説明

中心から外れた散乱関数を用いて、電子近接効果を補正する方法

【課題】 中心から外れた散乱関数を用いて、電子近接効果を補正する方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、特に、直接または間接描画リソグラフィおよび電子顕微鏡検査において使用される、電子ビームを投射する方法を開示する。特に、50nm未満の限界寸法または分解能では、ターゲットと相互作用しているビームにおける電子の前方および後方散乱によって生じる近接効果を補正しなければならない。このため、ターゲットの形状に関する点像分布関数の畳み込み積分が従来使用されている。従来技術では、前記点像分布関数はその中心がビームの中心にあり、ガウス関数または指数分布則を用いる。本発明によれば、点像分布関数の少なくとも1つの構成要素は、ビームの中心に位置しない最大値を有する。好ましくは、最大値は後方散乱ピークに位置する。有利には、点像分布関数はガンマ分布則を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、ウェハ上に直接エッチングするための、またはマスクを作るための電子リソグラフィの分野に適用される。より一般には、本発明は、電子ビームのターゲットとの相互作用をモデル化する必要性があり、また、特にウェハおよびマスクの検査のための電子顕微鏡検査の場合のあらゆる分野に適用される。
【背景技術】
【0002】
この相互作用は、初期軌道の周りの電子の散乱(前方散乱効果)および後方散乱効果によって顕著に影響を受ける。近接効果と呼ばれるこれらの効果は、ターゲットの材料およびその形状に特に依存する。したがって、この電子衝撃(エッチング、イメージングまたは解析)を行いたい理由が何であっても、所望の目的に忠実な結果を得るためには近接効果を考慮することが必要である。そのため、近接効果の補正が行われる。これについては、ターゲットに衝突させるために使用する電子放射の線量を計算する際に近接効果を考慮にするため、モデルを用いて近接効果を予側するのが周知の慣用手段である。このために、いわゆる散乱または点像分布関数(PSF)を使用することが周知の慣用手段であり、ターゲットの形状に関するPSFの畳み込み積分を行う。一般に使用されるPSFは、ガウス関数の組合せであり、前方散乱(前方散乱のPSF)をモデル化するための第1のガウス関数および、後方散乱(後方散乱のPSF)をモデル化するための1つまたは複数の追加的ガウス関数である。
【0003】
PSF方程式は、このように次式の関数f(x、y)によって従来示されている。
【数1】

【0004】
表記について以下に示す。
○ αは直接放射の幅である。
○ βは後方散乱幅である。
○ ηは、直接放射および後方散乱放射の強度の比率である。
○ ξは、点像の半径方向の位置である。
【0005】
パラメータα、βおよびηの値は、所定プロセスの試行錯誤によって決定することができる。これらのパラメータは、機械の加速電圧およびターゲットの関数である。典型的には、約50KVの加速電圧および、シリコンまたはガラスのターゲット(SiO)では、αは約30nm、βは10μm、および、ηは約0.5である。
【0006】
しかしながら、このモデルの効率は、後方散乱によって支配される遠隔効果には特に良好ではない。より良好な効率を得るために、他のPSFを使用することができる。特に、Photomask Technology、Proc.of SPIE、Vol.7823,782331、2010の「マスクプロセス補正(MPC)モデリングとその電子ビームマスク描画装置EBM−7000用のEUVマスクへの応用」で上久保が示唆しているタイプのPSF、または、米国特許出願公開第2008/0067446号明細書で公開されている米国特許出願でBelicが示唆しているモデルである。上久保は、指数関数を含むPSFの使用を示唆し、ガウスモデルと比較して改善を実証している。Belicは、多数のガウス関数の線形結合を含むモデルを示し、その線形結合の1つまたは複数の係数は、PSFを物理的な現実に、より良好に適合させるために、おそらく負になっている。