説明

中間転写ベルトの製造方法、中間転写ベルト

【課題】中間転写体ベルトに使用する材料としてカーボンブラックを分散した半導電性ポリイミド樹脂材料を使用し、ベルト内での電気抵抗値のばらつきが少なく、転写性に優れ、印刷シートに転写したトナー像に転写ムラ(白抜け)の発生がないポリイミド樹脂を使用した中間転写ベルトの製造方法を提供。
【解決手段】テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応して得られるポリアミド酸と、カーボンブラックとを有する塗布液を用いて製造される中間転写ベルトの製造方法において、前記塗布液が、テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを重合させポリアミド酸とする重合工程と、前記ポリアミド酸と、前記カーボンブラックとを分散含有させ分散液を調製する分散工程と、前記分散工程で得られた分散液に、さらに水を添加する水添加工程とを経て調製されることを特徴とする中間転写ベルトの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
画像形成装置に使用する中間転写ベルトの製造方法、及びこの製造方法で製造した中間転写ベルトに関する。更に詳しくは、カーボンブラックを用いたカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を使用した中間転写ベルトの製造方法、中間転写ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、レーザープリンタなどの電子写真方式の画像形成装置は、近年では高画質フルカラー化、高品質化の要求が強く求められている。電子写真方式の画像形成装置は、従来から知られている様に、感光体を一様に帯電する帯電部材、感光体上に静電潜像を形成する露光部材、静電潜像をトナー像で現像する現像部材、転写体に転写する転写部材、トナー像を転写体上に定着させる定着部材、感光体上の残留トナーをクリーニングするクリーニング部材、感光体上の静電潜像を除去する除電部材等の構成部材を有している。電子写真方式の画像形成装置は、帯電したトナーを感光体上の静電潜像に接触或いは非接触で供給し、静電潜像を顕像にする現像過程を経て形成したトナー像を転写工程で中間転写体に一次転写した後、転写材(例えば紙)に二次転写し、更に定着して最終画像を形成するものである。中間転写体としては、基体に無端のベルトを使用した中間転写体ベルトが知られている。
【0003】
中間転写体ベルトに使用する材料としては機械特性、電気絶縁性、耐熱性に優れるポリイミド樹脂に導電性フィラーとしてカーボンブラックを分散した半導電性ポリイミド樹脂材料が使用されている。
【0004】
又、この様な中間転写ベルトに用いる半導電性ポリイミドベルトの製造方法の一例として、例えば、溶媒中にテトラカルボン酸二無水物成分またはその誘導体とジアミン成分を溶解して加熱重合させることによって形成されたポリアミド酸溶液にカーボンブラックを分散させたカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を芯金に塗布した後、焼成処理することでイミド化を行い、芯金を抜き取ることで環状の中間転写ベルトを製造する方法が知られている。又、カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を一旦フィルム状に成形した後、このフィルムの両端を繋いで環状にして製造する方法も知られている。
【0005】
カーボンブラックの使用方法に付きこれまでに検討されてきた。例えば、導電性フィラーであるカーボンブラックの凝集が抑制され、電気抵抗値のバラツキが小さい半導電性ポリイミドベルトを効率よく製造するため、有機極性溶媒に揮発分が4質量%以上のカーボンブラックを分散させ、さらに水を添加してカーボンブラック分散液を調製した後、カーボンブラック分散液に酸二無水物成分とジアミン成分を溶解し、重合させてカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を調製し、塗布し加熱によりイミド転化反応を行い、転写ベルトを作る方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−292656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カーボンブラックをポリアミド樹脂に分散した塗布液を基材に塗布した場合には、カーボンブラックを均一に分散させることが非常に難しい。通常、塗布液中のカーボンブラックは非常に重力の影響を受け易く、ベルト内でカーボンブラックが偏析し、ベルトの表裏で抵抗に差が出ることにつながる。そのようなベルトを電子写真記録装置の中間転写ベルト等として用いた場合、印刷シートに転写したトナー像に転写ムラが生じるなどの問題がある。尚、この様にベルトの表裏で抵抗の差が中間転写に影響するのは、半導電性ベルトの帯電抑制能の不均一化や、導電抑制能の不均一化により、局所的な剥離放電や導電が生じやすくなるためと考えられる。一方、電子写真記録装置の中間転写ベルトや転写ベルトに限らず、半導電性ベルトに要求される帯電抑制能や導電抑制能は用途により程度に差があるものの、均一なものほど好ましい。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、カーボンブラックの凝集は抑制出来たが、偏析迄は改善されないことが判った。
【0009】
本発明は上記状況に鑑みなされたものであり、その目的は中間転写体ベルトに使用する材料として機械特性、電気絶縁性、耐熱性に優れるポリイミド樹脂に導電性フィラーとしてカーボンブラックを分散した半導電性ポリイミド樹脂材料を使用し、カーボンブラックの偏析が抑制され、ベルトの表裏で抵抗の差少なく、ベルトを画像形成装置の中間転写ベルトとして用いた場合、転写性に優れ、印刷シートに転写したトナー像に転写ムラ(白抜け)の発生がない中間転写ベルトの製造方法及び中間転写ベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、半導電性ポリイミドベルトの製造工程について検討したところ、ポリアミド酸溶液にカーボンブラックを分散した後に、イミド化を妨害する恐れのある水を添加することにより、意外にもカーボンブラックの凝集が抑制され、水存在下でも上記目的の半導電性ポリイミドベルトを製造することができることを見出し、本発明に至った。
