説明

両面粘着シート

【課題】透明性が良く、気泡の巻き込みが抑制され、万が一気泡が巻き込まれた場合でも透明性を損なうことなく容易に貼り直しができるリワーク性があり、さらに被着体との接着強度を適宜調節でき、特に、接合後加熱処理した場合、ガラス表面に対する接着強度は比較的低い水準のまま、PETフイルムなどの表面に対する粘着強度を大幅に上昇させることができる両面粘着シートを提供する。
【解決手段】スチレンモノマーのブロックとゴムモノマーのブロックから成るブロックセグメントなどから成る熱可塑性エラストマーと、ナフテンオイル及び/又はパラフィンオイルなどの可塑剤とを主成分とする粘着剤層に、希望により、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤とを主成分とする接着性組成物を配合し、粘着剤層の層間に基材層を設け、さらに、基材層と粘着剤層との界面にアンカー層を設け、最外層の両面に離型性シートを積層する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着剤に関し、さらに詳しくは、透明性が優れ、接合界面への気泡の巻き込みが抑制された両面粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂板、化粧合板、金属板、塗装鋼板等の物品の加工時や搬送時の傷付きや汚れからその表面を保護するために、その表面に表面保護用フイルムを被覆することが知られている。また、携帯電話などのディスプレイ画面は、使用中の傷付きや汚れから保護するために透明な表面保護用フイルムを、また、更にテレビやパソコンなどのフラットパネルディスプレイ装置の場合は、装置からの電子線、紫外線や近赤外線の放射、外部光の表面反射を防ぐために電磁バリヤー性フイルム、紫外線や近赤外線の遮蔽性フイルム、表面反射防止フイルムなどの機能フイルムを貼り付けた状態で使用されることが多い。そして、時には、使用時の快適性改善のため、表面保護用フイルムに芳香性を付与することも試みられている。
【0003】
上記のように種々の物品に保護用フイルム、機能フイルムなどの貼り付け用フイルム(以下、代表して保護用フイルムと略記する。)を貼着する場合、通常、目的とする保護用フイルムの裏面に予め工業的に粘着剤層が形成されている保護用粘着フイルムが利用されている。しかし、フイルム層が好みの文字や図柄を描いたただ1枚の又は少数の保護用フイルムの場合は、大量生産を得意とする工業的生産で製造することは無駄であり、従って、このような場合、通常、目的とする保護フイルムに別途販売されているチューブ入り接着剤、両面粘着剤または両面粘着テープを介在させて貼り付けることになる。
【0004】
上記の両面粘着テープは、通常、例えば芯材としての紙の両面に紙層内部まで浸透するように粘着剤層を積層した構成を有している (特許文献1)。また、このような両面粘着テープを使用する場合、被着面に貼り付けるときに被着面と粘着剤面との間の接合界面に気泡が巻き込まれやすいため、かかる気泡を回避することを目的として、接着シートと剥離シートとからなる接着テープにおいて接着シートと剥離シートとを貫通する微細孔を穿孔した接着テープも提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平10−231462号公報
【特許文献2】特開2004−149621号公報
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の基材フイルムは、接着剤層内に芯材としての紙を含んでいるため不透明性であり、また、特許文献2に記載の接着テープは、仮に芯材がなくても微細孔の穿孔のため全体が不均質な透視性であるため、透視性、均質性を重視する用途には有用とは言い難い。さらに、通常の両面粘着テープに使用されている粘着剤は貼付位置がずれている場合または接合界面に気泡を巻き込んだ場合に貼り直しのために剥離すると、剥離面に糊残りが生じるため、再び貼付しようとしても得られる接合界面に、外観上もやもやが生じて透視性が損なわれ、いわゆるリワーク性が乏しいという欠点がある。このような場合、貼付位置を精確に定め且つ気泡を含まないようにするためにはその貼着操作の作業効率が低下したり、もし貼り付けに失敗すると良品歩留まり率が低下することになる。
【0006】
また、両面粘着シートを用いて二つの物品を接合し、貼り直しのため、第一の被着体表面に貼り付けられた粘着剤層を剥離し、あるいは第一の被着体表面に積層された粘着剤層表面に貼り付けられた第二の被着体を剥離する際、粘着剤と第一または第二の被着体表面との間の接着性または接着状態によっては、必ずしも剥離したい界面で剥離されないこともあり、所望の貼り直しが困難な場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の欠点を改良し、透明性が優れ、接合界面に気泡の巻き込みが抑制され、万が一気泡が巻き込まれた場合でも透明性を損なうことなく容易に貼り直しができるリワーク性があり、さらに被着体との接着強度を適宜調節でき、特に、接合後加熱処理した場合、PETフイルムなどの表面に対する粘着強度を大幅に上昇することができる両面粘着シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の要旨は、シート状の粘着剤層の両面にそれぞれ離型性シートが積層されて成り、当該粘着剤層が熱可塑性エラストマーと可塑剤とを主成分とする粘着性組成物であることを特徴とする両面粘着シートに存する。
そして、本発明の第二の要旨は、上記の両面粘着シートを使用する際、当該両面粘着シートが露出しているときに、その表面に芳香性成分を散布して含浸させることを特徴とする、芳香性両面粘着シートとしての使用方法に存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の両面粘着シートは、その粘着剤層には紙などの不透明な芯材が使用されておらず、その主成分が相互に相溶性がある粘着性組成物から構成されていて、粘着剤層自体が透明であり、自己粘着性があり、リワーク性があり、接着面に気泡の巻き込みが少なく、且つ万が一気泡を巻き込んだ場合または貼付位置がずれていた場合には剥離しても、特に粘着剤層の層間に基材層を介在させることにより、容易に貼り直しができ、被着面への糊残りが無いため外観上もやもやが生じることが無く、保護フイルムが透明な場合、被着面への透視性は損なわれない。そして、粘着剤層の成分として、粘着性組成物への接着性組成物の配合比を変化させることにより被着体との接着強度を調節することが出来、さらに、接着後加熱した場合、ガラス表面への接着強度を殆ど上昇させないままPETフイルムなどとの接着強度を大幅に増強させることが出来る。そして、上記の両面粘着シートを使用する際、当該両面粘着シートが露出しているときに、その表面に芳香性成分を散布して含浸させることにより芳香性両面粘着シートとして使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の両面粘着シートは、シート状の粘着剤層の両面にそれぞれ離型性シートが積層されて成る。
