない異常(不吐出)、吐出体積の異常、吐出形状の異常(スプラッシュ)など、記録素子の不良によって、記録媒体上の記録画像にスジ状のアーティファクトが発生する現象がある。このような記録品質の低下の原因になる記録素子を総称して「不良吐出ノズル」或いは「不良記録素子」と呼ぶ。
【0004】
フルラインヘッド型の記録ヘッドは記録用紙幅に等しい長さがあるため、例えば、記録解像度が1200DPIの場合、菊半裁(636mm×469mm)程度の用紙幅を持つ記録用紙に対応する装置においては、およそ3万ノズル/インク程度の記録素子がある。このような多数の記録素子の中で不良吐出ノズルが発生する時期は様々である。すなわち、記録ヘッド製造時に不良となったもの、経時変化によって不良となったもの、メンテナンス時に不良となったもの(メンテナンス起因の場合、しばしば次のメンテナンスで正常ノズルに復帰する場合も多い)、連続印刷途中から不良吐出ノズル化したもの、などがあり得る。
【0005】
不良吐出ノズルが発生した場合には、その不良吐出ノズルを使用停止(不吐化処理)して、他の周辺ノズル(正常な吐出が可能なノズル)を使用して画像を補正する技術が知られている。かかる補正技術を適用する上で不良吐出ノズルを正確に特定することが重要である。
【0006】
不良吐出ノズルを特定する技術として、不良吐出ノズルの検出を目的とした所定のテストパターンを印字して、その印字結果を画像読取装置によって読み取り、得られた読取画像データを解析して不良吐出ノズルを特定する方法が、特許文献1〜3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−54970号公報
【特許文献2】特開2000−221424号公報
【特許文献3】特開平5−301426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、記録ヘッドの解像度より低い解像度で読み取るスキャナーを使用し、その読取データを補間処理して不良ノズルを検出する技術が開示されている。しかし、特許文献1は、読み取られた画像の歪みについて言及しておらず、画像歪みの課題並びにその解決手段を開示していない。また、特許文献1の方法は、テストパターン上のドットで形成されたラインの幅がサンプリング定理を満たさない条件下では、特定されたライン位置に誤差(ドットで形成されたラインプロファイルの推定誤差)が一定量残るため、十分に高精度な検出結果が得られない。
【0009】
特許文献2では、検出パターンとは別に画像変動用補正パターンを隣接して配置することによって読取画像変動を補正する技術が開示されている。しかし、特許文献2のように、検出パターンとは別に補正用パターンを配置する場合、用紙面積を更に多く使用するために、ユーザーにとって価値のない用紙面積が増大する問題がある。また、特許文献2は、読取画像の歪みによる像構造の補正の必要性に関する課題について言及がない。
【0010】
特許文献3の段落0037によれば「センサー35の出力は、パターン印字前の記録材を白レベルとして出力補正、いわゆるシェーディング補正が行われている。」旨の記載があるが、パターンの読取画像からシェーディング補正用データを取得して補正する技術についての言及はない。
【0011】
(読取画像を解析する上での課題)
テストパターンの印字結果をスキャナー等の画像読取装置で読み取り、その読取画像を解析する場合、読取画像を取得する段階でテストパターンの画像が歪んで読み取られてしまうことが起こりうる。
【0012】
例えば、用紙の先端部をグリッパー(咥え爪)で挟み込んでドラム(胴)の周面に用紙を固定し、ドラムの回転によって用紙を搬送する搬送方式が採用されたインクジェット印刷装置において、印刷結果を読み取るための画像読取センサをドラムと対向する位置に設置した構成の場合、次のような問題がある。
【0013】
(1)グリッパーによって用紙先端部を押さえ込んでいるため、その押さえ付け方や用紙の剛性などによって用紙の沈み込み量が異なり、紙面上の位置に応じて用紙と画像読取センサとの距離が変動する。この距離変動により読取画像が歪む。
【0014】
(2)装置の振動等の影響により、画像読取光学系が揺れて、読取画像上にその振動を反映した線の揺れやうねりが発生し得る。
【0015】
なお、本明細書では、上記(1)や(2)に例示される各種要因で発生する読取画像の歪みを総称して「歪み」と呼ぶ。このような読取画像の歪みは、不良吐出ノズルの検出精度を低下させる。
【0016】
(3)画像読取センサを含んだ読取装置は、用紙上の読取位置に光を照射する照明用の光源が設けられる。用紙の沈み込み量の違いにより照明光の光分布が不均一になり、紙面上の位置に応じて照明光量が変動する。また、照明用光源自体の照射光量の変動や配光分布による光量差もある。
【0017】
上記(1)〜(3)の現象は、再現性のない現象であり、用紙の掴み方や光源の状態など、用紙毎に毎回状況が異なる。したがって、これら再現性の無い歪みや光量変動(シェーディング)は、固定の補正テーブルなどを用いて補正することが困難な変動要因である。
【0018】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、テストパターンの読取画像に歪みが発生する場合にも不良記録素子を正確に特定することができる不良記録素子の検出装置及び方法を提供することを目的とする。また、かかる検出技術を用いた画像形成装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するために以下の発明態様を提供する。
【0020】
(発明1):発明1に係る不良記録素子の検出装置は、複数の記録素子を有する記録ヘッドによって記録媒体上に記録されたテストパターンの読取画像データを取得する読取画像データ取得手段と、前記読取画像データの画像内容を表す読取画像上で前記テストパターンの一部を含む基準領域を設定する基準領域設定手段と、前記読取画像上で前記基準領域と比較する比較領域を設定する比較領域設定手段と、前記基準領域に対して前記比較領域を相対的にシフトさせながら、当該比較領域と前記基準領域との相関演算を行う相関演算手段と、前記相関演算の結果から前記基準領域内の画像に対する前記比較領域内の画像のずれ量を補正するため歪補正値を特定する歪補正値決定手段と、前記歪補正値を用いて前記読取画像の画像歪みを補正する画像歪み補正手段と、前記画像歪み補正手段による補正後の読取画像に基づいて、前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、テストパターンの読取画像が歪んでいる場合であっても、その歪みを効果的に補正することができ、テストパターンの記録結果から不良記録素子を精度よく特定することが可能である。特に、読取画像データから相関演算を行って歪補正値を決定するため、再現性の無い画像歪みについても良好に補正することができる。
【0022】
読取画像データ取得手段としては、記録媒体上に記録されたテストパターンを読み取って電子画像データに変換することによって読取画像データを生成する画像読取手段を採用することができる。また、画像読取手段によって生成された読取画像データをメモリカードなどの外部記憶媒体を介して取得したり、USBやLANその他の通信インターフェース(有線、無線を問わない)を介して取得したりする構成も可能である。この場合、メディアインターフェースや通信インターフェースが「読取画像データ取得手段」に該当する。
【0023】
(発明2):発明2に係る不良記録素子の検出装置は、発明1において、前記テストパターンは、前記比較領域を相対的にシフトさせる方向に沿って、類似性があるパターンが繰り返し現れる画像内容であり、前記相関演算手段は、前記類似性があるパターンの繰り返し間隔よりも小さい所定範囲内で前記比較領域を相対的にシフトさせながら、当該比較領域と前記基準領域との相関演算を行うことを特徴とする。
【0024】
「類似性があるパターン」として、例えば、概ね一定の間隔で規則的に配置されるパターンや、相似性のあるパターンなどがある。全記録素子が正常で理想的なテストパターンである場合に、規則的なパターンとして描かれるはずのテストパターンであっても、実際に記録されるテストパターンは不良記録素子などの影響により、その規則性が崩れることがある。しかし、全体としては、概ね規則性(相似性)を有している。ここでいう「類似性」とは、そのような規則性の崩れは容認して、概ね規則性(相似性)を有しているものを包含するものである。
【0025】
(発明3):発明3に係る不良記録素子の検出装置は、発明1又は2において、前記テストパターンは、前記記録素子によって記録されたラインが規則的に並んだラインパターンであることを特徴とする。
【0026】
テストパターンの好適な例として、いわゆる1オンnオフ型のラインパターンを採用することができる。
【0027】
(発明4):発明4に係る不良記録素子の検出装置は、発明1から3のいずれか1項において、前記相関演算手段によって、前記基準領域に対して前記比較領域を相対的にシフトさせながら相関評価関数が計算され、前記相関評価関数の計算結果から最も相関が高くなるシフト量が求められ、当該シフト量から前記歪補正値が決定されることを特徴とする。
【0028】
読取画像の歪みが発生する方向(歪みを補正する方向)に比較領域をシフトさせながら、相関評価関数を計算することで、相関の高い位置を見つけることができる。記録媒体の搬送方向及びこれに直交する記録媒体の幅方向の2方向について読取画像が歪む可能性がある場合には、これら2方向について歪みを補正する。
【0029】
(発明5):発明5に係る不良記録素子の検出装置は、発明1から4のいずれか1項において、前記シフトさせる方向に前記比較領域の画像データを補間する補間処理手段を備え、前記補間処理手段による補間処理後に前記相関演算手段による相関演算が行われることを特徴とする。
【0030】
かかる態様によれば、読取画像の1画素未満の単位でシフト量を設定することが可能であり、1画素未満の単位で歪みを精密に求めることができる。
【0031】
(発明6):発明6に係る不良記録素子の検出装置は、発明1から5のいずれか1項において、前記読取画像における複数の位置に、当該読取画像のシェーディング特性を解析するための解析領域を設定する解析領域設定手段と、前記解析領域設定手段により前記画像領域内に設定された複数の前記解析領域から、各解析領域内の画像信号のヒストグラムを生成するヒストグラムを生成手段と、前記各解析領域のヒストグラムの所定パーセント点に対応する階調値を求め、当該読取画像のシェーディング特性を示す分布情報を生成するシェーディング特性情報生成手段と、前記シェーディング特性を示す分布情報に基づいて前記読取画像のシェーディング補正を行うシェーディング補正手段と、を備え、前記不良記録素子判定手段は、前記シェーディング補正手段によるシェーディング補正及び前記画像歪み補正手段による画像歪み補正の補正結果に基づいて、前記不良記録素子を特定することを特徴とする。
【0032】
かかる態様によれば、不良記録素子を検出するためのテストパターンの画像領域からシェーディング補正用のデータ(シェーディング特性を示す分布情報)を得て、シェーディング補正を行う。これにより、再現性の無いシェーディングに対しても良好に補正することができる。このシェーディング補正と画像歪み補正とが相まって、一層高精度に不良記録素子を検出することが可能である。
【0033】
読取画像におけるテストパターンの画像領域内に、シェーディング特性を解析するための解析領域を2次元的に配置することにより、2次元的なシェーディング特性分布情報を得ることができる。この2次元分布情報を用いることにより、2次元的な光量差を補正することができる。
【0034】
(発明7):発明7に係る不良記録素子の検出装置は、発明1から6のいずれか1項において、前記記録ヘッドは、液滴の吐出口となるノズルと、前記ノズルから液滴を吐出させる吐出エネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子とを含んで構成される前記記録素子を備えたインクジェットヘッドであり、前記不良記録素子には、記録位置の誤差が所定の位置誤差許容範囲を超えるもの、不吐出による記録不能なもの、吐出液滴の体積の誤差が所定の体積誤差許容範囲を超えるもの、のうち少なくとも1つの異常を示すものが含まれることを特徴とする。
【0035】
記録ヘッドの一例として、インクジェットヘッドを採用することができる。インクジェットヘッドにおける不良記録素子、すなわち不良吐出ノズルとしては、位置誤差異常、不吐出、吐出体積異常、などがあり得る。
【0036】
(発明8):発明8に係る不良記録素子の検出方法は、複数の記録素子を有する記録ヘッドによって記録媒体上に記録されたテストパターンの読取画像データを取得する読取画像データ取得工程と、前記読取画像データの画像内容を表す読取画像上で前記テストパターンの一部を含む基準領域を設定する基準領域設定工程と、前記読取画像上で前記基準領域と比較する比較領域を設定する比較領域設定工程と、前記基準領域に対して前記比較領域を相対的にシフトさせながら、当該比較領域と前記基準領域との相関演算を行う相関演算工程と、前記相関演算の結果から前記基準領域内の画像に対する前記比較領域内の画像のずれ量を補正するため歪補正値を特定する歪補正値決定工程と、前記歪補正値を用いて前記読取画像の画像歪みを補正する画像歪み補正工程と、前記画像歪み補正工程による補正後の読取画像に基づいて、前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定工程と、を含むことを特徴とする。
【0037】
なお、発明8における各工程は、コンピュータによって実現することが可能である。かかる読取画像の解析機能をコンピュータによって実現するためのプログラムは、プリンタなどに組み込まれる中央演算処理装置(CPU)の動作プログラムとして適用することも可能であるし、パソコンなどのコンピュータシステムに適用することも可能である。このような解析処理用のプログラムをCD−ROMや磁気ディスクその他の情報記憶媒体(外部記憶装置)に記録し、該情報記憶媒体を通じて当該プログラムを第三者に提供したり、インターネットなどの通信回線を通じて当該プログラムのダウンロードサービスを提供したり、ASP(Application Service Provider)サービスとして提供したりすることも可能である。
【0038】
(発明9):発明9に係る不良記録素子の検出方法は、発明8において、前記複数の記録素子を有する前記記録ヘッドによって前記記録媒体上に前記テストパターンを記録するテストパターン形成工程と、前記ラインパターン形成工程において前記記録媒体上に記録された前記ラインパターンを画像読取手段によって読み取ることにより前記読取画像データを生成する画像読取工程と、を含むことを特徴とする。
【0039】
(発明10):発明10に係る画像形成装置は、複数の記録素子を有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドに対して記録媒体を相対移動させる媒体搬送手段と、前記記録ヘッドによって前記記録媒体上にテストパターンを記録するように前記記録ヘッドの記録動作を制御するテストパターン出力制御手段と、前記記録媒体上に記録された前記テストパターンを読み取り、電子画像データに変換して読取画像データを生成する画像読取手段と、前記読取画像データの画像内容を表す読取画像上で前記テストパターンの一部を含む基準領域を設定する基準領域設定手段と、前記読取画像上で前記基準領域と比較する比較領域を設定する比較領域設定手段と、前記基準領域に対して前記比較領域を相対的にシフトさせながら、当該比較領域と前記基準領域との相関演算を行う相関演算手段と、前記相関演算の結果から前記基準領域内の画像に対する前記比較領域内の画像のずれ量を補正するため歪補正値を特定する歪補正値決定手段と、前記歪補正値を用いて前記読取画像の画像歪みを補正する画像歪み補正手段と、前記画像歪み補正手段による補正後の読取画像に基づいて、前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定手段と、前記特定された不良記録素子の情報を記憶しておく記憶手段と、前記特定された不良記録素子による記録動作を停止させ、当該不良記録素子以外の記録素子によって前記不良記録素子の記録欠陥を補償して目的の画像を記録するように画像データを補正する画像補正手段と、前記画像補正手段による補正後の画像データに従い前記不良記録素子以外の記録素子の記録動作を制御して画像記録を行う記録制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0040】
かかる態様によれば、画像読取手段とその読取画像の解析処理機能とを具備した画像形成装置の構成を採用することにより、テストチャートの出力と共に、その出力結果の読み取りが可能である。これにより、効率的な解析と、その解析に基づく不良記録素子の特定、並びにその特定結果に基づく画像補正が可能となる。
【0041】
ある1つの不良記録素子の描画不良を補償するために、その近傍の画素の記録を担う1つ又は複数個の記録素子の出力を補正するが、その出力補正の対象となる記録素子(不良記録補正記録素子)の範囲は、少なくとも当該不良記録素子による非記録位置の両側に隣接する記録位置(画素)の描画を担う2つの記録素子を含むことが好ましい。
【0042】
画像形成装置に用いるプリントヘッド(記録ヘッド)の構成例として、複数個のヘッドモジュールを繋ぎ合わせて、被描画媒体の全幅以上の長さにわたる複数の吐出口(ノズル)を配列させたノズル列を有するフルライン型ヘッド(ページワイドヘッド)を用いることができる。このようなフルライン型のヘッドは、通常、記録媒体の相対的な送り方向(媒体搬送方向)と直交する方向に沿って配置されるが、搬送方向と直交する方向に対して、ある所定の角度を持たせた斜め方向に沿ってヘッドを配置する態様もあり得る。
【0043】
なお、発明10において、発明2から7で述べた特徴を組み合わせることができる。
【0044】
(発明11):発明11に係る画像形成方法は、複数の記録素子を有する記録ヘッドに対して記録媒体を相対移動させ、前記記録ヘッドによって前記記録媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、前記記録ヘッドによって前記記録媒体上にテストパターンを記録するように前記記録ヘッドの記録動作を制御するテストパターン出力制御工程と、前記記録媒体上に記録された前記テストパターンを読み取り、電子画像データに変換して読取画像データを生成する画像読取工程と、前記読取画像データの画像内容を表す読取画像上で前記テストパターンの一部を含む基準領域を設定する基準領域設定工程と、前記読取画像上で前記基準領域と比較する比較領域を設定する比較領域設定工程と、前記基準領域に対して前記比較領域を相対的にシフトさせながら、当該比較領域と前記基準領域との相関演算を行う相関演算工程と、前記相関演算の結果から前記基準領域内の画像に対する前記比較領域内の画像のずれ量を補正するため歪補正値を特定する歪補正値決定工程と、前記歪補正値を用いて前記読取画像の画像歪みを補正する画像歪み補正工程と、前記画像歪み補正工程による補正後の読取画像に基づいて、前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定工程と、前記特定された不良記録素子の情報を記憶手段に記憶させる記憶工程と、前記特定された不良記録素子による記録動作を停止させ、当該不良記録素子以外の記録素子によって前記不良記録素子の記録欠陥を補償して目的の画像を記録するように画像データを補正する画像補正工程と、前記画像補正工程による補正後の画像データに従い前記不良記録素子以外の記録素子の記録動作を制御して画像記録を行う記録制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0045】
なお、発明8、9、11の方法発明において、発明2から7で述べた特徴を組み合わせることができる。すなわち、発明2から7で述べた手段に対応する工程を発明8、9、11に付加することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、テストパターンの読取画像に歪みがある場合であっても、その読取画像から不良記録素子を精度よく特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】ノズルから吐出されるインク滴の記録媒体上における着弾位置が理想的な着弾位置から逸脱する状態を模式的に説明する図
【図2】インクジェット記録装置における画像補正プロセスの例を示すフローチャート
【図3】不良吐出ノズルの検出及び入力画像データの補正処理に関わるシステムの機能ブロック図
【図4】不良吐出ノズルを検出して補正するシステムにおけるプリント用紙上のレイアウト図
【図5】記録用紙に記録されるテストパターンの基本形を示す図
【図6】テストパターンの一具体例を示す図
【図7】読取解像度を1200DPIとした場合におけるテストパターンの読取画像の概念図
【図8】読取解像度を500DPIとした場合におけるテストパターンの読取画像の概念図
【図9】不良吐出ノズルを検出する処理の流れを示すフローチャート
【図10】読取画像からライン位置特定のための基準位置を検出する方法を説明する図
【図11】基準位置に基づくラインブロックの切り出しを説明する図
【図12】テストパターンの読取画像とシェーディング特性を解析するための解析領域の位置の関係を示す説明図
【図13】読取装置のシェーディング特性(用紙の白地部分)を示すグラフ
【図14】読取装置のシェーディング特性(テストパターン画像領域の内外)を示すグラフ
【図15】シェーディング補正処理の内容を示すフローチャート
【図16】(a)は歪みの無い読取画像の例、(b)は歪みのある読取画像の例を示す図
【図17】(a)は歪みの無い読取画像について設計値に基づいてラインブロックをシフトさせた画像の例、(b)は歪みのある読取画像について設計値に基づいてラインブロックをシフトさせた画像の例を示す図
【図18】画像歪みのある読取結果の説明図
【図19】画像歪みのあるラインパターンの基準領域と比較領域の関係を示す図
【図20】画像歪補正処理のフローチャート
【図21】基準領域と比較領域の相関演算の説明図
【図22】画像歪みのある読取結果と歪み補正演算における基準領域と比較領域の関係の例を示す図
【図23】画像歪みのある読取結果と歪み補正演算における基準領域と比較領域の関係の例を示す図
【図24】画像歪みのある読取結果と歪み補正演算における基準領域と比較領域の関係の例を示す図
【図25】画像歪み補正後の画像例を示す図
【図26】(a)は歪みの無い読取画像の例、(b)は横方向に補間処理後に画像歪み補正を実施した読取画像の例を示す図
【図27】歪み補正後の画像から不良吐出ノズルを判定する方法の説明図
【図28】傾きがある読取画像からのラインブロックの切り出し方法を説明する図
【図29】歪み補正後の画像において各ノズルに対応するラインを横切る位置の濃度分布プロファイルを求めることを示す説明図
【図30】ラインブロック内の濃度分布プロファイルを2値化する様子を示すグラフ
【図31】読取画像上のテストパターンの装置位置の算出方法を模式的に示す図
【図32】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図
【図33】インクジェットヘッドの構成例を示す平面透視図
【図34】複数のヘッドモジュールを繋ぎ合わせて構成されるインクジェットヘッドの例を示す図
【図35】図33中のA−A線に沿う断面図
【図36】インクジェット記録装置の制御系の構成を示すブロック図
【図37】本実施形態による画像印刷の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0049】
(着弾位置誤差の説明)
はじめに、不良吐出ノズルの一例として、着弾位置(記録位置)の誤差について説明する。図1(a)〜図1(c)は、ノズルから吐出されるインク滴の記録媒体上における着弾位置が理想的な着弾位置から逸脱する状態を模式的に説明する図である。図1(a)はヘッド50における複数のノズル51のライン配列を示す平面図である。図1(b)はノズル51から記録紙(記録媒体)16に向かってインク滴を吐出する状態を横方向から見た図であり、図中の矢印Aによってノズル51からのインク滴の吐出方向が概略的に示されている。図1(c)は、ノズル51から吐出されるインク滴によって記録紙16上に形成されるテストパターン102の例を示す図であり、理想的な着弾位置(符号104)が点線で示され、実際の着弾位置(符号102)が太い黒線で示されている。
【0050】
なお、図1(a)及び図1(b)では、図示の簡略化のために、複数のノズル51が1列に並んだヘッド50を示すが、複数のノズルが2次元配列されて成るマトリクスヘッドに対しても当然に適用できる。即ち、2次元配列のノズル群は主走査方向に沿う直線上に正射影される実質的なノズル列を考慮することにより、1列のノズル列と実質的に同等のものとして取り扱うことができる。
【0051】
図1(a)〜図1(c)に示されるように、ヘッド50の複数のノズル51には、通常の吐出特性を示す正常ノズルとともに、吐出されるインク滴の飛翔軌道が本来の軌道から過大に外れてしまう不良吐出ノズルが含まれる。この不良吐出ノズルから吐出され記録紙16上の着弾したインク滴により形成されるライン状のドットパターン(テストパターン)102は、理想的な着弾位置104からずれて、画像品質の劣化の一因となる。
【0052】
高速記録技術であるシングルパス記録方式において、記録紙16の用紙幅に対応するノズル数は1インク当たり数万個に及び、またフルカラー記録では更にインク色数(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの4色)の分だけ記録素子が存在する。このように多数の記録素子を備えるシングルパス記録方式のインクジェット記録装置(画像形成装置)における基本的な動作手順を図2に示す。図2は、多数の記録素子の中から不良記録素子(不良吐出ノズル)を検知し、不良記録素子による描画不良を他の正常な記録素子によって補正する画像補正プロセスの例である。
【0053】
まず、各ノズルの吐出特性を把握するために、図1(a)〜図1(c)に示されるように、各ノズル51から記録紙16に向かってインク滴を吐出させて、テストパターン102を記録紙16に印刷する(図2のS10)。
【0054】
このテストパターン102は、インクジェット記録装置に備え付けられている撮像ユニット(インラインセンサ)や、外部のスキャナー(オフラインスキャナー)などの画像読取装置によって読み取られ、テストパターン102の記録結果を示す電子画像データ(読取画像データ)が生成される。この読取画像データが所定の検出アルゴリズムに従って解析処理されることにより、不吐出ノズルの位置やテストパターン102の理想的な着弾位置104からの着弾位置誤差が求められる。このとき、所定値(所定の許容範囲を規定する値)以上の過大な位置誤差を有するノズルや不吐出ノズルは、不良吐出ノズルとして検出特定される(S12)。この不良吐出ノズルの検出の具体的なフローについては後述する(図9)。
【0055】
このようにして特定された不良吐出ノズルはマスク処理が施されて、画像形成時にインク滴を吐出しない(記録に使用しない)不吐出ノズルとして扱われる(S14)。そして、この不吐出ノズル(不吐出化処理されたノズル)による描画欠陥を他の吐出ノズル(例えば、隣接ノズル)から吐出されるインク滴により補償するように考慮された画像処理によって入力画像データが補正される(S16)。この補正後の入力画像データに基づいて記録紙16上に所望の画像が良好な品質で記録される。
【0056】
次に、不良吐出ノズルの検出及び入力画像データの補正処理を含む一連の処理フローについて説明する。図3は、不良吐出ノズルの検出及び入力画像データの補正処理に関わるシステムの機能ブロック図である。
【0057】
プリント対象のプリント画像データは、色変換処理部110において所定の色変換処理が施され、記録インク(本例ではCMYKインク)に対応する各版の画像データが得られる。このようにして得られるインク色別の画像データは、色変換処理部110から不吐出ノズル補正画像処理部112に送られる。
【0058】
不良吐出補正判断部122では、不良ノズル補正情報が総合的に取得され、画像位置(画像ドット位置)とノズル位置との対応関係から、本来であれば不良吐出ノズルによってドットの記録が行われる画像上の位置である補正画像位置が特定される。なお、ここでいう「位置」とは、記録ヘッドのノズル並び方向(主走査方向)の位置を意味している。
【0059】
不良吐出ノズルでは補正画像位置の画像部分を適切には記録することができないため、不良吐出補正判断部122では、この不良吐出ノズルに対応する補正画像位置の部分の記録情報が、当該不良吐出ノズルの両隣のノズルを含む近隣の単数又は複数の正常ノズルに振り分けられる。ここでいう不良吐出ノズルに対応する記録情報の振り分けとは、不良吐出ノズルに対応する補正画像位置の部分の記録が他のノズルからのインク吐出により補償されるように、他のノズルからインクを吐出させるためのデータ処理(補正処理)を意味する。さらに、不良吐出補正判断部122は、このようにして振り分けられた画像情報を記録特性に応じて補正する。
【0060】
なお、不良吐出補正判断部122は、画像解析部124からの情報(画像位置情報データ)と不良吐出ノズル判断部130からの不良吐出ノズル情報とを照合して、不良吐出ノズルで記録する画像部分のみに対して補正情報を作成する。このとき不良吐出補正判断部122は、補正情報設定部120から提供される補正の必要性を示すデータ(例えばプリント画像上において設定される補正領域を示すデータや、ヘッド50の印字部において設定される補正領域(ノズル単位)を示すデータ)を参照することによって、より高度に、必要性の高い領域のみに対して補正情報を作成することもできる。このようにして作成される補正情報は、不良吐出補正判断部122から不吐出ノズル補正画像処理部112に送られる。
【0061】
不吐出ノズル補正画像処理部112では、色変換処理部110から送られてくる画像データに対し、不良吐出補正判断部122から送られてくる不良吐出ノズルに関する補正情報に基づく補正処理が行われる。このようにして不良吐出ノズルからの不吐出の情報が反映された補正処理後の画像データは、不吐出ノズル補正画像処理部112からハーフトーン処理部114に送られる。
【0062】
ハーフトーン処理部114では、不吐出ノズル補正画像処理部112から送られてくる画像データに対してハーフトーン処理が行われ、記録ヘッド50を駆動するための多値の画像データを生成する。このとき、生成される多値の画像データ(記録ヘッド駆動多値)が画像階調値数よりも少なくなるように(すなわち、画像階調値数>記録ヘッド駆動多値を満たすように)、ハーフトーン処理が行われる。
【0063】
ハーフトーン処理が施された画像データは、ハーフトーン処理部114から画像メモリ116に送られる。また画像メモリ116に送られるハーフトーン処理済みの画像データは、画像解析部124にも送られる。そして、ハーフトーン処理が施された画像データは、画像メモリ116に記憶されると共に、画像解析部124により解析されて画像情報が存在する位置(画像位置)と存在しない位置に関する情報(画像位置情報データ)が生成される。このようにして生成された画像位置情報データは、画像解析部124から不良吐出補正判断部122に送られ、不良吐出補正判断部122における不良吐出ノズルに対する補正情報の作成に供される。
【0064】
ハーフトーン処理が施された画像データ(ハーフトーン画像データ)は、画像メモリ116からテストパターン合成部118にも送られる。
【0065】
テストパターン合成部118では、画像メモリ116から送られてくるハーフトーン画像データとテストパターンに関する画像データ(テストパターン画像データ)とが合成され、合成後の画像データがヘッドドライバ128に送られる。テストパターンは、詳細については後述するが、不良吐出ノズルの検出を目的として各ノズルにより記録紙上に形成されるドットパターンのことである。このテストパターンが記録紙端部に印刷されるように、テストパターン画像データとハーフトーン画像データとがテストパターン合成部118で合成される。
【0066】
ハーフトーン画像データとテストパターン画像データとが合成された画像データは、テストパターン合成部118からヘッドドライバ128に送られる。ヘッドドライバ128は、テストパターン合成部118から送られてくる画像データに基づきヘッド50を駆動し、記録紙に対して所望画像及びテストパターンの記録を行う。このように、ノズルから吐出されるインク滴によって、当該ノズルの各々に対応する複数のテストパターンを記録紙に形成するパターン形成手段は、テストパターン合成部118及びヘッドドライバ128を含んで構成されることとなる。