【0011】
本発明の上記目的は、下記の構成で達成された。
【0012】
1.テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応して得られるポリアミド酸と、カーボンブラックとを有する塗布液を用いて製造される中間転写ベルトの製造方法において、
前記塗布液が、テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを重合させポリアミド酸とする重合工程と、
前記重合工程で得られたポリアミド酸と、前記カーボンブラックとを分散含有させ分散液を調製する分散工程と、
前記分散工程で得られた分散液に、さらに水を添加する水添加工程とを経て調製されることを特徴とする中間転写ベルトの製造方法。
【0013】
2.前記水添加工程で添加する水の添加量が、前記ポリアミド酸に対して3質量部から20質量部であることを特徴とする前記1に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【0014】
3.前記テトラカルボン酸二無水物が、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であることを特徴とする、前記1又は2に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【0015】
4.前記芳香族ジアミンが4,4′−ジアミノジフェニルエーテルであることを特徴とする、前記1から3の何れか1項に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【0016】
5.前記1又は2に記載の中間転写ベルトの製造方法により製造されたことを特徴とする中間転写ベルト。
【発明の効果】
【0017】
中間転写体ベルトに使用する材料として機械特性、電気絶縁性、耐熱性に優れるポリイミド樹脂に導電性フィラーとしてカーボンブラックを分散した半導電性ポリイミド樹脂材料を使用し、カーボンブラックの偏析が抑制され、ベルトの表裏で抵抗の差が少なく、ベルトを画像形成装置の中間転写ベルトとして用いた場合、転写性に優れ、印刷シートに転写したトナー像に転写ムラ(白抜け)の発生がない中間転写ベルトの製造方法及び中間転写ベルトを提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略断面構成図である。
【図2】無端の中間転写ベルトの概略製造フロー図である。
【図3】図2に示す塗布・乾燥工程で使用する塗布装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を図1から図3を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
図1は、電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略断面構成図である。尚、本図はフルカラー画像形成装置の場合を示している。
【0021】
図中、1はフルカラー画像形成装置を示す。フルカラー画像形成装置1は、複数組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、転写部としての無端ベルト状中間転写体形成ユニット7と、記録媒体Pを搬送する無端ベルト状の給紙搬送手段21及び定着手段としてのベルト式定着装置24とを有する。フルカラー画像形成装置1の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0022】
各感光体1Y、1M、1C、1Kに形成される異なる色のトナー像の1つとして、イエロー色の画像を形成する画像形成ユニット10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Y、感光体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、一次転写手段としての一次転写ローラー5Y、クリーニング手段6Yを有する。
【0023】
又、別の異なる色のトナー像の1つとして、マゼンタ色の画像を形成する画像形成ユニット10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、感光体1Mの周囲に配置された帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラー5M、クリーニング手段6Mを有する。
【0024】
又、更に別の異なる色のトナー像の1つとして、シアン色の画像を形成する画像形成ユニット10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、感光体1Cの周囲に配置された帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラー5C、クリーニング手段6Cを有する。
【0025】
又、更に他の異なる色のトナー像の1つとして、黒色画像を形成する画像形成ユニット10Kは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1K、感光体1Kの周囲に配置された帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K、一次転写手段としての一次転写ローラー5K、クリーニング手段6Kを有する。
【0026】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラーにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体として無端の中間転写ベルト70を有する。
