説明

中継装置、中継装置の制御方法、中継装置の制御プログラム

【課題】複数の端末間で信頼性の重視される通信とリアルタイム性の重視される通信とが混在して行われる場合に、通信状況に適した通信方法に自動的に切り替える中継装置を提供する。
【解決手段】パケットを送受信する中継装置10の使用状況を、中継装置10が受信するパケットと送信するパケットとの少なくともいずれか一方に応じて判断する使用状況判断部B12と、中継装置10が受信するパケットの流量を制御するフローコントロール部B21と、使用状況判断部B12により判断される使用状況に応じてフローコントロール部B21による制御の有効と無効とを切り替えるモード切替部B14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク通信においてパケットを送受信する中継装置、並びにその中継装置の制御方法及び制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
IP(Internet Protocol)は、送信元から送信先へパケットを配送する機能を有する。IP網では、トランスポート層のプロトコルとして、TCP(Transmission Control Protocol)及びUDP(User Datagram Protocol)が用いられる。
【0003】
TCPは、パケットによるデータ送信を行う前に送信元と送信先との端末間で接続を確立するコネクション型のプロトコルである。TCPでは、端末間で接続を確立した上で通信状態を管理したり、パケットの欠損がないか、重複がないか、順序が異なっていないか、などのパケットの誤りの確認を行ったりする。そして、誤り訂正のためにパケットを再送する再送制御を行う。これらの結果、誤りのない信頼性の高いパケット通信が行われる。その一方で、接続の確立や遮断、訂正確認、再送制御などにより、パケットによるデータ通信に時間がかかることから、転送が完了するまでの時間が長くなってリアルタイム性では劣る。
【0004】
一方、UDPは、TCPとは異なり、送信元と送信先との間で接続の確立を行わないコネクションレス型のプロトコルである。また、UDPは、TCPとは異なり、誤り確認も誤り訂正も再送制御も行わず、送信元から送信先へ一方的にパケットによるデータを送信しているに過ぎない。これらの結果、パケットの順序相違、欠落、重複などの問題は発生し得るが、接続の確立や遮断、訂正確認、再送制御などを行わない分、パケットによるデータ転送が完了するまでの時間が短くて済みリアルタイム性では優れる。
【0005】
以上のように、TCPとUDPとの相対比較において、TCPによるパケット通信は信頼性に優れリアルタイム性に劣る特徴があり、UDPによるパケット通信はリアルタイム性に優れ信頼性に劣る特徴がある。
【0006】
このような特徴の違いを利用し、例えば端末間のファイル転送や電子メールの送受信など、リアルタイム性よりも信頼性が重視される通信の場合には、TCPが設定される。一方、例えば音声通話や動画配信など、信頼性よりもリアルタイム性が重視される通信の場合には、UDPが設定される。
【0007】
端末間のパケットの送受信は、多くの場合、スイッチングハブやルータなどの中継装置によって中継される。ところで、パケットの送受信をTCPにより実行するかUDPにより実行するかは送信元の端末において実行されるプログラム(Webブラウザ、IP電話、動画再生、ファイル送信など)によって規定されるため、中継装置においてはTCP及びUDPによるパケット通信を並行して実行することになる場合がある。このような場合、中継装置によって、リアルタイム性と信頼性を調整することが必要となる。
【0008】
このような調整を行うものとして、優先制御機能を搭載した中継装置がある。優先制御機能とは、受信パケットに対して優先度を決定し、優先度の高いパケットから優先的に転送する機能をいう。優先制御において、リアルタイム性を必要とするパケットの優先度を予め高く設定することで、リアルタイム性の高い通信を行うことが可能となる。
【0009】
また、上記調整を行うものとして優先制御機能を搭載した中継装置の他、帯域制御機能を搭載した中継装置も知られている(特許文献1参照)。帯域制御機能とは、パケットの種類毎に使用できる帯域を確保したり制限したりする機能をいう。帯域制御において、リアルタイム性を必要とするパケットに優先的に帯域を割り当てることで、リアルタイム性の高い通信を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−217966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記優先制御によりリアルタイム性を必要とするUDPパケットを優先的に転送したり、上記帯域制御によりリアルタイム性を必要とするUDPパケットの帯域を優先的に確保したりすると、次のような問題が生じる。
【0012】
すなわち、中継装置はパケットを一時的に格納するバッファを備えている。中継装置が受信したパケットは一旦バッファに溜められた後、宛先に送信されるが、中継装置にパケットが集中し過ぎてバッファの容量を超えてしまう場合がある。バッファの容量を超えてしまうとパケットが損失してしまい、信頼性が損なわれる。ここで、上記優先制御や帯域制御により、予め定められた優先度に従ってパケットを転送したり帯域を優先的に確保したりしていると、中継装置はTCPパケットを宛先へ優先的に送信しないことになる。そうなると、バッファから溢れたTCPパケットについて再送制御が実行される。再送制御が実行されることにより再びその分のパケットが中継装置に送信され、バッファからパケットが更に溢れやすくなる。このような悪循環をもたらすという問題が生じる。このような問題を解決するものとして、フローコントロール機能を備えた中継装置が提供されている。
【0013】
フローコントロール機能とは、バッファが溢れないように送信元の端末にパケットの送信を中断させたり、送信速度を制限させたりする調整機能をいう。中継装置のフローコントロール機能を有効にするか無効にするかの設定は、中継装置の設置環境に応じて、管理者により静的に行われる。このフローコントロール機能により、中継装置のバッファが溢れることによるパケットの損失を防ぐことが可能となり、信頼性の高い通信を行うことが可能となる。しかしながら、パケットの送信を中断させたり送信速度を制限させたりすることにより、通信のリアルタイム性が損なわれる。
【0014】
以上のように、信頼性重視のパケットとリアルタイム性重視のパケットが混在する中にあって、中継装置が優先制御機能や帯域制御機能、フローコントロール機能を単に備えているだけでは、リアルタイム性と信頼性とをバランスよく調整できているとまではいえないのが実情である。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、複数の端末間で信頼性の重視される通信とリアルタイム性の重視される通信とが混在して行われる場合に、通信状況に適した通信方法に自動的に切り替えることが可能な中継装置、並びにその中継装置の制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以下、上記課題を解決するのに有効な各種の手段を、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。
