説明

両面粘着物を有する構造体の製造方法

【課題】両面に粘着性を有する両面粘着物を被マウント材上に搭載してなる両面粘着物を有する構造体を製造するにあたって、吸着コレットを用いて、当該両面粘着物をベースフィルムから適切に拾い上げる。
【解決手段】吸着工程では、軟体である両面粘着物10の一面11に吸着コレット60を吸着させて当該一面11側の全体を吸着コレット60で保持し、剥離工程では、両面粘着物10の一面11の全体を吸着コレット60で保持した状態で、両面粘着物10の一端13から他端14に向かって順にベースフィルム30を両面接着物10が搭載された側とは反対側に曲げてベースフィルム30から両面粘着物10を剥がす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表裏両面に粘着性を有する両面粘着物を被マウント材上に搭載してなる粘着物を有する構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、たとえばセンサチップを、ダイシングテープなどの粘着テープから剥がして拾い上げる方法として、光を当てると粘着力が低下する光反応性の粘着テープに光を当てたり(たとえば、特許文献1参照)、粘着テープをたわみ変形させたり(たとえば、特許文献2参照)することにより、粘着テープとセンサチップとの密着力を低下させ、その後、コレットの吸引力によって、センサチップを粘着テープから拾い上げる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−64151号公報
【特許文献2】特開2004−55661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、たとえばセンサチップなどの搭載物を配線基板などの被マウント材上に搭載・固定する場合、樹脂などよりなる両面粘着物を介して、センサチップと配線基板とを接着するのが一般的である。ここで、両面粘着物は、その一面および当該一面とは反対側の他面の両面が粘着性を有するものであり、一面側にて搭載物、他面側にて被マウント材に接着するものである。
【0005】
そして、近年においては、予め、この両面粘着物を被マウント材上に搭載・固定した後、その上に搭載物を搭載して、両面粘着物を介した搭載物および被マウント材の接着を行いたいという要望がある。
【0006】
この場合、両面粘着物は、テープ部材などのベースフィルムに貼り付けられたものを、吸着コレットを用いてベースフィルムから剥がして拾い上げ、その後、コレットによって、両面粘着物を被マウント材上に移動させて貼り付ける方法が考えられる。ここで、吸着コレットとは、たとえば一般的なセンサチップのマウントを行うものと同様、吸引力を利用して粘着物についてピックアップおよびマウントを行うものである。
【0007】
しかしながら、センサチップなどとは異なり、両面粘着物は、その他面にて粘着力によりベースフィルムに貼りついているため、粘着力が強い場合には、吸着コレットの吸引力では、両面粘着物をベースフィルムから剥離させることは容易ではない。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、両面に粘着性を有する両面粘着物を被マウント材上に搭載してなる両面粘着物を有する構造体を製造するにあたって、吸着コレットを用いて、当該両面粘着物をベースフィルムから適切に拾い上げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、一面(11)および当該一面(11)とは反対側の他面(12)に粘着性を有する軟体である両面粘着物(10)の他面(12)全体がベースフィルム(30)の一面(31)に貼り付いている粘着素材(40)を用意する用意工程と、
両面粘着物(10)の一面(11)に吸着コレット(60)を貼り付ける吸着工程と、
ベースフィルム(30)の一面(31)から両面粘着物(10)を剥離させる剥離工程と、
この剥離した両面粘着物(10)の他面(12)を被マウント材(20)に貼り付けるマウント工程と、を有して製造される両面粘着物を有する構造体の製造方法であって、
吸着工程では、両面粘着物(10)の一面(11)に吸着コレット(60)を吸着させて当該一面(11)側の全体を前記吸着コレット(60)で保持し、
剥離工程では、両面粘着物(10)の一面(11)の全体を吸着コレット(60)で保持した状態で、両面粘着物(10)の一端(13)から他端(14)に向かって順にベースフィルム(30)を両面接着物(10)が搭載された側とは反対側に曲げてベースフィルム(30)から両面粘着物(10)を剥がすことを特徴とする。
【0010】
