説明

中央制御室の換気方法及び中央制御室換気装置

【課題】小型化できる中央制御室換気装置を提供する。
【解決手段】原子力プラントで放射性物質漏洩事故が発生したとき、制御装置19は、放射線能濃度出器16の計測値が設定値になると、外気隔離弁3及び排気弁8A,8Bを閉じて中央制御室22への外気の供給を停止する。炭酸ガス濃度検出器18で計測された中央制御室22内の炭酸ガス濃度が第1設定値になったとき、制御装置19は、非常時外気取入弁10A,10B及び排気弁8A,8Bを開く。放射性物質を含む外気が再循環フィルタ装置12に供給されて放射性物質が除去される。放射性物質が除去された外気が中央制御室22に供給される。中央制御室22内の炭酸ガス濃度が第1設定値よりも小さい第2設定値まで低下したとき、制御装置19は非常時外気取入弁10A,10B及び排気弁8A,8Bを閉じる。再循環フィルタ装置12への外気の供給が停止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中央制御室の換気方法及び中央制御室換気装置に係り、特に、原子力プラントに適用するのに好適な中央制御室の換気方法及び中央制御室換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントは、原子力プラントの運転制御及び監視を行うために、オペレータが入室する中央制御室を有している。換気空調装置がこの中央制御室に接続される。この換気空調装置は、外気を取り込んで中央制御室に供給して中央制御室内の空気を外部環境に排気し、中央制御室の換気を行っている。万が一、原子力プラントで放射性物質漏洩事故が発生して外部環境の放射能濃度が増加した場合においても、中央制御室内にいるオペレータの被ばくを防止する必要がある。
【0003】
このため、中央制御室換気装置は、中央制御室に取り込む外気に含まれる放射性物質を除去するフィルタ装置を設けている。このような中央制御室換気装置の一例が、特開平9−159207号公報に記載されている。中央制御室は、外気取入口隔離弁を設けた給気ダクトにより外気取入口に連絡され、排気隔離弁を設けた排気ダクトにより排気口に連絡される。給気ユニットが外気取入口隔離弁の下流で給気ダクトに設けられる。少量外気取入口隔離弁及び再循環フィルタユニット隔離弁を設けた連絡ダクトの両端を、外気取入口隔離弁をバイパスして給気ダクトに接続する。この連絡ダクトに、放射性物質及び放射性ヨウ素を除去する再循環フィルタユニットが設けられている。中央制御室に接続された再循環ダクトが、給気ダクト及び連絡ダクトに接続される。
【0004】
原子力プラントの通常運転時では、外気取入口隔離弁及び排気隔離弁が開いて少量外気取入口隔離弁及び再循環フィルタユニット隔離弁が閉じており、外気取入口から取り込まれた外気が、給気ダクト及び給気ユニットを通って中央制御室内に供給される。中央制御室内の空気は排気ダクト及び排気口を通って外部環境に排気される。万が一、原子力プラントにおいて放射性物質が外部環境に漏洩する事故が発生したことを想定する。このとき、取入口隔離弁が閉じ、少量外気取入口隔離弁及び再循環フィルタユニット隔離弁が開く。外気取入口から取り込まれた少量の外気が、連絡ダクトを経て再循環フィルタユニットに導かれる。外気に含まれた放射性物質及び放射性ヨウ素が再循環フィルタユニットで除去され、浄化された外気が給気ユニットを通って中央制御室内に導入される。外気取入口から取り込まれた少量の外気に相当する空気が、中央制御室から排気され、排気ダクトを通って外部環境に排気される。中央制御室内の空気が再循環ダクトを通って再循環フィルタユニットに供給される。
【0005】
特開平9−133788号公報にも、系統構成が単純化されているが、同様な中央制御室換気空調装置を記載している。
【0006】
放射性物質を除去するフィルタ装置を設けた中央制御室換気装置が、特公昭63−45554号公報にも記載されている。この中央制御室換気装置は、原子力発電所内に隣り合って設置された2基の原子力プラントにそれぞれ設けられた中央制御室を対象にしたものである。中央制御室換気装置は、それぞれの中央制御室を対象に設けられた換気装置(サブ換気装置という)を有している。
