説明

中間転写体及びその製造方法、中間転写体ユニット、並びに、画像形成装置

【課題】トナーの転写性が向上した中間転写体を提供すること。
【解決手段】壁面が曲面で構成された凹部が点在した表面を持つ樹脂層を最外層121として有する中間転写体101である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写体及びその製造方法、中間転写体ユニット、並びに、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、「少なくとも2層で構成し、像担持体に対向する面を粗面に形成してなる転写手段(ロール、ベルト)」が提案されている。
また、特許文献2には、「表面に潤滑剤粉末凝集層が形成されたシームレスベルト」が提案されている。
また、特許文献3には、「高誘電体層上にポリテトラフルオロエチレン層を設けた電子写真用転写部材」が提案されている。
また、特許文献4には、像担持体と対向する位置において潜像担持体と接触する部材であって、その少なくとも表面に、平均粒子径0.1μm以上の非粘着性微粒子を20体積%以上含有し、かつ、前記部材の表面粗さRa(中心線平均粗さ)が0.4μm以上である部材」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平03−131883号公報
【特許文献2】特開平02−231129号公報
【特許文献3】特開平05−094096号公報
【特許文献4】特開平07−110615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、トナーの転写性が向上した中間転写体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
曲面の内壁で構成された凹部が点在した表面を持つ樹脂層を最外層として有する中間転写体。
【0006】
請求項2に係る発明は、
前記樹脂層が、前記凹部の内壁と前記凹部の周囲の表面の一部とにフッ素化合物の膜を有する請求項1に記載の中間転写体。
【0007】
請求項3に係る発明は、
請求項1又は2のいずれか1項に記載の中間転写体としてのベルト部材と、
前記ベルト部材を張力がかかった状態で掛け渡す複数のロールと、
を備え、
画像形成装置に対して脱着される中間転写体ユニット。
【0008】
請求項4に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
トナー粒子及び外添剤粒子を含むトナーにより前記像保持体の表面の潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像が転写される中間転写体であって、請求項1又は2のいずれか1項に記載の中間転写体と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を前記中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、
前記中間転写体の表面に転写された前記トナー像を記録媒体に二次転写する二次転写手段と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、
を備えた画像形成装置。
【0009】
請求項5に係る発明は、
前記中間転写体の前記凹部の最小径が、前記トナー粒子の粒径よりも小さく、前記外添剤粒子の粒径よりも大きい請求項4に記載の画像形成装置。
【0010】
請求項6に係る発明は、
粒子を含む樹脂層を最外層として形成する工程と、
前記樹脂層の表面に露出した前記粒子を除去する工程と、
を有し、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の中間転写体を製造する中間転写体の製造方法。
【0011】
請求項7に係る発明は、
前記粒子が、フッ素樹脂粒子である請求項6に記載の中間転写体の製造方法。
【0012】
請求項8に係る発明は、
前記フッ素樹脂粒子が、ポリテトラフルオロエチレン粒子である請求項7に記載の中間転写体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、曲面の内壁で構成された凹部が表面に点在した樹脂層を最外層として有さない場合に比べ、トナーの転写性が向上した中間転写体を提供できる。
請求項2に係る発明によれば、樹脂層が、凹部の内壁と凹部の周囲の表面の一部とにフッ素化合物の膜を有さない場合に比べ、トナーの転写性が向上した中間転写体を提供できる。
【0014】
請求項3、4に係る発明によれば、曲面の内壁で構成された凹部が表面に点在した樹脂層を最外層として有さない中間転写体を備えない場合に比べ、中間転写体のトナーの転写性が向上した中間転写体ユニット、及び画像形成装置を提供できる。
請求項5に係る発明によれば、中間転写体の凹部の最小径が、トナー粒子の粒径よりも大きい場合に比べ、中間転写体のトナーの転写性が向上した中間転写体を提供できる。
【0015】
請求項6に係る発明によれば、樹脂層の表面に露出した粒子を除去する工程を有さない場合に比べ、トナーの転写性が向上した中間転写体の製造方法を提供できる。
請求項7、8に係る発明によれば、粒子がフッ素樹脂粒子でない場合に比べ、トナーの転写性が向上した中間転写体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る中間転写体を示す概略斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本実施形態に係る中間転写体の最外層にフッ素化合物膜を有する様子を示す模式図である。
【図4】本実施形態に係る中間転写体の製造方法を説明するための模式図である。
【図5】円形電極の一例を示す概略平面図(A)及び概略断面図(B)である。
【図6】本実施形態に係る中間転写体ユニットを示す概略斜視図である。
【図7】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
(中間転写体)
図1は、本実施形態に係る中間転写体を示す概略斜視図である。図2は、図1のA−A断面図である。
【0019】
本実施形態に係る中間転写体101は、図1及び図2に示すように、例えば、ベルト部材であって、無端状に形成され、例えば厚み30μm以上80μm以下の基材層122と、基材層122の外周面に設けられた例えば厚み5μm以上70μm以下の最外層121と、の積層体で構成されている。
そして、最外層121が、曲面の内壁で構成された凹部123が表面(中間転写体の最外面となる面)に点在した樹脂層で構成されている。
【0020】
ここで、従来、中間転写体の最外層にフッ素樹脂粒子を含ませ、フッ素樹脂粒子を最外層に露出させることで、離型性を発現させて、転写性の向上を実現している。
しかしながら、例えば、トナーの小径化(例えば、トナー粒子の体積平均粒径が2.0μm以上6.5μm以下の小径トナー)に伴い、トナー(トナー粒子)の一粒子当たりの帯電量が低下するため、像保持体に対する静電的な付着力が小さくなる一方で、中間転写体に対するファンデルワールス力(分子間力)等の非静電的な付着力が大きくなり、転写電界により転写することが、大径のトナーに比べて困難となり易いことから、さらなる、転写性の向上が求められているのが現状である。
【0021】
そこで、本実施形態に係る中間転写体101では、曲面の内壁で構成された凹部123が表面(中間転写体101の最外面となる面)に点在した樹脂層を最外層121として適用することで、転写性が向上する。
この理由は定かでないが、トナー(トナー粒子)と接触する最外層121の表面に壁面が曲面の内壁で構成された凹部123が点在することで、トナー(トナー粒子)と最外層121との接触面積が低減されると共に、外添剤粒子が最外層121の表面ではなく、凹部123に内壁に付着し易くなり、当該凹部123に内壁に付着した外添剤粒子により、最外層121に対するトナー(トナー粒子)の付着力が低減されるためであると考えられる。
そして、本実施形態に係る中間転写体101では、特に、転写性が低下し易い小径トナー(例えば、トナー粒子の体積平均粒径が2.0μm以上6.5μm以下の小径トナー)であっても、転写性が向上する。
【0022】
また、本実施形態に係る中間転写体101では、最外層121の表面に設けられる凹部123は、最外層121の平坦な表面に対して窪むようにして設けられるものであることから、最外層121の表面には凸部が存在していないため、最外層121の表面に形成された凸部によるクリーニング不良(例えば、クリーニングブレードの磨耗、欠けに起因するクリーニング不良)が低減される。
