説明

中空柱の補強構造

【課題】視認性を確保しながら強固に補強し得る中空柱の補強構造を提供する。
【解決手段】中空柱1の下部の外周部1aの上に接着剤の含浸したアラミドシート5を巻回して、中空柱1の下部を補強し、このアラミドシート5の上にアラミドシート5を浸透して出てきた接着剤7の層が形成され、この接着剤7の上に反射塗料9を塗布し、この反射塗料9の上にガラスビーズ3を多数付着することで、中空柱1を補強するとともに、中空柱1の視認性を向上している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下端部が地中に埋設されて地上に立設された例えば交通標識用ポールのような鋼管柱などからなる中空柱を補強する中空柱の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、交通標識用ポールのような鋼管柱などからなる中空柱は、通常、その基端部の所定長部分が地中に埋設されて地上に立設される。このような中空柱は、内部が空洞、すなわち中空の筒状体である。
【0003】
この中空柱は、基端部の所定長部分が地中に埋設されて確実に固定されているが、地面から露出した下部、詳しくは地中に埋設された地中部分と地上に立設された地上部分との境の地際に近い下部が他の部分に比較して傷みやすい傾向にある。
【0004】
また、このような中空柱である交通標識用ポールは、車両の運転者が視認しやすいように道路際や車両用道路と歩行者用道路との境界などに一般に設置されているが、夜間などにおいては視認性が十分に確保出来ないおそれがある場合もあった。
【0005】
視認性を高めるために、ポールに再帰反射テープを巻回したり、球状ガラス粒子と高反射性球状粒子を含有する樹脂からなる反射塗装層をポールの外周面に形成する方法が従来提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3925814号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に記載されている方法は、ある程度の視認性を得ることはできるが、対象とするポールが柔軟性を有する熱可塑性ポリウレタンエラストマーで構成され、車両などが衝突しても、屈曲するだけで、また元の形に復元し得るものであり、衝突による破損などは考慮していない。
【0008】
従って、例えば鋼管などで構成された中空柱において、視認性も確保しながら、特に下部がある程度の強度を有するように補強することが要望されている。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、視認性を確保しながら強固に補強し得る中空柱の補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するため、請求項1記載の中空柱の補強構造は、下端部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱を補強する中空柱の補強構造であって、中空柱の地面から露出した下部の外周に巻回されるアラミドシートと、この巻回されたアラミドシートの上に付着され、外部からの光を再帰反射するガラスビーズとを有することを要旨とする。
【0011】
請求項1記載の中空柱の補強構造では、中空柱の下部の外周にアラミドシートを巻回し、この巻回されたアラミドシートの上にガラスビーズを付着し、外部からの光を再帰反射するため、中空柱は下部がアラミドシートで補強されるとともに、ガラスビーズによる光の再帰反射により中空柱に対する視認性を向上でき、中空柱を交通標識用ポールに適用した場合には、アラミドシートによる補強とガラスビーズによる視認性の向上の相乗効果により交通標識用ポールの耐久性を向上し、交通の安全性を著しく向上することができる。
【0012】
請求項2記載の中空柱の補強構造は、下端部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱を補強する中空柱の補強構造であって、中空柱の地面から露出した下部の外周に巻回されるアラミドシートと、このアラミドシートに含浸した接着剤と、この接着剤の含浸したアラミドシートの上に付着され、外部からの光を再帰反射するガラスビーズとを有することを要旨とする。
【0013】
請求項2記載の中空柱の補強構造では、中空柱の下部の外周に接着剤の含浸したアラミドシートを巻回し、このアラミドシートの上にガラスビーズを付着し、外部からの光を再帰反射するため、中空柱は下部がアラミドシートで補強されるとともに、ガラスビーズによる光の再帰反射により中空柱に対する視認性を向上でき、中空柱を交通標識用ポールに適用した場合には、アラミドシートによる補強とガラスビーズによる視認性の向上の相乗効果により交通標識用ポールの耐久性を向上し、交通の安全性を著しく向上することができる。
【0014】
請求項3記載の中空柱の補強構造は、下端部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱を補強する中空柱の補強構造であって、中空柱の地面から露出した下部の外周に巻回されるアラミドシートと、このアラミドシートに含浸した接着剤と、この接着剤の含浸したアラミドシートの上に塗布される反射塗料と、この反射塗料の上に付着され、外部からの光を再帰反射するガラスビーズとを有することを要旨とする。
【0015】
