説明

中押し装置及び推進工法

【課題】 管の耐荷力が弱い場合でも長距離推進を可能とし、簡便な装置を提供し、工事の適用範囲を拡大する。
【解決手段】 中押し装置1は、円筒形状の外側シリンダチューブ2と、外側シリンダチューブ2の内側に配置される内側シリンダチューブ3と、シリンダチューブ2と3の間の摺動室4を摺動する円筒形のピストン5と、摺動室4に流体を供給する油圧ポート6とを備え、ピストン5の掘進機7側端に前方推進管8又は掘進機7へ同軸状に接続する前側接続リング10を備え、ピストン5の元押し装置12側端に後続推進管9への後側接続リング11を備え、油圧ポート6から摺動室4へ油を給排しピストン5が軸方向に駆動し、元押し装置12は発進立坑13に設置され、元押し油圧ポンプ14から送られる油圧により推進力を加え、中押し装置1は前方推進管8又は掘進機7の後部に装着され、中押し油圧ポンプ15からの油圧により掘進機7に推進力を加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下水道管、上水道管、農業用水管、光ファイバー管、電力ケーブル管、ガス管,石油管等の管埋設に使用する中押し装置及び推進工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な推進工法の中で中押し装置がある。中押し装置は、油圧ジャッキを推進管の間に装着し、到達後は管内でジャッキを回収する。油圧ジャッキは、寸法、能力に範囲があるため、装備可能な推進管は、一般的に径が1000ミリ以上とされている。特別な場合でも800ミリ以上であり、規制がかかる。そのために小口径管について長距離推進が困難であった。
【0003】
従来、小口径管の推進工法で長距離推進が可能な工法は皆無であるが、特殊な工法として、特許文献1の発明があり、これは、小口径管でも長距離推進することができる管の推進装置及び推進工法を得ることを目的とし、刃口推進ジャッキ3と元押しジャッキ2を交互に作動させて、掘進機8と推進管6を一定距離ずつ推進する。刃口推進ジャッキ3は掘進機8を一定距離ずつ推進させ、比較的小さな推進力で推進する。刃口推進ジャッキ3を掘進機8の後段に設置し、推進管6の中間部に中押し装置を設置せずに掘進機8と推進管6を推進するものである。
【特許文献1】特開平7−198066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この工法は、(1)鋼管の推進しか摘要出来ず、管の耐荷力等の問題から、他のコンクリート管、レジンコンクリート管、塩ビ管、FRP管などに関しては、推進できない。(2)ガス管の推進を目的としているので、外管は埋め殺しとなり外管撤去は不可能であるので、下水道等の工事には高価になり過ぎ、不適格である。(3)刃口推進ジャッキは、掘進機のすぐ後ろに取り付けなければならないので、適用範囲が限られ、自由度において制限がある。(3)外管は、刃口推進ジャッキ側と、元押しジャッキ側との2方向にしか設けられないので、ジャッキは一段しか設けることが出来ず、おのずと長距離推進をするには限界がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑み、請求項1記載の発明は、外側シリンダチューブと、該外側シリンダチューブの内側に配置される内側シリンダチューブと、を有するシリンダチューブと、前記外側シリンダチューブと内側シリンダチューブの間の摺動室を摺動する円筒形のピストンと、前記摺動室に流体を供給する流体ポートと、を備え、前記シリンダチューブの掘進機側端に推進管又は掘進機へ軸方向に接続する接続部を備えること、前記ピストンの元押し装置側端に推進管へ軸方向に接続する接続部を備え、前記流体ポートから前記摺動室へ流体を給排することにより前記ピストンが軸方向に駆動すること、を特徴とする中押し装置である。
【0006】
