説明

不規則にサンプリングされた狭帯域信号を復元するプロセス及び機器

第1の態様によれば、本発明は、不規則なサンプリングを生成する機器によって取得された狭帯域信号の復元プロセスであって、2つのサンプル列が同じサンプリング周期で取得され、該2つの列は、サンプリング誤差が双方の列にわたって同一又は準同一であるように互いに対してオフセットされる、プロセスに関する。第2の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様によるプロセスを実行するように構成される機器に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の領域は、狭帯域信号の領域であり、より正確には、不規則にサンプリングされた狭帯域信号の復元の領域である。
【0002】
本発明は、とりわけ空間領域(spatial sphere)において特にリモートセンシングの目的で利用される静的フーリエ変換による分光測定法で有利に適用することができる。
しかしながら、本発明は、たとえば電気通信の分野において、とりわけ信号の復調が実現可能でないときに、狭帯域信号の不規則なサンプリングが行われる任意の技法に、より幅広く適用されることを目指している。
【背景技術】
【0003】
信号のスペクトルが制限され、かつ周波数ゼロの周辺で信号がゼロである場合、該信号は狭帯域であることを思い出されたい。換言すれば、信号のスペクトルは、±f0(f0はゼロではない)を中心とする幅Δfの2つの範囲を超えてゼロであり、特に、スペクトル幅Δfが中心周波数f0に対して小さいことは明らかである。
【0004】
本発明の用途を限定するものではない一例は、赤外領域でスペクトルを生成する干渉法の例である。これは、特にオゾン及び一酸化炭素の濃度プロファイルを得る手段として、大気汚染を監視するものとすることができる。オゾンの帯域B1=[1020cm-1,1080cm-1]及び一酸化炭素の帯域B2=[2132cm-1,2192cm-1]の2つのスペクトル帯域が特に着目される。
【0005】
古典的なフーリエ変換による分光測定法では、入力信号(スペクトル)は帯域制限信号であり、インターフェログラム(入力信号のフーリエ変換)と呼ばれる機器によって取得された信号がサンプリングされる。
サンプリング周期(Te)は、シャノン定理によって課せられるとともに、入力信号の最大周波数を2倍したものの逆数よりも小さくなければならない。サンプリングは、サンプリング周期に等しい距離だけミラーを移動させることによって行われる。したがって、パス長差(PLD:path-length difference)と呼ばれるサンプリング時刻は、
PLD(k)=PLD(0)+kTe
となり、ここでkはサンプル数を表す。
【0006】
静的フーリエ変換による分光測定法では、サンプリングは、並列の多数のミラー(回折格子と呼ばれる)を用いて行われる。各ミラーは異なる位置にあり、2つの隣接するミラー間の広がりはサンプリング周期に等しい。
【0007】
帯域制限信号の場合、取得されるサンプル数が多すぎ、その結果、設計される回折格子の数が多すぎることから、このタイプの分光計を使用するのは不可能である。
【0008】
しかしながら、狭帯域信号の場合、取得されるサンプル数はかなり低減され、このタイプの分光計を用いることができる。信号の狭帯域性によって、古典的なシャノン定理によって課せられるサンプリングピッチよりも大きなサンプリングピッチを選択することが効果的に可能になる。狭帯域信号に適用可能な一般化されたシャノン定理は、古典的なシャノン定理の制限よりも小さなサンプリング周波数を課す。実際には、サンプリングによって、周波数Feの周囲でスペクトルが周期化され、スペクトルの穴においてスペクトルを折り返すために(信号は狭帯域であるので)スペクトルの穴から利益を引き出すことができる。これによって、サンプリング周期について一組の可能な間隔がもたらされる。制限されたケースでは、サンプリング周期は、スペクトル幅を2倍したものの逆数をほぼ達成することができる。
【0009】
静的分光測定法の不利な点は、測定されたインターフェログラムが不規則にサンプリングされるということである。実際には、概念上、(特に磨きのかかった不規則性のために)回折格子をその公称位置に完璧に配列することはできず、その結果、サンプリングは不規則になる。
【0010】
このことから、古典的なフーリエ変換による分光測定法に反して、測定された信号(インターフェログラム)に逆フーリエ変換操作を直接適用することによって入力信号を回復することは不可能である。したがって、静的フーリエ変換による分光測定法には、不規則にサンプリングされたインターフェログラムを利用する方法を知ることが必要である。
【0011】
