説明

中空糸膜モジュール及びそれを用いた懸濁水の浄化方法

【課題】懸濁水のろ過後に行われる物理洗浄工程において、懸濁水中に含まれる無機成分を含んだ懸濁物質を介して、膜外表面同士が擦れ、表面開孔の閉塞が生ずるのを防止し、安定したろ過を行える浄化方法、その方法に使用する中空糸膜の束、その膜束を収納したモジュールを提供する。
【解決手段】外径が0.7mm以上2.5mm以下であるウェーブを有した中空糸膜41の多数を引き揃えた中空糸膜束であって、該中空糸膜41の偏平率が0.9以上1.0以下でありかつ、下記式で示される嵩高度が1.45以上2.00未満であることを特徴とする中空糸膜束。ここで、嵩高度=(S1/S2)であり、S1は膜束を構成する中空糸膜41のうち任意の600本の小束の、2.9Nの荷重下で計測される束周長から算出する断面積をいい、S2は、該中空糸膜41の外径換算断面積の600倍をいう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーブを有する中空糸膜モジュールを用いて懸濁水を浄化する方法に関する。特に、ウェーブを有する中空糸膜モジュールを用いて、河川水、湖沼水、伏流水等の上水、工業用水、下水、下水二次処理水、工業排水、家庭排水、し尿、海水などの懸濁水を浄化する方法に関する。
更に、本発明は、ウェーブを有する中空糸膜の束、その製法、それが収納された中空糸膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中空糸膜を用いて、上水、工業用水、下水、工業排水、家庭排水、し尿、海水などの懸濁水を浄化する方法が知られている。殊に、中空糸膜の外表面側から内表面側へろ過する、いわゆる外圧式ろ過による浄化方法は、中空糸膜の内表面側から外表面側へろ過する、いわゆる内圧式ろ過による浄化方法に比べて、単位容積当たりのろ過に寄与する膜面積が大きく確保可能であるため、造水コストのミニマム化が要求される分野、例えば、上水道を作るための除濁の様な水処理分野に採用されている。
【0003】
上記中空糸膜を用いて懸濁水を浄化する方法においては、懸濁水中に含まれる、使用される膜の孔径以上の大きさの懸濁物質や有機物が膜表面で阻止され、いわゆる濃度分極やケーク層を形成する。また、懸濁水中の有機物は膜を目詰まりしたり、或いは膜内部の網状組織に吸着する。その結果、原水をろ過した際のろ過流束は、清澄水をろ過した際のそれに比べて数分の1から数十分の1にまで低下していく。そのため、ろ過流束をより安定に得るように、ろ過後、定期的に物理洗浄を実施する浄化方法も知られている。
【0004】
具体的には、一定時間ろ過したのちに、ろ過水の一部を使用して、膜のろ過水側から原水側へと、ろ過とは逆方向に水を流す、逆流洗浄(以後、逆洗と略す)や、水で満たされた状態の中空糸膜モジュールの下方から上方へと圧縮気体および/または圧縮空気と原水を供給する事により、糸を揺り動かし、中空糸膜間に蓄積した懸濁物質を系外へ排出するエアバブリング等を行うことが知られている。例えば、特開昭60−19002号公報には、逆洗と共に、中空糸膜収納容器内の中空糸膜の側方または下方に気泡発生ノズルを配置し、このノズルから気体を噴出させる方法が開示されている。
【0005】
一方、かかる浄化方法に用いられる中空糸膜としては、逆浸透膜、限外濾過膜、精密濾過膜、ガス分離膜、ナノフィルター、脱気膜が知られている。これらは膜単独ではなく、モジュールケースにその多数本を収納し、少なくともその一端をエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂により封止した後、接着固定部を切断して膜の中空部を開口させた中空糸膜モジュールとして使用される。そして、さまざまな流体処理分野、例えば、逆浸透膜モジュールであれば海水・カン水の脱塩、超純水の1次純水の製造、果汁・牛乳の濃縮;限外濾過膜モジュールであれば電着塗料の回収、パイロジェンフリー水の製造、排水処理、酵素の濃縮、超純水のファイナルフィルター、上・下水の除濁;精密濾過膜モジュールであれば上・下水の除濁、復水処理、発酵液の除菌・清澄化、薬液の脱微粒子;ガス分離膜モジュールであれば水蒸気除去、水素濃縮、酸素濃縮・富化、窒素濃縮・富化、二酸化炭素濃縮;ナノフィルターモジュールであれば農薬の除去、ハロゲン化有機化合物の除去;脱気膜モジュールであれば水及び水溶液中の脱気に使用されている。これまで、これら中空糸膜自体に関する検討もなされている。例えば、特開昭64−22308号公報では、モジュールの中心部に向かう原水の流れを妨げるような、中空糸相互の密着を防止し、モジュール内に配置されたほとんど全ての中空糸を原水のろ過に有効に活用するために、従来のストレートタイプの中空糸モジュールのかわりに、少なくとも一部に波状、螺旋状などの縮れを有する中空糸を配置した外圧型ろ過タイプの中空糸モジュールを使用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−19002号公報
【特許文献2】特開昭64−22308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、安定したろ過が行える浄化方法について検討を進めてきた。
特に、無機成分を含有する微粒子を含む懸濁水を外圧ろ過方法により浄化する場合、逆洗、エアバブリング等の物理洗浄工程を組み込んだ浄化方法では、中空糸膜表面の損傷が著しいことに着目し、検討を進めてきた。
その結果、中空糸膜間に蓄積する懸濁物質に無機成分を含む濁質が含まれていると、物理洗浄工程の際に、該懸濁物質を介して中空糸膜の外表面同士が擦れ、膜表面の開孔が閉塞し、ろ過運転の安定性が損なわれてしまうことを見出した。さらに、上記現象が継続すると、膜の破損にいたる可能性があることも見出した。
【0008】
そして、鋭意検討を重ねた結果、特定のウェーブ、太さ、更には嵩高度を有する中空糸膜束を使用することにより、前記物理洗浄工程における無機成分による膜表面の損傷を予想外に低減でき、安定したろ過運転を行える浄化方法を提供することに成功した。
また、製膜原液を押し出したのち、冷却・固化または凝固させる中空糸膜の製造方法において、特定条件下で脈動流を中空糸状物に接触させることによって、中空糸状物を揺れた状態で冷却・固化または凝固させることにより、前記特定のウェーブ、太さ、更には嵩高さを有する中空糸膜束を効率よく製造することに成功したものである。
【0009】
すなわち、本発明の目的は、懸濁水のろ過後に行われる物理洗浄工程において、懸濁水中に含まれる無機成分を含んだ懸濁物質を介して、膜外表面同士が擦れ、表面開孔の閉塞が生ずるのを防止し、安定したろ過を行える浄化方法を提供することである。また、その方法に使用する中空糸膜の束、その膜束の製法、その膜束を収納したモジュールを提供することにある。
本発明の他の目的は、中空糸膜表面を損傷することなく、中空糸膜間に蓄積した懸濁物質の物理洗浄排出性を向上し、安定したろ過を行える浄化方法を提供することである。また、その方法に使用する中空糸膜の束、その膜束の製法、その膜束を収納したモジュールを提供することである。
物理洗浄が不十分であると、懸濁物質が中空糸膜束中に蓄積し、これらにより中空糸膜束が棒状に固着化することがある。このような場合は、原水が該膜束内に供給されなくなり、ろ過水採水量の著しい低下をきたす。さらに、中空糸膜束が棒状に固着化した状態のままで物理洗浄を施すと、中空糸膜の横方向への過剰な外力により、中空糸膜が破損するおそれがある。本発明はかかる課題をも解決するものである。
【0010】
本発明の別の目的は、モジュールケースへ接着固定する際、使用する接着剤の硬化前初期粘度が高い場合や径が大きな大型モジュールケースへ接着固定する場合であっても、接着固定時の不良発生を低減できる中空糸膜束、その製法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、下記手段によって達成される。
1.外径が0.7mm以上2.5mm以下であるウェーブを有した中空糸膜の多数を引き揃えた中空糸膜束であって、該中空糸膜の偏平率が0.9以上1.0以下でありかつ、下記式で示される嵩高度が1.45以上2.00未満であることを特徴とする中空糸膜束。
ここで、嵩高度=(S1/S2)であり、S1は膜束を構成する中空糸膜のうち任意の600本の小束の、2.9Nの荷重下で計測される束周長から算出する断面積をいい、S2は、該中空糸膜の外径換算断面積の600倍をいう。
2.前記外径が1.0mm以上2.5mm以下であることを特徴とする、1.に記載の中空糸膜束。
3.前記偏平率が0.95以上1.0以下であることを特徴とする1.又は2.に記載の中空糸膜束。
4.製膜原液を2重紡口から中空糸状に押し出して中空糸状物を得る工程、該中空状物を冷却・固化又は凝固させて中空糸膜を得る工程を含む製造方法により得られる中空糸膜束であって、前記冷却・固化又は凝固工程に先立ち、或いは前記冷却・固化又は凝固工程の間に該中空状物に脈動流を接触させることにより得られた中空糸膜を多数本引き揃えることにより得られるウェーブが付与された中空糸膜束。
5.前記中空糸膜の偏平率が0.8以上1.0以下であることを特徴とする4.に記載の中空糸膜束。
6.前記中空糸膜の外径が0.7mm以上2.5mm以下であることを特徴とする4.又は5.に記載の中空糸膜束。
7.1.〜6.の何れか一項に記載の中空糸膜束により構成され、前記中空糸膜が多数本引き揃えて35%以上55%以下の充填率で充填され、少なくとも一方の端部が封止・固定された中空糸膜モジュール。
8.無機成分を含有する微粒子を含む懸濁水を、7.に記載の中空糸膜モジュールを用いて浄化することを特徴とする、懸濁水の浄化方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