上記課題に鑑み、請求項2記載の発明は、発進立坑に設置され推進管に推進力を加える元押し装置と、掘進機の後段又は推進管の間に装着されて、前記掘進機に推進力を加える中押し装置と、を使用して推進管を推進する推進工法において、請求項1の中押し装置で掘進機又は前側に同軸状に接続された推進管に推進力を加えて掘進機を推進する第1推進ステップと、前記元押し装置で、前記中押し装置の後側に接続された推進管に推進力を加えて推進する第2推進ステップと、を備え、前記第1推進ステップ及び第2推進ステップとを交互に繰り返すことを特徴とする推進工法である。第1推進ステップでは、元押し装置による推進は停止され、第2推進ステップでは中押し装置による推進は停止される。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明は、推進管と同軸状のシリンダジャッキにより、内側シリンダチューブの内側空間を有効に利用でき、また、同軸状の接続により、工法が簡便になる効果がある。また、推進管の中間部にもまた中押し装置を装着することができるので、小口径の推進管を布設するときの施工範囲が拡大するとともに、施工効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。中押し装置1は、図1〜図14に示す通り、円筒形状の外側シリンダチューブ2と、外側シリンダチューブ2の内側に配置される内側シリンダチューブ3と、を同軸状に有するシリンダチューブと、内側シリンダチューブ3の間の摺動室4を摺動する円筒形のピストン5と、摺動室4に流体を供給する油圧ポート6と、を備えている。また、中押し装置1は、外側シリンダチューブ2及び内側シリンダチューブ3の掘進機7側端に前方推進管8又は掘進機7へ軸方向に端部同士が接続する前側接続リング10を備えること、ピストン5の元押し装置12側端に後続推進管9へ端部同士が軸方向に接続する後側接続リング11を備え、油圧ポート6から摺動室4へ油を給排することによりピストン5が軸方向に駆動することを特徴とする。前記した軸方向に接続するためには、シリンダチューブ2,3と、前方推進管8又は掘進機7とは、中心軸が一致し、且つ、管径が合致することが好ましい(管径は概ね同径であればよい)。同様に、後側接続リング11と、後続推進管9とは、中心軸が一致し、且つ、管径が合致することが好ましい(管径は概ね同径であればよい)
【0009】
元押し装置12は発進立坑13に設置され、元押し油圧ポンプ14から送られる油圧により前方推進管8に推進力を加える。中押し装置1は前方推進管8の間又は掘進機7の後部に装着され、中押し油圧ポンプ15から送られる油圧により掘進機7に推進力を加える。推進終了後は、中押し装置1は到達立坑16から撤去する。以下、中押し装置1の各部を詳細に説明する。
【0010】
外側シリンダチューブ2は、図4及び図5に示す通り、外筒20と、外套21とを、軸方向に同軸状に連結したものである。外筒20は、図6に示す通り、内側シリンダチューブ3を内側に嵌め込むため前側に設けた円環状の接続口22と、内側シリンダチューブ3を内側に嵌め込むため後側に設けた円環状の接続口23と、円環状のメインピストン50の外周面と摺接する摺接凸部24と、外周面に軸方向に形成される断面角形の凹溝25と、を備えている。これらの部材は円周方向に配置される。また、両端面にネジ孔24a、ネジ孔24bとを備えている。外套21は、図7に示す通り、外筒20と同軸状に連結するため半径方向に外側に突出するとともに貫通孔が形成された連結凸部26と、Oリング45が嵌め込まれる円環状の凹溝27と、パッキン48が嵌め込まれる円環状の接続口28と、外周面に軸方向に形成される断面角形の凹溝29とを備えている。これらの部材は円周方向に配置される。連結凸部26にボルト26aが取り付けられ、ボルト26aがネジ孔24bにねじ込まれることで、外筒20と外套21とを締着する。凹溝27にOリング45が装着される。接続口28にパッキン48が装着される。
【0011】
内側シリンダチューブ3は、図8に示す通り、前側接続リング10と接続する円環状の接続口30と、円環状の接続口31と、外周面にOリング42を嵌め込む凹溝32aを備える半径方向に外側に突出する円環状の凸環部32と、半径方向に形成され油の通路となる縦通路33と、軸方向に形成され縦通路33と連通し油の通路となる横通路34と、横通路34の端部を封止するパッキン35と、接続口31の内側に嵌め込まれる円環状のサブブロック36とを備えている。接続口30、接続口31、凸環部32は円周方向に配置される。図8(b)に示す通り、二点鎖線の長さに亘り、一部又は全周にハードクロムメッキ層が所定の膜厚でコーティングされている。凹溝32aにOリング42が装着される。サブブロック36は、図9に示す通り、内側シリンダチューブ3と連通する接続口37と、外周面に形成された円環状の凹溝である凹溝38と、内側シリンダチューブ3の後端と結合するネジ孔39aと、メインピストン50の内周面と摺接する円環状の肉盛部39bと、を備えている。凹溝38にパッキン47が装着される。これらの部材は円周方向に配置される。
