説明

並列駆動電源装置

【課題】 簡易構成で高精度電流バランス制御が可能な並列駆動電源装置を提供する。
【解決手段】 DC−DCコンバータ1A,1Bへの各入力電流をカレントトランス21の巻線21A,21Bに流し、これらの各入力電流により生ずる各磁界が互いに打ち消し合う向きとなるようにすると共に、各磁界同士が打ち消し合うようにDC−DCコンバータ1A,1Bの出力を制御する。具体的には、DC−DCコンバータ1A,1Bへの各入力電流を流す巻線21A,21Bをカレントトランス21の磁性コア21Cに互いに逆極性で巻設すると共に、発振器22からの励磁電流ipを流す巻線21Dを磁性コア21Cに巻設する。磁性コア21CがもつBH曲線の非線形特性から生ずる励磁電流ipの正負ピークのアンバランスを検出器23により検出し、そのアンバランスがなくなるように、制御部24が各DC−DCコンバータ1A,1Bを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電圧源を負荷に並列接続して構成される並列駆動電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スイッチング電源(DC−DCコンバータ等の直流電圧源)を負荷に対して複数並列に接続して構成した並列駆動電源装置が知られている。このような並列駆動手法は、複数の直流電圧源の各々に負荷を分散して、それぞれの寿命を延ばすことを目的とする場合や、電源装置の高出力化を図る場合に有効である。この種の並列駆動電源装置では、安定した運転を担保する上で、電流バランス(負荷分担比)を如何に制御するかが重要な問題である。
【0003】
一般に、スイッチング電源を並列運転する手法の一つとして、例えば特許文献1に開示されているように、相間リアクトルを用いて出力電流のアンバランス抑制を行う方法がある。ところが、この手法は高周波電流に対しては効果があるものの、直流電流や低周波電流には効果が薄いという問題がある。そこで、電流検出手段であるシャント抵抗やカレントトランス(CT)によってスイッチ電流を検出して互いの出力電流が一致するように出力電圧を補正することにより電流バランス制御を行う手法が提案されている(特許文献2,特許文献3)。
【特許文献1】特開平11−299252号公報
【特許文献2】特開平11−18415号公報
【特許文献3】特公平6- 26473号公報
【0004】
なお、スイッチング電源においては、カレントトランスによって検出したスイッチ電流に基づいて間接的に出力電流情報を得る手法が一般的であるが、このほか、コアの磁気飽和特性を利用した高精度直流電流センサ等を利用して直接的に出力電流を検出する手法(特許文献4,特許文献5,特許文献6)もある。
【特許文献4】特開1995−55846号公報
【特許文献5】特開2002−022774号公報
【特許文献6】国際公開WO00/22447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献2,特許文献3のように、スイッチング電源内に設けられたスイッチ電流検出手段を用いて出力電流バランス制御する場合には、カレントトランスの結合度のばらつきや、シャント抵抗の抵抗値,平滑チョークのインダクタンス値,さらにスイッチング素子等の回路定数のばらつきが問題となる。これらの要素のばらつきが存在すると、各スイッチング電源の電流検出値にばらつきが生じ、制御系がそれを補正するように動作する結果、電流バランス制御の精度が落ち、並列運転制御しているスイッチング電源の負荷分担比に定常偏差(負荷分担比の設計値からのずれ)を発生させてしまう。
【0006】
また、上記の特許文献4,特許文献5,特許文献6に示された高精度直流電流センサ等を利用して直接的に出力電流を検出して制御を行った場合には、電流バランス制御の精度を確保できる可能性があるものの、この種の直流電流センサは、一般に高価である上、回路構成が複雑になることから、低コスト化の妨げになる。
【0007】
さらに、上記の各手法では、各スイッチング電源のスイッチング電流または出力電流を電流検出手段により検出して制御回路上で演算や判定等を行い、出力電圧の電圧指令値あるいはフィードバック値に補正を加えることで電流バランス制御を行うようにしていることから並列台数分(n台)の電流検出手段が必要になる。したがって、この点でも、回路構成が複雑になるという問題があった。
【0008】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたもので、その目的は、簡単な構成で高精度の電流バランス制御を行うことができる並列駆動電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の並列駆動電源装置は、各出力端が負荷に共通接続されると共にそれぞれが入力電圧を出力電圧に変換する複数の直流電圧変換器と、複数の直流電圧変換器のうち、第1群の直流電圧変換器に入力される直流電流によって生ずる第1の磁界の方向と、第2群の直流電圧変換器に入力される直流電流によって生ずる第2の磁界の方向とが互いに打ち消し合う向きとなる位置において、第1の磁界と第2の磁界とが互いに打ち消し合うこととなるように、第1群および第2群の直流電圧変換器を制御する制御手段とを備えている。ここで、「直流電圧変換器」とは、直流電圧をレベル変換して出力する電源をいい、いわゆる直流−直流(DC−DC)コンバータのことである。「巻線」とは、必ずしも文字通りコイル状に巻き回した導線には限られず、直線状に延びる導線や板状導体も含む。「複数の直流電圧変換器」とは、文字通り、2以上の直流電圧変換器を意味する。「第1群の直流電圧変換器」は、1または2以上の直流電圧変換器を意味し、同様に、「第2群の直流電圧変換器」もまた1または2以上の直流電圧変換器を意味する。
【0010】
本発明の第1の並列駆動電源装置では、第1群の直流電圧変換器へ入力される直流電流による第1の磁界の方向と第2群の直流電圧変換器へ入力される直流電流による第2の磁界の方向とが互いに打ち消し合う向きとなる位置において、第1の磁界と第2の磁界とが互いに打ち消し合うこととなるように第1群および第2群の直流電圧変換器の制御が行われる。第1の磁界と第2の磁界とが互いに打ち消し合った状態では、第1群および第2群の直流電圧変換器への各入力直流電流のバランスがとれていることになる。すなわち、第1群および第2群の直流電圧変換器について予め設定された負荷分担比に従って、これらの2つの群の直流電圧変換器についての運転制御が行われる。
【0011】
本発明の第1の並列駆動電源装置では、第1の磁界と第2の磁界との打ち消し合いの状態を検出する検出手段をさらに備え、この検出手段の検出結果に応じて、制御手段が、第1の磁界と第2の磁界とが互いに打ち消し合うこととなるように第1群および第2群の直流電圧変換器を制御するように構成可能である。この場合には、さらに、第1の磁界による磁束と第2の磁界による磁束とを収容する磁性コアを設けることが好ましい。検出手段として、例えばカレントトランスを用い、磁界の相対バランス検出を行うことも可能であるし、あるいは、ホール素子等の磁界センサを用いて磁界の絶対値に基づくバランス検出を行うことも可能である。
【0012】
磁性コアとしては、例えばトロイダルコアを用いることができる。この場合には、第1群の直流電圧変換器に入力される直流電流と第2群の直流電圧変換器に入力される直流電流とが互いに逆向きにトロイダルコアを貫いて流れるように構成することも可能である。また、磁性コアとして、例えば、2つのトロイダル部を互いに連結してなる8の字状のコアを用いることもできる。この場合には、第1群の直流電圧変換器に入力される直流電流と第2群の直流電圧変換器に入力される直流電流とが互いに同じ向きに各トロイダル部をそれぞれ貫いて流れるように構成すればよい。
【0013】
さらに、磁性コアを用いる場合には、第1群の直流電圧変換器に入力される直流電流が流れる第1の巻線と、第2群の直流電圧変換器に入力される直流電流が流れる第2の巻線とを設け、これらの第1および第2の巻線を磁性コアに巻回させるようにしてもよい。この場合には、第1の巻線と第2の巻線との巻数比を、第2群の直流電圧変換器と第1群の直流電圧変換器との負荷分担比と等しく設定するのが好ましい。なお、負荷分担比は、例えば、第1群の直流電圧変換器の定格出力と第2群の直流電圧変換器の定格出力とに基づいて設定することが好ましい。
【0014】
本発明の第1の並列駆動電源装置では、いわゆるカレントトランスを用いた制御も可能である。具体的には例えば、磁性コアに巻設された第3の巻線と、第3の巻線の両端に交番電圧を印加する交番電圧印加手段と、第3の巻線に流れる励磁電流を検出する電流検出手段とを設けると共に、制御手段が、電流検出手段による検出結果に基づき、第1の磁界と第2の磁界とが互いに打ち消し合うこととなるように、第1群および第2群の直流電圧変換器を制御するように構成する。交番電圧は、正負両側の振幅が同じであることから、第1の磁界と第2の磁界とが互いに打ち消し合っている状態(すなわち、第1の磁界と第2の磁界との重畳磁界である直流バイアス磁界が0の状態)では、第3の巻線に流れる励磁電流の振幅は正負両側で等しくなる。一方、第1の磁界と第2の磁界とが互いに打ち消し合っていない状態(すなわち、直流バイアス磁界が0でない状態)では、第3の巻線に流れる励磁電流の振幅は正負両側で異なる。したがって、電流検出手段による検出結果に基づき、励磁電流の振幅が正負両側で等しくなるように制御を行うことにより、第1群および第2群の直流電圧変換器にそれぞれ入力される直流電流のバランスをとることができる。
