説明

並列電源システム

【課題】簡素な装置構成で、制御を行うことなく各電源を流れる電流を平滑化しうる並列電源システムを提供する。
【解決手段】並列電源システム(10,30,40,50)は、負荷4に電力を供給する電力供給源である。並列電源システム(10,30,40,50)では、第1電源14及びこの第1電源14に直列接続された第1インダクタ16を有する第1アーム12と、第2電源24及びこの第2電源24に直列接続された第2インダクタ26を有する第2アーム22とが並列に接続されている。第1インダクタ16と第2インダクタ26とは、第1アーム12から負荷4に向かって電流が流れたとき、第2アーム22の出力電圧を高める方向の起電力が第2インダクタ26に発生するように結線されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電源を並列に接続した並列電源システムに係り、特に、変動電流が流れる負荷に電力を供給する並列電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電源を大容量化するために電源を複数並列に接続した並列電源システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電気自動車やハイブリッド自動車等の電源として、電池を並列に接続した組電池が開示されている。
ところが、特許文献1のような組電池では、各電池の内部抵抗や直列電池群の配線抵抗等に起因する電圧降下が直列電池群ごとに異なるため、各直列電池群を流れる電流のばらつきが生じてしまう。そのため、直列電池群ごとの電池の減り具合が異なり、直列電池群ごとの電池の起電力のばらつきが経時的に大きくなってしまう。電池の起電力のばらつきがあると、起電力の大きな直列電池群から起電力の小さな直列電池群に向かう還電流が生じてしまうことがある。そして、還電流が発生すると、意図しない充放電のサイクルが進むことになるので、電池の寿命が縮まる。また、意図しない充放電によって、電力のロスが問題となる。
【0004】
そこで、インバータやチョッパ等を用いた電流制御によって、各直列電池群の電流のばらつきを小さくすることが考えられる。
例えば、特許文献2には、複数のバッテリが並列接続された回路装置において、負荷を流れる電流の計測値から各バッテリが負担すべき負荷電流を算出し、これと各バッテリを流れる電流計測値とを比較し、その比較結果に基づいて各バッテリに接続されたDC−DCコンバータの出力電圧を制御する制御装置が記載されている。これにより、並列接続された複数のバッテリの負荷を均等化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−142353号公報
【特許文献2】特開2001−095163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の制御装置では、負荷を流れる電流の計測値から各バッテリが負担すべき負荷電流を算出し、これと各バッテリを流れる電流計測値とを比較し、その比較結果に基づいてDC−DCコンバータの出力電圧を調節するといった煩雑な制御を行う必要がある。また、電流計測器やDC−DCコンバータ等を設置する必要があるため、設備コストがかさんでしまう。同様に、インバータやチョッパを用いて電流制御を行う場合にも、煩雑な制御の必要性や設備コストの問題がある。
特に、大電流が流れる大型の並列電源システム(大型蓄電装置など)の場合、設備が高価になるため、これを大型の並列電源システムに導入することは困難である。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、安価かつ簡素な装置構成で、制御を行うことなく各電源を流れる電流を平滑化しうる並列電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る並列電源システムは、変動電流が流れる負荷に電力を供給する並列電源システムであって、第1電源および該第1電源に直列接続された第1インダクタを有する第1アームと、前記第1アームと並列に接続され、第2電源および該第2電源に直列接続された第2インダクタを有する第2アームとを備え、前記第1インダクタと前記第2インダクタとは、前記第1アームから前記負荷に向かって電流が流れたとき、前記第2アームの出力電圧を高める方向の起電力が前記第2インダクタに発生するように結線されていることを特徴とする。
【0009】
