説明

中広加工ができる切削装置

【課題】木材や石材単体で花瓶、壷のような器を作る場合、簡単な構造の装置で、精度よく、内面の中広加工ができる切削装置を提供する。
【解決手段】中広加工ができる切削装置は孔21に軸周方向へ回転する挿入筒3と、挿入筒に収納され回転力を付与することができ、切削部材10の拡がる角度を調節するための円盤2を下端に設けた回転軸1と、回転軸に螺合しかつ位置固定できる切削部材ホルダー6と、挿入筒3の外側へ拡がり可能及び内側へ収納可能な切削部材10を備えている。孔21に切削装置を挿入し切削部材ホルダー6を支えて回転軸1を逆回転することにより、円盤2が上側に移動し切削部材の拡がる角度を大きくする機能を有し、段階的に円筒状の中広加工切削ができるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木材、石材等の単体内部の中広加工切削方法および装置に関するものである。木材や石材等で花瓶や壷のような開口部より大きい内断面を、精度よく円筒状の自由な形に切削することができるようにしたものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材、石材等の内部を開口部直径以上の中広断面に切削加工する方法として、円筒状の開口部上端から丸孔切削用ルータービットを固着した長尺のシャンクを電気ドリルで回転させ、電気ドリルを傾け拡張部の一部を切削後、ルータービットを壁内部に沿うように回転させ拡張部を切削する方法がある。
特許文献1は木材の開口部に
開口部と同じ径の孔に挿入する軸部材の中に切削刃を有し、回転力を付与する回転軸と、回転軸をセンター位置から偏心位置の間で動かすことができる偏心操作具と、孔内における切削刃の深さ位置を調整できる調節具を備えている孔拡張部切削装置である。
【0003】
特許文献2は木材の開口部と同じ径の孔に挿入できる挿入体と、挿入体に収められ回転力を付与することができる回転軸と、回転軸に挿入体の外周面より外側へ張り出し可能及び内側へ収納可能に設けられた切削具を備えた孔拡張部切削装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−130844号公報
【特許文献2】特開2007−55260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
木材、石材等の中広断面切削は開口部から先端に回転刃を備えたドリル等挿入して、ある程度の拡がりまでは切削できるが、開口部直径や長さによりドリル等を傾ける角度の制限を受け、開口部より大きい回転刃は挿入できない。特許文献1、特許文献2の方法でも切削目的の違いがあるが、切削径が限られた大きさまでしか拡張できない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
第1の発明にあっては
加工対象の部材20に円筒状の中広内部空間22を形成するための中広加工切削装置であって、回転軸1は付与された回転力を切削装置全体に与える機能を持ち、回転軸下端に固結した円盤2は回転軸に螺合した切削部材ホルダー6との間隔を変えることにより、切削部材の回転軸線に対して拡がる角度を内側から調節する機能を持ち、切削部材ホルダーは回転軸に螺合しかつ位置固定することにより、回転力を切削部材10に与える機能を持ち、挿入筒3は回転軸と切削部材ホルダーと切削部材を内部空間に収納及び孔への挿入機能を持ち、挿入筒下端で切削部材の拡がる角度を外側から固定する機能を持ち、回転軸を上下移動できる穴を備えた接合部材により、回転軸と同時回転する機能を持たせることを特徴とする中広加工切削装置。
【0007】
第2の発明にあっては
