与信判定システム、車載器及び与信判定方法
【課題】全てのカードの与信判定を行う時間がない場合でも効率的かつ適切な与信判定ができる与信判定システムを提供する。
【解決手段】車両が料金所の入口ゲートの前に設置された路側機を通過すると、車載器は、ETCカードに記憶されている「利用履歴」を要求し、これに対してETCカードは「利用履歴」を車載器に送信する。車載器は、「利用履歴」を基に現在装着されているETCカードの信頼度から、与信判定をすべき優先度を判定する。
【解決手段】車両が料金所の入口ゲートの前に設置された路側機を通過すると、車載器は、ETCカードに記憶されている「利用履歴」を要求し、これに対してETCカードは「利用履歴」を車載器に送信する。車載器は、「利用履歴」を基に現在装着されているETCカードの信頼度から、与信判定をすべき優先度を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
路側機と無線通信可能な車載器に装着された状態で車両用有料施設の課金処理に用いられるICカードの与信判定を行う与信判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ETC(Electronic Toll Collection system:自動料金収受システム)などのカード決済システムでは、盗難されたカードや不正利用の疑いがあるカードの使用を防ぐため、それらのカード情報をブラックリストとしてサーバ上で管理する方法が一般的に採られる。しかしこの方法によれば、料金所を通過する全てのカード(車両に搭載された車載器によりデータ処理されるカード)に対して与信判定を行う必要があるため、与信判定から決済までに時間がかかるという問題があった。
【0003】
従来、この問題を解決する技術として、例えば、特許文献1記載の発明は、入口ゲート通過時にカードの情報を読み出し、出口ゲートを通過するまでの間に与信判定を行うことにより、与信判定の時間を長くとろうとした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−第348321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる従来の技術では、与信判定の時間をより長くとることはできても、全てのカードに対して与信判定を行う時間がない場合に効率的かつ適切な与信判定ができるものではなかった。
【0006】
すなわち、従来の技術では、あくまでも入口ゲートから入場した順序で全てのカードの与信判定が行われることが前提となっているため、仮に、盗難や不正利用が疑われるカードが入口ゲートを通過したとしても、そのカードに対する与信判定は、与信判定を待っているジョブ(待ち行列)の一番最後に挿入されることになり、仮に、そのカードが入口ゲートから近い出口ゲートから退場しようとした場合は、盗難が疑われるにもかかわらず、与信判定が間に合わない可能性がある。
【0007】
特に今後、カードの利用数が増えるに従ってブラックリストに登録されるカードの数も増加するため、与信判定の処理時間は延びることが予測される。また、今後は既存の料金所以外にも、ETCによる入退場が可能なSA(サービスエリア)が増加することが予想され、そうすると、入口ゲートに入ってから出口ゲートを出るまでの時間が短くなり、管理サーバによる与信判定が間に合わなくなる可能性も高くなる。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、全てのカードの与信判定を行う時間がない場合でも効率的かつ適切な与信判定ができる与信判定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、路側機と無線通信可能な車載器に装着された状態で車両用有料施設の課金処理に用いられるICカードの与信判定を行う与信判定システムであり、記憶手段、判定手段及び与信手段を備える。記憶手段は、当該ICカードを特定できるカードIDが記憶されているICカードが利用された際に、そのICカードの利用履歴を記憶装置に記憶し、判定手段は、車両が有料施設に進入した際に、その車両に搭載された車載器に装着されたICカードの利用履歴を記憶装置から読み出し、その読み出した利用履歴を基に、そのICカードの信頼度を判定し、与信手段は、判定手段により信頼度が判定されたICカードの与信判定を、その判定された信頼度が低いほど優先して行う。
【0010】
かかる請求項1記載の発明によれば、ICカードの利用履歴からカードの信頼度を判定し、与信判定の優先度を設定するため、盗難や不正利用が疑われるカードは優先して与信判定がなされることになり、全てのカードの与信判定を行う時間がない場合でも効率的かつ適切な与信判定ができる。
【0011】
なお、ここでいう有料施設とは、高速道路など有料道路のほか、駐車場、娯楽施設など車両が進入してICカードにより課金処理がなされる場所を指している。
【0012】
ところで、与信判定を行う際に、今回利用する料金所が、そのICカードにより過去に利用された料金所であれば、盗難や不正利用の可能性は低いといえる。それは、盗難や不正利用されたICカードであれば、過去に利用された料金所と一致する可能性は低いからである。
【0013】
そこで、請求項2記載の発明は、請求項1記載の与信判定システムにおいて、記憶手段は、ICカードの利用履歴として、路側機が設置された料金所を特定できる料金所IDを含めて記憶することを特徴とする。
【0014】
かかる請求項2記載の発明によれば、今回利用する料金所が、そのICカードにより過去に利用された料金所であれば、信頼度を高く判定することにより、効率的かつ適切な与信判定が可能となる。
【0015】
なお、ここにいう「料金所」とは、車両が有料施設(例えば、道路)に入場又はその有料施設から退場する際に、課金処理のために通過すべきポイントを意味しており、必ずしも料金が支払われる場所である必要はないし、1つの料金所に複数のゲートが設けられていても料金所は1つのものとして捉える。
【0016】
また、与信判定を行う際に、現在の車載器が、そのICカードにより過去に利用されたことのある車載器であれば、盗難や不正利用の可能性は低いといえる。それは、盗難や不正利用されたICカードであれば、過去に利用された車載器と一致する可能性は低いからである。
【0017】
そこで、請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の与信判定システムにおいて、記憶手段は、ICカードの利用履歴として、そのICカードが装着された車載器を特定できる車載器IDを含めて記憶することを特徴とする。
【0018】
かかる請求項3記載の発明によれば、現在の車載器が、そのICカードにより過去に利用されたことのある車載器であれば、信頼度を高く判定することにより、効率的かつ適切な与信判定が可能となる。
【0019】
さらに、与信判定を行う際に、そのICカードが、現在の車載器により適切に認証されたものであれば、盗難や不正利用の可能性は低いといえる。
【0020】
そこで、請求項4記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか記載の与信判定システムにおいて、車載器は、ICカードが装着された際にそのICカードの認証を行うものであり、判定手段は、車載器によりICカードの認証が適切に行われたことを基に、信頼度を判定することを特徴とする。
【0021】
かかる請求項4記載の発明によれば、現在の車載器が、そのICカードにより過去に利用されたことのある車載器であれば、信頼度を高く判定することにより、効率的かつ適切な与信判定が可能となる。
【0022】
請求項5記載の車載器は、路側機と無線通信可能な車載器に装着された状態で車両用有料施設の課金処理に用いられるICカードの与信判定を行う与信判定システムに用いる車載器であり、記憶手段及び判定手段を備える。記憶手段は、当該ICカードを特定できるカードIDが記憶されているICカードが利用された際に、そのICカードの利用履歴を記憶装置に記憶し、判定手段は、自車両が有料施設に進入した際に、当該車載器に装着されたICカードの利用履歴を記憶装置から読み出し、その読み出した利用履歴を基に、そのICカードの信頼度を判定する。そして、与信判定は、判定手段により判定されたICカードの信頼度が低いほど優先して行われることを特徴とする。
【0023】
かかる請求項5記載の車載器によれば請求項1記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【0024】
請求項6記載の発明は、路側機と無線通信可能な車載器に装着された状態で車両用有料施設の課金処理に用いられるICカードの与信判定を行う与信判定方法であり、記憶ステップ、判定ステップ及び与信ステップを備える。記憶ステップでは、当該ICカードを特定できるカードIDが記憶されているICカードが利用された際に、そのICカードの利用履歴を記憶装置に記憶し、判定ステップでは、車両が有料施設に進入した際に、その車両に搭載された車載器に装着されたICカードの利用履歴を記憶装置から読み出し、その読み出した利用履歴を基に、そのICカードの信頼度を判定し、与信ステップでは、判定ステップで信頼度を判定したICカードの与信判定を、その判定された信頼度が低いほど優先して行う。
【0025】
かかる請求項6記載の車載器によれば請求項1記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態としてのETCカード用与信判定システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態としてのETCカード用与信判定システムの処理の概要を示す説明図である。
【図3】車載器の制御部が実行する優先度判定処理を示すフローチャートである。
【図4】車載器の制御部が実行するカード認証処理を示すフローチャートである。
【図5】ETCカードの制御部が実行する利用履歴受信処理を示すフローチャートである。
【図6】ETCカードの制御部が実行する利用履歴送信処理を示すフローチャートである。
【図7】路側機の制御部が実行する第1アンテナ処理を示すフローチャートである。
【図8】路側機の制御部が実行する第2アンテナ処理を示すフローチャートである。
【図9】路側機の制御部が実行する出口アンテナ処理を示すフローチャートである。
【図10】管理サーバの制御部が実行する判定順序設定処理を示すフローチャートである。
【図11】管理サーバの記憶装置が記憶する待ち行列のデータ構成を示す説明図である。
【図12】管理サーバの制御部が実行する与信判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1 構成]
図1は、本実施形態のETCカード用与信判定システム1のハードウエア構成を示すブロック図である。
【0028】
図示するようにETCカード用与信判定システム1は、車載器2、ETCカード3、路側機4、管理サーバ5を備える。
【0029】
車載器2は、車両(以下当該車載器2が搭載された車両を「自車両」という。)に搭載され、自車両が有料道路の料金所の入口ゲートや出口ゲートを通過する際に、料金所に設置されている路側機4とDSRC(Dedicated Short Range Communication:狭域通信)による無線通信を行い、ETCカード3から読み出したカードIDなどを用いて走行料金の課金処理を実行する装置である。
【0030】
この車載器2は、優先度判定部21、ICカード通信部22、制御部23、無線通信部24、無線アンテナ25、車載器ID・カード履歴格納部26を備える。
【0031】
