説明

乗員拘束装置用の制御装置

【課題】インサイドモールドによってアース端子を支持、固定する場合にも、アース端子が浮き上がったりせずに安定して支持可能とすること。
【解決手段】本発明は、車両内の乗員を保護する乗員拘束装置を制御する制御装置において、制御用の回路を組み込んだ回路基板と;前記回路基板を収容する樹脂製の筐体と;前記回路基板をアースするためのアース端子とを備える。そして、前記アース端子は、前記筐体を成型すると同時に当該筐体に固定される構造とする。また、前記アース端子は、前記回路基板に接続される第1端子部と;車両に対して接続される第2端子部と;前記第1端子部及び第2端子部とを連結する中間部と;前記第1端子部及び第2端子部の少なくとも一部に設けられ、樹脂が充填される凹部とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全装置として自動車に搭載される乗員拘束装置を電気的に制御する、乗員拘束装置用の制御装置に関するものである。特に、当該制御装置のアース構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エアバッグ装置は、ガスによりエアバッグを展開させることで、衝突の際に乗員を拘束して衝撃から乗員を保護する。エアバッグ装置には、ステアリングホイール内部に収容される運転席用エアバッグ装置、窓枠の上縁部から窓に沿って展開するカーテンエアバッグ装置、インストルメントパネル(インパネ)の内部に配置される助手席用エアバッグ装置、乗員の側部で展開するサイドエアバッグ装置など種々のタイプがある。このようなエアバッグ装置は、車両内部に搭載されたエアバッグ制御装置によって電気的に制御されている。
【0003】
エアバッグ制御装置は、加速度又は減速度を検出するセンサーと、センサーの検出出力に基づいて車両の衝突を判定し、エアバッグを展開するための制御信号を出力する制御回路が組み込まれた電子回路基板を備えている。
【0004】
上記のような電子回路基板を内部に収納する筐体は、信頼性を確保するために、従来はアルミダイキャスト等の金属によって製作されていた。しかしながら、近年、環境問題の高まりを受けて軽量化の要求が強くなり、筐体の樹脂化が求められてきている(特許文献1)。
【0005】
制御装置の筐体は、電子機器の安定化等の目的で、電子回路基板から外部にアースをとる構造になっているが、筐体を樹脂製とした場合、筐体自体からアースをとることができない。このため、別部品にて従来と同様のアース性能を確保する必要がある。
【0006】
樹脂の筐体を使用した制御装置においては、金属製のアース端子を所謂インサートモールドによって筐体に固定することが考えられる。インサイドモールド工程では、アース端子を金型にセットし、筐体の成型をすると同時に、当該アース端子を筐体に対して固定することになる。しかしながら、インサイドモールド工程を経てアース端子を支持、固定した場合、アース端子が浮き上がったり、ずれたりして安定しないケースが想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−260992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであり、インサイドモールドによってアース端子を支持、固定する場合にも、アース端子が浮き上がったりせずに安定して支持可能な制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、車両内の乗員を保護する乗員拘束装置を制御する制御装置において、制御用の回路を組み込んだ回路基板と;前記回路基板を収容する樹脂製の筐体と;前記回路基板をアースするためのアース端子とを備える。そして、前記アース端子は、前記筐体を成型すると同時に当該筐体に固定される構造とする。また、前記アース端子は、前記回路基板に接続される第1端子部と;車両に対して接続される第2端子部と;前記第1端子部及び第2端子部とを連結する中間部と;前記第1端子部及び第2端子部の少なくとも一部に設けられ、樹脂が充填される凹部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記のような本発明においては、アース端子の回路基板に接続される第1端子部と、車両に対して接続される第2端子部の少なくとも一部に、樹脂が充填される凹部を設けている。このため、インサイドモールドによってアース端子を支持、固定する場合にも、アース端子が浮き上がったりせずに安定させることが可能となる。