【0015】
なお、本発明の第1の並列駆動電源装置は、直流電圧変換器を3以上用いて構成することも可能である。この場合、第1群の直流電圧変換器のうち一群の直流電圧変換器に入力される直流電流によって生ずる磁界の方向と他の群の直流電圧変換器に入力される直流電流によって生ずる磁界の方向とが互いに打ち消し合う向きとなる位置においてこれらの2つの磁界が互いに打ち消し合うこととなるように第1群の直流電圧変換器を制御する第2の制御手段と、第2群の直流電圧変換器のうち一群の直流電圧変換器に入力される直流電流によって生ずる磁界の方向と他の群の直流電圧変換器に入力される直流電流によって生ずる磁界の方向とが互いに打ち消し合う向きとなる位置においてこれらの2つの磁界が互いに打ち消し合うこととなるように第2群の直流電圧変換器を制御する第3の制御手段とをさらに設けるようにすればよい。ここで、「一群の直流電圧変換器」および「他の群の直流電圧変換器」とは、1または2以上の直流電圧変換器を意味する。なお、直流電圧変換器を複数用いる場合には、これらの複数の直流電圧変換器の各入力端を1つの共通の直流電圧源に接続するようにしてもよいし、あるいは、直流電圧変換器ごとに直流電圧源を設けて、1対1で接続するようにしてもよい。
【0016】
本発明の第2の並列駆動電源装置は、直流電圧源と負荷との間に互いに並列に接続されると共にそれぞれが直流電圧源からの入力電圧を出力電圧に変換する第1および第2の直流電圧変換器と、直流電圧源から第1の直流電圧変換器に入力される直流電流によって生ずる第1の磁界の方向と直流電圧源から第2の直流電圧変換器に入力される直流電流によって生ずる第2の磁界の方向とが互いに打ち消し合う向きとなる位置において第1の磁界と第2の磁界とが互いに打ち消し合うこととなるように第1および第2の直流電圧変換器を制御する制御手段とを備えている。
【0017】
本発明の第2の並列駆動電源装置では、第1の磁界の方向と第2の磁界の方向とが互いに打ち消し合うように制御が行われ、これにより、直流電圧源から第1の直流電圧変換器に流れ込む直流電流と、直流電圧源から第2の直流電圧変換器に流れ込む直流電流とが、予め設定された負荷分担比と等しくなるようにバランスされる。
【0018】
本発明の第2の並列駆動電源装置では、第1の磁界による磁束と第2の磁界による磁束とを収容する磁性コアと、磁性コアに巻設されると共に一端が第1の直流電圧変換器に接続され他端が直流電圧源に接続された第1の巻線と、磁性コアに巻設されると共に一端が第2の直流電圧変換器に接続され他端が第1の巻線の他端と共に直流電圧源に接続された第2の巻線とを設けると共に、第1の直流電圧変換器に入力される直流電流を第1の巻線に流して第1の磁界を生じさせ、第2の直流電圧変換器に入力される直流電流を第2の巻線に流して第2の磁界を生じさせるように構成可能である。この場合には、第1の巻線と第2の巻線との巻数比を、第2の直流電圧変換器と第1の直流電圧変換器との定格電流比に等しく設定することが好ましい。
【0019】
なお、本発明の第2の並列駆動電源装置における制御手段に代えて、直流電圧源から第1の直流電圧変換器に入力される直流電流によって生ずる第1の磁界の方向と直流電圧源から第1および第2の直流電圧変換器に入力される直流電流の和によって生ずる第2の磁界の方向とが互いに打ち消し合う向きとなる位置において第1の磁界と第2の磁界とが互いに打ち消し合うこととなるように第1および第2の直流電圧変換器を制御する制御手段、を備えるようにしてもよい。この場合には、第1の磁界の方向と第2の磁界の方向とが互いに打ち消し合うように制御が行われ、これにより、直流電圧源から第1の直流電圧変換器に流れ込む直流電流と、直流電圧源から第1および第2の直流電圧変換器に流れ込む直流電流の和とが、予め設定された負荷分担比と等しくなるようにバランスされる。この場合にはさらに、第1の磁界による磁束と第2の磁界による磁束とを収容する磁性コアと、磁性コアに巻設されると共に一端が第1の直流電圧変換器に接続された第1の巻線と、磁性コアに巻設されると共に一端が第1の巻線の他端および第2の直流電圧変換器に共通接続され他端が直流電圧源に接続された第2の巻線とを設けると共に、第1の直流電圧変換器に入力される直流電流を第1の巻線に流して第1の磁界を生じさせ、第1および第2の直流電圧変換器に入力される直流電流の和を第2の巻線に流して第2の磁界を生じさせるように構成することも可能である。この場合にはさらに、第1の巻線と第2の巻線との巻数比を、第1および第2の直流電圧変換器の合計定格出力電流と第1の直流電圧変換器の定格出力電流との定格電流比に等しく設定するようにするのが好ましい。
【0020】
本発明の第3の並列駆動電源装置は、各出力端が負荷に共通接続されると共にそれぞれが入力電圧を出力電圧に変換する複数の直流電圧変換器と、複数の直流電圧変換器のうち、第1群の直流電圧変換器から出力される直流電流によって生ずる第1の磁界の方向と第2群の直流電圧変換器から出力される直流電流によって生ずる第2の磁界の方向とが互いに打ち消し合う向きとなる位置において第1の磁界と第2の磁界とが互いに打ち消し合うこととなるように第1群および第2群の直流電圧変換器を制御する制御手段とを備えている。
【0021】
本発明の第3の並列駆動電源装置では、第1群の直流電圧変換器から出力された直流電流による第1の磁界の方向と第2群の直流電圧変換器から出力された直流電流による第2の磁界の方向とが互いに打ち消し合う向きとなる位置において、第1の磁界と第2の磁界とが互いに打ち消し合うこととなるように第1群および第2群の直流電圧変換器の制御が行われる。第1の磁界と第2の磁界とが互いに打ち消し合った状態では、第1群および第2群の直流電圧変換器からそれぞれ出力された直流電流は、バランスがとれていることになる。すなわち、第1群および第2群の直流電圧変換器について予め設定された負荷分担比に従って、これらの2つの群の直流電圧変換器についての運転制御が行われる。
【0022】
本発明の第4の並列駆動電源装置は、直流電圧源と負荷との間に互いに並列に接続されると共にそれぞれが直流電圧源からの入力電圧を出力電圧に変換する第1および第2の直流電圧変換器と、第1の直流電圧変換器から出力される直流電流によって生ずる第1の磁界の方向と第2の直流電圧変換器から出力される直流電流によって生ずる第2の磁界の方向とが互いに打ち消し合う向きとなる位置において第1の磁界と第2の磁界とが互いに打ち消し合うこととなるように第1および第2の直流電圧変換器を制御する制御手段とを備えている。
【0023】
本発明の第4の並列駆動電源装置では、第1の磁界の方向と第2の磁界の方向とが互いに打ち消し合うように制御が行われ、これにより、第1の直流電圧変換器から負荷へ流れ込む直流電流と、第2の直流電圧変換器から負荷へ流れ込む直流電流とが、予め設定された負荷分担比と等しくなるようにバランスされる。
【0024】
なお、本発明の第4の並列駆動電源装置における制御手段に代えて、第1の直流電圧変換器から出力される直流電流によって生ずる第1の磁界の方向と第1および第2の直流電圧変換器から出力される直流電流の和によって生ずる第2の磁界の方向とが互いに打ち消し合う向きとなる位置において第1の磁界と第2の磁界とが互いに打ち消し合うこととなるように第1および第2の直流電圧変換器を制御する制御手段を備えるようにしてもよい。この場合には、第1の磁界の方向と第2の磁界の方向とが互いに打ち消し合うように制御が行われ、これにより、第1の直流電圧変換器から負荷へ流れ込む直流電流と、第1および第2の直流電圧変換器から負荷へ流れ込む直流電流とが、予め設定された負荷分担比と等しくなるようにバランスされる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の並列駆動電源装置によれば、第1群の直流電圧変換器の入力直流電流(または出力直流電流)による第1の磁界の方向と第2群の直流電圧変換器の入力直流電流(または出力直流電流)による第2の磁界の方向とが互いに打ち消し合う向きとなる位置において、第1の磁界と第2の磁界とが互いに打ち消し合うこととなるように第1群および第2群の直流電圧変換器を制御するようにしたので、第1群および第2群の直流電圧変換器の入力直流電流(または出力直流電流)のそれぞれの絶対値ではなく、両者の相対関係のみを検出してバランス制御が行うことができ、しかも、第1群および第2群の直流電圧変換器の組について1つの電流バランス検出手段を設けるだけでよいことから、極めて簡単な制御回路構成となり、低コスト化に貢献できる。また、入力電流のアンバランスあるいは出力電流のアンバランスを直接的に検出することから、直流電圧変換器の主構成部品の定数ばらつきによる影響を受けにくい。したがって、回路構成を問わずに出力電圧制御形の直流電圧変換器であればどのような方式のものであっても、容易に電流バランス制御を行うことが可能である。
【0026】