〈浄化方法〉 本発明の浄化方法は、無機成分を含有する微粒子を含む懸濁水を、外径0.5mm以上3.1mm以下で、ウェーブを有する中空糸膜の外周側から供給してろ過した後、該中空糸膜を物理洗浄することを特徴とする懸濁水の浄化方法である。
ろ過方式は、供給原水の全量を濾水として取り出す方式である、全量ろ過方式でも、供給原水の一部を濃縮水として膜モジュール系外へ取り出す方式である、クロスフローろ過方式でも良い。また、膜外表面側から供給原水をポンプ等により加圧して濾水を得る、加圧ろ過方式でも、原水タンク或いは原水ピット内に膜モジュールを浸漬し、中空糸膜の内表面側を減圧することにより濾水を得る方式である、陰圧ろ過方式でも良いが、加圧ろ過方式がより、高いろ過流束を得られるため好ましい。
【0013】
ろ過の一例を図1に示す。図1において、原水(懸濁水)(1)は、循環タンク(2)を経て原水供給ポンプ(3)により、中空糸膜モジュール(4)へ圧送される。原水中の微粒子は中空系膜の外表面で捕捉され、得られたろ過水は、ろ過水タンク(5)に導入され、そこで貯蔵される。
原水は外径0.5mm以上3.1mm以下で、ウェーブを有する中空糸膜の外表面側から供給される。中空糸膜の外径は、膜モジュールの有効長や設計濾水量等によっても異なるが、中空部の濾水の圧力損失等により、0.5mm以上3.1mm以下であることが必要である。より好ましくは、0.7mm以上2.5mm以下、更に好ましくは1.0mm以上2.5mm以下である。
本発明では、ウェーブを有する中空糸膜を長手方向に引き揃えて集積することにより、モジュール内の中空糸膜が嵩高い状態でモジュールに配置される。それ故、中空糸膜同士の接触は概ね点接触に留まり、懸濁物質を介した擦れが発生しにくい為に、膜外表面開孔の閉塞が発生しにくくなり、安定なろ過運転が可能となる。また、同じ理由で、中空糸膜束内部に懸濁物質が蓄積しにくく、たとえ一旦蓄積されたとしても、逆洗、エアバブリング、フラッシング等の物理洗浄工程を行う事により、容易に排出されるので、安定なろ過運転が長期に渡り、可能となる。更に、後述のとおり、ウェーブを有する中空糸膜は、中空糸膜束としたときの後述の嵩高度が1.45〜2.00であることが好ましい。
【0014】
原水は、無機成分を含有する微粒子を含む懸濁水であれば特に限定はなく、河川水、湖沼水、地下水、貯水、下水2次処理水、工場排水、下水などが挙げられる。無機成分を含有する微粒子とは、懸濁水中の濁質成分であり、鉄、マンガン、アルミニウム、シリコン等の金属およびその酸化物の単独および混合物、および/または、それらが有機物、例えば、フミン酸、フルボ酸等により凝集し、粒子化したものを指す。該微粒子は、大きさが0.1μm以上500μm以下のものを含む。中空糸膜モジュールに導入される原水が河川水等のように500μmを超える粒径の粒子を含む場合、通常、スクリーンメッシュ等による前処理を行い、500μmを超える様な微粒子が膜モジュールへ供給されない様にする。微粒子の粒径は、レーザー回折/散乱式の粒度分布測定装置(「LA−910」(商品名)、堀場製作所社製)により、測定した値である。
【0015】
本発明の浄化方法は、ろ過中に膜表面に蓄積した懸濁物質の粒径が大きく、膜表面に蓄積する量が多い場合に特に有用である。これらの場合、物理洗浄時における懸濁物質による膜表面の損傷が特に深刻となるからである。
ろ過水量、ろ過時間は、原水(懸濁水)の濁度に応じて適宜調整する。濁度の高い原水であるほど、ろ過水量を低く抑えるか、物理洗浄を行うまでの時間を短くする必要がある。また、ろ過水量が大きいほど、物理洗浄を行うまでの時間を短くする必要がある。特に、中空糸膜間に蓄積する濁質成分の固着を防止する点から、下記式で表される蓄積濁質量が、0.0005以上10以下、更には0.01以上10以下となるようにろ過時間を設定することが好ましい。蓄積濁質量はろ過行程で単位膜表面に蓄積する懸濁物質の量の指標であり、次の式で定義される。
蓄積濁質量 =(原水の濁度(度))×(ろ過工程時間内に膜を透過する総ろ過水量(m))/(膜表面積(m))
上記式中の原水の濁度は、日間平均濁度であり、JIS K0101 9.2に準拠して複数日測定し、平均した値である。
【0016】
本発明の浄化方法においては、上記ろ過に引き続き、逆洗、エアバブリング、フラッシング等の物理洗浄を行う。
逆洗とは、懸濁水をろ過した、ろ過水の一部および/または圧縮性気体を中空糸膜のろ過水側(外圧式ろ過の場合では、内表面側)から原水側(外圧式ろ過の場合では、外表面側)へと流し、定常状態のろ過とは逆方向に液体および/または気体の流れを発生させる操作を指す。例えば、図1においては、ろ過水タンク(5)中のろ過水を逆洗ポンプ(6)を用いて中空糸膜モジュール(4)に送ることによって洗浄(逆洗)が行われる。
【0017】
ろ過工程、逆洗工程それぞれの工程に要する時間は、原水の水質や設定ろ過水量により、適宜選択できる。逆洗工程の時間はろ過工程時間の1/10000以上1/5以下程度であることが好ましい。1/10000より少ないと、逆洗の効果が低減することがある。また、1/5よりも多いと単位時間あたりのろ過時間が短くなり、ろ過水を使用する場合では、ろ過水の回収率が低下することがある。
逆洗工程の時の逆洗水量および/または圧縮性気体流量は、ろ水回収率と膜の物理洗浄回復性とのかね合いから、ろ過工程時のろ過水量[m/Hr]の0.5倍以上5倍以下の流量[m/Hr]が好ましく、1倍以上3倍以下の流量[m/Hr]が特に好ましい。
【0018】
エアバブリング工程とは、ろ過工程とろ過工程の間に圧縮空気等の圧縮性気体を混入させた原水および/または気体のみを中空糸膜モジュールの下方から供給する事により、モジュール内の中空糸膜間に蓄積した懸濁物質を系外へ排出する操作を指す。例えば、図1においては、コンプレッサ(7)で発生した圧縮空気を中空糸膜モジュール(4)の原水導入口へ供給することにより、エアバブリングを行う。なお、従来の中空糸膜モジュールを使用して、ろ過工程とろ過工程の間にエアバブリング工程を単独で行う場合、エアバブリングを行った時点で単位膜面積当たりに蓄積している濁質量が多いと、膜表面が傷つき、表面開孔が塞がれる場合がある。しかしながら、本発明の場合では、上記の様な、激しいエアバブリングを単独で行っても、高い膜ろ過流速で、安定に、高品質の処理水が得られる。
【0019】
ろ過工程とエアバブリング工程のそれぞれの工程時間は、原水の水質や設定ろ過水量等により、適宜選択できる。エアバブリング工程の時間はろ過工程時間の1/10000以上1/5以下であることが好ましい。1/10000よりも少ないとエアバブリングの効果が低減することがある。1/5よりも多いと、全運転時間に占めるエアバブリング工程の時間が長くなり、単位時間あたりのろ過水採水量が低減する。
エアバブリング工程時の供給エアー流量[Nm/Hr]は、標準状態において、ろ過工程時のろ過水量[m/Hr]の0.5倍以上20倍以下であることが好ましく、1倍以上10倍以下である事がより好ましい。下限を下回ると、エアバブリングの効果が低減することがあり、上限を上回ると中空系膜の乾燥が起こる可能性がある。
【0020】
フラッシング工程とは、濃縮水側弁および/またはエア抜き弁を大きく開放して原水の供給をろ過工程時よりも多く流す事により中空糸膜間に蓄積した懸濁物質を系外へ排出する操作を指す。この時、ろ過水側の弁を閉止または絞っても良い。ろ過工程とフラッシング工程のそれぞれの工程時間は、原水水質や設定ろ過水量等により、適宜選択できる。フラッシング工程の時間はろ過工程時間の1/10000以上1/5以下であることが好ましい。1/10000よりも少ないとフラッシングの効果が小さくなることがあり、また、1/5よりも多いと、全運転時間に占めるフラッシング工程の時間が長くなり、単位時間あたりのろ過水採水量が少なくなる。
フラッシング工程の時のフラッシング水量[m/Hr]は、ろ水回収率と物理洗浄回復性とのかね合いから、ろ過工程時のろ過水量[m/Hr]の1.1倍以上8.0倍以下が好ましく、1.5倍以上5.0倍以下が特に好ましい。
【0021】
上記物理洗浄は単独でも或いは2種以上を併用して行うことも可能である。逆洗工程時に同時にエアバブリング工程を行うと、膜表面に堆積した懸濁物質の圧密化が解かれ、浮き上がった状態でエアバブリングにより排出されるため、より安定な長期ろ過運転が可能となる。また、エアバブリング又はエアバブリングと同時に逆洗を行うに先立ち、逆洗のみを行っても良い。この場合、膜表面に堆積した懸濁物質の圧密化の解除が促進されるという利点がある。あるいは、エアバブリング又はエアバブリングと同時に逆洗を行った後に逆洗のみを行っても良い。この場合、膜モジュール内の懸濁物質の排出が促進されるという利点がある。更に、上記逆洗とエアバブリングを同時に行った後にフラッシングを行う物理洗浄方法は、逆洗およびエアバブリングによる懸濁物質の排出の一部をフラッシングで行う事により、ろ水の回収率を向上する事が可能となり、有効な物理洗浄方法となりうる。
【0022】
本発明の浄化方法は、上記ろ過工程、物理洗浄工程に加えて、オゾン混入工程等も採用できる。この場合の一例を図2に示す。図2に示す様に原水(11)は、循環タンク(12)を経て原水供給ポンプ(13)により、中空糸膜モジュール(14)へ圧送され、モジュール内でろ過された後、ろ過水タンク(15)にて貯蔵される。この時、中空糸膜モジュール(14)に圧送される原水は、オゾン発生機(18)により発生したオゾンガスが混入され、オゾン水濃度は、ろ過水制で所定の濃度、例えば、0.3mg/リットルとなる様に調製される。逆洗時に、ろ過水タンク(15)中のろ過水は逆洗ポンプ(16)により、中空糸膜モジュール(14)に送られる。この場合、コンプレッサ(17)で発生した圧縮空気を用いてエアバブリングしてもよい。
【0023】
