説明

不透明溶液中の異物検査装置および異物検査方法

【課題】透明容器中に充填された液体中の異物を検査する異物検査装置および異物検査方法において、照明光に対し透過性の無い非透光性液体を用いた場合でも非透光性液体中の異物を確実に検出することができ、また透明容器自体の傷を異物画像から削除できる新規な異物検査装置および異物検査方法を提供する。
【解決手段】照明光に対し透過性を持たない非透光性液体を充填した透明容器と、透明容器を回転自在に支持する載置台と、前記透明容器を照明する照明手段と、前記透明容器を撮像するカメラとを備えた異物検査装置を用いて透明容器中の非透光性液体中の異物を自動的に検出する異物検査装置および異物検査方法において、載置台を回転させて透明容器中の非透光性液体に遠心力を与え、非透光性液体中に含有された異物を非透光性液体から分離した後に前記カメラで撮像して異物を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物自動検査装置を用いてアンプル、バイアル等の透明容器中に充填された液体中の異物を検査する異物検査装置およびこれを用いた異物検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、透明容器中に充填された液体中の異物を検査する場合、特許文献1に示すような検査装置を用いて、検査ロータの円周上に設けた載置台に透光性液体を充填した透明容器を載置保持し、載置台と透明容器を回転させてその後停止させ、カメラ、センサ等で透明容器内の慣性回転する液体中に浮遊する異物を検出していた。また、特許文献2に示すように、透明容器の充填液に対し透過光を用いて主に黒色系異物を検出し、反射光を用いて主に白色系異物を検出していた。これらの異物検査装置はいずれも照明光に対し透光性のある液体に対して有効であるが、照明光に対し透光性の無い非透光性液体に対しては殆ど効果が期待できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-107011号公報
【特許文献2】特開2003-107010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、照明光に対し透光性が無いか或いは透光性の非常に低い非透光性液体を透明容器に充填した場合でも、液体中の異物を確実に検出することができる新規な異物検査装置および異物検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、照明光に対し透過性を持たない非透光性液体を充填した透明容器と、該透明容器を駆動モータにより回転自在に支持する載置台と、前記載置台を同心円上に複数個配置して搬送する検査ロータ及び検査ロータを駆動する駆動モータと、前記透明容器を照明する照明手段と、前記透明容器を撮像するカメラとを備え、透明容器に充填された非透光性液体中の異物を自動的に検出する異物検査装置において、前記載置台を回転させる駆動モータに前記透明容器の非透光性液体に含有された異物を非透光性液体から分離する遠心力を与える制御装置を設け、非透光性液体中に含有された異物を非透光性液体から分離し、非透光性液体から分離された異物を前記カメラで撮像して異物を検出することを特徴とする。
【0006】
また、照明光に対し透過性を持たない非透光性液体を充填した透明容器と、該透明容器を駆動モータにより回転自在に支持する載置台と、前記載置台を同心円上に複数個配置して搬送する検査ロータ及び検査ロータを駆動する駆動モータと、前記透明容器を照明する照明手段と、前記透明容器を撮像するカメラとを備え、透明容器に充填された非透光性液体中の異物を自動的に検出する異物検査装置において、
前記検査ロータを回転させる駆動モータに前記透明容器の非透光性液体に含有された異物を非透光性液体から分離する遠心力を与える制御装置を設け、非透光性液体中に含有された異物を非透光性液体から分離し、非透光性液体から分離された異物を前記カメラで撮像して異物を検出することを特徴とする。
【0007】
また、透明容器側面に分離した前記非透光性液体より比重の高い異物を撮像するカメラを前記検査ロータの外周に設け、透明容器の前記非透光性液体表面に分離した前記非透光性液体より比重の低い異物を撮像するカメラを前記検査ロータの内周に設けたことを特徴とする。
【0008】
また、前記制御装置は、所定の回転パターンを有する検査モード設定部と、前記載置台駆動モータまたは検査ロータ駆動モータに所定の回転パターンに対応した駆動パターン情報を与えるモータ制御部とを有することを特徴とする。
【0009】