特に、第1群の直流電圧変換器の入力直流電流(または出力直流電流)が流れる第1の巻線と、第2群の直流電圧変換器に入力直流電流(または出力直流電流)が流れる第2の巻線とを磁性コアに巻回させるようにした場合には、第1の巻線と第2の巻線との巻数比を適切に選定することにより、第1群および第2群の直流電圧変換器の間で任意の負荷分担比を実現することができ、また、並列運転台数や並列接続方法の自由度も増大する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、単に実施の形態という。)について、図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
[第1の実施の形態]
図1は本発明の第1の実施の形態に係る並列駆動電源装置の構成を表すものである。この装置は、直流電圧源としての2つのDC−DCコンバータ1A,1Bと、バランス制御回路2とを備えた入力電流バランス方式の並列駆動電源装置として構成されている。DC−DCコンバータ1A、1Bの入力端子はバランス制御回路2を介してバッテリ4に並列に接続され、出力端子は負荷5の入力端子に並列に接続されている。
【0029】
DC−DCコンバータ1A,1Bは、いずれも、バッテリ4からの第1の直流電圧を第2の直流電圧に変換して負荷5に供給するためのものであり、例えば図2に示したように構成される。図2に示した回路は、入力端子に接続された入力側平滑コンデンサ10と、1次側巻線11Aおよび2次側巻線11B,11Cを有する電力変換トランス11と、この電力変換トランスの1次側巻線に接続され入力直流電圧(第1の直流電圧)をスイッチングするスイッチング素子12A〜12Dと、これらのスイッチング素子12A〜12Dのスイッチング動作を制御するスイッチング制御回路13と、スイッチング素子12A〜12Dのスイッチング動作に伴って電力変換トランス11の2次側巻線11B,11Cに現れる電圧を整流する整流素子14A,14Bと、整流された電圧を平滑化して第2の直流電圧として出力する平滑回路を構成するチョークコイル15Aおよび平滑コンデンサ15Bとを含んで構成されている。このような構成のDC−DCコンバータ1A,1Bでは、バッテリ4からの第1の直流電圧をスイッチング素子12A〜12Dによってパルス電圧に変換して電力変換トランス11の1次側に印加すると共に、電力変換トランス11の2次側に現れたパルス電圧を、整流素子14A,14B、チョークコイル15Aおよび平滑コンデンサ15Bによって整流平滑化して第2の直流電圧を得るようになっている。
【0030】
バランス制御回路2は、互いに直列に接続された巻線21A,21Bと、これらの巻線21A,21Bが巻回された磁性コア21Cと、磁性コア21Cに巻回された巻線21Dとを有するカレントトランス(CT)21と、巻線21Dの両端間に直列に接続された発振器(OSC)22および検出器(DET)23と、入力端が検出器23に接続され出力端がDC−DCコンバータ1A,1Bのスイッチング制御回路13(図2)に接続された制御部24とを備えている。
【0031】
磁性コア21Cは、例えば図3に示したように、トロイダル形状をなしている。この例では、巻線21A,21Bは、磁性コア21Cの中空部を貫通する直線状導体として形成されている。したがって、この場合の巻線21A,21Bの実質的な巻数Ns1,Ns2はともに1回である。但し、後述するように(図15参照)、巻数Ns1,Ns2は、それぞれ2以上であってもよいし、また、互いに異なる数であってもよい。
【0032】
巻線21A,21Bの各一端(相互接続端)はバッテリ4のプラス端子に共通接続され、各他端はそれぞれ、DC−DCコンバータ1A,1Bのプラス側入力端子に接続されている。DC−DCコンバータ1A,1Bのマイナス側入力端子はバッテリ4のマイナス端子に共通接続されている。
【0033】
バッテリ4からの直流電流I(=I1+I2)は2つに分流されて分流電流I1,I2となり、これらの各分流電流が巻線21A,21Bをそれぞれ流れてDC−DCコンバータ1A,1Bに供給されるものとする。このとき、巻線21Aを流れる直流電流I1と巻線21Bを流れる直流電流I2とは、互いに反平行になっており、この結果、直流電流I1,I2によって、互いに逆向きの方向(言い換えると、互いに打ち消し合う向き)に磁束F1,F2がそれぞれ生じ、磁性コア21Cに収容されるようになっている。なお、磁束F1(F2)の密度は、巻線21A(21B)の巻数Ns1(Ns2)と直流電流I1(I2)との積Ns1×I1(Ns2×I2)に比例する。
【0034】
巻線21Dには、発振器22から交番電圧Vp(後述)が印加されるようになっており、これに応じて励磁電流ipが流れるようになっている。巻線21Dの巻数Npや励磁電流ipは、直流電流I1,I2によって生ずる磁束F1,F2の密度(∝Ns1×I1,Ns2×I2)に応じて適切な値に設定される。
【0035】
なお、以下の説明では、このような構成のカレントトランス21を、適宜、図4のように略記するものとする。ここでは、巻線21Dを流れる励磁電流ipを省略している。
【0036】
図5は、カレントトランス21、発振器22、検出器23および制御部24の回路構成の一例を表すものである。
【0037】
発振器22は、4つのスイッチング素子221〜224を含んで構成される。スイッチング素子221,222の各一端は直流電源Vccに共通接続され、スイッチング素子221,222の各他端は、それぞれ、スイッチング素子223,224の各一端に接続されている。スイッチング素子221,223の相互接続点は、カレントトランス21の巻線21Dの一端に接続され、スイッチング素子222,224の相互接続点は、巻線21Dの他端に接続されている。これらのスイッチング素子221〜224は、図示しないスイッチング制御部からの制御信号によりオンオフ動作する。具体的には、スイッチング素子221,224がともにオンでスイッチング素子222,223がともにオフとなる第1の状態、または、スイッチング素子221,224がともにオフでスイッチング素子222,223がともにオンとなる第2の状態のいずれかをとるようになっている。第1の状態では、直流電源Vccからスイッチング素子221、巻線21D、スイッチング素子224という順で励磁電流ipが流れる一方、第2の状態では、直流電源Vccからスイッチング素子222、巻線21D、スイッチング素子223という順で励磁電流ipが流れる。すなわち、スイッチング素子221〜224のオンオフ動作によって、巻線21Dに交番電圧Vaが印加され、この結果、第1の状態と第2の状態とでは巻線21Dに互いに逆向きの電流が流れ、カレントトランス21に交番磁界が励磁されるようになっている。この交番磁界は、後述する図6〜図8における磁束密度Bに対応するものである。なお、図5は、第1の状態を示している。
【0038】
検出器23は、2つの抵抗器231,232を含んでいる。抵抗器231,232の各一端はスイッチング素子223,224の各他端に接続される一方、各他端はともに接地されている。第1の状態では抵抗器232に励磁電流ipが流れ、第2の状態では抵抗器231に励磁電流ipが流れる。この結果、抵抗器231,232の各一端(電源端、すなわち、接地端と反対側)には、それぞれ、励磁電流ipに応じた電圧が現れるようになっている。
【0039】
制御部24は、ピークホールド部241,242と、コンパレータ243,244とを含んでいる。ピークホールド部241,242の各一端(入力端)は、検出器23の2つの抵抗器231,232における各電源端(接地端と反対側)にそれぞれ接続されている。ピークホールド部241の他端(出力端)は、コンパレータ243のマイナス側入力端とコンパレータ244のプラス側入力端とに接続されている。一方、ピークホールド部242の他端(出力端)は、コンパレータ243のプラス側入力端とコンパレータ244のマイナス側入力端とに接続されている。ピークホールド部241,242は、それぞれ、抵抗器231,232の各電源端に現れたピーク電圧値V1,V2を一旦保持した上でコンパレータ243,244に供給するようになっている。コンパレータ243は、ピークホールド部241,242が保持するピーク電圧V1,V2の差分ΔVA(=V1−V2)に応じた制御電圧VAを出力し、コンパレータ244は、ピークホールド部242,241が保持するピーク電圧V2,V1の差分ΔVB(=V2−V1)に応じた制御電圧VBを出力するようになっている。これらの制御電圧VA,VBは、それぞれ、DC−DCコンバータ1A,1Bの各スイッチング制御回路13(図1)に入力される。スイッチング制御回路13は、制御電圧VA,VBに応じて、各DC−DCコンバータ1A,1Bの出力電圧指令値あるいは出力電圧フィードバック値を補正し,両者が所望の電流バランス(ここでは、1:1)となるように出力電圧を調整するようになっている。結局、DC−DCコンバータ1A,1Bは、それぞれ、カレントトランス21の巻線21Dを流れる励磁電流ipの正側ピーク値と負側ピーク値との差分に応じて制御されるようになっている。
【0040】
次に、図6〜図12を参照して、以上のような構成の並列駆動電源装置の動作を説明する。ここで、図6は、発振器22から出力される交番電圧Vaと、カレントトランス21の磁性コア21Cに現れる磁束密度Bとの関係の一例を表し、図7は、交番電圧Vaと磁束密度Bとの関係の他の例を表すものである。図8は、カレントトランス21の磁気飽和特性およびこれを利用した電流アンバランス検出原理を表すものであり、より具体的には、カレントトランス21の磁性コア21Cにおける磁界Hと磁束密度Bとの関係を表す磁化曲線(BH曲線)およびヒステリシス曲線、ならびに、発振器22からの交番電圧Vaによって磁性コア21Cに現れる磁束密度B1〜B3と励磁電流ipとの関係を示すものである。図9〜図11は、カレントトランス21の磁性コア21Cにおける直流バイアス磁界HDC(磁束F1,F2による合成磁界)の値に応じてカレントトランス21の動作点が変化する様子を示す図である。図12は、カレントトランス21を用いた電流アンバランス検出方式の特徴を概念的に示すものである。
