説明

乗員検知センサおよびその製造方法

【課題】従来よりもコストを低く抑えられ、乗員の着座状態を的確に行える乗員検知センサおよびその製造方法を提供することである。
【解決手段】乗員検知センサにおいて、シート20の座面部24aに略平行に配置され、所定間隔をおいて対向して一対の電極が配置される対向電極(上部電極14および下部電極15)を一以上備える面圧センサ部と、対向電極の相互間に生じる第1静電容量と、メイン電極とグラウンドとの間に生じる第2静電容量とを測定する静電容量測定部42と、第1静電容量および第2静電容量に基づいて乗員の着座状態を判別する乗員判別部43とを有する。この構成によれば、乗員判別部43は第1静電容量および第2静電容量に基づいて乗員の着座状態を判別するので、乗員の着座状態を的確に判別できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートへの乗員の着座状態を検知する乗員検知センサと、その乗員検知センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、シートの濡れなどの外乱要因による誤検知を抑えることを目的として、乗員検知システムに関する技術の一例が開示されている(例えば特許文献1を参照)。この乗員検知システムは、車両のシートに近接容量を測定する静電センサと遠隔容量を測定する静電センサとを設け、両センサからの出力信号に基づいて乗員の検知を行う構成とした。
【0003】
また、小柄な大人と大柄な大人との判別を可能にすることを目的として、静電容量式乗員センサに関する技術の一例が開示されている(例えば特許文献2を参照)。この静電容量式乗員センサは、クッション材に挟み込まれて電気的に浮遊状態となる浮遊電極を備え、静電センサマットと乗員の間の乗員静電容量と、静電センサマットと浮遊電極の間の浮遊静電容量の両方に基づいて乗員検知を行う構成とした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−281990号公報
【特許文献2】特開2011−075405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術を適用する場合には、外乱要因による誤検知が抑えられるとしても、小柄な大人と大柄な大人との判別ができない。一方、特許文献2の技術を適用する場合には、小柄な大人と大柄な大人との判別ができても、外乱要因による誤検知を抑えることができない。
【0006】
外乱要因による誤検知を抑えるとともに、小柄な大人と大柄な大人との判別を行うには、近接容量を測定する静電センサと、遠隔容量を測定する静電センサと、浮遊静電容量を測定するための浮遊電極(センサ)とを設ける構成が考えられる。特許文献2の図2によれば、浮遊電極(30)はメイン電極(17a)およびサブ電極(17b)とは別個の層に形成する必要がある。また、浮遊電極(30)とメイン電極(17a)との間にクッション材(20)を形成する必要もある。このため、センサを製造する工程が増え、時間を要する。また特許文献2の段落[0036]によれば、クッション材にはウレタンフォームが用いられる。クッション材は、一般的に長時間着座したり、荷物等を長期間載せたり、あるいは経年劣化によって変形する。こうした変形が生じると浮遊静電容量も変化するので、小柄な大人と大柄な大人との判別を的確に行えない可能性がある。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなしたものであり、第1の目的は、小柄な大人と大柄な大人との判別を的確に行える乗員検知センサおよびその製造方法を提供することである。第2の目的は、さらに外乱要因による誤検知を抑える乗員検知センサおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、シートへの乗員の着座状態を検知する乗員検知センサにおいて、前記シートの座面部に略平行に配置され、所定間隔をおいて対向して一対の電極が配置される対向電極を一以上備える面圧センサ部と、前記シートの座面部に略平行に配置されるメイン電極と、前記メイン電極とシートフレームとの間に配置されると共にメイン電極と同電位とされるガード電極とを備える静電センサ部と、前記対向電極の相互間に生じる第1静電容量と、前記メイン電極とグラウンドとの間に生じる第2静電容量とを測定する静電容量測定部と、前記第1静電容量および前記第2静電容量に基づいて、前記乗員の着座状態を判別する乗員判別部とを有することを特徴とする。この構成によれば、乗員判別部は第1静電容量および第2静電容量に基づいて乗員の着座状態を判別するので、乗員の着座状態を的確に判別できる。
【0009】
なお「シートの座面部」は、シートの座面(すなわち表面)を含めて、所定範囲(例えばシート表皮表面からクッションパッド上まで等)の部位が該当する。「対向電極」は一対の電極で構成されるが、その平面形状や厚さ等は問わない。「略平行」は、シートの座面と平行である場合と、当該座面と所定角度の範囲内で非平行である場合とを含む。「メイン電極」と後述する「サブ電極」とは、電極を区別するために用いる。「グラウンド」はボディアースとも呼ばれ、電気的に同電位(GND;ただし、0[V]とは限らない。)を示す部材であれば任意であり、例えば上述したシートフレームや、シート内に備えられる導電性部材(具体的には導電線等)、車両ボディ等が該当する。「シートフレーム」はシートの骨格をなすフレームである。「乗員の着座状態」には、乗員が着座しているか否かや、乗員の体格(小柄な大人,大柄な大人,幼児等)などのように、判別可能な任意の状態を含む。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記第1静電容量は、前記乗員の着座による荷重の印加に伴って減少する前記対向電極の相互間距離に伴って増加することを特徴とする。この構成によれば、対向電極の相互間距離が乗員の着座による荷重の印加に伴って変化し、対向電極の相互間距離の減少に従って第1静電容量も増加する。こうして変化する第1静電容量に基づいて、乗員判別部が乗員の着座状態をより的確に判別できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記静電センサ部は、さらに前記メイン電極と平面方向に離隔して配置されるサブ電極を有し、前記静電容量測定部は、前記サブ電極と前記メイン電極との間に生じる第3静電容量を測定し、前記乗員判別部は、少なくとも前記静電容量測定部によって測定される前記第1静電容量、前記第2静電容量および前記第3静電容量に基づいて、前記乗員の着座状態を判別することを特徴とする。この構成によれば、第1静電容量、第2静電容量および第3静電容量に基づいて乗員の着座状態を判別するので、様々な態様の判別を行うことができる。また、第3静電容量を考慮して判別を行うので、外乱要因による誤検知を抑えることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記面圧センサ部と前記静電センサ部とは、前記メイン電極と前記ガード電極との間、および、前記対向電極の相互間に共通して配置する絶縁性の面状部材を用いて、一体に構成されることを特徴とする。この構成によれば、面圧センサ部と静電センサ部とが面状部材によって一体に構成されるので、製造工程が簡易化されるとともに、センサ部ごとに個別の面状部材を用いるよりもコストを低減できる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記面圧センサ部と前記静電センサ部とは、前記メイン電極と前記対向電極を構成する一方の電極との双方を覆う第1被覆部材を用いて、一体に構成されることを特徴とする。この構成によれば、第1被覆部材はメイン電極と対向電極(一方の電極)とを保護する機能を担い、耐久性を向上させることができる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記面圧センサ部と前記静電センサ部とは、前記ガード電極と前記対向電極を構成する他方の電極との双方を覆う第2被覆部材を用いて、一体に構成されることを特徴とする。この構成によれば、第2被覆部材はガード電極と対向電極(他方の電極)とを保護する機能を担い、耐久性を向上させることができる。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記第2被覆部材は、前記ガード電極を覆う第1素材と、前記対向電極を構成する他方の電極を覆い前記第1素材とは異なる第2素材とで構成することを特徴とする。この構成によれば、ガード電極は第1素材で覆い、対向電極(他方の電極)は第2素材で覆う。素材(材質,材料)によっては電極を確実に保護できない場合もあるので、双方の電極を確実に保護するために異なる素材を用いて構成する。したがって、ガード電極と対向電極(他方の電極)とを確実に保護して、耐久性を向上させることができる。なお、「第1素材」や「第2素材」は、いずれもガード電極や対向電極(他方の電極)を覆う絶縁性の素材であれば任意である。例えば、第1素材にレジストコートを適用するとともに第2素材にフィルムを適用する組み合わせや、逆に第1素材にフィルムを適用するとともに第2素材にレジストコートを適用する組み合わせなどが該当する。
【0016】
請求項8に記載の発明は、前記静電センサ部は、前記メイン電極が前記面状部材の一面側に形成され、前記ガード電極が前記メイン電極の形成位置に対応して前記面状部材の他面側に形成されることを特徴とする。この構成によれば、面状部材の一面側と他面側とで対応して各電極を形成すればよいので、製造工程を簡易化することができ、ガード電極側からメイン電極にノイズが混入するのを確実に防止できる。
【0017】
請求項9に記載の発明は、前記対向電極は、前記一方の電極が前記面状部材の一面側に形成され、前記他方の電極が前記一方の電極の形成位置に対応して前記面状部材の他面側に形成されることを特徴とする。この構成によれば、面状部材の一面側と他面側とで対応して一対の電極を形成すればよいので、製造工程を簡易化することができ、電極間に第1静電容量を確実に生じさせることができる。
【0018】
請求項10に記載の発明は、前記面状部材、前記第1被覆部材および前記第2被覆部材のうちで、一以上の部材には絶縁性のフィルムを用いることを特徴とする。この構成によれば、フィルムを用いると全体の厚みを薄く形成することができる。なお「フィルム」は絶縁性を有すれば任意の素材を適用することができる。
【0019】
請求項11に記載の発明は、前記面圧センサ部と前記静電センサ部とは別体に構成され、一のパッド部材に備えることを特徴とする。この構成によれば、面圧センサ部と静電センサ部とは別体に構成されるものの、一のパッド部材の面上や凹部等に配置される。全体としては一体化できるので、製造工程が簡易化されるとともに、センサ部ごとに個別のパッド部材を用いるよりもコストを低減できる。なお、「パッド部材」はクッション性を有すれば任意の素材を適用することができる。
【0020】
請求項12に記載の発明は、前記面圧センサ部と前記静電センサ部とは、前記パッド部材の同一面上に備えるか、前記パッド部材で対向する面上に別個に備えるか、一方のセンサ部を前記パッド部材の一面上に備えるとともに他方のセンサ部の前記パッド部材内に備えるか、のいずれかで構成することを特徴とする。いずれの構成にせよ、面圧センサ部、静電センサ部およびパッド部材を一体化できるので、製造工程が簡易化される。