【0007】
サブ換気装置は以下の構成を有する。1つの中央制御室は、外気取り込み弁を設けた外気取り込みダクトにより外気取り込み口に連絡され、排気弁を設けた排気ダクトにより排気口に連絡される。外気取り込み弁をバイパスする、非常用外気隔離弁を設けた非常用ダクトを、外気取り込みダクトに接続する。このダクトに非常用ヨウ素除去フィルタが設けられている。その中央制御室に接続された再循環系ダクトが、非常用外気隔離弁と非常用ヨウ素除去フィルタの間で、非常用ダクトに接続される。再循環系弁が再循環系ダクトに設けられる。放射線モニタが外気取り込み口に設けられる。両方のサブ換気装置の非常用ダクトが、非常用外気隔離弁と非常用ヨウ素除去フィルタの間で、第1隔離弁を有する第1配管によって接続される。両方のサブ換気装置の外気排気ダクトが、排気弁の上流で、第2隔離弁を有する第2配管によって接続される。
【0008】
原子力プラントの通常運転時では、各サブ換気装置の外気取り込み弁及び排気弁を開いて、非常用外気隔離弁、再循環系弁、第1隔離弁及び第2隔離弁を閉じる。外気取り込み口から取り入れた外気が、外気取り込みダクトを通して中央制御室に供給される。原子力プラントにおいて、万が一、外部環境に放射性物質が漏洩する事故が発生したとき、各サブ換気装置の外気取り込み弁が閉じ、非常用外気隔離弁及び再循環系弁が開く。各サブ換気装置のそれぞれの外気取り込み口から取り込む外気の放射能濃度を、それぞれの放射線モニタで計測する。放射線モニタのうち計測した放射能濃度が低い値を示す放射線モニタが設置されていないサブ換気装置(第2サブ換気装置という)の非常用外気隔離弁を閉じ、第1隔離弁及び第2隔離弁を開く。計測した放射能濃度が低い値を示す放射線モニタが設置されているサブ換気装置を、第1サブ換気装置という。第1サブ換気装置において、第1サブ換気装置の外気取り込み口から取り込んだ放射能濃度の低い外気は、非常用ヨウ素除去フィルタで放射性物質が除去された後、非常用ダクトを通して、第1サブ換気装置の外気取り込みダクトに接続された中央制御室(第1中央制御室)に供給される。放射能濃度の低い外気は、さらに、第1配管を通り、第2サブ換気装置の非常用ヨウ素除去フィルタで放射性物質が除去された後、非常用ダクトを通して、第2サブ換気装置の外気取り込みダクトに接続された中央制御室(第2中央制御室)に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−159207号公報
【特許文献2】特開平9−133788号公報
【特許文献3】特公昭63−45554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特開平9−159207号公報及び特開平9−133788号公報に記載された各中央制御室換気空調装置では、放射性物質の漏洩事故が発生したとき、中央制御室内に導入される外気が、少量であるけれども、放射性物質を除去するために、連続して再循環フィルタユニットに供給される。特開昭63−45554号公報に記載された中央制御室換気装置でも、放射性物質の漏洩事故が発生したとき、第1及び第2中央制御室内に導入される外気が、放射性物質を除去するために、連続して第1及び第2サブ換気装置の非常用ヨウ素除去フィルタに供給される。
【0011】
放射性物質の漏洩事故が発生すると、中央制御室内のオペレータは、外部の放射能濃度が許容値以下に低下するまで、長期間に亘って中央制御室内に滞在することになる。再循環フィルタユニット及び非常用ヨウ素除去フィルタ等の非常用フィルタ装置は、オペレータが滞在する期間において、放射性ヨウ素等の放射性物質が中央制御室内に流入しないように、その放射性物質の除去性能を保持する必要がある。このため、非常用フィルタ装置に充填する、放射性物質を除去する物質(例えば、活性炭)の量が多くなり、非常用フィルタ装置が大型化し、中央制御室換気装置自体が大きくなってしまう。
【0012】