【0027】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Kにより、回動する無端の中間転写ベルト70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された記録媒体として用紙等の記録媒体Pは、給紙搬送手段21により給紙され、複数の中間ローラー22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラー5Aに搬送され、記録媒体(転写材)P上にカラー画像が一括転写される。
【0028】
カラー画像が転写された記録媒体(転写材)Pは、定着装置24により定着処理され排紙ローラー25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0029】
一方、二次転写ローラー5Aにより記録媒体(転写材)Pにカラー画像を転写した後、記録媒体(転写材)Pを曲率分離した無端の中間転写ベルト70は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
【0030】
画像形成処理中、一次転写ローラー5Kは常時、感光体1Kに圧接している。他の一次転写ローラー5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに圧接する。
【0031】
二次転写ローラー5Aは、ここを記録媒体(転写材)Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端の中間転写ベルト70に圧接する。
【0032】
又、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。筐体8は、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体形成ユニット7とを有する。
【0033】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Kの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラー71、72、73、74、76を巻回して回動可能な無端の中間転写ベルト70、一次転写ローラー5Y、5M、5C、5K及びクリーニング手段6Aとを有している。
【0034】
筐体8の引き出し操作により、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とは、一体となって、本体Aから引き出される。
【0035】
この様に感光体1Y、1M、1C、1Kの外周面上を帯電、露光し外周面上に潜像を形成した後、現像によりトナー像(顕像)を形成し、無端ベルト状の中間転写体70上で各色のトナー像を重ね合わせ、一括して記録媒体(転写材)Pに転写し、定着装置24で加圧及び加熱により固定して定着する。尚、本発明で像形成時とは潜像形成、トナー像(顕像)を記録媒体Pに転写し最終画像を形成することを含む。
【0036】
トナー像を記録媒体Pに転移させた後の感光体1Y、1M、1C、1Kは、各感光体1Y、1M、1C、1Kに配設されたクリーニング手段6Y、6M、6C、6Kで転写時に感光体に残されたトナーを清掃した後、上記の帯電、露光、現像のサイクルに入り、次の像形成が行われる。
【0037】
本発明は、無端の中間転写ベルト70の製造方法に関するものである。本発明の無端の中間転写ベルトは、塗布工程で予め導電性のカーボンブラックを分散させた、ジアミン成分と酸二無水物成分を溶解・重合させて調製したカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を、金型の外面に塗布し、乾燥工程で乾燥し、焼成工程で焼成させることによってポリイミド樹脂からなる中間転写ベルトを製造することが可能である。
【0038】
中間転写ベルトの製造方法としては特に限定はなく、例えば、1)スリットノズルから回転する金属ベルト上にカーボンブラックを分散させたカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液をフィルム状に押出し、加熱してウェッブ状のポリイミド樹脂フィルムとして得て、そしてこれを所定長にカットして両端を接合し環状の中間転写ベルトを製造擦る方法、2)金型として、円筒状金型を回転しながらその外周囲にカーボンブラックを分散させたカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を塗布し、加熱・焼成してポリイミド樹脂とした後に円筒状金型を抜き取ることで環状の中間転写ベルトを製造する方法等が挙げられる。次ぎに円筒状金型を使用した環状の中間転写ベルトを製造する方法に付き図2で説明する。
【0039】
図2は、無端の中間転写ベルトの概略製造フロー図である。
【0040】
無端の中間転写ベルト70は本図に示される製造フローにより製造することが可能となっている。
【0041】
図中、9は製造工程を示す。製造工程9は溶解工程9aと、カーボンブラック分散工程9bと、水添加工程9cと、塗布・乾燥工程9cと、焼成工程9dとを有している。
【0042】
溶解工程9aでは、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを実質的に等モル量を、混合・加熱し重縮合反応してポリアミド酸溶液を調製する。
【0043】
カーボンブラック分散工程9bでは、溶解工程9aで調製したポリアミド酸溶液にカーボンブラックを添加し、加熱攪拌混合しカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を製造する。
【0044】
カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液中、カーボンブラックの配合量は、表面抵抗、体積抵抗、転写ベルト上に印字後の画像のメモリーとしての残存、転写ベルトの強度低下による破断等を考慮し、ポリアミド酸100質量部に対して、10質量部から30質量部が好ましい。
【0045】
カーボンブラックの分散方法としては公知の方法が適用でき、ボールミル、サンドミル、バスケットミル、超音波分散等が挙げられる。
【0046】