優先度判定部21は、ETCカード3に記憶された「利用履歴」(詳細は後述する)を基にETCカード3が与信判定される際の優先度を判定するものであり、実際には、制御部23が後述する優先度判定処理(図3)を実行することで機能する。この優先度判定部21は、ソフトウエアとして共通化して実現する必要はなく、独立したハードウエアで構成することが可能である。
【0032】
ICカード通信部22は、ETCカード3などのICカードと非接触式のデータ通信を行う部位であり、ETCカード3が装着されて、ETCカード3に記憶されているデータの読み出し及び書き込みを行う。なお、これは接触式のデータ通信であってもよい。
【0033】
制御部23は、周知の演算器と同様に構成され、ICカード通信部22や無線通信部24で受信したデータや車載器ID・カード履歴格納部26から読み出したデータなどを基にして演算処理を行うものであり、後述する優先度判定処理(図3)やカード認証処理(図4)、車載器2の初期設定処理(料金決済用情報やセットアップ情報の書き込み処理)やETCシステムにおける料金収受処理などを行う。
【0034】
無線通信部24は、周知の通信回路であり、有料道路における料金所の入口ゲートや出口ゲートに設置された路側機4との間で実行される自動料金収受処理などの無線通信に用いられる。
【0035】
無線アンテナ25は、無線通信部24に設けられた周知のアンテナであり、路側機4とのデータ通信に用いられる。
【0036】
車載器ID・カード履歴格納部26は、当該車載器2を特定できる車載器ID及び過去に装着され認証されたことのあるICカードを特定できるカードIDの履歴が「カード履歴」として記憶される記憶装置である。
【0037】
なお、車載器ID・カード履歴格納部26には、データ通信や演算をした結果や、車載器2に関する情報(車載器情報)として、例えば、機器識別用番号、型式番号などの情報や、車載器2が搭載される車両の大きさや重量、ナンバープレート情報なども記憶されている。
【0038】
ETCカード3は、車載器2に装着されて路側機4と通信を行うことにより有料道路などの課金処理が行われる周知の非接触式ICカードであり、通信部31、制御部32、利用履歴格納部33、カードID格納部34を備える。
【0039】
通信部31は、車載器2と非接触式の通信を行う部位であり、カードID格納部34に記憶されているデータの送信や車載器2からのデータの受信を行う。
【0040】
制御部32は、周知の演算器と同様に構成され、通信部31で受信したデータやカードID格納部34から読み出したデータなどを基にして演算処理を行うものであり、後述する利用履歴受信処理(図5)や利用履歴送信処理(図6)を行う。
【0041】
利用履歴格納部33は、このETCカード3が利用された履歴(「利用履歴」)が記憶される記憶装置であり、具体的には、このETCカード3が利用された際に、このETCカード3が装着された車載器2を特定できる車載器ID、及び、その車載器2と通信を行った路側機4が設置された料金所を特定できる料金所IDのセットが「利用履歴」として記憶される。
【0042】
カードID格納部34は、当該ETCカード3を特定できるカードIDが記憶される記憶装置である。このカードIDは、当該ETCカード3について、各種課金処理、与信判定がなされる際に当該ETCカード3を特定するために用いられる。
【0043】
なおこのカードID格納部34には、有料道路走行時の課金処理に用いられるカード情報として、他に、入口ゲートの情報(入口情報)、名義人情報、銀行口座情報、及びカード会社情報などの情報も記憶されている。またこのETCカード3の機能は、周知の携帯電話でも実現することができる。
【0044】
路側機4は、有料道路の料金所の入口ゲートの前、入口ゲートの後及び出口ゲートにそれぞれ設置されており、無線通信部41、無線アンテナ42、料金所ID格納部43、開閉バー制御部44、制御部45、車両進入検知部46、通信部47を備える。
【0045】
無線通信部41は、周知の無線通信回路であり、車載器2と無線によるデータ通信を可能にする。
【0046】
無線アンテナ42は、無線通信部41に備えられた周知のアンテナており、車載器2とのデータ通信に用いられる。
【0047】
なお、この無線アンテナ42について、入口ゲートの前に設置された路側機4に備えられたものを第1アンテナ、入口ゲートの後に設置された路側機4に備えられたものを第2アンテナ、出口ゲートに設置された路側機4に備えられたものを出口アンテナと呼ぶ。
【0048】
料金所ID格納部43は、当該路側機4が設置されている料金所を特定できる料金所IDが記憶される記憶装置である。この料金所ID格納部には、データ通信や演算をした結果なども記憶されている。
【0049】
なお、料金所とは、車両が有料施設(ここでは道路)に入場又はその有料施設から退場する際に、課金処理のために通過すべきポイントを意味しており、必ずしも料金が支払われる場所である必要はないし、複数のゲートが設けられており、そのため路側機4も複数設置されている場合も考えられるが、料金所としては1つのものとして捉える。
【0050】
開閉バー制御部44は、路側機4が備えられた料金所を車両が通行する際の入退場を許可する開閉バーの開閉を制御する装置である。ここでは特に、与信されなかった場合に開閉バーを閉じたままにして、車両が退場することを禁止する機能を果たす。
【0051】
制御部45は、周知の演算器と同様に構成され、無線通信部41や通信部47で受信したデータや料金所ID格納部43から読み出したデータなどを基にして演算処理を行うものであり、当該路側機4が設置された場所に応じて、入口ゲートの前の路側機4が行う第1アンテナ処理(図7)、入口ゲートの後の路側機4が行う第2アンテナ処理(図8)又は出口ゲートの路側機4が行う出口アンテナ処理(図9)、ETCシステムにおける料金収受処理などを実行する。
【0052】
車両進入検知部46は、当該路側機4が設置された料金所のゲートに車両が進入してきた際に当該車両を検知するためのセンサである。
【0053】
通信部47は、管理サーバ5と通信を行い、路側機4が取得したデータ(カードID、車載器ID、後述する与信判定の優先度など)などを送信したり、管理サーバ5によりなされた与信判定の結果などを受信したりする。
【0054】
管理サーバ5は、路側機4から送信されるデータに基づいて、ETCカード3に対する与信判定を行うものであり、判定順序制御部51、与信判定部52、制御部53、通信部54、ブラックリスト格納部55を備える。
【0055】
判定順序制御部51は、管理サーバ5が与信判定を行う際に、与信判定の順序(待ち行列)を制御するものであり、実際には、制御部53が後述する判定順序設定処理(図10)を実行することで機能する。
【0056】
与信判定部52は、ブラックリスト格納部55に記憶されたブラックリストに路側機4から取得したカードIDが含まれているか否かにより与信判定を行うものであり、実際には、制御部53が後述する与信判定処理(図12)を実行することで機能する。
【0057】
これら判定順序制御部51及び与信判定部52は、ソフトウエアとして共通化して実現する必要はなく、独立したハードウエアで構成することが可能である。
【0058】
制御部53は、周知の演算器と同様に構成され、送受信されるデータやブラックリスト格納部55から読み出したデータなどを基にして演算処理を行う。
【0059】
通信部54は、路側機4からカードID、車載器ID及び与信判定の優先度などのデータを受信し、管理サーバ5で演算を行なった結果として、例えば、与信されず盗難や不正使用の疑いのあるカードIDや車載器IDなどのデータの送信を行う。
【0060】
ブラックリスト格納部55は、例えば、盗難や不正利用が疑われるカードなど与信されないカードIDのリストをブラックリストとして予め記憶しておく記憶装置である。なお、ブラックリスト格納部55には、データ通信や演算をした結果なども記憶されている。
[2 処理]
以下、本実施形態の車載器2の制御部23、ETCカード3の制御部32、路側機4の制御部45及び管理サーバ5の制御部53が実行する処理について図面を用いて説明する。
[2−1 概要]
図2は、本実施形態としてのETCカード用与信判定システム1の処理の概要を示す説明図である。
【0061】
車両が料金所の入口ゲートの前に設置された路側機4を通過すると、その路側機4の車両進入検知部46がこれを検知するとともに、車載器2は、路側機4の無線アンテナ42(第1アンテナ)に対して、車載器情報を路側機4に送信する。
【0062】
これを受けてその路側機4の制御部45は、後述する第1アンテナ処理(図7)を実行し、料金所ID格納部43から料金所IDを読み出し、その読み出した料金所IDを無線通信部41及び無線アンテナ42(第1アンテナ)を介して、車載器2に送信する。
【0063】
これを受けて車載器2の制御部23は、後述する優先度判定処理(図3)を実行し、現在装着しているETCカード3に記憶されている「利用履歴」を要求し(後述するS101)、これに対してETCカード3の制御部32は後述する利用履歴送信処理(図6)により「利用履歴」(車載器ID及び料金所IDのセット)を車載器2に送信する。
【0064】
車載器2の制御部23は、ETCカード3から送信された「利用履歴」を基にETCカード3の信頼度から与信判定すべき優先度を判定する。
【0065】
そして、車両が入口ゲートの後に設置された路側機4の無線アンテナ42(第2アンテナ)との通信が可能になった段階で、車載器2の制御部23は、図示しない処理により、優先度を路側機4に送信する。
【0066】
これを受けて、路側機4の制御部45は、後述する第2アンテナ処理(図8)を実行して、優先度を車載器2から受信するとともに、課金処理のため、入口ゲートの情報(入口情報)をETCカード3に書き込む要求を車載器2に送信し、車載器2から受信した優先度をETCカード3のカードIDとともに通信部47を介して管理サーバ5に送信する。
【0067】
これを受けて管理サーバ5の制御部53は、後述する、判定順序設定処理(図10)及び与信判定処理(図12)により優先度に基づいた与信判定を行い、信用力がないと判断した場合は、出口ゲートに備えられた路側機4の通信部47に車載器ID及びカードIDなどを判定結果として送信する。なお、この出口ゲートは、車両が入場した入口ゲート及び方向から、その車両が退場する可能性のある出口ゲートが選択される。
【0068】
最後に、車両が出口ゲートから退場しようとする際に、出口ゲートの路側機4の制御部45は後述する出口アンテナ処理(図9)を行う。すなわち、判定結果に基づき車両を通行可であれば開閉バーを開き、通行不可であれば開閉バーを閉じたままとする。
[2−2 車載器の処理]
図3は、車載器2の制御部23が実行する優先度判定処理を示している。この優先度判定処理は、自車両が路側機4を備えた料金所(入口ゲート)を通過する際に、入口ゲートの前に設置された路側機4から料金所IDを受信することにより開始する。
【0069】
まずS101では、ETCカード3に対して、「利用履歴」(車載器ID及び料金所IDのセット)を1つだけ読み出す旨の命令を送信する。なお、このS101が繰り返される場合は、2回目以降は、次に記憶された「利用履歴」を読み出すことになる。
【0070】
ここにいう「利用履歴」とは、前述のように、このETCカード3が利用された際に、このETCカード3が装着された車載器2を特定できる車載器ID、及び、その車載器2と通信を行った路側機4が設置された料金所を特定できる料金所IDのセットが「利用履歴」として記憶されるものである。
【0071】
具体的には、図示しない処理により、路側機4から送信され無線通信部24及び無線アンテナ25により受信した料金所IDが「利用履歴」として、このS101と同じタイミングでETCカード3に送信され、ETCカード3は後述する利用履歴受信処理(図5)により、車載器2を特定できる車載器IDを取得して、料金所IDと車載器IDを1つのセットにして、ETCカード3の利用履歴格納部33に「利用履歴」として記憶する。