さらに、照明光に対し透過性を持たない非透光性液体を充填した透明容器と、透明容器を回転自在に支持する載置台と、前記載置台を同心円上に複数個配置して搬送する検査ロータ及び検査ロータを駆動する駆動モータと、前記透明容器を照明する照明手段と、前記透明容器を撮像するカメラとを備えた異物検査装置を用いて透明容器に充填された非透光性液体中の異物を自動的に検出する異物検査方法において、前記載置台を回転させて前記非透光性液体に含有された異物を非透光性液体から分離する遠心力を与えて非透光性液体中に含有された異物を非透光性液体から分離し、非透光性液体から分離された異物を前記カメラで撮像して異物を検出することを特徴とする。
【0010】
また、照明光に対し透過性を持たない非透光性液体を充填した透明容器と、透明容器を回転自在に支持する載置台と、前記載置台を同心円上に複数個配置して搬送する検査ロータ及び検査ロータを駆動する駆動モータと、前記透明容器を照明する照明手段と、前記透明容器を撮像するカメラとを備えた異物検査装置を用いて透明容器に充填された非透光性液体中の異物を自動的に検出する異物検査方法において、前記検査ロータを回転させて前記非透光性液体に含有された異物を非透光性液体から分離する遠心力を与えて非透光性液体中に含有された異物を非透光性液体から分離し、前記載置台を回転させて非透光性液体から分離された異物を前記カメラで撮像して異物を検出することを特徴とする。
【0011】
また、前記非透光性液体より比重の高い異物を透明容器側面に分離し、前記非透光性液体より比重の低い異物を前記非透光性液体表面に分離し、前記カメラで撮像して異物を検出することを特徴とする。
【0012】
また、前記載置台の回転に同期して、容器全周を複数回に分けて前記カメラで撮像して異物を検出することを特徴とする。
【0013】
また、前記透明容器を支持する載置台に複数の回転パターンを与えて各回転パターンに応じた異なる画像を撮像し、これら異なる画像の差分から異物を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、照明光に対し透光性を持たない非透光性液体を充填した透明容器と、透明容器を回転自在に支持する載置台と、透明容器を照明する照明手段と、カメラとを備えた異物検査装置を用いて透明容器中の異物を自動的に検出する異物検査装置及び異物検査方法において、前記透明容器中の異物を非透光性液体から分離する遠心力を与えて、非透光性液体から確実に分離された異物をカメラで撮像することにより、照明光に対し透光性を持たない非透光性液体を充填した透明容器においても、確実に異物を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の基本構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例1の載置台の構成を示す模式図である。
【図3】本発明の実施例1の異物検査画像を示す説明図である。
【図4】本発明の実施例1の異物検査装置の構成を示す模式図である。
【図5】本発明の実施例2の異物検査方法を示す模式図である。
【図6】本発明の実施例2の異物検査原理を示す模式図である。
【図7】本発明の実施例2の検査パターンを示す模式図である。
【図8】本発明の実施例2の異物検査画像を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施例について図を用いて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の基本構成を説明する模式図である。検査ロータ1の円周上に複数の載置台2を設け、搬入ライン3から搬入ロータ4を介して搬入される複数の透明容器5を回転自在の載置台2に載置保持する。所定の非透光性液体を充填した透明容器5はカメラ6および照明手段7により異物を検査されたあと、搬出ロータ8で搬出ライン9に搬出される。また、異物が検出された透明容器5は廃棄ライン10に排出される。
【0018】
カメラ6により撮像された異物画像を含む画像は画像処理部11で処理され、透明容器5の選別処理のために使用される。載置台2の駆動モータ用の回転パターンを設定する検査モード設定部12により、必要な回転パターンのパターン情報がモータ制御部13に送られる。モータ制御部13は検査ロータ1の回転軸に設けられた角度検出器14の角度情報と回転パターン情報により、載置台2に設けられた駆動モータをスリップリング15を介して制御する。
【0019】
図2に示すように、載置台2は上部に保持部20、下部に駆動モータ21を有し、非透光性液体Lを充填した透明容器5を回転自在に保持する。22は駆動モータ21の角度検出器である。23は透明容器5の表面を照射する一対の照明手段であり、24は透明容器5を反射光を用いて撮像するカメラである。モータ制御部13は各種回転パターンに対応するパターン情報に対応した駆動信号を載置台2の駆動モータ21に送り所定パターンで駆動モータ21を駆動する。次いで撮像ステーションにおいて照明手段23により照明を与えて透明容器5をカメラ24で撮像する。
【0020】