又、カーボンブラックの分散時には、カーボンブラック粒子の分散安定性を更に高めるために、非イオン系高分子を添加することが好ましい。非イオン系高分子としては、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N,N′−ジエチルアクリルアジド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(n−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピペリドン)、ポリ(n−ビニルカプロラクタム)、ポリ(n−ビニルオキサゾリン)等が挙げられ、単独又は複数の非イオン系高分子を添加することが出来る。これらの中では、カーボンブラックの分散性がより高まることから、ポリ(n−ビニル−2−ピロリドン)を含むことがより好ましい。
【0047】
水添加工程9cでは、カーボンブラック分散工程9bで調製したカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液に水が添加される。水が添加されることで、カーボンブラックの凝集が抑制され、偏析が改善された。
【0048】
添加する水の量は、カーボンブラックの凝集、偏析等を考慮し、ポリアミド酸に対して3質量部から20質量部であることが好ましい。
【0049】
ポリアミド酸溶液の固形分濃度は特に規定されるものではないが、ポリイミド樹脂からなる環状の中間定着ベルト製造時の塗工適性より、適当な粘度を発現する範囲が選択される。塗工上最適な粘度範囲としては、一般に1Pa・sから100Pa・sが好ましく、その粘度となるような固形分濃度としては、ポリアミド酸の重合度、最終的に得られるポリイミド樹脂の強度等を考慮し、溶媒100質量部に対して10質量%から40質量%が好ましい。
【0050】
塗布・乾燥工程9dでは、水添加工程9cで調製したカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を、円筒状金型に塗布し、乾燥を行う。
【0051】
塗布方法としては特に限定はなく、例えば、円筒状金型を使用する場合、円筒状金型へのカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の塗布方法としては、浸漬塗布方法、ノズルによる塗布方法等が挙げられ適宜必要に応じて使用することが可能である。ノズルによる塗布方法に付いては図3で説明する。
【0052】
乾燥は、カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を塗布した円筒状金型を、加熱環境に置き、含有溶媒の20質量%から60質量%以上を揮発させ中間転写ベルト形成用塗膜(カーボンブラック分散ポリアミド酸膜)を形成するために行われる。この際、溶媒は膜中に残留していても構わず、中間転写ベルト形成用塗膜(カーボンブラック分散ポリアミド酸膜)表面が傾けても流動しない状態であれば問題ない。乾燥は、常圧下で50℃から200℃の温度範囲で行うことが好ましい。
【0053】
焼成工程9eでは、乾燥工程での乾燥が終了した後、中間転写ベルト形成用塗膜(カーボンブラック分散ポリアミド酸膜)を形成した円筒状金型を60℃から200℃の温度範囲で加熱し、イミド転化反応を十分に進行させる。加熱温度が60℃未満では脱水閉環が十分に進行せず、加熱温度が200℃を超えると得られる重合体の分子量が小さいものになる。イミド化の温度は、原料のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類、又は添加される3級アミンによって、それぞれ異なるが、イミド化が完結する温度に設定しなければならない。イミド化が不充分であると、機械的特性及び電気的特性に劣るものとなることがある。
【0054】
ポリアミド酸の脱水閉環反応のため、ポリアミドからポリイミドへの転化が起こる。その結果、反応により脱離した水分量相当の質量減少が発生し、ポリイミド無端ベルト中の、ポリイミド樹脂成分に対する酸性カーボンブラックの含有率が、ポリアミド酸樹脂成分に対する酸性カーボンブラック含有率に比べ大きくなる。
【0055】
その後、円筒状金型を抜き取ることで中間転写ベルトとして使用するポリイミド樹脂からなる環状の中間転写ベルトを製造することが出来る。得られた環状の中間転写ベルトには、更に必要に応じて弾性層、離形層を順次形成することも可能である。
【0056】
図3は、図2に示す塗布・乾燥工程で使用する塗布装置の一例を示す概略図である。図3(a)は図2に示す塗布・乾燥工程で使用する塗布装置の一例を示す概略斜視図である。図3(b)は図3(a)に示される塗布装置の概略正面図である。以下に、円筒状金型を使用し円筒状金型の表面上にカーボンブラックを分散したカーボンブラックポリアミド酸溶液を塗布する方法に付き説明する。
【0057】
図中、9d1は塗布装置を示す。塗布装置9d1は保持部9d11と塗布部9d12と乾燥部9d13とを有している。保持部9d11は第1保持台9d111と、第2保持台9d112、駆動用モーター9d113とを有している。駆動用モーター9d113は第1保持台9d111上に配設されており、円筒状金型9d2の保持部材9d1と接続部材を介して駆動用モーター9d113の回転軸に接続されている。第2保持台9d112には円筒状金型9d2の他方の保持部材9d22を受ける受け部9d114が配設されており、これにより、駆動用モーター9d113の回転により円筒状金型9d2を回転及び停止が可能に保持することが可能となっている。
【0058】
塗布部9d12は、塗布手段9d121と、駆動手段9d122とを有している。9d123は塗布手段9d121にカーボンブラックを分散したカーボンブラックポリアミド酸溶液を供給する塗布液供給管を示す。塗布手段9d121は取り付け部材9d124によりガイドレール9d125に円筒状金型9d2の回転軸に沿って平行に移動可能に取り付けられている。塗布手段9d121としては、ノズルが挙げられる。ノズルのカーボンブラックを分散したカーボンブラックポリアミド酸溶液の吐出口の形状は特に限定はなく、例えば、円形、長方形等が挙げられる。ノズルのカーボンブラックを分散したカーボンブラックポリアミド酸溶液の吐出口と円筒状金型9d2の周面までの距離は、塗布液の粘度、膜厚等を考慮し、1mmから100mmが好ましい。尚、本図では塗布手段9d121へのカーボンブラックを分散したカーボンブラックポリアミド酸溶液供給部、制御部は省略してある。