【0012】
摺動室4は、図4及び図5に示す通り、軸方向に延び出す、円筒形状の空隙であり、この中をメインピストン50が摺動するものである。メインピストン50の左端部の摺動部により、摺動室4は左側の油室と右側の空気室とに分割される。
【0013】
中押し装置1のシール部材について図4、図5を参照して説明する。Oリング40は、中央リング101の前方に装着され、前側リング100と中央リング101との側面同士の隙間のシールを行い、Oリング41は、中央リング101の後方に装着され、中央リング101と、内側シリンダチューブ3との側面同士の隙間のシールを行う。Oリング42は、内側シリンダチューブ3の外面と外筒20との内面の隙間のシールを行う。パッキン43は、外筒20の内面とメインピストン50と外面との隙間のシールを行う。パッキン44は、メインピストン50の内面と内側シリンダチューブ3の外面との隙間のシールを行う。Oリング45は、外筒20と外套21の間のシールを行う。パッキン46は、外筒20の内面とメインピストン50の外面との隙間のシールを行う。パッキン47は、サブブロック36の外面とメインピストン50の内面とのシールを行う。パッキン48は、サブピストン51の外面と外套21の内面との隙間のシールを行う。Oリング49はサブピストン51の外面と後側接続リング11の内面との隙間のシールを行う。これらのシール部材は中押し装置1の円周方向に配置される。
【0014】
ピストン5は、図4及び図5に示す通り、外側シリンダチューブ2と内側シリンダチューブ3との間の摺動室4に収容され、メインピストン50とサブピストン51とが軸方向に連結したものである。メインピストン50は、図10に示す通り、パッキン44が円周方向に配置される凹溝52aが形成されるとともに内側シリンダチューブ3の外面と摺接する内周面を有する円環状の接続口52と、内側シリンダチューブ3の外周面と同軸状に配置されこれと内部空間を共有する円環状の接続口52bと、サブピストン51と同軸状の接合するための嵌込面53と、半径方向外方に突出する円環状の凸環部54と、外周面に形成され外筒20の内周面と摺接する円環状の肉盛部55と、パッキン43を嵌め込むための円環状の凹溝56と、を備えている。凹溝56にパッキン43が装着される。凹溝52aにパッキン44が装着される。これらの部材は中押し装置1の円周方向に配置される。サブピストン51は、図11に示す通り、メインピストン50の後端部と同軸状の嵌合する円環状の接続口57と、後側接続リング11と連通する接続口58と、Oリング49を嵌め込むための円環状の凹溝59と、を備えている。ボルト59bによりサブピストン51と後側接続リング11とを脱着自在に結合する。凹溝59にOリング49が装着される。これらの部材は中押し装置1の円周方向に配置される。二点鎖線で示す長さ領域において、表面の一部又は全部に金属表面熱処理(溶融塩浴熱処理等、例えばタフトライド処理)を行う。
【0015】
サブピストン51は、逆止弁付きの滑材注入口17を備えている。これは、全体に滑材が浸透するようにするためである。テールボイド形成用の凹溝25、凹溝29、凹溝105、凹溝109eは、管の周りの凹溝であって、ここの周囲が一段高くなっているので、滑剤が流れやすくする。
【0016】
油圧ポート6は、図4及び図5に示す通り、縦通路33に取り付けられている。また断面円形の軸方向に延長する内部スペース18には、図示は略すが、油圧配管、信号ケーブル、滑材注入管、等が配設されている。また、図3に示す通り、送泥管19aと、排泥管19bとが配置されている。図3中、2点鎖線はターゲットゾーンである。
【0017】
掘進機7は、一般的技術であり、本発明の特徴ではないので、説明は省略する。例えば、特開平11−247593号公報、特開平11−315690号公報、特開平11−247588号公報、特開2000−274181号公報、特開2001−12184号公報等に記載の掘進機(先導体)を参照されたい。
【0018】
