説明

不連続プライマ−伸長による核酸反復配列の長さ決定

【課題】核酸反復配列の反復領域を形成する反復単位の数を決定するための正確かつ再現可能な方法を提供すること。
【解決手段】標的核酸の反復領域における反復単位の数を決定するための方法が開示される。この方法は、不連続プライマー反応を包含し、ここでプライマーは、単一反復単位に対応する個々の増加において伸長される。プライマー伸長の各々の増加の後、検出工程が行われ、プライマーが反復領域の長さの合計に等しい量まで伸長された場合に、シグナルにおける変調が検出される。シグナルの変調を引き起こすのに必要とされる個々のプライマー伸長の増加の数を計数することにより、反復領域を作る反復単位の数が決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、核酸反復配列の長さを決定するために有用な方法およびキットに関する。より詳細には、本発明は、不連続なプライマー伸長反応を利用することによって核酸反復配列の長さを決定するために有用な方法およびキットに関する。
【0002】
(参考文献)
【0003】
【表1】


【背景技術】
【0004】
(背景)
遺伝的多型性の分析のための方法は、基礎研究、臨床診断、法医学、および他の領域において広範な用途を見出してきた。遺伝的多型性を検出する1つの特に有用な方法は、反復配列の長さのバリエーションに基づき、このような方法は、短いタンデムリピート分析(STR)、タンデムリピート分析の変動数(VNTR)、ミニサテライト分析、およびミクロサテライト分析と様々にいわれる。
【0005】
核酸反復配列における多型長の検出は、今日まで、反復配列の長さの測定のためのゲル電気泳動に依存してきた。しかし、ゲル電気泳動は、反復配列多型長分析の文脈において、いくつかの重要な欠点を有する。第1に、電気泳動の移動度に基づく分子長測定は、分子のサイズと電気泳動上の移動度との間の複雑な関係に起因して、本質的に不正確である。第2に、電気泳動プロセスが多重化され得る程度は、電気泳動のレーンの数および単一のレーン中で泳動される異なる遺伝子座のサイズ(すなわち、電気泳動的に同時に移動しない遺伝子座が選択されなければならない)によって限定される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
本発明の方法は、不連続なプライマー伸長反応を包含し、ここでプライマーは、個別の増加で伸長され、その結果、プライマー伸長の各増加において、単一の反復単位に対応する量でプライマーが伸長される。個別のプライマー伸長の各増加の後に、検出工程が行われ、ここでは、プライマーが反復領域の全長に等しい量で伸長された場合に、シグナルの変調が検出される。従って、シグナルの変調を引き起こすために必要とされる個別のプライマー伸長の増加の数を計数することによって、反復領域を形成する反復単位の数が決定される。
【0007】
本発明の目的は、核酸反復配列の反復領域を形成する反復単位の数を決定するための正確かつ再現可能な方法を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、並行して多数の測定を行い得る、核酸反復配列の反復領域を形成する反復単位の数を決定するための方法を提供することである。
【0009】
本発明のなおさらなる目的は、電気泳動による分離を必要としない、核酸反復配列の反復領域を形成する反復単位の数を決定するための方法を提供することである。
【0010】
本発明の目的は、上記の特性を有する核酸反復配列の反復領域を形成する反復単位の数を決定するための方法を実施するために有用なキットおよび試薬を提供することである。
【0011】
第1の局面において、前述のおよび他の本発明の目的は、標的核酸の反復領域中の反復単位の数を決定するための方法によって達成され、上記の方法は以下の工程を包含する:標的核酸のプライマー相補部分をプライマーにアニールする工程であって、それによって標的−プライマーハイブリッドを形成する工程;第1のプライマー伸長反応を、第1のプライマー伸長試薬を用いて行う工程;上記標的−プライマーハイブリッドと未反応の第1のプライマー伸長試薬とを分離する工程;第2のプライマー伸長反応を、第2のプライマー伸長試薬を用いて行う工程であって、ここで少なくとも1つの上記第1または第2のプライマー伸長試薬のうち少なくとも1つは、それらに付着した標識を有する伸長性ヌクレオチドを含む、工程;上記標的−プライマーハイブリッドを未反応の第2のプライマー伸長試薬から分離する工程;上記標識により生成されるシグナルを測定する工程;上記標識を検出不可能にするために、上記標識を処理する工程;および、上記シグナルが、以前のサイクルにおいて検出されたシグナルより実質的に少なくなるまで、上記の工程を繰り返す工程。
【0012】
本発明の第1の局面の1つの好ましい実施形態において、第2のプライマー伸長反応を行う工程が、上記標的−プライマーハイブリッドをプライマー停止試薬と反応させる工程をさらに包含する。
【0013】
本発明の第1の局面の別の好ましい実施形態において、上記標識は、蛍光分子または化学発光分子である。
【0014】
本発明の第1の局面の別の好ましい実施形態において、上記標識は、切断可能なリンカーを介して伸長性ヌクレオチドに付着される。
【0015】
本発明の第1の局面のさらなる好ましい実施形態において、上記標的核酸は、分析の前に増幅される。好ましくは、このような増幅はPCRを用いて達成される。
【0016】
本発明の第1の局面の別の好ましい実施形態において、標識を検出不可能にするために上記標識を処理する工程は、標識伸長性ヌクレオチドから上記標識を切断する工程、または上記標識のシグナル生成特性を破壊する工程のいずれかを包含する。
【0017】
本発明の第1の局面の別の好ましい実施形態において、上記標的−プライマーハイブリッドは、固体支持体に付着される。好ましくは、上記プライマーまたは上記標的核酸の一方が固体支持体に付着される。
【0018】
固体支持体を利用する、新規な、好ましい実施形態において、本発明は、標的核酸の反復領域中の反復単位の数を決定するための方法を包含し、上記方法は以下の工程を包含する:
(A)複数の異なる配列プライマーを、ポリヌクレオチドサンプルと、1つ以上の標的ポリヌクレオチド中のプライマー相補領域に上記プライマーをアニールするのに有効な条件下で接触させて、1つ以上の標的−プライマーハイブリッドを形成する工程であって、ここで(1)各異なる配列プライマーが、(i)標的結合セグメント、および(ii)上記標的結合セグメントのみを同定する核酸配列を有するタグセグメントを含むか、または(2)上記サンプル中の1つ以上のポリヌクレオチドが、付着したヌクレオチドのみを同定するヌクレオチド配列を有するタグセグメントを含むタグ化ポリヌクレオチドであるかのいずれかである、工程、
(B)第1のプライマー伸長反応を、第1のプライマー伸長試薬を用いて上記ハイブリッド上で行う工程;
(C)上記標的−プライマーハイブリッドを、未反応の第1のプライマー伸長試薬から分離する工程;
(D)第2のプライマー伸長反応を、第2のプライマー伸長試薬を用いて、該ハイブリッド上で行う工程であって、ここで上記第1または第2のプライマー伸長試薬のうちの少なくとも1つは、付着した標識を有する伸長性ヌクレオチドを含む、工程;
(E)上記標的−プライマーハイブリッドを未反応の第2のプライマー伸長試薬から分離する工程;
(F)上記標識により生成されるシグナルを測定する工程;
(G)上記標識を検出不可能にするために、上記標識を処理する工程;および
(H)上記標的−プライマーハイブリッドにおいて検出される上記シグナルが、以前のサイクルにおいて検出されたシグナルより実質的に少なくなるまで、工程(A)〜(G)のサイクルを繰り返す工程、
ここで、
(I)工程(F)の前に、(1)上記異なる配列プライマー、または(2)上記タグ化サンプルポリヌクレオチドのいずれかの少なくとも1つのアリコートを、固定化された、異なるタグ相補体のアドレス可能なアレイと、上記タグセグメントを支持体上の対応するタグ相補体にハイブリダイズするのに有効な条件下で接触させる工程であって、ここで上記異なるタグ相補体の各々は、上記タグセグメントの1つに相補的である配列を含む、工程。
【0019】
1つの実施形態において、上記工程(I)の接触させる工程は、工程(A)の前に行われる。別の実施形態において、上記工程(I)の接触させる工程は、工程(A)の後に、そして/または工程(B)(C)(D)(E)および(F)のいずれか1つの前に行われる。なお別の実施形態において、工程(A)〜(H)は、少なくとも2つの複製アレイ上で行われ、そして上記複製アレイの1つは、第2の複製アレイよりも少なくとも1回多い、工程(A)〜(G)のサイクルに供される。
【0020】
第2の局面において、前述のおよび他の本発明の目的は、標的核酸の反復領域中の反復単位の数を決定するための方法によって達成され、上記の方法は以下の工程を包含する:標的核酸のプライマー相補部分をプライマーにアニールする工程であって、それによって標的−プライマーハイブリッドを形成する工程;第1のプライマー伸長反応を、第1のプライマー伸長試薬を用いて行う工程;上記標的−プライマーハイブリッドと未反応の第1のプライマー伸長試薬とを分離する工程; 第2のプライマー伸長反応を、第2のプライマー伸長試薬を用いて、かつプライマー停止試薬と共に行う工程であって、ここで上記プライマー停止試薬は、それらに付着した標識を有するヌクレオチドターミネーターを含む、工程;上記標的−プライマーハイブリッドを、未反応の第2のプライマー伸長試薬および未反応のプライマー停止試薬から分離する工程;上記標識により生成されるシグナルを測定する工程;およびシグナルが検出されるまで、工程(A)〜(F)のサイクルを反復して、上記ヌクレオチドターミネーターのプライマー伸長産物への取り込みを示す工程。
【0021】
本発明の第2の局面のなお別の好ましい実施形態において、上記標識は、蛍光分子および化学発光分子からなる群より選択される。
【0022】
本発明の第2の局面のさらなる好ましい実施形態において、上記標的核酸は、分析の前に増幅される。好ましくは、このような増幅はPCRを用いて達成される。
【0023】
本発明の第2の局面の別の好ましい実施形態において、上記標的−プライマーハイブリッドは、固体支持体に付着される。好ましくは、上記プライマーまたは上記標的核酸の一方が固体支持体に付着される。
【0024】
新規な、好ましい実施形態において、本発明は、標的核酸の反復領域中の反復単位の数を決定するための方法を包含し、上記方法は以下の工程を包含する:
(A)複数の異なる配列プライマーを、ポリヌクレオチドサンプルと、1つ以上の標的ポリヌクレオチド中のプライマー相補領域に前記プライマーをアニールするのに有効な条件下で接触させて、1つ以上の標的−プライマーハイブリッドを形成する工程であって、ここで(1)各異なる配列プライマーは、(i)標的結合セグメント、および(ii)上記標的結合セグメントのみを同定するヌクレオチド配列を有するタグセグメントを含むか、または(2)上記サンプル中の1つ以上のポリヌクレオチドは、付着したヌクレオチドのみを同定するヌクレオチド配列を有するタグセグメントを含む、タグ化ポリヌクレオチドである、工程、
(B)第1のプライマー伸長反応を、第1のプライマー伸長試薬を用いて上記ハイブリッド上で行う工程;
(C)上記標的−プライマーハイブリッドを、未反応の第1のプライマー伸長試薬から分離する工程;
(D)第2のプライマー伸長反応を、第2のプライマー伸長試薬とプライマー停止試薬とを用いて、上記ハイブリッド上で行う工程であって、ここで上記プライマー停止試薬は、付着した標識を有するヌクレオチドターミネーターを含む、工程;