〈中空糸膜束〉 上記浄化方法に使用される中空糸膜束は、内径が0.3mm以上1.7mm以下、外径が0.5mm以上3.1mm以下、膜厚みが0.1mm以上0.7mm以下、偏平率が0.8以上1.0以下でありウェーブを有する中空系膜を多数本引き揃えて束ねてなる中空糸膜束であって、嵩高度が1.45〜2.00である中空糸膜束であることが好ましい。
中空糸膜の素材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン;テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素系樹脂;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド等のスーパーエンジニアリングプラスチック;酢酸セルロース、エチルセルロース等のセルロース類;ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコールの単独及びこれらの混合物が挙げられる。
【0024】
中空糸膜としては、その孔径領域が逆浸透膜、ナノフィルター、限外ろ過(UF)膜、精密ろ過(MF)膜であるものが使用し得る。これらのうち、基本的に高いろ過水量を有する、限外ろ過(UF)膜、精密ろ過(MF)膜が好ましい。特に精密ろ過(MF)膜が好ましい。例えば、平均孔径が0.001μm以上1μm以下である膜が好ましく、平均孔径が0.05μm以上1μm以下である膜がさらに好ましい。ここで平均孔径は、ASTM:F−316−86によるエアフロー法により測定している。さらに空孔率が50%以上90%以下である中空糸膜が好ましい。なお、ここでいう空孔率とは、水湿潤状態の中空糸膜の重量を測定し、中空糸膜の単純体積(内径、外径、長さから算出した体積)と使用ポリマーの比重から算出したものである。
本発明の中空糸膜は、ウェーブを有する。ウェーブを有する中空糸膜とは、張力をかけない状態で放置したときに蛇行している膜を指す。
中空糸膜束の嵩高度をより向上する点から、中空糸膜に付与されるウェーブは、波長及び/または波高の異なるウェーブが混在することが好ましい。
【0025】
中空糸膜束は、嵩高度が1.45以上2.00以下であることが好ましく、さらには1.55以上2.00以下であることがより好ましい。
上記中空糸膜束の嵩高度は、下式で表される。
嵩高度=(S1/S2) (I)
上記(I)式で、S1は、膜束を構成する中空糸膜のうち任意の600本の小束の、2.9N(300g重)の荷重下での断面積を表す。S1は、端部にバネばかりを取り付けた厚さ100μm、幅40mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いて、2.9N(300g重)の荷重下で測定される前記小束の周長から算出できる。S2は、該中空糸膜の外径換算断面積を600倍した値を表す。
また、嵩高度測定の際にあらかじめ2枚のPETフィルムを矩形の枠を介して接続したものを用いれば、容易に中空糸膜束周長を測定する事ができる。測定方法の具体例を図3を用いて説明する。
(1)矩形枠(22)を介して接続された2枚のPETフィルム(21)の一方を、該枠(22)内に通して、円筒を形成する。
(2)形成された円筒内に中空糸膜束(24)を納める。PETフィルムの一方を固定した後、予めバネばかりのフック固定用穴(23)を設けたPETフィルムのもう一方に、バネばかりを介して2.9N(300g重)の荷重をかけ、PETフィルムにマーキングする。
(3)PETフィルムを取り外し、マーキングから中空糸膜束周長を測定する。この時、PETフィルムに目盛りがついていれば、直接糸束長を測定出来るので、より好ましい。
【0026】
嵩高度が1.45を下回ると、モジュール化時の接着剤の均一充填性、及びモジュールとした後の物理洗浄による、懸濁物質の排出性が充分ではない場合がある。嵩高度が2.00を超えると、モジュール内へ充填可能な最大充填本数が減少し、モジュールあたりの膜面積が充分に確保出来難くなる。
中空糸膜の外径は、ろ過採水量、圧縮クリープ特性、必要破裂圧力等の点から、0.5mm以上3.1mm以下であり、0.7mm以上2.5mm以下、さらには1.0mm以上2.5mm以下であることが好ましい。また、膜内径は0.3mm以上1.7mm以下であることが好ましい。外圧式ろ過では、ろ過水が中空糸膜の中空部を通過するため、内径が0.3mm未満では、中空部でのろ過水圧力損失の増大により、モジュール内の有効膜面積の減少に伴いろ過水採水量が減少することがある。一方、1.7mmを超えると、モジュールあたりの膜面積が大きく確保できないため、同様にろ過水の採水量が減少することがある。膜厚みは、上記膜内径における圧縮クリープ特性、および必要破裂圧力との兼ね合いから、0.1mm以上0.7mm以下、より好ましくは0.2mm以上0.5mm以下の範囲が好ましい。
【0027】
中空糸膜の扁平率は、0.8以上1.0以下であることが好ましい。ここで、偏平率とは、中空糸膜断面形状が楕円である場合の内径長径に対する内径短径の比率、特に膜にウェーブを付与した曲がり部での比率であり、以下の式で表される。
偏平率=短径/長径 偏平率は、1点のみの測定値を使用して算出しても構わないし、内径長径、内径短径をそれぞれ、ある程度の点数、例えば5点測定し、その平均値を使用して、算出しても構わない。
偏平率が0.8を下回ると、破裂強度や圧縮強度の低下が大きくなり、また、中空糸内のウェーブのある部分をろ過水が通過するときに拡大・縮小の圧力損失を繰り返す事となり、ろ過運転時の運転圧力の上昇がみられ、ろ過安定性に欠けることがある。中空糸膜の破裂強度、圧縮強度を向上し、圧力損失の上昇を抑える点から、偏平率は、好ましくは0.9以上であり、さらに好ましくは、0.95以上である。
本発明の中空糸膜束は、中空糸膜相互の接触部分を少なくすることにより、膜表面の擦れによる開孔の閉塞を防止する点から上記ウェーブを有する中空糸膜のみから構成されることが好ましい。
【0028】
〈中空糸膜束の製造方法〉 本発明の中空糸膜束は、製膜原液を2重紡口から中空糸状に押し出して中空糸状物を得る工程、該中空糸状物を冷却・固化または凝固させて中空糸膜を得る工程、該中空糸膜を多数本引き揃える工程を含む中空糸膜束の製造方法であって、前記冷却・固化または凝固工程に先立ち、或いは前記冷却・固化または凝固工程の間に、該中空糸状物に脈動流を接触させる中空糸膜束の製造方法によって好適に得られる。
この製法の一例を図4に示す。以下、図4を用いて本発明の製法について述べる。
本発明の製法の特徴の一つは、紡口(31)から押し出し、流下された半固化状態の中空糸状物(32)に、脈動流吐出ノズル(33)より吐出される脈動流を接触させてウェーブを付与することである。すなわち、半固化状態の中空糸状物に脈動流を接触させることにより、該中空糸状物が揺れ、曲がった状態で冷却・固化浴または凝固浴内にて冷却・固化または凝固し、ウェーブが容易に形成される。
【0029】
ウェーブを有する中空糸膜は、上記製法以外に、例えば、製膜された中空糸膜に、加熱処理することによっても得られる。しかしながら、中空糸膜が大口径を有する場合、上記加熱処理によりウェーブを発現させようとすると、膜がつぶれたり、極端に扁平したりすることがあり、好ましくない。これに対して、上記脈動流を用いる本発明の製法は、大口径、例えば、外径が2.5mmにおよぶ様な太い中空糸膜であっても、内/外径が偏平になる事無くウェーブを付与することが可能である。また、好ましい態様である波長・波高の異なるウェーブを簡易に付与できる。さらに、膜表面への固体の接触が無いため、膜表面への傷の発生を防止する事が可能である。脈動流を用いる本発明の製法によれば、得られる中空糸膜の偏平率は0.8以上1.0以下、ほとんどの場合0.9以上1.0以下とすることが可能になる。
【0030】
本発明における脈動流とは、気体又は液体による、一定間隔の流体供給を指す。流体として気体を使用する場合は、加圧状態にある圧力容器の電磁弁等を開閉することにより脈動流を供給できる。流体として液体を使用する場合は、例えば、ベローズポンプ、ダイアフラムポンプ、プランジャーポンプ、ギアポンプ等を用いて一定間隔おきに流体を吐出することにより、脈動流を供給できる。この場合、図4のように、冷却・固化浴または凝固浴(34)の液をダイアフラムポンプ(35)を用いてそのまま循環し、脈動流として使用する方法は、不純物の発生の無い単純な供給法となる為、最適である。
【0031】
脈動流の発生間隔(吐出間隔)は、製膜時の中空糸膜引き取り速度に応じて適宜調整する。例えば、引き取り速度が10m/分〜30m/分である場合、間隔が0.05秒/回〜1.50秒/回である事が望ましい。間隔が0.05秒/回よりも短いと、脈動流とならなくなる事により、ウェーブが付与されず、また、間隔が1.50秒/回より長いと、波長の長いウェーブが付与され、嵩高度が不充分なものとなる。
脈動流の温度は特に限定されない。溶融押し出しによる製膜の場合おいては、冷却・固化浴の浴温、例えば20℃〜80℃、湿式製膜の場合においては、脈動流の温度は、凝固浴の浴温、例えば−10℃〜80℃の範囲とすることができる。
ウェーブは、脈動流との接触により、半固化状態の中空糸状物が揺れた状態で、冷却・固化または凝固することにより形成される。脈動流の接触1回につき、1箇所のウェーブが付与されるのではなく、脈動流の接触1回につき、2〜10箇所のウェーブが付与されるものと推測される。半固化状態の中空糸状物は、脈動流との接触により蛇行し、徐々にその蛇行が減衰する。それ故、得られる中空糸膜においてウェーブの波長及び/または波高は一種類ではなく、波長及び/または波高の異なるウェーブが混在したものとなる。
【0032】
