説明

不飽和第4級アンモニウム塩化合物からなる帯電防止剤及び帯電防止組成物

【課題】安全性が高く、水溶性、耐加水分解性、ハロゲンを含有せず、環境に無害、各種電気化学デバイスにも好適に用いられ、室温で液体である持続的に優れる帯電防止効果を有する帯電防止剤用の化合物、該化合物を構成成分として含有する帯電防止性樹脂組成物の提供。
【解決手段】サッカリネートとから構成されたオニウム塩、またはアセスルファメートとから構成された下記一般式(2)で表されるオニウム塩、で示される不飽和第4級アンモニウム塩化合物。(式中、Rは水素原子またはメチル基を、R及びRは各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルケニル基またはベンジル基を表し、Yは酸素原子または−NH−を表し、Zは炭素数1〜3のアルキレン基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は安全性が高く、且つ環境に無害、室温で液体である不飽和第4級アンモニウム塩化合物、該不飽和第4級アンモニウム塩化合物からなる帯電防止剤及び該帯電防止剤を含有する帯電防止性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
第4級アンモニウム塩は優れた帯電防止性能を有するため、樹脂用帯電防止剤として従来
から知られている(特許文献1、2)。特に近年、樹脂表面にブリードアウトし難く、持
続的に帯電防止効果を維持できる高分子型の第4級アンモニウム塩が多く報告された(特
許文献3)。
【0003】
アクリレート系とアクリルアミド系カチオン性第4級アンモニウム塩が重合性を有するた
め、高分子型帯電防止組成物のベースモノマーとして使用することが公知化されている(
特許文献3−8)。しかし、多くの重合性アンモニウム塩はアニオンとして塩素、ブロモ
、ヨウ素などのハロゲン系イオン、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェー
ト、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどのフッ素系イオンが用いられてい
る。これらのアニオンは原料の安全性が低く、自然環境において極めて難分解性であるた
め、環境に有害であり、さらに金属への腐食性が懸念され、特に電子材料として使用され
る場合、電子製品の機能低下、故障の原因になる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−231240号公報
【特許文献2】特開2008−13636号公報
【特許文献3】特開2008−231196号公報
【特許文献4】特開昭63−201151号公報
【特許文献5】特開平07−150130号公報
【特許文献6】特開2007−51241号公報
【特許文献7】特開2007−9042号公報
【特許文献8】特開2005−255843号公報
【0005】
以上のように、安全性が高く、環境に無害で、UVなどエネルギー線照射による重合が可能、且つ重合後長く帯電防止効果が持続する帯電防止剤であって、塩素、フッ素などのハロゲンを含まず、優れた耐加水分解性を有する不飽和第4級アンモニウム塩化合物は未だに得られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第一目的は、ハロゲンを含まず、安全性が高く、環境に無害で、室温で液体であ
るので取り扱い易く、UVなどエネルギー線照射による重合が可能、且つ水や有機溶媒、
通用のビニルモノマーなど他の帯電防止剤組成物との相溶性が良く、優れる耐加水分解性
を有する不飽和第4級アンモニウム塩化合物を提供することにある。本発明の第二目的は
、該不飽和第4級アンモニウム塩化合物の効率的且つ経済的な製造方法を提供することに
ある。本発明の第三目的は、該不飽和第4級アンモニウム塩化合物からなる安全性が高く
、環境負荷が低く、帯電防止効果が長期持続でき、耐加水分解性が優れ、且つ高硬度、高
透明性を有する帯電防止剤及び該帯電防止剤を含有する帯電防止性樹脂組成物を提供する
ことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者はこれらの課題を解決するために鋭意検討を行った結果、下記一般式(1)で示
される不飽和第4級アンモニウム塩化合物を用いることでこれらの課題が解決できること
を見出した。
【0008】
当該不飽和第4級アンモニウム塩化合物を、4級カチオン性ビニルモノマーと食品添加物
として使用されている安全性の高い甘味料であるサッカリネート金属塩、アセスルファメ
ート金属塩のアニオン交換反応により高純度、高収率で得られる方法を見出し、さらに該
不飽和第4級アンモニウム塩化合物を用いることで前記帯電防止剤と帯電防止組成物の課
題が解決できることを見出した。
【0009】
すなわち本願発明は、1)一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物である不飽和第4級アンモニウム塩化合物、
【化1】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を、R及びRは各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルケニル基またはベンジル基を表し、Yは酸素原子または−NH−を表し、Zは炭素数1〜3のアルキレン基を表す。)
【化2】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を、R及びRは各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルケニル基またはベンジル基を表し、Yは酸素原子または−NH−を表し、Zは炭素数1〜3のアルキレン基を表す。)
2)上記1)記載の不飽和第4級アンモニウム塩化合物を構成成分として含むオリゴマー又はポリマー、
3)上記1)記載の不飽和第4級アンモニウム塩化合物及び/又は上記2)記載のオリゴマー若しくはポリマーからなる帯電防止剤、
4)上記3)記載の帯電防止剤又は該帯電防止剤を含有する帯電防止組成物であって、上記1)記載の不飽和第4級アンモニウム塩化合物を構成単位として0.1〜90重量%含有するもの、
5)上記3)記載の帯電防止剤を含有する帯電防止組成物であって、さらに多官能(メタ)アクリレート及び/又は多官能(メタ)アクリルアミドを含有する帯電防止組成物、6)基材上に上記3)〜5)いずれか一に記載の帯電防止剤又は帯電防止組成物を塗装した後、活性エネルギー線又は熱により重合して形成されることを特徴とする帯電防止層、7)少なくとも片面に請求項6記載の帯電防止層を有することを特徴とする帯電防止フィルム、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の不飽和第4級アンモニウム塩化合物は、食品添加剤である甘味料のサッカリネー
ト金属塩、アセスルファメート金属塩を原料として使用されるので、安全性が高く、環境
に無害である。また、ハロゲンを含有しないため、該不飽和第4級アンモニウム塩化合物
からなる帯電防止剤及び帯電防止剤組成物は各種電気化学デバイスにも好適に用いられる

