説明

中性子捕獲療法への使用のための、ホウ素およびシリコンを含有する器具および組成物

本発明は、(i)少なくとも一部ホウ素−10から形成されたホウ素成分;および(ii)シリコン成分を含んでいるホウ素含有治療用組成物に関する。この組成物は、ホウ素中性子捕獲療法による癌の治療、またはホウ素中性子捕獲滑膜切除術による関節炎の治療において価値がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、新規医薬組成物、および癌およびほかの疾患の治療方法に関する。より具体的には本発明は、ホウ素および元素状シリコンを含んでいる新規医薬組成物、およびホウ素および元素状シリコンを含んでいる医薬組成物を用いた、癌またはリウマチ様または変形性関節疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は依然として、特に人口のうちの年配の人々にとって重大な死亡原因である。例えば米国の2万人の市民が毎年、脳腫瘍に罹り、これらのうちの1/4が、多形性膠芽腫の脳腫瘍であり、これは通常、診断の6ヶ月以内に致命的になる癌である。
【0003】
癌を治療することができるいくつかの主要な方法がある。
【0004】
外科手術は、考えとしては、多くの型の癌を、特にその初期段階において治癒しうるか、または患者の寿命を延ばすことができる一回限りの処置である。外科手術は、不可避的に患者の入院を必要とする。
【0005】
また、癌細胞を殺すための高エネルギーX線または電子ビームの使用を包含する放射線治療が、癌を治療するために用いうる。放射線治療は、癌がその初期段階において治療されるとき、およびこれが患者の体の小さい容積中に位置するとき、非常に効果的になりうる。高エネルギー放射線は、健康な組織に損傷を引起こすことがある。正常な組織に対して、腫瘍によるより高い線量の吸収は、緻密な幾何学的標的位置決定、コンピュータ補助された思慮深い治療計画、および正確なビーム送達系によって達成することができる。
【0006】
いくつかの癌に対する第三の型の治療は、近接照射療法である。これは、放射能源が、腫瘍中に直接埋め込まれる放射線治療の一形態である。この技術の利点は、放射線を限られた容積に送達することができ、周りの健康な組織への影響を制限しうるということである。
【0007】
健康な組織への放射線損傷を最小限にするもう1つの可能性のある方法は、ホウ素−10の使用を包含する。この技術は、ホウ素中性子捕獲療法(BNCT)として知られ、熱中性子および/または熱外中性子を用い、これらは腫瘍の領域に向けられる。腫瘍部位に位置するホウ素−10は、ついでこれらの中性子と相互作用し、高エネルギーで細胞傷害性のリチウム−7およびヘリウム−4を生成する。ホウ素−10および比較的低いエネルギーの中性子は、各々個別には有意な細胞傷害性作用を有していない。
【0008】
BNCTからの放射線生成物は、約12から13ミクロンの短い経路長を有し、これは細胞寸法に匹敵しうるものであり、この療法が効果的になるためには、ホウ素の比較的高い濃度が腫瘍中に必要とされるということになる。同様に、ホウ素−10の原子が腫瘍の実質的部分を通って分配されるならば有利であろう。しかしながら、ホウ素と中性子との相互作用が、腫瘍の部位にのみ発生するならば、あらゆる付随的損傷は比較的小さいであろう。
【0009】
BNCTが効果的になるためには、腫瘍1グラムあたり3から30マイクログラムのホウ素−10が、患部に送達されなければならない。これらの濃度は、従来の医薬品の濃度の数倍である。例えば、もう1つの2段階の腫瘍治療方法である光線力学療法において、光増感薬品のレベルは典型的には、BNCTにおいて必要とされるホウ素のレベルの100から1,000倍も低い。したがって全身的毒性が、ボロネート化剤についての主要な問題である。このような標的決定は主として、腫瘍中にホウ素含有薬品を選択的に集中させることによって達成することができる。
【0010】
原発高グレード脳腫瘍(多形性膠芽腫)および黒色腫の治療について研究が行なわれてきた。このような治療に用いられるビヒクルは当初、ホウ酸またはボラックス(ナトリウムテトラボレート)であった。BNCTに対して用いられてきたほかのホウ素剤には、スルフヒドリル含有多面ボラン(BSH)およびボロネート化フェニルアラニン(BPA)が含まれる。
【0011】
すべての第I相(毒性)および第II相(有効性)研究の結果は、第III相試験を正当だと理由づけるような、BNCTについての有意な利点をいまだに証明していない。主な問題は、ボロネート化剤の限定された標的決定および腫瘍細胞による保持である。腫瘍細胞中のホウ素の濃度を、正常な組織中の濃度に対して10倍にしうるような作用物質および技術を開発することができるならば、BNCTは、はるかに幅広い範囲の癌に対して用いることができるであろう。現在の技術では、あまりに少ないホウ素が腫瘍中に局在化されるか、または高すぎる濃度が患者の血液中に存在するという結果になる。
【0012】
次の論文は、本発明に対する背景情報を与える:Med.Phys.25(11)、1998年11月、2220−2225ページ;「放射線保護線量測定(Radiation Protection Dosimetry)」、第101巻、1〜4号、431〜434ページ(2002年);および「放射線研究(Radiation Research)」、151、235〜243(1999年)。これらの論文の各々は、微量線量測定におけるシリコン器具の使用について記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の問題の少なくともいくつかに対処することが、この発明の1つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1つの側面によれば、本発明は、
(i)ホウ素成分;および
(ii)シリコン成分
を含んでいる、ホウ素含有治療用組成物を提供する。
【0015】
シリコン成分は、吸収性(resorbable)シリコン、生物学的適合性シリコン、生物活性シリコン、多孔性シリコン、多結晶シリコン、非晶性シリコン、およびバルク結晶シリコンの1つまたはそれ以上を含みうる。
【0016】
シリコン成分は、微孔質シリコン、メソ細孔シリコン、およびマクロ細孔シリコンの1つまたはそれ以上を含みうる。
【0017】
本明細書の目的のためには、微孔質シリコンは20Å未満の直径を有する細孔を含有し、メソ細孔シリコンは、20Åから500Åの範囲の直径を有する細孔を含有し、マクロ細孔シリコンは、500Å超の直径を有する細孔を含有する。
【0018】
シリコン成分は実質的に、p型シリコンからなっていてもよい。
【0019】
ホウ素成分は、ホウ素−11を含んでいてもよい。有利にはホウ素成分は、ホウ素−10を含んでいる。
【0020】
この明細書の目的のためには、生物活性シリコンは、患者中に埋め込まれたとき、患者の組織との結合を形成しうるシリコンであり;吸収性シリコンは、患者の中に埋め込まれたとき、患者の腫瘍部位において吸収されうるシリコンであり;生物学的適合性シリコンは、抗癌治療または関節炎治療の目的のために生物学的適合性であるシリコンである。多孔質および多結晶シリコンのあるいくつかの形態は、第PCT/GB96/01863号に開示されているように、生物活性および/または吸収性であることが発見されている。
【0021】
本明細書の目的のためには、患者はヒトであるか、または動物であってもよい。
【0022】
ホウ素−10は、元素状ホウ素のサンプルの一部を形成してもよく、および/または1つまたはそれ以上のホウ素化合物の一部を形成してもよい。
【0023】
ホウ素−10は、熱中性子または熱外中性子にとって非常に高い捕獲横断面を有する。熱中性子は、1×10−6eVから1eVのエネルギーを有する中性子として規定され、熱外中性子は、1eV超であって10KeVまたはそれ以下のエネルギーを有するものとして規定される。
【0024】