【0072】
なおこのS101で「利用履歴」の読み出し要求を受信することで、ETCカード3の制御部23は、後述する利用履歴送信処理(図6)も実行し、利用履歴格納部33に記憶されている「利用履歴」として、料金所ID及び車載器IDのセットを1つずつ読み出して、車載器2に送信する。
【0073】
続いてS102では、S101で要求した結果、まだ読み出していない「利用履歴」があるか否かを判断する。まだ読み出していない「利用履歴」があれば(S102:YES)、その「利用履歴」を取得してS103に進み、読み出していない「利用履歴」がなければ(S102:NO)、S107に進む。
【0074】
S103では、「利用履歴」の車載器IDが自らの車載器IDと一致するか否かを判定する。一致する場合(S103:YES)、S104に進み、一致しない場合(S103:NO)、そのままS105に進む。
【0075】
S104では、当該ETCカード3の「レベル」を4だけ増加させて、S105に進む。
【0076】
ここにいう「レベル」とは、最終的には車載器2に装着されたETCカード3に関して、どの程度の信頼度があるかを示す整数値であり、「レベル」が高いほど信頼度が高く、そのため与信判定の優先度が低くてよいことを示すものである。
【0077】
ただし、このS103を処理する段階では、読み出した個々の「利用履歴」との一致により、最終的な信頼度を算出する前提として、「レベル」に4を加算している。すなわち、このS104では、利用履歴の車載器IDに自らの車載器IDがあることにより、当該車載器IDと当該ETCカード3との組み合わせで過去に利用された履歴があることから、そのETCカード3が盗難や不正により利用されている可能性が低いと判断することにより、信頼度が高くなるように「レベル」を加算する。
【0078】
次にS105では、「利用履歴」の料金所IDが、今回、路側機4から送信された料金所IDと一致する否かを判断する。一致する場合(S105:YES)、S106に進み、一致しない場合(S105:NO)、S101に戻る。
【0079】
このS105では、「利用履歴」の料金所IDに今回、車両が通過する料金所IDがあることにより、特定の料金所と当該ETCカード3との組み合わせで過去に利用された事実が存在することから、そのETCカード3が盗難や不正利用の可能性が低いと判断して、「レベル」を加算する。
【0080】
一方、S107では、「利用履歴」のセット毎の「レベル」の平均値を算出する。具体的には、各セットの「レベル」の総加算値を、「利用履歴」のセット数で除算する。このS107の後、S108に進む。
【0081】
このS107の処理により算出される「レベル」は「利用履歴」のセット1つあたりの平均値を示しており、最終的に算出する信頼度の前提となる。
【0082】
S108では、車載器ID・カード履歴格納部26から「カード履歴」を読み出し、S109に進む。
【0083】
S109では、その読み出した「カード履歴」に、今回装着されているETCカード3のカードIDと一致するものが含まれているか否かを判断する。一致するものがある場合(S109:YES)、S110に進み、一致するものがない場合(S109:NO)、そのままS111に進む。
【0084】
このS109では、車両の車載器2に装着されたETCカード3が、適切な認証の手続を経て「カード履歴」として記憶されており、そのETCカード3が盗難や不正により利用されている可能性が低いと判断するものである。
【0085】
また「カード履歴」は、前述のように、ETCカード3などICカードを特定できるカードIDがリストとして記憶されているものであり、具体的には、後述するカード認証処理(図4)により、車載器2にETCカード3が装着され、適切な認証の手続を経るこので、そのETCカード3のカードIDが「カード履歴」として記憶されることになる。
【0086】
S110では、「レベル」を1だけ増加させてS111に進む。
【0087】
この段階まで算出された「レベル」がETCカード3の最終的な信頼度を示しており、この段階の「レベル」を基に与信判定の優先度が決まる。
【0088】
S111では、算出した「レベル」の値がいくつであるかを判定する。すなわち「レベル」が4以上であれば(S111:4以上)、S112に進み、S112では、優先度を「低」に設定して、S115に進む。「レベル」が2より大きく4未満であれば(S111:2〜4)、S113に進み、S113では、優先度を「中」に設定して、S115に進む。「レベル」が2以下であれば(S111:2以下)、S114に進み、S114では、優先度を「高」に設定して、S115に進む。
【0089】
この優先度の「低」、「中」及び「高」は、後述する判定順序設定処理で待ち行列での順序を設定する際の優先度として用いられる。
【0090】
S115では、設定した優先度を内部の記憶装置(例えば、車載器ID・カード履歴格納部26)に記憶して、この優先度判定処理を終了する。
【0091】
なお、車載器2の制御部23は、車両が入口ゲートの後に設けられた路側機4の無線アンテナ42(第2アンテナ)の領域に入ることで、図示しない処理により、S115で内部の記憶装置に記憶した優先度をカードID及び車載器IDを含めて管理サーバ5に送信する。この信号を受信した路側機4の制御部45は、後述する第2アンテナ処理(図8)を実行する。
【0092】
図4は、車載器2の制御部23が実行するカード認証処理を示すフローチャートである。車載器2の制御部23は、車載器2にETCカード3が装着されることで、このカード認証処理を開始する。
【0093】
まずS201では、装着されたETCカード3について、通常の認証処理を行う。
【0094】
続いてS202で、認証が正常に行われたか否かを判断する。認証が正常に行われれば(S202:YES)、S203に進み、認証が正常に行われなければ(S202:NO)、このカード認証処理を終了する。
【0095】
S203では、車載器ID・カード履歴格納部26から「カード履歴」を読み出し、S204に進む。
【0096】
S204では、読み出された「カード履歴」に、今回装着されたETCカード3のカードIDと一致するものが含まれているか否かを判断する。一致するものが含まれていれば(S204:YES)、このカード認証処理を終了する。一致するものが含まれていなければ(S204:NO)、S205に進む。
【0097】
S205では、今回装着されたETCカード3が適切に認証されたものとして「カード履歴」に追加して、車載器ID・カード履歴格納部26に記憶する。このS205の処理の後、このカード認証処理を終了する。
【0098】
このS205により、装着されたETCカード3が適切な認証を経ており、盗難や不正利用の疑いが小さいものとして、そのカードIDを「カード履歴」に追加する。
[2−3 ETCカードの処理]
図5は、ETCカード3の制御部32が実行する利用履歴受信処理を示すフローチャートである。ETCカード3の制御部32は、前述したように、車載器2の制御部23が優先度判定処理(図3)を実行し、車載器2から「利用履歴」の読み出し要求を受信(S101に対応)することにより、この利用履歴受信処理を開始する。なお、この読み出し要求には、自車両の車載器2が、入口ゲート前の路側機4から取得した料金所IDが含まれており、ETCカード3の制御部32はこの利用履歴受信処理の前提として、現在通過しようとしている料金所の料金所IDを取得している。
【0099】
まずS301では、車載器2に対し、車載器ID・カード履歴格納部26に記憶されている車載器IDを送信するように要求し、S302に進む。
【0100】
S302では、車載器2から車載器IDを取得し、S303に進む。
【0101】
S303では、既に取得している料金所IDと車載器IDとを1つのセットにして、今回の「利用履歴」として利用履歴格納部33に記憶する。S303の後、この利用履歴受信処理を終了する。
【0102】
なお、この利用履歴受信処理は、車載器2の制御部23が実行する優先度判定処理でS101が繰り返して実行される場合、すなわちETCカード3から複数の「利用履歴」(車載器ID及び料金所IDのセット)を読み出す場合であっても、最初の1回だけ実行し、2回目以降は実行しない。
【0103】
図6は、ETCカード3の制御部32が実行する利用履歴送信処理を示すフローチャートである。ETCカード3の制御部32は、前述したように、車載器2の制御部23が優先度判定処理(図3)を実行し、車載器2から「利用履歴」の読み出し要求を受信(S101に対応)することにより、この利用履歴送信処理を開始する。なお、今回取得した「利用履歴」については、車載器ID及び料金所IDが必ず一致することになってしまうため除かれる。
【0104】
まずS401では、利用履歴格納部33に記憶されている「利用履歴」から車載器ID及び料金所IDのセットを1つだけ読み出して、S402に進む。
【0105】
S402では、S401で読み出した、車載器ID及び料金所IDのセットを車載器2に送信して、この利用履歴送信処理を終了する。
【0106】
この利用履歴送信処理は、車載器2の制御部23が実行する優先度判定処理でS101が実行される度に、繰り返して実行される。利用履歴格納部33にそれ以上記憶されている「利用履歴」がない場合は、その旨を通信する信号を送信し、優先度判定処理のS102で履歴がないと判断される(S102:NO)ことになる。
[2−4 路側機の処理]
図7は、入口ゲートの前に設置された路側機4の制御部45が実行する第1アンテナ処理を示すフローチャートである。路側機4の制御部45は、車両が無線アンテナ42(第1アンテナ)の受信領域内に入り、車載器2から車載器情報を受信することにより、この第1アンテナ処理を開始する。
【0107】
まずS501では、車載器2から車載器情報を受信して、S502に進む。
【0108】
S502では、料金所ID格納部43から当該料金所を特定できる料金所IDを読み出して、車載器2に送信して、この第1アンテナ処理を終了する。前述したように、この料金所IDは料金所を特定するものであり、同一の料金所であれば、ゲートが異なっても同じ料金所IDとなる。
【0109】
なおこのS502で読み出した料金所IDは、前述した優先度判定処理(図3)のS105で利用される。
【0110】
図8は、入口ゲートの後に設置された路側機4の制御部45が実行する第2アンテナ処理を示すフローチャートである。路側機4の制御部45は、車両が無線アンテナ42(第2アンテナ)の受信領域に入り、前述した優先度判定処理(図3)により設定された優先度を車載器2から受信することにより、この第2アンテナ処理を開始する。
【0111】
まずS601では、車載器2から送信された優先度、カードID及び車載器IDを受信して、S602に進む。
【0112】
S602では、課金処理のため入口ゲートの情報(入口情報)を車載器2に送信して、S603に進む。
【0113】
S603では、管理サーバ5に対して、優先度、カードID及び車載器IDを送信する。S603の処理の後、この第2アンテナ処理を終了する。
【0114】
図9は、出口ゲートの路側機4の制御部45が実行する出口アンテナ処理を示すフローチャートである。路側機4の制御部45は、料金所の出口ゲートに進行する車両を車両進入検知部46で検知することにより、この第2アンテナ処理を開始する。
【0115】
まずS701では、路側機4の制御部45は、料金所の出口ゲートから退場前の車両の車載器2からカードID及び車載器IDを受信して、S702に進む。
【0116】