【0011】
本発明の不飽和第4級アンモニウム塩化合物は室温で液体であり、水、有機溶媒、通用の
ビニルモノマーへの溶解性、親和性に優れるため、取り扱いが容易で基材上にムラなく塗
工でき、UV照射などによる硬化後もブリードアウトせず、帯電防止効果が持続するとい
うものである。
【0012】
本発明の不飽和第4級アンモニウム塩化合物が通用のビニルモノマーと容易に共重合でき
る(メタ)アクリルアミド系モノマーと(メタ)アクリレート系モノマーであり、疎水性
ビニルモノマーとの共重合による非水溶性で、優れる耐加水分解性を有し、周囲環境の湿
度による帯電防止効果の影響が極めて小さい、様々な新規帯電防止剤及び帯電防止剤組成
物が提供できる。さらに、高硬度、高耐磨耗性と優れる透明性の帯電防止層、帯電防止膜
または帯電防止フィルムが提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の帯電防止剤は、一般式(1)又は、一般式(2)で表わされる第4級アンモニウム(メタ)アクリルアミド系モノマー、第4級アンモニウム(メタ)アクリレート系モノマー、及びそれらのモノマーから構成されるオリゴマー若しくはポリマーのうちいずれか1種以上からなるものである。
【0014】
一般式(1)の式中、Rは水素原子またはメチル基を、R及びRは各々独立に炭素
数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜3
のアルキル基、炭素数1〜3のアルケニル基またはベンジル基を表し、Yは酸素原子また
は−NH−を表し、Zは炭素数1〜3のアルキレン基を表す。
【0015】
本発明の帯電防止剤である第4級アンモニウムモノマーとして、具体的には、アクリロイ
ルアミノメチルトリメチルアンモニウムサッカリネート、アクリロイルアミノメチルトリ
エチルアンモニウムサッカリネート、アクリロイルアミノメチルトリプロピルアンモニウ
ムサッカリネート、アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムサッカリネート、
アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムサッカリネート、アクリロイルアミ
ノプロピルメチルジエチルアンモニウムサッカリネート、アクリロイルアミノプロピルエ
チルジメチルアンモニウムサッカリネート、アクリロイルアミノプロピルメチルジプロピ
ルアンモニウムサッカリネート、アクリロイルアミノプロピルトリエチルアンモニウムサ
ッカリネート、アクリロイルアミノプロピルトリプロピルアンモニウムサッカリネート、
アクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムサッカリネート、アクリロイル
アミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムサッカリネート、アクリロイルアミノプロ
ピルジエチルベンジルアンモニウムサッカリネート、アクリロイルアミノプロピルメチル
ジベンジルアンモニウムサッカリネート、アクリロイルアミノプロピルエチルジベンジル
アンモニウムサッカリネート、メタクリロイルアミノメチルトリメチルアンモニウムサッ
カリネート、メタクリロイルアミノメチルトリエチルアンモニウムサッカリネート、メタ
クリロイルアミノメチルトリプロピルアンモニウムサッカリネート、メタクリロイルアミ
ノエチルトリメチルアンモニウムサッカリネート、メタクリロイルアミノプロピルトリメ
チルアンモニウムサッカリネート、メタクリロイルアミノプロピルメチルジエチルアンモ
ニウムサッカリネート、メタクリロイルアミノプロピルエチルジメチルアンモニウムサッ
カリネート、メタクリロイルアミノプロピルメチルジプロピルアンモニウムサッカリネー
ト、メタクリロイルアミノプロピルトリエチルアンモニウムサッカリネート、メタクリロ
イルアミノプロピルトリプロピルアンモニウムサッカリネート、メタクリロイルアミノエ
チルジメチルベンジルアンモニウムサッカリネート、メタクリロイルアミノプロピルジメ
チルベンジルアンモニウムサッカリネート、メタクリロイルアミノプロピルジエチルベン
ジルアンモニウムサッカリネート、メタクリロイルアミノプロピルメチルジベンジルアン
モニウムサッカリネート、メタクリロイルアミノプロピルエチルジベンジルアンモニウム
サッカリネートなどの(メタ)アクリルアミド系アンモニウムアルキルサッカリネートな
どが挙げられ、またはアクリロイルオキシメチルトリメチルアンモニウムサッカリネート
、アクリロイルオキシメチルトリエチルアンモニウムサッカリネート、アクリロイルオキ
シメチルトリプロピルアンモニウムサッカリネート、アクリロイルオキシエチルトリメチ
ルアンモニウムサッカリネート、アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムサ
ッカリネート、アクリロイルオキシプロピルメチルジエチルアンモニウムサッカリネート
、アクリロイルオキシプロピルエチルジメチルアンモニウムサッカリネート、アクリロイ
ルオキシプロピルメチルジプロピルアンモニウムサッカリネート、アクリロイルオキシプ
ロピルトリエチルアンモニウムサッカリネート、アクリロイルオキシプロピルトリプロピ
ルアンモニウムサッカリネート、アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウ
ムサッカリネート、アクリロイルオキシプロピルジメチルベンジルアンモニウムサッカリ
ネート、アクリロイルオキシプロピルジエチルベンジルアンモニウムサッカリネート、ア
クリロイルオキシプロピルメチルジベンジルアンモニウムサッカリネート、アクリロイル
オキシプロピルエチルジベンジルアンモニウムサッカリネート、メタクリロイルオキシメ
チルトリメチルアンモニウムサッカリネート、メタクリロイルオキシメチルトリエチルア
ンモニウムサッカリネート、メタクリロイルオキシメチルトリプロピルアンモニウムサッ
カリネート、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムサッカリネート、メタ
クリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムサッカリネート、メタクリロイルオキ
シプロピルメチルジエチルアンモニウムサッカリネート、メタクリロイルオキシプロピル
エチルジメチルアンモニウムサッカリネート、メタクリロイルオキシプロピルメチルジプ
ロピルアンモニウムサッカリネート、メタクリロイルオキシプロピルトリエチルアンモニ
ウムサッカリネート、メタクリロイルオキシプロピルトリプロピルアンモニウムサッカリ
ネート、メタクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムサッカリネート、メ
タクリロイルオキシプロピルジメチルベンジルアンモニウムサッカリネート、メタクリロ
イルオキシプロピルジエチルベンジルアンモニウムサッカリネート、メタクリロイルオキ
シプロピルメチルジベンジルアンモニウムサッカリネート、メタクリロイルオキシプロピ
ルエチルジベンジルアンモニウムサッカリネートなどの(メタ)アクリレート系アンモニ
ウムアルキルサッカリネートなどが挙げられる。これらの中では、安価な工業的原料を入
手しやすい点で、特にアクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムサッカリネー
ト、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムサッカリネート、アクリロイ
ルオキシエチルトリメチルアンモニウムサッカリネート、メタクリロイルオキシエチルト
リメチルアンモニウムサッカリネートが好ましい。
【0016】
本発明の帯電防止剤である第4級アンモニウムモノマーとして、具体的には、アクリロイ
ルアミノメチルトリメチルアンモニウムアセスルファメート、アクリロイルアミノメチル
トリエチルアンモニウムアセスルファメート、アクリロイルアミノメチルトリプロピルア
ンモニウムアセスルファメート、アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムアセ
スルファメート、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムアセスルファメー
ト、アクリロイルアミノプロピルメチルジエチルアンモニウムアセスルファメート、アク
リロイルアミノプロピルエチルジメチルアンモニウムアセスルファメート、アクリロイル
アミノプロピルメチルジプロピルアンモニウムアセスルファメート、アクリロイルアミノ
プロピルトリエチルアンモニウムアセスルファメート、アクリロイルアミノプロピルトリ
プロピルアンモニウムアセスルファメート、アクリロイルアミノエチルジメチルベンジル
アンモニウムアセスルファメート、アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモ
ニウムアセスルファメート、アクリロイルアミノプロピルジエチルベンジルアンモニウム
アセスルファメート、アクリロイルアミノプロピルメチルジベンジルアンモニウムアセス
ルファメート、アクリロイルアミノプロピルエチルジベンジルアンモニウムアセスルファ
メート、メタクリロイルアミノメチルトリメチルアンモニウムアセスルファメート、メタ
クリロイルアミノメチルトリエチルアンモニウムアセスルファメート、メタクリロイルア
ミノメチルトリプロピルアンモニウムアセスルファメート、メタクリロイルアミノエチル
トリメチルアンモニウムアセスルファメート、メタクリロイルアミノプロピルトリメチル
アンモニウムアセスルファメート、メタクリロイルアミノプロピルメチルジエチルアンモ
ニウムアセスルファメート、メタクリロイルアミノプロピルエチルジメチルアンモニウム
アセスルファメート、メタクリロイルアミノプロピルメチルジプロピルアンモニウムアセ
スルファメート、メタクリロイルアミノプロピルトリエチルアンモニウムアセスルファメ
ート、メタクリロイルアミノプロピルトリプロピルアンモニウムアセスルファメート、メ
タクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムアセスルファメート、メタクリ
ロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムアセスルファメート、メタクリロイ
ルアミノプロピルジエチルベンジルアンモニウムアセスルファメート、メタクリロイルア
ミノプロピルメチルジベンジルアンモニウムアセスルファメート、メタクリロイルアミノ
プロピルエチルジベンジルアンモニウムアセスルファメートなどの(メタ)アクリルアミ
ド系アンモニウムアルキルアセスルファメート4級カチオン性モノマーなどが挙げられ、
またはアクリロイルオキシメチルトリメチルアンモニウムアセスルファメート、アクリロ
イルオキシメチルトリエチルアンモニウムアセスルファメート、アクリロイルオキシメチ
ルトリプロピルアンモニウムアセスルファメート、アクリロイルオキシエチルトリメチル
アンモニウムアセスルファメート、アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム
アセスルファメート、アクリロイルオキシプロピルメチルジエチルアンモニウムアセスル
ファメート、アクリロイルオキシプロピルエチルジメチルアンモニウムアセスルファメー
ト、アクリロイルオキシプロピルメチルジプロピルアンモニウムアセスルファメート、ア
クリロイルオキシプロピルトリエチルアンモニウムアセスルファメート、アクリロイルオ
キシプロピルトリプロピルアンモニウムアセスルファメート、アクリロイルオキシエチル
ジメチルベンジルアンモニウムアセスルファメート、アクリロイルオキシプロピルジメチ
ルベンジルアンモニウムアセスルファメート、アクリロイルオキシプロピルジエチルベン
ジルアンモニウムアセスルファメート、アクリロイルオキシプロピルメチルジベンジルア
ンモニウムアセスルファメート、アクリロイルオキシプロピルエチルジベンジルアンモニ
ウムアセスルファメート、メタクリロイルオキシメチルトリメチルアンモニウムアセスル
ファメート、メタクリロイルオキシメチルトリエチルアンモニウムアセスルファメート、
メタクリロイルオキシメチルトリプロピルアンモニウムアセスルファメート、メタクリロ
イルオキシエチルトリメチルアンモニウムアセスルファメート、メタクリロイルオキシプ
ロピルトリメチルアンモニウムアセスルファメート、メタクリロイルオキシプロピルメチ
ルジエチルアンモニウムアセスルファメート、メタクリロイルオキシプロピルエチルジメ
チルアンモニウムアセスルファメート、メタクリロイルオキシプロピルメチルジプロピル
アンモニウムアセスルファメート、メタクリロイルオキシプロピルトリエチルアンモニウ
ムアセスルファメート、メタクリロイルオキシプロピルトリプロピルアンモニウムアセス
ルファメート、メタクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムアセスルファ
メート、メタクリロイルオキシプロピルジメチルベンジルアンモニウムアセスルファメー
ト、メタクリロイルオキシプロピルジエチルベンジルアンモニウムアセスルファメート、
メタクリロイルオキシプロピルメチルジベンジルアンモニウムアセスルファメート、メタ
クリロイルオキシプロピルエチルジベンジルアンモニウムアセスルファメートなどの(メ
タ)アクリレート系アンモニウムアルキルアセスルファメート4級カチオン性モノマーな
どが挙げられる。これらの中では、安価な工業的原料を入手しやすい点で、特にアクリロ
イルアミノプロピルトリメチルアンモニウムアセスルファメート、メタクリロイルアミノ
プロピルトリメチルアンモニウムアセスルファメート、アクリロイルオキシエチルトリメ
チルアンモニウムアセスルファメート、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニ
ウムアセスルファメートが好ましい。
【0017】
本発明の不飽和第4級アンモニウム塩化合物は、種々の方法で製造できる。その代表的な
方法を下記反応式(1)(式中、Rは水素原子またはメチル基を、R及びRは各々
独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは炭
素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルケニル基またはベンジル基を表し、Yは酸
素原子または−NH−を表し、Zは炭素数1〜3のアルキレン基を表し、X-はCl-、B
-、I-などハロゲンイオンまたはOH-、CHCOOH-、NO-、ClO-、HS
-、CHSO-、CHSO-、SCN-など無機酸アニオンまたは有機
酸アニオンを表し、MはH、Na、K、Li、Ag、NHを表し、A−
はサッカリネート、アセスルファメートを表す。)を用いて説明する。
【0018】
反応式(1)