この並列電源システムでは、第1アームから負荷に向かって電流が流れたとき、第2アームの出力電圧を高める方向の起電力が第2インダクタに発生するように第1インダクタ及び第2インダクタを結線しているので、第1アーム及び第2アームに電流変動が生じる際、第1インダクタ及び第2インダクタの相互誘導によってアーム間の電流が平滑化される。
例えば、第1アーム及び第2アームに電流が流れ始める際、第1アームの配線抵抗が第2アームよりも小さいために、第1アームにより多くの電流が流れようとする場合を考える。この場合、第1インダクタ及び第2インダクタの相互誘導によって、第1アームには第1電源の出力電圧に逆らう起電力が発生し、第2アームには第2電源の出力電圧と同一方向の起電力が発生する。よって、第1アーム及び第2アームを流れる電流が均等化(平滑化)される。
したがって、各アームにインダクタを設けただけの安価かつ簡素な装置構成で、何ら制御を行うことなく各電源を流れる電流を平滑化することができる。また、各アームに流れる電流を平滑化(均等化)することで、各アームにおける抵抗成分(各電源の内部抵抗や配線抵抗)における電力ロス(=(電流)×(抵抗))の総和を小さくできるから、全体としての電力ロスを低減できる。
【0010】
上記並列電源システムは、前記第1アームおよび前記第2アームの接続点と前記負荷との間に設けられるインダクタと、前記インダクタと前記負荷との間に一端が接続され、第3電源および該第3電源に直列接続された第3インダクタを有する第3アームとをさらに備え、前記インダクタと前記第3インダクタとは、前記第1アーム及び第2アームから前記負荷に向かって電流が流れたとき、前記第3アームの出力電圧を高める方向の起電力が前記第3インダクタに発生するように結線されていてもよい。
【0011】
これにより、3本の第1アーム〜第3アームについて、電流の平滑化を行うことができる。
【0012】
上記並列電源システムは、前記第1アームおよび前記第2アームと並列に接続され、第3電源および該第3電源に直列接続された一対の第3インダクタを有する第3アームをさらに備え、前記第1アームは、前記第1電源に直列接続された一対の前記第1インダクタを有し、前記第2アームは、前記第2電源に直列接続された一対の前記第2インダクタを有し、前記第1インダクタの一方と前記第2インダクタの一方とは、前記第1アームから前記負荷に向かって電流が流れたとき、前記第2アームの出力電圧を高める方向の起電力が前記第2インダクタの一方に発生するように結線されており、前記第1インダクタの一方と前記第3インダクタの一方とは、前記第1アームから前記負荷に向かって電流が流れたとき、前記第3アームの出力電圧を高める方向の起電力が前記第3インダクタの一方に作用するように結線されており、前記第2インダクタの他方と前記第3インダクタの他方とは、前記第2アームから前記負荷に向かって電流が流れたとき、前記第3アームの出力電圧を高める方向の起電力が前記第3インダクタの他方に作用するように結線されていてもよい。
【0013】
このように、各アームに一対のインダクタを設け、それぞれ他のアームのインダクタと相互誘導させて電流平滑化を行うことで、各アームのインダクタの数が等しくなり、各アームのインピーダンスを揃えることができる。
【0014】
上記並列電源システムにおいて、前記第1電源及び前記第2電源は電池であってもよく、一次電池又は二次電池であってもよい。
【0015】
上記並列電源システムは、上述のように、各アームに設けたインダクタの相互誘導によってアーム間の電流を平滑化して、環電流の発生を防止可能であるため、第1電源及び第2電源が一次電池である場合には、環電流に起因する意図しない一次電池の充電を抑制できる。また、第1電源及び第2電源が二次電池である場合には、環電流の発生防止により二次電池を長寿命化して、例えば、長期に亘って二次電池のメンテナンスが行えないような状況下でも運用可能な信頼性の高い並列電源システムとすることができる。
【0016】
第1電源及び第2電源が二次電池である場合、前記負荷に替えて外部電源が前記第1アーム及び前記第2アームに接続され、前記外部電源から供給される電力によって前記第1電源及び前記第2電源が充電されるようになっていてもよい。
これにより、外部電源からパルス状等の充電用の変動電流が流れる場合に、各アームを流れる電流を均等化できる。
【0017】
また、上記並列電源システムにおいて、前記第1アームと前記第2アームとの電流比が所定値になるように、前記第1インダクタと前記第2インダクタとの巻数比が設定されていてもよい。例えば、前記第1電源と前記第2電源との最大出力電流比または最大出力電力比に応じて、前記第1インダクタと前記第2インダクタとの巻数比を設定してもよい。あるいは、前記第1電源および前記第2電源が電池である場合には、前記第1電源と前記第2電源との容量比(電池容量比)に応じて、前記第1インダクタと前記第2インダクタとの巻数比を設定してもよい。
