説明

不要な免疫応答を処置するためのランダムコポリマー組成物

本発明は、ランダムコポリマーの投与により疾患を処置または予防するための新規の方法およびキットに関する。本発明はまた、多発性硬化症などの自己免疫疾患の処置、および24時間よりも長い間隔で投与される製剤を含む処置計画におけるランダムコポリマーの投与、または24時間よりも長い時間にわたり該コポリマーを投与する徐放性製剤に関する。本発明はさらに、本明細書に記載のランダムコポリマーの製剤もしくは投与計画を含むかまたはそれに関するキットを製造、使用許諾、あるいは流通することを含む製薬ビジネスを実施する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願についての参照)
本出願は、2005年11月17日に出願された米国出願第11/283,406号の継続である。
【背景技術】
【0002】
自己免疫疾患は、自己の抗原(自己抗原(autoantigen))に指向される不適切な免疫応答により生じ、自己寛容の正常な状態からの逸脱である。自己抗原に反応し得るT細胞およびB細胞の産生が免疫応答の発生の初期に起こる事象によって阻害される場合は自己寛容が生じる。プロセッシングされたペプチドをT細胞に結合させて提示する能力により免疫応答に中心的な役割を果たす細胞表面タンパク質は主要免疫適合性複合体(MHC)分子である(Rothbard, J.B., et al., 1991, Annu. Rev. Immunol. 9:527)。自己免疫疾患としては、慢性関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、ヒトI型またはインスリン依存性真性糖尿病(IDDM)、自己免疫ブドウ膜網膜炎、原発性胆管肝硬変(PBC)およびセリアック病が上げられる。
【0003】
自己免疫応答の阻害のための標的の1つは、一連のリンパ球表面タンパク質MHC分子、特にMHCクラスII遺伝子にコードされるタンパク質、例えばHLA-DR、-DQおよび-DPの組である。それぞれのMHC遺伝子は、哺乳動物集団中に多くの選択物(alternative)または対立遺伝子形態で見られる。特定の自己免疫疾患、例えばMSおよびRAに罹患した被験体のゲノムは、疾患が関連する1つ以上のかかる特徴的なMHCクラスII対立遺伝子を有する可能性が高い。
【0004】
自己免疫疾患を処置するための、COX-2インヒビターなどの抗炎症薬、即ち、シクロオキシゲナーゼを阻害することにより低分子量炎症性化合物の形成を阻害し得る薬剤;炎症のタンパク質メディエイタを阻害することで、例えば炎症性タンパク質腫瘍壊死因子(TNF)を抗TNF特異的モノクローナル抗体もしくは抗体フラグメントで、またはTNFレセプターの可溶性形態で封鎖することで機能し得る薬剤;およびT細胞表面のタンパク質を標的化し、CD4レセプターまたは細胞接着レセプターICAM-Iを阻害することにより、一般的に抗原提示細胞との相互作用を阻害する薬剤を含むいくつかの治療剤が開発されている。しかしながら、治療剤として天然に折りたたまれたタンパク質を有する組成物は、産生、製剤化、保管および送達において課題に遭遇し得る。これらの課題のいくつかは病院設定において患者への送達が必要である。
【0005】
いくつかのMHCクラスII分子に対して比較的非特異的に相互作用および結合する薬剤は、コポリマー1(Cop1)であり、これはマウス中で誘導され得、MSのモデルである実験的なアレルギー性脳脊髄炎(EAE; Sela, M. et al., 1990, Bull. Inst. Pasteur (Paris) )を抑制し得ることが示されている合成アミノ酸ヘテロポリマーである。酢酸ガラチラメルまたは一文字アミノ酸コード(上記参照;Yはチロシンを表し、Eはグルタミン酸、Aはアラニン、およびKはリジン)を用いた「YEAK」としても公知なポリ(Y、E、A、K)であるコポリマー1は、再発型のMSの処置に使用されているが、疾患全体は抑制しない(Bornstein, M.B., et al., 1987, N. Engl. J. Med. 317:408; Johnson, K.P. et al., 1995, Neurology 45:1268)。
【0006】
ランダムコポリマーは自己免疫疾患の処置に有効であり得るが(Simpson, D. et al, 2003, BioDrugs 17(3):207-10)、その繰り返し投与は不要な副作用を生じ得る。従って、より少ない副作用を生じるランダムコポリマーによる自己免疫疾患の処置のための改善された方法についての必要性がある。
【0007】
(発明の簡単な概要)
本発明は、被験体、好ましくはヒトにおける疾患の処置または予防のための方法およびキットを提供する。本発明の一側面は、疾患の処置または予防方法、ランダムコポリマーで処置可能な疾患の緩和のための有効量のランダムコポリマーの投与計画を、前記被験体に投与する工程を含む方法を提供し、前記有効量は24時間、36時間、またはより好ましくは48時間よりも長い間隔で被験体に投与される。本発明の関連する側面は、ランダムコポリマーで処置可能な疾患の緩和のための有効量のランダムコポリマーの投与計画を、被験体に投与する工程を含む、投与の必要な被験体の処置方法を提供し、毎日投与された場合に有効である量である前記有効量は、ランダムコポリマーを少なくとも2日、少なくとも4日、または少なくとも6日にわたって被験体にランダムコポリマーを投与する、徐放性製剤を使用して被験体に送達される。いくつかの態様において、本発明の方法の疾患は、T細胞、および特にTH1細胞またはTH1免疫状況を伴う細胞によって媒介されるか、または過剰な炎症性サイトカインにより悪化する疾患である。いくつかの態様において、該疾患は多発性硬化症などの自己免疫疾患である。いくつかの好ましい態様において、ランダムコポリマーはチロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、アラニン(A)およびリジン(K)(YFAKコポリマー)を含む。他の態様において、該ランダムコポリマーはコポリマー1(YEAK)である。特に、本発明の方法は、さらに、前記被験体に抗リンパ球療法を投与することを含む。一態様において、抗リンパ球療法は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体からなる群より選択される薬剤を投与することを含む。特定の態様において、ポリクローナル抗体は抗胸腺細胞γグロブリン(ATGAM)である。他の態様に置いて、該抗体は、アレムツズマブ(Campath(登録商標))、ムロモナブ(OKT(登録商標)3)、ダクリズマブ、およびバシリキシマブからなる群より選択されるモノクローナル抗体である。別の態様において、本発明の方法はさらに、前記被験体に抗B細胞療法を投与することを含む。一態様において、抗B細胞療法は抗CD20抗体を投与することを含む。本発明の一側面は、投与の必要のある個体に、前記疾患を改善するための有効量のランダムコポリマー組成物の投与計画を投与することを含む、ランダムコポリマーの投与により処置可能な疾患の処置方法であり、該疾患はアレルギー、喘息、アトピー性皮膚炎および神経防御からなる群より選択される。
【0008】
本発明は任意の特定のランダムコポリマーまたは投与様式には限定されない。
【0009】
本発明はまた、疾患の処置のためのキットを提供する。本発明の一側面は、(i)ランダムコポリマーを含む組成物、および(ii)少なくとも24時間、より好ましくは36または48時間またはより長い間隔で、該組成物を被験体に投与するための指示書を含む、自己免疫疾患の処置のためのキットを提供する。好ましい態様において、該組成物は皮下注射用に調製され、ランダムコポリマーはYFAKまたはコポリマー1であり、該疾患は多発性硬化症、特に再発性寛解型多発性硬化症などの自己免疫疾患である。
【0010】
本発明はさらに、疾患の処置のための医薬の製造のための薬剤を提供する。本明細書に開示される、被験体にランダムコポリマーを投与することにより疾患を処置また予防するための任意の方法は、該疾患を処置するための医薬の製造におけるランダムコポリマーの使用に適用され得る。従って、本発明の一側面は、被験体における疾患の処置のためのランダムコポリマーの使用を提供し、該ランダムコポリマーが被験体に、24時間、36時間およびより好ましくは少なくとも48時間より長い間隔で投与されるように調製される。好ましい態様において、該ランダムコポリマーはコポリマー1(YEAK)であり、該疾患は多発性硬化症、特に再発性寛解型多発性硬化症などの自己免疫疾患である。
【0011】
本発明はさらに、製薬ビジネスを行なう方法を提供する。
【0012】
(発明の詳細な説明)
I. 概観
本発明は、ランダムコポリマーの投与による疾患の処置および予防、疾患を処置するための医薬の製造におけるランダムコポリマーの使用、ならびにランダムコポリマーおよび指示書の両方を含むキットに広く関連する。本発明はまた、自己免疫疾患の処置および疾患を処置するための長期持続性ランダムコポリマー製剤に関する。
【0013】
本発明の一側面は、ランダムコポリマーにより処置可能な疾患の緩和のための有効量のランダムコポリマーの投与計画を被験体に投与する工程を含み、前記有効量は36時間よりも長い間隔で被験体に送達される、被験体の処置方法を提供する。本発明の関連する側面は、ランダムコポリマーにより処置可能な疾患の緩和のための、有効量の少なくとも1つのランダムコポリマーの投与計画を被験体に投与する工程を含み、前記有効量の少なくとも1つのランダムコポリマーは、24時間よりも長い間隔、特に48時間よりも長い間隔で前記被験体に送達される、被験体の処置方法を提供する。一態様において、24時間よりも長い間隔で投与される有効量のランダムコポリマーは、毎日投与された場合に有効な量である。関連のある態様において、24時間よりも長い間隔で投与される有効量は、毎日投与された場合に有効な量である。さらに別の関連のある態様において、24時間よりも長い間隔で投与される有効量は、毎日投与された場合に有効であることが公知である量である。本発明の態様において、有効量は、10mg〜30mg、または15mg〜25mgからなる。他の態様において、有効量は約20mgである。別の態様において態様において、有効量は20mg未満である。具体的な態様において、有効量は「x」mgであり、「x」は1〜20の任意の整数である。
【0014】
本明細書に提供される方法の一態様において、被験体は、ランダムコポリマーで処置可能な疾患に罹患している。一態様において、該疾患はT細胞、特にTH1細胞もしくはTH1免疫状況を伴う細胞により媒介されるか、または過剰な炎症性サイトカインにより悪化する疾患である。別の態様において、被験体は少なくとも1つの自己免疫疾患に罹患している。一態様において、該被験体は、多発性硬化症、I型糖尿病、橋本甲状腺炎、クローン病、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、胃炎、自己免疫性肝炎、溶血性貧血、自己免疫性血友病、自己免疫系リンパ球増殖症候群(ALPS)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、糸球体腎炎、ギヤン-バレー症候群、乾癬、重症筋無力症、自己免疫性脳脊髄炎、グッドパスチャー症候群、グレーヴス病、腫瘍随伴性天疱瘡、特発性血小板減少性紫斑病、抗コラーゲン抗体による強皮症、混合結合組織病、悪性貧血、多発性筋炎、特発性アジソン病、自己免疫関連不妊症、糸球体腎炎、水胞性類天疱瘡、ショーグレン症候群、特発性粘液水腫および大腸炎からなる群より選択される少なくとも1つの疾患に罹患している。好ましい態様において、疾患は多発性硬化症または再発性寛解型多発性硬化症である。本明細書に提供される方法のさらなる態様において、該疾患は対移植片宿主病(HVGD)または対宿主移植片病(GVHD)またはその両方である。本明細書に記載される方法の好ましい態様において、被験体は哺乳動物、またはより好ましくはヒトである。
【0015】
本明細書に記載される方法の一態様において、投与計画は、静脈内、皮下、筋内、皮内、腹腔内、皮内または経口投与を含む。また、ランダムコポリマーは、経皮パッチまたはポンプまたはインプラントなどのランダムコポリマーを継続的に送達するように設計されたデバイスを介して投与され得る。例えば、ランダムコポリマーを48時間中12時間ごとに、もしくはそれより長く投与するために経皮パッチが使用され得るか、または該コポリマーを4日中2日毎に、もしくはそれよりも長く投与するためにポンプが使用され得る。関連のある側面において、該コポリマーは徐放性製剤中で投与される。
【0016】
本発明はまた、ランダムコポリマーで処置可能な疾患の緩和のための有効量のランダムコポリマーの投与計画を被験体に投与する工程を含み、毎日投与された場合に有効である量である前記有効量は、ランダムコポリマーを少なくとも2日、少なくとも4日または少なくとも6日にわたり投与する徐放性製剤を用いて被験体に送達される、投与する必要のある被験体の処置のための方法を提供する。好ましい態様において、徐放性製剤は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日間にわたり該コポリマーを投与する。別の態様において、徐放性製剤により毎日送達される総用量は、疾患の処置に有効であることが公知である毎日用量の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%または5%未満である。具体的な態様において、徐放性製剤は、毎日投与された場合に疾患の処置に有効であることが公知である、ランダムコポリマーの1日当り25%以下の用量を投与する。例示として、コポリマー1(YEAK)が20mgの用量で、20mgの毎日皮下注射などにより毎日投与された際に再発性寛解型多発性硬化症の処置に有効であることが公知である場合、本発明は20mg、特に約10mg、9mg、8mg、7mg、6mg、5mg、4mg、3mg、2mgまたは1mgのコポリマー1未満の毎日投与を生じるコポリマー1の徐放性製剤を提供する。
【0017】
本明細書に記載される方法のいくつかの態様において、該方法は、抗炎症剤などのさらなる治療活性剤を被験体に投与する工程をさらに含む。好ましい態様において、該薬剤は該疾患の処置に有用である。別の好ましい態様において、疾患を処置するために該薬剤はランダムコポリマーと相乗効果を示す。
【0018】
本明細書に記載される方法のいくつかの態様において、投与計画は、それぞれの投与間に間隔を有して、ランダムコポリマーを被験体に複数回投与する工程を含む。好ましい態様において、該投与間の間隔は少なくとも36、48、72、96、120、または144時間である。別の好ましい態様において、該投与間の間隔は36時間〜14日間、または少なくとも7日間である。関連のある態様において、少なくとも1つの投与間の間隔は、少なくとも36、48、72、96、120、もしくは144時間、少なくとも7日間、または36時間〜14日間である。別の関連のある態様において、少なくとも10%、20%、30%、40%以上、好ましくは50%の投与間の間隔は、少なくとも36、48、72、96、120、もしくは144時間、少なくとも7日間、または36時間〜14日間である。さらに別の関連のある態様において、投与間の平均間隔は、少なくとも36、48、72、96、120もしくは144時間、少なくとも7日間、または36時間〜14日間である。
【0019】
本明細書に記載される方法のいくつかの態様において、ランダムコポリマーの有効量は、投薬当り0.02mg〜2000mg、またはより好ましくは投薬当り2mg〜投薬当り200mgである。
【0020】
本明細書に記載される方法のいくつかの態様において、ランダムコポリマーは、コポリマー1(YEAK)、YFAK、VYAK、VWAK、VEAKおよびFEAKからなる群より選択される。好ましい態様において、ランダムコポリマーはコポリマー1である。別の好ましい態様において、ランダムコポリマーはYFAKである。別の態様において、ランダムコポリマーは、YAK、YEK、KEAおよびYEAからなる群より選択されるものなどのターポリマーである。さらに別の態様において、ランダムコポリマーは1〜10のアンカー残基を有する。
【0021】
本発明はまた疾患を処置するためのキットを提供する。本発明の一側面は、(i)ランダムコポリマーを含む組成物、および(ii)該組成物を、少なくとも36時間の間隔で被験体に投与するための指示書を含む自己免疫疾患を処置するためのキットを提供する。好ましい態様において、キット中のランダムコポリマーはコポリマー1である。別の好ましい態様において、キット中のランダムコポリマーはYFAKである。いくつかの態様において、キット中のランダムコポリマーは、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234または240時間ごとの投与のために調製される。いくつかの態様において、キットの指示書は、ランダムコポリマーは少なくとも24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234または240時間の間隔で被験体に投与され得るということを示す。
【0022】
本発明により提供されるキットのいくつかの態様において、組成物は徐放性製剤として調製される。具体的な態様において、徐放性製剤は、毎日投与された場合に疾患の処置に有効である、全用量を送達する。他の態様において、全用量は約20mg、20mg未満、またはxが1〜20の任意の整数であるx mgである。
【0023】
本発明により提供されるキットの別の態様において、該キットは、1回投与当り約20mgの用量で、少なくとも24、36、48、72、96、120または144時間またはそれより長い間隔で投与の必要のある被験体に組成物を投与するための指示書を含むが、他の態様において、該用量はxが1〜20の任意の整数であるx mgなど、20mg未満である。関連のある態様において、キットは、毎日投与された場合に疾患の処置に有効な用量で、少なくとも24時間の間隔で投与の必要のある被験体に組成物を投与するための指示書を含む。関連のある別の態様において、キットは、毎日投与される際に疾患の処置に有効な用量で、少なくとも24時間の間隔で投与の必要のある被験体に組成物を投与するための指示書を含む。
【0024】
いくつかの態様において、該キットが指向される疾患は、T細胞、特にTH1細胞により媒介されるか、または該疾患は過剰な炎症性サイトカインにより悪化するものである。別の態様において、該疾患は、キットが処置を提供する、多発性硬化症、I型糖尿病、橋本甲状腺炎、クローン病、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、胃炎、自己免疫性肝炎、溶血性貧血、自己免疫性血友病、自己免疫性リンパ球増殖性症候群(ALPS)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、糸球体腎炎、ギヤン-バレー症候群、乾癬、重症筋無力症、自己免疫性脳脊髄炎、グッドパスチャー症候群、グレーヴス病、腫瘍随伴性天疱瘡、自己免疫性特発性血小板減少性紫斑病、抗コラーゲン抗体による強皮症、混合結合組織病、悪性貧血、多発性筋炎、特発性アジソン病、自己免疫関連不妊症、水胞性類天疱瘡、ショーグレン症候群、特発性粘液水腫および大腸炎からなる群より選択される自己免疫疾患である。具体的な態様において、該疾患は多発性硬化症、糖尿病または関節炎である。好ましい態様において、該疾患は再発性寛解型多発性硬化症である。キットはまた、皮下注射器、針、さじもしくは目盛りつき容器などの測定デバイス、吸入器またはポンプなどのコポリマーを投与するためのパッケージおよび手段を含み得る。キットの指示書は、家庭での使用のための指示書も含有し得る。
【0025】
本発明はさらに、疾患の処置のための医薬の製造のための薬剤を提供する。被験体にランダムコポリマーを投与することによる疾患の処置または予防のための本明細書に開示される任意の方法は、該疾患を処置するための医薬の製造におけるランダムコポリマーの使用に適用され得る。従って、本発明の一側面は、ランダムコポリマーが24時間、より好ましくは48時間よりも長い間隔で被験体に投与されるように調製される、被験体における疾患の処置のためのランダムコポリマーの使用を提供する。好ましい態様において、ランダムコポリマーはコポリマー1であり、疾患は多発性硬化症またはより具体的には再発性寛解型多発性硬化症などの自己免疫疾患である。他の好ましい態様において、ランダムコポリマーはYFAKである。
【0026】
本発明の別の側面は、製薬ビジネスを行なうための特定の方法を提供する。特に、本発明は、キットおよび製剤が、ヘルスケア提供者、または直接かかるキットを必要とする被験体にマーケティングされる製薬ビジネスを実行するための方法を提供する。一側面は、ヘルスケア提供者、またはかかるキットを必要とする患者に、疾患または障害の処置において本明細書に記載される任意のキットの使用の恩恵をマーケティングすることを含む製薬ビジネスを実行するための方法を提供する。関連のある側面は、(a)本明細書に記載される任意のキットを製造すること;および(b)ヘルスケア提供者、またはかかるキットを必要とする患者に、疾患または障害の処置におけるキットの使用の恩恵をマーケティングすることを含む、製薬ビジネスを実行するための方法を提供する。いくつかの態様において、かかる製剤を開発およびマーケティングする権利、またはかかる製造工程を実行する権利は、研究のための第三者に許可される。いくつかの態様において、該疾患は再発性寛解型多発性硬化症などの多発性硬化症である。別の態様において、該キットはコポリマー1またはYFAKを含む。
