説明

乗客コンベアのリニューアル方法及び該方法で使用する運搬用治具

【課題】簡易で乗客コンベアが設置されている場所の如何を問わず既設の乗客コンベアの構成機器を使用して新たな機器への交換を含む新たな乗客コンベアを設置するためのリニューアル方法及びこのリニューアル方法において使用する運搬用治具を提供することができる。
【解決手段】乗客コンベアのリニューアル方法において、乗客コンベアの構成機器をその内部に取り付けた新トラス21に車輪24を取り付ける工程と、新トラス21を旧トラス1内の既設のガイドレール2に沿って据え付け位置まで運搬する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアのリニューアル方法及びこのリニューアル方法において使用する運搬用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアは一般的に耐用年数が定められており、耐用年数に達した乗客コンベアはリニューアルが行われる。また、耐用年数に達していない場合であっても、乗客コンベアの各部の機能を向上させるため、或いは、外観、意匠を新たなものとするため等によってもリニューアルが行われる場合がある。
【0003】
リニューアルが行われるに際してはいくつか方法がある。例えば、既設の乗客コンベアを全て撤去し新しい乗客コンベアを設置する全撤去方式、既設の乗客コンベアで使用されていた機器を全て撤去しトラスのみ残す準撤去方式、或いは、制御装置のみを交換する制御リニューアル等である。
【0004】
上述した方法の中で準撤去方式を採用した場合、既設のトラスに新たな駆動装置や駆動輪、手摺駆動装置等の機器をリニューアルの対象となる乗客コンベアが設置されている現地にて据え付けることになる。そのため現地での作業時間がかかり短納期での据え付けは困難であることが多い。さらには、既設のトラスに新たな機器を据え付けることになるため、据え付けに対して機器の他に必要となる用品の数、種類は多くなる傾向にあり、このことも短納期での据え付けを困難とする理由となる。
【0005】
そこで、近年では準撤去方式を採用する際に工期の短縮を目的として、既設のトラスの中に新たなトラスをそっくり入れ込んで取り付けるリニューアル方法が採用されることがある(以下、特許文献1参照)。
【0006】
また、既設のトラス(フレーム)の中に新設のトラス(フレーム)を入れるときに、両トラス(フレーム)が干渉することなく円滑に運搬させる方法としては、以下の特許文献2に開示された方法を挙げることができる。この特許文献2には、既設のフレームの短尺方向に延設される横材を切断して新設フレームの設置空間を確保した後、その短尺方向側面にガイド部材を設けた新設フレームを、このガイド部材が既設フレームに当接した状態で既設フレーム内をガイドさせて移動させ、任意の位置に設置する、という発明が開示されている。
【特許文献1】特開昭58−152779号公報
【特許文献2】特開2005−314985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された発明によるリニューアル方法を採用しても、特許文献2に開示された発明を利用してはリニューアルをすることが不可能な場合がある。
【0008】
すなわち、特許文献2においては、新設フレームを既設のフレーム内の該当する個所に設置する際に揚重機を使用することを前提としている。但し、リニューアルの対象となっている乗客コンベアが設置されている場所によっては、その空間の関係上、揚重機を使用して新設のフレームを吊り上げることが困難なことも十分考えられる。また、揚重機そのものを設置する場所に欠ける場合もある。
【0009】
また、乗客コンベアの構成機器のみを交換する場合であっても、この構成機器が人の手では運搬することのできない重量物である場合には揚重機を使用しなければならないが、この場合も上述した課題が存在する。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、簡易で乗客コンベアが設置されている場所の如何を問わず既設の乗客コンベアの構成機器を使用して新たな機器への交換を含む新たな乗客コンベアを設置するためのリニューアル方法及びこのリニューアル方法において使用する運搬用治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施の形態に係る第1の特徴は、乗客コンベアのリニューアル方法において、乗客コンベアの構成機器をその内部に取り付けた新トラスに車輪を取り付ける工程と、新トラスを旧トラス内の既設のガイドレールに沿って据え付け位置まで運搬する工程とを備える。