前方推進管8は、図4及び図5に示す通り、クッション材80と、前側接続リング10を外側から把持して同軸状に接続する把持部81と、を備えている。前方推進管8の外径は中押し装置1と略同一である。同様に、後続推進管9にもクッション材90、把持部91を備えている。前方推進管8の外径は中押し装置1と略同一である。前方推進管8と後続推進管9とも構造はほぼ同一であるが、若干、構成が相違している。ここでは、前方推進管8は、鋼管とし、後続推進管9はヒューム管の例が挙げられ、内径も若干相違する。前方推進管8は回収されるが、後続推進管9は地中に埋設される。配置される位置が中押し装置1の前側か後側かによって番号を区別してある。前方推進管8の後部に前側接続リング10を接続してもよいし、掘進機7の後部に前側接続リング10を接続してもよい。
【0019】
前側接続リング10は、図4及び図5に示す通り、前方推進管8(又は掘進機7)の後部と、シリンダチューブ2,3の前部との間に軸方向に脱着自在に取り付けられるものであり、前側リング100と中央リング101とを同軸状に備えた分割リングである。なお、分割は必ずしも必要ではない。
【0020】
前側リング100は、図12に示す通り、内径が前方推進管8の内径と同一の円環状の接続口102と、内径が中央リング101の内径と同一の円環状の接続口103と、クッション材80と当接する垂直面104aと、把持部81と当接する傾斜面とを有する当接面104fと、前側リング100と中央リング101とを結合するため半径方向に外方向に突出する突出部104bと、突出部104bに形成されるネジ孔104cと、ネジ孔104cにねじ込まれるボルト104dと(図4参照)、ネジ孔104eと、外周面に軸方向に形成される断面角形の凹溝105と、を備えている。なお、撤去工の際、ネジ孔104eには、Tボルト(図示略)をねじ込んで固定し、吊上げるときに使用する。
【0021】
中央リング101は、図13に示す通り、接続口103と連通する接続口106と、接続口30と連通する接続口107と、前端に形成されOリング40を嵌め込む円環状の凹溝108aと、後端に形成されOリング41を嵌め込む円環状の凹溝108bと、前端の外周部に軸方向に形成される貫通孔109aと、後端の外周部に軸方向に形成される貫通孔109bと、貫通孔109a及び貫通孔109bに取り付けられるボルト109cと、ネジ孔109dと、外周面に軸方向に形成される断面角形の凹溝109eとを備えている。ボルト109cが貫通孔109a及び貫通孔109bに取り付けられ、ネジ孔24aにねじ込まれることにより、中央リング101と外筒20とが締着される。なお、撤去工の際、ネジ孔109dには、Tボルト(図示略)をねじ込んで固定し、吊上げるときに使用する。
【0022】
前側接続リング10を分割する趣旨は、図20に示す通り、中間立坑で撤去するためである。前側接続リング10が連結されて固定されているので、このままでは撤去できないので、図18に示す通り、前側接続リング10を前側リング100と中央リング101とに分割可能に構成してある。ボルトを外し、中央リング101を取り外すことにより、空隙ができるので、中央リング101をずらせて、撤去可能としている。
【0023】
後側接続リング11は、サブピストン51の後部に同軸状に固定されるものであり、図14に示す通り、接続口58と連通する円環状の接続口110と、後続推進管9と連通する円環状の接続口111と、後部に形成され接続口111に対し半径方向内側に突出する円環状の当接部112と、前端部に半径方向外方に突出するように形成される円環状の凸環部113と、当接部112に軸方向に形成される貫通孔114とを備えている。ボルト59bが貫通孔114に取り付けられ、サブピストン51と後側接続リング11とが締着される。
【0024】
元押し装置12は、一般的技術であり、本発明の特徴ではないので、説明は省略する。例えば、特開平9−53389号公報、特開平10−46984号公報等に記載の元押し装置を参照されたい。
【0025】
中押し装置1の動作を説明する。掘進機7の推進方向は図4及び図5の左方向であり図面の左方向に位置し、元押し装置12は図面の右方向に位置する。中押し装置1の前方に前方推進管8(又は掘進機7)を同軸状に接続し、後方に後続推進管9を同軸状に接続させた状態で推進する。まず、図1(a)及び図4に示す通り、ピストン5が縮まった状態が最初の状態である。このとき、元押し装置12は推進を停止しているので、後続推進管9は停止している。油が元押し装置12側から、油圧配管(図示略)を通して、油圧ポート6に至り、縦通路33及び横通路34を経て(図8参照)、摺動室4の油室に供給されると、油圧でピストン5が右方向に押されるが、後続推進管9と連結しているピストン5が固定されているので、反力が内側シリンダチューブ3に負荷されて、中押し装置1の外側シリンダチューブ2、内側シリンダチューブ3、及び油圧ポート6が一体となって図4の前方に移動され、この結果、前側接続リング10と連結している前方推進管8が前方に推進され、サブピストン51の外表面が土砂に曝される。