説明

乗場ユニットの揚重治具

【課題】乗場ユニットが敷居を有さない場合であっても、乗場ユニットをエレベータの乗場に揚重することができる乗場ユニットの揚重治具を得る。
【解決手段】ハンガーケース1およびこのハンガーケース1に吊り下げられた戸2を有した乗場ユニットをエレベータの乗場に揚重する乗場ユニットの揚重治具であって、ハンガーケース1に取り付けられ、昇降路内に垂下されるワイヤ13の下端部に係合される揚重治具本体9を備え、揚重治具本体9に係合されたワイヤ13が移動することで、揚重治具本体9が移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハンガーケースおよびこのハンガーケースに吊り下げられた戸を有した乗場ユニットをエレベータの乗場に揚重する乗場ユニットの揚重治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンガーケース、このハンガーケースに吊り下げられた戸およびこの戸の下端部に取り付けられた敷居を有した乗場ユニットをエレベータの乗場に揚重する乗場ユニットの揚重治具であって、敷居に取り付けられ、昇降路内に垂下されるワイヤの下端部に係合される揚重治具本体を備え、揚重治具本体に係合されたワイヤが移動することで、揚重治具本体が移動する乗場ユニットの揚重治具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−87246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このものの場合、乗場ユニットが敷居を有さない場合には、揚重治具本体を乗場ユニットに取り付けることができないので、乗場ユニットをエレベータの乗場に揚重することができないという問題点があった。
【0005】
この発明は、上述のような問題点を解決することを課題とするものであって、その目的は、乗場ユニットが敷居を有さない場合であっても、乗場ユニットをエレベータの乗場に揚重することができる乗場ユニットの揚重治具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る乗場ユニットの揚重治具は、ハンガーケースおよびこのハンガーケースに吊り下げられた戸を有した乗場ユニットをエレベータの乗場に揚重する乗場ユニットの揚重治具であって、前記ハンガーケースに取り付けられ、昇降路内に垂下される垂下体の下端部に係合される揚重治具本体を備え、前記揚重治具本体に係合された前記垂下体が移動することで、前記揚重治具本体が移動する。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る乗場ユニットの揚重治具によれば、揚重治具本体が、ハンガーケースに取り付けられ、さらに、垂下体の下端部に係合され、垂下体が移動することで揚重治具本体が移動するので、乗場ユニットが敷居を有さない場合であっても、乗場ユニットをエレベータの乗場に揚重することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の各実施の形態を図に基づいて説明するが、各図において、同一または相当の部材、部位については、同一符号を付して説明する。
実施の形態1.
図1はこの実施の形態に係る乗場ユニットの揚重治具および乗場ユニットを示す斜視図、図2は図1の揚重治具および乗場ユニットを示す正面図、図3は図1の揚重治具および乗場ユニットを示す側面図、図4は図2のIV−IV線に沿った矢視断面図である。
乗場ユニットは、ハンガーケース1と、このハンガーケース1に吊り下げられた一対の戸2と、この戸2の下端部に取り付けられた複数の足部3と、ハンガーケース1に固定された三方枠4とを備えている。
ハンガーケース1の内部には、戸2の移動方向に沿ったレール5が取り付けられており、このレール5上には、戸2の上端部の左右に離間して取り付けられた一対のローラ6が転動可能となっている。
三方枠4は、ハンガーケース1に固定された上枠7と、この上枠7の左右両端部に固定された一対の縦枠8とを有している。
【0009】
この実施の形態に係る乗場ユニットの揚重治具は、ハンガーケース1に取り付けられる揚重治具本体9と、戸2に取り付けられる当接体である止め金具10とを備えている。