好ましくは、ホウ素成分中に存在するホウ素原子の少なくとも15%が、ホウ素−10核を有する。自然発生ホウ素は、18.7%ホウ素−10および81.3%ホウ素−11である。より好ましくは、ホウ素成分中に存在するホウ素原子の少なくとも95%が、ホウ素−10核を有する。より好ましくは、ホウ素成分中に存在するホウ素原子の実質的に100%が、ホウ素−10核を有する。
【0025】
シリコン成分と組み合わせたホウ素成分の使用は、いくつかの利点を有する。シリコンのホウ素でのドーピングは、シリコンの電子用途のための既に非常によく確立された方法である。シリコンは、BNCTからの放射線生成物に対して弾性のある材料であり、半導体加工技術によって容易に加工され、シリコンのいくつかの形態は、有利な生物学的性質を有する。
【0026】
この治療用組成物は、少なくとも1つのインプラントを含んでいてもよい。この治療用組成物は、少なくとも1つのシリコンインプラントを含んでいてもよい。これらのシリコンインプラントまたはこれらのシリコンインプラントの少なくとも1つは、最大寸法0.1ミクロンから2mmを有していてもよい。これらのシリコンインプラントまたはこれらのシリコンインプラントの少なくとも1つは、最大寸法0.5ミクロンから1mmを有していてもよい。これらのシリコンインプラントまたはこれらのシリコンインプラントの少なくとも1つは、最大寸法0.5ミクロンから0.1mmを有していてもよい。
【0027】
これらのインプラントまたはこれらのインプラントの少なくとも1つは、シード、ペレット、ビーズの1つまたはそれ以上を含んでいてもよい。これらのインプラントまたはこれらのインプラントの少なくとも1つは、ステープル、縫合糸、ピン、プレート、ねじ、コイル、糸、ネイル、およびバーブ(barb)の1つまたはそれ以上を含んでいてもよい。
【0028】
この治療用組成物は、非常に多数のインプラントを含んでいてもよい。各インプラントは、シリコン成分の一部およびホウ素成分の一部を含んでいてもよい。
【0029】
これらのインプラントまたはこれらのインプラントの少なくとも1つは、吸収性シリコンを含んでいてもよい。これらのインプラントまたはこれらのインプラントの少なくとも1つは、吸収性多孔性シリコンを含んでいてもよい。
【0030】
この治療用組成物は、単一インプラントの少なくとも一部を形成してもよい。
【0031】
この治療用組成物は、少なくとも1つの微粒子を含んでいてもよい。この治療用組成物は、非常に多数の微粒子を含んでいてもよい。各微粒子は、ホウ素成分の一部およびシリコン成分の一部を含んでいてもよい。
【0032】
好ましくは、これらの微粒子またはこれらの微粒子の少なくとも1つの最大寸法は、0.05から5μmの範囲内にある。より好ましくは、これらの微粒子またはこれらの微粒子の少なくとも1つの最大寸法は、0.1から3μmの範囲内にある。さらにより好ましくは、これらの微粒子またはこれらの微粒子の少なくとも1つの最大寸法は、0.15から2μmの範囲内にある。
【0033】
この治療用組成物は、患者への注射に適した縣濁液であって、非常に多数の微粒子を含む縣濁液を含んでいてもよく、各微粒子は、ホウ素成分の一部およびシリコン成分の一部を含んでいる。縣濁液は、等張液を含んでいてもよい。
【0034】
シリコンの使用のもう1つの利点は、問題の癌の型の治療によく適した小さいシリコン構造、例えば微粒子、マイクロニードル、および/またはマイクロバーブを製造するための半導体技術の利用可能性である。
【0035】
ホウ素成分は、次のもの:元素状ホウ素、ボラックス、ホウ酸、スルフヒドリル含有多面ボラン(BSH)およびボロネート化フェニルアラニン(BPA)、シリコンヘキサボライド(SiB)、ホウ素リッチポルフィリンコンジュゲート、カルボランコレステロール類似体、ボラン塩、ホウ素クラスターを含有するヌクレオシド、ホウ素クラスターを含有するオリゴヌクレオチド、ホウ素抗体コンジュゲート、ホウ素含有チオウラシル誘導体、ボロネート化プリン塩基、K1212、およびボロネート化ピリジン塩基の1つまたはそれ以上から選択されてもよい。
【0036】
このホウ素は、結晶シリコンの四面体配位格子中の置換型不純物として存在する元素状ホウ素であってもよい。このホウ素は、多結晶シリコンの粒界中に存在する元素状ホウ素であってもよい。シリコン成分は、多孔性シリコンを含んでいてもよく、ホウ素成分は、多孔性シリコンの細孔の少なくともいくつかの中に位置する元素状ホウ素、または多孔性シリコンの細孔の少なくともいくつかの中に位置するホウ素化合物を含んでいてもよい。
【0037】
好ましくはこれらのインプラントまたはこれらのインプラントの少なくとも1つは、シリコンを含み、これらのインプラントまたはこれらのインプラントの少なくとも1つは、近接照射療法に適するような形状および組成を有する。
【0038】
好ましくはシリコン成分は、吸収性シリコンを含む。より好ましくはシリコン成分は、吸収性シリコンを含み、ホウ素成分は、吸収性シリコンの少なくとも一部にわたって分配される。
【0039】
ホウ素成分と組み合わせた吸収性シリコンの使用は、非常に有利である。このことはは、腫瘍の部位に配置されたとき、シリコンの吸収によって、ホウ素成分が例えばホウ酸などの形態で放出されることが可能になり、これによって、癌細胞にホウ素が広がるようになるからである。
【0040】
ホウ素が多孔性シリコン中に位置するならば、ホウ素の放出速度は、多孔性シリコンの多孔度および/または細孔サイズを変えることによって調節することができる。一般に、高い細孔度および高い細孔サイズは、より低い細孔サイズおよび低い多孔度よりも高い吸収速度を有する。ホウ素成分の放出速度を調節することによって、腫瘍中のホウ素の濃度は、中性子照射の時に周りの健康な腫瘍に対して最大にすることができる。もう1つの利点は、分子BNCT剤、例えばBPAの低い溶解性が、多孔性シリコン中への組み込みによって向上させることができるということである。
【0041】
ホウ素が、例えば従来技術によるシリコンのドーピングの結果として、シリコン成分のシリコン原子間の隙間に位置する原子の形態にあるならば、シリコンの吸収の結果として、比較的小さい分子、例えばホウ酸分子の形態でのホウ素の放出を生じることがあり、このようにして腫瘍細胞中への分散を補助する。さらには、中性子とホウ素および周りの組織との相互作用は、いくつかの局在化加熱を引起こし、このことは、吸収性シリコンの溶解を補助しうる。
【0042】
シリコン成分は、予め決定されたサイズおよび形状を有する1つまたはそれ以上のインプラントを製造するために、ミクロ機械加工されてもよく、このサイズおよび/または形状は、インプラントの傷および/または膨潤および/または移動を最小限にするために選択される。
【0043】
吸収性シリコンは、誘導体化された吸収性シリコンを含んでいてもよい。多孔性シリコンは、誘導体化された多孔性シリコンを含んでいてもよく、これには、第PCT/US99/01428号に開示されている、誘導体化された多孔性シリコンの型が含まれる。この特許の内容は、本明細書中に参照により組み込まれる。誘導体化は、腫瘍細胞の標的決定を与えるために用いられてもよい。悪性細胞中に過剰発現された細胞膜受容体のためのリガンドは、吸収性シリコンサブミクロン粒子に共有結合されてもよい。
【0044】
この明細書の目的のためには、誘導体化された多孔性シリコンは、この多孔性シリコンの、細孔を画定する表面を包含する表面の少なくとも一部に化学結合されている、単分子または単原子層を有する多孔性シリコンとして規定される。層とシリコンとの間の化学結合は、Si−Cおよび/またはSi−O−C結合を含んでいてもよい。
【0045】
有利にはこの治療用組成物は、シリコン成分中に存在するシリコン1モルあたり0.01から100モルのホウ素を含んでいる。より有利にはこの治療用組成物は、シリコン成分中に存在するシリコン1モルあたり0.1から10モルのホウ素を含んでいる。
【0046】
有利にはこの治療用組成物は、シリコン成分中に存在するシリコン1モルあたり0.01から100モルのホウ素−10を含んでいる。より有利にはこの治療用組成物は、シリコン成分中に存在するシリコン1モルあたり0.1から10モルのホウ素−10を含んでいる。