【0011】
上記の粘着剤層には、その一体性を向上して、粘着剤層の被着体表面への糊残りがなく、完全な剥離性を確保するため、その層間に粘着剤成分を保持することができる基材層を介在させるのが好ましい。かかる基材層は、粘着剤層が粘着剤組成が互いに異なった二種類の部分粘着剤層から構成されている場合は、その界面に設けるのが実用的である。さらに、粘着剤層が互いに異なった三種類の部分粘着剤層から構成されている場合は、それらのすべての界面に基材層を設けることも出来るが、二つ目以降の界面には省略することができる。一方、組成が全接着剤層に亘って同一であってもその層間に基材層を介在させた場合は、粘着剤層は基材層によって分断されて二つの部分粘着剤層になる。
【0012】
上記の基材層を構成する素材は、透明であり、部分粘着剤層を保持して粘着剤層全体を一体化して取り扱うことができるものであれば特に制限されないが、通常、可撓性がある耐熱性樹脂が好適に使用され、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル類;ポリフェニレンサルファイド(PPS);ポリイミド(PI);ポリカーボネート(PC);ポリエーテルスルホン(PES);ポリメチルペンテン(TPX);シンジオタクチックポリスチレンを含むポリスチレン類などから構成されるフイルムが使用される。このような基材層として使用できる市販フイルムとしては、例えば、ルミラー50T60(易接着処理なし、東レ株式会社製)やエンブレット38SC(片面コロナ処理PETフイルム、ユニチカ株式会社製)が挙げられる。以下、基材層を代表して基材フイルムと称する。
【0013】
上記の基材フイルムの厚さは、通常、10〜150μm程度とされ、30〜70μmが好ましい。10μm未満の場合は、粘着剤層を一体として保持する強度が不十分となって粘着剤層を被着体から剥離する際に切断し易くなり、150μmを超える場合は、全体の厚さが厚すぎることになる他、原料としての使用量が過大になり、経済的にロスになる。
【0014】
上記の粘着剤層を構成する粘着剤は、熱可塑性エラストマーと可塑剤とを主成分とする粘着性組成物から成る。上記の粘着性組成物の熱可塑性エラストマー成分は後述の熱可塑性エラストマーから選択され、可塑剤は後述の可塑剤から選択され、その際、熱可塑性エラストマー成分が可塑剤成分により可塑化されて凝集力が低下し、自己粘着性が増強するように組み合わせて選択される。なお、上記の自己粘着性とは、実質的にこの粘着剤層を形成した粘着フイルムが自重による圧力により被着面に対して粘着性を示す特性をいう。
【0015】
上記の性質を有する熱可塑性エラストマーとして、例えば、スチレンモノマーのブロックとゴムモノマーのブロックから成るブロックセグメントで構成されているものを挙げることができる。上記のゴムモノマーとは天然ゴム及び一般に合成ゴムと言われるポリマーを構成するモノマーであり、ゴムモノマーのブロックには、例えば、ポリイソプレンブロック、ポリブチレンブロック、ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック等が挙げられる。かかる熱可塑性エラストマーの具体例としては、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン(SIS)、ポリスチレン−ポリブチレン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン(SEPS)、ポリスチレン−ポリイソプレン(SI)、ポリスチレン−ポリブチレン(SB)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック(SEP)などを挙げることができる。かかるエラストマーの市販品としては、例えば、クレイトンG1651(SEBS型、シェル社製)が例示される。
【0016】
上記のエラストマーの重合度は、添加する可塑剤の種類、添加量および得られる粘着剤として期待する特性とを勘案して適宜選択することができるが、例えば、SEBSの場合、その質量平均分子量として、通常15,000〜500,000のものが好適に使用され、100,000〜500,000のものがより好適に使用される。
【0017】
また、上記の可塑剤は、上記のエラストマーに添加して自己粘着性を付与するのに効果的なものが選択されるが、かかる可塑剤としては、使用する熱可塑性エラストマー成分がポリスチレン相とゴム相とを有する場合は、ゴム相に対する親和性が高くポリスチレン相に対する親和性が低い高分子量の化合物が好ましく、具体例としては、ナフテンオイル及び/又はパラフィンオイルが挙げられる。
【0018】
上記のナフテンオイルとして、その引火点が100〜300℃のものが好ましく、150〜280℃のものがより好ましい。また、その流動点が−30〜−5℃のものが好ましく、−25〜−10℃のものがより好ましい。また、その比重が0.83〜0.87であるものが好ましく、0.837〜0.868であるものがより好ましい。さらに、その炭素数が3〜8であるものが好ましく、5〜6のものがより好ましい。
【0019】
一方、上記のパラフィンオイルとしては、その引火点が100〜300℃のものが好ましく、150〜280℃のものがより好ましい。また、その流動点が−30〜−5℃のものが好ましく、−25〜−10℃のものがより好ましい。また、その比重が0.89〜0.91であるものが好ましく、0.8917〜0.9065であるものがより好ましい。さらに、その炭素数が20〜35であるものが好ましく、21〜33のものがより好ましい。上記の粘着性組成物を構成する主要成分である熱可塑性エラストマーと可塑剤との混合比は、質量比として、通常5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10の範囲とされる。
【0020】
上記の粘着性組成物には、それを構成する主要成分である熱可塑性エラストマーと可塑剤との他に、必要に応じてさらに接着強度を増強することができる接着性組成物およびその他の添加剤を含むことができる。
【0021】
上記の接着性組成物としては、例えば、上記の粘着性組成物と相溶性が優れた主剤成分と当該主剤成分分子間に架橋性を有する架橋剤との組成物が挙げられ、かかる主剤成分としては、具体的には、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0022】
