説明

中吊り広告用情報表示装置

【課題】 耐衝撃性の高い中吊り広告用情報表示装置を提供する。
【解決手段】 第1基板11上に、ITO膜12、発光層13、電極14を形成し、さらに、対向基板としての第2基板16と貼り合わせて有機ELディスプレイ10を形成する。そして、有機ELディスプレイ10の周縁部10aに、衝撃を吸収することができる外枠17を貼り付けて、表示ユニット19を形成する。外枠17の長さは、有機ELディスプレイ10の左右2辺と下辺との合計長さとほぼ同じである。表示ユニット19に駆動ユニット20を取り付けて中吊り広告用情報表示装置1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中吊り広告用情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の広告媒体は、紙に印刷されたポスタやPOP広告などが壁や塀などに設置されるものや、中吊り広告などが電車やバスなどの中に設置されるものがあった。特に、電車やバスなどの交通機関は利用する人が多いので、中吊り広告による車内広告は宣伝効果が高い。しかし、紙による広告媒体では、広告内容を簡単に変更できないので、情報を提供するのに限界がある。そこで、宣伝効果を高めるために、簡単に広告内容を変更できて、大量の情報を短時間のうちに表示可能な有機ELディスプレイが、電車やバスなどの車内の中吊り広告用情報表示装置に採用されていた。なお、情報表示が可能な他のディスプレイとしては、ガス放電ディスプレイ、液晶ディスプレイなどもあった。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されているように、薄くてフレキシビリティがあり、しかも、軽量であるプラスチックフィルム上に発光素子を形成した有機ELディスプレイを採用している中吊り広告用情報表示装置が提案されていた。特許文献2に開示されているように、ガス放電ディスプレイ、液晶ディスプレイなどを使用した中吊り広告用情報表示装置も提案されていた。
【0004】
【特許文献1】特開2002−351374号公報
【特許文献2】特開平5−257428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、中吊り広告用情報表示装置が、人が行き交う場所や、集中する場所に設置されていたため、人や物とぶつかる可能性があった。その際、有機ELディスプレイに衝撃力が加わり、発光素子が破壊されることがあり、欠陥が生じることがあった。つまり、衝撃に対して弱いといった課題があった。特許文献2では、有機ELディスプレイは、ガス放電ディスプレイ、液晶ディスプレイなどと比べて重量が軽いものの、天井から落下すると落下時の衝撃によって、破損することもあった。
【0006】
本発明の目的は、耐衝撃性の高い中吊り広告用情報表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の中吊り広告用情報表示装置は、中吊り広告用情報表示装置であって、情報を表示するための表示部と、前記表示部に備えられた外枠と、を有することを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、外枠が、表示部に備えられているから、中吊り広告用情報表示装置が落下しても表示部を保護することができる。人や物とぶつかるときに衝撃力が発生しても表示部を保護できる。
【0009】
本発明の中吊り広告用情報表示装置は、前記外枠の内周に凹部を備えており、前記表示部と前記凹部とが嵌合していることが望ましい。
【0010】
この発明によれば、外枠の内周に凹部を備えているので、表示部の周縁部を凹部に挿入するだけで簡単に取り付けができる。表示部の外周縁部を保護できる。
【0011】
本発明の中吊り広告用情報表示装置は、前記外枠が、前記表示部の少なくとも下辺を含む周縁部に備えられていることが望ましい。
【0012】
この発明によれば、外枠が、吊り下げ状態の表示部の下辺に備えられているので、表示部が落下したときに下辺が保護されやすい。
【0013】
本発明の中吊り広告用情報表示装置は、前記外枠が、前記表示部の側辺の周縁部に備えられていることが望ましい。
【0014】
この発明によれば、外枠が、吊り下げ状態の表示部の側辺に備えられているので、表示部が落下したときに側辺が保護されやすい。
【0015】