【0047】
この治療用組成物は、この組成物1cmあたり1021超のホウ素−10原子を含んでいてもよい。この治療用組成物は、この組成物1cmあたり5×1020から1.3×1023のホウ素−10原子を含んでいてもよい。この治療用組成物は、この組成物1cmあたり1021から3×1022のホウ素−10原子を含んでいてもよい。この治療用組成物は、この組成物1cmあたり1021から1.3×1022のホウ素−10原子を含んでいてもよい。
【0048】
この治療用組成物は、1から25原子パーセントのホウ素−10を含んでいてもよい。この治療用組成物は、1から5原子パーセントのホウ素−10を含んでいてもよい。
【0049】
この治療用組成物は、細胞傷害性薬品を含んでいてもよく、この細胞傷害性薬品は、アルキル化剤例えばシクロホスファミド、細胞傷害性抗体例えばドキソルビシン、代謝拮抗物質例えばフルオロウラシル、ビンカアルカロイド例えばビンブラスチン、ホルモン調節剤例えばGNRH、および白金化合物例えばシスプラチンの1つまたはそれ以上から選択されてもよい。
【0050】
この治療用組成物は、水混和性有機溶媒を含んでいてもよい。この治療用組成物は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−プロペン−3−オール(アリルアルコール)、2−メチル−2−プロパノール(第三ブチルアルコール)、ジアコトンアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキサン、アセトン、ピリジン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、およびプロピレングリコールの1つまたはそれ以上を含んでいてもよい。
【0051】
好ましくはこの治療用組成物は、イオン性カーボネート、より好ましくはこの治療用組成物は、炭酸カルシウムおよび/または炭酸ナトリウムを含む。
【0052】
有利にはこの治療用組成物は、水素化物を含んでおり、より好ましくはこの治療用組成物は、新たに調製されたシリコン表面との接触によって酸化されうる水素化物を含んでいる。
【0053】
この治療用組成物は、ガス、例えば二酸化炭素および/または水素を含んでいてもよい。
【0054】
好ましくはこの治療用組成物は、発泡剤を含んでいる。
【0055】
カーボネートは、二酸化炭素源として作用してもよく、水素化物は、ひとたび埋め込まれたら、水素源として作用しうる。ガス、例えば二酸化炭素および/または水素の放出は、腫瘍にわたるホウ素成分の分散を補助しうる。ホウ素成分の分散はさらに、ひとたび治療用組成物が埋め込まれたら、ガスと相互作用して、泡を形成しうる発泡剤の使用によってさらに補助されてもよい。
【0056】
もう1つの側面によれば、本発明は、治療方法であって、患者にホウ素含有治療用組成物を導入する段階を含み、この治療用組成物が、
(i)吸収性シリコン、生物学的適合性シリコン、生物活性シリコン、多孔性シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、バルク結晶シリコンの1つまたはそれ以上から選択されたシリコン成分;および
(ii)少なくとも一部ホウ素−10から形成されたホウ素成分
を含んでいる方法を提供する。
【0057】
シリコン成分は、微孔質シリコン、メソ細孔シリコン、およびマクロ細孔シリコンの1つまたはそれ以上を含んでいてもよい。
【0058】
この明細書の目的のためには、微孔質シリコンは、20Å未満の直径を有する細孔を含有し;メソ細孔シリコンは、20Åから500Åの範囲の直径を有する細孔を含有し;マクロ細孔シリコンは、500Å超の直径を有する細孔を含有する。
【0059】
シリコン成分は実質的に、p型シリコンからなっていてもよい。
【0060】
ホウ素成分は、ホウ素−11を含んでいてもよい。有利にはホウ素成分は、ホウ素−10を含んでいる。
【0061】
ホウ素成分は、次のもの:元素状ホウ素、ボラックス、ホウ酸、スルフヒドリル含有多面ボラン(BSH)およびボロネート化フェニルアラニン(BPA)、シリコンヘキサボライド(SiB)、ホウ素リッチポルフィリンコンジュゲート、カルボランコレステロール類似体、ボラン塩、ホウ素クラスターを含有するヌクレオシド、ホウ素クラスターを含有するオリゴヌクレオチド、ホウ素抗体コンジュゲート、ホウ素含有チオウラシル誘導体、ボロネート化プリン塩基、K1212、およびボロネート化ピリジン塩基の1つまたはそれ以上から選択されてもよい。
【0062】
好ましくはこの方法はさらに、患者に熱中性子および/または熱外中性子を照射する段階も含む。
【0063】
有利にはこの方法は、癌が位置する1つまたはそれ以上の部位に、熱中性または熱外中性子を照射する段階を含む。
【0064】
この治療方法は、ホウ素中性子捕獲療法の方法であってもよい。この治療方法は、ホウ素中性子捕獲滑膜切除術の方法であってもよい。
【0065】
この治療方法は、ホウ素中性子捕獲療法の方法であってもよく、微小癌組織の転移の治療に用いられてもよい。この治療方法は、ホウ素中性子捕獲療法の方法であってもよく、肺、骨、大脳、肝臓、結腸、直腸、乳房、卵巣、膵臓、胃、子宮、精巣、および/または神経組織中に位置する微小癌組織の転移の治療に用いられてもよい。
【0066】
この治療方法は、免疫障害の治療を包含する悪性状態を治療するため、およびリウマチ様または変形性関節疾患を治療するために用いられてもよい。
【0067】
この治療方法は、この治療用組成物の直接腫瘍内送達段階を含んでいてもよい。
【0068】
この治療用組成物は、多様な技術を用いて非常に正確に腫瘍に導入することができる。
【0069】
この治療方法は、次の技術:コンピュータトモグラフィー、超音波、ガンマカメラ画像化、ポジトロン放射トモグラフィー、および磁気共鳴腫瘍画像化の1つまたはそれ以上を用いる段階を含んでいてもよい。
【0070】
ホウ素−10は、元素状ホウ素形態、またはホウ素化合物形態にあってもよい。
【0071】
好ましくは、ホウ素成分中に存在するホウ素原子の少なくとも20%が、ホウ素−10核を有する。より好ましくは、ホウ素成分中に存在するホウ素原子の少なくとも95%が、ホウ素−10核を有する。さらにより好ましくは、ホウ素成分中に存在するホウ素原子の実質的に100%が、ホウ素−10核を有する。
【0072】
有利にはこの治療用組成物は、シリコン成分中に存在するシリコン1モルあたり0.01から100モルのホウ素−10を含んでいる。より有利にはこの治療用組成物は、シリコン成分中に存在するシリコン1モルあたり0.1から10モルのホウ素−10を含んでいる。
【0073】
この治療用組成物は、この組成物1cmあたり1021超のホウ素−10原子を含んでいてもよい。この治療用組成物は、この組成物1cmあたり5×1020から1.3×1023のホウ素−10原子を含んでいてもよい。この治療用組成物は、この組成物1cmあたり1021から3×1022のホウ素−10原子を含んでいてもよい。この治療用組成物は、この組成物1cmあたり1021から1.3×1022のホウ素−10原子を含んでいてもよい。
【0074】
この治療用組成物は、1から25原子パーセントのホウ素−10を含んでいてもよい。
【0075】
この治療用組成物は、1から5原子パーセントのホウ素−10を含んでいてもよい。
【0076】
有利にはこの治療用組成物は、少なくとも1つのインプラントを含み、治療用組成物を導入する段階は、患者の体内へこれらのインプラントまたはこれらのインプラントの少なくとも1つを埋め込む段階を含む。より有利には、これらのインプラントまたはこれらのインプラントの少なくとも1つを埋め込む段階は、これらのインプラントまたはこれらのインプラントの少なくとも1つを、腫瘍の部位の中にバイオリスティカルに(biolistically)に埋め込む段階を含む。
【0077】
