説明

串元チャック装置

【課題】ダンゴや鳥肉塊等の食品を刺した串先ではなく、串元を把持して加熱炉の上方を串とともに食品を回転させつつ移動させるようにした串元チャック装置を提供する。
【解決手段】本発明の串元チャック装置は、同一高さを保ってエンドレス移動手段に係留され、受口内周縁に環状突起を有する串元受け部材を設け、該串元受け部材はその往路移動中に串刺し食品を加熱炉上で回転させるように付勢させる回転付勢手段を備え、復路移動中に水冷させるための水槽を備えたことを特徴とし、往路にて串元を把持した串元受け部材を回転しつつ移動させて加熱炉上で食品を焼くため、ダンゴや鳥肉塊等の食品の一部で汚されていない串元を把持するから、串元受け部材が食品の一部で汚されることがなく長期使用できる。また、串元受け部材は、復路において水冷されるので次の工程で、串元受け部材に串元を把持させるときに、受口に触れても火傷等をすることがなく、安全に作業を継続できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、串に刺したダンゴや鳥肉塊等の食品を加熱炉上で焼いて食べられるように焼くために串元を把持する串元チャック装置に関するものである。
【0002】
一般に、この種の食品は、細長函状の加熱炉(熱源は問わない)を挟んで立てたフレーム上に、ダンゴや鳥肉塊等の食品を刺した串の先と元とを渡設し、その食品の焼け具合を見つつ串元を手指で把持して回転(ひっくり返す)させて奥まで熱を通し、表面にムラなく焦げ目を付けるように焼いて客に提供していた。この場合、焼き手(オペレータ)は、食品の焼け具合を常に監視し、食品の奥(芯)まで充分に火が通らなかったり部分的に必要以上に焦げてしまったりしないように集中する必要があり、このために同時的に進行する他の食品の仕込み作業や客への接待が疎かになった。
【0003】
そこで、本発明者は、先に、串に刺したダンゴや鳥肉塊等の食品を、その串先を把持して加熱炉の上方にてその場で回転させるようにしたチャック装置を出願(特願2009−159229号)した。このチャック装置は同一高さに配列された複数の回転ドラムを備え、該回転ドラム内に、該ドラム面の中心穴から串先を挿し込むとドラム内に設けたバネ製の把持手段が串先を把持して、加熱炉上において、串とともに食品をその場で回転させて焼くことができるように構成していた。これは、串に刺したダンゴや鳥肉塊等の食品が自動的に回され、万偏なく焼ける点で有効であったし、焼き手(オペレータ)をして他の食品の仕込み作業や客への接待をも一緒にできて便利であった。
【特許文献1】特開2009−159229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記チャック装置は、ダンゴや鳥肉塊等の食品を刺した串先には食品の一部が付着しているから、回転ドラム内に設けたバネ製の把持手段に食品の一部が付着してしまい、長期使用によりそのまま固まってしまい、経時的に把持手段の把持性能が低下することがあった。また、上記チャック装置では、串は加熱炉上にて、その場で回転することから、加熱炉に火力の強い部分(例えば中央部)と弱い部分(両端部)があると、部分々々により焼ける速度が異なってしまうこともあった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み創出したもので、その目的とする処は、ダンゴや鳥肉塊等の食品を刺した串先ではなく、串元を把持して加熱炉の上方を串とともに食品を回転させつつ移動させるようにした串元チャック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の串元チャック装置は、同一高さを保ってエンドレス移動手段に係留され、受口内周縁に環状突起を有する串元受け部材を設け、該串元受け部材はその往路移動中に串刺し食品を加熱炉上で回転させるように付勢させる回転付勢手段を備え、復路移動中に水冷させるための水槽を備えたことを特徴とし、往路にて串元を把持した串元受け部材を回転しつつ移動させて加熱炉上で食品を焼き、該串元受け部材を復路にて水冷できるように構成した。
【0007】
