説明

中押し配管方法

【課題】簡単な構成で、管路の推進工法における中押し工法を実行できるようにする。
【解決手段】複数の管が接合された管路を、最後端の管に推進力を付与するとともに後側の管から前側の管へ順次推進力を伝達することにより推進させて敷設する。最後端の管よりも前側において前後に隣り合う一方の管12に第1の管体17を接合し、他方の管12に第2の管体18を接合し、第1の管体17と第2の管体18の先端部どうしを管軸方向に距離をおいて配置し、空間を形成する。この空間にジャッキ装置24を配置し、このジャッキ装置24によって、このジャッキ装置24よりも前側の管12に推進力を付与して推進させる。推進後に、ジャッキ装置24を撤去し、続いてジャッキ装置24よりも後側の管路12を推進させて第2の管体18を第1の管体17に接近させて、これら第1の管体17と第2の管体18とを互いに接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中押し配管方法に関し、特に、既設管やシールドなどの既設構造物の内部に新たな管路を敷設するのに適した中押し配管方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既設管やシールドなどの既設構造物の内部に新たな管路を敷設するための工法として、この既設構造物の内部に新管を推進工法で敷設するパイプ・イン・パイプ工法がある。
図4は従来のパイプ・イン・パイプ工法を示す。ここで、1は既設管やシールドなどの既設構造物で、地中において水平方向に敷設されている。この既設構造物1の内部に新管2、2による管路を敷設する場合には、この既設構造物1の長さ方向に距離をおいた一対の位置に発進立坑3と到達立坑4とをそれぞれ地表5から開削し、発進立坑3の内部に挿入ジャッキ6を設置する。そして、発進立坑3の内部に管2、2を搬入し、これらの管2、2どうしを接合したうえで、これらの管2、2の後端部を挿入ジャッキ6で押して推進力を付与することで既設構造物1の内部に送り込む。同様にして複数の新たな管2を順次接合し推進させることで、発進立坑3から到達立坑4にわたって新管2、2、…による管路を敷設することができる。
【0003】
このようなパイプ・イン・パイプ工法において、発進立坑3から到達立坑4までの距離が長い場合には、それに対応した大きな推進力を新管2、2、…に付与することが必要となり、新管2の軸方向の耐力の点で問題が生じることがある。
【0004】
推進工法で管路を敷設するための他の工法として、新管を、上記のような既設構造物ではなく地中に直接推進させる工法がある。この場合も、同様に、推進距離が長くなると管の軸方向の耐力の点で問題が生じる。すなわち、新管の軸方向耐力が、施工可能長を制限しているという問題がある。
【0005】
この問題を解決するために、たとえば特許文献1に記載された中押し工法が知られている。これは、推進させる管路の途中に推進力発生用の中間スリーブを配置することで、管路の長さ方向に沿って推進力の分散を図り、それによって各管に大きな力が作用しないようにしたものである。
【特許文献1】特開平9−4370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の中押し工法に用いられる中間スリーブは、受口管と、この受口管の内部に挿入される挿口管とを用いたテレスコピック構造となっていて、地中への推進時に管内に土砂が入り込まないように構成されている。また受口管の奥部とこの受口管に挿入される挿口管の先端部との間に推進力発生用のジャッキが配置されている。
【0007】
ところが、上記のテレスコピック構造を達成するために装置構成が複雑になってしまう。またジャッキも上記のように受口管の奥部とこの受口管に挿入される挿口管の先端部との間で推進力の伝達を行わなければならず、その推進力伝達機構が複雑になってしまう。
【0008】
そこで本発明は、このような問題点を解決して、簡単な構成で、管路の推進工法における中押し工法を実行できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため本発明は、複数の管が接合された管路を、最後端の管に推進力を付与するとともに後側の管から前側の管へ順次推進力を伝達することにより推進させて敷設するに際し、前記最後端の管よりも前側において前後に隣り合う一方の管に第1の管体を接合するとともに他方の管に第2の管体を接合し、前記第1の管体の先端部と第2の管体の先端部とを管軸方向に距離をおいて配置するとともに、これら第1の管体の先端部と第2の管体の先端部との間にジャッキ装置を配置して、このジャッキ装置によって、このジャッキ装置よりも前側の管に推進力を付与して推進させ、前記ジャッキ装置よりも前側の管路の推進後に、前記ジャッキ装置を撤去し、続いて前記ジャッキ装置よりも後側の管路を推進させて第2の管体を第1の管体に接近させて、これら第1の管体と第2の管体とを互いに接合するものである。
【発明の効果】
【0010】