脈動流が半固化状態の中空糸状物と冷却・固化または凝固工程中に接触する場合、すなわち冷却・固化浴または凝固浴の浴中で接触する場合、接触位置は、例えば、冷却・固化浴または凝固浴の浴面から浴面下500mm以下であることが好ましい。脈動流が半固化状態の中空糸状物と冷却・固化または凝固工程に先立ち接触する場合、すなわち冷却・固化浴または凝固浴の浴面直上で接触する場合、接触位置は、例えば、冷却・固化浴または凝固浴の浴面から浴面上50mm以下であることが望ましい。脈動流が中空糸状物と接触する位置が極端に冷却・固化浴または凝固浴から上方に離れて、紡口近くにあると、脈動流が接触した部分のみが早く冷却・固化または凝固し、中空糸膜の円周上で孔の形成に差が発生したり、極端な場合では、接触部分が全くの無孔状態となったり、その部分だけスキン層が厚くなる可能性がある。逆に冷却・固化浴または凝固浴の浴中の深い部分、具体的には冷却・固化浴面または凝固浴面から下方へ500mmを超えて下方にあると、中空糸状物が脈動流との接触前に冷却・固化または凝固してしまい、ウェーブの付与がなされない。
脈動流を中空糸状物に接触させる際に、中空糸状物が脈動流との接触により逃げない様に、冷却・固化浴または凝固浴の浴中に糸道等のガイドを設けると、より、好ましい態様のウェーブが付与される。
【0033】
〈中空糸膜モジュール〉 本発明の浄化方法では、内径が0.3mm以上1.7mm以下、外径が0.5mm以上3.1mm以下、膜厚みが0.1mm以上0.7mm以下、偏平率が0.8以上1.0以下で、かつウェーブを有する中空糸膜が長手方向に、多数本引き揃えられ、充填率35%〜55%で収納されている中空糸膜モジュールを使用することが好ましい。
充填率は、以下の式により算出される。
充填率(%)=(中空糸膜の外径換算断面積×モジュール当たりの充填本数)×100/(モジュールケースの内壁換算断面積)
嵩高な中空糸膜束が35%〜55%の充填率で収納される事により、モジュール内の中空糸膜束が嵩高く、モジュール内の中空糸膜同士が点接触に留まり、懸濁物質を介した擦れが発生しにくい為に膜外表面開孔の閉塞が発生しにくくなる。また、同じ理由で、中空糸膜束内部に懸濁物質が蓄積しにくく、たとえ一旦、蓄積されたとしても逆洗、エアバブリング、フラッシング等の物理洗浄を行うことにより、容易に排出されるので、安定なろ過運転が長期に渡り、可能となる。さらに、ウェーブが付与されている事により、膜モジュール内断面での中空糸膜の分散状況が良好であるため、モジュールケースへ接着固定する際、使用する接着剤の硬化前初期粘度が高い場合や径が大きな大型モジュールケースへ接着固定する場合であっても、中空糸膜モジュールの接着固定部に不良部分が発生しにくい。
充填率が35%未満では、洗浄排出性に優れるものの、中空糸膜モジュールの単位容積当たりの膜面積が大きく確保できない為、中空糸膜モジュールを使用する効果が小さくなってしまう。充填率が55%を超えると、単位容積当たりの膜面積は大きく確保可能であるが、モジュール内の中空糸膜が密集し、外圧ろ過時の懸濁物質の排出がしにくくなる。
【0034】
本発明の中空糸膜モジュールにおいて、その中空糸膜束は、その側端部の少なくとも一方がエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で固定されている。中空糸膜は中空糸中空部が開口した状態で集積されており、中空糸膜の外表面側から内表面側へろ過する事が可能な膜モジュール構造となっており、外圧式ろ過に適している。中空糸膜モジュールの両側端部は、共に接着固定されていても良いし、片側のみ接着固定されていてもよい。両側端部が共に接着固定されている場合、その一方の側の中空糸中空端部が封止されていても良い。特開平7−171354号公報に開示されているような、両側端部が接着固定されており、一方の中空糸中空端部が封止されていると共に、原水を供給する原水導入口が開口している膜モジュールも使用できる。
【0035】
本発明の中空糸膜モジュールは、配管等を介して接続されるラック直付け型中空糸膜モジュールの他に、管板のあるタンクや外郭ハウジングに挿入・配置する事によって使用される、カートリッジ型中空糸膜モジュールも包含する。カートリッジ型中空糸膜モジュールとは、ラック直付け型中空糸膜モジュールと異なり、接着固定部を除いて、液密的な遮断手法がとられておらず、パンチングにより穴の開けられた筒、ネット等により中空糸膜束部の形状が保持されたものを指す。この時、中空糸膜束が束自体で形状保持可能であれば、中空糸膜束の接着固定部以外は中空糸膜束が剥き出しの状態であってもかまわない。
【0036】
本発明の中空糸膜モジュールは、上記ウェーブを有する中空糸膜を用いているため、外径170mm〜350mmというような大型モジュールであっても、中空糸膜端部の接着部の欠陥が少ない。
本発明の中空糸膜モジュールの片側あるいは両側端部の接着固定に使用される熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーンゴム等がある。必要に応じ、これらの樹脂にシリカ、カーボンブラック、フッ化カーボン等のフィラーを混入させる事により、樹脂隔壁部の強度向上及び硬化収縮の低減をはかっても良い。
【0037】
中空糸膜モジュールのモジュールケースの材質としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PFA、FEP、EPE、ETFE、PCTFE、ECTFE、PVDF等のフッ素系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素樹脂;ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、ポリフェニルエーテル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の単独及びこれらの混合物、及び、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属が挙げられる。さらに、樹脂と金属の複合体や、ガラス繊維、炭素繊維入りの補強樹脂を使用する事もできる。
【0038】
本発明の中空糸膜モジュールは、例えば、長手方向に引きそろえて集積されている中空糸膜束の少なくとも一方をエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂により接着固定した後、中空糸膜の中空部が開口するように接着固定部の一部を切断することにより、得られる。
中空糸膜モジュールの端部接着固定部分の一方には、原水および/またはエアバブリング用の気体をより均一に供給できるように複数個の開口部が設けられている事が好ましい。前記開口部の大きさは、3〜100mmの相当直径を有することが好ましい。上記開口部の相当直径が3mmより小さいと、原水中の懸濁物質により、開口部が閉塞する場合があり、100mmを超えるとモジュール内の中空糸膜充填本数および/または、開口部数を減らす必要が生じ、均一な原水供給が難しくなることがある。前記開口部の断面形状は特に限定されず、円、楕円の他、三角形、四角形、六角形等の多角形等が挙げられる。これらのうち円形、だ円形が好ましい。さらに、上記開口部は端部接着固定部分に均等に配置されていても良いし、ランダムに配置されていても良い。
【0039】
本発明の中空糸膜モジュールの一例を図5に示す。図5中、中空糸膜モジュールは、キャップ(46)を介して運転装置の配管に接続されている。供給される原水および/または圧縮気体は、原水導入口(45)を通過し、ウェーブが付与された中空糸膜(41)の外表面側から内表面側へとろ過される。
ここで、ポンプ等により、加圧された原水は、モジュールケース(43)により、圧力が保持され、原水の一部は、ろ過水として、採水される。濃縮された原水は、濃縮水排出ノズル(47)から中空糸膜モジュール外へ排出される。接着部(42)において、モジュールケースと中空部が開口した中空糸膜とは、ろ過水に原水が混入しないように、液密的に接着固定されている。また、接着部(44)において、中空糸膜の中空部は封止されると共に、複数の開口部が設けられ、原水導入口(45)が配置されている。
【0040】
以下、この発明に用いられる中空糸膜、中空糸膜モジュールの製造例と、懸濁水の浄化方法の例を説明する。なお、例中の扁平率、濁度、粒径、透過水量、洗浄回復性は、以下の方法により測定した。
中空糸膜の扁平率:中空糸膜のウェーブの変曲部を5ヶ所で採取し、それぞれの内径の長径及び短径をX−Y顕微鏡(オリンパス光学社製、STM−222DH)により測定し、各偏平率(短径/長径)を算出した。
濁度:測定装置は、島津製作所製のUV−160A、50mmセルを使用し、JIS K0101 9.2に準拠して測定した。
微粒子の粒径:堀場製作所製のLA−910粒度分布計を使用して測定した。
中空糸膜の単糸での透過水量:25℃の純水を有効長100mmの中空糸多孔質膜サンプルの内表面側から外表面側へ透過させ、単位時間、単位圧力(単位膜差圧)あたりの透水量を算出した。
洗浄回復性:河川水等の実液評価前のモジュールでの純水透過水量(初期値)に対する、実液評価・薬品洗浄した後のモジュールでの純水透過水量の割合(%)で評価した。或いは、実液評価後にモジュールを解体し、膜だけを薬品洗浄して得られる膜単糸での純水透過水量の、モジュール作成前の中空糸膜の単糸での純水透過水量(未使用の膜の透過水量)に対する割合(%)で評価した。
【0041】
〈例1(中空糸膜の製造)〉 PVDFパウダー(呉羽化学社製、KF#1000)40.0重量部、疎水性シリカ(日本アエロジル社製、R−972[平均1次粒径0.016μm、比表面積110m2/g、Mw値(メタノールウエッタビリティ、容量%)=50%])23.0重量部、ジ−(エチル−ヘキシル)−フタレート{DOP}(チッソ社製、CSサイザー)30.8重量部、ジ−ブチルフタレート{DBP}(チッソ社製)6.2重量部をヘンシェルミキサーにより混合した後、2軸押し出し機により、ペレットを作成した。
上記ペレットを、バレル温度260℃、ヘッド温度235℃、紡口温度230℃の温度条件の2軸押し出し機から、2重紡口(寸法:外紡口の内径/内紡口の外径/内紡口の内径=1.70mmφ/0.90mmφ/0.50mmφ)を経て、紡口から30cm下方の温度40℃の冷却・固化浴(水温40℃の温水)中に溶融押し出しした。