【0012】
本発明の実施の形態に係る第2の特徴は、乗客コンベアのリニューアル方法において、乗客コンベアの構成機器をその内部に取り付けた新トラスに車輪を取り付ける工程と、旧乗客コンベアを構成する欄干ベースに新トラスの車輪を通すための車輪ガイドを設置する工程と、新トラスを車輪ガイドに沿って据え付け位置まで運搬する工程とを備える。
【0013】
本発明の実施の形態に係る第3の特徴は、乗客コンベアのリニューアル方法において、リニューアル後に使用する新しい機器を運搬用治具に乗せる工程と、運搬用治具を踏段に乗せた後、駆動装置を駆動して踏段を動かす工程と、踏段に段差が生じたときに運搬用治具の車輪を伸張させて、段差による運搬用治具の傾きをなくして機器を水平に保つ工程と、段差が解消したときに伸張した車輪を元の位置に収納する工程とを備える。
【0014】
本発明の実施の形態に係る第4の特徴は、運搬用治具において、物を乗せる天板と、天板に乗せた物を移動させるための二対の車輪と、一端部が天板に接するとともに他端部近傍において車輪を回転可能に固定する二対の脚部と、を備え、二対の脚部のうち一対の脚部は、上下方向に伸縮自在にされている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易で乗客コンベアが設置されている場所の如何を問わず既設の乗客コンベアの構成機器を使用して新たな機器への交換を含む新たな乗客コンベアを設置するためのリニューアル方法及びこのリニューアル方法において使用する運搬用治具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、既設の乗客コンベアをリニューアルする際の一場面を示す説明図である。既設の乗客コンベアのうち、トラス(以下、このような既設の乗客コンベアのトラスを適宜「旧トラス」と表わす)1とガイドレール2のみが残されてその他の機器は既に撤去された状態を示している。また、乗客コンベアの上階側には揚重機Kが設置されている。この揚重機Kは、新しい乗客コンベアのトラス(以下、このような新しい乗客コンベアのトラスを適宜「新トラス」と表わす)21を所定の位置に据え付ける際に用いられる。
【0018】
新トラス21内には、予め工場において新しい乗客コンベアに必要な機器を取り付けており、この状態で設置場所である現場に運ばれる。なお、図1に表わされている新トラス21内には、駆動輪22とガイドレール23とが取り付けられている。また、一般的に据え付けられる新トラス21は、その大きさからいくつかに分割されて現場に搬入される。
【0019】
新トラス21には、その前後左右4カ所に車輪24が取り付けられている。この車輪24は、後述するようにガイドレール23上に乗せて新トラス21を所定の据え付け位置まで移動させる際に使用する。新トラス21を正面から見た図2に示されているように、この車輪24は車軸25によって回転可能に新トラス21に取り付けられる。そのため、新トラス21には、車輪24、車軸25を取り付けるための孔(図示せず)が設けられている。
【0020】
次に、図3に示すフローチャートを用いて本発明の実施の形態における乗客コンベアのリニューアル方法を説明する。
【0021】
まず、リニューアル後に使用する新トラス21内に必要な機器を組み込む(ST1)。上述したように、この組み込みは予め工場にて行われる。現場での組み込みをできるだけ少なくすることによって工期の短縮を図ることが可能になる。新トラス21内に機器が組み込まれると、現場に運搬される(ST2)。そして運び込まれた新トラス21には、所定の位置に車輪24が取り付けられる(ST3)。
【0022】
車輪24が取り付けられた新トラス21は、その車輪24が旧トラス1内のガイドレール2上に乗るように載置される。そして、新トラス21の所定の位置に揚重機Kからのワイヤが取り付けられる。この状態で揚重機Kがワイヤを巻き取ると、ガイドレール2上を車輪24が転がってより軽い力で新トラス21を所定の設置場所まで引き揚げることができる(ST4)。設置場所まで引き揚げられた新トラス21はその位置で据え付けられる(ST5)。
【0023】