(E)上記標的−プライマーハイブリッドを、未反応の第2のプライマー伸長試薬および未反応プライマー停止試薬から分離する工程;
(F)上記標識により生成されるシグナルを測定する工程;および
(G)上記ヌクレオチドターミネーターの取り込みを示すシグナルが検出されるまで、工程(A)〜(F)のサイクルを繰り返す、工程、
ここで、
(H)工程(F)の前に、(1)上記異なる配列プライマー、または(2)上記タグ化サンプルポリヌクレオチドのいずれかの少なくとも1つのアリコートを、固定化された、異なるタグ相補体のアドレス可能なアレイと、上記タグセグメントを支持体上の対応するタグ相補体にハイブリダイズするのに有効な条件下で接触させる工程であって、ここで異なるタグ相補体の各々は、上記タグセグメントの1つに相補的である配列を含む、工程。
【0025】
1つの実施形態において、上記工程(H)の接触させる工程は、工程(A)の前に行われる。別の実施形態において、上記工程(H)の接触させる工程は、工程(A)の後に、そして/または工程(B)(C)(D)(E)および(F)のいずれか1つの前に行われる。なお別の実施形態において、工程(A)〜(G)は、少なくとも2つの複製アレイ上で行われ、そして上記複製アレイの1つは、第2の複製アレイよりも少なくとも1回多い、工程(A)〜(F)のサイクルに供される。
【0026】
第3の局面において、前述のおよび他の本発明の目的は、標的核酸の反復領域中の反復単位の数を決定するために有用なキットによって達成され、このキットは以下:標的核酸のプライマー相補部分に相補的な配列を有するプライマー;第1のプライマー伸長試薬;および第2のプライマー伸長試薬を含み、ここで、第1または第2のプライマー伸長試薬の少なくとも1つが、それらに付着した標識を有する伸長性ヌクレオチドを含む、第2のプライマー伸長試薬を含む、キット。
【0027】
本発明の第3の局面の好ましい実施形態において、上記プライマーは固体支持体に付着される。
【0028】
本発明の第2の局面のさらなる好ましい実施形態において、上記標識は、蛍光分子および化学発光分子からなる群より選択される。
【0029】
本発明の第2の局面の別の好ましい実施形態において、上記標識は切断可能なリンカーを介して伸長性ヌクレオチドに付着される。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1) 標的核酸の反復領域中の反復単位の数を決定するための方法であって、該方法は以下の工程:
(A)複数の異なる配列プライマーを、ポリヌクレオチドサンプルと、1つ以上の標的ポリヌクレオチド中のプライマー相補領域に該プライマーをアニールするのに有効な条件下で接触させて、1つ以上の標的−プライマーハイブリッドを形成する工程であって、ここで(1)各異なる配列プライマーは、(i)標的結合セグメントおよび(ii)該標的結合セグメントのみを同定するヌクレオチド配列を有するタグセグメントを含むか、または(2)該サンプル中の1つ以上のポリヌクレオチドは、付着したポリヌクレオチドのみを同定するヌクレオチド配列を有するタグセグメントを含む、タグ化ポリヌクレオチドである、工程、
(B)第1のプライマー伸長反応を、第1のプライマー伸長試薬を用いて、該ハイブリッド上で行う工程;
(C)該標的−プライマーハイブリッドと未反応の第1のプライマー伸長試薬とを分離する工程;
(D)第2のプライマー伸長反応を、第2のプライマー伸長試薬を用いて、該ハイブリッド上で行う工程であって、ここで該第1または第2のプライマー伸長試薬のうちの少なくとも1つは、付着した標識を有する伸長性ヌクレオチドを含む、工程;
(E)該標的−プライマーハイブリッドを未反応の第2のプライマー伸長試薬から分離する工程;
(F)該標識により生成されるシグナルを測定する工程;
(G)該標識を検出不可能にするために、該標識を処理する工程;および
(H)該標的−プライマーハイブリッドにおいて検出される該シグナルが、以前のサイクルにおいて検出されるシグナルより実質的に少なくなるまで、工程(A)〜(G)のサイクルを繰り返す工程、
ここで、
(I)工程(F)の前に、(1)該異なる配列プライマー、または(2)該タグ化サンプルポリヌクレオチドのいずれかの少なくとも1つのアリコートを、固定化された、異なるタグ相補体のアドレス可能なアレイと、該タグセグメントを支持体上の対応するタグ相補体にハイブリダイズするのに有効な条件下で接触させる工程であって、ここで該異なるタグ相補体の各々は、該タグセグメントの1つに相補的である配列を含む工程、
を包含する、方法。
(項目2) 項目1に記載の方法であって、ここで前記工程(D)が、前記標的−プライマーハイブリッドをプライマー停止試薬と反応させる工程をさらに包含する、方法。
(項目3) 項目1に記載の方法であって、ここで前記異なる配列プライマーの各々が、(i)標的結合セグメント、および(ii)該標的結合セグメントのみを同定するヌクレオチド配列を有するタグセグメントを含む、方法。
(項目4) 項目3に記載の方法であって、ここで前記工程(I)の接触させる工程が、工程(A)の前に行われる、方法。
(項目5) 項目3に記載の方法であって、前記工程(I)の接触させる工程が、工程(A)の後に行われる、方法。
(項目6) 項目3に記載の方法であって、ここで該方法は、少なくとも2つの複製アレイ上で行われ、そして該複製アレイの1つは、第2の複製アレイよりも少なくとも1回多い、工程(A)〜(G)のサイクルに供される、方法。
(項目7) 項目1に記載の方法であって、前記サンプル中の1つ以上のポリヌクレオチドが、前記付着したポリヌクレオチドのみを同定するヌクレオチド配列を有するタグセグメントを含む、タグ化ポリヌクレオチドである、方法。
(項目8) 項目7に記載の方法であって、ここで前記工程(I)の接触させる工程が、工程(A)の前に行われる、方法。
(項目9) 項目7に記載の方法であって、ここで前記工程(I)の接触させる工程が、工程(A)の後に行われる、方法。
(項目10) 項目7に記載の方法であって、ここで該方法は、少なくとも2つの複製アレイ上で行われ、そして該複製アレイの1つは、第2の複製アレイよりも少なくとも1回多い、工程(A)〜(G)のサイクルに供される、方法。
(項目11) 項目1に記載の方法であって、ここで前記標識が、蛍光分子および化学発光分子からなる群より選択される、方法。
(項目12) 項目1に記載の方法であって、ここで前記標識が、切断可能なリンカーを介して伸長性ヌクレオチドに付着される、方法。
(項目13) 項目1に記載の方法であって、ここで前記標的核酸が、分析の前に増幅される、方法。
(項目14) 項目13に記載の方法であって、ここで前記増幅が、PCRを用いて達成される、方法。
(項目15) 項目1に記載の方法であって、ここで前記標識を検出不可能にするために、該標識を処理する工程が、前記標識伸長性ヌクレオチドから該標識を切断する工程を包含する、方法。
(項目16) 項目1に記載の方法であって、ここで前記標識を検出不可能にするために、該標識を処理する工程が、該標識のシグナル生成特性を破壊する工程を包含する、方法。
(項目17) 標的核酸の反復領域中の反復単位の数を決定するための方法であって、該方法は以下の工程:
(A)複数の異なる配列プライマーを、ポリヌクレオチドサンプルと、1つ以上の標的ポリヌクレオチド中のプライマー相補領域に該プライマーをアニールするのに有効な条件下で接触させて、1つ以上の標的−プライマーハイブリッドを形成する工程であって、ここで(1)各異なる配列プライマーは、(i)標的結合セグメント、および(ii)該標的結合セグメントのみを同定するヌクレオチド配列を有するタグセグメントを含むか、または(2)該サンプル中の1つ以上のポリヌクレオチドは、付着したポリヌクレオチドのみを同定するヌクレオチド配列を有するタグセグメントを含む、タグ化ポリヌクレオチドである、工程、
(B)第1のプライマー伸長反応を、第1のプライマー伸長試薬を用いて該ハイブリッド上で行う工程;
(C)該標的−プライマーハイブリッドを、未反応の第1のプライマー伸長試薬から分離する工程;
(D)第2のプライマー伸長反応を、第2のプライマー伸長試薬とプライマー停止試薬とを用いて、該ハイブリッド上で行う工程であって、ここで該プライマー停止試薬は、付着した標識を有するヌクレオチドターミネーターを含む、工程;(E)該標的−プライマーハイブリッドを、未反応の第2のプライマー伸長試薬および未反応プライマー停止試薬から分離する工程;
(F)該標識により生成されるシグナルを測定する工程;および
(G)該ヌクレオチドターミネーターの取り込みを示すシグナルが検出されるまで、工程(A)〜(F)のサイクルを繰り返す工程、
ここで、
(H)工程(F)の前に、(1)該異なる配列プライマー、または(2)該タグ化サンプルポリヌクレオチドのいずれかの少なくとも1つのアリコートを、固定化された、異なるタグ相補体のアドレス可能なアレイと、該タグセグメントを支持体上の対応するタグ相補体にハイブリダイズするのに有効な条件下で接触させる工程であって、ここで該異なるタグ相補体の各々は、該タグセグメントの1つに相補的である配列を含む、工程、
を包含する、方法。
(項目18) 項目17に記載の方法であって、ここで前記異なる配列プライマーの各々が、(i)標的結合セグメント、および(ii)該標的結合セグメントのみを同定するヌクレオチド配列を有する、タグセグメントを含む、方法。
(項目19) 項目18に記載の方法であって、ここで前記工程(H)の接触させる工程が、工程(A)の前に行われる、方法。
(項目20) 項目18に記載の方法であって、ここで前記工程(H)の接触させる工程が、工程(A)の後に行われる、方法。
(項目21) 項目18に記載の方法であって、ここで該方法は、少なくとも2つの複製アレイ上で行われ、そして該複製アレイの1つは、第2の複製アレイよりも少なくとも1回多い、工程(A)〜(F)のサイクルに供される、方法。
(項目22) 項目17に記載の方法であって、ここで前記サンプル中の1つ以上のポリヌクレオチドが、前記付着したポリヌクレオチドのみを同定するヌクレオチド配列を有するタグセグメントを含む、タグ化ポリヌクレオチドである、方法。
(項目23) 項目22に記載の方法であって、ここで前記工程(H)の接触させる工程が、工程(A)の前に行われる、方法。
(項目24) 項目22に記載の方法であって、ここで前記工程(H)の接触させる工程が、工程(A)の後に行われる、方法。
(項目25) 項目22に記載の方法であって、ここで該方法は、少なくとも2つの複製アレイ上で行われ、そして該複製アレイの1つは、第2の複製アレイよりも少なくとも1回多い、工程(A)〜(F)のサイクルに供される、方法。
(項目26) 項目17に記載の方法であって、ここで前記標識が、蛍光分子および化学発光分子からなる群より選択される、方法。
(項目27) 項目17に記載の方法であって、ここで前記標的核酸が、分析の前に増幅される、方法。
(項目28) 項目27に記載の方法であって、ここで前記増幅が、PCRを用いて達成される、方法。
(項目29) 標的核酸の反復領域中の反復単位の数を決定するために有用なキットであって、該キットは以下:
プライマーの各々が、(i)標的結合セグメント、および(ii)該標的結合セグメントのみを同定するヌクレオチド配列を有する、タグセグメントを含む、複数の異なる配列プライマー、
第1のプライマー伸長試薬;および
該第1または第2のプライマー伸長試薬のうちの少なくとも1つが、付着した標識を有する伸長性ヌクレオチドを含む、第2のプライマー伸長試薬、
を含む、キット。