S702では、後述する、管理サーバ5の制御部53により実行される与信判定処理(図12)の結果として、盗難や不正利用が疑われる、与信されなかったカードID(以下「不与信カードID」と呼ぶ。)、及び、その不与信カードIDで特定されるETCカード3を入口ゲートで装着していた車載器2の車載器ID(以下「不正疑惑車載器ID」と呼ぶ。)のリストに、S701で今回、出口ゲートで受信したカードID及び車載器IDのいずれかと一致するものがあるか否かを判断する。一致するものがなければ(S702:NO)、S703に進み、一致するものがあれば(S702:YES)、S705に進む。
【0117】
S703では、開閉バー制御部44により開閉バーを開けて、S704に進む。このS703は不与信カードID及び不正疑惑車載器IDのいずれかと一致するものがなかった場合の処理である。
【0118】
S704では、路側機4から車載器2に対して、課金された料金を書き込むように要求して、この出口アンテナ処理を終了する。
【0119】
一方、S705では、開閉バーは閉じた状態として、この出口アンテナ処理を終了する。
【0120】
このS705は、出口ゲートで取得したカードID及び車載器IDのいずれかが、不与信カードID及び不正疑惑車載器IDのいずれかと一致するものがあった場合であり、盗難や不正が疑われる状況にあるため、開閉バーは閉じたままとして、その後、必要な措置が採られる。
[2−5 管理サーバの処理]
図10は、管理サーバ5の制御部53が実行する判定順序設定処理を示すフローチャートである。管理サーバ5の制御部53は、路側機4から与信判定の優先度、カードID及び車載器IDを受信(前述の第2アンテナ処理のS603に対応)することにより、この判定順序設定処理を開始する。
【0121】
まずS801では、受信したカードIDにつき優先度が「高」か否かを判定する。優先度が「高」であればS802に進み、優先度が「高」でなければS803に進む。
【0122】
S802では、そのカードIDに対する与信判定を優先度「高」の最後尾に挿入して、この判定順序設定処理を終了する。
【0123】
ここで待ち行列とは、管理サーバ5の制御部53が後述する与信判定処理により、有料道路に入場した車両の車載器2に装着されたETCカード3に対して、盗難や不正利用の疑いがあるブラックリストに登録があるか否かを判定する処理(以下この処理を「ジョブ」という。)の順序を定めるものである。
【0124】
具体的には、図11に示すように、有料道路の料金所から入場した車両(カードID及び車載器ID)について、行列先頭からジョブの優先度が「高」、「中」、「低」と並んでいる。この際、「低」が「中」よりも前に来ることもある。これは常に「中」のジョブの次に「低」のジョブを処理する順序としたのでは、いつまでも「低」のジョブが処理されず残ってしまう可能性があることによる。
【0125】
次にS803では、受信したカードID及び車載器IDにつき優先度が「中」か否かを判定する。優先度が「中」であればS804に進み、優先度が「中」でなければS805に進む。
【0126】
S804では、優先度が「中」と判定された場合であり、全ての「中」と「低」のジョブを加算した数の2分の1の位置に挿入される。S804の処理の後、この判定順序設定処理を終了する。
【0127】
このS804について図11の例でいえば、「中」と「低」のジョブ数の合計は12であり、中の先頭から6番目のジョブの次に挿入されることになる。
【0128】
S805は、優先度が「低」と判定された場合であり、「低」のジョブの一番最後、すなわち待ち行列全体の一番最後に挿入される。
【0129】
このS805について図11の例でいえば、「低」のジョブの一番最後に挿入されることになる。
【0130】
図12は、管理サーバ5の制御部53が実行する与信判定処理を示すフローチャートである。管理サーバ5の制御部53は、このETCカード用与信判定システム1が動作している間は、この処理を実行して、料金所の入口ゲートから入場する車両(カードIDでと特定されるETCカード3)に対して与信判定を行う。
【0131】
ますS901では、待ち行列の先頭からデータ(カードID及び車載器ID)を取得して、S902に進む。図11の例では、待ち行列の先頭に優先度が「高」のデータがあるため、このデータを取得することになる。
【0132】
S902では、S901で取得したデータがあるか否かを判断する。データがあれば(S902:YES)、S903に進み、データがなければ(S902:NO)、S901に戻る。
【0133】
S903では、管理サーバ5のブラックリスト格納部55に記憶されているブラックリストに、S901で取得したカードIDと一致するものが含まれているか否かを判断する。
一致するものが含まれていれば(S903:YES)、S904に進み、一致するものが含まれていなければ(S903:NO)、そのデータを削除して、S901に戻る。
【0134】
このS903で、与えられたカードIDに対する与信の判定が行われることになる。
【0135】
なお、車載器IDについてもブラックリストと照合して不正利用などについての与信判定をすることもできる。
【0136】
S904では、当該車両(カードID及び車載器ID)について、入場した入口ゲートの位置やその車両が入場した方向などから、退場する可能性のある出口ゲートを特定して、S905に進む。
【0137】
S905では、S904で特定した出口ゲートにカードID及び車載器ID(これが、不与信カードID及び不正疑惑車載器IDとなる。)を送信して、S906に進む。
【0138】
S906では、その送信したデータを削除して、S901に戻る。
[3 効果]
本実施形態のETCカード用与信判定システム1によれば、ETCカード3が利用される際に、そのETCカード3の利用履歴格納部33に「利用履歴」として料金所を特定できる料金所ID及び車載器を特定できる車載器IDがセットで記憶されて(利用履歴受信処理のS303)、その「利用履歴」からカードの信頼度を「レベル」として判定し(優先度判定処理のS103〜S114)、信頼度が低いほど優先して与信判定を行うため(判定順序設定処理のS801〜S805)、盗難や不正利用が疑われるカードは優先して与信判定がなされることになり(与信判定処理のS901〜S906)、全てのカードの与信判定を行う時間がない場合でも効率的かつ適切な与信判定ができる。
【0139】
また車載器2により適切な認証を経たカードIDが「カード履歴」として記憶され(カード認証処理)、認証済みであるETCカード3については信頼度が高くなるように判定するため(優先度判定処理のS108〜S114)、より適切な与信判定が可能となる。
[4 特許請求の範囲との関係]
なお、本実施形態のETCカード3の制御部32が実行するS303が記憶手段、車載器2の制御部23が実行するS101〜114が判定手段、管理サーバ5の制御部53が実行する判定順序設定処理のS801〜S805及び与信判定処理のS901〜S906が与信手段にそれぞれ相当する。
[5 他の実施形態]
以上本発明の実施形態の一例としてETCカード用与信判定システム1を説明したが、本発明はここで説明した実施形態に拘束されるものではなく様々な形態をとることができる。
【0140】
例えば、本実施形態の第1アンテナについては、カードの有無を確認する周知のお知らせアンテナや料金所の存在などを予告する周知の予告アンテナであってもよい。その場合はお知らせアンテナ、予告アンテナの路側機が料金所IDを送信することになる。
【0141】
また、本実施形態はETCカード用システムとしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、ICカードによる決済を前提としているものとして、駐車場や娯楽施設などの有料施設であってもよい。その場合、駐車場や娯楽施設全体として、料金所が一つであり、その駐車場や娯楽施設自体を表していることも考えられるし、当然ながら複数の料金所があってもよい。
【0142】
さらに、本実施形態では、本発明の記憶手段をETCカード3の制御部32が実行し、本発明の判定手段を車載器2の制御部23が実行するものとしたが、これらに限られるものではなく、例えば、これら処理を、ICカードの制御部32、路側機の制御部45、管理サーバの制御部53のいずれが実行してもよい。
【符号の説明】
【0143】
1…ETCカード用与信判定システム、2…車載器、3…ETCカード、4…路側機、5…管理サーバ、21…優先度判定部、22…ICカード通信部、23…制御部、24…無線通信部、25…無線アンテナ、26…車載器ID・カード履歴格納部、31…通信部、32…制御部、33…利用履歴格納部、34…カードID格納部、41…無線通信部、42…無線アンテナ、43…料金所ID格納部、44…開閉バー制御部、45…制御部、46…車両進入検知部、47…通信部、51…判定順序制御部、52…与信判定部、53…制御部、54…通信部、55…ブラックリスト格納部
【技術分野】
【0001】
路側機と無線通信可能な車載器に装着された状態で車両用有料施設の課金処理に用いられるICカードの与信判定を行う与信判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ETC(Electronic Toll Collection system:自動料金収受システム)などのカード決済システムでは、盗難されたカードや不正利用の疑いがあるカードの使用を防ぐため、それらのカード情報をブラックリストとしてサーバ上で管理する方法が一般的に採られる。しかしこの方法によれば、料金所を通過する全てのカード(車両に搭載された車載器によりデータ処理されるカード)に対して与信判定を行う必要があるため、与信判定から決済までに時間がかかるという問題があった。
【0003】
従来、この問題を解決する技術として、例えば、特許文献1記載の発明は、入口ゲート通過時にカードの情報を読み出し、出口ゲートを通過するまでの間に与信判定を行うことにより、与信判定の時間を長くとろうとした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−第348321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる従来の技術では、与信判定の時間をより長くとることはできても、全てのカードに対して与信判定を行う時間がない場合に効率的かつ適切な与信判定ができるものではなかった。
【0006】
すなわち、従来の技術では、あくまでも入口ゲートから入場した順序で全てのカードの与信判定が行われることが前提となっているため、仮に、盗難や不正利用が疑われるカードが入口ゲートを通過したとしても、そのカードに対する与信判定は、与信判定を待っているジョブ(待ち行列)の一番最後に挿入されることになり、仮に、そのカードが入口ゲートから近い出口ゲートから退場しようとした場合は、盗難が疑われるにもかかわらず、与信判定が間に合わない可能性がある。
【0007】
特に今後、カードの利用数が増えるに従ってブラックリストに登録されるカードの数も増加するため、与信判定の処理時間は延びることが予測される。また、今後は既存の料金所以外にも、ETCによる入退場が可能なSA(サービスエリア)が増加することが予想され、そうすると、入口ゲートに入ってから出口ゲートを出るまでの時間が短くなり、管理サーバによる与信判定が間に合わなくなる可能性も高くなる。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、全てのカードの与信判定を行う時間がない場合でも効率的かつ適切な与信判定ができる与信判定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、路側機と無線通信可能な車載器に装着された状態で車両用有料施設の課金処理に用いられるICカードの与信判定を行う与信判定システムであり、記憶手段、判定手段及び与信手段を備える。記憶手段は、当該ICカードを特定できるカードIDが記憶されているICカードが利用された際に、そのICカードの利用履歴を記憶装置に記憶し、判定手段は、車両が有料施設に進入した際に、その車両に搭載された車載器に装着されたICカードの利用履歴を記憶装置から読み出し、その読み出した利用履歴を基に、そのICカードの信頼度を判定し、与信手段は、判定手段により信頼度が判定されたICカードの与信判定を、その判定された信頼度が低いほど優先して行う。