本発明の目的は、中央制御室が酸欠状態になることを防止でき、かつ小型化できる中央制御室の換気方法及び中央制御室換気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、外部環境の外気の有害物質濃度が第1設定値以上になったとき、中央制御室に接続された第1弁及び中央制御室に接続された排気ダクトに設けられた第2弁を閉じて、中央制御室内の空気を、その第1弁をバイパスして両端が給気ダクトに接続された非常時外気取入ダクトに設けられて閉じられている第3弁とこの第3弁の下流で非常時外気取入ダクトに設けられた有害物質除去装置の間の非常時外気取入ダクトと、中央制御室を接続する再循環ダクト、非常時外気取入ダクト及び給気ダクトを通して循環させ、
その有害物質濃度が第1設定値以上になっている状態で中央制御室内の炭酸ガスの濃度が上昇して第2設定値になったとき、第2及び第3弁を開き、外部環境の外気を、非常時外気取入ダクトを通して有害物質除去装置に供給して、外気に含まれる有害物質を有害物質除去装置で除去し、
有害物質除去装置で有害物質が除去された外気を、非常時外気取入ダクト及び給気ダクトを通して中央制御室に供給し、かつ中央制御室内の空気を、排気ダクトを通して外部環境に排気し、
中央制御室内の炭酸ガス濃度が第2設定値よりも小さい第3設定値まで低下したとき、第2及び第3弁を閉じることにある。
【0014】
有害物質濃度が第1設定値以上になっている状態で中央制御室内の炭酸ガスの濃度が上昇して第2設定値になったとき、外部環境の外気に含まれる有害物質を、非常時外気取入ダクトに設けられた有害物質除去装置で除去し、有害物質除去装置で有害物質が除去された外気を中央制御室に供給し且つ中央制御室内の空気を、排気ダクトを通して外部環境に排気し、中央制御室内の炭酸ガス濃度が第2設定値よりも小さい第3設定値まで低下したとき、第2及び第3弁を閉じるので、外気に含まれる有害物質の濃度が第1設定値以上になった後、外気を間欠的に放射性物質除去装置に供給して中央制御室に導入することができる。このため、中央制御室が酸欠状態になることを防止でき、有害物質除去装置に充填される、有害物質物質を除去する物質の量を低減することができる。したがって、有害物質除去装置を小型化することができ、中央制御室換気装置を小型化できる。
【0015】
好ましくは、外部環境の外気の放射能濃度が第1設定値以上になったとき、中央制御室に接続された第1弁及び中央制御室に接続された排気ダクトに設けられた第2弁を閉じて、中央制御室内の空気を、その第1弁をバイパスして両端が給気ダクトに接続された非常時外気取入ダクトに設けられて閉じられている第3弁とこの第3弁の下流で非常時外気取入ダクトに設けられた放射性物質除去装置の間の非常時外気取入ダクトと、中央制御室を接続する再循環ダクト、非常時外気取入ダクト及び給気ダクトを通して循環させ、
その放射能濃度が第1設定値以上になっている状態で中央制御室内の炭酸ガスの濃度が上昇して第2設定値になったとき、第2及び第3弁を開き、外部環境の外気を、非常時外気取入ダクトを通して放射性物質除去装置に供給して、外気に含まれる放射性物質を放射性物質除去装置で除去し、
放射性物質除去装置で放射性物質が除去された外気を、非常時外気取入ダクト及び給気ダクトを通して中央制御室に供給し、かつ中央制御室内の空気を、排気ダクトを通して外部環境に排気し、
中央制御室内の炭酸ガス濃度が第2設定値よりも小さい第3設定値まで低下したとき、第2及び第3弁を閉じることにある。
【0016】
放射能濃度が第1設定値以上になっている状態で中央制御室内の炭酸ガスの濃度が上昇して第2設定値になったとき、外部環境の外気に含まれる放射性物質を、非常時外気取入ダクトに設けられた放射性物質除去装置で除去し、放射性物質除去装置で放射性物質が除去された外気を中央制御室に供給し且つ中央制御室内の空気を排気ダクトを通して外部環境に排気し、中央制御室内の炭酸ガス濃度が第2設定値よりも小さい第3設定値まで低下したとき、第2及び第3弁を閉じるので、原子力プラントで放射性物質漏洩事故が発生した後、外気を間欠的に放射性物質除去装置に供給して中央制御室に導入することができる。このため、中央制御室が酸欠状態になることを防止でき、放射性除去装置に充填される、放射性物質を除去する物質の量を低減することができる。