説明

中空集成角材及びその製造方法

【課題】 原木から芯を含む所望の角形断面を備えた角材を取り出すと共に、残りの辺材から該角材と同寸の角形断面を有する角材を得ることを可能とする中空集成角材及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 断面台形状の4本の棒状材14を用いて形成され、中央に長手方向に延びる中空部11を有する中空集成角材10であり、各棒状材14は、断面形状の台形の長辺を形成する面14aが中空集成角材10の外表面を形成し、前記台形の短辺を形成する面14bが中空部11の内壁面を形成しており、4本の棒状材14は、隣接する棒状材の前記台形の斜辺を形成する面14c,14c同士が接合されて一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空集成角材及びその製造方法に関し、詳しくは、中央に長手方向に延びる中空部を有する中空集成角材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅用の柱、梁、土台等に用いられる角材としては、通直で十分に太い丸太から角材を製材し、期間を掛けて自然に乾燥させたものが広く用いられてきた。また、近年になって、十分に太い丸太の入手が困難となってきたため、細い丸太の外周をそぎ落とすように製材して、丸太の芯を含む角材を得、これを住宅用の柱、梁、土台等として用いるようになった。さらに、欠点の多い製材品から欠点を除去して木取り、無欠点の小幅で短小な木取り品を得、それを縦横接着して得られる集成材を、住宅用の柱、梁、土台等に用いることも行われている。
【0003】
また、製材を原木から効率良く得るようにして歩留まりを向上させた技術が開示されており(例えば、特許文献1参照)、特許文献1に記載の発明によれば、原木の中心部から略正方形断面の角材を太い棒材として取り出すと共に、この角材の周囲のラス材から集成材用の板材を取り出して、これらの板材を接着剤を介して張り合わせることにより、敷居材や鴨居等として使用できる材が得られる。
【0004】
さらにまた、特許文献2には、4本の棒状材を用いて形成され、中央に長手方向に延びる中空部を有する中空集成角材が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−74444号公報
【特許文献1】特表平10−537093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来、比較的径の細い丸太(原木)から、柱、梁、土台等として用い得る角材を製材することは行われている。
しかしながら、丸太(原木)から芯を含む角材を取り出した残りの部分である辺材は、曲げや圧縮などの強度特性に優れているにもかかわらず、特許文献1のように、ラス板や間柱等、強度をさほど必要としない部材に用いられることが多かった。
また、特許文献2記載の中空集成角材は、丸太(原木)から芯を含む角材を取り出した後の辺材を有効活用できるものではなかった。
【0007】
本発明の目的は、原木から芯を含む所望の角形断面を備えた角材を取り出すと共に、残りの辺材から該角材と同寸の角形断面を有する角材を得ることを可能とする中空集成角材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、断面台形状の4本の棒状材を用いて形成され、中央に、長手方向に延びる中空部を有する中空集成角材であって、前記各棒状材は、断面形状の台形の長辺を形成する面が中空集成角材の外表面を形成し、前記台形の短辺を形成する面が前記中空部の内壁面を形成しており、前記4本の棒状材は、隣接する棒状材の前記台形の斜辺を形成する面同士が接合されて一体化されていることを特徴とする中空集成角材を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
本発明は、前記中空集成角材の製造方法であって、原木を、互いに平行な一対の面と、これらに垂直で且つ互いに平行な他の一対の面とで長手方向に切断して、断面四角形状の芯持ち角材を切り出す工程、芯持ち角材を切り出した後の残りの部分から、断面台形状で、その断面形状の台形の長辺の長さが、前記芯持ち角材の各側面の幅と略等しい長さの4本の棒状材を得る工程、及び、4本の前記棒状材を、前記台形の長辺を形成する面を外側に向けると共に前記台形の短辺を形成する面を内側に向けて配し、隣接する棒状材の、前記台形の斜辺を形成する面同士を接着剤を介して接合させる工程を具備することを特徴とする、中空集成角材の製造方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の中空集成角材及びその製造方法によれば、一本の原木から、所望の角形断面を有する芯持ち角材と、該角材と同寸の角形断面を有する中空集成角材の計二本の角材を得ることができる。