このような方法で既設の乗客コンベアを新しい乗客コンベアへとリニューアルすることで、簡易で乗客コンベアが設置されている場所の如何を問わず既設の乗客コンベアの構成機器を使用して新たな機器への交換を含む新たな乗客コンベアを設置するためのリニューアル方法を提供することができる。
【0024】
特に、既設のガイドレールと新トラスに取り付けられた車輪によって、より小さな力で新トラスを設置場所まで引き揚げることができるので、揚重機もより小さなものを使用することが可能となる。小さな揚重機であればその据え付け場所が小さくても足り、より多くの現場で工期を短くすることができるようになる。
【0025】
(第2の実施の形態)
次に本発明における第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0026】
第1の実施の形態においては、旧トラス1内のガイドレール2を利用して新トラス21を引き揚げたが、第2の実施の形態においては、欄干ベースを利用して新トラス21を所定の位置まで引き揚げる点で相違する。
【0027】
すなわち、図4の既設の乗客コンベアをリニューアルする際の一場面を示す説明図に示すように、第1の実施の形態における車輪24の取り付け位置とは異なり、第2の実施の形態において車輪24は新トラス21の上部に取り付けられる。そして、車輪24は旧トラス1の欄干ベースに乗っている。また、車輪24が新トラス21の上部に取り付けられているため、新トラス21の下部は旧トラス1の中を移動することになる。
【0028】
なお、新トラス21の中に予め機器が取り付けられていること、揚重機Kを利用して所定の据え付け位置まで移動させられる点は、第1の実施の形態において説明した通りである。
【0029】
図5は、車輪24と欄干ベースとの位置関係を簡略化して示す図であり、車輪24を正面から見た図である。欄干ベース3は、旧トラス1の最外部に設けられており、一定間隔でタップと呼ばれる孔が設けられている。このタップ4は通常、この欄干ベース3の上に立設される欄干を固定するために使用される。既設の乗客コンベアを新しい乗客コンベアへとリニューアルする際に準撤去方式を採ると、欄干も再利用するのでなければ撤去の対象となる。そこで撤去する際に欄干ベース3のみ残し、その上に新トラス21の車輪24が通る車輪ガイド26を取り付ける。
【0030】
新設する車輪ガイド26は、車輪24が脱輪しないように車輪24と車輪ガイド26とが接する面と直角にガイドを設けている。そのため、図5に示されているように車輪ガイド26の断面は略凹状となる。このような形状の車輪ガイド26を、例えば、皿ボルト5を利用して欄干ベース3と固定する。この固定に当たって皿ボルト5をタップ4にねじ込むようにすれば、簡単に車輪ガイド26を欄干ベース3に取り付けることができる。
【0031】
このような車輪ガイド26を欄干ベース3に取り付けることによって、新トラス21に取り付けられた車輪24を脱輪させることなく所定の据え付け位置まで引き揚げることができる。従って、簡易で乗客コンベアが設置されている場所の如何を問わず既設の乗客コンベアの構成機器を使用して新たな機器への交換を含む新たな乗客コンベアを設置するためのリニューアル方法を提供することができる。
【0032】
特に、既設のガイドレールと新トラスに取り付けられた車輪によって、より小さな力で新トラスを設置場所まで引き揚げることができるので、揚重機もより小さなものを使用することが可能となる。小さな揚重機であればその据え付け場所が小さくても足り、より多くの現場で工期を短くすることができるようになる。
【0033】
(第3の実施の形態)
次に本発明における第3の実施の形態について説明する。なお、第3の実施の形態において、上述の第1または第2の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0034】
第3の実施の形態では、準撤去方式ではなく乗客コンベアを構成する一部の機器、特に重量物のみを交換するに適したリニューアル方法を示す。図6は、既設の乗客コンベアをリニューアルする際の一場面を示す説明図である。ここでは、重量物である駆動装置のみを交換する例を挙げて説明する。そのため、踏段や欄干、簡略化して示す駆動輪等は既設のものをそのまま利用する。
【0035】