【0059】
駆動手段9d122はモーター9d1261とガイドレール取り付け板9d3とを有している。ガイドレール取り付け板9d3には、取り付け部材9d124を取り付け、保持部9d11に保持された円筒状金型9d2の回転軸と平行に塗布手段9d121を回転軸方向に往復移動(図中の矢印方向)させるための2本のガイドレール9d125が配設されている。
【0060】
モーター9d126は、取り付け部材9d124の上に取り付けられたスライド用ネジ9d127と螺合し、取り付け部材9d124を保持部9d11に保持された円筒状金型9d2の幅よりも長く移動させる長さの雌ネジ9d128を有している。
【0061】
モーター9d126を駆動させることで、スライド用ネジ9d127の回転に伴い、取り付け部材9d124に取り付けられた塗布手段9d121が円筒状金型9d2の回転軸と平行に回転軸方向に往復移動(図中の矢印方向)することが可能となっている。
【0062】
円筒状金型9d2の上にカーボンブラックを分散したカーボンブラック分散ポリアミド酸塗膜(発熱ベルト形成用塗膜)を形成した後、カーボンブラック分散ポリアミド酸塗膜(発熱ベルト形成用塗膜)は、乾燥部9d13で回転させながら溶媒を除去する。この後焼成工程(不図示)で加熱処理を行うことでポリイミド膜が形成する。この後、円筒状金型9d2を抜き取ることで環状の発熱ベルトが形成される。
【0063】
乾燥部9d13は、乾燥装置9d131を有している。乾燥装置9d131は円筒状金型9d2に塗布されたカーボンブラックを分散したカーボンブラックポリアミド酸溶液塗膜を乾燥させるために円筒状金型9d2の下に配設されている。乾燥装置9d131の熱源としては、例えば赤外線ランプ、ニクロム線、熱風等の熱源が挙げられる。尚、乾燥装置9d131はカーボンブラック分散ポリアミド酸塗膜(発熱ベルト形成用塗膜)の溶媒を除去した後、焼成装置としても利用することが可能である。
【0064】
本図は円筒状金型を使用した場合を示しているが円柱状金型であってもよく、適宜選択することが可能である。
【0065】
本図は、ノズルを使用した塗布方法に付き説明したものであるが、円筒状金型9d2の表面にカーボンブラックを分散させたカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液(発熱ベルト形成用溶液)を塗布する方法は特に限定はなく公知の塗布方法適用することが出来る。例えば、環状塗布槽を使用した環状塗布方法、浸漬塗布方法、超音波アトマイザーによる塗布方法等が挙げられる。
【0066】
尚、形成された発熱ベルトの上に弾性層、離形層を順次形成する場合も、本図に示す塗布装置9d1を使用し、弾性層形成用溶液、離形層形成用溶液を発熱ベルトの上に順次塗布することで形成することが可能である。
【0067】
本発明で使用するカーボンブラックを分散させたカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液(発熱ベルト形成用溶液)の粘度は、円筒状金型への塗布性、レベリング性、脱泡等のハンドリング性等を考慮し、1Pa・sから100Pa・sが好ましい。
【0068】
粘度は、ビスコテック(株)デジタル回転式粘度計で、温度25℃で測定した値を示す。
【0069】
図2、図3に示す方法で製造された中間転写ベルトの特性として電気抵抗値のバラツキが少ないことが挙げられる。電気抵抗値として表面抵抗値、体積抵抗値のバラツキが少ないことが挙げられる。表面の抵抗値、体積抵抗値としては、転写性、画質等を考慮し、10.5から11.5が好ましく、表面の抵抗値と裏面の抵抗値の差として、0から1.0以下が好ましい。
【0070】
表面抵抗値は三菱化学社製ハイレスタHRプローブを使用し、表面抵抗は500V、体積抵抗は10Vで測定し、測定結果の対数値の平均と最大値から最小値を差し引いた値を偏差として求めた。又、体積抵抗値は三菱化学社製ハイレスタHRプローブを使用し10Vで測定し、測定結果の対数値の平均と最大値から最小値を差し引いた値を偏差として求めた。
【0071】
次ぎに本発明に使用するカーボンブラックに付き説明する。
【0072】
本発明に使用するカーボンブラックは、導電性もしくは半導電性の微粉末が使用でき、所望の電気抵抗を安定して得ることができれば、特に制限はないが、樹脂中への分散性、分散安定性、半導電性ポリイミド無端ベルトの抵抗バラツキ、電界依存性、電気抵抗の経時での安定性を考慮して、カーボンブラックの4質量%の水分散液の水素イオン指数(pH)7未満が好ましい。pHは、カーボンブラックの水性懸濁液を調製し、ガラス電極で測定することで求められる。
【0073】
カーボンブラックの状態は、比表面積100m/gから500m/gを有する平均径1μmから50μm程度の粉体が好ましい。
【0074】
カーボンブラックの具体例としては、例えば、デグサ社製の「プリンテックス150T」(pH4.5、揮発分10.0%)、同「スペシャルブラック350」(pH3.5、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック5」(pH3.0、揮発分15.0%)、同「スペシャルブラック4」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック4A」(pH3.0、揮発分14.0%)、キャボット社製「MONARCH1000」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1300」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1400」(pH2.5;揮発分9.0%)、同「MOGUL−L」(pH2.5、揮発分5.0%)、EVONIK社製 PrintexU(pH4.5、揮発分5.0%)、EVONIK社製 SPCIAL BLACK4(pH3.0、揮発分14.0%)等が挙げられる。
【0075】
(溶媒)
本発明に使用する溶媒としては、例えば、n−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、メチルアセトアミド、アセトニトリル、ピペリドン等が挙げられる。