【0027】
別の態様において、ヘルスケア提供者または患者にマーケティングすることには、50mgまたはより好ましくは20mg以下のランダムコポリマーを5〜7日ごとに投与するための指示が含まれる。他の態様において、マーケティングすることには、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日ごとにランダムコポリマーを投与するための指示が含まれる。別の態様において、ヘルスケア提供者または患者にマーケティングすることには、50mg、またはより好ましくは20mg以下のランダムコポリマーを5〜7日ごとに投与するための指示が含まれる。さらに別の態様において、マーケティングすることには、本明細書に記載されるキットまたは製剤を使用することにおける既存の製剤または異なるランダムコポリマーと比較した、副作用の低減の示唆が含まれる。特定の態様において、既存の製剤は患者に対してより頻繁にまたはより短い投与間隔で投与され、一方で別の態様において、既存の製剤は、マーケティングされる該キットのものよりも高い平均毎日投与量をもたらす。より高い平均毎日投与量は、該キットにより提供されるものよりも、例えば20、50、100、200または500%高い。
【0028】
II. 定義
簡便のため、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語をここにまとめる。特に記載のない限り、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者一般に理解されているものと同じ意味を有する。
【0029】
冠詞「a」および「an」は、本明細書において、その冠詞の文法的目的語の1つまたは1つより多く(すなわち、少なくとも1つ)をいうために使用される。一例として、「エレメント(an element)」は、1つのエレメントまたは1つより多くのエレメントを意味する。
【0030】
用語「含むこと」は、本明細書において句「限定されないが、〜を含む」を意味するために使用され、これと互換的に使用される。
【0031】
用語「または」は、本明細書において、文脈にそうでないと明白に示されていない限り、用語「および/または」を意味するために使用され、これと互換的に使用される。
【0032】
用語「など」は、本明細書において句「限定されないが、〜など」を意味するために使用され、これと互換的に使用される。
【0033】
本発明の方法によって処置される「患者」または「被験体」は、ヒトまたは非ヒト動物、好ましくは動物のいずれかを意味し得る。
【0034】
用語「自己免疫状況」または「自己免疫疾患」は、自己抗原として知られる自己コード実体に指向された不適切な免疫応答によって引き起こされる疾患状態を意味する。本明細書に提供されるコポリマー化合物は、橋本甲状腺炎;特発性粘液水腫、重症な甲状腺機能低下;多発性硬化症、脳または脊髄における斑または硬化組織によって特徴付けられる脱髄疾患;神経筋連結部のアセチルコリン受容体に対する自己免疫攻撃によって引き起こされる筋肉の進行性衰弱を有する疾患である重症筋無力症;ギヤン‐バレー症候群、多発性神経炎;全身性エリテマトーデス;ブドウ膜網膜炎;自己免疫卵巣炎;慢性免疫性血小板減少性紫斑病;大腸炎;糖尿病;甲状腺機能低下の一形態であるグレーヴス病;乾癬;尋常性天疱瘡;および慢性関節リウマチ(RA)を含むクラスの障害である自己免疫疾患の症状を処置するために使用され得る。
【0035】
用語「脱髄状態」は、神経細胞の伸長部分で周囲を覆われた原形質膜からなるミエリン鞘の一部が分解によって除去される疾患状態を含む。脱髄状態は、ワクチン接種後、抗TNF処置後、ウイルス感染後、およびMSにおいて生じ得る。
【0036】
用語アミノ酸の「誘導体」は、さらなる置換、例えば、アミノ酸の原子に結合されたN-カルボキシ無水物基、γ-ベンジル基、ε-N-トリフルオロアセチル基またはハライド基を有するアミノ酸の化学的に関連する形態を意味する。
【0037】
用語「アナログ」は、異なる立体配置を有するアミノ酸の化学的に関連する形態、例えば、異性体、またはL-立体配置ではなくD-立体配置、または該アミノ酸と同等の大きさ、電荷および形状を有する有機分子、またはペプチド結合に関与する原子に修飾を有し、その結果、アナログ残基を有するコポリマーは、アナログが内部にあろうと、コポリマ末端に位置しようと、アナログのないコポリマーと比べ、その他の点では類似するかかるアナログを欠くコポリマーよりもプロテアーゼ耐性であるアミノ酸を意味する。
【0038】
句「アミノ酸」および「アミノ酸コポリマー」は、本明細書に規定されるアミノ酸誘導体および/またはアミノ酸アナログである1つ以上の成分を含み得、該誘導体またはアナログは、その組成によって示された20個の天然のアミノ酸の任意の1つ以上の残基の一部または全体を含む。例えば、1つ以上のチロシン残基を有するアミノ酸コポリマー組成物において該残基の1つ以上の一部がホモチロシンで置換され得る。さらに、2つの隣接残基間に1つ以上の非ペプチド結合またはペプチド模倣結合を有するアミノ酸コポリマーは、この定義に含まれる。
【0039】
用語「疎水性」アミノ酸は、脂肪族アミノ酸アラニン(Aまたはala)、グリシン(Gまたはgly)、イソロイシン(Iまたはile)、ロイシン(Lまたはleu)、メチオニン(Mまたはmet)、プロリン(Pまたはpro)およびバリン(Vまたはval)ならびに芳香族アミノ酸トリプトファン(Wまたはtrp)、フェニルアラニン(Fまたはphe)、およびチロシン(Yまたはtyr)を意味し、括弧内の用語は、各アミノ酸の一文字および三文字の標準的なコード略号である。これらのアミノ酸は、コポリマーまたは他のポリペプチド内に残基として見られる場合は、脂肪族の長さおよび芳香族側鎖の大きさの関数として疎水性を付与する。
【0040】
用語「荷電した」アミノ酸は、アミノ酸アスパラギン酸(Dまたはasp)、グルタミン酸(Eまたはglu)、アルギニン(Rまたはarg)およびリジン(Kまたはlys)を意味し、これらは、これらのアミノ酸の1つ以上の残基を含有するコポリマーまたは他のアミノ酸組成物の水溶液の生理学的値のpHで、正(lysおよびarg)または負(asp、glu)の電荷を付与する。ヒスチジン(Hまたはhis)は、pH7で疎水性であり、pH6で荷電している。
【0041】
用語「障害」および「疾患」は包括的に使用され、身体の任意の部分、臓器もしくは系(または任意のその組合せ)の正常な構造または機能からの任意の異常をいう。具体的な疾患は、生物学的、化学的および物理的変化を含む特徴的な症状および徴候によって発現され、しばしば、限定されないが、人口統計学的、環境的、雇用、遺伝的および病歴の因子を含む種々の他の因子と関連している。ある種の特徴的徴候、症状および関連因子は、重要な診断情報をもたらす種々の方法により定量され得る。
【0042】
用語「予防的」または「治療的」処置は、1つ以上の主題の組成物の望ましくない状態(例えば、宿主動物の疾患または他の望ましくない状態)の被験体への投与をいう。これが、臨床的発現前に投与される場合、処置は予防的である、すなわち、これは、望ましくない状態の発生に対する宿主保護に寄与するが、望ましくない状態の発現後に投与される場合は、処置は治療的である(すなわち、望ましくない状態またはその副作用の進行の低減、改善または抑制ことが意図される)。
【0043】
用語「治療的効果」は、薬理学的に活性な物質によって引き起こされる動物、特に哺乳動物、さらに特にヒトにおける局所または全身性効果をいう。該用語は、したがって、動物またはヒトにおける疾患の診断、治癒、軽減、処置もしくは予防または望ましい身体的もしくは精神的発達および状態の増強における使用が意図される任意の物質を意味する。句「治療有効量」は、任意の処置に適用可能な妥当な有益/リスク比でいくらかの望ましい局所または全身性効果を生じるような物質の量を意味する。特定の態様において、化合物の治療有効量は、その治療指数、可溶性などに依存する。例えば、本発明の方法によって見出された特定の化合物は、かかる処置に適用可能な妥当な有益/リスク比を生じるのに充分な量で投与され得る。
【0044】
用語「有効量」は、適切な用量および計画によって被験体に投与されると望ましい結果を生じる治療的試薬の量をいう。
【0045】
用語「障害の処置を必要とする被験体」は、該障害を有すると診断された、該障害を発症しやすい、または該障害を有することが疑われる被験体である。
【0046】
本明細書で使用される用語「抗体」は、例えば、任意のアイソタイプ(IgG、IgA、IgM、IgEなど)の抗体全体を含むことが意図され、脊椎動物、例えば哺乳動物のタンパク質とも特異的に反応性であるその断片を含む。抗体は、従来の技術を用いて断片化され得、断片は、有用性および/または目的の特異的エピトープ との相互作用についてスクリーニングされ得る。したがって、該用語は、特定のタンパク質と選択的に反応し得る抗体分子のタンパク質分解的に切断された、または組換えにより作製された部分のセグメントを含む。かかるタンパク質分解的および/または組換え断片の非限定的な例は、Fab、F(ab')2、Fab'、Fv、およびペプチドリンカーによって連結されたV[L]および/またはV[H]ドメインを含有する単鎖抗体(scFv)を含む。ScFvは、共有結合または非共有結合され、2つ以上の結合部位を有する抗体が形成され得る。用語抗体はまた、ポリクローナル、モノクローナルまたは抗体および組換え抗体の他の精製調製物を含む。
【0047】
用語「中枢寛容(central tolerance)」は、胸腺内での事象、すなわち胸腺内での抗原に反応性のT細胞のクローン除去よって制御される抗原に対する寛容を意味する。抗原に対して高親和性受容体を有する部分活性化されたT細胞は、細胞表面上のFasへのFasLの結合および共発現によって引き起こされるFas媒介アポトーシスによって胸腺内で負の選択およびクローン除去を受ける。対照的に、用語「末梢寛容」は、脾臓におけるクローン除去のないT細胞の活性化誘導細胞死(AICD)および機能的サイレンシング(クローンアネルギー)によるT細胞の除去を意味する。また、ヘルパーT細胞の協働が欠如する場合、B細胞は、おそらく、T細胞依存性抗原に対する応答に「無力」である。中枢および末梢寛容の調節は、p56lckおよびZAP-70のリン酸化によって調節される。これらのタンパク質の重要な残基のリン酸化の(of of)状態および程度により、末梢および中枢寛容に影響するシグナル伝達分子の上方または下方調節がもたらされる。T細胞受容体シグナル伝達の阻害もまた、寛容の誘導において役割を果たす。
【0048】
本明細書において使用される他の技術用語は、種々の技術辞典に例示されているような、これが使用される当該技術分野におけるその通常の意味を有する。
【0049】
III. ランダムコポリマー
本発明のランダムコポリマーの組成物は、非常に多数の交差反応性のT細胞エピトープの寄せ集めの特徴を含む。本発明のランダムコポリマーの組成物は、改変されたペプチドリガンドの特徴をさらに含み得る。本発明のランダムコポリマーの組成物の多数の機能的結果が存在する:1つは、MHC分子、好ましくはMHCクラスII 分子の提示によって数千、好ましくは数十万、より好ましくは数百万のT細胞エピトープと機能的に相互作用するという潜在性であるが、別のことは、サイトカインなどの可溶性メディエイタを分泌し得るランダムコポリマー特異的T細胞の生成である。
【0050】
本発明のランダムコポリマーには、選択されたアミノ酸の亜群が、そのいくつかが病原性障害と直接関連し得る特異的T細胞エピトープと優先的に相互作用するような所定の特異的アミノ酸配列の特徴が与えられ得る。好ましくは、本発明のランダムコポリマーには、選択されたアミノ酸の亜群が、特異的T細胞エピトープ優先的に相互作用し、そのいくつかが、サイトカインなどの可溶性メディエイタの異常な産生によって悪化する病原性障害と直接関連し得る2〜8個のアミノ酸を含むような特異的アミノ酸配列の特徴が与えられ得る。
【0051】
好ましくは、本発明のランダムコポリマーには、選択されたアミノ酸の亜群が、選択されたアミノ酸および前記アミノ酸の互いに対する比のおかげで、そのいくつかが、サイトカインなどの可溶性メディエイタの異常な産生によって悪化する病原性障害と直接関連し得る特異的T細胞エピトープと優先的に相互作用する2〜8個のアミノ酸を含むような特異的アミノ酸配列の特徴が与えられ得、前記病原性障害は、HLA-DRまたはHLA-DQなどの特異的MHCクラスII対立遺伝子との連鎖を有する。
【0052】
より好ましくは、本発明のランダムコポリマーは、そのいくつかが、サイトカインなどの可溶性メディエイタの異常な産生によって悪化する病原性障害と直接関連し得る特異的T細胞エピトープと優先的に相互作用する、好ましくはペプチド結合を介してランダムに連結された2〜8個のアミノ酸のポリマーを含み、前記病原性障害は、HLA-DRまたはHLA-DQなどの特異的MHCクラスII対立遺伝子との連鎖を有する。
【0053】
より好ましくは、本発明のランダムコポリマーは、そのいくつかが、サイトカインなどの可溶性メディエイタの異常な産生によって悪化する病原性障害と直接関連し得る特異的T細胞エピトープと優先的に相互作用する、好ましくはペプチド結合を介してランダムに連結された3〜5個のポリマーを含み、前記自己免疫障害は、HLA-DRまたはHLA-DQなどの特異的MHCクラスII対立遺伝子との連鎖を有する。
【0054】
本発明のランダムコポリマーは、グルタミン酸またはアスパラギン酸などの負の電荷を有するアミノ酸(好ましくはより少ない量で)との組合せで、任意に、充填剤としての機能を果たすアラニンまたはグリシンなどの電気的に中性のアミノ酸との組合せで、および任意に、チロシンまたはトリプトファンなどの芳香族アミノ酸などのコポリマーに免疫原特性を付与するように適合されたアミノ酸とともに適当な量のリジンまたはアルギニンなどの正の電荷のアミノ酸を含み得る。かかる組成物は、その全内容が参照により本明細書に援用されるWO 00/005250に開示された任意のものを含み得る。
【0055】
4つのアミノ酸を含むコポリマー
本発明の1つの態様において、ランダムコポリマーは、各々、以下の群:(a)リジンおよびアルギニン;(b)グルタミン酸およびアスパラギン酸;(c)アラニンおよびグリシン;(d)チロシンおよびトリプトファンの異なる1つである4種類の異なるアミノ酸を含有する。
【0056】
本発明のこの態様による具体的なコポリマーは、組合せで、アラニン、グルタミン酸、リジンおよびチロシンを含み、全体で正味正の電荷を有する。1つの好ましい例は、平均分子量が約4,700〜約13,000ダルトンのコポリマー1(Cop 1)または酢酸グラチラマー(glatiramer)とも称されるYEAKである。好ましいコポリマーは、約2,000〜約40,000ダルトンまたは約2,000〜約13,000ダルトンの分子量を有する。好ましい分子量範囲および好ましい形態のコポリマー1の作製方法は、米国特許第5,800,808号に記載されており、その全内容は、本明細書に援用される。したがって、コポリマーは、約15〜約100、好ましくは約40〜約80アミノ酸長のポリペプチドであり得る。好ましい態様において、コポリマー1の長さは35〜75アミノ酸残基である。より好ましくは、コポリマー1の長さは35〜65アミノ酸残基である。好ましい態様において、コポリマー1の長さは約50アミノ酸である。別の好ましい態様において、コポリマー1の長さは約52アミノ酸である。好ましい態様において、コポリマー1は、以下により詳細に記載する固相化学反応によって合成されるY:E:A:Kについて、それぞれ約1.0:2.0:6.0:5.0の平均モル出力比を有する。出力比における変動は、異なるアミノ酸間で約10%の範囲を含む。
【0057】
約52アミノ酸残基のコポリマー1の好ましい態様において、アミノ酸31〜52位におけるアラニン組成の比は、アミノ酸11〜30位においてより大きく、アミノ酸11〜30位におけるアラニン組成の比は、アミノ酸1〜10位においてより大きい。より具体的には、本発明の好ましい態様は、固相化学反応によって合成される、それぞれ約1.0:2.0:6.0:5.0の平均モル出力比の組成YEAK(L-チロシン、L-グルタミン酸、L-アラニンおよびL-リジン)のランダムコポリマーであり、ここで、該コポリマーは52アミノ酸長を有し、コポリマー配列の残基1〜10は、約1.0:2.0:5.5:5.0のモル出力比を有し、残基11〜30は、約1.0:2.0:6.0:5.0のモル出力比を有し、残基31〜52は、約1.0:2.0:6.5:5.0のモル出力比を有する。
【0058】
本発明の目的のため、「Cop 1またはCop 1関連ペプチドもしくはポリペプチド」は、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)と機能的に交差反応し、抗原提示においてMHCクラスIIに関してMBPと競合し得るランダムコポリマーを含む任意のペプチドまたはポリペプチドを含むこと意図される。コポリマー1は、いくつかの国で、多発性硬化症(MS)の処置のため、商標COPAXONETMで承認されている。COPAXONETMは、Teva Pharmaceuticals Ltd.、Petah Tikva、Israelの登録商標である。コポリマー1は、精製されたMS関連HLA-DR2(DRB1*1501)および慢性関節リウマチ(RA)関連HLA-DR1(DRBI*101)またはHLA-DR4(DRB1*0401)分子に高親和性様式でペプチド特異的様式に結合する。コポリマー1は、ランダムポリペプチドの混合物であるため、異なるHLAタンパク質に結合する異なる配列を含有し得る;この場合、全混合物のうち一画分のみが「活性成分」であり得る。あるいは、全混合物が能力を有し得る、すなわち、すべてのポリペプチドが任意のHLA-DR分子に結合する。
【0059】
より好ましくは、本発明のランダムコポリマーは、炎症サイトカインの異常な産生によって悪化する自己免疫障害と関連する特異的T細胞エピトープと優先的に相互作用するペプチド結合を介してランダムに連結されたアミノ酸コポリマー1またはYFAKのポリマーを含み、前記自己免疫障害は、HLA-DRまたはHLA-DQなどの特異的MHCクラスII対立遺伝子との連鎖を有する。
【0060】
より好ましくは、本発明のランダムコポリマーは、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、糖尿病、セリアック病、慢性関節リウマチ、ステロイド感受性ネフローゼ症候群、メサンギウム(mesengial)IgAネフロパシー、ナルコレプシー、神経性多発性硬化症、再発性多発性軟骨炎、皮膚障害、例えば、疱疹状皮膚炎、アトピー性皮膚炎、ベーチェット病、天疱瘡、乾癬、原発性シェーグレン症候群、全身性脈管炎(systemic vasculitides)、紅斑、胃腸障害、例えば、クローン病、呼吸障害、例えば、ソマー型過敏性肺炎、および自己免疫甲状腺 疾患(AITD)と関連する特異的T細胞エピトープと優先的に相互作用する、ペプチド結合を介してランダムに連結されたアミノ酸コポリマー1またはYFAKのポリマーを含む。
【0061】
本発明の別の側面において、ランダムコポリマーは、YFAK、VYAK、VWAK、VEAKおよびFEAKを含む。好ましい態様において、ランダムコポリマーは、それぞれ約1.0:1.2:XA:6.0のモル出力比のアミノ酸残基YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)からなり、ここで、XAは11.0より大きく30.0未満であり、出力比の変動は、異なるアミノ酸間で約10%の範囲を含む。別の好ましい態様において、ランダムコポリマーは、それぞれ約1.0:1.0:XA:6.0のモル出力比のアミノ酸残基YFAKからなり、ここで、XAは5.0より大きく15.0未満であり、出力比の変動は、異なるアミノ酸間で約10%の範囲を含む。好ましい態様のランダムコポリマーのYFAKのモル出力比を以下の表Iに示す。


【0062】
好ましい態様において、任意のかかるコポリマーの長さは35〜75アミノ酸残基である。より好ましくは、ランダムコポリマーの長さは、35〜65アミノ酸残基である。好ましい態様において、ランダムコポリマーの長さは約50アミノ酸である。別の好ましい態様において、ランダムコポリマーの長さは約52アミノ酸である。
【0063】
本発明の好ましい態様は、以下により詳細に記載する固相化学反応によって合成される、それぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0の平均モル出力比の組成YFAKのランダムコポリマーである。
【0064】
好ましい態様において、YFAKの平均モル出力比は、約1.0:1.2:XA:6.0であり、ここで、XAは18より大きく、アラニンの比は、コポリマーの長さとともに増大する。好ましい態様において、かかるランダムコポリマーの長さは約52アミノ酸残基であり、アミノ酸31〜52位におけるアラニン組成の比はアミノ酸11〜30位においてより大きく、アミノ酸11〜30位におけるアラニン組成の比は、アミノ酸1〜10位においてより大きい。より具体的には、本発明の好ましい態様は、固相化学反応によって合成される、それぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0の平均モル出力比の組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)のランダムコポリマーであり、ここで、該コポリマーは、52アミノ酸長を有し、該コポリマー配列の残基1〜10は、約1.0:1.2:16:6のモル出力比を有し、残基11〜30は、約1.0:1.2:18:6のモル出力比を有し、残基31〜52は、約1.0:1.2:20:6のモル出力比を有する。
