説明

乗客コンベヤの移動手摺駆動装置

【課題】踏段に連動して移動手摺を循環移動させるとともに部品点数を削減させることができる乗客コンベヤの移動手摺駆動装置を得る。
【解決手段】踏段チェーン13を循環移動させる踏段スプロケット14に設けられ、駆動機2の駆動により踏段スプロケット14とともに回転する駆動軸16と、駆動軸16に設けられ、駆動軸16とともに回転する移動手摺駆動シーブ17と、移動手摺駆動シーブ17に巻き掛けられ、移動手摺駆動シーブ17の回転により循環移動する移動手摺5とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、踏段チェーンと連動して移動手摺を循環移動させる乗客コンベヤの移動手摺駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動機と、踏段チェーンを循環移動させる踏段スプロケットと、駆動機の回転力を踏段スプロケットに伝達する第1の伝達チェーンと、踏段スプロケットと一体に形成された駆動スプロケットと、移動手摺が巻き掛けられた移動手摺駆動シーブと、駆動スプロケットの回転力を移動手摺駆動シーブに伝達する第2の伝達チェーンと、第2の伝達チェーンの弛みを抑制する弛み抑制スプロケットとを備えたエスカレータの移動手摺駆動装置が知られている。駆動機が駆動すると、踏段スプロケットと連動して移動手摺駆動シーブが回転する。これにより、踏段に連動して移動手摺が循環移動する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭49−19744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、駆動機の回転力を移動手摺駆動シーブに伝達するために、踏段スプロケットと一体に駆動スプロケットを形成し、この駆動スプロケットと移動手摺駆動シーブとに渡って伝達チェーンを設けなければならず、また、この伝達チェーンの弛みを抑制するために、弛み抑制スプロケットを設けなければならず、部品点数が多くなってしまうという問題点があった。
【0005】
この発明は、踏段に連動して移動手摺を循環移動させるとともに部品点数を削減させることができる乗客コンベヤの移動手摺駆動装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る乗客コンベヤの移動手摺駆動装置は、踏段チェーンを循環移動させる踏段スプロケットに設けられ、駆動機の駆動により前記踏段スプロケットとともに回転する駆動軸と、前記駆動軸に設けられ、前記駆動軸とともに回転する移動手摺駆動シーブと、前記移動手摺駆動シーブに巻き掛けられ、前記移動手摺駆動シーブの回転により循環移動する移動手摺とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る乗客コンベヤの移動手摺駆動装置によれば、踏段スプロケットおよび移動手摺駆動シーブが駆動軸に設けられ、駆動機の駆動により回転する駆動軸に連動して、踏段スプロケットおよび移動手摺駆動シーブが回転するので、踏段スプロケットに一体に駆動スプロケットを形成しこの駆動スプロケットと移動手摺駆動シーブとに渡って伝達チェーンを設ける必要がなく、さらに、この伝達チェーンの弛みを抑制するための弛み抑制スプロケットを設ける必要がなくなる。その結果、踏段に連動して移動手摺を循環移動させるとともに乗客コンベヤの移動手摺駆動装置の部品点数を削減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエスカレータの上階側部分を示す側面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った矢視断面図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係るエスカレータの上階側部分を示す側面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った矢視断面図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係るエスカレータの上階側部分を示す断面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の各実施の形態を図に基づいて説明するが、各図において、同一または相当の部材、部位については、同一符号を付して説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るエスカレータの上階側部分を示す側面図、図2は図1のII−II線に沿った矢視断面図である。図において、エスカレータ(乗客コンベヤ)は、主枠1と、主枠1の上階側部分に設けられた駆動機2と、主枠1に設けられた複数の踏段3と、踏段3を移動させる踏段駆動装置4と、主枠1の幅方向両端部に設けられた無端形状の移動手摺5と、移動手摺5を循環移動させる移動手摺駆動装置(乗客コンベヤの移動手摺駆動装置)6と、駆動機2の駆動により発生する回転力を移動手摺駆動装置6に伝達する回転力伝達装置7とを備えている。
【0011】
踏段3は、踏段本体8と、踏段3が往路側に位置するときに踏段本体8の前段側部分に配置される駆動ローラ9と、踏段3が往路側に位置するときに踏段本体8の後段側部分に配置される追従ローラ10とを有している。駆動ローラ9および追従ローラ10は、踏段本体8に回転自在に支持されている。
【0012】
踏段駆動装置4は、駆動ローラ9を案内する駆動レール11と、追従ローラ10を案内する追従レール12と、各踏段3を連結する無端形状の踏段チェーン13と、嵌合孔14aが形成され、踏段チェーン13が巻き掛けられた踏段スプロケット14とを有している。駆動レール11、追従レール12、踏段チェーン13および踏段スプロケット14のそれぞれは、一対ずつ設けられている。踏段スプロケット14が回転することにより、踏段チェーン13が循環移動する。踏段チェーン13が循環移動することにより、踏段3は、駆動レール11および追従レール12に案内されながら循環移動する。
【0013】