【0018】
上記並列電源システムにおいて、前記変動電流が流れる負荷は、例えば、インバータ、チョッパ及びスイッチング電源のいずれかであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第1アームから負荷に向かって電流が流れたとき、第2アームの出力電圧を高める方向の起電力が第2インダクタに発生するように第1インダクタ及び第2インダクタを結線したので、第1アーム及び第2アームに電流変動が生じる際、第1インダクタ及び第2インダクタの相互誘導によってアーム間の電流が平滑化される。
よって、各アームにインダクタを設けただけの安価かつ簡素な装置構成で、何ら制御を行うことなく各電源を流れる電流を平滑化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態に係る並列電源システムの構成例を示す図である。
【図2】第2実施形態に係る並列電源システムの構成例を示す図である。
【図3】第3実施形態に係る並列電源システムの構成例を示す図である。
【図4】4本のアームを用いた並列電源システムの構成例を示す図である。
【図5】実施例1に係るインダクタの電流平滑化作用を確認するために行った計算に関する図であり、(a)は計算の対象とした回路構成図、(b)は電流の経時変化の計算結果を示すグラフである。
【図6】実施例1において比較のためにインダクタを設けないで行った計算に関する図であり、(a)は計算の対象とした回路構成図、(b)は電流の経時変化の計算結果を示すグラフである。
【図7】実施例2に係るインダクタの電流平滑化作用を確認するために行った計算に関する図であり、(a)は計算の対象とした回路構成図、(b)は電流の経時変化の計算結果を示すグラフである。
【図8】実施例2において比較のためにインダクタを設けないで行った計算に関する図であり、(a)は計算の対象とした回路構成図、(b)は電流の経時変化の計算結果を示すグラフである。
【図9】実施例3に係るインダクタの電流平滑化作用を確認するために行った計算に関する図であり、(a)は計算の対象とした回路構成図、(b)は電流の経時変化の計算結果を示すグラフである。
【図10】実施例3において比較のためにインダクタを設けないで行った計算に関する図であり、(a)は計算の対象とした回路構成図、(b)は電流の経時変化の計算結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0022】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る並列電源システムの構成例を示す図である。同図に示すように、並列電源システム10は、スイッチング素子2を有する負荷4に接続され、負荷4に電力を供給するようになっている。
負荷4は、スイッチング素子2を有する負荷(例えば、インバータ、チョッパ、スイッチング電源等)であり、スイッチング素子2の動作により短時間での電流変動を生じうるようになっている。なお、ここでは、負荷4がスイッチング素子2を有する例について説明するが、負荷4は変動電流が流れる限り、スイッチング素子2を持たないものであってもよい。
【0023】
並列電源システム10は、第1アーム12及び第2アーム22が並列に接続された構成を有する。第1アーム12は、第1電源14及びこの第1電源14に直列接続された第1インダクタ16を有する。同様に、第2アーム22は、第2電源24及びこの第2電源24に直列接続された第2インダクタ26を有する。
なお、図1において符号18及び28で示したのは、各アーム(12,22)の配線抵抗や電池内部抵抗等の抵抗成分である。
【0024】
本実施形態では、第1インダクタ16と第2インダクタ26とは、第1アーム12から負荷4に向かって電流が流れたとき、第2アーム22の出力電圧を高める方向の起電力が第2インダクタ26に発生するように結線されている(言い換えると、第2アーム22から負荷4に向かって電流が流れたとき、第1アーム12の出力電圧を高める方向の起電力が第1インダクタ16に発生するように結線されている)。
なお、図1には、第1インダクタ16及び第2インダクタ26の巻き始め端子(図1における黒丸。)が互い違いである例を示したが、この例は第1インダクタ16にはその巻き始め端子とは反対側から電流が流れ、第2インダクタ26にはその巻き始め端子側から電流が流れる場合に関するものであり、各インダクタの結線態様(各インダクタを流れる電流の向き)によっては、巻き始め端子が互い違いでないこともある。要は、第1アーム12から負荷4に向かって電流が流れたとき、第2アーム22の出力電圧を高める方向の起電力が第2インダクタ26に作用するように、第1インダクタ16と第2インダクタ26を結線するのである。