したがって、放射性除去装置を小型化することができ、中央制御室換気装置を小型化できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、中央制御室が酸欠状態になることを防止できて中央制御室換気装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好適な一実施例である中央制御室換気装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0020】
本発明の好適な一実施例である中央制御室換気装置を、図1を用いて説明する。
【0021】
原子力プラントには、このプラントの運転及び監視を行うために、中央制御室22が設けられている。オペレータが滞在する中央制御室22には本実施例の中央制御室換気装置1が接続されている。中央制御室換気装置1は、給気ダクト2、給気ファン5A,5B、排気ダクト6、排気ファン7A,7B、非常時外気取入ダクト9、再循環フィルタ装置(放射性物質除去装置)12、再循環ファン13A,13B、再循環ダクト14,15、放射能濃度検出器16、炭酸ガス濃度検出器18及び制御装置19を備えている。
【0022】
給気ダクト2は、外気取入口23と中央制御室22を接続する。外気隔離弁3、空調器4A,4B及び給気ファン5A,5Bが、給気ダクト2に設けられる。空調器4A,4B及び給気ファン5A,5Bが外気隔離弁3の下流に配置される。給気ダクト2は、途中で、並列に配置される給気ダクト2Aと給気ダクト2Bに分岐される。空調器4A及び給気ファン5Aが、直列に配置されて給気ダクト2Aに設けられる。空調器4B及び給気ファン5Bが、直列に配置されて給気ダクト2Bに設けられる。
【0023】
中央制御室22に接続される排気ダクト6が、排気口24に接続される。排気ダクト6は、途中で、並列に配置される排気ダクト6Aと排気ダクト6Bに分岐される。排気ファン7A及び排気弁8Aが、直列に配置されて排気ダクト6Aに設けられる。排気ファン7B及び排気弁8Bが、直列に配置されて排気ダクト6Bに設けられる。
【0024】
非常時外気取入ダクト9が、外気隔離弁3の上流で給気ダクト2に接続され、外気隔離弁3の下流で給気ダクト2Aと給気ダクト2Bの分岐部の上流で給気ダクト2に接続される。非常時外気取入ダクト9は外気隔離弁3をバイパスしている。非常時外気取入弁10A,10B、再循環フィルタ装置入口弁11A,11B、再循環フィルタ装置(放射性物質除去装置)12、及び再循環ファン13A,13Bが、非常時外気取入ダクト9に設けられる。非常時外気取入弁10A,10B、再循環フィルタ装置入口弁11A,11B、及び再循環ファン13A,13Bの設置箇所で、非常時外気取入ダクト9がそれぞれ分岐されて2本に並列に配置されている。非常時外気取入ダクト9が分岐されて2本に並列に配置されている部分を、2本並列部という。非常時外気取入弁10A,10Bが非常時外気取入ダクト9の2本並列部にそれぞれ設置され、再循環フィルタ装置入口弁11A,11Bが非常時外気取入ダクト9の2本並列部にそれぞれ設置される。再循環ファン13Aと再循環ファン13Bが非常時外気取入ダクト9の2本並列部にそれぞれ設置される。外気隔離弁、切替え弁及び再循環ファンは、上流よりこの順序で、非常時外気取入ダクト9に設けられる。
【0025】
中央制御室22に接続された再循環ダクト14が、非常時外気取入ダクト9と給気ダクト2との接続部と、外気隔離弁3との間で、給気ダクト2に接続される。再循環ダクト15が、再循環ダクト14に接続され、非常時外気取入弁10A,10Bと再循環フィルタ装置入口弁11A,11Bの間で非常時外気取入ダクト9に接続される。
【0026】
放射能濃度検出器16が外気隔離弁3より上流で給気ダクト2に設けられる。中央制御室22内の炭酸ガス濃度を計測する炭酸ガス濃度検出器18が、中央制御室22に設置される。放射能濃度検出器16が信号ケーブル20によって制御装置19に接続され、炭酸ガス濃度検出器18が信号ケーブル21によって制御装置19に接続される。警報表示灯17も制御装置19に接続される。