図2に示すように、載置台2を高速回転させて透明容器5内の非透光性液体Lを高速回転させ、異物の分離に十分な遠心力を発生させると、非透光性液体より比重の高い異物Fは透明容器5の側面に分離され浮き出てくる。その後、載置台2及び透明容器5の回転に同期させて透明容器5の全周を所定角度45度毎に複数回カメラ24で撮像することによって、図3の説明図に示すように、透明容器5の側面に分離された非透光性液体L中の異物Fを確実に検出することができる。透明容器がガラス製の場合には、最も多い異物は製造工程又は洗浄再生工程で混入したガラス破片でありこれを確実に検出することができる。このほか、製造工程で混入するプラスチック、金属などの異物が分離される。透明容器は分離された異物を撮像できるものであれば、半透明材料を用いることもできる。
【0021】
異物分離に必要な遠心力は、非透光性液体及び想定される異物の比重、透明容器の直径から算出できる。これを予め検査モード設定部12に回転パターンとして与えておく。前述した画像処理部11、検査モード設定部12、モータ制御部13は、例えばマイコン上で作動するソフトウェア等の単一の制御装置として構成することができる。
【実施例2】
【0022】
図4、図5は本発明の実施例2を示す模式図である。複数の載置台2を有する検査ロータ1の内周に照明手段30及びカメラ31からなる撮像ユニットが設けられ、検査ロータ1の外周にも同じく照明手段32及びカメラ33からなる撮像ユニットが設けられている。ここで検査ロータ1を駆動モータ34により所定速度で回転させると、載置台2及び透明容器5に検査ロータ1の回転による遠心力が生じ、透明容器5中の非透光性液体Lは透明容器5の一方の側面に向かって押し付けられ、図5に示す液体表面が傾斜した状態となる。このとき、図6に示すように、異物のうち非透光性液体より比重の低い異物F1は傾斜した非透光性液体Lの表面に浮き上がるように分離され、非透光性液体Lより比重の高い異物F2は透明容器5の底部周辺に分離される。検査ロータ1内周のカメラ31は非透光性液体Lより比重の低い異物を検出し、検査ロータ1外周のカメラ33は液体より比重の高い異物を検出する。従って、非透光性液体より比重の低い異物があった場合でも確実にこれを検出することができる。
【0023】
実施例1においても、載置台2を高速回転させた場合に比重の低い異物は液体表面に分離されるが、容器キャップ等の存在により上方からの撮像が難しく、従って実施例2が実用上有効となる。
【実施例3】
【0024】
実施例1、2のように異物を検出する場合において、透明容器5自体に傷がある場合は画像の上では異物と区別できない。従って何らかの方法で撮像画像から透明容器自体の傷に起因する画像を切り分ける必要がある。透明容器5上の傷はいかなる場合にも透明容器の所定の箇所から移動しないのに対し、異物は液体の回転に伴って撮像の都度その位置が移動する。
【0025】
図7に回転パターンに応じた透明容器中の液体の状況と、撮像タイミングとの関係を示す。図7(b)に示す回転パターンで載置台2およびこれに載置された透明容器5を駆動し、第1回目スピンでのタイミング(ア)〜(エ)および、第2回目スピンでのタイミング(カ)〜(ケ)で撮像すると、図7(a)に示す画像が撮像される。従って、例えば図7(b)に示すように1回目の撮像と2回目の撮像の間に休止時間をおく回転パターンを与えれば、1回目のスピンと2回目のスピンで異物の出現位置が変わり、図8に示すように透明容器5の所定位置から移動した異物画像を異物Fとして認識することができる。すなわち、同一角度における画像の比較により異物の検出が可能となり、容器の傷などの外的要因をキャンセルすることができる。各スピンの撮像は同一のカメラで行ってもよく、別々のカメラで行ってもよい。
【0026】
異物検出は図8のように撮像ごとに異物位置が異なっている場合のほか、異物画像が消滅したり現れたりする場合にも非透光性液体中の異物の存在を検出することができる。
【0027】
以上、本発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0028】
1:検査ロータ、2:載置台、5:透明容器、11:画像処理部、12:検査モード設定部、13:モータ制御部、21、34:駆動モータ、23、30、32:照明手段、24、31、33:カメラ、L:非透光性液体、F:異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光に対し透過性を持たない非透光性液体を充填した透明容器と、該透明容器を駆動モータにより回転自在に支持する載置台と、前記載置台を同心円上に複数個配置して搬送する検査ロータ及び検査ロータを駆動する駆動モータと、前記透明容器を照明する照明手段と、前記透明容器を撮像するカメラとを備え、透明容器に充填された非透光性液体中の異物を自動的に検出する異物検査装置において、