【0041】
本実施の形態では、DC−DCコンバータ1A,1Bの負荷分担比が1:1である場合について説明する。この場合、巻線21A,21Bの巻数Ns1,Ns2の比は1:1である。
【0042】
図1において、バッテリ4から出力された直流電流は、2系統に分流する。各分流電流I1,I2は、バランス制御回路2におけるカレントトランス21の巻線21A,21Bをそれぞれ経由して、DC−DCコンバータ1A,1Bの各入力端に供給される。DC−DCコンバータ1A,1Bは、それぞれ、バッテリ4からの直流入力電圧を電圧変換し、得られた各直流出力電圧を負荷5に共通に印加する。
【0043】
バランス制御回路2のカレントトランス21では、巻線21A,21Bをそれぞれ流れる分流電流I1,I2によって互いに逆向きの磁束F1,F2が生じる。このとき、分流電流I1,I2が互いに等しい大きさであれば、磁束F1,F2が互いに完全に打ち消し合うので、磁性コア21C内における直流バイアス磁界HDC1 は0となる(図8参照)。
【0044】
一方、バランス制御回路2の発振器22は、スイッチング素子221〜224をオンオフ動作させることにより、例えば図6(A)に示したような波形の交番電圧Vaを生成し、カレントトランス21の巻線21Dに印加する。これにより、磁性コア21Cには、図6(B)に示したような波形の磁束密度Bの変化が生ずる。なお、磁束密度Bの振幅は、交番電圧Vaの波高値、デューティー比、周波数等によって変化させることができる。例えば、図7(A)に示したように、交番電圧Vaのデューティー比を変化させることにより、磁束密度Bの振幅を小さくすることが可能である。
【0045】
ここで、仮に、巻線21A,21Bをそれぞれ流れる分流電流I1,I2が同じ大きさであったとすると、上記したように、磁性コア21C内の直流バイアス磁界はHDC1 (=0)となる。このため、図8および図9に示したように、交番電圧Vaに基づく磁束密度の変化ΔBは、B1(=0)を中心としたものとなり、このときのヒステリシス曲線は符号C1で示したもののようになる。この領域では、BH曲線が線形であるため、交番電圧Vaに基づく磁界HAC1 の波形は、直流バイアス磁界HDC1 ( =0) を中心として正負方向に同じ振幅(正側ピーク幅ΔHP1=負側ピーク幅ΔHN1)をもつものとなる。したがって、検出器23によって検出される励磁電流ipの正側ピーク値と負側ピーク値(すなわち、図5のピーク電圧値V1,V2)とは互いに等しくなり、制御部24のコンパレータ243,244から出力される制御電圧VA,VBはともに0となる。すなわち、巻線21A,21Bをそれぞれ経由してDC−DCコンバータ1A,1Bに流れ込む分流電流I1,I2は同じ大きさを保ち、DC−DCコンバータ1A,1Bの負荷分担比は1:1を維持する。
【0046】
一方、図8に示したように、巻線21A,21Bをそれぞれ流れる分流電流I1,I2にアンバランスが生じると、分流電流I1,I2によって生ずる磁束F1,F2が完全には打ち消し合わず、磁性コア21C内に直流バイアス磁界が存在することになる。例えば、直流バイアス磁界がプラス側にシフトしてHDC2 (>0)になったとする。この場合、図8に示したように、交番電圧Vaに基づく磁束密度の変化ΔBは、上記の場合よりも正の飽和領域に近づいた位置B2を中心としたものとなり、このときのヒステリシス曲線は符号C2で示したもののようになる。この領域では、BH曲線が線形からやや外れてきているため、交番電圧Vaに基づく磁界HAC2 の波形は、直流バイアス磁界HDC2 を中心として、正負方向に多少異なる振幅(正側ピーク幅ΔHP2>負側ピーク幅ΔHN2)をもつものとなる。このため、検出器23によって検出される励磁電流ipの正側ピーク値と負側ピーク値(すなわち、図5のピーク電圧値V1,V2)とは異なる値となり、制御部24のコンパレータ243,244から出力される制御電圧VA,VBは、一方が正の値で他方が負の値となる。DC−DCコンバータ1A,1Bのスイッチング制御回路13は、制御電圧VA,VBの符号および大きさに応じて、巻線21A,21Bをそれぞれ経由してDC−DCコンバータ1A,1Bに流れ込む分流電流I1,I2が同じ大きさとなるように( すなわち、DC−DCコンバータ1A,1Bの負荷分担比が1:1に近づくように) 、スイッチング制御を行う。具体的には、スイッチングのデューティー比を変化させたりすることで、DC−DCコンバータ1A,1Bの出力電圧指令値あるいは出力電圧フィードバック値を補正する。こうして、DC−DCコンバータ1A,1Bの負荷分担比が1:1を維持するように制御が行われる。
【0047】
巻線21A,21Bをそれぞれ流れる分流電流I1,I2のアンバランスがさらに増大し、磁性コア21C内の直流バイアス磁界がさらにプラス側にシフトしてHDC3 (>HDC2 )になったとする。この場合、図8に示したように、交番電圧Vaに基づく磁束密度の変化ΔBは、その一部が正の飽和磁束領域に差し掛かるような位置B3を中心としたものとなり、このときのヒステリシス曲線は符号C3で示したもののようになる。この領域では、BH曲線が完全に非線形になっているため、交番電圧Vaに基づく磁界HAC3 の波形は、直流バイアス磁界HDC3 を中心として、正負方向に大きく異なる振幅(正側ピーク幅ΔHP3≫負側ピーク幅ΔHN3)をもつものとなる。このため、検出器23によって検出される励磁電流ipの正側ピーク値と負側ピーク値(すなわち、図5のピーク電圧値V1,V2)とは大きく異なる値となり、制御部24のコンパレータ243,244から出力される制御電圧VA,VBは、一方が大きな正の値で、他方が絶対値の大きな負の値となる。DC−DCコンバータ1A,1Bのスイッチング制御回路13は、制御電圧VA,VBの符号および大きさに応じて、分流電流I1,I2が同じ大きさとなるようにスイッチング制御を行う。こうして、DC−DCコンバータ1A,1Bの負荷分担比が1:1を維持するように制御が行われる。
【0048】
一方、巻線21A,21Bをそれぞれ流れる分流電流I1,I2のアンバランスが逆極性になり、磁性コア21C内の直流バイアス磁界がマイナス側にシフトしてHDC4(<H0)になったとする。この場合、図11に示したように、交番電圧Vaに基づく磁束密度の変化ΔBは、負の飽和領域に近づいた位置B4を中心としたものとなり、このときのヒステリシス曲線は符号C4で示したもののようになる。この領域では、交番電圧Vaに基づく磁界HAC4 の波形は、直流バイアス磁界HDC4 を中心として、正負方向に大きく異なる振幅(正側ピーク幅ΔHP4<負側ピーク幅ΔHN4)をもつものとなる。このため、検出器23によって検出される励磁電流ipの正側ピーク値と負側ピーク値(すなわち、図5のピーク電圧値V1,V2)とは互いに異なる値となり、制御部24のコンパレータ243,244から出力される制御電圧VA,VBは、一方が負の値で他方が正の値となる。DC−DCコンバータ1A,1Bのスイッチング制御回路13は、制御電圧VA,VBの符号および大きさに応じて、巻線21A,21Bをそれぞれ経由してDC−DCコンバータ1A,1Bに流れ込む分流電流I1,I2が同じ大きさとなるようにスイッチング制御を行う。こうして、DC−DCコンバータ1A,1Bの負荷分担比が1:1を維持するように制御が行われる。
【0049】
このように、本実施の形態の並列駆動電源装置では、DC−DCコンバータ1A,1Bへの入力電流(分流電流I1,I2)をカレントトランス21の巻線21A,21Bに流し、これらの分流電流I1,I2によって生ずる磁界が互いに打ち消し合う向きとなるようにすると共に、これらの磁界が互いに打ち消し合う大きさとなるようにDC−DCコンバータ1A,1Bの出力を制御している。より具体的には、DC−DCコンバータ1A,1Bへの各入力電流を流す巻線21A,21Bをカレントトランス21の磁性コア21Cに互いに逆極性で巻設すると共に、発振器22からの励磁電流ipを流す巻線21Dを磁性コア21Cに巻設し、その励磁電流ipの正負差分に応じて各DC−DCコンバータ1A,1Bの出力電圧指令値あるいは出力電圧フィードバック値を補正することにより、所望の電流バランスとなるよう出力電圧を調整するようにしている。このため、1対のDC−DCコンバータ1A,1Bについて1つのカレントトランス21を設けるだけでよい。すなわち、従来、各DC−DCコンバータの数と同数必要であった電流検出手段の数を減らすことができ、回路構成が簡易になる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、各DC−DCコンバータへの入力電流の絶対値を検出するのではなく、カレントトランス21の磁性コア21CがもつBH曲線の非線形特性を利用して、2つの入力電流のアンバランスのみを検出するようにしているため、極めて簡単な制御回路構成となり、低コスト化に貢献できる。さらに、入力電流のアンバランスを直接的に検出するようにしているため、DC−DCコンバータの主構成部品(トランス,平滑チョーク,スイッチング素子,カレントトランス等)の定数ばらつきによる影響を受けにくい。したがって、回路構成を問わずに出力電圧制御形の電力変換器であれば、如何なる方式であっても本実施の形態の電流バランス制御を適用することが可能である。