【0065】
3つのアミノ酸を含むコポリマー
別の態様において、ランダムコポリマーは、各々が上記の群(a)〜(d)のうちの3つの群の異なる1つに由来する3つの異なるアミノ酸を含む。これらのコポリマーは、本明細書では、「ターポリマー」と称される。平均分子量は、2,000〜約40,000ダルトン、好ましくは約3,000〜約35,000ダルトンである。より好ましい態様において、平均分子量は約5,000〜約25,000ダルトンである。
【0066】
1つの態様において、本発明における使用のためのターポリマーは、チロシン、アラニンおよびリジンを含有し、以下、本明細書においてYAKと命名する。これらのターポリマー中のアミノ酸の平均モル分率は変化し得る。例えば、チロシンは、約0.005〜約0.250のモル分率で存在し得る;アラニンは、約0.3〜約0.6のモル分率で存在し得る;およびリジンは、約0.1〜約0.5のモル分率で存在し得る。リジンの代わりにアルギニン、アラニンの代わりにグリシン、および/またはチロシンの代わりにトリプトファンを用いることが可能である。チロシン、アラニンおよびリジンのより好ましいターポリマーまたはYAKのモノマーのモル比は、約0.10対約0.54対約0.35である。例示的なYAK コポリマーは、Fridkis-Hareli M.、Hum Immunol. 2000;61(7):640-50に記載されている。
【0067】
別の態様において、本発明における使用のためのターポリマーは、チロシン、グルタミン酸およびリジンを含有し、以下、本明細書においてYEKと命名する。これらのターポリマー中のアミノ酸の平均モル分率は変化し得る:グルタミン酸は、約0.005〜約0.300のモル分率で存在し得、チロシンは、約0.005〜約0.250のモル分率で存在し得、リジンは、約0.3〜約0.7のモル分率で存在し得る。グルタミン酸の代わりにアスパラギン酸、リジンの代わりにアルギニン、および/またはチロシンの代わりにトリプトファンを用いることが可能である。グルタミン酸、チロシン、およびリジンのより好ましいターポリマーまたはYEKのモノマーのモル比は、約0.26対約0.16対約0.58である。
【0068】
別の態様において 本発明における使用のためのターポリマーは、リジン、グルタミン酸およびアラニンを含有し、以下、本明細書においてKEAと命名する。これらのポリペプチド中のアミノ酸の平均モル分率もまた変化し得る。例えば、グルタミン酸は、約0.005〜約0.300のモル分率で存在し得、アラニンは、約0.005〜約0.600のモル分率で存在し得、リジンは、約0.2〜約0.7のモル分率で存在し得る。グルタミン酸の代わりにアスパラギン酸、アラニンの代わりにグリシン、および/またはリジンの代わりにアルギニンを用いることが可能である。グルタミン酸、アラニンおよびリジンのより好ましいターポリマーまたはKEAのモノマーのモル比は、約0.15対約0.48対約0.36である。
【0069】
別の態様において、本発明における使用のためのターポリマーは、チロシン、グルタミン酸およびアラニンを含有し、以下、本明細書においてYEAと命名する。これらのポリペプチド中のアミノ酸の平均モル分率は変化し得る。例えば、チロシンは、約0.005〜約0.250のモル分率で存在し得、グルタミン酸は、約0.005〜約0.300のモル分率で存在し得、アラニンは、約0.005〜約0.800のモル分率で存在し得る。チロシンの代わりにトリプトファン、グルタミン酸の代わりにアスパラギン酸、および/またはアラニンの代わりにグリシンを用いることが可能である。グルタミン酸、アラニンおよびチロシンのより好ましいターポリマーまたはYEAのモノマーのモル比は、約0.21対約0.65対約0.14である。
【0070】
より好ましい態様において、ターポリマーのアミノ酸のモル分率は、ほぼコポリマー1に好ましいものである。コポリマー1におけるアミノ酸のモル分率は、グルタミン酸約0.14、アラニン約0.43、チロシン約0.10、およびリジン約0.34である。コポリマー1の最も好ましい平均分子量は、約5,000〜約9,000ダルトンである。本明細書に開示された有用性に関するコポリマー1の活性は、以下:グルタミン酸(E)がアスパラギン酸(D)へ、アラニン(A)がグリシン(G)へ、リジン(K)がアルギニン(R)へ、およびチロシン(Y)がトリプトファン(W)への置換の1つ以上が行なわれた場合、残ることが予測される。
【0071】
MHCクラスIIタンパク質に結合するコポリマー
1つの態様において、本明細書に記載された方法に使用されるコポリマーは、好ましくは自己免疫疾患と関連しているMHCクラスIIタンパク質に結合し得る。少なくとも3つの型のクラスII MHC分子:HLA-DR、HLA-DQ、およびHLA-DP分子がある。また、これらのHLA分子の各型をコードする対立遺伝子が数多くある。クラスII MHC分子は、主に、Bリンパ球およびマクロファージなどの抗原提示細胞の表面上に発現される。任意の利用可能な方法が、コポリマーが1つ以上のMHCクラスIIタンパク質に結合するかを否かを確認するために使用され得る。例えば、ポリペプチドは、レポーター分子(放射性核種またはビオチンなど)で標識され、MHCクラスIIタンパク質の粗製または精製調製物と混合され得、レポーター分子が未結合ポリペプチドの除去後にMHCクラスIIタンパク質に結合されると、結合が検出される。
【0072】
別の態様において、本明細書に記載された方法に使用されるコポリマーは、多発性硬化症と関連するMHCクラスIIタンパク質に結合し得る。この態様のポリペプチドは、多発性硬化症と関連するMHCクラスIIタンパク質の抗原結合溝に対して、コポリマー1と類似した、またはより大きな親和性を有し得る。したがって、企図されるポリペプチドは、ミエリン自己抗原の結合を阻害し得るか、またはMHCクラスIIタンパク質から該結合を移動し得る。多発性硬化症と関連するMHCクラスIIタンパク質の1つは、HLA-DR4(DRB1*1501)である。
【0073】
別の態様において、本明細書に記載された方法に使用されるランダムコポリマーは、関節炎状態、例えば、慢性関節リウマチまたは変形性関節症と関連するMHCクラスIIタンパク質に結合し得る。この態様のランダムコポリマーは、自己免疫疾患と関連するMHCクラスIIタンパク質抗原結合溝に対してII型コラーゲン261-273ペプチドよりも大きい親和性を有し得る。したがって、YFAKなどの本明細書に記載された企図されるコポリマー1またはランダムコポリマーは、II型コラーゲン261〜273ペプチドの結合を阻害し得るか、またはMHCクラスIIタンパク質の抗原結合溝から該ペプチドを移動し得る。クラスII MHCタンパク質は、ともに膜貫通タンパク質であるほぼ等しいサイズのαおよびβサブユニットからなる。ペプチド結合の裂溝は、αおよびβサブユニット両方のアミノ末端部分によって形成される。このペプチド-結合裂溝は、T細胞への抗原提示部位である。
【0074】
他の態様において、本発明に使用されるランダムコポリマーは、HLA-DR 分子のペプチド結合溝に結合し得る。MS関連HLA-DR分子へのCop 1の結合モチーフは公知である(Fridkis-Hareli et al., 1999、J. Immunol;162(8):4697-704)ため、固定配列のポリペプチドは、容易に調製され、HLA-DR分子ペプチド結合溝への結合について、Fridkis-Hareliに記載のようにして試験され得る。かかるペプチドの例は、WO 00/005249に開示されたものであり、その全内容は、参照により本明細書に援用される。前記出願に具体的に開示されたペプチドのうち32個は、以下のとおりである。

【0075】
本発明における使用のためのさらなるランダムコポリマー、およびその合成方法は、Shukaliak Quandt, J. et al., 2004、Mol. Immunol. 40(14-15):1075-87;Montaudo, M.S.、2004、J. Am. Soc. Mass Spectrom. 15(3):374-84;Takeda, N. et al., 2004、J. Control Release 95(2):343-55;Pollino, J.M. et al., 2004、J. Am. Chem. Soc. 126(2):563-7;Fridkis-Hareli, M. et al., 2002、J. Clin Invest. 109(12):1635-43;Williams, D.M. et al., 2000、J. Biol Chem. 275(49):38127-30;Tselios, T. et al., 2000、Bioorg. Med Chem. 8(8):1903-9;および Cady, C.T. et al., 2000、J. Immunol. 165(4):1790-8などの文献に見られ得る。
【0076】
1つの具体的な態様において、ランダムコポリマーは、少なくとも7つのアミノ酸残基長を含み、自己免疫疾患と関連するMHCクラスIIタンパク質に結合し得、該合成ペプチドは、II型コラーゲン261〜273ペプチドよりも大きな親和性で、MHCクラスIIタンパク質の抗原結合溝に結合し、該合成ペプチドは、アラニン-グルタミン酸-リジン-チロシン-アラニン(AEKYA)、アラニン-グルタミン酸-リジン-バリン-アラニン(AEKVA)、アラニン-グルタミン酸-リジン-フェニルアラニン-アラニン(AEKFA)、アラニン-リジン-チロシン-アラニン-グルタミン酸(AKYAE)、グルタミン酸-アラニン-リジン-チロシン-アラニン(EAKYA)、アラニン-リジン-バリン-アラニン-グルタミン酸(AKVAE)、および グルタミン酸-アラニン-リジン-バリン-アラニン(EAKVA)、アラニン-リジン-フェニルアラニン-アラニン-グルタミン酸(AKFAE)、およびグルタミン酸-アラニン-リジン-フェニルアラニン-アラニン(EAKFA)からなる群より選択される配列を含む。
【0077】
特定の好ましい態様において、本発明のコポリマーは、HLA-DQA1分子に結合し、さらにより好ましくは、対立遺伝子DQA1*0501-DQB1*0201、DQA1*0301、DQB1*0401、およびDQA1*03-DQB1*0302にコードされるHLA分子の1つ以上に結合する。
【0078】
他の態様において、本発明の方法のコポリマーは、特定のHLA-DQ分子に結合し、この分子は、かかる分子の保有者にI型糖尿病およびセリアック病などの自己免疫関連疾患の素因を与え、解離定数(Kd)は、HLA-DR分子および/または他のDQアイソタイプの結合に対するコポリマーのKdよりも少なくとも10倍小さい。かかるHLA-DQ分子は、DQB1*0201、DQB1*0302、DQB1*0304、DQB1*0401、DQB1*0501、DQB1*0502;およびDQA1*0301、DQA1*0302、DQA1*0303、DQA1*0501として知られる特異的HLA-DQB1ならびにDQA1対立遺伝子の合わせたタンパク質生成物である。これらの対立遺伝子は、DQB1*0201-DQA1*0501-DRB1*0301およびDQB1*0302-DQA1*0301-DRB1*0401などの同じハプロタイプ(「シス」対立遺伝子)にコードされ得る。得られた「シス」対立遺伝子のHLA分子含有ポリペプチド生成物は、本明細書において「シスダイマー」と称される。あるいは、対立遺伝子は、異なるハプロタイプ(「トランス」対立遺伝子)にコードされ得る。「トランス」対立遺伝子のHLA分子含有ポリペプチド生成物は、本明細書において「トランス」ダイマーと称される。「トランス」対立遺伝子の一例は、DQB1*0201-DQA1*0501-DRB1*0301におけるDQB1*0201およびDQB1*0301-DQA1*0301-DRB1*0404におけるDQA1*0301の組合せである。
【0079】
特定の態様において、本明細書に記載された方法に使用されるDQ指向コポリマーは、以下の4つの群:(1)疎水性、脂肪族アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニンなど);(2)酸性側鎖を有するアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸など);(3)小さい親水性側鎖を有するアミノ酸(セリン、システイン、トレオニンなど);および(4)小さい脂肪族側鎖を有するアミノ酸(アラニン、グリシンなど);の各々からのアミノ酸を含有するランダム化または部分ランダム化アミノ酸配列の混合物であり、さらに、コポリマーはプロリン残基を含有する。1つの態様において、コポリマーは、アミノ酸グルタミン(E)および/またはアスパラギン酸(D)、ロイシン(L)、セリン(S)およびアラニン(A)を用いて誘導され、本明細書において「ELSA」コポリマーと称される。
【0080】
特定の他の態様において、DQ指向コポリマーは、以下の4つの群:(1)疎水性、脂肪族アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニンなど);(2)かさ高い疎水性アミノ酸(チロシン、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニンなど);(2)酸性側鎖を有するアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸など);(3)小さい親水性側鎖を有するアミノ酸(セリン、システイン、トレオニンなど);および(4)小さい脂肪族側鎖を有するアミノ酸(アラニン、グリシンなど)の各々からのアミノ酸を含有するランダム化または部分ランダム化アミノ酸配列の混合物であり、さらに、コポリマーはプロリン残基を含有する。例示的なコポリマーは、アミノ酸残基グルタミン(E)および/またはアスパラギン酸(D)、ロイシン(L)、チロシン(Y)およびVal(V) を用いて誘導され、本明細書において「DLYV」コポリマーと称される。
【0081】
1つの態様において、自己免疫疾患の処置方法は、自己免疫疾患と関連するHLA-DQ分子に結合するコポリマーの投与を含む。好ましくは、該処置方法は、(1)疎水性、脂肪族残基(ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン);(2)酸性残基(アスパラギン酸、グルタミン酸);(3)小さい親水性残基(セリン、システイン、トレオニン);(4)小さい脂肪族残基(アラニン、グリシン);および(5)プロリンから選択される複数のアミノ酸残基を含むポリペプチドを含むコポリマーを用いて行なわれる。
【0082】
好ましい態様において、本発明のコポリマー組成物は、1μM以下の平均Kd、より好ましくは100nM未満、10nMまたは1nMすらの平均Kdで、1つ以上のDQアイソタイプに結合する。好ましいコポリマーを同定するための別の方法は、Sidney et al., 2002、J. Immunol. 169:5098に記載のものなどの競合的結合アッセイにおける別のものへのコポリマーの移動の測定に基づき、これは、IC5O値で示される。本発明の好ましいコポリマーは、1μM未満、より好ましくは500nM未満、さらには100nM未満のIC5Oを有する。
【0083】
特定の好ましい態様において、コポリマーは、種々のアミノ酸残基のランダム合成(重合)によって形成される。ランダムコポリマーに組み込まれるべきアミノ酸の特定の比が使用され得る。好ましい本発明のランダムコポリマーは、アミノ酸残基K、E、A、S、VおよびPを含む。より好ましくは、K:E:A:S:Vの比は、0.3:0.7:9:0.5:0.5:0.3である。好ましくは、ランダムコポリマーは、約10〜100アミノ酸残基長、より好ましくは20〜80アミノ酸残基長、さらにより好ましくは40〜60アミノ酸残基長、最も好ましくは約50アミノ酸残基長である。合成される場合、ランダムコポリマーの典型的な調製物は、種々の長さのペプチドの混合物であり、その大部分は望ましい長さであるが、現在利用可能な合成方法により不可避的に生成されるより短いまたはより長いペプチドも含有する。
【0084】
さらに、特定の態様において、コポリマーは、得られるポリマー内に規則的な間隔で生じ、最適なクラスII結合を提供する「アンカー」または固定残基を有する半ランダム(または半規則的)ポリマーであり得る。ペプチド内のアンカー残基は、E、DまたはVであり得る。例えば、コポリマーは、一般配列


の1つを有するように合成され得る。
【0085】
該ペプチドは、9〜25アミノ酸残基長を有し得る。好ましくは、該ペプチドは13アミノ酸残基長である。9〜25 アミノ酸の定められた長さの配列のペプチドは、2〜20個の固定残基を含有し得る。本発明に記載のペプチドの個々の固定残基は、P1、P4、P7またはP9位のいずれかでクラスII MCH分子のペプチド結合溝(grove)に結合し得る。好ましくは、かかるペプチドは、2または3個の固定残基を含有する。1つの態様において、13アミノ酸の定められた配列長のペプチドは、EもしくはDいずれかまたはその任意の組合せの2個の固定残基を含有する。好ましくは、13アミノ酸の定められた配列長のペプチドは、3個の固定残基を含有する。該ペプチドは、反復単位の数が、好ましくは2〜8の範囲である定められた配列のマルチマーであり得る。より好ましくは、反復単位の数は3〜6である。最も好ましくは、反復単位の数は4である。好ましい態様において、本発明のマルチマーは、EもしくはDいずれかまたはその任意の組合せの2個の固定残基を含有する13アミノ酸の定められた配列長のペプチドを含む。
【0086】
特定の好ましい態様において、主題のコポリマーは、医薬としての使用のために、25,000未満、より好ましくは10000未満、5000未満、1000未満、500未満、100未満、50未満、または10未満すらの多分散度を有するように製剤化される。
【0087】
ランダムコポリマーの合成
本発明に使用されるターポリマーおよびランダムコポリマーは、当業者によって利用可能な任意の手順によって作製され得る。例えば、ターポリマーは、縮合条件下で望ましいモル比のアミノ酸を用いて溶液中で、または固相合成手順によって作製され得る。縮合条件としては、1つのアミノ酸のカルボキシル基を、別のアミノ酸のアミノ基と縮合してペプチド結合を形成するための適正な温度、pHおよび溶媒条件が挙げられる。ペプチド結合の形成を容易にするため、縮合剤、例えばジシクロヘキシル-カルボジイミドが使用され得る。ブロック基は、望ましくない副作用に対して、側鎖部分およびいくつかのアミノ基またはカルボキシル基などの官能基を保護するために使用され得る。
【0088】
例えば、チロシン、アラニン、γ-ベンジルグルタメートおよびN-ε-トリフルオロアセチル-リジンのN-カルボキシ無水物が、開始剤としてのジエチルアミンとともに無水ジオキサン中で、周囲温度で重合される米国特許第3,849,550号に開示された方法が使用され得る。グルタミン酸のγ-カルボキシル基は、氷酢酸中、臭化水素によって脱ブロックされ得る。トリフルオロアセチル基は、1モルのピペリジンによってリジンから除去される。当業者は、グルタミン酸、アラニン、チロシンまたはリジンの任意の1つに関する反応を選択的に排除することにより、望ましいアミノ酸、すなわち、コポリマー1の4つのアミノ酸のうち3つを含有するペプチドおよびポリペプチドを作製するために、該方法が調整され得ることを容易に理解する。本出願の目的のため、用語「周囲温度」および「室温」は、約20〜約26℃の範囲の温度を意味する。
【0089】
本発明のランダムコポリマーの好ましい合成方法は、固相合成によるものである。合成は、Fmoc保護アミノ酸を使用する固相ペプチド合成(SPPS)アプローチによって多工程で行なわれる。SPPSは、適宜側鎖が保護された保護アミノ酸誘導体のポリマー支持体(ビーズ)への逐次付加に基づく。塩基不安定性Fmoc基がN-保護に使用される。保護基(ピペリジン加水分解により)を除去した後、カップリング試薬(TBTU)を用いて次のアミノ酸混合物が添加される。最後のアミノ酸がカップリングされた後、N末端がアセチル化される。
【0090】
得られるペプチド(そのC末端を介してポリマー支持体に結合)は、TFAにより切断され、粗製ペプチドが生じる。この切断工程中、すべての側鎖保護基もまた切断される。ジイソプロピルエーテルでの沈殿後、固相を濾過し、乾燥する。得られたペプチドを分析し、2〜8℃で保存する。
【0091】
固相合成の例