しかしながら、PSFの標準的関数式のこれら2つの変形形態について、それらの性能は、試行錯誤、および、モンテカルロ法(以下の記述では、参照モデルと呼ぶ)によって電子の散乱をシミュレートするモデルとの比較の両方によって、評価できるのであるが、一般に、タンタルなどの重金属の層を一般に含む前記マスクの極端UV(紫外線)中でのエッチングを含むタイプの用途において、遠視野で、まだ改良が不十分であることがわかっている。従来技術のPSFの共通の特徴の1つは、中心にある関数、すなわち電子ビームの中心がターゲットと相互作用するところに、最大振幅が位置する(簡単にするため、以下、ビームの中心に、と言う)関数を使用することであり、現在、このモデルは特に、後方散乱の割合が大きい上記適用シナリオにおいて現実に良好に即していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、PSFが中心にピークを有していないモデルのクラスを用いることにより、偏差をモデル化する近接効果によって生じるこの問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明は、電子ビームの前方および後方散乱の効果を補正するステップを含む、前記ビームをターゲットに投射する方法であって、前記ステップは点像分布関数を計算するサブステップを含み、前記点像分布関数は最大値がビームの中心に位置しない少なくとも1つの関数を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0009】
有利には、最大値がビームの中心に位置しない前記少なくとも1つの関数は、電子ビームの後方散乱ピークに位置する最大値を有する。
【0010】
有利には、最大値がビームの中心に位置しない前記少なくとも1つの関数は、ガンマ分布関数である。
【0011】
有利には、前記点像分布関数はまた、前方散乱をモデル化するために、最大値がビームの中心に位置する関数を含む。
【0012】
有利には、前記点像分布関数は、最大値が各ピークに位置する少なくとも1つの関数と共に、少なくとも、存在する後方散乱ピークと同数の、最大値がビームの中心に位置しない関数を含む。
【0013】
有利には、前記点像分布関数は、少なくとも1つのガウス関数と、少なくとも1つのガンマ関数との線形結合である。
【0014】
この方法を実施するために、本発明はさらに、プログラムがコンピュータ上で実行される場合、本発明による電子ビームを投射する方法を実行するプログラムコード命令を含むコンピュータプログラムであって、前記プログラムは、ビームの前方および後方散乱の効果をシミュレートするためのおよび/、または、補正するためのモジュールを含み、前記モジュールは点像分布関数を計算するためのサブモジュールを含み、前記点像分布関数は最大値がビームの中心に位置しない少なくとも1つの関数を含むことを特徴とする、前記プログラムを提供する。
【0015】
本発明はまた、電子リソグラフィシステム、少なくとも1つの電子リソグラフィステップをシミュレートするためのシステム、および、電子顕微鏡検査システムをカバーし、前記各システムはターゲットに電子ビームを投射するためのモジュールと、本発明によるコンピュータプログラムとを含む。
【0016】
2つのガンマ分布関数を含むPSFが使用されている本発明の実施形態では、中心にあるガウス関数2つで観察されるものより49%少なく、上久保によって提供された改良で観察されるものより32%少ない、残存二乗平均平方根誤差に対する非常に著しい改良を実証することが可能である。
【0017】
さらに、この実施形態で使用される関数のクラスは分析式を有するため、大幅に補正することなく、市場標準ツールに容易に組み込むことができる。集約分布関数はそれ自体分析用であるため、近接効果の補正に必要な畳み込み積分計算は、従来技術の解決策と同程度の計算の複雑さが残る。
【0018】
多くの例示的実施形態の以下の記述、および添付した図から、本発明はより一層理解され、また、その様々な特徴および利点が明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1a】図1aは、電子の後方散乱の効果を示す。
【図1b】図1bは、電子の後方散乱の効果を示す。
【図2a】図2aは、参照モデルによる、第1および第2の従来技術モデルによる、ならびに本発明の実施形態による、電子リソグラフィ方法でエッチングすべき表面の樹脂層によって吸収されたエネルギーの4つのモデルを示す。