【0051】
また、本実施の形態によれば、図3に示したように、DC−DCコンバータ1A,1Bに入力される分流電流I1,I2が流れる巻線21A,21Bを、磁性コア21Cの中空部を貫通する直線状導体として形成するようにしたので、例えば、直線状導体として短冊状の金属板を使用することも可能であり、磁性コア21Cにコイルを巻回する場合に比べて、構造が極めて簡易になる。
【0052】
また、本実施の形態によれば、DC−DCコンバータ1A,1Bへの入力側において電流バランス制御を行うようにしたので、特に、出力電流に比べて入力電流の方が小さい降圧型のDC−DCコンバータ1A,1Bについて、より好適に適用することができる。バランス制御対象である電流が小さい方が、バランス制御回路2を構成する各素子(カレントトランス21や発振器22等)の構成、サイズ、定格等が小さくて済み、小型化・小電力化が可能だからである。
【0053】
次に、発振器22からの交番電圧Vaによる磁束密度Bのスイング幅ΔBについて考察する。
【0054】
図13に示したように、発振器22からの交番電圧Vaの振幅は、それによる磁束密度Bのスイング幅ΔBが磁性コア21CのBH曲線のうちの線形領域の幅と等しくなるように設定することが好ましい。これは、DC−DCコンバータ1A,1Bへの各入力電流(分流電流I1,I2)のアンバランス検出原理が、カレントトランス21における磁性コア21Cの磁界の強さHと磁束密度Bの関係における非線形性を利用したものだからである。以下、この点について詳述する。
【0055】
一般に、制御回路の占有面積や素子定格を考慮すれば、カレントトランス21の巻線21Dに流す励磁電流ipをできるだけ小さくすること、すなわち、発振器22からの交番電圧Vaの振幅を小さくして磁束密度Bのスイング幅ΔBを小さくすることが好ましい。ところが、このようにすると、カレントトランス21における磁性コア21CのBH曲線において、分流電流I1,I2によって生ずる直流バイアス磁界が極端に大きくない領域では、励磁電流ipによって生ずる磁界のヒステリシス曲線全体がBH曲線の線形領域内に留まる可能性がある。例えば図12に示した例では、直流バイアス磁界がHDC1 からHDC2 さらにはHDC3 へとシフトしても、ヒステリシス曲線がBH曲線の線形領域から外れることがなく、このため、励磁電流ipの波形ピーク値が正側と負側で等しくなる。したがって、励磁電流ipの正側ピーク値と負側ピーク値との差分に着目した検出原理を利用している限り、分流電流I1,I2の差を検出することができない。すなわち、電流バランス検出における不感帯が生じる。このことは、並列運転システムにおける電流バランス制御に定常偏差を生じさせる要因となる。また、例えば負荷急変などによって電流バランスが崩れた場合に、そのアンバランスを検出するまでに遅延が生じるため、電流バランス制御の負荷応答性が悪化する。
【0056】
これに対して、例えば図13(A)に示したように、発振器22からの交番電圧Vaによる磁束密度Bのスイング幅ΔBが磁性コア21CのBH曲線のうちの線形領域の幅と等しくなるように設定した場合には、例えば図13(B)に示したように、分流電流I1,I2により生ずる直流バイアス磁界HDC2 が小さい場合でも、ヒステリシス曲線は直ちにBH曲線のうちの非線形領域へ踏み込むため、励磁電流ipの波形が正側と負側で変化してその正側ピーク値と負側ピーク値との間に差分が生じ、分流電流I1,I2の間で電流バランスが崩れたことを直ちに検出することができる。したがって、図14に示したように、電流バランス制御の感度が向上して定常偏差を低減することができると共に、負荷応答特性も改善することができる。なお、図14において、横軸はバランス制御回路2の応答周波数を示し、これが大きいほど応答速度が速いことを意味する。縦軸は制御感度を示し、これが大きいほど、分流電流I1,I2のわずかなアンバランス量を修正してバランスさせることができることを意味する。符号αで示した特性ラインは、バランス制御回路2による磁束密度Bのスイング幅ΔBが小さい場合(図12)に対応し、符号βで示した特性ラインは、磁束密度Bのスイング幅ΔBが磁性コア21CのBH曲線のうちの線形領域の幅と等しくなるように設定した場合(図13)に対応する。この図15から明らかなように、特性ラインβは、特性ラインαに比べて、応答周波数特性が改善され、かつ、制御感度(ゲイン)が向上している。
【0057】
このように、本実施の形態によれば、DC−DCコンバータ1A,1Bへの入力電流のバランス検出の手段としてカレントトランスを用いたことにより、電流バランス制御の感度の向上と負荷応答特性の改善とを容易に実現することができる。
【0058】
〈変形例1−1〉
上記した実施の形態(図3)では、DC−DCコンバータ1A,1Bに入力される分流電流I1,I2が流れる巻線21A,21Bを、磁性コア21Cの中空部を貫通する直線状導体として形成するようにしたが、例えば図15に示したように、これらの巻線21A,21Bを文字通りのコイル形状とし、これら磁性コア21Cに巻回するようにしてもよい。なお、図15において、図3に示した各構成要素に対応する要素には同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0059】
この場合には、巻線21A,21Bの巻数を多くすることにより、磁性コア21Cにより多くの磁束を生じさせることができることから、分流電流I1,I2のアンパランス検出をより感度よく行うことができる。また、巻線21A,21Bの巻数Ns1,Ns2を互いに異ならせることにより、分流電流I1,I2が互いに異なる値となるように制御することも可能である。この場合には、巻線21A,21Bの巻数Ns1,Ns2および分流電流I1,I2を次の(1)式のように設定すればよい。
Ns1:Ns2=I2:I1 …(1)
【0060】
例えば、バッテリ4からの直流電流I(=I1+I2)が150アンペアである場合において、I1=100アンペア、I2=50アンベアに設定するには、Ns1:Ns2=1:2に設定すればよい。したがって、DC−DCコンバータ1A,1Bの各定格出力に応じたバランス運転も容易に実現することができる。
【0061】
なお、アンバランス検出対象電流(分流電流I1,I2)が十分が大きいのであれば、必ずしも巻線21A,21Bを磁性コア21Cに巻回する必要はなく、例えば短冊状の金属板を2枚平行に磁性コア21Cに貫通させた構成とするだけでも十分な検出感度を得ることが可能である。これは、構造が簡易となる点で有益である。
【0062】
〈変形例1−2〉
また、上記した実施の形態(図3)および変形例1(図15)では、バッテリ4からの直流電流Iを分流電流I1,I2に分けたあとに、これらの各電流をそれぞれ巻線21A,21Bに流すようにしているが、本発明はこれには限定されず、例えば図16および図17に示したようにしてもよい。なお、図16は、実体構造を示し、図17は等価回路を示している。これらの図に示した例は、直流電流Iを分ける前にこれをそのまま巻線21Aに流し、かつ、一方の分流電流I1をDC−DCコンバータ1Aに直接入力すると共に、他方の分流電流I2を巻線21B経由でDC−DCコンバータ1Bに供給するようにしたものである。この場合には、巻線21A,21Bの巻数Ns1,Ns2および分流電流I1,I2を次の(1)式のように設定すればよい。
Ns1:Ns2=I2:(I1+I2) …(2)
【0063】
例えば、バッテリ4からの直流電流I(=I1+I2)が150アンペアである場合において、I1=100アンペア、I2=50アンベアに設定するには、Ns1:Ns2=1:3に設定すればよい。
【0064】
〈変形例1−3〉
上記した実施の形態(図3)、変形例1(図15)および変形例2(図16)では、磁性コア21Cの形状を単なるトロイダル形状としたが、本発明はこれには限定されず、例えば図18に示したように、磁性コアを、2つのトロイダル部を連結してなる8の字状(「E+I」型または「E+E」型)に形成してカレントトランス121を構成することも可能である。この場合には、磁性コア121Cにおける2つのトロイダル部で囲まれた2つの中空部K1,K2を直線状の巻線21A,21Bがそれぞれ貫くようにし、かつ、分流電流I1,I2が同じ方向に流れるようにする。さらに、磁性コア121Cの中央の連結部K3を巻線21Dが巻回するように構成する。この場合には、連結部K3において、分流電流I1,I2により生ずる磁束F1,F2が互いに打ち消し合う向きになるため、これらの磁束が合成(重畳)され、この位置に直流バイアス磁界HDCが現れる。したがって、この柱状部K3に巻設した巻線21Dに励磁電流ipを流すことで、上記実施の形態(図8)で説明した原理に基づいて、磁束F1,F2が互いに打ち消し合うように制御することにより、分流電流I1,I2のバランス制御を行うことができる。
【0065】
本変形例によれば、特に分流電流が大電流である場合に、逆極性で巻回する場合(図3)と比べて巻線の配線長が短くなり、構造が簡単となる。よって、巻線を配設しやすいという長所がある。
【0066】
〈変形例1−4〉