L-アラニン、L-リジン、L-フェニルアラニンおよびL-チロシンからなるランダムコポリマーYFAKを、その保護された形態でWang樹脂上で調製する。使用した樹脂は、Fmoc-L-Tyr(t-Bu)-Wang(0.62mmol/g)、Fmoc-L-Phe-Wang(0.72mmol/g)、Fmoc-L-Ala- Wang(0.70mmol/g)、およびFmoc-L-Lys(Boc)-Wang(0.72mmol/g)であった。4種類のF-moc保護アミノ酸、Fmoc-L-Tyr(t-Bu)-OH、Fmoc-L-Phe-OH、Fmoc-L-Ala-OH、およびFmoc-L-Lys-OHを、各カップリング工程中、それぞれ1:1:10:6のモル投入比で使用する。合成に使用した他の試薬は、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム、テトラフルオロボレート(TBTU)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ピペリジン、およびトリフルオロ酢酸(TFA)である。使用した溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)、イソプロパノール(IsOH、IPA、i-PrOH)、塩化メチレン、およびイソプロピルエーテルである。各カップリングの化学量論は、以下のとおり:
・残基1〜10 2当量のFmoc保護アミノ酸を使用;
・残基11〜30 二重カップリングで2当量のFmoc保護アミノ酸を使用;
・残基31〜52 二重カップリングで2.5当量のFmoc保護アミノ酸を使用
である。
【0092】
漸増的にアラニン含量が高くなるYFAK合成の代表的な例におけるアミノ酸投入比の一例は以下のとおりである。

【0093】
同様にして、本発明の好ましい態様のランダムコポリマーであるコポリマー1を、その保護された形態でWang樹脂上で調製する。使用した樹脂は、Fmoc-L-Tyr(t-Bu)-Wang(0.62mmol/g)、Fmoc-L-Glu-Wang、Fmoc-L-Ala- Wang(0.70mmol/g)、およびFmoc-L-Lys(Boc)-Wang(0.72mmol/g)であった。4種類のF-moc保護アミノ酸、Fmoc-L-Tyr(t-Bu)-OH、Fmoc-L-Glu-OH、Fmoc-L-Ala-OH、およびFmoc-L-Lys-OHを、各カップリング工程中、それぞれ1:2:6:5のモル投入比で使用する。使用した他の試薬およびカップリング化学量論は、YFAKの合成と同様である。
【0094】
漸増的にアラニン含量が高くなるYFAK合成の代表的な例におけるアミノ酸投入比の一例は以下のとおりである。

【0095】
非天然ポリペプチドおよびコポリマーの化学的修飾
1つの態様において、本発明のコポリマーは、天然アミノ酸で構成される。他の態様において、コポリマーは、天然および合成誘導体、例えば、セレノシステインで構成される。アミノ酸は、アミノ酸アナログをさらに含む。アミノ酸「アナログ」は、異なる立体配置を有するアミノ酸の化学的に関連する形態、例えば、異性体、またはL-立体配置ではなくD-立体配置、または該アミノ酸と同等の大きさおよび形状を有する有機分子、またはポリペプチドに重合された場合、プロテアーゼ耐性となるようにペプチド結合に関与する原子に修飾を有するアミノ酸である。
【0096】
本発明における使用のためのコポリマーは、L-もしくはD-アミノ酸またはその混合物で構成され得る。当業者には知られているように、L-アミノ酸は、ほとんどの天然タンパク質中にある。しかしながら、D-アミノ酸は、市販されており、ターポリマーおよび他の本発明のコポリマーを作製するために使用されるアミノ酸のいくつか、またはすべての代用となり得る。本発明では、D-およびL-アミノ酸の両方を含有するコポリマー、ならびに本質的にL-またはD-アミノ酸のいずれかからなるコポリマーが企図される。
【0097】
特定の態様において、本発明のランダムコポリマーは、異なる化学的部分に置換またはこれを付属させることによりさらに修飾されたかかる線状コポリマーを含む。1つの態様において、かかる修飾は残基の位置であり、被験体において、コポリマーのタンパク質分解的分解を阻害するのに充分な量である。例えば、アミノ酸修飾は、少なくとも1つのプロリン残基の配列中の存在であり得、該残基はカルボキシ末端およびアミノ末端の少なくとも一方に存在し、さらに、プロリンは、カルボキシ末端およびアミノ末端の少なくとも一方の4つの残基内に存在し得る。さらに、アミノ酸修飾は、D-アミノ酸の存在であり得る。
【0098】
特定の態様において、主題のランダムコポリマーはペプチド模倣物である。ペプチド模倣物は、ペプチドおよびタンパク質に基づく、またはこれらから誘導された化合物である。本発明のコポリマーペプチド模倣物は、典型的に、例えば、非天然アミノ酸、立体配座の拘束、等配電子置換などを用いて、1つ以上の天然アミノ酸残基の構造的修飾によって得られ得る。主題のペプチド模倣物は、ペプチドおよび非ペプチド合成構造間の構造的空間の連続体を構成する。
【0099】
かかるペプチド模倣物は、非加水分解性(例えば、プロテアーゼまたは対応するペプチドコポリマーを分解する他の生理学的条件に対する増加した安定性)であり、増加した特異性および/または効能のような属性を有し得る。例示の目的のために、本発明のペプチドアナログは、例えば、ベンゾジアゼピン(例えば、Freidinger et al. in "Peptides: Chemistry and Biology," G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988参照)、置換γラクタム環(Garvey et al. in "Peptides: Chemistry and Biology," G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988, p123)、C−7模倣物(Huffman et al. in "Peptides: Chemistry and Biology," G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988, p. 105)、ケト−メチレン偽ペプチド(Ewenson et al.,1986, J. Med. Chem. 29:295; and Ewenson et al. in "Peptides: Structure and Function (Proceedings of the 9th American Peptide Symposium)," Pierce Chemical Co. Rockland, IL, 1985)、β−ターンジペプチドコア(Nagai et al., 1985, Tetrahedron Lett. 26:647; and Sato et al., 1986, J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1:1231)、β−アミノアルコール(Gordon et al., 1985, Biochem. Biophys. Res. Commun. 126:419; and Dann et al., 1986, Biochem. Biophys. Res. Commun. 134:71)、ジアミノケトン(Natarajan et al., 1984, Biochem. Biophys. Res. Commun. 124:141)、およびメチレンアミノ修飾物(Roark et al. in "Peptides: Chemistry and Biology," G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988, p134)を使用して生成され得る。また、一般にSession III: Analytic and synthetic methods, in "Peptides: Chemistry and Biology," G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988を参照のこと。
【0100】
ランダムコポリマーの分子量は、ポリペプチド合成の間またはコポリマーが合成された後に調節され得る。ポリペプチド合成の間に分子量を調節するために、合成条件またはアミノ酸の量は、ポリぺプチドが所望されるおおよその長さに到達したとき合成が停止するように調節される。合成の後、所望の分子量を有するポリペプチドは、分子量サイズ分画カラムまたはゲルによるポリペプチドのクロマトグラフィー等の任意の利用可能なサイズ選択手順、および所望の分子量範囲の回収によって得られ得る。本発明のポリペプチドはまた、例えば、酸加水分解または酵素加水分解によって部分加水分解して高分子量種を除去し、次いで、酸または酵素を除去するために精製され得る。
【0101】
1つの態様において、所望の分子量を有するランダムコポリマーは、保護ポリペプチドを臭化水素酸と反応させ、所望の分子量プロフィールを有するトリフルオロアセチル−ポリペプチドを形成する工程を含むプロセスによって調製され得る。反応は、1つ以上の試験反応によって前もって決定された時間および温度で実施される。試験反応の間、時間および温度は変化し、試験ポリペプチドの所定のバッチの分子量範囲が決定される。ポリペプチドの該バッチの最適分子量範囲を提供する試験条件は、該バッチに対して使用される。従って、所望の分子量プロフィールを有するトリフルオロアセチル−ポリペプチドは、試験反応によって前もって決定された時間および温度で保護ポリペプチドを臭化水素酸と反応させる工程を含むプロセスによって生成され得る。次いで、所望の分子量プロフィールを有するトリフルロオアセチル−ポリペプチドは、ピペリジン水溶液でさらに処理され、所望の分子量を有する低毒性ポリペプチドを形成する。
【0102】
1つの好ましい態様において、所定のバッチ由来の保護ポリペプチドの試験試料を、約10〜50時間、約20〜28℃の温度で臭化水素酸と反応させる。該バッチの最良の条件は、いくつかの試験反応を実施することによって決定される。例えば、1つの態様において、保護ポリペプチドを、約17時間、約26℃の温度で臭化水素酸と反応させる。
【0103】
いくつかの態様において、本発明で使用され得るランダムコポリマーとしては、PCT公報WO 00/05250、WO 00/05249、WO 02/59143、WO 0027417、WO 96/32119に記載されるもの、米国特許公報2004/003888、2002/005546、2003/0004099、2003/0064915および2002/0037848に記載されるもの、米国特許6,514,938, 5,800,808および5,858, 964に記載されるもの、ならびにPCT出願PCT/US05/06822に記載されるものが挙げられる。これらの参考文献は、ランダムコポリマーの合成方法、ランダムコポリマーを含む組成物、ランダムコポリマーの治療製剤、被験体へのランダムコポリマーの投与方法、ランダムコポリマーで治療可能な疾患、およびランダムコポリマーと共に被験体に共投与され得るさらなる治療有効剤をさらに記載する。これらの特許、出願および公開公報全ての教示は、その全体を参照によって本明細書中に援用される。
【0104】
これは、例示のみによって与えられること、および上記一般的基準が厳守される場合、組成物が構成要素および構成要素の相対的割合の両方に関して変化し得ることは明らかである。
【0105】
IV.疾患
本発明は、被験体における疾患の治療方法または予防方法を提供する。疾患を発現する危険にある被験体、疾患に罹患していると疑われる被験体、または疾患に罹患している被験体は、本発明によって提供される方法を使用して治療され得る。
【0106】
1つの態様において、本発明の方法で治療可能な疾患は、T細胞、特にT1細胞によって媒介される疾患、または過剰の炎症性サイトカインによって悪化される疾患である疾患を含む。本発明の方法は、全身虚血または特に心臓、肺もしくは腎臓の局所虚血によって引き起こされるものを含む、虚血損傷を含む疾患を処置するために使用され得る。いくつかの態様において、炎症としては、敗血症性ショック、アナフィラキシーショック、トキシックショック症候群、悪液質、壊死、壊疽、人工器官移植物、またはI型過敏症、II型過敏症、III型過敏症、IV型過敏症、即時型過敏、抗体媒介性過敏症、免疫複合体媒介性過敏症、Tリンパ球媒介性過敏症、および遅延型過敏を含む過敏症と関連する。他の態様において、疾患は、心筋梗塞、心停止、虚血再灌流障害、うっ血性心不全、心臓毒性、寄生虫感染による心臓損傷、劇症心性アミロイドーシス、心臓手術、心臓移植、外傷性心臓損傷、胸大動脈瘤の手術による回復、副腎動脈瘤、失血による出血性ショック、心筋梗塞または心不全による心臓性ショック、アナフィラキシー、不安定性冠状動脈症候群、頻拍、徐脈、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0107】
1つの態様において、本発明の方法で治療可能な疾患は、自己免疫疾患を含む。本発明により企図される自己免疫疾患は、細胞媒介性疾患(例えば、T細胞)または抗体媒介性(例えば、B細胞)障害のいずれかを含む。かかる障害は、とりわけ、関節炎状態、脱髄疾患および炎症性疾患であり得る。本発明の方法は、多発性硬化症、EAE、視神経炎、急性横断性脊髄炎、および急性播種性脳炎を含む、脱髄炎症性疾患の処置について特に興味深い。1つの特定の態様において、任意の自己免疫疾患は、企図されるポリペプチドが自己免疫疾患と関係のあるMHCクラスIIタンパク質に結合する限り、本発明のポリペプチドによって治療され得る。疾患の進行は、公知の方法を使用して、臨床的症状または診断的症状をモニタリングすることによって測定され得る。
【0108】
1つの態様において、本明細書中で提供される方法によって処置される疾患は、「関節炎状態」である。本明細書中で使用される場合、関節炎状態は、慢性関節リウマチの少なくとも1つの症状が、哺乳動物の少なくとも1つの関節、例えば、哺乳動物の肩、膝、臀部、背骨または指で観察される状態である。RAは、白人の中で約1%の有病率であり(Harris, B. J. et al., 1997, In Textbook of Rheumatology 898- 932)、現在250万人のアメリカ人が罹患している共通のヒト自己免疫疾患である。RAは、滑膜性の連結の慢性炎症、およびT細胞、マクロファージおよび血漿細胞による浸潤を特徴とし、関節軟骨の進行性破壊を導く。それは、関節疾患の最も重篤な形態である。RAに対する遺伝的感受性は、MHCクラスII DRB1座に、対立遺伝子DRB10401、DRB10404、もしくはDRB10405またはDRB10101対立遺伝子を有する罹患した被験体に強く関連する。コラーゲンII型(CII)が有力な候補であるが、RAにおける1つまたは複数の自己抗原の性質は、ほとんど理解されていない。残基261〜273に対応するコラーゲンII型中の免疫優性T細胞エピトープが同定された(Fugger, L. et al., 1996, Eur: J. Immunol. 26: 928-933)。
【0109】
関節炎状態の他の例としては、1つを超える関節に影響する関節炎状態である「多発性関節炎」;21歳未満のヒトの関節炎状態である「若年性関節炎」;ならびに好中球減少症、巨脾腫症、体重減少、貧血、リンパ節症、および皮膚上の色素斑の症状を含み得るフェルティ症候群が挙げられる。
【0110】
別の態様において、本明細書中に提供される方法によって処置される疾患は、多発性硬化症(MS)である。多発性硬化症に対する疾患の進行は、非常に多様であり、予測不可能で、ほとんどの患者において、弛張性である。MSの病理学的特徴は、多中心性かつ多相のCNS炎症および脱髄である。数ヶ月または数年の寛解は、特に、疾患の初期においては、エピソードを分割し(separate)得る。完全なまたは部分的な寛解を伴う急性増悪を特徴とする約70%の患者の再発−寛解(RR)型。残りの患者は、慢性進行性MSを示し、(a)一次進行型(PP)、(b)RRおよびRPの特徴を合わせたパターンであり、臨床的重篤度において中間である再発−進行型(RP)、ならびに(c)RRを有する多くの患者が経時的にそこに進行する二次進行型(SP)にさらに細分化される。特定の好ましい態様において、本方法によって処置される疾患は、再発−寛解多発性硬化症である。
【0111】
MSの臨床的症状としては、感覚喪失(感覚異常)、運動(痙性の次の筋痙攣)および自律神経性(膀胱、腸、性機能障害)脊髄症状;小脳症状(例えば、構語障害(dysarthna)、運動失調、振せんのシャルコー三徴);疲労およびめまい;神経心理学的試験における情報処理の障害;側方注視の際の複視を含む眼の症状;三叉神経痛;ならびに視神経炎が挙げられる。
【0112】
MSにおける自己抗原は、おそらく、いくつかのミエリンタンパク質(例えば、プロテオリピドタンパク質(PLP);ミエリン乏突起神経膠細胞糖タンパク質(MOG);ミエリン塩基性タンパク質(MBP);ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、ミエリン関連乏突起神経膠細胞塩基性タンパク質(MBOP);シトルリン修飾MBP(6個のアルギニンがシトルリンに脱イミン化されたMBPのC8アイソフォーム)、環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(CNPase)、α−Bクリスタリン等)の1つである。内在性膜タンパク質PLPは、ミエリンの優性自己抗原である。小グリア細胞およびマクロファージは、抗原提示細胞として共同で働き、サイトカイン、補体、および炎症プロセスの他の調節因子の活性化を生じ、特定の乏突起神経膠細胞およびそれらの膜ミエリンを標的化する。IFN−γを分泌する能力を有するミエリン自己反応性T1細胞の量的増加は、MSおよびEAEの病因に関連し、MS患者の末梢血中の自己免疫誘導因子/ヘルパーTリンパ球がMSを有する患者において脱ミエリン化プロセスを開始および/または調節し得ることを示唆する。他方、IL−4およびIL−10等の抗炎症性サイトカインを産生するT2細胞の保護的役割についてさらに詳しい文献がある。細胞のT1型からT2型へのバランスの移動は、MSおよびEAE予防および処置に対して利益があると期待される。
【0113】
別の態様において、本明細書中に提供される方法によって処置される疾患は、インシュリン依存性糖尿病である。ヒトI型糖尿病、即ち、インシュリン依存性糖尿病(IDDM)は、膵臓ランゲルハンス島内の細胞の自己免疫破壊を特徴とする。β細胞が枯渇すると、血糖値の調節が不能になる。顕性糖尿病は、血糖値が特定のレベル、通常約250mg/dlを超えて上昇すると、生じる。ヒトにおいて、糖尿病の発症の前に長い症状前期間がある。この期間の間に、膵臓のβ細胞機能が徐々に失われる。疾患の進行は、各々が本発明の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドの例である、インシュリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、およびチロシンホスファターゼIA2(IA2)に対する自己抗体の存在に関係がある。ヒトIDDMは、血糖値をモニタリングして、組換えインシュリンの注射、即ち、ポンプベースの送達を導くことによって現在処置される。食事および運動による療法は、十分な血糖コントロールを達成することに寄与する。
【0114】
症状前段階の間に評価され得るマーカーは、膵臓におけるインシュリン炎、島細胞抗体のレベルおよび出現率、島細胞表面抗体、膵臓β細胞上のクラスII MHC分子の異常な発現、血中グルコース濃度、およびインシュリンの血漿濃度である。膵臓中のTリンパ球の数、島細胞抗体の数、および血糖の上昇は、インシュリン濃度の減少であるため、該疾患を示す。
【0115】
血清中の種々の特異性を有する自己抗体の組み合わせの存在は、ヒトI型糖尿病に対して感受性が高くかつ特異的である。例えば、GADおよび/またはIA−2に対する自己抗体の存在は、コントロール血清からI型糖尿病を同定することに対して約98%感受性であり、99%特異性である。I型糖尿病患者の糖尿病でない一等親血縁者において、GAD、インシュリン、およびIA−2を含む3つの自己抗原のうちの2つに対して特異的な自己抗体の存在は、5年以内のI型DMの発現に対して90%を超える正の予想値を示す。
【0116】
別の態様において、本明細書中に提供される方法によって処置される疾患は、自己免疫性ブドウ膜網膜炎である。自己免疫性ブドウ膜網膜炎は、40万人が罹患していると推測され、米国で年間4万3千人の新たな患者が発生している眼の自己免疫疾患である。自己免疫性ブドウ膜炎は、ステロイド、メトトレキサートおよびシクロスポリン等の免疫抑制剤、静脈内免疫グロブリン、ならびにTNFα−アンタゴニストで現在処置されている。
【0117】
別の態様において、本明細書中に提供される方法によって処置される疾患は、実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)である。EAUは、眼の神経網膜、ブドウ膜、および関連する組織を標的とするT細胞媒介自己免疫疾患である。EAUは、ヒト自己免疫性ブドウ膜網膜炎と多くの臨床的特徴および免疫学的特徴を共有し、完全フロイントアジュバント(CFA)中に乳化したブドウ膜原性ペプチドの末梢投与によって誘導される。
【0118】
別の態様において、本明細書中に提供される方法によって処置される疾患は、原発性胆汁性肝硬変(PBC)である。PBCは、40〜60歳の女性が主に罹患する器官特異性自己免疫疾患である。この群で報告される有病率は、1000人あたり1人である。PBCは、小肝内胆管の内側を覆う肝内胆管上皮細胞(IBEC)の進行性破壊を特徴とする。これは、胆汁分泌の閉塞および障害を導き、結果として肝硬変を引き起こす。シェーグレン症候群、CREST症候群、自己免疫甲状腺疾患、および慢性関節リウマチを含む、上皮内層/分泌系損傷を特徴とする他の自己免疫疾患との関連が、報告される。