【0017】
手段1.パケットを送受信する中継装置であって、
前記中継装置が受信するパケットと送信するパケットとの少なくともいずれか一方に応じて、前記中継装置の使用状況を判断する使用状況判断部と、
前記中継装置が受信するパケットの流量を制御するフローコントロール部と、
前記使用状況判断部により判断される使用状況に応じて、前記フローコントロール部による制御の有効と無効とを切り替えるモード切替部と、
を備えることを特徴とする中継装置。
【0018】
手段1によれば、フローコントロール部が端末からのパケットの送信を一時的に禁止したり送信速度を調整したりしてパケットの流量を制御することにより、中継装置はパケット損失を防止する信頼性の高い通信方法でパケットの送受信を行うことができる。また、使用状況判断部の判断により、例えばリアルタイム性が要求されるパケットが多いと判断されたような場合には、モード切替部のモード切替によりフローコントロール部による制御を無効にすることが可能である。したがって、使用状況によってはフローコントロール部の制御を無効化してリアルタイム性の高い通信方法でパケットの送受信を行うこともできる。以上のように中継装置の使用状況に応じてフローコントロール部のモード切替を動的に実行することにより、通信状況に適した通信方法が自動選択される。
【0019】
手段2.前記モード切替部によって前記フローコントロール部による制御が無効に切り替えられている場合に、信頼性が要求されるパケットよりもリアルタイム性が要求されるパケットを優先して送信するための制御を行う優先制御部を備えることを特徴とする手段1に記載の中継装置。
【0020】
手段2によれば、フローコントロール部による制御が無効とされている場合には、優先制御部によってリアルタイム性を要するパケットを優先して送信することが可能となる。これにより、信頼性が要求される使用状況においてフローコントロール部を有効とし、リアルタイム性が要求される使用状況においてフローコントロール部を無効にして優先制御部が機能するように切り替えられることにより、信頼性が要求される使用状況とリアルタイム性が要求される使用状況との相反する状況に対し、適切に対応することができる。なお、信頼性が要求されるパケットの代表例はTCPパケットであり、リアルタイム性が要求されるパケットの代表例はUDPパケットである。また、優先制御部による「信頼性が要求されるパケットよりもリアルタイム性が要求されるパケットを優先して送信するための制御」としては、信頼性が要求されるパケットに対し優先度を決定して優先度の高いパケットから優先的に転送する優先制御の他、信頼性が要求されるパケットに使用できる帯域を確保する帯域制御でもよく、これら優先制御及び帯域制御をともに行うものであってもよい。
【0021】
手段3.前記使用状況判断部は、受信したパケットのうち所定の種類のパケットによって占められる占有率を検出し、前記占有率に基づき前記使用状況を判断することを特徴とする手段1又は2に記載の中継装置。
【0022】
手段3によれば、使用状況の判断に際し、中継装置が受信するパケットを監視して所定の種類のパケットの占有率を検出することにより、使用状況判断部が客観的な判断を行いやすくなる。その結果、モード切替も適切に実行されることとなる。
【0023】
手段4.前記所定の種類のパケットは、リアルタイム性が要求されるパケット又は信頼性が要求されるパケットであることを特徴とする手段3に記載の中継装置。
【0024】
手段4によれば、リアルタイム性が要求されるパケット又は信頼性が要求されるパケットの少なくともいずれかの占有率が把握されることにより、リアルタイム性が要求されている使用状況か信頼性が要求されている使用状況かを判断するのに役立つ。
【0025】
手段5.前記使用状況判断部は、前記占有率を一定時間内においてカウントされたパケット数に基づき検出することを特徴とする手段3又は4に記載の中継装置。
【0026】
手段5によれば、占有率を一定時間内のパケット数により求めることにより得ることとしたため、時間が固定されている前提であれば実際の処理としてパケットをカウントするだけでも占有率を把握することができ、占有率の演算処理が容易になる。
【0027】
手段6.前記所定の種類のパケットは、パケットが送信される先のプログラムを特定するために用いられるポート番号を用いて分類され、
前記使用状況判断部は、前記ポート番号に対応した重み付けをし、その重み付けを利用して前記占有率を検出することを特徴とする手段3〜5のうちいずれか1に記載の中継装置。
【0028】
単純に占有率を検出する場合には、特に配慮すべき主要なパケットが送信される先のプログラムについて、適切なモード切替を実行することができない場合が生じる。この点、手段6によれば、主要なパケットが送信される先のプログラムについて重み付けをして占有率を検出するようにしたことから、単なるパケット数比較のような場合と比べて主要なパケットを優先することができる。
【0029】
手段7.前記使用状況判断部は、前記占有率の時間変化から前記使用状況を判断することを特徴とする手段3〜6のうちいずれか1に記載の中継装置。
【0030】
手段7によれば、占有率の時間変化を加味することにより、近い将来の占有率を予測することができる。したがって、モード切替部は予想される近い将来の使用状況にあわせたモード切替を実行することが可能となる。
【0031】
手段8.前記使用状況判断部は、前記フローコントロール部の制御の有効と無効との時間変化を履歴として記録し、前記履歴と前記占有率とを用いて前記使用状況を判断することを特徴とする手段3〜7のうちいずれか1に記載の中継装置。
【0032】
手段8によれば、記録された履歴から、中継装置に接続されている端末が信頼性を要求する場面が多いのか、リアルタイム性を要求する場面が多いのか、という傾向を把握することができる。その把握された傾向を利用することにより、より適切なモード切替を実行することが可能となる。
【0033】
手段9.前記使用状況判断部は、前記使用状況を所定の種類のパケットの連続性に基づき検出することを特徴とする手段1〜8のいずれか1に記載の中継装置。
【0034】
手段9によれば、中継装置が送受信する所定の種類のパケットが連続している場合には、所定の種類のパケットの占有率が高まっていると判断することもできる。これを利用することにより、所定の種類のパケットの占有率を演算処理することなしに適切なモード切替を実行することもできるし、所定の種類のパケットの連続性と実際の占有率との両者から使用状況に一層適したモード切替を実行することもできる。
【0035】
手段10.前記モード切替部は、前記フローコントロール部による制御の有効と無効とを切り替えた後、所定の待ち時間が経過するまで切り替えを禁止することを特徴とする手段1〜9のいずれか1に記載の中継装置。