上記した実施の形態および変形例1〜変形例3では、磁性コアを用いるとしたが、本発明はこれには限定されず、磁性コアを省略することも可能である。この場合には、例えば図19に示したように、直線状の巻線21A,21Bを互いに近接させて平行に配置し、それぞれに分流電流I1,I2を逆向きに流す。また、図1のカレントトランス21、発振器22および検出器23からなる能動型電流バランス検出回路に代えて、ホール素子等の磁界センサ7を巻線21A,21Bから等距離の位置に配置し、その出力を制御部24に入力する。本変形例では、図1のカレントトランス21、発振器22および検出器23からなる能動型電流バランス検出回路に代えて、磁界センサ7が受動型の電流バランス検出回路として機能する。但し、本変形例では、巻線21A,21Bを流れる分流電流I1,I2により生ずる磁束F1,F2が外界の影響を受けやすいので、図19に示した構造を磁気遮蔽箱の中に収容することが好ましい。
【0067】
本変形例では、カレントトランス21、発振器22および検出器23が不要であり、ただひとつの磁界センサ7を利用して磁束F1,F2のバランス(すなわち、分流電流I1,I2のバランス)を検出できるため、構造が極めて簡易になる。
【0068】
〈変形例1−5〉
上記実施の形態(図3等)で使用したカレントトランス21のように、コアの磁気飽和特性を利用した直流電流センサでは、分流電流I1,I2の大きさに応じてコアの励磁電流ipが増加する傾向を示す。完全な磁気飽和領域まで使用した場合には、インダクタンス値が極めて小さくなるため、短絡電流が流れ、最悪の場合には、制御回路内素子の破壊や、制御電源の電源電圧の不安定化による誤動作を引き起す可能性がある。これを防ぐには、定格電流や定格電力の大きな素子を使用したり、ローカル電源(バランス制御回路2用の電源電圧供給源)の出力容量をアップさせる等の対策が必要であるが、この場合には、制御回路の占有面積増加やコストアップを招くおそれがある。
【0069】
そこで、本変形例では、励磁電流ipの振幅値に制限を設けることで上記問題の解決を図る。具体的には、図1に示したバランス制御回路2に対して、例えば図20または図21に示したようなリミッタ回路25A,25Bを追加する。これらのリミッタ回路25A,25Bは、磁性コア21Cの励磁電流ipに限界値を設定し、検出した励磁電流ipがこの値を越えないように制限する機能を有するものである。
【0070】
図20に示した例は、リミッタ回路25Aが、検出器23からの発振器22に対するドライブ信号を補正することにより、それ以上大きな励磁電流ipを流すことを制限するようにしたものである。
【0071】
また、図21に示した例は、可変インピーダンス回路として機能するようにリミッタ回路25Bを構成すると共に、このリミッタ回路25Bを発振器22と直列に配設したものである。この場合、可変インピーダンス回路として機能するリミッタ回路25Bは、例えばオンオフスイッチによって実現可能である。検出器23によってあるレベル以上の励磁電流ipが検出された場合に、リミッタ回路25Bを強制的にハイインピーダンス状態(例えばスイッチをオフする)することで励磁電流ipの制限が可能である。
【0072】
図22は、励磁電流ipを検出する検出器23の機能と、励磁電流ipを制限するリミッタ25Bの機能とを、1つの抵抗器26を用いて実現した例を表すものである。この場合には、抵抗器26自身の抵抗値を適切に設定することで、励磁電流ipを所定の上限値以下に制限することができる。
【0073】
このように、本変形例によれば、バランス制御回路2内に励磁電流を制限するリミッタ回路を設けるようにしたので、回路の大型化やコストアップを伴うことなく、制御回路の素子破壊や誤動作を防止することができる。
【0074】
ところで、上記のように、バランス制御回路2のカレントトランス21を直流電流バランス検出用センサとして用いる場合には、電流バランス制御の定常偏差低減や負荷応答性能改善のために、カレントトランス21の描くヒステリシス曲線がBH曲線の線形領域をフルスイングするように設計することが好ましい。しかしながら、上記のように、カレントトランス21の励磁電流振幅に制限を設けるようにした場合には、負荷の急変や誤動作等によって2台のDC−DCコンバータ1A,1Bの電流バランス(負荷分担比)が大きく崩れると、例えば図23(B)に示したように、励磁電流ipが上記のリミッタ回路による規制を受けるため、マイナーループ(ヒステリシス曲線)がBH曲線の磁化飽和領域に完全に入ってしまう事態が生ずる。このため、励磁電流の正側ピーク値(正側制限値)と負側ピーク値(負側制限値)とが等しくなってしまい、ピーク差分値がゼロであると誤判定してしまう制御不能モードとなる。バランス制御回路2がこの状態を維持し続ける限り(分流電流I1,I2がリセットされない限り)、並列運転の電流バランス制御は、制御不能モードから正常動作モードへ復帰することができない。
【0075】
この問題は、カレントトランス21の巻線21Dを流れる励磁電流ipのスイング可能領域(振幅制限値)を適切に設定することで解決することができる。具体的には、例えば図23(A)に示したように、カレントトランス21のアンペアターンが、DC−DCコンバータ1A,1Bの片側分のアンペアターンAT1だけ(電流I1×巻数Ns1、または、電流I2×巻数Ns2の一方のみ)になった場合であっても、励磁電流ipの正負差分を検出できるように、励磁電流ipの振幅制限値を設定すればよい。カレントトランス21のBH曲線にも依存するが、これはカレントトランス21の励磁電流ipによる出力可能アンペアターンAT2(巻線21Dの励磁電流振幅制限値×巻線21Dの巻数Np)と、DC−DCコンバータ1A,1Bの片側分のアンペアターンAT1とがほぼ一致するように設定することを意味する。この設定条件が満たされれば、制御不能モードに陥ることがなくなるので、並列運転システムにおける電流バランス制御の負荷応答性能を改善することができる。さらに、最大のアンバランス状態からも確実に電流バランス制御可能状態へ移行できることから、電流バランス制御の制御領域を、アンバランス度=0〜100[%]まで拡大することができる。
【0076】
このように、本変形例のように、DC−DCコンバータ1A,1Bへの入力電流のバランス検出の手段としてカレントトランスを用いた場合において、励磁電流ipの振幅に制限を設けるようにした場合であっても、電流バランス制御の制御領域をアンバランス度=0〜100[%]まで拡大することができるので、バランス制御回路20が制御不能モードに陥るのを効果的に防止することができる。
【0077】
〈変形例1−6〉
以上示した例では、2台のDC−DCコンバータ1A,1Bを並列運転する場合について説明したが、本発明はこれには限定されず、任意の台数のDC−DCコンバータについて電流バランス制御を行うことが可能である。図24は、例えば7台のDC−DCコンバータ1A〜1Gについて電流バランス制御を行う場合を示している。この例では、DC−DCコンバータ1A〜1Gを、第1のグループ(DC−DCコンバータ1A〜1D)と第2のグループ(DC−DCコンバータ1E〜1G)とに分け、この2つのグループに対して、1つのカレントトランス21−1を配設する。このとき、カレントトランス21−1における巻線21A,21Bの巻数比を例えば9:1に設定することにより、第1のグループへの入力電流と第2のグループへの入力電流との比を1:9(=100アンペア:900アンペア)に制御することができる。なお、図24では、バランス制御回路20(図1)のうちのカレントトランスの部分のみを示しており、他の部分(発振器22、検出器23および制御部24)は省略している。
【0078】
さらに、第1のグループのうち、DC−DCコンバータ1A,1Bの組に対して1つのカレントトランス21−2を配設し、DC−DCコンバータ1B,1Cの組に対して1つのカレントトランス21−3を配設し、DC−DCコンバータ1C,1Dの組に対して1つのカレントトランス21−4を配設する。このとき、カレントトランス21−2における巻線21A,21Bの巻数比を例えば1:2に設定すれば、DC−DCコンバータ1A,1Bへの入力電流の比を2:1(=200アンペア:100アンペア)に制御することができる。また、カレントトランス21−3における巻線21A,21Bの比を例えば2:3に設定すれば、DC−DCコンバータ1B,1Cの入力電流比を3:2(=300アンペア:200アンペア)に制御することができる。また、カレントトランス21−4における巻線21A,21Bの巻数比を例えば1:1に設定すれば、DC−DCコンバータ1C,1Dへの入力電流の比を1:1(=300アンペア:300アンペア)に制御することができる。
【0079】
一方、第2のグループについては、DC−DCコンバータ1E,1Fの組に対して1つのカレントトランス21−5を配設すると共に、DC−DCコンバータ1E,1FとDC−DCコンバータ1Gの組に対して1つのカレントトランス21−6を配設する。このとき、カレントトランス21−5における巻線21A,21Bの巻数比を例えば2:3に設定すれば、DC−DCコンバータ1E,1Fへの入力電流の比を3:2(=30アンペア:20アンペア)に制御することができる。また、カレントトランス21−6における巻線21A,21Bの巻数比を例えば1:1に設定すれば、DC−DCコンバータ1E,1Fへの合計入力電流とDC−DCコンバータ1Gへの入力電流との比を1:1(=50アンペア:50アンペア)に制御することができる。