本発明の中空集成角材は、その中空部を配線や配管用に用いることができる。例えば、中空部に電気器具用の配線を通し、中空集成角材の表側から中空部に達する孔をあけ、照明器具あるいは電気設備のスイッチ、コンセント等の端子箱に結線後、孔に嵌め込み固定することにより、電線を露出させることなく配線できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に示す本発明の好ましい一実施形態に係る中空集成角材10(以下、「中空集成角材10」という。)は、例えば木造住宅建築物において柱部材として用いられる角材であって、一辺の長さaが105mmの正方形又は略正方形(以下「正方形」とする。)の角形断面を有していると共に、その中央部分には、当該中空集成角材10の軸方向に貫通する貫通中空部(長手方向に延びる中空部)11を備えている。
中空集成角材10は、原木12〔図2(a)参照〕として、直径が例えば160〜180mmのスギ丸太を用いて形成されたものであり、一本の原木12から、一辺の長さa1が105mmの芯持ちソリッド材15〔図2(b)参照〕を切り出す共に、一辺の長さaが105mmである同じ寸法の角材を得ることを可能とするものである。
【0012】
中空集成角材10は、図1に示すように、断面台形状の4本の棒状材14(以下「台形ラミナ」という)を用いて形成されている。各台形ラミナ14は、その断面形状である台形の長辺を形成する面14aが、中空集成角材の外表面(長手方向に沿う各側面)を形成しており、その断面形状である台形の短辺を形成する面14bが、貫通中空部11の内壁面を形成している。
【0013】
4本の台形ラミナ14は、隣接する台形ラミナ14の、台形の斜辺を形成する面14c同士が接着剤を介して互いに接合されることによって一体化されている。
中空集成角材10においては、断面形状である台形の長辺とその両側に位置する2つの斜辺それぞれとのなす角度が45度である。即ち、台形の長辺を形成する面14aと、その両側に位置する前記台形の斜辺を形成する面14c,14cそれぞれとのなす角度θ(図1参照)が、何れも45度である。
また、隣接する台形ラミナ14における、台形の長辺を形成する面14aは互いに直角をなしており、隣接する台形ラミナ14における、台形の短辺を形成する面14bも互いに直角をなしている。中空集成角材10の断面形状及び貫通中空部11の断面形状は、何れも正方形である。
【0014】
中空集成角材10は、例えば、以下に示す作業工程にしたがって、容易且つ効率良く製造することができる。
先ず、図2(a)に示す、断面円形状の原木12から、図2(b)に示す芯持ち角材15を切り出す作業を行う。かかる切出し作業は、例えばツインソーを用いて、原木12を、その芯部分12aを挟む、互いに平行な一対の切断面13a,13aで切断して、それらの外側(表皮側)に位置する部分を切り取り、更に、前記一対の切断面13a,13aに垂直で且つ互いに平行な他の一対の切断面13b,13bで切断して、それらの外側(表皮側)に位置する部分を切り取ることによって行われる。このようにして切り出された芯持ち角材15は、図2(b)に示すように、切断面13a,13bで切断して生じた、互いに平行な一対の側面15aと、切断面13b,13bで切断して生じた、互いに平行な他の一対の側面15bとを有する。
【0015】
次に、芯持ち角材15を切り出した後の残りの辺材16から台形ラミナ14を切り出す。各辺材16は、図2(c)に示すように、切断面13a又は切断面13bで切断して生じた平面16aを有している。辺材16から台形ラミナ14を切り出すには、図2(a)又は(c)に示すように、辺材16における、前記平面16aの幅方向の両端部分から、該平面16aに対して、それぞれ45度の角度を成す一対の切断面13cで斜めに切断して、それぞれの外側(表皮側)に位置する部分を切り取り、さらに、前記平面16aに平行で且つ該平面16aから木表側(表皮側)に距離dだけ離れた切断面13dで切断し、その外側(表皮側)に位置する部分を切り取る。かかる切断作業は、辺材16をその長手方向に沿って切断し得る各種公知の装置を用いて行うことができ、特に斜め切断を行うことのできる角度調整機能付きの丸鋸または帯鋸を用いることが好ましい。
【0016】
ここで、台形ラミナ14の切断面13aと切断面13dとの間の距離d(台形ラミナの厚みも同様)は、得ようとする中空集成角材10の一辺の長さa(本実施形態では105mm)の25〜30%の長さとすることが好ましい。切断面13aと切断面13dとの間の距離dが、一辺の長さaの25%を下回ると、中空柱の肉厚が薄くなるため強度保持が難しくなり、一辺の長さaの30%を超えると、中空部が狭くなるためコンセントやスイッチの端子箱を嵌め込むことが困難になる。