また、第1インダクタ16と第2インダクタ26とは、共通のコア20に巻かれており、両者の巻数は同一である。
【0025】
第1インダクタ16及び第2インダクタ26をこのように結線することで、スイッチング素子2の動作により第1アーム12及び第2アーム22に電流変動が生じる際、第1インダクタ16及び第2インダクタ26の相互誘導によってアーム間の電流が平滑化される。
例えば、スイッチング素子2の動作により第1アーム12及び第2アーム22に電流が流れ始める際、第1アーム12の抵抗成分18が第2アーム22の抵抗成分28よりも小さいために、第1アーム12により多くの電流が流れようとする場合を考える。この場合、第1インダクタ16及び第2インダクタ26の相互誘導によって、第1アーム12には第1電源14の出力電圧に逆らう起電力が発生し、第2アーム22には第2電源24の出力電圧と同一方向の起電力が発生する。よって、第1アーム12及び第2アーム22を流れる電流が均等化(平滑化)される。
【0026】
本実施形態によれば、各アーム(12,22)にインダクタ(16,26)を設けただけの安価かつ簡素な装置構成で、何ら制御を行うことなく各電源(14,24)を流れる電流を平滑化することができる。そのため、環電流の発生を防止できる。
【0027】
なお、電源(14,24)は、並列電源システム10に組み込まれて負荷4に電力を供給可能である限り特に限定されず、電池、大容量コンデンサ(電気2重層コンデンサ)、発電機等の任意の電力供給源を用いることができる。
【0028】
例えば、電源(14,24)として一次電池又は二次電池を用いることができる。
並列電源システム10は、上述のように、各アーム(12,22)に設けたインダクタ(16,26)の相互誘導によってアーム間の電流を平滑化して、環電流の発生を防止可能であるため、電源(14,24)が一次電池である場合には、環電流に起因する意図しない一次電池の充電を抑制できる。また、電源(14,24)が二次電池である場合には、環電流の発生防止により二次電池を長寿命化できる。そのため、例えば、長期に亘って二次電池のメンテナンスが行えないような状況下でも運用可能な信頼性の高い並列電源システム10とすることができる。
【0029】
なお、電源(14,24)が二次電池である場合、負荷4に替えて外部電源を第1アーム12及び第2アーム22に接続し、この外部電源から供給される電力によって電源(14,24)を充電するようにしてもよい。
このとき、外部電源からパルス状等の充電用の変動電流が流れる場合に、インダクタ(16,26)の相互誘導によって各アーム(12,2)を流れる電流が均等化される。
例えば、外部電源から第1アーム12及び第2アーム22に電流が流れ始める際、第1アーム12の抵抗成分18が第2アーム22の抵抗成分28よりも小さいために、第1アーム12により多くの電流が流れようとする場合を考える。この場合、第1インダクタ16及び第2インダクタ26の相互誘導によって、第1アーム12には第1電源14の充電電圧に逆らう起電力が発生じ、第2アーム22には第2電源24の充電電圧と同一方向の起電力が発生する。よって、第1アーム及び第2アームを流れる電流が均等化(平滑化)される。
【0030】
なお、本実施形態では、第1インダクタ16と第2インダクタ26との巻数が同一である例について説明したが、各アーム(12,22)を流れる電流の比が所定値になるように第1インダクタ16と第2インダクタ26との巻数比を任意に設定してもよい。
例えば、各電源(14,24)の最大出力電流比または最大出力電力比に応じて、第1インダクタ16と第2インダクタ26との巻数比を調節してもよい。あるいは、各電源(14,24)が電池である場合には、各電源の容量比に応じて、第1インダクタ16と第2インダクタ26との巻数比を調節してもよい。これにより、特性(最大出力電流比、最大出力電力比、電池容量比等)の異なる電源(14,24)にも適用可能となる。
【0031】
[第2実施形態]
図2は、第2実施形態に係る並列電源システムの構成例を示す図である。同図に示す並列電源システム30は、3本のアームについて電流平滑化を行うようにした点を除けば、第1実施形態の並列電源システム10と同様である。よって、並列電源システム10と同一の部分には共通の符号を付し、ここではその説明を省略する。
【0032】