【0080】
このように、カレントトランス21の巻線21A,21Bの巻数比を適切に選定することにより、任意の台数nのDC−DCコンバータの並列運転を任意の負荷分担比で実現することができる。しかも、DC−DCコンバータの台数nに対して、n−1個のカレントトランス21を設けるだけでよいので、電流検出手段を削減することができる。
【0081】
〈変形例1−7〉
以上の各例では、入力側のバッテリ4が1台(共通)の場合を説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば図25に示したように、DC−DCコンバータ1A,1Bのそれぞれに対応させてバッテリ4A,4Bを設け、別々に電力供給を行うようにしてもよい。この場合においても、図1の場合と同様に、1つのカレントトランス21を用いて構成したバランス制御回路2によって、DC−DCコンバータ1A,1Bの並列運転におけるバランス制御を行うことができる。
【0082】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0083】
上記第1の実施の形態では、DC−DCコンバータ1A,1Bへの入力電流についての電流バランス検出を行ういわゆる入力電流バランス型の並列駆動電源装置について説明したが、本発明はこれに限定されず、DC−DCコンバータ1A,1Bからの出力電流についての電流バランス検出を行ういわゆる出力電流バランス型の並列駆動電源装置として構成することも可能である。
【0084】
図26は、そのような出力電流バランス型の並列駆動電源装置の一構成例を表すものである。なお、この図で、図1に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0085】
本実施の形態の並列駆動電源装置は、図1におけるバランス制御回路2に代えて、バランス制御回路20を備えている。このバランス制御回路20は、互いに直列に接続された巻線201A,201Bと、これらの巻線201A,201Bが巻回された磁性コア201Cと、磁性コア201Cに巻回された巻線201Dとを有するカレントトランス201と、巻線201Dの両端間に直列に接続された発振器202および検出器203と、入力端が検出器203に接続され出力端がDC−DCコンバータ1A,1Bのスイッチング制御回路13(図2)に接続された制御部204とを備えている。巻線201A,201Bの各一端同士は負荷5に共通接続され、各他端はそれぞれ、DC−DCコンバータ1A,1Bのプラス側出力端子に接続されている。DC−DCコンバータ1A,1Bのマイナス側出力端子は負荷5のマイナス側入力端子に共通接続されている。
【0086】
DC−DCコンバータ1A,1Bからの各出力電流I1,I2はそれぞれ巻線201A,201Bを流れたのちに合流し、負荷5に供給されるようになっている。カレントトランス201、発振器202および検出器203は、それぞれ、上記第1の実施の形態におけるバランス制御回路2のカレントトランス21、発振器22および検出器23ど同様の構成および機能を有するものである。
【0087】
本実施の形態の並列駆動電源装置は、次のように動作する。その基本原理は、上記第1の実施の形態の場合と同様である。すなわち、DC−DCコンバータ1A,1Bからの各出力電流は、バランス制御回路20におけるカレントトランス201の巻線201A,201Bを流れ、これにより、磁性コア201Cの内部に互いに打ち消し合う方向の2つの磁界が生じ、その重畳(合成)結果として、直流バイアス磁界が生ずる。一方、発振器22からの励磁電流ipは巻線201Dを流れるが、磁性コア201CがもつBH曲線の非線形特性に起因して、励磁電流ipの正負振幅には、巻線201A,201Bを流れる出力電流により生じた直流バイアス磁界に応じた差分(電流アンバランス)が生ずる。検出器23は、この電流アンバランスを検出して、制御部24に検出結果を入力する。制御部24はこの検出結果に応じて、DC−DCコンバータ1A,1Bに対して制御電圧VA,VBを入力する。DC−DCコンバータ1A,1Bのスイッチング制御回路13(図2)は、出力電圧指令値あるいは出力電圧フィードバック値を補正することにより、所望の電流バランスとなるよう出力電圧を調整する。
【0088】
このように、本実施の形態の並列駆動電源装置によれば、各DC−DCコンバータからの出力電流の絶対値を検出するのではなく、カレントトランス201の磁性コア201CがもつBH曲線の非線形特性を利用して、2つの出力電流のアンバランスのみを検出するようにしているため、上記第1の実施の形態の場合と同様に、極めて簡単な制御回路構成となる。さらに、電流アンバランスを直接的に検出するようにしているため、DC−DCコンバータの主構成部品(トランス,平滑チョーク,スイッチング素子,カレントトランス等)の定数ばらつきによる影響を受けにくい。
【0089】
とりわけ、本実施の形態によれば、入力側ではなく出力側で電流バランス制御を行うようにしたので、DC−DCコンバータ自身の機差(DC−DCコンバータ1A,1B自身がもつ様々な不安定要因)の影響を受けることがなく、より高い精度の並列運転バランス制御を実現することができる。
【0090】
〈変形例2−1〉
図26に示した例では、2台のDC−DCコンバータ1A,1Bを並列運転する場合について説明したが、本発明はこれには限定されず、任意の台数のDC−DCコンバータについて出力電流に基づくバランス制御を行うことが可能である。図27は、例えば7台のDC−DCコンバータ1A〜1Gについて電流バランス制御を行う場合を示している。この例では、DC−DCコンバータ1A〜1Gを、第1のグループ(DC−DCコンバータ1A〜1D)と第2のグループ(DC−DCコンバータ1E〜1G)とに分け、この2つのグループに対して、1つのカレントトランス201−1を配設する。第1のグループについては、DC−DCコンバータ1A,1Bの組に対して1つのカレントトランス201−2を配設し、DC−DCコンバータ1B,1Cの組に対して1つのカレントトランス201−3を配設し、DC−DCコンバータ1C,1Dの組に対して1つのカレントトランス201−4を配設する。第2のグループについては、DC−DCコンバータ1E,1Fの組に対して1つのカレントトランス201−5を配設すると共に、DC−DCコンバータ1E,1FとDC−DCコンバータ1Gの組に対して1つのカレントトランス201−6を配設する。このとき、各カレントトランス201−1〜201−6における巻線201A,201Bの巻数比をそれぞれ適切な値に設定することにより、各DC−DCコンバータの出力電流を、所望の負荷分担比に応じた値に制御することができる。
【0091】
このように、カレントトランス201の巻線201A,201Bの巻数比を適切に選定することにより、任意の台数nのDC−DCコンバータの並列運転を任意の負荷分担比で実現することができる。
【0092】
〈変形例2−2〉
出力電流バランス形の場合においても、例えば図28に示したように、DC−DCコンバータ1A,1Bのそれぞれに対応させてバッテリ4A,4Bを設け、別々に電力供給を行うようにしてもよい。この場合においても、図26の場合と同様に、1つのカレントトランス201を用いて構成したバランス制御回路20によって、DC−DCコンバータ1A,1Bの並列運転におけるバランス制御を行うことができる。
【0093】
以上、いくつかの実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。例えば上記第2の実施の形態で説明した出力電流バランス形の並列駆動電源装置の場合においても、バランス制御回路2に関して変形例1−1〜1−5と同様の変形を行うことは可能である。
【0094】
また、上記各実施の形態および変形例では、入力側直流電圧源がバッテリ4である場合として説明したが、入力側直流電圧源はDC−DCコンバータやAC−DCコンバータ(交流−直流変換器)であってもよい。
【0095】
なお、上記実施の形態では、バランス制御回路2,20の発振器22,202の出力波形が矩形波であるものとして説明したが(図6参照)、正負方向の振幅が同じであれば、正弦波や鋸波等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る並列駆動電源装置の全体構成を表すブロック図である。
【図2】図1に示した並列駆動電源装置におけるDC−DCコンバータの構成を表す回路図である。
【図3】図1に示した並列駆動電源装置におけるカレントトランスの構成を表す簡略化斜視図である。
【図4】図3に示したカレントトランスの略記法を表す図である。
【図5】図1に示した並列駆動電源装置におけるバランス制御回路の構成を表す回路図である。
【図6】図5に示したバランス制御回路における発振器の出力波形とカレントトランスにおける磁性コアの磁束密度の変化との関係を説明するための波形図である。
【図7】図5に示したバランス制御回路における発振器の出力波形とカレントトランスにおける磁性コアの磁束密度の変化との関係を説明するための他の波形図である。
【図8】図5に示したバランス制御回路の作用を説明するためのカレントトランス磁化特性図である。
【図9】図5に示したバランス制御回路の作用を説明するための特性図であり、特に、直流バイアス磁界が0の状態を示す図である。