【0010】
かかる請求項1記載の発明によれば、ICカードの利用履歴からカードの信頼度を判定し、与信判定の優先度を設定するため、盗難や不正利用が疑われるカードは優先して与信判定がなされることになり、全てのカードの与信判定を行う時間がない場合でも効率的かつ適切な与信判定ができる。
【0011】
なお、ここでいう有料施設とは、高速道路など有料道路のほか、駐車場、娯楽施設など車両が進入してICカードにより課金処理がなされる場所を指している。
【0012】
ところで、与信判定を行う際に、今回利用する料金所が、そのICカードにより過去に利用された料金所であれば、盗難や不正利用の可能性は低いといえる。それは、盗難や不正利用されたICカードであれば、過去に利用された料金所と一致する可能性は低いからである。
【0013】
そこで、請求項2記載の発明は、請求項1記載の与信判定システムにおいて、記憶手段は、ICカードの利用履歴として、路側機が設置された料金所を特定できる料金所IDを含めて記憶することを特徴とする。
【0014】
かかる請求項2記載の発明によれば、今回利用する料金所が、そのICカードにより過去に利用された料金所であれば、信頼度を高く判定することにより、効率的かつ適切な与信判定が可能となる。
【0015】
なお、ここにいう「料金所」とは、車両が有料施設(例えば、道路)に入場又はその有料施設から退場する際に、課金処理のために通過すべきポイントを意味しており、必ずしも料金が支払われる場所である必要はないし、1つの料金所に複数のゲートが設けられていても料金所は1つのものとして捉える。
【0016】
また、与信判定を行う際に、現在の車載器が、そのICカードにより過去に利用されたことのある車載器であれば、盗難や不正利用の可能性は低いといえる。それは、盗難や不正利用されたICカードであれば、過去に利用された車載器と一致する可能性は低いからである。
【0017】
そこで、請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の与信判定システムにおいて、記憶手段は、ICカードの利用履歴として、そのICカードが装着された車載器を特定できる車載器IDを含めて記憶することを特徴とする。
【0018】
かかる請求項3記載の発明によれば、現在の車載器が、そのICカードにより過去に利用されたことのある車載器であれば、信頼度を高く判定することにより、効率的かつ適切な与信判定が可能となる。
【0019】
さらに、与信判定を行う際に、そのICカードが、現在の車載器により適切に認証されたものであれば、盗難や不正利用の可能性は低いといえる。
【0020】
そこで、請求項4記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか記載の与信判定システムにおいて、車載器は、ICカードが装着された際にそのICカードの認証を行うものであり、判定手段は、車載器によりICカードの認証が適切に行われたことを基に、信頼度を判定することを特徴とする。
【0021】
かかる請求項4記載の発明によれば、現在の車載器が、そのICカードにより過去に利用されたことのある車載器であれば、信頼度を高く判定することにより、効率的かつ適切な与信判定が可能となる。
【0022】
請求項5記載の車載器は、路側機と無線通信可能な車載器に装着された状態で車両用有料施設の課金処理に用いられるICカードの与信判定を行う与信判定システムに用いる車載器であり、記憶手段及び判定手段を備える。記憶手段は、当該ICカードを特定できるカードIDが記憶されているICカードが利用された際に、そのICカードの利用履歴を記憶装置に記憶し、判定手段は、自車両が有料施設に進入した際に、当該車載器に装着されたICカードの利用履歴を記憶装置から読み出し、その読み出した利用履歴を基に、そのICカードの信頼度を判定する。そして、与信判定は、判定手段により判定されたICカードの信頼度が低いほど優先して行われることを特徴とする。
【0023】
かかる請求項5記載の車載器によれば請求項1記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【0024】
請求項6記載の発明は、路側機と無線通信可能な車載器に装着された状態で車両用有料施設の課金処理に用いられるICカードの与信判定を行う与信判定方法であり、記憶ステップ、判定ステップ及び与信ステップを備える。記憶ステップでは、当該ICカードを特定できるカードIDが記憶されているICカードが利用された際に、そのICカードの利用履歴を記憶装置に記憶し、判定ステップでは、車両が有料施設に進入した際に、その車両に搭載された車載器に装着されたICカードの利用履歴を記憶装置から読み出し、その読み出した利用履歴を基に、そのICカードの信頼度を判定し、与信ステップでは、判定ステップで信頼度を判定したICカードの与信判定を、その判定された信頼度が低いほど優先して行う。
【0025】
かかる請求項6記載の車載器によれば請求項1記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態としてのETCカード用与信判定システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態としてのETCカード用与信判定システムの処理の概要を示す説明図である。
【図3】車載器の制御部が実行する優先度判定処理を示すフローチャートである。
【図4】車載器の制御部が実行するカード認証処理を示すフローチャートである。
【図5】ETCカードの制御部が実行する利用履歴受信処理を示すフローチャートである。
【図6】ETCカードの制御部が実行する利用履歴送信処理を示すフローチャートである。
【図7】路側機の制御部が実行する第1アンテナ処理を示すフローチャートである。
【図8】路側機の制御部が実行する第2アンテナ処理を示すフローチャートである。
【図9】路側機の制御部が実行する出口アンテナ処理を示すフローチャートである。
【図10】管理サーバの制御部が実行する判定順序設定処理を示すフローチャートである。
【図11】管理サーバの記憶装置が記憶する待ち行列のデータ構成を示す説明図である。
【図12】管理サーバの制御部が実行する与信判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1 構成]
図1は、本実施形態のETCカード用与信判定システム1のハードウエア構成を示すブロック図である。
【0028】
図示するようにETCカード用与信判定システム1は、車載器2、ETCカード3、路側機4、管理サーバ5を備える。
【0029】
車載器2は、車両(以下当該車載器2が搭載された車両を「自車両」という。)に搭載され、自車両が有料道路の料金所の入口ゲートや出口ゲートを通過する際に、料金所に設置されている路側機4とDSRC(Dedicated Short Range Communication:狭域通信)による無線通信を行い、ETCカード3から読み出したカードIDなどを用いて走行料金の課金処理を実行する装置である。
【0030】
この車載器2は、優先度判定部21、ICカード通信部22、制御部23、無線通信部24、無線アンテナ25、車載器ID・カード履歴格納部26を備える。
【0031】
優先度判定部21は、ETCカード3に記憶された「利用履歴」(詳細は後述する)を基にETCカード3が与信判定される際の優先度を判定するものであり、実際には、制御部23が後述する優先度判定処理(図3)を実行することで機能する。この優先度判定部21は、ソフトウエアとして共通化して実現する必要はなく、独立したハードウエアで構成することが可能である。
【0032】
ICカード通信部22は、ETCカード3などのICカードと非接触式のデータ通信を行う部位であり、ETCカード3が装着されて、ETCカード3に記憶されているデータの読み出し及び書き込みを行う。なお、これは接触式のデータ通信であってもよい。
【0033】
制御部23は、周知の演算器と同様に構成され、ICカード通信部22や無線通信部24で受信したデータや車載器ID・カード履歴格納部26から読み出したデータなどを基にして演算処理を行うものであり、後述する優先度判定処理(図3)やカード認証処理(図4)、車載器2の初期設定処理(料金決済用情報やセットアップ情報の書き込み処理)やETCシステムにおける料金収受処理などを行う。
【0034】
無線通信部24は、周知の通信回路であり、有料道路における料金所の入口ゲートや出口ゲートに設置された路側機4との間で実行される自動料金収受処理などの無線通信に用いられる。
【0035】
無線アンテナ25は、無線通信部24に設けられた周知のアンテナであり、路側機4とのデータ通信に用いられる。
【0036】
車載器ID・カード履歴格納部26は、当該車載器2を特定できる車載器ID及び過去に装着され認証されたことのあるICカードを特定できるカードIDの履歴が「カード履歴」として記憶される記憶装置である。
【0037】
なお、車載器ID・カード履歴格納部26には、データ通信や演算をした結果や、車載器2に関する情報(車載器情報)として、例えば、機器識別用番号、型式番号などの情報や、車載器2が搭載される車両の大きさや重量、ナンバープレート情報なども記憶されている。
【0038】
ETCカード3は、車載器2に装着されて路側機4と通信を行うことにより有料道路などの課金処理が行われる周知の非接触式ICカードであり、通信部31、制御部32、利用履歴格納部33、カードID格納部34を備える。
【0039】
通信部31は、車載器2と非接触式の通信を行う部位であり、カードID格納部34に記憶されているデータの送信や車載器2からのデータの受信を行う。
【0040】
制御部32は、周知の演算器と同様に構成され、通信部31で受信したデータやカードID格納部34から読み出したデータなどを基にして演算処理を行うものであり、後述する利用履歴受信処理(図5)や利用履歴送信処理(図6)を行う。
【0041】
利用履歴格納部33は、このETCカード3が利用された履歴(「利用履歴」)が記憶される記憶装置であり、具体的には、このETCカード3が利用された際に、このETCカード3が装着された車載器2を特定できる車載器ID、及び、その車載器2と通信を行った路側機4が設置された料金所を特定できる料金所IDのセットが「利用履歴」として記憶される。
【0042】
カードID格納部34は、当該ETCカード3を特定できるカードIDが記憶される記憶装置である。このカードIDは、当該ETCカード3について、各種課金処理、与信判定がなされる際に当該ETCカード3を特定するために用いられる。
【0043】
なおこのカードID格納部34には、有料道路走行時の課金処理に用いられるカード情報として、他に、入口ゲートの情報(入口情報)、名義人情報、銀行口座情報、及びカード会社情報などの情報も記憶されている。またこのETCカード3の機能は、周知の携帯電話でも実現することができる。
【0044】
路側機4は、有料道路の料金所の入口ゲートの前、入口ゲートの後及び出口ゲートにそれぞれ設置されており、無線通信部41、無線アンテナ42、料金所ID格納部43、開閉バー制御部44、制御部45、車両進入検知部46、通信部47を備える。
