乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置
【課題】乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量を容易、かつ、正確に測定できる装置及び方法を得る。
【解決手段】踏段チェーン18の所定部位13を検出する一対のセンサ34、35を進行方向に向けて予め定められた既知の離隔距離X1を隔てて固定部に取り付け、このセンサ34、35のいずれか一方が踏段チェーン18の一の所定部位13を検出してから他のセンサが他の所定部位13を検出するまでの動作時間差Δtnから求められた距離差X3nをセンサ34、35の離隔距離X1に加減算して所定部位間距離Xsnを演算し、この所定部位間距離Xsnを予め設定された基準値Dsと比較することにより踏段チェーン18の伸び量δn測定するものである。
【解決手段】踏段チェーン18の所定部位13を検出する一対のセンサ34、35を進行方向に向けて予め定められた既知の離隔距離X1を隔てて固定部に取り付け、このセンサ34、35のいずれか一方が踏段チェーン18の一の所定部位13を検出してから他のセンサが他の所定部位13を検出するまでの動作時間差Δtnから求められた距離差X3nをセンサ34、35の離隔距離X1に加減算して所定部位間距離Xsnを演算し、この所定部位間距離Xsnを予め設定された基準値Dsと比較することにより踏段チェーン18の伸び量δn測定するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量を測定する装置及びその測定方法に係る。
【背景技術】
【0002】
図16から図19は、乗客コンベヤとしてエスカレータを例示する。
図16は全体構成を示し、階間にはトラス52が跨設され、傾斜路頂部の機械室には駆動機53が収納されている。この駆動機53は上部スプロケット54uを駆動し、上部スプロケット54uと下部スプロケット54dには無端状の踏段チェーン18が巻き掛けられ、下部スプロケット54dに装着された緊張具56によって常時緊張状態になっている。
【0003】
また、踏段チェーン18には踏段11が縦列に係止され、往路側で一方の乗降口から他方の乗降口へ乗客を搬送し、他方の乗降口で反転して復路を形成して循環する。
更に、踏段11の両側には、狭隙を隔ててスカートガード19が立設され、その上部には傾斜路に沿って所定の高さで内側板20が立設されている。この内側板20には手摺57が取り付けられて上下の乗降口で下方に反転して循環する。機械室にはエスカレータの運転を制御する制御盤58が設置されている。
【0004】
図17は踏段11と踏段チェーン18の係合部を示し、踏段11には左右に一対設けられた三角形状のブラケット12に踏板11aとライザ11bが取り付けられている。踏板11aの上階側端部は櫛状をなし、隣接する踏段11のライザ11bと噛合している。
【0005】
ブラケット12の前部には踏段軸13が貫通し、更にこの踏段軸13は踏段チェーン18と回動自在に係合して貫通し、両端に前輪14が取り付けられている。ブラケット12の後部には後輪15が取り付けられている。
また、踏段チェーン18の外側にはガイドレール16が敷設されていて前輪14は踏段チェーン18の移動に伴ってガイドレール16に沿って転動し、後輪15はガイドレール17に沿って転動する。
【0006】
図18は、踏段チェーン18が伸びを起こしていないときの上部スプロケット54uに巻き掛けられた状態を示し、踏段チェーン18は、チェーンピッチPrで上部スプロケット54uと噛み合っており、その時のピッチ円半径をr1とし、回転数をRvとすると、踏段チェーン18の速度V0は、V0=2π・r1・Rvとなる。
また、この状態では図17に示した隣接する踏段11の踏板11aとライザ11bは噛み合っていて隙間Sgは発生していない。
【0007】
図19は、踏段チェーン18が伸びを起こしたときの上部スプロケット54uに巻き掛けられた状態を示す。踏段チェーン18が伸びてチェーンピッチがPr′になると噛合いが浅くなり、ピン18aが上部スプロケット54uの歯底から浮いた状態になる。即ち、踏段チェーン18はピッチ円半径r1に対してΔrだけ外側で噛合し、踏段チェーン18の速度V0′は、V0′=2π・(r1+Δr)・Rvとなる。
【0008】
踏段チェーン18は、緊張具56によって常時緊張されているので、踏段チェーン18が伸びると、図17に示した隣接する踏段11の踏板11aとライザ11bの噛合いが浅くなる。極端な場合、噛合いが外れて隙間Sgが生ずるようになるが、事前に安全装置が作動してエスカレータを停止させるようになっている。
【0009】
エスカレータは上記のとおり構成されているので、踏段チェーン18の伸びは、保守時の重要な点検事項になっている。
ところで、踏段チェーン18の伸びは、全周に亙って一律ではなく、局部的であったり、左右の踏段チェーン18で差が生じることもある。
このため、最終的に全体を取り替える前に、ある程度磨耗が認められた時点で局部的な伸びはないか、また、踏段チェーン18が左右でアンバランスに伸びていないか等をチェックする。
その結果によって踏段チェーン18のリンクを局部的に組み替えたり、左右の踏段チェーン18を掛け代えたりする対策が実施されてきた。
【0010】
ところで、踏段チェーン18のチェックは、従来、左右の踏段チェーン18の全周に亙ってチェーンピッチPrを測定することによって行っていた。具体的には下記の方法で行われていた。
(1)全踏段11を取り外す。
(2)踏段軸13間のピッチを測定するための大形ノギスを用意する。
(3)作業者がトラス52内に入り、又は踏段軸13に跨って、ノギスで踏段軸13間のピッチを、左右の踏段チェーン18の全周に亙って1ヶ所ずつ測定する。
(4)上記測定結果に基き、左右の踏段チェーン18の掛け代えの要否や、又はリンクの組み替えを検討し、要すればその検討結果に基いて処置をする。
上記はエスカレータの場合であるが、移動歩道についても同様である。
【0011】
また、特開平11−194024号公報には、図18に示したとおり、センサ60でチェーンローラの通過をパルス信号でとらえ、そのパルス幅又はパルス周期でチェーンの伸びを検出するものが開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定は、上記のとおり行われていたので、下記の問題点があった。
作業者が踏段軸13の全箇所に亙って手作業で軸間ピッチを測定しなければならず、面倒で作業性が悪い。このため、集中力も途切れ勝ちで、測定誤差が生じ易い、という問題があった。
また、踏段11を取り外さなければならず時間がかかり、長時間利用者に不便を強いる、という問題もあった。
【0013】
更に、特開平11−194024号公報に開示されたものでは、踏段チェーン18の伸び量を正確に測定し難い、と思料される。
即ち、図19に示したとおり、踏段チェーン18が伸びてチェーンピッチがPrからPr′に増大すると、踏段チェーン18と上部スプロケット54uとの噛合いが浅くなる。
一方、上部スプロケット54uの回転数は略一定であるから、踏段チェーン18の速度がV0からV0′に上昇することになる。
【0014】
このため、チェーンローラの通過をパルス信号でとらえ、そのパルス周期を検出しても、パルス周期は伸び量に比例しないため、踏段チェーン18の伸び量を検出することはできない、と思料される。
また、踏段チェーン18の伸びは、その構成部品である、ピン、ローラ及びプレート全体の磨耗によるものであるから、パルス幅を検出しても、単にローラの幅を検出したに過ぎず、踏段チェーン18の伸びを測定したことにはならない、と思料される。
【0015】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量を容易、かつ、正確に測定できる装置及び方法を提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、踏段チェーンの所定部位を検出する一対のセンサを進行方向に向けて予め定められた既知の離隔距離を隔てて固定部に取り付け、このセンサのいずれか一方が踏段チェーンの一の所定部位を検出してから他のセンサが他の所定部位を検出するまでの動作時間差から求められた距離差をセンサの離隔距離に加減算して所定部位間距離を演算し、この所定部位間距離を予め設定された基準値と比較することにより踏段チェーンの伸び量を測定するものである。
【0017】
請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、踏段チェーンの所定部位を検出する一対のセンサを進行方向に向けて任意に設定された離隔距離を隔てて固定部に取り付け、予め定められた既知の長さのテンプレートを長手を進行方向に向けて踏段チェーンに係止して移動させ、踏段チェーンを所定の速度で移動させたときに、いずれか一方のセンサがテンプレートの一端を検出してから他のセンサがテンプレートの他端を検出するまでの動作時間差から求められた距離差をテンプレートの長さに加減算してセンサの離隔距離を演算し、センサのいずれかが踏段チェーンの一の所定部位を検出してから他のセンサが他の所定部位を検出するまでの動作時間差から求められた距離差をセンサの離隔距離に加減算して所定部位間距離を演算し、この所定部位間距離を予め設定された基準値と比較することにより踏段チェーンの伸び量を測定するものである。
【0018】
請求項3に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、踏段チェーンにマーカを取り付け、固定部にマーカセンサを取り付け、このマーカセンサがマーカを検出すると始動して所定部位間距離が演算される毎に演算度数を計数し、この演算度数で所定部位間距離を特定するようにしたものである。