それによれば、両面粘着物(10)の一端(13)に位置させたベースフィルム(30)の曲げられた部位(33)を起点として、両面粘着物(10)の他面(12)とベースフィルム(30)との剥離が行え、また、両面粘着物(10)の全面を吸着コレット(60)で保持することで、軟体である両面粘着物(10)が曲げられた部位(33)に沿って曲がることなく剥離できるから、吸着コレット(60)を用いて、両面粘着物(10)をベースフィルム(30)から適切に拾い上げることができる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の両面粘着物を有する構造体の製造方法においては、ベースフィルム(30)を曲げるときの内角(θz)は、鋭角であることが好ましい。
【0012】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の両面粘着物を有する構造体の製造方法において、両面粘着物(10)の他面(12)は角部(13a)を有する形状のものであり、
剥離工程では、この角部(13a)を両面粘着物(10)の一端として、ベースフィルム(30)の曲げを行い、角部(13a)を起点として、ベースフィルム(30)の剥離を行うことを特徴とする。
【0013】
それによれば、剥離の起点部分が、線ではなく、角部(13a)すなわち点となり、その点に応力が集中するので剥離が容易となる。
【0014】
また、請求項4に記載の発明のように、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の両面粘着物を有する構造体の製造方法においては、ベースフィルム(30)の曲げによる曲げられた部位(33)に対応する曲げ形状をなす先端部(71)を有する支持台(70)に、ベースフィルム(30)を搭載し、
剥離工程では、先端部(71)に沿ってベースフィルム(30)を曲げながらベースフィルム(30)を支持台(70)上にスライドさせることによって、ベースフィルム(30)の剥離を行うものにできる。
【0015】
また、請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の両面粘着物を有する構造体の製造方法において、剥離工程は、吸着コレット(60)の吸引力により両面粘着物(10)と吸着コレット(60)との密着力を増加させた状態で行うことを特徴とする。
【0016】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は、本発明の実施形態に係る両面粘着物を有する構造体の概略断面図であり、(b)は同構造体の概略平面図である。
【図2】本発明者の試作方法としての構造体の製造方法を示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態に係る両面粘着物を有する構造体の製造方法の概略を示す図である。
【図4】上記実施形態におけるベースフィルムの剥離方法と剥離起点のサイズとの関係を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各図相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0019】
図1において(a)は、本実施形態に係る両面粘着物10を有する構造体の概略断面図であり、(b)は同構造体の概略平面図である。この構造体は、両面粘着物10が被マウント材20上に搭載されてなるものである。ここで、両面粘着物10は、シート状をなすものであり、その一面11および当該一面11とは反対側の他面12に粘着性を有する軟体である。
【0020】
具体的には、両面粘着物10は、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの接着剤となる樹脂が硬化せずに、粘着性を有する半硬化状態となっているものであり、軟体として構成されているものである。そして、この両面粘着物10は、たとえば半導体チップなどの搭載物を被マウント材20に搭載したときの接着に用いるものであり、その両面粘着物10の形状は、典型的には半導体チップなど同様の矩形のシート状をなすものとされる。
【0021】
また、被マウント材20は、たとえばセラミック基板、プリント基板などの配線基板や、リードフレーム、ヒートシンク、さらには、筺体などである。この被マウント材20の材質としては、樹脂、金属、セラミックなど、特に限定されない。
【0022】
次に、この構造体の製造方法、すなわち、表裏両面に粘着性を有する両面粘着物10を被マウント材20上に搭載してなる両面粘着物を有する構造体の製造方法について述べるが、まず、従来技術に基づいて本発明者が試作検討した試作方法について説明する。図2は、この試作方法としての製造方法を示す概略図である。