患者の中にこの治療用組成物を導入する段階は、癌が位置する患者の体の1つまたは複数の部分にこの治療用組成物を導入する段階を含んでいてもよい。
【0078】
患者の中にこの治療用組成物を導入する段階は、皮下、筋肉内、血管内、腹腔内、および/または表皮にこの治療用組成物を導入する段階を含んでいてもよい。
【0079】
患者の中にこの治療用組成物を導入する段階は、肺、骨、大脳、肝臓、結腸、直腸、乳房、卵巣、膵臓、胃、子宮、精巣、および/または神経組織中にこの治療用組成物を導入する段階を含んでいてもよい。
【0080】
患者の中にこの治療用組成物を導入する段階は、脈管構造または管からなる組織中にこの治療用組成物を導入する段階を含んでいてもよい。
【0081】
好ましくはこの治療用組成物は、非常に多数の微粒子であって、各々が、ホウ素成分の一部およびシリコン成分の一部を含む微粒子を含んでいる。有利にはこの治療用製品は、非常に多数の均一微粒子を含み、各均一微粒子は、最大寸法0.05から5μmを有する。より好ましくは各均一微粒子の最大寸法は、0.1から3μmの範囲内にある。
【0082】
さらにより好ましくは各均一微粒子の最大寸法は、0.15から2μmの範囲内にある。
【0083】
この治療用組成物は、少なくとも1つのインプラントを含んでいてもよい。この治療用組成物は、少なくとも1つのシリコンインプラントを含んでいてもよい。これらのシリコンインプラントまたはこれらのシリコンインプラントの少なくとも1つは、最大寸法0.1ミクロンから2mmを有していてもよい。これらのシリコンインプラントまたはこれらのシリコンインプラントの少なくとも1つは、最大寸法0.5ミクロンから1mmを有していてもよい。これらのシリコンインプラントまたはこれらのシリコンインプラントの少なくとも1つは、最大寸法0.5ミクロンから0.1mmを有していてもよい。
【0084】
この治療用組成物は、非常に多数のインプラントであって、各々が、シリコン成分の一部およびホウ素成分の一部を含むインプラントを含んでいてもよい。
【0085】
この治療用組成物は、非常に多数のホウ素−シリコンインプラントであって、各々が、シリコン成分の一部およびホウ素成分の一部を含むインプラントを含んでいてもよい。
【0086】
癌の治療方法は、近接照射療法の方法であってもよく、インプラントは腫瘍中に、またはこれらの腫瘍の少なくとも1つの中に埋め込まれる。
【0087】
患者の中に治療用製品を導入する段階は、癌が位置する1つまたはそれ以上の部位にこの治療用組成物を導入する段階を含んでいてもよい。
【0088】
患者の中に治療用製品を導入する段階は、1つまたはそれ以上の腫瘍中にこの治療用組成物を導入する段階を含んでいてもよい。
【0089】
好ましくはこの治療用組成物は、等張液中に縣濁された非常に多数の微粒子を含み、この体内治療用組成物を導入する段階は、癌が位置する器官へ連結されるか、および/またはこの中に位置する動脈または静脈中にこの縣濁液を注入する段階を含む。
【0090】
この治療用組成物の投与方法は、良性または悪性障害によって変わる。
【0091】
シリコン成分は、吸収性シリコンを含んでいてもよく、この方法はさらに、1つまたはそれ以上の腫瘍の部位に治療用組成物を導入し、吸収性シリコンが吸収されるのを可能にする段階を含んでいてもよい。
【0092】
シリコン成分は、吸収性シリコンを含んでいてもよく、この方法はさらに、1つまたはそれ以上の腫瘍の部位に治療用組成物を導入し、1つまたはそれ以上の腫瘍の部位に熱中性子または熱外中性子を照射することによって、吸収性シリコンの吸収を増加させる段階を含んでいてもよい。
【0093】
ホウ素成分は、吸収性シリコンの一部にわたって分配されてもよく、または吸収性シリコンは、ホウ素成分と1つまたはそれ以上の腫瘍の部位との間にバリヤーを形成しうる。吸収性シリコンおよびホウ素成分の配列は、吸収性シリコンの腐食の結果、腫瘍中へのホウ素成分の放出を生じるようなものであってもよい。
【0094】
この治療用組成物は、溶媒を含んでいてもよく、ホウ素およびシリコン成分は、縣濁液の形態で溶媒を通って分散される。患者の中にこの治療用組成物を導入する段階は、針を用いて患者の中に縣濁液を注射する段階を含んでいてもよい。この針は、柔軟性皮下注射針(flexible skinny needle)であってもよい。
【0095】
この治療用組成物は、水混和性有機溶媒を含んでいてもよい。この治療用組成物は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−プロペン−3−オール(アルキルアルコール)、2−メチル−2−プロパノール(第三ブチルアルコール)、ジアコトンアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキサン、アセトン、ピリジン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、およびプロピレングリコールの1つまたはそれ以上を含んでいてもよい。
【0096】
好ましくはこの治療用組成物は、イオン性カーボネートを含んでおり、より好ましくはこの治療用組成物は、炭酸カルシウムおよび/または炭酸ナトリウムを含んでいる。
【0097】
有利にはこの治療用組成物は、水素化物を含んでおり、より好ましくはこの治療用組成物は、新たに調製されたシリコン表面との接触によって酸化されうる水素化物を含んでいる。
【0098】
この治療用組成物は、ガス、例えば二酸化炭素および/または水素を含んでいてもよい。
【0099】
好ましくはこの治療用組成物は、発泡剤を含んでいる。
【0100】
カーボネートは、二酸化炭素源として作用しうるし、水素化物は、ひとたび患者の中に埋め込まれたら、水素源として作用しうる。ガス、例えば二酸化炭素および/または水素の放出は、腫瘍を通るホウ素成分の分散を補助しうる。ホウ素成分の分散はさらに、ひとたびこの治療用組成物が埋め込まれたら、ガスと相互作用して泡を形成しうる発泡剤の使用によってさらに補助されてもよい。
【0101】
この治療方法は、この治療用組成物が患者の中に導入された部位において、ガスを放出させる段階を含んでいてもよい。この方法によるガスの放出によって、この治療用組成物を腫瘍を通って分散させることができる。
【0102】
治療方法は、患者の中に、固体二酸化炭素を含んでいる治療用組成物を導入する段階を含んでいてもよい。
【0103】
もう1つの側面によれば、本発明は、ボロン−10および固体二酸化炭素を含んでいる治療用組成物を提供する。
【0104】
もう1つの側面によれば、本発明は、薬剤としての使用のための、上記側面のいずれかに規定されている体内治療用組成物を提供する。さらにもう1つの側面によれば本発明は、ホウ素中性子捕獲療法による癌の治療用薬剤の製造のための、上記側面のいずれかに規定されている治療用組成物の使用を提供する。
【0105】
この明細書の目的のためには、「患者」という用語は、動物の患者であるか、またはヒトの患者である。
【0106】
バルク結晶シリコン中へのホウ素の導入方法は、周知である。例えば伝統的にホウ素は、気相源、例えばBBr、BF、およびBからシリコン中に拡散される。これらすべての方法における第一段階は、バルク結晶シリコンの表面上への酸化ホウ素の形成である。酸化物の元素状ホウ素への還元後、ホウ素原子は、バルク結晶シリコン中に拡散する。拡散が一般的に発生する温度は通常、900℃から1,400℃の範囲内にある。
【0107】
もう1つの側面によれば、本発明は、ホウ素処理された多孔性シリコンの製造方法であって、(i)20℃から90℃の温度において5分から200分間、ホウ素化合物の溶液中で多孔性シリコンのサンプルをインキュベーションする段階を含む方法に関する。
【0108】
ホウ素化合物はホウ酸であってもよい。ホウ素化合物は、ボロネート化フェニルアラニンであってもよい。
【0109】
好ましくはホウ素化合物溶液は、エタノール、メタノール、およびプロパノールの1つまたはそれ以上から選択された溶媒を含んでいる。より好ましくはこの方法は、インキュベーション段階が完了した後、多孔性シリコンから溶媒を除去するさらなる段階(ii)を含む。