図6では、新駆動装置27が運搬用治具30上に載せられて、さらに運搬用治具30が乗客コンベアの踏段6上にある。運搬用治具30は、図7の側面図に示されているように、物を乗せる天板31と、この天板31に乗せた物を移動させるための二対の車輪32と、天板31と車輪32とをつなぐ脚部33とを備えている。
【0036】
天板31は、この上に物を載せるためにあり、その大きさ、素材等は任意に選択することができる。また、運搬用治具30を示す図7ないし図9においては特に示していないが、例えば、この天板31上にゴム板を貼付する、天板31の端部にストッパを設ける、或いはワイヤ固定具を設ける、といった載せた物の滑り止め対策が施されていても良い。
【0037】
車輪32は、第3の実施の形態における運搬用治具30では二対、計4カ所に設けられている。また、運搬用治具30を図7の矢印方向から見た図である図8にも示されているように、1つの脚について2個ずつ、計8個設けられている。但し、車輪32の個数は、この運搬用治具30の最大積載量に応じて任意に定めることができる。
【0038】
脚部33は、その一端部が天板31に接続固定されている。一方、他端部近傍では車輪32を固定する。詳しくは、他端部近傍において車軸32aを固定し、この車軸32aの両端に2個の車輪32が回転可能に固定されている。また、二対の脚部33のうち一対の脚部は、上下方向に自由に伸縮することが可能とされている。図7に示す運搬用治具30では、車輪の回転方向を前後とすると前後二対、計4本の脚部33が設けられているが、そのうちの一対(2本)の脚部が伸縮可能とされている。
【0039】
すなわち、脚部33は外筒33aと、この外筒33aの内部に収納可能な内筒33bとから構成されている。図7や図8に示すように、車輪32を利用して運搬用治具30を移動させるときには内筒33bは外筒33aの中に収納され、その位置で固定されている。そして、図6及び図9に示すように、乗客コンベアが運転されその踏段6に段差が生じた場合には、この脚部33の内筒33bが延びて踏段6上に載せられている運搬用治具30の天板31を水平に保つ。内筒33bが延ばされた状態は、第3の実施の形態においては2カ所のボルト34で固定することによって維持される。なお、このボルト34による固定は、内筒33bが外筒33aの中に収納されている際にもその状態を維持するために行われる。ボルト34による外筒33aと内筒33bとの固定は、脚部33を延ばしたときに十分な強度を維持することができるのであれば、ボルトに限らずどのような固定方法であっても構わない。
【0040】
内筒33bは、延ばされた状態においてその一端部近傍においてボルト34によって外筒33aに固定される。一方他端部には、天板31と平行となるように板35が設けられている。この平板状の板35が取り付けられていることによって、内筒33bを延ばした状態において運搬用治具30を水平の状態に保つことができるとともに、安定させることができる。
【0041】
第3の実施の形態における運搬用治具30では、内筒33bは外筒33a内に収納された状態にあるか、或いは、延ばした状態にあるか、いずれか2通りの状態しか作出できないが、ボルト34を通す孔を脚部33の上下方向に複数設けることによって、段差の高さに応じて細かく脚部33の長さを調節することができる。
【0042】
なお、内筒33bが外筒33a内に収納されている状態においては、図7、及び図8にも明らかなように板35は地面より高い位置にあるため、車輪32を回転させて運搬用治具30を移動させても地面と接触することはない。
【0043】
次に、運搬用治具30を用いてのリニューアル方法について、図10に示すフローチャートを用いて説明する。
【0044】
上述した第1或いは第2の実施の形態とは異なり、第3の実施の形態では駆動装置のみを新たに交換する。そこで、まず現場に交換する駆動装置(以下、「新駆動装置」という)27と運搬用治具30とを運搬するとともに、現場にて運搬用治具30の天板31上に新駆動装置27を載置する(ST21、ST22)。この状態で運搬用治具30を車輪32を用いて移動させ踏段6上に載せる(ST23)。
【0045】
踏段6上に運搬用治具30が載ったことを確認した上で、交換される駆動装置(以下、「旧駆動装置」という)(図6においては図示せず)を使用して乗客コンベアを運転する(ST24)。図6では下床から上床に向かって矢印の方向に踏段6が動くとする。その後、踏段6に段差が生じ始めるところで一旦乗客コンベアを止める(ST25)。これは踏段6が矢印の方向に進むにつれて段差が生ずることになり、運搬用治具30の脚部33を延ばして天板31の水平さを維持しなければ天板31上の新駆動装置27が運搬用治具30から落下してしまうからである。