【図2b】図2bは、参照モデルによる、第1および第2の従来技術モデルによる、ならびに本発明の実施形態による、電子リソグラフィ方法でエッチングすべき表面の樹脂層によって吸収されたエネルギーの4つのモデルを示す。
【図2c】図2cは、参照モデルによる、第1および第2の従来技術モデルによる、ならびに本発明の実施形態による、電子リソグラフィ方法でエッチングすべき表面の樹脂層によって吸収されたエネルギーの4つのモデルを示す。
【図2d】図2dは、参照モデルによる、第1および第2の従来技術モデルによる、ならびに本発明の実施形態による、電子リソグラフィ方法でエッチングすべき表面の樹脂層によって吸収されたエネルギーの4つのモデルを示す。
【図3】図3は、異なるパラメータ値を有する、本発明の特定の実施形態で使用されるガンマ分布関数を示す。
【図4a】図4aは、ガラス基板および、それぞれCrとTaの吸収体のマスクエッチングの場合における、ターゲットの表面上で後方散乱した電子数の分布を示す。
【図4b】図4bは、ガラス基板および、それぞれCrとTaの吸収体のマスクエッチングの場合における、ターゲットの表面上で後方散乱した電子数の分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1aおよび図1bは、電子の後方散乱の効果を示す。
【0021】
図1aは、ターゲット110(樹脂111の層、そしてライン120によって画定された基板112内)内のビームの電子軌道の鉛直断面図を示す。モンテカルロ・シミュレーションによるモデリングに好適な軌道のランダム性を観察することができる。しかしながら、このタイプのシミュレーションは、パラメータ化または一覧にした関数で直接計算できないため、生産で使用することが難しい。
【0022】
図1bでは、電子ビーム100のターゲット110との相互作用に起因する2つの散乱効果がモデル化されている。20kVおよび50kVの加速電圧に対応する2つの分散クラウド130、140が示されている。前方散乱は矢印150、および後方散乱は矢印160で示されている。見てわかるように、加速電圧が高ければ高いほど、クラウドは深いが、このクラウドの開口部は小さい。電圧が高い場合、後方散乱電子は、ビームの中心の衝撃ポイントからより遠く離れたターゲットの表面上に放出される。
【0023】
図2a、図2b、図2cおよび図2dは、それぞれ、参照モデルによる、第1および第2の従来技術モデルによる、ならびに本発明の実施形態による、電子リソグラフィ方法でエッチングすべき表面の樹脂層によって吸収されたエネルギーの4つのモデルを示す。これらの図は、後方散乱現象だけを考慮している(前方散乱は考慮していない)。したがって、それらは後方散乱PSFを示す。
【0024】
図2aは、モンテカルロ法によって行われたシミュレーションによる、ビームの中心までの距離(ミクロン単位で)の関数として、樹脂層における電子ビームのエネルギーの吸収の傾向(任意のエネルギー単位で)をプロットしている曲線を示す。実験の条件は、上で引用した上久保による刊行物によって概説されたものである。この曲線は、異なる後方散乱PSFモデルの関連性を評価するための測定の参照モデルを構成する。
【0025】
図2bは、2つのガウス関数の和によってモデル化された後方散乱のPSFをプロットしている曲線を示す。
【0026】
使用される2つの関数は各々、中心が電子ビームの中心にある。数ミクロンを超えるビームの中心までの距離では(上久保実験の条件で)曲線2bと、参照モデルの曲線との間に大きな相違を観察することができる。
【0027】
図2cは、上で引用した刊行物で上久保が述べている関数によってモデル化された後方散乱のPSFをプロットしている曲線を示す。
【0028】
上久保は、1ミクロン未満であるビームの中心までの中間距離におけるPSFをモデル化するために指数関数を用いている。これらの関数もまた、ビームの中心で最大値を示す。曲線2bは、参照モデルとの適合(当業者によって使用されている表現)が図2aの場合よりも良好であることを示しているが、約5ミクロンを超えるビームの中心までの距離では(上久保実験の条件で)まだ大きな差異がある。したがって、改良が望ましい。これは本発明の方法で得られるものである。