上記の接着性組成物を構成するカルボン酸変性熱可塑性エラストマーとしては、種々のカルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーを使用することができる。上記のカルボン酸変性は、例えば、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ビバル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヒメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、オレイン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸;並びに、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸によるものであってもよい。これらの中で、脂肪族不飽和ジカルボン酸による変性であるものが好ましく、マレイン酸による変性であるものがより好ましい。
【0023】
上記のカルボン酸変性熱可塑性エラストマーは、例えば水添されたカルボン酸変性熱可塑性エラストマーであってもよく、例えば、水添されたカルボン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマー、具体的にはマレイン酸変性SEBSエラストマーが挙げられる。上記の水添された熱可塑性エラストマーとして水添されたカルボン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマーを用いる場合、そのメルトインデックスが、例えば、200℃、5kgの条件下で、2.5〜25g/10分であるものが好ましく、3〜7g/10分であるものがより好ましい。また、本発明においては、水素添加率が実質的に100%であるものが好ましいが、本発明の効果が得られる限り100%未満であってもよい。
【0024】
また、前記のカルボン酸変性SEBSエラストマーを用いる場合、そのスチレン:エチレン+ブチレンの質量比は、例えば10:90〜40:60であるのが好ましく、20:80〜30:70であるのがより好ましい。さらに、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーの酸価は、好ましくは2〜10である。その範囲の中で、酸価が3未満のものは無色透明とすることができ、一方、酸価が3〜10のものは黄色がかったものとすることができる。
【0025】
上記のカルボン酸変性熱可塑性エラストマーまたはその水素添加物として市場で入手されるものとして、例えば、タフテックM1911、M1913、M1943(以上、商標、旭化成工業株式会社製)、およびFG−1901X(商標、クレイトンポリマー社製品)などを挙げることができる。
【0026】
上記の架橋剤は、主剤成分であるカルボン酸変性熱可塑性エラストマー分子間に架橋性を有する限りその種類は特に制限されず、主剤成分に応じて適宜設定されるが、主剤成分がカルボン酸変性熱可塑性エラストマーの場合は、例えば、コロネートHL(ヘキサメチレンジイソシアネート−HDI−TMPアダクト、商標、日本ポリウレタン工業株式会社製品)及びアジリジン系硬化剤BXX5134(東洋インキ製造株式会社製)を好適に挙げることができる。
【0027】
上記の接着性組成物を構成するカルボン酸変性熱可塑性エラストマー又は水添されたカルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤との配合比は、特に制限されず、粘着剤の所望する接着強度に応じて適宜設定すればよいが、例えば、100:1〜100:50、好ましくは100:1〜100:25、より好ましくは100:2〜100:10とされる。
【0028】
前記の粘着剤層を構成する粘着性組成物と接着性組成物との配合比率は、所望する接着強度を考慮して適宜決定されるが、通常、固形成分の質量比率として100:0〜5:95であり、好ましくは100:0〜25:75であり、実用的には90:10〜60:40である。粘着性組成物の割合が多いほど気泡巻き込み性が低く、接着性組成物が多いほど接着強度が大きくなる。
【0029】
前記のその他の添加剤としては、例えば、芳香成分、紫外線吸収剤、耐電防止剤、色素、酸化防止剤、老化防止剤などが挙げられるが、その他にも、本発明の目的を損なわない範囲で任意の添加剤を添加することができる。
【0030】
上記の芳香成分としては、下記の芳香成分の中から上記の粘着性組成物と実質的に相溶性があるもの、製品の芳香性両面粘着シートの使用環境、利用者の嗜好などを勘案して適宜選択して使用され、その際、希望により2種または3種以上を組み合わせて配合することができる。
【0031】
上記の芳香成分の内、液体状のものとしては、例えば酢酸リナリル(ペルガモットに似た香り)、サリチル酸イソアミル(蘭のような香気)、サリチル酸ベンジル(ごくわずかな甘い香り)、酢酸テルピニル(ラベンダーに似た香り)、酢酸トリシクロデセニル、酢酸ブチルシクロヘキシル、酢酸ベンジル(ジャスミンの香気)、酢酸オイゲノール(丁香のような香気)、酢酸ゲラニル(バラの花の香り)酢酸シトロネリル(ローズ調の果実のような香り)酢酸シンナミル(おだやかな甘い花香)、酢酸ジヒドロテルピニル(フレッシュなパインシトラスのような香気)、酢酸ジメチルベンジルカルビニル(ライラック)、ゲラニオール(バラに似た弱い花香)、酢酸イソアミル(洋梨に似た芳香)、酢酸イソオイゲノール、酢酸イソブチル(甘い果実のようなフレーバ)、ケイ皮酸エチル、クミンアルデヒド(カレーの香気)、ケイ皮アルデヒド、l−カルボン(スペアミント油のような匂い)、ギ酸エチル、ギ酸ゲラニル、ギ酸シトロネリル、カプリル酸エチル(パイナップルに似た香気)、カプロン酸アリル(パイナップルに似た香気)、カプロン酸エチル(リンゴ、梨に似た香気)、ガラクソリド、エチル−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(甘いグリーンノート)、エチレンドデカンジオエート(ムスク香)、エチレンブラシレート(ジャ香)、オイゲノール(丁子に似た香気)、10−オキサヘキサデカノリド(ジャ香)、イソ吉草酸エチル、イソチオシアン酸アリル(特異な強い刺激臭)、イロン(バイオレット香)、γ−ウンデカラクトン(油気くさい香気)、ウンデシレンアルデヒド(ローズシトラスのような香気)、安息香酸メチル、イソオイゲノール(カーネーションに似た香気)、イソカンフィルシクロヘキサノール(ムスクのようなサンダルウッド香)、イソ吉草酸イソアミル(リンゴ、バナナに似た香気)、アセト酢酸エチル、アセトフェノン、アニスアルデヒド(さんざしのような匂い)、リモネン及びペンテン、ロジノール(ローズ、ゼラニウムのような香気)、酪酸イソプロピル(強い果実のような香気)、酪酸エチル(果実のような香気)、酪酸ブチル(果実のような香気)、リナロール(スズランの香気)、α−ヨノン、酪酸