【0067】
なお、読取画素ピッチ未満の単位でテストパターンの位置を特定することができる本実施形態の方法によれば、テストパターンは読取方向に関して読取画素ピッチと略等しい幅を有する場合や、読取画素ピッチの3〜5倍以下の幅を有する場合であっても、テストパターンの位置を適切に特定することが可能である。
【0068】
画像及びテストパターンが記録された記録紙は、搬送路に沿って排紙部に向けて送られる(図3の矢印B参照)。このとき、搬送路の途中に設置されたテストパターン読取り部(画像読取手段)136によって、記録紙に記録されたテストパターンが読み取られてテストパターン読取画像のデータが生成される。
【0069】
テストパターン読取り部136には、例えば、RGB3色のカラーフィルターを備えた色別のフォトセル(画素)アレイを有し、RGBの色分解によりカラー画像の読み取りが可能なカラーCCDラインセンサが用いられる。テストパターン読取り部136は、テストパターン102が形成された記録紙16を、所定の読取画素ピッチでヘッド50の長手方向(ノズル列方向、主走査方向、X方向)に読み取って、読取画素ピッチに基づくテストパターン読取画像データを取得する。このテストパターン読取画像のデータは、テストパターン読取り部136から不良吐出ノズル検出部132に送られる。
【0070】
不良吐出ノズル検出部132では、テストパターン読取り部136から送られてくるテストパターン読取画像のデータから、不良吐出ノズル(吐出するインク滴の記録紙上における着弾位置誤差が所定値より大きい不良ノズル及びインク滴を吐出しない不吐出ノズルを含む)が検出される。検出された不良吐出ノズルに関する情報データ(不良吐出ノズル情報)は、不良吐出ノズル検出部132から不良吐出ノズル判断部130に送られる。
【0071】
不良吐出ノズル判断部130は、不良吐出ノズル検出部132から送られてくる不良吐出ノズル情報を所定回数分記憶することができる図示しないメモリを備える。この不良吐出ノズル判断部130では、メモリに蓄えられている過去の不良吐出ノズル情報が参照されて、過去に所定回数以上不良吐出ノズルとして検出されたかどうかで、不良吐出ノズルの確定が行われる。また過去に所定回数以上不良吐出ノズルではない正常ノズルであると判断されている場合は、例えそれまで不良吐出ノズルとして扱われていたノズルであっても扱いを変更し、正常ノズルとして扱われるように不良吐出ノズル情報が修正される。
【0072】
このようにして確定した不良吐出ノズル情報は、不良吐出ノズル判断部130からヘッドドライバ128及び不良吐出補正判断部122に送られる。また所定の条件を満たす場合(例えば所定枚数を印刷後、JOB後、ユーザー指示時、等)には、確定した不良吐出ノズル情報が不良吐出ノズル判断部130から不良ノズル情報蓄積部126にも送られる。
【0073】
ヘッドドライバ128は、不良吐出ノズル判断部130から送られてくる不良吐出ノズル情報に基づいて、不良吐出ノズルに対応するノズルを非駆動とする。
【0074】
また、不良ノズル情報蓄積部126に送られる不良吐出ノズル情報は、不良ノズル情報蓄積部126に蓄積記憶され、不良吐出ノズルの統計的な情報として利用される。なお、不良ノズル情報蓄積部126に蓄えられている不良吐出ノズル情報は、初期不良ノズル情報として適当なタイミングで不良吐出ノズル判断部130に送られる。ここでいう初期不良ノズル情報は、どのノズル(CMYKインクに対応)が不良ノズルであるかを示す情報であり、ヘッド出荷時の検査情報を初期不良ノズル情報の初期値とし、特定周期で不良ノズル情報蓄積部126に蓄積される不良吐出ノズル情報に基づいて、初期不良ノズル情報は適時更新される。不良吐出ノズル判断部130は、この初期不良ノズル情報のうち必要分の不良吐出ノズル情報を、印刷開始時等に図示しないメモリに蓄えて、不良吐出ノズルの確定処理に使用する。
【0075】
不良吐出補正判断部122は、不良吐出ノズル判断部130から送られてくる不良吐出ノズル情報から補正すべき画像部分(不良吐出ノズルで記録する画像部分)に対する補正情報を生成し、当該補正情報を不吐出ノズル補正画像処理部112に送る。
【0076】
また不良吐出補正判断部122は、このようにして生成される補正情報と直前の補正情報とを比較して、新規に不良吐出ノズルが発生(好ましくは所定数以上発生)して補正情報が増加しているか否かを検出する。補正情報が増加していると認められる場合には、不良吐出補正判断部122から不良吐出検出表示部134に所定の指示が送られる。
【0077】
この所定の指示を受け取った不良吐出検出表示部134は、新規の不良吐出ノズルによる記録が行われている不良吐出印刷物(すなわち新規の不良吐出ノズルに対する補正が行われずに印刷された印刷物)を識別可能にする処理を行う。具体的には、不良を検出した印刷物(記録用紙)から補正が完了した印刷が開始されるまでの印刷物に付箋を着けること等が不良吐出検出表示部134により行われる。そして、新規の不良吐出ノズルに対する補正処理が完了した後の印刷時(補正処理完了後の画像データ(ハーフトーン画像データ)に基づく印刷時)には、上記所定の指示が無効化されるように、不良吐出補正判断部122から不良吐出検出表示部134に指示信号が送られ、不良吐出検出表示部134は通常動作(通常表示)を行う。
【0078】
上述の一連の処理フローに基づいて、不良吐出ノズルの検出及び入力画像データの補正処理が適切に行われる。なお記録ヘッド50の安定性によっては、上記の検出及び補正処理を、印刷開始時の最初の所定枚数の記録紙に対してだけ実施する(オフラインスキャナーを使用する構成もあり得る)ことや、ユーザーが指示した時だけ実施する構成も可能である。
【0079】
<<印刷レイアウトの説明>>
次に、記録紙16上の印刷レイアウトの例について説明する。図4は、不良吐出ノズルを検出して補正するシステムにおけるプリント用紙上のレイアウトを示す図である。図4の上側が記録紙16の先端側であり、記録紙16は図4の下から上に向かって(矢印Cで示す搬送方向に)搬送される。例えば、図示せぬドラムの周面に記録紙16を固定して、ドラムの回転によって記録紙16を搬送するドラム搬送方式の場合、ドラムに設けられたグリッパーによって記録紙16の先端部分を保持する構成が採用される。
【0080】
記録紙16は、用紙端部に設けられる検出用駆動波形区域150と通常駆動波形区域152とに分けられる。検出用駆動波形区域150は、上述のテストパターン102を印刷するためのテストパターン領域154と余白領域156とを含み、通常駆動波形区域152は、所望の画像を印刷するためのユーザー領域158を含んで構成される。
【0081】
テストパターン領域154とユーザー領域158との間に設けられる余白領域156は、テストパターン印刷から通常印刷への切り換えのための遷移区間であり、記録紙16の搬送速度に基づいて当該切り換えに必要な領域が余白領域156として確保されることになる。特に、特別な駆動波形信号を使用してテストパターン領域154に対しテストパターンを形成する場合には、この特別な駆動波形信号から通常の駆動波形信号に切り換えるのに必要な時間に相当する余白領域が確保される。この余白領域156は、記録紙16の搬送方向Cに関して、少なくともヘッド50のノズル領域160に相当する分を設けることが好ましい。なお、テストパターン102を印刷するための特別な駆動波形信号は、不良吐出ノズルと正常吐出ノズルを区別しやすくするために用いられ、位置誤差を増幅するような駆動波形信号や、不良吐出ノズルが不吐出ノズルとして機能しやすくするような駆動波形信号を特別に設計して使用することもできる。
【0082】
<<テストパターンの説明>>
次に、テストパターンの具体例について説明する。図5は、記録紙(記録媒体)に記録されるテストパターンの基本形を示す図である。図6は、テストパターンの一具体例を示す図であり、基準位置検出バーを含むテストパターンが示されている。なお、図5及び図6は、テストパターン102が印刷される記録紙16の端部が拡大されて示されている。
【0083】
記録ヘッドに対して記録紙16を搬送するとともに記録ヘッドの複数のノズルを一定間隔で駆動することにより、記録紙16上にライン状のテストパターン102の基本部分が作成される。すなわち、記録ヘッドの複数のノズルのうち所定間隔を有するノズル群から構成されるノズルブロック毎にインク滴が吐出されてライン状のテストパターン102が形成され、記録紙16の搬送と共にインク滴を吐出するノズルブロックを順次変えることによって、図5に示されるようにテストパターン102が千鳥状に形成される。
【0084】
図5のテストパターン102は、いわゆる「1オンnオフ」型のラインパターンである(nは自然数)。1つのラインヘッドにおいて、実質的に用紙幅方向(x方向)に沿って1列に並ぶノズル列(正射影によって得られる実質的なノズル列)を構成するノズルの並びについて、そのx方向の端から順番にノズル番号を付与したとき、ノズル番号を2以上の整数「A」で除算したときの剰余数「B」(B=0,1・・A−1)によって同時吐出するノズル群をグループ分けし、AN+0、AN+1、・・・AN+Bのノズル番号のグループごとに打滴タイミングを変えて(ただし、Nは0以上の整数)、それぞれ各ノズルからの連続打滴によるライン群を形成することにより、図5のような1オンnオフ型のラインパターンが得られる。
【0085】
図5は、「1オン11オフ」(A=12、B=0〜11)の例である。本実施形態ではA=12を例示するが、一般にAN+B(B=0、1、…A−1)、Aは2以上の整数について適応可能である。
【0086】
このような1オンnオフ型のテストパターンを用いることにより、各ラインブロック内で隣接ライン同士が重なり合わず、全ノズルについてそれぞれ他のノズルと区別可能な独立した(ノズル別の)ラインを形成できる。テストパターン102を構成する各ラインはそれぞれ各ノズルからのインク吐出に対応しているため、それぞれのラインが適切に形成されているか否かを判定することによって、対応のノズルからインク滴が適切に吐出されているか否かを検出することが可能である。
【0087】
なお、テストパターンには、上述したいわゆる「1オンnオフ」タイプのラインパターン以外に、他のラインブロック(例えば、ラインブロック相互間の位置誤差確認用のブロック)やラインブロック間を区切る横線(仕切り線)、図6のような基準位置検出バー106a、106bなど、他のパターンを含んでも良い。
【0088】
本実施形態では、特に図6に示すように、テストパターン102の上部及び下部の各々において基準位置検出バー106a、106bも記録される。この基準位置検出バー106a、106bは、後述するように、テストパターン102の位置検出の基準となる。
【0089】
インク色の異なる複数のヘッドを有するインクジェット印刷装置の場合、各インク色に対応するヘッド(例えば、CMYKの各色に対応したヘッド)について、同様のラインパターンが形成される。
【0090】
ただし、記録紙16上における非画像部(図4のテストパターン領域154と余白領域156を含んだ余白部)の面積には制限があるため、1枚の記録紙16に全色ヘッド全ノズル分のラインパターン(テストチャート)を形成できないことがある。このような場合は、複数枚の記録紙に分けてテストパターンが形成される。
【0091】
(テストパターンの読取画像の説明)
図7は、印刷装置の解像度を1200DPI(ドット/インチ)とした場合におけるテストパターンの読取画像の概念図である。図7の読取画像において、各ライン状のパターンの長手方向(Y方向、副走査方向、用紙搬送方向)の長さは、100DPIでは4画素分に相当し、1200DPIでは48画素分に相当する。
【0092】
図8は、読取解像度(X方向)を500DPIとした場合におけるテストパターンの読取画像の概念図である。図8からも明らかなように、500DPIの読取解像度では、テストパターン102の読取画像の各ラインがぼやけてしまい、明確な輪郭を識別することは困難である。
【0093】
高解像度の読取画像によれば各ラインの位置を明確に特定することが可能である一方で、低解像度の読取画像では輪郭がぼやけてしまい各ラインの位置を単純には特定することが難しい。しかしながら、高解像度の画像読取装置(スキャナー)は装置自体が高価であるため、コスト低減の観点からは、低解像度の画像読取装置であってもテストパターンの各ラインの位置を精度良く特定することができる方法が望まれている。
【0094】
そこで、低解像度の読取画像からテストパターンの位置を精度良く特定する方法の一例を以下に示す。
【0095】
なお、以下の説明において、読取画像を一方向(X方向)に切断した際の画像濃度(濃淡)分布をプロファイルと呼ぶ。このプロファイルは必ずしも1画素だけの濃度(濃淡)分布を指すものではなく、例えばY方向に平均化した濃度(濃淡)を用いてX方向に関する濃度(濃淡)分布をプロファイルとして採用してもよい。
【0096】
(不良吐出ノズル検出フロー)
次に、テストパターン(ラインパターン)の各ライン位置の位置誤差を求める方法について説明する。
【0097】
図9は、テストパターンの各ライン位置の位置誤差を求める一連の流れを示すフローチャートである。図10は、読取画像からライン位置特定のための基準位置を検出する方法を説明する図である。図11は、基準位置に基づくノズルのラインブロックの切り出しを説明する図である。
【0098】
記録ヘッドのノズルによって記録紙16に印刷されたテストパターン102は、テストパターン読取り部136(図3参照)により画像データとして読み取られ、テストパターン102の読取画像データが生成される(図9のS20)。このときのテストパターン102の読取条件を、一例として、X方向(主走査方向)500DPIとし、Y方向(副走査方向)100DPIとする。
【0099】
そして、テストパターン102の読取画像データから、各テストパターン102のライン位置を特定する際に用いられる基準位置(基準位置検出バー106a、106b)が決定される(図9のS22)。
【0100】
<<基準位置を決定する処理の説明>>
具体的には、図10に示すように、テストパターン102の端部を必ず含むような矩形領域である基準位置検出ウインドウ140を、テストパターン102の両端(X方向に関する左右端)の各々に設定する。このとき読取画像(RGBカラー)に関し、テストパターン102と記録紙16と読取装置(図3のテストパターン読取り部136)との位置関係から、読取画像内におけるテストパターン102の位置はある程度特定できているものとする。ある程度分かっているテストパターン位置範囲に関して、テストパターン102の一方の端部を必ず含むように基準位置検出ウインドウ140は設定される。
【0101】
そして、この基準位置検出ウインドウ140を上下2つの領域に分けて、それぞれの領域においてX方向及びY方向に関する光学濃度の投影グラフ142a〜142d(X座標投影グラフL1、X座標投影グラフL2、Y座標投影グラフL1、Y座標投影グラフL2、X座標投影グラフR1、X座標投影グラフR2、Y座標投影グラフR1、Y座標投影グラフR2)が作成される。ここでいうX座標投影グラフL1(142a)及びY座標投影グラフL1(142c)は、図10の左端側の基準位置検出ウインドウ140の上方領域の投影グラフを示す。同様に、X座標投影グラフL2(142b)及びY座標投影グラフL2(142d)は、左端側の基準位置検出ウインドウ140の下方領域の投影グラフを示す。また図示は省略するが、右端側の基準位置検出ウインドウ140の上方領域の投影グラフをX座標投影グラフR1及びY座標投影グラフR1と呼び、右端側の基準位置検出ウインドウ140の下方領域の投影グラフをX座標投影グラフR2及びY座標投影グラフR2と呼ぶ。これらの投影グラフはRGB各色について作成され、最もコントラストの高いX(Y)座標投影グラフが使用される。これ以降は最もコントラストの高いカラー画像プレーンに対する演算とする。
【0102】
Y座標投影グラフL1を例にして説明する。Y座標投影グラフL1は、左端側の矩形領域(基準位置検出ウインドウ140)の上方における濃度階調値をX軸方向に平均化することによって作成される。この矩形領域には、用紙白地部、テストパターン102の第1の基準位置検出バー106a、そしてライン状の各テストパターン102が含まれる。したがって、Y座標投影グラフL1(142c)には、白地部(白色)、第1の基準位置検出バー106a(濃い濃度)及びライン部(薄い濃度)を示す箇所が順番に並ぶ。このため、白色から濃い濃度に変化するエッジを検出することで、第1の基準位置検出バー106aの左側上端Y座標を求めることができる。
【0103】
また、X座標投影グラフL1(142a)は、左端側の矩形領域(基準位置検出ウインドウ140)の上方における濃度階調値をY軸方向に平均化することによって作成される。この矩形領域には、用紙白地部、及びテストパターン102の第1の基準位置検出バー106a(及び第1の基準位置検出バー106aと重なるライン状のテストパターン102)が含まれる。したがって、X座標投影グラフL1(142a)には、白地部(白色)と、基準位置検出バー1及びライン部(濃い濃度)とを示す箇所が順番に並ぶ。このため、白色から濃い濃度に変化するエッジを検出することで第1の基準位置検出バー106aの左側上端X座標を求めることができる。
【0104】
他の投影グラフも同様にして解析可能である。結果として、図11に示されるような、第1の基準位置検出バー106a及び第2の基準位置検出バー106bの各々の角部(テストパターンコーナーCL1、CL2、CR1、CR2)のXY座標を求めることができる。このテストパターンコーナーCL1、CL2、CR1、CR2は、基準位置として用いられる。
【0105】
なおヘッド50が不吐出ノズルを含み、第1の基準位置検出バー106a及び第2の基準位置検出バー106bが不吐出ノズルを含むノズル群によって印刷される場合であっても、第1の基準位置検出バー106a及び第2の基準位置検出バー106bはX方向(ノズル方向)及びY方向に連続したベタ部であるため、不良吐出ノズル(不吐出ノズル)に対応する印刷箇所51aの位置検出結果への影響は少ない。また第1の基準位置検出バー106a及び第2の基準位置検出バー106bの各々の部分についてRGBカラーを解析することで対応するインクを決定することもできる。
【0106】
<<各ラインブロックの位置を決定する処理の説明>>
次に、基準位置であるテストパターンコーナーCL1、CL2、CR1、CR2から各ラインブロック146の位置が求められる(図9のS24)。各ラインブロック146は、図11に示されるように、X方向に概ね一定間隔で並ぶ一群のラインによって構成され、Y方向に隣接するラインブロック146は、1列のノズル配列(投影ノズル配列)において隣接するノズルからのインク滴によって印刷される。したがって、テストパターン102における各ラインは、Y方向に順次並ぶラインブロック146のいずれかに割り当てられることとなる。
【0107】
まず、テストパターンコーナーCL1、CL2、CR1、CR2の位置関係から、テストパターン102の回転角とX方向及びY方向の倍率誤差(実際の倍率と設計上の倍率とのずれ)が算出される。テストパターン102のレイアウトは既知の情報であるので、既知のテストパターン設計情報(例えばテストパターン102のX方向ピッチ、Y方向ピッチ、X方向幅、Y方向長さ、等)に基づいてラインブロック146の位置(テストパターンコーナーCL1、CL2、CR1、CR2からの相対位置や矩形の4つのコーナー座標)が求められる。各ラインブロック146の読取画像上の相対位置は、先に求めておいた倍率誤差及び回転角に基づいて、テストパターンコーナーCL1から算出される。このとき不良吐出ノズルによって印刷される箇所51aが存在しても、第1の基準位置検出バー106a及び第2の基準位置検出バー106bは不良吐出ノズルに対応する箇所51aの影響をほとんど受けないため、ラインブロック146の位置を正確に算出することができる。このようにして、全てのラインブロック146の位置が特定される。
【0108】
<<シェーディング補正の説明>>
次に、読取画像データを基にシェーディング補正が行われる(図9のS26)。以下、本実施形態におけるシェーディング補正の内容について説明する。
【0109】
図12(a)は、テストパターン全体の読取画像に対するシェーディング特性データの取得位置(解析位置)を示した模式図である。用紙搬送方向については、用紙先端(図12(a)における上側の端)から用紙後方(図12(a)の下方)に向かって順に、位置A、位置B、位置C、位置Dの4箇所を採用した。用紙幅方向(X方向)については、均等間隔で11箇所の位置を採用した。図中、グレートーンで示した矩形領域が、図13及び図14のプロット点に相当する。
【0110】
図12(b)は、図12(a)の一部を拡大した図である。図12(a)、(b)に示したように、位置A、位置Cはテストパターンの端部の領域に対応し、位置Bはテストパターン内部の領域に対応し、位置Dはテストパターン外部の領域に対応している。
【0111】
読取画像としては、シェーディング補正の実施によって、用紙白地の部分が平坦な読取信号分布になることが期待されている。図3で説明したように、用紙先端に近い領域は、用紙を保持するグリッパーの影響で、読取り部136(のセンサ)と用紙との距離が変化する。つまり、グリッパーによって抑え付けられている用紙先端が最も距離が遠く、先端から離れるにつれて徐々に正常な位置(距離)に近づく。読取り部136に設けられている照明用光源の光拡散性が十分でない場合、距離変化の影響により、距離に応じて配光特性が変化する。その結果、用紙上の位置によってシェーディング特性が変わる。
【0112】
読取り部136(センサ)と用紙の距離は、用紙の剛性によって変化し、更に、再現性が低いため、事前にシェーディング補正テーブルを作成しても十分な補正精度が出ないという問題がある。
【0113】
また、テストパターン102に隣接してシェーディング補正用の領域を設けたとしても、搬送方向にシェーディング特性が変化するため、搬送方向に位置を変えて用紙上の複数箇所に(例えば、テストパターン102の前後に)、シェーディング補正用の領域を設けるなどの工夫が必要となる。しかし、このようなシェーディング補正用の領域を設けることは、テストパターン102の領域及びシェーディング補正用領域を含む検出パターン面積の増大となるデメリットがある。
【0114】
図13は、図12(a)、(b)で示した読取画像内の所定領域(矩形領域)毎にヒストグラムを作成し、その95%点の特性と、矩形領域の平均値とを比較したものである。ヒストグラム95%点とは、所定領域のヒストグラムを作成し、信号が小さい方から数え上げて、画素数がその所定領域内全画素の95%に達する信号値を示す。テストパターン102は、1オン11オフなど、主に白地が50%以上の面積を占めるため(図5,図6参照)、ヒストグラム95%点は白地部分だけの情報を含んでいる。そのため、ヒストグラム95%点の特性は、読取装置の照明の配光分布を反映した結果になっている。
【0115】
図13では、位置Aについてのヒストグラム95%点及び平均値の分布と位置Dについてのヒストグラム95%点及び平均値の分布を示した。
【0116】
図13のように、2つの特性(ヒストグラム95%点特性と平均値特性)は合致している。なお、平均値と95%点なので、信号の絶対値はオフセットしている。
【0117】
図14は、位置A、位置B、位置C、位置Dについて、ヒストグラム95%点を比較した図である。図14に示すように、各位置A〜Dの特性は、搬送方向に変化するシェーディング特性を反映している。
【0118】
図13及び図14の考察によって得られた知見から、本実施形態では読取画像に基づいてシェーディング補正を実施する(図9のS26)。具体的には図15に示す手順に従う。
【0119】
図15はシェーディング補正処理のフローチャートである。まず、読取画像に対してシェーディング特性を測定する領域を、照明光の光量分布の変化に沿って設定する(S42)。本実施形態では、図12(a)で説明したように、用紙幅方向と用紙搬送方向の2方向について、複数の位置に測定領域(「解析領域」に相当)を設定する。用紙幅方向は、主に光源の配光分布に応じた光量差があり、用紙搬送方向は、グリッパー保持による用紙の沈み込み量の変化に応じた光量差がある。このような2次元的な光量分布に対応して、測定領域を2次元的に配置することにより、シェーディング特性の2次元分布を把握することができる。
【0120】
図15のS42で設定した各測定領域(シェーディング特性補正領域)において、ヒストグラムを作成し、所定のパーセント点(例えば、95%点)に相当する信号を求め、2次元的なシェーディング特性分布Shd(x,y,rgb)を作成する(S44)。
【0121】
次に、シェーディング特性分布Shd(x,y,rgb)が平坦になるように、補正係数CorrectShd(x,y,rgb)=Const/Shd(x,y,rgb)を求める(S46)。なお、式中の「Const」は所定の定数を表す。
【0122】
こうして得られた補正係数CorrectShd(x,y,rgb)を用いて、読取画像に対して補正係数CorrectShd(x,y,rgb)に基づいてシェーディング補正を行う(S48)。読取画像の各画素の信号値に対して補正係数を適用し、シェーディング補正済みの読取画像データを得る。
【0123】
なお、補正係数が画像位置に対して間引かれている場合は、公知の補間演算(例えば、線形補間、ニアレストネイバー、スプライン補間など)を用いて、画像位置に対して1対1の関係でシェーディング補正係数が対応するように演算する。
【0124】
また、図13及び図14では、ヒストグラムの95%点を例示したが、95%点以外のパーセント点を採用することも有効である。テストパターンのデューティー(1オンNオフのNの値が大きいほど、低デューティーとなる)に応じて、有効なパーセント点は変わる。低デューティーであるほど、低パーセント点を採用でき、高デューティーであるほど高パーセント点を採用する。ただし、100%点付近は読取系のノイズの影響が大きいときは避けることが望ましい。
【0125】
<<画像歪補正の説明>>
次に、読取画像の歪みを補正するための画像歪補正が行われる(図9のS26)。以下、本実施形態における画像歪補正の内容について説明する。まず、読取画像の歪について簡単に説明する。
【0126】
図16に歪みの無い読取画像と歪みのある読取画像とを比較して示した。図16(a)は歪みの無い読取画像、図16(b)は歪みのある読取画像の例である。ここでは1オンnオフ型のテストパターン102の読取画像において、グリッパーによる用紙の押さえ込みに起因する用紙先端部の沈み込みと、用紙の剛性による用紙の浮き上がりに起因する歪みが発生している様子が示されている。このように、読取画像に歪みが発生すると、用紙の横方向(X方向)及び縦方向(Y方向)に、描画ラインが揺れるような画像となる。
【0127】
図5、図6で説明したように、不良吐出ノズル検出パターン(テストパターン102)は、X方向に規則的な間隔のラインパターン(ラインブロック)をY方向に位置を変えて1段毎に1ノズルシフトした構成である。1ノズルのシフト量を設計値として、読取画像における各段のラインブロックをX方向にシフトした結果が図17である。図17(a)は、歪みの無い読取画像(図16(a)をシフトしたもの)、図17(b)は歪みのある読取画像(図16(b)をシフトしたもの)である。
【0128】
図17(a)に示すように、歪無読取画像では、各段のラインの位置が搬送方向に揃うため、各ノズル位置の特定は容易であり、図17(a)のように、各段のラインを含んだ矩形領域(ノズルに対応する不吐出判定領域)170内の濃度分布に基づいて不吐出など不良吐出を判断可能である。
【0129】
これに対し、図17(b)に示すように、歪有読取画像では、歪みの影響で各ラインの位置が揺らぐため、不吐出検出判定領域172を歪み量程度まで広げなければ、ノズル位置をカバーできない。特に、ラインパターンの端部(図17(b)の下側の端部)は、歪み量が大きいため、不吐出検出判定領域172を広く設定しないと、正しい判定ができない。つまり、図17(a)と同等の不吐出判定領域170では、正確な判定ができない。また、図17(b)の場合、ライン位置の大きな揺らぎを判断することが困難である。
【0130】
図18は、画像歪みのある読取結果の説明図である。図18では、1オン9オフのテストパターンの読取画像において、用紙先端部に近い第1段目のラインブロックと、第2段目のラインブロックについて、歪みが発生している様子が描かれている。このような画像歪は用紙先端部を固定するグリッパーの影響によって発生しやすい。
【0131】
図19は、画像歪みを補正する処理内容の説明図であり、ラインパターンを含む画像領域内に設定される基準領域と比較領域の関係を示す図である。読取画像上で歪み方向に対して歪みを無視できる領域サイズを決定する。このサイズは歪みの性質によって大きさが変わる。振動のように横方向に対しては歪みがない場合は、領域の横方向の大きさは用紙幅サイズまで利用可能である。縦方向に歪みがある場合でも読取解像度に対して十分歪み周期が大きければ、縦方向を複数画素サイズとして領域サイズを利用できる。
【0132】
縦方向にも横方向にも歪みが有る場合は、縦方向を1画素とし、横方向は、ライン数が所定数以上含まれ、かつ歪みが無視できるサイズに設定する。
【0133】
図19では、縦方向を1画素、横方向は5本のラインが含まれる領域サイズを有する基準領域Sが設定され、これと同じ領域サイズで基準領域Sの縦方向の前後に隣接して接する比較領域C1、C2の例が示されている。
【0134】
図20は、画像歪補正処理のフローチャートである。
【0135】
まず、読取画像上で基準領域Sを設定する(S52)。基準領域Sの領域サイズについては、図19で説明した条件に合致するものとする。次に、標準領域Sと比較する比較領域C1を設定する(S54、図19参照)。
【0136】
そして、基準領域Sと比較領域C1を相対的に所定範囲内でシフトさせながら、相関評価関数E(S,C1,sx)を計算する(S56)。ここでいうsxは、X方向のシフト量を表している。
【0137】
図21(a)は、図20のS56にて横方向にプラス1画素、比較領域C1をシフトさせた様子を示している。図21(b)は、図20のS56にて横方向にマイナス1画素、比較領域C1をシフトさせた様子を示している。図21(a)(b)に示したように、横方向に1画素単位で領域をシフトさせながら、相関評価関数Eを計算する。横方向にシフトさせるときの刻み量は1画素とすることが最も好ましいが、複数画素単位でシフトさせることも可能である。
【0138】
相関評価関数Eとして、例えば、以下に示す〔数式1〕や〔数式2〕に示す関数を用いることができる。
【0139】
〔数式1〕
相関評価関数E(S,C1,sx)=ΣABS(Is(x)−Ic1(x+sx))
〔数式2〕
相関評価関数E(S,C1,sx)=Σ(Is(x)−Ic1(x+sx))2
なお、数式中のIs(x)は基準領域Sの画像信号を表し、xは横方向の位置(画素位置)を表す。Ic1(x)は比較領域C1の画像信号を表し、xは横方向の位置(画素位置)を表す。
【0140】
数式1では、両領域における画像信号の差分の絶対値の総和を計算している。数式2では、両領域における画像信号の差分の2乗和を計算している。これら数式1,2で定義される相関評価関数Eは、評価値が最小となるときに、相関が最大となる。
【0141】
基準領域Sが縦方向の複数画素として設定されている場合は、下記〔数式3〕で示すように、縦方向の平均値を求めて、数式1又は数式2中のIs(x)に代えて、プロファイルIPs(x)を利用する。
【0142】
〔数式3〕
IPs(x)={Σ(Is(x,y))}/N (Nは領域内の縦方向画素数)
同様に、比較領域C1が縦方向の複数画素として設定されている場合は、下記〔数式4〕で示すように、縦方向の平均値を求めて、数式1又は数式2中のIc1(x)に代えて、プロファイルIPc1(x)を利用する。
【0143】
〔数式4〕
IPc1(x)={Σ(Ic1(x,y))}/N (Nは領域内の縦方向画素数)
シフト量sxを変えながら相関評価関数E(S,C1,sx)を計算し(図20のS56)、相関評価関数Eが最小値となるシフト量sxの値を「歪み補正位置」としてメモリに記憶する(S58)。
【0144】
テストパターン102の読取画像上で基準領域Sが横方向(用紙幅方向)に分割されている場合には(S60でYES判定時)、演算対象としている領域が横方向についての最後の領域であるか否かを判定する(S62)。横方向に他の領域が存在していれば、S62の判定でNO判定となり、演算対象とする基準領域Sと比較領域C1を横方向に1つ移動して(S64)、S52に戻る。こうして、基準領域Sを変えて、上述のS52〜S64の処理が繰り返される。
【0145】