【0023】
まず、両面11、12に粘着性を有する軟体である両面粘着物10の他面12全体がベースフィルム30の一面31に貼り付いている粘着素材40を用意する(用意工程)。ここで、ベースフィルム30は、テープ状をなすもので、両面粘着物10との粘着力が低い低粘着性樹脂よりなる。
【0024】
ここでは、複数個の両面粘着物10が一定間隔をもってベースフィルム30の長手方向に一列に配置されており、テープ状の粘着素材40とされている。そして、ここでは、粘着素材40は、送りロール50に巻き取られた状態とされ、両面粘着物10を使用するときには、必要な分の粘着素材40が、送りロール50から引き出されるようになっている。
【0025】
この送りロール50は、電動アクチュエータなどにより粘着素材40を送り出す方向に回転するものであり、その回転は当該アクチュエータによりオンオフが可能となっている。
【0026】
そして、図2に示されるように、送り出された粘着素材40に対して、両面粘着物10の一面11に吸着コレット60を貼り付け、吸着コレット60の吸引力により両面粘着物10と吸着コレット60との密着力を増加させた状態で、ベースフィルム30の一面31から両面粘着物10を剥離させる。
【0027】
ここで、吸着コレット60は、たとえば一般的なセンサチップのマウントを行うものと同様、吸引力を利用して粘着物についてピックアップおよびマウントを行うとともに、電動式のアクチュエータなどにより、上下左右方向に移動できるようになっているものである。
【0028】
そして、この吸着コレット60とともに剥離した両面粘着物10を被マウント材20上まで移動させ、両面粘着物10の他面12を被マウント材20に貼り付ける(マウント工程)。これにより両面粘着物10を有する構造体ができあがる。
【0029】
このような試作方法において、両面粘着物10をベースフィルム30から剥がして被マウント材20上に搭載する場合、両面粘着物10とこれら各部材20、30、60との密着力が、被マウント材20>吸着コレット60>ベースフィルム30でなければ、両面粘着物10が被マウント材20側へ移っていかない。
【0030】
これら各部材20、30、60の材質や表面状態を変えて(たとえばアンカー効果等を利用して)やれば、両面粘着物10との粘着力に差を付けるようにできるが、この粘着力は微妙な表面状態の変化や環境(温度、湿度など)の変化によって、ある程度ばらつくため、明確に差を付けることは難しい。その結果、両面粘着物10のベースフィルム30からの剥離ができない場合もあるし、または被マウント材20への搭載ができない状況が発生する。
【0031】
ここで、上記密着力の大小関係の如くに各部材20、30、60の密着力に差を付けるため、ベースフィルム30から両面粘着物10を剥がしてピックアップする時には吸着コレット60の吸着力をオンにして、吸着コレット60と両面粘着物10との密着力を増加させ、一方、両面粘着物10の被マウント材20への搭載時には、吸着コレット60の吸着力をオフにして、密着力の差のみによって、両面粘着物10を被マウント材20へ貼り付ける方法が考えられる。
【0032】
しかし、この方法では、密着力の弱い両面粘着物10では、剥離・マウントが可能であるが、コレット60の吸着力に対して密着力が強い両面粘着物10では、吸着力の効果が弱く、密着力に差を付けることができない。
【0033】
このような試作方法における検討事項を考慮して、本実施形態では、ベースフィルム30から両面粘着物10を剥がす方法に工夫を加えた。図3は、本発明の実施形態に係る両面粘着物10を有する構造体の製造方法の概略を示す図である。
【0034】
図3に示されるように、両面粘着物10がベースフィルム30に貼り付いてなる粘着素材40はテープ状をなし、送りロール50に巻き取られた状態とされている。送りロール50は、電動アクチュエータなどにより粘着素材40を送り出す方向に回転するものであり、必要な分の粘着素材40が、送りロール50から一定方向に引き出されるようになっている。この送り出しの回転は当該アクチュエータによりオンオフされる。
【0035】
送りロール50から送り出された粘着素材40は、支持台70に支持されながら、支持台70上を上記送り出しの方向にスライドしていく。ここで、粘着素材40は、ベースフィルム30の他面32を支持台70に接触させつつ、両面粘着物10が位置する一面31側を支持台70上に向けて移動する。
【0036】
ここで、上記送り出し方向における支持台70の終端には、支持台70上のベースフィルム30の厚さ方向に沿った断面形状が鋭角に尖った形状をなす先端部71が設けられている。そして、ベースフィルム30は、この支持台70の先端部71にて折り曲げられ、その先で巻き取りロール80により巻き取られるようになっている。