【0036】
中継装置のフローコントロール機能を有効から無効に、又は無効から有効に切り替えるためには、接続端末と中継装置間での再接続が必要である。そして、接続端末と中継装置間で接続、遮断及び再接続という処理が頻繁に行われると、その処理中にはデータ用の通信を行うことができない。したがって、手段10のようにモード切替が実行された後一定時間再度のモード切替を禁止することは、これを禁止しない場合と比べて、データ用の通信を不可とする期間が減る効果があり、フローコントロール機能の有効時も無効時も有利な通信状態を得られる。
【0037】
手段11.外部端末と接続するために用いられる複数のポートを備え、
前記フローコントロール部は、前記ポート毎に前記中継装置が受信するパケットの流量を制御することが可能であり、
前記モード切替部は、前記ポート毎に前記フローコントロール部による制御の有効と無効とを切り替えることが可能であることを特徴とする手段1〜10のいずれか1に記載の中継装置。
【0038】
手段11によれば、複数のポートを備えているため、複数の外部端末を中継装置が中継することができる。ここで、ポート毎に接続端末が異なるため、各端末のパケット送受信状況に応じてポート毎にフローコントロール機能の設定を行うことで、きめ細かな制御が可能となる。
【0039】
以上説明した中継装置は、スイッチングハブに適用することが代表例の一つとして想定されている。また、上記各手段について中継装置を前提に説明したが、中継装置の制御方法や制御プログラムとして提供しても、上記課題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】中継装置のハードウェア構成図
【図2】中継装置の機能ブロック図
【図3】定期処理を示すフローチャート
【図4】モード決定処理を示すフローチャート
【図5】モード切替処理を示すフローチャート
【図6】モード決定処理の変形例(1)を示すフローチャート
【図7】モード決定処理の変形例(2)を示すフローチャート
【図8】モード決定処理の変形例(3)を示すフローチャート
【図9】モード決定処理の変形例(4)を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、本実施形態に係る中継装置10を説明する。図1は本実施形態における中継装置10のハードウェア構成図である。
【0042】
中継装置10は、本実施形態では例えばスイッチングハブである。なお、中継装置10としては、スイッチングハブの他、ルータやレイヤー3スイッチなどであってもよい。中継装置10は、CPU111と、RAM112と、FlashROM113と、スイッチングエンジン121と、MACチップ1211,1221,1231と、物理層チップ(以下PHYと言う)1212,1222,1232と、ポート1213,1223,1233とを備える。そして、スイッチングエンジン121と、MACチップ1211,1221,1231とがICチップに搭載された形でスイッチコントローラが構成されている。なお、PHY1212,1222,1232が更にICチップに搭載されてスイッチコントローラが構成されるものであってもよい。ポート1213,1223,1233は複数備えられており、MACチップ1211,1221,1231及びPHY1212,1222,1232はポート1213,1223,1233毎に備えられている。中継装置10は、ポート1213,1223,1233を通じて外部端末21,22,23と接続される。当該接続は、例えば、IEEE802.3によって規格化されたイーサネット(登録商標)と呼ばれる接続方式によりなされ、例えば、10Mbps、100Mbps、1Gbps又は10Gpsの全二重又は半二重の通信速度を有する。
【0043】
外部端末21,22,23より送信された電気信号の形式を有するパケットはPHY1212,1222,1232によりデータに変換される。さらにデータに変換されたパケットは、PHY1212,1222,1232からMACチップ1211,1221,1231に送信される。ここで、MACチップ1211,1221,1231は固有の識別番号を有する。各MACチップ1211、1221、1231はスイッチングエンジン121を介して相互に接続される。
【0044】
MACチップ1211,1221,1231は、受信したパケットをMACフレーム形式に変換し、スイッチングエンジン121へと送信する。スイッチングエンジン121は図示しないバッファを備えており、MACチップ1211,1221,1231から受信したパケットをバッファに一時的に格納する。また、スイッチングエンジン121はCPU111と接続される。CPU111はRAM112、FlashROM113と接続される。
【0045】
FlashROM113には、スイッチングエンジン121を制御するためのプログラムが格納されている。CPU111は、スイッチングエンジン121を制御するためのプログラムをRAM112に展開し実行する。CPU111は、バッファに格納されたパケットに係る情報(以下、パケット情報という)を、スイッチングエンジン121から取得する。そして、CPU111は、パケット情報に基づいてスイッチングエンジン121又はMACチップ1211,1221,1231を制御する。ここで、パケット情報とは、受信するパケットが用いるプロトコル、ポート番号、各パケットのパケット長など、パケットに格納されている情報である。
【0046】
スイッチングエンジン121は、バッファに格納されたMACフレーム形式のパケットを、当該パケットに含まれる制御情報に従い、MACチップ1211,1221,1231へ送信する。MACチップ1211,1221,1231は、スイッチングエンジン121から受信したパケットをPHY1212,1222,1232及びポート1213,1223,1233を通じ、外部端末21〜23へと送信する。
【0047】
以上のハード構成からなる中継装置10において、その機能に着目した機能ブロック図を図2に示す。中継装置10は、制御部B1とパケット送受信部B2とを備える。制御部B1は、パケット情報取得部B11と、使用状況判断部B12と、モード記憶部B13と、モード切替部B14とを備える。パケット送受信部B2は、フローコントロール部B21と、優先制御部B22とを備える。
【0048】
なお、図2の制御部B1は図1のCPU111、RAM112、FlashROM113に対応する。また、図2のパケット送受信部B2は、図1のスイッチングエンジン121、MACチップ1211,1221,1231、PHY1212,1222,1232、ポート1213,1223,1233に対応する。
【0049】
パケット送受信部B2は、外部端末21〜23からパケットを受信し、受信したパケットを外部端末21〜23へと送信する。パケット送受信部B2の備えるフローコントロール部B21は、Pauseフレームを外部端末21〜23へと送信することにより、外部端末21〜23からのパケットの送信を中断させる。なお、パケットの送信を中断させる以外にも、パケットの送信速度を低下させるものであってもよい。このように、フローコントロール部B21のフローコントロール機能は、バッファが溢れないように送信元の端末にパケットの送信を中断させたり、送信速度を制限させたりする調整機能をいう。