【0019】
即ち、一般式(3)
【化3】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を、R及びRは各々独立に炭素数1〜3の
アルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜3のアルキル
基、炭素数1〜3のアルケニル基またはベンジル基を表し、Yは酸素原子または−NH−
を表し、Zは炭素数1〜3のアルキレン基を表し、X-はCl-、Br-、I-などハロゲン
イオンまたはOH-、CHCOOH-、NO-、ClO-、HSO-、CHSO-
、CHSO-、SCN-など無機酸アニオンまたは有機酸アニオンを表す)で
表されるアニオンを有する4級カチオン性ビニルモノマーと一般式(4)
【化4】

(式中、MはH、Na、K、Li、Ag、NHを表す)で表されるサ
ッカリネートの酸、金属塩または有機塩、一般式(5)
【化5】

(式中、MはH、Na、K、Li、Ag、NHを表す)で表されるア
セスルファメートの酸、金属塩または有機塩を溶媒中で中和またはアニオン交換により合
成することができる。
【0020】
反応溶媒は、原料である一般式(3)で表される4級カチオン性ビニルモノマーと一般式
(4)で表されるサッカリネートの酸、金属塩または有機塩が可溶であり、または一般式
(5)で表されるアセスルファメートの酸、金属塩または有機塩が可溶であり、生成物で
ある一般式(1)、一般式(2)で表される不飽和第4級アンモニウム塩化合物が可溶で
あり、副生成物であるMが不溶又は難溶(100g溶媒に対して5g以下溶解する
)であり、かつ反応に悪影響を及ぼさない溶媒であれば、広く使用することができる。例
えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イ
ソブタノール、t−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリ
ン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル
などが挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロ
ピレングリコールモノメチルエーテルが安価の工業品を入手し易く、安全性が高く、取り
扱いやすいため、好ましい。これらの溶媒は、1種あるいは2種以上を用いることができ
る。
【0021】
本発明で用いられる4級カチオン性ビニルモノマーは、公知の方法を用いて製造すること
ができる。例えば、下記一般式(6)
【化6】