【0037】
この巻き取りロール80は電動アクチュエータなどによりベースフィルム30を巻き取る方向に回転するものであり、これにより、図3中の矢印Aに示されるように、ベースフィルム30が荷重をかけて巻き取られることで、ベースフィルム30は緩みなく支持台70上から先端部71で曲げられて巻き取りロール80に至るようになっている。
【0038】
そして、本実施形態の製造方法においても、図3に示されるように、用意され、送り出された粘着素材40に対して、両面粘着物10の一面11に吸着コレット60を貼り付け(吸着工程)、吸着コレット60の吸引力により両面粘着物10と吸着コレット60との密着力を増加させた状態で、ベースフィルム30の一面31から両面粘着物10を剥離させる(剥離工程)。
【0039】
ここで、本実施形態では、吸着コレット60を支持台70の先端部71上に位置させる。そして、吸着工程では、両面粘着物10の一面11に吸着コレット60を吸着させて両面粘着物10の一面11側の全体を吸着コレット60で保持する。そのため、吸着コレット60の保持面の外郭は、両面粘着物10の一面11と同等以上の平面サイズとされている。
【0040】
このとき、支持台70上をスライドするベースフィルム30は、先端部71で折り曲げられるため、この先端部71の形状に倣って曲がる。ここでは、先端部71は鋭角形状をなすため、ベースフィルム30は、その一面30と両面粘着物10の他面12との角度θzすなわち内角θzが鋭角をなすように、曲げられる。
【0041】
つまり、ベースフィルム30とともに支持台70上をスライドする両面粘着物10の一端13が、先端部71上に来たとき、この両面粘着物10の一端側にて、上記内角θzをなすように、ベースフィルム30を曲げるのである。
【0042】
そして、本実施形態の製造方法では、このベースフィルム30の曲げられた部位33が両面粘着物10の一端13から他端14側に向けて移動するように、当該曲げられた部位33と両面粘着物10の他面12との相対的位置関係を変えていくことにより、ベースフィルム30を剥離させる。
【0043】
具体的には、ベースフィルム30の曲げられた部位33に対応する曲げ形状をなす先端部71を有する支持台70に、ベースフィルム30が搭載されるが、先端部71に沿ってベースフィルム30を曲げながらベースフィルム30を支持台70上にスライドさせることによって、上記の如く、曲げられた部位33と両面粘着物10の他面12との相対的位置関係を変えていくのである。
【0044】
この場合、たとえば、吸着コレット60とともに両面粘着物10の位置を固定し、巻き取りロール80はオン状態すなわち巻き取り回転を行う状態としつつ、送りロール50はオフ状態すなわち送り回転を停止した状態としておく。
【0045】
そして、この状態で両面粘着物10の一端13から他端14に向かう方向(矢印B方向)に支持台70を移動させれば、曲げられた部位33が両面粘着物10の一端13から他端14側に向けて移動するように、上記相対的位置関係が変わり、ベースフィルム30の剥離が行える。この支持台70の移動は、電動アクチュエータなどにより容易に行える。
【0046】
また、その他、支持台70の位置を固定し、巻き取りロール80はオン状態、送りロール50もオン状態すなわち送り回転を行う状態としておき、この状態で吸着コレット60により両面粘着物10を、両面粘着物10の他端14から一端13に向かう方向(矢印C方向)に沿って、ベースフィルム30のスライド速度と同じ速度で移動させてもよい。そうすれば、曲げられた部位33が両面粘着物10の一端13から他端14側に向けて移動するように、上記相対的位置関係が変わり、ベースフィルム30の剥離が行える。
【0047】
こうして、両面粘着物10をベースフィルム30から剥がした後、吸着コレット60とともに剥離した両面粘着物10を被マウント材20上まで移動させ、両面粘着物10の他面12を被マウント材20に貼り付ける(マウント工程)。一方、曲げられた部位33にて両面粘着物10が除去されたベースフィルム30は巻き取りロール80に巻き取られる。これにより両面粘着物10を有する構造体ができあがる。
【0048】
ところで、本実施形態の製造方法によれば、吸着工程では、両面粘着物10の一面11に吸着コレット60を吸着させて当該一面11側の全体を吸着コレット60で保持し、剥離工程では、両面粘着物10の一面11の全体を吸着コレット60で保持した状態で、両面粘着物10の一端13から他端14に向かって順にベースフィルム30を両面接着物10が搭載された側とは反対側に曲げてベースフィルム30から両面粘着物10を剥がすようにしている。