請求項3記載の中空柱の補強構造では、中空柱の下部の外周に接着剤の含浸したアラミドシートを巻回し、このアラミドシートの上に反射塗料を塗布し、この反射塗料の上にガラスビーズを付着し、外部からの光を再帰反射するため、中空柱は下部がアラミドシートで補強されるとともに、ガラスビーズによる光の再帰反射により中空柱に対する視認性を向上でき、中空柱を交通標識用ポールに適用した場合には、アラミドシートによる補強とガラスビーズによる視認性の向上の相乗効果により交通標識用ポールの耐久性を向上し、交通の安全性を著しく向上することができる。
【0016】
請求項4記載の中空柱の補強構造は、前記ガラスビーズの間に付着され、ガラスビーズの間を埋める砂を有することを要旨とする。
【0017】
請求項4記載の中空柱の補強構造にあっては、ガラスビーズの間に砂を付着させて、ガラスビーズの間を砂で埋めているため、中空柱の下部に設けられた例えばアラミドシート、接着、反射塗料などの各部材の耐候性を向上し、アラこれらの各部材を太陽光、雨、風、雪などにより劣化することを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、中空柱の下部の外周にアラミドシートを巻回し、この巻回されたアラミドシートの上にガラスビーズを付着し、外部からの光を再帰反射するので、中空柱は下部がアラミドシートで補強されるとともに、ガラスビーズによる光の再帰反射により中空柱に対する視認性を向上でき、中空柱を交通標識用ポールに適用した場合には、アラミドシートによる補強とガラスビーズによる視認性の向上の相乗効果により交通標識用ポールの耐久性を向上し、交通の安全性を著しく向上することができる。
【0019】
また、本発明によれば、ガラスビーズの間に砂を付着させて、ガラスビーズの間を砂で埋めているので、中空柱の下部に設けられた、例えばアラミドシート、接着、反射塗料などの各部材の耐候性を向上し、アラこれらの各部材を太陽光、雨、風、雪などにより劣化することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係わる中空柱の補強構造を下部に適用された例えば交通標識用ポールなどの中空柱を示す図である。
【図2】図1に示す中空柱の補強構造の一部の断面構造を示す部分断面図である。
【図3】図1に示す中空柱の補強構造に使用されているガラスビーズによる光の再帰反射を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と称する)を説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係わる中空柱の補強構造を下部に適用された例えば交通標識用ポールなどの中空柱を示す図である。同図に示す中空柱1は、下端部が地中に埋設されて地上に立設されているが、その地面から露出した下部の表面には、中空柱1の視認性を向上するための再帰反射を行うガラスビーズ3が多数付着している。なお、このガラスビーズ3が付着されている中空柱1の長さ、すなわち地面からの長さは、例えば約18cm程度である。
【0023】
更に詳しくは、図2に示す中空柱1の断面構造の一部から分かるように、中空柱1は、その下部を補強するように下部の外周部1aの上に接着剤を含浸したアラミドシート5が巻回され、このアラミドシート5の上にアラミドシート5を浸透して出てきた接着剤7が層状に形成され、この接着剤7の上に反射塗料9が塗布され、この反射塗料9の上にガラスビーズ3が多数付着されている。
【0024】
なお、接着剤7は、アラミドシート5の上に塗布して接着剤7の層として形成されたものでなく、アラミドシート5に含浸した接着剤7がアラミドシート5の上に浸み出てきたものである。すなわち、アラミドシート5は、予め接着剤7を含浸されているものであり、この接着剤7が予め含浸したアラミドシート5を中空柱1の外周に巻回することにより、アラミドシート5は、中空柱1の外周に確実に固着されるとともに、アラミドシート5に含浸した接着剤7が図2のようにアラミドシート5の上に浸み出て、接着剤7が層状に形成されるものである。
【0025】
上述したように、接着剤7の含浸したアラミドシート5を中空柱1の外周に巻回する代わりに、まず最初に、中空柱1の外周に接着剤7を直接塗布し、それからこの接着剤7の上にアラミドシート5を巻回してもよく、この場合にもアラミドシート5は中空柱1の外周に確実に固着されるとともに、中空柱1の外周に直接塗布された接着剤7がこの上に巻回されたアラミドシート5を浸透して、アラミドシート5の上に出て、図2に示すように、アラミドシート5の上に接着剤7の層のように形成される。
【0026】
また、接着剤7でアラミドシート5を固着する別の方法としては、まず最初に、中空柱1の外周にアラミドシート5を直接巻回し、この巻回されたアラミドシート5の上に接着剤7を塗布してもよく、この場合には、アラミドシート5の上に塗布された接着剤7がアラミドシート5を内側に浸透して中空柱1の外周に至り、すなわちアラミドシート5と中空柱1の外周との間に至り、これによりアラミドシート5は中空柱1の外周に固着される。なお、アラミドシート5の上に塗布された接着剤7は、そのまま接着剤7の層として図2に示すように形成されることは言うまでもないことである。
【0027】