【0021】
請求項13に記載の発明は、前記面状部材は、前記対向電極の相互間に相当する部位に、所定形状の穴が形成されることを特徴とする。この構成によれば、対向電極の相互間には、電荷を蓄え得る空間(空隙)を確保できる。よって、対向電極の相互間に第1静電容量を確実に生じさせることができる。なお「所定形状」は、平面的形状や立体的形状について任意である。「穴」には、貫通穴のほか、非貫通穴(換言すれば凹部)を含む。
【0022】
請求項14に記載の発明は、前記対向電極を構成する一対の電極のうちで、どちらか片方または両方の電極にかかる対向面側には絶縁皮膜が形成されることを特徴とする。この構成によれば、一対の電極の相互間には、電荷を蓄え得る空間とともに、両電極が接触(いわゆるショート)して静電容量が不定(無限大)となる事態を防止できる。なお「絶縁皮膜」は、絶縁性を有する皮膜であれば任意の素材を適用することができる。
【0023】
請求項15に記載の発明は、前記面状部材の穴と、前記対向電極を構成する他方の電極との間には、絶縁体を介在させることを特徴とする。この構成によれば、面状部材の穴は電荷を蓄え得る空間になるとともに、絶縁体は両電極が接触して静電容量が不定となる事態を防止できる。なお「絶縁体」には、絶縁性を有する任意の部材(フィルムを含む)を適用することができる。
【0024】
請求項16に記載の発明は、前記静電容量測定部は、電極の相互間を流れる電流値に基づいて、静電容量を求めることを特徴とする。この構成によれば、電流と静電容量とには所要の関係があるので、電流値が測定できれば静電容量(すなわち第1静電容量,第2静電容量,第3静電容量)を確実に求めることができる。
【0025】
請求項17に記載の発明は、前記乗員判別部は、前記静電容量測定部によって測定される前記第1静電容量が閾値以上であるか否かによって、前記乗員が小柄な大人または平均的な大人のいずれであるかを判別することを特徴とする。この構成によれば、対向電極の相互間に生じる第1静電容量が閾値以上であるか否かを判別すれば、乗員が小柄な大人か平均的な大人かを判別することができる。
【0026】
請求項18に記載の発明は、前記面圧センサ部は、複数の前記対向電極からなる第1面圧センサ群と、複数の前記対向電極からなる第2面圧センサ群とを前記シートの前後方向に配置し、前記第2面圧センサ群の前記対向電極の面積を合計した第2電極総面積は、前記第1面圧センサ群の前記対向電極の面積を合計した第1電極総面積よりも広くなるように設定することを特徴とする。この構成によれば、乗員の着座姿勢がシートの前後方向にずれる場合でも、乗員の着座状態を的確に判別できる。
【0027】
請求項19に記載の発明は、前記第1面圧センサ群は前記シートの座面後方側に配置され、前記第2面圧センサ群は前記シートの座面中央側に配置されることを特徴とする。この構成によれば、乗員が奥深く着座すると第1面圧センサ群で検出し、乗員が浅く着座すると第2面圧センサ群で検出するので、乗員の着座状態をより的確に判別できる。
【0028】
請求項20に記載の発明は、前記第2面圧センサ群の前記対向電極は、前記第1面圧センサ群の前記対向電極に比べて、行数,列数,総数のうちで一以上が多くなるように設定することを特徴とする。この構成によれば、第1面圧センサ群よりも第2面圧センサ群のほうが行数,列数,総数が多くなるので、乗員の着座状態をより的確に判別できる。
【0029】
請求項21に記載の発明は、前記第1面圧センサ群および前記第2面圧センサ群のうちで一方または双方は、3行以上の行数または3列以上の列数で配置する場合には、行間隔または列間隔がほぼ同一になるように設定することを特徴とする。なお、「間隔がほぼ同一」には、同一間隔に限らず、所定の許容範囲内の誤差を含む不定間隔を含む。この構成によれば、第1面圧センサ群や第2面圧センサ群に含まれる対向電極がほぼ等間隔で配置されるので、静電容量測定部によって測定される各対向電極の静電容量に基づいて、乗員の着座状態をより的確に判別できる。
【0030】
請求項22に記載の発明は、前記第1面圧センサ群および前記第2面圧センサ群のうちで一方または双方は、前記対向電極の相互間を電気的に接続する信号線を伸縮可能な非直線形状に形成される伸縮部位を有することを特徴とする。この構成によれば、乗員の着座や退座、座り直しなどによって変化する荷重に応じて伸縮部位が伸縮する。よって、乗員による荷重の変化があっても、信号線の断裂(乗員検知センサによる乗員の検出不能を含む。以下同じである。)を防止することができる。
【0031】
請求項23に記載の発明は、前記伸縮部位は、座面中央側の前記対向電極と、座面左右端側の前記対向電極との間に備えることを特徴とする。この構成によれば、伸縮部位は座面左右方向に伸縮するので、乗員による荷重が変化しても信号線の断裂をより確実に防止できる。
【0032】
請求項24に記載の発明は、前記第2面圧センサ群に含まれる一部の前記対向電極は、前記シートの座面部の中央領域内に配置され、前記一部の前記対向電極の面積を合計した第3電極面積は、前記一部の前記対向電極を除いた前記第2面圧センサ群および前記第1面圧センサ群に含まれる前記対向電極の面積を合計した第4電極面積よりも広くなるように設定することを特徴とする。この構成によれば、第2面圧センサ群に含まれる一部の対向電極は、乗員が奥深く着座する場合や浅く着座する場合でも、着座状態をより的確に判別できる。
【0033】
請求項25に記載の発明は、前記第2面圧センサ群の前記対向電極は、前記第1面圧センサ群の前記対向電極よりも座面左右側に広がるように配置されることを特徴とする。一般的に、シートの奥深い部位(バックレスト側)には乗員の臀部が着座し、それよりも浅い部位(反バックレスト側)には乗員の臀部または大腿部が着座する。この構成によれば、乗員の着座位置によらず、乗員の着座状態をより的確に判別できる。
【0034】
請求項26に記載の発明は、前記第1面圧センサ群は前記乗員の臀部を検出し、前記第2面圧センサ群は前記乗員の臀部または大腿部を検出することを特徴とする。この構成によれば、乗員が奥深く着座すれば第1面圧センサ群が乗員の臀部を検出し、第2面圧センサ群が乗員の大腿部を検出する、一方、乗員が浅く着座すれば第2面圧センサ群が乗員の臀部を検出する。よって、乗員の着座位置によらず、乗員の着座状態をより的確に判別できる。
【0035】
請求項27に記載の発明は、シートへの乗員の着座状態を検知する乗員検知センサの製造方法において、所定間隔をおいて対向して配置される対向電極を構成する一対の電極のうちで、どちらか片方または両方の電極にかかる対向面側に絶縁皮膜を形成する絶縁皮膜形成工程と、絶縁性の面状部材に対して、所定の位置に穴をあける穴あけ工程と、前記シートの座面部に略平行に配置されるメイン電極と、前記対向電極を構成する一方の電極とを形成する第1電極形成工程と、前記座面部とシートフレームとの間に配置されるガード電極と、前記対向電極を構成する他方の電極とを形成する第2電極形成工程と、前記第1電極形成工程で形成された電極を第1被覆部材で覆う第1被覆工程と、前記第2電極形成工程で形成された電極を第2被覆部材で覆う第2被覆工程とを有することを特徴とする。
【0036】
この構成によれば、面状部材を中心に、一面側にはメイン電極と対向電極(一方の電極)が形成され、他面側にはガード電極と対向電極(他方の電極)が形成される乗員検知センサを製造することができる。対応する電極間には、電荷を蓄え得る面状部材または穴があるので、確実に静電容量を生じさせることができる。これらの電極は第1被覆部材と第2被覆部材とで保護されるので、耐久性を向上させることができる。
【0037】
請求項28に記載の発明は、前記第1電極形成工程は、さらに前記メイン電極と平面方向に離隔して配置されるサブ電極を形成することを特徴とする。この構成によれば、サブ電極とメイン電極との間に第3静電容量を生じさせ、様々な態様の判別を行えるようになる。
【0038】
請求項29に記載の発明は、前記第2被覆工程は、前記ガード電極を第1素材で覆う第1素材被覆工程と、前記対向電極を構成する他方の電極を前記第1素材とは異なる第1素材で覆う第2素材被覆工程とを有することを特徴とする。この構成によれば、請求項8に記載の発明と同様に、ガード電極と対向電極(他方の電極)とを確実に保護して、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】乗員検知センサの構成例を示す模式図である。
【図2】センサマットの第1構成例を示す模式図である。
【図3】センサマットの第1製造方法を示す断面図である。
【図4】静電容量が変化する原理を説明するための断面図である。
【図5】インピーダンスの成分を説明するグラフ図である。
【図6】乗員判別処理の手続き例を示すフローチャートである。
【図7】静電容量成分と抵抗値成分とを得る際の切り換え例を示す図表である。
【図8】大人判別処理の手続き例を示すフローチャートである。
【図9】静電容量と面圧との関係例を示すグラフ図である。
【図10】センサマットの第2製造方法および第2構成例を示す断面図である。
【図11】センサマットの第3製造方法および第3構成例を示す断面図である。
【図12】センサマットの第4製造方法および第4構成例を示す断面図である。
【図13】センサマットの第5製造方法および第5構成例を示す断面図である。
【図14】センサマットの第6構成例を示す断面図ある。
【図15】センサマットの第7構成例を示す断面図である。
【図16】センサマットの第8構成例を示す断面図である。
【図17】乗員検知センサ(面圧センサ部)の構成例を示す平面図である。
【図18】乗員検知センサ(面圧センサ部)の構成例を示す平面図である。
【図19】対向電極の第1配置例を示す平面図である。
【図20】乗員検知センサ(面圧センサ部)の構成例を示す平面図である。
【図21】対向電極の第2配置例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、特に明示しない限り、「接続する」という場合には電気的な接続を意味する。各図は、本発明を説明するために必要な要素を図示し、実際の全要素を図示してはいない。上下左右等の方向を言う場合には、図面の記載を基準とする。
【0041】
〔実施の形態1〕
実施の形態1は、静電センサ部と面圧センサ部とを一体に構成する例であって、図1〜図13を参照しながら説明する。なお、静電センサ部と面圧センサ部とを備えるセンサマットは多様な構成が可能である。本形態では、一例として第1構成例から第5構成例に分けて説明する。
【0042】
(第1構成例)
まず、図1には乗員検知センサの構成例を模式図で示す。図1に示す乗員検知センサは、電極部10や、ECU40などを有する。電極部10の各電極とECU40との間は、信号線16やコネクタ17等によって信号伝達が可能に接続される(図2(A)を参照)。電極部10に含まれる電極は、例えばセンサマット18として構成される(図2(B)を参照)。乗員検知センサの一部または全部は、シート20(座席装置)に備えられる。
【0043】
シート20は、ヘッドレスト21や、クッションパッド22,24、シートフレーム23,25などを有する。クッションパッド22,24を覆うシートカバー等は図示を省略する。クッションパッド24は主に乗員の臀部や大腿部等が収まる。クッションパッド22は「バックレスト」を構成し、主に乗員の背中等が収まる。なお、クッションパッド22,24や後述するウレタンパッド19はいずれも「パッド部材」に相当する。