【0110】
ホウ素処理された多孔性シリコンの製造方法はさらに、ホウ素化合物と糖とを錯体化する段階を含んでいてもよい。ホウ素処理された多孔性シリコンの製造方法はさらに、段階(i)の前に、ホウ素化合物と糖とを錯体化する段階を含んでいてもよい。ホウ素処理された多孔性シリコンの製造方法はさらに、ホウ素化合物とスクロースとを錯体化する段階を含んでいてもよい。
【0111】
有利には、ホウ素ドーピングされた多孔性シリコンの製造方法は、段階(i)の結果として生じたホウ素含有多孔性シリコンを、5分から10時間の間に800℃から1,500℃の温度に加熱する、段階(ii)後に実施される段階を含む。
【0112】
シリコン1グラムあたり8.6×1019未満のホウ素原子のホウ素濃度を有する、多孔質化されていないバルク単結晶質ホウ素ドーピングシリコンウエハが、市販されている。
【0113】
もう1つの側面によれば、本発明は、シリコン1グラムあたり1020超のホウ素原子のホウ素濃度を有する、ホウ素処理された多孔性シリコンを提供する。
【0114】
好ましくはホウ素濃度は、シリコン1グラムあたり5×1020超のホウ素原子である。より好ましくはホウ素濃度は、シリコン1グラムあたり5×1020から1024ホウ素原子である。さらにより好ましくはホウ素濃度は、シリコン1グラムあたり1021から1022ホウ素原子である。
【0115】
有利にはこの多孔性シリコンは、10%から90%の多孔度を有する。より有利にはこの多孔性シリコンは、50%から80%の多孔度を有する。
【0116】
好ましくはこの多孔性シリコンは、2nmから500nmの細孔サイズを有する。より好ましくはこの多孔性シリコンは、5nmから250nmの細孔サイズを有する。
【0117】
もう1つの側面によれば、本発明は、(i)ホウ素化合物の溶融段階、および(ii)この溶融ホウ素化合物を多孔性シリコンの細孔中に通させる段階を含む、ホウ素処理された多孔性シリコンの製造方法を提供する。
【0118】
有利にはこの多孔性シリコンは、10%から90%の多孔度を有する。より有利にはこの多孔性シリコンは、50%から80%の多孔度を有する。
【0119】
好ましくはこの多孔性シリコンは、2nmから500nmの細孔サイズを有する。より好ましくはこの多孔性シリコンは、5nmから250nmの細孔サイズを有する。
【0120】
もう1つの側面によれば、本発明は、治療用組成物の製造方法であって、(a)シリコンのサンプルおよびホウ素のサンプルを溶融する段階、および(b)ホウ素とシリコンとの溶融混合物が形成されるように、シリコンのサンプルとホウ素のサンプルとを組合わせる段階、および(c)ホウ素とシリコンとの溶融混合物を冷却する段階を含む方法を提供する。
【0121】
段階(b)は、段階(a)の前または後に実施されてもよい。この製造方法は、ホウ素とシリコンとの溶融混合物を噴霧し、噴霧された粒子を冷却して、ホウ素−シリコン微粒子生成物を形成するさらなる段階(d)を含んでいてもよい。
【0122】
この製造方法は、ホウ素−シリコン微粒子生成物を染色エッチングして、多孔質化微粒子生成物を形成するさらなる段階を含んでいてもよい。
【0123】
ここで本発明の実施態様を、添付図面を参照して例として記載する。
【0124】
本発明の治療用組成物は、皮下、筋肉内、血管内、腹腔内、または表皮技術による投与に適した多様な形態を有してもよい。
【0125】
本発明による治療用製品は、球形、トローチ剤形状、さお形状、ストリップ形態、または円筒形であってもよい。
【0126】
シリコン成分は、粉末、縣濁液、コロイド、凝結体(aggregate)、および/または凝集塊(flocculate)の一部または少なくとも一部を形成してもよい。この治療用組成物は、1つのインプラント、またはいくつかのインプラントを含んでいてもよく、このインプラントまたは各インプラントは、シリコン成分およびホウ素成分を含んでいる。このような1つまたは複数のインプラントは、腫瘍が位置する器官の中に、抗癌成分の効果を最適化するように埋め込むことができる。
【0127】
縣濁液での腫瘍の処理
本発明は、被検者の標的部位のBNCTへの使用のための、各々がシリコン成分およびホウ素成分を含んでいる微粒子の縣濁液を包含する。これらの微粒子は、選択された濃度で水溶液中に縣濁される。最適な濃度は、これらの微粒子の特徴、治療用途の型、および投与方法による。水溶液は、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンの1つまたはそれ以上であってもよい。この縣濁液は、患者の血液と等張性であってもよい。この溶液は、1つまたはそれ以上の緩衝液および/または1つまたはそれ以上の防腐剤、および1つまたはそれ以上の賦形剤を含んでいてもよい。この溶液は、ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、炭水化物、またはキレート剤を含んでいてもよい。微粒子の縣濁液は、非常に小さい直径の針、カテーテルを介して、または内視鏡の送達チャネルによって投与されてもよい。
【0128】
近接照射療法での腫瘍の処理
近接照射療法によって処理されることになる腫瘍の物理的接近可能性は、不可欠である。深い経皮アクセスおよび腫瘍内BNCTの方法は、細針生検技術のために開発された方法と類似している。このような技術の例には、20から25ゲージ針での細針吸引、および11から14ゲージ針が用いられるコア針生検が含まれる。1腫瘍あたり単回または多数回注射が必要とされることがある。この投与形態のための関連技術および装置の評論は、「軟組織病変の細針吸引(Fine Needle Aspiration of Soft Tissue Lesions)」、(Clin.Lab.Med.第18巻、507から540ページ(1998年))に示されている。この文献は、本明細書中に参照により組み込まれる。
【0129】
本発明は、ホウ素成分およびシリコン成分を含むインプラントを包含する。このインプラントは、近接照射療法での腫瘍の治療に用いることができる。このインプラントは、針またはトロカール(カニューレを備えた鋭い先端の器具)を用いて投与することができる。インプラントの配置は、高解像度超音波またはコンピュータトモグラフィーによって尊くことができる。
【0130】
理想的には、悪性腫瘍の部位の中への針またはトロカールの挿入を手術中に視覚化するための方法が用いられる。このリアルタイム視覚化は、悪性腫瘍の部位の中へのインプラントの配置の精度の向上を与え、潜在的なエラー源、例えば針またはトロカール挿入の間に発生しうる悪性腫瘍の移動および内部組織の歪みの同定および修正を可能にする。この改良された画像化能力および針またはトロカールの使用は、外科的切除の必要性を回避させ、この処置が費用有効ベースで実施されることを可能にする。
【0131】
また、近接照射療法を受ける器官は、外科的に減量(debulk)されてもよく、残留空間が、この治療用組成物で満たされてもよい。もう1つの側面において、治療されることになる器官は、一連の針で中心が抜き取られてもよく、これらの抜き取られた中心は、この治療用組成物で再び満たされてもよい。
【0132】
腫瘍内部の活性化
ホウ素−10の導入後、中性子照射が開始される最適な時がある。最適な時の計算は、いくつかの要因による。効果的なBNCTは、中性子照射の前に腫瘍の中に保持されている、投与されたホウ素−10の実質的な割合による。ホウ素−10が少なくとも一部、腫瘍中に保持されなければならないだけでなく、これはできるだけこの腫瘍の多くにわたって分配されているべきである。これらのプロセスが発生するのにかかる時間の結果として、中性子照射は、ホウ素−10が投与された30分から48時間後に開始されうる。
【0133】
BNCTへの使用に適したエネルギーの中性子ビームを送達する方法は、米国特許第4,516,535号に記載されている。この特許は本明細書中に参照により組み込まれる。患者を、0.5から30KeVのエネルギーを有する中性子のビームの前に配置することができる。患者に送達される総線量は、1cmあたり5×1012未満の中性子であってもよい。