【0017】
このようにして得られた4本の台形ラミナ14は、それぞれ、断面台形状の棒状材であり、図3(a)に示すように、切断面13a又は13bで切断して生じた側面14aと、切断面13dで切断して生じた側面14bと、切断面13c,13cで切断して生じた一対の側面14cとを有している。これらの側面14a〜cは、側面(木裏側の面)14aが、断面形状である台形の長辺を形成する面であり、側面14bが、該台形の短辺を形成する面(木表側の面)であり、側面14c,14cが台形の斜辺を形成する面である。尚、側面14aは、前記平面16aの全体又は該平面16aからその両側縁部分を切断除去した平面からなる。
【0018】
そして、これら4本の台形ラミナ14を、図3(b)に示すように、側面14aを外側に向け且つ斜めの側面14cに接着剤を塗布した後、これらの台形ラミナ14を、隣接するラミナ14の各側面14aが直角をなし、また、斜めの側面14c同士を密着させるようにして、接合一体化させる。これにより、上記構成の中空集成角材10が得られる。
【0019】
なお、かかる接合一体化する作業に先立って、台形ラミナ14を乾燥させる作業や、むら取り加工を施す作業を適宜行うこともできる。
台形ラミナ14の乾燥方法としては、木材の乾燥方法として従来知られている各種の方法を特に制限なく用いることができ、天然乾燥でも人工乾燥でも良く、両者を組み合わせた方法でも良い。好ましい人工乾燥の方法としては、温度及び湿度を制御可能な乾燥装置内に配置して乾燥させる方法を挙げることができる。ここで、台形ラミナ14の乾燥は、含水率がそれぞれ15%以下になるように行うことが好ましい。含水率が15%以下となるまで乾燥させることにより、台形ラミナ14同士の接着性を向上させることができ、特に12%以下となるまで乾燥した場合には、特に強度が優れた中空集成角材10を得ることができる。
【0020】
また、むら取り加工を施す作業は、台形ラミナ14の各面に生じた反りや歪みを除去する加工であり、むら取り加工を施すための手段としては、例えば、むら取りプレーナー、モルダー等の各種公知の装置を用いることができる。むら取り加工は、少なくとも接着面となる、台形ラミナ14の斜めの切断面13cに対して行うことが好ましいが、本実施形態においては、モルダーを用いて、切断面13a(13b)や切断面13dを含めて台形ラミナ14の周面の総てに対してむら取り加工を施している。
【0021】
さらに、台形ラミナ14を接合一体化する前に台形ラミナ14に、反りや曲がり、捻れ等による不良部分が生じている場合には、これらの部分を適宜切断除去し、不良部分を除いた部分のみを、例えばフィンガージョイントを介して長手方向に継いでゆくことにより、所望の長さの台形ラミナ14とすることができる。これによって、得られた台形ラミナ14の利用度を高めることが可能になると共に、内部応力の発生を効果的に抑制することが可能になる。またフィンガージョイントが介在することにより、中空集成角材10の強度が低下しないように、フィンガージョイントは、隣接する台形ラミナ14の間で千鳥状にずらせて配置することが好ましい。
【0022】
一本の中空集成角材10を得るために用いる4本の台形ラミナ14は、同じ一本の原木12から得られたものである必要は必ずしもなく、他の原木12から同様にして得た台形ラミナ14を組み合わせて一本の中空集成角材としても良い。
台形ラミナ14の接着に用いる接着剤としては、各種公知の接着剤を用いることができ、例えばユリア樹脂、酢酸ビニル樹脂、水性ビニルウレタン樹脂接着剤等を挙げられるが、特に水性ビニルウレタン樹脂接着剤を用いることが好ましい。
水性ビニルウレタン樹脂接着剤を用いると、特に接着強度が大きいので柱又は梁用の中空集成角材10として充分な強度が得られると共に、硬化後においても鉄よりも柔らかいので、中空集成角材10の切断やほぞ加工などの際に工具等を損傷させることを防止できる。更に、水性ビニルウレタン樹脂接着剤は、ホルムアルデヒドなどの化学物質を大気中に放散しない点においても有利である。
【0023】
これらの接着剤は、台形ラミナ14を、側面14aが互いに直角をなすように組み合わせて密着配置するのに先立って、接着面となる各台形ラミナ14の傾斜した側面14cに、スプレッダー等の各種公知の塗布装置を用いて接着面に均一に塗布される。4本の台形ラミナ14が、互いに直角をなすように組み合わせて密着配置された後に、例えばプレス装置により圧締しながら隣接する台形ラミナ14、14同士を接着させることにより、中空集成角材として接合一体化されることになる。ここで、プレス装置としては、各種公知のものを用いることができるが、平盤プレスを用いることが好ましい。平盤プレスを用いることにより、接着面の全域に亘って均一な圧力を加えながら接着することができ、強度及び外観に一層優れた中空集成角材10を製造することができる。尚、接着剤は、接着面の全体に亘って均一に塗布することが好ましい。