【0044】
シートフレーム23,25は、シート20の骨格をなす導電性フレームである。本形態では、電気的に同電位を示すグラウンド(図中では「GND」と示す;ただし、電位は必ずしも0[V]とは限らない。)として用いる。このシートフレーム23,25は、ガード電極13や、車両ボディ30、電力源(バッテリや燃料電池等)のマイナス端子などにも接続されて同電位になる。車両ボディ30は、主に車両のボディフレームが該当する。
【0045】
電極部10は、サブ電極11,メイン電極12,ガード電極13,対向電極などで構成される。対向電極は「セル」とも呼ばれ、上部電極14および下部電極15からなる一対の電極で構成される。これらの電極のうち、サブ電極11,メイン電極12,ガード電極13は「静電センサ部」に相当する。対向電極は「面圧センサ部」に相当し、上部電極14は「一方の電極」に相当し、下部電極15は「他方の電極」に相当する。本形態では、電極部10の各電極をセンサマット18内に備えて一体に構成する(図2(B)を参照)。また、下部電極15の片面(対向面側)に絶縁皮膜15aを形成する(図2(B)を参照)。絶縁皮膜15aは、絶縁性の皮膜であれば素材を問わない。
【0046】
センサマット18は、クッションパッド24の座面部24aに備えられる。座面部24aは、乗員が着座する座面(表面)を含めた所定範囲(例えばシート表皮表面からクッションパッド上まで等)ように、クッションパッド24の上側部位が該当する。座面部24aを除いたクッションパッド24の下側部位は、非座面部24bに相当する。一般的に、センサマット18はクッションパッド24の表面に配置される。この場合、センサマット18とクッションパッド24との間に他のパッド部材(例えばウレタンパッド等)を介在させてもよい。また、座面部24aの範囲内でクッションパッド24の内部に配置してもよい。
【0047】
電極部10の各電極は、その形状・厚さ・面積等を問わない。上述したようにセンサマット18がクッションパッド24の座面と略平行に配置される結果として、電極部10の各電極もクッションパッド24の座面と略平行に配置される。「略平行」は、クッションパッド24の座面と平行である場合と、当該座面と所定角度の範囲内で非平行である場合とを含む。
【0048】
メイン電極12はセンサマット18のうちで座面部側に配置される。サブ電極11は、メイン電極12と平面方向に離隔して配置される。ガード電極13は、メイン電極12とシートフレーム25との間であってメイン電極12に対向して配置するが、サブ電極11と対向させるか否かを問わない。このガード電極13は、着座する面とは反対側(図面下方側)からノイズがメイン電極12に混入するのを防止する。静電センサ部(サブ電極11,メイン電極12,ガード電極13)と面圧センサ部(上部電極14,下部電極15)との位置関係は任意である。本形態における上部電極14および下部電極15の位置は、メイン電極12とガード電極13との配置関係と同様であるものの、サブ電極11との関係は任意である。すなわち、サブ電極11側に位置させてもよく(図示せず)、サブ電極11とは反対側の平面方向に離隔して位置させてもよい(図2(B)を参照)。
【0049】
また、静電センサ部(サブ電極11,メイン電極12,ガード電極13)と面圧センサ部(上部電極14,下部電極15)との平面的な位置関係も任意である。例えば図2(C)に示す平面配置例では、静電センサ部(サブ電極11,メイン電極12,ガード電極13)をクッションパッド24の前方側(図面左側)および後方側(図面右側)に配置し、面圧センサ部(上部電極14,下部電極15)をクッションパッド24の中央部に配置している。図示しないが、逆の配置としてもよい。すなわち、面圧センサ部をクッションパッド24の前方側および後方側に配置し、静電センサ部をクッションパッド24の中央部に配置する。シート20を備える車両の車種等によって配置を異ならせてもよい。
【0050】
電極部10の各電極について、面積の大小関係は任意である、通常はサブ電極<メイン電極に設定するが、サブ電極=メイン電極に設定してもよく、サブ電極>メイン電極に設定してもよい。対向電極(上部電極14と下部電極15)についても同様である。面積を大きく(広く)確保するにつれて、蓄積可能な静電容量が増え、感度を高められる。
【0051】
処理装置の一例であるECU40は、接続切換部41,静電容量測定部42,乗員判別部43などを有する。接続切換部41は、後述する静電容量測定部42から伝達される切換信号Saに基づいて接続を切り換える機能を担う。この接続切換部41は、接点スイッチや、電磁スイッチ(リレーを含む)、半導体スイッチ(半導体リレーを含む)等を用いて構成する。切換信号Saは、メインインピーダンスおよびサブインピーダンスの一方または双方を測定する際に伝達される。これらのメインインピーダンスとサブインピーダンスの用語は、二点間(電極間や端子間等を含む)のインピーダンスを区別するために用いる。接続切換部41の切り換え例については後述する(図6を参照)。
【0052】
静電容量測定部42は、電極部10に交流信号Sbを出力して流れる電流値に基づいてインピーダンスを測定する機能を担う。インピーダンスは、虚数成分が「静電容量」に相当する静電容量成分であり、実数成分が抵抗値成分である。この静電容量測定部42は、信号源42aや測定手段42bなどを有する。信号源42aは、交流信号Sbを発生させて出力する機能を担う。交流信号Sbは、インピーダンスを測定可能な信号であれば、波形・振幅・周波数等を問わない。
【0053】
測定手段42bは、接続切換部41によって切り換えられた二点間の接続に対して交流信号Sbを流し、インピーダンスを測定する機能を担う。インピーダンスの具体的な測定法は周知であるので、図示および説明を省略する。メインインピーダンスは、少なくとも一点にメイン電極12を含み、交流信号Sbを流して測定する。サブインピーダンスは、少なくとも一点にサブ電極11を含み、交流信号Sbを流して測定する。サブ電極11およびメイン電極12の双方に交流信号Sbを流して測定される電極間インピーダンス(Zms)は、サブインピーダンスに含めることにする。対向電極である上部電極14と下部電極15との間にも交流信号Sbを流し、電極間インピーダンス(Zaf)を測定する。
【0054】
乗員判別部43は、シート20に着座する乗員(すなわち空席・小柄な大人・大柄な大人・CRS(Child Restraint System)装着など)を判別する機能を担い、必要に応じて判別結果信号Se(例えば着座信号や空席信号等)を外部装置50に出力する。この乗員判別部43は、算出手段43aや判別手段43bなどを有する。算出手段43aは、静電容量測定部42から伝達される測定信号Sdに含まれる各インピーダンスについて、静電容量成分(虚数値に相当する)と抵抗値成分(実数値に相当する)とを算出する。判別手段43bは、メインインピーダンスの静電容量成分、サブインピーダンスの抵抗値成分、対向電極の静電容量成分などに基づいて、乗員の判別を行う。外部装置50は、例えば非常時にエアバッグを膨張させるエアバッグ装置(特にエアバッグECU)、他のECUや処理装置などが該当する。
【0055】
図2には、電極部10の構成例を模式的に示す。図2(A)には平面図を示し、図2(B)には図2(A)に示すIIB−IIB線矢視であってセンサマット18の一部における断面図を模式的に示し、図2(C)にはクッションパッド24に配置されるセンサマット18の一例を平面図で示す。なお、図3以降の図面で断面図を示す場合には、図2(A)に示すIIB−IIB線矢視の断面図である。
【0056】
図2(A)に示すように、電極部10の各電極(すなわちサブ電極11,メイン電極12,ガード電極13,上部電極14,下部電極15)は、いずれもセンサマット18に備えられる。言い換えれば、センサマット18に一体に構成される。
【0057】
図2(B)に例示するセンサマット18は、第1被覆部材18a,面状部材18b,第2被覆部材18cなどを有する。図2(B)の構成例では、サブ電極11,メイン電極12,上部電極14を第1被覆部材18aに備え、ガード電極13,下部電極15を第2被覆部材18cに備える。サブ電極11,メイン電極12およびガード電極13の配置や、上部電極14および下部電極15の配置は、図1と同様である。第1被覆部材18aおよび第2被覆部材18cは電極を保護するために覆う素材であれば任意であり、本形態ではフィルム(すなわち絶縁性の薄膜樹脂)を用いる。面状部材18bは、メイン電極12とガード電極13との間、および、対向電極(上部電極14と下部電極15)の相互間に共通して配置する絶縁性の素材(例えばフィルム)で形成する。
【0058】
上述したセンサマット18の第1製造方法について、図3を参照しながら説明する。図3(A)には穴あけ工程を示し、図3(B)には第1電極形成工程を示し、図3(C)には第1被覆工程を示し、図3(D)には第2電極形成工程を示し、図3(E1),図3(E2),図3(E3)には第2被覆工程を示す。なお、穴あけ工程を最初に行う点と、第1被覆工程を第1電極形成工程の後に行う点と、第2被覆工程を第2電極形成工程の後に行う点とを除けば、順不同(同時進行を含む。以下同じ。)で行ってよい。また、下部電極15の片面(対向面側)には絶縁皮膜15aを予め形成しておく(絶縁皮膜形成工程)。本形態では、図3(A)から図面の下方に向かって順番に説明する。
【0059】
図3(A)に示す穴あけ工程では、面状部材18bに貫通穴18dをあける。穴のない面状部材18bに貫通穴18dをあける場合や、成形時に面状部材18bとともに貫通穴18dがあいている場合とがある。貫通穴18dは、上部電極14と下部電極15とで挟まれる位置にあけられるので、電荷を蓄え得る空間(空隙)となる。
【0060】
図3(B)に示す第1電極形成工程では、第1被覆部材18aの他面側(非座面側・図面下側を指す。以下同じである。)に対して、サブ電極11,メイン電極12,上部電極14を形成する。なお図示しないが、上部電極14以外の電極については、面状部材18bの一面側(座面側・図面上側を指す。以下同じである。)に対して形成してもよい。
【0061】
図3(C)に示す第1被覆工程では、サブ電極11,メイン電極12,上部電極14が形成された第1被覆部材18aの他面側と、貫通穴18dがあけられた面状部材18bの一面側とを一体化(例えば接着や溶着等)させ、これらの電極を覆う。
【0062】
図3(D)に示す第2電極形成工程では、第2被覆部材18cの一面側に対して、ガード電極13,下部電極15を形成する。このうち、下部電極15は貫通穴18dを塞ぐように形成する。なお図示しないが、ガード電極13は、面状部材18bの他面側に対して形成してもよい。また第2電極形成工程は、上述した第1電極形成工程と同時(並行)に行ってもよく、相前後して行ってもよい。
【0063】
図3(E1),図3(E2),図3(E3)に示す第2被覆工程では、ガード電極13,下部電極15が形成された第2被覆部材18cの一面側と、面状部材18bの他面側とを一体化させ、これらの電極を覆う。第2被覆工程は、上述した第1被覆工程と同時に行ってもよく、相前後して行ってもよい。図3(E1)には、単一の素材(例えばフィルム)からなる第2被覆部材18cで覆う例を示す。なお、図3(E1)に示すセンサマット18の構成例は、図2(B)に示すセンサマット18の構成例と同一である。図3(E2)には、下部電極15を第2素材18c2(例えばフィルム)で覆うとともに、面状部材18bの他面側全体を第1素材18c1(例えばレジストコート)で覆う例を示す。図3(E3)には、ガード電極13を含む部位を第1素材18c1で覆うとともに、下部電極15を含む部位を第2素材18c2で覆う例を示す。第1素材18c1および第2素材18c2は、いずれも第2被覆部材18cに相当する。こうして、図3(E1),図3(E2),図3(E3)に示す各構成例のセンサマット18が製造される。