イソアミル(西洋ナシ、バナナの芳香)、エチルフェニルグリシッド酸エチル(イチゴの芳香)、p−メチルアセトフェノン(さんざしの花に似た芳香)、プロピオン酸ベンジル(バナナ、ストロベリーの果実香)、ヘキシルシンナミックアルデヒド(甘い香気)、ベンジルアルコール(クリーム香料)、フェニル酢酸エチル(蜂蜜のような香気)、p−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド(ユリの香気)、プロピオン酸イソアミル(パイナップル、梨に似た香気)、プロピオン酸エチル(パイナップルの芳香)、ヒドロキシトロネテール(ユリの花)、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド(スズランのような香気)、フェニルアルデヒド(ヒヤシンスの優れた花香)、β−フェニルエチルアルコール、β−ナフチルメチルアルコール(ココナットの香気)、ジメチルベンジルカルビノール(ライラック、ナルシス)、ジャスミンラクトン、デシルアルデヒド(花のような芳香)、テトラヒドロリナロール(ローズ、リリーのような芳香)、テルピネオール(ライラックの香気)、1,8−シネオール(ショウノウのような香気)、ジヒドロジャスミン酸メチル(ジャスミンのような香気)、ジヒドロジャスミン(強い花香)、シトラール(レモンの強い香気)、シトロネラール(サンショウの香り)、シトロネロール(バラのような香り)、シクロヘキシルプロピオン酸アリル(パイナップルの香気)、酢酸リナリル(ベルガモットに似た香り)、サリチル酸イソアミル(蘭のような香気)、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル(ウインターグリーンに似た強い香り)及びこれらの変性物を挙げることができる。
【0032】
上記の芳香成分の内、固体状のものとしては、例えば、酢酸イソオイゲノール、テトラヒドロナフタレン、エチルバンリン、ケイ皮酸、酢酸セドリル、β−ナフチルメチルエーテル、バニリン、ローズフェノン等およびこれらの変性物が挙げられる。
【0033】
上記の粘着剤への芳香成分の添加量は、とくに限定されるものではないが、芳香成分が増加するにつれて粘着性が低下する傾向があるため、熱可塑性エラストマーおよび可塑剤を主成分とする粘着性組成物の固形分に対して、通常、20質量%以下、実用的には1〜15質量%とされる。
【0034】
また、上記の紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0035】
上記のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
【0036】
また、上記のベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0037】
また、上記のサリチル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレートなどを挙げることができる。
【0038】
また、上記のシアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3、3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3、3−ジフェニルアクリレート等を挙げることができる。
【0039】
上記の紫外線吸収剤の添加量は、特に制限されるものではないが、通常、0.1〜30質量%、好ましくは4〜15質量%である。
【0040】
前記の粘着性組成物、接着性組成物、その他任意に添加される添加剤は、通常、共通して溶解できる有機溶剤、例えば、トルエンに溶解して粘着剤溶液となり、通常、基材フイルムの表面に塗布し、乾燥して粘着剤層となる。上記の溶解に使用する有機溶剤の使用量は、特に限定するものではないが、通常、上記の粘着性組成物および接着性組成物の合計100質量部に対して、通常200〜400質量部、好ましくは250〜350質量部とされる。
【0041】
本発明の両面粘着シートの粘着剤層は単一層から構成されるものに限定されず、例えば、粘着剤層が2以上の部分粘着剤層から成り、それらの各部分粘着剤層の粘着剤組成が異なっていてもよい。このような粘着剤層の構成に応じて、上記の各粘着剤溶液の組成は、すべて同じであっても良いが、所望する両面粘着シートの接着特性に応じて、粘着性組成物、接着性組成物の内部組成、および、粘着性組成物と接着性組成物との配合比を適宜調節して複数の組成の粘着剤溶液を使用することにより、両面粘着シートの両表面の被着体に対する接着強度に差異が生ずるように設定することができる。この際、一般的に、上記の接着性組成物の配合割合が多いほど接着強度は上昇し、また、被着体の材質によって異なるが、多くの素材の場合、接着後の加熱処理により増強され、例えば、被着体がガラス表面の場合は大きくは変化しないが、PETフイルムでは著しく増強される。
【0042】
上記の離型性シートとしては、特に限定されるものではないが、たとえば、表面にシリコーン樹脂処理やフッ素樹脂処理したポリエチレンテレフタレートフイルム及びポリオレフィンフイルムが挙げられるが、粘着剤の接着強度によっては、表面処理を施していないポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリオレフィンフイルムでもよい。その粘着剤層の両表面に積層する離型性シートの選定に当たっては、まず、先に剥離する側の離型性シートは他の側のものより薄くなるように選択するのが実用的であり、また、後述の粘着剤層の各表面とそれに対応する被着面との接着強度が大きく異なる場合には、当該接着強度がより大きくなる粘着剤層表面には剥離強度がより小さくなる様に選択し、先に剥離して使用するのが実用的である。
【0043】
本発明の両面粘着シートは、基本的には、先ず、第一の粘着剤溶液を基材フイルムの片面に塗布し、乾燥して第一の部分粘着剤層を形成した後に第一の離型性シートの離型性表面を対面して積層し、次に上記の基材フイルムの他の面に塗布し、乾燥して第二の部分粘着剤層を形成した後に第二の離型性シートの離型性表面を対面して積層して製造される。この際、両表面の接着特性が異なる両面粘着シートを所望する場合は、上記の第一の粘着剤溶液と第二の粘着剤溶液とで異なったものを使用することができる。この際、第二の離型性シートの厚さは、第一の離型性シートの厚さより薄くし、両面粘着シートとして使用する場合は、この薄い方の離型性シートを先に剥離するように選択するのが利用し易い。なお、上記の各部分粘着剤層がさらに複数の部分粘着剤層から成っていてもよく、さらに、各部分粘着剤層の間の界面に基材フイルムが介在していてもよい。
【0044】