特に、フッ素樹脂粒子を配合した最外層(フッ素樹脂粒子が表面に露出した最外層)を持つ中間転写体では、離型性の高いフッ素樹脂粒子が表面に凸状に突出して露出しているため、初期のクリーニング不良が発生し易いが、本実施形態に係る中間転写体101では、これが改善され易くなる。
なお、トナー(トナー粒子)との接触面積を低減され、転写効率を高める目的で、最外層121の表面を粗面化する手法を採用することも考えられるが、最外層121の表面を粗面化した場合、最外層121に凸部も形成されてしまい、当該凸部によるクリーニング不良が発生し易くなる。
【0023】
また、本実施形態に係る中間転写体101では、最外層121の表面にフッ素樹脂粒子等の粒状物が存在しないことから、当該粒状物の存在に起因する転写電界ムラが抑えられると考えられ、得られる画像の粒状性も向上する。
【0024】
以下、本実施形態に係る中間転写体101の構成材料や特性について説明する。
【0025】
−最外層121−
最外層121は、例えば、樹脂材料、導電剤を含んで構成され、曲面の内壁で構成された凹部凹部123が表面(中間転写体の最外面となる面)に点在した樹脂層である。
最外層121として具体的には、例えば、樹脂材料と、粒子124(以下、除去粒子124と称する)と、導電剤と、必要に応じて、その他添加剤と、を含んで構成されている。
そして、最外層121は、例えば、表面に露出する粒子(表層部に存在する粒子)が除去(例えば離脱、破砕、又は潰れ)することで、曲面の内壁で構成された凹部123が表面に点在するように設けられている。
【0026】
凹部123について説明する。
凹部123は、例えば、最外層121の平坦な表面から窪むように設けられ、曲面状の壁面(最外層121で構成される面)で取り囲まれた空間部である。
凹部123は、例えば、その最小径がトナー粒子の粒径(例えば体積平均粒径(D50v)2.0μm以上10μm以下)よりも小さく、外添剤粒子の粒径(例えば体積平均粒径(D50v)5nm以上500nm以下)よりも大きいことがよい。
これにより、凹部123に対して、トナー粒子が入り込まず、トナー粒子と最外層121との接触面積を低減させ易くなり、外添剤粒子が入り込み易く、最外層121に対するトナー粒子の付着力を低減させ易くなる。その結果、転写性の向上が実現され易くなる。
【0027】
具体的には、凹部123の最小径は、例えば、0.005μm以上5μm以下であることがよく、望ましくは0.01μm以上2μm以下、より望ましくは0.05μm以上1μm以下である。
なお、凹部123の最小径は、例えば、トナー粒子の粒径(体積平均粒径)に対して、1/2000以上1/2以下がよく、望ましくは1/1000以上1/4以下、より望ましくは1/500以上1/5以下である。
一方、凹部123の最小径は、例えば、外添剤粒子の粒径(体積平均粒径)に対して、1倍以上100倍以下がよく、望ましくは1.2倍以上50倍以下、より望ましくは1.5倍以上10倍以下である。
【0028】
また、凹部123の最大深さは、例えば、0.003μm以上3μm以下であることがよく、望ましくは0.05μm以上2μm以下、より望ましくは0.03μm以上1μm以下である。
なお、凹部123の最大深さは、例えば、トナー粒子の粒径(体積平均粒径)に対して、1/4000以上1/2以下がよく、望ましくは1/2000以上1/4以下、より望ましくは1/1000以上1/5以下である。
また、凹部123の最小径は、例えば、外添剤粒子の粒径(体積平均粒径)に対して、0.1倍以上200倍以下がよく、望ましくは0.2倍以上100倍以下、より望ましくは0.4倍以上50倍以下である。
【0029】
また、凹部123の個数(最外層121の存在率)は、例えば、0.01mm当たり、100個以上 1000000以下であることがよく、望ましくは500個以上8000000個以下、より望ましくは1000個以上500000個以下である。
【0030】
また、凹部123の形状(最外層121の表面と直交した方向から見た形状)は、円形、不定形等、いずれの形状であってもよい。
【0031】
ここで、凹部123の最小径、最大深さは、形成されている最外層121から試料を採取し、その試料について電子顕微鏡観察(SEM観察)または原子間力顕微鏡観察(AFM観察)を行い、任意の10個の凹部123について最小径、最大深さを測定し、この平均値とする。
また、凹部123の個数も、同様に、採取した試料について電子顕微鏡観察(SEM観察)を行い、任意の10個の領域(0.01mm)における凹部123の個数を測定し、この平均値とする。
【0032】
樹脂材料について説明する。
樹脂材料は、そのヤング率が、ベルト厚みによっても異なるが、望ましくは、3500MPa以上、より望ましくは4000MPa以上であればよく、ベルトとしての機械特性が満足される。樹脂材料としては、上記ヤング率を満たせば、制限はないが、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、補強材を添加してなるポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0033】
なお、ヤング率は、JIS K7127(1999)に準じて引張試験を行い、得られた応力・歪曲線の初期ひずみ領域の曲線に接線を引き、その傾きにより求める。測定条件としては、短冊状試験片(幅6mm、長さ130mm)、ダンベル1号、試験速度500mm/分、厚さはベルト本体の厚さの各設定で測定するものとする。
【0034】
上記樹脂材料の中でも、ポリイミド樹脂が好適である。ポリイミド樹脂は、高ヤング率材料であることから、駆動時(支持ロール、クリーニングブレード等の応力)による変形が他の樹脂に比べ少ないので、色ズレ等の画像欠陥が生じにくい中間転写体(ベルト)となる。
ポリイミド樹脂としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリアミド酸のイミド化物が挙げられる。ポリイミド樹脂として具体的には、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との等モル量を溶媒中で重合反応させてポリアミド酸の溶液として得て、そのポリアミド酸をイミド化して得られたものである。
【0035】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、下記の一般式(I)で示されるものが挙げられる。
【0036】
【化1】

【0037】
(一般式(I)中、Rは4価の有機基であり、芳香族、脂肪族、環状脂肪族、芳香族と脂肪族を組み合わせたもの、又はそれらの置換された基である。)
【0038】
テトラカルボン酸二無水物として具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0039】
一方、ジアミン化合物の具体例としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ第三ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ベンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロボキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ピペラジン、HN(CHO(CHO(CH)NH、HN(CHS(CHNH、HN(CHN(CH(CHNH等が挙げられる。
【0040】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合反応させる際の溶媒としては、溶解性等の点より極性溶媒(有機極性溶媒)が好適に挙げられる。極性溶媒としては、N,N−ジアルキルアミド類が望ましく、具体的には、例えば、これの低分子量のものであるN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等が挙げられる。これらは単数又は複数併用してもよい。
【0041】
ポリイミド樹脂の含有量は、例えば、層を構成する成分全体に対して10質量%以上80質量%以下であることがよく、望ましくは20質量%以上75質量%以下より望ましくは40質量%以上70質量%以下である。
ポリイミド樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0042】
除去粒子124について説明する。
除去粒子124としては、フッ素樹脂粒子、シリカ粒子、メラミン樹脂粒子、金属粒子(銀、銅、ニッケルなど)、金属塩化物粒子(塩化銀、塩化ニッケルなど)、金属酸化物粒子(酸化亜鉛、酸化鉄など)、硫酸バリウム粒子、炭酸カルシウム粒子等が挙げられる。また、粒子としては、後述する粉末状(粒子状)の導電剤であってもよい。
【0043】