領域が横方向に分割されている場合であって、横方向の最後の領域について比較演算(相関評価関数Eの計算による歪み補正位置の決定)を終了した場合には、S62の判定でYES判定となり、S66に進む。
【0146】
また、領域が横方向に分割されていない場合(S60でNO判定時)もS66に進む。S66では、演算対象としている比較領域が縦方向の最後の領域であるか否かを判定する(S66)。縦方向に他の比較領域があれば、S66でNO判定となり、比較領域を縦方向に1つ移動して(S68)、S52に戻り、比較領域C1をCk(k=2,3,・・・)に変更して、同様の処理(S52〜68)を繰り返す。
【0147】
縦方向の最後の領域について比較演算(相関評価関数Eの計算による歪み補正位置の決定)を終了した場合には、S68の判定でYES判定となり、本処理を終了して、図9のメインルーチンに戻る。
【0148】
(基準領域と比較領域の関係について)
図22は、画像歪みのある読取結果における歪み補正演算の基準領域と比較領域の関係の第1例を示した説明図である。図22のように、基準領域Sを固定し、基準領域Sを中心にして、基準領域Sから連続して(隣接領域同士が接しながら)次第に基準領域Sから離れる方向に比較領域Ci(i=1,2,3・・・・)を順次設定していく形態を採用することができる。図22において基準領域Sを中心にして、図22の上方向に向かって比較領域C1,C3,C5・・・・・が設定される。また、基準領域Sから図22の下方向に向かって、比較領域C2,C4,C6・・・・・が設定される。このように、基準領域Sを中心にして上下方向に連続的に比較領域Ciを設定し、これらを順次比較する場合、隣接するCiとCi+2(Ciの次にCi+2の領域について演算を行う場合)では、先に求めたCiの歪み補正位置を初期値として、Ci+2を所定範囲シフトすることが望ましい。これにより、演算時間の短縮を達成できる。
【0149】
図23は、画像歪みのある読取結果における歪み補正演算の基準領域と比較領域の関係の第2例を示した説明図である。
【0150】
図23に示すように、テストパターンの一端を基準領域Sとして、比較領域Ci(i=1,2,3・・・・)を基準領域Sから離れる方向で順次設定していく形態を採用することができる。図23の場合、隣接領域同士は互いに接している。このように基準領域Sから次第に遠ざかる方向に並ぶ比較領域Ci(i=1,2,3・・・・)を順次基準領域Sと比較する演算を行う場合、隣接するCiとCi+1(Ciの次にCi+1の領域について演算を行う場合)では、Ci+2の演算に際し、Ciの歪み補正位置を初期値として、所定範囲シフトすることが望ましい。
【0151】
図24は、画像歪みのある読取結果における歪み補正演算の基準領域と比較領域の関係の第3例を示した説明図である。
【0152】
図24に示すように、基準領域Sから離れる方向に設定される比較領域Ci(i=1,2,3・・・・)について、領域同士が接しておらず、互いに離れている場合でも、信頼できる初期値(設計値)に基づいて所定範囲シフトして比較することもできる。
【0153】
なお、各段のラインパターンは、横方向(X方向)について周期性を持つため、相関評価関数Eの演算はライン周期毎に極値を持つ。シフトさせる所定範囲を広げすぎると、別周期の極値に陥る可能性がある。したがって、(ラインパターンの繰り返し周期)>(所定範囲)を目安に比較演算を実施する。
【0154】
例えば、プリンタ解像度1200DPI、読取解像度500DPIのように、ライン幅に対して低解像度の場合は、歪みが大きい場合は、十分ライン周期を広くする(1オンnオフのnの値を大きくする)必要がある(図8参照)。
【0155】
<<歪み補正後の画像について>>
図25(b)に歪み補正後の読取画像の例を示した。図25(a)は、歪みの無い読取画像に対して本例の画像歪み補正を適用した画像の例であり、図17(a)のデータと概ね一致している。図25(b)は、歪みのある読取画像に対して歪み補正処理を実施した画像の例である。図25(b)と図17(b)を比較すると明らかなように、図25(b)では、各段のライン位置が概ね揃っている。したがって、この歪み補正後の読取画像に対しては、図25(a)の場合と同等の判定領域(解析用のウインドウ)170の広さで、正確な不良吐出ノズル判定が可能である。
【0156】
上述の説明では、単純に1画素単位でシフトさせる比較演算を説明したが、図26に示すように、比較領域を横方向に補間処理(ここでは、横方向に拡大処理)した後で歪み補正演算を実施する場合、1画素未満の単位で歪みを精密に求めることが可能である。例えば、補間処理によって元の読取画像に対して画素数を2倍にすれば、読取解像度の0.5画素単位(1/2画素単位)で歪みを補正することができ、補間処理によって元の読取画像に対して画素数を4倍にすれば、読取解像度の0.25画素単位(1/4画素単位)で歪みを補正することができる。このような態様によれば、更に精度良く不良吐出ノズル判定が可能になる。
【0157】
なお、本実施形態による画像歪みの補正方法によれば、テストパターン102におけるライン間の歪みを補正することも可能であるし、ライン内の歪みを補正することも可能である。再現性の無い画像歪みは、読取画像内のどの位置に発生するか事前に特定することはできないため、読取画像の全体にわたって(テストパターン内の全ラインブロックについて)、上述の画像歪み補正の演算(基準領域と比較領域との相関演算)を行うことが好ましい。異なるラインブロックについて歪みを補正する場合でも、共通の基準領域を用いることができる。
【0158】
<歪補正後の画像から不良吐出ノズルを検出する方法の説明>
ここで、歪補正後の画像を用いて不吐出判定、位置誤差大となるノズルを検出する方法について説明する。
【0159】
図27は、歪補正後の画像の一部を示したものである。図25(b)で説明したとおり、歪補正後の画像は各ノズルで記録したラインが概ね1列に(直線的に)並んだものとなる。すなわち、1オンnオフで描かれた「n+1」段のラインブロックの画像位置が修正され、各段に対応した「n+1」個のノズルによる各ライン(「n+1」本分のライン)が概ね1列に並ぶ。
【0160】
このように、歪補正後に図27の画像縦方向(Y方向)に略1列に並んだラインは、複数のノズルの打滴結果を反映したものである。これら複数のノズルに対応した略1列に並んだラインを含む範囲について、不良吐出を判定するための判定領域(符号170)が設定される。そして、複数ノズルに対応する略1列に並んだラインについて、Y方向(画像縦方向)に信号値の平均を計算し、複数ノズルに対応する範囲の平均プロファイルPaveall(x)を計算する。
【0161】
また、複数ノズルに対応する範囲内における各ノズルに対応する個々のラインの範囲(1ノズルに対応する範囲)毎に、Y方向に信号値の平均を計算し、1ノズルに対応する範囲の平均プロファイルPavenzj(x)を計算する。変数xは、画像内でおよそノズルに対応する範囲(図27において符号170で示した矩形の範囲)内のX方向位置を表す。
【0162】
また「nzj」は、各ノズルの位置を変数jで表したものであり、複数ノズルに対応する範囲内の1オンnオフによる「n+1」段のライン列の場合、jは「1」から「n+1」まで(或いは、0からnまで)取り得る。
【0163】
こうして求めたPaveall(x)と、各ノズルのPavenzj(x)の間で相関計算(若しくは、差分計算)を行う。例えば、次式(数式5)に示される差の二乗和よって評価値E(nzj)が計算される。
【0164】
〔数式5〕 E(nzj)=Σ(Paveall(x)−Pavenzj(x))2
なお、式中のΣは、演算対象範囲内の全てのxについての和を計算する。
【0165】
こうして求めた評価値の計算結果が所定値(判定用の基準値)から外れる場合を「不吐出」又は「位置誤差が大きい」ノズルであると判断する。
【0166】
不吐出の場合、Pavenzj(x)は、ほぼ紙白(用紙の白地部分)と等しい階調値となり、上記評価値E(nzj)の演算結果は大きい値となる。
【0167】
また、位置誤差が大きい場合は、階調値の紙白位置と、ノズル描画ラインの位置がPaveall(x)とPavenzj(x)で異なるため、上記評価値E(nzj)の演算結果は大きい値となる。
【0168】
逆に、位置誤差が少ない場合(平均プロファイルがほぼ一致する場合)、上記評価値E(nzj)の演算結果は、ほぼゼロになるため、相対的に小さな値となる。
【0169】
したがって、評価値E(nzj)の演算結果を所定値と比較することにより、不吐出判定並びに位置誤差大となるノズルの検出が可能である。
【0170】
<<ラインブロックに傾きがある場合の対処>>
図9のS26、S28で説明したとおり、ラインブロック位置に基づいて、シェーディング補正データを作成し、シェーディングを補正する(S26)。また、ラインブロック位置に基づいて画像歪みを補正する(S28)。
【0171】
ラインブロックに傾きがある場合は、以下のような処理を行う。
【0172】
(1)縦方向の画像歪みがラインブロックの切り出し高さで無視できる場合は、図28に示すように、プロファイルを作成するための解析領域148をラインブロック146内の一部分においてオーバーラップさせ、このオーバーラップ部分については平均化してプロファイルを作成する。その後、上述の画像歪みを補正する。
【0173】
(2)縦方向の画像歪みがラインブロックの切り出し高さで無視できない場合は、先に画像として画像歪みを補正する。次に、画像歪み補正後のデータからラインブロック位置に基づいて、図28に示すように、解析領域148の一部分をオーバーラップさせて、オーバーラップ部分については平均化してプロファイルを作成する。なお、ラインブロックの傾きの有無や傾き量(角度)は、テストパターンコーナーCL1、CL2、CR1、CR2から検出される。
【0174】
<<プロファイルの2値化処理について>>
次に、各段のラインブロック146(図11参照)内のプロファイルを所定の閾値により2値化して、テストパターン102のライン位置を読取画像の画素単位(読取画素ピッチ単位)で決定する(図9のS30)。このとき用いられる所定の閾値は、白地階調値に対する相対値を使用してもよく、記録紙16の用紙種類毎に変更してもよい。また、用紙依存でインク濃度に一定以上の濃度差がある場合は、画像を解析して閾値を決定することもできる。閾値の決定に際しては、判別分析法やPタイル法などの既知の閾値決定方法を利用することが可能である。
【0175】
あるいは、第1の基準位置検出バー106a及び第2の基準位置検出バー106bの階調値と白地階調値との相対的な値を使用することもできる。例えば、第1の基準位置検出バー106a及び第2の基準位置検出バー106bの階調値を100%とすると共に白地階調値を0%として、X%に相当する階調値を閾値とすることができる。
【0176】
この閾値によるプロファイルの2値化処理では、注目するラインブロック(設定したラインブロック)内のうち、上下に隣接する他のラインブロック146からの影響がない部分(中心付近)を選択してプロファイルを作成した後に、当該プロファイルに対して2値化が行われる。
【0177】
図29は、図25(b)で説明した歪補正後の画像の一部を示したものであり、歪補正後の画像においてプロファイルの2値化を行うときの説明図である。
【0178】
図29に示したように、歪補正後の画像において、各ノズルに対応するラインを横切る位置についてプロファイルを求める(図30参照)。当該プロファイルについて所定の閾値で2値化が行われ、2値化結果に基づいて、不吐出/吐出が判定される。
【0179】
なお、このプロファイルは、1画素よりもY方向(画像縦方向)に多画素を平均した方が精度上好ましい。
【0180】
また、図29では、縦方向に略1列に並ぶ複数のライン(複数のノズルに対応したライン)のうち、1つのノズルに対応するラインを横切る位置に2値化プロファイル位置を設定する様子を図示したが、他のノズルに対応する各ラインを、横切る位置についても、それぞれプロファイルが求められる。
【0181】
図30は、プロファイルを2値化する様子を示している。図30のグラフG1は、テストパターン102の読取画像の画素位置(読取位置)を横軸とし、ラインパターンの読取画像の階調値(光学濃度)の読取信号値(8ビット)を縦軸としている(図30の左側のY軸参照)。グラフG1には閾値T1が設定されており、この閾値T1より下側にある(閾値T1より読取信号値が小さい)画素位置を「ライン位置」とする。連続する複数画素が閾値より下側にある場合は、複数画素の中心画素をライン位置とする。また、例えば連続する複数画素が2個の場合にはより小さい値(階調値)を示す画素位置をライン位置としてもよい。
【0182】
<<ライン位置とノズルの対応付けについて>>
上記の手順により、各ラインブロックLBk(k=1,2,3・・・)内の全てのラインについて、ライン位置を求めた後で、各ライン位置と基準位置(テストパターンコーナーCL1、CR1、CL2、CR2(図11参照))との関係に基づいて、各ライン位置と対応するノズル番号の関係が特定される。なおテストパターンコーナーCL1、CR1、CL2、CR2の位置関係から、テストパターン102の回転角、及びX方向及びY方向の倍率誤差は計算される。
【0183】
テストパターン102のレイアウトは既知の情報として扱うことが可能であるため、既知のテストパターン設計情報から、ラインブロック位置内の各ノズルの位置(テストパターンコーナーCL1(相当)からの相対位置)が求められる。図31に示すように、テストパターン102の各ライン位置は、先に求められる倍率誤差及び回転角に基づいて、テストパターンコーナーCL1からの読取画像上の相対位置Rdが算出され、この算出値Rdからプロファイル上の座標を求めることができる。
【0184】
このようにして、各ラインの位置とノズル位置との対応関係が特定される(図9のS32)。
【0185】
そして、図25〜図27で説明したように、ラインを含んだ判定領域170内の濃度分布に基づき不良吐出ノズルを特定する(図9のS34)。或いは、図29〜図30で説明したようにプロファイルの2値化により不良吐出ノズルを特定する。
【0186】
本実施形態によれば、再現性のない画像変動(像歪みやシェーディング)を効果的に補正することができ、不良吐出ノズルを精度良く検出することができる。また、本実施形態によれば、記録媒体上にシェーディング補正のための専用のパターン領域を設けることなく、不良吐出ノズル検知用のテストパターンの画像領域からシェーディング補正用のデータを取得することができる。これにより、ユーザーにとって商品価値のないパターン領域の面積を増大させることがない。
【0187】
次に、上述した不良吐出ノズルの検出機能及びその検出結果を利用した画像補正機能を具備した画像形成装置の例を説明する。
【0188】
<インクジェット記録装置の説明>
図32は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置200の構成例を示す図である。インクジェット記録装置200は、主として、給紙部212、処理液付与部214、描画部216、乾燥部218、定着部220、及び排紙部222を備えて構成される。このインクジェット記録装置200は、描画部216の圧胴(描画ドラム270)に保持された記録媒体224(便宜上「用紙」と呼ぶ場合がある。)にインクジェットヘッド(「描画ヘッドに相当」)272M,272K,272C,272Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成するオンデマンドドロップ方式の画像形成装置である。
【0189】
(給紙部)
給紙部212には、枚葉紙である記録媒体224が積層されている。給紙部212の給紙トレイ250から記録媒体224が一枚ずつ処理液付与部214に給紙される。本例では、記録媒体224として、枚葉紙(カット紙)を用いるが、連続用紙(ロール紙)から必要なサイズに切断して給紙する構成も可能である。
【0190】
(処理液付与部)
処理液付与部214は、記録媒体224の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部216で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
【0191】
処理液付与部214は、給紙胴252、処理液ドラム254、及び処理液塗布装置256を備えている。処理液ドラム254は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)255を備え、この保持手段255の爪と処理液ドラム254の周面の間に記録媒体224を挟み込むことによって記録媒体224の先端を保持できるようになっている。処理液ドラム254は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体224を処理液ドラム254の周面に密着保持することができる。
【0192】
処理液ドラム254の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置256が設けられる。処理液塗布装置256は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラと、アニックスローラと処理液ドラム254上の記録媒体224に圧接されて計量後の処理液を記録媒体224に転移するゴムローラとで構成される。この処理液塗布装置256によれば、処理液を計量しながら記録媒体224に塗布することができる。本実施形態では、ローラによる塗布方式を適用した構成を例示したが、これに限定されず、例えば、スプレー方式、インクジェット方式などの各種方式を適用することも可能である。
【0193】
処理液付与部214で処理液が付与された記録媒体224は、処理液ドラム254から中間搬送部226を介して描画部216の描画ドラム270へ受け渡される。
【0194】
(描画部)
描画部216は、描画ドラム270、用紙抑えローラ274、及びインクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yを備えている。描画ドラム270は、処理液ドラム254と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)271を備える。本例の描画ドラム270では、回転方向について180度の間隔で周面の2箇所にグリッパー271が設けられ、1回転で2枚の記録媒体224が搬送できるように構成されている。
【0195】
描画ドラム270の周面には、図示しない吸着穴が所定のパターンで多数形成されており、この吸着穴からエアが吸引されることにより、記録媒体224が描画ドラム270の周面に吸着保持される。なお、負圧吸引によって記録媒体224を吸引吸着する構成に限らず、例えば、静電吸着により、記録媒体224を吸着保持する構成とすることもできる。
【0196】
インクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yはそれぞれ、記録媒体224における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の描画ヘッドであり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yは、記録媒体224の搬送方向(描画ドラム270の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
【0197】
描画ドラム270上に密着保持された記録媒体224の記録面に向かって各インクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部214で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体224上での色材流れなどが防止され、記録媒体224の記録面に画像が形成される。
【0198】
描画ドラム270によって記録媒体224を一定の速度で搬送し、この搬送方向について、記録媒体224と各インクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yを相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録媒体224の画像形成領域に画像を記録することができる。かかるフルライン型(ページワイド)ヘッドによるシングルパス方式の画像形成は、記録媒体の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドによるマルチパス方式を適用する場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
【0199】
なお、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0200】
描画部216で画像が形成された記録媒体224は、描画ドラム270から中間搬送部228を介して乾燥部218の乾燥ドラム276へ受け渡される。
【0201】
(乾燥部)
乾燥部218は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、乾燥ドラム276、及び溶媒乾燥装置278を備えている。乾燥ドラム276は、処理液ドラム254と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)277を備える。溶媒乾燥装置278は、乾燥ドラム276の外周面に対向する位置に配置され、複数のハロゲンヒータ280と、各ハロゲンヒータ280の間にそれぞれ配置された温風噴出しノズル282とで構成される。各温風噴出しノズル282から記録媒体224に向けて吹き付けられる温風の温度と風量、各ハロゲンヒータ280の温度を適宜調節することにより、様々な乾燥条件を実現することができる。
【0202】
乾燥部218で乾燥処理が行われた記録媒体224は、乾燥ドラム276から中間搬送部230を介して定着部220の定着ドラム284へ受け渡される。
【0203】
(定着部)
定着部220は、定着ドラム284、ハロゲンヒータ286、定着ローラ288、及びインラインセンサ290構成される。定着ドラム284は、処理液ドラム254と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)285を備える。
【0204】
定着ドラム284の回転により、記録媒体224は記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、ハロゲンヒータ286による予備加熱と、定着ローラ288による定着処理と、インラインセンサ290による検査が行われる。
【0205】
定着ローラ288は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体224を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ288は、定着ドラム284に対して圧接するように配置されており、定着ドラム284との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体224は、定着ローラ288と定着ドラム284との間に挟まれ、所定のニップ圧(例えば、0.15MPa)でニップされ、定着処理が行われる。
【0206】
また、定着ローラ288は、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラによって構成され、所定の温度(例えば60〜80℃)に制御される。この加熱ローラで記録媒体224を加熱することによって、インクに含まれるラテックスのTg温度(ガラス転移点温度)以上の熱エネルギーが付与され、ラテックス粒子が溶融される。これにより、記録媒体224の凹凸に押し込み定着が行われるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、光沢性が得られる。
【0207】
一方、インラインセンサ290は、記録媒体224に形成された画像(不吐出検出用のテストパターンや濃度補正用のテストパターン、印刷画像なども含む)について、吐出不良チェックパターンや画像の濃度、画像の欠陥などを計測するための計測手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。このインラインセンサ290は、図3の符号136で説明したテストパターン読取り部に相当する。
【0208】
なお、高沸点溶媒及びポリマー微粒子(熱可塑性樹脂粒子)を含んだインクに代えて、UV露光にて重合硬化可能なモノマー成分を含有していてもよい。この場合、インクジェット記録装置200は、ヒートローラによる熱圧定着部(定着ローラ288)の代わりに、記録媒体224上のインクにUV光を露光するUV露光部を備える。このように、UV硬化性樹脂などの活性光線硬化性樹脂を含んだインクを用いる場合には、加熱定着の定着ローラ288に代えて、UVランプや紫外線LD(レーザダイオード)アレイなど、活性光線を照射する手段が設けられる。
【0209】
(排紙部)
定着部220に続いて排紙部222が設けられている。排紙部222は、排出トレイ292を備えており、この排出トレイ292と定着部220の定着ドラム284との間に、これらに対接するように渡し胴294、搬送ベルト296、張架ローラ298が設けられている。記録媒体224は、渡し胴294により搬送ベルト296に送られ、排出トレイ292に排出される。搬送ベルト296による用紙搬送機構の詳細は図示しないが、印刷後の記録媒体224は無端状の搬送ベルト296間に渡されたバー(不図示)のグリッパーによって用紙先端部が保持され、搬送ベルト296の回転によって排出トレイ292の上方に運ばれてくる。
【0210】
また、図32には示されていないが、本例のインクジェット記録装置200には、上記構成の他、各インクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部214に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引、ノズル洗浄等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体224の位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
【0211】
<インクジェットヘッドの構成例>
次に、インクジェットヘッドの構造について説明する。各色に対応するインクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号350によってヘッドを示すものとする。
【0212】
図33(a) はヘッド350の構造例を示す平面透視図であり、図33(b) はその一部の拡大図である。図34はヘッド350を構成する複数のヘッドモジュールの配置例を示す図である。また、図35は記録素子単位(吐出素子単位)となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル351に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図33中のA−A線に沿う断面図)である。
【0213】
図33に示したように、本例のヘッド350は、インク吐出口であるノズル351と、各ノズル351に対応する圧力室352等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)353をマトリクス状に二次元配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影(正射影)される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0214】
記録媒体224の送り方向(矢印S方向;「y方向」に相当)と略直交する方向(矢印M方向;「x方向」に相当)に記録媒体224の描画領域の全幅に対応する長さ以上のノズル列を構成するために、例えば、図34(a)に示すように、複数のノズル351が二次元に配列された短尺のヘッドモジュール350’を千鳥状に配置して、長尺のライン型ヘッドを構成する。或いはまた、図34(b)に示すように、ヘッドモジュール350”を1列に並べて繋ぎ合わせる態様も可能である。
【0215】
なお、シングルパス印字用のフルライン型プリントヘッドは、記録媒体224の全面を描画範囲とする場合に限らず、記録媒体224の面上の一部が描画領域となっている場合には、所定の描画領域内の描画に必要なノズル列が形成されていればよい。
【0216】
各ノズル351に対応して設けられている圧力室352は、その平面形状が概略正方形となっており(図33(a)、(b) 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル351への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)354が設けられている。なお、圧力室352の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0217】
図35に示すように、ヘッド350は、ノズル351が形成されたノズルプレート351Aと圧力室352や共通流路355等の流路が形成された流路板352P等を積層接合した構造から成る。ノズルプレート351Aは、ヘッド350のノズル面(インク吐出面)350Aを構成し、各圧力室352にそれぞれ連通する複数のノズル351が二次元的に形成されている。
【0218】
流路板352Pは、圧力室352の側壁部を構成するとともに、共通流路355から圧力室352にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口354を形成する流路形成部材である。なお、説明の便宜上、図35では簡略的に図示しているが、流路板352Pは一枚又は複数の基板を積層した構造である。
【0219】
ノズルプレート351A及び流路板352Pは、シリコンを材料として半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
【0220】
共通流路355はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路355を介して各圧力室352に供給される。
【0221】
圧力室352の一部の面(図35において天面)を構成する振動板356には、個別電極357を備えたピエゾアクチュエータ(圧電素子)358が接合されている。本例の振動板356は、ピエゾアクチュエータ358の下部電極に相当する共通電極359として機能するニッケル(Ni)導電層付きのシリコン(Si)から成り、各圧力室352に対応して配置されるピエゾアクチュエータ358の共通電極を兼ねる。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様も可能であり、この場合は、振動板部材の表面に金属などの導電材料による共通電極層が形成される。また、ステンレス鋼(SUS)など、金属(導電性材料)によって共通電極を兼ねる振動板を構成してもよい。
【0222】
個別電極357に駆動電圧を印加することによってピエゾアクチュエータ358が変形して圧力室352の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル351からインクが吐出される。インク吐出後、ピエゾアクチュエータ358が元の状態に戻る際、共通流路355から供給口354を通って新しいインクが圧力室352に再充填される。
【0223】
かかる構造を有するインク室ユニット353を図33(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。かかるマトリクス配列において、副走査方向の隣接ノズル間隔をLsとするとき、主走査方向については実質的に各ノズル351が一定のピッチP=Ls/tanθで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
【0224】
また、本発明の実施に際してヘッド350におけるノズル351の配列形態は図示の例に限定されず、様々なノズル配置構造を適用できる。例えば、図33で説明したマトリクス配列に代えて、V字状のノズル配列、V字状配列を繰り返し単位とするジグザク状(W字状など)のような折れ線状のノズル配列なども可能である。
【0225】
なお、インクジェットヘッドにおける各ノズルから液滴を吐出させるための吐出用の圧力(吐出エネルギー)を発生させる手段は、ピエゾアクチュエータ(圧電素子)に限らず、サーマル方式(ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させる方式)におけるヒータ(加熱素子)や、静電アクチュエータ、その他の方式による各種アクチュエータなど、様々な圧力発生素子(吐出エネルギー発生素子)を適用し得る。ヘッドの吐出方式に応じて、相応のエネルギー発生素子が流路構造体に設けられる。