【0019】
請求項4に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、踏段チェーンの速度を、この踏段チェーンが巻き掛けられたスプロケットのピッチ円と回転数とから演算するようにしたものである。
【0020】
請求項5に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、踏段チェーンの速度を、一のセンサでテンプレートの通過時間を検出し、この通過時間と上記テンプレートの長さから演算するようにしたものである。
【0021】
請求項6に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、センサは、踏段軸を所定部位として検出し、かつ、隣接する踏段軸との軸間距離よりも小さい離隔距離で取り付けられるものとし、踏段チェーンの進行方向前方のセンサが一の踏段軸を検出してから進行方向後方のセンサが隣接する他の踏段軸を検出するまでの動作時間差から求められる距離差をセンサの離隔距離に加算して所定部位間距離を演算するようにしたものである。
【0022】
請求項7に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、センサは、踏段軸を所定部位として検出し、かつ、隣接する踏段軸との軸間距離よりも大きい離隔距離で取り付けられたものとし、踏段チェーンの進行方向後方のセンサが一の踏段軸を検出してから進行方向前方のセンサが他の踏段軸を検出するまでの動作時間差から求められた距離差をセンサの離隔距離から減算して所定部位間距離を演算するようにしたものである。
【0023】
請求項8に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、テンプレートは、進行方向に向けて前方と後方に2個の被検出片を具備し、両被検出片の前縁間又は後縁間が予め定められた既知の長さに設定されたものである。
【0024】
請求項9に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定方法は、踏段チェーンの所定部位を検出する一対のセンサを踏段チェーンの進行方向に向けて離隔して固定部に取り付けると共に、予め定められた長さを有するテンプレートを踏段チェーンに係止した後、踏段チェーンを所定の速度で移動させて一のセンサがテンプレートの一端を検出してから他のセンサがテンプレートの他端を検出するまでの動作時間差から距離差を求め、この距離差をテンプレートの長さに加減算してセンサの離隔距離を演算し、一のセンサが一の所定部位を検出してから他のセンサが他の所定部位を検出するまでの動作時間差から距離差を求め、この距離差をセンサの離隔距離に加減算して所定部位間距離を演算し、この演算された所定部位間と予め設定された基準値とから踏段チェーンの所定部位間の伸び量を演算するようにしたものである。
【発明の効果】
【0025】
この発明は上記のとおり構成されているので、以下の効果を奏する。
請求項1に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、踏段チェーンの所定部位を検出する一対のセンサを進行方向に向けて予め定められた既知の離隔距離を隔てて固定部に取り付け、このセンサのいずれか一方が踏段チェーンの一の所定部位を検出してから他のセンサが他の所定部位を検出するまでの動作時間差から求められた距離差をセンサの離隔距離に加減算して所定部位間距離を演算し、この所定部位間距離を予め設定された基準値と比較することにより踏段チェーンの伸び量を測定するものである。
このため、仮に速度に誤差が有ったとしてもセンサの離隔距離と所定部位間距離の距離差が速度誤差の影響を受けるに過ぎず、離隔距離を基準値に近い値にすることによって、所定部位間距離を正確に測定することができる、という効果を奏する。
【0026】
請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、踏段チェーンの所定部位を検出する一対のセンサを進行方向に向けて任意に設定された離隔距離を隔てて固定部に取り付け、予め定められた既知の長さを有するテンプレートを長手を進行方向に向けて踏段チェーンに係止し、踏段チェーンを所定の速度で移動させたときに、いずれか一方のセンサがテンプレートの一端を検出してから他のセンサがテンプレートの他端を検出するまでの動作時間差から求められた距離差をテンプレートの長さに加減算してセンサの離隔距離を演算し、センサのいずれかが踏段チェーンの一の所定部位を検出してから他のセンサが他の所定部位を検出するまでの動作時間差から求められた距離差をセンサの離隔距離に加減算して所定部位間距離を演算し、この所定部位間距離を予め設定された基準値と比較することにより踏段チェーンの伸び量を測定するものである。
このため、センサを任意に取り付け、離隔距離が未知であっても伸び量δnを測定することができる、という効果を奏する。
【0027】
請求項3に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、踏段チェーンにマーカを取り付け、固定部にマーカセンサを取り付け、このマーカセンサがマーカを検出すると始動して所定部位間距離が演算される毎に演算度数を計数し、この演算度数で所定部位間距離を特定するようにしたものである。
このため、所定部位間距離の現実の位置を特定することができ、踏段チェーンのリンクを組み替える必要が生じた場合の措置を迅速に実施できる、という効果を奏する。
【0028】
請求項4に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、踏段チェーンの速度を、この踏段チェーンが巻き掛けられたスプロケットのピッチ円と回転数とから演算するようにしたものである。
このため、速度を容易に算出することができる、という効果を奏する。
【0029】
請求項5に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、踏段チェーンの速度を、一のセンサで既知の長さのテンプレートを通過するのに要する時間を検出し、この通過時間と上記テンプレートの長さから演算するようにしたものである。
このため、実測によって得られた現実の速度に基いて正確な伸び量を測定できる、という効果を奏する。
【0030】
請求項6に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、センサは、踏段軸を所定部位として検出し、かつ、隣接する踏段軸との軸間距離よりも小さい離隔距離で取り付けられるものとし、踏段チェーンの進行方向前方のセンサが一の踏段軸を検出してから進行方向後方のセンサが隣接する他の踏段軸を検出するまでの動作時間差から求められる距離差をセンサの離隔距離に加算して所定部位間距離を演算するようにしたものである。
このため、踏段チェーンの伸びによる弊害が生じるのは踏段間の隙間であり、踏段チェーンの伸びを軸間距離の伸びとして得ることにより、上記弊害の有無を直接把握することができ、踏段チェーンのリンクを組替えの要否判断が容易である、という効果を奏する。
【0031】
請求項7に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、センサは、踏段軸を所定部位として検出し、かつ、隣接する踏段軸との軸間距離よりも大きい離隔距離で取り付けられるものとし、踏段チェーンの進行方向後方のセンサが一の踏段軸を検出してから進行方向前方のセンサが他の踏段軸を検出するまでの動作時間差から求められた距離差をセンサの離隔距離から減算して所定部位間距離を演算するようにしたものである。
このものにあっても、請求項6と同様の効果を奏する。
【0032】
請求項8に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、テンプレートは、進行方向に向けて前方と後方に2個の被検出片を具備し、両被検出片の前縁間又は後縁間が予め定められた既知の長さに設定されたものである。
このため、一のセンサが前方の被検出片を検出したときを有意とし、同様に他のセンサが後方の被検出片板を検出したときを有意とすることができ、有意状態を揃えることにより制御回路の統一化が可能となる、という効果を奏する。
【0033】
請求項9に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定方法は、踏段チェーンの所定部位を検出する一対のセンサを踏段チェーンの進行方向に向けて離隔して固定部に取り付けると共に、予め定められた長さを有するテンプレートを踏段チェーンに係止した後、踏段チェーンを所定の速度で移動させて一のセンサがテンプレートの一端を検出してから他のセンサがテンプレートの他端を検出するまでの動作時間差から距離差を求め、この距離差をテンプレートの長さに加減算してセンサの離隔距離を演算し、一のセンサが一の所定部位を検出してから他のセンサが他の所定部位を検出するまでの動作時間差から距離差を求め、この距離差をセンサの離隔距離に加減算して所定部位間距離を演算し、この演算された所定部位間と予め設定された基準値とから踏段チェーンの所定部位間の伸び量を演算するようにしたものである。
このため、センサの離隔距離が未知であっても伸び量を測定することができ、速度に誤差が有ったとしてもセンサの離隔距離と所定部位間距離の距離差が速度誤差の影響を受けるに過ぎず、離隔距離を基準値に近い値にすることによって、所定部位間距離を正確に測定することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
実施の形態1.