(項目30) 項目29に記載のキットであって、該キットは、固定化された、異なるタグ相補体のアドレス可能なアレイをさらに含み、ここで該異なるタグ相補体の各々は、該タグセグメントを支持体上の対応するタグ相補体にハイブリダイズするのに有効な条件下で、該プライマータグセグメントの1つに相補的である配列を含む、キット。
(項目31) 項目29に記載のキットであって、ここで前記標識が、蛍光分子および化学発光分子からなる群より選択される、キット。
(項目32) 項目29に記載のキットであって、ここで前記標識が、切断可能なリンカーを介して伸長性ヌクレオチドに付着される、キット。
本発明のこれらおよび他の目的、特徴、および利点は、以下の説明、図面、および添付の請求の範囲を参照してより良好に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、標的核酸の模式図を示す。
【図2A】図2Aは、本発明の方法の第1の局面を示し、ここで伸長可能なヌクレオチドが標識され、そしてその標識は、プライマー伸長の各々の個別の増加に続いて検出不可能にされる。ここで(a)、(b)、および(c)は以下を指す:(a)標識した、伸長可能なヌクレオチドT*を含む第1のプライマー伸長試薬と反応させる。(b)[1]未反応の第1のプライマー伸長試薬を除去する。[2]伸長可能なヌクレオチドGを含む第2のプライマー伸長試薬と反応させる。[3]未反応の第2のプライマー伸長試薬を除去する。[4]T*によって生成されるシグナルを測定する。(c)標識を検出不能にするために処理する。
【図2B】図2Bは、本発明の方法の第1の局面を示し、ここで伸長可能なヌクレオチドが標識され、そしてその標識は、プライマー伸長の各々の個別の増加に続いて検出不可能にされる。ここで(a)、(b)、および(c)は以下を指す:(a)標識した、伸長可能なヌクレオチドT*を含む第1のプライマー伸長試薬と反応させる。(b)[1]未反応の第1のプライマー伸長試薬を除去する。[2]伸長可能なヌクレオチドGを含む第2のプライマー伸長試薬と反応させる。[3]未反応の第2のプライマー伸長試薬を除去する。[4]T*によって生成されるシグナルを測定する。(c)標識を検出不能にするために処理する。
【図2C】図2Cは、本発明の方法の第1の局面を示し、ここで伸長可能なヌクレオチドが標識され、そしてその標識は、プライマー伸長の各々の個別の増加に続いて検出不可能にされる。ここで(a)、(b)、および(c)は以下を指す:(a)標識した、伸長可能なヌクレオチドT*を含む第1のプライマー伸長試薬と反応させる。(b)[1]未反応の第1のプライマー伸長試薬を除去する。[2]伸長可能なヌクレオチドGを含む第2のプライマー伸長試薬と反応させる。[3]未反応の第2のプライマー伸長試薬を除去する。[4]T*によって生成されるシグナルを測定する。(c)標識を検出不能にするために処理する。
【図3A】図3Aは、本発明の方法の第2の局面を示し、ここでヌクレオチドターミネーターが標識される。ここで(a)および(b)は以下を指す:(a)標識した、伸長可能なヌクレオチドT*を含む第1のプライマー伸長試薬と反応させる。(b)[1]未反応の第1のプライマー伸長試薬を除去する。[2]伸長可能なヌクレオチドGを含む第2のプライマー伸長試薬と反応させる。[3]標識したヌクレオチドターミネーターC*を含むプライマー停止試薬と反応させる。[4]未反応の第2のプライマー伸長試薬およびプライマー停止試薬を除去する[5]C*によって生成されるシグナルを測定する。
【図3B】図3Bは、本発明の方法の第2の局面を示し、ここでヌクレオチドターミネーターが標識される。ここで(a)および(b)は以下を指す:(a)標識した、伸長可能なヌクレオチドT*を含む第1のプライマー伸長試薬と反応させる。(b)[1]未反応の第1のプライマー伸長試薬を除去する。[2]伸長可能なヌクレオチドGを含む第2のプライマー伸長試薬と反応させる。[3]標識したヌクレオチドターミネーターC*を含むプライマー停止試薬と反応させる。[4]未反応の第2のプライマー伸長試薬およびプライマー停止試薬を除去する[5]C*によって生成されるシグナルを測定する。
【図4】図4は、並行して複数の異なるサンプルについての配列反復情報を得るためにタグ相補物のアレイを含む固相支持体を使用する、本発明の実施のための例示的なスキームを示す。
【図5】図5は、並行して複数の異なるサンプルについての配列反復情報を得るためにタグ相補物のアレイを含む固相支持体を使用する、本発明の実施のための例示的なスキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
ここで本発明の好ましい実施形態に対して詳細に参照がなされ、その例は添付の図面において例示される。本発明は好ましい実施形態と共に記載されるが、これらの実施形態は、これに本発明を限定することを意図しない。反対に、本発明は、代替物、改変、および等価物を網羅することが意図され、これは、添付の特許請求の範囲によって限定されるような本発明中に含まれ得る。
(定義)
他に言及されない限り、本明細書中で使用される場合、以下の用語および句は、以下の意味を有することが意図される。
【0032】
「ヌクレオシド」とは、1位のペントースに連結された、プリン、デアザプリン、またはピリミジンのヌクレオシド塩基(例えば、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、チミン、デアザアデニン、デアザグアノシンなど)からなる化合物(2’−デオキシ型および2’−ヒドロキシ型を含む)をいう(Stryer)。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「ヌクレオチド」とは、ヌクレオシドのリン酸エステル(例えば、三リン酸エステル)をいい、ここでエステル化の最も一般的な部位は、ペントースのC−5位に結合したヒドロキシル基である。本開示中で何度も、用語ヌクレオシドは、ヌクレオシドとヌクレオチドの両方を含むことを意図する。本明細書中で使用される場合、用語ヌクレオチドおよびヌクレオシドは、例えば、別の箇所で記載されるように(Scheit;Eckstein)、修飾されたヌクレオシド塩基部分、修飾された糖部分、および/または修飾されたリン酸エステル部分を含むことが意図される。
【0034】
「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」とは、ヌクレオチドモノマーの直鎖状ポリマーをいい、一本鎖、二本鎖、および三本鎖のデオキシヌクレオチド、リボヌクレオチド、それらのα−アノマー型などを含む。通常、ヌクレオシドモノマーは、ホスホジエステル連結によって連結され、ここで本明細書中で使用されるように、用語「ホスホジエステル連結(linkage)」とは、ホスホジエステル結合(bond)またはそのリン酸アナログを含む結合をいい、ここでリン原子が、+5の酸化状態にあり、そして1つ以上の酸素原子が非酸素部分で置換される。例示的なリン酸アナログには、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニリデート、ホスホルアミデート、ボロノホスフェートなどが挙げられ、これらは、関連する対イオン(例えば、H+、NH4+、Na+など)が存在する場合には、このような対イオンを含む。あるいは、ポリヌクレオチドは、ホスホジエステル連結または他の連結を通して連結された、非ヌクレオチド性モノマーのポリマーを含み得、これらは、標的核酸(例えば、ペプチド核酸ポリマー(PNA、例えば、Knudsen、1996を参照のこと))と配列特異的なハイブリッドを形成し得る。ポリヌクレオチドは、代表的には、いくつかのモノマー単位(例えば8〜40)〜数千のモノマー単位のサイズの範囲にわたる。他に示されない限り、ポリヌクレオチドが配列の文字(例えば、「ATGCCTG」)によって表される場合には、常に、そのヌクレオチドは、5’→3’の順序で左から右にあること、および「A」がデオキシアデノシンを示し、「C」がデオキシシチジンを示し、「G」がデオキシグアノシンを示し、そして「T」がチミジンを示すことが理解される。
【0035】
「伸長性ヌクレオチド」は、プライマー伸長反応の間にプライマー伸長産物に取り込まれる場合、このようなプライマー伸長産物のさらなる伸長を可能にする任意のヌクレオチドを意味する。例示的な伸長性ヌクレオチドには、2’−デオキシヌクレオチド三リン酸(例えば、2’−デオキシウリジン−5’−三リン酸、2’−デオキシグアノシン−5’−三リン酸、2’−デオキシ−7−デアザデオキシグアノシン−5’−三リン酸、2’−デオキシアデノシン−5’−三リン酸、2’−デオキシチミジン−5’−三リン酸、および2’−デオキシシチジン−5’−三リン酸)が挙げられる。必要に応じて、1種類以上の伸長性ヌクレオチドは標識を含む。
【0036】
「ヌクレオチドターミネーター」は、プライマー伸長産物に取り込まれた場合に、そのようなプライマー伸長産物のさらなる伸長を妨害する任意のヌクレオチドを意味する。ヌクレオチドターミネーターの1つの要件は、そのヌクレオチドターミネーターがリボフラノース糖部分を含む場合に、その3’位は、ポリメラーゼによって引き続いて使用されてさらなるヌクレオチドを取り込み得るヒドロキシル基を有してはならないことである。あるいは、リボフラノースアナログ(例えば、アラビノース)が使用され得る。例示的なヌクレオチドターミネーターには、2’,3’−ジデオキシ−β−D−リボフラノシル、β−D−アラビノフラノシル、3’−デオキシ−β−D−アラビノフラノシル、3’−アミノ−2’,3’−ジデオキシ−β−D−リボフラノシル、および2’3’−ジデオキシ−3’−フルオロ−β−D−リボフラノシル(Chidgeavadze、1984、1985)が挙げられる。ヌクレオチドターミネーターはまた、可逆的なヌクレオチドターミネーター(Metzker)、および3’−デオキシ置換基(例えば、水素、3’−フルオロ、3’−アミノ、および3’−アジド)を含む(Mikhailopuloら、1989;Krayevskiら、1984;Chidgeavadze、1986)。
【0037】
「ポリメラーゼ」は、プライマーまたはプライマー伸長産物が標的核酸にアニールされた場合に、そのようなプライマーまたはプライマー伸長産物の3’−末端に、標的配列依存的なヌクレオチドの取り込みをもたらす反応を触媒し得る酵素または他の触媒を意味する。例示的なポリメラーゼには、Pfu DNAポリメラーゼ、E.coliポリメラーゼ I、T−7ポリメラーゼ、逆転写酵素、Taq DNAポリメラーゼなど(KornbergおよびBaker)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
「標識」は、本発明のヌクレオチドまたはポリヌクレオチドに付着された場合に、公知の検出手段を使用して、検出可能なこのようなヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを与える任意の部分を意味する。標識は、直接標識(それ自体で検出可能である)または間接標識(他の試薬と組み合わせて検出可能である)であり得る。例示的な直接標識には、発蛍光団、発色団、放射性同位元素、スピン標識、化学発光標識などが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な間接標識には、シグナル発生事象を触媒する酵素、および検出可能な抗リガンド(例えば、標識抗体またはアビジン)に高いアフィニティーで特異的に結合し得るリガンド(例えば、抗原またはビオチン)が挙げられる。
【0039】
「プライマー伸長反応」は、プライマーの末端(通常3’−末端)にヌクレオチドの付加を生じ、その結果、付加されたヌクレオチドは標的核酸の対応するヌクレオチドに相補的である、標的−プライマーハイブリッドとヌクレオチドとの間の反応を意味する。