ここで、このタイプのサンプリングは、非常に僅かに不規則なサンプリング(不規則性はほぼ数ミクロン(マイクロメートル)程度の回折格子の製造誤差が源である)に関係するという点で、疑似規則的なサンプリング又は準規則的なサンプリングとも呼ばれることに留意されたい。そのサンプリング時刻は既知であり、tn=nTe+εnの形で表すことができる。ここで、Teは平均サンプリング周期を表し、εnはサンプリング誤差を表す。
【0012】
ここで、問題は、これらの不規則にサンプリングされたインターフェログラムのスペクトルを可能な限り最良の精度で復元するということである。
【0013】
このために、さまざまな方法が本出願人によって提案されてきた。
【0014】
第1の方法によれば、手順は、最小二乗の技法を介して行列方程式を解くことにより、不規則なインターフェログラムからスペクトルへ直接向かう。
【0015】
第2の方法によれば、測定された信号が、補間によって規則的サンプリングを復元するように規則的なピッチで再サンプリングされる。この再サンプリング技法は、特に非特許文献1に記載されている。その後、スペクトルに戻すために、逆フーリエ変換が実行される。
【0016】
この第2の方法は、非特許文献2で特に議論されている。
【0017】
しかしながら、これらの方法は十分に満足できるものではない。
【0018】
実際には、測定された信号が(たとえば検出タイプの白色雑音によって)雑音を有する場合、回復された信号は入力信号とは非常に異なる可能性がある。これらの復元方法は、測定された信号の雑音を効果的に増幅するか、又は修復された信号が雑音に埋もれるほど多くの雑音をも増幅する。
【0019】
本出願人は、入力信号と出力信号との間の最も僅かな距離を有するには、サンプル数が可能な限り最大(すなわち、可能な限り最小のサンプリング周期)でなければならないことにも観察によって気付いた。したがって、雑音増幅を最小にする試みとして、オーバーサンプリングが実行される。例として、目的が雑音増幅を25%に制限することである場合、サンプリング周期が、シャノン一般化定理によって課せられるサンプリング周期の2分の1でなければならず、その結果、サンプル数は2倍になる。
【0020】
したがって、測定された信号の再サンプリング中に雑音の増幅を低減する不規則にサンプリングされた狭帯域信号の復元方法、及び好ましくは限られた数のサンプルのみを再サンプリングに用いる技法が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】コーレンバーグ・A(Kohlenberg, A)による論文「帯域制限関数の正確な補間(Exact Interpolation of Band-Limited Functions)」、応用物理ジャーナル第24巻第12号第1432頁〜第1436頁、1953年12月(Journal of Applied Physics, vol. 24, number 12, p.p. 1432-1436, December 1953)
【非特許文献2】フランスのツールーズでの2004年3月30日〜4月2日の第5回宇宙光学国際学会議事録(ICSO 2004)(Proceedings of the 5th International Conference on Space Optics (ICSO 2004), 30 March - 2 April 2004、Toulouse, France)におけるA・ロサック(A. Rosak)及びF・ティント(F. Tinto)による2004年の論文「静的フーリエ変換分光計ブレッドボードの経過報告(Progress report of a static Fourier transform spectrometer breadboard)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的はこの必要性に応えることである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
第1の態様によれば、不規則なサンプリングを行う機器によって取得された狭帯域信号の復元プロセスであって、2つのサンプル列を同じサンプリング周期で取得し、該2つの列を、サンプリング誤差が双方の列にわたって同一又は準同一であるように互いに対してオフセットさせる、プロセスが提案される。
【0024】
このプロセスのいくつかの好ましいが限定的でない態様は次の通りである。
−前記列の間の前記オフセットは、前記狭帯域信号の平均周波数の逆数の4分の1に実質的に等しい;
−前記サンプリング周期は前記狭帯域信号のスペクトル幅の逆数以下である;
−前記プロセスは、前記2つの列の前記サンプルから前記狭帯域信号のスペクトルに直接移る、最小二乗の技法による行列方程式の解法ステップをさらに含む;