【0050】
フローコントロール機能が有効になっている場合、バッファが溢れるのを抑制することができる。このため、信頼性の高い通信を行うことができる。しかも、バッファが溢れることによるパケットの損失を抑制することができるため、TCPパケットの再送制御が行われる頻度も減らすことができる。
【0051】
優先制御部B22は、外部端末21〜23から受信したパケットに優先度を設定し、優先度の高いパケットから先に送信するための優先制御を行う。優先制御部B22による優先制御は、フローコントロール部B21によるフローコントロール機能が有効とされている場合には機能せず、フローコントロール機能が無効とされている場合に限り機能する。また、優先制御部B22は、上記優先制御の他、パケットの種類毎に使用できる帯域を確保したり制限したりする帯域制御(本実施形態では、UDPパケットの帯域を確保し、TCPパケットの帯域を制限する)を行うものでもよく、これら優先制御及び帯域制御をともに行うものであってもよい。
【0052】
優先制御部B22の用いる優先度は、パケットがTCPパケットとUDPパケットのいずれであるかということに基づいて設定可能である。また、パケットが受信または送信されるポート1213,1223,1233に基づいて設定することが可能である。また、IEEE802.1p規格において定められているPriority Code Pointに基づいて設定してもよい。また、パケットの有するIPヘッダーのType of Serviceの値やDifferentiated services code pointの値を用いて設定してもよい。また、パケットの有するポート番号を用いて設定してもよい。
【0053】
本実施形態の場合、優先制御部B22における優先度はTCPパケットよりもUDPパケットの方が高く設定される。これにより、優先制御部B22による優先制御が行われる場合には、リアルタイム性の高い通信を行うことができる。
【0054】
パケット情報取得部B11はパケット送受信部B2からパケット送受信部B2が受信するパケット情報を取得する。使用状況判断部B12は、パケット情報取得部B11が取得したパケット情報に基づいて中継装置10の使用状況を判断する。そして、使用状況判断部B12は、判断した使用状況に基づき、フローコントロール部B21のフローコントロール機能を有効とするか、又は無効とするかのモードを決定し、その決定したモードをモード情報としてモード記憶部B13に書き込む。
【0055】
モード切替部B14は、中継装置10の使用状況に適したものとして決定されたモード情報をモード記憶部B13から取得し、フローコントロール部B21の有するフローコントロール機能の有効と無効とを切り替える。ここで、IEEE802.3規格において、フローコントロール機能の有効と無効との切り替えは、Auto Negotiation(自動調停)のプロセスの中で実行することとなる。したがって、フローコントロール機能の有効と無効とを切り替える場合、中継装置10と外部端末21〜23との再接続が必要となる。
【0056】
以上のように構成された中継装置10では、CPU111によって定期処理が一定時間間隔、例えば1秒又はそれ未満の時間間隔で定期的に実行される。
【0057】
CPU111(図2の制御部B1)が行う定期処理について図3を用いて説明する。制御部B1は、まずモード決定処理(S1)を実行する。モード決定処理とは、パケット情報取得部B11が取得した情報に基づいて中継装置10の使用状況を判断し、フローコントロール部B21の有するフローコントロール機能を有効にするか無効にするかを決定するための処理である。
【0058】
モード決定処理の後、制御部B1は、所定のタイマがタイムアップしたか否かを判断する(S2)。タイマは、モード切替部B14によってモード切替が実行された後、次のモード切替までの最低時間を決定するものであり、タイマで規定された時間内での連続したモード切替を禁止するものである。タイムアップしていると判定されると(S2:YES)、モード切替処理(S3)へ移行する。一方、タイムアップしていないと判定されると(S2:NO)、モード切替処理へ移行することなく本定期処理を終了する。
【0059】
モード切替処理とは、モード決定処理(S1)において決定されたモード情報に基づいてモード切替部B14によってなされる処理であって、フローコントロール部B21の有するフローコントロール機能のモードを有効に切り替えたり無効に切り替えたりする処理である。
【0060】
モード切替処理の後、制御部B1は、モード切替が今回の定期処理において行われたか否かを判断する(S4)。モード切替が今回の定期処理において行われた場合(S4:YES)、タイマをセットして本定期処理を終了する。タイマは、ステップS2においてモード切替の最低時間間隔を規定するためにセットされるものであり、例えば、10秒や5分、0.5時間など少なくとも定期処理の時間間隔よりも十分に長い時間とされている。ここでセットされるタイマの時間は予め定められた固定の時間であってもよいが、中継装置10の管理者によって変更設定することができるようにしてもよい。
【0061】
モード切替が今回の定期処理において行われなかった場合(S4:NO)、タイマをセットすることなくタイムアップした状態が維持されたまま、本定期処理を終了する。これは既にモード切替のないまま最低時間間隔を超えているということができるので、次の定期処理においてタイムアップと判断されてモード切替処理に移行させるようにするためである。
【0062】
次に、ステップS1で行われるCPU111(図2の使用状況判断部B12)によるモード決定処理について図4を用いて説明する。パケット情報取得部B11は、パケット送受信部B2が受信したパケット情報を、パケット送受信部B2から取得する。本実施形態では、パケット情報のうち、プロトコルに基づくパケットの種類(TCPパケットかUDPパケットか)を利用する。
【0063】
使用状況判断部B12は、パケット情報取得部B11からパケット情報のうちパケットの種類を取得し、全体のパケットに占めるTCPパケットとUDPパケットの占有率を演算することにより検出する(S10)。ここで、TCPパケット及びUDPパケットの占有率は、一定時間内に受信した全パケット数に占めるTCPパケット及びUDPパケットの割合とする。次に、使用状況判断部B12は、TCPパケットの占有率が予め定められた所定値以上か否かの判断を行う(S12)。なお、ステップS12の判断が、中継装置10の使用状況を、TCPパケットの占有率の側面から判断する処理に該当する。
【0064】
TCPパケットの占有率が所定値以上の場合(S12:YES)、フローコントロール機能を有効化する旨の判断を行う(S14)。そして、当該判断の結果をモード情報としてモード記憶部B13へと書き込み(S16)、本モード決定処理を終了する。
【0065】