【0076】
(ジアミン化合物)
ポリアミド酸の製造に用いられるジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。
【0077】
例えば、パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメチル−4,4′−ビフェニル、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、2,2−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)、3,3′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル(34ODA)、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、1,5−ジアミノナフタレン、4,4′−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4′−ジアミノジフェニルシラン、4,4′−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPSM)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2−ビス(3−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン及び9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等を挙げることができる。中でも好ましいジアミンは、パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、4,4′−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル(34ODA)、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPSM)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)等の芳香族ジアミン:ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン:1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等を挙げることができる。
【0078】
これらのジアミン化合物の中で、p−フェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルスルホンが好ましい。
【0079】
これらのジアミン化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いることが出来る。
【0080】
(テトラカルボン酸二無水物)
ポリアミド酸の製造に用いられ得るテトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も使用できる。
【0081】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の代表例としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二水物、2,3,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス[3,4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物、チオジフタル酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物及び9,9−ビス[4−(3,4′−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物等を挙げることができる。中でも好ましいテトラカルボン酸二無水物は、ピロメリット二無水物(PMDA)、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,2−ビス[3,4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、オキシジフタル酸無水物(ODPA)を挙げることができる。なお、これらをメタノール、エタノール等のアルコール類と反応させてエステル化合物としてもよい。
【0082】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9B−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
【0083】
テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物が好ましく、さらに、ピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物が最適に使用される。
【0084】
尚、これらの芳香族ジアミン及び芳香族テトラカルボン酸二無水物、又は脂肪族テトラカルボン酸二無水物は単独で又は混合して用いることができる。また、複数種類のポリイミド前駆体溶液を調製し、それらのポリイミド前駆体溶液を混合して用いることも出来る。
【0085】
テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを重合させポリアミド酸とする重合工程と、前記重合工程で得られたポリアミド酸と、カーボンブラックとを分散含有させ分散液を調製する分散工程と、前記分散工程で得られた分散液に、さらに水を添加する水添加工程とを経て調製されることを特徴とする中間転写ベルトの製造方法により次の効果が挙げられる。
1.カーボンブラックの凝集は抑制がなされ、偏析が改善された。
2.表面抵抗の表裏差が少なく、白抜け等ない均質な高画質画像が得られる。
3.高い転写率が得られる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
実施例1
(カーボンブラック分散ポリアミド酸塗布液No.1−1から1−5の調製)