【図10】図5に示したバランス制御回路の作用を説明するための特性図であり、特に、直流バイアス磁界が正の状態を示す図である。
【図11】図5に示したバランス制御回路の作用を説明するための特性図であり、特に、直流バイアス磁界が負の状態を示す図である。
【図12】図5に示したバランス制御回路の作用を説明するための特性図である。
【図13】図5に示したバランス制御回路における、より好ましい制御方法を説明するための特性図である。
【図14】図5に示したバランス制御回路の作用を説明するための特性図である。
【図15】カレントトランスの一変形例を示す簡略化斜視図である。
【図16】カレントトランスの他の変形例を示す簡略化斜視図である。
【図17】図16に示したカレントトランスの等価回路図である。
【図18】カレントトランスのさらに他の変形例を示す簡略化斜視図である。
【図19】図5に示したバランス制御回路の変形例の要部を示す簡略化斜視図である。
【図20】図5に示したバランス制御回路の変形例を示すブロック図である。
【図21】図5に示したバランス制御回路の他の変形例を示すブロック図である。
【図22】図21に示した変形例を具現化した例を示す回路図である。
【図23】図5に示したバランス制御回路の作用を説明するための他の特性図である。
【図24】図1に示した並列駆動電源装置の変形例を表すブロック図である。
【図25】図1に示した並列駆動電源装置の他の変形例を表すブロック図である。
【図26】本発明の第2の実施の形態に係る並列駆動電源装置の全体構成を表すブロック図である。
【図27】図26に示した並列駆動電源装置の変形例を表すブロック図である。
【図28】図26に示した並列駆動電源装置の他の変形例を表すブロック図である。
【符号の説明】
【0097】
1A〜1G…DC−DCコンバータ、2,20…バランス制御回路、4…バッテリ、5…負荷、7…磁界センサ、13…スイッチング制御回路、21,21−1〜21−6,121,201,201−1〜201−6…カレントトランス、21A,21B、21D,201A,201B、201D…巻線、21C,121C,201C…磁性コア、22,202…発振器、23,203…検出器、24,204…制御部、ip…励磁電流、I1,I2…分流電流、VA,VB…制御電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各出力端が負荷に共通接続されると共に、それぞれが、入力電圧を出力電圧に変換する複数の直流電圧変換器と、
前記複数の直流電圧変換器のうち、第1群の直流電圧変換器に入力される直流電流によって生ずる第1の磁界の方向と、第2群の直流電圧変換器に入力される直流電流によって生ずる第2の磁界の方向とが互いに打ち消し合う向きとなる位置において、前記第1の磁界と前記第2の磁界とが互いに打ち消し合うこととなるように、前記第1群および第2群の直流電圧変換器を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする並列駆動電源装置。
【請求項2】
前記第1の磁界と前記第2の磁界との打ち消し合いの状態を検出する検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記検出手段の検出結果に応じて、前記第1の磁界と前記第2の磁界とが互いに打ち消し合うこととなるように、前記第1群および第2群の直流電圧変換器を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の並列駆動電源装置。
【請求項3】
前記第1の磁界による磁束と前記第2の磁界による磁束とを収容するトロイダルコアをさらに備え、
前記第1群の直流電圧変換器に入力される直流電流と前記第2群の直流電圧変換器に入力される直流電流とが、互いに逆向きに前記トロイダルコアを貫いて流れる
ことを特徴とする請求項1に記載の並列駆動電源装置。
【請求項4】
2つのトロイダル部を互いに連結して構成され、前記第1の磁界による磁束と前記第2の磁界による磁束とを収容する8の字状のコアをさらに備え、
前記第1群の直流電圧変換器に入力される直流電流と前記第2群の直流電圧変換器に入力される直流電流とが、互いに同じ向きに各トロイダル部をそれぞれ貫いて流れる
ことを特徴とする請求項1に記載の並列駆動電源装置。
【請求項5】
前記第1の磁界による磁束と前記第2の磁界による磁束とを収容する磁性コアと、
前記磁性コアに巻設され、前記第1群の直流電圧変換器に入力される直流電流が流れる第1の巻線と、
前記磁性コアに巻設され、前記第2群の直流電圧変換器に入力される直流電流が流れる第2の巻線と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の並列駆動電源装置。
【請求項6】
前記第1の巻線の巻数と前記第2の巻線の巻数との比である巻数比が、前記第2群の直流電圧変換器の合計定格出力電流と前記第1群の直流電圧変換器の合計定格出力電流との比である負荷分担比と等しく設定されている
ことを特徴とする請求項5に記載の並列駆動電源装置。
【請求項7】
前記磁性コアに巻設された第3の巻線と、
前記第3の巻線の両端に、正負両側の振幅が同じである交番電圧を印加する交番電圧印加手段と、
前記第3の巻線に流れる励磁電流を検出する電流検出手段と
を備え、
前記制御手段は、前記電流検出手段による検出結果に基づき、前記第1の磁界と前記第2の磁界とが互いに打ち消し合うこととなるように、前記第1群および第2群の直流電圧変換器を制御する
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の並列駆動電源装置。
【請求項8】
前記複数の直流電圧変換器の各入力端が直流電圧源に共通接続されている
ことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の並列駆動電源装置。
【請求項9】
直流電圧源と負荷との間に互いに並列に接続されると共に、それぞれが、前記直流電圧源からの入力電圧を出力電圧に変換する第1および第2の直流電圧変換器と、
前記直流電圧源から前記第1の直流電圧変換器に入力される直流電流によって生ずる第1の磁界の方向と、前記直流電圧源から前記第2の直流電圧変換器に入力される直流電流によって生ずる第2の磁界の方向とが互いに打ち消し合う向きとなる位置において、前記第1の磁界と前記第2の磁界とが互いに打ち消し合うこととなるように、前記第1および第2の直流電圧変換器を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする並列駆動電源装置。
【請求項10】
前記第1の磁界による磁束と前記第2の磁界による磁束とを収容する磁性コアと、
前記磁性コアに巻設されると共に、一端が前記第1の直流電圧変換器に接続され、他端が前記直流電圧源に接続された第1の巻線と、
前記磁性コアに巻設されると共に、一端が前記第2の直流電圧変換器に接続され、他端が前記第1の巻線の前記他端と共に前記直流電圧源に接続された第2の巻線と
を備え、
前記第1の巻線の巻数と前記第2の巻線の巻数との比である巻数比が、前記第2の直流電圧変換器の定格出力電流と前記第1の直流電圧変換器の定格出力電流との比である定格電流比に等しく設定され、
前記第1の直流電圧変換器に入力される直流電流が前記第1の巻線を流れることにより前記第1の磁界を生じさせ、
前記第2の直流電圧変換器に入力される直流電流が前記第2の巻線を流れることにより、前記第2の磁界を生じさせる
ことを特徴とする請求項9に記載の並列駆動電源装置。
【請求項11】
各出力端が負荷に共通接続されると共に、それぞれが、入力電圧を出力電圧に変換する複数の直流電圧変換器と、
前記複数の直流電圧変換器のうち、第1群の直流電圧変換器から出力される直流電流によって生ずる第1の磁界の方向と、第2群の直流電圧変換器から出力される直流電流によって生ずる第2の磁界の方向とが互いに打ち消し合う向きとなる位置において、前記第1の磁界と前記第2の磁界とが互いに打ち消し合うこととなるように、前記第1群および第2群の直流電圧変換器を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする並列駆動電源装置。
【請求項12】
直流電圧源と負荷との間に互いに並列に接続されると共に、それぞれが、前記直流電圧源からの入力電圧を出力電圧に変換する第1および第2の直流電圧変換器と、
前記第1の直流電圧変換器から出力される直流電流によって生ずる第1の磁界の方向と、前記第2の直流電圧変換器から出力される直流電流によって生ずる第2の磁界の方向とが互いに打ち消し合う向きとなる位置において、前記第1の磁界と前記第2の磁界とが互いに打ち消し合うこととなるように、前記第1および第2の直流電圧変換器を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする並列駆動電源装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2006−14535(P2006−14535A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190417(P2004−190417)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】