また、請求項2に記載の串元チャック装置は、同一高さを保ってエンドレス移動手段に係留され、受口内周縁に環状突起を有する串元受け部材を設け、該串元受け部材はその往路及び復路移動中に串刺し食品を加熱炉上で回転させるように付勢させる回転付勢手段を備え、復路移動中に水冷させるための水槽を備えたことを特徴とし、往路及び復路にて串元を把持した串元受け部材を回転しつつ移動させて食品を加熱炉上でダブって焼き、該串元受け部材を復路にて水冷できるように構成した。
【0008】
さらに、請求項3に記載の串元チャック装置は、前記エンドレス移動手段が、対抗するスプロケット間に張設されたローラチェーンであって、該ローラチェーンを繋ぐピン穴を利用して串元受け部材の基部を嵌入し、かつ、受口を上向き傾斜させるように前記対抗スプロケットとともにローラチェーンを傾斜させたことを特徴とし、串元受け部材を一定の速比での送りを可能にするとともに、ダンゴや鳥肉塊等の食品を刺した串の重さで垂れ下がったときに加熱炉上で水平が保てるように構成した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、往路にて串元を把持した串元受け部材を回転しつつ移動させて加熱炉上で食品を焼くため、ダンゴや鳥肉塊等の食品の一部で汚されていない串元を把持するから、串元受け部材が食品の一部で汚されることがなく長期使用できる。また、串は加熱炉上にて、移動しつつ回転するから、焼ける速度が一定となる。さらに、串元受け部材は復路において水冷されるので、次の工程で、串元受け部材に串元を把持させるときに、受口に触れても火傷等をすることがなく、安全に作業を継続できるなどの優れた効果を奏するものである。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、往路及び復路にて串元を把持した串元受け部材を回転しつつ移動させて食品を加熱炉上でダブって焼けるので、加熱炉を短小化できる利点がある。また、エンドレスに移動する串元受け部材への串元へ把持(受入れ)させる位置と焼かれた後串の抜取り位置とがほぼ同じか近い位置に設定できるので、焼き手(オペレーター)をして作業し易い。さらに、串元受け部材は復路において水冷されるので、次の工程で串元受け部材に串元を把持させるときに、受口に触れても火傷等をすることもなく、安全に作業を継続できるなどの優れた効果を奏するものである。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、串元受け部材はスプロケットとローラチェーンによりおくられるので、加熱炉の火力に併せて食品の移動速度が自由に調整できる。また、ダンゴや鳥肉塊等の食品を刺した串の重さで垂れ下がったときに、加熱炉上で水平が保てるので、一本の串に刺された食品に加熱炉の熱を均等に与えることが可能である。しかも、垂れ時に串が串元受け部材の受口の環状突起に食い込むから、串元受け部材の回転を串刺し食品に確実に伝えることができるなどの優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施態様を添付図面に基づいて説明する。図1は本願装置の要部を示す断面図、図2は往路にて加熱炉上を通す串焼き機を示す正面図、図3は同断面図、図4は往路及び復路にて加熱炉上を通す串焼き機を示す正面図、図5は同断面図である。
【0013】
本願装置1は、図1に示す如く、ダンゴや鳥肉塊等の食品2を刺した串3の串元3aを受入れる串元受け部材4を備えられ、その受口内周縁には環状突起5が忍び返し状(やや内向き)に設けられている。この環状突起5は食品2を刺した串3の重さにより軽く食い込んで串を支えるようになっている。
【0014】
前記串元受け部材4は、図2(図4も同じ)に示す如く、エンドレス移動手段6に係留されて環状に矢印(A、B)の如く移動する。そして、その往路A上には串3の受入れ点Pを有し、該受入れ点Pで受入れた串刺し食品2は、加熱炉(熱源は電熱でも炭の熱その他でもよい)7上を串3の抜き取り点P′まで移動しつつ焼かれることとなる。この串刺し食品2の移動時には、前記串元受け部材4は、これと一体の円板8がレール9上を転動し、回転付勢される。換言すれば、前記円板8とレール9により前記串元受け部材4の回転付勢手段10を構成している。
【0015】
前記加熱炉7の上を、エンドレス移動手段6により移動しつつ回転付勢手段10により回転しながら通過することにより焼かれた食品2は、前記加熱炉7を過ぎた時点にある抜き取り点P′で抜かれて顧客に提供されるが、空になった串元受け部材4はエンドレス移動手段6の第1ターン部6′でターンして復路Bに至る。また、復路Bを通過した串元受け部材4はエンドレス移動手段6の第2ターン部6″でターンして往路Aに戻る。