外側シリンダチューブ2、内側シリンダチューブ3、油圧ポート6が前進中、掘進機7が掘削を行う。また、パッキン48の作用によって、土砂の浸入が防止される。また、メインピストン50の外表面は土砂に曝されない。そして、図5に示す通り、所定のストロークST,CYLST、外側シリンダチューブ2、内側シリンダチューブ3、油圧ポート6が前進すると、油圧ポート6への油圧の供給が停止される。このとき、肉盛部55の後端が摺接凸部24の前端に当った状態、又は近接した状態になる。
【0026】
次に、図5の状態から、元押し装置12が駆動し、後続推進管9を推進させる。このとき、油圧は無負荷状態であるので、外側シリンダチューブ2、内側シリンダチューブ3、油圧ポート6、及び前方推進管8が停止したまま、摺動室4内の油は横通路34、縦通路33を経て油圧ポート6から自然に排出される。ストロークSTが一杯に達したら、元押し装置12による後続推進管9の推進を停止させる。掘進機7が掘削を行う。
【0027】
なお、油を自然排出としたが、油圧にて強制的にピストン5を引き戻すことも、適宜、行っても良い。例えば、油圧ポート6から油室に油を供給することは共通であるが、空気室に油を入れておく、油圧で駆動すれば、同様の動作が得られる。ただし、この場合はピストン5と後続推進管9とに隙間が出来ぬよう、ピストン5が引かれると同時に元押し装置12にて中押し装置1より後方の推進管9を推進する。
【0028】
したがって、中押し装置1は、図1(a)(b)に示す通り、外側シリンダチューブ2及び内側シリンダチューブ3等の前進、及び、ピストン5及び後側接続リング11の前進を繰り返し行う。ピストン5が延び出す方向が元押し装置12の方向である。ピストン5が短縮する方向が掘進機7の方向である。
【実施例】
【0029】
中押し装置1の実施例を説明する。この実施例は、発進立坑13及び到達立坑16の内径(直径)1200mm、前方推進管8及び後続推進管9の内径(直径)が250mm、中押し装置1のジャッキストロークCYLSTが300mm、掘進ストロークST300mm、元圧9.87MPa、押し力215.7KN(22ton)、重量300Kg、中押し装置1の軸方向の全長1054mm、前側リング100の軸方向の長さ80mm、内径(直径)280mm、中央リング101の軸方向の長さ55mm、内径(直径)280mm、外筒20の軸方向の長さ465mm、内径(最狭部の直径)320mm、外套21の軸方向の長さ360mm、内径(直径)320mm、内側シリンダチューブ3の軸方向の長さ417mm、内径(直径)250mm、メインピストン50の軸方向の長さ450mm、内径(直径)275mm、サブピストン51の軸方向の長さ444mm、内径(直径)275mm、サブブロック36の軸方向の長さ77mm、内径(直径)236mm、前側接続リング10の軸方向の長さ80mm、内径(直径)280mm、後側接続リング11の軸方向の長さ55mm、内径(直径)280mm、中押し装置1が収縮した場合、外套21の後部末端から後側接続リング11の末端までの距離109mmに設定されている。前方推進管8及び後続推進管9の軸方向の長さは2.43mである。中押し装置1を使用しない場合、推進距離は100m程度であるが、中押し装置1を挿入することで、中押し装置1の各1本につき30mずつ延長することができる。例えば、中押し装置1を10箇所入れれば100mプラス300mで400mまで推進可能である。
【0030】
以上説明した本実施形態の中押し装置によれば、次の効果が生じる。
(1)鋼管の推進に限らず、他のコンクリート管、レジンコンクリート管、塩ビ管、FRP管などに関しても長距離推進が可能となる。耐荷力の弱い推進管でも、荷重が分散されて、長距離推進が可能である。
(2)中押し装置1は推進後には撤去されるので、下水道等の工事には価格の面で好適である。
(3)中押し装置1は掘進機7の後端でも、前方推進管8と後続推進管9の間でもいずれでも配備できるので、適用範囲が制限されず、自由度の高い設計が可能である。
(4)中押し装置1が中空の油圧シリンダであるので、内部スペース18のスペースが有効に活用できる。