【0134】
ホウ素含有治療用組成物の調製
方法A
各々が直径0.5mmから2mm、および純度99.99%を有する多結晶シリコンビーズをジェット微粉砕して、直径2から6ミクロンを有する減少したサイズのシリコン粒子を得る。これらの減少したサイズの粒子を、HF/HNO酸混合物を用いて染料エッチングして、多孔性シリコン粒子を得る。ついで、1原子パーセント超のレベルへのホウ素ドーピングは、30から80℃の温度範囲において、5から200分間、ホウ酸/エタノール混合物中にこの粉末をインキュベーションして達成することができる。場合により、もう1つの段階的熱駆動(thermal drive in step)が用いられてもよい。この場合、多孔質粒子は、600から1,100℃で1から100時間焼き戻され、ついでHF浸漬が行なわれる。
【0135】
方法B
縮退的に(degenerately)ドーピングされたシリコンウエハを、標準的湿潤エッチング技術、例えば「生物医学エンジニアリングにおけるIEEE処理(IEEE Transactions in Biomedical Engineering)」、第38巻、第8号、1991年8月、758〜768ページに記載されているような技術によって、マイクロニードルのアレーに転換する。
【0136】
2組の深い(200ミクロン)直交カットを、380ミクロン厚さのウエハの中に行なう。このウエハを、一方向における第一組のnカットと、直交方向における第二組のmカットとの間で90°回転させる。のこ引き(sawing)は、どの地点でもウエハを切り開かず、これらのカットの間隔あけによって決定されたアスペクト比を有する、n×mの正方形カラムの列を作り出す。75ミクロン幅のブレートおよび175ミクロンのピッチの場合、100ミクロン幅の正方形カラムを生じる。ダーツ様形状を画定するための続くエッチングプロセスは、3段階を有する。第一の化学的エッチングは、のこぎり損傷を除去し、カラムの幅を等方向的に減少させ、カラムの基部でこれらの縁部を丸くするためである。これは、激しい攪拌をともなって実施されるHF:HNOエッチング(例えば5%から95%)を用いる。第二の化学的エッチングは、静的条件下に実施され、これらの条件は、カラムの頂部の優先的侵蝕を促進して、先の尖った先端および先細りのシャフトを生じる。第三のエッチング段階は、カラムの基部において機械的弱さを作り出すことであり、これは、下にあるシリコン膜からの剥離を容易にする。このことは、これらのカラムの下部を切り取るドライエッチング条件の使用によって達成することができる。
【0137】
これらの針の基部における狭い首部分は、エッチングストップ(例えば酸化ケイ素)と組み合わせた標準的なディープドライエッチング技術によって形成されてもよい。
【0138】
これらの針は、標準的染色エッチング技術によって多孔質化することができる。ついでホウ素濃度は、これらの多孔質化された針を溶融ホウ素化合物と接触させることによって高めることができる。溶融されたホウ素化合物は、表面張力によって多孔性シリコン針の細孔中に引っ張られる。
【0139】
このようにして製造された1つまたは複数の多孔性シリコンマイクロニードルは、腫瘍の部位中に埋め込まれたとき、細孔中に含まれたホウ素化合物、およびシリコンそれ自体の中に位置する隙間ホウ素の両方から、ホウ素を放出しうる。
【0140】
方法C
0.005から0.015Ωcmホウ素ドーピングされた単結晶czSiウエハを、35mAcm−2で90分間、等容積の40%HFおよびエタノールを含む電解質中に陽極酸化する。加えられた電流密度を、ついで30秒間117mAcm−2に上げる。エタノール中で続く濯ぎ洗いしたとき、多孔性シリコン層全体が、65%多孔度および約150ミクロンの厚さの膜として、下にあるウエハから剥離する。空気乾燥後、この膜を、まず濾紙において手動で、ついで乳棒および乳鉢によって押し潰す。乳棒および乳鉢における1時間の磨砕後、平均粒子サイズは、50ミクロン未満に減少される。アルカリ緩衝剤、例えば無水ボラックス(Na)を、ついで乾燥形態にある多孔性シリコン微粒子とブレンドする。
【0141】
方法D
p型シリコンウエハを、32.5mAcm−2で4分間、20%エタノールHF溶液中に陽極酸化した。このシリコンウエハを、天然ホウ素でのドーピングによって、陽極酸化前にp型にした。p型ウエハへの抵抗率は、0.001オームcm未満であった。天然ホウ素は、ホウ素−10(18.7%)およびホウ素−11(81.3%)の両方を含んでいる。
【0142】
陽極酸化は、多孔性シリコンの吸収性メソ細孔層を発生させた。ついで多孔質化ウエハのセグメントを、70℃で15分間、25mlエタノール(アリスター(Aristar)グレードBDH)中の2.5gホウ酸(HBO)を含む溶液中に浸漬した。ホウ酸およびエタノール溶液は、pH4を有する。この比較的低いpHは、多孔性シリコンの腐食を防ぐのに役立つ。除去後、これらのセグメントを、水での濯ぎ洗いを行なわずに100℃で空気乾燥した。
【0143】
図1aは、ホウ酸で処理されている多孔性シリコンのSEM画像を示している。図1bおよび1cは、多孔質構造の上部および下部におけるその組成のEDXスペクトルを示している。図1bは、図1aにおける位置1bに対応する。図1cは、図1aにおける位置1cに対応する。このEDXスペクトルは、ホウ酸での処理の結果として多孔性シリコンの酸素含量の増加があることを示している。これらのEDX結果は、細孔壁のボロネート化酸化物コーティングと一貫性がある。多孔性シリコンの同じサンプルを、二次イオン質量分析法(SIMS)に付し、これらの結果を図2に示す。図2のSIMSプロットは、多孔質化されたシリコンウエハの表面からの、深さにともなうホウ素濃度の変動を示している。ウエハのバルク結晶領域に対応する、表面から約3ミクロン超の深さにおいて、ホウ素濃度は、約3×1020ホウ素原子cm−3である。多孔性シリコン領域に対応するより低い深さにおいて、ホウ素原子の濃度は、3×1021ホウ素原子cm−3の領域にある。天然ホウ酸が用いられたので、多孔質領域におけるホウ素−10の濃度は、5.6×1020cm−3である。
【0144】
方法E
p型シリコンウエハを、70mAcm−2で2分間、20%エタノールHF溶液中に陽極酸化し、吸収性メソ細孔シリコンを得た。このシリコンウエハを、天然ホウ素でのドーピングによって、陽極酸化前にp型にした。
【0145】
ついでウエハのセグメントを、60℃で5分間、12.5mlエタノール(アリスターグレードBDH)中の0.7g同位体濃縮されたホウ酸を含む溶液中に浸漬した。この同位体濃縮されたホウ酸は、99%がホウ素−10であるホウ素原子を含む。これらのセグメントを、水での濯ぎ洗いを行なわずに100℃で空気乾燥した。
【0146】
図3は、同位体濃縮されたホウ酸で処理されている多孔質化ウエハのSIMSプロフィールを示している。データは、多孔性シリコン領域の大部分にわたる、約1021原子cm−3のホウ素−10濃度を明らかにしている。これは、ホウ素−11濃度よりも10倍高い係数(factor)よりも大きい。このホウ素−10濃度は、多孔性シリコン領域において、50シリコン原子あたり2原子パーセント、または1ホウ素原子と同等である。
【0147】
図3から分かるように、ホウ素−11の濃度は、深さとともに比較的一定である。換言すれば、これは、多孔質からバルク結晶質領域へ有意には変わらない。このことは、多孔質領域のホウ素−11含量が、陽極酸化前に存在する天然ホウ素によることを示している。
【0148】
同位体濃縮されたホウ酸で処理されている多孔性シリコン領域におけるホウ素−10のレベルは、多孔性シリコンがそのように処理されなかったならば存在したであろうレベルよりも約100倍大きい。
【0149】
方法F
