説明

両面金属材張り積層板及びプリント配線板

【課題】 放熱性に優れるプリント配線板を形成することができる両面金属材張り積層板を提供する。
【解決手段】 厚み70μmを超える二枚の金属材1、2が厚み50μm以下の接着層3で接着されて一体化されると共に金属材1、2の接着層3側の表面の十点平均粗さが30μm以上である。金属材1、2を回路パターン4、5に加工してプリント配線板Bとすることによって、厚みが70μmを超えて比較的熱容量の大きな回路パターン4、5を形成する。この回路パターン4、5に高い発熱性の電気部品7を搭載することによって、回路パターン4、5への電気部品7からの熱伝導性を高めることができる。回路パターン4、5の間には厚みが50μm以下で比較的薄い接着層3が介在するだけであり、しかも、回路パターン4、5を近接させて一方の回路パターン4から他方の回路パターン5への熱伝導性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面に導電性の金属材を有する両面金属材張り積層板及びこの両面金属材張り積層板より得られるプリント配線板に関するものであり、特に、高い発熱性を有する電気部品を搭載するプリント配線板や通電量が多くて発熱しやすいプリント配線板を形成する場合に好適に用いることができる両面金属材張り積層板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の電気電子機器の軽薄短小化に伴って、電気電子機器に内蔵されるプリント配線板も軽薄短小化が図られており、従って、プリント配線板の回路パターンも極薄化や微細化が進められている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、回路パターンの極薄化や微細化が進むと回路パターンからの放熱が望めなくなり、プリント配線板の放熱性が低くなるという問題があった。
【特許文献1】特開2000−252594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、放熱性に優れるプリント配線板を形成することができる両面金属材張り積層板、及び放熱性に優れるプリント配線板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の両面金属材張り積層板Aは、厚み70μmを超える二枚の金属材1、2が厚み50μm以下の接着層3で接着されて一体化されると共に金属材1、2の接着層3側の表面の十点平均粗さが30μm以上であることを特徴とするものである。
【0006】
本発明によれば、金属材1、2を回路パターン4、5に加工してプリント配線板Bとすることによって、厚みが70μmを超えて比較的熱容量の大きな回路パターン4、5を形成し、この回路パターン4、5に高い発熱性の電気部品7を搭載することによって、回路パターン4、5への電気部品(電子部品)7からの熱伝導性を高めることができ、また、回路パターン4、5の間には厚みが50μm以下で比較的薄い接着層3が介在するだけであり、しかも、回路パターン4、5の接着層3側の表面は十点平均粗さが30μm以上で比較的粗度が大きいので、回路パターン4、5を近接させて一方の回路パターン4から他方の回路パターン5への熱伝導性を高めることができ、この結果、回路パターン4、5から放熱しやすくなって放熱性に優れるプリント配線板Bを形成することができるものである。
【0007】
本発明では、二枚の金属材1、2を部分的に接触させるのが好ましく、これにより、金属材1、2から形成される二つの回路パターン4、5を接触させることができ、一方の回路パターン4から他方の回路パターン5への熱伝導性をさらに高めることができ、より放熱性に優れるプリント配線板Bを形成することができるものである。
【0008】
本発明では、金属材1、2として圧延銅箔又は電解銅箔の少なくとも一方を用いるのが好ましく、これにより、良好な回路形成と放熱性を得ることができるものである。
【0009】
本発明では、接着層3として熱硬化性樹脂組成物又はプリプレグの少なくとも一方を用いるのが好ましく、これにより、必要な位置については絶縁性を確保することができるものである。
【0010】
本発明のプリント配線板Bは、請求項1乃至4のいずれかに記載の両面金属材張り積層板Aの少なくとも一方の金属材1(又は2)を回路パターン4(又は5)に形成して成ることを特徴とするものである。
【0011】