一方、ステップS12において、TCPパケットの占有率が所定値より少ない場合(S12:NO)、UDPパケットの占有率が予め定められた所定値以上か否かの判断を行う(S18)。なお、ステップS18の判断が、中継装置10の使用状況を、UDPパケットの占有率の側面から判断する処理に該当する。UDPパケットの占有率が所定値以上の場合(S18:YES)、フローコントロール機能を無効化する旨の判断を行う(S20)。そして、当該判断の結果をモード情報としてモード記憶部B13へと書き込み(S20)、本モード決定処理を終了する。ステップS18において、UDPパケットの占有率が所定値未満の場合(S18:NO)、本モード決定処理を終了する。
【0066】
ここで、ステップS12及びステップS18においてTCPパケットの占有率やUDPパケットの占有率と比較される所定値は、本実施形態では例えばいずれも60%に設定されている。この場合、TCPパケットとUDPパケットとのいずれか一つの占有率が60%以上にならない限り、フローコントロール機能の切り替えが生じない。すわなち、例えば、中継装置10が送受信する全てのパケットをTCPパケットとUDPパケットが占める場合、TCPパケットが40%〜60%で変化する場合(すなわち、UDPパケットが40%〜60%で変化する場合)には、モード切替は行われない。
【0067】
こうすることにより、フローコントロール機能の有効と無効とのモード切替が行われる頻度を抑制することができる。すなわち、TCPパケットの占有率とUDPパケットの占有率のうち一方についてのみ所定値と比較(S12又はS18)して中継装置10の使用状況を判断することも可能ではあるが、両方について所定値と比較(S12及びS18)することにより、フローコントロール機能を有効化する場合の閾値と無効化する場合の閾値とに幅をもたせることができる。その結果、モード切替の頻度を低減させることが可能となる。本実施形態では、モード切替の頻度を低減させる意味においては所定値として50%より高く設定してあればよく、この数値が大きくなるほどモード切替の決定頻度が減ることになる。
【0068】
なお、ステップS12及びステップS18の占有率の閾値として用いられる所定値は、中継装置10の管理者により変更設定できるようにすることが好ましい。この場合、ステップS12及びステップS18の両所定値が同一の値であることを条件としてもよいし、互いに異なる値を所定値として設定できるようにしてもよい。また、TCPパケットの占有率とUDPパケットの占有率の両方について所定値と比較(S12及びS18)することでモード切替の頻度を低減させることを可能としたが、TCPパケットの占有率とUDPパケットの占有率の一方の占有率だけを用い、これを2つの数値の異なる所定値で比較しても、同様の効果が得られる。例えば、ステップS12において所定値を60%(第1所定値)とし、ステップS18においてTCPパケットの占有率が40%(第2所定値)以下であるか否かを判断するように変更することでこれを実現することができる。この場合、ステップS10において全体のパケット数に対するTCPパケット(又はUDPパケット)の占有率だけを算出すれば済むため、その分、処理負荷を低減することができる効果も得られる。
【0069】
次に、ステップS3で行われるCPU111(図2のモード切替部B14)によるモード切替処理について図5を用いて説明する。
【0070】
モード切替部B14は、中継装置10の使用状況に適したフローコントロール部B21のモード情報を、モード記憶部B13から取得する(S30)。次に、モード切替部B14は、取得したモードがフローコントロール機能を有効にするモードであるか否かを判断する(S32)。取得したモードがフローコントロール機能を有効にするモードである場合(S32:YES)、現在、フローコントロール機能が有効であるか否かを判断する(S34)。現在、フローコントロール機能が有効である場合(S34:YES)、モード切替が不要であるため、そのまま本モード切替処理を終了する。一方、フローコントロール機能が無効である場合(S34:NO)、フローコントロール部B21のモードを切り替え、フローコントロール機能を有効にする(S36)。そして、本モード切替処理を終了する。
【0071】
また、ステップS30で取得したモードがフローコントロール機能を無効にするモードである場合(S32:NO)、現在、フローコントロール機能が無効であるか否かを判断する(S40)。現在、フローコントロール機能が無効である場合(S40:YES)、モード切替が不要であるため、そのまま本モード切替処理を終了する。一方、フローコントロール機能が有効である場合(S40:NO)、フローコントロール部B21のモードを切り替え、フローコントロール機能を無効にする(S42)。そして、本モード切替処理を終了する。
【0072】
以上の処理が実行されることにより、中継装置10が受信するパケットについて、信頼性を要求されるTCPパケットの占有率が高い使用状況にあっては、フローコントロール機能が自動的に有効化される。このため、スイッチングエンジン121のバッファが溢れるのを抑制することができ、信頼性の高い通信を行うことができる。しかも、バッファが溢れることによるパケットの損失を抑制することができるため、TCPパケットの再送制御が行われる頻度も減らすことができる。
【0073】
一方、中継装置10が受信するパケットについて、リアルタイム性を要求されるUDPパケットの占有率が高い使用状況にあっては、フローコントロール機能が自動的に無効化される。フローコントロール機能が無効化されることにより、送信元の端末にパケットの送信を中断させたり、送信速度を制限させたりする調整は実行されなくなる。その結果、フローコントロール機能が有効化されている場合と比較し、リアルタイム性の高い通信を行うことができる。しかも、本実施形態では、フローコントロール機能が無効化されると、優先制御部B22による優先制御が機能するようになる。そして、本実施形態では、優先制御部B22の優先制御においてTCPパケットよりもUDPパケットの方を優先度が高くなるように設定してある。その結果、フローコントロール機能の無効化とUDPパケットの優先度を高めた優先制御の実施とが相俟って、フローコントロール機能を無効化するだけの場合と比較し、更にリアルタイム性の高い通信を行うことができる。
【0074】
また、本実施形態においては、モード決定処理(S1)とモード切替処理(S3)とを完全に同期させることなく、別々の処理としている。これにより、モード切替を禁止している期間においても、使用状況を判断してモード決定をすることが可能となる。これにより、モード切替が禁止されている期間内であっても、直近の使用状況に基づいたモード情報が更新されていくことになり、現状の使用状況に適合したモード切替を行なうことができる。
【0075】
ここで、フローコントロール機能の有効と無効とを切り替えるためには、Auto Negotiationのプロセスを実行する必要があることから、中継装置10と外部端末21〜23との間で再接続を行う必要がある。この再接続を行っている間、中継装置10と外部端末21〜23との間でパケットの送受信が停止されるため、頻繁に接続、切断及び再接続の処理が行われるとパケットの通信効率が低下する。この点、本実施形態においては、図3の定期処理中、ステップS2及びステップS5の処理により、フローコントロール機能のモード切替の最低時間間隔を規定している。これにより、頻繁なフローコントロール機能のモード切り替えに伴うパケットの通信効率の低下を抑止することが可能となる。