なお、基材フイルムを使用しない場合は、まず、第一の離型シートの表面に第一の粘着剤液を塗布し、乾燥した後、その粘着剤層表面に第二の離型性シートの離型性表面を対面させて積層して、本発明の両面粘着シートを製造することが出来る。この場合、両表面の接着特性が大きく異なる両面粘着シートを所望する場合は、第一の粘着剤溶液を塗布し乾燥した後、次いで粘着剤組成が異なった第二の粘着剤溶液を塗布し乾燥した後、第二の離型性シートの離型性表面を対面させて積層するか、あるいは、第一の粘着剤溶液を塗布し乾燥して第一の部分粘着剤層を形成した後、第二の離型性シートの離型性表面に第二の粘着剤溶液を塗布し乾燥して第二の部分粘着剤層を形成した後、両部分粘着剤層表面を接合することもできる。
【0045】
上記の様に基材フイルム表面に粘着剤溶液を塗布する際、全ての部分粘着剤層の一体性をより完全なものにするため各基材フイルムの表面に予めアンカー層を設けておくことが出来る。かかるアンカー層は、とくに、粘着剤層中に接着性組成物が全く配合されていない場合または配合比率が少ない場合にはその効果が大きい。ただし、上記の基材フイルム表面に粘着剤溶液を塗布し乾燥した場合、基材フイルムと粘着剤層との間の接着強度は、通常、両面粘着剤の表面の接着強度より大きいため、粘着剤層中に接着性組成物が全く配合されていない場合または配合比率が少ない場合であっても、粘着剤層と目的とする被着体表面の間の接着強度が格別大きい場合を除いて、アンカー層が不要な場合もある。
【0046】
上記のアンカー層を構成するアンカー剤成分としては、前記の接着性組成物を主成分としたアンカー剤溶液を使用することが出来、具体的には、例えば、前記のカルボン酸変性熱可塑性エラストマーと、当該カルボン酸変性熱可塑性エラストマー分子間に架橋性を有する成分である架橋剤とから成る接着性組成物を主成分とするアンカー剤が好適に挙げられる。上記のアンカー剤溶液は、上記のアンカー剤成分を有機溶媒に溶解して調製される。かかる有機溶媒は、前記の粘着剤溶液の調製に使用したものと同じまたは類似した有機溶媒であるのが好ましい。その有機溶媒の使用量は上記のアンカー剤成分100質量部に対して、通常200〜400質量部、好ましくは250〜350質量部とされる。
【0047】
上記のアンカー剤溶液には、耐電防止剤を添加するのが好ましい。かかる帯電防止剤としては、特に限定するものではないが、例えば、カチオン性帯電防止剤であるエレガン264wax(商標、日本油脂株式会社製)を挙げることができ、その添加量は、上記の接着剤の質量に対して、通常0.1〜3.6質量%好ましく、0.6〜1.8質量%とされる。このような添加量範囲にすることにより、アンカー層におけるいわゆる「ゆずはだ」の発生を良好に防止することができる。
【0048】
上記の各粘着剤溶液またはアンカー剤溶液の塗布方法は、公知の方法でよいが、具体例としては、ローラー塗装法、刷毛塗装法、スプレー塗装法、浸漬塗装法の他、ダイコーター、バーコーター、ナイフコーター、あるいはメイヤーバーなどを用いた塗布方法が挙げられる。また、その粘着剤層の厚さ(2層以上から成る場合はその全厚さ)は、各粘着剤溶液の場合は、通常、10〜500μm、好ましくは20〜100μm、実用的には20〜50μmであり、アンカー層の場合は、通常、1〜50μm、好ましくは1〜15μm、さらに好ましくは2〜5μmである。
【0049】
上記の各塗布後の乾燥条件は、粘着剤層の場合は、通常80〜150℃の温風中で0.5〜2分、好ましくは100〜130℃の温風中で40秒〜1.5分であり、アンカー層の場合は、通常80〜150℃の温風中で20〜60秒間、好ましくは100〜130℃の温風中で30〜50秒間である。
【0050】
上記の乾燥により得られた両面粘着シートにおいて、粘着剤層に接着性組成物が配合されている場合および接着性組成物を主成分とするアンカー層を設けた場合は、当該接着性組成物成分の反応を促進するために、熱処理するのが好ましい。熱処理条件としては、例えば、45℃×7日〜80℃×2日間程度である。
【0051】
以上のようにして得られる本発明の両面粘着シートは、粘着剤層の両表面が離型性シートで被覆されており、リワーク性、自己粘着性および透明性を有しており、使用する際、接着界面への気泡の巻き込みが抑制されるが、万が一気泡の巻き込みがあった場合、或いは貼り付け位置が正しくない場合は透視性を損なうことなく容易に貼り直しが可能であり、接着操作が簡易である。本発明の両面粘着シートのリワーク性および自己粘着性を生かして利用するには、一方の端部から中央部へ、中央部から他の端部へと順に貼り進めるのが好ましい。その際、例えば、粘着剤層がない保護フイルムなどに予め粘着層を形成して粘着性保護フイルムを作製する場合は両面粘着シートの一方の離型性シートを剥離して水平に広げた保護フイルムに端から順に貼り付ければよく、また、可撓性がある被着体と可撓性が無い被着体とを相互に接合する場合は両面粘着シートの一方の剥離性シートを剥離して先に可撓性が無い被着体表面に端から順に貼り付け、次に当該粘着シートの他方の離型性シートを剥離して露出する粘着剤層表面に可撓性がある被着体を端から順に貼り付けるのがよい。また、二つの被着体が共に可撓性がある場合は貼り付ける順序は特に問わないが、可撓性に差がある場合は、先に可撓性が小さい被着体を上記の一方が可撓性が無い被着体の場合に置き換えて考えればよい。
【0052】
例えば、本発明の両面粘着シートを使用して少なくとも一方が可撓性の被着体を含む二つの被着表面間を接合する場合の接合手順は、例えば、まず、使用する両面粘着シートの一方の離型性シート(通常、厚さがより薄い側の離型性シート)を剥離し、露出した粘着面を第一の被着体表面の端部から順に重ね合わせつつ密着させて貼付け、更に必要に応じてリワーク性を利用して気泡の巻き込みを除き、貼り付け位置が満足な状態になった後、貼り付けられた粘着剤層の表面に残っている離型性シートを剥離した後、第二の可撓性がある被着体を端部から順に重ね合わせつつ密着させて積層するのが好ましい。なお、粘着剤層の層間に基材フイルムが介在している粘着剤層を第一の被着体表面から剥離する場合は、粘着剤層間に介在する基材フイルムと離型性シートとを合わせて掴むことにより、被着体表面に粘着剤が残らない様に剥離することが出来る。逆に、第一の被着体表面に貼り付けられた粘着剤層の表面から第二の可撓性の被着体を剥離する場合は、粘着剤層に介在する基材フイルムの端を第一の被着体表面に押しつけた状態とすることにより第二の被着体のみを粘着剤の付着無く剥離することができる。
【0053】