【0119】
別の態様では、本明細書中で提供される方法により処置される疾患は、セリアック病であり、これはセリアックスプルーまたはグルテン-感受性腸症としても公知である。セリアック病は、コムギ、オオムギ、およびカラスムギ中に存在する、グルテンまたはその産物であるグリアジンおよびグルテニンを含む穀物貯蔵タンパク質への過敏症による消化管吸収の不全により生じる疾患である。該疾患は、グリアジンを食物抗原であると認識するCD4 T細胞によって引き起こされ、これらの細胞は、Thl媒介性慢性炎症性応答を引き起こす。症状としては、下痢、体重減少および脂肪便が挙げられ、絨毛萎縮および吸収不良がみられる。これはまた、疱疹状(herpetiforms)皮膚炎、小胞性皮膚発疹に関連し得る。セリアック病は、DQA1*0301およびDQA1*0501と組み合わされた対立遺伝子DQB1*0302およびDQB1*0201に関連する。患者の95%は、DQB1*0201またはDQB1*0302のいずれかを有する。強いHLA関連性は、DQB1*0201、DQA1*0501、DQB1*0302およびDQAl*0301によりコードされたDQ分子の、グリアジンおよびグルテミン由来のグルタミンリッチなペプチドの脱アミノ化変異体を効果的に提示する能力によるものと考えられている。
【0120】
別の態様において、被験体の自己免疫疾患を処置する方法は、自己抗原に応答性であるT細胞の増殖または機能を阻害することをさらに含む。自己免疫疾患および免疫拒絶の病理学的プロセスは、T細胞により媒介される。抗原への結合および認識の際に、T細胞は増殖し、サイトカインを分泌し、該部位にさらなる炎症性および細胞傷害性の細胞を補充する。
【0121】
さらに別の態様において、被験体の自己免疫疾患を処置する本明細書に記載の方法は、ランダムコポリマーを自己免疫疾患に関連する主要組織適合遺伝子複合体クラスIIタンパク質に結合させることを含む。クラスII MHCタンパク質は、Bリンパ球およびマクロファージ等の抗原提示細胞の表面上に主に発現される。これらのクラスII MHCタンパク質は、抗原性ペプチドがT細胞に提示される部位であるペプチド結合溝を有する。本ランダムコポリマーが主要組織適合遺伝子複合体クラスIIタンパク質と結合する場合、これらのランダムコポリマーは、抗原提示および/またはT細胞活性化を阻止し得るかそうでなければ干渉し得る。
【0122】
ある態様において、本発明の方法により処置される疾患は、宿主対移植片病(HVGD)または移植片対宿主病(GVHD)である。臓器移植および骨髄再構成等の移植系は、多くの生命を脅かす疾患に対する重要かつ効果的な療法となっている。しかしながら、免疫拒絶は、依然として首尾良い移植に対する大きな障害である。このことは、臓器移植の場合における機能低下および移植片拒絶(宿主対移植片病、すなわちHVGDにおいて明らかである。病理学的免疫反応性の別の徴候は、骨髄受容者の約30%に起こるGVHDである。GVHDを発症する患者の半数までが、この過程で死亡し得る。この高い罹患率および死亡率は、GVHDを制御または予防する可能性についての継続的な関心をもたらしてきた。臨床病理学的には、2つの形態のGVHDが認識されている。急性GVHDは、骨髄移植後最初の3ヶ月以内に発症し、皮膚、肝臓および消化管の障害を特徴とする。慢性GVHDは、移植後3ヶ月〜3年までで発症する多臓器(multi-organ)自己免疫様疾患であり、全身性エリテマトーデス(SLE)および強皮症のような天然の自己免疫障害と特徴が共通する。本明細書に記載の方法は、急性および慢性のGVHD両方を処置するために用いられ得る。
【0123】
本明細書に記載される方法の特定の態様において、コポリマー1またはYFAKランダムコポリマーは、GVHDを発症する臓器移植の全ての場合におけるGVHDの予防および処置に用いられ得るが、詳細には胎児胸腺、およびより詳細には同種異系骨髄移植において用いられ得る。適切な移植前処置下の患者に対し、GLATコポリマーを処置療法において移植日の2日前から、移植日後さらに60〜100日間、少なくとも60日間投与し得る。かかる期間の療法は、24、30、36、42または48時間より長い間隔でのランダムコポリマーの投与を含み得る。シクロスポリン、メトトレキサートおよびプレドニゾンなどの他の免疫抑制剤を、コポリマー1コポリマーと共に投与し得る。
【0124】
本発明の方法はまた、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性非リンパ芽球性白血病(ANLL)、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)等の白血病、重症複合免疫不全症候群(SCID)、大理石骨病、再生不良性貧血、ゴーシェ病、サラセミアならびに他の先天的または遺伝的に決定される造血異常または代謝異常を含む、骨髄移植により治癒可能な疾患に罹患する患者における骨髄移植の過程で、GVHDを予防および処置するのに用い得る。
【0125】
別の態様では、本発明の方法は、神経再生を促進するかまたは一次神経系傷害、例えば、危険なスポーツに参加することにより引き起こされるもの等の閉鎖性頭部外傷および鈍的外傷、銃創等の貫通性外傷、出血性脳卒中、虚血性脳卒中、緑内障、脳虚血、または腫瘍切除等の手術により引き起こされる損傷に続いて起こり得る二次変性を予防または阻害するのに用い得る。また、かかる組成物は、限定されないが、糖尿病性神経障害、老人性認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、顔面神経(ベル)麻痺、緑内障、ハンティングトン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、てんかん重積持続状態、非動脈炎性視神経障害、椎間円板ヘルニア、ビタミン欠乏、クロイツフェルト・ヤコブ病等のプリオン病、手根管症候群、限定されないが尿毒症、ポルフィリン症、低血糖、シェーグレン・ラルソン症候群、急性感覚性ニューロパチー、慢性失調性ニューロパチー、胆汁性肝硬変、原発性アミロイドーシス、閉塞性肺疾患、末端肥大症、吸収不良症候群、真性赤血球増加症、IgAおよびIgGガンモパシー(gammapathy)、種々の薬(例えば、メトロニダゾール)および毒素(例えば、アルコールまたは有機リン酸類)の合併症、シャルコー・マリー・ツース病、毛細血管拡張性運動失調、フリートライヒ運動失調、アミロイド多発性神経障害、副腎脊髄神経障害、巨大軸索ニューロパシー、レフサム病、ファブリー病、リポタンパク血症などを含む種々の疾患に関連する末梢神経障害を非限定的に含む種々の疾患または障害の結果として、灰白質または白質のいずれか(または両方)において起こる変性のような変性過程で生じる疾患の影響を改善するために用いられ得る。さらに、本発明によるランダムコポリマーの投与により処置し得る他の臨床症状には、てんかん、健忘症、不安、痛覚過敏、精神病、発作、異常に上昇した眼圧、酸化ストレス、ならびにアヘン耐性および依存症が挙げられる。
【0126】
特定の態様において、本明細書に記載の方法で処置される疾患としては、多発性硬化症、I型糖尿病、橋本甲状腺炎、クローン病、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、胃炎、自己免疫性肝炎、溶血性貧血、自己免疫性血友病、自己免疫性リンパ増殖性症候群(ALPS)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、糸球体腎炎、ギヤン・バレー症候群、乾癬、重症筋無力症、自己免疫性脳脊髄炎、グッドパスチャー症候群、グレーヴズ病、腫瘍随伴性天疱瘡、自己免疫性特発性血小板減少性紫斑病、抗コラーゲン抗体による強皮症、混合結合組織病、悪性貧血、多発性筋炎、特発性アジソン病、自己免疫関連不妊症、水疱性類天疱瘡、シェーグレン症候群、特発性粘液水腫または結腸炎が挙げられる。いくつかの態様では、被験体は2つ以上の疾患に罹患している。
【0127】
V. 治療組成物
本発明のランダムコポリマーを、薬学的有効量のコポリマーならびに許容され得る担体および/または賦形剤を含む組成物として被験体に投与し得る。薬学的に許容され得る担体としては、生理学的に適合可能な任意の溶媒、分散媒体またはコーティングが挙げられる。好ましくは、担体は、静脈内、筋内、経口、腹腔内、皮内、経皮、局所または皮下投与に適している。薬学的に許容され得る担体の1つの例は、生理食塩水である。他の薬学的に許容され得る担体およびその製剤は周知であり、一般に、例えば、Remington's Pharmaceutical Science (第18版、Gennaro編、Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990)に記載されている。薬学的に許容され得る種々の賦形剤が当該分野で周知であり、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients (第4版、Roweら編、Pharmaceutical Press, Washington, D. C.)で見い出し得る。該組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、カプセル、錠剤または他の適切な形態で製剤化し得る。コポリマーを含む活性成分を材料でコーティングし、作用の標的部位に到達する前の環境による不活性化から保護し得る。本発明の医薬組成物は、好ましくは運搬時に無菌かつ非発熱性であり、好ましくは製造および保存の条件下で安定である。
【0128】
本発明の他の態様において、医薬組成物は調節放出製剤である。本発明のコポリマーは、コポリマーをすぐ近くの環境へ放出する速度を制御する生物学的に適合可能なポリマーまたはマトリクスと混合され得る。制御放出組成物または徐放組成物は、親油性デポー(例えば脂肪酸、ワックス、油)中に製剤を含む。
【0129】
本発明のいくつかの態様において、医薬組成物は、油および乳化剤で製剤化されるランダムコポリマーを含み、油中水微粒子および/またはエマルジョンを形成する。油は、ベニバナ油、大豆油、コーン油およびカノーラ油を含む食用植物油または鉱油等の、周囲温度からほぼ体温にて液体である任意の非毒性の疎水性物質であり得る。ラウリルグリコール等の化学的に規定された油物質もまた用い得る。この態様に有用な乳化剤としては、Span 20(ソルビタンモノラウレート)およびホスファチジルコリンが挙げられる。いくつかの態様において、ランダムコポリマー組成物は、水溶液として調製され、95〜65%の鉱油等の油および5〜35%のSpan 20等の乳化剤中に分散された油中水エマルジョンに調製される。本発明の別の態様では、エマルジョンは、油および乳化剤を用いるよりはむしろミョウバンを用いて形成される。これらのエマルジョンおよび微粒子は、ランダムコポリマーの取り込み速度を低減し、制御された抗原送達を達成する。
【0130】
いくつかの態様において、医薬組成物はまた、さらなる治療活性剤を含む。かかるさらなる成分は、少なくとも、異なるHLA分子に結合するコポリマー1(YEAK、コパキソン(Copaxone)TM)などのさらなるランダムコポリマー、インターロイキン-6、インターロイキン-8、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子および腫瘍壊死因子α等の不要な炎症性分子またはサイトカインに結合する抗体、プロテアーゼ阻害剤であるアプロチニンもしくはシクロオキシゲナーゼ阻害剤等の酵素阻害剤;アモキシシリン、リファンピシン、エリスロマイシン等の抗生物質;アシクロビルのような抗ウイルス剤;グルココルチコイド等のステロイド性抗炎症剤;アスピリン、イブプロフェンもしくはアセトアミノフェン等の非ステロイド性抗炎症剤;またはインターロイキン-4もしくはインターロイキン-10等の非炎症性サイトカインであり得る。インターフェロン-β、腫瘍壊死因子類、抗血管新生因子類、エリスロポエチン類、トロンボポエチン類、インターロイキン類、成熟因子類、走化性タンパク質等の他のサイトカイン類および成長因子類、ならびに同様の生理学的活性を保持するこれらの変異体および誘導体もまた、さらなる成分として用い得る。
【0131】
いくつかの態様において、さらなる活性な治療活性剤は、抗乾癬クリーム、点眼薬、点鼻薬、スルファサラジン、グルココルチコイド、プロピルチオウラシル、メチマゾール、I131、インスリン、IFN-β1a、IFN-β1b、グルココルチコイド、ACTH、アボネックス、アザチオプリン、シクロホスファミド、UV-B、PUVA、メトトレキサート、カルシピトリオール、シクロホスファミド、OKT3、FK-506、シクロスポリンA、アザチオプリンおよびミコフェノール酸モフェチルからなる群より選択される。
【0132】
本発明のコポリマーはまた、抗肥満薬と組み合わせて用い得る。抗肥満薬としては、P-3作用薬、CB-1拮抗薬、例えばシブトラミン(メリディア)等の食欲抑制剤、および例えばオルリスタット(ゼニカル)等のリパーゼ阻害剤が挙げられる。主題のコポリマーはまた、糖尿病患者の脂質障害を処置するために通常用いられる薬物と組み合わせて、本発明の方法で用い得る。かかる薬物としては、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、ニコチン酸、胆汁酸金属イオン封鎖剤およびフィブリン酸誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のポリペプチドはまた、例えば、β-遮断薬、カテプシンS阻害剤およびACE阻害剤等の抗高血圧薬と組み合わせて用い得る。β-遮断剤の例は、アセブトロール、ビスプロロール、エスモロール、プロパノロール、アテノロール、ラベタロール、カルベジロールおよびメトプロロールである。ACE阻害剤の例は、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、フォシノプリル、ラミプリル、キナプリル、ペリンドプリル、トランドプリルおよびモエキシプリルである。
【0133】
本発明はさらに、(i)ランダムコポリマーを含む組成物、および(ii)自己免疫疾患などの疾患の治療のために、該処置を必要とする被験体に、24時間より長い間隔で、より好ましくは36時間より長い間隔で、該組成物を投与するための指示書を含むキットを提供する。ある態様において、自己免疫障害は多発性硬化症である。好ましい態様において、ランダムコポリマーはコポリマー1である。別の好ましい態様において、ランダムコポリマーは、約24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234もしくは240時間より長いか、またはこれらの間にある任意の間隔で投与するための用量で製剤化される。本明細書中に記載されるキットの別の態様において、指示書は、ランダムポリマーを約24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234もしくは240時間毎に、またはこれらの間の任意の間隔で投与すべきであることを示す。キットは、包装、および皮下注射器等の、コポリマーの投与のための1つ以上の器具等のさらなる構成要素を含み得る。
【0134】
特定の態様において、自己免疫疾患は、多発性硬化症、I型糖尿病、橋本甲状腺炎、クローン病、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、胃炎、自己免疫性肝炎、溶血性貧血、自己免疫性血友病、自己免疫性リンパ増殖性症候群(ALPS)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、糸球体腎炎、ギヤン・バレー症候群、乾癬、重症筋無力症、自己免疫性脳脊髄炎、グッドパスチャー症候群、グレーヴズ病、腫瘍随伴性天疱瘡、自己免疫性特発性血小板減少性紫斑病、抗コラーゲン抗体による強皮症、混合結合組織病、悪性貧血、多発性筋炎、特発性アジソン病、自己免疫関連不妊症、水疱性類天疱瘡、シェーグレン症候群、特発性粘液水腫および結腸炎からなる群から選択される。
【0135】
VI. 処置方法
本発明のある側面は、治療的有効量の1つ以上のランダムコポリマーを被験体に投与することにより、自己免疫疾患などの疾患に罹患しているかまたは罹患している疑いのある被験体を処置するための新規方法を提供する。特に、ランダムコポリマー組成物を含む医薬組成物の皮下投与は、本発明の好ましい態様として企図される。皮下注射は、TH2応答に偏ったより望ましい免疫応答を誘発するが、これは特定の抗原に対する寛容の基礎である。
【0136】
一般に、本発明の処置方法は、かかる処置を必要とする被験体の免疫調節であって、ワクチン接種とは区別し得る。首尾良いワクチン接種は、投与されるワクチンの免疫原性によって決まり、ワクチン中の抗原に直接的に反応性である抗体の力価を増加させる。対照的に、本発明のランダムコポリマーは、コポリマーそれ自体に対して抗体の高い力価を誘発することなく、疾患を処置するために効果的である。以下の実施例で示すように、本発明の方法の有効性は、コポリマーに対する抗体産生に依存しないので、ワクチン接種とは基本的に異なる。ワクチン接種とは異なり、本発明の方法により投与される本発明のランダムコポリマーは、疾患関連抗原に対する寛容を誘発し、より具体的には、末梢性寛容を誘発する。中枢性寛容と対照的に、末梢性寛容は、調節現象としてより安全であるという利点がある。したがって、本発明のある側面は、ランダムコポリマーおよび疾患関連抗原に対する末梢性寛容を誘発するように、本発明のランダムコポリマーを含む組成物を投与する方法により具体化される。
【0137】
一般に、本発明の態様は、治療効果、例えば、症状の軽減を生じるための最低有効用量である適切な用量の治療コポリマー組成物を投与することである。治療コポリマーは、好ましくは、適切な最小開始用量として、少なくとも約2mg、少なくとも約5mg、少なくとも約10mg、もしくは少なくとも約20mg、またはxが1〜20の間の整数である約xmgの1日用量に対応する1被験体当たりの用量で投与される。本明細書に記載の方法のある態様において、約0.01〜約500mg/kgの用量が投与され得る。一般に、本発明の化合物の有効用量は、1日当たり、被験体1kg当たり約50〜約400μgの化合物である。ある特定の態様において、1日当たりの等価の用量は、用量が投与される頻度にかかわらず、約5〜100mg/日、またはより好ましくは約10〜40mg/日、またはより好ましくは約20mg/日である。別の特定の態様において、処置療法における各個別の用量は、約5〜100mg/用量、またはより好ましくは約10〜40mg/用量、またはより好ましくは約20mg/用量である。
【0138】
しかしながら、本発明の組成物の用量は、被験体および用いられる特定の投与経路によって異なることが当業者に理解される。個々の被験体に合うよう用量を調節することは当該分野において常套手段である。さらに、有効量は、特に、化合物のサイズ、化合物の生分解性、化合物の生物活性および化合物のバイオアベイラビリティーに基づき得る。化合物が迅速に分解せず、生物学的に利用可能であり、活性が高い場合、より少量が、有効であるために必要とされる。被験体に適切な実際の用量は、当業者、例えば、一般的な開始点を与えられた医師または獣医によって、常套的な業務として容易に決定され得る。例えば、医師または獣医は、医薬組成物で用いられる本発明の化合物の投与を、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低いレベルから開始し、所望の効果が達成されるまで、経時的に用量を増加させることができる。医師または獣医はまた、一般的な開始点として、コパキソンTMの投与についての推奨を参照し得る。
【0139】
本発明の文脈において、用語「処置療法」は、1つ以上のランダムコポリマーを含む1つ以上の組成物の投与の治療的、緩和的および予防的モダリティを含むことを意味する。特定の処置療法は、特定の疾患または障害の性質、その重篤性および患者の全体的症状により異なる期間にわたって続けられ得、1日に1回、またはより好ましくは36時間もしくは48時間以上毎に1回から、1ヶ月もしくは数ヶ月に1回にまで延長され得る。処置後、患者は、彼/彼女の症状の変化および障害または疾患状態の症状の軽減をモニタリングされる。オリゴヌクレオチドの用量は、患者が現在の用量レベルに有意に反応しない場合は増加し得、あるいは、障害または疾患状態の症状の軽減が観察された場合、または障害もしくは疾患状態が除去された場合、または開始用量で許容されない副作用が観察された場合には、低減し得る。
【0140】
ある態様において、治療有効量のランダムコポリマーは、投与間に少なくとも36時間、またはより好ましくは48時間の間隔を含む処置療法において被験体に投与される。別の態様において、ランダムコポリマーは、少なくとも54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234または240時間の間隔で、あるいはその日数と等価な間隔で投与される。いくつかの態様において、薬剤は1日おきに投与され、他の態様において、1週間ごとに投与される。2つのコポリマーが被験体に投与される場合、かかるコポリマーは、同時に(simultaneously)等の同時に(at the same time)または連続して等の本質的に同時に投与され得る。あるいはこれらの投与は、変動し得る。例えば、各々48時間毎に投与される2つのコポリマーは、両方が同日に投与され得るか、または交互の様式で一方をある日に投与し、他方を次の日などに投与し得る。