【0076】
また、モード決定処理においてTCPパケット占有率やUDPパケット占有率との両方が所定値と比較され、しかも比較される所定値が50%より高く設定されることにより、フローコントロール機能を有効化する場合の閾値と無効化する場合の閾値とに幅をもたせることができる。その結果、頻繁なモードの切り替えを抑止することが可能となる。この点においても、頻繁なモード切替に伴う、中継装置10と外部端末21〜23の間での再接続による通信効率の低下を抑止することが可能となる。
【0077】
(変形例)
上記実施形態の変形例を以下に説明する。
【0078】
(1)使用状況判断部B12が行うモード決定処理として、図6に示した処理とすることも可能である。
【0079】
すなわち、使用状況判断部B12は、パケット情報取得部B11からパケット情報を取得し、TCPパケットの単位時間あたりの占有率を演算することで検出する(S50)。そして、使用状況判断部B12は、検出された占有率を元に、TCPパケットの占有率の時間変化量を算出する(S52)。
【0080】
使用状況判断部B12は、算出した時間変化量が予め定められた所定値以上であるか否かを判断する(S54)。ここで、当該所定値は、TCPパケットの占有率が増加傾向にあると判断可能な値に設定される。なお、ステップS54の判断が、中継装置10の使用状況をTCPパケットの占有率における時間変化量の側面から判断する処理に該当する。ステップS54の判断の結果、TCPパケットの占有率の時間変化量が所定値以上、すなわちTCPパケットの占有率が増加傾向にあると判断される場合(S54:YES)、使用状況判断部B12は、フローコントロール機能を有効化させるべき旨の判断を行う(S56)。そして、使用状況判断部B12は、モード記憶部B13に当該結果をモード情報として書き込み(S58)、本モード決定処理を終了する。
【0081】
一方、TCPパケットの占有率の時間変化量が所定値未満であると判断される場合(S54:NO)、使用状況判断部B12は、フローコントロール機能を無効化させるべき旨の判断を行う(S60)。そして、使用状況判断部B12は、モード記憶部B13に当該結果をモード情報として書き込み(S62)、本モード決定処理を終了する。
【0082】
本変形例によれば、占有率の時間変化を元にして近い将来の使用状況を予測し、モードの切り替えを行うことが可能となる。なお、本変形例では、TCPパケットの占有率の時間変化量のみについて判断を行うが、UDPパケットの占有率の時間変化量についても算出し、これを使用状況判断のために用いてもよい。
【0083】
(2)使用状況判断部B12が行うモード決定処理として、図7に示した処理とすることも可能である。
【0084】
すなわち、使用状況判断部B12は、パケット情報取得部B11からパケット情報を取得し、一定時間におけるTCPパケットの全パケットに占める占有率を検出する(S70)。次に、使用状況判断部B12が履歴を参照し、モード記憶部B13に書き込まれたモード情報のうち、フローコントロール機能が有効化された回数とフローコントロール機能が無効化された回数を比較する(S72)。なお、履歴については、使用状況判断部B12がモード記憶部B13にモード情報を書き込む度に、履歴記憶用のメモリ内に過去一定回数分のモード情報を記憶しておいたり、モード記憶部B13に過去一定回数分のモード情報を履歴情報として記憶させておいたりすることにより、参照可能となる。
【0085】
フローコントロール機能が有効化された回数が無効化された回数の一定比率(ここでは2倍とする)以上であると判断される場合(S72:YES)、TCPパケットの占有率が第1所定値以上か未満かを判断する(S74)。TCPパケットの占有率が第1所定値以上であると判断される場合(S74:YES)、使用状況判断部B12は、フローコントロール部B21のフローコントロール機能を有効にするべきと判断する(S76)。使用状況判断部B12は、当該判断の結果をモード情報としてモード記憶部B13に書き込む(S78)。そして、書き込まれるモードに係る履歴を更新し(S80)、本モード決定処理を終了する。
【0086】
ステップS74において、TCPパケットの占有率が第1所定値未満であると判断される場合(S74:NO)、使用状況判断部B12は、フローコントロール部B21のフローコントロール機能を無効にするべきと判断する(S82)。使用状況判断部B12は当該判断の結果をモード情報としてモード記憶部B13に書き込む(S84)。そして、書き込まれるモードに係る履歴を更新し(S80)、本モード決定処理を終了する。
【0087】
ステップS72において、フローコントロール機能が有効化された回数が無効化された回数の一定比率(ここでは2倍とする)未満であると判断される場合(S72:NO)、TCPパケットの占有率が第2所定値以上か否かを判断する(S86)。ここで、第2所定値は第1所定値より高く設定される。TCPパケットの占有率が第2所定値以上であると判断される場合(S86:YES)、フローコントロール機能を有効にする旨の判断を行い(S88)、判断結果をモード情報としてモード記憶部B13に書き込む(S90)。書き込んだ判断結果を履歴として記憶し(S80)、本モード決定処理を終了する。
【0088】
ステップS80において、TCPパケット占有率が第2所定値未満であると判断される場合(S86:NO)、フローコントロール機能を無効にする旨の判断を行い(S92)、判断結果をモード情報としてモード記憶部B13に書き込む(S94)。書き込んだ判断結果を履歴として記憶し(S80)、本モード決定処理を終了する。なお、ステップS72、S74、S86の判断が、中継装置10の使用状況を、履歴及びTCPパケットの占有率の側面から判断する処理に該当し、その判断に際して履歴の重み付けがなされていることに特徴を有する。
【0089】
フローコントロール機能が有効とされる傾向の強い端末は、一時的にフローコントロール機能が無効とされる場合が生じても、すぐにフローコントロール機能が有効へと切り替わることとなる。この切り替わりにより、再接続による通信効率の低下が発生するおそれがある。本変形例では、フローコントロール機能のモードの履歴を記録する。そして、履歴を参照し有効とされた回数が無効とされた回数の一定比率以上(ここでは2倍以上)である場合、TCPパケットの占有率を用いた使用状況の判断時に、第2所定値より低い第1所定値を用いる(S74)。
【0090】
これにより、フローコントロール機能が有効とされる傾向の強い端末が接続される場合に、フローコントロール機能のモードが無効へと切り替わりづらくなる。よって、モード切替による通信効率の低下を抑止することが可能となる。なお、この例において、判断閾値となる一定比率を2倍よりも大きくすれば、2倍に設定した場合よりもモード切替の頻度を一層低減させることができる。