図1から図8は実施の形態1を示し、一対のセンサの離隔距離X1が知得されている場合の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置に係るものである。
なお、ここでは踏段軸13を所定部位として軸間距離を所定部位間距離Xsnとし、センサの離隔距離X1は踏段軸13の軸間距離Xsnよりも小さく、かつ、軸間距離Xsnに近い距離とする。
【0035】
図1は、この発明の実施の形態1の全体構成を示すブロック図で、図において11は踏段、18は踏段11を駆動する踏段チェーン、13は踏段11の両側に延設され踏段チェーン18を貫通して取り付けられた所定部位としての踏段軸、34及び35は踏段チェーン18の進行方向に向けて予め定められ知得された離隔距離X1を隔てて固定部に取り付けられた一対の第1センサ及び第2センサ、36は所定部位間を特定するために一の踏段軸13に目印として取り付けられた、反射効率の高い材質で構成されたマーカ37を検出するマーカセンサで、マーカ37の付されていない踏段軸13には作動しない。
【0036】
1はマーカセンサ36がマーカ37を検出すると始動して所定部位間距離Xsnが演算される毎に演算度数nを計数して所定部位間距離を特定する部位間距離特定手段で、ここではマーカセンサ36がマーカ37を検出した後、第1センサ34が踏段軸13を検出する毎に演算度数nをインクリメントさせるカウンタからなるもので、演算度数nと軸間距離Xsnとの組合せにより、マーカ37の付された踏段軸13を始点として軸間距離Xsnを特定するものである。2は第1センサ34が一の踏段軸13を検出してから第2センサ35が隣接する後続の踏段軸13を検出するまでの動作時間差Δtnを検出する動作時間差検出手段である。
【0037】
3は知得されている一対のセンサの離隔距離X1を具体的な数値として設定するセンサ離隔距離設定手段である。4は踏段チェーン18の速度V0を具体的な数値として設定する速度設定手段である。5は動作時間差Δtと踏段チェーン18の速度V0から求められる距離差X3nを離隔距離X1に加算して踏段軸13の軸間距離である所定部位間距離Xsnを演算する部位間距離演算手段である。6は所定部位間に対して予め定められた基準値Dsを設定する基準値設定手段である。7は演算された所定部位間距離Xsnと基準値Dsとの差値から踏段チェーン18の伸び量δnを演算する伸び量演算手段である。
【0038】
図2はエスカレータの内部組立とシステム構成を示し、12は踏段11の左右に一対設けられた三角形状のブラケット、13はブラケット12の前部を貫通して両側に延設された踏段軸、14は踏段軸13の両端に取り付けられた前輪、15はブラケット12の後部に取り付けられた後輪、16は前輪14が案内されて転動するガイドレール、17は後輪15が案内されて転動するガイドレールである。
【0039】
18は踏段軸13が貫通して回動自在に係合する無端状の踏段チェーンで、スプロケットに巻き掛けられて循環して踏段11を駆動する。19は踏段11の両側に狭隙を隔てて立設されたスカートガード、20はスカートガード19の上部に傾斜路に沿って所定の高さで立設された内側板、21はスカートガード19と内側板20との継ぎ目を被う目地である。
【0040】
30は踏段軸13を検出するセンサが取り付けられたセンサ組立で、詳細を図3及び図4に示したとおり、ガイドレール17に係止された基板31に一対の第1センサ34及び第2センサ35と、マーカ37を検出するマーカセンサ36が取り付けられている。
【0041】
41はCPU、42はプログラムが格納されたROM、43は一時的なデータが格納されるRAM、44は第1センサ34及び第2センサ35、並びにマーカセンサ36による検出信号が入力される入力装置、45はキーボードで、第1センサ34及び第2センサ35の離隔距離X1、踏段チェーン18の速度V0及び踏段軸13の軸間距離に対する基準値Dsが入力される。46は測定結果が格納される測定データメモリである。
【0042】
図3及び図4は、センサ組立30の詳細を示し、センサ組立30には基板31に一対の第1センサ34及び第2センサ35が離隔距離X1を隔てて取り付けられており、中間にはマーカセンサ36が取り付けられている。基板31の頂部には一対の吊り手32が取り付けられており、クリップ33でガイドレール17を跨嵌して係止するようになっている。
第1センサ34及び第2センサ35は、それぞれビーム34a及び35aを照射し、踏段軸13からの反射ビームによって作動する。
【0043】
マーカ37は、一の踏段軸13に取り付けられたもので、測定された軸間距離Xsnと踏段軸13とを対応させる目印として機能する。即ち、マーカ37は高い反射率を有し、マーカセンサ36はビーム36aを照射したときに、通常の踏段軸13からの反射では作動せず、マーカ37による強い反射ビーム36aによってのみ作動するように設定されている。
なお、センサ組立30をガイドレール17に係止するには、図4に示したとおり、スカートガード19をブラケット22から外し、要すれば更に踏段11を3〜4個取り外した隙間からセンサ組立30を内部に挿入し、クリップ33で係止する。
【0044】
図5から図7に従って、動作の概要を述べる。
図5はマーカセンサ36がマーカ37を検出した状態を示す。即ち、踏段チェーン18が上昇方向へ移動してマーカセンサ36がマーカ37に対向すると、図7の時刻t01でマーカセンサ36がマーカ37からの反射ビーム36aで立ち上がり、マーカ37がビーム36aから外れると立ち下がる。
【0045】
踏段チェーン18が更に上昇方向へ移動すると、図6(a)に示したとおり、第1センサ34が踏段軸13と対向し、図7の時刻t11で反射ビーム34aを検出して立ち上がり、踏段軸13がビーム34aから外れると立ち下がる。
【0046】
踏段チェーン18が更に上昇方向へ移動すると、図6(b)に示したとおり、第2センサ35が隣接する後続の踏段軸13と対向し、図7の時刻t21で反射ビーム35aを検出して立ち上がり、踏段軸13がビーム35aから外れると立ち下がる。
【0047】
時刻t11から時刻t21までの動作時間差Δt1は、離隔距離X1と踏段軸13の軸間距離である所定部位間距離Xs1との距離差X3n(n=1)に基くものである。従って、動作時間差Δt1と踏段チェーン18の速度V0から距離X3nが求められ、更に、距離X3nと離隔距離X1とを加算することによって所定部位間距離Xs1を求めることができる。
【0048】
次に、動作を図8の流れ図に従って説明する。
手順S11でエスカレータ制御盤58からの始動信号が発せられると、手順S12でマーカセンサ36が作動するのを待つ。図5に示したとおり、マーカセンサ36が作動すると手順S13で演算度数nを「1」にセットする。即ち、以下の手順でマーカ37が付された踏段軸13と隣接する後続の踏段軸13との軸間距離Xs1が測定されることを示す。
【0049】
手順S14で第1センサ34が作動すると、手順S15で、その作動時間t11をRAM43に記録する。手順S16で第2センサ35が作動すると、手順S17で、その作動時間t21をRAM43に記録する。手順S18で作動時間t21と作動時間t11の動作時間差Δt1を演算する。手順S19で動作時間差Δt1と踏段チェーン18の速度V0を乗算して、軸間距離Xs1と離隔距離X1との距離差X31を演算し、この距離差X31を既知の離隔距離X1に加算して軸間距離Xs1を算出し、RAM43に記録する。手順S20で算出された軸間距離Xs1と所定部位間に対して予め定められた基準値Dsとの差値を伸び量δ1としてRAM43に記録する。
【0050】
手順S21と手順S22でマーカセンサ36が再作動したか、又は第1センサ34が作動するまで待つ。第1センサ34が作動した場合は手順S23で演算度数nをインクリメントして「2」に設定して手順S15へ移る。以下、マーカ37が取り付けられた踏段軸13から起算して第2番目の軸間距離Xs2と、その軸間距離Xs2における踏段チェーン18の伸び量δ2の演算がなされる。
以下同様に、第n番目の軸間距離Xsnと、その軸間距離Xsnにおける踏段チェーン18の伸び量δnの演算がなされる。
【0051】
手順S21でマーカセンサ36が再作動すると手順S24に移り、測定結果として、演算度数n毎に軸間距離Xsn及び伸び量δnと、参考データとして速度V0と離隔距離X1を出力し、手順S25でエスカレータを停止させる。
続いて反対側の踏段チェーン18についても同様にして測定する。
左右の踏段チェーン18について測定が終了すると、測定結果に基いて検討がなされ、踏段チェーン18のリンクの組替えや、左右の踏段チェーン18を入れ替える等の措置がなされる。