【0045】
無線通信部41は、周知の無線通信回路であり、車載器2と無線によるデータ通信を可能にする。
【0046】
無線アンテナ42は、無線通信部41に備えられた周知のアンテナており、車載器2とのデータ通信に用いられる。
【0047】
なお、この無線アンテナ42について、入口ゲートの前に設置された路側機4に備えられたものを第1アンテナ、入口ゲートの後に設置された路側機4に備えられたものを第2アンテナ、出口ゲートに設置された路側機4に備えられたものを出口アンテナと呼ぶ。
【0048】
料金所ID格納部43は、当該路側機4が設置されている料金所を特定できる料金所IDが記憶される記憶装置である。この料金所ID格納部には、データ通信や演算をした結果なども記憶されている。
【0049】
なお、料金所とは、車両が有料施設(ここでは道路)に入場又はその有料施設から退場する際に、課金処理のために通過すべきポイントを意味しており、必ずしも料金が支払われる場所である必要はないし、複数のゲートが設けられており、そのため路側機4も複数設置されている場合も考えられるが、料金所としては1つのものとして捉える。
【0050】
開閉バー制御部44は、路側機4が備えられた料金所を車両が通行する際の入退場を許可する開閉バーの開閉を制御する装置である。ここでは特に、与信されなかった場合に開閉バーを閉じたままにして、車両が退場することを禁止する機能を果たす。
【0051】
制御部45は、周知の演算器と同様に構成され、無線通信部41や通信部47で受信したデータや料金所ID格納部43から読み出したデータなどを基にして演算処理を行うものであり、当該路側機4が設置された場所に応じて、入口ゲートの前の路側機4が行う第1アンテナ処理(図7)、入口ゲートの後の路側機4が行う第2アンテナ処理(図8)又は出口ゲートの路側機4が行う出口アンテナ処理(図9)、ETCシステムにおける料金収受処理などを実行する。
【0052】
車両進入検知部46は、当該路側機4が設置された料金所のゲートに車両が進入してきた際に当該車両を検知するためのセンサである。
【0053】
通信部47は、管理サーバ5と通信を行い、路側機4が取得したデータ(カードID、車載器ID、後述する与信判定の優先度など)などを送信したり、管理サーバ5によりなされた与信判定の結果などを受信したりする。
【0054】
管理サーバ5は、路側機4から送信されるデータに基づいて、ETCカード3に対する与信判定を行うものであり、判定順序制御部51、与信判定部52、制御部53、通信部54、ブラックリスト格納部55を備える。
【0055】
判定順序制御部51は、管理サーバ5が与信判定を行う際に、与信判定の順序(待ち行列)を制御するものであり、実際には、制御部53が後述する判定順序設定処理(図10)を実行することで機能する。
【0056】
与信判定部52は、ブラックリスト格納部55に記憶されたブラックリストに路側機4から取得したカードIDが含まれているか否かにより与信判定を行うものであり、実際には、制御部53が後述する与信判定処理(図12)を実行することで機能する。
【0057】
これら判定順序制御部51及び与信判定部52は、ソフトウエアとして共通化して実現する必要はなく、独立したハードウエアで構成することが可能である。
【0058】
制御部53は、周知の演算器と同様に構成され、送受信されるデータやブラックリスト格納部55から読み出したデータなどを基にして演算処理を行う。
【0059】
通信部54は、路側機4からカードID、車載器ID及び与信判定の優先度などのデータを受信し、管理サーバ5で演算を行なった結果として、例えば、与信されず盗難や不正使用の疑いのあるカードIDや車載器IDなどのデータの送信を行う。
【0060】
ブラックリスト格納部55は、例えば、盗難や不正利用が疑われるカードなど与信されないカードIDのリストをブラックリストとして予め記憶しておく記憶装置である。なお、ブラックリスト格納部55には、データ通信や演算をした結果なども記憶されている。
[2 処理]
以下、本実施形態の車載器2の制御部23、ETCカード3の制御部32、路側機4の制御部45及び管理サーバ5の制御部53が実行する処理について図面を用いて説明する。
[2−1 概要]
図2は、本実施形態としてのETCカード用与信判定システム1の処理の概要を示す説明図である。
【0061】
車両が料金所の入口ゲートの前に設置された路側機4を通過すると、その路側機4の車両進入検知部46がこれを検知するとともに、車載器2は、路側機4の無線アンテナ42(第1アンテナ)に対して、車載器情報を路側機4に送信する。
【0062】
これを受けてその路側機4の制御部45は、後述する第1アンテナ処理(図7)を実行し、料金所ID格納部43から料金所IDを読み出し、その読み出した料金所IDを無線通信部41及び無線アンテナ42(第1アンテナ)を介して、車載器2に送信する。
【0063】
これを受けて車載器2の制御部23は、後述する優先度判定処理(図3)を実行し、現在装着しているETCカード3に記憶されている「利用履歴」を要求し(後述するS101)、これに対してETCカード3の制御部32は後述する利用履歴送信処理(図6)により「利用履歴」(車載器ID及び料金所IDのセット)を車載器2に送信する。
【0064】
車載器2の制御部23は、ETCカード3から送信された「利用履歴」を基にETCカード3の信頼度から与信判定すべき優先度を判定する。
【0065】
そして、車両が入口ゲートの後に設置された路側機4の無線アンテナ42(第2アンテナ)との通信が可能になった段階で、車載器2の制御部23は、図示しない処理により、優先度を路側機4に送信する。
【0066】
これを受けて、路側機4の制御部45は、後述する第2アンテナ処理(図8)を実行して、優先度を車載器2から受信するとともに、課金処理のため、入口ゲートの情報(入口情報)をETCカード3に書き込む要求を車載器2に送信し、車載器2から受信した優先度をETCカード3のカードIDとともに通信部47を介して管理サーバ5に送信する。
【0067】
これを受けて管理サーバ5の制御部53は、後述する、判定順序設定処理(図10)及び与信判定処理(図12)により優先度に基づいた与信判定を行い、信用力がないと判断した場合は、出口ゲートに備えられた路側機4の通信部47に車載器ID及びカードIDなどを判定結果として送信する。なお、この出口ゲートは、車両が入場した入口ゲート及び方向から、その車両が退場する可能性のある出口ゲートが選択される。
【0068】
最後に、車両が出口ゲートから退場しようとする際に、出口ゲートの路側機4の制御部45は後述する出口アンテナ処理(図9)を行う。すなわち、判定結果に基づき車両を通行可であれば開閉バーを開き、通行不可であれば開閉バーを閉じたままとする。
[2−2 車載器の処理]
図3は、車載器2の制御部23が実行する優先度判定処理を示している。この優先度判定処理は、自車両が路側機4を備えた料金所(入口ゲート)を通過する際に、入口ゲートの前に設置された路側機4から料金所IDを受信することにより開始する。
【0069】
まずS101では、ETCカード3に対して、「利用履歴」(車載器ID及び料金所IDのセット)を1つだけ読み出す旨の命令を送信する。なお、このS101が繰り返される場合は、2回目以降は、次に記憶された「利用履歴」を読み出すことになる。
【0070】
ここにいう「利用履歴」とは、前述のように、このETCカード3が利用された際に、このETCカード3が装着された車載器2を特定できる車載器ID、及び、その車載器2と通信を行った路側機4が設置された料金所を特定できる料金所IDのセットが「利用履歴」として記憶されるものである。
【0071】
具体的には、図示しない処理により、路側機4から送信され無線通信部24及び無線アンテナ25により受信した料金所IDが「利用履歴」として、このS101と同じタイミングでETCカード3に送信され、ETCカード3は後述する利用履歴受信処理(図5)により、車載器2を特定できる車載器IDを取得して、料金所IDと車載器IDを1つのセットにして、ETCカード3の利用履歴格納部33に「利用履歴」として記憶する。
【0072】
なおこのS101で「利用履歴」の読み出し要求を受信することで、ETCカード3の制御部23は、後述する利用履歴送信処理(図6)も実行し、利用履歴格納部33に記憶されている「利用履歴」として、料金所ID及び車載器IDのセットを1つずつ読み出して、車載器2に送信する。
【0073】
続いてS102では、S101で要求した結果、まだ読み出していない「利用履歴」があるか否かを判断する。まだ読み出していない「利用履歴」があれば(S102:YES)、その「利用履歴」を取得してS103に進み、読み出していない「利用履歴」がなければ(S102:NO)、S107に進む。
【0074】
S103では、「利用履歴」の車載器IDが自らの車載器IDと一致するか否かを判定する。一致する場合(S103:YES)、S104に進み、一致しない場合(S103:NO)、そのままS105に進む。
【0075】
S104では、当該ETCカード3の「レベル」を4だけ増加させて、S105に進む。
【0076】
ここにいう「レベル」とは、最終的には車載器2に装着されたETCカード3に関して、どの程度の信頼度があるかを示す整数値であり、「レベル」が高いほど信頼度が高く、そのため与信判定の優先度が低くてよいことを示すものである。
【0077】
ただし、このS103を処理する段階では、読み出した個々の「利用履歴」との一致により、最終的な信頼度を算出する前提として、「レベル」に4を加算している。すなわち、このS104では、利用履歴の車載器IDに自らの車載器IDがあることにより、当該車載器IDと当該ETCカード3との組み合わせで過去に利用された履歴があることから、そのETCカード3が盗難や不正により利用されている可能性が低いと判断することにより、信頼度が高くなるように「レベル」を加算する。
【0078】
次にS105では、「利用履歴」の料金所IDが、今回、路側機4から送信された料金所IDと一致する否かを判断する。一致する場合(S105:YES)、S106に進み、一致しない場合(S105:NO)、S101に戻る。
【0079】
このS105では、「利用履歴」の料金所IDに今回、車両が通過する料金所IDがあることにより、特定の料金所と当該ETCカード3との組み合わせで過去に利用された事実が存在することから、そのETCカード3が盗難や不正利用の可能性が低いと判断して、「レベル」を加算する。
【0080】
一方、S107では、「利用履歴」のセット毎の「レベル」の平均値を算出する。具体的には、各セットの「レベル」の総加算値を、「利用履歴」のセット数で除算する。このS107の後、S108に進む。
【0081】
このS107の処理により算出される「レベル」は「利用履歴」のセット1つあたりの平均値を示しており、最終的に算出する信頼度の前提となる。
【0082】
S108では、車載器ID・カード履歴格納部26から「カード履歴」を読み出し、S109に進む。
【0083】
S109では、その読み出した「カード履歴」に、今回装着されているETCカード3のカードIDと一致するものが含まれているか否かを判断する。一致するものがある場合(S109:YES)、S110に進み、一致するものがない場合(S109:NO)、そのままS111に進む。
【0084】
このS109では、車両の車載器2に装着されたETCカード3が、適切な認証の手続を経て「カード履歴」として記憶されており、そのETCカード3が盗難や不正により利用されている可能性が低いと判断するものである。
【0085】