【0141】
以下の実施例に示すように、より長い投与間隔を有し、結果として、しばしばコポリマーの全曝露がより少なくなる処置療法は、コポリマー自体に対する抗体のより低い力価を誘発する一方、依然として所望の保護効果を誘発する。中和抗体のかかる低減は望ましく、なぜなら中和抗体の低減は、ランダムコポリマー組成物が中和されることなくその有効性を保持することに役立つであろうと考えられるからであり、このことはアナフィラキシーショックの危険性の低減に関連し、疾患のより安全な処置を提供する。より長い間隔の療法はまた、TH2応答への偏りを強化するため望ましく、これはランダムコポリマー療法の作用様式であると考えられる。
【0142】
他の態様において、ランダムコポリマーは、少なくとも1つの不規則な時間間隔を含む処置療法で投与され、ここで時間間隔のうち少なくとも1つは、少なくとも24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234もしくは240時間、またはその日数に等価な間隔である。
【0143】
ある態様において、ポリマーは処置療法の間に被験体に少なくとも3回、投与の間隔が少なくとも2回の間隔があるように投与される。これらの間隔はI1および12で示され得る。ポリマーが4回投与される場合、所与の投与回数「n」についての間隔の数がn-1であるように、3回目および4回目の投与の間にさらなる間隔I3が存在する。したがって、ある態様において、投与の間の少なくとも1つの時間間隔は、約24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234または240時間より長い。別の態様において、時間間隔の総数n-1の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%は、少なくとも約24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234または240時間である。
【0144】
さらに別の態様において、投与間の平均時間間隔((I1+I2+...+In-1)/n-1)は、少なくとも24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234もしくは240時間、または少なくとも2週間である。
【0145】
別の態様において、投与計画は、2つ以上の異なる間隔のセットからなる。例えば、投与計画の第1の部分は、毎日、2日毎、または3日毎に、例えば、約22mgのコポリマー/m2被験体の体表面積で被験体に投与され、ここで、被験体はヒトである。本発明のいくつかの態様において、投与計画は、2日毎、3日毎、毎週、2週毎または毎月、被験体に投与することにより開始する。2日毎または3日毎の投与のための用量は、それぞれ約65mg/m2および110mg/m2までであり得る。ランダムコポリマーの毎週の投与を含む投与計画については、用量は約500mg/m2までを含み、ランダムコポリマーの2週毎または毎月の投与を含む投与計画については、1.5g/m2までが投与され得る。投与計画の第1の部分は、30日間まで、例えば、7、14、21または30日間投与され得る。異なるより長い間隔の、通常は低曝露(ステップダウン投与)での毎週、14日毎または毎月の投与による続く投与計画の第2の部分が、必要に応じて、例えば、毎週500mg/m2体表面積、最大で約1.5g/m2体表面積まで、4週間から2年まで、例えば、4、6、8、12、16、26、32、40、52、63、68、78または104週間にわたって続き得る。あるいは、疾患が寛解に向かうかまたは概して改善する場合、用量は維持するかまたは最大量よりも低く、例えば、毎週140mg/m2体表面積に維持し得る。ステップダウン投与計画の間に、疾患症状が再発する場合、効果が見られるまで第1の投与計画を再開し得、そして第2の投与計画を実施し得る。このサイクルは、必要に応じて複数回繰り返し得る。
【0146】
より具体的には、本発明のある側面は、ランダムコポリマーで治療可能な疾患の処置である。本発明のある態様は、固相化学合成により合成され、投入モル比がそれぞれ約1.0:1.0:10.0:6.0である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)のランダムコポリマーで治療可能な疾患を処置する方法であって、ここでコポリマーが52アミノ酸長を有し、処置を必要とするヒト被験体に、ランダムコポリマーを毎日約22mg/m2体表面積の用量を含む投与計画の第1の部分で投与することによる方法である。本発明のいくつかの態様において、投与計画は、2日毎、3日毎、毎週、2週毎または毎月被験体に投与することにより開始する。2日毎または3日毎の投与のための用量は、それぞれ約65mg/m2および110mg/m2までであり得る。ランダムコポリマーの毎週の投与を含む投与計画については、用量は約500mg/m2までを含み、ランダムコポリマーの2週毎または毎月の投与を含む投与計画については、1.5g/m2までが投与され得る。投与計画の第1の部分は、30日間まで、例えば、7、14、21または30日間投与され得る。異なるより長い間隔の、通常は低曝露(ステップダウン投与)での毎週、14日毎または毎月の投与による続く投与計画の第2の部分が、必要に応じて、例えば、毎週500mg/m2体表面積、最大で約1.5g/m2体表面積まで、4週間から2年まで、例えば、4、6、8、12、16、26、32、40、52、63、68、78または104週間にわたって続き得る。あるいは、疾患が寛解に向かうかまたは概して改善する場合、用量は維持するかまたは最大量よりも低く、例えば、毎週140mg/m2体表面積に維持し得る。ステップダウン投与計画の間に、疾患症状が再発する場合、効果が見られるまで第1の投与計画を再開し得、そして第2の投与計画を実施し得る。このサイクルは、必要に応じて複数回繰り返し得る。
【0147】
本発明の別の態様において、該方法は、約1.0:2.0:6.0:5.0の投入モル比を有し、固相化学合成により合成された約52アミノ酸長のコポリマー1(YEAK)で治療可能な疾患を処置するためである。投与計画は、上記YFAKについて記載したものと同様である。
【0148】
本発明の別の態様は、固相化学合成により合成され、産出平均モル比がそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)のランダムコポリマーで治療可能な疾患を治療する方法であって、ここでコポリマーは、52アミノ酸長を有し、コポリマーの配列の残基1〜10は約1.0:1.2:16:6の産出モル比を有し、残基11〜30は約1.0:1.2:18:6の産出モル比を有し、残基31〜52は約1.0:1.2:20:6の産出モル比を有し、処置を必要とするヒト被験体に、約22mg/m2体表面積の用量で毎日、または上記のように、2日毎、3日毎、毎週、2週毎または毎月のような長い間隔でランダムコポリマーを投与することによる方法である。本発明の別の態様において、該方法は、約1.0:2.0:6.0:5.0の投入モル比を有し、固相化学合成により合成された約52アミノ酸長のコポリマー1(YEAK)を用いて治療可能な疾患を処置するためであり、ここでコポリマー配列の残基1〜10が約1.0:2.0:5.5:5.0の産出モル比を有し、残基11〜30が約1.0:2.0:6.0:5.0の産出モル比を有し、および残基31〜52が約1.0:2.0:6.5:5.0の産出モル比を有する。投与計画は、上記に記載したものと同様であり、必要に応じてステップダウン投与(sage)を含み得る。ステップダウン投与計画の間に、疾患症状が再発する場合、効果が見られるまで第1の投与計画を再開し得、そして第2の投与計画を実施し得る。このサイクルは、必要に応じて複数回繰り返し得る。
【0149】
本発明の別の側面は、投入モル比がそれぞれ約1.0:1.0:XA:6.0であり、ここでXAは5.0より大きくかつ15.0未満である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)を含むランダムコポリマーで治療可能な疾患を改善することにより、該疾患を改善するのに有効な用量を被験体に投与する手段として具体化される。より具体的には、本発明のある態様は、固相化学合成により合成され、産出平均モル比がそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)のランダムコポリマーで治療可能な疾患を改善するための手段であって、ここでコポリマーは、52アミノ酸長を有し、コポリマーの配列の残基1〜10は約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11〜30は約1.0:1.2:18:6の比を有し、残基31〜52は約1.0:1.2:20:6の比を有する手段である。本発明の別の態様において、該方法は、約1.0:2.0:6.0:5.0の投入モル比を有し、固相化学合成により合成された約52アミノ酸長のコポリマー1(YEAK)で治療可能な疾患を処置するためであり、ここでコポリマー配列の残基1〜10が約1.0:2.0:5.5:5.0の産出モル比を有し、残基11〜30が約1.0:2.0:6.0:5.0の産出モル比を有し、および残基31〜52が約1.0:2.0:6.5:5.0の産出モル比を有する。被験体は、約22mgのコポリマー/m2被験体体表面積での投与計画に従って処置され、ここで被験体はヒトである。本発明のいくつかの態様において、投与計画は、2日毎、3日毎、毎週、2週毎または毎月被験体に投与することにより開始する。2日毎または3日毎の投与のための用量は、それぞれ約65mg/m2および110mg/m2までであり得る。ランダムコポリマーの毎週の投与を含む投与計画については、用量は約500mg/m2までを含み、ランダムコポリマーの2週毎または毎月の投与を含む投与計画については、1.5g/m2までが投与され得る。投与計画の第1の部分は、30日間まで、例えば、7、14、21または30日間投与され得る。異なるより長い間隔の、通常は低曝露(ステップダウン投与)での毎週、14日毎または毎月の投与による続く投与計画の第2の部分が、必要に応じて、例えば、毎週500mg/m2体表面積、最大で約1.5g/m2体表面積まで、4週間から2年まで、例えば、4、6、8、12、16、26、32、40、52、63、68、78または104週間にわたって続き得る。あるいは、疾患が寛解に向かうかまたは概して改善する場合、用量は維持するかまたは最大量よりも低く、例えば、毎週140mg/m2体表面積に維持し得る。ステップダウン投与計画の間に、疾患症状が再発する場合、効果が見られるまで第1の投与計画を再開し得、そして第2の投与計画を実施し得る。このサイクルは、必要に応じて複数回繰り返し得る。
【0150】
本発明のある側面は、投入モル比がそれぞれ約1.0:1.0:10.0:6.0である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)を含むランダムコポリマーを、該疾患を改善するのに有効な用量で被験体に投与することにより、不要な免疫応答を改善する手段である。本発明の別の態様において、該方法は、約1.0:2.0:6.0:5.0の投入モル比を有し、固相化学合成により合成された約52アミノ酸長のコポリマー1(YEAK)で治療可能な疾患を処置するためである。投与計画は上記YFAKについて本明細書中に記載したものと同様である。両方の種類のランダムコポリマーについて、例示手段は、ヒト被験体に、約22mgのランダムコポリマー/m2体表面積の1日用量を投与することによる。本発明のいくつかの態様において、投与計画は、2日毎、3日毎、毎週、2週毎または毎月被験体に投与することにより開始する。2日毎または3日毎の投与のための用量は、それぞれ約65mg/m2および110mg/m2までであり得る。ランダムコポリマーの毎週の投与を含む投与計画については、用量は約500mg/m2までを含み、ランダムコポリマーの2週毎または毎月の投与を含む投与計画については、1.5g/m2までが投与され得る。投与計画の第1の部分は、30日間まで、例えば、7、14、21または30日間投与され得る。異なるより長い間隔の、通常は低曝露(ステップダウン投与)での毎週、14日毎または毎月の投与による続く投与計画の第2の部分が、必要に応じて、例えば、毎週500mg/m2体表面積、最大で約1.5g/m2体表面積まで、4週間から2年まで、例えば、4、6、8、12、16、26、32、40、52、63、68、78または104週間にわたって続き得る。あるいは、疾患が寛解に向かうかまたは概して改善する場合、用量は維持するかまたは最大量よりも低く、例えば、毎週140mg/m2体表面積に維持し得る。ステップダウン投与計画の間に、疾患症状が再発する場合、効果が見られるまで第1の投与計画を再開し得、そして第2の投与計画を実施し得る。このサイクルは、必要に応じて複数回繰り返し得る。
【0151】
本発明のさらに別の態様は、固相化学合成により合成され、産出平均モル比がそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)のランダムコポリマーで不要な免疫応答を改善する手段であって、ここでコポリマーが52アミノ酸長を有し、コポリマー配列の残基1〜10が約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11〜30が約1.0:1.2:18:6の比を有し、および残基31〜52が約1.0:1.2:20:6の比を有する手段である。本発明の別の態様において、該方法は、約1.0:2.0:6.0:5.0の投入モル比を有し、固相化学反応により合成された約52アミノ酸長のコポリマー1(YEAK)で治療可能な疾患を処置するためであり、ここでコポリマー配列の残基1〜10が約1.0:2.0:5.5:5.0の産出モル比を有し、残基11〜30が約1.0:2.0:6.0:5.0の産出モル比を有し、および残基31〜52が約1.0:2.0:6.5:5.0の産出モル比を有する。投与計画は上記YFAKについて記載したものと同様である。両方の種類のランダムコポリマーについて、かかる方法は、ヒト被験体に、約22mgのランダムコポリマー/m2体表面積の1日用量を投与することによって実施し得る。投与計画は、上記に記載したものと同様であり得、被験体のニーズに合わせ得る。あるいは、ランダムコポリマーは、最大1日用量約80mgでヒト被験体に投与され得る。
【0152】
本発明の別の側面は、固相化学反応により合成され、産出平均モル比がそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)のランダムコポリマーでTH1表現型を有する不要な免疫応答を改善するための方法であって、ここでコポリマーが52アミノ酸長を有し、コポリマー配列の残基1〜10が約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11〜30が約1.0:1.2:18:6の比を有し、および残基31〜52が約1.0:1.2:20:6の比である方法を有する。本発明の別の態様において、前記方法は、約1.0:2.0:6.0:5.0の投入モル比を有し、固相化学反応により合成された約52アミノ酸長のコポリマー1(YEAK)で治療可能な疾患を処置するためであり、ここでコポリマー配列の残基1〜10が約1.0:2.0:5.5:5.0の産出モル比を有し、残基11〜30が約1.0:2.0:6.0:5.0の産出モル比を有し、および残基31〜52が約1.0:2.0:6.5:5.0の産出モル比を有する。両方の種類のランダムコポリマーについて、投与計画を被験体のニーズに合わせて決定し得、上述の投与計画と同様であり得る。
【0153】
本発明のさらに別の側面は、固相化学反応により合成され、産出平均モル比がそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)のランダムコポリマーで被験体における自己免疫反応を改善するための手段であって、ここでコポリマーが52アミノ酸長を有し、コポリマー配列の残基1〜10が約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11〜30が約1.0:1.2:18:6の比を有し、および残基31〜52が約1.0:1.2:20:6の比を有する手段である。本発明の別の態様において、前記方法は、約1.0:2.0:6.0:5.0の投入モル比を有し、固相化学反応により合成された約52アミノ酸長のコポリマー1(YEAK)で治療可能な疾患を処置するためであり、ここでコポリマー配列の残基1〜10が約1.0:2.0:5.5:5.0の産出モル比を有し、残基11〜30が約1.0:2.0:6.0:5.0の産出モル比を有し、および残基31〜52が約1.0:2.0:6.5:5.0の産出モル比を有する。両方の種類のランダムコポリマーについて、投与計画は被験体のニーズに合わせて、上述の投与計画と同様であり得る。
【0154】
当該方法および手段のいずれも、本願に記載される組成物および製剤を用いて実施し得る。
【0155】
本発明の他の態様において、本発明の方法のいずれも、ランダムコポリマーを含む徐放性製剤を用いて実施し得る。徐放性製剤を用いて本発明のランダムコポリマーを投与する際、コポリマーへの全曝露量は一般にボーラス投与での曝露量よりも低い。例えば、投与計画の第1の部分は、例えば約22mgコポリマー/m2 被験体の体表面積を、毎日、2日毎、または3日毎に被験体に投与し、ここで被験体はヒトである。本発明のいくつかの態様において、2日毎、3日毎、毎週、2週毎、または毎月、被験体に投与する徐放性製剤を投与計画で用いることにより、その間隔にコポリマーが放出される。2日毎または3日毎の投与のための用量は、それぞれ約35mg/m2および65mg/m2までであり得る。ランダムコポリマーの毎週の投与を含む投与計画については、用量は約140mg/m2までを含み、ランダムコポリマーの2週毎または毎月の投与を含む投与計画については、750mg/m2までが投与され得る。投与計画の第1の部分は、30日間まで、例えば、7、14、21または30日間投与され得る。異なるより長い間隔の、通常は低曝露(ステップダウン投与)での毎週、14日毎または毎月の投与による続く投与計画の第2の部分が、必要に応じて、例えば、毎週140mg/m2体表面積、最大で約1.5g/m2体表面積まで、4週間から2年まで、例えば、4、6、8、12、16、26、32、40、52、63、68、78または104週間にわたって続き得る。あるいは、疾患が寛解に向かうかまたは概して改善する場合、用量は維持するかまたは最大量よりも低く、例えば、毎週140mg/m2体表面積に維持し得る。ステップダウン投与計画の間に、疾患症状が再発する場合、効果が見られるまで第1の投与計画を再開し得、そして第2の投与計画を実施し得る。このサイクルは、必要に応じて複数回繰り返し得る。
【0156】
本発明の別の側面は、固相化学反応により合成され、産出平均モル比がそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0である組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)のランダムコポリマーで、多発性硬化症(MS)の症状に悩むかまたは示す被験体を処置する手段であって、ここでコポリマーが52アミノ酸長を有し、コポリマー配列の残基1〜10が約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11〜30が約1.0:1.2:18:6の比を有し、および残基31〜52が約1.0:1.2:20:6の比を有する手段である。本発明の別の態様において、前記方法は、約1.0:2.0:6.0:5.0の投入モル比を有し、固相化学反応により合成された約52アミノ酸長のコポリマー1(YEAK)で治療可能な疾患を処置するためであり、ここでコポリマー配列の残基1〜10が約1.0:2.0:5.5:5.0の産出モル比を有し、残基11〜30が約1.0:2.0:6.0:5.0の産出モル比を有し、および残基31〜52が約1.0:2.0:6.5:5.0の産出モル比を有する。かかるコポリマーを投与して、上記ランダムコポリマーの最大投与量500mgのランダムコポリマーで、MSの症状に悩むかまたは示す被験体を処置し得る。ランダムコポリマーは徐放性製剤中で送達され得る。
【0157】
固相化学反応により合成され、産出平均モル比がそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0である徐放性製剤で送達される最大投与量500mgの組成YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)のランダムコポリマーで、多発性硬化症を罹患する被験体を処置する手段であり、ここでコポリマーが52アミノ酸長を有し、コポリマー配列の残基1〜10が約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11〜30が約1.0:1.2:18:6の比を有し、および残基31〜52が約1.0:1.2:20:6の比を有する手段。本発明の別の態様において、該方法は、約1.0:2.0:6.0:5.0の投入モル比を有し、固相化学反応により合成された約52アミノ酸長のコポリマー1(YEAK)で治療可能な疾患を処置するためであり、ここでコポリマー配列の残基1〜10が約1.0:2.0:5.5:5.0の産出モル比を有し、残基11〜30が約1.0:2.0:6.0:5.0の産出モル比を有し、および残基31〜52が約1.0:2.0:6.5:5.0の産出モル比を有する。あるいは被験体は、徐放性製剤で送達される毎週最大投与量500mgのランダムコポリマーで処置され得る。