回転軸1は全体に雄ネジ切りした金属製棒で、上端の係合面で付与された回転力を切削部材ホルダーと切削部材と挿入筒に与える機能を持ち、下端には挿入筒内径より小さく、側面に凹凸部を有し、上側ほど径の小さい円盤2を固結し、切削部材ホルダー6を支えて回転軸を逆回転して、円盤と切削部材との間隔を小さくすることにより切削部材10を挿入筒の外側に拡げて、切削部材先端の回転軌跡が切削予定面に到接した状態で保持する機能を持たせることを特徴とする第1の発明に係る中広加工切削装置。
【0008】
第3の発明にあっては
挿入筒3は金属製円筒で、内部空間9に回転軸1切削部材ホルダー6と切削部材10を収納し、上部に回転軸を上下に移動できる径の穴14と、容易に着脱するため穴の幅で蓋の外縁部まで切り抜き部15を設け、回転軸との接合部材4と回転軸に螺合したナット5により、挿入筒下端の切り込み部15で切削部材の拡がる角度を外側から固定すると共に、挿入筒が回転軸と同時回転する機能を持たせることを特徴とする第1、第2の発明に係る中広加工切削装置。
【0009】
第4の発明にあっては
切削部材ホルダー6は回転軸1に螺合した金属製多角柱で、外側数箇所に切削部材を取り付けるための螺合したボルト8とナット9で切削部材を保持する機能を持ち、切削部材ホルダー上部の回転軸に螺合したナット7で、切削部材ホルダーを回転軸に固定ことにより、切削部材に回転力を伝える機能を持たせることを特徴とする第1、第2の発明に係る中広加工切削装置。
【0010】
第5の発明にあっては
切削部材10は、切削部材ホルダー6と回転軸下端の円盤2と挿入筒下端の切り込み部16の三点で支持された状態で、回転軸と共に回転する機能を持ち、切削予定中広断面の大きさや形状等により、切削部材の有効長を微調整するため、穴は位置をずらして数箇所設け、更に対象部材の材質、硬度等に応じた切削部材の数及び形状、材質、硬度等を変更することができることを特徴とする第1ないし第4の発明に係る中広加工切削装置。
【発明の効果】
【0011】
木材、石材等の外部は旋盤等で簡単に切削できるが、中広断面切削は精度よく自由な形に切削加工する方法、装置は見当たらない。木材、石材等の中広断面切削は開口部から先端に回転刃を備えたドリル等を挿入して、ある程度の拡がりまでは切削できるが、開口部直径や長さによりドリル等を傾ける角度の制限受け、又開口部より大きい回転刃は挿入できない。特許文献1、特許文献2の方法でも切削目的の違いがあるが、切削径が限られた大きさまでしか拡張できない。
本発明により、回転軸に回転力を付与し、切削部材ホルダーと切削部材と、挿入筒が回転軸と一体となって回転することによって、孔の側面を精度よく切削することを可能にした。
孔内部で切削部材の拡がる角度を段階的に大きくできる機能により、内断面を円筒状の自由な中広空間に加工することができ、瓢箪形の内部仕上げも可能である。
切削部材の形状、材質、硬度等を変えることにより木材、石材以外にも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】切削部材収納、挿入時の縦断面図である
【図2】切削装置作動時の縦断面図である
【図3】切削部材ホルダーと切削部材の側面図である
【図4】切削部材ホルダーと切削部材の平面図である
【図5】切削装置の切削実施状況を示す説明図である
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を単体の木材から中広断面の花瓶、壷等を製作する場合に適用した実施例について、図1ないし図5を参照して説明する
【0014】
本発明を図に示した実施例に基づき詳細に説明する
図1は本発明に係る中広加工切削装置の挿入筒に回転軸、切削部材ホルダー、切削部材を収納した状態の縦断面図。図2は回転軸下端の円盤と切削部材ホルダーの間隔を小さくし、切削部材を所定の角度まで拡げて切削する状態を示す縦断面図。図3は回転軸に螺合された切削部材ホルダーと、切削部材ホルダーに結合された切削部材の側面図。図4は切削部材ホルダーと、切削部材と挿入筒の平面図。図5は切削装置の切削実施状況を示す説明図。
【0015】