【0226】
<制御系の説明>
図36は、インクジェット記録装置200のシステム構成を示すブロック図である。図36に示すように、インクジェット記録装置200は、通信インターフェース370、システムコントローラ372、画像メモリ374、ROM375、モータドライバ376、ヒータドライバ378、プリント制御部380、画像バッファメモリ382、ヘッドドライバ384等を備えている。
【0227】
通信インターフェース370は、ホストコンピュータ386から送られてくる画像データを受信するインターフェース部(画像入力手段)である。通信インターフェース370にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0228】
ホストコンピュータ386から送出された画像データは通信インターフェース370を介してインクジェット記録装置200に取り込まれ、一旦画像メモリ374に記憶される。画像メモリ374は、通信インターフェース370を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システムコントローラ372を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ374は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0229】
システムコントローラ372は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置200の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ372は、通信インターフェース370、画像メモリ374、モータドライバ376、ヒータドライバ378等の各部を制御し、ホストコンピュータ386との間の通信制御、画像メモリ374及びROM375の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ388やヒータ389を制御する制御信号を生成する。
【0230】
また、システムコントローラ372は、インラインセンサ(インライン検出部)290から読み込んだテストチャートの読取画像データから、不吐出ノズルの位置や着弾位置誤差のデータ、濃度分布を示すデータ(濃度データ)等を生成する演算処理を行う着弾誤差測定演算部372Aと、測定された着弾位置誤差の情報や濃度情報から濃度補正係数を算出する濃度補正係数算出部372Bとを含んで構成される。なお、着弾誤差測定演算部372A及び濃度補正係数算出部372Bの処理機能はASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。更に、システムコントローラ372は、図9で説明した読取画像の解析処理手段として機能する。濃度補正係数算出部372Bにおいて求められた濃度補正係数のデータは、濃度補正係数記憶部390に記憶される。
【0231】
ROM375には、システムコントローラ372のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データ(不良吐出ノズルを検出するためのテストチャートを打滴するためのデータ、不良吐出ノズル情報などを含む)が格納されている。ROM375には、EEPROMのような書換可能な記憶手段を用いることができる。また、このROM375の記憶領域を活用することで、ROM375を濃度補正係数記憶部390として兼用する構成も可能である。
【0232】
画像メモリ374は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0233】
モータドライバ376は、システムコントローラ372からの指示に従って搬送系のモータ388を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ378は、システムコントローラ372からの指示に従って乾燥部218等のヒータ389を駆動するドライバである。
【0234】
プリント制御部380は、システムコントローラ372の制御に従い、画像メモリ374内の画像データ(多値の入力画像のデータ) から打滴制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、生成したインク吐出データをヘッドドライバ384に供給してヘッド350の吐出駆動を制御する駆動制御手段として機能する。
【0235】
すなわち、プリント制御部380は、濃度データ生成部380Aと、補正処理部380Bと、インク吐出データ生成部380Cと、駆動波形生成部380Dとを含んで構成される。これら各機能ブロック(380A〜380D)は、ASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。
【0236】
濃度データ生成部380Aは、入力画像のデータからインク色別の初期の濃度データを生成する信号処理手段であり、濃度変換処理(UCR処理や色変換を含む)及び必要な場合には画素数変換処理を行う。
【0237】
補正処理部380Bは、濃度補正係数記憶部390に格納されている濃度補正係数を用いて濃度補正の演算を行う処理手段であり、不良吐出ノズル等に起因する画像欠陥を改善するためのムラ補正処理を行う。
【0238】
インク吐出データ生成部380Cは、補正処理部380Bで生成された補正後の画像データ(濃度データ)から2値又は多値のドットデータに変換するハーフトーニング処理手段を含む信号処理手段であり、画像データの2値(多値)化処理を行う。
【0239】
インク吐出データ生成部380Cで生成されたインク吐出データはヘッドドライバ384に与えられ、ヘッド350のインク吐出動作が制御される。
【0240】
駆動波形生成部380Dは、ヘッド350の各ノズル351に対応したピエゾアクチュエータ358(図35参照)を駆動するための駆動信号波形を生成する手段であり、該駆動波形生成部380Dで生成された信号(駆動波形)は、ヘッドドライバ384に供給される。なお、駆動波形生成部380Dから出力される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
【0241】
駆動波形生成部380Dは、記録用波形の駆動信号と、異常ノズル検知用波形の駆動信号とを選択的に生成する。各種波形データは予めROM375に格納され、必要に応じて使用する波形データが選択的に出力される。本例に示すインクジェット記録装置200は、ヘッド350を構成するモジュールの各ピエゾアクチュエータ358に対して、共通の駆動電力波形信号を印加し、各ノズル351の吐出タイミングに応じて各ピエゾアクチュエータ358の個別電極に接続されたスイッチ素子(不図示)のオンオフを切り換えることで、各ピエゾアクチュエータ358に対応するノズル351からインクを吐出させる駆動方式が採用されている。
【0242】
プリント制御部380には画像バッファメモリ382が備えられており、プリント制御部380における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ382に一時的に格納される。なお、図36において画像バッファメモリ382はプリント制御部380に付随する態様で示されているが、画像メモリ374と兼用することも可能である。また、プリント制御部380とシステムコントローラ372とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0243】
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース370を介して外部から入力され、画像メモリ374に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの多値の画像データが画像メモリ374に記憶される。
【0244】
インクジェット記録装置200では、インク(色材)による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ374に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ372を介してプリント制御部380に送られ、該プリント制御部380の濃度データ生成部380A、補正処理部380B、インク吐出データ生成部380Cを経てインク色ごとのドットデータに変換される。
【0245】
ドットデータは、一般に画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(たとえば、RGB8ビットの画像データ)をインクジェット印刷機で使用するインクの各色の色データ(本例では、KCMYの色データ)に変換する処理である。
【0246】
ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色の色データに対して誤差拡散法や閾値マトリクス法等の処理で各色のドットデータ(本例では、KCMYのドットデータ)に変換する処理である。
【0247】
すなわち、プリント制御部380は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。このドットデータへの変換処理に際して、不良吐出ノズルによる画像欠陥を補正する不吐出補正処理が行われる。
【0248】
こうして、プリント制御部380で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ382に蓄えられる。この色別ドットデータは、ヘッド350のノズルからインクを吐出するためのCMYK打滴データに変換され、印字されるインク吐出データが確定する。
【0249】
ヘッドドライバ384は、アンプ回路(電力増幅回路)を含み、プリント制御部380から与えられるインク吐出データ及び駆動波形の信号に基づき、印字内容に応じてヘッド350の各ノズル351に対応するピエゾアクチュエータ358を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ384にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0250】
こうして、ヘッドドライバ384から出力された駆動信号がヘッド350に加えられることによって、該当するノズル351からインクが吐出される。記録媒体224の搬送速度に同期してヘッド350からのインク吐出を制御することにより、記録媒体224上に画像が形成される。
【0251】
上記のように、プリント制御部380における所要の信号処理を経て生成されたインク吐出データ及び駆動信号波形に基づき、ヘッドドライバ384を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0252】
インラインセンサ(検出部)290は、図32で説明したように、イメージセンサを含むブロックであり、記録媒体224に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつき、光学濃度など)を検出し、その検出結果をプリント制御部380及びシステムコントローラ372に提供する。
【0253】
プリント制御部380は、必要に応じてインラインセンサ(検出部)290から得られる情報に基づいてヘッド350に対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
【0254】
図中のメンテナンス機構394は、インク受け、吸引キャップ、吸引ポンプ、ワイパーブレードなど、ヘッドメンテナンスに必要な部材を含んだものである。
【0255】
また、ユーザインターフェースとしての操作部396は、オペレータ(ユーザ)が各種入力を行うための入力装置397と表示部(ディスプレイ)398を含んで構成される。入力装置397には、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタンなど各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置397を操作することにより、印刷条件の入力、画質モードの選択、付属情報の入力・編集、情報の検索などを行うことができ、入力内容や検索結果など等の各種情報は表示部398の表示を通じて確認することができる。この表示部398はエラーメッセージなどの警告を表示する手段としても機能する。
【0256】
なお、図3で説明した色変換処理部110、不吐出ノズル補正画像処理部112、ハーフトーン処理部114、画像メモリ116、画像解析部124、テストパターン合成部118、ヘッドドライバ128、不良吐出ノズル判断部130、不良吐出ノズル検出部132、不良ノズル情報蓄積部126、不良吐出補正判断部122、補正情報設定部120等は、図36に示した制御系の構成要素が単独で、又は複数組み合わされて構成される。
【0257】
図3の画像メモリ116、ヘッドドライバ128、ヘッド50は、図36における画像メモリ374、ヘッドドライバ384、ヘッド350に対応している。
【0258】
図36のシステムコントローラ372及びプリント制御部380の組み合わせが、「基準領域設定手段」、「比較領域設定手段」、「相関演算手段」、「歪補正値決定手段」、「画像歪み補正手段」、「不良記録素子判定手段」、「補間処理手段」、「解析領域設定手段」、「ヒストグラム生成手段」、「シェーディング特性情報生成手段」、「シェーディング補正手段」、「テストパターン出力制御手段」、「画像補正手段」、「記録制御手段」として機能する。
【0259】
なお、図36で説明した着弾誤差測定演算部372A、濃度補正係数算出部372B、濃度データ生成部380A、補正処理部380Bが担う処理機能の全て又は一部をホストコンピュータ386側に搭載する態様も可能である。
【0260】
上述のように、本実施形態のインクジェット記録装置によれば、テストパターンの読取画像を解析することによって、各ノズルから吐出されるインク滴の記録紙上の着弾位置を正確に把握することができるため、不良吐出ノズルの位置を精度よく特定することができる。これにより、不良吐出ノズルによる画像欠陥を補償する緻密な補正処理を入力画像データに施すことが可能である。上述の各種処理に基づく全体の処理の流れについて、以下説明する。
【0261】
(画像印刷プロセスの説明)
図37は、画像印刷全体の流れを示すフローチャートである。ホストコンピュータ386(図36参照)から送られてくる所望画像の入力画像データが通信インターフェース(受信手段)370を介して受信されると(図37のS80に示す受信ステップ)、色変換処理(図3の色変換処理部110)、不良吐出ノズル補正処理(不吐出ノズル補正画像処理部112)、ハーフトーン処理(ハーフトーン処理部114)、テストパターン合成処理(テストパターン合成部118)等によって入力画像データが補正される(図37のS82に示す補正ステップ)。
【0262】
そして、補正された入力画像データに基づき、ヘッドドライバ384(図3の128)によって、各ヘッド350のノズル351からインク滴を記録媒体224に向かって吐出させることにより(図37のS84に示す吐出ステップ)、所望の画像を鮮明に記録媒体224に印刷することができる。
【0263】
上記の補正ステップ(S82)では、不良吐出ノズルからのインク滴の吐出を他の正常なノズルによって補償すると共に、不良吐出ノズルからインク滴が吐出されないようにするための不良吐出ノズル補正処理(不吐出ノズル補正画像処理部112)が、入力画像データに対して行われる。不良吐出ノズル補正処理は、不良吐出ノズル検出部132(図3参照)において、テストパターン読取り部136から送られてくるテストパターン102の読取画像データに基づいて行われる。
【0264】
なお、不良吐出ノズルを不吐出化処理して、他のノズルによってその描画欠陥を補償する補正技術としては、例えば、(1)出力画像を矯正する方法、(2)吐出信号を強めて吐出ドット径を大きめに矯正する方法など、様々な手段がある。
【0265】
(1)出力画像を矯正する方法
周囲の描画における画像濃度をDdefaultとしたとき、不吐出補正ノズルにおける画像濃度をDNo Print(>Ddefault)とすることで不吐出補正ノズルの描画濃度を高め、白筋視認性を低減させることができる。これらの画像濃度間の比率を不吐出補正用ノズル画像濃度増幅量Pdensityと定義できる。
【0266】
(2)吐出信号を強めて吐出ドット径を大きくする方法
周囲の描画におけるドット径をRdefaultとしたとき、不吐出補正ノズルのドット径をRNo Print(>Rdefault)とすることで不吐出補正ノズルの描画濃度を高め、白筋視認性を低減させることができる。これらのドット径間の比率を不吐出補正用ノズルドット径増幅量Pdotと定義できる。
【0267】
前記2つの代表例における不吐出補正用ノズル画像濃度増幅量Pdensity、不吐出補正用ノズルドット径増幅量Pdotのような、不吐出補正ノズルによる描画の強め量、或いはそれに類する補償量を総じて不吐出補正パラメータPと定義すると、この不吐出補正パラメータPを用いて、画像補正を行う。
【0268】
<変形例1>
図9ではシェーディング補正後に画像歪みを補正したが、シェーディング補正工程と、画像歪み補正工程の順番は入れ替えることができる。
【0269】
<変形例2>
テストパターン102として、1オンnオフ型のラインパターンを例示したが、1ノズルに対応したラインに限らず、複数本(例えば、2〜3本)のラインが一体に組み合わされた帯状のブロックなどが概ね規則的に並ぶパターンであってもよい。
【0270】
<オフラインスキャナーを用いる構成例について>
図32から図37では、インクジェット記録装置200に内蔵されたインラインセンサ290を用いてテストパターンを読み取り、その読取画像の解析処理装置もインクジェット記録装置200に搭載されている例を説明したが、本発明の実施に際しては、インクジェット記録装置200とは別体のオフラインスキャナー等を用いてテストパターンの印刷結果を読み取り、その読取画像のデータをパソコン等の装置によって解析する構成も可能である。
【0271】
<記録媒体について>
「記録媒体」は、記録素子によってドットが記録される媒体の総称であり、印字媒体、被記録媒体、被画像形成媒体、受像媒体、被吐出媒体など様々な用語で呼ばれるものが含まれる。本発明の実施に際して、被記録媒体の材質や形状等は、特に限定されず、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、配線パターン等が形成されるプリント基板、ゴムシート、その他材質や形状を問わず、様々な媒体に適用できる。
【0272】
<ヘッドと用紙を相対移動させる手段について>
上述の実施形態では、停止したヘッドに対して被記録媒体を搬送する構成を例示したが、本発明の実施に際しては、停止した被記録媒体に対してヘッドを移動させる構成も可能である。なお、シングルパス方式のフルライン型の記録ヘッドは、通常、被記録媒体の送り方向(搬送方向)と直交する方向に沿って配置されるが、搬送方向と直交する方向に対して、ある所定の角度を持たせた斜め方向に沿ってヘッドを配置する態様もあり得る。
【0273】
<ヘッド構成の変形例について>
上記実施形態では、記録媒体の全幅に対応する長さのノズル列を有するページワイドのフルライン型ヘッドを用いたインクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、シリアル型(シャトルスキャン型)ヘッドなど、短尺の記録ヘッドを移動させながら、複数回のヘッド走査により画像記録を行うインクジェット記録装置についても本発明を適用可能である。なお、インクジェット方式の印字ヘッドを用いてカラー画像を形成する場合は、複数色のインク(記録液)の色別にヘッドを配置してもよいし、1つの記録ヘッドから複数色のインクを吐出可能な構成としてもよい。
【0274】
<本発明の応用例について>
上記の実施形態では、グラフィック印刷用のインクジェット記録装置への適用を例に説明したが、本発明の適用範囲はこの例に限定されない。例えば、電子回路の配線パターンを描画する配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、カラーフィルター製造装置、マテリアルデポジション用の材料を用いて微細構造物を形成する微細構造物形成装置など、液状機能性材料を用いて様々な形状やパターンを描画するインクジェットシステムに広く適用できる。
【0275】
<インクジェット方式以外の記録ヘッドの利用形態について>
上述の説明では、記録ヘッドを用いる画像形成装置の一例としてインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。インクジェット方式以外では、サーマル素子を記録素子とする記録ヘッドを備えた熱転写記録装置、LED素子を記録素子とする記録ヘッドを備えたLED電子写真プリンタ、LEDライン露光ヘッドを有する銀塩写真方式プリンタなど、ドット記録を行う各種方式の画像形成装置についても本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0276】
16…記録用紙、50…ヘッド、51…ノズル、102…テストパターン、112…不吐出ノズル補正画像処理部、122…不良吐出補正判断部、124…画像解析部、126…不良ノズル情報蓄積部、130…不良吐出ノズル判断部、132…不良吐出ノズル検出部、136…テストパターン読取り部、154…テストパターン領域、200…インクジェット記録装置、224…記録媒体、270…描画ドラム、272M,272K,272C,272Y…インクジェットヘッド、290…インラインセンサ、350…ヘッド、351…ノズル、358…ピエゾアクチュエータ、372…システムコントローラ、380…プリント制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の記録素子を有する記録ヘッド(例えば、インクジェットヘッド)によるテストパターンの記録結果から不良記録素子を特定するための検出技術、並びにこれを適用した画像形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
記録用紙などの記録媒体に画像を記録する方法として、画像信号に応じて記録ヘッドからインク滴を吐出させ、そのインク滴を記録媒体上に着弾させるインクジェット描画方式がある。このようなインクジェット描画方式を用いた画像描画装置としては、インク滴を吐出する吐出部(複数のノズル)を記録媒体の1辺の全域に対応するようにライン状に配置し、記録媒体を吐出部に直交する方向に搬送することで、記録媒体の全域に画像を記録可能なフルラインヘッド型の画像描画装置がある。フルラインヘッド型の画像描画装置は、吐出部を移動させることなく記録媒体を搬送することで、記録媒体の全域に画像を描画することができるため、記録速度を高速化するのに適している。
【0003】
しかしながら、フルラインヘッド型の画像描画装置は、吐出部を構成する記録素子(ノズル)の製造バラツキや経時劣化など、様々な原因で、記録媒体上に記録される実際のドット位置が理想的なドット位置からずれてしまい、記録位置誤差(着弾位置誤差)を生じることがある。その結果、記録媒体に記録した画像にスジ状のアーティファクトが発生するという問題がある。このような記録位置誤差に起因するアーティファクトの他にも、液滴が吐出しない異常(不吐出)、吐出体積の異常、吐出形状の異常(スプラッシュ)など、記録素子の不良によって、記録媒体上の記録画像にスジ状のアーティファクトが発生する現象がある。このような記録品質の低下の原因になる記録素子を総称して「不良吐出ノズル」或いは「不良記録素子」と呼ぶ。
【0004】
フルラインヘッド型の記録ヘッドは記録用紙幅に等しい長さがあるため、例えば、記録解像度が1200DPIの場合、菊半裁(636mm×469mm)程度の用紙幅を持つ記録用紙に対応する装置においては、およそ3万ノズル/インク程度の記録素子がある。このような多数の記録素子の中で不良吐出ノズルが発生する時期は様々である。すなわち、記録ヘッド製造時に不良となったもの、経時変化によって不良となったもの、メンテナンス時に不良となったもの(メンテナンス起因の場合、しばしば次のメンテナンスで正常ノズルに復帰する場合も多い)、連続印刷途中から不良吐出ノズル化したもの、などがあり得る。
【0005】
不良吐出ノズルが発生した場合には、その不良吐出ノズルを使用停止(不吐化処理)して、他の周辺ノズル(正常な吐出が可能なノズル)を使用して画像を補正する技術が知られている。かかる補正技術を適用する上で不良吐出ノズルを正確に特定することが重要である。
【0006】
不良吐出ノズルを特定する技術として、不良吐出ノズルの検出を目的とした所定のテストパターンを印字して、その印字結果を画像読取装置によって読み取り、得られた読取画像データを解析して不良吐出ノズルを特定する方法が、特許文献1〜3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−54970号公報
【特許文献2】特開2000−221424号公報
【特許文献3】特開平5−301426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、記録ヘッドの解像度より低い解像度で読み取るスキャナーを使用し、その読取データを補間処理して不良ノズルを検出する技術が開示されている。しかし、特許文献1は、読み取られた画像の歪みについて言及しておらず、画像歪みの課題並びにその解決手段を開示していない。また、特許文献1の方法は、テストパターン上のドットで形成されたラインの幅がサンプリング定理を満たさない条件下では、特定されたライン位置に誤差(ドットで形成されたラインプロファイルの推定誤差)が一定量残るため、十分に高精度な検出結果が得られない。
【0009】
特許文献2では、検出パターンとは別に画像変動用補正パターンを隣接して配置することによって読取画像変動を補正する技術が開示されている。しかし、特許文献2のように、検出パターンとは別に補正用パターンを配置する場合、用紙面積を更に多く使用するために、ユーザーにとって価値のない用紙面積が増大する問題がある。また、特許文献2は、読取画像の歪みによる像構造の補正の必要性に関する課題について言及がない。
【0010】
特許文献3の段落0037によれば「センサー35の出力は、パターン印字前の記録材を白レベルとして出力補正、いわゆるシェーディング補正が行われている。」旨の記載があるが、パターンの読取画像からシェーディング補正用データを取得して補正する技術についての言及はない。
【0011】
(読取画像を解析する上での課題)
テストパターンの印字結果をスキャナー等の画像読取装置で読み取り、その読取画像を解析する場合、読取画像を取得する段階でテストパターンの画像が歪んで読み取られてしまうことが起こりうる。
【0012】
例えば、用紙の先端部をグリッパー(咥え爪)で挟み込んでドラム(胴)の周面に用紙を固定し、ドラムの回転によって用紙を搬送する搬送方式が採用されたインクジェット印刷装置において、印刷結果を読み取るための画像読取センサをドラムと対向する位置に設置した構成の場合、次のような問題がある。
【0013】
(1)グリッパーによって用紙先端部を押さえ込んでいるため、その押さえ付け方や用紙の剛性などによって用紙の沈み込み量が異なり、紙面上の位置に応じて用紙と画像読取センサとの距離が変動する。この距離変動により読取画像が歪む。
【0014】
(2)装置の振動等の影響により、画像読取光学系が揺れて、読取画像上にその振動を反映した線の揺れやうねりが発生し得る。
【0015】
なお、本明細書では、上記(1)や(2)に例示される各種要因で発生する読取画像の歪みを総称して「歪み」と呼ぶ。このような読取画像の歪みは、不良吐出ノズルの検出精度を低下させる。
【0016】
(3)画像読取センサを含んだ読取装置は、用紙上の読取位置に光を照射する照明用の光源が設けられる。用紙の沈み込み量の違いにより照明光の光分布が不均一になり、紙面上の位置に応じて照明光量が変動する。また、照明用光源自体の照射光量の変動や配光分布による光量差もある。
【0017】
上記(1)〜(3)の現象は、再現性のない現象であり、用紙の掴み方や光源の状態など、用紙毎に毎回状況が異なる。したがって、これら再現性の無い歪みや光量変動(シェーディング)は、固定の補正テーブルなどを用いて補正することが困難な変動要因である。
【0018】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、テストパターンの読取画像に歪みが発生する場合にも不良記録素子を正確に特定することができる不良記録素子の検出装置及び方法を提供することを目的とする。また、かかる検出技術を用いた画像形成装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するために以下の発明態様を提供する。
【0020】
(発明1):発明1に係る不良記録素子の検出装置は、複数の記録素子を有する記録ヘッドによって記録媒体上に記録されたテストパターンの読取画像データを取得する読取画像データ取得手段と、前記読取画像データの画像内容を表す読取画像上で前記テストパターンの一部を含む基準領域を設定する基準領域設定手段と、前記読取画像上で前記基準領域と比較する比較領域を設定する比較領域設定手段と、前記基準領域に対して前記比較領域を相対的にシフトさせながら、当該比較領域と前記基準領域との相関演算を行う相関演算手段と、前記相関演算の結果から前記基準領域内の画像に対する前記比較領域内の画像のずれ量を補正するため歪補正値を特定する歪補正値決定手段と、前記歪補正値を用いて前記読取画像の画像歪みを補正する画像歪み補正手段と、前記画像歪み補正手段による補正後の読取画像に基づいて、前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、テストパターンの読取画像が歪んでいる場合であっても、その歪みを効果的に補正することができ、テストパターンの記録結果から不良記録素子を精度よく特定することが可能である。特に、読取画像データから相関演算を行って歪補正値を決定するため、再現性の無い画像歪みについても良好に補正することができる。
【0022】
読取画像データ取得手段としては、記録媒体上に記録されたテストパターンを読み取って電子画像データに変換することによって読取画像データを生成する画像読取手段を採用することができる。また、画像読取手段によって生成された読取画像データをメモリカードなどの外部記憶媒体を介して取得したり、USBやLANその他の通信インターフェース(有線、無線を問わない)を介して取得したりする構成も可能である。この場合、メディアインターフェースや通信インターフェースが「読取画像データ取得手段」に該当する。
【0023】
(発明2):発明2に係る不良記録素子の検出装置は、発明1において、前記テストパターンは、前記比較領域を相対的にシフトさせる方向に沿って、類似性があるパターンが繰り返し現れる画像内容であり、前記相関演算手段は、前記類似性があるパターンの繰り返し間隔よりも小さい所定範囲内で前記比較領域を相対的にシフトさせながら、当該比較領域と前記基準領域との相関演算を行うことを特徴とする。
【0024】
「類似性があるパターン」として、例えば、概ね一定の間隔で規則的に配置されるパターンや、相似性のあるパターンなどがある。全記録素子が正常で理想的なテストパターンである場合に、規則的なパターンとして描かれるはずのテストパターンであっても、実際に記録されるテストパターンは不良記録素子などの影響により、その規則性が崩れることがある。しかし、全体としては、概ね規則性(相似性)を有している。ここでいう「類似性」とは、そのような規則性の崩れは容認して、概ね規則性(相似性)を有しているものを包含するものである。
【0025】
(発明3):発明3に係る不良記録素子の検出装置は、発明1又は2において、前記テストパターンは、前記記録素子によって記録されたラインが規則的に並んだラインパターンであることを特徴とする。
【0026】
テストパターンの好適な例として、いわゆる1オンnオフ型のラインパターンを採用することができる。
【0027】
(発明4):発明4に係る不良記録素子の検出装置は、発明1から3のいずれか1項において、前記相関演算手段によって、前記基準領域に対して前記比較領域を相対的にシフトさせながら相関評価関数が計算され、前記相関評価関数の計算結果から最も相関が高くなるシフト量が求められ、当該シフト量から前記歪補正値が決定されることを特徴とする。
【0028】