既設管やシールドなどの既設構造物の内部に新たな管路を推進させて敷設するパイプ・イン・パイプ工法においては、地中を推進させる場合と相違して、管内への土砂の入り込みが生じない、このため、従来のようなテレスコピック構造の中押し機構を用いる必要がなく、上記のように第1の管体の先端部と第2の管体の先端部とを管軸方向に距離をおいて配置することで開放空間を形成し、これら第1の管体の先端部と第2の管体の先端部との間の開放空間にジャッキ装置を配置して、このジャッキ装置よりも前側の管に推進力を付与して推進させることができる。第1の管体と第2の管体との間の推進力の伝達も、たとえば第1の管体の先端部と第2の管体の先端部との間にジャッキを挟み込むようにして行えばよく、そのための構造も複雑なものは必要ない。したがって本発明によれば、簡単な構成で、管路の推進工法における中押し工法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1において、1は地中に埋設された既設構造物、3は発進立坑、4は到達立坑、5は地表、6は挿入ジャッキで、これらは図4に示したものと同じ構成である。
12は、既設構造物1の内部に敷設すべき管路を構成する新管で、ダクタイル鋳鉄管によって構成され、その一端に受口13を有するとともに他端に挿口14を有し、推進方向に沿って前後に隣り合う一方の管12の受口13に他方の管12の挿口14が挿入されることで管12、12どうしが接合されている。
【0012】
複数の管12、12、…が接合され推進されることで新たな管路が敷設されるが、最後端の管よりも前側において前後に隣り合う管12、12どうしの間に、中押し機構15が設けられている。図示のものでは、前側の管12の受口13に後側の管12の挿口14が挿入されて受口挿口間で推進力が伝達されるように構成されているが、中押し機構15は、後側の管12の挿口14に接合される両受け管16を備えている。この両受け管16は、その両端に受口13、13がそれぞれ形成されたものであり、したがって前側の管12の後端の受口13と両受け管16の前端の受口13とが向かい合って配置されることになる。
【0013】
図1および図2に示すように、前側の管12の後端の受口13には第1の管体17が接合され、また両受け管16の前端の受口13には第2の管体18が接合されている。第1の管体17および第2の管体18は、いずれも、鋼管や鋳鉄管などの、新管12のための推進力を伝達可能なように十分な軸方向耐力を備えた管材料によって形成され、その一端には受口13に挿入可能な挿口19がそれぞれ形成されている。なお、簡単のために図2においては図示を省略するが、管12が上水道などの流体の輸送に用いられるものである場合は、受口13と挿口19との間にシール材を設けることが必須の要件である。また、受口13と挿口19との間に離脱防止機能や耐震機能を付与することが好ましい。
【0014】
第1の管体17および第2の管体18の挿口19の先端面は、いずれも、受口13の奥端面20に接するように構成され、これによって受口13と挿口19との間で推進力を伝達可能とされている。
【0015】
第1の管体17および第2の管体18における、挿口19が形成された一端とは反対側の他端には、環状の支圧フランジ21が設けられている。この支圧フランジ21は、第1の管体17に設けられたもののように管体17、18と一体に形成されたものであっても差支えないし、第2の管体18に設けられたもののように管体17、18と別体に形成されたものであっても差支えない。別体の支圧フランジ21は、図示の例では、フランジ部22と、第2の管体18に同心状態で内ばめされる筒部23とを備えた構成であり、筒部23が第2の管体18にはめ込み支持され、かつフランジ部22が第2の管体18の端面に接触した状態で用いられる。
【0016】
第1の管体17の支圧フランジ21と、第2の管体の支圧フランジ21のフランジ部22との間には、周方向に沿った複数の位置において、管軸方向に伸縮する中押しジャッキ24がわたされている。
【0017】
既設構造物1の内部に、新管12、12、…にて構成された管路を敷設する際には、図1に示すように、発進立坑3の内部に管12を搬入し、この管12を挿入ジャッキ6で押すことによりこの管12に推進力を付与して、この管12を既設構造物1の内部に挿入する。続いて、この管12に次の管12を接合したうえで、同様に挿入ジャッキ6による押し込みを行う。以下、同様に次の管12を順次接合し推進力を付与して既設構造物1の内部に向けて推進させる。
【0018】
このとき、図1に示すように、推進すべき管路における適宜の位置に中押し機構15を設ける。中押し機構15における中押しジャッキ24を伸長させれば、この中押しジャッキ24よりも後側の部分が挿入ジャッキ6によって支持された状態で、この中押しジャッキ24よりも前側の部分の管12、…が前方へ推進される。そして、このときは、各管12には中押しジャッキ24よりも前側の部分の管12、…を前方へ推進させるだけの軸方向力が作用するだけであり、このため管路の全長を推進させる場合よりも小さな軸方向力しか作用しない。
【0019】