【0052】
上記実施の形態1によれば、一対のセンサを踏段チェーン18の進行方向に向けて予め知得された離隔距離X1を隔てて固定部に取り付け、第1センサ34が一の踏段軸13を検出してから第2センサ35が他の踏段軸13を検出するまでの動作時間差Δtnと踏段チェーンの速度V0から求められる距離差X3nを第1センサ34及び第2センサ35の離隔距離X1に加算して所定部位間距離である軸間距離Xsnを演算するようにしたので、仮に速度V0に誤差が有ったとしても距離差X3nが速度誤差の影響を受けるに過ぎない。このため、離隔距離X1を基準値Dsに近い値にしたことによって、軸間距離Xsnを誤差を減縮して測定することができる。
【0053】
また、スカートガード19を外すか、更に踏段11を3〜4個取り外し、後輪15用のガイドレール17に吊り手32を跨嵌させればセンサ組立30を取り付けられるのでセンサ組立30の取付けが容易である。
更に、測定後の原状復帰も容易であるため、利用客に与える不便さも軽減できる。
【0054】
更にまた、一の踏段軸13に目印としてマーカ37を取り付け、軸間距離Xsnが演算される毎に演算度数nを計数するようにしたので、マーカ37の付された踏段軸13を始点として軸間距離Xsnの位置を特定することができる。このため、踏段チェーン18のリンクを組み替える必要が生じた場合、対象となる踏段チェーン18の部位を容易に特定することができ、測定後の措置を迅速に実施できる。
更にまた、踏段11を付けた状態で測定するので、略稼動状態で測定することができる。
【0055】
なお、上記実施の形態1では、センサの離隔距離X1は踏段軸13の軸間距離Xsnよりも小さい距離としたが、逆に大きい距離であってもよい。大きい場合は第2センサ35が作動してから第1センサ34が作動し、両者の動作時間差Δtnから求められる距離差X3nを離隔距離X1から減算すればよい。
また、踏段軸13の軸間距離を所定部位間距離Xsnとしたが、これに限られるものではなく、踏段チェーン18のチェーンピッチであってもよい。
【0056】
実施の形態2.
図9から図15は、この発明の実施の形態2を示し、第1センサ34及び第2センサ35の離隔距離X1、及び踏段チェーン18の速度V0がいずれも未知の場合の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置に係るものである。
なお、システム構成は図2と同じであり、説明を省略する。
また、実施の形態1と同様、踏段軸13を所定部位として軸間距離を所定部位間距離Xsnとし、第1センサ34及び第2センサ35の離隔距離X1は踏段軸13の軸間距離Xsnよりも小さく、かつ、軸間距離Xsnに近い距離とする。
更に図1から図8と同符号は同一部分を示し、説明を省く。
【0057】
図9は、この発明の実施の形態2の全体構成を示すブロック図である。図中、40は予め定められた既知の長さXtを有するテンプレートで、詳細を図10及び図11に示したとおり、隣接する踏段軸13に着脱自在に取り付けられて第1センサ34及び第2センサ35を作動させるものである。
【0058】
8はテンプレート40を踏段軸13に取り付けてエスカレータを運転したときの第1センサ34及び第2センサ35の動作時間差から、離隔距離X1を演算する手段で、踏段チェーン18を既知の速度V0で移動させたときに第1センサ34がテンプレート40の一端を検出してから第2センサ35がテンプレート40の他端を検出するまでの動作時間差Δtを演算する動作時間差検出手段81と、テンプレート40の長さXtが記録されたテンプレート長さ設定手段82と、速度V0と動作時間差Δtの乗算から長さXtと離隔距離X1との距離差X2を求め、この距離差X2を長さXtから減算して離隔距離X1を求めるセンサ離隔距離演算手段83とからなる。
【0059】
また、速度設定手段4は、この実施の形態2では踏段チェーン18の速度V0を、テンプレート40の長さXtと、この長さXtを第1センサ34又は第2センサ35が検出するのに要する時間から演算するものとする。
なお、部位間距離特定手段1、動作時間差検出手段2、部位間距離演算手段5、基準値設定手段6及び伸び量演算手段7は、実施の形態1と同様であり説明を省略する。
【0060】
図10は、テンプレート40の詳細を示し、41は方形板からなる前板、42は同じく後板で、前板41との間は中空である。43は前板41と後板42とを連結する連結板、44は前板41の上面に取り付けられて踏段軸13を把持するクリップ、45は同じく後板42の上面に取り付けられたクリップである。
ここで、前板41の反後板42側の縁端から後板42の前板41側の縁端まで、及び前板41の後板42側の縁端から後板42の反前板41側の縁端までが、いずれも予め定められた既知の長さXtに設定されている。
【0061】
図11は、テンプレート40を踏段軸13に取り付けた状態を示し、前板41及び後板42が第1センサ34及び第2センサ35からのビーム34a及び35aを反射させることができるようにクリップ44及び45で踏段軸13を把持している。
エスカレータを運転して踏段チェーン18の速度V0および第1センサ34と第2センサ35の離隔距離X1が検出された後は取り外される。
【0062】
図12において、踏段チェーン18を図示の矢印方向へ前進させると、同図(a)に示したとおり、前板41の縁端を第1センサ34が検出し、図14の時刻t1で立ち上がる。
更に踏段チェーン18を前進させると、同図(b)に示したとおり、後板42の縁端を第2センサ35が検出し、図14の時刻t2で立ち上がる。
更に踏段チェーン18を前進させると、図14の時刻t3で第1センサ34が前板41から離れて立ち下がる。
更に踏段チェーン18を前進させると、図14の時刻t4で第2センサ35が後板41から離れて立ち下がる。
【0063】
更に踏段チェーン18を前進させると、図13に示したとおり、後板42の縁端を第1センサ34が検出し、図14の時刻t5で立ち上がる。
更に踏段チェーン18を前進させると、第2センサ35が踏段軸13を検出し、図14の時刻t6で立ち上がり、時刻t7で立ち下がる。
更に踏段チェーン18を前進させると、図14の時刻t8で第1センサ34が後板42から離れて立ち下がる。
【0064】
図14において、時刻t1から時刻t5までの時間Ttは、踏段チェーン18がテンプレート40の長さXtだけ移動するのに要した時間である。従って、踏段チェーン18の速度V0は、V0=Xt/Ttとなる。
また、時刻t1と時刻t2の動作時間差Δtは、離隔距離X1とテンプレート40の長さXtとの距離差X2に基くものである。従って、動作時間差Δtと速度V0から距離差X2が求められ、更に、この距離差X2を長さXtから減算することによって離隔距離X1を求めることができる。
離隔距離X1と速度V0が算出された後の処理は実施の形態1と同様であり、説明を省く。
【0065】
次に、上記動作を図15に従って説明する。この実施の形態2では、上記のとおり未知の離隔距離X1と速度V0を算出した後、踏段チェーン18の伸び量δnを演算するものである。
手順S31でエスカレータ制御盤58からの始動信号が発せられると、手順S32で第1センサ34が作動するのを待つ。図12(a)の状態になって第1センサ34が作動すると、手順S33で、その作動時間t1をRAM43に記録する。手順S34で第2センサ35が作動すると、手順S35で、その作動時間t2をRAM43に記録する。手順S36で第1センサ34が前板41から外れて復帰し、更に手順S37で第1センサ34が後板42の縁端によって再作動したことが判明すると、手順S38で再作動時刻t5をRAM43に記録する。
【0066】
手順S39でテンプレート40の長さXtと、踏段チェーン18が長さXtだけ移動するのに要した時間(t5−t1=Tt)から速度V0を演算する。
また、時刻t1と時刻t2の動作時間差Δtは、図14に示したとおり離隔距離X1とテンプレート40の長さXtとの距離差X2に基くものである。従って、手順S40で動作時間差Δtと速度V0から距離X2が求められる。更に、離隔距離X1はテンプレート40の長さXtから距離X2を減算して求めることができる。手順S41でエスカレータを停止させてテンプレート40を取り外す。
次に、手順S42で踏段チェーン18の伸び量δnを測定する。離隔距離X1と速度V0が既知となったことにより、図8と同じ処理で伸び量δnを測定することができる。
【0067】
上記実施の形態2によれば、長さXtが既知のテンプレート40を使用したので、踏段チェーン18の速度V0及び離隔距離X1のいずれかが未知であっても、また、双方が未知であっても伸び量δnを測定することができる。