読取画像の歪みが発生する方向(歪みを補正する方向)に比較領域をシフトさせながら、相関評価関数を計算することで、相関の高い位置を見つけることができる。記録媒体の搬送方向及びこれに直交する記録媒体の幅方向の2方向について読取画像が歪む可能性がある場合には、これら2方向について歪みを補正する。
【0029】
(発明5):発明5に係る不良記録素子の検出装置は、発明1から4のいずれか1項において、前記シフトさせる方向に前記比較領域の画像データを補間する補間処理手段を備え、前記補間処理手段による補間処理後に前記相関演算手段による相関演算が行われることを特徴とする。
【0030】
かかる態様によれば、読取画像の1画素未満の単位でシフト量を設定することが可能であり、1画素未満の単位で歪みを精密に求めることができる。
【0031】
(発明6):発明6に係る不良記録素子の検出装置は、発明1から5のいずれか1項において、前記読取画像における複数の位置に、当該読取画像のシェーディング特性を解析するための解析領域を設定する解析領域設定手段と、前記解析領域設定手段により前記画像領域内に設定された複数の前記解析領域から、各解析領域内の画像信号のヒストグラムを生成するヒストグラムを生成手段と、前記各解析領域のヒストグラムの所定パーセント点に対応する階調値を求め、当該読取画像のシェーディング特性を示す分布情報を生成するシェーディング特性情報生成手段と、前記シェーディング特性を示す分布情報に基づいて前記読取画像のシェーディング補正を行うシェーディング補正手段と、を備え、前記不良記録素子判定手段は、前記シェーディング補正手段によるシェーディング補正及び前記画像歪み補正手段による画像歪み補正の補正結果に基づいて、前記不良記録素子を特定することを特徴とする。
【0032】
かかる態様によれば、不良記録素子を検出するためのテストパターンの画像領域からシェーディング補正用のデータ(シェーディング特性を示す分布情報)を得て、シェーディング補正を行う。これにより、再現性の無いシェーディングに対しても良好に補正することができる。このシェーディング補正と画像歪み補正とが相まって、一層高精度に不良記録素子を検出することが可能である。
【0033】
読取画像におけるテストパターンの画像領域内に、シェーディング特性を解析するための解析領域を2次元的に配置することにより、2次元的なシェーディング特性分布情報を得ることができる。この2次元分布情報を用いることにより、2次元的な光量差を補正することができる。
【0034】
(発明7):発明7に係る不良記録素子の検出装置は、発明1から6のいずれか1項において、前記記録ヘッドは、液滴の吐出口となるノズルと、前記ノズルから液滴を吐出させる吐出エネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子とを含んで構成される前記記録素子を備えたインクジェットヘッドであり、前記不良記録素子には、記録位置の誤差が所定の位置誤差許容範囲を超えるもの、不吐出による記録不能なもの、吐出液滴の体積の誤差が所定の体積誤差許容範囲を超えるもの、のうち少なくとも1つの異常を示すものが含まれることを特徴とする。
【0035】
記録ヘッドの一例として、インクジェットヘッドを採用することができる。インクジェットヘッドにおける不良記録素子、すなわち不良吐出ノズルとしては、位置誤差異常、不吐出、吐出体積異常、などがあり得る。
【0036】
(発明8):発明8に係る不良記録素子の検出方法は、複数の記録素子を有する記録ヘッドによって記録媒体上に記録されたテストパターンの読取画像データを取得する読取画像データ取得工程と、前記読取画像データの画像内容を表す読取画像上で前記テストパターンの一部を含む基準領域を設定する基準領域設定工程と、前記読取画像上で前記基準領域と比較する比較領域を設定する比較領域設定工程と、前記基準領域に対して前記比較領域を相対的にシフトさせながら、当該比較領域と前記基準領域との相関演算を行う相関演算工程と、前記相関演算の結果から前記基準領域内の画像に対する前記比較領域内の画像のずれ量を補正するため歪補正値を特定する歪補正値決定工程と、前記歪補正値を用いて前記読取画像の画像歪みを補正する画像歪み補正工程と、前記画像歪み補正工程による補正後の読取画像に基づいて、前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定工程と、を含むことを特徴とする。
【0037】
なお、発明8における各工程は、コンピュータによって実現することが可能である。かかる読取画像の解析機能をコンピュータによって実現するためのプログラムは、プリンタなどに組み込まれる中央演算処理装置(CPU)の動作プログラムとして適用することも可能であるし、パソコンなどのコンピュータシステムに適用することも可能である。このような解析処理用のプログラムをCD−ROMや磁気ディスクその他の情報記憶媒体(外部記憶装置)に記録し、該情報記憶媒体を通じて当該プログラムを第三者に提供したり、インターネットなどの通信回線を通じて当該プログラムのダウンロードサービスを提供したり、ASP(Application Service Provider)サービスとして提供したりすることも可能である。
【0038】
(発明9):発明9に係る不良記録素子の検出方法は、発明8において、前記複数の記録素子を有する前記記録ヘッドによって前記記録媒体上に前記テストパターンを記録するテストパターン形成工程と、前記ラインパターン形成工程において前記記録媒体上に記録された前記ラインパターンを画像読取手段によって読み取ることにより前記読取画像データを生成する画像読取工程と、を含むことを特徴とする。
【0039】
(発明10):発明10に係る画像形成装置は、複数の記録素子を有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドに対して記録媒体を相対移動させる媒体搬送手段と、前記記録ヘッドによって前記記録媒体上にテストパターンを記録するように前記記録ヘッドの記録動作を制御するテストパターン出力制御手段と、前記記録媒体上に記録された前記テストパターンを読み取り、電子画像データに変換して読取画像データを生成する画像読取手段と、前記読取画像データの画像内容を表す読取画像上で前記テストパターンの一部を含む基準領域を設定する基準領域設定手段と、前記読取画像上で前記基準領域と比較する比較領域を設定する比較領域設定手段と、前記基準領域に対して前記比較領域を相対的にシフトさせながら、当該比較領域と前記基準領域との相関演算を行う相関演算手段と、前記相関演算の結果から前記基準領域内の画像に対する前記比較領域内の画像のずれ量を補正するため歪補正値を特定する歪補正値決定手段と、前記歪補正値を用いて前記読取画像の画像歪みを補正する画像歪み補正手段と、前記画像歪み補正手段による補正後の読取画像に基づいて、前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定手段と、前記特定された不良記録素子の情報を記憶しておく記憶手段と、前記特定された不良記録素子による記録動作を停止させ、当該不良記録素子以外の記録素子によって前記不良記録素子の記録欠陥を補償して目的の画像を記録するように画像データを補正する画像補正手段と、前記画像補正手段による補正後の画像データに従い前記不良記録素子以外の記録素子の記録動作を制御して画像記録を行う記録制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0040】
かかる態様によれば、画像読取手段とその読取画像の解析処理機能とを具備した画像形成装置の構成を採用することにより、テストチャートの出力と共に、その出力結果の読み取りが可能である。これにより、効率的な解析と、その解析に基づく不良記録素子の特定、並びにその特定結果に基づく画像補正が可能となる。
【0041】
ある1つの不良記録素子の描画不良を補償するために、その近傍の画素の記録を担う1つ又は複数個の記録素子の出力を補正するが、その出力補正の対象となる記録素子(不良記録補正記録素子)の範囲は、少なくとも当該不良記録素子による非記録位置の両側に隣接する記録位置(画素)の描画を担う2つの記録素子を含むことが好ましい。
【0042】
画像形成装置に用いるプリントヘッド(記録ヘッド)の構成例として、複数個のヘッドモジュールを繋ぎ合わせて、被描画媒体の全幅以上の長さにわたる複数の吐出口(ノズル)を配列させたノズル列を有するフルライン型ヘッド(ページワイドヘッド)を用いることができる。このようなフルライン型のヘッドは、通常、記録媒体の相対的な送り方向(媒体搬送方向)と直交する方向に沿って配置されるが、搬送方向と直交する方向に対して、ある所定の角度を持たせた斜め方向に沿ってヘッドを配置する態様もあり得る。
【0043】
なお、発明10において、発明2から7で述べた特徴を組み合わせることができる。
【0044】
(発明11):発明11に係る画像形成方法は、複数の記録素子を有する記録ヘッドに対して記録媒体を相対移動させ、前記記録ヘッドによって前記記録媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、前記記録ヘッドによって前記記録媒体上にテストパターンを記録するように前記記録ヘッドの記録動作を制御するテストパターン出力制御工程と、前記記録媒体上に記録された前記テストパターンを読み取り、電子画像データに変換して読取画像データを生成する画像読取工程と、前記読取画像データの画像内容を表す読取画像上で前記テストパターンの一部を含む基準領域を設定する基準領域設定工程と、前記読取画像上で前記基準領域と比較する比較領域を設定する比較領域設定工程と、前記基準領域に対して前記比較領域を相対的にシフトさせながら、当該比較領域と前記基準領域との相関演算を行う相関演算工程と、前記相関演算の結果から前記基準領域内の画像に対する前記比較領域内の画像のずれ量を補正するため歪補正値を特定する歪補正値決定工程と、前記歪補正値を用いて前記読取画像の画像歪みを補正する画像歪み補正工程と、前記画像歪み補正工程による補正後の読取画像に基づいて、前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定工程と、前記特定された不良記録素子の情報を記憶手段に記憶させる記憶工程と、前記特定された不良記録素子による記録動作を停止させ、当該不良記録素子以外の記録素子によって前記不良記録素子の記録欠陥を補償して目的の画像を記録するように画像データを補正する画像補正工程と、前記画像補正工程による補正後の画像データに従い前記不良記録素子以外の記録素子の記録動作を制御して画像記録を行う記録制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0045】
なお、発明8、9、11の方法発明において、発明2から7で述べた特徴を組み合わせることができる。すなわち、発明2から7で述べた手段に対応する工程を発明8、9、11に付加することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、テストパターンの読取画像に歪みがある場合であっても、その読取画像から不良記録素子を精度よく特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】ノズルから吐出されるインク滴の記録媒体上における着弾位置が理想的な着弾位置から逸脱する状態を模式的に説明する図
【図2】インクジェット記録装置における画像補正プロセスの例を示すフローチャート
【図3】不良吐出ノズルの検出及び入力画像データの補正処理に関わるシステムの機能ブロック図
【図4】不良吐出ノズルを検出して補正するシステムにおけるプリント用紙上のレイアウト図
【図5】記録用紙に記録されるテストパターンの基本形を示す図
【図6】テストパターンの一具体例を示す図
【図7】読取解像度を1200DPIとした場合におけるテストパターンの読取画像の概念図
【図8】読取解像度を500DPIとした場合におけるテストパターンの読取画像の概念図
【図9】不良吐出ノズルを検出する処理の流れを示すフローチャート
【図10】読取画像からライン位置特定のための基準位置を検出する方法を説明する図
【図11】基準位置に基づくラインブロックの切り出しを説明する図
【図12】テストパターンの読取画像とシェーディング特性を解析するための解析領域の位置の関係を示す説明図
【図13】読取装置のシェーディング特性(用紙の白地部分)を示すグラフ
【図14】読取装置のシェーディング特性(テストパターン画像領域の内外)を示すグラフ
【図15】シェーディング補正処理の内容を示すフローチャート
【図16】(a)は歪みの無い読取画像の例、(b)は歪みのある読取画像の例を示す図
【図17】(a)は歪みの無い読取画像について設計値に基づいてラインブロックをシフトさせた画像の例、(b)は歪みのある読取画像について設計値に基づいてラインブロックをシフトさせた画像の例を示す図
【図18】画像歪みのある読取結果の説明図
【図19】画像歪みのあるラインパターンの基準領域と比較領域の関係を示す図
【図20】画像歪補正処理のフローチャート
【図21】基準領域と比較領域の相関演算の説明図
【図22】画像歪みのある読取結果と歪み補正演算における基準領域と比較領域の関係の例を示す図
【図23】画像歪みのある読取結果と歪み補正演算における基準領域と比較領域の関係の例を示す図
【図24】画像歪みのある読取結果と歪み補正演算における基準領域と比較領域の関係の例を示す図
【図25】画像歪み補正後の画像例を示す図
【図26】(a)は歪みの無い読取画像の例、(b)は横方向に補間処理後に画像歪み補正を実施した読取画像の例を示す図
【図27】歪み補正後の画像から不良吐出ノズルを判定する方法の説明図
【図28】傾きがある読取画像からのラインブロックの切り出し方法を説明する図
【図29】歪み補正後の画像において各ノズルに対応するラインを横切る位置の濃度分布プロファイルを求めることを示す説明図
【図30】ラインブロック内の濃度分布プロファイルを2値化する様子を示すグラフ
【図31】読取画像上のテストパターンの装置位置の算出方法を模式的に示す図
【図32】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図
【図33】インクジェットヘッドの構成例を示す平面透視図
【図34】複数のヘッドモジュールを繋ぎ合わせて構成されるインクジェットヘッドの例を示す図
【図35】図33中のA−A線に沿う断面図
【図36】インクジェット記録装置の制御系の構成を示すブロック図
【図37】本実施形態による画像印刷の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0049】
(着弾位置誤差の説明)
はじめに、不良吐出ノズルの一例として、着弾位置(記録位置)の誤差について説明する。図1(a)〜図1(c)は、ノズルから吐出されるインク滴の記録媒体上における着弾位置が理想的な着弾位置から逸脱する状態を模式的に説明する図である。図1(a)はヘッド50における複数のノズル51のライン配列を示す平面図である。図1(b)はノズル51から記録紙(記録媒体)16に向かってインク滴を吐出する状態を横方向から見た図であり、図中の矢印Aによってノズル51からのインク滴の吐出方向が概略的に示されている。図1(c)は、ノズル51から吐出されるインク滴によって記録紙16上に形成されるテストパターン102の例を示す図であり、理想的な着弾位置(符号104)が点線で示され、実際の着弾位置(符号102)が太い黒線で示されている。
【0050】
なお、図1(a)及び図1(b)では、図示の簡略化のために、複数のノズル51が1列に並んだヘッド50を示すが、複数のノズルが2次元配列されて成るマトリクスヘッドに対しても当然に適用できる。即ち、2次元配列のノズル群は主走査方向に沿う直線上に正射影される実質的なノズル列を考慮することにより、1列のノズル列と実質的に同等のものとして取り扱うことができる。
【0051】
図1(a)〜図1(c)に示されるように、ヘッド50の複数のノズル51には、通常の吐出特性を示す正常ノズルとともに、吐出されるインク滴の飛翔軌道が本来の軌道から過大に外れてしまう不良吐出ノズルが含まれる。この不良吐出ノズルから吐出され記録紙16上の着弾したインク滴により形成されるライン状のドットパターン(テストパターン)102は、理想的な着弾位置104からずれて、画像品質の劣化の一因となる。
【0052】
高速記録技術であるシングルパス記録方式において、記録紙16の用紙幅に対応するノズル数は1インク当たり数万個に及び、またフルカラー記録では更にインク色数(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの4色)の分だけ記録素子が存在する。このように多数の記録素子を備えるシングルパス記録方式のインクジェット記録装置(画像形成装置)における基本的な動作手順を図2に示す。図2は、多数の記録素子の中から不良記録素子(不良吐出ノズル)を検知し、不良記録素子による描画不良を他の正常な記録素子によって補正する画像補正プロセスの例である。
【0053】
まず、各ノズルの吐出特性を把握するために、図1(a)〜図1(c)に示されるように、各ノズル51から記録紙16に向かってインク滴を吐出させて、テストパターン102を記録紙16に印刷する(図2のS10)。
【0054】
このテストパターン102は、インクジェット記録装置に備え付けられている撮像ユニット(インラインセンサ)や、外部のスキャナー(オフラインスキャナー)などの画像読取装置によって読み取られ、テストパターン102の記録結果を示す電子画像データ(読取画像データ)が生成される。この読取画像データが所定の検出アルゴリズムに従って解析処理されることにより、不吐出ノズルの位置やテストパターン102の理想的な着弾位置104からの着弾位置誤差が求められる。このとき、所定値(所定の許容範囲を規定する値)以上の過大な位置誤差を有するノズルや不吐出ノズルは、不良吐出ノズルとして検出特定される(S12)。この不良吐出ノズルの検出の具体的なフローについては後述する(図9)。
【0055】
このようにして特定された不良吐出ノズルはマスク処理が施されて、画像形成時にインク滴を吐出しない(記録に使用しない)不吐出ノズルとして扱われる(S14)。そして、この不吐出ノズル(不吐出化処理されたノズル)による描画欠陥を他の吐出ノズル(例えば、隣接ノズル)から吐出されるインク滴により補償するように考慮された画像処理によって入力画像データが補正される(S16)。この補正後の入力画像データに基づいて記録紙16上に所望の画像が良好な品質で記録される。
【0056】
次に、不良吐出ノズルの検出及び入力画像データの補正処理を含む一連の処理フローについて説明する。図3は、不良吐出ノズルの検出及び入力画像データの補正処理に関わるシステムの機能ブロック図である。
【0057】
プリント対象のプリント画像データは、色変換処理部110において所定の色変換処理が施され、記録インク(本例ではCMYKインク)に対応する各版の画像データが得られる。このようにして得られるインク色別の画像データは、色変換処理部110から不吐出ノズル補正画像処理部112に送られる。
【0058】
不良吐出補正判断部122では、不良ノズル補正情報が総合的に取得され、画像位置(画像ドット位置)とノズル位置との対応関係から、本来であれば不良吐出ノズルによってドットの記録が行われる画像上の位置である補正画像位置が特定される。なお、ここでいう「位置」とは、記録ヘッドのノズル並び方向(主走査方向)の位置を意味している。
【0059】
不良吐出ノズルでは補正画像位置の画像部分を適切には記録することができないため、不良吐出補正判断部122では、この不良吐出ノズルに対応する補正画像位置の部分の記録情報が、当該不良吐出ノズルの両隣のノズルを含む近隣の単数又は複数の正常ノズルに振り分けられる。ここでいう不良吐出ノズルに対応する記録情報の振り分けとは、不良吐出ノズルに対応する補正画像位置の部分の記録が他のノズルからのインク吐出により補償されるように、他のノズルからインクを吐出させるためのデータ処理(補正処理)を意味する。さらに、不良吐出補正判断部122は、このようにして振り分けられた画像情報を記録特性に応じて補正する。
【0060】
なお、不良吐出補正判断部122は、画像解析部124からの情報(画像位置情報データ)と不良吐出ノズル判断部130からの不良吐出ノズル情報とを照合して、不良吐出ノズルで記録する画像部分のみに対して補正情報を作成する。このとき不良吐出補正判断部122は、補正情報設定部120から提供される補正の必要性を示すデータ(例えばプリント画像上において設定される補正領域を示すデータや、ヘッド50の印字部において設定される補正領域(ノズル単位)を示すデータ)を参照することによって、より高度に、必要性の高い領域のみに対して補正情報を作成することもできる。このようにして作成される補正情報は、不良吐出補正判断部122から不吐出ノズル補正画像処理部112に送られる。
【0061】
不吐出ノズル補正画像処理部112では、色変換処理部110から送られてくる画像データに対し、不良吐出補正判断部122から送られてくる不良吐出ノズルに関する補正情報に基づく補正処理が行われる。このようにして不良吐出ノズルからの不吐出の情報が反映された補正処理後の画像データは、不吐出ノズル補正画像処理部112からハーフトーン処理部114に送られる。
【0062】
ハーフトーン処理部114では、不吐出ノズル補正画像処理部112から送られてくる画像データに対してハーフトーン処理が行われ、記録ヘッド50を駆動するための多値の画像データを生成する。このとき、生成される多値の画像データ(記録ヘッド駆動多値)が画像階調値数よりも少なくなるように(すなわち、画像階調値数>記録ヘッド駆動多値を満たすように)、ハーフトーン処理が行われる。
【0063】
ハーフトーン処理が施された画像データは、ハーフトーン処理部114から画像メモリ116に送られる。また画像メモリ116に送られるハーフトーン処理済みの画像データは、画像解析部124にも送られる。そして、ハーフトーン処理が施された画像データは、画像メモリ116に記憶されると共に、画像解析部124により解析されて画像情報が存在する位置(画像位置)と存在しない位置に関する情報(画像位置情報データ)が生成される。このようにして生成された画像位置情報データは、画像解析部124から不良吐出補正判断部122に送られ、不良吐出補正判断部122における不良吐出ノズルに対する補正情報の作成に供される。
【0064】
ハーフトーン処理が施された画像データ(ハーフトーン画像データ)は、画像メモリ116からテストパターン合成部118にも送られる。
【0065】
テストパターン合成部118では、画像メモリ116から送られてくるハーフトーン画像データとテストパターンに関する画像データ(テストパターン画像データ)とが合成され、合成後の画像データがヘッドドライバ128に送られる。テストパターンは、詳細については後述するが、不良吐出ノズルの検出を目的として各ノズルにより記録紙上に形成されるドットパターンのことである。このテストパターンが記録紙端部に印刷されるように、テストパターン画像データとハーフトーン画像データとがテストパターン合成部118で合成される。
【0066】
ハーフトーン画像データとテストパターン画像データとが合成された画像データは、テストパターン合成部118からヘッドドライバ128に送られる。ヘッドドライバ128は、テストパターン合成部118から送られてくる画像データに基づきヘッド50を駆動し、記録紙に対して所望画像及びテストパターンの記録を行う。このように、ノズルから吐出されるインク滴によって、当該ノズルの各々に対応する複数のテストパターンを記録紙に形成するパターン形成手段は、テストパターン合成部118及びヘッドドライバ128を含んで構成されることとなる。
【0067】
なお、読取画素ピッチ未満の単位でテストパターンの位置を特定することができる本実施形態の方法によれば、テストパターンは読取方向に関して読取画素ピッチと略等しい幅を有する場合や、読取画素ピッチの3〜5倍以下の幅を有する場合であっても、テストパターンの位置を適切に特定することが可能である。
【0068】
画像及びテストパターンが記録された記録紙は、搬送路に沿って排紙部に向けて送られる(図3の矢印B参照)。このとき、搬送路の途中に設置されたテストパターン読取り部(画像読取手段)136によって、記録紙に記録されたテストパターンが読み取られてテストパターン読取画像のデータが生成される。
【0069】
テストパターン読取り部136には、例えば、RGB3色のカラーフィルターを備えた色別のフォトセル(画素)アレイを有し、RGBの色分解によりカラー画像の読み取りが可能なカラーCCDラインセンサが用いられる。テストパターン読取り部136は、テストパターン102が形成された記録紙16を、所定の読取画素ピッチでヘッド50の長手方向(ノズル列方向、主走査方向、X方向)に読み取って、読取画素ピッチに基づくテストパターン読取画像データを取得する。このテストパターン読取画像のデータは、テストパターン読取り部136から不良吐出ノズル検出部132に送られる。
【0070】
不良吐出ノズル検出部132では、テストパターン読取り部136から送られてくるテストパターン読取画像のデータから、不良吐出ノズル(吐出するインク滴の記録紙上における着弾位置誤差が所定値より大きい不良ノズル及びインク滴を吐出しない不吐出ノズルを含む)が検出される。検出された不良吐出ノズルに関する情報データ(不良吐出ノズル情報)は、不良吐出ノズル検出部132から不良吐出ノズル判断部130に送られる。
【0071】
不良吐出ノズル判断部130は、不良吐出ノズル検出部132から送られてくる不良吐出ノズル情報を所定回数分記憶することができる図示しないメモリを備える。この不良吐出ノズル判断部130では、メモリに蓄えられている過去の不良吐出ノズル情報が参照されて、過去に所定回数以上不良吐出ノズルとして検出されたかどうかで、不良吐出ノズルの確定が行われる。また過去に所定回数以上不良吐出ノズルではない正常ノズルであると判断されている場合は、例えそれまで不良吐出ノズルとして扱われていたノズルであっても扱いを変更し、正常ノズルとして扱われるように不良吐出ノズル情報が修正される。
【0072】
このようにして確定した不良吐出ノズル情報は、不良吐出ノズル判断部130からヘッドドライバ128及び不良吐出補正判断部122に送られる。また所定の条件を満たす場合(例えば所定枚数を印刷後、JOB後、ユーザー指示時、等)には、確定した不良吐出ノズル情報が不良吐出ノズル判断部130から不良ノズル情報蓄積部126にも送られる。
【0073】
ヘッドドライバ128は、不良吐出ノズル判断部130から送られてくる不良吐出ノズル情報に基づいて、不良吐出ノズルに対応するノズルを非駆動とする。
【0074】
また、不良ノズル情報蓄積部126に送られる不良吐出ノズル情報は、不良ノズル情報蓄積部126に蓄積記憶され、不良吐出ノズルの統計的な情報として利用される。なお、不良ノズル情報蓄積部126に蓄えられている不良吐出ノズル情報は、初期不良ノズル情報として適当なタイミングで不良吐出ノズル判断部130に送られる。ここでいう初期不良ノズル情報は、どのノズル(CMYKインクに対応)が不良ノズルであるかを示す情報であり、ヘッド出荷時の検査情報を初期不良ノズル情報の初期値とし、特定周期で不良ノズル情報蓄積部126に蓄積される不良吐出ノズル情報に基づいて、初期不良ノズル情報は適時更新される。不良吐出ノズル判断部130は、この初期不良ノズル情報のうち必要分の不良吐出ノズル情報を、印刷開始時等に図示しないメモリに蓄えて、不良吐出ノズルの確定処理に使用する。
【0075】
不良吐出補正判断部122は、不良吐出ノズル判断部130から送られてくる不良吐出ノズル情報から補正すべき画像部分(不良吐出ノズルで記録する画像部分)に対する補正情報を生成し、当該補正情報を不吐出ノズル補正画像処理部112に送る。
【0076】
また不良吐出補正判断部122は、このようにして生成される補正情報と直前の補正情報とを比較して、新規に不良吐出ノズルが発生(好ましくは所定数以上発生)して補正情報が増加しているか否かを検出する。補正情報が増加していると認められる場合には、不良吐出補正判断部122から不良吐出検出表示部134に所定の指示が送られる。
【0077】
この所定の指示を受け取った不良吐出検出表示部134は、新規の不良吐出ノズルによる記録が行われている不良吐出印刷物(すなわち新規の不良吐出ノズルに対する補正が行われずに印刷された印刷物)を識別可能にする処理を行う。具体的には、不良を検出した印刷物(記録用紙)から補正が完了した印刷が開始されるまでの印刷物に付箋を着けること等が不良吐出検出表示部134により行われる。そして、新規の不良吐出ノズルに対する補正処理が完了した後の印刷時(補正処理完了後の画像データ(ハーフトーン画像データ)に基づく印刷時)には、上記所定の指示が無効化されるように、不良吐出補正判断部122から不良吐出検出表示部134に指示信号が送られ、不良吐出検出表示部134は通常動作(通常表示)を行う。
【0078】
上述の一連の処理フローに基づいて、不良吐出ノズルの検出及び入力画像データの補正処理が適切に行われる。なお記録ヘッド50の安定性によっては、上記の検出及び補正処理を、印刷開始時の最初の所定枚数の記録紙に対してだけ実施する(オフラインスキャナーを使用する構成もあり得る)ことや、ユーザーが指示した時だけ実施する構成も可能である。
【0079】
<<印刷レイアウトの説明>>
次に、記録紙16上の印刷レイアウトの例について説明する。図4は、不良吐出ノズルを検出して補正するシステムにおけるプリント用紙上のレイアウトを示す図である。図4の上側が記録紙16の先端側であり、記録紙16は図4の下から上に向かって(矢印Cで示す搬送方向に)搬送される。例えば、図示せぬドラムの周面に記録紙16を固定して、ドラムの回転によって記録紙16を搬送するドラム搬送方式の場合、ドラムに設けられたグリッパーによって記録紙16の先端部分を保持する構成が採用される。
【0080】
記録紙16は、用紙端部に設けられる検出用駆動波形区域150と通常駆動波形区域152とに分けられる。検出用駆動波形区域150は、上述のテストパターン102を印刷するためのテストパターン領域154と余白領域156とを含み、通常駆動波形区域152は、所望の画像を印刷するためのユーザー領域158を含んで構成される。
【0081】
テストパターン領域154とユーザー領域158との間に設けられる余白領域156は、テストパターン印刷から通常印刷への切り換えのための遷移区間であり、記録紙16の搬送速度に基づいて当該切り換えに必要な領域が余白領域156として確保されることになる。特に、特別な駆動波形信号を使用してテストパターン領域154に対しテストパターンを形成する場合には、この特別な駆動波形信号から通常の駆動波形信号に切り換えるのに必要な時間に相当する余白領域が確保される。この余白領域156は、記録紙16の搬送方向Cに関して、少なくともヘッド50のノズル領域160に相当する分を設けることが好ましい。なお、テストパターン102を印刷するための特別な駆動波形信号は、不良吐出ノズルと正常吐出ノズルを区別しやすくするために用いられ、位置誤差を増幅するような駆動波形信号や、不良吐出ノズルが不吐出ノズルとして機能しやすくするような駆動波形信号を特別に設計して使用することもできる。
【0082】
<<テストパターンの説明>>
次に、テストパターンの具体例について説明する。図5は、記録紙(記録媒体)に記録されるテストパターンの基本形を示す図である。図6は、テストパターンの一具体例を示す図であり、基準位置検出バーを含むテストパターンが示されている。なお、図5及び図6は、テストパターン102が印刷される記録紙16の端部が拡大されて示されている。
【0083】
記録ヘッドに対して記録紙16を搬送するとともに記録ヘッドの複数のノズルを一定間隔で駆動することにより、記録紙16上にライン状のテストパターン102の基本部分が作成される。すなわち、記録ヘッドの複数のノズルのうち所定間隔を有するノズル群から構成されるノズルブロック毎にインク滴が吐出されてライン状のテストパターン102が形成され、記録紙16の搬送と共にインク滴を吐出するノズルブロックを順次変えることによって、図5に示されるようにテストパターン102が千鳥状に形成される。
【0084】
図5のテストパターン102は、いわゆる「1オンnオフ」型のラインパターンである(nは自然数)。1つのラインヘッドにおいて、実質的に用紙幅方向(x方向)に沿って1列に並ぶノズル列(正射影によって得られる実質的なノズル列)を構成するノズルの並びについて、そのx方向の端から順番にノズル番号を付与したとき、ノズル番号を2以上の整数「A」で除算したときの剰余数「B」(B=0,1・・A−1)によって同時吐出するノズル群をグループ分けし、AN+0、AN+1、・・・AN+Bのノズル番号のグループごとに打滴タイミングを変えて(ただし、Nは0以上の整数)、それぞれ各ノズルからの連続打滴によるライン群を形成することにより、図5のような1オンnオフ型のラインパターンが得られる。