−前記プロセスは、前記2つの列の前記サンプルから規則的な理論的サンプルを求めるステップをさらに含む;
−前記規則的な理論的サンプルのサンプリング周期Teは、
k/(2*Fmin)<Te<(k+1)/(2*Fmax
に従って制限され、ここで、kは整数であり、Fmin及びFmaxは、それぞれ前記狭帯域信号の最小周波数及び最大周波数である;
−前記プロセスは、前記規則的な理論的サンプルから前記狭帯域信号を復元する逆フーリエ変換操作をさらに含む;
−前記2つのサンプル列を干渉計によって取得する;
−前記干渉計は静的格子干渉計である;
−前記2つのサンプル列の間の前記オフセットは時間として作成され、前記プロセスは、前記第1の列の取得の動作、前記オフセットを適応的に達成する前記干渉計の可動要素の変位の動作、及び前記第2の列の取得の動作を連続的に含む;並びに
−前記2つのサンプル列を同時に取得する。
【0025】
第2の態様によれば、本発明は、狭帯域信号の不規則なサンプリングを生成する機器であって、前記信号の2つの不規則なサンプル列を同じサンプリング周期で取得する手段を備え、該2つの列は、サンプリング誤差が双方の列にわたって同一又は準同一であるように互いに対してオフセットされることを特徴とする、機器に関する。
【0026】
このプロセスのいくつかの好ましいが限定的でない態様は次の通りである。
−前記手段は、可動要素の変位の前及び後においてそれぞれ取得された2つのサンプル列の間に前記オフセットを引き起こすように移動させることができる該可動要素を備える;
−前記プロセスは、各回折格子が2つのゾーンに分割される回折格子ミラーを備え、前記手段は、各該回折格子の該ゾーンのうちの一方の厚さがより厚いことによって形成される;並びに
−前記プロセスは、回折格子ミラーを備え、前記手段は、該ミラーのうちの1つの傾斜によって形成される。
【0027】
本発明の他の態様、目的、及び利点は、限定的でない例として与えられると共に、添付図面を参照して与えられる本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明からより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の範囲内で用いられる不規則なサンプリングを表す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、格子干渉計による静的フーリエ変換に基づく分光測定法の例が用いられる。しかしながら、本発明は、この実施形態に限定されず、特に、たとえば電気通信において狭帯域信号のフーリエ変換の不規則なサンプリングを実行する機器によって、狭帯域信号の不規則なサンプリングが行われる任意の技法に、より幅広く適用することを目指している。
【0030】
前述したように、信号の狭帯域性によって、サンプリングピッチが狭帯域信号のスペクトル幅の逆数以下であることを述べている一般化されたシャノン定理を用いることが可能になる。
【0031】
したがって、(本発明者らの例として)帯域B1の狭帯域信号の場合、83.33μmのサンプリングピッチに従った最低でも961個のサンプルが必要とされる。
【0032】
本明細書で提示する例の範囲内において、不規則なインターフェログラムにおける80μmのサンプリングピッチ及び(32*32個の回折格子を備えるキューブに対応する)約1000個のサンプルの取得が最初に検討される。回折格子の製造誤差は、通常、±5μmの大きさを有し、この値は技術的な制約によって課される。
【0033】
前もって分かっているように、従来技術の方法は雑音を強く増幅する。この増幅を制限するために、より多くの点を取得することができる。たとえば、1.5倍多くの(それぞれ2倍多くの)点を取得することによって、雑音の増幅が+40%(それぞれ+25%)に制限される。
サンプリングピッチは、それに応じて、一般化されたシャノン定理によって課されるものよりも1.5倍(それぞれ2倍)細かくなる。すなわち、サンプリングピッチは55μm(それぞれ42μm)であり、1500個の点(それぞれ2000個の点)が取得され、これは、全体として、40*40個の回折格子(それぞれ45*45個の回折格子)を備えるキューブに対応する。
これらの方法は、雑音レベルが不満足であることに加えて、サンプル数を増加させることを要し、したがって、キューブの製造には、回折格子の数の増加があることは明らかである。
【0034】
回折格子の概念に起因するサンプリング誤差は、
PLD(k)=PLD(0)+kTe+α(k)
等のピッチ長差(PLD:pitch-length difference)で取得が行われると仮定すると、以下のモデルに従って規定される。ここで、kはサンプル数を表し、Teはサンプリングピッチを表し、αはサンプリングの不規則度を表す。