この際、浴面から10mm上方の位置に脈動流吐出ノズルを設置し、ダイアフラムポンプ((株)ヤマダコーポレーション社製、NDP−5FST)により、冷却・固化液を吐出間隔:0.30秒/回で、流下する中空糸状物に接触させる事により、ウェーブが付与された中空糸膜を得た。
上記、ウェーブが付与された中空糸膜を引き取り速度20m/分の3連ローラーを介して巻き取った。得られた中空糸膜束をジクロロメタンにより、以下の抽出条件で中空糸膜中のDOPとDBPを抽出した。
抽出条件 処理温度:室温(25℃〜27℃)
中空糸膜の単純体積(内/外径、長さより算出)に対する該ジクロロ メタンの体積:20倍量 処理時間:5時間 次いで、得られた上記中空糸膜束を、50%エタノール水溶液に30分浸漬した後、重量パーセント濃度20%の水酸化ナトリウム水溶液を使用し、以下の抽出条件で中空糸膜中のシリカを抽出した。
抽出条件 処理温度:60℃ 中空糸膜の単純体積(内/外径、長さより算出)に対する該水溶液の体積:20倍量(疎水性シリカに対する当量比で8倍当量)
処理時間:2時間 上記処理後の中空糸膜束を上記水酸化ナトリウム水溶液と同一体積の60℃温水を用いて、1時間洗浄した。この温水洗浄を合計10回繰り返した後、多孔質の中空糸膜束を得た。中空糸膜の内径/外径は0.70mmφ/1.25mmφ、空孔率が70%、平均孔径が0.18μm、純水透過水量が2,000[リットル/m・分・100kPa・25℃]であり、偏平率は表1に示す通りであった。上記中空糸膜600本から構成される中空糸膜束の周長は124.0mm、嵩高度は、1.66であった。また、中空糸膜中には、波長・波高の異なるウェーブが混在していた。
【0042】
〈例2(中空糸膜の製造)〉 中空糸への脈動流の接触をさせない以外は例1と同様にして、中空糸膜束を得た。中空糸膜は内径/外径が0.70mmφ/1.25mmφ、空孔率が70%、平均孔径が0.18μm、純水透過水量が2,000[リットル/m・分・100kPa・25℃]であり、偏平率は表1に示す通りであった。また、上記中空糸膜600本から構成される中空糸膜束の周長は115.0mm、嵩高度は、1.43であった。
【0043】
〈例3(中空糸膜の製造)〉 例2の中空糸膜を雰囲気温度140℃で2つのギアの間を通過させる事により、ウェーブが付与された中空糸膜束を得た。この時使用したギアは、先端の最小曲率半径が5mm、ギアの先端間の距離が25mmのギアを2個噛み合せ、両ギアの噛み込み高さ及び最短距離をそれぞれ15mm、3mmとした。中空糸膜は内径/外径が0.70mmφ/1.25mmφ、空孔率が70%、平均孔径が0.18μmであった。また、純水透過水量は1,950[リットル/m・分・100kPa・25℃]と若干の低下があり、表1に示す様に、中空糸膜の偏平率の影響と推定された。上記中空糸膜600本から構成される中空糸膜束の周長は118.2mm、嵩高度は、1.51であった。また、中空糸膜中のウェーブは、波長・波高が概ね揃ったものであった。
【0044】
〈例4(中空糸膜の製造例)〉 例2の中空糸膜を雰囲気温度140℃で2つのギアの間を通過させる事により、ウェーブが付与された中空糸膜束を得た。この時使用したギアは、先端の最小曲率半径が7mm、ギアの先端間の距離が30mmのギアを2個噛み合せ、両ギアの噛み込み高さ及び最短距離をそれぞれ10mm、8mmとした。中空糸膜は、内径/外径が0.70mmφ/1.25mmφ、空孔率が70%、平均孔径が0.18μmであった。また、純水透過水量は、2,000[リットル/m・分・100kPa・25℃]であり、偏平率は、表1に示す通りであった。上記中空糸膜600本から構成される中空糸膜束の周長は、115.5mmであり、嵩高度は、1.44であった。また、また、中空糸膜中のウェーブは、波長・波高が概ね揃ったものであった。
【0045】
〈例5(中空糸膜モジュールの製造)〉 例1で製造した中空糸膜を300本束ねた。
次に、この中空糸膜束の片側端面の中空部を封止処理した後、内径36mmφ、長さ1,000mmの、ポリスルホン製円筒状モジュールケースに収納した。封止処理を行った側の中空糸膜端部には、接着冶具のみをモジュールケースへ液密的に取り付け、他方の端部には、中空糸膜と平行に、外径5mmφのポリプロピレン製棒状物を合計5本配置した後に接着冶具をモジュールケースへ液密的に取り付けた。ここで、充填率は、中空糸膜外径、充填本数、モジュールケース内径により、36%と算出される。
上記、接着冶具が両側へと液密的に取り付けられたモジュールケースを2液性エポキシ接着剤により、遠心注型した。遠心注型終了後、接着冶具、ポリプロピレン製棒状物を取り除き、封止処理を行った側の接着端部を切断し、中空糸中空部を開口させた。以上の様にして、ウェーブを有する中空糸膜束からなる中空糸膜モジュールを得た。
この中空系膜モジュールをエタノールで親水化し、さらに、水への置換処理を行った後、純水透過水量を測定した。
その後、100kPaの圧縮空気により、リーク検査を行ったが、リークの発生は確認されなかった。
【0046】
〈例6(中空糸膜モジュールの製造)〉 例1で製造した中空糸膜を1,800本束ねた。
次に、この中空糸膜束の片側端面の中空部を封止処理した後、内径83mmφ、長さ1,000mmのポリ塩化ビニル製円筒状モジュールケースに収納した。封止処理を行った側の中空糸膜端部には、接着冶具のみをモジュールケースへ液密的に取り付け、他方の端部には、中空糸膜と平行に、外径11mmφのポリプロピレン製棒状物を合計5本配置した後に接着冶具をモジュールケースへ液密的に取り付けた。ここで、充填率は、中空糸膜外径、充填本数、モジュールケース内径より、41%と算出される。
上記接着冶具が両側へと液密約に取り付けられたモジュールケースを2液性エポキシ樹脂により、遠心注型した。遠心注型終了後、接着冶具、ポリプロピレン製棒状物を取り除き、封止処理を行った側の接着端部を切断し、中空糸中空部を開口させた。以上の様にして、ウェーブを有する中空糸膜束からなる中空糸膜モジュールを得た。
上記中空糸膜モジュールをエタノールで親水化し、さらに、水への置換処理を行った後、純水透過水量を測定した。
その後、100kPaの圧縮空気により、リーク検査を行ったが、リークの発生は、確認されなかった。
【0047】
〈例7(中空糸膜モジュールの製造)〉 例1で製造した中空糸多孔質膜の1,440本からなる中空糸膜束を4束用意した。
次に各中空糸膜束の片側端面の中空部を封止処理した後、4束を内径150mmφ、長さ1,500mmの、SUS−304製円筒状モジュールケースに収納した。封止処理を行った側の中空糸膜端部には、接着冶具のみをモジュールケースへ液密的に取り付け、他方の端部には、中空糸膜と平行に、外径10mmφのポリプロピレン製棒状物を合計37本設置した後に接着冶具をモジュールケースへ液密的に取り付けた。ここで、充填率は、中空糸膜外径、充填本数、モジュールケース内径より、40%と算出される。
上記、接着冶具が両側に取り付けられたモジュールケースをシリコーン接着剤(東芝シリコーン社製、TSE−3337)により、遠心注型した。
遠心注型終了後、接着冶具、ポリプロピレン製棒状物を取り除き、シリコーン接着部が充分に硬化した後、封止処理を行った側の接着端部を切断し、中空糸中空部を開口させた。以上の様にして、ウェーブを有する中空糸膜束からなる中空糸膜モジュールを得た。
次に該中空糸膜モジュールをモジュール用圧力容器に収納し、50%エタノール水溶液で親水化、水置換を行った後、100kPaの圧縮空気により、リーク検査を行ったところ、リークの発生は、確認されなかった。また、この時の水湿潤状態での、モジュール重量を測定した。
【0048】
〈例8(中空糸膜モジュールの製造)〉 例2の中空糸膜を使用した以外は、例5と同様にして中空糸膜モジュールを作成した。この時の充填率は、36%であった。
この中空糸膜モジュールの純水透過水量を測定した後、100kPaの圧縮空気によりリーク検査を行ったが、リークの発生は確認されなかった。
【0049】
〈例9(中空糸膜モジュールの製造)〉 例2の中空糸膜を使用した以外は、例6と同様にして中空糸膜モジュールを作成した。この時の充填率は、41%であった。
この中空糸膜モジュールの純水透過水量を測定した後、100kPaの圧縮空気により、リーク検査を行ったが、リークの発生は確認されなかった。
【0050】
〈例10(中空糸膜モジュールの製造)〉 例2の中空糸膜を使用した以外は、例7と同様にして中空系膜モジュールを作成した。充填率は、40%であった。
この中空糸膜モジュールの純水透過水量を測定した後、100kPaの圧縮空気により、リーク検査を行ったが、リークの発生は確認されなかった。また、この時の水湿潤状態での、モジュール重量を測定した。
【0051】
〈例11(中空系膜モジュールの製造)〉 例3の中空糸膜を使用した以外は、例5と同様にして中空糸膜モジュールを作成した。この時の充填率は、36%である。
この中空糸膜モジュールの純水透過水量を測定した後、100kPaの圧縮空気によりリーク検査を行ったが、リークの発生は確認されなかった。
【0052】
〈例12(中空糸膜モジュールの製造)〉 例3の中空系膜を使用した以外は、例6と同様にして中空糸膜モジュールを作成した。充填率は、41%であった。
この中空糸膜モジュールの純水透過水量を測定した後、100kPaの圧縮空気により、リーク検査を行ったが、リークの発生は確認されなかった。
【0053】
〈例13(中空系膜モジュールの製造)〉 例4の中空糸膜を使用した以外は、例5と同様にして中空糸膜モジュールを作成した。充填率は、36%であった。
この中空糸膜モジュールの純水透過水量を測定した後、100kPaの圧縮空気により、リーク検査を行ったが、リークの発生は確認されなかった。