これら除去粒子124の中でも、配合した最外層121の表層部から除去し易い、フッ素樹脂粒子がよい。
フッ素樹脂粒子としては、例えば、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂及びそれらの共重合体の粒子が挙げられる。
これらの中も、フッ素樹脂粒子としては、特に、ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化エチレン樹脂「PTFE」)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(「FEP」)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(「PFA」)がよく、特に、ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化エチレン樹脂「PTFE」)が望ましい。
【0044】
フッ素樹脂粒子(特に、延び易い性質を持つポリテトラフルオロエチレン)は、配合した最外層121の表層部から除去する際、潰れて、凹部123の内壁と凹部123の周囲の表面の一部とにフッ素化合物の膜125(以下、フッ素化合物膜125と称する)を形成し易く好適である(図3参照)。
つまり、フッ素化合物膜125は、フッ素樹脂粒子を構成するフッ素樹脂(フッ素樹脂粒子を分散させる分散剤を最外層121形成塗布液に配合した場合、その分散剤(フッ素系グラフトポリマー))を含んで構成される膜であることが好適である。
フッ素化合物膜125が、最外層121における凹部123の内壁と凹部123の周囲の表面の一部とに存在すると、フッ素化合物膜125自体により最外層121に対するトナー粒子の付着力を低減すると共に、フッ素化合物膜125の存在により外添剤粒子が付着し易くなり、当該外添剤粒子により最外層121に対するトナー粒子の付着力を低減する。その結果、転写性の向上が実現され易くなる。
なお、図3は、(A)が図1のA−A断面図に相当し、(B)が平面図に相当する図である。
【0045】
除去粒子124は、一次粒子、2μm以下(望ましくは1μm以下、より望ましくは0.5μm以下)の二次粒子径を持つ二次粒子、又はこれの混合状態で含まれていることがよい。
これは、除去粒子124が、一次粒子、二次粒子(一次粒子が2つ以上凝集した凝集状態)、又はこれらの混合状態で分散・含有されており、少なくとも凝集粒子の状態での二次粒子径が上記範囲となっていること、つまり、除去粒子124が凝集が抑制された状態で分散されていることを意味する。
なお、除去粒子124の一次粒子(凝集していない状態の粒子径:一次粒径)は、0.1μm以上0.3μm以下であることがよい。
【0046】
除去粒子124の一次粒径及び二次粒径は、感光体の最表面層から試料片を得て、これをSEM(走査型電子顕微鏡)により例えば倍率5000倍以上で観察し、一次粒子、又は凝集粒子の状態のフッ素樹脂粒子のそれぞれの最大径を測定し、これを50個の粒子について行った平均値とする。なお、SEMとして日本電子製JSM-6700Fを使用し、加速電圧5kVの2次電子画像を観察する。
【0047】
除去粒子124の含有量は、例えば、層を構成する成分全体に対して1質量%以上50質量%以下であることがよく、望ましくは2質量%以上45質量%以下より望ましくは3質量%以上40質量%以下である。
除去粒子124は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0048】
ここで、除去粒子124を上記分散状態(含有状態)とするには、例えば、分散剤を併用することがよい。
例えば、除去粒子124としてフッ素樹脂粒子を適用する場合、分散剤としてフッ素系グラフトポリマーを併用することがよい。
フッ素系グラフトポリマーとしては、分子鎖の片方の末端に重合性の官能基を有するマクロモノマーと、フッ化アルキル基を有する重合性フッ素系モノマーと、の共重合体が挙げられる。
フッ素系グラフトポリマーとして具体的には、例えば、マクロマーとして、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン化合物等の重合体又はそれらの共重合体と、フッ素系モノマーとして、パーフルオロアルキルエチルメタクリレート、パーフルオロアルキルメタクリレート等との、グラフト共重合体が挙げられる。
【0049】
マクロモノマーと重合性フッ素系モノマーとの重合比は、例えば、フッ素系グラフトポリマー中のフッ素含有量として10質量%以上50質量%以下(望ましくは10質量%以上40質量%以下、より望ましくは10質量%以上30質量%以下)となる重合比であることがよい。
フッ素系グラフトポリマーの分子量は、例えば、数平均分子量で5000以上20000以下であることよく、望ましくは5000以上17500以下、より望ましくは5000以上12000以下である。
フッ素系グラフトポリマーの量は、例えば、フッ素樹脂粒子に対して0.1質量%以上10質量%以下であることがよい。
【0050】
次に、導電剤について説明する。
導電剤としては、導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm未満、以下同様である)もしくは半導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm以上1013Ω・cm以下、以下同様である)の粉末(1次粒径が10μm未満の粒子からなる粉末がよく、望ましくは1次粒径が1μm以下の粒子からなる粉末)が挙げられる。
導電剤としては、特に制限はないが、例えば、カーボンブラック(例えばケッチエンブラック、アセチレンブラック、表面が酸化処理されたカーボンブラック等)、金属(例えばアルミニウムやニッケル等)、酸化金属化合物(例えば酸化イットリウム、酸化錫等)、イオン導電性物質(例えばチタン酸カリウム、LiCl等)、導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレンなど)等が挙げられる。
【0051】
導電剤は、その使用目的により選択されるが、電気抵抗の経時での安定性や、転写電圧による電界集中を抑制する電界依存性の観点から、pH5以下(望ましくはpH4.5以下であり、より望ましくはpH4.0以下)の酸化処理カーボンブラック(例えば表面にカルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等を付与して得られたカーボンブラック)がよく、電気的耐久性付与の観点から、導電性高分子(例えばポリアニリン等)がよい。
【0052】
導電剤の含有量は、例えば、層を構成する成分全体に対して1質量%以上50質量%以下であることがよく、望ましくは2質量%以上40質量%以下より望ましくは4質量%以上30質量%以下である。
導電剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0053】
−基材層122−
基材層122は、樹脂材料と、導電剤と、必要に応じて、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0054】
樹脂材料について説明する。
樹脂材料としては、樹脂材料は、そのヤング率が、ベルト厚みによっても異なるが、望ましくは、3500MPa以上、より望ましくは4000MPa以上であればよく、ベルトとしての機械特性が満足される。樹脂としては、上記ヤング率を満たせば、制限はないが、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、補強材を添加してなるポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0055】
なお、ヤング率は、JIS K7127(1999)に準じて引張試験を行い、得られた応力・歪曲線の初期ひずみ領域の曲線に接線を引き、その傾きにより求める。測定条件としては、短冊状試験片(幅6mm、長さ130mm)、ダンベル1号、試験速度500mm/分、厚さはベルト本体の厚さの各設定で測定するものとする。
【0056】
上記樹脂材料の中でも、ポリイミド樹脂が好適である。ポリイミド樹脂は、高ヤング率材料であることから、ベルト回転駆動時の変形が他の樹脂に比べ少なくなる。そして、最外層121をポリイミド樹脂を含んで構成させる場合、最外層121と接触する下層に相当する基材層122もポリイミド樹脂を含んで構成させることで、最外層121と下層となる基材層122との密着性が向上すると考えられ、当該層間の剥離が抑制される。
なお、ポリイミド樹脂としては、最外層121を構成する樹脂材料として挙げたポリイミド樹脂と同様なものが挙げられる。
【0057】
導電剤について説明する。