【0064】
上述のようにして製造されるセンサマット18のうち、対向電極(すなわち上部電極14と下部電極15)の相互間に生じる静電容量について、図4を参照しながら説明する。図4(A)には、乗員が着座せずに荷重がかかっていない非荷重状態を示す。図4(B)には、乗員が着座して荷重がかかっている荷重状態を示す。
【0065】
図4(A)に示す非荷重状態では、上部電極14と下部電極15との相互間距離は、貫通穴18dの中央部や壁面付近にかかわらず、距離Daで一定である。これに対して図4(B)に示す荷重状態では、乗員の着座に伴う荷重Fが第1被覆部材18aを通じて上部電極14に作用するので、貫通穴18dの中央部が距離Db(Db<Da)で一番短くなり、壁面に近づくにつれて距離Daに近づく。荷重Fが大きくなるにつれて、距離Dbも小さくなる。上部電極14と下部電極15との相互間距離が短くなるにつれて、理論的に蓄積可能な静電容量が増える。したがって、静電容量(具体的には後述する静電容量成分Caf)を測定すれば、荷重Fをかける乗員の判別を行うことができる。
【0066】
図5には、インピーダンスと成分との関係を示す。図5(A)には等価回路を示し、図5(B)には虚数成分および実数成分との関係をグラフ図で示す。図5(A)に示すように、接続切換部41で測定されるインピーダンスZxは、静電容量成分Cxと抵抗値成分Rxとを並列接続した等価回路で表される。図5(B)に示すように、静電容量成分Cxは虚数成分Imに相当し、抵抗値成分Rxは実数成分Reに相当する。インピーダンスZxは、メインインピーダンスZmgやサブインピーダンスZsg(電極間インピーダンスZms)などが該当する。静電容量成分Cxは後述する静電容量成分Cmg,Csg,Cms,Cafなどが該当し、抵抗値成分Rxは後述する抵抗値成分Rmg,Rsg,Rms,Rafなどが該当する。以下では、メインインピーダンスZmgに関連する要素には添字「mg」を付す。同様に、サブインピーダンスZsgに関連する要素には添字「sg」を付す。メイン電極12とサブ電極11との電極間インピーダンスZmsに関連する要素には添字「ms」を付す。対向電極の電極間インピーダンスZafに関連する要素には添字「af」を付す。
【0067】
上述のように構成された乗員検知センサのECU40において、乗員を判別する処理例について図6〜図9を参照しながら説明する。図6には乗員判別処理の手続き例をフローチャートで示す。図7には静電容量成分と抵抗値成分とを得るための切り換え例を一覧表で示す。図8には大人判別処理の手続き例をフローチャートで示す。図9には、静電容量成分Cafに相当する第1静電容量と、荷重Fに相当する面圧との関係例をグラフ図で示す。なお図6と図8において、ステップS10,S12,S20は接続切換部41に相当し、ステップS11,S13,S14,S21,S22は静電容量測定部42に相当し、ステップS14〜S18およびステップS23〜S25は乗員判別部43に相当する。
【0068】
図6に示す乗員判別処理は、ECU40が作動している間に繰り返し実行される。まず、交流信号Sbがメイン電極12を流れる接続に切り換え〔ステップS10〕、交流信号Sbを出力して流れる電流値に基づいてメインインピーダンスZmgを測定する〔ステップS11〕。同様に、交流信号Sbがサブ電極11を流れる接続に切り換え〔ステップS12〕、交流信号Sbを出力して流れる電流値に基づいてサブインピーダンスZsg(電極間インピーダンスZmsを含む)を測定する〔ステップS13〕。ステップS10,S11と、ステップS12,S13とは順不同に実行してもよい。そして、ステップS11で測定したメインインピーダンスZmgと、ステップS13で測定したサブインピーダンスZsg(あるいは電極間インピーダンスZms)とに基づいて静電容量成分Cxおよび抵抗値成分Rxを算出する〔ステップS14〕。
【0069】
上記ステップS10,S12でどの接続に切り換えるかは、ステップS14で必要とする静電容量成分Cxおよび抵抗値成分Rxに応じて変わる。そこで、接続例について図7を参照しながら説明する。図7には、静電容量成分Cxおよび抵抗値成分Rxに応じた切換例J1〜J12の例を示す。以下では、切換例J3,J5,J11を代表して簡単に説明する。
【0070】
切換例J3は、静電容量成分Cmgおよび抵抗値成分Rsgを取得するため、メイン電極12とガード電極13との接続と、サブ電極11とガード電極13との接続と、を切り換えてインピーダンスZxを測定することを示す。すなわち、前者のメイン電極12とガード電極13との接続に切り換えてメインインピーダンスZmgを測定し、当該メインインピーダンスZmgに基づいて静電容量成分Cmgを算出する。この静電容量成分Cmgは「第2静電容量」に相当する。また、後者のサブ電極11とガード電極13との接続に切り換えて電極間インピーダンスZmsを測定し、当該電極間インピーダンスZmsに基づいて抵抗値成分Rmsを算出する。
【0071】
切換例J5は、静電容量成分(Cmg+Csg)および抵抗値成分Rsgを取得するため、切換例J3と同様に、メイン電極12とガード電極13との接続と、サブ電極11とガード電極13との接続と、を切り換えてインピーダンスZxを測定することを示す。すなわち、前者のメイン電極12とガード電極13との接続に切り換えてメインインピーダンスZmgを測定し、当該メインインピーダンスZmgに基づいて静電容量成分Cmgを算出する。また、後者のサブ電極11とガード電極13との接続に切り換えてサブインピーダンスZsgを測定し、当該サブインピーダンスZsgに基づいて静電容量成分Csgおよび抵抗値成分Rsgを算出する。これらの静電容量成分Cmgと静電容量成分Csgとを和算して静電容量成分(Cmg+Csg)を得る。
【0072】
切換例J11は、静電容量成分Cmsおよび抵抗値成分Rmsを取得するため、サブ電極11とメイン電極12との接続に切り換えて電極間インピーダンスZmsを測定することを示す。この電極間インピーダンスZmsに基づいて、静電容量成分Cmsと抵抗値成分Rmsとを算出する。この静電容量成分Cmsは「第3静電容量」に相当する。なお、この切換例J11は電極間インピーダンスZmsのみを測定すればよいので、ステップS10,S11の実行は不要である。
【0073】
図6に戻り、ステップS14で算出した静電容量成分Cxおよび抵抗値成分Rxに基づいて、乗員判別用のマップを参照して大人の乗員が着座しているか否かを判別する〔ステップS15〕。本形態では、静電容量成分Cmg,Csg,Cmsに基づいて乗員が着座しているか否かを判別するが、静電容量成分Cmg,Csg,Cmsと抵抗値成分Rmg,Rsg,Rmsとに基づいて大人の乗員の着座状態を判別する構成としてもよい。
【0074】
乗員判別用のマップはECU40内外の記録媒体(例えばROMやEEPROM、フラッシュメモリ等)に予め記録されている。乗員判別用のマップは、温度が高くなるにつれて、静電容量成分および抵抗値成分ともに増加する傾向がある。また、湿度が高くなるにつれて、静電容量成分および抵抗値成分ともに増加する傾向がある。乗員判別用のマップを参照した判別法については周知であるので図示および説明を省略する。
【0075】
もし、大人の乗員が着座していないと判別された場合には(ステップS15でNO)、空席信号(あるいはCRS信号)を判別結果信号Seとして出力し〔ステップS16〕、乗員判別処理をリターンする。大人の乗員が着座していると判別された場合には(ステップS15でYES)、大人判別処理を実行したうえで〔ステップS17〕、乗員判別処理をリターンする。
【0076】
上記大人判別処理について、図8を参照しながら説明する。図8に示す大人判別処理では、交流信号Sbが上部電極14と下部電極15との間を流れる接続に切り換え〔ステップS20〕、交流信号Sbを出力して流れる電流値に基づいて電極間インピーダンスZafを測定する〔ステップS21〕。図7に示す切換例J12の通りである。すなわち、静電容量成分Cafおよび抵抗値成分Rafを取得するため、上部電極14と下部電極15との接続に切り換えて電極間インピーダンスZafを測定する。静電容量成分Cafは「第1静電容量」に相当する。
【0077】
図8に戻って、ステップS21で測定した電極間インピーダンスZafに基づいて、少なくとも静電容量成分Cafを算出する〔ステップS22〕。こうして求められた静電容量(すなわち静電容量成分Caf)が閾値Cth以上であるか否かを、大人判別用のマップを参照して判別する〔ステップS23〕。大人判別用のマップはECU40内外の記録媒体(例えばROMやEEPROM、フラッシュメモリ等)に予め記録されている(図9を参照)。大人判別用のマップについては後述する。もしステップS22で求められた静電容量(すなわち静電容量成分Caf)が閾値Cth以上であれば(ステップS23でYES)、大柄な大人を示す大柄信号を判別結果信号Seとして出力し〔ステップS24〕、大人判別処理をリターンする。一方、静電容量が閾値Cth未満であれば(ステップS23でNO)、小柄な大人を示す小柄信号を判別結果信号Seとして出力し〔ステップS25〕、大人判別処理をリターンする。
【0078】
なおステップS23では、静電容量成分Cafと抵抗値成分Rafとに基づいて、小柄な大人または大柄な大人のいずれであるかを判別する構成としてもよい。この構成では、ステップS22において、静電容量成分Cafだけでなく抵抗値成分Rafも算出する必要がある。外乱要因によっては、抵抗値成分Rafを加味することにより、判別精度が向上する。
【0079】
図9には、大人判別用のマップの一例をグラフ図で示す。この図9では、縦軸を静電容量とし、横軸を面圧とし、両者の関係を太線で示す。図中の「AF05(Hybrid III 5th等を含む)」は小柄な大人の一例であって、米国成人女性の体重の正規分布において最軽量側から5[%]の人が含まれる体重を示す。また「AM50(Hybrid III 50th等を含む)」は大柄な大人の一例であって、米国成人男性の体重の正規分布において、50[%]の人が含まれる体重(平均体重)を示す。閾値Cthは、「AF05」と「AM50」との間に設定する。閾値Cthと「AF05」との差分値ΔCafや、閾値Cthと「AM50」との差分値ΔCamは、対向電極の数が増えたり、上部電極14や下部電極15の面積が増えたりするにつれて大きくなる。すなわち、上記判別を行うにあたって公差を大きく確保することができる。なお、「AF05」や「AM50」以外の体格(例えば「JF05」や「JM50」など)を適用してもよい。
【0080】
上述した第1構成例のセンサマット18は、図2(B)や図3(E1)、図3(E2)および図3(E3)に各々示すように、下部電極15の片面(対向面側)に絶縁皮膜15aを形成したうえで、面状部材18bをベースに一体化する構成である。下部電極15が上部電極14と同様に絶縁皮膜を形成しない場合において、面状部材18bをベースに一体化する構成例を以下に説明する(第2構成例〜第5構成例)。なお、センサマット18以外の構成については、第1構成例と同じであるので、図示および説明を省略する。
【0081】