【0054】
〈例14(浄化方法・実施例)〉 例5の中空系膜モジュールを使用して浄化運転を行った。原水として、モデル液(ベントナイト、フミン酸の混合溶液[調製時、ベントナイト濃度:1,000mg/リットル、フミン酸濃度:TOC{全有機炭素量}として、500mg/リットル])を用いた。図1に示す様に、原水(1)は、循環タンク(2)を経て原水供給ポンプ(3)により、中空糸膜モジュール(4)へ圧送され、得られたろ過水は、ろ過水タンク(5)により、貯水される。逆洗時に、ろ過水タンク(5)中のろ過水は逆洗ポンプ(6)により中空糸膜モジュールに送られる。また、エアバブリングは、コンプレッサ(7)で発生した圧縮空気を中空糸膜モジュールの原水導入口へ供給される。
ろ過は、中空糸膜モジュール(4)へ原水(1)を一定流量、1.8[リットル/分・モジュール・25℃]で供給し、膜ろ過水量と循環水量の比を1/1としたクロスフロー方式で行い、ろ過水量が0.9[リットル/分・モジュール・25℃]での外圧定流量ろ過運転とした。
運転条件は、ろ過を10分行った後、ろ過水による逆洗を1.5[リットル/分・モジュール・25℃]の流量で20秒行うという操作を繰り返し、1時間毎に5[Nリットル/分・モジュール・25℃]の流量で圧縮空気によるエアバブリングを1分間行った。原水の濁度は770度、ろ過工程時間内に膜を透過する総ろ過水量は9リットル、蓄積懸濁質量は、5.87であった。
運転直後にモデル液の濁度、微粒子の平均粒径を測定したところ、濁度は1,000度、微粒子の粒径は0.9μm〜30μm(中央値は、9μm)であった。
上記浄化運転を20日間継続したところ、ろ過圧力は、初期の1.2倍となっていた。日間平均濁度は、770度、微粒子径は、初期と同様に0.9μm〜30μm(中央値は、9μm)であった。
浄化運転終了後、モジュールを装置から取り外し、リーク検査を行ったが、リークは確認されなかった。
さらに、上記中空糸膜モジュールを次亜塩素酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、シュウ酸水溶液、硝酸水溶液にて回復率が飽和するまで洗浄し、純水透過水量を測定したところ、初期値の98%の値を示した。
その後、中空糸膜モジュールを解体して、中空糸膜の膜外表面を倍率5,000倍の走査型電子顕微鏡で観察したが、膜表面の傷つきは軽微であった。
【0055】
〈例15(浄化方法・実施例)〉 例5の中空糸膜モジュールを使用し、浄化運転を行った。原水として、日間平均濁度が1、微粒子径が5μm〜200μm(中央値は、50μm)の河川表流水を用いた。ろ過は、中空糸膜モジュールへ原水を一定流量、3.0「リットル/分・モジュール・25℃」で供給し、膜ろ過水量と循環水量の比を1/1としたクロスフロー方式で行い、ろ過水量が1.5[リットル/分・モジュール・25℃]での外圧定流量ろ過運転とした。
運転条件は、ろ過を20分行った後、ろ過水による逆洗を2.5[リットル/分・モジュール・25℃]の流量で20秒行う操作を繰り返し、1時間毎に7[Nリットル/分・モジュール・25℃]の流量で圧縮空気によるエアバブリングを1分間行った。原水の濁度は1.0度、ろ過工程時間内に膜を透過する総ろ過水量は30リットル、蓄積懸濁質量は、0.025であった。
浄化運転の経過と共に、ろ過圧力が除々に上昇し、5ヶ月目には、初期ろ過圧力の2倍となっていた。
浄化運転後、モジュールを装置から取り外し、リーク検査を行ったが、リークは確認されなかった。
さらに、上記中空糸膜モジュールを次亜塩素酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、シュウ酸水溶液、硝酸水溶液にて回復率が飽和するまで洗浄し、純水透過水量を測定したところ、初期値の96%の値を示した。
その後、中空糸膜モジュールを解体して、中空糸膜の膜外表面を倍率5,000倍の走査型電子顕微鏡で観察したが、膜表面の傷つきは軽微であった。
【0056】
〈例16(浄化方法・実施例)〉 例6の中空糸膜モジュールを使用して浄化運転を行った。原水として、濁度が0.1度〜5度(平均値は、2.4度)、水中の微粒子の粒径が0.9μm〜30μm(中央値は、9μm)、水温が12℃の河川水表流水を用いた。
ろ過は、中空糸膜モジュールへ原水を一定流量2.6[m3/hr・モジュール・25℃]で供給し、膜ろ過水量と循環水量の比を1/1としたクロスフロー方式で行い、ろ過水量が1.3[m/hr・モジュール・25℃]の定流量ろ過運転とした。
運転条件は、ろ過を20分行った後、ろ水による逆洗を20秒行うという操作を繰り返し、1時間毎に流量1.3[m/hr・モジュール・25℃]のろ過水による逆洗と、流量2[Nm3/hr・モジュール・25℃]の圧縮空気によるエアバブリングを同時に2分間行った。原水の濁度は2.4度、ろ過工程時間内に膜を透過する総ろ過水量は0.43m3、蓄積濁質量0.15であった。
上記運転条件で12ヶ月運転した後の膜間平均差圧(以下、TMPという)は、初期の1.3倍となっていた。その後、モジュールを装置から取り外し、リーク検査を行ったが、リークの発生は確認されなかった。また、運転後の中空糸膜モジュールを解体し、単糸を次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウム水溶液の混合液、シュウ酸と硝酸の混合液で薬品洗浄した後、純水透水量を測定したところ、未使用の膜の95%に相当する透水量であり、膜外表面を倍率5,000倍の走査型電子顕微鏡で観察したところ、膜外表面の傷つきは軽微であった。
【0057】
〈例17(浄化方法・実施例)〉 例6の中空糸膜モジュールを使用して、膜ろ過の運転を60分間行った後、ろ過水による逆洗と圧縮空気によるエアバブリングを同時に2分間行う運転方式に変更した以外は例16と同じ浄化運転を行った。原水の濁度は2.4度、ろ過工程時間内に膜を透過する総ろ過水量は1.3m、蓄積濁質量は0.44であった。
上記運転条件で6ヶ月間運転した後のTMPは、初期の1.4倍となっていた。その後、膜モジュールを装置から取り外し、リーク検査を行ったが、リークの発生は、確認されなかった。また、運転後の膜モジュールを解体し、単糸を次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウム水溶液の混合液、シュウ酸と硝酸の混合液で薬品洗浄した後、純水透過水量を測定したところ、未使用である膜の透過水量の95%に相当する透水量であり、膜外表面を倍率5,000倍の走査型電子顕微鏡で観察したところ、膜外表面の傷つきは軽微であった。
【0058】
〈例18(浄化方法・実施例)〉 例7で作成した膜モジュールを使用して浄化運転を行った。原水は、濁度1〜3(平均値は1.8度)、水中の微粒子の粒径が2μm〜50μm(中央値は22μm)の河川表流水を用いた。図2に示す様に原水(11)は、循環タンク(12)を経て原水供給ポンプ(13)により、中空糸膜モジュール(14)へ圧送され、得られたろ過水は、ろ過水タンク(15)に貯水される。この時、中空糸膜モジュール(14)に圧送される原水は、オゾン発生機(18)により発生したオゾンガスが混入され、オゾン水濃度は、ろ過水側で0.3mg/リットルとなる様に調製される。逆洗時に、ろ過水タンク(15)中のろ過水は逆洗ポンプ(16)により、中空糸膜モジュール(14)に送られる。
ろ過は、中空糸膜モジュール(14)へ原水(11)を供給し、オゾン混入空気を排出する以外は濃縮水の排出を行わない、全量ろ過方式で行う、平均ろ過圧30[KPa]の定圧ろ過とした。この時、逆洗時の逆洗圧力は50KPaとした。
上記、浄化運転を10日間継続したところ、ろ水採水量は、初期値の70%となっていた。
次にろ過運転装置から中空糸膜モジュールを取り外し、重量を測定したところ、初期重量の115%に増加していた。
これを、再度、図2に示す運転装置に取り付け、中空糸膜モジュールのろ水側の弁を閉じて、原水を供給しながら、エアバブリング(供給水量:3m/Hr、供給エアー量:5Nm/Hr、バブリング時間:5分)を実施した。
エアバブリングを実施後、再度、中空糸膜モジュールの重量を測定したところ、初期重量の103%となっていた。
これは、エアバブリングにより、中空糸膜モジュール重量の12%に相当する、懸濁物質が排出された事になる。
さらに、上記中空糸膜モジュールのリーク検査を行ったが、リークの発生は、確認されなかった。
上記中空糸膜モジュールを解体し、接着固定部の接着状況を観察したところ、中空糸膜束の外周部分、中心部分いずれも充分に接着剤で充填された状態であった。
【0059】
〈例19(浄化方法・実施例)〉 例5の中空糸膜モジュールを使用して浄化運転を行った。原水として、濁度が3度〜340度(平均値は、120度)、水中の微粒子の粒径が2μm〜130μm(中央値は、43μm)の河川水表流水を用いた。
ろ過は、中空糸膜モジュールへ原水を一定流量8.0[リットル/分・モジュール・25℃]で供給し、膜ろ過水量と循環水量の比を1/1としたクロスフロー方式で行い、ろ過水量が4.0[リットル/分・モジュール・25℃]の定流量ろ過運転とした。
運転条件は、ろ過を10分行った後、流量6.0[リットル/分・モジュール・25℃]のろ過水による逆洗と流量8[Nm/hr・モジュール・25℃]の圧縮空気によるエアバブリングを同時に1分間行うという操作を繰り返した。原水の濁度は120度、ろ過工程時間内に膜を透過する総ろ過水量は40リットル、蓄積濁質量は4.1であった。
上記運転条件で2ヶ月経過時に2日間に渡り、濁度340度の高濁度原水が供給されたので、その2日間とその後の1日の合計3日間に限って、5分間のろ過の後、逆洗とエアバブリングを同時に行う運転方法に変更した。この時の濁質蓄積量は、(10分ろ過/1分物理洗浄)のままでは、11.6であるが、5分ごとの物理洗浄としたので、5.8となった。