【0035】
本発明の範囲内において、2つのサンプル列(two series of samples)が同じサンプリング周期で取得される。これらの2つの列は、サンプリング誤差が双方の列にわたって同一又は準同一であるように互いに対してオフセットされる。
【0036】
したがって、2つの列は、以下のようなピッチ差PLD1及びPLD2でそれぞれ作成される。
PLD1(k)=PLD1(0)+kTe+α(k)、及び
PLD2(k)=PLD2(0)+β(k)+kTe+α(k)
【0037】
したがって、これらの列のそれぞれにおけるサンプルは、距離d(k)=PLD2(k)−PLD1(k)=PLD2(0)−PLD1(0)+β(k)だけオフセットされている。
【0038】
システムは、好ましくはβ(k)=0となるように設計される。
【0039】
しかしながら、以下で示す、特にd(k)=λ/4を中心とする±λ/32の公差を可能にする、既知でありかつ制限される条件では、非ゼロβ(k)を有する可能性がある。したがって、本発明の範囲内において、双方の列にわたって準同一のサンプリング誤差は、既知の限度量のみ互いに相違する誤差を意味するものと解される。
【0040】
したがって、第2の列のサンプルは、第1の列の各サンプルを距離dだけオフセットしたものに対応する。
【0041】
図1は、本発明の範囲内において2つのオフセットされたサンプル列の手段により使用される不規則なサンプリングを示している。
【0042】
一般化されたシャノン定理は、80μmのサンプリングピッチを有する1000個のサンプルの取得を課すことが前もって分かっている。
【0043】
したがって、
80μmのサンプリングピッチ及び1000個の点を有する第1のインターフェログラム、並びに
80μmのサンプリングピッチ及び1000個の点を有すると共に、距離dだけ第1のものに対してオフセットされた第2のインターフェログラム
が取得される。
【0044】
本出願人は、本発明による二重オフセットサンプリングについての雑音の増幅を評価し、この増幅を、1つのインターフェログラムのみが取得される場合に観察される雑音の増幅と比較した。
【0045】
復元アルゴリズムは、前述した補間方法に基づくものであり、反転された移行行列(passage matrix)の手段によって、不規則なインターフェログラムから規則的なインターフェログラムを得ることを可能にする。
【0046】
この行列は、良条件である(このとき、ユニタリー行列に近い)場合に良好に反転することが明らかである。逆の場合、行列の反転によって、雑音が増幅され、インターフェログラムは使用不能になる可能性がある。
【0047】
雑音増幅を特徴付けるために、第1の方法は、行列の固有値(Eigen values)及び次数2のモーメントを扱うことからなる。第2の方法は、白色放射雑音(white radiometric noise)を不規則なインターフェログラムに加えること、及び不規則なインターフェログラムの雑音値と規則的なインターフェログラム(復元されたもの)の雑音値とを比較することによって雑音増幅を計算することからなる。
【0048】
本出願人は、雑音が、サンプリング周期に関わらず、本発明の範囲内ではほとんど増幅されていないことに気付いた。
【0049】
また、本出願人は、2つのサンプル列の間のオフセットの値dが復元の性能に影響を及ぼすことにも気付いた。λ/4の距離(ここで、λ=1/f0は、狭帯域の波長を表し、帯域B1の場合に2381nmである)は、最適なものとして雑音増幅を準ゼロにするように見える。また、オフセットが実現されると、公差を有することができ、特にλ/4を中心とするほぼ±λ/32程度の公差(すなわち帯域B1の場合には±300nmの公差)を有することができるように、性能低下も改善していることが分かる。
【0050】
特に有利なことに、本発明によって、一般化されたシャノン定理によって課されるサンプリングピッチ(検討中の例では80μmのピッチ)よりも大きくサンプリングピッチを増加させることが可能になる。
2つのオフセットされたサンプル列を取得することによって本発明の範囲内で行われる、点を2倍にすることにより、サンプリングピッチは2倍に効果的に解放(release)される。したがって、この場合、各列のサンプリングピッチの条件は、入力信号の周波数幅の逆数よりも小さい。一般化されたシャノン定理は常に順守されるが、情報は異なって分布していることに留意されたい。
【0051】
この有利な変形形態の範囲内において、帯域B1の例に戻ると、160μmのピッチでサンプリングされた2つのインターフェログラムを取得することができ、これらのインターフェログラムについてサンプルはすべて、距離dだけ、好ましくは距離d=λ/4だけ、対になってオフセットされている。これらの列のそれぞれは500個のサンプルを含む。