中広加工切削装置は回転軸1と、回転軸の下端に結合した円盤2と、回転軸に螺合した切削部材ホルダー6と、切削部材ホルダーに取り付けた切削部材10と、その外側に回転軸を上下に移動する回転軸との接合部材4を有する挿入軸3を備えている。
以下上記それぞれについて詳細に説明する。
【0016】
(回転軸部材)
回転軸部材1は全体にネジ切りした棒状金属で、後ほど説明する切削部材10を外側に押し出すため、側面に凹凸部を有し上側ほど径の小さい金属製円盤2を回転軸の下端に固着し、回転軸1の上端は係合面12を備えている。
【0017】
(切削部材ホルダー部材)
切削部材ホルダー6は回転軸1に螺合する金属製の多角柱で、外側にそれぞれ切削部材10を取り付けるためのボルト8を螺合し、切削部材を保持するナット9を備える。切削部材ホルダーを回転軸1の正回転に連動して回転させるために、切削部材ホルダーの上部に取り付けたボルト7を締めて切削部材ホルダーを回転軸に固定する。
【0018】
(切削部材)
切削部材10は有効長を選択するために、上部の所定の位置に数箇所の穴11をあけ、切削部材ホルダーのボルト8とナット9で保持する。切削対象部材の材質、硬度等により、切削部材の数、形状、材質等を変更することが可能である。
【0019】
(挿入筒部材3)
挿入筒3は金属製の円筒で内部空間13を有し、下端に切削部材の滑り防止のための切り込み部16を有する。上部には中心部に回転軸1を上下できる穴14をあけ、また横方向に容易に着脱できるように切り込み15を施した金属製の回転軸との接合部材を備える。接合部材上部の回転軸と螺合するナット5により、挿入筒が回転軸と同時に回転する機能をもたせる。
【0020】
(作用)
図5は中広加工切削装置の切削状況を示す説明図である。
図1、図2、図5を参照して、本実施の形態に係る中広加工切削装置の作用を説明する。
【0021】
中広加工装置Aは、たとえば間伐材等の木材を利用して花瓶、壷等を製作する時の内面を切削加工するものである。
木材20にあらかじめ挿入筒3の外径に合わせてあけた孔21の開口部から、図1の切削部材収納状態で切削装置を所定の位置まで挿入する。
【0022】
挿入筒上部ナット5を緩め、接合部材4をはずし、回転軸1を支えて挿入筒3を上部に移動した後、切削部材ホルダーのナット7を緩める。
【0023】
切削部材ホルダー6を支えて回転軸1を逆回転することにより、円盤2を引き上げ切削部材10の先端を切削開始面に所定の深さまで食い込ませ、切削部材ホルダーのナット7を締めて切削部材の拡がる角度を固定する。
【0024】
挿入筒3の下端切込み部16が、切削部材10の外側に接する位置で接合部材4を設置後、挿入筒上部ナット5を締める。
【0025】
切削部材10は切削部材ホルダー6と、円盤2と、挿入筒3により切削装置の中で固定され、回転軸係合面12にドリル等で回転軸1に正回転力を付与すると、切削装置全体が回転しながら切削面22を切削する。
【0026】
第2回目以降の切削は、切削部材先端が次の切削開始位置にくるまで切削装置を引き上げて(0022)から(0025)までの操作を繰り返す。
【0027】
切削片については、第1回切削時には孔21底部に堆積した切削片に円盤2が達した段階で、挿入筒ナット5を緩め、接合部材4をはずして対象木材22を倒立させて挿入筒内部空間13を通して排出する。第2回以降は前記操作もしくは挿入筒外面と、既切削部との間の空間を利用し排出することも可能になる。
【0028】
切削予定空間の切削が終了した後は、切削部材先端が切削空間上部の側面に接するまで切削装置を引き上げ、挿入筒上部ナット5を緩めて接合部材5をはずす。
切削部材ホルダー上部ナット7を緩め、切削部材ホルダーを支えて回転軸1を正回転させ円盤2を下げることにより、切削部材を収納状態にして切削装置を引き上げて内面切削加工が終了する。
【産業上の利用可能性】
【0029】
1 間伐材等を有効利用して花瓶、壷等を製作する。