導電剤についても、最外層121を構成する導電剤と同様なものが挙げられる。
【0058】
次に、本実施形態に係る中間転写体101の特性について説明する。
本実施形態に係る中間転写体101の外周面の表面抵抗率は、常用対数値で9(LogΩ/□)以上13(LogΩ/□)以下であることが望ましく、10(LogΩ/□)以上12(LogΩ/□)以下であることがより望ましい。電圧印加の30msec後の表面抵抗率の常用対数値が13(LogΩ/□)を超えると、二次転写時に記録媒体と中間転写体101とが静電吸着し、記録媒体の剥離ができなくなる場合がある。一方、電圧印加の30msec後の表面抵抗率の常用対数値が9(LogΩ/□)未満であると、中間転写体に一次転写されたトナー像の保持力が不足し画質の粒状性や像乱れが発生する場合がある。
なお、表面抵抗率の常用対数値は、導電剤の種類、及び導電剤の添加量により制御される。
【0059】
ここで、表面抵抗率の測定方法は、次の通り行う。円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPの「URプローブ」)を用い、JIS K6911に従って測定する。表面抵抗率の測定方法を、図を用いて説明する。図5は、円形電極の一例を示す概略平面図(A)及び概略断面図(B)である。図5に示す円形電極は、第一電圧印加電極Aと板状絶縁体Bとを備える。第一電圧印加電極Aは、円柱状電極部Cと、該円柱状電極部Cの外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極部Cを一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極部Dとを備える。第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと板状絶縁体Bとの間にベルトTを挟持し、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cとリング状電極部Dとの間に電圧V(V)を印加したときに流れる電流I(A)を測定し、下記式により、ベルトTの転写面の表面抵抗率ρs(Ω/□)を算出する。ここで、下記式中、d(mm)は円柱状電極部Cの外径を示し、D(mm)はリング状電極部Dの内径を示す。
式:ρs=π×(D+d)/(D−d)×(V/I)
なお、表面抵抗率は、円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極部Cの外径Φ16mm、リング状電極部Dの内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧500V、10秒印加後の電流値を求め算出する。
【0060】
本実施形態に係る中間転写体10の全体の体積抵抗率は、常用対数値で8(LogΩcm)以上13(LogΩcm)以下であることが望ましい。体積抵抗率の常用対数値が8(LogΩcm)未満であると、像保持体から中間転写体に転写された未定着トナー像の電荷を保持する静電的な力が働きにくくなるため、トナー同士の静電的反発力や画像エッジのフリンジ電界の力によって、画像の周囲にトナーが飛散してしまい、ノイズの大きい画像が形成される場合がある。一方、体積抵抗率の常用対数値が13(LogΩcm)を超えると、電荷の保持力が大きいために、1次転写での転写電界で中間転写体表面が帯電するために除電機構が必要となる場合がある。
尚、体積抵抗率の常用対数値は、導電剤の種類、及び導電剤の添加量により制御される。
【0061】
ここで、体積抵抗率の測定は、円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ)を用い、JIS K6911に従って測定する。体積抵抗率の測定方法を、図を用いて説明する。測定は表面抵抗率と同一の装置で測定する。但し、図5に示す円形電極において、表面抵抗率測定時の板状絶縁体Bに代えて第二電圧印加電極B’とを備える。そして、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと第二電圧印加電極B’との間にベルトTを挟持し、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cと第二電圧印加電極Bとの間に電圧V(V)を印加した時に流れる電流I(A)を測定し、下記式により、ベルトTの体積抵抗率ρv(Ωcm)を算出する。ここで、下記式中、tは、ベルトTの厚さを示す。
式ρv=19.6×(V/I)×t
なお、体積抵抗率は、円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極部Cの外径Φ16mm、リング状電極部Dの内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧500V、10秒印加後の電流値を求め算出する。
【0062】
また、上記式に示される19.6は、抵抗率に変換するための電極係数であり、円柱状電極部の外径d(mm)、試料の厚さt(cm)より、πd/4tとして算出される。また、ベルトTの厚さは、サンコー電子社製渦電流式膜厚計CTR−1500Eを使用し測定する。
【0063】
以下、本実施形態に係る中間転写体101の製造方法について説明する。
なお、中間転写体101として、基材層122に樹脂材料としてポリイミド樹脂、基材層122及び最外層121に導電剤としてカーボンブラックを含ませた形態の製造方法について説明するが、これに限られるわけではない。
【0064】
まず、芯体を準備する。準備する芯体としては、円筒状金型等が挙げられる。芯体の素材としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、ニッケル等の金属が挙げられる。芯体の長さは、目的とする中間転写体101以上の長さが必要であるが、目的とする中間転写体101の長さより、10%以上40%以下長いことが望ましい。
【0065】
次に、基材層形成用塗布液として、カーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液を準備する。
具体的には、例えば、有機極性溶媒中にテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を溶解させ、これにカーボンブラックを分散させた後、重合してカーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液を準備する。
この際、ポリアミド酸溶液における、モノマー濃度(溶媒中におけるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の濃度)は種々の条件により設定されるが、5質量%以上30質量%以下が望ましい。また、重合反応温度は80℃以下に設定することが望ましく、特に望ましくは5℃以上50℃以下であり、重合反応時間は5時間以上10時間以下である。
【0066】
次に、基材層形成用塗布液を芯材としての円筒状金型に塗布し、基材層形成用塗布液の塗膜を形成する。
塗布液の円筒状金型への塗布方法は、特に制限はなく、例えば、円筒状金型の外周面に浸漬する方法や、円筒状金型の内周面に塗布する方法、軸を水平にして円筒状金型を回転させながら、その外周面又は内周面に「らせん塗布方法」や「ダイ方式塗布方法」により塗布する方法等が挙げられる。
【0067】
次に、基材層形成用塗布液の塗膜を乾燥させ、基材層となる皮膜(乾燥したイミド化前の塗膜)を形成する。乾燥条件は、例えば80℃以上200℃以下の温度で10分間以上60分間以下がよく、温度が高いほど加熱時間は短くてよい。加熱の際、熱風を当てることも有効である。加熱時は、温度を段階的に上昇させたり、速度を変化させずに上昇させてもよい。芯体の軸方向を水平にして、芯体を5rpm以上60rpm以下で回転させるのがよい。乾燥後は芯体を垂直にしてもよい。
【0068】
次に、最外層形成用塗布液として、除去粒子124(例えばフッ素樹脂粒子)、カーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液を準備する。
具体的には、有機極性溶媒中にテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を溶解させ、これにカーボンブラックを分散させた後、重合してカーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液を準備する。
一方で、有機極性溶媒中にテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を溶解させ、これに必要に応じて分散剤(フッ素系グラフトポリマー)と共にフッ素樹脂粒子を分散させた後、重合してフッ素樹脂粒子を分散させたポリアミド酸溶液を準備する。