【0049】
そのため、両面粘着物10の一端13に位置させたベースフィルム30の曲げられた部位33を起点として、両面粘着物10の他面12とベースフィルム30との剥離が行える。つまり、従来方法では、両面粘着物10の他面12の全体が剥離の起点となったが、この曲げられた部位33を形成することで、起点をより小さい面積にすることができるから、より小さな剥離力で剥離が行えるのである。
【0050】
また、両面粘着物10の全面を吸着コレット60で保持することで、軟体である両面粘着物10が曲げられた部位33に倣って曲がることなく剥離できる。そのため、本実施形態によれば、吸着コレット60を用いて、両面粘着物10をベースフィルム30から適切に拾い上げることができる。
【0051】
また、両面粘着物10の被マウント材20へのマウントについては、両面粘着物10における吸着コレット60との密着力が被マウント材20との密着力よりも小さいことが前提となる。このように吸着コレット60との粘着力を小さくした場合、一般には両面粘着物10をベースフィルム30から剥がせないことが起こりやすくなる。
【0052】
しかし、本実施形態では、吸着コレット60との密着力については、吸着コレット60の吸引力を利用して増加させつつ、ベースフィルム30に曲げられた部位33を形成して、局所的な剥離の起点を設けることで、吸着コレット60の材質自体の密着力は小さくとも、両面粘着物10の剥離およびマウントを両立させているのである。
【0053】
また、両面粘着物10をベースフィルム30から剥がす力である剥離力は、剥離開始時が最大となり、剥離が進行すると開始時よりも小さな力で剥がすことができる。そのため、この剥離力は、剥離の起点のサイズに依存する。
【0054】
図4は、本実施形態におけるベースフィルム30の剥離方法と剥離起点のサイズとの関係を示す概略平面図である。図4中、(a)は比較例として上記図1に示した方法を示し、(b)、(c)、(d)は本実施形態における上記曲げられた部位33を形成して剥離させる方法を示す。
【0055】
また、図4(b)に示したX、Y、Zの各方向は(a)、(c)、(d)についても共通のものであり、XY方向はベースフィルム30の一面31と平行な平面を意味し、Z方向はこのXY平面の法線方向を意味する。
【0056】
また、図4は上記支持台70上のベースフィルム30の一面31側を上方から視たときの平面構成を示しているが、図4(b)、(c)、(d)中の点ハッチング部分は、ベースフィルム30における上記曲げられた部位33と上記巻き取りロール80との間の折り返し部分を示している。また、図4(a)〜(d)において剥離起点は黒塗り部分として示してある。
【0057】
この図4(a)に示されるように、吸着コレット60によってベースフィルム30の一面31から両面粘着物10を真上、すなわちZ方向に引き上げた場合、剥離起点はベースフィルム30に粘着している両面粘着物10の他面12全体となり、大きな剥離力が必要となる。
【0058】
それに対して、図4(b)に示される本実施形態のように、ベースフィルム30をZ方向に鋭角に剥がした場合、剥離起点は、矩形シート状を成す両面粘着物10の一端13側の辺に相当する線となり、図4(a)に比べて大幅に剥離力を低減することができる。
【0059】
さらに、図4(c)に示されるように、ベースフィルム30をZ方向に鋭角に剥がすだけでなく、矩形シート状の両面粘着物10を図4(b)に比べてXY方向に斜めに配置することにより、両面粘着物10の他面12の角部13aが、両面粘着物10の一端13aとしてベースフィルム30の曲げられた部位33に位置する。
【0060】
また、図4(d)に示されるように、ベースフィルム30をZ方向に鋭角に剥がすだけでなく、ベースフィルム30を図4(b)に比べてXY方向に斜めに引っ張ることによっても、両面粘着物10の他面12の角部13aが、ベースフィルム30の曲げられた部位33に位置する。
【0061】
この図4(c)、(d)に示されるように、曲げられた部位33のエッジと両面粘着物10との接触部を、矩形シート状の両面粘着物10の角部13aに位置させれば、剥離起点は角部13aすなわち点となり、その点に応力が集中するので、剥離力を最小に抑えることが可能となる。
【0062】
このように、両面粘着物10の他面12が角部13aを有する形状の場合、この角部13aを両面粘着物10の一端として、曲げられた部位33が角部13aに位置するように、ベースフィルム30の曲げを行い、角部13aを起点として、上記同様に上記相対的位置関係を変えていき、ベースフィルム30の剥離を行えば、より効果的である。
【0063】