(5)ピストン5の伸縮動作が簡素であるので、中押し装置1の操作が簡便になり、工期が短縮できる。
【0031】
次に実施の形態の中押し装置1を適用する泥水加圧式小口径管推進工法の施工手順につき図15〜図22を参照して説明する。この工法は、一般的な1工程泥水方式推進に適している。具体例として、偏圧破砕型環流システムによる推進工法に適用できる。これは、偏心回転運動を行うカッタヘッドとクラッシャを備えた掘進機を先導体として、小口径(管の呼び径250〜700mm)および中口径(管の呼び径800〜1,350mm)推進管を立坑等から遠隔操作して推進する工法である。この工法は公知であるので、詳細な説明は省略する。ただし、条件によっては、2工程方式を適用してもよい。本工法の基本原理は、後続推進管9(埋設管)の一例としての内径250mmのヒューム管を推進施工するもので、発進立坑13に元押し装置12を設置し、地上の簡易泥水槽で調整した泥水を掘進機7に還流させ、切羽の安定を図りながらカッタ(図示略)で掘削し、その掘削した土砂を排泥ポンプ19d等で地上に流体輸送するものである。
【0032】
(1) 準備工(ステップS101:図15参照)
発進立坑13を築造する。同様に到達立坑16も築造する。そして、機材の搬入準備等を行う。次に、測量を行う。すなわち、管路センターを発進立坑13付近にマーキングする。また、レベル測量により推進計画高及び機械据え付け高位置をマーキングする。
【0033】
(2)坑口工(S102:図15参照)
発進立坑13に坑口を設ける。
【0034】
(3) 機械据付工(S103:図15参照)
元押し装置12を発進立坑13内に計画勾配及び計画方向(図示略)に据え付ける。すなわち、発進立坑13内に、計画推進管センター方向(図示略)に元押し装置12を合わせて、吊り降ろす。発進立坑13内側壁面に、マーキングしてある位置に間材(図示略)などで微調整をし、元押し装置12の仮据えを行う。管勾配については、レベル(図示略)等によって計測し、元押し装置12の管芯を計画推進管センターに合致させる。元押し装置12の据え付けが完了後、架台により元押し装置12の固定を十分に行い、架台と発進立坑13の壁を溶接、又はジャッキにて固定する。尚、元押し装置12の反力は発進立坑13の壁から取る。元押し油圧ポンプ14、中押し油圧ポンプ15、送泥管19a、排泥管19b、送泥ポンプ19c、排泥ポンプ19d等、各種泥水装置、滑材供給装置等を設置する。
【0035】
(4) 鏡切工(S104:図15参照)
鏡切工を行う。
【0036】
(5) 地盤改良工(S105:図15参照)
必要に応じて、薬液注入等による地盤改良を行う。
【0037】
(6)(7) 推進管推進工及び泥水加圧工(S107,S108:図15参照)
掘進機7の後端部を中押し装置1に接続し、送泥及び排泥を行い、泥水を還流させながら掘進機7、中押し装置1、推進管9を推進させる(図16参照)。こうして後続推進管9を継ぎ足しながら推進を行う。そうして、所要本数の後続推進管9を推進させる。
この推進の際、前記した通り、元押し装置12による後続推進管9の推進を停止した状態で、ピストン5を後方に伸張させ(相対的に反力で外側シリンダチューブ2、内側シリンダチューブ3、油圧ポート6が前進する)、中押し装置1で掘進機7に推進力を加えて掘進機7を推進する第1推進ステップと、中押し装置1の油圧を開放して無負荷状態とし、掘進機7と中押し装置1の推進を停止したまま(条件によっては、中押し装置1を駆動できる場合がある。)、元押し装置12で、中押し装置1の後側に接続された後続推進管9に推進力を加えて推進する第2推進ステップと、を備え、第1推進ステップと第2推進ステップとを所定のストローク、交互に繰り返す。詳細は中押し装置1の動作で前述した通りである。なお、本例は掘進機7の後部に直接、中押し装置1を接続する例である。
【0038】
(8) 坑口工(S109:図15参照)
発進立坑13に坑口を設ける。
【0039】
(9) 鏡切工(S110:図15参照)
鏡切工を行い、掘進機7は到達立坑16側で回収する。
【0040】
(10) 地盤改良工(S111:図15参照)
必要に応じて、薬液注入等による地盤改良を行う。
【0041】
(11) 管内設備撤去(S112:図15参照)
図17に示す通り、掘進機7及び中押し装置1の撤去工及び管内清掃等を行う。このとき、図18に示す通り、ボルト104d,109cを外して、前側接続リング10を前側リング100と中央リング101に分割して、中央リング101を取り外し、できた隙間を利用して前側リング100を吊上げて撤去する。元押し装置12等を撤去して、高さ調整用のモルタルを打設し、インバートを据え付ける。