【0046】
そこで、一対の脚部33の外筒33aから内筒33bをボルト34を外して延ばす(ST26)。内筒33bを延ばす長さは、踏段6の段差の高さに合わせる。延ばした後は、ボルト34にて外筒33aに固定する。なお、脚部33の内筒33bを延ばす際には、何らかの方法(例えば、別途支えを踏段6と天板31との間に咬ませる)で天板31を水平に保つ必要がある。
【0047】
乗客コンベアが運転されている間は、踏段6は前後の踏段6,6との間でその段差の高さは変わらない。従って、上床階に近づいてその段差が徐々になくなってくるまでは運搬用治具30の延ばした脚部33の長さは変更する必要はない。従って、そのまま乗客コンベアを運転して新駆動装置27を運搬する(ST27)。
【0048】
上床階に近づくと、踏段6の段差は徐々になくなってくる。従って、延ばした脚部33の長さを調節しないと運搬用治具30が前のめりになって天板31上の新駆動装置27が落下する。そこで、段差の高さが小さくなってきたところで再度乗客コンベアの運転を止める(ST28)。そして延長していた脚部33の内筒33bを外筒33a内に収納する(ST29)。内筒33bを収納することによって、運搬用治具30は図7に示すようにその天板31が水平となる。その後旧駆動装置に最も近いところまで運搬された新駆動装置27と旧駆動装置とを交換する。新旧の駆動装置を運搬用治具30を用いて交換するリニューアル方法は以上の通りである。
【0049】
なお、図10のフローチャートには示されていないが、旧駆動装置を取り外して新駆動装置27を取り付けた後は、今度は新駆動装置27を駆動して乗客コンベアを運転し、運搬用治具30に載せた旧駆動装置を下床階へと降ろす。
【0050】
このような方法で既設の乗客コンベアを新しい乗客コンベアへとリニューアルすることで、簡易で乗客コンベアが設置されている場所の如何を問わず既設の乗客コンベアの構成機器を使用して新たな機器への交換を含む新たな乗客コンベアを設置するためのリニューアル方法及びこのリニューアル方法において使用する運搬用治具を提供することができる。
【0051】
特に、運搬用治具に載せた駆動装置等重量物をこれまで使用している駆動装置を利用して運搬することができるので、新たに揚重機を設置する必要はなく少スペースであっても短納期でリニューアルを完了させることができる。また、乗客コンベアを利用する際であっても、踏段の段差に合わせて脚部を伸張させることのできる運搬用治具を用いて運搬するため、運搬用治具が傾斜することによる重量物の落下を防止することができ、安全にリニューアルを行うことができる。
【0052】
なお、第3の実施の形態においては、内筒33bの他端部には板35が設けられているが、板35を設けず車輪32ごと延ばすことができるような構成とされていても良い。
【0053】
この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、第1及び第2の実施の形態においては、揚重機を使用して新トラスを所定の据え付け位置まで運搬したが、現場によっては揚重機を設置することができないこともある。そこで、その場合には揚重機の代わりに旧トラス内の撤去予定の駆動装置を利用して新トラスを運搬することも可能である。
【0054】
さらに、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る既設の乗客コンベアをリニューアルする際の一つの場面を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るリニューアル方法における新トラスを正面から見た説明図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るリニューアル方法の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る既設の乗客コンベアをリニューアルする際の一つの場面を示す説明図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るリニューアル方法における車輪と欄干ベースとの位置関係を簡略化して示す図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る既設の乗客コンベアをリニューアルする際の一つの場面を示す説明図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る運搬用治具の側面図である。