(他の実施形態)
なお、上記内角θzは鋭角であることが望ましいが、両面粘着物10の密着力の度合いに応じて必ずしも鋭角である必要はなく、180未満すなわち0度以上180度未満で曲がっていればよく、たとえば90度および鈍角でもよい。
【0064】
また、上記剥離が適切に行われるならば、剥離工程にて、吸着コレット60の吸引力をオフにした状態で、両面粘着物10と吸着コレット60とを密着させ、ベースフィルム30の一面31から両面粘着物10を剥離させるようにしてもよい。
【0065】
また、被マウント材20としては、上記した基板等以外にも、たとえば半導体チップやウェハなどであってもよい。つまり、これらチップが搭載される基板側に両面粘着物10をマウントし、その上にチップを搭載する場合とは逆に、予めチップ側に両面粘着物10を搭載し、その後、両面粘着物10を介してチップと基板とを接着するようにしてもよい。
【0066】
また、両面粘着物10は、1つの被マウント材20に1個のみ貼り付けられることに限定されるものではなく、1つの被マウント材20に2個以上貼り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 両面粘着物
11 両面粘着物の一面
12 両面粘着物の他面
13 両面粘着物の一端
13a 両面粘着物の角部
14 両面粘着物の他端
20 被マウント材
30 ベースフィルム
31 ベースフィルムの一面
33 曲げられた部位
40 粘着素材
60 吸着コレット
70 支持台
71 支持台の先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面(11)および当該一面(11)とは反対側の他面(12)に粘着性を有する軟体である両面粘着物(10)の前記他面(12)全体がベースフィルム(30)の一面(31)に貼り付いている粘着素材(40)を用意する用意工程と、
前記両面粘着物(10)の前記一面(11)に吸着コレット(60)を貼り付ける吸着工程と、
前記ベースフィルム(30)の前記一面(31)から前記両面粘着物(10)を剥離させる剥離工程と、
この剥離した両面粘着物(10)の前記他面(12)を被マウント材(20)に貼り付けるマウント工程と、を有して製造される両面粘着物を有する構造体の製造方法であって、
前記吸着工程では、前記両面粘着物(10)の前記一面(11)に前記吸着コレット(60)を吸着させて当該一面(11)側の全体を前記吸着コレット(60)で保持し、
前記剥離工程では、前記両面粘着物(10)の前記一面(11)の全体を前記吸着コレット(60)で保持した状態で、前記両面粘着物(10)の一端(13)から他端(14)に向かって順に前記ベースフィルム(30)を前記両面接着物(10)が搭載された側とは反対側に曲げて前記ベースフィルム(30)から前記両面粘着物(10)を剥がすことを特徴とする両面粘着物を有する構造体の製造方法。
【請求項2】
前記ベースフィルム(30)を曲げるときの内角(θz)は、鋭角であることを特徴とする請求項1に記載の両面粘着物を有する構造体の製造方法。
【請求項3】
前記両面粘着物(10)の前記他面(12)は角部(13a)を有する形状のものであり、
前記剥離工程では、この角部(13a)を前記両面粘着物(10)の前記一端として、前記ベースフィルム(30)の曲げを行い、前記角部(13a)を起点として、前記ベースフィルム(30)の剥離を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の両面粘着物を有する構造体の製造方法。
【請求項4】
前記ベースフィルム(30)の曲げによる曲げられた部位(33)に対応する曲げ形状をなす先端部(71)を有する支持台(70)に、前記ベースフィルム(30)を搭載し、
前記剥離工程では、前記先端部(71)に沿って前記ベースフィルム(30)を曲げながら前記ベースフィルム(30)を前記支持台(70)上にスライドさせることによって、前記ベースフィルム(30)の剥離を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の両面粘着物を有する構造体の製造方法。
【請求項5】
前記剥離工程は、前記吸着コレット(60)の吸引力により前記両面粘着物(10)と前記吸着コレット(60)との密着力を増加させた状態で行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の両面粘着物を有する構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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