(第2構成例)
第2構成例は、図10を参照しながら説明する。図10(A)には穴あけ工程を示し、図10(B)には第1電極形成工程を示し、図10(C)には第1被覆工程を示し、図10(D)と図10(F)には第2被覆工程を示し、図10(E)には第2電極形成工程を示す。なお、穴あけ工程を最初に行う点と、第1被覆工程を第1電極形成工程の後に行う点とを除けば、順不同に行ってよい。また、図10(A)に示す穴あけ工程から図10(C)に示す第1被覆工程までは、図3(A)から図3(C)までの工程と同じであるので、説明を省略する。
【0082】
図10(D)に示す第2被覆工程では、貫通穴18dを塞ぐように第2素材18c2を形成する。図10(E)に示す第2電極形成工程では、ガード電極13を面状部材18bに形成し、下部電極15を第2素材18c2に形成する。図10(F)には第2被覆工程を示す。この第2被覆工程では、ガード電極13や下部電極15を含め、面状部材18bの他面側全体を第1素材18c1で覆う。こうして図10(F)に示す構成例のセンサマット18が製造される。
【0083】
(第3構成例)
第3構成例は、図11を参照しながら説明する。図11(A)には穴あけ工程を示し、図11(B)には第1電極形成工程を示し、図11(C)には第1被覆工程を示し、図11(D)と図11(F)には第2電極形成工程を示し、図11(E)と図11(G)には第2被覆工程を示す。なお、穴あけ工程を最初に行う点と、第1被覆工程を第1電極形成工程の後に行う点とを除けば、順不同に行ってよい。また、図11(A)に示す穴あけ工程から図11(C)に示す第1被覆工程までは、図3(A)から図3(C)までの工程と同じであるので、説明を省略する。
【0084】
図11(D)に示す第2電極形成工程では、面状部材18bの他面側であって、貫通穴18dの無い部位にガード電極13を形成する。図11(E)に示す第2被覆工程では、ガード電極13を含め、面状部材18bの他面側全体を第1素材18c1で覆う。図11(F)に示す第2電極形成工程では、第1素材18c1の他面側であって、上部電極14および貫通穴18dに対応する位置に下部電極15を形成する。図11(G)に示す第2被覆工程では、下部電極15およびその周囲を第2素材18c2で覆う。こうして図11(G)に示す構成例のセンサマット18が製造される。
【0085】
(第4構成例)
第4構成例は、図12を参照しながら説明する。図12(A)には穴あけ工程を示し、図12(B)には第1電極形成工程を示し、図12(C)には第1被覆工程を示し、図12(D)には絶縁体形成工程を示し、図12(E)には第2電極形成工程を示し、図12(F)には第2被覆工程を示す。なお、穴あけ工程を最初に行う点と、第1被覆工程を第1電極形成工程の後に行う点とを除けば、順不同に行ってよい。また、図12(A)に示す穴あけ工程から図12(C)に示す第1被覆工程までは、図3(A)から図3(C)までの工程と同じであるので、説明を省略する。
【0086】
図12(D)に示す絶縁体形成工程では、面状部材18bの他面側のほぼ全部に絶縁体18eを形成する。図12(E)に示す第2電極形成工程では、絶縁体18eの他面側であって、メイン電極12に対応する位置にガード電極13を形成し、上部電極14に対応する位置に下部電極15を形成する。図12(F)に示す第2被覆工程では、絶縁体18eの他面側を第2被覆部材18cで覆う。こうして図12(F)に示す構成例のセンサマット18が製造される。
【0087】
(第5構成例)
第5構成例は、図13を参照しながら説明する。図13(A)には穴あけ工程を示し、図13(B)には第1電極形成工程を示し、図13(C)には第1被覆工程を示し、図13(D)には第2電極形成工程を示し、図13(E)には第2被覆工程を示す。なお、穴あけ工程を最初に行う点と、第1被覆工程を第1電極形成工程の後に行う点と、第2被覆工程を第2電極形成工程の後に行う点とを除けば、順不同で行ってよい。
【0088】
第5構成例は、面状部材18bに貫通穴18dを形成した第1構成例に対して、貫通穴18dの代わりに凹部18fを形成した点で相違する。凹部18fの底部(薄い部分)は、上述した絶縁皮膜15aと同等の絶縁抵抗値を確保する程度の厚さで形成する。単に面状部材18bの構成が相違するに過ぎないので、基本的には第1構成例と同様の製造方法に従って、図13(E)に示すセンサマット18を製造することができる。ただし、面状部材18bは絶縁性の素材で形成されるので、凹部18fも絶縁性を示す。そのため、下部電極15に絶縁皮膜15aを形成する必要がない。
【0089】
以上のように第1構成例から第5構成例までに示すセンサマット18のいずれかを含む乗員検知センサ(すなわち電極部10および静電容量測定部42)と、シート20とは、車両を含む輸送機器に備えられる。
【0090】
上述した実施の形態1によれば、以下に示す各効果を得ることができる。まず請求項1に対応し、シート20の座面部24aに略平行に配置され、所定間隔をおいて対向して一対の電極が配置される対向電極(上部電極14および下部電極15)を一以上備える面圧センサ部と、対向電極の相互間に生じる静電容量成分Caf(第1静電容量)とメイン電極とグラウンド(本形態ではシートフレーム23,25等)との間に生じる静電容量成分Cmg(第2静電容量)とを測定する静電容量測定部42と、静電容量成分Cafおよび静電容量成分Cmgに基づいて乗員の着座状態を判別する乗員判別部43とを有する構成とした(図1,図2,図6,図8を参照)。この構成によれば、乗員判別部43は、静電容量成分Cafおよび静電容量成分Cmgに基づいて乗員の着座状態を判別するので、乗員の着座状態を的確に判別できる。
【0091】
請求項2に対応し、静電容量成分Caf(第1静電容量)は、乗員の着座による荷重Fの印加に伴って減少する対向電極の相互間距離に伴って増加する構成とした(図4を参照)。図4(A)に示す距離Daよりも図4(B)に示す距離Dbのほうが短いので、乗員の着座による荷重Fが印加された状態のほうが静電容量成分Cafは大きくなる。この構成によれば、対向電極(特に上部電極14)の相互間距離が乗員の着座による荷重Fの印加に伴って静電容量成分Cafも増加し、乗員の着座状態を判別できる。
【0092】
請求項3に対応し、静電センサ部は、さらにメイン電極12と平面方向に離隔して配置されるサブ電極11を有し、静電容量測定部42は、サブ電極11とメイン電極12との間に生じる静電容量成分Cms(第3静電容量)を測定し、乗員判別部43は、静電容量測定部42によって測定される静電容量成分Caf、静電容量成分Cmgおよび静電容量成分Cmsに基づいて、乗員の着座状態を判別する構成とした(図1,図2,図6を参照)。この構成によれば、静電容量成分Caf、静電容量成分Cmgおよび静電容量成分Cmsに基づいて乗員の着座状態を判別するので、様々な態様の判別を行うことができる。また、静電容量成分Cmsを考慮して判別を行うので、外乱要因による誤検知を抑えることができる。
【0093】
請求項4に対応し、面圧センサ部と静電センサ部とは、メイン電極12とガード電極13との間、および、対向電極の相互間に共通して配置する絶縁性の面状部材18bを用いて、一体に構成した(図3,図10,図11,図12,図13を参照)。この構成によれば、面圧センサ部と静電センサ部とが面状部材18bによって一体に構成されるので、製造工程が簡易化されるとともに、センサ部ごとに個別の面状部材18bを用いるよりもコストを低減できる。
【0094】
請求項5に対応し、面圧センサ部と静電センサ部とは、メイン電極12と上部電極14(対向電極を構成する一方の電極)との双方を覆う第1被覆部材18aを用いて、一体に構成した(図3,図10,図11,図12,図13を参照)。この構成によれば、第1被覆部材18aはメイン電極12と上部電極14とを保護する機能を担い、耐久性を向上させることができる。
【0095】
請求項6に対応し、面圧センサ部と静電センサ部とは、ガード電極13と下部電極15(対向電極を構成する他方の電極)との双方を覆う第2被覆部材18c(第1素材18c1や第2素材18c2を含む)を用いて、一体に構成した(図3,図10,図11,図12,図13を参照)。この構成によれば、第2被覆部材18cはガード電極13と下部電極15とを保護する機能を担い、耐久性を向上させることができる。
【0096】
請求項7に対応し、第2被覆部材18cは、ガード電極13を覆う第1素材18c1と、下部電極15を覆う第2素材18c2とで構成する構成とした(図11を参照)。この構成によれば、ガード電極13と下部電極15とを確実に保護して、耐久性を向上させることができる。
【0097】
請求項8に対応し、静電センサ部は、メイン電極12が面状部材18bの一面側に形成され、ガード電極13がメイン電極12の形成位置に対応して面状部材18bの他面側に形成される構成とした(図3,図10,図11,図12,図13を参照)。この構成によれば、製造工程を簡易化することができ、ガード電極13側からメイン電極12にノイズが混入するのを確実に防止できる。
【0098】
請求項9に対応し、対向電極は、上部電極14が面状部材18bの一面側に形成され、下部電極15が上部電極14の形成位置に対応して面状部材18bの他面側に形成される構成とした(図3,図10,図11,図12,図13を参照)。この構成によれば、製造工程を簡易化でき、電極間に静電容量成分Cafを確実に生じさせることができる。
【0099】
請求項10に対応し、面状部材18b、第1被覆部材18aおよび第2被覆部材18cのうちで、一以上の部材には絶縁性のフィルムを用いる構成とした(図3,図10,図11,図12,図13を参照)。この構成によれば、フィルムを用いると全体の厚みを薄く形成することができる。
【0100】
請求項13に対応し、面状部材18bは、対向電極の相互間に相当する部位に、所定形状の穴(貫通穴18dまたは凹部18f)が形成される構成とした(図3,図10,図11,図12,図13を参照)。この構成によれば、対向電極の相互間には、電荷を蓄え得る空間(空隙)を確保できる。よって、対向電極の相互間に静電容量成分Cafを確実に生じさせることができる。
【0101】
請求項14に対応し、下部電極15の片面(対向面側)には絶縁皮膜15aが形成される構成とした(図3,図10,図11,図12,図13を参照)。なお図示しないが、下部電極15に代えて上部電極14の片面(対向面側)に絶縁皮膜15aを形成してもよく、上部電極14および下部電極15の双方について片面(対向面側)に絶縁皮膜15aを形成してもよい。いずれの構成にせよ、対向電極(一対の電極)の相互間には、電荷を蓄え得る空間とともに、両電極が接触して静電容量が不定となる事態を防止できる。
【0102】
請求項15に対応し、貫通穴18dと下部電極15との間には、第2被覆部材18c(具体的には第2素材18c2)を介在させる構成とするか(図10を参照)、あるいは絶縁体18eを介在させる構成とした(図12を参照)。これらの構成によれば、貫通穴18dは電荷を蓄え得る空間になるとともに、第2素材18c2や絶縁体18eは両電極が接触して静電容量が不定となる事態を防止できる。
【0103】
請求項16に対応し、静電容量測定部42は、電極の相互間を流れる電流値に基づいて、静電容量を求める構成とした(図5を参照)。この構成によれば、電流と静電容量とには所要の関係があるので、電流値が分かれば静電容量(すなわち静電容量成分Caf,静電容量成分Cmg,静電容量成分Cms)を確実に求めることができる。
【0104】