反射塗料9の上に付着したガラスビーズ3は、反射塗料9の上に緊密に密集して全面的に付着するものでなく、適度にばらつき間隔があいて付着しているものであり、各ガラスビーズ3の間には適当な隙間があるので、このガラスビーズ3の間の隙間に図2に示すように砂11を付着させ、これにより中空柱1の下部に設けられた各部材、すなわちアラミドシート5、接着剤7、反射塗料9などの耐候性を向上している。この耐候性とは、アラミドシート5、接着剤7、反射塗料9などの各部材が太陽光、雨、風、雪などにより劣化することを防止し得るものである。
【0028】
以上のように構成される補強構造を有する中空柱1は、まずその下部にアラミドシート5が巻回されているので、この下部の強度を著しく向上することができる。従って、このようにアラミドシート5で補強された中空柱1を交通標識用ポールに適用した場合には、この交通標識用ポールの下部に例えば車両などが当たったとしても、交通標識用ポールが簡単に破損することがない。
【0029】
また、上述したように、中空柱1の下部の外表面に塗布された反射塗料9の上に再帰反射を行う多数のガラスビーズ3を付着させることにより、このガラスビーズ3に入射した外部からの光は、図3に示すように、ガラスビーズ3の底で入射方向と同じ方向に再帰反射される。従って、このように下部の外表面にガラスビーズ3を付着された中空柱1を交通標識用ポールに適用した場合には、夜間などにおいて交通標識用ポールの下部に車両のヘッドライトが当たって、ガラスビーズ3に入射すると、このガラスビーズ3からの再帰反射光が車両の運転者に向かって進み、運転者によって確実に視認されるため、運転者は交通標識用ポールの存在を知ることができ、車両が交通標識用ポールに当たることを防止できるとともに、その交通標識に基づき安全な運転を行うことができる。
【0030】
すなわち、本実施形態の中空柱の補強構造を適用した中空柱1においては、アラミドシート5による補強とガラスビーズ3による光の再帰反射を利用した視認性の向上の相乗効果により、中空柱1への外部からの衝突を防止しながら中空柱1の補強を向上でき、この中空柱1を交通標識用ポールに適用した場合には、交通の安全性を著しく向上することができる。
【0031】
なお、上記実施形態では、反射塗料9の上にガラスビーズ3を付着して、再帰反射を行うようにしているが、本発明はこれに限定されず、例えば各ガラスビーズ3そのものの半分に反射塗料を塗布し、このガラスビーズ3をアラミドシート5の上にランダムに付着させてもよい。各ガラスビーズ3そのものの半分に反射塗料を塗布するとは、ガラスビーズ3の球状体の半分、すなわち半球部にのみ反射塗料を塗布するものであり、これは多数のガラスビーズ3を平面上に固定的に並べ、この並んだ多数のガラスビーズ3の上方からのみスプレーにより反射塗料を吹き付けることによりガラスビーズ3の球状体の半分にのみ反射塗料を塗布することができる。また、ガラスビーズ3をアラミドシート5の上にランダムに付着させると、ガラスビーズ3の反射塗料を塗布されていない球状体の半分、すなわち反射塗料を塗布されてなく、光が入射し得る球状体の半分が種々の方向をむき、そのうちの例えば半数程度が外方を向いて、外部からの光を再帰反射し、上述した機能を達成することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 中空柱
3 ガラスビーズ
5 アラミドシート
7 接着剤
11 砂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱を補強する中空柱の補強構造であって、
中空柱の地面から露出した下部の外周に巻回されるアラミドシートと、
この巻回されたアラミドシートの上に付着され、外部からの光を再帰反射するガラスビーズと
を有することを特徴とする中空柱の補強構造。
【請求項2】
下端部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱を補強する中空柱の補強構造であって、
中空柱の地面から露出した下部の外周に巻回されるアラミドシートと、
このアラミドシートに含浸した接着剤と、
この接着剤の含浸したアラミドシートの上に付着され、外部からの光を再帰反射するガラスビーズと
を有することを特徴とする中空柱の補強構造。
【請求項3】
下端部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱を補強する中空柱の補強構造であって、
中空柱の地面から露出した下部の外周に巻回されるアラミドシートと、
このアラミドシートに含浸した接着剤と、
この接着剤の含浸したアラミドシートの上に塗布される反射塗料と、
この反射塗料の上に付着され、外部からの光を再帰反射するガラスビーズと
を有することを特徴とする中空柱の補強構造。
【請求項4】
前記ガラスビーズの間に付着され、ガラスビーズの間を埋める砂を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の中空柱の補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−231579(P2011−231579A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105112(P2010−105112)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(504239984)
【Fターム(参考)】