そして、カーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液とフッ素樹脂粒子を分散させたポリアミド酸溶液を混合することで、最外層形成用塗布液としての混合溶液を準備する。
なお、混合溶液におけるモノマー濃度、重合反応温度、重合反応時間は、基材層形成用塗布液としてのポリアミド酸溶液と同様である。
【0069】
次に、最外層形成用塗布液を形成した基材層となる皮膜上に塗布して、最外層形成用塗布液の塗膜を形成する。
塗布液の円筒状金型への塗布方法は、特に制限はなく、基材層形成用塗布液の塗布方法と同様である。
【0070】
次に、最外層形成用塗布液の塗膜を乾燥させ、最外層となる皮膜(乾燥したイミド化前の塗膜)を形成する。乾燥条件等は、基材層形成用塗布液の塗膜と同様である。
【0071】
次に、基材層122及び最外層121となる皮膜に対してイミド化処理(焼成)を行って、皮膜を芯体から抜き取る。これにより、基材層122及び最外層121の積層体である中間転写体101が得られる。
イミド化の処理(焼成)条件としては、例えば250℃以上450℃以下(望ましくは300℃以上350℃以下)で、20分間以上60分間以下加熱することで、イミド化反応が起こり、ポリイミド樹脂の皮膜が形成される。加熱反応の際、加熱の最終温度に達する前に、温度を段階的、又は一定速度で徐々に上昇させて加熱することがよい。
なお、基材層122と最外層121との密着性の観点から、基材層及び最外層となる皮膜に対して同時にイミド化処理(焼成)を行うことからよいが、基材層となる皮膜に対してイミド化処理(焼成)を行って基材層を形成した後、最外層形成用塗布液を塗布し、基材層を形成してもよい。
【0072】
ここで、基材層122及び最外層121を形成した後(図4(A)参照)、形成した最外層121の表層部に存在する除去粒子124(例えばフッ素樹脂粒子)を除去する(図4(B)参照)。つまり、最外層121である樹脂層の表面に露出した除去粒子124を除去する。
除去する方法としては、例えば
1)粘着部材(例えば粘着テープ等)を用いて、粘着力により除去粒子124を除去する手法
2)摺擦部材(例えば織布、不織布、ゴムブレード等)を用いて、摺擦力により除去粒子124を除去する除去する手法
3)高圧気体を用いて、風力により除去粒子124を除去する手法
4)超音波発生装置を用いて、振動力により除去粒子124を除去する手法
が挙げられる。
【0073】
これらの中も、摺擦力により除去粒子124を除去する手法が望ましい。
本手法により除去粒子124を除去すると、除去粒子124としてフッ素樹脂粒子(特に、延び易い性質を持つポリテトラフルオロエチレン)を適用した場合、配合した最外層121の表層部から除去する際、潰れて、凹部123の内壁と凹部123の周囲の表面の一部とにフッ素化合物の膜を形成し易く好適である。
【0074】
以上説明した本実施形態に係る中間転写体101は、基材層122及び最外層121の2層の積層体で構成された形態を説明したが、これに限られず、壁面が曲面で構成された凹部123が表面(中間転写体の最外面となる面)に点在した樹脂層を最外層121をして有していれば、2層以上の積層体(例えば、最外層121と基材層122との間に中間層を設けた形態、基材層122自体が2層以上の積層体で構成された形態等)で構成されていてもよい。
また、本実施形態に係る中間転写体101は、壁面が曲面で構成された凹部123が表面(中間転写体の最外面となる面)に点在した樹脂層の単層体で構成された形態であってもよい。
また、本実施形態に係る中間転写体101は、ベルト部材に限られず、壁面が曲面で構成された凹部123が表面(中間転写体の最外面となる面)に点在した樹脂層を最外層121として有していれば、ロール部材であってもよい。
【0075】
(中間転写体ユニット)
図6は、本実施形態に係る中間転写体ユニットを示す概略斜視図である。
本実施形態に係る中間転写体ユニット130は、図6に示すように、ベルト部材として上記本実施形態に係る中間転写体(中間転写ベルト)101を備えており、例えば、中間転写体(中間転写ベルト)101は対向して配置された駆動ロール131及び従動ロール132により張力がかかった状態で掛け渡されている(以下、「張架」という場合がある。)。
ここで、本実施形態に係る中間転写体ユニット130は、中間転写体(中間転写ベルト)101を張架するロールとして、像保持体(例えば感光体)表面のトナー像を中間転写体(中間転写ベルト)101上に1次転写させるためのロールと、中間転写体(中間転写ベルト)101上に転写されたトナー像をさらに記録媒体に2次転写させるためのロールが配置される。
なお、中間転写体(中間転写ベルト)101を張架するロールの数は限定されず、使用態様に応じて配置すればよい。このような構成の中間転写体ユニット130は、装置に組み込まれて使用され、駆動ロール131,従動ロール132の回転に伴って中間転写体(中間転写ベルト)101も張架した状態で回転する。
【0076】
(画像形成装置)
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体表面を帯電する帯電手段と、像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、トナー像を記録媒体に定着する定着手段と、を有し、転写手段が、上記本実施形態に係る中間転写体を備えるものである。
【0077】
具体的には、本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、転写手段が中間転写体と像保持体に形成されたトナー像を中間転写体に一次転写する一次転写手段と中間転写体に転写されたトナー像を記録媒体に二次転写する二次転写手段とを備え、当該中間転写体として上記本実施形態に係る中間転写体を備える構成が挙げられる。
【0078】
本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、現像装置内に単色のトナーのみを収容する通常のモノカラー画像形成装置、像保持体上に保持されたトナー像を中間転写体に順次一次転写を繰り返すカラー画像形成装置、各色毎の現像器を備えた複数の像保持体を中間転写体上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置が挙げられる。
【0079】
以下、本実施形態に係る画像形成装置を、図面を参照しつつ説明する。図7は、実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【0080】
図7に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに特定距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着可能なプロセスカートリッジであってもよい。
【0081】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24に巻回されて張架して設けられ、第1ユニット10Yから第4ユニット10Kに向う方向に走行されるように、画像形成装置用の転写ユニットを構成している。
なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に付勢されており、両者に巻回された中間転写ベルト20に特定の張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給可能である。
【0082】
上述した第1乃至第4ユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1ユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1ユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4ユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0083】
第1ユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を特定の電位に帯電させる帯電ロール2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電荷像を形成する露光装置3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段)4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ロール5Y(1次転写手段)、及び1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを、クリーニングブレードにて除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段)6Yが順に配設されている。