(式中、Rは水素原子またはメチル基を、R及びRは各々独立に炭素数1〜3のア
ルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜3のアルキル基
、炭素数1〜3のアルケニル基またはベンジル基を表し、Yは酸素原子または−NH−を
表し、Zは炭素数1〜3のアルキレン基を表し、)で表されるN,N−ジアルキルアミノ
アルキル(メタ)アクリルアミド又は/及びN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)
アクリレートに4級化剤としてのハロゲン化アルキルまたはジアルキル硫酸、炭酸ジアル
キルあるいはアルキルトルエンスルフォネート、チオシアン酸アルキルエステルを水また
は有機溶媒中で4級化反応させ、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド4級
塩又は/及びN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート4級塩を得ること
ができる。
【0022】
上記N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N,
N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メ
タ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N
−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチルエチルアミノエチル
(メタ)アクリルアミド、N,N−メチルプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド
、N,N−メチルエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチルプロピ
ルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノプロピル(メタ)
アクリルアミド等が挙げられる。
【0023】
上記N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、N,N
−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)
アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチ
ルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−メチルエチルアミノエチル(メタ)ア
クリレート、N,N−メチルプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−メチ
ルエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−メチルプロピルアミノプロピル
(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙
げられる。
【0024】
また、4級カチオン性ビニルモノマーとしてN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルア
ミドのメチルクロライドとN,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライ
ドが安価な工業品原料として入手し易い観点から特に好ましい。
【0025】
本発明の不飽和第4級アンモニウム塩化合物を合成するときの反応温度は、通常10℃以
上、15〜60℃が好ましく、20〜40℃が特に好ましい。反応温度が10℃未満の場
合、反応速度が遅くなり、完結する所要反応時間が長くなる。一方、60℃を超えるとビ
ニルモノマーが重合してしまう可能性がある。
【0026】
本発明の不飽和第4級アンモニウム塩化合物は反応溶媒に対して可溶、副生成物は反応溶
媒に対して不溶又は難溶であり、反応終了後に反応溶媒から副生成物をろ過で分離し、さ
らに反応溶媒を回収することにより高純度品目的生成物を容易に取得できる。また、着色が問題となる場合は、該不飽和第4級アンモニウム塩化合物を適切な溶媒に溶解させ、活性炭などの脱色剤を用いて処理し、その後溶媒を通常の方法で除去して乾燥させることができる。
【0027】
以上の方法により99%以上の高純度不飽和第4級アンモニウム塩化合物を得ることがで
きる。必要に応じて、イオン交換樹脂処理による残存金属イオンの低減、再沈殿、再結晶
、カラムクロマトグラフィーなどの精製手段により精製してもよい。
【0028】
本発明の帯電防止剤である不飽和第4級アンモニウム塩化合物及び/又は該化合物を構成
成分とするオリゴマー又は/及びポリマーは、プラスチックなどの成形品に塗装した後、
乾燥して使用する場合、単独でも帯電防止性、プラスチックへの塗膜性改善、耐擦傷性、
高硬度化の効果を十分に示すことができる。また、本発明の本来の帯電防止性、耐水性、
透明性、相溶性などの特性を阻害しない範囲で、2個以上のエチレン基を有する多官能(
メタ)アクリレートまたは多官能(メタ)アクリルアミドを添加し、架橋性被膜を基材表
面に形成させることにより、さらなる製膜性や耐擦傷性などの塗膜の性能を向上させるこ
とができる。
【0029】
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)
アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトー
ルヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、
ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ
)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタン
トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1、6
−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アク
リレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジテトラエチレング
リコールジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)ア
クリレート等のモノマーとオリゴマーが挙げられる。
【0030】
このような多官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、アロニックスM−4
00、M−450、M−305、M−309、M−310、M−315、M−320、T
O−1200、TO−1231、TO−595、TO−756(以上、東亞合成製)、K
AYARD D−310、D−330、DPHA、DPHA−2C(以上、日本化薬製)
、ニカラックMX−302(三和ケミカル社製)等が挙げられる。
【0031】
また、多官能(メタ)アクリルアミドとしては、メチレンビスアクリルアミド、メチレン
ビスメタアクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド、エチレンビスメタアクリルアミ
ド、ジアリルアクリルアミド等のモノマーとウレタンアクリルアミド(特開2002−3
7849)等のオリゴマーが挙げられる。
【0032】
これらの多官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリルアミドは、1種類でも、
複数の多官能モノマー、オリゴマーを組み合わせて使用してもよい。また、このような多
官能モノマー、オリゴマーを使用する場合、本発明の不飽和第4級アンモニウム塩化合物
構成単位に対して0.001〜25000重量%含有させることが好ましく、また50〜
20000重量%含有させることが特に好ましい。含有量が0.1重量%未満ではその添
加効果が認められず、25000重量%を越えると、架橋率が高くなるため、塗膜の硬度
、耐擦傷性は向上するが、弾力性が失われて割れやすくなる。
【0033】
本発明の不飽和第4級アンモニウム塩化合物は、帯電防止組成物及び帯電防止層の種々の
性能、例えば硬化物性を硬くあるいは、柔らかく調整する際には、他の重合性化合物を混
合し、共重合させてもよく、重合性化合物としては、アルキル(メタ)アクリレート、ヒ
ドロキシアルキル(メタ)アクリレート、不飽和ニトリルモノマー、不飽和カルボン酸、
アミド基含有モノマー、メチロール基含有モノマー、アルコキシメチル基含有モノマー、
エポキシ基含有モノマー、多官能性モノマー、ビニルエステル、オレフィンなど分子鎖中
に反応性二重結合をもつラジカル重合化合物が挙げられる。
【0034】
アルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート
、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチル
アクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシ
ルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート
、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブ
チルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エ
チルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレートなどが挙げられる。
【0035】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)ア
クリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシブチル(メタ)
アクリレート等が挙げられる。
【0036】
不飽和ニトリルモノマーの例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙
げられる。
【0037】
不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イ
タコン酸、モノアルキルイタコネート等がある。
【0038】
このような重合性化合物は、1種類に限らず、複数の種類を組み合わせて使用してもよい