特に、速度V0及び離隔距離X1として実測した値を用いるようにしたので、踏段チェーン18の磨耗が進行して初期の速度と異なった値になっていたとしても、実測によって得られた現実の速度に基いて正確な伸び量δnを測定できる。
【0068】
更に、テンプレート40は前板41と後板42を分離して設け、中間部を中空にしたので、第1センサ34及び第2センサ35の有意状態を揃えることができる。即ち、第1センサ34が前板41からの反射ビーム34aを受けて立ち上がったときを有意とし、同様に第2センサ35が後板42からの反射ビーム35aを受けて立ち上がったときを有意とすることができ、制御回路の統一化が可能となる。
【0069】
なお、上記実施の形態2では、テンプレート40は前板41と後板42を分離して設け、中間部を中空にしたが、これに限られるものではなく、連続した平板であってもよい。
また、第1センサ34の作動によって速度V0を算出したが、これに限られるものではなく、第2センサ35又はマーカセンサ36の作動によってもよい。
更に、上記実施の形態1及び実施の形態2では、乗客コンベヤとしてエスカレータを例示したが、移動歩道であっても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明の実施の形態1における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】この発明の実施の形態1及び2における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置のシステム構成を示すブロック図。
【図3】この発明の実施の形態1における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置の要部を示す斜視図。
【図4】図3にIV−IV線断面を矢視方向から見た断面図。
【図5】この発明の実施の形態1における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置による測定過程を示す要部側面図。
【図6】この発明の実施の形態1における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置による測定過程を示す要部側面図。
【図7】この発明の実施の形態1における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置による動作を示すタイムチャート。
【図8】この発明の実施の形態1における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置の動作を示す流れ図。
【図9】この発明の実施の形態2における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置の全体構成を示すブロック図。
【図10】テンプレート40の側面図。
【図11】テンプレート40の取付け状態を示す側面図。
【図12】この発明の実施の形態2における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置による測定過程を示す要部側面図。
【図13】この発明の実施の形態2における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置による測定過程を示す要部側面図。
【図14】この発明の実施の形態2における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置による動作を示すタイムチャート。
【図15】この発明の実施の形態2における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置の動作を示す流れ図。
【図16】エスカレータの全体構成を示す縦断面図。
【図17】エスカレータの踏段部分を示す斜視図。
【図18】エスカレータのスプロケット部分を示す側面図。
【図19】エスカレータのスプロケット部分を示す側面図。
【符号の説明】
【0071】
1 部位間距離特定手段、 2 動作時間差検出手段、 3 センサ離隔距離設定手段、 4 速度設定手段、 5 部位間距離演算手段、 6 基準値設定手段、 7 伸び量演算手段、 11 踏段、 12 ブラケット、 13 踏段軸、 14 前輪、 15 後輪、 16 ガイドレール、 17 ガイドレール、 18 踏段チェーン、 19 スカートガード、 20 目地、 21 内側板、 22 ブラケット、 30 センサ組立、 31 基板、 32 吊り手、 33 クリップ、 34 第1センサ、 35 第2センサ、 36 マーカセンサ、 37 マーカ、 40 テンプレート、 41 前板、 42 後板、 43 連結板、 44 クリップ、 45 クリップ、 81 動作時間差検出手段、 82 テンプレート長さ設定手段、 83 センサ離隔距離演算手段。
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量を測定する装置及びその測定方法に係る。
【背景技術】
【0002】
図16から図19は、乗客コンベヤとしてエスカレータを例示する。
図16は全体構成を示し、階間にはトラス52が跨設され、傾斜路頂部の機械室には駆動機53が収納されている。この駆動機53は上部スプロケット54uを駆動し、上部スプロケット54uと下部スプロケット54dには無端状の踏段チェーン18が巻き掛けられ、下部スプロケット54dに装着された緊張具56によって常時緊張状態になっている。
【0003】
また、踏段チェーン18には踏段11が縦列に係止され、往路側で一方の乗降口から他方の乗降口へ乗客を搬送し、他方の乗降口で反転して復路を形成して循環する。
更に、踏段11の両側には、狭隙を隔ててスカートガード19が立設され、その上部には傾斜路に沿って所定の高さで内側板20が立設されている。この内側板20には手摺57が取り付けられて上下の乗降口で下方に反転して循環する。機械室にはエスカレータの運転を制御する制御盤58が設置されている。
【0004】
図17は踏段11と踏段チェーン18の係合部を示し、踏段11には左右に一対設けられた三角形状のブラケット12に踏板11aとライザ11bが取り付けられている。踏板11aの上階側端部は櫛状をなし、隣接する踏段11のライザ11bと噛合している。
【0005】
ブラケット12の前部には踏段軸13が貫通し、更にこの踏段軸13は踏段チェーン18と回動自在に係合して貫通し、両端に前輪14が取り付けられている。ブラケット12の後部には後輪15が取り付けられている。
また、踏段チェーン18の外側にはガイドレール16が敷設されていて前輪14は踏段チェーン18の移動に伴ってガイドレール16に沿って転動し、後輪15はガイドレール17に沿って転動する。
【0006】
図18は、踏段チェーン18が伸びを起こしていないときの上部スプロケット54uに巻き掛けられた状態を示し、踏段チェーン18は、チェーンピッチPrで上部スプロケット54uと噛み合っており、その時のピッチ円半径をr1とし、回転数をRvとすると、踏段チェーン18の速度V0は、V0=2π・r1・Rvとなる。
また、この状態では図17に示した隣接する踏段11の踏板11aとライザ11bは噛み合っていて隙間Sgは発生していない。
【0007】
図19は、踏段チェーン18が伸びを起こしたときの上部スプロケット54uに巻き掛けられた状態を示す。踏段チェーン18が伸びてチェーンピッチがPr′になると噛合いが浅くなり、ピン18aが上部スプロケット54uの歯底から浮いた状態になる。即ち、踏段チェーン18はピッチ円半径r1に対してΔrだけ外側で噛合し、踏段チェーン18の速度V0′は、V0′=2π・(r1+Δr)・Rvとなる。
【0008】
踏段チェーン18は、緊張具56によって常時緊張されているので、踏段チェーン18が伸びると、図17に示した隣接する踏段11の踏板11aとライザ11bの噛合いが浅くなる。極端な場合、噛合いが外れて隙間Sgが生ずるようになるが、事前に安全装置が作動してエスカレータを停止させるようになっている。
【0009】
エスカレータは上記のとおり構成されているので、踏段チェーン18の伸びは、保守時の重要な点検事項になっている。
ところで、踏段チェーン18の伸びは、全周に亙って一律ではなく、局部的であったり、左右の踏段チェーン18で差が生じることもある。
このため、最終的に全体を取り替える前に、ある程度磨耗が認められた時点で局部的な伸びはないか、また、踏段チェーン18が左右でアンバランスに伸びていないか等をチェックする。