前記載置台を回転させる駆動モータに前記透明容器の非透光性液体に含有された異物を非透光性液体から分離する遠心力を与える制御装置を設け、非透光性液体中に含有された異物を非透光性液体から分離し、非透光性液体から分離された異物を前記カメラで撮像して異物を検出することを特徴とする異物検査装置。
【請求項2】
照明光に対し透過性を持たない非透光性液体を充填した透明容器と、該透明容器を駆動モータにより回転自在に支持する載置台と、前記載置台を同心円上に複数個配置して搬送する検査ロータ及び検査ロータを駆動する駆動モータと、前記透明容器を照明する照明手段と、前記透明容器を撮像するカメラとを備え、透明容器に充填された非透光性液体中の異物を自動的に検出する異物検査装置において、
前記検査ロータを回転させる駆動モータに前記透明容器の非透光性液体に含有された異物を非透光性液体から分離する遠心力を与える制御装置を設け、非透光性液体中に含有された異物を非透光性液体から分離し、非透光性液体から分離された異物を前記カメラで撮像して異物を検出することを特徴とする異物検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載された異物検査装置において、透明容器側面に分離した前記非透光性液体より比重の高い異物を撮像するカメラを前記検査ロータの外周に設け、透明容器の前記非透光性液体表面に分離した前記非透光性液体より比重の低い異物を撮像するカメラを前記検査ロータの内周に設けたことを特徴とする異物検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載された異物検査装置において、前記制御装置は、所定の回転パターンを有する検査モード設定部と、前記載置台駆動モータまたは検査ロータ駆動モータに所定の回転パターンに対応した駆動パターン情報を与えるモータ制御部とを有することを特徴とする異物検査装置。
【請求項5】
照明光に対し透過性を持たない非透光性液体を充填した透明容器と、透明容器を回転自在に支持する載置台と、前記載置台を同心円上に複数個配置して搬送する検査ロータ及び検査ロータを駆動する駆動モータと、前記透明容器を照明する照明手段と、前記透明容器を撮像するカメラとを備えた異物検査装置を用いて透明容器に充填された非透光性液体中の異物を自動的に検出する異物検査方法において、
前記載置台を回転させて前記非透光性液体に含有された異物を非透光性液体から分離する遠心力を与えて非透光性液体中に含有された異物を非透光性液体から分離し、非透光性液体から分離された異物を前記カメラで撮像して異物を検出することを特徴とする異物検査方法。
【請求項6】
照明光に対し透過性を持たない非透光性液体を充填した透明容器と、透明容器を回転自在に支持する載置台と、前記載置台を同心円上に複数個配置して搬送する検査ロータ及び検査ロータを駆動する駆動モータと、前記透明容器を照明する照明手段と、前記透明容器を撮像するカメラとを備えた異物検査装置を用いて透明容器に充填された非透光性液体中の異物を自動的に検出する異物検査方法において、
前記検査ロータを回転させて前記非透光性液体に含有された異物を非透光性液体から分離する遠心力を与えて非透光性液体中に含有された異物を非透光性液体から分離し、前記載置台を回転させて非透光性液体から分離された異物を前記カメラで撮像して異物を検出することを特徴とする異物検査方法。
【請求項7】
請求項6に記載された異物検査方法において、前記非透光性液体より比重の高い異物を透明容器側面に分離し、前記カメラで撮像して異物を検出することを特徴とする異物検査方法。
【請求項8】
請求項6に記載された異物検査方法において、前記非透光性液体より比重の低い異物を前記非透光性液体表面に分離し、前記カメラで撮像して異物を検出することを特徴とする異物検査方法。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれか1項に記載された異物検査方法において、前記載置台の回転に同期して、容器全周を複数回に分けて前記カメラで撮像して異物を検出することを特徴とする異物検査方法。
【請求項10】
請求項5乃至9のいずれか1項に記載された異物検査方法において、前記透明容器を支持する載置台に複数の回転パターンを与えて各回転パターンに応じた異なる画像を撮像し、これら異なる画像の差分から異物を検出することを特徴とする異物検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−181231(P2010−181231A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23900(P2009−23900)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】