【0040】
「プライマー伸長試薬」は、プライマー伸長反応をもたらすために必要な成分を含む試薬を意味する。プライマー伸長試薬は、代表的には、(i)ポリメラーゼ酵素;(ii)緩衝液;および(iii)1つ以上の伸長性ヌクレオチドを含む。
【0041】
「特異的結合対」とは、互いに特異的に結合して、結合複合体を形成する分子の対をいう。特異的結合対の例には、抗体−抗原(またはハプテン)対、リガンド−レセプター対、酵素−基質対、ビオチン−アビジン対、相補的塩基対を有するポリヌクレオチドなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0042】
「プライマー」は、特定の標的配列に選択的にアニーリングし得るポリヌクレオチドであり、その後プライマー伸長反応の開始点として働き、ここでそのプライマーは、3’→5’および5’→3’方向(代表的には後者)において伸長される。
【0043】
(II本発明の方法において使用される材料)
(A.標的核酸)
本発明における使用のための標的核酸は、原核生物、真核生物、植物、動物、およびウイルスを含むが、これらに限定されない任意の生体またはかつての生体、ならびに合成的な核酸に由来し得る。標的核酸は、いずれかの広範な種々のサンプル型(例えば、細胞核(例えば、ゲノムDNA)および核外核酸(例えば、プラスミド)、ミトコンドリア核酸など)由来であり得る。標的核酸は、DNAまたはRNAを含み得、そして通常はDNAである。
【0044】
多くの方法が、本発明における使用のための標的核酸の単離および精製に利用可能である。好ましい精製方法は、効率的なプライマー伸長および核酸増幅を可能にするためタンパク質が十分に存在しない標的核酸を提供するべきである。好ましい精製方法としては、以下が含まれる:(i)エタノール沈殿前の有機抽出(例えば、フェノール/クロロホルム有機試薬を用いる(Ausubel))、好ましくは自動DNA抽出機(例えば、PE Applied Biosystems(Foster City,CA)から入手可能なModel 341 DNA抽出機)を用いる;(ii)固相吸着法(Walsh,Boom);および(iii)代表的には「塩析」法といわれる方法のような、塩誘導DNA沈殿法(Miller)。最適には、サンプル由来のタンパク質の排除を助けるための酵素消化工程(例えば、プロテイナーゼK、または他のプロテイナーゼなどを用いる消化)が上記の精製方法の各々に先行する。
【0045】
感受性を増大するために、好ましくは、標的核酸を、適切な核酸増幅手順を用いる方法を実行する前に増幅する。このような増幅は、直線的または指数関数的であり得る。好ましい実施形態において、標的核酸の増幅を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Mullis)を用いて行う。一般的に、PCRは、二本鎖核酸サンプルの鎖を分離する最初の変性工程、続いて、以下の反復からなる:(i)増幅プライマーを標的配列の隣接する位置に特異的にアニールさせる、アニーリング工程;(ii)プライマーを5’→3’の方向に伸長し、これにより標的配列に相補的なアンプリコン核酸を形成する、伸長工程、および(iii)このアンプリコンと標的配列との分離を引き起こす変性工程。上記の工程の各々を異なる温度で行ない得る。ここで温度変化は、サーモサイクラー(PE Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いて達成し得る。
【0046】
本発明における使用についての標的核酸の一般化された構造を、図1に示し、ここで、標的核酸5は、プライマー相補部分15、3’隣接部分25、および5’隣接部分と3’隣接部分との間に位置する反復領域20を含む5’隣接部分10を含む。標識核酸の反復領域20は、複数の反復単位(R)n21を含み、ここでRは、反復単位を示し、そしてnは、反復領域を構成する反復単位の数を示す。反復単位Rは、反復モチーフの任意の型(例えば、これらに限定されないが、マイクロサテライト反復(WebberおよびMay;Smeets;Williamson)、ミニサテライト反復(Jeffreys,Caskey)またはα−サテライト反復(Jabs))であり得る。
【0047】
反復領域は、反復単位の複数型または、それら自体の多型である反復単位から構成され得る。
【0048】
(B.プライマー)
本発明における使用のためのプライマーを、プライマーアニーリングの特異性間のバランス(すなわち、所望しない標的配列が、プライマー伸長反応に関与する頻度)、およびプライマー伸長反応の効率(すなわち、所望の標的配列がプライマー伸長反応に関与する程度)を得るために設計する。
【0049】
プライマーアニーリングの特異性は、一般的に、プライマーの長さおよびアニーリング反応の温度によって、制御される。約18塩基と24塩基との間のポリヌクレオチドが好ましい。なぜなら、このようなポリヌクレオチドは、アニーリング温度が、プライマーの融点温度の数度以内に設定される場合、非常に配列特異性である傾向があるからである(Dieffenbach)。プライマー伸長を容易にするために、プライマーの3’末端は、プライマーの3’末端上へのヌクレオチドの取りこみを可能にする−OH基または他の部分を含む。異なる内容物においてプライマー選択を容易にするための多くのコンピュータープログラムが存在する(Osborne;Montpetit)。
【0050】
好ましい実施形態において、プライマーの配列は、プライマーが標識核酸の5’隣接部分のプライマー相補的部分にアニールするように選択される。好ましくは、プライマーは、プライマーの3’末端が、標的核酸の反復領域の5’末端に近接するようにアニールする。しかし、プライマーはまた、少なくとも部分的に、その標的の5’隣接部分に固着(anchor)される限り、標的核酸の反復領域のセグメントにアニールし得る。
【0051】
サンプル識別子タグおよびタグ相補体のアレイを使用する本発明の実施形態に関して、本発明は、目的の標的配列を検出するために複数個の伸長性の異なる配列プライマーを利用する。1つの実施形態において、タグ化プライマーは、標的結合セグメント、タグセグメント、および伸長性プライマー末端(5’または3’)を含む。標的結合セグメントは、選択された標的配列に結合するために選択されるポリヌクレオチド配列を含む。タグセグメントは、独特のポリヌクレオチド配列を含み、この配列は、タグセグメントが付着される標的結合セグメントの同定を可能にする。タグセグメントを、標識結合セグメントの遠位端に直接付着し得るか、または必要に応じて、介在性スペーサー基によりタグセグメントに連結する。別の実施形態において、タグセグメントを、標識結合セグメント内の内部部分に連結する。従って、タグを、サブユニット間の連結基に連結し得るか、または標識結合セグメント内のヌクレオチド塩基に連結し得る。好ましくは、タグは、プライマーの伸長性末端に関しては、遠位である標的結合セグメントの末端に付着する。
【0052】
各々の標的結合セグメントの配列を、好ましくは、プライマーの3’末端が、標的核酸の反復領域の5’末端に近接する(5’から3’の方向への伸長のために)ように、潜在的な多型または変異を含む選択された相補的な標的にハイブリダイズするように選択する。しかし、プライマーはまた、少なくとも部分的に、その標的の5’隣接部分に固着される限り、標的核酸の反復領域のセグメントにアニールし得る。
【0053】
各々のタグ化プライマーにおける標的結合セグメントの長さを、サンプルにおける非標的核酸への有意なクロスハイブリダイゼーションなしに、所望の標的へのプライマーの特異的なハイブリダイゼーションを保証するために選択する。また、プライマーの特異性を増強するために、標的結合セグメントの融点が、互いに数度以内であることが好ましい。好ましくは、標的結合セグメントの融点は、10℃以下、および好ましくは、5℃以下の△Tm範囲(Tmax−Tmin)内に含まれる。これは、例えば、推定プライマー融点についての公知の方法(Breslauer,1986;Rychlik,1989および1990;Wetmur,1991;Osborne,1991;Montpetit,1992)に基づき結合セグメント長の適切な選択により達成され得る。上記のように、約18塩基長と24塩基長との間の標的結合セグメントは、好ましい。
【0054】
各々のタグ化プライマーにおけるタグセグメントを、付着された標的結合セグメントを独特に同定する配列を含むように設計する。従って、タグ配列を、以下を最少化するように選択するべきである:(1)内部の、セルフハイブリダイゼーション、(2)他の同じ配列タグとのハイブリダイゼーション、(3)他の異なる配列タグ相補体とのハイブリダイゼーション、(4)およびサンプルポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーション。また、各々のタグは、プライマーにおける全てのタグについての同じ条件下で、その対応する相補的タグを特異的に認識し、そしてハイブリダイズし得ることが好ましい。
【0055】
タグ配列を、任意の適切な方法により選択し得る。例えば、タグの選択された非クロスハイブリダイゼーションセットについてのコンピューターアルゴリズムは、Brenner(1996)およびShoemaker(1997)において記載される。好ましくは、タグ配列は、伸長性プライマーに関して上記で議論したように、所定の温度範囲内である鎖を有する。好ましくは、上記のいずれかの方法(例えば、Breslauer)を用いて計算されるように、標的結合セグメントの融点は、10℃以下、および好ましくは、5℃以下の△Tm範囲(Tmax−Tmin)内に含まれる。好ましくは、タグセグメントは、相補的タグに対応する特異的なハイブリダイゼーションを容易にするために、少なくとも12塩基長である。代表的には、タグセグメントは、12塩基長〜60塩基長、および代表的には、15塩基長〜30塩基長である。
【0056】
タグおよびタグ相補体は、一本鎖および二本鎖であり得、その結果、配列特異的ハイブリダイゼーションが、WatsonおよびCrick塩基対形成による二重鎖、または正方向または逆方向Hoogsteen結合による三重鎖のいずれかを形成する。特異的なハイブリダイゼーションが、三重鎖形成を介して起こる実施形態において、タグ配列のコードは、二重鎖形成タグについてと同様の原理に従う;しかし、ワード配列の選択におけるさらなる制約がある。一般的に、Hoogsteen型の結合を介する第3の鎖の会合は、二本鎖の標的において、ホモピリミジン−ホモプリントラック(track)によって最も安定である。通常は、塩基トリプレットは、T−A*TまたはC−G*Cモチーフにおいて形成する(ここで「−」は、Watson−Crick塩基対形成を示し、そして「*」は、Hoogsteen型の結合を示す);しかし、他のモチーフもまた、可能である。例えば、Hoogsteen塩基対形成は、第3の鎖(Hoogsteen鎖)と、第3の鎖結合が鎖の状態および組成に依存している二重鎖のプリンリッチ鎖との間の、平行配向および逆平行配向を可能にする。
【0057】
特定の実施形態において所望されるような三重鎖安定性(例えば、Brenner(前出))を最大化またはさもなくば調節するために、適切な配列、配向、状態、ヌクレオチド型(例えば、リボースまたはデオキシリボースヌクレオシドを使用するか否か)、塩基修飾(例えば、メチル化シトシン)などを選択するための刊行物において、広範な手引きがある。より一般的には、一本鎖タグまたは二重鎖タグを一本鎖配列相補体または二重鎖配列相補体にアニーリングするための条件は、周知である(例えば、Brenner(前出)、Jiら(1993)、Cantorら(前出)、Wetmur(1991)、Breslauerら(1986)、Schena(1995)など)。