【0016】
前記復路Bの移動中の串元受け部材4は、図3の如く、水槽11に溜められた水12内を通過して水冷される。この水冷は、前記加熱炉7の通過中に受けた串元受け部材4が、熱くなり過ぎないようにし、往路Aに戻って次の受入れ点Pにおいて、串3の串元を串元受け部材4に把持(受入れ)させるときに、串元を摘んでいる手指をヤケド等させないようにするためである。
【0017】
前記エンドレス移動手段6として具体的には、対抗するスプロケット13、13′間に張設されたローラチェー14を利用してなる。もちろん、ベルト駆動式でもよいが、駆動側のスプロケット13との噛み合いにより送られるチェーン駆動には滑りがなく、一定の速比が得られる点で好ましい。
【0018】
前記ローラチェーン14に、前記串元受け部材4を係留させるには、該ローラチェーン14を繋ぐピン挿入穴6aを利用して一定のピッチ(間隔)をもって串元受け部材4の基部4aを嵌入する。これにより串元受け部材4は串刺し食品2がそれぞれ接触しない間隔を保って配列されている。この場合、串元受け部材4の基部4aはチェーンを繋ぐピンの役目も果たしていることは勿論である。
【0019】
前記串元受け部材4の基部4aの一端側(図1の右端径大部)4bには、前記回転付勢手段10を構成する円板8が予め嵌入され、ネジピン8aにて締めつけ固定されている。この円板8はローラチェーン6と並行に設けたレール9を転動して前記串元受け部材4は回転させる一方、前記串元受け部材4の基部4aの他端側(図1の左端延長部)4cには径小円板15が遊嵌され、ワッシャー16によりフリー回転可能に止められている。
【0020】
前記径小円板15は、上面を前記ローラチェーン14と並行に設けたレール17の下面に接してフリー回転している。これは前記串元受け部材4が串刺し食品2を把持させたときに、その重さを確実に支承する機能を有しているものである。換言すれば、すべての串元受け部材4に串刺し食品2をすべて把持させたときの重さでスプロケット13、13′とその間に張設されたローラチェー14の姿勢を保つように規制している。
【0021】
前記串元受け部材4の内腔は、受口から奥に向かって狭窄したテーパー状になっているとともに、串3の最大径のものも受入れ(把持)できるようになっている。また、前記串元受け部材4の受口内周縁には前述の如く食品2を刺した串3に軽く食い込むように環状突起5が設けられているが、この環状突起5の形成は串元受け部材4の内腔内面をアンダーカット状に削って形成しても良いし、環状突起5に対応する部品を作り一体的に嵌め込み固定してもよい。
【0022】
前記串元受け部材4は、図1の如く、一定角度θだけ上向き傾斜している。この上向き傾斜は、対抗スプロケット13、13′とともにローラチェーン14を傾斜させることにより構成している。この上向き傾斜の理由は、前記串元受け部材4の内腔の径が、ダンゴや鳥肉塊等の食品2を刺す串径より大きいため、把持させたときに食品2の重さにより垂れ下がることから、この垂れ下がった状態で食品2が加熱炉7の上方においてほぼ水平になるようにするためである。
【0023】
前記串3は垂れた状態で串元受け部材4とともに回転できる。つまり、前記串3には串元受け部材4の受口内周縁に形成した環状突起5が軽く食い込んでいるため、串元受け部材4が前記回転付勢手段10により回転させると、食い込み位置を順次ズラしながら串3とともに食品2を加熱炉7上で回転させることができる。
【0024】
上記説明では、往路Aにて串元3aを把持した串元受け部材4を回転しつつ移動させて加熱炉7上で食品を焼く場合を示したが、往路及び復路にて串元3aを串元受け部材4把持させて食品を加熱炉7上でダブって焼くようにすることも可能である。このためには、図4及び図5では、前記対抗するスプロケット13、13′間に張設されたローラチェーン14に係留されて環状に移動する往路A及び復路Bとも、前記串元受け部材4に把持させた串刺し食品2を加熱炉7の上を回転移動させている。
【0025】