【0039】
本発明の不飽和第4級アンモニウム塩化合物は重合性化合物と公知の方法によって重合体
または共重合体とすることができる。重合方法としては、例えば、乳化重合、溶液重合、
懸濁重合、塊状重合等の方法を用いることができる。
【0040】
ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等
のアゾ化合物系触媒や、ベンゾイルパーオキシド、過酸化水素等の過酸化物系触媒、過硫
酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩系触媒等を用いることができる。重合
開始剤の使用量は、重合性単量体100重量%に対して0.05〜10重量%、好ましく
は0.2〜3重量%である。
【0041】
本発明の不飽和第4級アンモニウム塩化合物の含有量は、使用する多官能(メタ)アクリ
レート、多官能(メタ)アクリアミドの粘度、他の重合性化合物の配合量、樹脂組成物に
要求される物性によるので、特に限定されるものではないが、帯電防止組成物中の固形分
比で0.1〜90重量%、好ましくは1〜60重量%である。この不飽和第4級アンモニ
ウム塩化合物の含有量が0.1重量%以下では帯電防止性能が不十分となり、90重量%
を超えると透明性に劣るものとなる。
【0042】
本発明の不飽和第4級アンモニウム塩化合物及び/又は該化合物を構成成分とするオリゴ
マーもしくはポリマーを含む帯電防止剤、該帯電防止剤に多官能(メタ)アクリレート又
は/及び多官能(メタ)アクリルアミドをさらに含有する帯電防止組成物は基材上に塗装
して硬化させることによりコーティングすることから、塗装可能な粘度に調整するため、
反応性希釈剤や有機溶媒を含有していることが好ましい。
【0043】
反応性希釈剤は25℃の粘度が500mPa・s以下である低粘度ビニルモノマーであれ
ば、特に限定するものではないが、速硬性、低臭気、高引火点、高塗膜硬度が要求される
観点から、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド
、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、
アクリロイルモルホリンなどが好ましい。
【0044】
有機溶媒は本発明の不飽和第4級アンモニウム塩化合物、該化合物を構成成分とするオリ
ゴマー及びポリマーを溶解できるものが好ましい。特に、該不飽和第4級アンモニウム塩
化合物及び単独重合で得られるオリゴマーとポリマーに対して、溶解性パラメータが9〜
15(cal/cm0.5の有機溶媒が好ましい。
【0045】
本発明の不飽和第4級アンモニウム塩化合物を構成成分として含む帯電防止組成物は、活
性エネルギー線又は熱による硬化が可能であるので、プラスチックなどの成形品に塗装し
、乾燥後、硬化することによって、帯電防止性ハードコート樹脂組成物として使用するこ
とができる。
【0046】
本発明の活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物(光重合開始剤)を分解して活
性種を発生させることのできるエネルギー線と定義される。このような活性エネルギー線
としては、可視光、紫外線(UV)、赤外線、X線、α線、β線、γ線等の光エネルギー
線が挙げられる。ただし、一定のエネルギーレベルを有し、硬化速度が速く、しかも照射
装置が比較的安価で、小型である点から、紫外線を使用することが好ましい。
【0047】
本発明の不飽和第4級アンモニウム塩化合物を光硬化させる際は、光開始剤を添加してお
く。光開始剤は、活性エネルギー線として電子線を用いる場合には特に必要はないが、紫
外線を用いる場合には必要となる。光開始剤はアセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾ
フェノン系、チオキサントン系等の通常のものから適宜選択すればよい。光開始剤のうち
、市販の光開始剤としてはチバ・スペシャルティーケミカルズ社製、商品名Darocure11
16、Darocure1173、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE500、IRGACURE
651、IRGACURE754、IRGACURE819、IRGACURE907、IRGACURE1300、IRGACU
RE1800、IRGACURE1870、IRGACURE2959、IRGACURE4265、IRGACURE TPO、
UCB社製、商品名ユベクリルP36、などを用いることができる。
【0048】
本発明の不飽和第4級アンモニウム塩化合物の帯電防止性や相溶性などの特性を阻害しな
い範囲で、顔料、染料、界面活性剤、ブロッキング防止剤、バインダー、架橋剤、酸化防
止剤、紫外線吸収剤等の他の任意成分を併用してもよい。
【0049】
本発明の帯電防止組成物を調製する際に、これらの組成成分の添加順序としては不飽和第
4級アンモニウム塩化合物及び/又は該不飽和第4級アンモニウム塩化合物を構成成分と
するオリゴマーもしくはポリマー、反応性希釈剤及び/又は有機溶媒、多官能(メタ)ア
クリレート又は/及び多官能(メタ)アクリルアミド、光重合開始剤、その他の添加剤の
順に行うことが好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではな
い。
【0051】
なお、以下の実施例、比較例において、帯電防止組成物の特性評価は、以下の方法により
行った。
(1)不飽和第4級アンモニウム塩の定量方法電位差自動滴定装置(装置名:AT−610 京都電子工業株式会社製)を用いて、濃度0.02mol/Lのテトラフェニルほう酸ナトリウム溶液(関東化学株式会社製)により滴定を行い、滴定量から第4級アンモニウム塩濃度を求める。

(2)塗装厚さ100μmのポリエチレンテレフタラート
(PET)フィルムをガラス製板(縦200×横200×厚さ5mm)の上に貼り付け、
動かないように水平面に固定した。PETフィルムの先方の端に帯電防止ハードコート剤
を帯状に滴下して、バーコーター(RDS60)で全体に均等な力がかかるように両端を
押さえ、回転させずに同じ速さ(5cm/sec)で手前まで引いて塗装し、熱風乾燥機
で80℃、3分の条件で溶媒を除去し、塗膜を得た。塗膜の付着状態を目視によって観察
し、塗膜の形成性とべたつき性を評価した。

塗膜の形成性
◎:ハジキがなく、均一な塗装膜である;
○:ハジキが極めて僅にあるが、ほぼ均一な塗装膜である;
△:ハジキが幾分あるが、全体としてはほぼ均一な塗装膜である;
×:ハジキが多く、不均一な塗装膜である。

べたつき性
◎:ベタツキが全くない;
○:僅かにベタツキがある;
△:若干のベタツキがある;
×:明らかなベタツキがある。

(3)紫外線硬化塗装面を上向きにして紫外線照射を行って硬化させ、帯電防止ハードコート膜を得た。紫外線硬化条件は、出力300W、単位当たり出力50W/cmの高圧水銀灯1本を設置した紫外線照射装置(オーク製作所 モデルOHD320M)を使用し、1秒当たりに紫外線エネルギーは10mJ/cmであるように試料板とランプの距離を調節した。塗膜の表面がベタつかなくなるまでに必要な照射時間を硬化時間として測定した。硬化後、各PETフィルム上の塗膜の透明性を目視によって観察し、下記方法により表面抵抗率測定、耐擦傷性試験、鉛筆硬度試験を行った。

