説明

乗客コンベア

【課題】乗客コンベアの正面スカート部に乗客検出用のセンサを設けても本体幅方向を狭幅化することができる乗客コンベアを提供する。
【解決手段】踏段と、踏段の両側に設けられた一対のスカート部22と、一対のスカート部22から立設された欄干と、欄干の外周に沿って移動する移動手摺20と、欄干18の先端部に配置され、一対のスカート部22における移動手摺20が出入りする手摺孔を備えた正面スカートカバー50と、スカート部22に配設され乗降板11,13を通過する乗客を検出する1次センサ62とを備え、正面スカートカバー50には、手摺孔24の下方において乗降板11,13に向けて突出する突出部52が形成され、1次センサ62の検出範囲の中心軸を乗客の進入方向に対して所定角度だけ内方に向け、かつ水平方向に対して所定角度だけ上方に向けて、1次センサ62が突出部52に収納されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータや動く歩道等の乗客コンベア、特に、乗降口に進入する乗客の有無を検出するセンサがスカート部に配設された乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビルなどに設置された乗客コンベアとして、センサにより乗客の有無を検出して自動運転を行う自動運転方式の乗客コンベアが知られている。この乗客コンベアでは、乗降口などに設置された光電ポール(支柱)にセンサを設けておき、このセンサにて乗客が検出されないときには運転を停止した状態で待機し、センサにより乗客が検出されると定格速度で運転するように構成されている。
【0003】
この種の乗客コンベアでは、乗降口に光電ポールの設置を必要とするため、その設置スペースを確保しなければならず、場所によっては対応できなかったり、また、意匠的な問題などがあった。そこで、乗客検出用のセンサを乗客コンベアの正面スカート部に内蔵することにより、光電ポールをなくした、いわゆるポールレス型の自動運転方式乗客コンベアが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−182050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、最近においては本体幅方向を狭くすることが要望されているにも関わらず、上記のようなポールレス型の自動運転方式乗客コンベアでは、踏段の両側に設けられた一対のスカート部が欄干より幅方向内側に突出する内側スカート部を形成し、この内側スカート部に乗客検出用のセンサを収納しているため、乗客コンベアの狭幅化が困難となる問題がある。
【0006】
本発明は上記問題を考慮してなされたものであり、乗客コンベアの正面スカート部に乗客検出用のセンサを設けても本体幅方向を狭幅化しやすい乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る乗客コンベアは、踏段と、前記踏段の両側に設けられた一対のスカート部と、前記一対のスカート部から立設された欄干と、前記欄干の外周に沿って移動する移動手摺と、前記欄干の先端部に配置され、前記一対のスカート部における前記移動手摺が出入りする手摺孔を備えた正面スカートカバーと、前記スカート部に配設され乗降板を通過する乗客を検出する1次センサとを備え、正面スカートカバーには、前記手摺孔の下方において前記乗降板に向けて突出する突出部が形成され、前記1次センサの検出範囲の中心軸を、乗客の進入方向に対して所定角度だけ内方に向け、かつ、水平方向に対して所定角度だけ上方に向けて、前記1次センサが前記突出部に収納されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る乗客コンベアでは、上記構成により、乗客コンベアの正面スカート部に乗客検出用のセンサを設けても本体幅方向を狭幅化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る乗客コンベアを示す構成図である。
【図2】上記乗客コンベアの乗降口近傍における欄干の一部を破断して示す側面図である。
【図3】図1に示す欄干の正面図である。
【図4】上記乗客コンベアの乗降口近傍を示す平面図である。
【図5】上記乗客コンベアの乗降口近傍を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る乗客コンベア10は、例えば、建物の上下階に跨って傾斜して設置されたエスカレータであって、多数の踏段12を上下階の乗降板11,13上に設けられた乗降口11a,13aとの間で循環移動させることで、踏段12上に搭乗した乗客を上階と下階とにわたって搬送するものである。多数の踏段12は、無端状のコンベアチェーン14によって連結されており、建物の床下に設置されたトラスと呼ばれる主枠16内に配置されている。
【0012】
主枠16の上部両側には、踏段12の移動方向に沿って一対の欄干18が立設されており、欄干18の外周部にベルト状の移動手摺20が取り付けられている。この移動手摺20は踏段12と同期して循環移動する。
【0013】
欄干18の下側部分には、主枠16と欄干18との連結部を覆うスカート部22が上階の乗降口11から下階の乗降口13の間にわたって設けられている。このスカート部22の長手方向の両側、つまり、欄干18の先端部には正面スカートカバー50が設けられ、スカート部22の先端部を閉塞している。