3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物294gと4,4′−ジアミノジフェニルエーテル200gとの等モル量をn−メチルピロリドン溶媒1976g中、40℃で反応させ、固形分濃度20%のポリアミド酸溶液を得た。得られたポリアミド酸溶液500gに、ディゾルバー分散機で攪拌しながらカーボンブラック(Cabot社 Mogul−L)15gを10分かけて添加し、そのまま60分間攪拌を続けた。次にこの溶液をジルコニア球(直径2.0mm)500mlと共にサンドミルに移し変え、全体を回転しながら攪拌混合した。尚、この混合の際には、発熱するので40℃を超えないように全体を冷却しながら12時間攪拌混合した。
【0088】
その後、この溶液をディゾルバー分散機に戻し、攪拌状態にある溶液の中にレベリング剤(信越化学社製 KP−323)10mg、続けて表1に示す様水の添加量を変えて、そのまま30分間攪拌を続けカーボンブラック分散ポリアミド酸塗布液を調製しNo.1−1から1−5とした。尚、水の添加量はポリアミド酸100質量部に対する質量部を示す。
【0089】
(カーボンブラック分散ポリアミド酸塗布液No.1−6の調製)
3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物をピロメリト酸二無水物218gに変更した他はカーボンブラック分散ポリアミド酸塗布液No.1−4と全て同じ方法でカーボンブラック分散ポリアミド酸塗布液を調製しNo.1−6とした。
【0090】
(カーボンブラック分散ポリアミド酸塗布液No.1−7の調製)
3,3′,4,4′−ジアミノジフェニルエーテルをp−フェニレンジアミン110gに変更した他はカーボンブラック分散ポリアミド酸塗布液No.1−4と全て同じ方法でカーボンブラック分散ポリアミド酸塗布液を調製しNo.1−7とした。
【0091】
(カーボンブラック分散ポリアミド酸塗布液No.1−8の調製)
n−メチルピロリドン400gに、カーボンブラック(Cabot社 Mogul−L)15.0gをボールミルで室温にて12時間混合した。得られたカーボンブラック分散液に水10.0gを添加し、24時間撹拌・混合した後、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物59.5gと4,4′−ジアミノジフェニルエーテル40.5gとを室温にて溶解、重合し、50℃で5時間撹拌してカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を調製しNo.1−8とした。
【0092】
(カーボンブラック分散ポリアミド酸塗布液No.1−9の調製)
水を添加しない他はカーボンブラック分散ポリアミド酸塗布液No.1−4と全て同じ方法でカーボンブラック分散ポリアミド酸塗布液を調製しNo.1−9とした。
【0093】
(カーボンブラック分散ポリアミド酸塗布液No.1−10の調製)
溶媒として、水を2.5%溶解したn−メチルピロリドンに変えた他はカーボンブラック分散ポリアミド酸塗布液No.1−4と全て同じ方法でカーボンブラック分散ポリアミド酸塗布液を調製しNo.1−10とした。
【0094】
【表1】

【0095】
(中間転写ベルトの製造)
図3に示す塗布装置を使用し、外径274mm、長さ360mmのSUS材料製筒型金型を用意し、その外表面にシリコーン系離型剤(信越化学社製 KS−700)を塗布し、300℃で乾燥処理を行い、離型層を形成した(離型剤処理)。離型剤処置を施した金型を周方向に10rpmの速度で回転させながら、円筒型金型端部より調製したカーボンブラック分散ポリアミド酸塗布液を下記に示す条件で螺旋状に塗布した。その後、塗布物を乾燥炉中で150℃空気雰囲気下、10rpmで回転させながら1時間乾燥処理を行った。乾燥後、塗布物より溶媒が揮発することで塗布物は自己支持性を有するポリアミック酸樹脂成形品と変化した。乾燥処理後、クリーンオーブン中で、300℃、30分間焼成処理を行い、イミド化反応を進行させた。その後、金型を25℃に冷却した後、金型から樹脂を取り外し、厚さ70(±5)μmのポリイミド中間転写ベルトを製造し試料No.101から110とした。
【0096】
塗布条件
カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の温度:25℃
ノズルのカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液吐出口の形状:円錐状ノズル
ノズルのカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液吐出口の口径:1mm
ノズルのカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液吐出口と円筒状金型の周面までの距離:5mm
ノズルからのカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の吐出量:300ml/min
ノズルの円筒状金型の回転軸方向への移動速度:500mm/min
評価
作製した各試料No.101から110に付き表面抵抗、体積抵抗、画像評価(転写性、白抜け性)を以下に示す方法で測定し、以下に示す評価ランクで評価した結果を表2に示す。
【0097】
表面抵抗の測定方法
中間転写ベルトの表裏を、ハイレスタUP MCP−HT450型(三菱化学アナリテック社製)にURSプローブを用い、周方向90°毎に軸方向等間隔5箇所の表面抵抗を500Vで測定し、測定結果の対数値で記した。
【0098】
体積抵抗の測定方法
中間転写ベルトの表裏を、ハイレスタUP MCP−HT450型(三菱化学アナリテック社製)にURSプローブを用い、周方向90°毎に軸方向等間隔5箇所の表面抵抗を100Vで測定し、測定結果の対数値で記した。
【0099】
画像評価
製造した中間転写ベルトをコニカミノルタビジネステクノロジーズ社製bizhubPRO C6500に装着して、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック各色の印字率がそれぞれ5.0%の文字画像、カラーハーフトーン画像、ベタ白画像、ベタ画像がそれぞれ1/4等分にある画像を作製し、画質の評価として転写性、中抜け性を行った。