移動手摺駆動装置6は、主枠1に設けられた一対の軸受15と、軸受15を介して主枠1に回転自在に設けられた駆動軸16と、嵌合孔17aが形成され嵌合孔17aに駆動軸16が嵌合されることにより駆動軸16に固定された移動手摺駆動シーブ17と、移動手摺5を移動手摺駆動シーブ17に向かって押圧する押圧装置18と、移動手摺5を案内する複数のガイドローラ19とを有している。移動手摺駆動シーブ17および押圧装置18のそれぞれは、一対ずつ設けられている。移動手摺駆動シーブ17には、移動手摺5が巻き掛けられている。移動手摺駆動シーブ17は、移動手摺駆動シーブ17の軸線が駆動軸16の軸線の延長線と重なるように配置されている。
【0014】
踏段スプロケット14は、踏段スプロケット14の嵌合孔14aに駆動軸16が嵌合されることにより駆動軸16に固定されている。また、踏段スプロケット14は、踏段スプロケット14の軸線が駆動軸16の軸線の延長線と重なるように配置されている。踏段スプロケット14および移動手摺駆動シーブ17のそれぞれは、駆動軸16が回転することにより回転する。
【0015】
回転力伝達装置7は、嵌合孔20aが形成され嵌合孔20aに駆動軸16が嵌合されることにより駆動軸16に固定された駆動スプロケット20と、駆動機2の回転軸と駆動スプロケット20とに渡って巻き掛けられた伝達チェーン21とを有している。駆動スプロケット20は、駆動スプロケット20の軸線が駆動軸16の軸線の延長線と重なるように配置されている。駆動機2の駆動により発生する回転力は、伝達チェーン21を介して駆動スプロケット20に伝達される。これにより、駆動スプロケット20が回転する。その結果、駆動軸16が回転する。
【0016】
押圧装置18は、移動手摺駆動シーブ17に巻き掛けられている移動手摺5の部分に沿って並べて配置された複数のローラ22と、各ローラ22を支持する支持部材23とを有している。ローラ22は、移動手摺駆動シーブ17とローラ22とが移動手摺5を挟むように配置されている。支持部材23は、ローラ22を移動手摺5に押圧させるようになっている。
【0017】
次に、エスカレータの動作について説明する。駆動機2が駆動すると、駆動機2の駆動による回転力が回転力伝達装置7により駆動軸16に伝達される。これにより、駆動軸16が回転する。
【0018】
駆動軸16が回転することにより、移動手摺駆動シーブ17が回転する。これにより、移動手摺5が循環移動する。また、駆動軸16が回転することにより、踏段スプロケット14が回転する。これにより、踏段3が循環移動する。移動手摺駆動シーブ17および踏段スプロケット14のそれぞれが駆動軸16の回転により回転するので、移動手摺5は、踏段3に連動して循環移動する。
【0019】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係る移動手摺駆動装置6によれば、踏段スプロケット14および移動手摺駆動シーブ17が駆動軸16に設けられ、駆動機2の駆動により回転する駆動軸16に連動して、踏段スプロケット14および移動手摺駆動シーブ17が回転するので、従来装置と比較して、踏段スプロケット14に一体に駆動スプロケットを形成しこの駆動スプロケットと移動手摺駆動シーブ17とに渡って伝達チェーンを設ける必要がなく、さらに、この伝達チェーンの弛みを抑制するための弛み抑制スプロケットを設ける必要がなくなる。その結果、踏段3に連動して移動手摺5を循環移動させるとともに移動手摺駆動装置6の部品点数を削減させることができる。
【0020】
また、踏段スプロケット14と移動手摺駆動シーブ17との間には、従来装置と比較して、踏段スプロケット14から移動手摺駆動シーブ17に回転力を伝達するための伝達チェーンが不要となるので、伝達チェーンを用いた場合と比較して、伝達チェーンの経年的な伸びの発生による定期的な保守作業を削減することができる。
【0021】
また、踏段スプロケット14および移動手摺駆動シーブ17が駆動軸16により連結されているので、踏段スプロケット14および移動手摺駆動シーブ17が伝達チェーンにより連結され場合と比較して、移動手摺駆動シーブ17の回転むらの発生を防止することができる。
【0022】
また、移動手摺駆動装置6は、移動手摺5を移動手摺駆動シーブ17に向かって押圧する押圧装置18を備えているので、移動手摺5と移動手摺駆動シーブ17との間に発生する摩擦力を増加させることができる。これにより、移動手摺駆動シーブ17に対する移動手摺5の滑りの発生を抑制することができる。
【0023】
また、押圧装置18は、移動手摺駆動シーブ17に巻き掛けられている移動手摺5の部分に沿って配置されたローラ22と、ローラ22を支持しローラ22を移動手摺5に押圧させる支持部材23とを有しているので、簡単な構成で、移動手摺5と移動手摺駆動シーブ17との間に発生する摩擦力を増加させることができる。
【0024】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2に係るエスカレータの上階側部分を示す側面図、図4は図3のIV−IV線に沿った矢視断面図である。図において、押圧装置18は、移動手摺駆動シーブ17に巻き掛けられている移動手摺5の部分に沿って配置された部分を含む無端形状のベルト24と、ベルト24が巻き掛けられた複数のプーリ25とを有している。ベルト24は、移動手摺駆動シーブ17とベルト24とが移動手摺5を挟むように配置されている。プーリ25は、ベルト24に張力を発生させて、ベルト24を移動手摺5に押圧させるようになっている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0025】
以上説明したように、この発明の実施の形態2に係る移動手摺駆動装置6によれば、押圧装置18は、移動手摺駆動シーブ17に巻き掛けられている移動手摺5の部分に沿って配置された部分を含む無端形状のベルト24と、ベルト24が巻き掛けられベルト24に張力を発生させてベルト24を移動手摺5に押圧させる複数のプーリ25とを有しているので、実施の形態1に記載の押圧装置18と比較して、押圧装置18が大きな面積で移動手摺5を押圧することができる。これにより、移動手摺5に加えられる圧力を低減させることができる。その結果、押圧装置18が移動手摺5を押圧することによる移動手摺5の損傷の発生を抑制することができる。
【0026】
実施の形態3.