請求項17に対応し、乗員判別部43は、静電容量測定部42によって測定される静電容量成分Cafが閾値Cth以上であるか否かによって、乗員が小柄な大人または平均的な大人のいずれであるかを判別する構成とした(図8,図9を参照)。この構成によれば、対向電極の相互間に生じる静電容量成分Cafが閾値Cth以上であるか否かを判別すれば、乗員が小柄な大人か平均的な大人かを判別することができる。
【0105】
請求項27に対応し、下部電極15の片面(対向面側)に絶縁皮膜15aを形成する絶縁皮膜形成工程と、面状部材18bの所定位置に穴(貫通穴18dまたは凹部18f)をあける穴あけ工程と、シート20の座面部24aに略平行に配置されるメイン電極12と上部電極14とを形成する第1電極形成工程と、ガード電極13と下部電極15とを形成する第2電極形成工程と、第1電極形成工程で形成された電極を第1被覆部材18aで覆う第1被覆工程と、第2電極形成工程で形成された電極を第2被覆部材18cで覆う第2被覆工程とを有する構成とした(図3,図10,図11,図12,図13を参照)。この構成によれば、各電極は第1被覆部材18aと第2被覆部材18cとで保護されるので、耐久性を向上させることができる。
【0106】
請求項28に対応し、第1電極形成工程は、さらにメイン電極12と平面方向に離隔して配置されるサブ電極11を形成する構成とした(図3,図10,図11,図12,図13を参照)。この構成によれば、サブ電極11とメイン電極12との間に静電容量成分Cmsを生じさせ、様々な態様の判別を行えるようになる。
【0107】
請求項29に対応し、第2被覆工程は、ガード電極13を第1素材18c1で覆う第1素材被覆工程と、下部電極15を第2素材18c2で覆う第2素材被覆工程とを有する構成とした(図11を参照)。この構成によれば、ガード電極13と下部電極15とを確実に保護して、耐久性を向上させることができる。
【0108】
〔実施の形態2〕
実施の形態2は、静電センサ部と面圧センサ部とを別体に構成する例であって、図14〜図16を参照しながら説明する。なお、センサマット18以外の構成については、実施の形態1と同じであるので、図示および説明を省略する。また説明を簡単にするため、実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。なお図示しないが、図14〜図16に示すウレタンパッド19の下方には、クッションパッド24が位置する。
【0109】
図14に示す構成例は、パッド部材の同一面上に静電センサ部と面圧センサ部とを備えて一体化する例である。静電センサ部(サブ電極11,メイン電極12,ガード電極13)と、面圧センサ部(上部電極14,下部電極15)とは、個別に図3と同様の製造方法に従って作製する。その後、静電センサ部と面圧センサ部とをウレタンパッド19の一面側に固定する。こうして図14に示すように、ウレタンパッド19を含むセンサマット18が製造される。
【0110】
図15に示す構成例は、静電センサ部をウレタンパッド19の一面上に備えるとともに、面圧センサ部をウレタンパッド19内に備えて一体化する例である。静電センサ部(サブ電極11,メイン電極12,ガード電極13)と、面圧センサ部(上部電極14,下部電極15)とは、個別に図3と同様の製造方法に従って作製する。その後、静電センサ部はウレタンパッド19の一面上に固定し、面圧センサ部はウレタンパッド19内(図示するように下面側の凹部)に固定する。こうして図15に示すように、ウレタンパッド19を含むセンサマット18が製造される。
【0111】
図16に示す構成例は、図15に示す構成例と同様に、静電センサ部をウレタンパッド19の一面上に備えるとともに、面圧センサ部をウレタンパッド19内に備えて一体化する例である。ただし、図15に示す構成例は静電センサ部と面圧センサ部とを鉛直方向(図面縦方向)に配置するのに対して、図16に示す構成例は静電センサ部と面圧センサ部とを鉛直方向にずらして配置する点が相違する。このように静電センサ部と面圧センサ部とは位置関係が相違するに過ぎないので、図15に示す構成例と同様の製造方法で製造することができる。こうして図16に示すように、ウレタンパッド19を含むセンサマット18が製造される。
【0112】
なお図示しないが、図15と図16に示す構成例に代えて、ウレタンパッド19とクッションパッド24との間に面圧センサ部を配置して一体化する構成としてもよい。
【0113】
上述した実施の形態2によれば、以下に示す各効果を得ることができる。なお、請求項1〜10、請求項13〜17、請求項27〜29については、構成や製法が同じであるので、いずれも上述した実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0114】
請求項11に対応し、面圧センサ部と静電センサ部とは別体に構成され、一のウレタンパッド19(パッド部材)に固定して備える構成とした(図14,図15,図16を参照)。この構成によれば、面圧センサ部と静電センサ部とは別体に構成されるものの、一のウレタンパッド19の面上や凹部等に備える。全体としては一体化できるので、製造工程が簡易化されるとともに、センサ部ごとに個別のウレタンパッド19を用いるよりもコストを低減できる。
【0115】
請求項12に対応し、静電センサ部と面圧センサ部とは、ウレタンパッド19の同一面上に備えるか(図14を参照)、静電センサ部をウレタンパッド19の一面上に備えるとともに面圧センサ部をウレタンパッド19内に備えるか(図15,図16を参照)、のいずれかで構成する構成とした。なお、図示しないが、ウレタンパッド19で対向する面上に別個に備える構成としてもよい。例えば、静電センサ部をウレタンパッド19の一面上に備え、面圧センサ部をウレタンパッド19の一面上に備える。いずれの構成にせよ、面圧センサ部、静電センサ部およびウレタンパッド19を一体化できるので、製造工程が簡易化される。
【0116】
〔実施の形態3〕
実施の形態3は、面圧センサ部(上部電極14,下部電極15)の平面的な位置関係(配置)を規定する構成例であって、図17〜図20を参照しながら説明する。なお、説明を簡単にするため、実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。また、英数字の連続符号は記号「〜」を用いて表記する。例えば、「対向電極61a〜61d」は「対向電極61a,61b,61c,61d」を意味する。静電センサ部は実施の形態1,2と同様の構成であるので、図示および説明を省略する。
【0117】
図17〜図20に示す乗員検知センサの面圧センサ部は、複数(本例では4)の対向電極61a〜61dからなる第1面圧センサ群G1と、複数(本例では10)の対向電極62a〜62jからなる第2面圧センサ群G2とを有する。第2面圧センサ群G2を構成する対向電極の総数や後述する行数,列数は、第1面圧センサ群G1を構成する対向電極の総数や後述する行数,列数のうちで一以上が多くなれば、いずれも任意に設定可能である。破線で囲む第1面圧センサ群G1と第2面圧センサ群G2とは、クッションパッド24の前後方向(図面の上下方向)に配置される。具体的には、第1面圧センサ群G1が座面後方側(図面の下方側)に配置され、第2面圧センサ群G2がクッションパッド24の座面中央側に配置される。
【0118】
座面部24aの中央領域内に配置され、かつ、第2面圧センサ群G2に含まれる一部の対向電極62b,62c,62d,62e,62g,62h,62i,62jを第3面圧センサ群G3とする。対向電極62b,62c,62i,62jを結ぶ線分と、対向電極62d,62e,62g,62hを結ぶ線分とが交差するように配置する。
【0119】
第2面圧センサ群G2の対向電極62a〜62jの面積を合計した第2電極総面積G2Aは、第1面圧センサ群G1の対向電極61a〜61dの面積を合計した第1電極総面積G1Aよりも広くなるように設定する(すなわちG2A>G1A)。ここに言う「対向電極の面積」は、図2(B)や図4に示す電極面積Aeを意味し、貫通穴18dの断面積に相当する。対向電極61a〜61d,62a〜62jにかかる各対向電極は、上述した実施の形態1,2と同様の構成であり、信号線16によって接続されている。
【0120】
また、第3面圧センサ群G3に含まれる対向電極62b,62c,62d,62e,62g,62h,62i,62jの面積を合計した第3電極面積G3Aは、残りの対向電極61a,61b,61c,61d,62a,62fの面積を合計した第4電極面積G4Aよりも広くなるように設定する(すなわちG3A>G4A)。
【0121】
図17〜図20に示す伸縮部位63(点線で囲む部位)は、座面中央側の対向電極61b,61c,62b,62c,62d,62e,62g,62h,62i,62jと、座面左右端側の対向電極61a,61d,62a,62fとの間に備える。言い換えれば、所定距離以上離れた対向電極の相互間に備える。本例の伸縮部位63はU字状に信号線16を迂回させる構成としたが、乗員の着座や退座等に伴う荷重Fの変化に応じて自在に伸縮できれば他の形状(例えばJ字状,S字状、W字状,ジグザグ状など)で構成してもよい。また図示する部位以外の部位に備えてもよく、設置数も任意でよい。
【0122】
図17には乗員が奥深く着座する状態を示し、図18には乗員が浅く着座する状態を示す。これらの図において、二点鎖線で示す大柄大人Hmは、上述した「大柄な大人」に相当する。一点鎖線で示す小柄大人Hfは、上述した「小柄な大人」に相当する。
【0123】
図17の着座状態を比較すると、座面中央部に配置された対向電極62b,62c,62d,62e,62g,62h,62i,62jにおいて検出される静電容量に差が生じる。すなわち、大柄大人Hmは対向電極62c,62d,62g,62iに対する荷重Fが小さいために、検出される静電容量も小さくなる。一方、小柄大人Hfは対向電極62c,62d,62g,62iに対する荷重Fが大きいために、検出される静電容量も大きくなる。よって、大柄大人Hmと小柄大人Hfとの判別が容易になる。
【0124】
図17と図18との着座状態を比較すると、乗員が奥深く着座しているか浅く着座しているかの判別が容易になる。すなわち図17に示すように、乗員が奥深く着座している場合には第1面圧センサ群G1の対向電極61a〜61dが大きな荷重Fを受ける。また図18に示すように、乗員が浅く着座している場合には第1面圧センサ群G1の対向電極61a〜61dが荷重Fを受けない(受ける場合でも図17よりも大幅に小さい)。よって対向電極61a〜61dで検出される静電容量を算出手段43aで算出することにより、乗員の着座状態を容易に判別できる。
【0125】
図18に示すように乗員が浅く着座している場合には、対向電極62a,62fで検出される静電容量を算出手段43aで算出すれば、大柄大人Hmと小柄大人Hfとの判別ができる。すなわち、大柄大人Hmが着座すると臀部の骨盤に近い部位から荷重Fを受けるので、対向電極62a,62fで検出される静電容量が大きくなる。一方、小柄大人Hfが着座すると臀部の端側部位から荷重Fを受けるので、対向電極62a,62fで検出される静電容量が小さくなる。よって、乗員が浅く着座しても、大柄大人Hmと小柄大人Hfとの判別ができる。
【0126】
図19には、第1面圧センサ群G1および第2面圧センサ群G2に含まれる対向電極の配置例を示す。説明の便宜上、図19の縦方向(上下方向)を「列」と呼び、図19の横方向(左右方向)を「行」と呼ぶことにする。なお、以下に示す「許容範囲内の誤差」には、設計上の誤差や製造上の誤差などを含む。以下に示す同一間隔と不定間隔とは混在してもよく、いずれも「間隔がほぼ同一」に相当する。