合計3ヶ月の運転の間にTMPは、初期の1.3倍となっていた。その後、モジュールを装置から取り外し、リーク検査を行ったが、リークの発生は確認されなかった。また、運転後の中空糸膜モジュールを解体し、単糸を次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウム水溶液の混合液、シュウ酸と硝酸の混合液で薬品洗浄した後、純水透水量を測定したところ、未使用の膜の95%に相当する透水量であり、膜外表面を倍率5,000倍の走査型電子顕微鏡で観察したところ、膜外表面の傷つきは軽微であった。
【0060】
〈例20(浄化方法・実施例)〉 例5の中空糸膜モジュールを使用して浄化運転を行った。原水として、濁度が0.1度〜3度(平均値は、1.2度)、水中の微粒子の粒径が0.5μm〜30μm(中央値は、7μm)、水温が18℃の河川水表流水を用いた。
ろ過は、中空糸膜モジュールへ原水を一定流量3.0[m/hr・モジュール・25℃]で供給し、膜ろ過水量と循環水量の比を1/1としたクロスフロー方式で行い、ろ過水量が1.5[m3/hr・モジュール・25℃]の定流量ろ過運転とした。
運転条件は、ろ過を30分行った後、流量1.5[m3/hr・モジュール・25℃]のろ過水による逆洗と流量2[Nm3/hr・モジュール・25℃]の圧縮空気によるエアバブリングを同時に2分間行うろ過サイクル運転とした。原水の濁度は1.2度、ろ過工程時間内に膜を透過する総ろ過水量は0.75m3、蓄積濁質量は0.13であった。
上記運転条件で10ヶ月運転した後のTMPは、初期の1.2倍となっていた。その後、モジュールを装置から取り外し、リーク検査を行ったが、リークの発生は確認されなかった。また、運転後の中空糸膜モジュールを解体し、単糸を次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウム水溶液の混合液、シュウ酸と硝酸の混合液で薬品洗浄した後、純水透水量を測定したところ、未使用の膜の96%に相当する透水量であり、膜外表面を倍率5,000倍の走査型電子顕微鏡で観察したところ、膜外表面の傷つきは軽微であった。
【0061】
〈例21(浄化方法・実施例)〉 例5の中空糸膜モジュールを使用して、浄化運転を行った。原水として、濁度が0.1〜3度(平均値は、1.2度)、水中の微粒子の粒径が0.5μm〜30μm(中央値は、7μm)、水温が18℃の河川表流水を用いた。
ろ過は、中空糸膜モジュールへ原水を一定流量3.0[m/hr・モジュール・25℃]で供給し、膜ろ過水量と循環水量の比を1/1としたクロスフロー方式で行い、ろ過水量が1.5[m/hr・モジュール・25℃]の定流量ろ過運転とした。
運転条件は、ろ過を30分行った後、流量1.5[m3/hr・モジュール・25℃]の、ろ過水による逆洗と流量2[Nm/hr・モジュール・25℃]の圧縮空気によるエアバブリングを同時に1分間行った後、原水による、流量2.5[m/hr・モジュール・25℃]のフラッシングを1分間行う、ろ過サイクル運転とした。原水の濁度は1.2度、ろ過工程時間内に膜を透過する総ろ過水量は0.75m、蓄積濁質量は0.13であった。
上記運転条件で5ヶ月運転した後のTMPは、初期の1.2倍となっていた。その後、モジュールを装置から取り外し、リーク検査を行ったが、リークの発生は確認されなかった。また、運転後の中空糸膜モジュールを解体し、単糸を次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウム水溶液の混合液、シュウ酸と硝酸の混合液で薬品洗浄した後、純水透水量を測定したところ、未使用の膜の95%に相当する透水量であり、膜外表面を倍率5,000倍の走査型電子顕微鏡で観察したところ、膜外表面の傷つきは軽微であった。
【0062】
〈例22(浄化方法・比較例)〉 例8の中空糸膜モジュールを用いた以外は、例14と同一運転条件で同時に並列して、浄化運転を行った。20日間の運転後、その平均ろ過圧は初期の3.5倍となっていた。
浄化運転終了後、リーク検査を行ったが、リークの発生は確認されなかった。
さらに、上記膜モジュールを次亜塩素酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、シュウ酸水溶液、硝酸水溶液にて回復率が飽和するまで洗浄後、純水透過水量を測定したところ、初期値の66%の値を示した。
その後、中空系膜モジュールを解体して膜外表面を倍率5,000倍の走査型電子顕微鏡で観察したところ、膜表面のおよそ75%が荒れており、膜表面の開孔の一部が閉塞し、透過水量の低下の要因と推定された。
【0063】
〈例23(浄化方法・比較例)〉 例8の中空糸膜モジュールを用いた以外は、例15と同一運転条件で同時に並列して、浄化運転を行った。
浄化運転の経過と共に、ろ過圧力が除々に上昇し、運転2ヶ月目と運転4ヶ月目にそれぞれ、平均ろ過圧が初期の3倍となったので、次亜塩素酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、シュウ酸水溶液、硝酸水溶液による、薬品洗浄を行った。
総運転期間が5ヶ月となった時点で、中空糸膜モジュールを装置から取り外し、リーク検査を行ったが、リークは確認されなかった。
さらに、上記中空糸膜モジュールを次亜塩素酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、シュウ酸水溶液、硝酸水溶液にて回復率が飽和するまで洗浄し、純水透過水量を測定したところ、初期値の72%の値を示した。
その後、中空糸膜モジュールを解体して膜外表面を倍率5,000倍の走査型電子顕微鏡で観察したところ、膜表面のおよそ70%が荒れており、膜表面の開孔の一部が閉塞し、透過水量の低下の要因と推定された。
【0064】
〈例24(浄化方法・比較例)〉 例9の中空膜モジュールを使用して、例16と並列に同一条件で同時に浄化運転を行った。
運転6ヶ月後のTMPは初期値の2.0倍となり、これ以上の運転の継続は不可能と判断し、中空糸膜モジュールを解体した。解体した中空糸膜モジュールの単糸を次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウム水溶液の混合液、シュウ酸と硝酸の混合液で薬品洗浄した後、純水透過水量を測定したところ、未使用の膜の80%に相当する透過水量であった。膜外表面を倍率5,000倍の走査型電子顕微鏡で観察したところ、膜表面のおよそ70%が荒れており、膜表面開孔の一部が閉塞し、透過水量の低下の要因と推定された。
【0065】
〈例25(浄化方法・比較例)〉 例9の中空膜モジュールを使用して、例17と同一条件で並列に浄化運転を行った。
4ヶ月後のTMPは初期値の2.0倍となり、これ以上の運転の継続は不可能と判断し、中空糸膜モジュールを解体した。解体した中空糸膜モジュールの単糸を次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウム水溶液の混合液、シュウ酸と硝酸の混合液で薬品洗浄した後、純水透過水量を測定したところ、未使用の膜の82%に相当する透過水量であった。膜外表面を倍率5,000倍の走査型電子顕微鏡で観察したところ、膜表面のおよそ70%が荒れており、膜表面開孔の一部が閉塞し、透過水量の低下の要因と推定された。
【0066】
〈例26(浄化方法・比較例)〉 例10の中空糸膜モジュールを使用した以外は、例18と同一条件で浄化運転を行った。
上記浄化運転を10日間継続したところ、ろ水採水量は、初期値の60%となっていた。
次に運転装置から中空糸膜モジュールを取り外し、重量を測定したところ、初期重量の120%に増加していた。
これを、再度、図2に示す運転装置に取り付け、中空糸膜モジュールのろ水側の弁を閉じて、原水を供給しながら、エアバブリング(供給水量:3m/Hr、供給エアー量:5Nm/Hr、バブリング時間:5分)を実施した。
エアバブリングを実施後、再度、中空糸膜モジュールの重量を測定したところ、初期重量の115%となっていた。
これは、エアバブリングにより、中空糸膜モジュール重量の5%に相当する、懸濁物質が排出された事になる。
さらに、上記中空糸膜モジュールのリーク検査を行ったが、リークの発生は、確認されなかった。
上記中空糸膜モジュールを解体し、接着固定部の接着状況を観察したところ、中空糸膜束の中心部分で一部充填されていない部分が観察された。
【0067】
〈例27(浄化方法・比較例)〉 例8の中空糸膜モジュールを使用した以外は、例19と同一条件で同時に、並列して浄化運転を行った。
運転が2ヶ月経過した時に2日間に渡り、濁度340度の高濁度原水が供給されたので、その2日間とその後の1日の合計3日間に限って、5分間のろ過の後、逆洗とエアバブリングを同時に行う運転方法に変更した。この時の蓄積濁質量は、(10分ろ過/1分物理洗浄)のままでは、11.6であるが、5分ごとの物理洗浄としたので、5.8となった。
合計3ヶ月の運転の間にTMPは、初期の2.5倍となっていた。その後、モジュールを装置から取り外し、リーク検査を行ったが、リークの発生は確認されなかった。また、運転後の中空糸膜モジュールを解体し、単糸を次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウム水溶液の混合液、シュウ酸と硝酸の混合液で薬品洗浄した後、純水透水量を測定したところ、未使用の膜の74%に相当する透水量であった。
膜外表面を倍率5,000倍の走査型電子顕微鏡で観察したところ、膜表面のおよそ70%が荒れており、膜表面開孔の一部が閉塞し、透過水量の低下の要因と推定された。
【0068】
〈例28(浄化方法・参考例)〉 例11の中空糸膜モジュールを用いた以外は、例14、例22と同一運転条件で、浄化運転を行った。20日間の運転後、その平均ろ過圧は初期の2.9倍となっていた。運転終了後、リーク検査を行ったが、リークの発生は確認されなかった。