【0058】
好ましくは、ポリヌクレオチド(例えば、プライマー)を、標準の化学(例えば、ホスホルアミダイト化学(Beaucage))を使用する自動化DNA合成機(例えば、PE Applied Biosystems(Foster City,CA)model 392または394DNA/RNA合成機)で、従来的に合成する。代替的な方法において、プライマーを、生物学的供給源から単離し得る。
【0059】
(C.固相支持体)
本発明の方法の好ましい実施形態において、標的プライマーハイブリッドを、分離工程中に固相支持体に付着させる。このような付着は、標的核酸またはプライマーポリヌクレオチドのいずれかを通してであり得る。
【0060】
本発明による使用のための固相支持体は、広範な種々の形態を有し得、これらには、微粒子、ビーズ、膜、スライド、プレート、マイクロマシーンチップなどが挙げられる。さらに、本発明の固相支持体は、広範な種々の組成物を含み得、これらには、ガラス、プラスチック、シリコン、アルカンチオレート誘導体化金(alkanethiolate−derivatized gold)、GaAs、銅、ゲルマニウム、セルロース、低架橋ポリスチレンおよび高架橋ポリスチレン、架橋ポリアクリルアミドマトリクス、シリカゲル、ポリアミド、ナイロンのような膜、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、またはポリテトラフルオエチレンなどが挙げられる。
【0061】
標的プライマーハイブリッドの付着が、プライマーを通してである場合、プライマーは、合成されたか、または別々に合成され得る固相支持体とともに使用され得、そして方法の分離工程中、または分離工程前の使用のために固相支持体に付着され得る。
【0062】
プライマーを、同じ固相支持体上で合成し、そしてこれと共に使用する場合、このような支持体は、種々の形態を含み得、そして種々の連結部分を含む。このような支持体は、微粒子もしくはプレーナーアレイ、またはプライマーの実質的に均一な集団を有するマトリクスの領域を含み得る。広範な種々の微粒子合成支持体は、本発明により使用され得、制御細孔ガラス(CPG)、高架橋ポリスチレン、アクリル共重合体、セルロース、ナイロン、デキストラン、ラテックス、ポリアクロレインなどで作製された微粒子が挙げられる。微粒子支持体としてはさらに、市販のヌクレオシド誘導CPGおよびポリスチレンビーズ(例えば、Applied Biosystems,Foster City,CAから入手可能);誘導体化磁気ビーズ;ポリエチレングリコールでグラフトしたポリスチレン(例えば、TentaGel,Rapp Polymere,Tubingen Germany);などが挙げられる。支持体特性(例えば、材料、多孔性、大きさ、形状等)の選択、および使用される連結部分の型は、プライマーが使用される条件に依存する。例えば、本発明において、ポリメラーゼ酵素の立体障害を最小化し、そしてヌクレオチド基質への接近を容易にする支持体およびリンカーは好ましい。最も適切な微粒子支持体を選択する際に、考慮されるべき他の重要な因子としては、大きさの均一性、合成支持体としての有効性、表面積が知られている程度、および光学的特性(例えば、クリアースムースビーズは、表面上で多数のビーズを扱う場合、器具使用の利点を提供する)が挙げられる。
【0063】
上記に言及されたように、プライマーはまた、プライマーを用いて均一に被覆された領域のアレイを形成するために単一(またはいくつかの)の固相支持体上で合成され得る。すなわち、このようなアレイにおける各々の領域内で、同じプライマーを合成する。このようなアレイを合成するための技術を、他の箇所で開示する(Pease;Southern)。
【0064】
プライマーが、別々に合成され、そして引き続き使用のために固相支持体に付着される場合、プライマーを、共有結合および非共有結合を通して支持体に付着し得る。プライマーが、非共有結合を通して固相支持体に付着される場合、プライマーは、特定の結合対(例えば、ビオチン)の1つのメンバー、固体支持体に付着される対の他のメンバー(例えば、アビジン)を含む。いくつかの方法は、固体支持体に共有結合するポリヌクレオチドについて利用可能である(例えば、イソチオシアネート官能基化ガラス支持体(Guo)を用いる5’−アミノポリヌクレオチドの反応を通して)。固体支持体上に共有結合または非共有結合のいずれかでプライマーを付着させるための、広範な例示的結合部分を、他の箇所で開示する(Pon;Webb;Barany;Damha;Beattie;MaskosおよびSouthern)。
【0065】
プライマー鋳型ハイブリッドの付着が、鋳型核酸を通して、そして鋳型核酸がPCPアンプリコンである場合、共有的付着または非共有的付着のための手段は、PCRを行うために使用されるPCRプライマーに取り込まれ得る。従って、PCRプライマーは、特定の結合対のメンバー(例えば、ビオチンまたは共有結合を形成するために官能基化固体支持体と反応し得る反応性部分(例えば、イソチオシアネート官能基化ガラス支持体と反応する5’アミノ基))を含み得る。
【0066】
上記のように、本発明はまた、タグ化プライマーにおいてタグ配列に対応する相補体であるタグ相補体のセットを利用する。タグ相補体は、使用者の設計選択に従って、アドレス可能なアレイとして提供される。「アドレス可能なアレイ」は、各々のプライマーの標的結合セグメントの配列が知られるか、またはアレイ上の各々のプライマーのハイブリダイゼーションの位置から決定され得ることを意味する。好ましくは、タグ相補体は、平面上で別々の領域中に固定化され、その結果、各々の別々の領域は、特定の配列を有するタグ相補体のみを含み、そしてその結果、各々の異なる別々の領域でタグ相補体の配列は、知られる。簡便に、タグ相補体を、X座標およびY座標、またはそれの任意の等価物を介して指標付け得る別々のタグ相補的領域の周期的な二次元アレイとして分布させる。タグ相補体を、上記で議論したプライマーの付着についての同様な考慮の後、適切な固相支持体材料に付着し得る。
【0067】
タグ検出のために使用されたアッセイ試薬の量を減少するために、そして多くのフラグメント配列の配列決定を容易にするために、アレイを、好ましくは、100領域/cm2、300領域/cm2、103領域/cm2、3×103領域/cm2、104領域/cm2、105領域/cm2、または106領域/cm2よりも大きいタグ相補体領域密度を有するマイクロアレイとして形成する。さらに、各々のアレイにおける多くの異なる配列タグ相補体は好ましくは、10、20、50、100、200、500、1000、3000、10,000、30,000、100,000、または300,000と同じかまたはこれより多い。
【0068】
(D.標識ヌクレオチド)
本発明の方法において、1つ以上の伸長性ヌクレオチドおよび/またはヌクレオチドターミネーターは、標識を含む。標識がプライマー伸長反応において、標識ヌクレオチドのポリメラーゼ媒介取り込みを実質的に妨害しないような方法で、標識をヌクレオチドに付着させる。多くの代替え方法は、本発明と共に用いるために適切な様式において、標識ヌクレオチドについて利用可能である(Kricka)。標識方法の好ましいクラスにおいて、ヌクレオチドのヌクレオシド塩基を、標識を含むように修飾する(すなわち、プリン塩基のN−6位またはピリミジン塩基のC−5位)。標識ヌクレオチドの特に好ましいクラスは、propagylethoxyaminoヌクレオチドである(Khan)。
【0069】
本発明の1つの好ましい実施形態において、(例えば、適切な試薬または電磁放射線での処置の際に)標識伸長性ヌクレオチドを、検出不可能にし得る。この実施形態において、標識伸長性ヌクレオチドは、ヌクレオチドから標識を除去すること、または標識のシグナル産生特性を破壊することのいずかによって、検出不可能にし得る。
【0070】
いくつかの方法は、標識を容易に除去し得るように、伸長性ヌクレオチドに標識を付着するために利用可能である。ヌクレオチドに標識を結合するための例示的な切断可能なリンカーとしては、(N−[4−(p−アジドサリチルアミド)ブチル]−3’−[2’−ピリジルジチオ]プロピオンアミド)(APDP)、(ビス[2−(サクシンイミドオキシカルボニルオキシル)エチル]スルホン(BSOCOES)、ジサクシンイニミジル酒石酢酸塩(DST)、およびエチレングリコビス−[スクシンイミジルコハク酸塩](EGS)などが挙げられるがこれらに限定されない(Pierceカタログ)。
【0071】
そのシグナル産生特性が適切な試薬または電磁放射線での処置の際に破壊され得る好ましい標識は、蛍光標識を含み、その蛍光特性は、高強度光への曝露を通じて光破壊により、または酸化化学薬品(例えば、酸素、次亜塩素酸ナトリウム、過マンガン酸など)を用いる処置による化学分解により破壊され得る。代替的な、標識の好ましいクラスは、不可逆的酵素インヒビターとの反応または変性により検出不可能にされ得る酵素、および単一光産生変換に耐え得、そしてこのように自動的に崩壊していく化学発光標識を含む。
【0072】
(E.第1のプライマー伸長試薬および第2のプライマー伸長試薬)
本発明は、第1のプライマー伸長試薬および第2のプライマー伸長試薬を含み、本発明の方法に従って使用された場合、プライマーの伸長が単一反復単位の別々の増加を進行することを可能にする(すなわち、プライマーは、別々のプライマー伸長反応サイクルあたり1つの反復単位によってのみ伸長される)。
【0073】
本発明の第1のプライマー伸長試薬は、伸長性ヌクレオチドのセットを含み、プライマー伸長反応をプライマーが完全反復単位よりも少ない量によって伸長される程度にのみ進行することを可能にする。従って、反復単位の特定の配列に依存して、第1のプライマー伸長試薬は、種々の可能性のある伸長性ヌクレオチドの組み合わせを含み得る。例えば、反復単位の配列がAGCTの場合、第1のプライマー伸長試薬は、伸長性ヌクレオチドT(Aに相補的)、TおよびC(AおよびGに相補的)、またはTおよびCおよびG(AおよびGおよびCに相補的)を含み得る。しかし、制御化されない連続的なプライマー伸長を妨げるため、第1のプライマー伸長試薬は、伸長性ヌクレオチドT、C、GおよびAを一緒に含むべきではない。
【0074】
特定の局面において、第1のプライマー伸長試薬を再分割し、副試薬に分離することが所望され、その結果、各々の副試薬は、プライマーのみの伸長を反復配列のサブ部分が形成される程度に可能とするのに十分な伸長性ヌクレオチドを含む。例えば、反復単位が、ATGCCGTである場合、第1のプライマー伸長試薬の1つの副試薬は、伸長性ヌクレオチドT、A、およびCを含み得、一方、第1のプライマー伸長試薬の別の副試薬は、伸長性ヌクレオチドGおよびCを含み得る。
【0075】
本発明の第2のプライマー伸長試薬は、伸長性ヌクレオチドのセットを含み、このヌクレオチドのセットは、プライマー伸長反応を、第1のプライマー伸長試薬により合成されない反復単位の部分が合成される程度にのみ進行させることを可能にする。従って、反復単位の特定の配列および第1のプライマー試薬の組成に依存して、第2のプライマー伸長試薬は、種々の可能性のあるヌクレオチドの組み合わせを含み得る。上記で議論された例に続いて、反復単位の配列がAGCTであり、そして第1のプライマー伸長試薬が伸長性ヌクレオチドTおよびCを含む場合、第2のプライマー伸長試薬が、伸長性ヌクレオチドGおよびAを含み得る。