並列電源システム30では、第1実施形態と同様に結線された第1インダクタ16及び第2インダクタ26に加えて、第1アーム12及び第2アーム22の接続点P1と負荷4との間にインダクタ37が設けられている。そして、このインダクタ37と負荷4との間には、第3アーム32の一端が接続されている。第3アーム32は、第3電源34及びこの第3電源34に直列接続された第3インダクタ36を有する。なお、抵抗成分38は、第3アーム32の配線抵抗や電池内部抵抗等である。
そして、インダクタ37と第3インダクタ36とは、第1アーム12及び第2アーム22から負荷4に向かって電流が流れたとき、第3アーム32の出力電圧を高める方向の起電力が第3インダクタ36に発生するように結線されている。また、インダクタ37は、第3インダクタ36と共通のコア20に巻かれており、その巻数は第3インダクタ36の巻数の約半分である。インダクタ37の巻数を第3インダクタ36の巻数の約半分にするのは、インダクタ37を流れる電流が第3インダクタ36を流れる電流の約2倍であることを考慮したものである。
【0033】
本実施形態では、第1インダクタ16及び第2インダクタ26の相互誘導によって、第1アーム12と第2アーム22との間の電流が平滑化される。また、インダクタ37及び第3インダクタ36の相互誘導によって、第1アーム12及び第2アーム22を通過後の電流(インダクタ37を流れる電流)と第3アーム32を流れる電流との平滑化が行われる。結果的に、各アーム(12,22,32)間の電流のばらつきが抑制される。
【0034】
なお、本実施形態では、インダクタ37の巻数が第3インダクタ36の巻数の約半分である例について説明したが、各アーム(12,22,32)を流れる電流の比が所定値になるようにインダクタ37と第3インダクタ36との巻数比を任意に設定してもよい。
例えば、各電源(14,24,34)の最大出力電流比または最大出力電力比に応じて、インダクタ37と第3インダクタ36の巻数との巻数比を調節してもよい。あるいは、各電源(14,24,34)が電池である場合には、各電源の容量比に応じて、インダクタ37と第3インダクタ36の巻数との巻数比を調節してもよい。
【0035】
[第3実施形態]
図3は、第3実施形態に係る並列電源システムの構成例を示す図である。同図に示す並列電源システム40は、3本のアームの結線の仕方が異なる点を除けば、第2実施形態の並列電源システム30と同様である。よって、並列電源システム30と同一の部分には共通の符号を付し、ここではその説明を省略する。
【0036】
本実施形態では、3本のアーム(12,22,32)は並列に接続されており、それぞれ、電源(14,24,34)及びこの電源に直列接続された一対のインダクタ(16A,16B,26A,26B,36A,36B)を有する。
【0037】
各アーム(12,22,32)の一対のインダクタは、それぞれ、他のアームのインダクタと相互誘導しうるように設けられている。なお、相互誘導を生じるようにペアを構成したインダクタの巻数は、互いに等しい。
具体的には、第1インダクタ16Aと第2インダクタ26Aとは、第1アーム12から負荷4に向かって電流が流れたとき、第2アーム22の出力電圧を高める方向の起電力が第2インダクタ26Aに発生するように共通のコア20に巻かれている。また、第1インダクタ16Bと第3インダクタ36Bとは、第1アーム12から負荷4に向かって電流が流れたとき、第3アーム32の出力電圧を高める方向の起電力が第3インダクタ36Bに発生するように共通のコア20に巻かれている。さらに、第2インダクタ26Bと第3インダクタ36Aとは、第2アーム22から負荷4に向かって電流が流れたとき、第3アーム32の出力電圧を高める方向の起電力が第3インダクタ36Aに発生するように共通のコア20に巻かれている。
【0038】
本実施形態では、第1インダクタ16A及び第2インダクタ26Aの相互誘導によって、第1アーム12と第2アーム22との間の電流が平滑化される。また、第1インダクタ16B及び第3インダクタ36Bの相互誘導によって、第1アーム12と第3アーム32との間の電流が平滑化される。そして、第2インダクタ26B及び第3インダクタ36Aの相互誘導によって、第2アーム22と第3アーム32との間の電流が平滑化される。結果的に、各アーム(12,22,32)間の電流のばらつきが抑制される。
また、各アーム(12,22,32)のインダクタの数が等しいので、各アームのインピーダンスを揃えることができる。
【0039】
なお、本実施形態では、相互誘導を生じるようにペアを構成したインダクタの巻数が互いに等しい例について説明したが、各アーム(12,22,32)を流れる電流の比が所定値になるように、各ペアを構成するインダクタの巻数比を任意に設定してもよい。