硬化後塗膜の透明性
◎:透明で表面が平滑;
○:透明だが凹凸がある;
△:僅かな曇りや凹凸がある;
×:極度な曇りや凹凸がある

(4)表面抵抗率測定 型板 (縦110×横110mm) を用い、カッターナイフで帯電防止ハードコート膜を裁断し、温度25℃、相対湿度60%に調整した恒温恒室機に入れ、24時間静置し、表面抵抗率測定用試料を得た。JIS K 6911 に基づき、YOKOGAWA HEWLETT-PACKARD製HIGH RESISTANFE METER 4329Aを用いて測定を行った。

(5)耐擦傷性試験 スチールウールを#0000のスチールウールを用いて、200g/cmの荷重をかけながら帯電防止ハードコート膜の上で10往復させ、傷の発生の有無を評価した。

耐擦傷性評価
◎:膜の剥離や傷の発生がほとんど認められない;
○:膜にわずかな細い傷が認められる;
△:膜全面に筋状の傷が認められる;
×:膜の剥離が生じる。

(6)鉛筆硬度試験ガラス製板(縦200×横200×厚さ5mm)の上に帯電防止ハードコート剤を帯状に滴下して、同様にバーコーター(RDS60)で全体に均等な力がかかるように両端を押さえ、回転させずに同じ速さ(5cm/sec)で手前まで引いて塗装し、熱風乾燥機で80℃、3分の条件で溶媒を除去した。得られた塗膜の塗装面を上向きにして紫外線照射を行って硬化させ、鉛筆硬度測定用試料を得た。JIS K 5400 に基づき、鉛筆硬度試験を行った。
【0052】
不飽和第4級アンモニウム塩化合物の製造実施例である合成例、比較合成例を以下に示す