その結果によって踏段チェーン18のリンクを局部的に組み替えたり、左右の踏段チェーン18を掛け代えたりする対策が実施されてきた。
【0010】
ところで、踏段チェーン18のチェックは、従来、左右の踏段チェーン18の全周に亙ってチェーンピッチPrを測定することによって行っていた。具体的には下記の方法で行われていた。
(1)全踏段11を取り外す。
(2)踏段軸13間のピッチを測定するための大形ノギスを用意する。
(3)作業者がトラス52内に入り、又は踏段軸13に跨って、ノギスで踏段軸13間のピッチを、左右の踏段チェーン18の全周に亙って1ヶ所ずつ測定する。
(4)上記測定結果に基き、左右の踏段チェーン18の掛け代えの要否や、又はリンクの組み替えを検討し、要すればその検討結果に基いて処置をする。
上記はエスカレータの場合であるが、移動歩道についても同様である。
【0011】
また、特開平11−194024号公報には、図18に示したとおり、センサ60でチェーンローラの通過をパルス信号でとらえ、そのパルス幅又はパルス周期でチェーンの伸びを検出するものが開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定は、上記のとおり行われていたので、下記の問題点があった。
作業者が踏段軸13の全箇所に亙って手作業で軸間ピッチを測定しなければならず、面倒で作業性が悪い。このため、集中力も途切れ勝ちで、測定誤差が生じ易い、という問題があった。
また、踏段11を取り外さなければならず時間がかかり、長時間利用者に不便を強いる、という問題もあった。
【0013】
更に、特開平11−194024号公報に開示されたものでは、踏段チェーン18の伸び量を正確に測定し難い、と思料される。
即ち、図19に示したとおり、踏段チェーン18が伸びてチェーンピッチがPrからPr′に増大すると、踏段チェーン18と上部スプロケット54uとの噛合いが浅くなる。
一方、上部スプロケット54uの回転数は略一定であるから、踏段チェーン18の速度がV0からV0′に上昇することになる。
【0014】
このため、チェーンローラの通過をパルス信号でとらえ、そのパルス周期を検出しても、パルス周期は伸び量に比例しないため、踏段チェーン18の伸び量を検出することはできない、と思料される。
また、踏段チェーン18の伸びは、その構成部品である、ピン、ローラ及びプレート全体の磨耗によるものであるから、パルス幅を検出しても、単にローラの幅を検出したに過ぎず、踏段チェーン18の伸びを測定したことにはならない、と思料される。
【0015】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量を容易、かつ、正確に測定できる装置及び方法を提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、踏段チェーンの所定部位を検出する一対のセンサを進行方向に向けて予め定められた既知の離隔距離を隔てて固定部に取り付け、このセンサのいずれか一方が踏段チェーンの一の所定部位を検出してから他のセンサが他の所定部位を検出するまでの動作時間差から求められた距離差をセンサの離隔距離に加減算して所定部位間距離を演算し、この所定部位間距離を予め設定された基準値と比較することにより踏段チェーンの伸び量を測定するものである。
【0017】
請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、踏段チェーンの所定部位を検出する一対のセンサを進行方向に向けて任意に設定された離隔距離を隔てて固定部に取り付け、予め定められた既知の長さのテンプレートを長手を進行方向に向けて踏段チェーンに係止して移動させ、踏段チェーンを所定の速度で移動させたときに、いずれか一方のセンサがテンプレートの一端を検出してから他のセンサがテンプレートの他端を検出するまでの動作時間差から求められた距離差をテンプレートの長さに加減算してセンサの離隔距離を演算し、センサのいずれかが踏段チェーンの一の所定部位を検出してから他のセンサが他の所定部位を検出するまでの動作時間差から求められた距離差をセンサの離隔距離に加減算して所定部位間距離を演算し、この所定部位間距離を予め設定された基準値と比較することにより踏段チェーンの伸び量を測定するものである。
【0018】
請求項3に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、踏段チェーンにマーカを取り付け、固定部にマーカセンサを取り付け、このマーカセンサがマーカを検出すると始動して所定部位間距離が演算される毎に演算度数を計数し、この演算度数で所定部位間距離を特定するようにしたものである。
【0019】
請求項4に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、踏段チェーンの速度を、この踏段チェーンが巻き掛けられたスプロケットのピッチ円と回転数とから演算するようにしたものである。
【0020】
請求項5に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、踏段チェーンの速度を、一のセンサでテンプレートの通過時間を検出し、この通過時間と上記テンプレートの長さから演算するようにしたものである。
【0021】
請求項6に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、センサは、踏段軸を所定部位として検出し、かつ、隣接する踏段軸との軸間距離よりも小さい離隔距離で取り付けられるものとし、踏段チェーンの進行方向前方のセンサが一の踏段軸を検出してから進行方向後方のセンサが隣接する他の踏段軸を検出するまでの動作時間差から求められる距離差をセンサの離隔距離に加算して所定部位間距離を演算するようにしたものである。
【0022】
請求項7に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、センサは、踏段軸を所定部位として検出し、かつ、隣接する踏段軸との軸間距離よりも大きい離隔距離で取り付けられたものとし、踏段チェーンの進行方向後方のセンサが一の踏段軸を検出してから進行方向前方のセンサが他の踏段軸を検出するまでの動作時間差から求められた距離差をセンサの離隔距離から減算して所定部位間距離を演算するようにしたものである。
【0023】
請求項8に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、テンプレートは、進行方向に向けて前方と後方に2個の被検出片を具備し、両被検出片の前縁間又は後縁間が予め定められた既知の長さに設定されたものである。
【0024】
請求項9に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定方法は、踏段チェーンの所定部位を検出する一対のセンサを踏段チェーンの進行方向に向けて離隔して固定部に取り付けると共に、予め定められた長さを有するテンプレートを踏段チェーンに係止した後、踏段チェーンを所定の速度で移動させて一のセンサがテンプレートの一端を検出してから他のセンサがテンプレートの他端を検出するまでの動作時間差から距離差を求め、この距離差をテンプレートの長さに加減算してセンサの離隔距離を演算し、一のセンサが一の所定部位を検出してから他のセンサが他の所定部位を検出するまでの動作時間差から距離差を求め、この距離差をセンサの離隔距離に加減算して所定部位間距離を演算し、この演算された所定部位間と予め設定された基準値とから踏段チェーンの所定部位間の伸び量を演算するようにしたものである。
【発明の効果】
【0025】
この発明は上記のとおり構成されているので、以下の効果を奏する。
請求項1に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、踏段チェーンの所定部位を検出する一対のセンサを進行方向に向けて予め定められた既知の離隔距離を隔てて固定部に取り付け、このセンサのいずれか一方が踏段チェーンの一の所定部位を検出してから他のセンサが他の所定部位を検出するまでの動作時間差から求められた距離差をセンサの離隔距離に加減算して所定部位間距離を演算し、この所定部位間距離を予め設定された基準値と比較することにより踏段チェーンの伸び量を測定するものである。
このため、仮に速度に誤差が有ったとしてもセンサの離隔距離と所定部位間距離の距離差が速度誤差の影響を受けるに過ぎず、離隔距離を基準値に近い値にすることによって、所定部位間距離を正確に測定することができる、という効果を奏する。