本発明の中吊り広告用情報表示装置は、前記外枠が、衝撃吸収材であることが望ましい。
【0016】
この発明によれば、外枠が衝撃吸収材であるから、表示部が落下したときに、表示部に衝撃力や外力が加わっても衝撃を吸収することができるから、表示部を保護できるので、中吊り広告用情報表示装置の耐衝撃性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の中吊り広告用情報表示装置、及び中吊り広告用情報表示装置の製造方法について実施形態を挙げ、添付図面に沿って詳細に説明する。
【0018】
(実施形態)
(中吊り広告用情報表示装置の構成)
本発明の実施形態の要部について詳細に説明する。図1は、本実施形態の中吊り広告用情報表示装置の構成を示し、(a)は概略斜視図であり、(b)は概略断面図であり、(c)は外枠の概略断面図である。
【0019】
図1(a)に示すように、中吊り広告用情報表示装置1は、表示ユニット19、駆動ユニット20とで構成されている。表示ユニット19は、有機ELディスプレイ10と外枠17とで構成されており、なお、外枠17は、有機ELディスプレイ10の外周に沿って周縁部10aを挟み込むように形成されている。外枠17は、有機ELディスプレイ10の四辺のうち上辺を除く三辺に形成されている。駆動ユニット20は、筐体25と筐体25の中に内蔵された制御ボード21などで構成されている。
【0020】
図1(b)に示すように、有機ELディスプレイ10にはフレキシブル配線基板(図示省略)が付属しており、コネクタ(図示省略)を介してフレキシブル配線基板と制御ボード21とが接続されている。制御ボード21は、データを記憶するためのメモリ(図示省略)や、データの取得、データの再生、および広告情報を切り換えるための制御部(図示省略)などを備えている。そして、制御ボード21は、有機ELディスプレイ10に情報を表示することができる。矢印の方向が、発光側であり、提供された情報を目視で確認できる。なお、本実施形態では、有機ELディスプレイ10を採用したが、有機ELディスプレイ10以外に、ガス放電ディスプレイ、液晶ディスプレイなどでもよい。
【0021】
図1(c)に示すように、外枠17には凹部18がある。そして、外枠17は略矩形状に形成されており、幅17aと幅17bとがある。同様に、凹部18も略矩形状に形成されており、幅18aと深さ18bとがある。
【0022】
図2は、本実施形態の有機ELディスプレイの構成を示す概略断面図である。
【0023】
図2に示すように、有機ELディスプレイ10は、発光基板15と発光基板15に対向する位置に配置されている対向基板としての第2基板16とで構成されている。第1基板11上にITO膜12、発光層13、電極14とが形成されていて、発光基板15は、構成されている。なお、発光層13は、有機物である発光材料が使用されており、発光層13から発光した光が第1基板11の矢印方向に透過する。
【0024】
第1基板11上に形成されているITO膜12、発光層13、電極14のそれぞれの膜厚は約500nmである。なお、これらITO膜12、発光層13、電極14は、真空蒸着法や、スパッタリング法などの薄膜形成方法により形成される。
【0025】
第1基板11と第2基板16との材質は、フレキシブル性のある透明な素材であり、例えば絶縁性を有するプラスチックフィルムである。好ましい厚さは0.5〜1mmの範囲であって、薄いシート状である。発光基板15と第2基板16とを貼り合わせることによって、有機ELディスプレイ10は構成される。有機ELディスプレイ10のフレキシブル性を積極的に発揮するように、ここでは、第1基板11と第2基板16との厚さを各々0.5mmにした。つまり、有機ELディスプレイ10は厚さが約1mmである。そして、第1基板11と第2基板16との大きさは、縦が約400mmで、横が約1000mmである。有機ELディスプレイ10は、プラスチックフィルムを重ね合わせた構成であるから、曲げることができる。しかも、素材がプラスチックフィルムであるので、軽量である。
(中吊り広告用情報表示装置の製造方法)
【0026】
次に、本実施形態の中吊り広告用情報表示装置の製造方法について説明する。図3(a)〜(c)は、本実施形態に係る中吊り広告用情報表示装置の製造方法の手順を示す模式図である。図4は、中吊り広告用情報表示装置の製造工程を示すフローチャートである。
【0027】