【0027】
中央制御室換気装置1を用いた本実施例の中央制御室の換気について、説明する。
【0028】
制御装置19は、原子力プラントの通常運転時(放射線検出器16で計測された放射能濃度がこれの設定値(第1設定値)より小さいとき)に、外気隔離弁3及び排気弁8A,8Bを開き、非常時外気取入弁10A,10B及び再循環フィルタ装置入口弁11A,11Bを閉じる。さらに、制御装置19は、給気ファン5A,5B及び排気ファン7A,7Bを駆動する。給気ファン5A,5Bの駆動によって外気取入口23から取入れられた外気が、給気ダクト2を通って空調器4A及び空調器4Bに導かれる。空調器4A及び空調器4Bによって温度が調節された外気は、給気ダクト2により中央制御室22内に供給される。中央制御室22内の空気は、排気ファン7A,7Bの駆動によって排気ダクト6を通り、排気口24から外部環境に排気される。中央制御室22内の一部の空気は、給気ファン5A,5Bで吸引され、再循環ダクト14を通って空調器4A及び空調器4Bに導かれ、中央制御室22内に再度供給される。このため、中央制御室22内の雰囲気が、適切な温度に調節される。原子力プラントの通常運転時においては、放射能濃度検出器16で計測される放射能濃度は、実質的に0である。
【0029】
原子力プラントにおいて、放射性物質の漏洩事故が発生したと想定する。この漏洩事故の発生によって、外気取入口23の外側に存在する外気は、放射性物質を含んでいる。外気取入口23から給気ダクト2に流入した外気にも、放射性ヨウ素等の放射性物質が含まれている。放射能濃度検出器16は、この放射性物質から放出された放射能濃度を測定し、放射線検出信号を出力する。この放射線検出信号は、信号ケーブル20により制御装置19に入力される。制御装置19は、上記した放射能濃度がこの放射能濃度の設定値(第1設定値)に達したとき、外気隔離弁3及び排気弁8A,8Bを閉じ、排気ファン7A,7Bの駆動を停止し、再循環フィルタ装置入口弁11A,11Bを開き、再循環ファン13A,13Bを駆動する。非常時外気取入弁10A,10Bは閉じている。
【0030】
外気隔離弁3が閉じるので、外気取入口23から中央制御室22への外気の供給が停止される。排気弁8A,8Bも閉じるので、外部環境から中央制御室22内への放射性物質の流入を防止することができる。中央制御室22内の空気は、給気ファン5A,5B及び再循環ファン13A,13Bの駆動により、再循環ダクト14,15を経て再循環フィルタ装置12に導かれる。再循環フィルタ装置12から排気された空気は、非常時外気取入ダクト9を通り、空調器4A,4Bに供給される。この空気は、空調器4A,4Bによって温度が調節され、中央制御室22に戻される。再循環ダクト14を流れている一部の空気は、再循環ダクト15に流入しないで給気ダクト2に流入し、空調器4A,4Bで温度が調節されて中央制御室22に戻される。外気隔離弁3及び排気弁8A,8Bが閉じられて中央制御室22が外部環境から隔離されても、中央制御室22内の雰囲気を適切な温度に維持することができる。
【0031】
中央制御室22内の炭酸ガスの濃度は、外気が供給されず、中央制御室22内のオペレータの呼吸により徐々に増加する。炭酸ガス濃度検出器18が、中央制御室22内の炭酸ガス濃度を計測する。この炭酸ガス濃度の計測値は、信号ケーブル21を介して制御装置19に入力される。制御装置19は、炭酸ガス濃度の計測値が炭酸ガス濃度の第1設定値よりも大きくなったとき、非常時外気取入弁10A,10B及び排気弁8A,8Bを開いて排気ファン7A,7Bを駆動する。炭酸ガス濃度の第1設定値(第2設定値)は、中央制御室22内が酸欠状態にならないように余裕を見込んで設定されている。
【0032】