【0024】
圧締する際に、台形ラミナ14、14の傾斜した側面14cが滑ってずれることを防止するため、台形の短辺14bの長さを一辺とする正方形の断面で、長さが20cmほどの銅製角材を台形ラミナ14、14の両端に置き、該銅製角材を取り巻くように台形ラミナ14、14を密着配置したのち圧締することが、安定して中空集成角材10を製造することが可能となるので好ましい。なお、銅製角材は、接着剤が硬化後に取り外すものであり、そのため使用に際してはその都度、離型剤を塗布する。離型剤としては、テフロン(登録商標)系あるいはオレフィン系のシート、またはスプレー剤等を挙げることができるが、使い勝手のよいスプレー剤が好ましい。
銅製角材に代わり、同寸の木製角材を用いることもできる。その際は接着剤の硬化後に取り外すことをせず、予め該木製角材の四面に水性ビニルウレタン樹脂接着剤等を塗布することにより、4本の台形ラミナ14、14と接合一体化させる。その結果、得られた中空集成角材10は両端部の20cmほどが芯まで詰まった角材となるため、通常のソリッド材と同様にホゾなどの仕口加工を行うことが可能となる。
【0025】
本実施形態の中空集成角材10によれば、一本の原木から、一辺の長さがaである断面正方形状の芯持ち角材15を得ることができるとともに、一辺の長さa1が、芯持ち角材15の各側面の幅(断面の一辺の長さa)とほぼ同じである角形断面の中空集成角材10を得ることができ、計二本の角材を得ることができる。そのため、原木、特に比較的径の細い丸太(原木)を有効活用することができる。また、中空集成角材10の外面が、台形ラミナ14の木裏側の面によって形成されているため、芯持ち角材15の外面と中空集成角材10の外面とが同様の外観を呈する。そのため、これらを組み合わせて用いることが容易である。
【0026】
また、本実施形態によれば、中空集成角材10はその中央部分に、4本の台形ラミナ14の台形の短辺を形成する面14bによって囲まれる、例えば50mm角の正方形の断面形状の貫通中空部11を有していることにより、105mmの角形断面の断面積よりも23%ほど断面積が減少しており、これによって105mm角のソリッド柱と比較して、材料の軽量化を図ることが可能になる。
【0027】
さらに、本実施形態によれば、貫通中空部11は、強度への影響の少ない中空集成角材10の中央部分に貫通形成されており、当該貫通中空部11による断面2次モーメントの低減もまた、例えば50mm角の正方形の断面形状の場合、5%程度と少ないため、105mm角のソリッド角材と比較して、遜色のない曲げ剛性や座屈強度を保持することが可能となる。
【0028】
さらにまた、本実施形態によれば、貫通中空部11は、台形ラミナの台形の短辺を形成する側面14cによって囲まれ、正方形の断面形状となるように形成されているので、これの内周面は凸凹のない平坦な面となっていると共に、配線や配管を挿通しやすく、かつ中空集成角材の表側から中空部に達する孔をあけることにより、電気設備の端子箱を観め込みやすい形状を備えており、これによって、配線や配管用の穴や、電気設備の端子箱用の穴として有効利用することも可能になる。
【0029】
以上、本発明を、その好ましい一実施形態に基づいて説明したが、本発明は、かかる実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜に変更可能である。例えば、中空集成角材は、一辺が105mmの正方形の角形断面を有するものである必要は必ずしもなく、一辺が105mmよりも大きいか或いは小さい角形断面を有するものの他、矩形断面を有する中空集成角材として形成することもできる。矩形断面の中空集成角材は、例えば、矩形断面を有する芯持ち角材を原木から切り出した後の辺材から、断面形状の台形の長辺の長さが、芯持ち角材の広幅な方の側面の幅と略等しい長さの断面台形状の2本の棒状材と、断面形状の台形の長辺の長さが、前記芯持ち角材の狭幅な方の側面の幅と略等しい長さの断面台形状の2本の棒状材とを切り出し、これらを、断面形状の台形の斜辺を形成する面同士を接合して一体化させることにより得られる。
さらに中空集成角材は、柱部材の他、梁部材等として用いる角材として形成することもできる。さらにまた、中空集成角材を構成する4本の台形ラミナは、その全てが異なる原木から各々得られたものであっても良い。

【実施例】
【0030】
以下、実施例に基づき本発明を更に説明する。
〔実施例1〜6〕
径が160〜180mmのスギ丸太を原木とし、上述の製造方法によって製造された、上記実施形態の中空集成角材10と同様の構成を備える一辺が105mmの正方形断面を有する10本の中空集成角材を実施例1〜10の角材として、JAS曲げA試験による曲げ試験(曲げヤング率の計測)を行い、10本の曲げヤング率を計測した。