図3に示すように、中吊り広告用情報表示装置の概略製造工程は、有機ELディスプレイ10に外枠17を貼り付ける工程と、駆動ユニット20を取り付ける工程とに大別できる。以下、各工程について詳細に説明する。
【0028】
図4のステップS11では、洗剤、純水および有機溶剤などを用いて図3(a)に示す有機ELディスプレイ10を十分に洗浄して、有機ELディスプレイ10の面10b上や周縁部10aに付着している汚染物を除去するための前処理を施す。なお、洗浄の方法は、湿式洗浄方法にこだわることはなく、窒素などの不活性ガスを吹き付けて洗浄する方法を採用してもよい。また、酸素プラズマ洗浄や、UV−O3洗浄などの乾式洗浄方法を併用してもよい。
【0029】
図4のステップS12では、図3(b)に示すように、有機ELディスプレイ10の周縁部10aに外枠17を貼り付ける。外枠17を貼り付けるための接着剤は、シアノアクリレート系の接着剤や、エポキシ系の接着剤などが使用できる。ここでは、有機ELディスプレイ10に外枠17を固定するために接着剤を使用したが、これにこだわることはなく、有機ELディスプレイ10に外枠17を嵌合できて、外枠17が有機ELディスプレイ10から外れなければ接着剤を使用しなくてもよい。
【0030】
外枠17は、例えばα―ゲル((株)ジェルテック製)である。α―ゲルは、透明な素材であって、衝撃性能に優れている。また、α―ゲル以外では、ゲルダンピング材や、シリコーンゲルダンピング材なども使用できる。外枠17は帯状になっており、幅17bが約5mmで、幅17aが約8mmの矩形状である(図1(c)参照)。そして、外枠17には略矩形状の凹部18が連続的に形成されている。凹部18の幅18aが約2mmで、深さ18bが約3mmである。外枠17の長さは、有機ELディスプレイ10の左右2辺と下辺との合計長さとほぼ同じであり、約1800mmである。凹部18に接着剤を流し込み、有機ELディスプレイ10の周縁部10aを挿入して、外枠17と有機ELディスプレイ10とを貼り付け固定する。なお、外枠17の材質としてα―ゲルを採用したが、これにこだわることはない。例えば天然ゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、などの衝撃を吸収しやすい素材を使用してもよい。
【0031】
本実施形態では、外枠17を有機ELディスプレイ10に貼り付ける構成としたが、これにこだわることはない。固化すると弾力性を有する液状樹脂をディッピングする方法、印刷する印刷方法などの手法によって、有機ELディスプレイ10の周縁部10aにコーティングしてもよい。
【0032】
図4のステップS13では、図3(c)に示すように、表示ユニット19に駆動ユニット20を取り付ける。そして、外枠17によって有機ELディスプレイ10の周縁部10aが保護された中吊り広告用情報表示装置1ができる。
【0033】
実施形態における中吊り広告用情報表示装置1の構成は以上のようであって、図1を参照しながら、中吊り広告用情報表示装置1の耐衝撃性能について説明をする。
【0034】
中吊り広告用情報表示装置1は、電車やバスの中において、駆動ユニット20が天井から吊り下げられ、表示ユニット19が駆動ユニット20に吊り下げられる。中吊り広告用情報表示装置1は、駆動ユニット20により駆動され、各種広告情報を大量に、しかも、瞬時に、有機ELディスプレイ10上に表示できる。
【0035】
電車やバスの中で、中吊り広告用情報表示装置1が、吊り下げた箇所から万一落下しても、外枠17が貼り付けてある有機ELディスプレイ10は、衝撃を吸収することができるから、落下時の衝撃を吸収することができるので、有機ELディスプレイ10が破損しにくくなる。したがって、中吊り広告用情報表示装置1の耐衝撃性が向上する。
【0036】
以上のような実施形態では、次のような効果が得られる。
【0037】
(1)有機ELディスプレイ10の周縁部10aに衝撃を吸収することができる外枠17を貼り付けてあるから、有機ELディスプレイ10を保護できる。そして、耐衝撃性の高い中吊り広告用情報表示装置1を提供できる。
(2)外枠の凹部18に周縁部10aを挿入して接着剤で貼り付けるだけでよいので、簡単である。有機ELディスプレイ10の周縁部10aを保護できる。しかも、有機ELディスプレイ10の他に、ガス放電ディスプレイ、液晶ディスプレイ、マイクロカプセル型電気泳動方式ディスプレイなどの薄型のディスプレイにも応用できる。