【図8】図7に示す運搬用治具を図7の矢印方向から見た状態を示す説明図である。
【図9】運搬用治具の脚部を伸張させた状態を示す説明図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係るリニューアル方法の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
1 旧トラス
2 ガイドレール
3 欄干ベース
4 タップ
5 皿ボルト
6 踏段
21 新トラス
22 駆動輪
23 新しいガイドレール23
24 車輪
25 車軸
26 車輪ガイド
27 新しい駆動装置
30 運搬用治具
31 天板
32 車輪
33 脚部
33a 外筒
33b 内筒
34 ボルト
35 板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアのリニューアル方法において、
前記乗客コンベアの構成機器をその内部に取り付けた新トラスに車輪を取り付ける工程と、
前記新トラスを旧トラス内の既設のガイドレールに沿って据え付け位置まで運搬する工程と、
を備えることを特徴とする乗客コンベアのリニューアル方法。
【請求項2】
乗客コンベアのリニューアル方法において、
前記乗客コンベアの構成機器をその内部に取り付けた新トラスに車輪を取り付ける工程と、
旧乗客コンベアを構成する欄干ベースに前記新トラスの車輪を通すための車輪ガイドを設置する工程と、
前記新トラスを前記車輪ガイドに沿って据え付け位置まで運搬する工程と、
を備えることを特徴とする乗客コンベアのリニューアル方法。
【請求項3】
前記新トラスを据え付け位置まで運搬する工程では、揚重機を利用して前記新トラスを引き揚げることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗客コンベアのリニューアル方法。
【請求項4】
前記新トラスを据え付け位置まで運搬する工程では、前記旧乗客コンベアに設けられていた駆動装置を利用して前記新トラスを引き揚げることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗客コンベアのリニューアル方法。
【請求項5】
乗客コンベアのリニューアル方法において、
リニューアル後に使用する新しい機器を運搬用治具に乗せる工程と、
前記運搬用治具を踏段に乗せた後、駆動装置を駆動して踏段を動かす工程と、
前記踏段に段差が生じたときに前記運搬用治具の車輪を伸張させて、前記段差による運搬用治具の傾きをなくして前記機器を水平に保つ工程と、
前記段差が解消したときに前記伸張した車輪を元の位置に収納する工程と、
を備えることを特徴とする乗客コンベアのリニューアル方法。
【請求項6】
物を乗せる天板と、
前記天板に乗せた前記物を移動させるための二対の車輪と、
一端部が前記天板に接するとともに他端部近傍において前記車輪を回転可能に固定する二対の脚部と、を備え、
前記二対の脚部のうち一対の脚部は、上下方向に伸縮自在にされていることを特徴とする運搬用治具。
【請求項7】
前記伸縮自在な一対の脚部は、外筒と前記外筒に収納可能な内筒とから構成されていることを特徴とする請求項6に記載の運搬用治具。
【請求項8】
前記伸縮自在な一対の脚部における前記内筒は、係止手段によってその一端部が前記外筒と固定されることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の運搬用治具。
【請求項9】
前記内筒の一端部は、前記天板と平行な板状とされていることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の運搬用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−6492(P2010−6492A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164952(P2008−164952)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】