【0158】
上述の例示的な態様のいずれにおいても、各剤形の容量は好ましくは0.1mlから5mlである。
【0159】
本明細書に記載の方法のある態様において、投与経路は、経口、腹腔内、経皮、皮下で有り得、静脈内もしくは筋内注射により、吸入、局所、病変内局注、輸液;リポソーム媒介送達;局所、髄腔内、歯肉ポケット、直腸、膣内、気管支内、鼻腔内、経粘膜、腸、眼もしくは耳送達、または当業者が容易に考え得る当該分野で公知の任意の他の方法でもあり得る。本発明の組成物の他の態様は、非経口、肺、鼻および経口を含む様々な投与経路のための粒子形態保護コーティング、プロテアーゼ阻害剤または等価促進剤を組み込む。投与は全身的または局部的であり得る。好ましい態様において、ランダムコポリマーを皮下に投与する。
【0160】
本発明の方法のある態様は、本発明のコポリマーの徐放性形態での投与に関する。かかる方法は、徐放性経皮パッチを貼布するかまたは徐放性カプセルもしくはコーティングした埋め込み型医療用具を埋め込むことを含むことで、本発明のコポリマーの治療有効量が規定時間間隔でかかる方法の被験体に送達される。主題発明の化合物および/または薬剤は、ランダムコポリマーがある期間にわたり調節放出されるカプセルで送達され得る。放出制御または徐放性の組成物としては、親油性デポー(例えば、脂肪酸、ワックス、油)中の製剤が挙げられる。また本発明は、ポリマー(例えば、ポロキサマーまたはポロキサミン)でコーティングした粒子組成物を含む。特定の態様において、コポリマーの源は自己免疫攻撃の領域内または近傍で、例えば、IDDM治療については膵臓の近くで定位的に提供される。
【0161】
経口投与では、医薬製剤は液状、例えば、溶液、シロップ、または懸濁液で有り得るか、または使用前に水もしくは他の適切なビヒクルとともに再構成するための薬物として与え得る。かかる液体製剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または硬化食用脂)、乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア)、非水系ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、または分画(fractionated)植物油)、および防腐剤(例えば、メチルまたはプロピル-p-ヒドロキシ安息香酸塩またはソルビン酸)などの、薬学的に許容され得る添加剤とともに従来手段により調製し得る。医薬組成物は、例えば、結合剤(例えば、プレゼラチン化(pre-gelatinized)トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ)、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム)、または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの、薬学的に許容され得る賦形剤とともに従来手段により調製した錠剤またはカプセルの形をとり得る。錠剤は当該分野で周知の方法によりコーティングし得る。
【0162】
コポリマー1または他のランダムコポリマーを経口で導入する際、他の食物形態と混合して、固体、半固体、懸濁液、またはエマルジョンの形態で摂取し得、水、懸濁剤、乳化剤、調味料などを含む薬学的に許容され得る担体と混合し得る。ある態様において、経口組成物は腸溶性コーティングをされている。腸溶性コーティングの使用は当該分野で周知である。例えば、Lehman (1971)は、Eudragit SおよびEudragit Lなどの腸溶性コーティングを教示する。The Handbook of Pharmaceutical Excipients、第2版もまたEudragit SおよびEudragit L塗布を教示する。本発明で用いられ得る1つのEudragitはL30D55である。経口投与のための調製物は、活性化合物の制御放出を生じるために適当に製剤化され得る。
【0163】
口腔内投与では、組成物は従来のやり方で製剤化された錠剤やロゼンジの形態をとり得る。組成物は、注入、例えばボーラス注入法または連続輸液による非経口投与のために製剤化され得る。注入用製剤は、単位剤形、例えばアンプル中または複数回投与用容器中で、添加された防腐剤とともに与えられ得る。組成物は、油性または水性のビヒクル中で懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態をとり得、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの製剤化剤(formulatory agent)を含み得る。あるいは、活性成分は、使用前に適当なビヒクル、例えば発熱物質を含まない滅菌水での構成のために、粉末形態であり得る。
【0164】
組成物はまた、例えばココアバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤の基剤を含む、坐剤または停留浣腸などの直腸作用性組成物(rectal composition)に製剤化され得る。吸入による投与では、本発明による使用のための組成物は、加圧パックまたは噴霧器から適当な高圧ガス、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適当なガスを用いて、エアゾールスプレーの形で便利に送達される。加圧エアゾールの場合、バルブを備えて定量で送達することにより投薬量単位を定め得る。吸入器またはインサフレーター(insufflator)での使用のため、例えば、ゼラチンのカプセルおよびカートリッジを、化合物およびラクトースまたはデンプンなどの適当な粉末基剤の粉体混合物を含んで製剤化し得る。
【0165】
好適な態様において、コポリマー1または別のランダムコポリマーを含む組成物は、ヒトへの静脈内投与のために適合させた医薬組成物として常法により製剤化される。典型的に、静脈内投与のための組成物は滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要に応じ、組成物はまた可溶化剤および注入部位の痛みを和らげるためのリグノカインなどの局所麻酔薬を含み得る。一般的に、成分は別々にまたは一緒に混合して供給される。組成物が輸液により投与される場合、医薬品グレードの滅菌水または滅菌食塩水を含む輸液瓶で、24時間、32時間より長い、または好ましくは36もしくは48時間より長い投与の間隔で投薬し得る。組成物が注入で投与される場合、投与前に成分が混合され得るように注入のための滅菌水または滅菌食塩水のアンプルが提供され得る。
【0166】
特定の態様において、本明細書に記載の方法は、活性成分の徐放に適した、経皮パッチ、徐放性製剤をコーティングした埋め込み型医療用具、または埋め込み型もしくは注入用医薬製剤などの徐放性担体による自己免疫疾患の継続的な治療を可能にする。かかる態様において、投与間隔は好ましくは24時間、32時間より長く、またはより好ましくは36または48時間より長い。例えば、コポリマーを2日間にわたり放出する埋め込み型用具または徐放性製剤を患者に4日毎に埋め込み、コポリマーが被験体に投与されない間隔を2日とし得る。関連した態様において、かかる投与がない間隔は少なくとも24+x時間であり、ここでxは任意の正の整数を示す。
【0167】
別の態様において、ランダムコポリマーは、少なくとも24時間の時間間隔でランダムコポリマーを必要とする被験体に投与される場合に、治療効果を有するように製剤化される。特定の態様において、ランダムコポリマーは長く持続する治療効果のために製剤化され、ランダムコポリマーが少なくとも24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、228、234、または240時間の投与間の時間間隔で被験体に投与される場合に、疾患の処置における治療効果がみられる。
【0168】
本発明の別の態様は、ランダムコポリマーを投与することにより、例えば自己免疫疾患を発症する危険のある被験体を予防的に処置するための方法である。危険のある被験体は、例えば、かかる自己免疫疾患に関連するHLAの対立遺伝子を検査することにより、および/または家族の病歴もしくはかかる自己免疫疾患と相関する他の遺伝マーカーに基づき、自己免疫疾患に対する遺伝的感受性を測定して特定される。かかる予防的治療は、処置される自己免疫疾患と関連する第二のHLA分子に結合する第二のコポリマーをさらに含み得る。第二のHLA分子はHLA-DQまたはHLA-DR分子であり得る。好ましくは、予防的に処置される自己免疫疾患はIDDMまたはセリアック病である。
【0169】
本明細書に記載される方法の他の態様において、さらなる治療活性剤を被験体に投与する。ある態様において、さらなる治療剤(1つまたは複数)を含む組成物を、ランダムポリマーを含む組成物とは別の組成物として被験体に投与する。例えば、被験体は、別の治療剤を含む組成物を経口投与され得る一方で、ランダムコポリマーを含む組成物を皮下投与され得る。さらなる治療活性剤は、ランダムコポリマーと同様の疾患、関連の疾患を処置し得るか、または皮内注射部位の腫脹を軽減するなど、コポリマーの投与の好ましくない副作用を処置することを意図され得る。
【0170】
被験体に投与し得るさらなる治療活性剤としては、コパキソンTMなどの、疾患に関連する第二のHLA分子に結合するコポリマー;抗体、酵素阻害剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、ステロイド、非ステロイド抗炎症剤、代謝拮抗物質、サイトカイン、または可溶性サイトカイン受容体が挙げられる。第二のHLA分子はHLA-DQ分子またはHLA-DR分子であり得る。酵素阻害剤はプロテアーゼ阻害剤またはシクロオキシゲナーゼ阻害剤であり得る。
【0171】
さらなる態様において、本発明のコポリマーを、抗リンパ球療法(例えば、抗T細胞または抗B細胞)の後に自己免疫疾患を有する患者に投与する。1つの態様において、抗T細胞療法は、Campath−1H(登録商標)(アレムツズマブ;抗CD52)、OKT3(抗CD3)、サイモグロブリン(抗胸腺細胞グロブリン)、または抗IL2R抗体(例えば、ダクリズマブおよびバシリキシマブ)等の抗体を使用し得る。あるいは、抗T細胞療法は、フルダラビン、外照射療法(XRT)、シクロホスファミド等の化学療法剤を使用し得る。別の態様において、本発明のコポリマーは、自己免疫疾患の処置のために、抗体リツキサン(リツキシマブ)などのCD20と反応する薬剤などの抗B細胞療法と合わせられ得る。患者に投与される上記処置の投薬量は、処置される状態の正確な性質および処置の受容者で変化する。ヒト投与のための投薬量の評価は、当該分野で受け入れられている実施に従って実施され得る。例えば、Campath−1H(登録商標)に対する用量は、一般的に、成人患者について1〜約100mgの範囲にあり、通常、1〜30日の期間毎日投与される。いくつかの例において、40mg/日までのより多い用量が使用され得る(例えば、米国特許第6,120,766号を参照)が、好ましい1日用量は1〜10mg/日である。任意の特定の機構または理論に拘束されることを望まないが、かかる併用療法は、何らかの潜在的な長期毒性なしに治療効果を増強し得ると考えられている。例示のために、Campath−1H(登録商標)を、初期誘導免疫抑制のために患者に導入する。次いで、患者に、Campath−1H(登録商標)の非存在下で本発明のコポリマーを投与する。
【0172】
他の態様において、本発明のコポリマーを、処置を増強するために、同じ製剤または別々の製剤のいずれかにおいて、抗リンパ球剤(例えば、抗T細胞または抗B細胞)と共に投与し得る。例えば、コポリマーおよび抗リンパ球剤を、所望の効果を有するためにかかる様式および十分近い時間に投与し得る場合、同時に(at the same time)(同時に(simultaneously))または別々に(連続的に)投与し得る。
【0173】
さらなる薬剤を、医薬組成物の一部として添加し得るか、またはさらなる薬剤の生理学的効果が本発明のコポリマーの生理学的効果と共通する場合、同時にもしくはある時間内に投与し得る。より詳細には、さらなる薬剤を、コポリマーの投与と同時にまたはその1週間前、数日前、24時間前、8時間前もしくは直前に投与し得る。あるいは、さらなる薬剤を、コポリマーの投与の1週間後、数日後、24時間後、8時間後もしくは直後に投与し得る。
【0174】
ランダムコポリマーの投与の結果としての、多発性硬化症(MS)を罹患する被験体の症状の改善は、MSのエピソードの再発頻度の減少により、症状の重症度の軽減により、および投与開始後の一定期間にわたる再発のエピソードの解消により認められ得る。治療的有効量は、好ましくは症状および再発の頻度を、治療していない被験体に対して、少なくとも約20%、例えば、少なくとも約40%、少なくとも約60%、および少なくとも約80%減少するか、または1つ以上の症状を約100%解消するまたは自己免疫疾患の再発を約100%解消する。該一定期間は少なくとも約1か月、少なくとも約6か月、または少なくとも約1年であり得る。
【0175】
関節炎、または関節の炎症を生じる任意の他の自己免疫疾患を罹患する被験体の症状の改善は、1つ以上の関節の浮腫の減少により、1つ以上の関節の炎症の減少により、または1つ以上の関節の可動性の増加により、認められ得る。治療有効量は好ましくは、治療していない被験体に対して、少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、およびなおさらにより好ましくは少なくとも約80%、関節の炎症および浮腫を減少し、可動性を改善する。
【0176】
この出願のいずれかの箇所で参照した任意の特許、特許出願、特許公開公報または科学論文の内容は、その全体が本明細書中に援用される。
【0177】
本発明の実施は、適切であり他に示されない限り、当該分野の知識の範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、ウイルス学、組み換えDNAおよび免疫学の従来技術を用いる。かかる技術は、文献に記載される。例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版、SambrookおよびRussell編(Cold Spring Harbor Laboratory Press: 2001); 学術論文、Method In Enzymology(Academic Press, Inc., N.Y.); Using Antibodies, Harlow and Laneによる第2版、 Cold Spring Harbor Press, New York, 1999; Current Protocols in Cell Biology, Bonifacino, Dasso, Lippincott-Schwartz, Harford, およびYamada編、 John Wiley and Sons, Inc., New York, 1999; ならびに PCR Protocols, Bartlettら編、 Humana Press, 2003を参照されたい。
【実施例】
【0178】
VII. 実施例
実施例1. ランダムコポリマーおよび疾患関連抗原ペプチドに対する抗体の産生
PLP(139〜151)ペプチドは、CD4+TH1細胞によって認識される主要な免疫原性決定因子であり、これは次いで、SJLマウスにおけるEAE発症をもたらす。百日咳毒素とともに注射されると、PLP(139〜151)ペプチドは、SJLマウスにおいてMS様症状を引き起こす。百日咳毒素の非存在下では、注射された動物は、軽い一過性の疾患を発症するにすぎない。ランダムコポリマー組成物が、PLP注射の影響から動物を保護する能力は、動物をPLP(139〜151)ペプチドに曝露した後の毎日および毎週の投与の過程で評価した。抗体アイソタイプもまた試験した。CD4 T細胞は、それらのサイトカイン産生のパターンに応じて、少なくとも2つの異なるサブセットに分類し得る。TH1細胞は、優先的にIL-2およびIFN-γを産生し、マクロファージを活性化し、マウスにおけるIgサブクラスIgG2aおよびIgG3ならびにヒトにおけるIgG1およびIgG3の産生を刺激する。対照的に、TH2細胞の特徴となるサイトカインは、IL-4、IL-5およびIL-13であり、これらは強力なB細胞補助を提供し、かつ、マウスではIgEおよびIgG1に対して、またはヒトではIgE、IgG2およびIgG4に対してアイソタイプスイッチ(switching)を誘発する。したがって、一般的にTH2応答と関連するマウスIgG1およびIgG2b、ならびにTH1免疫性のマーカーであるマウスIgG2aを測定した。
【0179】
マウス(SJL、雌性)を、1日目に、完全フロイントアジュバント中の100μgのPLP(139〜151)ペプチドで免疫した。同日に、動物に200ngの百日咳毒素を静脈内注射した。3日目に、同じIV注射を繰り返した。コパキソンTM(YEAK)またはCo-14(YFAK) 7.5mg/kgによる毎日および毎週の処置を、6日目に開始し、36日目まで毎日続けた。37日目に、個体の血清を回収し、PLP(139〜151)ペプチド、Co-14(YFAK)およびコパキソンTMに対する抗体応答を、抗マウス全Ig、IgG1、IgG2aまたはIgG2bを第二の抗体として用いる標準ELISAを用いて測定した。
【0180】
実験過程において、疾患の重症度は、0(疾患なし)〜5(瀕死)の間の標準的な採点システムを用いて測定し、マウスの体重を、疾患状態の別の測定として記録した。動物の死亡率を毎日記録した。
【0181】
コパキソンTMの毎日の投与は、マンニトールのみの投与に比べて、疾患の重症度を軽減するのに効果的であったが(図1)、コパキソンTMの毎日の投与によって処置されたマウスは、大部分が処置の約3週間後に突然死した(図2)。図3に示すように、コパキソンTMの毎日の投与は、生存する注射済みマウスにおいて多量の抗体を誘発した。対照的に、コパキソンTMの毎週の投与、ならびにCo-14(YFAK)の毎日および毎週の投与は、かなり低い抗体力価を生じた。免疫応答は、主にIgG1+IgG2b(すなわち、主にTH2)応答であって、かなり低いIgG2a(すなわち、TH1)応答がみられた。コパキソンTMを毎日投与した群の少数の生存マウスは、化合物に対して大きなIgG1およびIgG2b応答を示し(図4および5)、このことはコパキソンTMを毎日投与したマウスの死因がアナフィラキシーである可能性を高めた。対照的に、コパキソンTMの毎週の投与、ならびにCo-14(YFAK)の毎日および毎週の投与により、かなり低い抗体力価を示し、アナフィラキシーショックが防止され、薬効が高められた。抗体力価の別の例を図6に示すが、ここでコパキソンTMおよびCo-14(YFAK)は、週に1回または週に3回投与された。コパキソンTMは、週に3回投与された場合、それに対して指向される多量の抗体の産生を誘発するが、一方、毎週のコパキソンTMの投与およびCo-14の投与は、毎週または週に3回のいずれの場合も、それぞれのコポリマーに対して識別できるほどの量の抗体を誘発しない。
【0182】
PLP(139〜151)ペプチドの抗体力価を測定した際、コパキソンTMおよびCo-14(YFAK)の両方とも、投与間隔にかかわらず、ビヒクルのみの投与と比較して、同じようにPLP(139〜151)ペプチドに対するIgG1形成量の微増を誘発した(図7)。PLP(139〜151)に対するIgG2bの力価もまた、あまり影響を受けなかった(図8)。これらの結果は、コパキソンTMまたはCo-14(YFAK)の保護効果が、PLP(139〜151)ペプチドに対する抗体量の調節により発揮されないことを示す。
【0183】
実施例2. ランダムコポリマーに対するT細胞応答
5μgのコパキソンTMまたはCo-14(YFAK)を週3回または毎週ベースで、処置の22日目まで注射したマウスのTH1およびTH2プロフィール。2、8、9、15、16、22、23、29日目に、脾臓を回収し、脾細胞を単離した。1ウェル当たり400,000個の脾細胞を、種々の濃度(0.8、4または20μg/ml)のCo-14(YFAK)で、3日間再刺激した。細胞培養の3日目に、細胞をIFN-γ(インターフェロンガンマ)またはIL-13(インターロイキン13)のいずれかでコーティングしたELISPOT(酵素結合免疫スポットアッセイ)プレートに移した。T細胞応答を、IFNγ産生(TH1サイトカイン)およびIL-13産生(TH2サイトカイン)を測定することにより試験する。トリチウム化チミジン取り込みとして示される細胞の増殖を測定することにより、T細胞刺激の度合いもまた試験する。
【0184】
投与の第一週に、応答の群発が見られ、次いで、軽減したが持続型の応答が見られた。図9に見られるように、応答はTH2に偏っており、IL-13産生は、コパキソンTMまたはCo-14(YFAK)のいずれかで処理された細胞において常にIFN-γよりも強く誘発された。TH2への偏りは、図10に見られるように、23のサイトカインおよびケモカインの量により、さらに確認される。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】図1は、EAEの疾患進行におけるコポリマー投与の効果を示す。