【0085】
図5は、「1オン11オフ」(A=12、B=0〜11)の例である。本実施形態ではA=12を例示するが、一般にAN+B(B=0、1、…A−1)、Aは2以上の整数について適応可能である。
【0086】
このような1オンnオフ型のテストパターンを用いることにより、各ラインブロック内で隣接ライン同士が重なり合わず、全ノズルについてそれぞれ他のノズルと区別可能な独立した(ノズル別の)ラインを形成できる。テストパターン102を構成する各ラインはそれぞれ各ノズルからのインク吐出に対応しているため、それぞれのラインが適切に形成されているか否かを判定することによって、対応のノズルからインク滴が適切に吐出されているか否かを検出することが可能である。
【0087】
なお、テストパターンには、上述したいわゆる「1オンnオフ」タイプのラインパターン以外に、他のラインブロック(例えば、ラインブロック相互間の位置誤差確認用のブロック)やラインブロック間を区切る横線(仕切り線)、図6のような基準位置検出バー106a、106bなど、他のパターンを含んでも良い。
【0088】
本実施形態では、特に図6に示すように、テストパターン102の上部及び下部の各々において基準位置検出バー106a、106bも記録される。この基準位置検出バー106a、106bは、後述するように、テストパターン102の位置検出の基準となる。
【0089】
インク色の異なる複数のヘッドを有するインクジェット印刷装置の場合、各インク色に対応するヘッド(例えば、CMYKの各色に対応したヘッド)について、同様のラインパターンが形成される。
【0090】
ただし、記録紙16上における非画像部(図4のテストパターン領域154と余白領域156を含んだ余白部)の面積には制限があるため、1枚の記録紙16に全色ヘッド全ノズル分のラインパターン(テストチャート)を形成できないことがある。このような場合は、複数枚の記録紙に分けてテストパターンが形成される。
【0091】
(テストパターンの読取画像の説明)
図7は、印刷装置の解像度を1200DPI(ドット/インチ)とした場合におけるテストパターンの読取画像の概念図である。図7の読取画像において、各ライン状のパターンの長手方向(Y方向、副走査方向、用紙搬送方向)の長さは、100DPIでは4画素分に相当し、1200DPIでは48画素分に相当する。
【0092】
図8は、読取解像度(X方向)を500DPIとした場合におけるテストパターンの読取画像の概念図である。図8からも明らかなように、500DPIの読取解像度では、テストパターン102の読取画像の各ラインがぼやけてしまい、明確な輪郭を識別することは困難である。
【0093】
高解像度の読取画像によれば各ラインの位置を明確に特定することが可能である一方で、低解像度の読取画像では輪郭がぼやけてしまい各ラインの位置を単純には特定することが難しい。しかしながら、高解像度の画像読取装置(スキャナー)は装置自体が高価であるため、コスト低減の観点からは、低解像度の画像読取装置であってもテストパターンの各ラインの位置を精度良く特定することができる方法が望まれている。
【0094】
そこで、低解像度の読取画像からテストパターンの位置を精度良く特定する方法の一例を以下に示す。
【0095】
なお、以下の説明において、読取画像を一方向(X方向)に切断した際の画像濃度(濃淡)分布をプロファイルと呼ぶ。このプロファイルは必ずしも1画素だけの濃度(濃淡)分布を指すものではなく、例えばY方向に平均化した濃度(濃淡)を用いてX方向に関する濃度(濃淡)分布をプロファイルとして採用してもよい。
【0096】
(不良吐出ノズル検出フロー)
次に、テストパターン(ラインパターン)の各ライン位置の位置誤差を求める方法について説明する。
【0097】
図9は、テストパターンの各ライン位置の位置誤差を求める一連の流れを示すフローチャートである。図10は、読取画像からライン位置特定のための基準位置を検出する方法を説明する図である。図11は、基準位置に基づくノズルのラインブロックの切り出しを説明する図である。
【0098】
記録ヘッドのノズルによって記録紙16に印刷されたテストパターン102は、テストパターン読取り部136(図3参照)により画像データとして読み取られ、テストパターン102の読取画像データが生成される(図9のS20)。このときのテストパターン102の読取条件を、一例として、X方向(主走査方向)500DPIとし、Y方向(副走査方向)100DPIとする。
【0099】
そして、テストパターン102の読取画像データから、各テストパターン102のライン位置を特定する際に用いられる基準位置(基準位置検出バー106a、106b)が決定される(図9のS22)。
【0100】
<<基準位置を決定する処理の説明>>
具体的には、図10に示すように、テストパターン102の端部を必ず含むような矩形領域である基準位置検出ウインドウ140を、テストパターン102の両端(X方向に関する左右端)の各々に設定する。このとき読取画像(RGBカラー)に関し、テストパターン102と記録紙16と読取装置(図3のテストパターン読取り部136)との位置関係から、読取画像内におけるテストパターン102の位置はある程度特定できているものとする。ある程度分かっているテストパターン位置範囲に関して、テストパターン102の一方の端部を必ず含むように基準位置検出ウインドウ140は設定される。
【0101】
そして、この基準位置検出ウインドウ140を上下2つの領域に分けて、それぞれの領域においてX方向及びY方向に関する光学濃度の投影グラフ142a〜142d(X座標投影グラフL1、X座標投影グラフL2、Y座標投影グラフL1、Y座標投影グラフL2、X座標投影グラフR1、X座標投影グラフR2、Y座標投影グラフR1、Y座標投影グラフR2)が作成される。ここでいうX座標投影グラフL1(142a)及びY座標投影グラフL1(142c)は、図10の左端側の基準位置検出ウインドウ140の上方領域の投影グラフを示す。同様に、X座標投影グラフL2(142b)及びY座標投影グラフL2(142d)は、左端側の基準位置検出ウインドウ140の下方領域の投影グラフを示す。また図示は省略するが、右端側の基準位置検出ウインドウ140の上方領域の投影グラフをX座標投影グラフR1及びY座標投影グラフR1と呼び、右端側の基準位置検出ウインドウ140の下方領域の投影グラフをX座標投影グラフR2及びY座標投影グラフR2と呼ぶ。これらの投影グラフはRGB各色について作成され、最もコントラストの高いX(Y)座標投影グラフが使用される。これ以降は最もコントラストの高いカラー画像プレーンに対する演算とする。
【0102】
Y座標投影グラフL1を例にして説明する。Y座標投影グラフL1は、左端側の矩形領域(基準位置検出ウインドウ140)の上方における濃度階調値をX軸方向に平均化することによって作成される。この矩形領域には、用紙白地部、テストパターン102の第1の基準位置検出バー106a、そしてライン状の各テストパターン102が含まれる。したがって、Y座標投影グラフL1(142c)には、白地部(白色)、第1の基準位置検出バー106a(濃い濃度)及びライン部(薄い濃度)を示す箇所が順番に並ぶ。このため、白色から濃い濃度に変化するエッジを検出することで、第1の基準位置検出バー106aの左側上端Y座標を求めることができる。
【0103】
また、X座標投影グラフL1(142a)は、左端側の矩形領域(基準位置検出ウインドウ140)の上方における濃度階調値をY軸方向に平均化することによって作成される。この矩形領域には、用紙白地部、及びテストパターン102の第1の基準位置検出バー106a(及び第1の基準位置検出バー106aと重なるライン状のテストパターン102)が含まれる。したがって、X座標投影グラフL1(142a)には、白地部(白色)と、基準位置検出バー1及びライン部(濃い濃度)とを示す箇所が順番に並ぶ。このため、白色から濃い濃度に変化するエッジを検出することで第1の基準位置検出バー106aの左側上端X座標を求めることができる。
【0104】
他の投影グラフも同様にして解析可能である。結果として、図11に示されるような、第1の基準位置検出バー106a及び第2の基準位置検出バー106bの各々の角部(テストパターンコーナーCL1、CL2、CR1、CR2)のXY座標を求めることができる。このテストパターンコーナーCL1、CL2、CR1、CR2は、基準位置として用いられる。
【0105】
なおヘッド50が不吐出ノズルを含み、第1の基準位置検出バー106a及び第2の基準位置検出バー106bが不吐出ノズルを含むノズル群によって印刷される場合であっても、第1の基準位置検出バー106a及び第2の基準位置検出バー106bはX方向(ノズル方向)及びY方向に連続したベタ部であるため、不良吐出ノズル(不吐出ノズル)に対応する印刷箇所51aの位置検出結果への影響は少ない。また第1の基準位置検出バー106a及び第2の基準位置検出バー106bの各々の部分についてRGBカラーを解析することで対応するインクを決定することもできる。
【0106】
<<各ラインブロックの位置を決定する処理の説明>>
次に、基準位置であるテストパターンコーナーCL1、CL2、CR1、CR2から各ラインブロック146の位置が求められる(図9のS24)。各ラインブロック146は、図11に示されるように、X方向に概ね一定間隔で並ぶ一群のラインによって構成され、Y方向に隣接するラインブロック146は、1列のノズル配列(投影ノズル配列)において隣接するノズルからのインク滴によって印刷される。したがって、テストパターン102における各ラインは、Y方向に順次並ぶラインブロック146のいずれかに割り当てられることとなる。
【0107】
まず、テストパターンコーナーCL1、CL2、CR1、CR2の位置関係から、テストパターン102の回転角とX方向及びY方向の倍率誤差(実際の倍率と設計上の倍率とのずれ)が算出される。テストパターン102のレイアウトは既知の情報であるので、既知のテストパターン設計情報(例えばテストパターン102のX方向ピッチ、Y方向ピッチ、X方向幅、Y方向長さ、等)に基づいてラインブロック146の位置(テストパターンコーナーCL1、CL2、CR1、CR2からの相対位置や矩形の4つのコーナー座標)が求められる。各ラインブロック146の読取画像上の相対位置は、先に求めておいた倍率誤差及び回転角に基づいて、テストパターンコーナーCL1から算出される。このとき不良吐出ノズルによって印刷される箇所51aが存在しても、第1の基準位置検出バー106a及び第2の基準位置検出バー106bは不良吐出ノズルに対応する箇所51aの影響をほとんど受けないため、ラインブロック146の位置を正確に算出することができる。このようにして、全てのラインブロック146の位置が特定される。
【0108】
<<シェーディング補正の説明>>
次に、読取画像データを基にシェーディング補正が行われる(図9のS26)。以下、本実施形態におけるシェーディング補正の内容について説明する。
【0109】
図12(a)は、テストパターン全体の読取画像に対するシェーディング特性データの取得位置(解析位置)を示した模式図である。用紙搬送方向については、用紙先端(図12(a)における上側の端)から用紙後方(図12(a)の下方)に向かって順に、位置A、位置B、位置C、位置Dの4箇所を採用した。用紙幅方向(X方向)については、均等間隔で11箇所の位置を採用した。図中、グレートーンで示した矩形領域が、図13及び図14のプロット点に相当する。
【0110】
図12(b)は、図12(a)の一部を拡大した図である。図12(a)、(b)に示したように、位置A、位置Cはテストパターンの端部の領域に対応し、位置Bはテストパターン内部の領域に対応し、位置Dはテストパターン外部の領域に対応している。
【0111】
読取画像としては、シェーディング補正の実施によって、用紙白地の部分が平坦な読取信号分布になることが期待されている。図3で説明したように、用紙先端に近い領域は、用紙を保持するグリッパーの影響で、読取り部136(のセンサ)と用紙との距離が変化する。つまり、グリッパーによって抑え付けられている用紙先端が最も距離が遠く、先端から離れるにつれて徐々に正常な位置(距離)に近づく。読取り部136に設けられている照明用光源の光拡散性が十分でない場合、距離変化の影響により、距離に応じて配光特性が変化する。その結果、用紙上の位置によってシェーディング特性が変わる。
【0112】
読取り部136(センサ)と用紙の距離は、用紙の剛性によって変化し、更に、再現性が低いため、事前にシェーディング補正テーブルを作成しても十分な補正精度が出ないという問題がある。
【0113】
また、テストパターン102に隣接してシェーディング補正用の領域を設けたとしても、搬送方向にシェーディング特性が変化するため、搬送方向に位置を変えて用紙上の複数箇所に(例えば、テストパターン102の前後に)、シェーディング補正用の領域を設けるなどの工夫が必要となる。しかし、このようなシェーディング補正用の領域を設けることは、テストパターン102の領域及びシェーディング補正用領域を含む検出パターン面積の増大となるデメリットがある。
【0114】
図13は、図12(a)、(b)で示した読取画像内の所定領域(矩形領域)毎にヒストグラムを作成し、その95%点の特性と、矩形領域の平均値とを比較したものである。ヒストグラム95%点とは、所定領域のヒストグラムを作成し、信号が小さい方から数え上げて、画素数がその所定領域内全画素の95%に達する信号値を示す。テストパターン102は、1オン11オフなど、主に白地が50%以上の面積を占めるため(図5,図6参照)、ヒストグラム95%点は白地部分だけの情報を含んでいる。そのため、ヒストグラム95%点の特性は、読取装置の照明の配光分布を反映した結果になっている。
【0115】
図13では、位置Aについてのヒストグラム95%点及び平均値の分布と位置Dについてのヒストグラム95%点及び平均値の分布を示した。
【0116】
図13のように、2つの特性(ヒストグラム95%点特性と平均値特性)は合致している。なお、平均値と95%点なので、信号の絶対値はオフセットしている。
【0117】
図14は、位置A、位置B、位置C、位置Dについて、ヒストグラム95%点を比較した図である。図14に示すように、各位置A〜Dの特性は、搬送方向に変化するシェーディング特性を反映している。
【0118】
図13及び図14の考察によって得られた知見から、本実施形態では読取画像に基づいてシェーディング補正を実施する(図9のS26)。具体的には図15に示す手順に従う。
【0119】
図15はシェーディング補正処理のフローチャートである。まず、読取画像に対してシェーディング特性を測定する領域を、照明光の光量分布の変化に沿って設定する(S42)。本実施形態では、図12(a)で説明したように、用紙幅方向と用紙搬送方向の2方向について、複数の位置に測定領域(「解析領域」に相当)を設定する。用紙幅方向は、主に光源の配光分布に応じた光量差があり、用紙搬送方向は、グリッパー保持による用紙の沈み込み量の変化に応じた光量差がある。このような2次元的な光量分布に対応して、測定領域を2次元的に配置することにより、シェーディング特性の2次元分布を把握することができる。
【0120】
図15のS42で設定した各測定領域(シェーディング特性補正領域)において、ヒストグラムを作成し、所定のパーセント点(例えば、95%点)に相当する信号を求め、2次元的なシェーディング特性分布Shd(x,y,rgb)を作成する(S44)。
【0121】
次に、シェーディング特性分布Shd(x,y,rgb)が平坦になるように、補正係数CorrectShd(x,y,rgb)=Const/Shd(x,y,rgb)を求める(S46)。なお、式中の「Const」は所定の定数を表す。
【0122】
こうして得られた補正係数CorrectShd(x,y,rgb)を用いて、読取画像に対して補正係数CorrectShd(x,y,rgb)に基づいてシェーディング補正を行う(S48)。読取画像の各画素の信号値に対して補正係数を適用し、シェーディング補正済みの読取画像データを得る。
【0123】
なお、補正係数が画像位置に対して間引かれている場合は、公知の補間演算(例えば、線形補間、ニアレストネイバー、スプライン補間など)を用いて、画像位置に対して1対1の関係でシェーディング補正係数が対応するように演算する。
【0124】
また、図13及び図14では、ヒストグラムの95%点を例示したが、95%点以外のパーセント点を採用することも有効である。テストパターンのデューティー(1オンNオフのNの値が大きいほど、低デューティーとなる)に応じて、有効なパーセント点は変わる。低デューティーであるほど、低パーセント点を採用でき、高デューティーであるほど高パーセント点を採用する。ただし、100%点付近は読取系のノイズの影響が大きいときは避けることが望ましい。
【0125】
<<画像歪補正の説明>>
次に、読取画像の歪みを補正するための画像歪補正が行われる(図9のS26)。以下、本実施形態における画像歪補正の内容について説明する。まず、読取画像の歪について簡単に説明する。
【0126】
図16に歪みの無い読取画像と歪みのある読取画像とを比較して示した。図16(a)は歪みの無い読取画像、図16(b)は歪みのある読取画像の例である。ここでは1オンnオフ型のテストパターン102の読取画像において、グリッパーによる用紙の押さえ込みに起因する用紙先端部の沈み込みと、用紙の剛性による用紙の浮き上がりに起因する歪みが発生している様子が示されている。このように、読取画像に歪みが発生すると、用紙の横方向(X方向)及び縦方向(Y方向)に、描画ラインが揺れるような画像となる。
【0127】
図5、図6で説明したように、不良吐出ノズル検出パターン(テストパターン102)は、X方向に規則的な間隔のラインパターン(ラインブロック)をY方向に位置を変えて1段毎に1ノズルシフトした構成である。1ノズルのシフト量を設計値として、読取画像における各段のラインブロックをX方向にシフトした結果が図17である。図17(a)は、歪みの無い読取画像(図16(a)をシフトしたもの)、図17(b)は歪みのある読取画像(図16(b)をシフトしたもの)である。
【0128】
図17(a)に示すように、歪無読取画像では、各段のラインの位置が搬送方向に揃うため、各ノズル位置の特定は容易であり、図17(a)のように、各段のラインを含んだ矩形領域(ノズルに対応する不吐出判定領域)170内の濃度分布に基づいて不吐出など不良吐出を判断可能である。
【0129】
これに対し、図17(b)に示すように、歪有読取画像では、歪みの影響で各ラインの位置が揺らぐため、不吐出検出判定領域172を歪み量程度まで広げなければ、ノズル位置をカバーできない。特に、ラインパターンの端部(図17(b)の下側の端部)は、歪み量が大きいため、不吐出検出判定領域172を広く設定しないと、正しい判定ができない。つまり、図17(a)と同等の不吐出判定領域170では、正確な判定ができない。また、図17(b)の場合、ライン位置の大きな揺らぎを判断することが困難である。
【0130】
図18は、画像歪みのある読取結果の説明図である。図18では、1オン9オフのテストパターンの読取画像において、用紙先端部に近い第1段目のラインブロックと、第2段目のラインブロックについて、歪みが発生している様子が描かれている。このような画像歪は用紙先端部を固定するグリッパーの影響によって発生しやすい。
【0131】
図19は、画像歪みを補正する処理内容の説明図であり、ラインパターンを含む画像領域内に設定される基準領域と比較領域の関係を示す図である。読取画像上で歪み方向に対して歪みを無視できる領域サイズを決定する。このサイズは歪みの性質によって大きさが変わる。振動のように横方向に対しては歪みがない場合は、領域の横方向の大きさは用紙幅サイズまで利用可能である。縦方向に歪みがある場合でも読取解像度に対して十分歪み周期が大きければ、縦方向を複数画素サイズとして領域サイズを利用できる。
【0132】
縦方向にも横方向にも歪みが有る場合は、縦方向を1画素とし、横方向は、ライン数が所定数以上含まれ、かつ歪みが無視できるサイズに設定する。
【0133】
図19では、縦方向を1画素、横方向は5本のラインが含まれる領域サイズを有する基準領域Sが設定され、これと同じ領域サイズで基準領域Sの縦方向の前後に隣接して接する比較領域C1、C2の例が示されている。
【0134】
図20は、画像歪補正処理のフローチャートである。
【0135】
まず、読取画像上で基準領域Sを設定する(S52)。基準領域Sの領域サイズについては、図19で説明した条件に合致するものとする。次に、標準領域Sと比較する比較領域C1を設定する(S54、図19参照)。
【0136】
そして、基準領域Sと比較領域C1を相対的に所定範囲内でシフトさせながら、相関評価関数E(S,C1,sx)を計算する(S56)。ここでいうsxは、X方向のシフト量を表している。
【0137】
図21(a)は、図20のS56にて横方向にプラス1画素、比較領域C1をシフトさせた様子を示している。図21(b)は、図20のS56にて横方向にマイナス1画素、比較領域C1をシフトさせた様子を示している。図21(a)(b)に示したように、横方向に1画素単位で領域をシフトさせながら、相関評価関数Eを計算する。横方向にシフトさせるときの刻み量は1画素とすることが最も好ましいが、複数画素単位でシフトさせることも可能である。
【0138】
相関評価関数Eとして、例えば、以下に示す〔数式1〕や〔数式2〕に示す関数を用いることができる。
【0139】
〔数式1〕
相関評価関数E(S,C1,sx)=ΣABS(Is(x)−Ic1(x+sx))
〔数式2〕
相関評価関数E(S,C1,sx)=Σ(Is(x)−Ic1(x+sx))2
なお、数式中のIs(x)は基準領域Sの画像信号を表し、xは横方向の位置(画素位置)を表す。Ic1(x)は比較領域C1の画像信号を表し、xは横方向の位置(画素位置)を表す。
【0140】
数式1では、両領域における画像信号の差分の絶対値の総和を計算している。数式2では、両領域における画像信号の差分の2乗和を計算している。これら数式1,2で定義される相関評価関数Eは、評価値が最小となるときに、相関が最大となる。
【0141】
基準領域Sが縦方向の複数画素として設定されている場合は、下記〔数式3〕で示すように、縦方向の平均値を求めて、数式1又は数式2中のIs(x)に代えて、プロファイルIPs(x)を利用する。
【0142】
〔数式3〕
IPs(x)={Σ(Is(x,y))}/N (Nは領域内の縦方向画素数)
同様に、比較領域C1が縦方向の複数画素として設定されている場合は、下記〔数式4〕で示すように、縦方向の平均値を求めて、数式1又は数式2中のIc1(x)に代えて、プロファイルIPc1(x)を利用する。
【0143】
〔数式4〕
IPc1(x)={Σ(Ic1(x,y))}/N (Nは領域内の縦方向画素数)
シフト量sxを変えながら相関評価関数E(S,C1,sx)を計算し(図20のS56)、相関評価関数Eが最小値となるシフト量sxの値を「歪み補正位置」としてメモリに記憶する(S58)。
【0144】
テストパターン102の読取画像上で基準領域Sが横方向(用紙幅方向)に分割されている場合には(S60でYES判定時)、演算対象としている領域が横方向についての最後の領域であるか否かを判定する(S62)。横方向に他の領域が存在していれば、S62の判定でNO判定となり、演算対象とする基準領域Sと比較領域C1を横方向に1つ移動して(S64)、S52に戻る。こうして、基準領域Sを変えて、上述のS52〜S64の処理が繰り返される。
【0145】
領域が横方向に分割されている場合であって、横方向の最後の領域について比較演算(相関評価関数Eの計算による歪み補正位置の決定)を終了した場合には、S62の判定でYES判定となり、S66に進む。
【0146】
また、領域が横方向に分割されていない場合(S60でNO判定時)もS66に進む。S66では、演算対象としている比較領域が縦方向の最後の領域であるか否かを判定する(S66)。縦方向に他の比較領域があれば、S66でNO判定となり、比較領域を縦方向に1つ移動して(S68)、S52に戻り、比較領域C1をCk(k=2,3,・・・)に変更して、同様の処理(S52〜68)を繰り返す。
【0147】
縦方向の最後の領域について比較演算(相関評価関数Eの計算による歪み補正位置の決定)を終了した場合には、S68の判定でYES判定となり、本処理を終了して、図9のメインルーチンに戻る。
【0148】
(基準領域と比較領域の関係について)
図22は、画像歪みのある読取結果における歪み補正演算の基準領域と比較領域の関係の第1例を示した説明図である。図22のように、基準領域Sを固定し、基準領域Sを中心にして、基準領域Sから連続して(隣接領域同士が接しながら)次第に基準領域Sから離れる方向に比較領域Ci(i=1,2,3・・・・)を順次設定していく形態を採用することができる。図22において基準領域Sを中心にして、図22の上方向に向かって比較領域C1,C3,C5・・・・・が設定される。また、基準領域Sから図22の下方向に向かって、比較領域C2,C4,C6・・・・・が設定される。このように、基準領域Sを中心にして上下方向に連続的に比較領域Ciを設定し、これらを順次比較する場合、隣接するCiとCi+2(Ciの次にCi+2の領域について演算を行う場合)では、先に求めたCiの歪み補正位置を初期値として、Ci+2を所定範囲シフトすることが望ましい。これにより、演算時間の短縮を達成できる。
【0149】
図23は、画像歪みのある読取結果における歪み補正演算の基準領域と比較領域の関係の第2例を示した説明図である。
【0150】
図23に示すように、テストパターンの一端を基準領域Sとして、比較領域Ci(i=1,2,3・・・・)を基準領域Sから離れる方向で順次設定していく形態を採用することができる。図23の場合、隣接領域同士は互いに接している。このように基準領域Sから次第に遠ざかる方向に並ぶ比較領域Ci(i=1,2,3・・・・)を順次基準領域Sと比較する演算を行う場合、隣接するCiとCi+1(Ciの次にCi+1の領域について演算を行う場合)では、Ci+2の演算に際し、Ciの歪み補正位置を初期値として、所定範囲シフトすることが望ましい。
【0151】
図24は、画像歪みのある読取結果における歪み補正演算の基準領域と比較領域の関係の第3例を示した説明図である。
【0152】
図24に示すように、基準領域Sから離れる方向に設定される比較領域Ci(i=1,2,3・・・・)について、領域同士が接しておらず、互いに離れている場合でも、信頼できる初期値(設計値)に基づいて所定範囲シフトして比較することもできる。
【0153】
なお、各段のラインパターンは、横方向(X方向)について周期性を持つため、相関評価関数Eの演算はライン周期毎に極値を持つ。シフトさせる所定範囲を広げすぎると、別周期の極値に陥る可能性がある。したがって、(ラインパターンの繰り返し周期)>(所定範囲)を目安に比較演算を実施する。
【0154】
例えば、プリンタ解像度1200DPI、読取解像度500DPIのように、ライン幅に対して低解像度の場合は、歪みが大きい場合は、十分ライン周期を広くする(1オンnオフのnの値を大きくする)必要がある(図8参照)。
【0155】
<<歪み補正後の画像について>>
図25(b)に歪み補正後の読取画像の例を示した。図25(a)は、歪みの無い読取画像に対して本例の画像歪み補正を適用した画像の例であり、図17(a)のデータと概ね一致している。図25(b)は、歪みのある読取画像に対して歪み補正処理を実施した画像の例である。図25(b)と図17(b)を比較すると明らかなように、図25(b)では、各段のライン位置が概ね揃っている。したがって、この歪み補正後の読取画像に対しては、図25(a)の場合と同等の判定領域(解析用のウインドウ)170の広さで、正確な不良吐出ノズル判定が可能である。
【0156】
上述の説明では、単純に1画素単位でシフトさせる比較演算を説明したが、図26に示すように、比較領域を横方向に補間処理(ここでは、横方向に拡大処理)した後で歪み補正演算を実施する場合、1画素未満の単位で歪みを精密に求めることが可能である。例えば、補間処理によって元の読取画像に対して画素数を2倍にすれば、読取解像度の0.5画素単位(1/2画素単位)で歪みを補正することができ、補間処理によって元の読取画像に対して画素数を4倍にすれば、読取解像度の0.25画素単位(1/4画素単位)で歪みを補正することができる。このような態様によれば、更に精度良く不良吐出ノズル判定が可能になる。
【0157】
なお、本実施形態による画像歪みの補正方法によれば、テストパターン102におけるライン間の歪みを補正することも可能であるし、ライン内の歪みを補正することも可能である。再現性の無い画像歪みは、読取画像内のどの位置に発生するか事前に特定することはできないため、読取画像の全体にわたって(テストパターン内の全ラインブロックについて)、上述の画像歪み補正の演算(基準領域と比較領域との相関演算)を行うことが好ましい。異なるラインブロックについて歪みを補正する場合でも、共通の基準領域を用いることができる。
【0158】
<歪補正後の画像から不良吐出ノズルを検出する方法の説明>
ここで、歪補正後の画像を用いて不吐出判定、位置誤差大となるノズルを検出する方法について説明する。
【0159】
図27は、歪補正後の画像の一部を示したものである。図25(b)で説明したとおり、歪補正後の画像は各ノズルで記録したラインが概ね1列に(直線的に)並んだものとなる。すなわち、1オンnオフで描かれた「n+1」段のラインブロックの画像位置が修正され、各段に対応した「n+1」個のノズルによる各ライン(「n+1」本分のライン)が概ね1列に並ぶ。
【0160】
このように、歪補正後に図27の画像縦方向(Y方向)に略1列に並んだラインは、複数のノズルの打滴結果を反映したものである。これら複数のノズルに対応した略1列に並んだラインを含む範囲について、不良吐出を判定するための判定領域(符号170)が設定される。そして、複数ノズルに対応する略1列に並んだラインについて、Y方向(画像縦方向)に信号値の平均を計算し、複数ノズルに対応する範囲の平均プロファイルPaveall(x)を計算する。
【0161】
また、複数ノズルに対応する範囲内における各ノズルに対応する個々のラインの範囲(1ノズルに対応する範囲)毎に、Y方向に信号値の平均を計算し、1ノズルに対応する範囲の平均プロファイルPavenzj(x)を計算する。変数xは、画像内でおよそノズルに対応する範囲(図27において符号170で示した矩形の範囲)内のX方向位置を表す。
【0162】
また「nzj」は、各ノズルの位置を変数jで表したものであり、複数ノズルに対応する範囲内の1オンnオフによる「n+1」段のライン列の場合、jは「1」から「n+1」まで(或いは、0からnまで)取り得る。
【0163】
こうして求めたPaveall(x)と、各ノズルのPavenzj(x)の間で相関計算(若しくは、差分計算)を行う。例えば、次式(数式5)に示される差の二乗和よって評価値E(nzj)が計算される。
【0164】
〔数式5〕 E(nzj)=Σ(Paveall(x)−Pavenzj(x))2
なお、式中のΣは、演算対象範囲内の全てのxについての和を計算する。
【0165】
こうして求めた評価値の計算結果が所定値(判定用の基準値)から外れる場合を「不吐出」又は「位置誤差が大きい」ノズルであると判断する。
【0166】
不吐出の場合、Pavenzj(x)は、ほぼ紙白(用紙の白地部分)と等しい階調値となり、上記評価値E(nzj)の演算結果は大きい値となる。
【0167】
また、位置誤差が大きい場合は、階調値の紙白位置と、ノズル描画ラインの位置がPaveall(x)とPavenzj(x)で異なるため、上記評価値E(nzj)の演算結果は大きい値となる。
【0168】
逆に、位置誤差が少ない場合(平均プロファイルがほぼ一致する場合)、上記評価値E(nzj)の演算結果は、ほぼゼロになるため、相対的に小さな値となる。
【0169】
したがって、評価値E(nzj)の演算結果を所定値と比較することにより、不吐出判定並びに位置誤差大となるノズルの検出が可能である。
【0170】
<<ラインブロックに傾きがある場合の対処>>
図9のS26、S28で説明したとおり、ラインブロック位置に基づいて、シェーディング補正データを作成し、シェーディングを補正する(S26)。また、ラインブロック位置に基づいて画像歪みを補正する(S28)。
【0171】
ラインブロックに傾きがある場合は、以下のような処理を行う。
【0172】
(1)縦方向の画像歪みがラインブロックの切り出し高さで無視できる場合は、図28に示すように、プロファイルを作成するための解析領域148をラインブロック146内の一部分においてオーバーラップさせ、このオーバーラップ部分については平均化してプロファイルを作成する。その後、上述の画像歪みを補正する。
【0173】