【0014】
正面スカートカバー50は、図1〜図3に示すように、移動手摺20が出入りする手摺孔24と、手摺孔24の下方において乗降板11,13に向けて突出する突出部52を備える。
【0015】
乗客コンベア10の上昇運転時では、移動手摺20がスカート部22内部より乗り口となる下階側の手摺孔24を通って外部に現れ、降り口となる上階側の手摺孔24からスカート部22内に入り込む。また、乗客コンベア10の下降運転時では、移動手摺20がスカート部22内部より乗り口となる上階側の手摺孔24を通って外部に現れ、降り口となる下階側の手摺孔24からスカート部22内に入り込む。そして、上昇及び下降の各運転時において、移動手摺20が欄干18の上端側を走行する際に利用者が手で掴むことに利用される。
【0016】
手摺孔24には、循環移動する移動手摺20を内包する筒状のインレット部材26が挿入され、移動手摺20の移動方向に沿って移動可能に支持されている。インレット部材26はゴムにより形成され、可撓性を有している。
【0017】
図2に示すように、インレット部材26は、正面スカートカバー50に設けられた手摺孔24に挿入され、一端側がスカート部22内に位置し、他端がスカート部22の外側に位置している。スカート部22内に位置しているインレット部材26の一端側には作動板28が固定され、作動板28には凸部29が設けられている。スカート部22内における凸部29と対向する位置には、インレット安全スイッチ30が設けられている。
【0018】
インレット部材26が初期位置P0から所定距離Lだけスカート部22内部に引き込まれ検出位置P1へ移動すると、凸部29がインレット安全スイッチ30を押圧する。これにより、インレット安全スイッチ30が作動し手摺孔24に異物が引き込まれたことを検知する。
【0019】
手摺孔24の周囲には、正面スカートカバー50から乗降板11,13に向けて突出するインレットガード部54が正面スカートカバー50に対して一体成形されており、正面スカートカバー50より突出されたインレット部材26の外周を覆っている。このように
インレット部材26の外周をインレットガード部54が覆うことで、乗客の手荷物や足などが誤ってインレット部材26に当たってインレット安全スイッチ30が誤作動するのを防止することができる。
【0020】
突出部52は、正面スカートカバー50の端面から乗降板11,13に向けて、つまり、踏段12の移動方向に沿って正面スカートカバー50の端面から離反する方向に向けて突出形成されており、突出部52の内部が乗客検出装置60を収納する収納空間Sをなしている。
【0021】
踏段12の移動方向に沿った突出部52の端面52aの位置P2は、凸部29によりインレット安全スイッチ30が作動するインレット部材26の検出位置P1より更に正面スカートカバー50の端面から離反する方向に乗降板11,13に向けて突出している。
【0022】
乗客検出装置60は、上下階のそれぞれに一対ずつ配設され、乗降口11a,13に進入した乗客を検出する乗客検出センサ(1次センサ)62と、乗客検出センサ62よりも踏段12に近い位置に配設され、乗客検出センサ62により乗降板11,13上を通過する乗客を検出した後、踏段12に乗り入れる直前の乗客を検出する2次センサ64とを備える。
【0023】
乗客検出センサ62は、例えば、反射光検出式の乗客検出装置であって、それぞれ概略円筒形を有する受光素子62aと、投光素子62bとを備え、受光素子62aが投光素子62bの上方に位置するように両素子62a,62bが上下に配置されている。
【0024】
受光素子62a及び投光素子62bは、いずれも主枠16に固定された固定具63に取り付けられており、投光方向及び受光方向が乗客の進入方向に対して所定角度だけ内方に向け、かつ、水平方向に対して所定角度だけ上方に向けて位置決め固定される。
【0025】
これにより、左右一対の欄干18が有する収納空間Sに配設された一対の乗客検出センサ62,62は、図4に示すように、乗降口の上方から鉛直方向に見下ろしたときに互いの検出範囲の中心軸CL,CLが乗降板11,13上において交差し、かつ、図5に示すように水平方向に見たときに検出範囲の中心軸CL,CLが踏段12から離れるに従って乗降板11,13から高くなっている。
【0026】
そして、上記のように配置された乗客検出センサ62は、投光素子62bから光が発せられ、検出対象物(すなわち、乗客)に向けて投光された光が検出対象物により反射され、その反射した光を受光素子62aで検出することにより、乗客の有無を検出することができるようになっている。
【0027】
なお、本実施形態において乗客検出センサ62は、上記のように受光素子62aが投光素子62bの上方に配置されているが、受光素子62aを投光素子62bの下方に配置しても問題なく検出可能である。
【0028】
2次センサ64は、例えば、投光器64aと受光器64bとが対向配置された構造の透過型の光電センサが用いられる。この2次センサ64は、投光器64aから出射されて受光器64bに向かう光が、これら投光器64aと受光器64bとの間を通過する乗客によって遮られることを利用して、乗降板11,13上を通過して踏段12に搭乗する乗客を検出する。
【0029】