例えば、各電源(14,24,34)の最大出力電流比または最大出力電力比に応じて、各ペアを構成するインダクタの巻数比を調節してもよい。あるいは、各電源(14,24,34)が電池である場合には、各電源の容量比に応じて、各ペアを構成するインダクタの巻数比を調節してもよい。
【0040】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
【0041】
例えば、上述の実施形態では、電源のプラス端子側にインダクタを設ける例について説明したが、インダクタを電源のマイナス端子側に設けてもよいし、インダクタを電源のプラス端子側及びマイナス端子側の両方に設けてもよいことはいうまでもない。
【0042】
また上述の実施形態では、アームの数が2〜3本である例について説明したが、アームの数は4本以上であってもよい。この場合、第1実施形態のような2本のアーム(12,22)の結線態様、あるいは、第2実施形態又は第3実施形態のような3本のアーム(12,22,32)の結線態様を適宜組み合わせて、任意のアーム本数の並列電源システムを実現してもよい。例えば、4本のアームを用いた並列電源システムの場合、第1実施形態の2本のアームの結線態様を複数組み合わせてもよい。
【0043】
図4は、4本のアームを用いた並列電源システムの構成例を示す図である。同図に示す並列電源システム50は、第1実施形態の結線態様を組み合わせて4本のアームに適用したものである。なお、第4アーム42は、他のアームと同様に、第4電源44に直列接続された第4インダクタ46を有する。なお、図4において符号48で示したのは、第4アーム42の抵抗成分である。
【0044】
並列電源システム50では、第1アーム12及び第2アーム22と第3アーム32及び第4アーム42との2組のアーム対を第1実施形態と同様な結線態様で結線している。具体的には、第1アーム12の第1インダクタ16と第2アーム22の第2インダクタ26とは、第1アーム12から負荷4に向かって電流が流れたとき、第2アーム22の出力電圧を高める方向の起電力が第2インダクタ26に発生するように共通のコア20に巻かれている。同様に、第3アーム32の第3インダクタ36と第4アーム42の第4インダクタ46とは、第3アーム32から負荷4に向かって電流が流れたとき、第4アーム42の出力電圧を高める方向の起電力が第4インダクタ46に発生するように共通のコア20に巻かれている。
さらに、第1アーム12及び第2アーム22の接続点P1と負荷4との間にはインダクタ52が設けられ、第3アーム32及び第4アーム42の接続点P2と負荷4との間にはインダクタ54が設けられている。そして、インダクタ52とインダクタ54とは、第1アーム12及び第2アーム22から負荷4に向かって電流が流れたとき、第3アーム32及び第4アーム42の出力電圧を高める方向の起電力がインダクタ54に発生するように共通のコア20に巻かれている。
【0045】
したがって、並列電源システム50では、第1インダクタ16と第2インダクタ26との相互誘導、第3インダクタ36と第4インダクタ46との相互誘導、さらにはインダクタ52とインダクタ54の相互誘導によって、アーム(12,22,32,42)間の電流のばらつきが抑制される。
【0046】
また上述の実施形態では、ペアとなるインダクタ(16,16A,16B,26,26A,26B,36,36A,36B,37,46,52,54)を共通のコア20に巻いた例について説明したが、ペアとなるインダクタが上述した相互誘導を生じるように結線されている限り、コアの構造は特に限定されない。例えば、ペアとなるインダクタを共通のコア20に巻くのではなく、コアがなくインダクタのみであってもよいし(空心コア)、構造上分割されたコア(分割コア)のそれぞれにインダクタを巻いてもよい。
【実施例】
【0047】
上述の実施形態に係る並列電源システムのインダクタの電流平滑化作用を、以下の3種類の条件下における計算によって確認した。
【0048】
[実施例1]
図5は、電池の内部抵抗の差がある場合におけるインダクタの電流平滑化作用を確認するために行った計算に関する図であり、図5(a)が計算の対象にした回路構成図、図5(b)が電流の経時変化の計算結果を示すグラフである。図6は、比較のためにインダクタを用いずに行った計算に関する図であり、図6(a)が計算の対象とした回路構成図、図6(b)が電流の経時変化の計算結果を示すグラフである。
【0049】