【0091】
(3)使用状況判断部B12が行うモード決定処理として、図8に示した処理とすることも可能である。
【0092】
すなわち、使用状況判断部B12は、パケット情報取得部B11からパケット情報を取得する(S100)。ここでは、得られたパケット情報のうちポート番号及びパケットの種類が利用される。そして、パケット情報を元に、ポート番号毎のTCPパケットの占有率を検出する(S102)。次に、ポート番号に対応するプログラムの優先度に応じてポート番号毎に予め定められた重みを付ける。すなわち、TCPパケットの占有率に対してポート番号に応じた重み付けを行う(S104)。占有率に対する重み付けは、例えば、重要なプログラムに用いられるパケットについてはパケット数から検出される占有率を10倍にし、他のプログラムに用いられるパケットについて検出される占有率は何もしないこととして実施される。
【0093】
そして、重み付けされたTCPパケットの占有率が所定値以上か未満かの判断を行う(S106)。なお、ステップS106の判断が、中継装置10の使用状況を、ポート番号毎の重み付けをしたTCPパケットの占有率の側面から判断する処理に該当する。ここで、TCPパケットの占有率が所定値以上と判断される場合(S106:YES)、使用状況判断部B12は、フローコントロール機能を有効にするべき旨の判断を行い(S108)、当該判断結果をモード情報としてモード記憶部B13に書き込む(S110)。そして、本モード決定処理を終了する。一方、ステップS106において、TCPパケットの占有率が所定値未満と判断される場合(S106:NO)、使用状況判断部B12は、フローコントロール機能を無効にするべき旨の判断を行い(S112)、当該判断結果をモード情報としてモード記憶部B13に書き込む(S114)。そして、本モード決定処理を終了する。
【0094】
本変形例では、使用状況の判断に際して、パケットのポート番号を参照し、ポート番号毎に重み付けを行った占有率を用いる。これにより、重要なプログラムの通信に用いられるパケットがリアルタイム性を必要とするパケットである場合には、フローコントロール機能を無効にすることが可能となる。また、重要なプログラムの通信に用いられるパケットが信頼性を必要とするパケットである場合には、フローコントロール機能を有効にすることが可能となる。これにより、プログラムの重要度を加味した使用状況に応じて、フローコントロール機能のモード切り替えが可能となる。
【0095】
(4)使用状況判断部B12が行うモード決定処理として、図9に示した処理とすることも可能である。
【0096】
すなわち、使用状況判断部B12は、受信するパケットの連続性から中継装置10の使用状況を判断する。使用状況判断部B12は、第1カウンタを用いてTCPパケットの連続数を、第2カウンタを用いてUDPパケットの連続数を計測する。なお、中継装置10の電源立ち上げ時において、第1カウンタ及び第2カウンタの初期値は0に設定されている。そして、まずパケット情報取得部B11よりパケット情報を取得する(S122)。本変形例ではパケット情報のうちプロトコルを利用しており、受信したパケットのプロトコルがTCPであるか否かの判断を行う(S124)。
【0097】
受信したパケットのプロトコルがTCPであると判断される場合(S124:YES)、第1カウンタの値を1加算する(S126)。また、第2カウンタの値を0に初期化する(S128)。そして、第1カウンタが所定値と等しい場合(S130:YES)、すなわちTCPパケットが所定の数だけ連続している場合、使用状況判断部B12は、フローコントロール機能を有効にするべきと判断する(S132)。そして、使用状況判断部B12は、判断結果をモード情報としてモード記憶部B13に書き込み(S134)、本モード決定処理を終了する。また、ステップS130で、第1カウンタが所定値と等しくない場合(S130:NO)、すなわちTCPパケットを所定の数連続して受信していない場合、本モード決定処理を終了する。なお、ステップS130の判断が、中継装置10の使用状況を、TCPパケットの連続性の側面から判断する処理に該当する。
【0098】
一方、ステップS124において、受信パケットのプロトコルがTCPでないと判断される場合(S124:NO)、受信パケットのプロトコルがUDPであるか否かの判断を行う(S136)。受信パケットのプロトコルがUDPであると判断される場合(S136:YES)、第2カウンタの値を1加算する(S138)。また、第1カウンタの値を0に初期化する(S140)。そして、第2カウンタの値が所定値と等しいか否かを判断する(S142)。第2カウンタの値が所定値と等しいと判断される場合(S142:YES)、すなわちUDPパケットを所定の数だけ連続して中継装置10が受信したと判断される場合、使用状況判断部B12は、フローコントロール機能を無効にするべき旨の判断を行う(S144)。そして、判断結果をモード情報としてモード記憶部B13に書き込み(S146)、本モード決定処理を終了する。
【0099】
また、ステップS136において受信パケットのプロトコルがUDPでないと判断される場合(S136:NO)、本モード決定処理を終了する。さらに、ステップS142において第2カウンタの値が所定値と等しくないと判断される場合(S142:NO)、すなわちUDPパケットを所定の数連続して受信していない場合、本モード決定処理を終了する。なお、ステップS142の判断が、中継装置10の使用状況を、UDPパケットの連続性の側面から判断する処理に該当する。
【0100】
中継装置10が受信するパケットについて、TCPパケットが一定数連続するなど、特定の種類(同種)のパケットが一定数連続する場合、その特定の種類のパケットの占有率が高いと推定することができる。この手法は、上記実施形態のように一定時間の総パケット数と特定の種類のパケットの数とから占有率を演算する場合と比較すると、占有率の検出精度としては低くなる可能性がある。しかし、一定数のパケットが連続した場合にモードを切り替える手法を用いると、一定時間の間パケットを取得しその後パケットの占有率を演算により検出する方法に比べて、より速く使用状況を把握することができる。したがって、占有率の検出精度だけに着目するとその精度は低下する可能性があるものの、使用状況の把握までの時間を短縮可能であるから、結果として現在の中継装置10の使用状況に適したモードを設定することが可能となる。
【0101】
(5)上記実施形態では、信頼性の高い通信に用いられるプロトコルをTCP、リアルタイム性の高い通信に用いられるプロトコルをUDPとしたが、これらに代えて、又はこれらに加えて、SCTP、RSVP、UDP−Liteなどの他のプロトコルを用いてもよい。いずれの場合であっても、上記実施形態や上記各変形例のように、相対的に信頼性重視のプロトコルかリアルタイム性重視のプロトコルかによって区分けすればよい。
【0102】
(6)上記実施形態では、TCPパケット及びUDPパケットの占有率をパケットの数を用いて検出することとしたが、一定時間に受信するパケットの数に換えて、一定時間に受信する総パケット長(パケット内データ量の総数)としてもよい。