本発明によれば、厚みが70μmを超えて比較的熱容量の大きな回路パターン4、5を形成し、この回路パターン4、5に高い発熱性の電気部品7を搭載することによって、回路パターン4、5への電気部品7からの熱伝導性を高めることができ、また、回路パターン4、5の間には厚みが50μm以下で比較的薄い接着層3が介在するだけであり、しかも、回路パターン4、5の接着層3側の表面は十点平均粗さが30μm以上で比較的粗度が大きいので、回路パターン4、5を近接させて一方の回路パターン4から他方の回路パターン5への熱伝導性を高めることができ、この結果、回路パターン4、5から放熱しやすく放熱性に優れるものとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属材を回路パターンに加工してプリント配線板とすることによって、厚みが70μmを超えて比較的熱容量の大きな回路パターンを形成し、この回路パターンに高い発熱性の電気部品を搭載することによって、回路パターンへの電気部品からの熱伝導性を高めることができ、また、回路パターンの間には厚みが50μm以下で比較的薄い接着層が介在するだけであり、しかも、回路パターンの接着層側の表面は十点平均粗さが30μm以上で比較的粗度が大きいので、回路パターンを近接させて一方の回路パターンから他方の回路パターンへの熱伝導性を高めることができ、この結果、回路パターンから放熱しやすくなって放熱性に優れるプリント配線板を形成することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0014】
本発明の両面金属材張り積層板は、図1に示すように、接着層3の両面に金属材1、2を全面に亘って張着して形成されるものである。金属材1、2は銅やアルミニウムなどの導電性を有する金属で板状あるいは箔状に形成されるものであって、70μmを超える厚み(最も薄い部分の厚み)を有するものである。従来からある通常のプリント配線板用の両面銅張り積層板は銅箔の厚みがほとんど35μm以下であるが、本発明では70μmを超える比較的厚手の金属材1、2を使用するものであり、これにより、薄手のものを使用するよりも金属材1、2及びこれらから形成される回路パターン4、5の熱容量を大きくすることができ、発熱性の高い電気部品7からの金属材1、2や回路パターン4、5への熱伝導性を高めることができるものである。本発明において、金属材1、2の厚みの上限は特に設定されないが、入手容易性や加工容易性などを考慮すると、500μm以下にするのが好ましい。
【0015】
また、金属材1、2の接着層3側に向く表面の十点平均粗さ(JIS B 0601−1994に規定)は30μm以上である。このような粗さを有する金属材1、2を用いることにより、接着層3に金属材1、2の表面の微細な凸部11を食い込ませることができる。従って、表面粗さの少ない金属材を使用する場合に比べて、金属材1、2の間隔を小さくして一方の金属材1(又は2)から他方の金属材2(又は1)への熱伝導を大きくすることができ、発熱性の高い電気部品7が一方の金属材1や回路パターン4に搭載されている場合であっても、他方の金属材2や回路パターン5への熱伝導性をも高めることができるものである。本発明において、金属材1、2の表面の十点平均粗さの上限は特に設定されないが、入手容易性や加工容易性などを考慮すると、100μm以下にするのが好ましい。
【0016】
上記のような十点平均粗さを有する金属材1、2を得るために粗面化処理を行なっても良い。粗面化処理としては研磨紙や研磨布によるサンディングあるいはブラシ研磨等を採用することができるが、その他にサンドブラストによる粗面化も好適に用いることができる。サンドブラストにより金属材1、2の粗面化を行なうと、粗面化のムラが小さくて均質な表面状態を得ることができる。サンドブラストの研磨剤としては砂やガラスビーズ、籾殻などを用いることができる。具体的には、例えば、研削材としてその粒子形状が複雑な形をした鋭角粒のアルミナや炭化珪素等の無機質の粉体を使用し、これらの研削材を圧縮空気を利用した乾式法により0.2〜0.6MPaの圧力で金属材1、2に高速で吹きつけて十点平均粗さRzで30μm以上に粗面化を行い、次に、その表面を40〜50%濃度の過マンガン酸カリウム溶液を70℃に加温して浸漬し、化学的エッチング処理を行うことができる。
【0017】
さらに、金属材1、2としては圧延銅箔又は電解銅箔の一方あるいは両方を用いるのが好ましい。圧延銅箔と電解銅箔以外の金属材、例えば、アルミニウム箔等を用いた場合は、導電性が低く、回路設計が困難などの問題が生じる恐れがある。すなわち、本発明では圧延銅箔又は電解銅箔を金属材1、2として用いることにより、電気回路として十分な機能を有するという作用効果を奏するものである。
【0018】