揚重治具本体9は、ハンガーケース1に取り付けられる、水平方向に延びた基部11と、上端部がこの基部11に接続され、下端部が、戸2の反乗場側、つまり、乗場から視た戸2の背面側で、ハンガーケース1より下方に延びた下方延部12とを有している。
下方延部12が、戸2の反乗場側に配置されているので、乗場ユニットをエレベータの乗場に揚重する際に、乗場と戸2との間に下方延部12の下端部が挟まってしまうことを防ぐことができる。
下方延部12の下端部は、昇降路内に垂下される垂下体であるワイヤ13の下端部に係合される。
なお、垂下体は、ワイヤ13に限らず、例えば、ベルト等であってもよい。
【0010】
揚重治具本体9は、ボルトおよびナットから構成された第1の締結手段14を介して、取付金具15に固定され、この取付金具15は、ボルトおよびナットから構成された第2の締結手段16を介して、ハンガーケース1に固定される。
なお、揚重治具本体9は、取付金具15を介さずに、直接、ハンガーケース1に固定されてもよい。
【0011】
下方延部12の下端部には、貫通孔12aが形成されており、この貫通孔12aにワイヤ13が挿入されることで、ワイヤ13が下方延部12に係合される。
揚重治具本体9に係合されたワイヤ13が移動することで、揚重治具本体9が移動する。
下方延部12の下端部は、乗場に立つ作業者の手が届く高さにまで延設されており、乗場に立つ作業者は、下方延部12の下端部に形成された貫通孔12aにまで、手を伸ばして、ワイヤ13を下方延部12に着脱することができる。
【0012】
止め金具10は、基端部がねじ17を用いて戸2に固定され、先端部が、下方延部12の反戸2側、つまり、戸2から視た下方延部12の背面側に当接している。
これにより、下方延部12が戸2から離間する方向に移動することが規制される。
また、乗場に立つ作業者は、止め金具10を戸2に固定した状態で、戸2を開閉することができる。
なお、当接体は、止め金具10に限らず、下方延部12の反戸2側に当接できるものであればよい。
【0013】
揚重治具本体9は、下方延部12の下端部に取り付けられた、戸2と接触する、弾性体であるゴムから構成された接触部18をさらに有している。
接触部18が戸2に接触するので、戸2が揚重治具本体9と接触することによって傷付けられることを防ぐことができる。
なお、接触部18は、ゴムに限らず、その他の弾性体であってもよい。
また、接触部18は、下方延部12の下端部に限らず、下方延部12のその他の部位に取り付けられてもよい。
【0014】
次に、この実施の形態に係る乗場ユニットの揚重治具を用いて、乗場ユニットをエレベータの乗場に揚重する手順について説明する。
まず、第1の締結手段14、取付金具15および第2の締結手段16を介して、乗場ユニットのハンガーケース1に揚重治具本体9を取り付ける。
次に、昇降路内にワイヤ13を垂下し、このワイヤ13の下端部を、揚重治具本体9の下方延部12の下端部に形成された貫通孔12aに通して、下方延部12に係合する。
さらに、ねじ17を用いて止め金具10を戸2に固定し、止め金具10の先端部を、下方延部12の反戸2側に当接させる。
このとき、戸2は閉じられた状態であり、揚重治具本体9の接触部18を戸2に接触させる。
次に、ワイヤ13を移動させ、揚重治具本体9を移動させて、乗場ユニットをエレベータの乗場に揚重する。
乗場ユニットをエレベータの乗場に揚重した後、乗場に立つ作業者は、戸2を開いて、下方延部12の貫通孔12aからワイヤ13を取り外す。
最後に、揚重治具本体9、止め金具10および取付金具15を乗場ユニットから取り外す。
【0015】
以上説明したように、この実施の形態に係る乗場ユニットの揚重治具によれば、揚重治具本体9が、ハンガーケース1に取り付けられ、さらに、ワイヤ13の下端部に係合され、ワイヤ13が移動することで揚重治具本体9が移動するので、乗場ユニットが敷居を有さない場合であっても、乗場ユニットをエレベータの乗場に揚重することができる。
また、乗場ユニットが敷居を有している場合に、この敷居を乗場ユニットから分離して揚重することができるので、長尺物である敷居を乗場ユニットに取り付けた状態では、乗場ユニットを揚重するのに必要なスペースが無いときであっても、乗場ユニットから敷居を分離して、乗場ユニットをエレベータの乗場に揚重することができる。
【0016】