【図2】図2は、ランダムコポリマーを投薬した際のEAEを有するマウスの生存率を示す。
【図3】図3は、毎日または毎週投与で投薬されるコポリマーに対するIgG抗体産生を示す。
【図4】図4は、毎日または毎週投与で投薬されるコポリマーに対するIgG1抗体産生を示す。
【図5】図5は、毎日または毎週投与で投与されるコポリマーに対するIgG2b抗体産生を示す。
【図6】図6は、処置経過中のコポリマーに対する抗体力価の変化を示す。
【図7】図7は、ランダムコポリマーを投与されたマウスのPLPペプチドに対するIgG1抗体産生を示す。
【図8】図8は、ランダムコポリマーを投与されたマウスのPLPペプチドに対するIgG2b抗体産生を示す。
【図9】図9は、ランダムコポリマーを投与されたマウスにおけるIFNγに対するIL-13の割合を示す。
【図10】図10は、ランダムコポリマーを投与されたマウスにおけるTH1関連サイトカインと比較したTH2関連サイトカインの誘導の傾向を示す。
【図11】図11は、TおよびB細胞に対して特異的効果を生成するCo-14の能力を示す。
【図12】図12は、Co-14に対する用量依存抗体応答(IgG)を示す。
【図13A】図13は、用量、計画および投与依存に対するTH1/TH2の割合を示す。示されるリコール応答は、TH1/TH2状態の2つを表す。増殖(パネルA)。TH1(パネルB)またはTH2(パネルC)に対する刺激。
【図13B】図13は、用量、計画および投与依存に対するTH1/TH2の割合を示す。示されるリコール応答は、TH1/TH2状態の2つを表す。増殖(パネルA)。TH1(パネルB)またはTH2(パネルC)に対する刺激。
【図13C】図13は、用量、計画および投与依存に対するTH1/TH2の割合を示す。示されるリコール応答は、TH1/TH2状態の2つを表す。増殖(パネルA)。TH1(パネルB)またはTH2(パネルC)に対する刺激。
【図14】図14は、Co-14が重症筋無力症関連アセチルコリンレセプターペプチドに対するリコール応答を仲介する能力を示す。
【図15】図15は、Co-14 RSP中のYFAKの適切な割合がNODマウスにおけるリコール応答を生成する能力を示す。
【図16】図16は、末梢および中枢寛容の分化誘導を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランダムコポリマー組成物が
(a) 少なくとも52アミノ酸長を有する、YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ約1.0:1.0:10.0:6.0のモル投入比で含むランダムコポリマー組成物、
(b) 少なくとも35アミノ酸長を有する、YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ約1.0:1.2:XA:6.0のモル出力比で含み、ここでXA=11.0から30.0であるランダムコポリマー組成物、
(c) 約52アミノ酸残基長を有する、YEAK(L-チロシン、L-グルタミン酸、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ1.0:2.0:6.0:5.0のモル投入比で含むランダムコポリマー組成物、
(d) 約75アミノ酸残基長を有する、YEAK(L-チロシン、L-グルタミン酸、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ1.0:2.0:6.0:5.0のモル投入比で含むランダムコポリマー組成物、および
(e) 52アミノ酸長を有する、YEAK(L-チロシン、L-グルタミン酸、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ約1.0:2.0:6.0:5.0の平均モル出力比で含み、ここでコポリマー配列の残基1〜10が約1.0:2.0:5.5:5.0の比を有し、残基11〜30が約1.0:2.0:6.0:5.0の比を有し、および残基31〜52が約1.0:2.0:6.5:5.0の比を有する、ランダムコポリマー組成物、および
(f) VYAK;VWAK;VEAK;FEAK;VAK;WAK;YAK;FAK;YEK;ELSA;DLYV;およびKEASVからなる群より選ばれるランダムコポリマー組成物
からなる群より選ばれる、処置を必要とする被験体において多発性硬化症を処置するための医薬を製造するためのランダムコポリマー組成物の使用。
【請求項2】
ランダムコポリマー組成物が、少なくとも35アミノ酸長を有する、YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ約1.0:1.2:XA:6.0のモル出力比で含み、ここでXA=18.0から240.0である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
ランダムコポリマー組成物が、52アミノ酸長を有する、YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0の平均モル出力比で含み、ここでコポリマー配列のさらなる残基1〜10が約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11〜30が約1.0:1.2:18:6の比を有し、および残基31〜52が約1.0:1.2:20:6の比を有する、請求項2記載の使用。
【請求項4】
ランダムコポリマー組成物が、52アミノ酸長を有する、YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ約1.0:1.2:24.0:6.0の平均モル出力比で含み、ここでコポリマー配列の残基1〜10が約1.0:1.2:18〜20:6の比を有し、残基11〜30が約1.0:1.2:22〜24:6の比を有し、および残基31〜52が約1.0:1.2:26〜28:6の比を有する、請求項2記載の使用。
【請求項5】
多発性硬化症が再発性寛解型多発性硬化症である、請求項1記載の使用。
【請求項6】
被験体がヒトである、請求項1記載の使用。
【請求項7】
医薬が2以上の用量で有効量を送達するのに適する、請求項1記載の使用。
【請求項8】
医薬が1日の時間間隔での投与に適する、請求項7記載の使用。
【請求項9】
医薬が2mg/用量〜2000mg/用量のランダムコポリマーの有効量を送達するのに適する、請求項1記載の使用。
【請求項10】
医薬が10mg/用量〜200mg/用量の有効量を送達するのに適する、請求項9記載の使用。
【請求項11】
医薬が10mg〜30mgの有効量を送達するのに適する、請求項10記載の使用。
【請求項12】
医薬が約20mgの有効量を送達するのに適する、請求項11記載の使用。
【請求項13】
医薬が10〜1000mg/被験体の体表面積1mの用量でランダムコポリマー組成物を毎日送達するのに適する、請求項12記載の使用。
【請求項14】
用量が1日あたり約22mg/被験体の体表面積1mである、請求項13記載の使用。
【請求項15】
医薬が1日あたり0.25〜25mg/被験体の体重1kgの用量のランダムコポリマー組成物に適する、請求項14記載の使用。
【請求項16】
用量が1日あたり約0.6mg/被験体の体重1kgである、請求項15記載の使用。
【請求項17】
医薬が約500mg/被験体の体表面積1mの最大用量でランダムコポリマー組成物を毎週送達するのに適する、請求項1記載の使用。
【請求項18】
医薬が1.25〜125mg/被験体の体重1kgの用量でランダムコポリマー組成物を毎週送達するのに適する、請求項1記載の使用。
【請求項19】
用量が1週あたり約12mg/被験体の体重1kgである、請求項1記載の使用。
【請求項20】
医薬が静脈内、皮下、筋内、皮内、腹腔内もしくは皮内または経口の投与に適する、請求項1記載の使用。
【請求項21】
医薬が皮下投与に適する、請求項20記載の使用。
【請求項22】
医薬が連続投与に適する、請求項1記載の使用。
【請求項23】
医薬がランダムコポリマー組成物を連続的に送達するように設計されたデバイスを介する投与に適する、請求項22記載の使用。
【請求項24】
デバイスが経皮パッチまたはポンプである、請求項23記載の使用。
【請求項25】
医薬が、ランダムコポリマーを少なくとも3日の期間にわたって投与する徐放性製剤を含む、請求項22記載の使用。
【請求項26】
医薬がさらなる治療活性剤をさらに含む、請求項1記載の使用。
【請求項27】
さらなる薬剤が多発性硬化症の処置に有用な1つ以上のランダムコポリマー組成物である、請求項26記載の使用。
【請求項28】
薬剤が抗炎症剤である、請求項26記載の使用。
【請求項29】
T細胞枯渇療法のためのさらなる組成物をさらに含む、請求項1記載の使用。
【請求項30】
抗リンパ球療法のためのさらなる組成物をさらに含む、請求項1記載の使用。
【請求項31】
該さらなる組成物がポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体からなる群より選ばれる薬剤を含む、請求項30記載の使用。
【請求項32】
該ポリクローナル抗体が抗胸腺細胞γグロブリン(ATGAM)である、請求項30記載の使用。
【請求項33】
該モノクローナル抗体が、アレムツズマブ、ムロモナブ、ダクリズマブ、およびバシリキシマブからなる群より選ばれる、請求項30記載の使用。
【請求項34】
抗B細胞療法のためのさらなる組成物をさらに含む、請求項1記載の使用。
【請求項35】
該さらなる組成物が抗CD−20抗体を含む、請求項34記載の使用。
【請求項36】
ランダムコポリマーYFAKおよび薬学的に許容され得る賦形剤を含む前もって測定された注射可能なバイアルを含む、多発性硬化症の処置に有用なキット。
【請求項37】
該ランダムコポリマーが、固相化学反応により合成され、少なくとも35アミノ酸長を有する、YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ約1.0:1.2:XA:6.0のモル比で含み、ここでXA=11.0から30.0であり、薬学的に許容され得る賦形剤を含む、請求項36記載のキット。
【請求項38】
多発性硬化症が再発性寛解型多発性硬化症である、請求項36記載のキット。
【請求項39】
多発性硬化症の処置において請求項36のキットを使用することの利益をヘルスケア販売業者にマーケティングすることを含む、製薬ビジネスを実施する方法。
【請求項40】
(a)請求項36記載のキットを製造すること、および
(b)疾患または障害の処置においてキットを使用することの利益をヘルスケア販売業者にマーケティングすること
を含む、製薬ビジネスを実施する方法。
【請求項41】
(a) 固相化学反応により合成され、少なくとも52アミノ酸長を有する、YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ約1.0:1.0:10.0:6.0のモル投入比で含むランダムコポリマー組成物、
(b) 固相化学反応により合成され、少なくとも35アミノ酸長を有する、YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ約1.0:1.2:XA:6.0のモル出力比で含み、ここでXA=11.0から30.0であるランダムコポリマー組成物、
(c) 固相化学反応により合成され、少なくとも52アミノ酸残基長を有する、YEAK(L-チロシン、L-グルタミン酸、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ1.0:2.0:6.0:5.0のモル投入比で含むランダムコポリマー組成物、
(d) 固相化学反応により合成され、約75アミノ酸残基長を有する、YEAK(L-チロシン、L-グルタミン酸、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ1.0:2.0:6.0:5.0のモル投入比で含むランダムコポリマー組成物、および
(e) 固相化学反応により合成され、52アミノ酸長を有する、YEAK(L-チロシン、L-グルタミン酸、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ約1.0:2.0:6.0:5.0の平均モル出力比で含み、ここでコポリマー配列の残基1〜10が約1.0:2.0:5.5:5.0の比を有し、残基11〜30が約1.0:2.0:6.0:5.0の比を有し、および残基31〜52が約1.0:2.0:6.5:5.0の比を有する、ランダムコポリマー組成物、
(f) VYAK;VWAK;VEAK;FEAK;VAK;WAK;YAK;FAK;YEK;ELSA;DLYV;およびKEASVからなる群より選ばれるランダムコポリマー組成物
から選ばれるランダムコポリマー組成物を含む医薬組成物。
【請求項42】
ランダムコポリマー組成物が、固相化学反応により合成され、少なくとも35アミノ酸長を有する、YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ約1.0:1.2:Xa:6.0のモル出力比で含み、ここでXa=18.0から24.0である、請求項41記載の医薬組成物。
【請求項43】
ランダムコポリマー組成物が、固相化学反応により合成され、52アミノ酸長を有する、YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0の平均モル出力比で含み、ここでコポリマー配列の残基1〜10が約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11〜30が約1.0:1.2:18:6の比を有し、および残基31〜52が約1.0:1.2:20:6の比である、請求項42記載の医薬組成物
【請求項44】
ランダムコポリマー組成物が、固相化学反応により合成され、52アミノ酸長を有する、YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ約1.0:1.2:24.0:6.0の平均モル出力比で含み、ここでコポリマー配列の残基1〜10が約1.0:1.2:18〜20:6の比を有し、残基11〜30が約1.0:1.2:22〜24:6の比を有し、および残基31〜52が約1.0:1.2:26〜28:6の比である、請求項42記載の医薬組成物
【請求項45】
微小粒子またはエマルジョンの形態のランダムコポリマー組成物を含む、請求項41記載の医薬組成物。
【請求項46】
エマルジョンが、水相、油、および乳化剤を含む油中水エマルジョンであり、ランダムコポリマーが水相にある、請求項45記載の医薬組成物。
【請求項47】
ランダムコポリマー組成物がミョウバン中に懸濁される、請求項45記載の医薬組成物。
【請求項48】
油がミネラルオイルであり、乳化剤がモノラウリル酸ソルビトールである、請求項46記載の医薬組成物。
【請求項49】
ランダムコポリマー組成物が制御放出ポリマーまたはマトリクスである、請求項41記載の医薬組成物。
【請求項50】
ランダムコポリマー組成物が
(a) 52アミノ酸長を有する、YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ約1.0:1.0:10.0:6.0のモル投入比で含むランダムコポリマー組成物、
(b) 少なくとも35アミノ酸長を有する、YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ約1.0:1.2:XA:6.0のモル出力比で含み、ここでXA=11.0から30.0であるランダムコポリマー組成物、
(c) 52アミノ酸残基長を有する、約YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ1.0:1.2:18.0:6.0のモル平均出力比で含み、ここでコポリマー配列の残基1〜10が約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11〜30が約1.0:1.2:18:6の比を有し、および残基31〜52が約1.0:1.2:20:6の比を有する、ランダムコポリマー組成物、
(d) 約52アミノ酸残基長を有する、YEAK(L-チロシン、L-グルタミン酸、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ1.0:2.0:6.0:5.0のモル投入比で含むランダムコポリマー組成物、
(e) 約75アミノ酸長を有する、YEAK(L-チロシン、L-グルタミン酸、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ1.0:2.0:6.0:5.0のモル投入比で含む、ランダムコポリマー組成物、および
(f) 52アミノ酸残基長を有する、YEAK(L-チロシン、L-グルタミン酸、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ約1.0:2.0:6.0:5.0のモル平均出力比で含み、ここでコポリマー配列の残基1〜10が約1.0:2.0:5.5:5.0の比を有し、残基11〜30が約1.0:2.0:6.0:5.0の比を有し、および残基31〜52が約1.0:2.0:6.5:5.0の比を有する、ランダムコポリマー組成物、および
(g) VYAK;VWAK;VEAK;FEAK;VAK;WAK;YAK;FAK;YEK;ELSA;DLYV;およびKEASVからなる群より選ばれるランダムコポリマー組成物
から選ばれる、改善を必要とする被験体において不要な免疫応答を改善するための医薬を製造するためのランダムコポリマー組成物の使用。
【請求項51】
該不要な免疫応答がTH1表現型を有する、請求項50記載の使用。
【請求項52】
該不要な免疫応答が、アレルギー、喘息、アトピー性皮膚炎および神経損傷を生じる疾患からなる群より選ばれる、請求項50記載の使用。
【請求項53】
ランダムコポリマー組成物が
(a) 52アミノ酸長を有する、YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ約1.0:1.0:10.0:6.0のモル投入比で含むランダムコポリマー組成物、
(b) 少なくとも35アミノ酸長を有する、YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ約1.0:1.2:XA:6.0のモル出力比で含み、ここでXA=11.0から30.0であるランダムコポリマー組成物、
(c)約52アミノ酸残基長を有する、YFAK(L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ約1.0:1.2:18.0:6.0のモル平均出力比で含み、ここでコポリマー配列の残基1〜10が約1.0:1.2:16:6の比を有し、残基11〜30が約1.0:1.2:18:6の比を有し、および残基31〜52が約1.0:1.2:20:6の比を有する、ランダムコポリマー組成物、
(d) 約52アミノ酸残基長を有する、YEAK(L-チロシン、L-グルタミン酸、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ1.0:2.0:6.0:5.0のモル投入比で含むランダムコポリマー組成物、および
(e) 約75アミノ酸長を有する、YEAK(L-チロシン、L-グルタミン酸、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ1.0:2.0:6.0:5.0のモル投入比で含むランダムコポリマー組成物、および
(f) 52アミノ酸長を有する、YEAK(L-チロシン、L-グルタミン酸、L-アラニンおよびL-リジン)をそれぞれ約1.0:2.0:6.0:5.0の平均モル出力比で含み、ここでコポリマー配列の残基1〜10が約1.0:2.0:5.5:5.0の比を有し、残基11〜30が約1.0:2.0:6.0:5.0の比を有し、および残基31〜52が約1.0:2.0:6.5:5.0の比を有する、ランダムコポリマー組成物、および
(g) VYAK;VWAK;VEAK;FEAK;VAK;WAK;YAK;FAK;YEK;ELSA;DLYV;およびKEASVからなる群より選ばれるランダムコポリマー組成物
から選ばれる、処置を必要とする被験体において自己免疫疾患を処置するための医薬を製造するためのランダムコポリマー組成物の使用。
【請求項54】
自己免疫疾患が、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス(SLE)、アレルギー性気道炎症、宿主対移植片病、慢性関節リウマチ、および自己免疫性ブドウ膜網膜炎から選ばれる、請求項53記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2009−515999(P2009−515999A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541401(P2008−541401)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/044864
【国際公開番号】WO2007/059342
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(506297762)ペプチミューン,インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】