尚、1次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0084】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が−600V以上−800V以下程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0085】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って特定の現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによって可視像(現像像)化される。
【0086】
現像装置4Y内には、例えば、イエロートナーが収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き特定速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が特定の1次転写位置へ搬送される。
【0087】
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写へ搬送されると、1次転写ロール5Yに特定の1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0088】
また、第2ユニット10M以降の1次転写ロール5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1ユニットに準じて制御されている。
こうして、第1ユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4ユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
【0089】
第1乃至第4ユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ロール(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録媒体Pが供給機構を介して2次転写ロール26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に特定のタイミングで給紙され、特定の2次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録媒体Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー像が記録媒体P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0090】
この後、記録媒体Pは定着装置(定着手段)28へと送り込まれトナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録媒体P上へ定着される。カラー画像の定着が完了した記録媒体Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【実施例】
【0091】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0092】
[実施例1]
(基材層形成用塗布液の調整)
まず、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とp−フェニレンジアミン(PDA)を含むポリアミド酸N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(ユニチカ社製UイミドKX/固形分濃度20質量%)中にカーボンブラック(SPECIAL Black 4、エボニックデグサジャパン社製)を固形分質量比で8質量%投入し、ジェトミル分散機(ジーナス社製:GeanusPY)で分散処理(200N/mm、5パス)を行った。得られたカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を、ステンレス製20μmメッシュに通過させて、異物及びカーボンブラック凝集物を取り除いた。更に、攪拌しながら真空脱泡を15分間行い、最終的な溶液を作製した。これを基材層形成用塗布液とした。
【0093】
(最外層形成用塗布液の調整)
−カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の調製−
まず、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とp−フェニレンジアミン(PDA)を含むポリアミド酸N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(ユニチカ社製UイミドKX/固形分濃度20質量%)中にカーボンブラック(SPECIAL Black 4、エボニックデグサジャパン社製)を固形分質量比で15質量%投入し、ジェトミル分散機(ジーナス社製:GeanusPY)で分散処理(200N/mm、5パス)を行った。得られたカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を、ステンレス製20μmメッシュに通過させて、異物及びカーボンブラック凝集物を取り除いた。更に、攪拌しながら真空脱泡を15分間行い、最終的な溶液を作製した。
【0094】
−フッ素樹脂粒子分散ポリアミド酸溶液の調製−
まず、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とp−フェニレンジアミン(PDA)を含むポリアミド酸N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(ユニチカ社製UイミドKX/固形分濃度20質量%)を準備した。
次に、この溶液に、一次粒径0.2μmのPTFE粒子を固形分質量比で20質量%と、フッ素樹脂粒子分散剤(AGCセイミケミカル社製S−386)を固形分質量比で1質量%と、を混合し、ジェトミル分散機(ジーナス社製:GeanusPY)で分散処理(200N/mm、5パス)を行った。
得られたフッ素樹脂粒子分散ポリアミド酸溶液を、ステンレス製20μmメッシュに通過させて、異物及びPTFE凝集物を取り除いた。更に、攪拌しながら真空脱泡を15分間行い、最終的な溶液を作製した。
【0095】
−混合溶液の調整−
カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液500質量部と、フッ素樹脂粒子分散ポリアミド酸溶液500質量部と、を回転式攪拌機により混合して、混合溶液を調製した。
これを最外層形成用塗布液とした。
【0096】
(中間転写ベルトの作製)
外径600mm、肉厚8mm、長さ900mmのSUS304製円筒を用意し、保持板として厚さ8mm、外径が上記円筒に嵌まる径、150mm径の通風孔を4つ設けた円板を同じSUS材で作製し、上記円筒の両端に嵌めて溶接し、芯体とした。芯体の外周面は、アルミナ粒子によるブラスト処理によりRa0.4μmに粗面化した。
【0097】
次に、芯体の外周面には、シリコーン系離型剤(商品名:セパコート、信越化学製)を塗布して、300℃で1時間、焼き付け処理を施した。
【0098】
次に、基材層形成用塗布液を芯体の外周面に塗布して、第1皮膜形成樹脂溶液の塗膜を形成した。
ここで、基材層形成用塗布液の塗布は、らせん塗布方法を適用して行った。
塗布条件は、15リットルの基材層形成用塗布液が入った容器にモーノポンプを連結した流下装置のノズルから毎分25mlの基材層形成用塗布液の吐出を行い、芯体を20rpmで回転させ、吐出された基材層形成用塗布液が芯体に付着後、その表面にブレードを押し当て、芯体軸方向に210mm/分の速度で移動させて行った。ブレードは、厚さ0.2mmのステンレス板を幅20mm、長さ50mmに加工したものを適用した。また、塗布幅は芯体の軸方向の端部10mmの位置から、他端部10mmの位置までとした。塗布後、そのまま5分間回転を続けることで、塗膜表面のらせん筋は消失した。
【0099】
これにより、膜厚が200μmの基材層形成用塗布液の塗膜が形成された。この厚さは、でき上がり膜厚40μmに相当する。
その後、芯体を10rpmで回転させながら180℃の乾燥炉に入れ、基材層形成用塗布液の塗膜を20分間乾燥させた。これにより、基材層となる皮膜を形成した。