なお、各中空集成角材の貫通中空部は、一辺が50mmの正方形断面とし、各中空集成角材の長さは2980mmとした。また、各中空集成角材を構成する台形ラミナの全てについて、予め曲げヤング率を計測しておき、これらの台形ラミナを4本ずつ組み合わせて中空集成角材を形成した時の理論的な曲げヤング率を、等価断面法を用いて事前に算出しておき、これと上記試験法によって計測した中空集成角材の曲げヤング率を比較することにより、接合一体化が不完全なためにおきる曲げヤング率の低下の有無も調べた。
試験結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
表1に示す試験結果を評価するに際し、中空集成角材に対する評価基準がないので、挽き板を積層接着した構造用集成材JAS規格を参考にすると、本発明に係る実施例1〜10の中空集成角材は、同一等級構成構造用集成材のE65−F255にほぼ相当しており、そのことから、構造用に用いることができる強度を有していることが判る。また、異なる曲げヤング率を有する4本の台形ラミナを中空集成角材に構成したときの曲げヤング率は、等価断面法による理論値と実際の計測値が極めてよく一致しており、接合一体化が不完全なためにおきる曲げヤング率の低下は全く見られないことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る中空集成角材を示す斜視図である。
【図2】図2(a)は、本発明の一実施形態に係る中空集成角材を形成するために原木を切断する状況を説明する斜視図であり、図2(b)は原木から切り出した通常の芯持ち角材の断面図であり、図2(c)は原木から芯持ち角材を切り出した後の辺材を示す斜視図である。
【図3】図3(a)は原木から、芯持ち角材を切り出した残りの辺材を台形ラミナに成形する状況を説明する断面図であり、図3(b)は台形ラミナが互いに直角となるように向きを合わせて接着一体化する工程を説明するものであり、且つ本発明の一実施形態に係る中空集成角材の断面を示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
10 中空集成角材
11 貫通中空部(長手方向に延びる中空部)
12 原木
12a 原木の芯部分
13a,13a 互いに平行な一対の面
13b,13b 互いに平行な他の一対の面
14 台形ラミナ(棒状材)
14a 断面形状の台形の長辺を形成する面
14b 断面形状の台形の短辺を形成する面
14c 断面形状の台形の斜辺を形成する面
a 中空集成角材の一辺の長さ
a1 芯持ち角材の一辺の長さ
d 台形ラミナの厚さ
15 芯持ち角材
16 辺材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面台形状の4本の棒状材を用いて形成され、中央に長手方向に延びる中空部を有する中空集成角材であって、
前記各棒状材は、断面形状の台形の長辺を形成する面が中空集成角材の外表面を形成し、前記台形の短辺を形成する面が前記中空部の内壁面を形成しており、
前記4本の棒状材は、隣接する棒状材の前記台形の斜辺を形成する面同士が接合されて一体化されていることを特徴とする中空集成角材。
【請求項2】
中空集成角材は、断面正方形状であり、各棒状材は、前記台形の長辺と該長辺の両側に位置する2つの斜辺とのなす角度がそれぞれ45度である請求項1記載の中空集成角材。
【請求項3】
請求項1又は2記載の中空集成角材の製造方法であって、
原木を、互いに平行な一対の面と、これらに垂直で且つ互いに平行な他の一対の面とで長手方向に切断して、断面四角形状の芯持ち角材を切り出す工程、芯持ち角材を切り出した後の残りの部分から、断面台形状で、その断面形状の台形の長辺の長さが、前記芯持ち角材の各側面の幅と略等しい長さの4本の棒状材を得る工程、及び、4本の前記棒状材を、前記台形の長辺を形成する面を外側に向けると共に前記台形の短辺を形成する面を内側に向けて配し、隣接する棒状材の、前記台形の斜辺を形成する面同士を接着剤を介して接合させる工程を具備することを特徴とする、中空集成角材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−82471(P2006−82471A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271192(P2004−271192)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【出願人】(500438312)住友林業フォレストサービス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】