【0076】
(E.プライマー停止試薬)
本発明は、一旦、プライマー伸長産物が、プライマー停止試薬と反応し、さらなるプライマー伸長を達成し得ないように、プライマー伸長の終結を引き起こすためのプライマー停止試薬を含む。
【0077】
本発明のプライマー停止試薬は、1つ以上のヌクレオチドターミネーターおよび必要に応じて、伸長性ヌクレオチドのセットを含み、これらは、プライマーがプライマー伸長反応中の完全反復単位よりも少ない量で伸長される程度にのみ、プライマー伸長反応を進行することを可能にする。従って、反復単位の特定の配列、標的核酸の3’隣接部分の配列および第1のプライマー伸長試薬および第2のプライマー伸長試薬の組成に依存して、プライマー停止試薬は、種々の可能な伸長性ヌクレオチドおよびヌクレオチドターミネーターの組み合わせを含み得る。例えば、反復単位の配列がAGCTであり、そして3’隣接部分の第1ヌクレオチドがGであり、そして第1のプライマー伸長試薬および第2のプライマー伸長試薬が、伸長性ヌクレオチドT、C、GおよびAを含む場合、プライマー停止試薬は、ヌクレオチドターミネーターC(3’隣接部分に位置するGに相補的であるようなヌクレオチドターミネーター)のみを含む。あるいは、第1のプライマー伸長試薬および第2のプライマー伸長試薬が、伸長性ヌクレオチドTおよびCのみを含む場合、プライマー停止試薬は、伸長性ヌクレオチドGおよびAならびにヌクレオチドターミネーターCを含む。
【0078】
本発明の特定の局面において、プライマー停止試薬は、標識ヌクレオチドターミネーターを含む。ヌクレオチドターミネーターの標識を、D節において上記のように本質的に達成する。
【0079】
(III.方法)
本発明の方法の第1の局面の好ましい実施形態は、図2A〜Cにおいて、概略的に示される。この図において、この方法は、配列「AC」を有する2塩基繰り返しおよび繰り返し領域と隣接するGヌクレオチドを有する3’隣接部分25の2つのコピーから構成された繰り返し領域20を有する標的核酸5に適用される。第1の局面のこの好ましい実施形態において、プライマー200を、標的核酸5のプライマー相補的部分15にアニールして、これにより、標的プライマーハイブリッドを形成する。次いで、標的プライマーハイブリッドを、標識伸長可能ヌクレオチドTを含む第1のプライマー伸長可能試薬と反応させ、プライマー伸長産物210の3’末端への標識化Tヌクレオチド(T*)の取り込みを生じる。第1のプライマー伸長試薬との反応後、第1のプライマー伸長試薬を、標的プライマーハイブリッドから分離し、そして標的プライマーハイブリッドを、伸長可能Gヌクレオチドを含む第2のプライマー伸長試薬と反応させ、プライマー伸長産物215の3’末端へのGヌクレオチドの付加を生じる。次に、未反応の第2のプライマー伸長試薬を、標的プライマーハイブリッドから分離し、そして測定を実行し、プライマー伸長産物に取りこまれた標識化伸長可能ヌクレオチドの量を決定した。図においてヒストグラムにより示されるように、このプロセスにおけるこの点で、大きなシグナルが検出され、このことは、取りこまれた標識化Tヌクレオチドの存在を示す。最終的に、引き続く別々のプライマー伸長反応サイクルのための標識プライマーハイブリッドを調製するために、取り込まれた伸長可能ヌクレオチドに付着した標識は、検出不可能にされる。上記の例において、プロセス工程は、図2Bおよび図2Cにおいて示されるように、2回以上繰り返される。図2Cにおいて示される第3のサイクルにおいて、測定されたシグナルの強度は、最初の2つのサイクルにおいてみられたシグナル強度と比較して実質的に減少される。なぜなら、標識化伸長可能ヌクレオチドTがこの点でプライマー伸長可能産物に取りこまれ得ないからである。従って、第3のサイクルにおいて見られる測定されたシグナルのこの減少は、繰り返し領域が、AC繰り返し単位の2つのコピーのみを含むことを示す。
【0080】
本発明の方法の第2の局面の好ましい実施形態は、図3A〜3Bに示される。前述のように、この方法は、配列「AC」を有する2塩基反復の2コピーから形成される反復領域を有する標的核酸および反復領域に隣接するGヌクレオチドを有する3’隣接領域に適用される。第2の局面の好ましい実施形態において、前述のように、プライマー200は、標的核酸5のプライマー相補性部分にアニールされ、それによって標的−プライマーハイブリッドが形成される。次いで、この標的プライマーハイブリッドは、非標識伸長性ヌクレオチドTを含む第1のプライマー伸長試薬と反応し、プライマー伸長産物310の3’末端に非標識Tヌクレオチドの組み込みを生じる。第1のプライマー伸長試薬との反応後に、第1のプライマー伸長試薬は、標的−プライマーハイブリッドから分離され、そして標的−プライマーハイブリッドは、伸長性Gヌクレオチドを含む第2のプライマー伸長試薬および標識Cヌクレオチドターミネーターを含むプライマー停止試薬と反応され、プライマー伸長産物315の3’末端にG伸長性ヌクレオチドのみの付加を生じる。次いで、未反応の第2のプライマー伸長試薬およびプライマー停止試薬を、標的−プライマーハイブリッドから分離し、そしてプライマー伸長産物に組み込まれた、標識ヌクレオチドターミネーターの量を決定するために測定を行う。図面に示されるように、プロセスにおけるこの時点で、シグナルは検出されず、このことは、標識ヌクレオチドターミネーターがプロセスのこのサイクルの間にプライマー伸長産物に組み込まれないことを示す。図3Bにおいて、上記のプロセスの工程は、繰り返される。図3Bに示されるこの第2のサイクルにおいて、測定されたシグナルの強度は、プロセスの第1の工程でみられた、通常はゼロのシグナル強度と比較して、実質的に増加される。なぜなら、第2の工程の間に、標識ヌクレオチドCターミネーター(C*)は、プライマー伸長産物に組み込まれるからである。
【0081】
以下の議論は、本発明の第1および第2の局面の、上記方法の工程のより詳細な説明を提供する。
【0082】
(A.プライマーアニーリング)
アニーリング反応は、許容可能な速度で安定なハイブリッド形成を可能にする、なお十分に許容する配列特異性を保証するのに十分にストリンジェントである条件下で行われる。プライマーアニーリングに必要とされる温度および時間の長さは、塩基組成、プライマーの長さおよび濃度、ならびに使用される溶媒の性質(例えば、DMSO、ホルムアミド、またはグリセロールのような共溶媒の濃度)、ならびにマグネシウムのような対イオンを含む、いくつかの因子に依存する。代表的には、合成ポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは、アニーリング溶媒中の標的−プライマーハイブリッドの溶解温度の約5〜10℃下の温度で行われる。好ましくは、このアニーリング温度は、55〜75℃の範囲であり、そしてプライマー濃度は、約0.2μMである。これらの好ましい条件下で、アニーリング反応は、わずか数秒で完了する。
【0083】
(B.プライマー伸長反応)
プライマー伸長反応をもたらすために必要な時間は、標的配列の長さおよび濃度に依存し、そして反応温度に依存する。代表的な条件下でのヌクレオチド付加の速度の概算は、緩衝液、pH、塩濃度、ポリメラーゼ酵素、およびDNAテンプレートの性質に依存して、1秒あたり35〜100ヌクレオチドまで変化する。
【0084】
本発明の方法に従って、1反復単位の個々の増加を進行するプライマー伸長反応を達成するために、プライマー伸長反応を2つの独立した工程:第1のプライマー伸長反応および第2のプライマー伸長反応に分ける。第1のプライマー伸長反応において、プライマーは、1反復単位の長さ未満の量だけ伸長し、ここでプライマー伸長の程度の制御は、第1のプライマー伸長試薬の組成によりもたらされる。第2のプライマー伸長反応において、プライマーは、第1のプライマー伸長反応と組み合わせて、このプライマーが1反復単位の長さに等しい量だけ伸長される。
【0085】
本発明の方法の第1の局面に従って、第1および第2のプライマー伸長試薬のうちの1つは、標識伸長性ヌクレオチドを含む。
【0086】
また、本発明の方法の第1の局面に従って、上記の2工程の個々のプライマー伸長反応の改変において、第2のプライマー伸長試薬は、プライマー伸長試薬を含む。従って、第2のプライマー伸長反応後に、プライマーが標的核酸の反復領域の末端まで伸長した場合、ヌクレオチドターミネーターは、プライマー伸長産物に組み込まれ、そのプライマー伸長産物の任意のさらなる伸長を防ぐ。これは、標的核酸の反復領域を超える任意の見かけのプライマー伸長が生じる可能性は排除するので、有利である。本発明の実施形態は、反復配列の2つの対立遺伝子が同時に調査されており、特に好ましい。
【0087】
本発明の第2の局面に従って、標識ヌクレオチドターミネーターを含むプライマー停止試薬は、第2のプライマー伸長反応に含まれる。好ましくは、この標識ヌクレオチドターミネーターは、このような標的核酸の反復領域と隣接する標的核酸の3’隣接部分の3’末端のヌクレオチドに相補的であるよう選択される。
【0088】
(C.プライマーとプライマー伸長試薬の分離)
第1と第2のプライマー伸長反応の間で、分離工程が行われて、第1および第2のプライマー伸長試薬の混合が避けられ、それによって、制御されないプライマー伸長が防止される。分離工程をもたらすために使用される手段は、第1および/または第2のプライマー伸長試薬から、標的−プライマーハイブリッドを分離し得る任意の手段であり得る。例示的分離方法としては、HPLC、電気泳動、液体−液体抽出、固体−液体抽出、吸着などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
好適な実施形態において、標的−プライマーハイブリッドは、プライマー伸長試薬が固体支持体を単に洗浄することによって標的−プライマーハイブリッドから分離され得るように、分離工程の間に固体支持体に結合させる。この実施形態に従って、プライマーは、第1のプライマー伸長反応を行った前または行った後に固体支持体に結合され得る。洗浄条件は、標的−プライマーハイブリッドが実質的に破壊されず、そしてプライマー伸長試薬の非特異的吸着が最小になるような条件である。
【0090】
(D.シグナルの測定)
第1および第2のプライマー伸長反応のいずれかの後に、検出工程を行う。この検出工程では、プライマー伸長産物に組み込まれたインタクトな標識の量を決定する。任意の検出方法が用いられ得、この検出方法は、使用される標識の型に適合している。従って、可能な検出方法としては、放射活性検出、光学的吸光度(例えば、UV−可視吸光度検出)、光学的放射検出(例えば、蛍光または化学発光)が挙げられる。
【0091】
測定工程は、実施される本発明の局面および第1および第2のプライマー伸長試薬の組成に依存して、プロセス中の種々の時点で行われ得る。第1の局面において、好ましくは、測定工程は、標識伸長性ヌクレオチドを含むプライマー伸長試薬を標的−プライマーハイブリッドと反応させ、そしてこれをこのハイブリッドから分離した後に行う。第2の局面において、測定工程は、標識ヌクレオチドターミネーターを含むプライマー伸長試薬が標的−プライマーハイブリッドと反応され、そしてこのハイブリッドから分離された後に行う。
【0092】