【0100】
次に、最外層形成用塗布液を基材層となる皮膜の外周面に塗布して、最外層形成用塗布液の塗膜を形成した。
ここで、最外層形成用塗布液の塗布は、基材層形成用塗布液の塗布と同様にして行った。但し、塗布条件は、ノズルから吐出量を毎分25mlとし、塗布幅はやはり芯体の軸方向における端部10mmの位置から、他端部10mmの位置までとした。そして、塗布後、そのまま5分間回転を続けることで、塗膜表面のらせん筋は消失した。
【0101】
これにより、膜厚が200μmの最外層形成用塗布液の塗膜が形成された。この厚さは、でき上がり膜厚40μmに相当する。
その後、芯体を10rpmで回転させながら185℃の乾燥炉に入れ、最外層形成用塗布液の塗膜を30分間乾燥させた。これにより、最外層となる皮膜を形成した。
【0102】
次に、芯体を回転台からおろして垂直にして加熱炉に入れ、200℃で30分、300℃で30分加熱反応させ、基材層及び最外層となる皮膜膜の残留溶剤の乾燥とイミド化反応を同時に行った。
【0103】
その後、基材層及び最外層からなる積層体を芯体から抜き取り無端ベルトを得た。
この無端ベルトの幅方向の中央を切断し、さらに不要部分を両端から切断して、幅360mmの2本の無端ベルトを得た軸方向について5箇所、周方向について10箇所の計50箇所について、その平均膜厚をダイヤルゲージで測定すると、総厚みは80μmであった。
【0104】
次に、得られた無端ベルトの最外層の表面に対して、織布(商品名:ベンコットAZ−8、製造元:旭化成せんい株式会社)で摺擦することにより、最外層に露出していたフッ素樹脂粒子を除去した。これにより、最外層の表面には、フッ素樹脂粒子が除去された跡として、壁面が曲面で構成された凹部が点在して形成した。
また、無端ベルトの最外層の表面を観察すると、フッ素樹脂粒子が潰れた結果、凹部の内壁と凹部の周囲の表面にフッ素化合物膜が形成されていた。
【0105】
以上の工程を経て得られた無端ベルトを中間転写ベルトとした。
【0106】
[実施例2]
織布で摺擦する代わりに無端ベルトを水につけて超音波を照射しフッ素樹脂粒子(PTFE粒子)を除去し、水を温風で乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして中間転写ベルトを作製した。
【0107】
[実施例3]
PTFE粒子の代わりに一次粒径0.2μmのPFA粒子を使用したこと以外は、実施例1と同様にして中間転写ベルトを作製した。
【0108】
[実施例4]
PTFE粒子の代わりに一次粒径0.2μmのメラミン樹脂粒子を使用した以外は、実施例1と同様にして中間転写ベルトを作製した。
【0109】
[実施例5]
0.2μmのPTFE粒子の代わりに、0.4μmのPTFE粒子を使用したこと以外は、実施例1と同様にして中間転写ベルトを作製した。
【0110】
[実施例6]
フッ素樹脂粒子分散ポリアミド酸溶液の調製時にPTFE粒子を固形分質量比で20質量%入れる代わりに40質量%混合すること以外は、実施例1と同様にして中間転写ベルトを作製した。
【0111】
[比較例1]
−フッ素樹脂粒子含有最外層を持つ中間転写ベルトの例−
得られた無端ベルトの最外層の表面に露出するフッ素樹脂粒子を除去する処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして中間転写ベルトを作製した。
【0112】
[比較例2]
−粗面化した最外層を持つ中間転写ベルトの例−
最外層形成塗布液として、カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液のみを用いて最外層を形成した以外は、実施例1と同様にして無端ベルトを得た。
次に、得られた無端ベルトの最外層の表面に対して、アルミナ粒子によるブラスト処理により粗面化(表面粗さRa=0.2μm)した。
この粗面化を施した無端ベルトを中間転写ベルトとした。
なお、表面粗さRaは、JIS B0601に準じて規定されている中心線平均粗さを表面粗度計(サーフコム 1400A型(東京精密製))を用い、測定長さ:5.000mm、カットオフ波長:0.8mm、測定速度:0.30mm/s、λsフィルター有条件で周方向4点(90度間隔)、軸方向3点(上端から50mm、中心、下端から50mm)について測定した値である。
【0113】
[評価]
中間転写方式の画像形成装置として、富士ゼロックス社製「DocuColor 8000 Digital Pressを改造した画像評価機(2次転写ロールを評価機本体内蔵の電源から切り離して、外部電源(TRek社製 MODEL 610D)に接続し、2次転写ロールに外部から直接電圧を印加できるように改造)」を準備し、その現像器に下記現像剤1を充填すると共に、中間転写ベルト1を装着した。本中間転写方式の画像形成装置は、中間転写ベルトのクリーニング装置として、ドクター方式で配置されたクリーニングブレードを備えている。
本中間転写方式の画像形成装置を用いて、中間転写ベルトの転写性、クリーニング性について評価した。また、得られる画質についても評価した。結果を表1に示す。
【0114】
(中間転写ベルトの転写性)
中間転写ベルトの転写性は、次のようにして評価した。上記外部電源にてプリント時に二次転写ロールに印加される転写電圧を3.0kVに設定した。Cyanベタ(濃度100%)画像で出力し、転写工程終了時にハードストップを行い、2ヶ所の中間転写体上のトナー重量を上記同様テープ上に転写し、トナー付着テープ重量を測定し、テープ重量を差し引いた後に平均化することにより転写トナー量aを求め、同様に感光体上に残ったトナー量bを求め、下記式により転写効率を求めた。
・式:転写効率η(%)=a×100/(a+b)
評価基準は以下の通りである。
A:転写効率ηが99%以上
B:転写効率ηが95%以上99%未満
C:転写効率ηが95%未満
【0115】
(中間転写ベルトのクリーニング性)
中間転写ベルトのクリーニング性は、次のようにして評価した。上記外部電源にてプリント時に二次転写ロールに印加される転写電圧を0kVに設定した。Cyanベタ(濃度100%)画像で出力し、中間転写ベルト上にトナーがほぼ未転写の状態でブレードクリーニングし、クリニーニング後の中間転写ベルト上残トナーを透明なセロハンテープでテープ転写し、白紙に張り付けた。その残トナーを目視観察し、評価グレードとした。
評価基準は以下の通りである。
A:トナーの残存なし。
B:トナーがわずかに残存している(許容レベル
C:トナーが明らかに残存している(許容レベルを超える)
【0116】
(画質)
画質は、次のようにして評価した。上記外部電源にてプリント時に二次転写ロールに印加される転写電圧を4.0kVに設定した。Cyanベタ(濃度100%)画像で微小白点および転写不良を、Cyanハーフトーン(濃度70%)でウロコ状濃度ムラを、Cyanハーフトーン(濃度30%)でHTムラをグレード評価し、最もグレード悪い画質故障を評価グレードとした。
評価基準は以下の通りである。
A:画質欠陥の発生が無い
B:画質欠陥がわずかに見られる(許容レベル)
C:画質欠陥が明らかに見られる(許容レベルを超える)
【0117】
なお、各評価で用いた現像剤1は、以下のようにして製造した。
(ポリエステル樹脂(A1)及びポリエステル樹脂粒子分散液(a1)の調製)
加熱乾燥した二口フラスコに、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン15モル部と、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン85モル部と、テレフタル酸10モル部と、フマル酸67モル部と、n−ドデセニルコハク酸3モル部と、トリメリット酸20モル部と、これらの酸成分(テレフタル酸、n−ドデセニルコハク酸、トリメリット酸、フマル酸の合計モル数)に対して0.05モル部のジブチル錫オキサイドと、を入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち昇温した後、150℃乃至230℃で12時間から20時間共縮重合反応させた。その後、210℃乃至250℃で徐々に減圧して、ポリエステル樹脂(A1)を合成した。この樹脂の重量平均分子量Mwは65000、ガラス転移温度Tgは65℃であった。
【0118】
高温・高圧乳化装置(キャビトロンCD1010、スリット:0.4mm)の乳化タンクに、得られたポリエステル樹脂3000質量部、イオン交換水10000質量部、界面活性剤ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム90質量部を投入した後、130℃に加熱溶融後、110℃で流量3L/mにて10000回転で30分間分散させ、冷却タンクを通過させて非晶性樹脂粒子分散液(高温・高圧乳化装置(キャビトロンCD1010 スリット0.4mm)を回収し、ポリエステル樹脂粒子分散液(a1)を得た。