【0052】
本出願人は、結果が、一般化されたシャノンピッチ(この例では80μm)でサンプルが取られる場合と同程度に良好であることに気付いた。この点で、これらの列のそれぞれにおいて必要なサンプルの数が削減される利点がある。
【0053】
本発明の第1の実施態様によれば、2つのオフセットされたサンプル列は同時に取得される。160μmのピッチを有する500個のサンプル(第1の列)、及び同じく160μmのピッチを有する、第1のサンプルに対してdだけオフセットされた500個のサンプル(第2の列)をこのようにして取得することができる。24*24個の回折格子(各回折格子は2つのサンプルを取得するために2重にされている)を備えるキューブに対応して、1000個のサンプルが全体として必要である。
【0054】
2つのオフセットされた列のこのような同時の取得を実行するために、干渉計の各回折格子に対して薄層処理を実行することを提案する。たとえば、各回折格子は2つのゾーンに分割され、同じ回折格子の2つのゾーン間の厚さの差がオフセットdを作り出すように、これらのゾーンのうちの少なくとも一方の厚さが、たとえば真空下での材料の蒸着によってより厚く堆積される。この実施形態では、一定ではないが既知でありかつ制限されたβ(k)が観測される。
【0055】
一変形の実施形態によれば、回折格子の一方のエッジと該回折格子の他方のエッジとの間にオフセットdを導入するために、2つのミラー間に僅かな傾斜が導入される。このオフセットは、連続的であり、干渉コントラストを失わないように、3つ以上のサンプルの取得を前提としている。
【0056】
本発明の第2の実施態様によれば、2つのオフセットされたサンプル列は連続的に取得される。これを行うために、第1の列が取得され、次いで、オフセットを引き起こすように干渉計の可動要素が適応的にシフトされ、次いで、第2の列が取得される。この場合、干渉計は、可動要素を有し、24*24個の回折格子を備えるキューブに対応して、500個のサンプルの取得を可能にするように構成することができる。
【0057】
2つの連続的に取得される列の間にオフセットを作り出すために、干渉計の可動要素をシフトさせることを提案する。
【0058】
第1の変形態様によれば、オフセットdを引き起こすように、干渉計の2つのアームのうちの一方におけるピッチの差が僅かに変えられる。これは、たとえば、圧電機構上に干渉計の回折格子ミラーの1つを位置付けることによって行われる。
【0059】
第2の変形態様によれば、オフセットを引き起こすために、ガラスブレード(並進(translation)の場合にはプリズム)の僅かな傾斜動作(傾き動作)又はわずかな並進動作が用いられ、任意選択として、干渉計のアームにおいてオフセットが用いられる。このガラスブレードは、干渉計の補償ブレードとすることができる。これによって、圧電ベースの変位デバイスを用い、機械的に非常に純粋な動作が生成される。
【0060】
以下の表は、帯域B1の狭帯域信号の例と共に本明細書本文で具体的に述べられるさまざまな数値例を列挙している。
【0061】
【表1】

【0062】
本発明による二重サンプリングの場合に、サンプリング周期に関わらず、雑音の増幅が準ゼロであることが理解されたであろう。したがって、従来技術術で詳細に述べた単一サンプリングと異なり、雑音レベルを制限するためにサンプル数を増加させる必要はない。
【0063】
また、2つのサンプル列が用いられる点で、各列のサンプリング周期を、一般化されたシャノン定理によって課せられるサンプリング周期よりも大きくすることができる(各列のサンプリング周期の条件は、入力信号の周波数幅の逆数よりも小さい)。
【0064】
したがって、本発明による二重サンプリングは、特に最適なλ/4のオフセットを実質的に取るとき、測定された信号の再サンプリング中に雑音を増幅せず、復元アルゴリズムをより安定にし、かつ再サンプリングに必要なサンプル数を削減させることを同時に可能にする。
【0065】
2つの列のサンプルが取得されると、序論で述べた復元方法が、狭帯域信号のスペクトルに戻すために同様に進められる(最小二乗の技法による行列方程式の解法、補間によって規則的なサンプリングを復元するための規則的なピッチでの再サンプリング、次いでスペクトルに戻すための逆フーリエ変換によって、不規則なサンプルがスペクトルに直接移行される)ことをここに明記しておく。