標的−プライマーハイブリッドを、分析のために固体支持体に固定化されると、伸長したプライマーは、用いられるスキャニング方法に依存して、各アレイの全てまたは一部を同時にまたは連続してスキャニングすることにより、アドレス可能なアレイにおいて検出され得る。蛍光標識のために、アレイ上の選択された領域は、蛍光顕微鏡装置を用いて1つずつ、または列毎に連続的にスキャンされ得る(例えば、Fodor(1995)およびMathiesら(1992)に記載される)。ハイブリダイゼーションパターンはまた、CCDカメラ(例えば、Model TE/CCD512SF,Princeton Instruments,Trenton,NJ)を用いて、適切な光学系(Ploem,1993)でスキャンされ得る(例えば、Yershovら(1996)に記載される)か、またはTVモニターにより画像化され得る(Khrapko,1991)。放射活性シグナル(例えば、32P)については、ホスホルイメージャーデバイスが使用され得る(Johnstonら、1990;Drmanacら、1992;1993)。画像化機器の他の商業的供給元としては、General Scanning Inc.,(Washington,MA,www.genscan.com),Genix Technologies(Waterloo,Ontario,Canada;www.confocal.com)、およびApplied Precision Inc.が挙げられる。このような検出方法は、複数のタグ相補領域の同時スキャニングを達成するために特に有用である。
【0093】
(E.標識を検出不能にすること)
本発明の方法の第1の局面に従って、一旦標識からのシグナルが検出されると、その後の個々のプライマー伸長のサイクルを行う前に、標識を検出不能にする。
【0094】
1つの好適な実施形態において、この標識は、プライマー伸長産物に組み込まれた標識伸長性ヌクレオチドから標識を切断することによって検出不能にされる。ヌクレオチドから標識を切断するために使用される方法は、標識とヌクレオチドとを連結するために使用される切断可能結合の型に依存する。上記を参照のこと。例示的な切断試薬としては、チオール、塩基、過ヨウ素酸、ヒドロキシルアミンなどが挙げられる。1つの好適な方法において、この標識は、ウラシルヌクレオチドの塩基部分に結合され、引き続き、標識を検出するために、酵素ウラシルN−グリコシラーゼ(UNG)で処理することにより標識伸長性ヌクレオチドから切断される。
【0095】
第2の好適な実施形態において、この標識は、標識自体のシグナル生成特性を破壊することにより検出不能にされる。使用される標識の型に依存して、標識のシグナル生成特性を破壊するために使用され得るいくつかの方法がある。例えば、標識が蛍光色素の場合、この標識は、酸素が豊富な環境下で強力な光源を用いて色素を光標識することによって検出不能にされ得る。標識が酵素の場合、この標識は、酵素がシグナル生成反応を触媒し得なくする無関係の酵素インヒビターと標識を反応させることにより検出不能にされ得る。標識が、シグナル光生成転換のみを受け得る化学発光試薬の場合、この標識は、自己崩壊し、そのためにこの標識を検出不能にするための別個の反応を必要としない(Bronstein)。
【0096】
(F.タグ相補性アッセイ)
上記のように、本発明はまた、タグ配列を含むプライマーまたはサンプルポリヌクレオチドを利用する実施形態を包含し、これにより並行して複数のサンプルポリヌクレオチドの分析のためにアドレス可能なアレイに固定化され得る、付着したプライマーまたはサンプルポリヌクレオチドを固有に同定する。
【0097】
複数の異なる配列のプライマーは、1つ以上の標的ポリヌクレオチドにおけるプライマー相補領域にプライマーがアニーリングするに効果的な条件下で、ポリヌクレオチドサンプルと接触されて、1つ以上の標的−プライマーハイブリッドを形成する。ここで、(1)異なる配列のプライマーの各々は、(i)標的結合セグメントおよび(ii)この標的結合セグメントを固有に同定するヌクレオチド配列を有するタグセグメント、または(2)サンプル中の1つ以上のポリヌクレオチド、のいずれかは、付着したポリヌクレオチドを固有に同定するヌクレオチド配列を有するタグセグメントを含むタグ化ポリヌクレオチドである。1回以上のプライマー伸長サイクルが上記のように行われ、そしてシグナルの発生または喪失は、反復長を測定するに適切な時間で決定される。
【0098】
ユーザーの優先度に依存して、タグ化プライマーまたはタグ化サンプルポリヌクレオチドは、各々がタグセグメントのうちの1つに相補的な配列を含む、固定された、異なる配列タグ相補体のアドレス可能なアレイと、支持体上の対応するタグ相補体にタグセグメントをハイブリダイズするに効果的な条件下で接触され得る。例示により、タグ化プライマーまたはタグ化サンプルポリヌクレオチドのいずれかを使用する実施形態は、それぞれ、図4または5に示され、タグセグメントは固相支持体にハイブリダイズしており、そして標的−プライマーハイブリッドが形成されて、三次ポリヌクレオチド複合体(tertiary polynucleotide complexes)を生じる。
【0099】
図4は、固相支持体400上に固定化されたタグ相補性オリゴヌクレオチド410がタグ化プライマー420に特異的にハイブリダイズする、三次複合体を示す。タグ化プライマー420は、標的結合セグメント422およびタグセグメント424を含む。タグ相補性オリゴヌクレオチドとタグセグメント424との間の垂線は、相補的塩基対形成を示す。標的結合セグメント422にハイブリダイズし、そして示される実施形態においてサンプル反復領域444に直ぐ隣接するヌクレオチドで終結する配列442を含むサンプルポリヌクレオチド440もまた示される。サンプルポリヌクレオチド440は、必要に応じて、タグ化プライマーにハイブリダイズしない隣接配列446および448を含む。一旦ポリヌクレオチド440およびタグ化プライマー420が標的−プライマーハイブリッドを形成すると、このハイブリッドは、前節で議論されたように、サンプルポリヌクレオチドの反復領域にこのプライマーの伸長性末端を伸長するように処理され得る。伸長サイクルは、反復領域の末端に達するか、または所望の数の反復が計数されるまで反復される。
【0100】
図5は、固相支持体500に固定化されたタグ相補性オリゴヌクレオチド510が、タグ化サンプルポリヌクレオチド520に特異的にハイブリダイズした、別の三次複合体を示す。ポリヌクレオチド520は、オリゴヌクレオチド510にハイブリダイズし、そしてサンプル配列522に結合されるタグセグメント524を含む。配列522は、第1および第2のセグメント526および530によりいずれかの側に隣接する反復領域528を含む。伸長プライマー540がサンプルセグメント526および530の1つにアニールして、伸長性末端が、サンプル領域528に隣接する(または突出する)ように、標的−プライマーハイブリッドを形成する。このハイブリッドは、上記のように処理されて、反復領域の末端に達するまで、サンプルポリヌクレオチドの反復領域へとプライマー伸長性末端を伸長する。
【0101】
標的サンプルポリヌクレオチドは、任意の適切な方法により形成され得る。簡便には、タグ化サンプルは、目的のサンプル配列の各々に隣接する、第1および第2の標的特異的プライマーを含むプライマー対を用いてPCR増幅により形成され得る。ここで、このプローブの1つは、識別子タグセグメントを含む。1つの実施形態において、このタグ化プライマーは、標準的な合成方法によって調製される場合、増幅の間に、標準的ではないヌクレオチド間結合(例えば、PNA結合)の存在、またはタグセグメントを標的結合セグメントから分離する非ポリヌクレオチドリンカー領域の存在のいずれかに起因して、タグセグメントがコピーされないように構築される。タグセグメントが、アドレス可能なアレイ上のタグ相補体にハイブリダイズした後、タグ化されていない鎖は、特に、いずれのタグも、プライマーの標的結合セグメントとサンプルポリヌクレオチドとの間で融解温度より高い温度で、タグ化相補体から融解した場合、例えば、DNA−DNA二重鎖構造を不安定にする温度上昇および/または塩濃度の減少により、タグ化された鎖から取り除かれる。二重鎖核酸から選択された鎖を得るための多くの他のアプローチは、当該分野で公知であり、そしてこのアプローチとしては、例えば、(1)変性条件下でタグ化された鎖からタグ化されていない鎖の捕捉および分離を可能にするためのPCRにおけるビオチン化プライマーの使用、(2)短いRNAセグメントを含むPCRプライマー(非タグ化)(これは、PCRが完了した後にRNAseで消化し得、次いで、エキソヌクレアーゼ活性を有する酵素(例えば、適切なDNAse)で第2のRNAse消化した鎖を破壊し得る)またはタグ化プライマー鎖の増幅に好都合である非対称PCR法の使用が挙げられる。
【0102】
図4および5は特定の実施形態を示すが、他の改変が本発明の方法に従って使用され得ることは明らかである。例えば、図5を参照すると、伸長性プライマー540を消化して、代わりに、タグセグメントと反復領域との間でサンプルセグメント526に結合し得、その結果、プライマーの伸長性末端は、サンプルの反復領域528に再び隣接する。
【0103】
タグ化プライマーまたはタグ化サンプルポリヌクレオチドは、プライマー伸長プロセスの間に任意の適切な時間においてタグ相補性アレイにハイブリダイズし得る。例えば、サンプルポリヌクレオチドのタグ化プライマーは、第1の接触工程(ここで、異なる配列プライマーおよびサンプルポリヌクレオチドがアニールされて、標的−プライマーハイブリッドを形成する)の前に支持体に固定化され得る。あるいは、固定化は、第1のプライマー伸長反応の後、または第2のプライマー伸長反応の後に行われ得る。後者の場合、各伸長サイクルの後に伸長反応混合物の少量のアリコートを取り出し得、そして複製アレイにハイブリダイズさせ得る。その結果、各複製アレイが各サイクルの後に計数情報を提供する。
【0104】
(IV.方法を実施するためのキット)
本発明は、本発明の方法の種々の局面および実施形態を行うためのキットを含む。第1の局面において、本発明のキットは、プライマー(すなわち、第1のプライマー伸長試薬)および第2のプライマー伸長試薬を含み、ここで第1および第2のプライマー伸長試薬のうちの少なくとも1つが、付着した標識を有する伸長性ヌクレオチドを含む。好ましくは、伸長性ヌクレオチドに付着した標識は、標識をプライマー伸長産物から切断し、そして/または標識のシグナル生成特性を破壊するために有効な処理工程の後に検出不能にされ得る。好ましくは、プライマーは、固体支持体に結合されるか、または特異的結合対または共溶媒結合部分を通じて固体支持体に結合され得る。別の実施形態において、本発明のこの局面は、プライマーまたは標的核酸を通じての標的−プライマーハイブリッドの結合のための固体支持体を含む。必要に応じて、本発明のこの第1の局面のキットは、プライマー停止試薬を含む。
【0105】
第2の局面において、本発明のキットは、プライマー(すなわち、第1のプライマー伸長試薬)第2のプライマー伸長試薬、およびプライマー停止試薬を含み、ここでプライマー停止試薬は、付着した標識を有するヌクレオチドターミネーターを含む。第2のプライマー伸長試薬およびプライマー停止試薬は、別々にか、または混合物としてと共にか、のいずれかでパッケージングされ得る。好ましくは、プライマーは固体支持体に結合されるか、または特異的結合対または共有結合部分を通じて固体支持体に結合され得る。別の実施形態において、本発明のこの局面は、プライマーまたは標的核酸を通じての標的−プライマーハイブリッドの結合のための固体支持体を含む。
【0106】
別の局面において、このキットは、(A)各々が、(i)標的結合セグメントおよび(ii)標的結合セグメントを固有に同定するヌクレオチド配列を有するタグセグメントを含む、複数の異なる配列プライマー;第1のプライマー伸長試薬;および第2のプライマー伸長試薬(ここで、第1および第2のプライマー伸長試薬は、付着した標識を有する伸長性ヌクレオチドを含む);および/または(B)固定化された、異なるタグ相補体のアドレス可能なアレイ(ここで、各々の異なるタグ相補体は、支持体上の対応するタグ相補体にタグセグメントをハイブリダイズするに有効な条件下で、プライマータグセグメントのうちの1つに相補的な配列を含む)。