【0053】
〈不飽和第4級アンモニウム塩化合物の合成〉
合成例1:窒素雰囲気下で、1Lオートクレーブガラス容器にN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(興人製:DMAPAA)300g、メタノール214gを加え、内温を30℃以下に調整し、撹拌しながら塩化メチルを注入し、4級化反応を実施した。反応液中の残存遊離アミン(残存DMAPAA)が0.2%以下になったところで反応液中の過剰の塩化メチルを減圧留去し、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド(DMAPAA−Q)65%含有メタノール液590g(収率96.6%)を得た。続いて、1Lの三つ口フラスコに、ナトリウムサッカリネート102g、メタノール392gを加え、攪拌しながら均一な溶液を調製した。該溶液を攪拌しながら、上記で合成したDMAPAA−Q65%含有メタノール液150gを25℃で1時間をかけて滴下し、同時に白色結晶状固形物が析出した。滴下終了後、さらに25℃で2時間攪拌した後、結晶をろ過し、メタノールで洗浄した後、ろ液中のメタノールを減圧濃縮し、目的の不飽和第4級アンモニウム塩化合物、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムサッカリネートを無色の透明液体として156g得た。電位差滴定で第4級アンモニウム塩濃度を求めたところ、該目的生成物の純度は100%であった。また、収率は93.5%であった。元素分析では、実測値(C:54.32%、H:6.13%、N:11.65%)が理論値(C:54.40%、H:6.56%、N:11.90%)と一致した。
【0054】
合成例2
合成例1において、ナトリウムサッカリネートに替えてカリウムサッカリネート42.6
gを用い、合成例1と同様に反応し、目的生成物アクリロイルアミノプロピルトリメチル
アンモニウムサッカリネートを無色の透明液体として61g得た。電位差滴定で第4級ア
ンモニウム塩濃度を求めたところ、該目的生成物の純度は100%であった。また、収率
は91.4%であった。元素分析では、実測値(C:54.11%、H:6.45%、N
:11.88%)が理論値(C:54.40%、H:6.56%、N:11.90%)と
一致した。
【0055】
合成例3
合成例1において、ナトリウムサッカリネートに替えてカルシウムサッカリネート39gを用い、合成例1と同様に反応し、目的生成物アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムサッカリネートを無色の透明液体として59.3g得た。電位差滴定で第4級アンモニウム塩濃度を求めたところ、該目的生成物の純度は100%であった。また、収率は88.9%であった。元素分析では、実測値(C:54.13%、H:6.76%、N:12.02%)が理論値(C:54.40%、H:6.56%、N:11.90%)と一致した。
【0056】
合成例4
窒素雰囲気下で、1Lオートクレーブガラス容器にDMAPAA300g、エタノール240gを加え、内温を30℃以下に調整し、撹拌しながら塩化メチルを注入し、4級化反応を実施した。反応液中の残存遊離アミン(残存DMAPAA)が0.2%以下になったところで反応液中の過剰の塩化メチルを減圧留去し、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド(DMAPAA−Q)50%含有エタノール液623g(収率98.1%)を得た。続いて、1Lの三つ口フラスコに、ナトリウムサッカリネート78.4g、エタノール471gを加え、攪拌しながら均一な溶液を調製した。該溶液を攪拌しながら、上記で合成したDMAPAA−Q50%含有エタノール液150gを25℃で1時間をかけて滴下し、同時に白色結晶状固形物が析出した。滴下終了後、さらに25℃で2時間攪拌した後、結晶をろ過し、エタノールで洗浄した後、ろ液中のエタノールを減圧濃縮し、目的の不飽和第4級アンモニウム塩化合物、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムサッカリネートを無色の透明液体として121g得た。電位差滴定で第4級アンモニウム塩濃度を求めたところ、該目的生成物の純度は100%であった。また、収率は94.3%であった。元素分析では、実測値(C:54.34%、H:6.52%、N:11.75%)が理論値(C:54.40%、H:6.56%、N:11.90%)と一致した。
【0057】
合成例5
窒素雰囲気下で、1Lの三つ口フラスコにDMAPAA200g、メタノール185.5gを加え、内温25℃に調整し、撹拌しながらp−トルエンスルホン酸メチル235.5gを滴下し、4級化反応を実施した。反応液中の残存遊離アミン(残存DMAPAA)が0.3%以下になったことを確認し、GC分析によりp−トルエンスルホン酸メチルが未検出であることを確認し、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムp−トルエンスルホナート(DMAPAA−TSMQ)70%含有メタノール液602g(収率97.1%)を得た。続いて、1Lの三つ口フラスコに、ナトリウムサッカリネート61.8g、メタノール237gを加え、攪拌しながら均一な溶液を調製した。該溶液を攪拌しながら、上記で合成したDMAPAA−TSMQ70%含有メタノール液140gを25℃で1時間をかけて滴下し、同時に白色結晶状固形物が析出した。滴下終了後、さらに25℃で2時間攪拌した後、結晶をろ過し、メタノールで洗浄した後、減圧濃縮し、目的の不飽和第4級アンモニウム塩化合物、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムサッカリネートを無色の透明液体として89g得た。電位差滴定で第4級アンモニウム塩濃度を求めたところ、該目的生成物の純度は100%であった。また、収率は88.1%であった。元素分析では、実測値(C:54.26%、H:6.34%、N:11.59%)が理論値(C:54.40%、H:6.56%、N:11.90%)と一致した。
【0058】
合成例6
合成例1において、DMAPAAに替えてN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルア
ミド(Degussa社製:DMAPMA)を用い、メタクリロイルアミノプロピルトリ
メチルアンモニウムクロライド(DMAPMA−Q)50%含有メタノール液を合成した
。続いて、1Lの三つ口フラスコに、ナトリウムサッカリネート58.7g、メタノール
293.5gを加え、攪拌しながら均一な溶液を調製した。該溶液を攪拌しながら、上記
で合成したDMAPMA−Q50%含有メタノール液120gを25℃で1時間かけて滴
下し、合成例1と同様に反応させて、目的生成物メタクリロイルアミノプロピルトリメチ
ルアンモニウムサッカリネートを無色の透明液体として92.1g得た。電位差滴定で第
4級アンモニウム塩濃度を求めたところ、該目的生成物の純度は99.9%であった。ま
た、収率は92.3%が理論値(C:55.60%、H:6.86%、N:11.44%
)と一致した。
【0059】
合成例7
窒素雰囲気下で、1Lオートクレーブガラス容器にN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(興人製:DMAEA)180g、メタノール365gを加え、内温を30℃以下に調整し、撹拌しながら塩化メチルを注入し、4級化反応を実施した。反応液中の残存遊離アミン(残存DMAEA)が0.3%以下になったところで反応液中の過剰の塩化メチルを減圧留去し、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(DMAEA−Q)40%含有メタノール液596g(収率97.9%)を得た。続いて、1Lの三つ口フラスコに、ナトリウムサッカリネート53.6g、メタノール268gを加え、攪拌しながら均一な溶液を調製した。該溶液を攪拌しながら、上記で合成したDMAEA−Q40%含有メタノール液120gを25℃で1時間をかけて滴下し、同時に白色結晶状固形物が析出した。滴下終了後、さらに25℃で2時間攪拌した後、結晶をろ過し、メタノールで洗浄した後、減圧濃縮し、目的の不飽和第4級アンモニウム塩化合物、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムサッカリネートを無色の透明液体として77.3g得た。電位差滴定で第4級アンモニウム塩濃度を求めたところ、該目的生成物の純度は99%であった。また、収率は91.6%であった。元素分析では、実測値(C:52.88%、H:5.45%、N:8.10%)が理論値(C:52.97%、H:5.93%、N:8.24%)と一致した。
【0060】
合成例8
窒素雰囲気下で、1Lの三つ口フラスコにDMAEA130g、メタノール360.1gを加え、内温25℃に調整し、撹拌しながらp−トルエンスルホン酸メチル166.7gを滴下し、4級化反応を実施した。反応液中の残存遊離アミン(残存DMAEA)が0.3%以下となり、GC分析によりp−トルエンスルホン酸メチルが未検出であることを確認し、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムp−トルエンスルホナート(DMAEA−TSMQ)45%含有メタノール液645g(収率98.3%)を得た。続いて、1Lの三つ口フラスコに、ナトリウムサッカリネート49g、メタノール245gを加え、攪拌しながら均一な溶液を調製した。該溶液を攪拌しながら、上記で合成したDMAEA−TSMQ45%含有メタノール液130gを25℃で1時間をかけて滴下し、同時に白色結晶状固形物が析出した。滴下終了後、さらに25℃で2時間攪拌した後、結晶をろ過し、メタノールで洗浄した後、減圧濃縮し、目的の不飽和第4級アンモニウム塩化合物、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムサッカリネートを無色の透明液体として71g得た。電位差滴定で第4級アンモニウム塩濃度を求めたところ、該目的生成物の純度は99%であった。また、収率は88.3%であった。元素分析では、実測値(C:53.04%、H:5.65%、N:8.33%)が理論値(C:52.97%、H:5.93%、N:8.24%)と一致した
【0061】
合成例9
合成例1において、DMAPAAに替えてN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(和光純薬工業社製:DMAEMA)を用い、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(DMAEMA−Q)45%含有メタノール液を合成した。続いて、1Lの三つ口フラスコに、ナトリウムサッカリネート60.8g、メタノール304gを加え、攪拌しながら均一な溶液を調製した。該溶液を攪拌しながら、上記で合成したDMAEMA−Q45%含有メタノール液130gを25℃で1時間をかけて滴下し、同時に白色結晶状固形物が析出した。滴下終了後、さらに25℃で2時間攪拌した後、結晶をろ過し、メタノールで洗浄した後、減圧濃縮し、目的の不飽和第4級アンモニウム塩化合物、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムサッカリネートを無色の透明液体として87g得た。電位差滴定で第4級アンモニウム塩濃度を求めたところ、該目的生成物の純度は100%であった。また、収率は87.2%であった。元素分析では、実測値(C:52.88%、H:5.45%、N:8.10%)が理論値(C:54.23%、H:6.26%、N:7.91%)と一致した。
【0062】
合成例10
合成例1において、ナトリウムサッカリネートに替えてアセスルファメートカリウム50.9gを用い、合成例1と同様に反応し、目的生成物アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムアセスルファメートを無色の透明液体として74.6g得た。電位差滴定で第4級アンモニウム塩濃度を求めたところ、該目的生成物の純度は100%であった。また、収率は91.2%であった。元素分析では、実測値(C:57.54%、H:6.81%、N:12.42%)が理論値(C:57.64%、H:6.95%、N:12.60%)と一致した。
【0063】
合成例11
合成例5において、ナトリウムサッカリネートに替えてアセスルファメートカリウム45.7gを用い、合成例5と同様に反応し、目的生成物アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムアセスルファメートを無色の透明液体として69.2g得た。電位差滴定で第4級アンモニウム塩濃度を求めたところ、該目的生成物の純度は99.8%であった。また、収率は94.2%であった。元素分析では、実測値(C:57.39%、H:6.71%、N:12.23%)が理論値(C:57.64%、H:6.95%、N:12.60%)と一致した。
【0064】
合成例12
合成例6において、ナトリウムサッカリネートに替えてアセスルファメートカリウム47gを用い、合成例6と同様に反応し、目的生成物メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムアセスルファメートを無色の透明液体として72.8g得た。電位差滴定で第4級アンモニウム塩濃度を求めたところ、該目的生成物の純度は100%であった。また、収率は92.5%であった。元素分析では、実測値(C:57.39%、H:6.71%、N:12.23%)が理論値(C:48.40%、H:7.25%、N:12.09%)と一致した。
【0065】
合成例13
合成例7において、ナトリウムサッカリネートに替えてアセスルファメートカリウム51.5gを用い、合成例7と同様に反応し、目的生成物アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムアセスルファメートを無色の透明液体として74.5g得た。電位差滴定で第4級アンモニウム塩濃度を求めたところ、該目的生成物の純度は100%であった。また、収率は93.7%であった。元素分析では、実測値(C:45.03%、H:6.23%、N:8.60%)が理論値(C:44.99%、H:6.29%、N:8.74%)と一致した。
【0066】
合成例14
合成例9において、ナトリウムサッカリネートに替えてアセスルファメートカリウム49.4gを用い、合成例9と同様に反応し、目的生成物メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムアセスルファメートを無色の透明液体として71.7g得た。電位差滴定で第4級アンモニウム塩濃度を求めたところ、該目的生成物の純度は99.9%であった。また、収率は90.0%であった。元素分析では、実測値(C:46.38%、H:6.21%、N:8.39%)が理論値(C:46.69%、H:6.63%、N:8.38%)と一致した。
【0067】
帯電防止ハードコート剤の作製
実施例A−1
合成例1で合成したアクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムサッカリネート
14重量部をイソプロピルアルコール(IPA)120重量部に溶解してから、ペンタエ
リスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)社製:ライトアクリレートPE−3A
)62重量部、光開始剤として、チバ・スペシャルティーケミカルズ社製、商品名Darocu
re1173 3重量部を加え、均一に混合し、紫外線硬化可能な帯電防止ハードコート剤
を得た。その後、得られたハードコート剤を厚さ12μmのPETフィルムに塗装し、紫
外線硬化を行い、帯電防止性ハードコートを作製した。
【0068】
実施例A−2〜12、比較例A−13〜20
表1と表2に記載の組成に変えた以外は実施例A−1と同様に帯電防止ハードコートを作
製、評価した。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
共重合体溶液の合成
撹拌翼、還流冷却器、ガス導入口を備えたフラスコに、合成例1で合成したアクリロイル
アミノプロピルトリメチルアンモニウムサッカリネート10重量部と2−エチルヘキシル
アクリレート(2EHA)10重量部、アゾイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量
部をイソプロピルアルコール(IPA)60重量部に混合溶解し、窒素気流下70℃で8
時間重合し、共重合体溶液(a)を得た。
【0072】
共重合体溶液の合成におけるモノマーの配合比を表3に示す。
【表3】