2 石材の端材等を有効利用して花瓶、壷等を製作する。
3 内部断面が円筒状になっている木器、石器の内面を切削改良できる。
【符号の説明】
【0030】
1 回転軸
2 円盤
3 挿入筒
4 挿入筒接合部材
5 挿入筒ナット
6 切削部材ホルダー
7 切削部材ホルダーナット
8 切削部材取り付けボルト
9 切削部材取り付けナット
10 切削部材
11 切削部材穴
12 回転軸係合面
13 挿入筒内部空間
14 挿入筒接合部材穴
15 挿入筒接合部材切り込み
16 挿入筒切り込み
20 対象材
21 対象材孔
22 切削側面
23 切削予定面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象の部材20に円筒状の中広内部空間22を形成するための中広加工切削装置であって、回転軸1は付与された回転力を切削装置全体に与える機能を持ち、回転軸下端に固結した円盤2は回転軸に螺合した切削部材ホルダー6との間隔を変えることにより、切削部材の回転軸線に対して拡がる角度を内側から調節する機能を持ち、切削部材ホルダーは回転軸に螺合しかつ位置固定することにより、回転力を切削部材10に与える機能を持ち、挿入筒3は回転軸と切削部材ホルダーと切削部材を内部空間に収納及び孔への挿入機能を持ち、挿入筒下端で切削部材の拡がる角度を外側から固定する機能を持ち、回転軸を上下移動できる穴を備えた接合部材により、回転軸と同時回転する機能を持たせることを特徴とする中広加工切削装置。
【請求項2】
回転軸1は全体に雄ネジ切りした金属製棒で、上端の係合面で付与された回転力を切削部材ホルダーと切削部材と挿入筒に与える機能持ち、下端には挿入筒内径より小さく、側面に凹凸部を有し、上側ほど径の小さい円盤2を固結し、切削部材ホルダー6を支えて回転軸を逆回転して、円盤と切削部材との間隔を小さくすることにより切削部材10を挿入筒の外側に拡げて、切削部材先端の回転軌跡が切削予定面に到接した状態で保持する機能を持たせることを特徴とする請求項1記載の中広加工切削装置。
【請求項3】
挿入筒3は金属製円筒で、内部空間9に回転軸1切削部材ホルダー6と切削部材10を収納し、上部に回転軸を上下に移動できる径の穴14と、容易に着脱するため穴の幅で蓋の外縁部まで切り抜き部15を設け回転軸との接合部材4と、回転軸に螺合したナット5により、挿入筒下端の切り込み部15で切削部材の拡がる角度を外側から固定すると共に、挿入筒が回転軸と同時回転する機能を持たせることを特徴とする請求項1、2記載の中広加工切削装置。
【請求項4】
切削部材ホルダー6は回転軸1に螺合した金属製多角柱で、外側数箇所に切削部材を取り付けるための螺合したボルト8とナット9で切削部材を保持する機能を持ち、切削部材ホルダー上部の回転軸に螺合したナット7で、切削部材ホルダーを回転軸に固定ことにより、切削部材に回転力を伝える機能を持たせることを特徴とする請求項1ないし3記載の中広加工切削装置。
【請求項5】
切削部材10は、切削部材ホルダー6と回転軸下端の円盤2と挿入筒下端の切り込み部16の三点で支持された状態で、回転軸と共に回転する機能を持ち、切削予定中広断面の大きさや形状等により、切削部材の有効長を微調整するため、穴は位置をずらして数箇所設け、更に対象部材の材質、硬度等に応じた切削部材の数及び形状、材質、硬度等を変更することができることを特徴とする請求項1ないし4記載の中広加工切削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−121256(P2012−121256A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274791(P2010−274791)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(710013860)
【Fターム(参考)】