図5(a)に示す回路構成では、各アーム(12,22)の抵抗R2とR3は、それぞれ、1.6mΩ、2.0mΩである。また各アームには、共通のコアに巻いたインダクタ(16,26)が設けられている。この回路構成において、各抵抗を流れる電流を計算した。なお、負荷4のスイッチング素子2は、PWM制御部52から出力されるパルス信号に基づいて開閉を繰り返すようになっている。
【0050】
図5(b)に示すように、アーム12の抵抗R2を流れる電流IR2[A]とアーム22の抵抗R3を流れる電流IR3[A]との差が低減されることが分かった。なお、図5(b)において、IL1はLOAD1を流れる電流の大きさを意味する。
【0051】
一方、図6(a)に示す回路構成は、インダクタが各アームに設けられていない点を除けば図5(a)の回路構成と同様である。図6(a)に示す回路構成において各抵抗を流れる電流を計算したところ、図6(b)に示すように、抵抗R5を流れる電流IR5[A]と抵抗R6を流れる電流IR6[A]との差が図5(b)に比べて大きかった。
【0052】
[実施例2]
図7は、電池の内部抵抗に差がある場合の各電池からの放電時にバランスしたとき(平衡状態になったとき)のインダクタの電流平滑化作用を確認するために行った計算に関する図であり、図7(a)が計算の対象にした回路構成図、図7(b)が電流の経時変化の計算結果を示すグラフである。図8は、比較のためにインダクタを用いずに行った計算に関する図であり、図8(a)が計算の対象とした回路構成図、図8(b)が電流の経時変化の計算結果を示すグラフである。
【0053】
図7(a)に示す回路構成では、内部抵抗(R2及びR3)が異なるために平衡状態における電池の電圧(15.99V及び16.01V)に差異が生じている。この回路構成において、各抵抗を流れる電流を計算したところ、図9(b)に示すように、アーム12の抵抗R2を流れる電流IR2[A]とアーム22の抵抗R3を流れる電流IR3[A]との差が低減されることが分かった。
【0054】
一方、図8(a)に示す回路構成は、インダクタが各アームに設けられていない点を除けば図7(a)の回路構成と同様である。図8(a)に示す回路構成において各抵抗を流れる電流を計算したところ、図8(b)に示すように、抵抗R5を流れる電流IR5[A]と抵抗R6を流れる電流IR6[A]との差が図7(b)に比べて大きかった。また、抵抗R5を流れるIR5は、スイッチS2がOFFのときに、負の電流となっており、抵抗R5に環電流が流れていることが分かった。なお、このような環電流は図7(b)では確認されなかった。
【0055】
[実施例3]
図9は、電池の内部抵抗に差がある場合の各電池への充電時にバランスしたとき(平衡状態になったとき)のインダクタの電流平滑化作用を確認するために行った計算に関する図であり、図9(a)が計算の対象にした回路構成図、図9(b)が電流の経時変化の計算結果を示すグラフである。図10は、比較のためにインダクタを用いずに行った計算に関する図であり、図10(a)が計算の対象とした回路構成図、図10(b)が電流の経時変化の計算結果を示すグラフである。
【0056】
図9(a)に示す回路構成では、内部抵抗(R2及びR3)が異なるために平衡状態における電池の電圧(16.01V及び15.99V)に差異が生じている。この回路構成において、各抵抗を流れる電流を計算したところ、図9(b)に示すように、アーム12の抵抗R2を流れる電流IR2[A]とアーム22の抵抗R3を流れる電流IR3[A]との差が低減されることが分かった。なお、スイッチS1がOFFのときに、R2を流れるIR2は負の電流であり、環電流の発生が確認されたが、環電流の大きさは比較的小さかった。
【0057】
一方、図10(a)に示す回路構成は、インダクタが各アームに設けられていない点を除けば図9(a)の回路構成と同様である。図10(a)に示す回路構成において各抵抗を流れる電流を計算したところ、図10(b)に示すように、抵抗R5を流れる電流IR5[A]と抵抗R6を流れる電流IR6[A]との差が図9(b)に比べて大きかった。また、抵抗R5を流れるIR5は、スイッチS2がOFFのときに、負の電流となっており、抵抗R5に図9(b)よりも大きな環電流が流れていることが分かった。
【0058】
上記実施例1〜3における計算結果から、電池の内部抵抗にばらつきがある場合(実施例1)、および、電池の内部抵抗のばらつきに加えて電池の起電力に差異がある場合(実施例2及び3)のいずれにおいても、インダクタの相互誘導を利用して電流を平滑化できることが確認された。
【符号の説明】
【0059】
2 スイッチング素子
4 負荷
10 並列電源システム
12 第1アーム
14 第1電源
16 第1インダクタ
18 抵抗成分
20 コア
22 第2アーム
24 第2電源
26 第2インダクタ
28 抵抗成分
30 並列電源システム