本発明において、接着層3は熱硬化性樹脂組成物の硬化物やプリプレグの硬化物で形成することができる。熱硬化性樹脂組成物としてはエポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を主成分とし、その他に無機充填材などを配合したものを用いることができる。具体的には、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、絶縁特性、耐熱性及び接着性に優れるものとしてエポキシ基2官能とエポキシ基多官能の2種以上のエポキシ樹脂を併用したものが望ましい。2官能エポキシ樹脂と多官能エポキシ樹脂の併用比率は90:10〜30:70の範囲が好ましい。2官能エポキシ樹脂としてはビスフェノール型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂としてはノボラック型、クレゾールノボラック型及びアミノエポキシ樹脂などの市販品が使用できる。エポキシ樹脂の架橋剤(硬化剤)としては、限定するものではないが、保存性の点で高温反応型が望ましく、各種アミン類、無水酸、レゾールフェノール樹脂、ノボラックフェノール樹脂などが使用できる。
【0019】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物には合成ゴム若しくはエラストマー又は必要に応じ無機充填剤が若干量加えられているのが好ましい。エポキシ樹脂単独では半硬化状態で塗工銅箔が折り曲げられた際に塗膜が割れることがあり、塗膜欠陥を作る原因となる。エポキシ樹脂よりもはるかに分子量の大きい合成ゴムやエラストマーを若干量配合することにより、乾燥後の塗膜が割れることがなくなり、また、加熱貼り合わせ時の樹脂流れが適度に調整されるため均一な接着層3を形成することができる。無機充填材は特に限定するものではないが、熱伝導性の良いものとして、アルミナ微粉末、溶融微粉末、酸化ベリリウム微粉末などを必要に応じ適宜使用することができ、好ましくは、熱硬化性樹脂組成物の全量に対して80質量%未満の配合量にすることができる。上記の無機充填材としてはシリカや炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などを用いることもできる。
【0020】
接着層3として用いられるプリプレグは、上記と同様の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸して形成することができる。基材としてはガラスクロスやガラス不織布などの公知のものを適宜採用することができ、また、プリプレグ中の樹脂量は30〜80%に設定することができる。
【0021】
そして、二枚の金属材1、2の間に上記の熱硬化性樹脂組成物あるいはプリプレグを介在させた後、無加圧あるいは加圧下で加熱することにより、熱硬化性樹脂組成物あるいはプリプレグを硬化させて接着層3を形成すると共にこの接着層3により二枚の金属材1、2を接着して一体化することにより、図1に示すような本発明の両面金属材張り積層板を形成することができる。二枚の金属材1、2の間に熱硬化性樹脂組成物やプリプレグを介在させるにあたっては、例えば、一方の金属材1の表面に熱硬化性樹脂組成物を塗布したりプリプレグを配置したりした後、その熱硬化性樹脂組成物やプリプレグの層の表面に他方の金属材2を被せるようにする。また、接着層3により二枚の金属材1、2を接着する際に加熱加圧成形する場合は、圧力5〜50MPa、温度160〜220℃、時間60〜200分とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0022】
本発明において、接着層3の厚みは50μm以下であり、これにより、接着層3を介して配置される金属材1、2を非常に近接させることができ、発熱性の高い電気部品7が一方の金属材1や回路パターン4に搭載されている場合であっても、他方の金属材2や回路パターン5への熱伝導性を高めることができるものである。本発明において、接着層3の厚みの下限は特に設定されないが、金属材1、2を強く接着するなどのために、20μm以上にするのが好ましい。また、本発明において接着層3の上記厚みは最も厚い部分の寸法を示すものである。
【0023】
本発明において、図2に示すように、一方の金属材1の凸部11と他方の金属材2の凸部11とを接触させて金属材1、2を部分的に接触させるのが好ましく、これにより、発熱性の高い電気部品7が一方の金属材1や回路パターン4に搭載されている場合であっても、凸部11、11を通じて他方の金属材2や回路パターン5への熱伝導性を高めることができるものである。
【0024】
本発明のプリント配線板Bは、図3に示すように、上記の両面金属材張り積層板Aの金属材1、2を所望の回路パターン4、5に加工することにより形成することができる。この場合、二枚の金属材1、2のうち、一方の金属材1(又は2)のみを回路パターン4(又は5)に加工してもよいし、金属材1、2の両方を回路パターン4、5に加工してもよい。金属材1、2が銅材である場合、従来からプリント配線板の製造で用いられているパターン形成の技術で回路パターン4、5を作製することができ、例えば、金属材1、2の表面に感光性のエッチングレジストを塗布した後、マスクを用いた露光とその後の現像により所望のエッチングレジストパターンを作製し、これをレジストとして塩化第二銅などを含むエッチング液でエッチングすることによって、残存した金属材1、2の一部で回路パターン4、5を形成することができる。