ボロノフェニルアラニン(BPA)は、BNCTに対するFDA承認薬である。これは、優先的に黒色腫細胞中に蓄積する。BPAの静脈内注入は、腫瘍への標的送達の可能性のある経路であり、これは、生理的pHにおけるこの薬品の低い溶解性によって、広く用いられてこなかった。
【0150】
方法Dに記載された方法によって調製された、多孔質化シリコンウエハのセグメントを、ホウ酸/エタノール/水溶液中のBPAの縣濁液中に浸漬した。ホウ酸を同位体濃縮し(ホウ素原子の99%がホウ素−10である)、BPAは、天然ホウ素を含んでいた(ホウ素原子の81.3%がホウ素−11である)。この溶液の組成は、0.7gのホウ酸、0.2gのBPA、12.5mlのエタノール、および12.5mlの水であった。BPAの低い溶解度の結果、この化合物の過飽和溶液を生じた。これは乳状の外見を有する。
【0151】
図4は、上記のようにホウ酸およびBPAで処理されている多孔質化セグメントのSIMSプロットを示している。多孔質領域におけるホウ素−11濃度は、バルク結晶質基質のものに対して有意には高くない。このことは、溶液相の明らかな浸透にもかかわらず、非常にわずかな薬品しか細孔中に入らなかったことを示している。
【0152】
米国特許第5,935,944号および米国特許第6,169,076号に記載された方法によって、BPAおよびホウ酸の溶液を調製した。これらの特許は、本明細書中に参照により組み込まれる。BPA0.2gを、脱イオン水5mlに添加し、その結果、乳白色の縣濁液を得る。ついで0.2gのスクロースおよび9mlの0.2M NaOHを添加して、pH10に高め、その結果として透明溶液が得られる。ついで2分以内に、1mlの5M HClの添加によって、pHを1に下げる。13mg/mlのBPAの濃度を有する溶液は、依然として透明なままであった。
【0153】
図5は、BPAおよび上で調製されたスクロース溶液で処理された多孔質化セグメントについてのSIMSプロットを示している。この多孔質化セグメントを、50℃で15分間この溶液中でインキュベーションした。図5のSIMSプロフィールは、BPAおよびスクロース組み込みの結果として、多孔質領域中での炭素およびホウ素の両方の上昇したレベルを示している。
【0154】
方法G
金属グレードシリコンのサンプルを、170ppmまたはそれ以下の水含量を有する、同位体濃縮されたホウ酸のサンプルの上にあるガラス質カーボンるつぼに入れることができる。ついでこれらのシリコンおよびホウ酸サンプルを、誘導加熱によって溶融してもよく、この溶融体の温度は、1,420℃以上である。このようにして、0.1から1.3原子パーセントのホウ素を含むシリコン合金を製造することができる。これと同様な方法が、米国特許第5,401,331号に記載されている。この特許は、本明細書中に参照により組み込まれる。溶融されたシリコン合金を噴霧し、染色エッチングして、ホウ素−10を含む固体多孔性シリコン粒子を生じうる。
【0155】
方法H
ホウ素を含むシリコンのフィルムを、蒸着によって製造することができる。例えばシリコンおよびホウ素水素化物ガスを分解して、ホウ素および水素を含むシリコンフィルムが得られる。これは、米国特許第4,064,521号に記載されている方法であり、この特許は本明細書中に参照により組み込まれる。もう1つの実施例において、Luoらによる「超高ドーピングの理解:シリコン中のホウ素の場合(Understanding Ultrahigh Doping:The Case of Boron in Silicon)」、Physical Review Letters第90(2)巻、026103〜1ページに記載されている方法のような非平衡付着方法において、結晶シリコンのフィルム中にホウ素が組み込まれてもよい。この文献は、本明細書中に参照により組み込まれる。例えば、ガス源分子ビームエピタキシーは、Si(001)基質上で600℃で25原子パーセントまで達した。
【0156】
ひとたびホウ素を含むフィルムを付着させたら、これを、標準的陽極酸化技術によって、多孔質および吸収性にすることができる。ついで多孔質膜は、適切な時間の間、電流密度を増加させることによって、フィルムの残りから剥離することができる。ついでこの膜を機械的に粉砕し、濾過すると、細いゲージ針によって患者に投与するのに適した微粒子を生じうる。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1a】図1aは、ホウ酸で処理されている多孔性シリコンのサンプルのSEM画像を示している。
【図1b】図1bは、図1aに示されている多孔性サンプルの上部および下部において測定されたサンプルのEDXスペクトルを示している。
【図1c】図1cは、図1aに示されている多孔性サンプルの上部および下部において測定されたサンプルのEDXスペクトルを示している。
【図2】図2は、図1に示されている処理済み多孔性シリコンのサンプルについてのSIMSプロフィールを示している。
【図3】図3は、同位体濃縮されたホウ酸で処理されている多孔性シリコンのサンプルについてのSIMSプロフィールを示している。
【図4】図4は、ボロノフェニルアラニン(BPA)およびホウ酸で処理されている多孔性シリコンのサンプルについてのSIMSプロフィールを示している。
【図5】図5は、BPA−スクロース錯体で処理されている多孔性シリコンのサンプルについてのSIMSプロフィールを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも一部がホウ素−10から形成されたホウ素成分;および
(ii)吸収性シリコンを含むシリコン成分
を含んでいる治療用組成物。
【請求項2】
前記ホウ素−10が、元素状ホウ素の形態にあることを特徴とする、請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項3】
ホウ素成分中に存在するホウ素原子の少なくとも95%が、ホウ素−10核を有する、請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項4】
前記ホウ素成分が、次のもの:元素状ホウ素、ボラックス、ホウ酸、スルフヒドリル含有多面ボラン(BSH)およびボロネート化フェニルアラニン(BPA)、シリコンヘキサボライド(SiB)、ホウ素リッチポルフィリンコンジュゲート、カルボランコレステロール類似体、ボラン塩、ホウ素クラスターを含有するヌクレオシド、ホウ素クラスターを含有するオリゴヌクレオチド、ホウ素抗体コンジュゲート、ホウ素含有チオウラシル誘導体、ボロネート化プリン塩基、およびボロネート化ピリジン塩基の1つまたはそれ以上から選択される、請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項5】
前記ホウ素成分が、前記シリコン成分のシリコン原子間の隙間に位置するホウ素原子を含む、請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項6】
前記シリコン成分が、多孔性シリコンを含む、請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項7】
前記ホウ素原子が、前記多孔性シリコンの細孔の少なくともいくつかの中に位置する元素状ホウ素および/またはホウ素化合物を含む、請求項6に記載の治療用組成物。
【請求項8】
癌の治療方法であって、
(a)治療用組成物を患者に導入する段階(前記治療用組成物は、(i)吸収性シリコンを含むシリコン成分および(ii)ホウ素−10を含むホウ素成分を含む。)、および
(b)前記患者に中性子を照射する段階
を含む、前記方法。
【請求項9】
ホウ素−10が、元素状ホウ素の形態にあるか、またはホウ素化合物の形態にある、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ホウ素成分中に存在するホウ素原子の少なくとも95%が、ホウ素−10核を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