(2)縦方向の画像歪みがラインブロックの切り出し高さで無視できない場合は、先に画像として画像歪みを補正する。次に、画像歪み補正後のデータからラインブロック位置に基づいて、図28に示すように、解析領域148の一部分をオーバーラップさせて、オーバーラップ部分については平均化してプロファイルを作成する。なお、ラインブロックの傾きの有無や傾き量(角度)は、テストパターンコーナーCL1、CL2、CR1、CR2から検出される。
【0174】
<<プロファイルの2値化処理について>>
次に、各段のラインブロック146(図11参照)内のプロファイルを所定の閾値により2値化して、テストパターン102のライン位置を読取画像の画素単位(読取画素ピッチ単位)で決定する(図9のS30)。このとき用いられる所定の閾値は、白地階調値に対する相対値を使用してもよく、記録紙16の用紙種類毎に変更してもよい。また、用紙依存でインク濃度に一定以上の濃度差がある場合は、画像を解析して閾値を決定することもできる。閾値の決定に際しては、判別分析法やPタイル法などの既知の閾値決定方法を利用することが可能である。
【0175】
あるいは、第1の基準位置検出バー106a及び第2の基準位置検出バー106bの階調値と白地階調値との相対的な値を使用することもできる。例えば、第1の基準位置検出バー106a及び第2の基準位置検出バー106bの階調値を100%とすると共に白地階調値を0%として、X%に相当する階調値を閾値とすることができる。
【0176】
この閾値によるプロファイルの2値化処理では、注目するラインブロック(設定したラインブロック)内のうち、上下に隣接する他のラインブロック146からの影響がない部分(中心付近)を選択してプロファイルを作成した後に、当該プロファイルに対して2値化が行われる。
【0177】
図29は、図25(b)で説明した歪補正後の画像の一部を示したものであり、歪補正後の画像においてプロファイルの2値化を行うときの説明図である。
【0178】
図29に示したように、歪補正後の画像において、各ノズルに対応するラインを横切る位置についてプロファイルを求める(図30参照)。当該プロファイルについて所定の閾値で2値化が行われ、2値化結果に基づいて、不吐出/吐出が判定される。
【0179】
なお、このプロファイルは、1画素よりもY方向(画像縦方向)に多画素を平均した方が精度上好ましい。
【0180】
また、図29では、縦方向に略1列に並ぶ複数のライン(複数のノズルに対応したライン)のうち、1つのノズルに対応するラインを横切る位置に2値化プロファイル位置を設定する様子を図示したが、他のノズルに対応する各ラインを、横切る位置についても、それぞれプロファイルが求められる。
【0181】
図30は、プロファイルを2値化する様子を示している。図30のグラフG1は、テストパターン102の読取画像の画素位置(読取位置)を横軸とし、ラインパターンの読取画像の階調値(光学濃度)の読取信号値(8ビット)を縦軸としている(図30の左側のY軸参照)。グラフG1には閾値T1が設定されており、この閾値T1より下側にある(閾値T1より読取信号値が小さい)画素位置を「ライン位置」とする。連続する複数画素が閾値より下側にある場合は、複数画素の中心画素をライン位置とする。また、例えば連続する複数画素が2個の場合にはより小さい値(階調値)を示す画素位置をライン位置としてもよい。
【0182】
<<ライン位置とノズルの対応付けについて>>
上記の手順により、各ラインブロックLBk(k=1,2,3・・・)内の全てのラインについて、ライン位置を求めた後で、各ライン位置と基準位置(テストパターンコーナーCL1、CR1、CL2、CR2(図11参照))との関係に基づいて、各ライン位置と対応するノズル番号の関係が特定される。なおテストパターンコーナーCL1、CR1、CL2、CR2の位置関係から、テストパターン102の回転角、及びX方向及びY方向の倍率誤差は計算される。
【0183】
テストパターン102のレイアウトは既知の情報として扱うことが可能であるため、既知のテストパターン設計情報から、ラインブロック位置内の各ノズルの位置(テストパターンコーナーCL1(相当)からの相対位置)が求められる。図31に示すように、テストパターン102の各ライン位置は、先に求められる倍率誤差及び回転角に基づいて、テストパターンコーナーCL1からの読取画像上の相対位置Rdが算出され、この算出値Rdからプロファイル上の座標を求めることができる。
【0184】
このようにして、各ラインの位置とノズル位置との対応関係が特定される(図9のS32)。
【0185】
そして、図25〜図27で説明したように、ラインを含んだ判定領域170内の濃度分布に基づき不良吐出ノズルを特定する(図9のS34)。或いは、図29〜図30で説明したようにプロファイルの2値化により不良吐出ノズルを特定する。
【0186】
本実施形態によれば、再現性のない画像変動(像歪みやシェーディング)を効果的に補正することができ、不良吐出ノズルを精度良く検出することができる。また、本実施形態によれば、記録媒体上にシェーディング補正のための専用のパターン領域を設けることなく、不良吐出ノズル検知用のテストパターンの画像領域からシェーディング補正用のデータを取得することができる。これにより、ユーザーにとって商品価値のないパターン領域の面積を増大させることがない。
【0187】
次に、上述した不良吐出ノズルの検出機能及びその検出結果を利用した画像補正機能を具備した画像形成装置の例を説明する。
【0188】
<インクジェット記録装置の説明>
図32は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置200の構成例を示す図である。インクジェット記録装置200は、主として、給紙部212、処理液付与部214、描画部216、乾燥部218、定着部220、及び排紙部222を備えて構成される。このインクジェット記録装置200は、描画部216の圧胴(描画ドラム270)に保持された記録媒体224(便宜上「用紙」と呼ぶ場合がある。)にインクジェットヘッド(「描画ヘッドに相当」)272M,272K,272C,272Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成するオンデマンドドロップ方式の画像形成装置である。
【0189】
(給紙部)
給紙部212には、枚葉紙である記録媒体224が積層されている。給紙部212の給紙トレイ250から記録媒体224が一枚ずつ処理液付与部214に給紙される。本例では、記録媒体224として、枚葉紙(カット紙)を用いるが、連続用紙(ロール紙)から必要なサイズに切断して給紙する構成も可能である。
【0190】
(処理液付与部)
処理液付与部214は、記録媒体224の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部216で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
【0191】
処理液付与部214は、給紙胴252、処理液ドラム254、及び処理液塗布装置256を備えている。処理液ドラム254は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)255を備え、この保持手段255の爪と処理液ドラム254の周面の間に記録媒体224を挟み込むことによって記録媒体224の先端を保持できるようになっている。処理液ドラム254は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体224を処理液ドラム254の周面に密着保持することができる。
【0192】
処理液ドラム254の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置256が設けられる。処理液塗布装置256は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラと、アニックスローラと処理液ドラム254上の記録媒体224に圧接されて計量後の処理液を記録媒体224に転移するゴムローラとで構成される。この処理液塗布装置256によれば、処理液を計量しながら記録媒体224に塗布することができる。本実施形態では、ローラによる塗布方式を適用した構成を例示したが、これに限定されず、例えば、スプレー方式、インクジェット方式などの各種方式を適用することも可能である。
【0193】
処理液付与部214で処理液が付与された記録媒体224は、処理液ドラム254から中間搬送部226を介して描画部216の描画ドラム270へ受け渡される。
【0194】
(描画部)
描画部216は、描画ドラム270、用紙抑えローラ274、及びインクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yを備えている。描画ドラム270は、処理液ドラム254と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)271を備える。本例の描画ドラム270では、回転方向について180度の間隔で周面の2箇所にグリッパー271が設けられ、1回転で2枚の記録媒体224が搬送できるように構成されている。
【0195】
描画ドラム270の周面には、図示しない吸着穴が所定のパターンで多数形成されており、この吸着穴からエアが吸引されることにより、記録媒体224が描画ドラム270の周面に吸着保持される。なお、負圧吸引によって記録媒体224を吸引吸着する構成に限らず、例えば、静電吸着により、記録媒体224を吸着保持する構成とすることもできる。
【0196】
インクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yはそれぞれ、記録媒体224における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の描画ヘッドであり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yは、記録媒体224の搬送方向(描画ドラム270の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
【0197】
描画ドラム270上に密着保持された記録媒体224の記録面に向かって各インクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部214で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体224上での色材流れなどが防止され、記録媒体224の記録面に画像が形成される。
【0198】
描画ドラム270によって記録媒体224を一定の速度で搬送し、この搬送方向について、記録媒体224と各インクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yを相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録媒体224の画像形成領域に画像を記録することができる。かかるフルライン型(ページワイド)ヘッドによるシングルパス方式の画像形成は、記録媒体の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドによるマルチパス方式を適用する場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
【0199】
なお、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0200】
描画部216で画像が形成された記録媒体224は、描画ドラム270から中間搬送部228を介して乾燥部218の乾燥ドラム276へ受け渡される。
【0201】
(乾燥部)
乾燥部218は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、乾燥ドラム276、及び溶媒乾燥装置278を備えている。乾燥ドラム276は、処理液ドラム254と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)277を備える。溶媒乾燥装置278は、乾燥ドラム276の外周面に対向する位置に配置され、複数のハロゲンヒータ280と、各ハロゲンヒータ280の間にそれぞれ配置された温風噴出しノズル282とで構成される。各温風噴出しノズル282から記録媒体224に向けて吹き付けられる温風の温度と風量、各ハロゲンヒータ280の温度を適宜調節することにより、様々な乾燥条件を実現することができる。
【0202】
乾燥部218で乾燥処理が行われた記録媒体224は、乾燥ドラム276から中間搬送部230を介して定着部220の定着ドラム284へ受け渡される。
【0203】
(定着部)
定着部220は、定着ドラム284、ハロゲンヒータ286、定着ローラ288、及びインラインセンサ290構成される。定着ドラム284は、処理液ドラム254と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)285を備える。
【0204】
定着ドラム284の回転により、記録媒体224は記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、ハロゲンヒータ286による予備加熱と、定着ローラ288による定着処理と、インラインセンサ290による検査が行われる。
【0205】
定着ローラ288は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体224を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ288は、定着ドラム284に対して圧接するように配置されており、定着ドラム284との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体224は、定着ローラ288と定着ドラム284との間に挟まれ、所定のニップ圧(例えば、0.15MPa)でニップされ、定着処理が行われる。
【0206】
また、定着ローラ288は、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラによって構成され、所定の温度(例えば60〜80℃)に制御される。この加熱ローラで記録媒体224を加熱することによって、インクに含まれるラテックスのTg温度(ガラス転移点温度)以上の熱エネルギーが付与され、ラテックス粒子が溶融される。これにより、記録媒体224の凹凸に押し込み定着が行われるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、光沢性が得られる。
【0207】
一方、インラインセンサ290は、記録媒体224に形成された画像(不吐出検出用のテストパターンや濃度補正用のテストパターン、印刷画像なども含む)について、吐出不良チェックパターンや画像の濃度、画像の欠陥などを計測するための計測手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。このインラインセンサ290は、図3の符号136で説明したテストパターン読取り部に相当する。
【0208】
なお、高沸点溶媒及びポリマー微粒子(熱可塑性樹脂粒子)を含んだインクに代えて、UV露光にて重合硬化可能なモノマー成分を含有していてもよい。この場合、インクジェット記録装置200は、ヒートローラによる熱圧定着部(定着ローラ288)の代わりに、記録媒体224上のインクにUV光を露光するUV露光部を備える。このように、UV硬化性樹脂などの活性光線硬化性樹脂を含んだインクを用いる場合には、加熱定着の定着ローラ288に代えて、UVランプや紫外線LD(レーザダイオード)アレイなど、活性光線を照射する手段が設けられる。
【0209】
(排紙部)
定着部220に続いて排紙部222が設けられている。排紙部222は、排出トレイ292を備えており、この排出トレイ292と定着部220の定着ドラム284との間に、これらに対接するように渡し胴294、搬送ベルト296、張架ローラ298が設けられている。記録媒体224は、渡し胴294により搬送ベルト296に送られ、排出トレイ292に排出される。搬送ベルト296による用紙搬送機構の詳細は図示しないが、印刷後の記録媒体224は無端状の搬送ベルト296間に渡されたバー(不図示)のグリッパーによって用紙先端部が保持され、搬送ベルト296の回転によって排出トレイ292の上方に運ばれてくる。
【0210】
また、図32には示されていないが、本例のインクジェット記録装置200には、上記構成の他、各インクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部214に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引、ノズル洗浄等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体224の位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
【0211】
<インクジェットヘッドの構成例>
次に、インクジェットヘッドの構造について説明する。各色に対応するインクジェットヘッド272M,272K,272C,272Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号350によってヘッドを示すものとする。
【0212】
図33(a) はヘッド350の構造例を示す平面透視図であり、図33(b) はその一部の拡大図である。図34はヘッド350を構成する複数のヘッドモジュールの配置例を示す図である。また、図35は記録素子単位(吐出素子単位)となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル351に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図33中のA−A線に沿う断面図)である。
【0213】
図33に示したように、本例のヘッド350は、インク吐出口であるノズル351と、各ノズル351に対応する圧力室352等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)353をマトリクス状に二次元配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影(正射影)される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0214】
記録媒体224の送り方向(矢印S方向;「y方向」に相当)と略直交する方向(矢印M方向;「x方向」に相当)に記録媒体224の描画領域の全幅に対応する長さ以上のノズル列を構成するために、例えば、図34(a)に示すように、複数のノズル351が二次元に配列された短尺のヘッドモジュール350’を千鳥状に配置して、長尺のライン型ヘッドを構成する。或いはまた、図34(b)に示すように、ヘッドモジュール350”を1列に並べて繋ぎ合わせる態様も可能である。
【0215】
なお、シングルパス印字用のフルライン型プリントヘッドは、記録媒体224の全面を描画範囲とする場合に限らず、記録媒体224の面上の一部が描画領域となっている場合には、所定の描画領域内の描画に必要なノズル列が形成されていればよい。
【0216】
各ノズル351に対応して設けられている圧力室352は、その平面形状が概略正方形となっており(図33(a)、(b) 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル351への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)354が設けられている。なお、圧力室352の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0217】
図35に示すように、ヘッド350は、ノズル351が形成されたノズルプレート351Aと圧力室352や共通流路355等の流路が形成された流路板352P等を積層接合した構造から成る。ノズルプレート351Aは、ヘッド350のノズル面(インク吐出面)350Aを構成し、各圧力室352にそれぞれ連通する複数のノズル351が二次元的に形成されている。
【0218】
流路板352Pは、圧力室352の側壁部を構成するとともに、共通流路355から圧力室352にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口354を形成する流路形成部材である。なお、説明の便宜上、図35では簡略的に図示しているが、流路板352Pは一枚又は複数の基板を積層した構造である。
【0219】
ノズルプレート351A及び流路板352Pは、シリコンを材料として半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
【0220】
共通流路355はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路355を介して各圧力室352に供給される。
【0221】
圧力室352の一部の面(図35において天面)を構成する振動板356には、個別電極357を備えたピエゾアクチュエータ(圧電素子)358が接合されている。本例の振動板356は、ピエゾアクチュエータ358の下部電極に相当する共通電極359として機能するニッケル(Ni)導電層付きのシリコン(Si)から成り、各圧力室352に対応して配置されるピエゾアクチュエータ358の共通電極を兼ねる。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様も可能であり、この場合は、振動板部材の表面に金属などの導電材料による共通電極層が形成される。また、ステンレス鋼(SUS)など、金属(導電性材料)によって共通電極を兼ねる振動板を構成してもよい。
【0222】
個別電極357に駆動電圧を印加することによってピエゾアクチュエータ358が変形して圧力室352の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル351からインクが吐出される。インク吐出後、ピエゾアクチュエータ358が元の状態に戻る際、共通流路355から供給口354を通って新しいインクが圧力室352に再充填される。
【0223】
かかる構造を有するインク室ユニット353を図33(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。かかるマトリクス配列において、副走査方向の隣接ノズル間隔をLsとするとき、主走査方向については実質的に各ノズル351が一定のピッチP=Ls/tanθで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
【0224】
また、本発明の実施に際してヘッド350におけるノズル351の配列形態は図示の例に限定されず、様々なノズル配置構造を適用できる。例えば、図33で説明したマトリクス配列に代えて、V字状のノズル配列、V字状配列を繰り返し単位とするジグザク状(W字状など)のような折れ線状のノズル配列なども可能である。
【0225】
なお、インクジェットヘッドにおける各ノズルから液滴を吐出させるための吐出用の圧力(吐出エネルギー)を発生させる手段は、ピエゾアクチュエータ(圧電素子)に限らず、サーマル方式(ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させる方式)におけるヒータ(加熱素子)や、静電アクチュエータ、その他の方式による各種アクチュエータなど、様々な圧力発生素子(吐出エネルギー発生素子)を適用し得る。ヘッドの吐出方式に応じて、相応のエネルギー発生素子が流路構造体に設けられる。
【0226】
<制御系の説明>
図36は、インクジェット記録装置200のシステム構成を示すブロック図である。図36に示すように、インクジェット記録装置200は、通信インターフェース370、システムコントローラ372、画像メモリ374、ROM375、モータドライバ376、ヒータドライバ378、プリント制御部380、画像バッファメモリ382、ヘッドドライバ384等を備えている。
【0227】
通信インターフェース370は、ホストコンピュータ386から送られてくる画像データを受信するインターフェース部(画像入力手段)である。通信インターフェース370にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0228】
ホストコンピュータ386から送出された画像データは通信インターフェース370を介してインクジェット記録装置200に取り込まれ、一旦画像メモリ374に記憶される。画像メモリ374は、通信インターフェース370を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システムコントローラ372を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ374は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0229】
システムコントローラ372は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置200の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ372は、通信インターフェース370、画像メモリ374、モータドライバ376、ヒータドライバ378等の各部を制御し、ホストコンピュータ386との間の通信制御、画像メモリ374及びROM375の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ388やヒータ389を制御する制御信号を生成する。
【0230】
また、システムコントローラ372は、インラインセンサ(インライン検出部)290から読み込んだテストチャートの読取画像データから、不吐出ノズルの位置や着弾位置誤差のデータ、濃度分布を示すデータ(濃度データ)等を生成する演算処理を行う着弾誤差測定演算部372Aと、測定された着弾位置誤差の情報や濃度情報から濃度補正係数を算出する濃度補正係数算出部372Bとを含んで構成される。なお、着弾誤差測定演算部372A及び濃度補正係数算出部372Bの処理機能はASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。更に、システムコントローラ372は、図9で説明した読取画像の解析処理手段として機能する。濃度補正係数算出部372Bにおいて求められた濃度補正係数のデータは、濃度補正係数記憶部390に記憶される。
【0231】
ROM375には、システムコントローラ372のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データ(不良吐出ノズルを検出するためのテストチャートを打滴するためのデータ、不良吐出ノズル情報などを含む)が格納されている。ROM375には、EEPROMのような書換可能な記憶手段を用いることができる。また、このROM375の記憶領域を活用することで、ROM375を濃度補正係数記憶部390として兼用する構成も可能である。
【0232】
画像メモリ374は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0233】
モータドライバ376は、システムコントローラ372からの指示に従って搬送系のモータ388を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ378は、システムコントローラ372からの指示に従って乾燥部218等のヒータ389を駆動するドライバである。
【0234】
プリント制御部380は、システムコントローラ372の制御に従い、画像メモリ374内の画像データ(多値の入力画像のデータ) から打滴制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、生成したインク吐出データをヘッドドライバ384に供給してヘッド350の吐出駆動を制御する駆動制御手段として機能する。
【0235】
すなわち、プリント制御部380は、濃度データ生成部380Aと、補正処理部380Bと、インク吐出データ生成部380Cと、駆動波形生成部380Dとを含んで構成される。これら各機能ブロック(380A〜380D)は、ASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。
【0236】
濃度データ生成部380Aは、入力画像のデータからインク色別の初期の濃度データを生成する信号処理手段であり、濃度変換処理(UCR処理や色変換を含む)及び必要な場合には画素数変換処理を行う。
【0237】
補正処理部380Bは、濃度補正係数記憶部390に格納されている濃度補正係数を用いて濃度補正の演算を行う処理手段であり、不良吐出ノズル等に起因する画像欠陥を改善するためのムラ補正処理を行う。
【0238】
インク吐出データ生成部380Cは、補正処理部380Bで生成された補正後の画像データ(濃度データ)から2値又は多値のドットデータに変換するハーフトーニング処理手段を含む信号処理手段であり、画像データの2値(多値)化処理を行う。
【0239】
インク吐出データ生成部380Cで生成されたインク吐出データはヘッドドライバ384に与えられ、ヘッド350のインク吐出動作が制御される。
【0240】
駆動波形生成部380Dは、ヘッド350の各ノズル351に対応したピエゾアクチュエータ358(図35参照)を駆動するための駆動信号波形を生成する手段であり、該駆動波形生成部380Dで生成された信号(駆動波形)は、ヘッドドライバ384に供給される。なお、駆動波形生成部380Dから出力される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
【0241】
駆動波形生成部380Dは、記録用波形の駆動信号と、異常ノズル検知用波形の駆動信号とを選択的に生成する。各種波形データは予めROM375に格納され、必要に応じて使用する波形データが選択的に出力される。本例に示すインクジェット記録装置200は、ヘッド350を構成するモジュールの各ピエゾアクチュエータ358に対して、共通の駆動電力波形信号を印加し、各ノズル351の吐出タイミングに応じて各ピエゾアクチュエータ358の個別電極に接続されたスイッチ素子(不図示)のオンオフを切り換えることで、各ピエゾアクチュエータ358に対応するノズル351からインクを吐出させる駆動方式が採用されている。
【0242】
プリント制御部380には画像バッファメモリ382が備えられており、プリント制御部380における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ382に一時的に格納される。なお、図36において画像バッファメモリ382はプリント制御部380に付随する態様で示されているが、画像メモリ374と兼用することも可能である。また、プリント制御部380とシステムコントローラ372とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0243】
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース370を介して外部から入力され、画像メモリ374に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの多値の画像データが画像メモリ374に記憶される。
【0244】
インクジェット記録装置200では、インク(色材)による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ374に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ372を介してプリント制御部380に送られ、該プリント制御部380の濃度データ生成部380A、補正処理部380B、インク吐出データ生成部380Cを経てインク色ごとのドットデータに変換される。
【0245】
ドットデータは、一般に画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(たとえば、RGB8ビットの画像データ)をインクジェット印刷機で使用するインクの各色の色データ(本例では、KCMYの色データ)に変換する処理である。
【0246】
ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色の色データに対して誤差拡散法や閾値マトリクス法等の処理で各色のドットデータ(本例では、KCMYのドットデータ)に変換する処理である。
【0247】