また、揚重治具本体9は、ハンガーケース1に取り付けられる基部11と、上端部が基部11に接続され、下端部が、戸2の反乗場側で、ハンガーケース1より下方に延びた下方延部12とを有し、下方延部12の下端部が、ワイヤ13に係合されるので、乗場に立つ作業者は、簡単に、揚重治具本体9からワイヤ13を着脱することができる。
【0017】
また、戸2に取り付けられる止め金具10は、下方延部12の反戸2側に当接して、揚重治具本体9が戸2から離間する方向に移動することを規制するので、乗場に立つ作業者が、簡単に、戸2を開閉することができるとともに、乗場ユニットをエレベータの乗場に揚重する際に、揚重治具本体9が戸2から離間する方向に移動して、乗場ユニットから揚重治具本体9が外れることを抑制することができる。
【0018】
また、揚重治具本体9は、弾性体から構成された接触部18が戸2と接触するので、戸2が揚重治具本体9に接触することによって傷付けられることを防ぐことができる。
【0019】
なお、この実施の形態では、ワイヤ13が下方延部12の貫通孔12aに挿入されることで、ワイヤ13が揚重治具本体9に係合される乗場ユニットの揚重治具について説明したが、勿論このものに限らず、例えば、下方延部12にワイヤ13に係合可能な突出部が形成され、ワイヤ13がこの突出部に係合される乗場ユニットの揚重治具であってもよい。
【0020】
また、この実施の形態では、揚重治具本体9が基部11および下方延部12を有し、ワイヤ13が下方延部12に係合される乗場ユニットの揚重治具について説明したが、勿論このものに限らず、揚重治具本体9が下方延部12を有さず、ワイヤ13が基部11に係合される乗場ユニットの揚重治具であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1に係る乗場ユニットの揚重治具および乗場ユニットを示す斜視図である。正面図である。
【図2】図1の揚重治具および乗場ユニットを示す正面図である。側面図である。
【図3】図1の揚重治具および乗場ユニットを示す側面図である。
【図4】図2のIV−IV線に沿った矢視断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 ハンガーケース、2 戸、3 足部、4 三方枠、5 レール、6 ローラ、7 上枠、8 縦枠、9 揚重治具本体、10 止め金具(当接体)、11 基部、12 下方延部、12a 貫通孔、13 ワイヤ(垂下体)、14 第1の締結手段、15 取付金具、16 第2の締結手段、17 ねじ、18 接触部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンガーケースおよびこのハンガーケースに吊り下げられた戸を有した乗場ユニットをエレベータの乗場に揚重する乗場ユニットの揚重治具であって、
前記ハンガーケースに取り付けられ、昇降路内に垂下される垂下体の下端部に係合される揚重治具本体を備え、
前記揚重治具本体に係合された前記垂下体が移動することで、前記揚重治具本体が移動することを特徴とする乗場ユニットの揚重治具。
【請求項2】
前記揚重治具本体は、前記ハンガーケースに取り付けられる基部と、上端部が前記基部に接続され、下端部が、前記戸の反前記乗場側で、前記ハンガーケースより下方に延びた下方延部とを有し、
前記下方延部の下端部が、前記垂下体に係合されることを特徴とする請求項1に記載の乗場ユニットの揚重治具。
【請求項3】
前記戸に設けられ、前記下方延部の反前記戸側に当接し、前記下方延部が前記戸から離間する方向に移動することを規制する当接体をさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載の乗場ユニットの揚重治具。
【請求項4】
前記揚重治具本体は、前記下方延部に設けられた、前記戸と接触する、弾性体から構成された接触部をさらに有していることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の乗場ユニットの揚重治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−143653(P2010−143653A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319576(P2008−319576)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】