【0026】
請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、踏段チェーンの所定部位を検出する一対のセンサを進行方向に向けて任意に設定された離隔距離を隔てて固定部に取り付け、予め定められた既知の長さを有するテンプレートを長手を進行方向に向けて踏段チェーンに係止し、踏段チェーンを所定の速度で移動させたときに、いずれか一方のセンサがテンプレートの一端を検出してから他のセンサがテンプレートの他端を検出するまでの動作時間差から求められた距離差をテンプレートの長さに加減算してセンサの離隔距離を演算し、センサのいずれかが踏段チェーンの一の所定部位を検出してから他のセンサが他の所定部位を検出するまでの動作時間差から求められた距離差をセンサの離隔距離に加減算して所定部位間距離を演算し、この所定部位間距離を予め設定された基準値と比較することにより踏段チェーンの伸び量を測定するものである。
このため、センサを任意に取り付け、離隔距離が未知であっても伸び量δnを測定することができる、という効果を奏する。
【0027】
請求項3に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、踏段チェーンにマーカを取り付け、固定部にマーカセンサを取り付け、このマーカセンサがマーカを検出すると始動して所定部位間距離が演算される毎に演算度数を計数し、この演算度数で所定部位間距離を特定するようにしたものである。
このため、所定部位間距離の現実の位置を特定することができ、踏段チェーンのリンクを組み替える必要が生じた場合の措置を迅速に実施できる、という効果を奏する。
【0028】
請求項4に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、踏段チェーンの速度を、この踏段チェーンが巻き掛けられたスプロケットのピッチ円と回転数とから演算するようにしたものである。
このため、速度を容易に算出することができる、という効果を奏する。
【0029】
請求項5に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、踏段チェーンの速度を、一のセンサで既知の長さのテンプレートを通過するのに要する時間を検出し、この通過時間と上記テンプレートの長さから演算するようにしたものである。
このため、実測によって得られた現実の速度に基いて正確な伸び量を測定できる、という効果を奏する。
【0030】
請求項6に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、センサは、踏段軸を所定部位として検出し、かつ、隣接する踏段軸との軸間距離よりも小さい離隔距離で取り付けられるものとし、踏段チェーンの進行方向前方のセンサが一の踏段軸を検出してから進行方向後方のセンサが隣接する他の踏段軸を検出するまでの動作時間差から求められる距離差をセンサの離隔距離に加算して所定部位間距離を演算するようにしたものである。
このため、踏段チェーンの伸びによる弊害が生じるのは踏段間の隙間であり、踏段チェーンの伸びを軸間距離の伸びとして得ることにより、上記弊害の有無を直接把握することができ、踏段チェーンのリンクを組替えの要否判断が容易である、という効果を奏する。
【0031】
請求項7に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、センサは、踏段軸を所定部位として検出し、かつ、隣接する踏段軸との軸間距離よりも大きい離隔距離で取り付けられるものとし、踏段チェーンの進行方向後方のセンサが一の踏段軸を検出してから進行方向前方のセンサが他の踏段軸を検出するまでの動作時間差から求められた距離差をセンサの離隔距離から減算して所定部位間距離を演算するようにしたものである。
このものにあっても、請求項6と同様の効果を奏する。
【0032】
請求項8に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置は、請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置において、テンプレートは、進行方向に向けて前方と後方に2個の被検出片を具備し、両被検出片の前縁間又は後縁間が予め定められた既知の長さに設定されたものである。
このため、一のセンサが前方の被検出片を検出したときを有意とし、同様に他のセンサが後方の被検出片板を検出したときを有意とすることができ、有意状態を揃えることにより制御回路の統一化が可能となる、という効果を奏する。
【0033】
請求項9に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定方法は、踏段チェーンの所定部位を検出する一対のセンサを踏段チェーンの進行方向に向けて離隔して固定部に取り付けると共に、予め定められた長さを有するテンプレートを踏段チェーンに係止した後、踏段チェーンを所定の速度で移動させて一のセンサがテンプレートの一端を検出してから他のセンサがテンプレートの他端を検出するまでの動作時間差から距離差を求め、この距離差をテンプレートの長さに加減算してセンサの離隔距離を演算し、一のセンサが一の所定部位を検出してから他のセンサが他の所定部位を検出するまでの動作時間差から距離差を求め、この距離差をセンサの離隔距離に加減算して所定部位間距離を演算し、この演算された所定部位間と予め設定された基準値とから踏段チェーンの所定部位間の伸び量を演算するようにしたものである。
このため、センサの離隔距離が未知であっても伸び量を測定することができ、速度に誤差が有ったとしてもセンサの離隔距離と所定部位間距離の距離差が速度誤差の影響を受けるに過ぎず、離隔距離を基準値に近い値にすることによって、所定部位間距離を正確に測定することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
実施の形態1.
図1から図8は実施の形態1を示し、一対のセンサの離隔距離X1が知得されている場合の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置に係るものである。
なお、ここでは踏段軸13を所定部位として軸間距離を所定部位間距離Xsnとし、センサの離隔距離X1は踏段軸13の軸間距離Xsnよりも小さく、かつ、軸間距離Xsnに近い距離とする。
【0035】
図1は、この発明の実施の形態1の全体構成を示すブロック図で、図において11は踏段、18は踏段11を駆動する踏段チェーン、13は踏段11の両側に延設され踏段チェーン18を貫通して取り付けられた所定部位としての踏段軸、34及び35は踏段チェーン18の進行方向に向けて予め定められ知得された離隔距離X1を隔てて固定部に取り付けられた一対の第1センサ及び第2センサ、36は所定部位間を特定するために一の踏段軸13に目印として取り付けられた、反射効率の高い材質で構成されたマーカ37を検出するマーカセンサで、マーカ37の付されていない踏段軸13には作動しない。
【0036】
1はマーカセンサ36がマーカ37を検出すると始動して所定部位間距離Xsnが演算される毎に演算度数nを計数して所定部位間距離を特定する部位間距離特定手段で、ここではマーカセンサ36がマーカ37を検出した後、第1センサ34が踏段軸13を検出する毎に演算度数nをインクリメントさせるカウンタからなるもので、演算度数nと軸間距離Xsnとの組合せにより、マーカ37の付された踏段軸13を始点として軸間距離Xsnを特定するものである。2は第1センサ34が一の踏段軸13を検出してから第2センサ35が隣接する後続の踏段軸13を検出するまでの動作時間差Δtnを検出する動作時間差検出手段である。
【0037】
3は知得されている一対のセンサの離隔距離X1を具体的な数値として設定するセンサ離隔距離設定手段である。4は踏段チェーン18の速度V0を具体的な数値として設定する速度設定手段である。5は動作時間差Δtと踏段チェーン18の速度V0から求められる距離差X3nを離隔距離X1に加算して踏段軸13の軸間距離である所定部位間距離Xsnを演算する部位間距離演算手段である。6は所定部位間に対して予め定められた基準値Dsを設定する基準値設定手段である。7は演算された所定部位間距離Xsnと基準値Dsとの差値から踏段チェーン18の伸び量δnを演算する伸び量演算手段である。
【0038】