【0127】
対向電極62b,62hと、対向電極62c,62g,61bと、対向電極62d,62i,61cと、対向電極62e,62jとは、それぞれが列を形成する。対向電極62b,62hと対向電極62c,62g,61bとは列間隔L1だけ離す。対向電極62c,62g,61bと対向電極62d,62i,61cとは列間隔L2だけ離す。対向電極62d,62i,61cと対向電極62e,62jとは列間隔L3だけ離す。列間隔L1,L2,L3の各間隔は任意に設定可能であり、同一間隔(L1=L2=L3)でもよく、許容範囲内の誤差を含む不定間隔(L1≒L2≒L3)でもよい。
【0128】
対向電極62b,62eと、対向電極62c,62dと、対向電極62a,62fと、対向電極62g,62iと、対向電極62h,62jとは、それぞれが行を形成する。対向電極62b,62eと対向電極62c,62dとは行間隔L4だけ離す。対向電極62c,62dと対向電極62a,62fとは行間隔L5だけ離す。対向電極62a,62fと対向電極62g,62iとは行間隔L6だけ離す。対向電極62g,62iと対向電極62h,62jとは行間隔L7だけ離す。行間隔L4,L5,L6,L7の各間隔は任意に設定可能であり、同一間隔(L4=L5=L6=L7)でもよく、許容範囲内の誤差を含む不定間隔(L4≒L5≒L6≒L7)でもよい。
【0129】
第2面圧センサ群G2に含まれる座面左右端側の対向電極62a,62fは、第1面圧センサ群G1に含まれる座面左右端側の対向電極61a,61dよりも座面左右側に広がるように配置される。
【0130】
上述した実施の形態3によれば、以下に示す各効果を得ることができる。なお、請求項1〜17、請求項27〜29については、構成や製法が同じであるので、いずれも上述した実施の形態1,2と同様の効果を得ることができる。
【0131】
請求項18に対応し、面圧センサ部は、複数の対向電極61a〜61dからなる第1面圧センサ群G1と、複数の対向電極62a〜62jからなる第2面圧センサ群G2とをシート20の前後方向に配置し、第2面圧センサ群G2の対向電極62a〜62jの面積を合計した第2電極総面積G2Aは、第1面圧センサ群G1の対向電極61a〜61dの面積を合計した第1電極総面積G1Aよりも広くなるように設定する構成とした(図17〜図19を参照)。この構成によれば、乗員の着座姿勢がシート20の前後方向にずれる場合でも(図17と図18を参照)、乗員の着座状態を的確に判別できる。
【0132】
請求項19に対応し、第1面圧センサ群G1はシート20の座面後方側に配置され、第2面圧センサ群G2はシート20の座面中央側に配置される構成とした(図17〜図19を参照)。この構成によれば、乗員が奥深く着座すると第1面圧センサ群G1で検出し(図17を参照)、乗員が浅く着座すると第2面圧センサ群G2で検出するので(図18を参照)、乗員の着座状態をより的確に判別できる。
【0133】
請求項20に対応し、第2面圧センサ群G2の対向電極62a〜62jは、第1面圧センサ群G1の対向電極61a〜61dに比べて、行数,列数,総数のうちで一以上が多くなるように設定する構成とした(図17〜図19を参照)。この構成によれば、第1面圧センサ群G1よりも第2面圧センサ群G2のほうが行数,列数,総数が多くなるので、乗員の着座状態をより的確に判別できる。
【0134】
請求項21に対応し、第1面圧センサ群G1および第2面圧センサ群G2のうちで一方または双方に含まれる対向電極について、3行以上の行数または3列以上の列数で配置する場合には、行間隔または列間隔がほぼ同一になるように設定する構成とした(図17〜図19を参照)。この構成によれば、対向電極がほぼ等間隔で配置されるので、静電容量測定部42によって測定される各対向電極の静電容量に基づいて、乗員の着座状態をより的確に判別できる。
【0135】
請求項22に対応し、第1面圧センサ群G1および第2面圧センサ群G2のうちで一方または双方は、対向電極の相互間を接続する信号線16を伸縮可能な非直線形状に形成される伸縮部位63を有する構成とした(図17〜図19を参照)。この構成によれば、乗員の着座や退座、座り直しなどによって変化する荷重Fに応じて伸縮部位63が伸縮する。よって、乗員による荷重Fが変化しても伸縮部位63が伸縮するので、信号線16の断裂を防止することができる。
【0136】
請求項23に対応し、伸縮部位63は、座面中央側の対向電極61b,61c,62b,62c,62d,62e,62g,62h,62i,62jと、座面左右端側の対向電極61a,61d,62a,62fとの間にそれぞれ備える構成とした(図17〜図19を参照)。図示を省略するが、座面前後方向(図17〜図19の上下方向)に伸縮するように伸縮部位63を形成してもよい。いずれの構成にせよ、乗員による荷重Fが変化しても伸縮部位63が伸縮するので、信号線16の断裂をより確実に防止できる。
【0137】
請求項24に対応し、第3面圧センサ群G3(すなわち第2面圧センサ群G2に含まれる一部の対向電極62b,62c,62d,62e,62g,62h,62i,62j)は、シート20の座面部24aの中央領域内に配置され、一部の対向電極の面積を合計した第3電極面積G3Aは、一部の対向電極を除いた第2面圧センサ群G2および第1面圧センサ群G1に含まれる対向電極61a,61b,61c,61d,62a,62fの面積を合計した第4電極面積G4Aよりも広くなるように設定する構成とした(図17〜図19を参照)。この構成によれば、第2面圧センサ群G2に含まれる一部の対向電極は、乗員が奥深く着座する場合(図17を参照)や、浅く着座する場合(図18を参照)でも、体格や着座状態をより的確に判別できる。
【0138】
請求項25に対応し、第2面圧センサ群G2に含まれる座面左右端側の対向電極62a,62fは、第1面圧センサ群G1に含まれる座面左右端側の対向電極61a,61dよりも座面左右側に広がるように配置される構成とした(図17〜図19を参照)。この構成によれば、乗員の着座位置によらず、乗員の着座状態をより的確に判別できる。
【0139】
請求項26に対応し、第1面圧センサ群G1は乗員の臀部を検出し、第2面圧センサ群G2は乗員の臀部または大腿部を検出する構成とした(図17〜図19を参照)。この構成によれば、乗員が奥深く着座すれば第1面圧センサ群G1が乗員の臀部を検出し、第2面圧センサ群G2が乗員の大腿部を検出する。一方、乗員が浅く着座すれば第2面圧センサ群G2が乗員の臀部を検出する。よって、乗員の着座位置によらず、乗員の着座状態をより的確に判別できる。
【0140】
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について実施の形態1,2に従って説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
【0141】
上述した実施の形態1,2では、第1素材18c1にはレジストコートを適用し、第2素材18c2にはフィルムを適用した(図3,図10,図11,図12,図13を参照)。この形態に代えて、第1素材18c1にフィルムを適用し、第2素材18c2にレジストコートを適用してもよい。また、レジストコートやフィルム以外であって絶縁性の素材を適用してもよい。いずれの素材を適用しても絶縁性を確保できるので、上述した実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
【0142】
上述した実施の形態1,2では、サブ電極11は、図2(B)に示すようにメイン電極12と平面方向に離隔して配置する構成とした。すなわち、サブ電極11とメイン電極12とはほぼ同一平面上となるように配置した。この形態に代えて、サブ電極11は、メイン電極12とはほぼ同一平面上とならないように配置してもよい。例えば、クッションパッド24の座面側に近づけた配置や、シートフレーム25側に近づけた配置などが該当する。グラウンドであるシートフレーム25との間における水分量に応じて静電容量成分や抵抗値成分が増加するので、座面側に近づける配置ほど高くなり、シートフレーム25側に近づける配置ほど低くなる。例えば寒冷地と温暖地の差異などに応じて配置を変える等により、地域等に合わせた的確な乗員判別の精度を向上させることができる。
【0143】
上述した実施の形態1,2では、外部装置50はエアバッグECUを適用する構成とした(図1を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、エアバッグECU以外のECU(例えばエンジンECU等)や、ECU以外の処理装置、通信回線を介して接続可能なコンピュータ(サーバーやパソコン等を含む)などを適用する構成としてもよい。エンジンECUを適用する場合には、大人が着座しないまま車両等が走行する等を防止できる。他の処理装置やコンピュータを適用しても、乗員の判別結果を確実に伝達できる。
【0144】
上述した実施の形態1,2では、同電位を示すグラウンド(GND)にシートフレーム23,25を適用した(図1等を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、シート20内に備える導電性部材(例えば針金,金網,導電線など)や、車両ボディ30などを適用してもよい。インピーダンスを測定するための基準となる電位を示す部材が相違するに過ぎないので、上述した実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0145】
上述した実施の形態3では、第1面圧センサ群G1をクッションパッド24の座面後方側に配置し、第2面圧センサ群G2をクッションパッド24の座面中央側に配置する構成とした(図17〜図19を参照)。この形態に代えて、他の配置で構成してもよい。例えば、所定の対向電極を図20に示す配置領域B1,B2,B3,B4の各領域内に配置する構成が該当する。配置領域B1はクッションパッド24の座面左側領域であり、対向電極62aを配置してよい。配置領域B2はクッションパッド24の座面中央側領域であり、第3面圧センサ群G3に含まれる各対向電極を配置してよい。配置領域B3はクッションパッド24の座面右側領域であり、対向電極62fを配置してよい。配置領域B4はクッションパッド24の座面後方側領域であり、第1面圧センサ群G1に含まれる各対向電極を配置してよい。乗員の着座姿勢がシート20の前後方向にずれる場合でも(図17と図18を参照)、乗員の着座状態を的確に判別することができる。
【0146】
上述した実施の形態3では、第1面圧センサ群G1および第2面圧センサ群G2に含まれる各対向電極を同一形状(すなわち円形状)および同一面積で形成する構成とした(図17〜図19を参照)。この形態に代えて、各対向電極を二以上で任意の形状(例えば三角形や四角形等を含む幾何学形状や、二種類以上の幾何学形状を合成した合成形状など)で形成する構成としてもよく、二以上の異なる面積で形成する構成としてもよい。この場合、第2電極総面積G2Aが第1電極総面積G1Aよりも広くなるように設定し、第3電極面積G3Aが第4電極面積G4Aよりも広くなるように設定すればよい。これらの構成においても、上述した実施の形態3と同様の作用効果が得られる。
【0147】