(3)外枠が、吊り下げ状態の表示部の下辺や側辺に備えられているので、メンテナンスのときなどで表示部を外すような場合に、万一、表示部が落下しても表示部の下辺や側辺が保護されやすい。
【0038】
以上、好ましい実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形例をも含み、本発明の目的を達成できる範囲で、他のいずれの具体的な構造及び形状に設定できる。
【0039】
(変形例1)前述の実施形態で、外枠17の材料として耐衝撃性に優れている素材のα―ゲルを採用したが、これに限らない。例えば、PET(Polyethylene telephthalate)、ポリ塩化ビニル(Vinyls)などの透明で衝撃吸収材である樹脂を使用してもよい。このようにしても、有機ELディスプレイ10が保護されるので、実施形態と同様の効果が得られる。
【0040】
(変形例2)前述の実施形態で、外枠17の長さを、有機ELディスプレイ10の左右2辺と下辺との合計長さとほぼ同じにしたが、これに限らない。例えば、外枠17の長さをこれより短くして、左右側辺の二分の一と下辺との合計長さにしてもよい。このようにしても、有機ELディスプレイ10の周縁部10aを保護できれば、落下時における中吊り広告用情報表示装置1の耐衝撃性が保持できるので、実施形態と同様の効果が得られる。
【0041】
(変形例3)前述の実施形態で、外枠17を、有機ELディスプレイ10の周縁部10aに備えたが、これに限らない。例えば、有機ELディスプレイ10の下辺の角部(左右2箇所)に備えてもよい。このようにしても、有機ELディスプレイ10の周縁部10aを保護できれば、落下時における中吊り広告用情報表示装置1の耐衝撃性が保持できるので、実施形態と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施形態の中吊り広告用情報表示装置の構成を示し、(a)は概略斜視図、(b)は概略断面図であり、(c)は外枠の概略断面図。
【図2】有機ELディスプレイの構成を示す概略断面図。
【図3】(a)〜(c)は、中吊り広告用情報表示装置の製造工程を示す模式図。
【図4】中吊り広告用情報表示装置の製造工程を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0043】
1…中吊り広告用情報表示装置、10…表示部としての有機ELディスプレイ、10a…周縁部、11…第1基板、13…発光層、15…発光基板、16…対向基板としての第2基板、17…外枠、18…凹部、19…表示ユニット、20…駆動ユニット、21…制御ボード、25…筐体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中吊り広告用情報表示装置であって、
情報を表示するための表示部と、
前記表示部に備えられた外枠と、
を有することを特徴とする中吊り広告用情報表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の中吊り広告用情報表示装置において、
前記外枠の内周に凹部を備えており、前記表示部と前記凹部とが嵌合していることを特徴とする中吊り広告用情報表示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の中吊り広告用情報表示装置において、
前記外枠が、前記表示部の少なくとも下辺を含む周縁部に備えられていることを特徴とする中吊り広告用情報表示装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の中吊り広告用情報表示装置において、
前記外枠が、前記表示部の側辺の周縁部に備えられていることを特徴とする中吊り広告用情報表示装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の中吊り広告用情報表示装置において、
前記外枠が、衝撃吸収材であることを特徴とする中吊り広告用情報表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−267159(P2006−267159A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−81181(P2005−81181)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】