【0073】
4級塩ポリマー含有の帯電防止ハードコート剤の作製
実施例B−1
共重合体溶液(a)5重量部にペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株
)社製:ライトアクリレートPE−3A)50重量部とジペンタエリスリトールヘキサア
クリレート(共栄社化学(株)社製:ライトアクリレートDPE−6A)50重量部、及
び光開始剤として、チバ・スペシャルティーケミカルズ社製、商品名Darocure1173
5重量部をイソプロピルアルコール(IPA)115重量部に混合溶解して、紫外線硬化
可能な4級塩ポリマー含有の帯電防止ハードコート剤を得た。その後、得られたハードコ
ート剤を厚さ12μmのPETフィルムに塗装し、紫外線硬化を行い、帯電防止性ハード
コートを作製した。
【0074】
実施例B−2〜6、比較例B−7〜8
表4に記載の組成に変えた以外は実施例B−1とで同様に帯電防止性ハードコートを作
製、評価した。
【0075】
【表4】

【0076】
合成例と合成比較例の結果から、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジ
アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートと塩化メチル又はスルホン酸エステルの4
級化反応後、プロトン性の極性溶媒中で、サッカリン酸ナトリウム、アセスルファムカリ
ウムとの金属塩交換反応が常温、常圧でも十分な速度で反応が進行し、重合などのトラブ
ルが発生せず、高純度品を高収率で取得することができた。また、スルホン酸エステルで
4級化される場合、得られた本発明の不飽和第4級アンモニウム塩化合物には、ハロゲン
イオンの混入がなく、透明性、耐湿性の高い均一な帯電防止塗膜を形成できる。実施例と
比較例のUV硬化性と塗膜の帯電防止性評価結果から、塩素イオンの存在によるUV硬化
の所要時間が長くなり、得られた塗膜がべとつき、透明性が悪く、また、それらの原因で
均一な塗膜が得られず、帯電防止効果が低かった。さらに、本発明の不飽和第4級アンモ
ニウム塩化合物は室温で液体であるので、帯電防止剤組成物中の多官能アクリレートなど
の非極性成分との相溶性がよく、均一な塗膜が得られる。本発明の製造方法で得られた高
品質新規不飽和第4級アンモニウム塩化合物のみが、UV硬化に要するエネルギーが少な
く、透明性がよく、高耐擦傷性、高硬度、高耐湿性と高耐加水分解性を併せ持つ、優れた
帯電防止性能を有する帯電防止剤を提供できることが明らかであった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明してきたように、本発明の不飽和第4級アンモニウム塩化合物は、常温、常圧で
も十分な反応速度で高純度かつ高収率で製造することができる。また、ハロゲン含有せず
、食品添加剤である高安全性甘味料を原料として使用したため、環境に無害である。さら
に、当該不飽和第4級アンモニウム塩化合物は室温で液体であり、他の帯電防止組成物及
び有機溶媒との相溶性が良好であるため、それからなる帯電防止組成物を用いて形成され
る帯電防止層は、帯電防止性、透明性、耐擦傷性、高硬度、耐湿性と耐加水分解性に優れ
る。本発明の不飽和第4級アンモニウム塩化合物からなる帯電防止層は、紫外線硬化型樹
脂組成物、粘着剤組成物等の樹脂にあらかじめ添加して使用する場合などに好適に用いる
ことができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)又は、一般式(2)で表される化合物である不飽和第4級アンモニウム塩化
合物。
【化1】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を、R及びRは各々独立に炭素数1〜3の
アルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜3のアルキル
基、炭素数1〜3のアルケニル基またはベンジル基を表し、Yは酸素原子または−NH−
を表し、Zは炭素数1〜3のアルキレン基を表す。)
【化2】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を、R及びRは各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルケニル基またはベンジル基を表し、Yは酸素原子または−NH−を表し、Zは炭素数1〜3のアルキレン基を表す。)
【請求項2】
請求項1記載の不飽和第4級アンモニウム塩化合物を構成成分として含むオリゴマー又は
ポリマー。
【請求項3】
請求項1記載の不飽和第4級アンモニウム塩化合物及び/又は請求項2記載のオリゴマー
若しくはポリマーからなる帯電防止剤。
【請求項4】
請求項3記載の帯電防止剤又は該帯電防止剤を含有する帯電防止組成物であって、請求項
1記載の不飽和第4級アンモニウム塩化合物を構成単位として0.1〜90重量%含有す
るもの。
【請求項5】
請求項3記載の帯電防止剤を含有する帯電防止組成物であって、さらに多官能(メタ)ア
クリレート及び/又は多官能(メタ)アクリルアミドを含有する帯電防止組成物。
【請求項6】
基材上に請求項3〜5いずれか一項に記載の帯電防止剤又は帯電防止組成物を塗装した後
、活性エネルギー線又は熱により重合して形成されることを特徴とする帯電防止層。
【請求項7】
少なくとも片面に請求項6記載の帯電防止層を有することを特徴とする帯電防止フィルム



【公開番号】特開2011−153109(P2011−153109A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16893(P2010−16893)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000142252)株式会社興人 (182)
【Fターム(参考)】