【0029】
図2dは、本発明の方法によってモデル化された後方散乱のPSFをプロットしている曲線を示す。このモデルについて、図3の解説として詳細に述べる。この曲線は、電子ビームの中心に関して約10ミクロンと大きく離れていても(上久保実験の条件で)、参照モデルとの適合がほとんど完璧であることを示す。
【0030】
適合は残存二乗平均平方根誤差によって測定される。上記で示したように、この差異は、図2bのPSFモデルより49%良好であり、上久保のPSFモデルより32%良好である。
【0031】
この結果を達成するために、後方散乱のPSFは、中心にない(すなわち、最大値がビームの中心に位置せず、ビームの中心に関してオフセットであり、これはガウス関数の場合のような関数において、いかなる非対称性をも示唆していない)1つの関数(または関数の組合せ)によってモデル化される。それは、単にその最大値がビームの中心に関してオフセットであるベル関数である。そのような関数によって、後方散乱電子がビームの中心から一定距離でターゲットから「放出される」ことがより良好に理解できる。使用すべき関数が、ビームの中心に位置する最大値を有する場合、その関数の数と比較して、最大値がビームの中心に位置しない関数をより少なく使用することは可能である。しかしながら、適合をさらに改善するために、本発明による関数をより多く使用することは可能である。確かに、曲線上で観察されるピークによって単一の関数を使用することは可能である一方、ガウス関数が各ピークに位置する最大値を有する場合、各ピークをモデル化するために、ピークごとに少なくとも2つの関数を使用する必要がある(そのうちのいくつかは負の係数を有する)。Bedicによる従来技術の実施形態では、パラメータを最適化するために必要な計算時間が増加する。さらに、ピークに位置しない最大値を有する関数を使用する場合、関数は互いに独立している。これは、各関数のインパクトのより大きい部分が曲線の異なる場所に向けられ、そのため、最適化計算もまたより簡単になるからである。
【0032】
図3は、異なるパラメータ値を有する、本発明の特定の実施形態で使用されるガンマ分布関数を示す。
【0033】
後方散乱のPSFをモデル化するために有利に使用することができる関数は、パラメータkおよびθを有するガンマ分布関数である。
【0034】
方程式は次式である。
【数2】

【0035】
式中のΓ(k)はパラメータkのガンマ関数の値である。ガンマ関数の数学的定義は下記の式で与えられる。
【数3】

【0036】
パラメータkおよびθの値は、参照モデルとの適合を最適化するために選択される(これら2つのパラメータは、曲線の対称性、関数の中心からのズレおよびその最大値の振幅に影響を与える)。例えば、分布ピークは位置(k−1)θにある。パラメータの選択を達成するために、全ての最適化方法が可能であり、例えば、局所的最適化方法を特に引用することができる。例えば、レーベンバーグマルカート・アルゴリズムもしくはシンプレックス・アルゴリズムに基づいた最適化方法、または、例えばクリギングもしくは遺伝的アルゴリズムに基づいた方法などの、よりグローバルな最適化方法がある。
【0037】
図3の曲線は、例として、パラメータkおよびθが以下の値であるガンマ関数を示す。
【0038】
− k=1;θ=2;(曲線310);
− k=2;θ=2;(曲線320);
− k=3;θ=2;(曲線330);
− k=5;θ=1;(曲線340);
− k=9;θ=0.5;(曲線350)。
【0039】
パラメータkおよびθの他の値も明らかに可能である。多くのガンマ分布関数は、最良の適合を見つけるために例えば直線的に組み合わせることができる。
【0040】
本発明によれば、合成分布が電子ビームの中心に関して中心から外れているように、ガンマ分布関数は選択される。好ましくは、分布の中心を後方散乱ピークに調節する。後方散乱効果が特に大きい際、顕著に、極端UVマスク製造用途の場合のように、タンタル、または窒素にドープしたタンタルの層が基板上に注入される際、この選択は特に有利である。これは、重質物質であるこれらの層が非常に大きな後方散乱を引き起こすからである。
【0041】