【0100】
<転写性>
転写性は、感光体上に形成されたトナー画像が中間転写体を介して出力媒体上に定着されたときのベタ画像の濃度で評価した。具体的には、高温高湿環境(33℃、80%RH)で10,000枚のプリントを行い、10,000枚目のプリント画像のべた画像部濃度を濃度計で測定し転写性の評価を行った。濃度計としては、サカタインクス(株)製 スペクトロアイLTを使用した。
【0101】
転写性の評価ランク
◎:ベタ画像濃度が1.40以上で転写性は良好であり、問題なし
○:ベタ画像濃度が1.25以上1.40未満で実用上問題ないレベル
△:ベタ画像濃度が1.20以上1.25未満で、転写性が低下するが一応実用可能なレベル
×:ベタ画像濃度が1.20未満で転写率は悪く、実用上問題となるレベル
〈白抜け性〉
文字を拡大(倍率50倍)し、中抜けの発生の有無を目視にて観察した。
【0102】
白抜け性の評価ランク
◎:10万枚のプリント終了まで、顕著な白中抜けの発生なし
○:5万枚以上から10万枚未満のプリント終了まで、顕著な中抜けの発生なし
△:2万枚以上から5枚未満で軽微な白中抜け発生あり
×:2万枚未満のプリントで、顕著な白中抜け発生あり
【0103】
【表2】

【0104】
テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを重合させたポリアミド酸とカーボンブラックとを分散した後に水を添加して調製したカーボンブラック分散ポリアミド酸塗布液を使用して作製した試料No.101から105は、表面の表面抵抗と裏面の表面抵抗との差も少なく、転写性、白抜け性も優れた結果を示した。
【0105】
ピロメリト酸二無水物と芳香族ジアミンとを重合させたポリアミド酸とカーボンブラックとを分散した後に水を添加して調製したカーボンブラック分散ポリアミド酸塗布液を使用して作製した試料No.106は、表面の表面抵抗と裏面の表面抵抗との差も1.0以上であり、体積抵抗もNo.101から105と比べ、低めとなり、転写性、白抜け性も試料No.101から105よりも劣る結果を示した。
【0106】
テトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとを重合させたポリアミド酸とカーボンブラックとを分散した後に水を添加して調製したカーボンブラック分散ポリアミド酸塗布液を使用して作製した試料No.107は、表面の表面抵抗と裏面の表面抵抗との差も1.9、体積抵抗もNo.101から105と比べ、低めとなり、転写性、白抜け性も試料No.101から105よりも劣る結果を示した。
【0107】
n−メチルピロリドンに、カーボンブラックを混合分散した後に水を添加し、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4′−ジアミノジフェニルエーテルとを溶解、重合したカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を使用して作製した試料No.108は、表面の表面抵抗と裏面の表面抵抗との差も1.7、体積抵抗もNo.101から105と比べ低めとなり、転写性、白抜け性も試料No.101から105よりも劣る結果を示した。
【0108】
水を使用しないで調製したカーボンブラック分散ポリアミド酸塗布液を使用して作製した試料No.109は、表面の表面抵抗と裏面の表面抵抗との差も3.4とかなり他と比較してかなり大きく、体積抵抗もNo.101から105と比べ低めとなり、転写性、白抜け性も試料No.101から105よりも劣る結果を示した。
【0109】
水を含ませた溶媒を使用して調製したカーボンブラック分散ポリアミド酸塗布液を使用して作製した試料No.110は、表面の表面抵抗と裏面の表面抵抗との差も1.6、体積抵抗もNo.101から105と比べ低めとなり、転写性、白抜け性も試料No.101から105よりも劣る結果を示した。
【符号の説明】
【0110】
1 フルカラー画像形成装置
7 無端ベルト状中間転写体形成ユニット
70 中間転写ベルト
71から76 ローラー
9c1 塗布装置
9c11 保持部
9c12 塗布部
9c121 塗布手段
9c123 塗布液供給管
9c13 乾燥部
9c2 円筒状金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応して得られるポリアミド酸と、カーボンブラックとを有する塗布液を用いて製造される中間転写ベルトの製造方法において、
前記塗布液が、テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを重合させポリアミド酸とする重合工程と、
前記重合工程で得られたポリアミド酸と、前記カーボンブラックとを分散含有させ分散液を調製する分散工程と、
前記分散工程で得られた分散液に、さらに水を添加する水添加工程とを経て調製されることを特徴とする中間転写ベルトの製造方法。
【請求項2】
前記水添加工程で添加する水の添加量が、前記ポリアミド酸に対して3質量部から20質量部であることを特徴とする請求項1に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【請求項3】
前記テトラカルボン酸二無水物が、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【請求項4】
前記芳香族ジアミンが4,4′−ジアミノジフェニルエーテルであることを特徴とする、請求項1から3の何れか1項に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の中間転写ベルトの製造方法により製造されたことを特徴とする中間転写ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−7812(P2013−7812A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139181(P2011−139181)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】