非常時外気取入弁10A,10Bを開くことによって、外気が、外気取入口23から給気ダクト2に流入し、非常時外気取入ダクト9を通って再循環フィルタ装置12に供給される。再循環フィルタ装置入口弁11A,11Bは開いている。外気取入口23から取り入れられた外気に含まれた放射性物質が、再循環フィルタ装置12によって除去される。再循環フィルタ装置12から排気されて放射性物質を含んでいない外気は、非常時外気取入ダクト9及び給気ダクト2を通り、空調器4A,4Bで温度が調節されて中央制御室22に供給される。中央制御室22内の炭酸ガスの濃度が高い空気は、排気ファン7A,7Bの駆動によって排気ダクト6を通って排気口24から外部環境に排気される。放射性物質が再循環フィルタ装置12で除去された外気の中央制御室22への供給、及び中央制御室22内の高炭酸ガス濃度の空気の排気によって、中央制御室22内の炭酸ガス濃度が低下する。中央制御室22内の炭酸ガス濃度が低下し、炭酸ガス濃度検出器18から入力した炭酸ガス濃度の計測値が炭酸ガス濃度の第2設定値(第3設定値)よりも低下したとき、制御装置19は、非常時外気取入弁10A,10B及び排気弁8A,8Bを閉じて排気ファン7A,7Bの駆動を停止する。中央制御室22は、再び、外部環境から隔離される。炭酸ガス濃度の第2設定値は、前述の第1設定値よりも低い値であり、例えば、炭酸ガス濃度0.15%volである。
【0033】
原子力プラントで放射性物質の漏洩事故が発生したとき、外気が、炭酸ガス濃度検出器18の計測値に基づいて、外部環境から隔離された中央制御室22内に間欠的に供給される。
【0034】
本実施例によれば、原子力プラントで放射性物質漏洩事故が発生したとき、外気隔離弁3、非常時外気取入弁10A,10B及び排気弁8A,8Bが閉じられた状態になり、中央制御室22が外部環境と隔離されるので、外部環境の放射性物質が中央制御室22内に入り込むことが防止される。このため、中央制御室22内に滞在するオペレータの被ばくを防止することができる。
【0035】
本実施例では、中央制御室22内の炭酸ガス濃度を炭酸ガス濃度検出器18で計測して制御装置19で監視し、その炭酸ガス濃度の計測値が第1設定値に到達したとき、非常時外気取入弁10A,10Bが開いて外気を中央制御室22に供給し、開いた排気弁8A,8Bを通して中央制御室22内の炭酸ガスを含む空気を外部に排気する。放射性物質漏洩事故の発生時に、このような中央制御室22の換気を行うことによって、中央制御室22内の炭酸ガス濃度を低下させることができ、中央制御室22内が酸欠の状態になることを避けることができる。さらに、本実施例では、非常時外気取入弁10A,10Bを通して取り込まれた外気が再循環フィルタ装置12に供給され、外気に含まれた放射性物質が再循環フィルタ装置12によって除去される。このため、非常時外気取入弁10A,10Bを通過した外気が中央制御室22に導入されても、放射性物質が中央制御室22内に持ち込まれることが防止され、中央制御室22内に滞在するオペレータが放射性物質によって被ばくすることを防止することができる。
【0036】
本実施例は、放射性物質漏洩事故の発生後、前述したように、制御装置19が炭酸ガス濃度検出器18で計測した計測値に基づいて、再循環フィルタ装置12を通過した外気を中央制御室22に間欠的に供給する。再循環フィルタ装置12にも、放射性物質を含む外気が間欠的に供給される。したがって、本実施例では、前述した公知例のように、放射性物質漏洩事故の発生後に、放射性物質を含む外気を非常用フィルタ装置に連続して供給する必要がなく、炭酸ガス濃度検出器18の計測値に基づいて中央制御室22に外気を供給するときにだけ、再循環フィルタ装置(非常用フィルタ装置)12が取り入れた外気に含まれる放射性物質を除去する。放射性物質漏洩事故の発生後、中央制御室22に外気を取り込まない期間では、再循環フィルタ装置12が放射性物質を除去しない。
【0037】
放射性物質漏洩事故の発生後、中央制御室22を換気する外気を間欠的に再循環フィルタ装置12に供給する本実施例では、再循環フィルタ装置12に充填される放射性物質を除去する物質(例えば、活性炭)の量を、特開平9−159207号公報、特開平9−133788号公報及び特公昭63−45554号公報のそれぞれに記載された、外気が連続して供給される非常用フィルタ装置に充填される放射性物質を除去する物質の量よりも少なくすることができる。すなわち、本実施例では、再循環フィルタ装置12を、それらの公知例の非常用フィルタ装置よりも小型化することができる。したがって、本実施例の中央制御室換気装置1は小型になる。