本発明の両面粘着シートとガラス板表面やPETフイルム表面などの被着体表面との接着当初の接着強度は、傾向的には粘着剤層中の接着性組成物の配合比率を変化させることにより増減するが、概ね0.05N/cm以下程度である。したがって、この段階では上記の貼り直しの際、糊残りなく容易に剥離することが出来、すなわち、リワーク性に優れている。そして、接着確定後は、被着体の素材の種類にもよるが加熱処理を行うことにより、接着強度をさらに増強させることができる。かかる加熱条件は、例えば、40〜120℃で1〜8時間程度であり、具体例としては、80℃で30分〜3時間程度である。上記の加熱による接着強度の上昇効果は、被着体の素材による異なり、例えば、被着体がガラス板、金属板などの場合は小さいが、PETフイルムなどプラスチック材料表面の場合は、1N/cm以上にも達し、粘着剤層中に接着性組成物が配合されている場合はその効果が特に大きい。従って、本発明の二層以上の両面粘着シートを作製する場合は、適用する被着体の素材の種類および上記の加熱処理前後の接着強度の変化を考慮して、両表面の粘着剤組成を決定するのが好ましい。
【0054】
また、本発明の両面粘着シートを利用してPETフイルムなどを基材とした保護フイルムをガラス板から成るディスプレイ装置(や金属板)の表面などに積層し、加熱処理し又は長期経時の後に当該保護フイルムを剥離しようとする場合には、上記の加熱による接着強度上昇効果により、粘着剤層はフイルム表面側に強く固定されて一体となり、一方、ガラス材料から成るディスプレイ装置表面との接着強度は殆ど上昇しないから、ディスプレイ装置表面に本発明の両面粘着シートを利用して接合した保護フイルムは、長期間使用後でも、糊残り無く容易に剥離することが出来る。
【0055】
上記の両面粘着シートは、使用する際、当該両面粘着シートが露出しているときに、その表面に芳香性成分を散布して含浸させることにより芳香性両面粘着シートとしての使用することができる。すなわち、上記の両面粘着シートを利用する際、第一の被着体表面に両面粘着シートを貼り付けた後、目的とする保護フイルム等第二の被着体を積層する前に、希望により、露出している粘着剤層表面に前記の各種の芳香成分から好みに応じて選択し、適宜の量を添加して粘着剤層に吸収させることにより、芳香性粘着剤層にすることができる。上記の芳香成分の滴下量は粘着剤層の接着強度の観点から、通常粘着剤層固形分に対して20質量%以下、実用的には1〜15質量%とされ、スプレーなどにより表面に可能な限り均一に散布するのが好ましい。このようにして形成された芳香性粘着剤層の芳香発散特性は、芳香成分は薄層である粘着剤層の周辺部で大気に開口している粘着剤層からのみ発散されるため、仄かな芳香を長期間にわたって継続することが出来る。
【0056】
以上の様に、本発明の両面粘着シートの用途としては、例えば、(1)まず被着体表面に上記の両面粘着シートを貼り付け、その表面に保護フイルム等の被貼付フイルムを貼り付ける場合の様に、単なる接着剤層として、(2)一枚の保護シートなどのシート材料の片面に貼り付けて再剥離性シートの作製など、再剥離シートの粘着剤層として、(3)予め芳香成分を添加した粘着剤層の両面粘着シートを使用し、または芳香成分を添加しない粘着剤層の両面粘着シートを用いて貼り付け時に粘着剤層に芳香成分をスプレーなどにより散布して含浸させることにより、芳香放散性粘着剤層として、(4)粘着剤層として紫外線吸収剤を添加したものを使用し保護フイルムとして透明フイルムを使用し、或いは粘着剤層として紫外線吸収剤を添加しないものを使用し保護フイルムとして紫外線吸収性フイルムを使用して、紫外線防止窓貼り用の粘着剤層として、など多くの用途に使用することができる。
【実施例】
【0057】
以下に本発明を、実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0058】
[実施例1]
粘着剤成分として、スチレンとゴム成分の質量比が33/67のSEBSエラストマー(クレイトンG1651、シェル社製)17.0質量部と可塑剤としてのナフテンオイル(引火点220℃、流動点−25℃、比重0.8387、炭素数5〜6のもの)83.0質量部とをトルエン270質量部を用いて溶解し、よく攪拌・溶解して粘着剤溶液を得た。この粘着剤溶液を、基材フイルムとしての厚さ50μmのPETフイルム(ルミラー、東レ株式会社製)の片面に、第一の粘着剤層として乾燥後の厚さが35μmになるように塗布し、100℃の熱風中で1分間加熱乾燥して粘着剤層を形成した後、第一の離型性シート(厚さ75μmのPETフイルムの表面にシリコーン処理したもの)(商品名SP−PET−O3−75−BU、東セロ株式会社製)の離型性表面を向かい合わせて積層した。次いで、上記の基材フイルムの非塗布面に上記の粘着剤溶液を第一の粘着剤層の場合と同様にして第二の粘着剤層を形成した後、その表面に第二の離型性シート(厚さ25μmのPETフイルムの表面にシリコーン処理したもの)の離型性表面を向かい合わせて積層して、両面粘着シートを得た。
【0059】
(1:ガラス表面との接着強度)
上記の両面粘着シートの第二の離型性シートを剥離した粘着剤表面に厚さ25μmのPETフイルムを粘着面の巻き込み気泡が無くなるようにリワークしつつ調整して積層し、その積層シートから幅25mm、長さ250mmの短冊形試験片を裁断し、その第一の離型性シートを剥離した後、JIS Z 0237号の粘着力試験方法に準じて、その粘着剤層表面を被着体としてのガラス面に、末端に剥離口を残して圧着したところ、界面に気泡の巻き込みは無かった。このようにして試験片を複数枚作製し、30℃で30分間放置したものと80℃オーブン内に30分間放置したものを作製した。これらの試験片について、島津製作所製AUTOGRAPH AGS−50Dを用い、それぞれについて剥離角度180度法により、剥離速度毎分300mm条件で粘着剤層およびPETフイルム層をまとめて掴んで剥離して粘着剤層と被着体としてのガラス表面との間の接着強度を測定し、各3試験片の測定値の平均値を接着強度とした。さらに上記のガラス板側の剥離面の糊残り状態および粘着剤によるもやもや(靄々)の有無を目視で観察し、それらの結果を主な実験条件と共に表1に記載した。
【0060】
(2:PETフイルム表面との接着強度)
また、別に、上記の両面粘着シートの第一の離型性シートを剥離し、その粘着面を、被着体としての厚さ25μmのPETフイルム面に、末端に剥離口を残して圧着したところ、界面に気泡の巻き込みは無かった。得られた積層シートから幅25mm、長さ250mmの短冊形試験片を裁断し、その第二の離型性シートを剥離して露出した粘着剤層表面を、厚さ5mmのポリプロピレン板から成る試験板表面に強力な両面粘着テープを介して固定し、上記の(1:ガラス表面との接着強度)の場合と同様にして30℃と80℃による30分間の加熱処理をした後、それぞれについてPETフイルム層と基材フイルム層の間に剥離口を設けた後、PETフイルム層のみを掴んで剥離しつつ、剥離角度180度法により、剥離速度毎分300mm条件で、粘着剤層と被着体としてのPETフイルムとの間の接着強度を測定し、各3試験片の測定値の平均値を接着強度としそれらの結果を主な実験条件と共に表1に記載した。なお、上記の試験片の被着体側の剥離面の糊残り状態および粘着剤によるもやもやの有無を目視で観察した結果、何れの被着体表面にも糊残り及びもやもやは視認されなかった。