【0103】
この場合、パケット情報取得部B11からパケット情報を取得し、パケット情報のうち、パケット送受信部B2が受信したパケットの用いるプロトコル及びパケット長を利用する。そして、パケットの種類毎に一定時間内に受信した各パケット内のデータ量を加算する処理を行うことにより、パケットの種類毎にパケット内データ量の総数が得られる。この場合、例えばTCPパケットのパケット数がUDPパケットのパケット数よりも若干少ないときでも、TCPパケットの各パケット内データ量が大きいときには、データ量としてはTCPパケットの占有率が大きくなる。このようにパケット数に代えてデータ量をもとに使用状況を判断することで、より実際の使用状況に応じた判断が可能になる。
【0104】
(7)モード決定処理をポート1213、1223、1233毎に行い、モード切替処理についてもポート1213、1223、1233単位で行うことも可能である。また、ポート1213,1223,1233がVLAN等により分割されていた場合、VLAN毎に適用することも可能である。これにより、例えば、VoIP専用端末のようなリアルタイム性を必要とする通信を常に行う外部端末の接続するポートについて、常にフローコントロール機能を無効にすることで、通信効率を向上させることが可能となる。
【0105】
(8)上記実施形態と変形例(1)〜(7)とは適宜組み合わせて用いてもよい。上記実施形態と変形例(1)〜(3)とを組み合わせて用いることで、より正確に使用状況に応じたフローコントロール機能のモードの切り替えを行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0106】
10…中継装置、21〜23:外部端末、111…CPU、112…RAM、113…FlashROM、121…スイッチングエンジン、1211、1221、1231…MACチップ、1212、1222、1232…物理層チップ、1213、1223、1233…ポート、B1…制御部、B11…パケット情報取得部、B12…使用状況判断部、B13…モード記憶部、B14…モード切替部、B2…パケット送受信部、B21…フローコントロール部、B22…優先制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケットを送受信する中継装置であって、
前記中継装置が受信するパケットと送信するパケットとの少なくともいずれか一方に応じて、前記中継装置の使用状況を判断する使用状況判断部と、
前記中継装置が受信するパケットの流量を制御するフローコントロール部と、
前記使用状況判断部により判断される使用状況に応じて、前記フローコントロール部による制御の有効と無効とを切り替えるモード切替部と、
を備えることを特徴とする中継装置。
【請求項2】
前記フローコントロール部による制御が無効とされている場合に、信頼性が要求されるパケットよりもリアルタイム性が要求されるパケットを優先して送信するための制御を行う優先制御部を備えることを特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記使用状況判断部は、受信したパケットのうち所定の種類のパケットによって占められる占有率を検出し、前記占有率に基づき前記使用状況を判断することを特徴とする請求項1又は2に記載の中継装置。
【請求項4】
前記所定の種類のパケットは、リアルタイム性が要求されるパケット又は信頼性が要求されるパケットであることを特徴とする請求項3に記載の中継装置。
【請求項5】
前記使用状況判断部は、前記占有率を一定時間内においてカウントされたパケット数に基づき検出することを特徴とする請求項3又は4に記載の中継装置。
【請求項6】
前記所定の種類のパケットは、パケットが送信される先のプログラムを特定するために用いられるポート番号を用いて分類され、
前記使用状況判断部は、前記ポート番号に対応した重み付けをし、その重み付けを利用して前記占有率を検出することを特徴とする請求項3〜5のうちいずれか1に記載の中継装置。
【請求項7】
前記使用状況判断部は、前記占有率の時間変化から前記使用状況を判断することを特徴とする請求項3〜6のうちいずれか1に記載の中継装置。
【請求項8】
前記使用状況判断部は、前記フローコントロール部の制御の有効と無効との時間変化を履歴として記録し、前記履歴と前記占有率とを用いて前記使用状況を判断することを特徴とする請求項3〜7のうちいずれか1に記載の中継装置。
【請求項9】
前記使用状況判断部は、前記使用状況を所定の種類のパケットの連続性に基づき検出することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1に記載の中継装置。
【請求項10】
前記モード切替部は、前記フローコントロール部による制御の有効と無効とを切り替えた後、所定の待ち時間が経過するまで切り替えを禁止することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1に記載の中継装置。
【請求項11】
外部端末と接続するために用いられる複数のポートを備え、
前記フローコントロール部は、前記ポート毎に前記中継装置が受信するパケットの流量を制御することが可能であり、
前記モード切替部は、前記ポート毎に前記フローコントロール部による制御の有効と無効とを切り替えることが可能であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1に記載の中継装置。
【請求項12】
前記中継装置はスイッチングハブであることを特徴とする請求項1〜11のうちいずれか1に記載の中継装置。
【請求項13】
パケットを送受信可能でありかつ受信するパケットの流量を制御するフローコントロール部を備えた中継装置を制御する制御方法であって、
前記中継装置が受信するパケットと送信するパケットとの少なくともいずれか一方に応じて、前記中継装置の使用状況を判断する使用状況判断ステップと、
前記使用状況判断ステップにより判断される使用状況に応じて、前記フローコントロール部によるパケットの流量の制御の有効と無効とを切り替えるモード切替ステップと、
を備えることを特徴とする中継装置の制御方法。
【請求項14】
パケットを送受信可能でありかつ受信するパケットの流量を制御するフローコントロール部を備えた中継装置を制御するプログラムであって、
前記中継装置が受信するパケットと送信するパケットとの少なくともいずれか一方に応じて、前記中継装置の使用状況を判断する使用状況判断ステップと、
前記使用状況判断ステップにより判断される使用状況に応じて、前記フローコントロール部によるパケットの流量の制御の有効と無効とを切り替えるモード切替ステップと、
を前記中継装置に実現させることを特徴とする中継装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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