【0025】
本発明のプリント配線板Bでは両方の回路パターン4、5をこれに搭載した電気部品7の通電と放熱の両方に用いることができるが、一方の回路パターン4(又は5)は通電と放熱の両方に用い、他方の回路パターン5(又は4)は電気回路には用いずに放熱のみに用いるようにしても良い。また、回路パターン4、5が凸部11により接触している場合は電気回路のショートによる不具合が発生しないように、回路パターン4、5の形状を考慮しなければならないが、一方の回路パターン4と他方の回路パターン5とを同一の形状にすることにより、回路パターン4、5が接触により電気的に接続されている場合でも、電気回路のショートによる不具合の発生を容易に防止することができる。もちろん、電気回路のショートによる不具合が発生しないようにすることができるのであれば、回路パターン4、5を同一の形状にする必要はないが、回路パターン4、5を同一形状にする方が簡単に電気回路のショートを防止することができるものである。
【実施例】
【0026】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0027】
(実施例)
金属材1、2として、250μmの圧延銅箔にサンドブラストによって片側の表面が十点平均粗さ35μmとなる処理を施し、圧延銅箔を2枚作製した。
【0028】
その圧延銅箔の処理した面と接するように厚み45μmのプリプレグ(R1661)を接着層3として配置し、180℃、30MPaにて60分加熱加圧し、図1のような銅張り積層板を得た。
【0029】
この積層板の断面を観察したところ、層間(回路パターン4、5間)で局部的に銅箔同士が接触していた。
【0030】
そして、この銅張り積層板に加工及び部品実装を施し図3のようなプリント配線板を得た。実装された部品下の回路パターン4には40Aの電流が流れたが、層間での熱移動が大きく、プリント配線板の温度上昇は15℃に抑制された。
【0031】
(比較例)
金属材1、2である250μmの電解銅箔に厚み45μmのプリプレグ(R1661)を接着層3を配置し、180℃、30MPaにて60分加熱加圧し、図1と同様の銅張り積層板を得た。この電解銅箔の十点平均粗さを測定したところ、12μmであった。
【0032】
そして、この銅張り積層板に加工及び部品実装を施し図3のようなプリント配線板を得た。実装された部品下の回路パターン4には40Aの電流が流れたが、層間(回路パターン4、5間)での熱移動が小さく、プリント配線板の温度上昇は25℃に達し、実施例よりも放熱性が低くなった。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の両面金属材張り積層板の一例を示す断面図である。
【図2】同上の一部を示す拡大断面図である。
【図3】本発明のプリント配線板の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 金属材
2 金属材
3 接着層
4 回路パターン
5 回路パターン
A 両面金属材張り積層板
B プリント配線板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み70μmを超える二枚の金属材が厚み50μm以下の接着層で接着されて一体化されると共に金属材の接着層側の表面の十点平均粗さが30μm以上であることを特徴とする両面金属材張り積層板。
【請求項2】
二枚の金属材を部分的に接触させて成ることを特徴とする請求項1に記載の両面金属材張り積層板。
【請求項3】
金属材として圧延銅箔又は電解銅箔の少なくとも一方を用いて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の両面金属材張り積層板。
【請求項4】
接着層として熱硬化性樹脂組成物又はプリプレグの少なくとも一方を用いて成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の両面金属材張り積層板。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の両面金属材張り積層板の少なくとも一方の金属材を回路パターンに形成して成ることを特徴とするプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2005−153299(P2005−153299A)
【公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−394666(P2003−394666)
【出願日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】