さらに、上記膜モジュールを次亜塩素酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、シュウ酸水溶液、硝酸水溶液にて回復率が飽和するまで洗浄後、純水透過水量を測定したところ、初期値の87%の値を示した。
その後、中空糸膜モジュールを解体して膜外表面を倍率5,000倍の走査型電子顕微鏡で観察したところ、膜表面のおよそ20%に荒れが観察され、膜表面の開孔も、僅かではあるが閉塞しており、透過水量の低下の要因と推定された。
【0069】
〈例29(浄化方法・参考例)〉 例11の中空糸膜モジュールを用いた以外は、例15、例23と同一運転条件で同時に並列して、浄化運転を行った。
運転の経過と共に、ろ過圧力が除々に上昇し、運転3ヶ月目に、平均ろ過圧が初期の3倍となったので、次亜塩素酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、シュウ酸水溶液、硝酸水溶液による、薬品洗浄を行った。
総運転期間が5ヶ月となった時点で、中空糸膜モジュールを装置から取り外し、リーク検査を行ったが、リークは確認されなかった。
さらに、上記中空糸膜モジュールを次亜塩素酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、シュウ酸水溶液、硝酸水溶液にて回復率が飽和するまで洗浄し、純水透過水量を測定したところ、初期値の79%の値を示した。
その後、中空糸膜モジュールを解体して膜外表面を倍率5,000倍の走査型電子顕微鏡で観察したところ、膜表面のおよそ20%に荒れが観察され、膜表面の開孔も僅かではあるが、閉塞しており、透過水量の低下の要因と推定された。
【0070】
〈例30(浄化方法・参考例)〉 例12の中空膜モジュールを使用して、原水として、濁度が0.1度〜5度(平均値は、2.2度)、水中の微粒子の粒径が0.9μm〜30μm(中央値は、9μm)、水温が12℃の河川水表流水を用いた以外は、例14、例22と同一条件で浄化運転を行った。原水の濁度は2.2度、ろ過工程時間内に膜を透過する総ろ過水量は0.43m3、蓄積濁質量は0.13であった8ヶ月後の膜間平均差圧は初期値の2.0倍となり、これ以上の運転の継続は不可能と判断し、中空糸膜モジュールを解体した。解体した中空糸膜モジュールの単糸を次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウム水溶液の混合液、シュウ酸と硝酸の混合液で薬品洗浄した後、純水透過水量を測定したところ、未使用の膜の83%に相当する透過水量であった。膜外表面を倍率5,000倍の走査型電子顕微鏡で観察したところ、膜表面のおよそ20%に荒れが観察され、膜表面の開孔も僅かではあるが、閉塞しており、透過水量の低下の要因と推定された。
【0071】
〈例31(浄化方法・参考例)〉 例11の中空糸膜モジュールを使用した以外は、例19、例27と同一条件で同時に、並列して浄化運転を行った。
運転が2ヶ月経過した時に2日間に渡り、濁度340度の高濁度原水が供給されたので、その2日間とその後の1日の合計3日間に限って、5分間のろ過の後、逆洗とエアバブリングを同時に行う運転方法に変更した。この時の濁質蓄積量は、(10分ろ過/1分物理洗浄)のままでは、11.6であるが、5分ごとの物理洗浄としたので、5.8となった。
合計3ヶ月の運転の間にTMPは、初期の2.0倍となっていた。その後、モジュールを装置から取り外し、リーク検査を行ったが、リークの発生は確認されなかった。また、運転後の中空糸膜モジュールを解体し、単糸を次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウム水溶液の混合液、シュウ酸と硝酸の混合液で薬品洗浄した後、純水透水量を測定したところ、未使用の膜の78%に相当する透水量であった。
膜外表面を倍率5,000倍の走査型電子顕微鏡で観察したところ、膜表面のおよそ20%程度に荒れが観察され、膜表面の開孔も僅かではあるが閉塞しており、透過水量の低下の要因と推定された。
【0072】
〈例32(浄化方法・比較例)〉 例13の中空糸膜モジュールを使用した以外は、例28と同時に、同一条件で浄化運転を行った。20日間の運転後、その平均ろ過圧は初期の3.3倍となっていた。
運転終了後、リーク検査を行ったが、リークの発生は確認されなかった。
さらに、上記膜モジュールを次亜塩素酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、シュウ酸水溶液、硝酸水溶液にて回復率が飽和するまで洗浄後、純水透過水量を測定したところ、初期値の70%の値を示した。
その後、中空糸膜モジュールを解体して膜外表面を倍率5,000倍の走査型電子顕微鏡で観察したところ、膜表面のおよそ50%に荒れが観察され、膜表面の開孔も比較的広い面積にわたって閉塞しており、透過水量の低下の要因と推定された。
例1〜32の結果を表2〜9に示す。表2〜9より、外径0.5mm以上3.1mm以下の中空糸膜を用いる浄化方法において、ウェーブを有する中空糸膜を用いる本発明の範囲内の方法が、ウェーブを有しない中空糸膜を用いる方法に比べて安定したろ過を行えることが明らかである。更に、嵩高度が好適な範囲(1.45以上2.00以下)である場合、波長・波高が異なるウェーブが混在する場合、より好適な結果が得られることがわかる。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
【表5】

【0078】
【表6】

【0079】
【表7】

【0080】
【表8】

【0081】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の浄化方法によれば、無機成分を含有した微粒子を含む懸濁水を含む懸濁水を膜で処理する際に、微粒子による膜表面の傷の発生を防止でき、長期に亘る安定なろ過が可能となる。従って、河川水、湖沼水、伏流水等の上水、工業用水、下水、下水二次処理水、工業排水、家庭排水、し尿、海水などの無機成分を有する懸濁水の浄化分野において有用である。また、本発明の中空糸膜モジュールは、太い中空糸膜がウェーブを有し、嵩高くなっているため、膜同士の擦れが少なく膜が傷つきにくいという長所がある。したがって、本発明の懸濁水の浄化方法に好適に使用でき、懸濁物質の排出性にも優れている。また、膜端部の接着部欠陥の低減された大型モジュールを製造するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の浄化方法の一例を示すフロー図である。
【図2】本発明の浄化方法の他の一例を示すフロー図であり、オゾンガスを添加可能なフローの一例を示す図である。
【図3】本発明の中空糸膜束の嵩高度を測定する冶具の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の中空糸膜の製造方法の一例を示す模式図である。
【図5】本発明の中空糸膜モジュールの一例を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外径が0.7mm以上2.5mm以下であるウェーブを有した中空糸膜の多数を引き揃えた中空糸膜束であって、該中空糸膜の偏平率が0.9以上1.0以下でありかつ、下記式で示される嵩高度が1.45以上2.00未満であることを特徴とする中空糸膜束。
ここで、嵩高度=(S1/S2)であり、S1は膜束を構成する中空糸膜のうち任意の600本の小束の、2.9Nの荷重下で計測される束周長から算出する断面積をいい、S2は、該中空糸膜の外径換算断面積の600倍をいう。
【請求項2】
前記外径が1.0mm以上2.5mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の中空糸膜束。
【請求項3】
前記偏平率が0.95以上1.0以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の中空糸膜束。
【請求項4】
製膜原液を2重紡口から中空糸状に押し出して中空糸状物を得る工程、該中空状物を冷却・固化又は凝固させて中空糸膜を得る工程を含む製造方法により得られる中空糸膜束であって、前記冷却・固化又は凝固工程に先立ち、或いは前記冷却・固化又は凝固工程の間に該中空状物に脈動流を接触させることにより得られた中空糸膜を多数本引き揃えることにより得られるウェーブが付与された中空糸膜束。
【請求項5】
前記中空糸膜の偏平率が0.8以上1.0以下であることを特徴とする請求項4に記載の中空糸膜束。
【請求項6】
前記中空糸膜の外径が0.7mm以上2.5mm以下であることを特徴とする請求項4又は5に記載の中空糸膜束。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の中空糸膜束により構成され、前記中空糸膜が多数本引き揃えて35%以上55%以下の充填率で充填され、少なくとも一方の端部が封止・固定された中空糸膜モジュール。
【請求項8】
無機成分を含有する微粒子を含む懸濁水を、請求項7に記載の中空糸膜モジュールを用いて浄化することを特徴とする、懸濁水の浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−51956(P2010−51956A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192048(P2009−192048)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【分割の表示】特願2000−612222(P2000−612222)の分割
【原出願日】平成12年4月17日(2000.4.17)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】