また「カード履歴」は、前述のように、ETCカード3などICカードを特定できるカードIDがリストとして記憶されているものであり、具体的には、後述するカード認証処理(図4)により、車載器2にETCカード3が装着され、適切な認証の手続を経るこので、そのETCカード3のカードIDが「カード履歴」として記憶されることになる。
【0086】
S110では、「レベル」を1だけ増加させてS111に進む。
【0087】
この段階まで算出された「レベル」がETCカード3の最終的な信頼度を示しており、この段階の「レベル」を基に与信判定の優先度が決まる。
【0088】
S111では、算出した「レベル」の値がいくつであるかを判定する。すなわち「レベル」が4以上であれば(S111:4以上)、S112に進み、S112では、優先度を「低」に設定して、S115に進む。「レベル」が2より大きく4未満であれば(S111:2〜4)、S113に進み、S113では、優先度を「中」に設定して、S115に進む。「レベル」が2以下であれば(S111:2以下)、S114に進み、S114では、優先度を「高」に設定して、S115に進む。
【0089】
この優先度の「低」、「中」及び「高」は、後述する判定順序設定処理で待ち行列での順序を設定する際の優先度として用いられる。
【0090】
S115では、設定した優先度を内部の記憶装置(例えば、車載器ID・カード履歴格納部26)に記憶して、この優先度判定処理を終了する。
【0091】
なお、車載器2の制御部23は、車両が入口ゲートの後に設けられた路側機4の無線アンテナ42(第2アンテナ)の領域に入ることで、図示しない処理により、S115で内部の記憶装置に記憶した優先度をカードID及び車載器IDを含めて管理サーバ5に送信する。この信号を受信した路側機4の制御部45は、後述する第2アンテナ処理(図8)を実行する。
【0092】
図4は、車載器2の制御部23が実行するカード認証処理を示すフローチャートである。車載器2の制御部23は、車載器2にETCカード3が装着されることで、このカード認証処理を開始する。
【0093】
まずS201では、装着されたETCカード3について、通常の認証処理を行う。
【0094】
続いてS202で、認証が正常に行われたか否かを判断する。認証が正常に行われれば(S202:YES)、S203に進み、認証が正常に行われなければ(S202:NO)、このカード認証処理を終了する。
【0095】
S203では、車載器ID・カード履歴格納部26から「カード履歴」を読み出し、S204に進む。
【0096】
S204では、読み出された「カード履歴」に、今回装着されたETCカード3のカードIDと一致するものが含まれているか否かを判断する。一致するものが含まれていれば(S204:YES)、このカード認証処理を終了する。一致するものが含まれていなければ(S204:NO)、S205に進む。
【0097】
S205では、今回装着されたETCカード3が適切に認証されたものとして「カード履歴」に追加して、車載器ID・カード履歴格納部26に記憶する。このS205の処理の後、このカード認証処理を終了する。
【0098】
このS205により、装着されたETCカード3が適切な認証を経ており、盗難や不正利用の疑いが小さいものとして、そのカードIDを「カード履歴」に追加する。
[2−3 ETCカードの処理]
図5は、ETCカード3の制御部32が実行する利用履歴受信処理を示すフローチャートである。ETCカード3の制御部32は、前述したように、車載器2の制御部23が優先度判定処理(図3)を実行し、車載器2から「利用履歴」の読み出し要求を受信(S101に対応)することにより、この利用履歴受信処理を開始する。なお、この読み出し要求には、自車両の車載器2が、入口ゲート前の路側機4から取得した料金所IDが含まれており、ETCカード3の制御部32はこの利用履歴受信処理の前提として、現在通過しようとしている料金所の料金所IDを取得している。
【0099】
まずS301では、車載器2に対し、車載器ID・カード履歴格納部26に記憶されている車載器IDを送信するように要求し、S302に進む。
【0100】
S302では、車載器2から車載器IDを取得し、S303に進む。
【0101】
S303では、既に取得している料金所IDと車載器IDとを1つのセットにして、今回の「利用履歴」として利用履歴格納部33に記憶する。S303の後、この利用履歴受信処理を終了する。
【0102】
なお、この利用履歴受信処理は、車載器2の制御部23が実行する優先度判定処理でS101が繰り返して実行される場合、すなわちETCカード3から複数の「利用履歴」(車載器ID及び料金所IDのセット)を読み出す場合であっても、最初の1回だけ実行し、2回目以降は実行しない。
【0103】
図6は、ETCカード3の制御部32が実行する利用履歴送信処理を示すフローチャートである。ETCカード3の制御部32は、前述したように、車載器2の制御部23が優先度判定処理(図3)を実行し、車載器2から「利用履歴」の読み出し要求を受信(S101に対応)することにより、この利用履歴送信処理を開始する。なお、今回取得した「利用履歴」については、車載器ID及び料金所IDが必ず一致することになってしまうため除かれる。
【0104】
まずS401では、利用履歴格納部33に記憶されている「利用履歴」から車載器ID及び料金所IDのセットを1つだけ読み出して、S402に進む。
【0105】
S402では、S401で読み出した、車載器ID及び料金所IDのセットを車載器2に送信して、この利用履歴送信処理を終了する。
【0106】
この利用履歴送信処理は、車載器2の制御部23が実行する優先度判定処理でS101が実行される度に、繰り返して実行される。利用履歴格納部33にそれ以上記憶されている「利用履歴」がない場合は、その旨を通信する信号を送信し、優先度判定処理のS102で履歴がないと判断される(S102:NO)ことになる。
[2−4 路側機の処理]
図7は、入口ゲートの前に設置された路側機4の制御部45が実行する第1アンテナ処理を示すフローチャートである。路側機4の制御部45は、車両が無線アンテナ42(第1アンテナ)の受信領域内に入り、車載器2から車載器情報を受信することにより、この第1アンテナ処理を開始する。
【0107】
まずS501では、車載器2から車載器情報を受信して、S502に進む。
【0108】
S502では、料金所ID格納部43から当該料金所を特定できる料金所IDを読み出して、車載器2に送信して、この第1アンテナ処理を終了する。前述したように、この料金所IDは料金所を特定するものであり、同一の料金所であれば、ゲートが異なっても同じ料金所IDとなる。
【0109】
なおこのS502で読み出した料金所IDは、前述した優先度判定処理(図3)のS105で利用される。
【0110】
図8は、入口ゲートの後に設置された路側機4の制御部45が実行する第2アンテナ処理を示すフローチャートである。路側機4の制御部45は、車両が無線アンテナ42(第2アンテナ)の受信領域に入り、前述した優先度判定処理(図3)により設定された優先度を車載器2から受信することにより、この第2アンテナ処理を開始する。
【0111】
まずS601では、車載器2から送信された優先度、カードID及び車載器IDを受信して、S602に進む。
【0112】
S602では、課金処理のため入口ゲートの情報(入口情報)を車載器2に送信して、S603に進む。
【0113】
S603では、管理サーバ5に対して、優先度、カードID及び車載器IDを送信する。S603の処理の後、この第2アンテナ処理を終了する。
【0114】
図9は、出口ゲートの路側機4の制御部45が実行する出口アンテナ処理を示すフローチャートである。路側機4の制御部45は、料金所の出口ゲートに進行する車両を車両進入検知部46で検知することにより、この第2アンテナ処理を開始する。
【0115】
まずS701では、路側機4の制御部45は、料金所の出口ゲートから退場前の車両の車載器2からカードID及び車載器IDを受信して、S702に進む。
【0116】
S702では、後述する、管理サーバ5の制御部53により実行される与信判定処理(図12)の結果として、盗難や不正利用が疑われる、与信されなかったカードID(以下「不与信カードID」と呼ぶ。)、及び、その不与信カードIDで特定されるETCカード3を入口ゲートで装着していた車載器2の車載器ID(以下「不正疑惑車載器ID」と呼ぶ。)のリストに、S701で今回、出口ゲートで受信したカードID及び車載器IDのいずれかと一致するものがあるか否かを判断する。一致するものがなければ(S702:NO)、S703に進み、一致するものがあれば(S702:YES)、S705に進む。
【0117】
S703では、開閉バー制御部44により開閉バーを開けて、S704に進む。このS703は不与信カードID及び不正疑惑車載器IDのいずれかと一致するものがなかった場合の処理である。
【0118】
S704では、路側機4から車載器2に対して、課金された料金を書き込むように要求して、この出口アンテナ処理を終了する。
【0119】
一方、S705では、開閉バーは閉じた状態として、この出口アンテナ処理を終了する。
【0120】
このS705は、出口ゲートで取得したカードID及び車載器IDのいずれかが、不与信カードID及び不正疑惑車載器IDのいずれかと一致するものがあった場合であり、盗難や不正が疑われる状況にあるため、開閉バーは閉じたままとして、その後、必要な措置が採られる。
[2−5 管理サーバの処理]
図10は、管理サーバ5の制御部53が実行する判定順序設定処理を示すフローチャートである。管理サーバ5の制御部53は、路側機4から与信判定の優先度、カードID及び車載器IDを受信(前述の第2アンテナ処理のS603に対応)することにより、この判定順序設定処理を開始する。
【0121】
まずS801では、受信したカードIDにつき優先度が「高」か否かを判定する。優先度が「高」であればS802に進み、優先度が「高」でなければS803に進む。
【0122】
S802では、そのカードIDに対する与信判定を優先度「高」の最後尾に挿入して、この判定順序設定処理を終了する。
【0123】
ここで待ち行列とは、管理サーバ5の制御部53が後述する与信判定処理により、有料道路に入場した車両の車載器2に装着されたETCカード3に対して、盗難や不正利用の疑いがあるブラックリストに登録があるか否かを判定する処理(以下この処理を「ジョブ」という。)の順序を定めるものである。
【0124】
具体的には、図11に示すように、有料道路の料金所から入場した車両(カードID及び車載器ID)について、行列先頭からジョブの優先度が「高」、「中」、「低」と並んでいる。この際、「低」が「中」よりも前に来ることもある。これは常に「中」のジョブの次に「低」のジョブを処理する順序としたのでは、いつまでも「低」のジョブが処理されず残ってしまう可能性があることによる。
【0125】
次にS803では、受信したカードID及び車載器IDにつき優先度が「中」か否かを判定する。優先度が「中」であればS804に進み、優先度が「中」でなければS805に進む。
【0126】
S804では、優先度が「中」と判定された場合であり、全ての「中」と「低」のジョブを加算した数の2分の1の位置に挿入される。S804の処理の後、この判定順序設定処理を終了する。
【0127】
このS804について図11の例でいえば、「中」と「低」のジョブ数の合計は12であり、中の先頭から6番目のジョブの次に挿入されることになる。
【0128】
S805は、優先度が「低」と判定された場合であり、「低」のジョブの一番最後、すなわち待ち行列全体の一番最後に挿入される。
【0129】
このS805について図11の例でいえば、「低」のジョブの一番最後に挿入されることになる。
【0130】