規則的なピッチでの再サンプリングの場合に、規則的な理論的サンプルのサンプリング周期は、k/(2*Fmin)<Te<(k+1)/(2*Fmax)に従って制限される。ここで、kは整数であり、Fmin及びFmaxは、それぞれ狭帯域信号の最小周波数及び最大周波数である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不規則なサンプリングを行う機器によって取得された狭帯域信号を復元するプロセスであって、2つのサンプル列を同じサンプリング周期で取得し、該2つの列を、サンプリング誤差が双方の列にわたって同一又は準同一であるように互いに対してオフセットさせる、プロセス。
【請求項2】
前記列の間の前記オフセットは、前記狭帯域信号の平均周波数の逆数の4分の1に実質的に等しい、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記サンプリング周期は、前記狭帯域信号のスペクトル幅の逆数以下である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
最小二乗の技法による行列方程式の解法ステップであって、前記2つの列の前記サンプルから前記狭帯域信号のスペクトルに直接進む、解法ステップをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記2つの列の前記サンプルから規則的な理論的サンプルを求めるステップをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記規則的な理論的サンプルのサンプリング周期Teは、
k/(2*Fmin)<Te<(k+1)/(2*Fmax
に従って制限され、ここで、kは整数であり、Fmin及びFmaxは、それぞれ前記狭帯域信号の最小周波数及び最大周波数である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記規則的な理論的サンプルから前記狭帯域信号を復元する逆フーリエ変換操作をさらに含む、請求項5又は6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記2つのサンプル列を干渉計によって取得する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記干渉計は静的格子干渉計である、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記2つのサンプル列の間の前記オフセットは時間として作成され、前記プロセスは、前記第1の列の取得の動作、前記オフセットを適応的に実行する前記干渉計の可動要素の変位の動作、及び前記第2の列の取得の動作を連続的に含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記2つのサンプル列を同時に取得する、請求項9に記載のプロセス。
【請求項12】
狭帯域信号の不規則なサンプリングを行う機器であって、
前記信号の2つの不規則なサンプル列を同じサンプリング周期で取得する手段を備え、
該2つの列は、サンプリング誤差が双方の列にわたって同一又は準同一であるように互いに対してオフセットされることを特徴とする、機器。
【請求項13】
前記手段は、可動要素の変位の前及び後においてそれぞれ取得された2つのサンプル列の間に前記オフセットを引き起こすように移動させることができる該可動要素を備える、請求項12に記載の機器。
【請求項14】
各回折格子が2つのゾーンに分割される回折格子ミラーを備え、前記手段は、各回折格子の該ゾーンのうちの一方の厚さがより大きいことによって形成される、請求項12に記載の機器。
【請求項15】
回折格子ミラーを備え、前記手段は、該ミラーのうちの1つの傾斜によって形成される、請求項12に記載の機器。

【図1】
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【公表番号】特表2012−505421(P2012−505421A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531422(P2011−531422)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061287
【国際公開番号】WO2010/043442
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(508234408)サントル・ナシオナル・デテュード・スパシアル(セ・エヌ・ウ・エス) (3)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL D’ETUDES SPATIALES(CNES)
【住所又は居所原語表記】2, place Maurice Quentin, F−75001 Paris, France
【Fターム(参考)】