たとえば、往路A上に設けた串3の受入れ点Pで受入れた串刺し食品2を、加熱炉7上を回転移送させて焼き、第1ターン6′でターンした後、復路Bにおいても加熱炉7上を回転移送させて焼くように構成する。この場合、第2ターン6″でターンして往路Aに戻ったところ(前記受入れ点Pの少し手前)に串3の抜き取り点P′を作る。なお、図面では、往路A及び復路Bには、離間距離があり、往路Aを移動する串刺し食品2にも加熱炉7の熱が充分に届くようにすることは可能である。また、抜き取り点P′と受入れ点Pとは近接し過ぎているが、その間隔は任意にとればよい。
【0026】
前述した往路A及び復路Bにて加熱炉上を通す串焼き機では、前記串元受け部材4に把持させた串刺し食品2は、復路Bでも焼かれるが、復路Bでは同時に串元受け部材4を水槽11に溜められた水12内を通過させて水冷している。この水冷の場合、前記串元受け部材4はその下半分しか水12に漬かっていないが、回転付勢手段10により回転付勢されているために、前記串元受け部材4はその全面が水冷されることは勿論である。
【0027】
上述のように構成することにより、加熱炉7はその長さ方向を短小化できるし、焼き手(オペレーター)はその場にいながら、動かずして串の受入れ作業及び抜取り作業ができる利点がある。なお、往路Aのみにて串元3aを把持した串元受け部材4を回転しつつ移動させて加熱炉7上で焼く場合において、串3の抜き取り点P′に、図示していないが、焼かれた食品2の串を自動的に抜き取る装置を設備することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本願装置は、ダンゴや鳥肉塊等の食品を刺した串の串元を受入れる串元受け部材をエンドレス移動手段により係留させてエンドレス状に移動するもので、その往路又は往路及び復路にて串刺し食品を加熱炉上にて移送しつつ焼くことができ、したがって、焼きダンゴ機や焼き鳥機等、産業上の利用可能性は極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本願装置の要部を示す断面図である。
【図2】往路にて加熱炉上を通す串焼き機を示す正面図である。
【図3】同断面図である。
【図4】往路及び復路にて加熱炉上を通す串焼き機を示す正面図である。
【図5】同断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 本願装置
2 ダンゴや鳥肉塊等の食品
3 串
3a 串元
4 串元受け部材
4a 基部
4b 径大部
4c 延長部
5 環状突起
6 エンドレス移動手段
7 加熱炉
8 円板
9 レール
10 回転付勢手段
6′ 第1ターン部
6″ 第2ターン部
11 水槽
12 水
13、13′ スプロケット
14 ローラチェー
15 径小円板
16 ワッシャー
17 レール
A 往路
B 復路
P 串の受入れ点
P′ 串の抜取り点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一高さを保ってエンドレス移動手段に係留され、受口内周縁に環状突起を有する串元受け部材を設け、該串元受け部材はその往路移動中に串刺し食品を加熱炉上で回転させるように付勢させる回転付勢手段を備え、復路移動中に水冷させるための水槽を備えたことを特徴とする串元チャック装置。
【請求項2】
同一高さを保ってエンドレス移動手段に係留され、受口内周縁に環状突起を有する串元受け部材を設け、該串元受け部材はその往路及び復路移動中に串刺し食品を加熱炉上で回転させるように付勢させる回転付勢手段を備え、復路移動中に水冷させるための水槽を備えたことを特徴とする串元チャック装置。
【請求項3】
前記エンドレス移動手段が、対抗するスプロケット間に張設されたローラチェーンであって、該ローラチェーンを繋ぐピン穴を利用して串元受け部材の基部を嵌入し、かつ、受口を上向き傾斜させるように前記対抗スプロケットとともにローラチェーンを傾斜させたことを特徴とする請求項1又は2に記載の串元チャック装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−167421(P2011−167421A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35467(P2010−35467)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(599004298)有限会社町田工業所 (4)
【Fターム(参考)】