【0061】
[実施例2]
実施例1において、粘着剤層成分の内、粘着性組成物として、質量平均分子量250,000のSEBSエラストマー14.79質量部と可塑剤としてのナフテンオイル(引火点220℃、流動点−25℃、比重0.8387、炭素数5〜6)72.2質量部とし、さらに、接着性組成物としてマレイン酸変性SEBSであるタフテックM1911(メルトインデックスが3.5g/10分、スチレン:エチレン+ブチレン質量比が30:70、酸価が2、旭化成工業製)12.26質量部、コロネートHLの0.75質量部とを使用した以外は、実施例1の場合と全く同様にして粘着剤溶液を調製し、基材フイルムの両面に塗布し、乾燥して両面に部分粘着剤層を有する両面粘着シートを作製した。部分粘着剤層を有する両面粘着シートを作製した。この両面粘着シートについて実施例1の場合と同様にしてガラス面およびPETフイルム面に圧着したところ、貼り合わせた部分には、気泡は巻き込まれていなかった。このようにして得られた試験片について接着強度を測定し、それらの結果を主な実験条件と共に表1に記載した。なお、実施例1の場合と同様にして、上記の試験片の各被着体側の剥離面の糊残り状態および粘着剤によるもやもやの有無を目視で観察した結果、何れの被着体表面にも糊残り及びもやもやは視認されなかった。
【0062】
[実施例3]
実施例1において、粘着剤層成分の内、粘着性組成物として、質量平均分子量250,000のSEBSエラストマー13.6質量部と可塑剤としてのナフテンオイル(引火点220℃、流動点−25℃、比重0.8387、炭素数5〜6)66.4質量部とし、さらに、接着性組成物としてマレイン酸変性SEBSであるタフテックM1911(メルトインデックスが3.5g/10分、スチレン:エチレン+ブチレン質量比が30:70、酸価が2、旭化成工業製)18.86質量部、コロネートHLの1.14質量部とを使用し、さらに、芳香成分としてグレープフルーツの香りを呈するAR25204(商品名、小川香料株式会社製)5.0質量部を添加した以外は、実施例1の場合と全く同様にして粘着剤溶液を調製し、基材フイルムの両面に塗布し、乾燥して両面に部分粘着剤層を有する両面粘着シートを作製した。この両面粘着シートについて実施例1の場合と同様にしてガラス面およびPETフイルム面に圧着したところ、貼り合わせた部分には、気泡は巻き込まれていなかった。このようにして得られた試験片について接着強度を測定し、それらの結果を主な実験条件と共に表1に記載した。なお、実施例1の場合と同様にして、上記の試験片の各被着体側の剥離面の糊残り状態および粘着剤によるもやもやの有無を目視で観察した結果、何れの被着体表面にも糊残り及びもやもやは視認されなかった。
【0063】
[実施例4]
実施例1において、粘着剤層成分の内、粘着性組成物として、質量平均分子量250,000のSEBSエラストマー11.39質量部と可塑剤としてのナフテンオイル(引火点220℃、流動点−25℃、比重0.8387、炭素数5〜6)55.61質量部とし、さらに、接着性組成物としてマレイン酸変性SEBSであるタフテックM1911(メルトインデックスが3.5g/10分、スチレン:エチレン+ブチレン質量比が30:70、酸価が2、旭化成工業製)31.12質量部、コロネートHLの1.88質量部とを使用した以外は、実施例1の場合と全く同様にして、基材フイルムの両面に部分粘着剤層を有する両面粘着シートを作製した。この両面粘着シートについて実施例1の場合と同様にしてガラス面およびPETフイルム面に圧着したところ、PETフイルム面に圧着した界面に気泡が入り込んだため、その気泡の部分まで一旦剥離した後、再度貼り合わせていった結果、気泡は無くなった。このようにして得られた試験片について接着強度を測定し、それらの結果を主な実験条件と共に表1に記載した。なお、実施例1の場合と同様にして、上記の試験片の各被着体側の剥離面の糊残り状態および粘着剤によるもやもやの有無を目視で観察した結果、何れの被着体表面にも糊残り及びもやもやは視認されなかった。
【0064】
[実施例5]
実施例1において、粘着剤層成分の内、粘着性組成物として、質量平均分子量250,000のSEBSエラストマー4.25質量部と可塑剤としてのナフテンオイル(引火点220℃、流動点−25℃、比重0.8387、炭素数5〜6)20.75質量部とし、さらに、接着性組成物としてマレイン酸変性SEBSであるタフテックM1911(メルトインデックスが3.5g/10分、スチレン:エチレン+ブチレン質量比が30:70、酸価が2、旭化成工業製)70.73質量部、コロネートHLの4.27質量部とを使用した以外は、実施例1の場合と全く同様にして粘着剤溶液を調製し、基材フイルムの両面に塗布し、乾燥して両面に部分粘着剤層を有する両面粘着シートを作製した。この両面粘着シートについて実施例1の場合と同様にしてガラス面およびPETフイルム面に圧着したところ、貼り合わせた部分には、気泡は巻き込まれていなかった。このようにして得られた試験片について接着強度を測定し、それらの結果を主な実験条件と共に表1に記載した。なお、実施例1の場合と同様にして、上記の試験片の各被着体側の剥離面の糊残り状態および粘着剤によるもやもやの有無を目視で観察した結果、何れの被着体表面にも糊残り及びもやもやは視認されなかった。
【0065】
[実施例6]
アンカー用接着剤として、マレイン酸変性SEBSであるタフテックM1911(メルトインデックスが3.5g/10分、スチレン:エチレン+ブチレン質量比が30:70、酸価が2、旭化成工業製)94.3質量部を600質量部のトルエンによく溶解し、さらにこの溶液に対して帯電防止剤としてエレガン264waxの0.13質量部とを常温において添加して、接着剤液を得た。この溶液に対してコロネートHLの5.7質量部を添加しさらに良く攪拌してアンカー剤用溶液を得た。この溶液を基材フイルムとしての厚さ50μmのPETフイルム(ルミラー、東レ株式会社製)の片面に、乾燥後の厚さが2μmになるように塗布し、120℃の熱風中で40秒間乾燥してアンカー層を形成した。
上記の基材フイルムのアンカー層を塗布した表面に、実施例1で使用した粘着剤用溶液を、実施例1の場合と同様にして厚さが35μmとなるように塗布し、乾燥して第二の部分粘着剤層を形成し、その表面に実施例1で第二の離型性シートとして使用したものを積層した。次いで、上記の基材フイルムの非塗布面に実施例4で使用した粘着剤溶液を乾燥後の厚さが35μmとなる様に塗布し、実施例1の場合と同様にし、乾燥して第一の部分粘着剤層を形成し、その表面に実施例1で第一の離型性シートとして使用したものを積層し、基材フイルム層を介在させ、粘着剤層に接着性組成物が配合されていない第二部分粘着剤差得との間にアンカー層を介在させた両面粘着シートを作製した。この両面粘着シートについて実施例1の場合と同様にしてガラス面およびPETフイルム面に圧着したところ、貼り合わせた部分には、気泡は巻き込まれていなかった。このようにして得られた試験片について接着強度を測定し、それらの結果を主な実験条件と共に表1に記載した。なお、実施例1の場合と同様にして、上記の試験片の各被着体側の剥離面の糊残り状態および粘着剤によるもやもやの有無を目視で観察した結果、何れの被着体表面にも糊残り及びもやもやは視認されなかった。