【0107】
本発明は、以下の実施例を鑑みてさらに理解され得、本発明を限定されるとは意図されない。
【0108】
(実施例)
以下の研究は、4つの異なるサンプル配列における反復を、固体支持体に固定された標的特異的捕捉オリゴヌクレオチドのアレイを用いて計数するための、例示的サンプルハイブリダイゼーション条件および伸長サイクルを例示する。
【0109】
(A.支持体)ガラス顕微鏡スライドを、1N HNO3中に1〜2時間、浸し、次いで脱イオン水でリンスした。必要に応じて、スライドを、5% HCl中に一晩浸漬して、引き続く官能基化の長期の安定性を改善した。次いで、スライドを、以下の3つの溶媒(ヘキサン、アセトン、およびエタノール)中で、各々10分間、連続的に超音波処理し、次いで風乾した。
【0110】
95%アセトン:5%水中に2%(v/v)アミノプロピルトリエトキシシラン(40mL中0.8mL)の溶液を、使い捨てプラスチックFalconチューブ中に調製した。この量の溶液は、通常、少なくとも3つのスライドをコートするのに十分であった。この溶液を、エトキシ基を水酸基へと加水分解するために、5〜20分間放置させる。風乾したスライドを、各々2分間、溶液に浸し、次いで3つ以上の連続的なアセトン浴中に浸漬することによりリンスした。
【0111】
スライドを、100℃のオーブンで45分間、硬化させた。硬化したスライドを、10%ピリジン:ジメチルホルムアミド中の1,4−フェニレンジイソチオシアネート(PDITC)の0.2%溶液を用いて、2時間処理し、次いでメタノールおよびアセトンの浴中で洗浄し、そして乾燥した。このスライドは、4℃にて乾燥剤を用いて減圧下で保存してもよい。スライドを重ねることはまた、官能基化を保存するのに役立ち、かつ官能基化した表面に粒子がないようにする。(代替的な実施形態では、1,4−フェニレンジイソチオシアネートの代わりに、硬化スライドが、メタノール:ジメチルスルホキシド(80:20)中のEMCS(N−(ε−マレイミドカプロキシル)スクシンイミドの1mM溶液を用いて、2時間、処理され得る)。
【0112】
(B.捕捉オリゴの固定化)合成捕捉オリゴヌクレオチドを、標準的なホスホルアミダイト合成法により調製した。この捕捉オリゴヌクレオチドは、以下の一般構造を有する:5’−アミノ−[(PEO)2]−[捕捉オリゴ(24ヌクレオチド)]、ここでPEO=−O−(CH2CH2O)6は、DMT−O−(CH2CH2O)6−ホスホルアミダイトを介して添加した。この捕捉オリゴヌクレオチドは、以下のC節に示される4つのサンプル配列中の2重下線配列に相補的なポリヌクレオチド配列を有した。
【0113】
捕捉オリゴを、ASYMTECロボットローダー(Asymtec,Carlsbad,CA,Model No.C−708)を用いて、(100mM Na2CO3、pH9.0中の)約50μMのオリゴヌクレオチド濃度および0.2〜1nLのスポッティング容量で、上記のように調製したスライド上の格子状アレイパターンにスポットした。このパターンは、重複性を提供するために各々の異なる捕捉オリゴに対する8スポット(2×4列)の別個の組みを含んだ。このスポットは、約200μmの直径を有し、そしてこのスポットを、中心〜中心を320μm離れて間隔をあけた。ロボットローダーは、オリゴヌクレオチド沈着の間スライドを保持するためのスライドホルダー、およびディスペンサーチップを清掃するためのブロッティング領域を備える。
【0114】
スポッティングの後、捕捉オリゴを加湿チャンバ中で、室温にて60分間スライドをインキュベートすることにより、このスライド上に固定し、次いで1%NH4OH(aq)に20分間、およびTBS(50mM Tris,150mM
NaCl,pH8)中の0.2%カゼインに20分間、浸漬する。このスライドを脱イオン水中で洗浄し、そして4℃で保存した。
【0115】
(C.サンプルハイブリダイゼーションおよび分析)4つの異なるサンプルオリゴを、4つの異なるマイクロサテライト対立遺伝子を表すために調製した。簡単には、このサンプルポリヌクレオチドは、以下の配列を含み、ここで一重下線を付すことは、反復領域を示し、そして二重下線を付すことは、支持体上の相補性捕捉オリゴにハイブリダイズするためのセグメントを示す:
【0116】
【化1】

4つのサンプルオリゴの混合物(1.5mM MgCl2、50mM KCl、1.5mM MgCl2、10mM Tris−HCl、pH8.3、および0.001%(w/v)ゼラチンを含む1×PCR緩衝液中に各々0.33μM)を、アレイ上の捕捉オリゴ上に配置し、そして室温で1時間インキュベートさせた。インキュベーション後、非結合オリゴを50mM NaClを含む1×TE(10mM pH8、1mM EDTA)を用いて除去した。複製したスライドを異なる数の伸長サイクル(1、2、3、または4サイクル)に供した。各伸長サイクル(「試薬サイクル」とも呼ばれる)は、以下の工程を含む:
1)スライドを、以下を含む伸長混合物中で37℃にて4分間インキュベートする:
500μM dGTP
20μM Big Dye R6G ddATP(Perkin−Elmer,Foster City,CA,Emax=560nm)
20μM Big Dye R6G ddCTP(Perkin−Elmer,Foster City,CA,Emax=615nm)
1U/μL AMPLITAQ FS(および0.125U/μLピロホスファターゼ)
1×緩衝液(80mM Tris,pH9.0、2.5mM MgCl2
2)50mM NaClを含む1×TEを用いてスライドをリンスし、次いで同じ溶液への浸漬により3回洗浄する。
3)スライドを、以下を含む伸長混合物中で37℃にて4分間インキュベートする:
500μM dATP
20μM Big Dye R6G ddATP(Perkin−Elmer,Foster City,CA,Emax=560nm)
20μM Big Dye R6G ddCTP(Perkin−Elmer,Foster City,CA,Emax=615nm)
1U/μL AMPLITAQ FS(および0.125U/μLピロホスファターゼ)
1×緩衝液(80mM Tris,pH9.0、2.5mM MgCl2
4)50mM NaClを含む1×TEを用いてスライドをリンスし、次いで同じ溶液への浸漬により3回洗浄する。
4伸長サイクル(各サイクルは工程1〜4を含んだ)が完了した後、各スライドを50%(w:v)尿素および1×TBE(0.09M Tris−ホウ酸、2mM EDTA、pH約8.3)を含む表示(viewing)緩衝液で覆って、色素標識の蛍光発光を増強するためのアルカリpH環境を提供した。
【0117】
スライドを、560nmおよび610nmでの蛍光発光検出に設定した画像処理デバイスを用いて各々表示した。このデバイスは、発光強度(電子画像)の二次元画像アレイを作成する画像式蛍光光度計(imaging fluorimeter)であった。画像アレイ中の各点は、サンプルスライド上の物理的位置に対応する。励起源は、40mWアルゴンイオンレーザーである。励起波長を、2つの天然のレーザー線(480nmおよび/または514nm)のいずれかより選択し得る。レーザー波長の選択を、両方の波長の光を含むビームを3つのフィルターのうちの1つに通過させることにより達成した。選択したフィルターは、488nmのみ、514nmのみ、または488nmおよび514nmのいずれかを通す。このフィルターを、選択をコンピューター制御下で実行し得るように、モーター駆動プラットホーム上に取り付ける。波長のいずれかまたは両方を含むビームは、古典的ビームエキスパンダを通過する。次いで、平行にし、拡大したビームを、2つの直交性ガルボミラーを備える市販のアセンブリ(Scanlab,Puchhein,Germany,モデルSK1020)へと方向付ける。これは、2つのミラーの各々が迅速かつ精確に小角で回転するように設計した機械装置である。回転の軸は、コンピューター制御下でもビームを格子状パターンでラスターし得るように、直交性であり、かつ独立している。
【0118】
このスキャンしたビームを、1つの焦点距離でスキャンしたレーザースポットを形成するf−θレンズにより焦点を合わせる。このスポットサイズは、直径20μmである。代表的には、これは、20μm単位で20mm×20mmの領域にわたり切り込みを付けて、それにより1000×1000アレイのピクセルを形成する。焦点を合わせたレーザースポットを、二色性ビームスプリッターを通過した後に形成させる。二色性ビームスプリッターを、励起波長を反射するが、発蛍光団発光を透過するように設計する。
【0119】
レーザービームが、蛍光領域を横切る場合、発光光学系の収集物の立体角内の蛍光照射の一部を、二色性ミラーにより透過し、そして150mmの焦点距離を有するレンズにより平行にする。次いで、平行にしたビームを、レーザー光をさらに除去するロングパス干渉フィルター(long pass interference filter)によりフィルター処理される。75mm焦点距離の第2のレンズは、赤感応性光電子増倍管(PMT)の光電陰極上にビームの焦点を合わせる。PMT光電陰極を、慎重に調整する必要はない。なぜならば、この焦点は、重要ではないからである。PMTの前のフィルターホイールは、小さな波長幅(10nm)のみを検出器に到達させる。このフィルターホイールは、識別されるべき複数の発蛍光団の発光を考慮に入れて、6つの位置の1つに調整され得る。
【0120】
PMTの電気的出力は、光電陰極に到達する光の強度に比例する。捕捉システムは、各々のミラー位置のアレイでシグナルを蓄積して、電子イメージを形成し得る。
【0121】
結果は、予想通りだった。詳細には、オリゴ1(配列番号1)について、シグナルは、2つのGT二量体および蛍光標識ddCターミネーターは、固定化捕捉オリゴ(これはまた伸長プライマーとして役立つ)に付加された後の、第2のサイクルの完了まで観察さかった。同様に、オリゴ2〜4(配列番号2〜4)は、それぞれ、1、2、および4伸長サイクルの後、適切な蛍光シグナルが観察された。
【0122】
全ての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願の各々が参考として援用されることが詳細にかつ個々に示されるかのように、同程度に、この開示において、本明細書中で参考として援用される。
【0123】
少数の実施形態のみが、上記に詳細に記載されているが、分子生物学分野の当業者は、多くの改変が、これらの教示から逸脱することなく好ましい実施形態において可能であることを明白に理解する。従って、全てのこのような改変は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0124】
(配列表)
【数1】

【数2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−213709(P2010−213709A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92670(P2010−92670)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【分割の表示】特願2000−585455(P2000−585455)の分割
【原出願日】平成11年12月1日(1999.12.1)
【出願人】(509130413)アプライド バイオシステムズ, エルエルシー (48)
【Fターム(参考)】