すなわち、プリント制御部380は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。このドットデータへの変換処理に際して、不良吐出ノズルによる画像欠陥を補正する不吐出補正処理が行われる。
【0248】
こうして、プリント制御部380で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ382に蓄えられる。この色別ドットデータは、ヘッド350のノズルからインクを吐出するためのCMYK打滴データに変換され、印字されるインク吐出データが確定する。
【0249】
ヘッドドライバ384は、アンプ回路(電力増幅回路)を含み、プリント制御部380から与えられるインク吐出データ及び駆動波形の信号に基づき、印字内容に応じてヘッド350の各ノズル351に対応するピエゾアクチュエータ358を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ384にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0250】
こうして、ヘッドドライバ384から出力された駆動信号がヘッド350に加えられることによって、該当するノズル351からインクが吐出される。記録媒体224の搬送速度に同期してヘッド350からのインク吐出を制御することにより、記録媒体224上に画像が形成される。
【0251】
上記のように、プリント制御部380における所要の信号処理を経て生成されたインク吐出データ及び駆動信号波形に基づき、ヘッドドライバ384を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0252】
インラインセンサ(検出部)290は、図32で説明したように、イメージセンサを含むブロックであり、記録媒体224に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつき、光学濃度など)を検出し、その検出結果をプリント制御部380及びシステムコントローラ372に提供する。
【0253】
プリント制御部380は、必要に応じてインラインセンサ(検出部)290から得られる情報に基づいてヘッド350に対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
【0254】
図中のメンテナンス機構394は、インク受け、吸引キャップ、吸引ポンプ、ワイパーブレードなど、ヘッドメンテナンスに必要な部材を含んだものである。
【0255】
また、ユーザインターフェースとしての操作部396は、オペレータ(ユーザ)が各種入力を行うための入力装置397と表示部(ディスプレイ)398を含んで構成される。入力装置397には、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタンなど各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置397を操作することにより、印刷条件の入力、画質モードの選択、付属情報の入力・編集、情報の検索などを行うことができ、入力内容や検索結果など等の各種情報は表示部398の表示を通じて確認することができる。この表示部398はエラーメッセージなどの警告を表示する手段としても機能する。
【0256】
なお、図3で説明した色変換処理部110、不吐出ノズル補正画像処理部112、ハーフトーン処理部114、画像メモリ116、画像解析部124、テストパターン合成部118、ヘッドドライバ128、不良吐出ノズル判断部130、不良吐出ノズル検出部132、不良ノズル情報蓄積部126、不良吐出補正判断部122、補正情報設定部120等は、図36に示した制御系の構成要素が単独で、又は複数組み合わされて構成される。
【0257】
図3の画像メモリ116、ヘッドドライバ128、ヘッド50は、図36における画像メモリ374、ヘッドドライバ384、ヘッド350に対応している。
【0258】
図36のシステムコントローラ372及びプリント制御部380の組み合わせが、「基準領域設定手段」、「比較領域設定手段」、「相関演算手段」、「歪補正値決定手段」、「画像歪み補正手段」、「不良記録素子判定手段」、「補間処理手段」、「解析領域設定手段」、「ヒストグラム生成手段」、「シェーディング特性情報生成手段」、「シェーディング補正手段」、「テストパターン出力制御手段」、「画像補正手段」、「記録制御手段」として機能する。
【0259】
なお、図36で説明した着弾誤差測定演算部372A、濃度補正係数算出部372B、濃度データ生成部380A、補正処理部380Bが担う処理機能の全て又は一部をホストコンピュータ386側に搭載する態様も可能である。
【0260】
上述のように、本実施形態のインクジェット記録装置によれば、テストパターンの読取画像を解析することによって、各ノズルから吐出されるインク滴の記録紙上の着弾位置を正確に把握することができるため、不良吐出ノズルの位置を精度よく特定することができる。これにより、不良吐出ノズルによる画像欠陥を補償する緻密な補正処理を入力画像データに施すことが可能である。上述の各種処理に基づく全体の処理の流れについて、以下説明する。
【0261】
(画像印刷プロセスの説明)
図37は、画像印刷全体の流れを示すフローチャートである。ホストコンピュータ386(図36参照)から送られてくる所望画像の入力画像データが通信インターフェース(受信手段)370を介して受信されると(図37のS80に示す受信ステップ)、色変換処理(図3の色変換処理部110)、不良吐出ノズル補正処理(不吐出ノズル補正画像処理部112)、ハーフトーン処理(ハーフトーン処理部114)、テストパターン合成処理(テストパターン合成部118)等によって入力画像データが補正される(図37のS82に示す補正ステップ)。
【0262】
そして、補正された入力画像データに基づき、ヘッドドライバ384(図3の128)によって、各ヘッド350のノズル351からインク滴を記録媒体224に向かって吐出させることにより(図37のS84に示す吐出ステップ)、所望の画像を鮮明に記録媒体224に印刷することができる。
【0263】
上記の補正ステップ(S82)では、不良吐出ノズルからのインク滴の吐出を他の正常なノズルによって補償すると共に、不良吐出ノズルからインク滴が吐出されないようにするための不良吐出ノズル補正処理(不吐出ノズル補正画像処理部112)が、入力画像データに対して行われる。不良吐出ノズル補正処理は、不良吐出ノズル検出部132(図3参照)において、テストパターン読取り部136から送られてくるテストパターン102の読取画像データに基づいて行われる。
【0264】
なお、不良吐出ノズルを不吐出化処理して、他のノズルによってその描画欠陥を補償する補正技術としては、例えば、(1)出力画像を矯正する方法、(2)吐出信号を強めて吐出ドット径を大きめに矯正する方法など、様々な手段がある。
【0265】
(1)出力画像を矯正する方法
周囲の描画における画像濃度をDdefaultとしたとき、不吐出補正ノズルにおける画像濃度をDNo Print(>Ddefault)とすることで不吐出補正ノズルの描画濃度を高め、白筋視認性を低減させることができる。これらの画像濃度間の比率を不吐出補正用ノズル画像濃度増幅量Pdensityと定義できる。
【0266】
(2)吐出信号を強めて吐出ドット径を大きくする方法
周囲の描画におけるドット径をRdefaultとしたとき、不吐出補正ノズルのドット径をRNo Print(>Rdefault)とすることで不吐出補正ノズルの描画濃度を高め、白筋視認性を低減させることができる。これらのドット径間の比率を不吐出補正用ノズルドット径増幅量Pdotと定義できる。
【0267】
前記2つの代表例における不吐出補正用ノズル画像濃度増幅量Pdensity、不吐出補正用ノズルドット径増幅量Pdotのような、不吐出補正ノズルによる描画の強め量、或いはそれに類する補償量を総じて不吐出補正パラメータPと定義すると、この不吐出補正パラメータPを用いて、画像補正を行う。
【0268】
<変形例1>
図9ではシェーディング補正後に画像歪みを補正したが、シェーディング補正工程と、画像歪み補正工程の順番は入れ替えることができる。
【0269】
<変形例2>
テストパターン102として、1オンnオフ型のラインパターンを例示したが、1ノズルに対応したラインに限らず、複数本(例えば、2〜3本)のラインが一体に組み合わされた帯状のブロックなどが概ね規則的に並ぶパターンであってもよい。
【0270】
<オフラインスキャナーを用いる構成例について>
図32から図37では、インクジェット記録装置200に内蔵されたインラインセンサ290を用いてテストパターンを読み取り、その読取画像の解析処理装置もインクジェット記録装置200に搭載されている例を説明したが、本発明の実施に際しては、インクジェット記録装置200とは別体のオフラインスキャナー等を用いてテストパターンの印刷結果を読み取り、その読取画像のデータをパソコン等の装置によって解析する構成も可能である。
【0271】
<記録媒体について>
「記録媒体」は、記録素子によってドットが記録される媒体の総称であり、印字媒体、被記録媒体、被画像形成媒体、受像媒体、被吐出媒体など様々な用語で呼ばれるものが含まれる。本発明の実施に際して、被記録媒体の材質や形状等は、特に限定されず、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、配線パターン等が形成されるプリント基板、ゴムシート、その他材質や形状を問わず、様々な媒体に適用できる。
【0272】
<ヘッドと用紙を相対移動させる手段について>
上述の実施形態では、停止したヘッドに対して被記録媒体を搬送する構成を例示したが、本発明の実施に際しては、停止した被記録媒体に対してヘッドを移動させる構成も可能である。なお、シングルパス方式のフルライン型の記録ヘッドは、通常、被記録媒体の送り方向(搬送方向)と直交する方向に沿って配置されるが、搬送方向と直交する方向に対して、ある所定の角度を持たせた斜め方向に沿ってヘッドを配置する態様もあり得る。
【0273】
<ヘッド構成の変形例について>
上記実施形態では、記録媒体の全幅に対応する長さのノズル列を有するページワイドのフルライン型ヘッドを用いたインクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、シリアル型(シャトルスキャン型)ヘッドなど、短尺の記録ヘッドを移動させながら、複数回のヘッド走査により画像記録を行うインクジェット記録装置についても本発明を適用可能である。なお、インクジェット方式の印字ヘッドを用いてカラー画像を形成する場合は、複数色のインク(記録液)の色別にヘッドを配置してもよいし、1つの記録ヘッドから複数色のインクを吐出可能な構成としてもよい。
【0274】
<本発明の応用例について>
上記の実施形態では、グラフィック印刷用のインクジェット記録装置への適用を例に説明したが、本発明の適用範囲はこの例に限定されない。例えば、電子回路の配線パターンを描画する配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、カラーフィルター製造装置、マテリアルデポジション用の材料を用いて微細構造物を形成する微細構造物形成装置など、液状機能性材料を用いて様々な形状やパターンを描画するインクジェットシステムに広く適用できる。
【0275】
<インクジェット方式以外の記録ヘッドの利用形態について>
上述の説明では、記録ヘッドを用いる画像形成装置の一例としてインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。インクジェット方式以外では、サーマル素子を記録素子とする記録ヘッドを備えた熱転写記録装置、LED素子を記録素子とする記録ヘッドを備えたLED電子写真プリンタ、LEDライン露光ヘッドを有する銀塩写真方式プリンタなど、ドット記録を行う各種方式の画像形成装置についても本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0276】
16…記録用紙、50…ヘッド、51…ノズル、102…テストパターン、112…不吐出ノズル補正画像処理部、122…不良吐出補正判断部、124…画像解析部、126…不良ノズル情報蓄積部、130…不良吐出ノズル判断部、132…不良吐出ノズル検出部、136…テストパターン読取り部、154…テストパターン領域、200…インクジェット記録装置、224…記録媒体、270…描画ドラム、272M,272K,272C,272Y…インクジェットヘッド、290…インラインセンサ、350…ヘッド、351…ノズル、358…ピエゾアクチュエータ、372…システムコントローラ、380…プリント制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録素子を有する記録ヘッドによって記録媒体上に記録されたテストパターンの読取画像データを取得する読取画像データ取得手段と、
前記読取画像データの画像内容を表す読取画像上で前記テストパターンの一部を含む基準領域を設定する基準領域設定手段と、
前記読取画像上で前記基準領域と比較する比較領域を設定する比較領域設定手段と、
前記基準領域に対して前記比較領域を相対的にシフトさせながら、当該比較領域と前記基準領域との相関演算を行う相関演算手段と、
前記相関演算の結果から前記基準領域内の画像に対する前記比較領域内の画像のずれ量を補正するため歪補正値を特定する歪補正値決定手段と、
前記歪補正値を用いて前記読取画像の画像歪みを補正する画像歪み補正手段と、
前記画像歪み補正手段による補正後の読取画像に基づいて、前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定手段と、
を備えたことを特徴とする不良記録素子の検出装置。
【請求項2】
前記テストパターンは、前記比較領域を相対的にシフトさせる方向に沿って、類似性があるパターンが繰り返し現れる画像内容であり、
前記相関演算手段は、前記類似性があるパターンの繰り返し間隔よりも小さい所定範囲内で前記比較領域を相対的にシフトさせながら、当該比較領域と前記基準領域との相関演算を行うことを特徴とする請求項1に記載の不良記録素子の検出装置。
【請求項3】
前記テストパターンは、前記記録素子によって記録されたラインが規則的に並んだラインパターンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の不良記録素子の検出装置。
【請求項4】
前記相関演算手段によって、前記基準領域に対して前記比較領域を相対的にシフトさせながら相関評価関数が計算され、前記相関評価関数の計算結果から最も相関が高くなるシフト量が求められ、当該シフト量から前記歪補正値が決定されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の不良記録素子の検出装置。
【請求項5】
前記シフトさせる方向に前記比較領域の画像データを補間する補間処理手段を備え、
前記補間処理手段による補間処理後に前記相関演算手段による相関演算が行われることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の不良記録素子の検出装置。
【請求項6】
前記読取画像における複数の位置に、当該読取画像のシェーディング特性を解析するための解析領域を設定する解析領域設定手段と、
前記解析領域設定手段により前記画像領域内に設定された複数の前記解析領域から、各解析領域内の画像信号のヒストグラムを生成するヒストグラムを生成手段と、
前記各解析領域のヒストグラムの所定パーセント点に対応する階調値を求め、当該読取画像のシェーディング特性を示す分布情報を生成するシェーディング特性情報生成手段と、
前記シェーディング特性を示す分布情報に基づいて前記読取画像のシェーディング補正を行うシェーディング補正手段と、
を備え、
前記不良記録素子判定手段は、前記シェーディング補正手段によるシェーディング補正及び前記画像歪み補正手段による画像歪み補正の補正結果に基づいて、前記不良記録素子を特定することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の不良記録素子の検出装置。
【請求項7】
前記記録ヘッドは、液滴の吐出口となるノズルと、前記ノズルから液滴を吐出させる吐出エネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子とを含んで構成される前記記録素子を備えたインクジェットヘッドであり、
前記不良記録素子には、記録位置の誤差が所定の位置誤差許容範囲を超えるもの、不吐出による記録不能なもの、吐出液滴の体積の誤差が所定の体積誤差許容範囲を超えるもの、のうち少なくとも1つの異常を示すものが含まれることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の不良記録素子の検出装置。
【請求項8】
複数の記録素子を有する記録ヘッドによって記録媒体上に記録されたテストパターンの読取画像データを取得する読取画像データ取得工程と、
前記読取画像データの画像内容を表す読取画像上で前記テストパターンの一部を含む基準領域を設定する基準領域設定工程と、
前記読取画像上で前記基準領域と比較する比較領域を設定する比較領域設定工程と、
前記基準領域に対して前記比較領域を相対的にシフトさせながら、当該比較領域と前記基準領域との相関演算を行う相関演算工程と、
前記相関演算の結果から前記基準領域内の画像に対する前記比較領域内の画像のずれ量を補正するため歪補正値を特定する歪補正値決定工程と、
前記歪補正値を用いて前記読取画像の画像歪みを補正する画像歪み補正工程と、
前記画像歪み補正工程による補正後の読取画像に基づいて、前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定工程と、
を含むことを特徴とする不良記録素子の検出方法。
【請求項9】
前記複数の記録素子を有する前記記録ヘッドによって前記記録媒体上に前記テストパターンを記録するテストパターン形成工程と、
前記ラインパターン形成工程において前記記録媒体上に記録された前記ラインパターンを画像読取手段によって読み取ることにより前記読取画像データを生成する画像読取工程と、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の不良記録素子の検出方法。
【請求項10】
複数の記録素子を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに対して記録媒体を相対移動させる媒体搬送手段と、
前記記録ヘッドによって前記記録媒体上にテストパターンを記録するように前記記録ヘッドの記録動作を制御するテストパターン出力制御手段と、
前記記録媒体上に記録された前記テストパターンを読み取り、電子画像データに変換して読取画像データを生成する画像読取手段と、
前記読取画像データの画像内容を表す読取画像上で前記テストパターンの一部を含む基準領域を設定する基準領域設定手段と、
前記読取画像上で前記基準領域と比較する比較領域を設定する比較領域設定手段と、
前記基準領域に対して前記比較領域を相対的にシフトさせながら、当該比較領域と前記基準領域との相関演算を行う相関演算手段と、
前記相関演算の結果から前記基準領域内の画像に対する前記比較領域内の画像のずれ量を補正するため歪補正値を特定する歪補正値決定手段と、
前記歪補正値を用いて前記読取画像の画像歪みを補正する画像歪み補正手段と、
前記画像歪み補正手段による補正後の読取画像に基づいて、前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定手段と、
前記特定された不良記録素子の情報を記憶しておく記憶手段と、
前記特定された不良記録素子による記録動作を停止させ、当該不良記録素子以外の記録素子によって前記不良記録素子の記録欠陥を補償して目的の画像を記録するように画像データを補正する画像補正手段と、
前記画像補正手段による補正後の画像データに従い前記不良記録素子以外の記録素子の記録動作を制御して画像記録を行う記録制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
複数の記録素子を有する記録ヘッドに対して記録媒体を相対移動させ、前記記録ヘッドによって前記記録媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、
前記記録ヘッドによって前記記録媒体上にテストパターンを記録するように前記記録ヘッドの記録動作を制御するテストパターン出力制御工程と、
前記記録媒体上に記録された前記テストパターンを読み取り、電子画像データに変換して読取画像データを生成する画像読取工程と、
前記読取画像データの画像内容を表す読取画像上で前記テストパターンの一部を含む基準領域を設定する基準領域設定工程と、
前記読取画像上で前記基準領域と比較する比較領域を設定する比較領域設定工程と、
前記基準領域に対して前記比較領域を相対的にシフトさせながら、当該比較領域と前記基準領域との相関演算を行う相関演算工程と、
前記相関演算の結果から前記基準領域内の画像に対する前記比較領域内の画像のずれ量を補正するため歪補正値を特定する歪補正値決定工程と、
前記歪補正値を用いて前記読取画像の画像歪みを補正する画像歪み補正工程と、
前記画像歪み補正工程による補正後の読取画像に基づいて、前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定工程と、
前記特定された不良記録素子の情報を記憶手段に記憶させる記憶工程と、
前記特定された不良記録素子による記録動作を停止させ、当該不良記録素子以外の記録素子によって前記不良記録素子の記録欠陥を補償して目的の画像を記録するように画像データを補正する画像補正工程と、
前記画像補正工程による補正後の画像データに従い前記不良記録素子以外の記録素子の記録動作を制御して画像記録を行う記録制御工程と、
を含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項1】
複数の記録素子を有する記録ヘッドによって記録媒体上に記録されたテストパターンの読取画像データを取得する読取画像データ取得手段と、
前記読取画像データの画像内容を表す読取画像上で前記テストパターンの一部を含む基準領域を設定する基準領域設定手段と、
前記読取画像上で前記基準領域と比較する比較領域を設定する比較領域設定手段と、
前記基準領域に対して前記比較領域を相対的にシフトさせながら、当該比較領域と前記基準領域との相関演算を行う相関演算手段と、
前記相関演算の結果から前記基準領域内の画像に対する前記比較領域内の画像のずれ量を補正するため歪補正値を特定する歪補正値決定手段と、
前記歪補正値を用いて前記読取画像の画像歪みを補正する画像歪み補正手段と、
前記画像歪み補正手段による補正後の読取画像に基づいて、前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定手段と、
を備えたことを特徴とする不良記録素子の検出装置。
【請求項2】
前記テストパターンは、前記比較領域を相対的にシフトさせる方向に沿って、類似性があるパターンが繰り返し現れる画像内容であり、
前記相関演算手段は、前記類似性があるパターンの繰り返し間隔よりも小さい所定範囲内で前記比較領域を相対的にシフトさせながら、当該比較領域と前記基準領域との相関演算を行うことを特徴とする請求項1に記載の不良記録素子の検出装置。
【請求項3】
前記テストパターンは、前記記録素子によって記録されたラインが規則的に並んだラインパターンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の不良記録素子の検出装置。
【請求項4】
前記相関演算手段によって、前記基準領域に対して前記比較領域を相対的にシフトさせながら相関評価関数が計算され、前記相関評価関数の計算結果から最も相関が高くなるシフト量が求められ、当該シフト量から前記歪補正値が決定されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の不良記録素子の検出装置。
【請求項5】
前記シフトさせる方向に前記比較領域の画像データを補間する補間処理手段を備え、
前記補間処理手段による補間処理後に前記相関演算手段による相関演算が行われることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の不良記録素子の検出装置。
【請求項6】
前記読取画像における複数の位置に、当該読取画像のシェーディング特性を解析するための解析領域を設定する解析領域設定手段と、
前記解析領域設定手段により前記画像領域内に設定された複数の前記解析領域から、各解析領域内の画像信号のヒストグラムを生成するヒストグラムを生成手段と、
前記各解析領域のヒストグラムの所定パーセント点に対応する階調値を求め、当該読取画像のシェーディング特性を示す分布情報を生成するシェーディング特性情報生成手段と、
前記シェーディング特性を示す分布情報に基づいて前記読取画像のシェーディング補正を行うシェーディング補正手段と、
を備え、
前記不良記録素子判定手段は、前記シェーディング補正手段によるシェーディング補正及び前記画像歪み補正手段による画像歪み補正の補正結果に基づいて、前記不良記録素子を特定することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の不良記録素子の検出装置。
【請求項7】
前記記録ヘッドは、液滴の吐出口となるノズルと、前記ノズルから液滴を吐出させる吐出エネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子とを含んで構成される前記記録素子を備えたインクジェットヘッドであり、
前記不良記録素子には、記録位置の誤差が所定の位置誤差許容範囲を超えるもの、不吐出による記録不能なもの、吐出液滴の体積の誤差が所定の体積誤差許容範囲を超えるもの、のうち少なくとも1つの異常を示すものが含まれることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の不良記録素子の検出装置。
【請求項8】
複数の記録素子を有する記録ヘッドによって記録媒体上に記録されたテストパターンの読取画像データを取得する読取画像データ取得工程と、
前記読取画像データの画像内容を表す読取画像上で前記テストパターンの一部を含む基準領域を設定する基準領域設定工程と、
前記読取画像上で前記基準領域と比較する比較領域を設定する比較領域設定工程と、
前記基準領域に対して前記比較領域を相対的にシフトさせながら、当該比較領域と前記基準領域との相関演算を行う相関演算工程と、
前記相関演算の結果から前記基準領域内の画像に対する前記比較領域内の画像のずれ量を補正するため歪補正値を特定する歪補正値決定工程と、
前記歪補正値を用いて前記読取画像の画像歪みを補正する画像歪み補正工程と、
前記画像歪み補正工程による補正後の読取画像に基づいて、前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定工程と、
を含むことを特徴とする不良記録素子の検出方法。
【請求項9】
前記複数の記録素子を有する前記記録ヘッドによって前記記録媒体上に前記テストパターンを記録するテストパターン形成工程と、
前記ラインパターン形成工程において前記記録媒体上に記録された前記ラインパターンを画像読取手段によって読み取ることにより前記読取画像データを生成する画像読取工程と、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の不良記録素子の検出方法。
【請求項10】
複数の記録素子を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに対して記録媒体を相対移動させる媒体搬送手段と、
前記記録ヘッドによって前記記録媒体上にテストパターンを記録するように前記記録ヘッドの記録動作を制御するテストパターン出力制御手段と、
前記記録媒体上に記録された前記テストパターンを読み取り、電子画像データに変換して読取画像データを生成する画像読取手段と、
前記読取画像データの画像内容を表す読取画像上で前記テストパターンの一部を含む基準領域を設定する基準領域設定手段と、
前記読取画像上で前記基準領域と比較する比較領域を設定する比較領域設定手段と、
前記基準領域に対して前記比較領域を相対的にシフトさせながら、当該比較領域と前記基準領域との相関演算を行う相関演算手段と、
前記相関演算の結果から前記基準領域内の画像に対する前記比較領域内の画像のずれ量を補正するため歪補正値を特定する歪補正値決定手段と、
前記歪補正値を用いて前記読取画像の画像歪みを補正する画像歪み補正手段と、
前記画像歪み補正手段による補正後の読取画像に基づいて、前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定手段と、
前記特定された不良記録素子の情報を記憶しておく記憶手段と、
前記特定された不良記録素子による記録動作を停止させ、当該不良記録素子以外の記録素子によって前記不良記録素子の記録欠陥を補償して目的の画像を記録するように画像データを補正する画像補正手段と、
前記画像補正手段による補正後の画像データに従い前記不良記録素子以外の記録素子の記録動作を制御して画像記録を行う記録制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
複数の記録素子を有する記録ヘッドに対して記録媒体を相対移動させ、前記記録ヘッドによって前記記録媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、
前記記録ヘッドによって前記記録媒体上にテストパターンを記録するように前記記録ヘッドの記録動作を制御するテストパターン出力制御工程と、
前記記録媒体上に記録された前記テストパターンを読み取り、電子画像データに変換して読取画像データを生成する画像読取工程と、
前記読取画像データの画像内容を表す読取画像上で前記テストパターンの一部を含む基準領域を設定する基準領域設定工程と、
前記読取画像上で前記基準領域と比較する比較領域を設定する比較領域設定工程と、
前記基準領域に対して前記比較領域を相対的にシフトさせながら、当該比較領域と前記基準領域との相関演算を行う相関演算工程と、
前記相関演算の結果から前記基準領域内の画像に対する前記比較領域内の画像のずれ量を補正するため歪補正値を特定する歪補正値決定工程と、
前記歪補正値を用いて前記読取画像の画像歪みを補正する画像歪み補正工程と、
前記画像歪み補正工程による補正後の読取画像に基づいて、前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の中から不良記録素子を特定する不良記録素子判定工程と、
前記特定された不良記録素子の情報を記憶手段に記憶させる記憶工程と、
前記特定された不良記録素子による記録動作を停止させ、当該不良記録素子以外の記録素子によって前記不良記録素子の記録欠陥を補償して目的の画像を記録するように画像データを補正する画像補正工程と、
前記画像補正工程による補正後の画像データに従い前記不良記録素子以外の記録素子の記録動作を制御して画像記録を行う記録制御工程と、
を含むことを特徴とする画像形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図13】
【図14】
【図15】
【図18】
【図20】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図4】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図16】
【図17】
【図19】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図13】
【図14】
【図15】
【図18】
【図20】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図4】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図16】
【図17】
【図19】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2012−126110(P2012−126110A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282273(P2010−282273)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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