【0119】
(ポリエステル樹脂(B1)及びポリエステル樹脂粒子分散液(b1)の調製)
加熱乾燥した3口フラスコに、1、9−ノナンジオール45モル部と、ドデカンジカルボン酸55モル部と、触媒としてジブチル錫オキサイド0.05モル部とを入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で2時間攪拌を行った。その後、減圧下にて230℃まで徐々に昇温を行い5時間攪拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、ポリエステル樹脂(B1)を合成した。この樹脂の重量平均分子量Mwは25000、溶融温度Tmは73℃であった。
その後、ポリエステル樹脂分散液(A1)の作製と同じ条件にて高温・高圧乳化装置(キャビトロンCD1010、スリット:0.4mm)を用い、ポリエステル樹脂分散液(b1)を得た。
【0120】
(着色剤粒子分散液の調製)
・シアン顔料(大日精化(株)製、Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン)):1000質量部
・アニオン性界面活性剤ネオゲンSC(第一工業製薬)アニオン界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム 和光純薬社製):150質量部
・イオン交換水:4000質量部
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて1時間分散して着色剤(シアン顔料)粒子を分散させてなる着色剤粒子分散液を調製した。着色剤粒子分散液における着色剤(シアン顔料)粒子の体積平均粒子径は0.15μm、着色剤粒子濃度は20%であった。
【0121】
(離型剤粒子分散液の調製)
・ワックス(WEP−2、日本油脂社製):100質量部
・アニオン性界面活性剤ネオゲンSC(第一工業製薬):2質量部
・イオン交換水:300質量部
・脂肪酸アミドワックス(日本精化、ニュートロンD:100質量部
・アニオン界面活性剤(日本油脂社製、ニューレックスR):2質量部
・イオン交換水:300質量部
以上の成分を95℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザー(ゴーリン社)で分散処理し、体積平均粒子径が200nmである離型剤粒子を分散させてなる離型剤粒子分散液(1)(離型剤濃度:20質量%)を調製した。
【0122】
(トナー粒子1の作製)
・ポリエステル樹脂粒子分散液(a1):340質量部
・ポリエステル樹脂粒子分散液(b1):160質量部
・着色剤粒子分散液:50質量部
・離型剤粒子分散液:60質量部
・界面活性剤水溶液:10質量部
・0.3M硝酸水溶液:50質量部
・イオン交換水:500質量部
【0123】
上記成分を丸型ステンレス製フラスコ中に収容して、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、加熱用オイルバス中で42℃まで加熱し30分保持した後、更に加熱用オイルバスの温度を上げて58℃で30分間保持し、凝集粒子が形成されていることを確認した段階で、追加のポリエステル樹脂粒子分散液(a1):100質量部を添加後、更に30分保持した。
続いて、ニトリロ3酢酸Na塩(中部キレスト社製、キレスト70)を全液の3%となるように添加した。その後1Nの水酸化ナトリウム水溶液をpH7.2に到達するまで穏やかに添加した後、攪拌を継続しながら85℃まで加熱し、3.0時間保持した。その後、反応生成物をろ過し、イオン交換水で洗浄した後、真空乾燥機を用いて乾燥してトナー粒子1を得た。
【0124】
このときトナー粒子1の粒子径をコールターマルチサイザーにて測定したところ体積平均粒径D50は4.5μm、粒度分布係数GSDは1.22であった。
【0125】
(トナー1の作製)
トナー粒子1:100質量部に、シリカ粒子(「ヒュームドシリカRX50」日本アエロジル(株)製、体積平均粒子径40nm):3質量部を加え、5リットルヘンシェルミキサーを用い、周速30m/sで15分間ブレンドを行った後、45μmの目開きの篩を用いて粗大粒子を除去し、トナー1を作製した。
【0126】
(現像剤1の作製)
まず、フェライト粒子(パウダーテック社製、平均粒径50μm)100部とメチルメタクリレート樹脂(三菱レイヨン社製、分子量95000、10000以下の成分比率は5%)1.5部を、トルエン500部と共に加圧式ニーダーに入れ、常温で15分間攪拌混合した後、減圧混合しながら70℃まで昇温してトルエンを留去し、その後冷却し、105μmの篩を用いて分級して樹脂被覆フェライトキャリアを得た。
この樹脂被覆フェライトキャリアと、トナー1と、を混合し、トナー濃度が7重量%の現像剤1(二成分系静電荷像現像剤)を作製した。
【0127】
【表1】

【0128】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、転写性、クリーニング性、画質について共に良好な結果が得られることがわかる。
【符号の説明】
【0129】
1Y、1M、1C、1K 感光体
2Y、2M、2C、2K 帯電ロール
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
3 露光装置
4Y、4M、4C、4K 現像装置
5Y、5M、5C、5K 1次次転写ロール
6Y、6M、6C、6K クリーニング装置
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト
22 駆動ロール
24 支持ロール
26 2次転写ロール
30 中間転写体クリーニング装置
101 中間転写体
130中間転写体ユニット
131 駆動ロール
132 従動ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面の内壁で構成された凹部が表面に点在した樹脂層を最外層として有する中間転写体。
【請求項2】
前記樹脂層が、前記凹部の内壁と前記凹部の周囲の表面の一部とにフッ素化合物の膜を有する請求項1に記載の中間転写体。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項に記載の中間転写体としてのベルト部材と、
前記ベルト部材を張力がかかった状態で掛け渡す複数のロールと、
を備え、
画像形成装置に対して脱着される中間転写体ユニット。
【請求項4】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
トナー粒子及び外添剤粒子を含むトナーにより前記像保持体の表面の潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像が転写される中間転写体であって、請求項1又は2のいずれか1項に記載の中間転写体と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を前記中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、
前記中間転写体の表面に転写された前記トナー像を記録媒体に二次転写する二次転写手段と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、
を備えた画像形成装置。
【請求項5】
前記中間転写体の前記凹部の最小径が、前記トナー粒子の粒径よりも小さく、前記外添剤粒子の粒径よりも大きい請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
粒子を含む樹脂層を最外層として形成する工程と、
前記樹脂層の表面に露出した前記粒子を除去する工程と、
を有し、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の中間転写体を製造する中間転写体の製造方法。
【請求項7】
前記粒子が、フッ素樹脂粒子である請求項6に記載の中間転写体の製造方法。
【請求項8】
前記フッ素樹脂粒子が、ポリテトラフルオロエチレン粒子である請求項7に記載の中間転写体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−203133(P2012−203133A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66472(P2011−66472)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】