【0042】
(12) 機械撤去(S113:図15参照)
架台及び元押し装置12等の機械を撤去する
【0043】
(13) マンホール上部築造工(S114:図15参照)
所定のマンホールの築造工事を完了する。
以上により、中押し装置1を適用した工法においても、中押し装置1の効果と同様な効果が得られる。
【0044】
図19〜図21に示す通り、別の推進工法として、前方推進管8と後続推進管9の間に中押し装置1を接続する工法を説明する。図15〜図18で説明した工法とは、接続形態が相違するだけであるので、共通する内容の説明は援用する。掘進機7の後部に前方推進管8が接続され、複数の前方推進管8を接続し、前方推進管8の後部に中押し装置1を接続し、中押し装置1の後部に後続推進管9を接続しながら、推進を行う。前方推進管8は誘導管として機能し、推進後は撤去される。撤去工のとき、図20に示す通り、掘進機7を撤去した後、元押し装置12により推進を行い、前方推進管8と中押し装置1を押し出して撤去する。掘進機7と中押し装置1の間に前方推進管8を接続するのは、推力の問題を解決し、前記工法よりも、より長距離の推進を可能とする。
【0045】
さらに、図22に示す通り、別の推進工法を説明する。本工法は、到達立坑16と発進立坑13との間に中間立坑200が形成される場合に適用される。図15〜図18の工法とは、中間立坑200の有無が相違するだけであるので、共通する内容の説明は、図15〜図18の説明を援用する。掘進機7が到達立坑16で回収され、中押し装置1が中間立坑200で回収される点が図16〜図17に示す工法と相違する。他の点は共通である。中間立坑200の位置は、事前に判明しているので、最初から、中間立坑200の所定の位置で止まる位置に、中押し装置1を入れ込んで前方推進管8と後続推進管9とに接続しておく。これにより、中間立坑200がある工事に関しても、適用でき、撤去工用の坑としても中間立坑200を有効に活用できるので、中押し装置1の適用範囲の拡大が可能である。
【0046】
なお、適用管種は、ヒューム管、塩ビ管、鋼管、陶管、レジコン管等である。適用管径は、概ねφ150〜φ700mm、管の有効長は任意(例えば800〜3,000mm)、土質は推進後方により任意(例えば、滞水砂層、砂礫層、粘土層、シルト層等)である。例えば、N値はN5〜N20,被水圧はP=0.6〜0.7Kg/cm2、透水係数K=10-2/sec以上、最大礫径30mmで20%未満、礫率20%未満、最大推進距離400m、推進力20ton、元圧9.87MPa、堀進機本体(先導体)重量200Kg(内径250mm)である。
【0047】
以上、本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で多くの技術的な変更を施し得ることは当然である。中押し装置1の接続本数は延長距離に応じて任意数が可能であり、特定数に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
小口径管推進装置による小口径管推進工事等に適用でき、長距離の推進に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】(a)は本発明実施形態の中押し装置1の後部の斜視図(原位置)、(b)は同中押し装置1の後部の斜視図(伸張状態)である。
【図2】中押し装置1の正面図である。
【図3】前側接続リング10の左側面図である。
【図4】中押し装置1が前方推進管8と後続推進管9とに接続された状態(原位置)の中央縦断面図である。
【図5】中押し装置1が前方推進管8と後続推進管9とに接続された状態(伸張位置)の中央縦断面図である。
【図6】(a)は外筒20の左側面図、(b)は同中央縦断図、(c)は同右側面図、(d)(e)は図6(b)の部分拡大図である。
【図7】(a)は外套21の左側面図、(b)は同中央縦断面図である。
【図8】(a)は内側シリンダチューブ3の左側面図、(b)は同中央縦断面図である。
【図9】(a)はサブブロック36の左側面図、(b)は同中央縦断面図である。
【図10】(a)はメインピストン50の中央縦断面図である。
【図11】サブピストン51の中央縦断面図である。