図12は、管理サーバ5の制御部53が実行する与信判定処理を示すフローチャートである。管理サーバ5の制御部53は、このETCカード用与信判定システム1が動作している間は、この処理を実行して、料金所の入口ゲートから入場する車両(カードIDでと特定されるETCカード3)に対して与信判定を行う。
【0131】
ますS901では、待ち行列の先頭からデータ(カードID及び車載器ID)を取得して、S902に進む。図11の例では、待ち行列の先頭に優先度が「高」のデータがあるため、このデータを取得することになる。
【0132】
S902では、S901で取得したデータがあるか否かを判断する。データがあれば(S902:YES)、S903に進み、データがなければ(S902:NO)、S901に戻る。
【0133】
S903では、管理サーバ5のブラックリスト格納部55に記憶されているブラックリストに、S901で取得したカードIDと一致するものが含まれているか否かを判断する。
一致するものが含まれていれば(S903:YES)、S904に進み、一致するものが含まれていなければ(S903:NO)、そのデータを削除して、S901に戻る。
【0134】
このS903で、与えられたカードIDに対する与信の判定が行われることになる。
【0135】
なお、車載器IDについてもブラックリストと照合して不正利用などについての与信判定をすることもできる。
【0136】
S904では、当該車両(カードID及び車載器ID)について、入場した入口ゲートの位置やその車両が入場した方向などから、退場する可能性のある出口ゲートを特定して、S905に進む。
【0137】
S905では、S904で特定した出口ゲートにカードID及び車載器ID(これが、不与信カードID及び不正疑惑車載器IDとなる。)を送信して、S906に進む。
【0138】
S906では、その送信したデータを削除して、S901に戻る。
[3 効果]
本実施形態のETCカード用与信判定システム1によれば、ETCカード3が利用される際に、そのETCカード3の利用履歴格納部33に「利用履歴」として料金所を特定できる料金所ID及び車載器を特定できる車載器IDがセットで記憶されて(利用履歴受信処理のS303)、その「利用履歴」からカードの信頼度を「レベル」として判定し(優先度判定処理のS103〜S114)、信頼度が低いほど優先して与信判定を行うため(判定順序設定処理のS801〜S805)、盗難や不正利用が疑われるカードは優先して与信判定がなされることになり(与信判定処理のS901〜S906)、全てのカードの与信判定を行う時間がない場合でも効率的かつ適切な与信判定ができる。
【0139】
また車載器2により適切な認証を経たカードIDが「カード履歴」として記憶され(カード認証処理)、認証済みであるETCカード3については信頼度が高くなるように判定するため(優先度判定処理のS108〜S114)、より適切な与信判定が可能となる。
[4 特許請求の範囲との関係]
なお、本実施形態のETCカード3の制御部32が実行するS303が記憶手段、車載器2の制御部23が実行するS101〜114が判定手段、管理サーバ5の制御部53が実行する判定順序設定処理のS801〜S805及び与信判定処理のS901〜S906が与信手段にそれぞれ相当する。
[5 他の実施形態]
以上本発明の実施形態の一例としてETCカード用与信判定システム1を説明したが、本発明はここで説明した実施形態に拘束されるものではなく様々な形態をとることができる。
【0140】
例えば、本実施形態の第1アンテナについては、カードの有無を確認する周知のお知らせアンテナや料金所の存在などを予告する周知の予告アンテナであってもよい。その場合はお知らせアンテナ、予告アンテナの路側機が料金所IDを送信することになる。
【0141】
また、本実施形態はETCカード用システムとしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、ICカードによる決済を前提としているものとして、駐車場や娯楽施設などの有料施設であってもよい。その場合、駐車場や娯楽施設全体として、料金所が一つであり、その駐車場や娯楽施設自体を表していることも考えられるし、当然ながら複数の料金所があってもよい。
【0142】
さらに、本実施形態では、本発明の記憶手段をETCカード3の制御部32が実行し、本発明の判定手段を車載器2の制御部23が実行するものとしたが、これらに限られるものではなく、例えば、これら処理を、ICカードの制御部32、路側機の制御部45、管理サーバの制御部53のいずれが実行してもよい。
【符号の説明】
【0143】
1…ETCカード用与信判定システム、2…車載器、3…ETCカード、4…路側機、5…管理サーバ、21…優先度判定部、22…ICカード通信部、23…制御部、24…無線通信部、25…無線アンテナ、26…車載器ID・カード履歴格納部、31…通信部、32…制御部、33…利用履歴格納部、34…カードID格納部、41…無線通信部、42…無線アンテナ、43…料金所ID格納部、44…開閉バー制御部、45…制御部、46…車両進入検知部、47…通信部、51…判定順序制御部、52…与信判定部、53…制御部、54…通信部、55…ブラックリスト格納部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路側機と無線通信可能な車載器に装着された状態で車両用有料施設の課金処理に用いられるICカードの与信判定を行う与信判定システムであって、
当該ICカードを特定できるカードIDが記憶されているICカードが利用された際に、そのICカードの利用履歴を記憶装置に記憶する記憶手段と、
車両が有料施設に進入した際に、その車両に搭載された車載器に装着されたICカードの利用履歴を前記記憶装置から読み出し、その読み出した利用履歴を基に、そのICカードの信頼度を判定する判定手段と、
前記判定手段により信頼度が判定されたICカードの与信判定を、その判定された信頼度が低いほど優先して行う与信手段と
を備えたことを特徴とする与信判定システム。
【請求項2】
前記記憶手段は、前記ICカードの利用履歴として、前記路側機が設置された料金所を特定できる料金所IDを含めて記憶することを特徴とする請求項1記載の与信判定システム。
【請求項3】
前記記憶手段は、前記ICカードの利用履歴として、そのICカードが装着された車載器を特定できる車載器IDを含めて記憶することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の与信判定システム。
【請求項4】
前記車載器は、前記ICカードが装着された際にそのICカードの認証を行うものであり、
前記判定手段は、前記車載器により前記ICカードの認証が適切に行われたことを基に、信頼度を判定すること
を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか記載の与信判定システム。
【請求項5】
路側機と無線通信可能な車載器に装着された状態で車両用有料施設の課金処理に用いられるICカードの与信判定を行う与信判定システムに用いる車載器であって、
当該ICカードを特定できるカードIDが記憶されているICカードが利用された際に、そのICカードの利用履歴を記憶装置に記憶する記憶手段と、
自車両が有料施設に進入した際に、当該車載器に装着されたICカードの利用履歴を前記記憶装置から読み出し、その読み出した利用履歴を基に、そのICカードの信頼度を判定する判定手段とを備え、
前記与信判定は、前記判定手段により判定されたICカードの信頼度が低いほど優先して行われることを特徴とする車載器。
【請求項6】
路側機と無線通信可能な車載器に装着された状態で車両用有料施設の課金処理に用いられるICカードの与信判定を行う与信判定方法であって、
当該ICカードを特定できるカードIDが記憶されているICカードが利用された際に、そのICカードの利用履歴を記憶装置に記憶する記憶ステップと、
車両が有料施設に進入した際に、その車両に搭載された車載器に装着されたICカードの利用履歴を前記記憶装置から読み出し、その読み出した利用履歴を基に、そのICカードの信頼度を判定する判定ステップと、
前記判定ステップで信頼度を判定したICカードの与信判定を、その判定された信頼度が低いほど優先して行う与信ステップと
を備えたことを特徴とする与信判定方法。
【請求項1】
路側機と無線通信可能な車載器に装着された状態で車両用有料施設の課金処理に用いられるICカードの与信判定を行う与信判定システムであって、
当該ICカードを特定できるカードIDが記憶されているICカードが利用された際に、そのICカードの利用履歴を記憶装置に記憶する記憶手段と、
車両が有料施設に進入した際に、その車両に搭載された車載器に装着されたICカードの利用履歴を前記記憶装置から読み出し、その読み出した利用履歴を基に、そのICカードの信頼度を判定する判定手段と、
前記判定手段により信頼度が判定されたICカードの与信判定を、その判定された信頼度が低いほど優先して行う与信手段と
を備えたことを特徴とする与信判定システム。
【請求項2】
前記記憶手段は、前記ICカードの利用履歴として、前記路側機が設置された料金所を特定できる料金所IDを含めて記憶することを特徴とする請求項1記載の与信判定システム。
【請求項3】
前記記憶手段は、前記ICカードの利用履歴として、そのICカードが装着された車載器を特定できる車載器IDを含めて記憶することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の与信判定システム。
【請求項4】
前記車載器は、前記ICカードが装着された際にそのICカードの認証を行うものであり、
前記判定手段は、前記車載器により前記ICカードの認証が適切に行われたことを基に、信頼度を判定すること
を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか記載の与信判定システム。
【請求項5】
路側機と無線通信可能な車載器に装着された状態で車両用有料施設の課金処理に用いられるICカードの与信判定を行う与信判定システムに用いる車載器であって、
当該ICカードを特定できるカードIDが記憶されているICカードが利用された際に、そのICカードの利用履歴を記憶装置に記憶する記憶手段と、
自車両が有料施設に進入した際に、当該車載器に装着されたICカードの利用履歴を前記記憶装置から読み出し、その読み出した利用履歴を基に、そのICカードの信頼度を判定する判定手段とを備え、
前記与信判定は、前記判定手段により判定されたICカードの信頼度が低いほど優先して行われることを特徴とする車載器。
【請求項6】
路側機と無線通信可能な車載器に装着された状態で車両用有料施設の課金処理に用いられるICカードの与信判定を行う与信判定方法であって、
当該ICカードを特定できるカードIDが記憶されているICカードが利用された際に、そのICカードの利用履歴を記憶装置に記憶する記憶ステップと、
車両が有料施設に進入した際に、その車両に搭載された車載器に装着されたICカードの利用履歴を前記記憶装置から読み出し、その読み出した利用履歴を基に、そのICカードの信頼度を判定する判定ステップと、
前記判定ステップで信頼度を判定したICカードの与信判定を、その判定された信頼度が低いほど優先して行う与信ステップと
を備えたことを特徴とする与信判定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−186319(P2010−186319A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29948(P2009−29948)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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