さらに、前記患者に熱中性子および/または熱外中性子を照射する段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
さらに、癌が位置する1つまたは複数の部位に熱中性子または熱外中性子を照射する段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
1つまたは複数の腫瘍の部位へ前記治療用組成物を導入し、吸収性シリコンが吸収されることを可能にする段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
黒色腫の治療方法であって、患者の皮膚に前記治療用組成物を投与する段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記ホウ素成分が、治療用組成物1cmあたり1021から1025ホウ素原子の濃度で存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
体内治療用組成物が、少なくとも1つのインプラントの少なくとも一部を形成し、前記インプラントまたは前記インプラントの少なくとも1つが、最大寸法0.1から100ミクロンを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
関節炎の治療方法であって、(a)患者の関節に治療用組成物を投与する段階(前記治療用組成物は、(i)吸収性シリコンを含むシリコン成分および(ii)ホウ素−10を含むホウ素成分を含む。)および
(b)前記関節に中性子を照射する段階
を含む、前記方法。
【請求項18】
ホウ素成分が、治療用組成物1cmあたり1021から3×1022ホウ素原子の濃度で存在する、請求項1に記載の治療組成物。
【請求項19】
体内治療用組成物が、少なくとも1つのインプラントの少なくとも一部を形成し、前記インプラントまたは前記インプラントの少なくとも1つは、最大寸法0.1から100ミクロンを有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
薬剤としての使用のための、請求項1から7または請求項18から19のいずれか1項記載の治療用組成物。
【請求項21】
ホウ素中性子捕獲療法による癌の治療への使用のための、請求項1から7または請求項18から19のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項22】
関節炎の治療への使用のための、請求項1から7または請求項18から19のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接照射療法による癌の治療用薬剤の製造のための治療用組成物であって、吸収性多孔性および/または多結晶シリコンを含むシリコン成分;およびホウ素−10を含むホウ素成分を含み、前記治療用組成物1cmあたり1021超のホウ素原子の濃度で存在するホウ素成分を含んでいる、前記治療用組成物。
【請求項2】
前記ホウ素−10が、元素状ホウ素の形態にあることを特徴とする、請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項3】
ホウ素成分中に存在するホウ素原子の少なくとも95%が、ホウ素−10核を有することを特徴とする、請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項4】
前記ホウ素成分が、次のもの:ボラックス、ホウ酸、スルフヒドリル含有多面ボラン(BSH)およびボロネート化フェニルアラニン(BPA)、シリコンヘキサボライド(SiB)、ホウ素リッチポルフィリンコンジュゲート、カルボランコレステロール類似体、ボラン塩、ホウ素クラスターを含有するヌクレオシド、ホウ素クラスターを含有するオリゴヌクレオチド、ホウ素抗体コンジュゲート、ホウ素含有チオウラシル誘導体、ボロネート化プリン塩基、およびボロネート化ピリジン塩基の1つまたはそれ以上から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項5】
前記ホウ素成分が、前記シリコン成分のシリコン原子間の隙間に位置するホウ素原子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項6】
前記ホウ素成分が、治療用組成物1cmあたり1021から1.3×1022、または1021から3×1022ホウ素原子の濃度で存在することを特徴とする、請求項1に記載の治療組成物。
【請求項7】
前記シリコン成分が、多孔性シリコンを含み、前記ホウ素成分が、前記多孔性シリコンの細孔の少なくともいくつかの中に位置することを特徴とする、請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項8】
癌患者の治療方法であって、(a)1つまたはそれ以上の癌部位に治療用組成物を導入する段階(前記治療用組成物は、吸収性多孔性および/または多結晶シリコンを含むシリコン成分;およびホウ素−10を含むホウ素成分を含む。)、および(b)前記患者に中性子を照射する段階
を含む、前記方法。
【請求項9】
前記ホウ素成分が、次のもの:ボラックス、ホウ酸、スルフヒドリル含有多面ボラン(BSH)およびボロネート化フェニルアラニン(BPA)、シリコンヘキサボライド(SiB)、ホウ素リッチポルフィリンコンジュゲート、カルボランコレステロール類似体、ボラン塩、ホウ素クラスターを含有するヌクレオシド、ホウ素クラスターを含有するオリゴヌクレオチド、ホウ素抗体コンジュゲート、ホウ素含有チオウラシル誘導体、ボロネート化プリン塩基、およびボロネート化ピリジン塩基の1つまたはそれ以上から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ホウ素−10が、元素状ホウ素の形態にある、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ホウ素成分中に存在するホウ素原子の少なくとも95%が、ホウ素−10核を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
さらに、前記患者に熱中性子および/または熱外中性子を照射する段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
さらに、癌が位置する1つまたは複数の部位に熱中性子または熱外中性子を照射する段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
黒色腫の治療方法であって、患者の皮膚に前記治療用組成物を投与する段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記ホウ素成分が、治療用組成物1cmあたり1021から1025ホウ素原子の濃度で存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記ホウ素成分が、治療用組成物1cmあたり5×1020から1.3×1023ホウ素原子の濃度で存在する、請求項8に記載の治療組成物。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図1c】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2006−516599(P2006−516599A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502188(P2006−502188)
【出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000182
【国際公開番号】WO2004/067036
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(503304348)サイメディカ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】