これらの用途については、顕著に、ガウス関数、または、後方散乱効果の分布の中心が電子ビームの中心になく、電子ビームの中心から外れている、上久保の方法によって改善された関数を使用することによっても、本発明を実行することができる。有利には、分布のセンタリングは後方散乱のピークにパラメータ化される。前記ピークは電子ビームの中心に関して中心から外れていることが、試行錯誤およびモンテカルロ・シミュレーションの両者によって明白である。多数の散乱ピークが存在する可能性がある。この場合、散乱ピークと同数の関数を、有利には、各ピークに中心がある少なくとも1つの関数と組み合わせるために有利に選択が行われる。
【0042】
PSFの方程式は、次式のf(ξ)またはf(x,y)の関数で示すことができる。
【数4】

【0043】
式中、
○ αは直接ビームの幅である。
○ βは後方散乱の幅である。
○ ηは、直接ビームと後方散乱ビームとの強度の比率である。
○ rは、半径方向の位置である。
○ mはピークの平均値である。m=0の場合、最大値はビームの中心に位置する。m>0の場合、最大値はmに位置する。
【0044】
図4aおよび図4bは、ガラス基板と、それぞれCrおよびTa吸収体とのマスクエッチングの場合における、ターゲットの表面上に後方散乱した電子数の分布を示す。
【0045】
典型的には、UV、深UVまたは可視リソグラフィについて、使用されるマスクは伝送モードマスクである。図4aは、標準クロム/ガラスマスクの場合における表面へ後方散乱した電子数を示す。主な後方散乱ピークは、ガラス内の後方散乱に対応した10ミクロン辺りで観察される。クロム吸収体による後方散乱に対応する1ミクロン辺りのピークが確かに存在するが、このピークは、10ミクロンでのピークより小さく、無視することができる。このように、単一のガンマ曲線は、基板の後方散乱ピーク、ここでは10ミクロン辺りに中心がくる後方散乱を説明するのに有利に十分であり得る。しかしながら、多数のベル曲線(ガウス、ガンマなど)であって、そのうちの少なくとも1つが、このピーク上に位置する最大値を有するベル曲線を使用することは可能である。
【0046】
極端UVリソグラフィでは、マスクは反射モードで作動する。マスクは、クロムより重い材料、例えばTaまたはTaNを有する吸収体を使用する。曲線4bは、Ta/ガラスマスク(図4aに関して先述したCr/ガラスマスクと同じ総電子数を有する)の場合における、表面で後方散乱した電子数を示す。吸収体による後方散乱(1μm辺りにピークを有する)に起因するボスが、基板中の後方散乱(10μm辺りのピーク)に起因するボスと比較して、非常に大きいことがわかる。有利には、この場合、2本のガンマ曲線は後方散乱をモデル化するために使用され、前記曲線のそれぞれは、これらの後方散乱ピーク(基板のピークおよび吸収体のピーク)のうちの1つに中心がある。しかしながら、多数のベル曲線(ガウス、ガンマなど)であって、それらのうち少なくとも1つが基板中の後方散乱ピーク上に位置する最大値を有し、それらのうちの別のものが、吸収体中の後方散乱ピーク上に位置する最大値を有している、ベル曲線を使用することができる。
【0047】
ウェハ上への直接投射またはマスクエッチングによる、電子リソグラフィへの応用において本発明の方法を実施するために、例えば、VISTEC社(商標)のタイプSB 3054の機械を使用することができる。線量調整は例えば、従来技術の後方散乱のPSFを上記の後方散乱のPSFに置き換えるために、Synopsis社(商標)により提供されているソフトウェアPROXECCO(商標)、または、Aselta Nanographics社(商標)のソフトウェアInscale(商標)などの線量調整ソフトウェアを修正することにより、本発明によって行うことができる。前方散乱PSFについては、従来技術の場合のように、中心にくるガウス関数、または、中心がビームの中心にあるあらゆる他のタイプのベル曲線でも使用することが可能である。
【0048】
線量調整は、エッチングすべきパターンの形状に関するPSFの畳み込み積分(前方散乱のPSFおよび後方散乱のPSF)によって行われる。例えば、本願を出願する当事者のうちの1人による国際出願PCT/欧州特許出願公開2011/05583号明細書に述べられているものなどの方法によれば、線量調整、およびエッチングすべきパターンの形状の結合最適化を行うために、ソフトウェアを有利に修正することもできる。