本実施形態に係る乗客コンベア10は、自動運転の制御を行う駆動制御装置を備えており、乗客検出センサ62により乗降口に進入する乗客が検出されない間は、運転停止、或いは低速運転による乗客待機の状態とされて、消費電力の低減が図られる。そして、乗客検出センサ62の少なくとも一方により乗客が検出されたときに、通常速度での運転が開始される。その後、2次センサ64により踏段12に乗り入れる直前の乗客が検出されると、駆動制御装置内部のタイマがカウントを開始し、乗客を一方の乗降口11a,13aから他方の乗降口13a,11aへと搬送するのに必要な時間に所定の余裕時間を加算した所定時間T1が経過すると、通常速度での運転が停止されて乗客待機状態に復帰する。
【0030】
以上のように、本実施形態における乗客コンベア10では、正面スカートカバー50に乗降板11,13に向けて突出し乗客検出装置60を収納する突出部52が形成されているため、スカート部22に乗客検出装置60を設けても乗客コンベア10の幅方向を狭幅化することができる。
【0031】
また、本実施形態における乗客コンベア10では、突出部52が正面スカートカバー50の端面から突出形成されているため、部品点数を削減でき製造コストを抑えることができる。しかも、突出部52は移動手摺20やインレット部材26が挿入される手摺孔24の下方に形成されており乗客の目に付きにくく、突出部52がスカート部22と一体化されていることと相俟って、乗客コンベアの美感を損なうことがない。
【0032】
また、乗客検出センサ62の検出範囲の中心軸を乗客の進入方向に対して所定角度だけ内方に向け、かつ、水平方向に対して所定角度だけ上方に向けて、乗客検出センサ62が配置されているため、乗客検出センサ62による検出対象領域として設定したい領域内では乗客を確実に検出できるようにしながら、検出対象領域外での誤検出を抑えることができる。
【0033】
更にまた、乗降口付近に乗客検出用の光電ポールを備える既設の乗客コンベアに対して、正面スカートカバーを本実施形態において示した突出部52が形成された正面スカートカバー50に交換することで、容易にポールレス型の自動運転方式乗客コンベアとすることができる。
【0034】
また、突出部52の端面52aの位置P2は、インレット部材26の検出位置P1より更に正面スカートカバー50の端面から離反する方向に乗降板11,13に向けて突出しているため、ショッピングカートなどの車輌や乗客の手荷物や足などが誤って欄干18の先端部下側に入り込んだとしても、インレット部材26が検出位置P1に移動する前に突出部52の端面52aに接触する。そのため、インレット安全スイッチ30が作動せず誤作動を防止することができる。
【符号の説明】
【0035】
10…乗客コンベア
11…乗降板
12…踏段
13…乗降板
16…主枠
18…欄干
20…移動手摺
22…スカート部
24…手摺孔
30…インレット安全スイッチ
50…正面スカートカバー
52…突出部
54…インレットガード部
60…乗客検出装置
62…乗客検出センサ
64…2次センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏段と、
前記踏段の両側に設けられた一対のスカート部と、
前記一対のスカート部から立設された欄干と、
前記欄干の外周に沿って移動する移動手摺と、
前記欄干の先端部に配置され、前記一対のスカート部における前記移動手摺が出入りする手摺孔を備えた正面スカートカバーと、
前記スカート部に配設され乗降板を通過する乗客を検出する1次センサとを備え、
正面スカートカバーには、前記手摺孔の下方において前記乗降板に向けて突出する突出部が形成され、
前記1次センサの検出範囲の中心軸を、乗客の進入方向に対して所定角度だけ内方に向け、かつ、水平方向に対して所定角度だけ上方に向けて、前記1次センサが前記突出部に収納されていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記手摺孔に挿入され、前記移動手摺の移動方向に沿って移動可能に設けられたインレット部材と、前記インレット部材の検出位置への移動を検出する安全スイッチとを備え、
前記正面スカートカバーに形成された突出部が、前記検出位置より前記乗降板に向けて突出することを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記移動手摺の外周の少なくとも一部を覆う前記インレットガードが、前記正面スカートカバーに一体成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記乗客検出装置は、乗降板を通過する乗客を検出する1次センサと、前記1次センサにより乗降板を通過する乗客を検出した後、前記踏段に乗り入れる直前の乗客を検出する2次センサとを備え、
前記1次センサ及び2次センサが前記突出部に収納されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−208832(P2010−208832A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58948(P2009−58948)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】