32 第3アーム
34 第3電源
36 第3インダクタ
37 インダクタ
38 抵抗成分
40 並列電源システム
42 第4アーム
44 第4電源
46 第4インダクタ
48 抵抗成分
50 並列電源システム
52 インダクタ
54 インダクタ
P1 接続点
P2 接続点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変動電流が流れる負荷に電力を供給する並列電源システムであって、
第1電源および該第1電源に直列接続された第1インダクタを有する第1アームと、
前記第1アームと並列に接続され、第2電源および該第2電源に直列接続された第2インダクタを有する第2アームとを備え、
前記第1インダクタと前記第2インダクタとは、前記第1アームから前記負荷に向かって電流が流れたとき、前記第2アームの出力電圧を高める方向の起電力が前記第2インダクタに発生するように結線されていることを特徴とする並列電源システム。
【請求項2】
前記第1アームおよび前記第2アームの接続点と前記負荷との間に設けられるインダクタと、
前記インダクタと前記負荷との間に一端が接続され、第3電源および該第3電源に直列接続された第3インダクタを有する第3アームとをさらに備え、
前記インダクタと前記第3インダクタとは、前記第1アーム及び第2アームから前記負荷に向かって電流が流れたとき、前記第3アームの出力電圧を高める方向の起電力が前記第3インダクタに発生するように結線されていることを特徴とする請求項1に記載の並列電源システム。
【請求項3】
前記第1アームおよび前記第2アームと並列に接続され、第3電源および該第3電源に直列接続された一対の第3インダクタを有する第3アームをさらに備え、
前記第1アームは、前記第1電源に直列接続された一対の前記第1インダクタを有し、
前記第2アームは、前記第2電源に直列接続された一対の前記第2インダクタを有し、
前記第1インダクタの一方と前記第2インダクタの一方とは、前記第1アームから前記負荷に向かって電流が流れたとき、前記第2アームの出力電圧を高める方向の起電力が前記第2インダクタの一方に発生するように結線されており、
前記第1インダクタの一方と前記第3インダクタの一方とは、前記第1アームから前記負荷に向かって電流が流れたとき、前記第3アームの出力電圧を高める方向の起電力が前記第3インダクタの一方に発生するように結線されており、
前記第2インダクタの他方と前記第3インダクタの他方とは、前記第2アームから前記負荷に向かって電流が流れたとき、前記第3アームの出力電圧を高める方向の起電力が前記第3インダクタの他方に発生するように結線されていることを特徴とする請求項1に記載の並列電源システム。
【請求項4】
前記第1電源及び前記第2電源は電池であることを特徴とする請求項1に記載の並列電源システム。
【請求項5】
前記電池は二次電池であることを特徴とする請求項4に記載の並列電源システム。
【請求項6】
前記負荷に替えて外部電源が前記第1アーム及び前記第2アームに接続され、前記外部電源から供給される電力によって前記第1電源及び前記第2電源が充電されることを特徴とする請求項5に記載の並列電源システム。
【請求項7】
前記第1アームと前記第2アームとの電流比が所定値になるように、前記第1インダクタと前記第2インダクタとの巻数比が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の並列電源システム。
【請求項8】
前記第1電源と前記第2電源との最大出力電流比及び最大出力電力比のいずれか一方に応じて、前記第1インダクタと前記第2インダクタとの巻数比が設定されていることを特徴とする請求項7に記載の並列電源システム。
【請求項9】
前記第1電源および前記第2電源は電池であり、
前記第1電源と前記第2電源との容量比に応じて、前記第1インダクタと前記第2インダクタとの巻数比が設定されていることを特徴とする請求項7に記載の並列電源システム。
【請求項10】
前記変動電流が流れる負荷は、インバータ、チョッパ及びスイッチング電源のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の並列電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−217256(P2012−217256A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80416(P2011−80416)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】