【0049】
本発明の方法およびその方法を実行するためのコンピュータプログラムは、イメージングにおいて使用可能な電子顕微鏡検査システムのPSFを最適化するため、または、ウェハもしくはマスクの検査を行うために使用することもできる。それらはまた、電子リソグラフィ方法の1つまたは複数のステップのシミュレーションを提供するのに適している。
【0050】
したがって、上に記述した例は、本発明の特定の実施形態を示すために挙げられている。それらの例により、以下の請求項で定義される本発明の範囲は全く限定されない。
【符号の説明】
【0051】
100 電子ビーム
110 ターゲット
150 前方散乱
160 後方散乱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビーム(100)の前方散乱(150)および後方散乱(160)の効果を補正するステップを含む、前記ビームをターゲット(110)に投射する方法であって、前記ステップは点像分布関数を計算するサブステップを含み、前記点像分布関数は、最大値がビームの中心に位置しない少なくとも1つの関数を含む、方法。
【請求項2】
最大値が前記ビームの中心に位置しない前記少なくとも1つの関数が、前記電子ビームの前記後方散乱ピークに位置する最大値を有する、請求項1に記載の投射方法。
【請求項3】
最大値が前記ビームの中心に位置しない前記少なくとも1つの関数が、ガンマ分布関数である、請求項1に記載の投射方法。
【請求項4】
前記点像分布関数が、前記前方散乱をモデル化するために、最大値が前記ビームの中心に位置する関数をさらに含む、請求項1に記載の投射方法。
【請求項5】
前記点像分布関数が、最大値が各ピークに位置する少なくとも1つの関数と共に、少なくとも、存在する後方散乱ピークと同数の、最大値が前記ビームの中心に位置しない関数を含む、請求項1に記載の投射方法。
【請求項6】
前記点像分布関数が、少なくとも1つのガウス関数と、少なくとも1つのガンマ関数との線形結合である、請求項1に記載の投射方法。
【請求項7】
ビームの前方散乱および後方散乱の効果をシミュレートするためのおよび/または、補正するためのモジュールを含むプログラムコードを含むコンピュータプログラムであって、前記モジュールが点像分布関数を計算するためのサブモジュールを含み、前記点像分布関数が、最大値が前記ビームの中心に位置しない少なくとも1つの関数を含む、コンピュータプログラム。
【請求項8】
前記点像分布関数が、前記電子ビームの前記後方散乱ピークに最大値が位置する少なくとも1つの関数を含む、請求項7に記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
前記点像分布関数が、少なくとも1つのガウス関数と、少なくとも1つのガンマ関数とを含む、請求項7に記載のコンピュータプログラム。
【請求項10】
電子ビームをターゲットに投射するためのモジュールと、請求項7に記載のコンピュータプログラムとを含む電子リソグラフィシステム。
【請求項11】
電子ビームをターゲットに投射するステップをシミュレートするためのモジュールと、請求項7に記載のコンピュータプログラムとを含む少なくとも1つの電子リソグラフィステップをシミュレートするためのシステム。
【請求項12】
電子ビームをターゲットに投射するためのモジュールと、請求項7に記載のコンピュータとを含む電子顕微鏡検査システム。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図2c】
image rotate

【図2d】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate


【公開番号】特開2013−42137(P2013−42137A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−179458(P2012−179458)
【出願日】平成24年8月13日(2012.8.13)
【出願人】(510163846)コミシリア ア レネルジ アトミック エ オ エナジーズ オルタネティヴズ (47)
【出願人】(512211361)
【Fターム(参考)】