上述した実施の形態3では、第3面圧センサ群G3にかかる対向電極62b,62c,62i,62jを結ぶ線分と、対向電極62d,62e,62g,62hを結ぶ線分とが交差するように配置する構成とした(図19を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、線分が交差する他の配置で構成してもよい。例えば図21に示すように、対向電極62b,62hを結ぶ線分と、対向電極62e,62jを結ぶ線分とを平行に配置する。これらの線分に対して、対向電極62b,62cを結ぶ線分や、対向電極62d,62eを結ぶ線分、対向電極62g,62hを結ぶ線分、対向電極62i,62jを結ぶ線分がそれぞれ交差するように配置する。言い換えると、第3面圧センサ群G3の各対向電極62を八角形状に配置する。この構成においても、上述した実施の形態3と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0148】
10 電極部
11 サブ電極(静電センサ部)
12 メイン電極(静電センサ部)
13 ガード電極(静電センサ部)
14 上部電極(対向電極,面圧センサ部)
15 下部電極(対向電極,面圧センサ部)
15a 絶縁皮膜
18 センサマット
18a 第1被覆部材
18b 面状部材
18c 第2被覆部材
18c1 第1素材
18c2 第2素材
18d 貫通穴(穴)
18e 絶縁体
18f 凹部(穴)
19 ウレタンパッド(パッド部材)
20 シート
23,25 シートフレーム(グラウンド)
24 クッションパッド(パッド部材)
24a 座面部
24b 非座面部
30 車両ボディ(グラウンド)
40 ECU(処理装置)
41 接続切換部
42 静電容量測定部
42b 測定手段
43 乗員判別部
43b 判別手段
50 外部装置
Cth 閾値
Cx(Cmg,Csg,Cms,Caf) 静電容量成分(静電容量)
Rx(Rmg,Rsg,Rms,Raf) 抵抗値成分(抵抗値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートへの乗員の着座状態を検知する乗員検知センサにおいて、
前記シートの座面部に略平行に配置され、所定間隔をおいて対向して一対の電極が配置される対向電極を一以上備える面圧センサ部と、
前記シートの座面部に略平行に配置されるメイン電極と、前記メイン電極とシートフレームとの間に配置されると共にメイン電極と同電位とされるガード電極と、を備える静電センサ部と、
前記対向電極の相互間に生じる第1静電容量と、前記メイン電極とグラウンドとの間に生じる第2静電容量と、を測定する静電容量測定部と、
前記第1静電容量および前記第2静電容量に基づいて、前記乗員の着座状態を判別する乗員判別部と、
を有することを特徴とする乗員検知センサ。
【請求項2】
前記第1静電容量は、前記乗員の着座による荷重の印加に伴って減少する前記対向電極の相互間距離に伴って増加することを特徴とする請求項1に記載の乗員検知センサ。
【請求項3】
前記静電センサ部は、さらに前記メイン電極と平面方向に離隔して配置されるサブ電極を有し、
前記静電容量測定部は、前記サブ電極と前記メイン電極との間に生じる第3静電容量を測定し、
前記乗員判別部は、少なくとも前記静電容量測定部によって測定される前記第1静電容量、前記第2静電容量および前記第3静電容量に基づいて、前記乗員の着座状態を判別することを特徴とする請求項1または2に記載の乗員検知センサ。
【請求項4】
前記面圧センサ部と前記静電センサ部とは、前記メイン電極と前記ガード電極との間、および、前記対向電極の相互間に共通して配置する絶縁性の面状部材を用いて、一体に構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の乗員検知センサ。
【請求項5】
前記面圧センサ部と前記静電センサ部とは、前記メイン電極と前記対向電極を構成する一方の電極との双方を覆う第1被覆部材を用いて、一体に構成されることを特徴とする請求項4に記載の乗員検知センサ。
【請求項6】
前記面圧センサ部と前記静電センサ部とは、前記ガード電極と前記対向電極を構成する他方の電極との双方を覆う第2被覆部材を用いて、一体に構成されることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の乗員検知センサ。
【請求項7】
前記第2被覆部材は、前記ガード電極を覆う第1素材と、前記対向電極を構成する他方の電極を覆い前記第1素材とは異なる第2素材と、で構成することを特徴とする請求項6に記載の乗員検知センサ。
【請求項8】
前記静電センサ部は、前記メイン電極が前記面状部材の一面側に形成され、前記ガード電極が前記メイン電極の形成位置に対応して前記面状部材の他面側に形成されることを特徴とする請求項2から7のいずれか一項に記載の乗員検知センサ。
【請求項9】
前記対向電極は、前記一方の電極が前記面状部材の一面側に形成され、前記他方の電極が前記一方の電極の形成位置に対応して前記面状部材の他面側に形成されることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の乗員検知センサ。
【請求項10】
前記面状部材、前記第1被覆部材および前記第2被覆部材のうちで、一以上の部材には絶縁性のフィルムを用いることを特徴とする請求項6から9のいずれか一項に記載の乗員検知センサ。
【請求項11】
前記面圧センサ部と前記静電センサ部とは別体に構成され、一のパッド部材に備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の乗員検知センサ。
【請求項12】
前記面圧センサ部と前記静電センサ部とは、前記パッド部材の同一面上に備えるか、前記パッド部材で対向する面上に別個に備えるか、一方のセンサ部を前記パッド部材の一面上に備えるとともに他方のセンサ部の前記パッド部材内に備えるか、のいずれかで構成することを特徴とする請求項11に記載の乗員検知センサ。
【請求項13】
前記面状部材は、前記対向電極の相互間に相当する部位に、所定形状の穴が形成されることを特徴とする請求項6から12のいずれか一項に記載の乗員検知センサ。
【請求項14】
前記対向電極を構成する一対の電極のうちで、どちらか片方または両方の電極にかかる対向面側には絶縁皮膜が形成されることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の乗員検知センサ。
【請求項15】
前記面状部材の穴と、前記対向電極を構成する他方の電極との間には、絶縁体を介在させることを特徴とする請求項1から13に記載の乗員検知センサ。
【請求項16】
前記静電容量測定部は、電極の相互間を流れる電流値に基づいて、静電容量を求めることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の乗員検知センサ。
【請求項17】
前記乗員判別部は、前記静電容量測定部によって測定される前記第1静電容量が閾値以上であるか否かによって、前記乗員が小柄な大人または平均的な大人のいずれであるかを判別することを特徴とする請求項16に記載の乗員検知センサ。
【請求項18】
前記面圧センサ部は、複数の前記対向電極からなる第1面圧センサ群と、複数の前記対向電極からなる第2面圧センサ群と、を前記シートの前後方向に配置し、
前記第2面圧センサ群の前記対向電極の面積を合計した第2電極総面積は、前記第1面圧センサ群の前記対向電極の面積を合計した第1電極総面積よりも広くなるように設定することを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の乗員検知センサ。
【請求項19】
前記第1面圧センサ群は前記シートの座面後方側に配置され、前記第2面圧センサ群は前記シートの座面中央側に配置されることを特徴とする請求項18に記載の乗員検知センサ。
【請求項20】
前記第2面圧センサ群の前記対向電極は、前記第1面圧センサ群の前記対向電極に比べて、行数,列数,総数のうちで一以上が多くなるように設定することを特徴とする請求項18または19に記載の乗員検知センサ。
【請求項21】
前記第1面圧センサ群および前記第2面圧センサ群のうちで一方または双方に含まれる前記対向電極について、3行以上の行数または3列以上の列数で配置する場合には、行間隔または列間隔がほぼ同一になるように設定することを特徴とする請求項18から20のいずれか一項に記載の乗員検知センサ。
【請求項22】
前記第1面圧センサ群および前記第2面圧センサ群のうちで一方または双方は、前記対向電極の相互間を電気的に接続する信号線を伸縮可能な非直線形状に形成される伸縮部位を有することを特徴とする請求項18から20のいずれか一項に記載の乗員検知センサ。
【請求項23】
前記伸縮部位は、座面中央側の前記対向電極と、座面左右端側の前記対向電極との間に備えることを特徴とする請求項22に記載の乗員検知センサ。
【請求項24】
前記第2面圧センサ群に含まれる一部の前記対向電極は、前記シートの座面部の中央領域内に配置され、
前記一部の前記対向電極の面積を合計した第3電極面積は、前記一部の前記対向電極を除いた前記第2面圧センサ群および前記第1面圧センサ群に含まれる前記対向電極の面積を合計した第4電極面積よりも広くなるように設定することを特徴とする請求項18から23のいずれか一項に記載の乗員検知センサ。
【請求項25】
前記第2面圧センサ群に含まれる座面左右端側の前記対向電極は、前記第1面圧センサ群に含まれる座面左右端側の前記対向電極よりも座面左右側に広がるように配置されることを特徴とする請求項18から24のいずれか一項に記載の乗員検知センサ。
【請求項26】
前記第1面圧センサ群は前記乗員の臀部を検出し、前記第2面圧センサ群は前記乗員の臀部または大腿部を検出することを特徴とする請求項18から25のいずれか一項に記載の乗員検知センサ。
【請求項27】
シートへの乗員の着座状態を検知する乗員検知センサの製造方法において、
所定間隔をおいて対向して配置される対向電極を構成する一対の電極のうちで、どちらか片方または両方の電極にかかる対向面側に絶縁皮膜を形成する絶縁皮膜形成工程と、
絶縁性の面状部材に対して、所定の位置に穴をあける穴あけ工程と、
前記シートの座面部に略平行に配置されるメイン電極と、前記対向電極を構成する一方の電極と、を形成する第1電極形成工程と、
前記座面部とシートフレームとの間に配置されるガード電極と、前記対向電極を構成する他方の電極と、を形成する第2電極形成工程と、
前記第1電極形成工程で形成された電極を第1被覆部材で覆う第1被覆工程と、
前記第2電極形成工程で形成された電極を第2被覆部材で覆う第2被覆工程と、
を有することを特徴とする乗員検知センサの製造方法。
【請求項28】
前記第1電極形成工程は、さらに前記メイン電極と平面方向に離隔して配置されるサブ電極を形成することを特徴とする請求項27に記載の乗員検知センサの製造方法。
【請求項29】
前記第2被覆工程は、前記ガード電極を第1素材で覆う第1素材被覆工程と、前記対向電極を構成する他方の電極を前記第1素材とは異なる第1素材で覆う第2素材被覆工程とを有することを特徴とする請求項27または28に記載の乗員検知センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−7739(P2013−7739A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−58907(P2012−58907)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】