図5はこの発明の実施の形態3に係るエスカレータの上階側部分を示す断面図、図6は図5のIV−IV線に沿った矢視断面図である。図において、エスカレータは、実施の形態1に記載の回転力伝達装置7を備えておらず、駆動軸16は、駆動軸16の軸線が駆動機2の回転軸2aの延長線と重なるように配置されている。駆動軸16は、駆動機2の回転軸2aに接続されている。これにより、駆動軸16は、駆動機2の回転軸2aと一体となって回転する。駆動機2は、踏段3の移動経路の内の踏段3が反転される反転部分の内側に配置されている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。なお、押圧装置18は、実施の形態2に記載の押圧装置18としてもよい。
【0027】
以上説明したように、この発明の実施の形態3に係る移動手摺駆動装置6によれば、駆動軸16は、駆動軸16の軸線が駆動機2の回転軸2aの軸線の延長線と重なるように配置され、回転軸2aと一体となって回転するので、実施の形態1と比較して、回転力伝達装置7を削除することができる。これにより、部品点数をさらに削減することができ、エスカレータの一層の低コスト化を図ることができる。
【0028】
なお、各上記実施の形態では、押圧装置18を有する移動手摺駆動装置6について説明したが、移動手摺5に十分な張力が与えられ、移動手摺5と移動手摺駆動シーブ17との間に十分な摩擦力が発生する移動手摺駆動装置6であれば、押圧装置18を有さない構成の移動手摺駆動装置6であってもよい。
【0029】
また、各上記実施の形態では、乗客コンベヤとして、エスカレータを例に説明したが、例えば、動く歩道であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 主枠、2 駆動機、2a 回転軸、3 踏段、4 踏段駆動装置、5 移動手摺、6 移動手摺駆動装置(乗客コンベヤの移動手摺駆動装置)、7 回転力伝達装置、8 踏段本体、9 駆動ローラ、10 追従ローラ、11 駆動レール、12 追従レール、13 踏段チェーン、14 踏段スプロケット、14a 嵌合孔、15 軸受、16 駆動軸、17 移動手摺駆動シーブ、17a 嵌合孔、18 押圧装置、19 ガイドローラ、20 駆動スプロケット、20a 嵌合孔、21 伝達チェーン、22 ローラ、23 支持部材、24 ベルト、25 プーリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏段チェーンを循環移動させる踏段スプロケットに設けられ、駆動機の駆動により前記踏段スプロケットとともに回転する駆動軸と、
前記駆動軸に設けられ、前記駆動軸とともに回転する移動手摺駆動シーブと、
前記移動手摺駆動シーブに巻き掛けられ、前記移動手摺駆動シーブの回転により循環移動する移動手摺とを備えたことを特徴とする乗客コンベヤの移動手摺駆動装置。
【請求項2】
前記駆動軸は、前記駆動軸の軸線が前記駆動機の回転軸の軸線の延長線と重なるように配置され、前記回転軸と一体となって回転することを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベヤの移動手摺駆動装置。
【請求項3】
前記移動手摺を前記移動手摺駆動シーブに向かって押圧する押圧装置をさらに備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗客コンベヤの移動手摺駆動装置。
【請求項4】
前記押圧装置は、前記移動手摺駆動シーブに巻き掛けられている前記移動手摺の部分に沿って配置された部分を含む無端形状のベルトと、前記ベルトが巻き掛けられ前記ベルトに張力を発生させて前記ベルトを前記移動手摺に押圧させる複数のプーリとを有していることを特徴とする請求項3に記載の乗客コンベヤの移動手摺駆動装置。
【請求項5】
前記押圧装置は、前記移動手摺駆動シーブに巻き掛けられている前記移動手摺の部分に沿って配置されたローラと、前記ローラを支持し前記ローラを前記移動手摺に押圧させる支持部材とを有していることを特徴とする請求項3に記載の乗客コンベヤの移動手摺駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−121668(P2012−121668A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272945(P2010−272945)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】