【図12】(a)は前側リング100の中央縦断面図、(b)は同左側面図である。
【図13】(a)は中央リング101の中央縦断面図、(b)は同左側面図である。
【図14】(a)は後側接続リング11の中央縦断面図、(b)は同左側面図である。
【図15】泥水加圧式小口径管推進工法における工程図である。
【図16】推進管推進工を示す部分断面正面図である。
【図17】回収工を示す部分断面正面図である。
【図18】前側接続リング10の撤去工を示す部分断面正面図である。
【図19】別の工法の推進工を示す部分断面正面図である。
【図20】別の工法の回収工(その1)を示す部分断面正面図である。
【図21】別の工法の回収工(その2)を示す部分断面正面図である。
【図22】更に異なる別の工法の回収工を示す部分断面正面図である。
【符号の説明】
【0050】
1…中押し装置 2…外側シリンダチューブ 3…内側シリンダチューブ 4…摺動室
5…ピストン 6…油圧ポート 7…掘進機 8…前方推進管 9…後続推進管
10…前側接続リング 11…後側接続リング 12…元押し装置 13…発進立坑
14…元押し油圧ポンプ 15…中押し油圧ポンプ 16…到達立坑 17…滑材注入口
18…内部スペース 19a…送泥管 19b…排泥管 19c…送泥ポンプ
19d…排泥ポンプ 20…外筒 21…外套 22…接続口 23…接続口
24…摺接凸部 24a,24b…ネジ孔 25…凹溝 26…連結凸部 26a…ボルト
27…凹溝 28…接続口 29…凹溝 30…接続口 31…接続口 32…凸環部
32a…凹溝 33…縦通路 34…横通路 35…パッキン 36…サブブロック
37…接続口 38…凹溝 39a…ネジ孔 39b…肉盛部
40〜42,45,49…Oリング 43,44,46〜48…パッキン
50…メインピストン 51…サブピストン 52…接続口 52a…凹溝
52b…接続口 53…嵌込面 54…凸環部 55…肉盛部 56…凹溝
57,58…接続口 59…凹溝 59a…ネジ孔 59b…ボルト
80…クッション材 81…把持部 90…クッション材 91…把持部
100…前側リング 101…中央リング 102,103…接続口
104a…当接面 104b…突出部 104c…ネジ孔 104d…ボルト
104e…ネジ孔 105…凹溝 106,107…接続口 108a、108b…凹溝
109a,109b…貫通孔 109c…ボルト 109d…ネジ孔 109e…凹溝
110,111…接続口 112…当接部 113…凸環部 114…貫通孔
200…中間立坑

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側シリンダチューブと、該外側シリンダチューブの内側に配置される内側シリンダチューブと、を有するシリンダチューブと、
前記外側シリンダチューブと内側シリンダチューブの間の摺動室を摺動する円筒形のピストンと、
前記摺動室に流体を供給する流体ポートと、を備え、
前記シリンダチューブの掘進機側端に推進管又は掘進機へ軸方向に接続する接続部を備えること、
前記ピストンの元押し装置側端に推進管へ軸方向に接続する接続部を備え、
前記流体ポートから前記摺動室へ流体を給排することにより前記ピストンが軸方向に駆動すること、
を特徴とする中押し装置。
【請求項2】
発進立坑に設置され推進管に推進力を加える元押し装置と、
掘進機の後段又は推進管の間に装着されて、前記掘進機に推進力を加える中押し装置と、を使用して推進管を推進する推進工法において、
請求項1の中押し装置で掘進機又は前側に同軸状に接続された推進管に推進力を加えて掘進機を推進する第1推進ステップと、
前記元押し装置で、前記中押し装置の後側に接続された推進管に推進力を加えて推進する第2推進ステップと、を備え、
前記第1推進ステップ及び第2推進ステップとを交互に繰り返すことを特徴とする推進工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−297823(P2007−297823A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125740(P2006−125740)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(395014703)地建興業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】