【0066】
[実施例7]
この実施例は粘着剤層の層間に基材層(基材フイルム)を介在させない場合の例である。
実施例1において使用した第一の離型性シートの離型性表面に、実施例4において使用した粘着剤溶液を、乾燥後の厚さが35μmになるように塗布し、100℃の熱風中で1分間加熱乾燥して第一の部分粘着剤層を形成した。次いで、別に、実施例1で使用した第二の離型性シートの離型性表面に実施例2において使用した粘着剤溶液を、乾燥後の厚さが35μmになるように塗布し、100℃の熱風中で1分間加熱乾燥して第二の部分粘着剤層を形成した。上記の第一の部分粘着剤層の粘着表面と第二の部分粘着剤層の粘着表面とを向かい合わせて積層し、粘着剤層が粘着剤組成が異なる二つの部分粘着剤層から成る両面粘着シートを作製した。この両面粘着シートについて実施例1の場合と同様にしてガラス面およびPETフイルム面に圧着したところ、貼り合わせた部分の界面には気泡は巻き込まれていなかった。このようにして得られた試験片について接着強度を測定し、それらの結果を主な実験条件と共に表1に記載した。なお、実施例1の場合と同様にして、上記の試験片の各被着体側の剥離面の糊残り状態および粘着剤によるもやもやの有無を目視で観察した結果、PETフイルムに接合し80℃の加熱処理した試験片については被着体表面一部に糊残りがあり、もやもやが生じていたが、その他の試験片には被着体表面にも糊残り及びもやもやは視認されなかった。
【0067】
(3:光透過性)
上記の実施例1〜7に記載の両面粘着シートについて光透過性測定用として3試験片を採り、両面の離型フイルムを剥離した後、C光源用ヘーズメーターHGM−2(スガ試験機株式会社製)を使用して、各シートの、全光透過率を測定したところ、すべて90%以上であった。
【0068】
【表1】

粘着剤層の粘着性組成物の成分 SEBSエラストマー/ナフテンオイル
粘着剤層の接着性組成物の成分 マレイン酸変性SEBS/コロネートHL
【0069】
上記の実施例の結果(表1)から明らかな様に、各実施例の両面粘着シートは、いずれも透明性が優れ、粘着剤層表面の接着強度は、接着性組成物成分の配合率により調節することが出来、全体として、その接着性組成物成分の配合率が高いほど大きくすることが出来、特に被着体がPETフイルムの場合は、加熱(80℃)処理により著しく増強した。そして、実施例1〜6のように、粘着剤層の層間に基材フイルムを介在させた場合は、80℃の熱処理をおこなった後に剥離しても剥離面に糊残りや外観上のもやもやは発生しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の両面粘着シートは、その透明性が優れており、且つ、接着に際しては自己粘着性、リワーク性に優れている。そして、ガラス表面、PETフイルムなどの被着体表面との接着強度は粘着剤層中の接着性組成物の配合比により調製することが出来るため、種々の被着体同士の希望する接着条件の接合に有用であり、特に、接合後加熱処理した場合、PETフイルムなどの表面に対する粘着強度を大幅に上昇させることができるが、ガラス表面に対する接着強度は比較的低い水準のままであるため、本発明の両面粘着シートを使用して、例えば、ガラス製などのディスプレイ画面にPETフイルム製などの保護フイルムや光学フィルターを貼り付けた場合、加熱処理後または長期間経時後でもガラス面から容易に且つガラス面を汚損することなく剥離し回収することができる。従って、資源回収の観点から、ガラス素材とプラスチックフイルム、粘着剤などを明確に分離回収でき、産業上の効果は大である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の粘着剤層の両面にそれぞれ離型性シートが積層されて成り、当該粘着剤層が熱可塑性エラストマーと可塑剤とを主成分とする粘着性組成物であることを特徴とする両面粘着シート。

【請求項2】
熱可塑性エラストマーがスチレンモノマーのブロックとゴムモノマーのブロックから成るブロックセグメントとで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の両面粘着シート。

【請求項3】
可塑剤がナフテンオイル及び/又はパラフィンオイルであることを特徴とする請求項1または2に記載の両面粘着シート。

【請求項4】
粘着剤層が熱可塑性エラストマーと可塑剤とを主成分とする粘着性組成物に、さらに、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤とを主成分とする接着性組成物が配合されて成ることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の両面粘着シート。

【請求項5】
粘着剤層が2層以上の部分粘着剤層から成り、それらの各部分粘着剤層の層間に形成される界面の内の少なくとも一つの界面に、基材層が介在していることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の両面粘着シート。

【請求項6】
基材層と少なくともその片側に隣接する部分粘着剤層との界面に粘着剤と相溶性があるアンカー剤層が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の両面粘着シート。

【請求項7】
アンカー剤が、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤とを主成分とすることを特徴とする請求項6に記載の両面粘着シート。

【請求項8】
粘着剤層に、さらに芳香成分が添加されていることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載の両面粘着シート。

【請求項9】
請求項1〜8に記載の両面粘着シートを使用する際、当該両面粘着シートが露出している間に、その表面に芳香性成分を散布して含浸させることを特徴とする、芳香性両面粘着シートとしての使用方法。


【公開番号】特開2006−89654(P2006−89654A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278728(P2004−278728)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(591145335)パナック株式会社 (29)
【Fターム(参考)】