【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施例に係るエアバッグ装置用の制御装置の構造を示す組み立て斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施例に係る制御装置の筐体を示す斜視図であり、実際の設置時の向きで示している。
【図3】図3は、本発明の実施例に係る制御装置に使用されるアース端子を示す斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施例に係る制御装置に使用されるアース端子を示す平面図である。
【図5】図5は、本発明の実施例に係る制御装置のアース端子付近の構造を示す断面図であり、図4のA−A方向及びB−B方向に対応する。
【図6】図6(A)、(B)は、本発明の実施例に係る制御装置のアース端子付近の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施例に係るエアバッグ装置用の制御装置の構造を示す組み立て斜視図である。また、図2は、実施例に係る制御装置の筐体1を示す斜視図であり、実際に車両に設置する時の向きで示している。
【0013】
図において、符号1は樹脂製の筐体であり、上部と一方の側壁が開口した箱型形状をなし、上部開口部の外周側の例えば三隅に車両への取付け孔(取り付け部)1aが設けられている。筐体1の内部には、例えば、エアバッグを展開するための制御信号を出力する制御回路を組み込んだ電子回路基板2が収容される。筐体1の内側四隅には、電子回路基板2を固定する固定脚部1bが形成されている。
【0014】
符号3は、筐体1の内部から外部にグランド電極を引き出すためのアース端子である。アース端子3は、筐体1の取付け孔1aの一つと、固定脚部1bの一つとに跨って配置される。
【0015】
図3はアース端子3を示す斜視図、図4はアース端子を示す平面図である。図5は、アース端子3付近の構造を示す断面図であり、図4のA−A方向及びB−B方向に対応する。また、図6(A)、(B)は、アース端子3付近の構造を示す断面図である。
【0016】
図3及び図4に示すように、アース端子3は、固定脚部1bへ連結される第1端子部3aと、車両6(図6)へ連結される第2端子部3bと、これら第1端子部3a、第2端子部3bとを連結する中間部3cとによって構成される。アース端子3は、プレス加工によって成型され、第1端子部3aと第2端子部3bが水平方向に延び、中間部3cが垂直方向に延びる。
【0017】
なお、図4において、説明の便宜上、アース端子3は中間部3cで屈曲する前の状態を示している。第1端子部3aは、円形に成型され、中央にボルト4が貫通する孔18が設けられている。第2端子部3bは、第1端子部3aより径の大きな円形に成型され、中央にボルト7が貫通する楕円形の孔10が設けられている。中間部3cは、樹脂のモールド工程で樹脂20の内部に埋め込まれる部分である。
【0018】
第2端子部3bの対向する縁部には、半円形の凹部12が形成されている。凹部の位置は、端子部3bの中心に対して対称の位置とすることが好ましい。また、凹部の数については好ましくは2カ所以上とし、3カ所、4カ所・・・とすることもできる。3カ所とする場合には図4における頂上部分に1つ追加するように設計すれば、樹脂20が充填されることによる端子の安定性が更に向上する。
【0019】
第1端子部3aと中間部3cとの間には、短手方向にのびる長円状の樹脂充填部が形成されている。この樹脂充填部は、中央の矩形の貫通孔14と、その左右両側に位置する半円形の凹部16とから構成され、第1端子部3aと同様に水平面内に形成される。別言すると、長丸状の凹部の中央に貫通孔14が形成され、残った部分が凹部16となる。
【0020】
図1(c)に示すように、電子回路基板2を収容した筐体1の開放面(底面)には、樹脂製のカバー5が被せられ、ボルト4によって電子回路基板2を筐体1に固定するようになっている。ボルト4の締め付けにより、電子回路基板2がアース端子3の第1端子部3a(図3)に確実に接触・連結される。
【0021】
カバー5が設けられた筐体1は、図2に示すように、裏返しにされ、3カ所の取り付け孔1aにボルト7を挿入し、車体6(図6)に対して固定するようになっている。ボルト7の締め付けにより、アース端子3の第2端子部3b(図3)と車体6(図6)とが確実に接触・連結される。
【0022】
アース端子3を組み込んだ筐体1の成型は、所謂インサイドモールド方式で行われる。まず、図3に示すように、アース端子3をプレス成形で製造し、筐体成型用の金型(図示せず)にセットする。つづいて、樹脂20を金型内部に充填し、筐体1の本体を成型すると同時にアース端子3を筐体1に対して固定する。この時、アース端子3の中間部3cは樹脂20に埋め込まれ、第1及び第2端子部3a、3bの表面は露出した状態となる。
【0023】
図5に示すように、第1端子部3aの貫通孔14及び両側の凹部16には樹脂20が充填される。また、第2端子部3bの凹部12にも同様に樹脂が充填される。これらの孔14及び凹部12,16に充填された樹脂20は、第1及び第2端子部3a,3bの表面と高さが一致する(面一となる)。
【0024】
次に、モールド成型された筐体1に対して電子回路基板2をセットし、更にカバー5を被せた後、ボルト4によって電子回路基板2を筐体に対して固定する。その様子を図6(a)に示す。ボルト4の締め付けにより、アース端子3の第1端子部3aが電子回路基板2の導電部分と確実に接触する。
【0025】
その後、筐体1を裏返して車両にセットし、ボルト7を用いて車体6に対して固定する。その様子を図6(b)に示す。ボルト7の締め付けにより、アース端子3の第2端子部3bが車体6と確実に接触する。これによって、本実施例に係る制御装置(筐体1)の車両への固定が完了する。
【0026】
本発明においては、アース端子3の回路基板2に接続される第1端子部3aと、車両6に対して接続される第2端子部3bの一部に、樹脂20が充填される凹部12,16を設けている。このため、インサイドモールドによってアース端子3を支持、固定する場合にも、アース端子3が浮き上がったりせずに安定させることが可能となる。
【0027】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想を逸脱しない範囲で種々の設計変更等が可能である。例えば、本発明に係る制御装置はエアバッグの展開制御のみならず、シートベルトのテンション制御用の制御装置に適用できることは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内の乗員を保護する乗員拘束装置を制御する制御装置において、
制御用の回路を組み込んだ回路基板と;
前記回路基板を収容する樹脂製の筐体と;
前記回路基板をアースするためのアース端子とを備え、
前記アース端子は、前記筐体を成型すると同時に当該筐体に固定される構造であり、
前記アース端子は、前記回路基板に接続される第1端子部と;車両に対して接続される第2端子部と;前記第1端子部及び第2端子部とを連結する中間部と;前記第1端子部及び第2端子部の少なくとも一部に設けられ、樹脂が充填される凹部とを有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記車両に接触する前記第2端子部の表面と、前記筐体の底面とが面一になるように成型されていることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第2端子部は、前記筐体側から締付け具を用いて締め付けることにより、前記車両に接触・固定され、
前記第1端子部は、前記回路基板側から締付け具を用いて締め付けることにより、当該基板と接触・固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記中間部は、前記筐体に埋設されることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記凹部は、前記第1端子部及び第2端子部の少なくとも一方の少なくとも外周2カ所に形成され、
前記少なくとも2つの凹部は、前記締付け具を挟んで対角の位置に形成されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記第1端子部及び第2端子部の少なくとも一方には、前記樹脂が充填される孔部が更に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記孔部は、前記凹部の領域内に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−121472(P2012−121472A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274233(P2010−274233)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(503358097)オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【復代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
【Fターム(参考)】