中押しジャッキ24よりも前側の部分の管12、…を前方へ推進させたなら、次に、挿入ジャッキ6を伸長させ、かつこれに同期して中押しジャッキ24を収縮させる。これにより、中押しジャッキ24よりも後側の、この中押しジャッキ24と挿入ジャッキ6との間の部分の管12、…のみを推進させることができる。この場合も、管12には、中押しジャッキ24と挿入ジャッキ6との間の部分の管12を推進させるだけの軸方向力が作用するだけであり、このため管路の全長を推進させる場合よりも小さな軸方向力しか作用しない。
【0020】
上記の動作を繰り返すことによって、各管12に作用する軸方向力を低減させた状態で、既設構造物1の内部に、新管12を用いた管路を敷設することができる。中押し機構15を、敷設すべき管路の長さ方向に沿った複数箇所に設置すれば、より長距離の施工を行うことが可能となる。
【0021】
このようにすることで、管12には大きな軸方向耐力を付与する必要がなく、このため管材料費を低減することができる。また施工可能延長を増大させることができ、このため短い距離ごとに立坑を開削する必要がないため、土木工事の工数を低減することができる。
【0022】
既設構造物1が鞘管であり、この鞘管どうしの継手部に屈曲が存在する場合には、その部分に新管を推進させると、新管どうしの継手部もそれに応じて屈曲することになる。すると、この屈曲部で隣り合う新管どうしの間に片当たりが発生し、管の全周にわたって均等な推進力を伝達させることができずに、応力集中が生じる。このため、新管における軸方向の許容耐力が減少することになり、場合によっては管材料にリブなどの補強を施すことが必要になる。しかし、上記の中押し機構15を設けて、この中押し機構15における周方向に沿った複数の位置に中押しジャッキ24を設けることで、新管どうしの継手部が屈曲した場合であっても、各中押しジャッキ24の伸長量を互いに調整することで、周方向にわたって均等な推進力を作用させることができる。これにより、片当たりの発生を防止することができて、新管の耐力を向上させるための補強を不要とすることができる。
【0023】
推進によって最先端の新管12が到達立坑4に到着したなら、図2に示す状態から中押しジャッキ24を撤去するとともに、必要に応じて支圧フランジ21を撤去する。このとき、第2の管体18に設けられている支圧フランジ21のように第2の管体18と別体に構成されたものであると、その撤去作業を容易に行うことができる。これにより、中押しジャッキ24が存在していた部分に空間が形成されるが、次に挿入ジャッキ6を作用させて、この空間よりも後側に存在している管21を推進させて、この空間を詰める。すなわち、第1の管体17と第2の管体18における前述の他端どうしを近接させて、互いに接合させる。
【0024】
この接合に際しては、たとえば図3において実線で示すように、第1の管体17と第2の管体18とを互いに溶接することができる。25はその溶接接合部である。あるいは、図3において仮想線で示すように、内面フランジなどの適当な内面継手26を用いることもできる。上記以外の他の接合方法を適用することも、もちろん可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態の中押し配管方法を示す図である。
【図2】図1における要部の拡大断面図である。
【図3】図2に示す部分の工事完了状態を示す図である。
【図4】従来のパイプ・イン・パイプ工法を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1 既設構造物
6 挿入ジャッキ
12 新管
15 中押し機構
17 第1の管体
18 第2の管体
24 中押しジャッキ
25 溶接接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の管が接合された管路を、最後端の管に推進力を付与するとともに後側の管から前側の管へ順次推進力を伝達することにより推進させて敷設するための方法であって、前記最後端の管よりも前側において前後に隣り合う一方の管に第1の管体を接合するとともに他方の管に第2の管体を接合し、前記第1の管体の先端部と第2の管体の先端部とを管軸方向に距離をおいて配置するとともに、これら第1の管体の先端部と第2の管体の先端部との間にジャッキ装置を配置して、このジャッキ装置によって、このジャッキ装置よりも前側の管に推進力を付与して推進させ、前記ジャッキ装置よりも前側の管路の推進後に、前記ジャッキ装置を撤去し、続いて前記ジャッキ装置よりも後側の管路を推進させて第2の管体を第1の管体に接近させて、これら第1の管体と第2の管体とを互いに接合することを特徴とする中押し配管方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−121877(P2008−121877A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309757(P2006−309757)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】