【0038】
本実施例における再循環フィルタ装置12に充填された放射性物質を除去する物質の量を上記の公知例に記載された非常用フィルタ装置に充填されたその物質の量と同じにした場合には、再循環フィルタ装置12の寿命が長くなり、再循環フィルタ装置12の交換頻度を低減することができる。
【0039】
本実施例では、空調器、給気ファン、排気ファン、排気弁、外気隔離弁、再循環フィルタ装置入口弁、及び再循環ファンがそれぞれ2つ設けられ、各々が並列に配置されている。このため、それぞれの機器の1つが故障しても、他の1つの機器が機能するので、中央制御室22への外気の供給及び中央制御室22からの排気を確実に行うことができ、中央制御室換気装置1の信頼性を向上することができる。
【0040】
もし、放射能濃度検出器16で計測された放射能濃度、及び炭酸ガス濃度検出器18で計測された炭酸ガス濃度が、それぞれの設定値に同時に到達したときには、制御装置19は、炭酸ガス濃度の計測値に基づいた制御を優先して行い、中央制御室22内が酸欠状態になることを避ける。
【0041】
原子力プラントに放射性物質漏洩事故が発生したときに、放射能高による隔離信号が発生したときには、制御装置19は、入力した隔離信号に基づいて、放射能濃度検出器16で計測した放射能濃度が設定値になったときと同様な制御を行う。
【0042】
外気に有害物質であるアンモニア、ベンゼン及び塩化水素等が含まれる可能性がある。これらの有害物質の濃度がそれぞれの設定値以上になったときには、放射能濃度がこれの設定値以上になったときと同様な制御が、制御装置19によって行われる。これらの有害物質の濃度は、外気隔離弁3より上流で給気ダクト2に設けられた有害物質検出器(例えば、アンモニア検出器、ベンゼン検出器及び塩化水素検出器等)によって検出される。放射能濃度検出器16は有害物質検出器の一種であり、放射性物質は有害物質の一種である。有害物質検出器で計測された有害物質濃度は、制御装置19に入力される。制御装置19は、有害物質検出器で計測された有害物質濃度(例えば、アンモニア濃度)が設定値以上になったとき、放射能濃度がこれの設定値以上になったときと同様に、炭酸ガス濃度検出器18で計測された炭酸ガス濃度を考慮して、該当する弁の開閉制御、及び該当するファンの起動停止の制御を行う。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、原子力プラントに適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1…中央制御室換気装置、2…給気ダクト、3…外気隔離弁、4A,4B…空調器、5A,5B…給気ファン、6…排気ダクト、7A,7B…排気ファン、8A,8B…排気弁、9…非常時外気取入ダクト、10A,10B…非常時外気取入弁、11A,11B…再循環フィルタ装置入口弁、12…再循環フィルタ装置、13A,13B…再循環ファン、14,15…再循環ダクト、16…放射能濃度検出器、18…炭酸ガス濃度検出器、19…制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部環境の外気の有害物質濃度が第1設定値よりも小さいとき、この外気を、第1弁を設けた給気ダクトを通して中央制御室に供給して、前記中央制御室内の空気を、第2弁を設けた排気ダクトを通して前記外部環境に排気し、且つ前記第1弁をバイパスして両端が前記給気ダクトに接続された非常時外気取入ダクトに設けられた第3弁を閉じておき、
前記有害物質濃度が前記第1設定値以上になったとき、前記第1及び第2弁を閉じて、前記中央制御室内の空気を、閉じられた前記第3弁と前記第3弁の下流で前記非常時外気取入ダクトに設けられた有害物質除去装置の間の前記非常時外気取入ダクトと、前記中央制御室を接続する再循環ダクト、前記非常時外気取入ダクト及び前記給気ダクトを通して循環させ、
前記有害物質濃度が前記第1設定値以上になっている状態で前記中央制御室内の炭酸ガスの濃度が上昇して第2設定値になったとき、前記第2及び第3弁を開き、前記外部環境の前記外気を、前記非常時外気取入ダクトを通して前記有害物質除去装置に供給して、前記外気に含まれる有害物質を前記有害物質除去装置で除去し、
前記有害物質除去装置で前記有害物質が除去された前記外気を、前記非常時外気取入ダクト及び前記給気ダクトを通して前記中央制御室に供給し、かつ前記中央制御室内の空気を、前記排気ダクトを通して前記外部環境に排気し、
前記中央制御室内の炭酸ガス濃度が前記第2設定値よりも小さい第3設定値まで低下したとき、前記第2及び第3弁を閉じることを特徴とする中央制御室の換気方法。
【請求項2】
前記有害物質濃度が放射能濃度であり、前記有害物質除去装置が放射性物質除去装置であり、前記有害物質が放射性物質である請求項1に記載の中央制御室の換気方法。
【請求項3】
外部環境の外気を取り込み中央制御室に供給する、第1弁及び給気ファンが上流よりこの順に設けられた給気ダクトと、
中央制御室に接続され、第2弁及び排気ファンが設けられた排気ダクトと、
前記第1弁をバイパスして両端が前記給気ダクトに接続され、第3弁、前記第3弁よりも下流に配置された有害物質除去装置、及び再循環ファンが設けられた非常時外気取入ダクトと、
前記中央制御室に接続され、前記第3弁と前記有害物質除去装置との間で前記非常時外気取入ダクトに接続された再循環ダクトと、
前記中央制御室内の炭酸ガス濃度を計測する炭酸ガス濃度検出器と、
前記給気ダクト内に取り入れられた前記外気の有害物質濃度を計測する有害物質検出器と、
前記有害物質検出器で計測された有害物質濃度が第1設定値より小さいとき、前記第1及び第2弁を開いて前記給気ファン及び前記排気ファンを駆動し、前記有害物質検出器で計測された有害物質濃度が第1設定値以上になったとき、前記第1及び第2弁を閉じて前記第3弁を開き、且つ前記排気ファンを停止して前記再循環ファンを駆動し、前記計測された有害物質濃度が前記第1設定値以上になっている状態で前記炭酸ガス濃度検出器によって計測された炭酸ガス濃度が上昇して第2設定値になったとき、前記第2及び第3弁を開いて前記排気ファンを駆動し、及び前記計測された炭酸ガス濃度が前記第2設定値よりも小さい第3設定値まで低下したとき、前記第2及び第3弁を閉じて前記排気ファンを停止する制御装置とを備えたことを特徴とする中央制御室換気装置。
【請求項4】
前記有害物質除去装置が放射性物質除去装置であり、前記有害物質検出器が前記外気の放射能濃度を計測する放射能濃度検出器であり、
前記有害物質検出器で計測された有害物質濃度が第1設定値より小さいとき、前記第1及び第2弁を開いて前記給気ファン及び前記排気ファンを駆動し、前記有害物質検出器で計測された有害物質濃度が第1設定値以上になったとき、前記第1及び第2弁を閉じて前記第3弁を開き、且つ前記排気ファンを停止して前記再循環ファンを駆動し、前記計測された有害物質濃度が前記第1設定値以上になっている状態で前記炭酸ガス濃度検出器によって計測された炭酸ガス濃度が上昇して第2設定値になったとき、前記第2及び第3弁を開いて前記排気ファンを駆動する前記制御装置が、前記放射能濃度検出器で計測された放射能濃度が第1設定値より小さいとき、前記第1及び第2弁を開いて前記給気ファン及び前記排気ファンを駆動し、前記放射能濃度検出器で計測された放射能濃度が第1設定値以上になったとき、前記第1及び第2弁を閉じて前記第3弁を開き、且つ前記排気ファンを停止して前記再循環ファンを駆動し、前記計測された放射能濃度が前記第1設定値以上になっている状態で前記炭酸ガス濃度検出器によって計測された炭酸ガス濃度が上昇して第2設定値になったとき、前記第2及び第3弁を開いて前記排気ファンを駆動する制御装置である請求項3に記載の中央制御室換気装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−27308(P2011−27308A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172755(P2009−172755)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】