図2はエスカレータの内部組立とシステム構成を示し、12は踏段11の左右に一対設けられた三角形状のブラケット、13はブラケット12の前部を貫通して両側に延設された踏段軸、14は踏段軸13の両端に取り付けられた前輪、15はブラケット12の後部に取り付けられた後輪、16は前輪14が案内されて転動するガイドレール、17は後輪15が案内されて転動するガイドレールである。
【0039】
18は踏段軸13が貫通して回動自在に係合する無端状の踏段チェーンで、スプロケットに巻き掛けられて循環して踏段11を駆動する。19は踏段11の両側に狭隙を隔てて立設されたスカートガード、20はスカートガード19の上部に傾斜路に沿って所定の高さで立設された内側板、21はスカートガード19と内側板20との継ぎ目を被う目地である。
【0040】
30は踏段軸13を検出するセンサが取り付けられたセンサ組立で、詳細を図3及び図4に示したとおり、ガイドレール17に係止された基板31に一対の第1センサ34及び第2センサ35と、マーカ37を検出するマーカセンサ36が取り付けられている。
【0041】
41はCPU、42はプログラムが格納されたROM、43は一時的なデータが格納されるRAM、44は第1センサ34及び第2センサ35、並びにマーカセンサ36による検出信号が入力される入力装置、45はキーボードで、第1センサ34及び第2センサ35の離隔距離X1、踏段チェーン18の速度V0及び踏段軸13の軸間距離に対する基準値Dsが入力される。46は測定結果が格納される測定データメモリである。
【0042】
図3及び図4は、センサ組立30の詳細を示し、センサ組立30には基板31に一対の第1センサ34及び第2センサ35が離隔距離X1を隔てて取り付けられており、中間にはマーカセンサ36が取り付けられている。基板31の頂部には一対の吊り手32が取り付けられており、クリップ33でガイドレール17を跨嵌して係止するようになっている。
第1センサ34及び第2センサ35は、それぞれビーム34a及び35aを照射し、踏段軸13からの反射ビームによって作動する。
【0043】
マーカ37は、一の踏段軸13に取り付けられたもので、測定された軸間距離Xsnと踏段軸13とを対応させる目印として機能する。即ち、マーカ37は高い反射率を有し、マーカセンサ36はビーム36aを照射したときに、通常の踏段軸13からの反射では作動せず、マーカ37による強い反射ビーム36aによってのみ作動するように設定されている。
なお、センサ組立30をガイドレール17に係止するには、図4に示したとおり、スカートガード19をブラケット22から外し、要すれば更に踏段11を3〜4個取り外した隙間からセンサ組立30を内部に挿入し、クリップ33で係止する。
【0044】
図5から図7に従って、動作の概要を述べる。
図5はマーカセンサ36がマーカ37を検出した状態を示す。即ち、踏段チェーン18が上昇方向へ移動してマーカセンサ36がマーカ37に対向すると、図7の時刻t01でマーカセンサ36がマーカ37からの反射ビーム36aで立ち上がり、マーカ37がビーム36aから外れると立ち下がる。
【0045】
踏段チェーン18が更に上昇方向へ移動すると、図6(a)に示したとおり、第1センサ34が踏段軸13と対向し、図7の時刻t11で反射ビーム34aを検出して立ち上がり、踏段軸13がビーム34aから外れると立ち下がる。
【0046】
踏段チェーン18が更に上昇方向へ移動すると、図6(b)に示したとおり、第2センサ35が隣接する後続の踏段軸13と対向し、図7の時刻t21で反射ビーム35aを検出して立ち上がり、踏段軸13がビーム35aから外れると立ち下がる。
【0047】
時刻t11から時刻t21までの動作時間差Δt1は、離隔距離X1と踏段軸13の軸間距離である所定部位間距離Xs1との距離差X3n(n=1)に基くものである。従って、動作時間差Δt1と踏段チェーン18の速度V0から距離X3nが求められ、更に、距離X3nと離隔距離X1とを加算することによって所定部位間距離Xs1を求めることができる。
【0048】
次に、動作を図8の流れ図に従って説明する。
手順S11でエスカレータ制御盤58からの始動信号が発せられると、手順S12でマーカセンサ36が作動するのを待つ。図5に示したとおり、マーカセンサ36が作動すると手順S13で演算度数nを「1」にセットする。即ち、以下の手順でマーカ37が付された踏段軸13と隣接する後続の踏段軸13との軸間距離Xs1が測定されることを示す。
【0049】
手順S14で第1センサ34が作動すると、手順S15で、その作動時間t11をRAM43に記録する。手順S16で第2センサ35が作動すると、手順S17で、その作動時間t21をRAM43に記録する。手順S18で作動時間t21と作動時間t11の動作時間差Δt1を演算する。手順S19で動作時間差Δt1と踏段チェーン18の速度V0を乗算して、軸間距離Xs1と離隔距離X1との距離差X31を演算し、この距離差X31を既知の離隔距離X1に加算して軸間距離Xs1を算出し、RAM43に記録する。手順S20で算出された軸間距離Xs1と所定部位間に対して予め定められた基準値Dsとの差値を伸び量δ1としてRAM43に記録する。
【0050】
手順S21と手順S22でマーカセンサ36が再作動したか、又は第1センサ34が作動するまで待つ。第1センサ34が作動した場合は手順S23で演算度数nをインクリメントして「2」に設定して手順S15へ移る。以下、マーカ37が取り付けられた踏段軸13から起算して第2番目の軸間距離Xs2と、その軸間距離Xs2における踏段チェーン18の伸び量δ2の演算がなされる。
以下同様に、第n番目の軸間距離Xsnと、その軸間距離Xsnにおける踏段チェーン18の伸び量δnの演算がなされる。
【0051】
手順S21でマーカセンサ36が再作動すると手順S24に移り、測定結果として、演算度数n毎に軸間距離Xsn及び伸び量δnと、参考データとして速度V0と離隔距離X1を出力し、手順S25でエスカレータを停止させる。
続いて反対側の踏段チェーン18についても同様にして測定する。
左右の踏段チェーン18について測定が終了すると、測定結果に基いて検討がなされ、踏段チェーン18のリンクの組替えや、左右の踏段チェーン18を入れ替える等の措置がなされる。
【0052】
上記実施の形態1によれば、一対のセンサを踏段チェーン18の進行方向に向けて予め知得された離隔距離X1を隔てて固定部に取り付け、第1センサ34が一の踏段軸13を検出してから第2センサ35が他の踏段軸13を検出するまでの動作時間差Δtnと踏段チェーンの速度V0から求められる距離差X3nを第1センサ34及び第2センサ35の離隔距離X1に加算して所定部位間距離である軸間距離Xsnを演算するようにしたので、仮に速度V0に誤差が有ったとしても距離差X3nが速度誤差の影響を受けるに過ぎない。このため、離隔距離X1を基準値Dsに近い値にしたことによって、軸間距離Xsnを誤差を減縮して測定することができる。
【0053】
また、スカートガード19を外すか、更に踏段11を3〜4個取り外し、後輪15用のガイドレール17に吊り手32を跨嵌させればセンサ組立30を取り付けられるのでセンサ組立30の取付けが容易である。
更に、測定後の原状復帰も容易であるため、利用客に与える不便さも軽減できる。
【0054】
更にまた、一の踏段軸13に目印としてマーカ37を取り付け、軸間距離Xsnが演算される毎に演算度数nを計数するようにしたので、マーカ37の付された踏段軸13を始点として軸間距離Xsnの位置を特定することができる。このため、踏段チェーン18のリンクを組み替える必要が生じた場合、対象となる踏段チェーン18の部位を容易に特定することができ、測定後の措置を迅速に実施できる。
更にまた、踏段11を付けた状態で測定するので、略稼動状態で測定することができる。
【0055】
なお、上記実施の形態1では、センサの離隔距離X1は踏段軸13の軸間距離Xsnよりも小さい距離としたが、逆に大きい距離であってもよい。大きい場合は第2センサ35が作動してから第1センサ34が作動し、両者の動作時間差Δtnから求められる距離差X3nを離隔距離X1から減算すればよい。
また、踏段軸13の軸間距離を所定部位間距離Xsnとしたが、これに限られるものではなく、踏段チェーン18のチェーンピッチであってもよい。
【0056】
実施の形態2.
図9から図15は、この発明の実施の形態2を示し、第1センサ34及び第2センサ35の離隔距離X1、及び踏段チェーン18の速度V0がいずれも未知の場合の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置に係るものである。
なお、システム構成は図2と同じであり、説明を省略する。
また、実施の形態1と同様、踏段軸13を所定部位として軸間距離を所定部位間距離Xsnとし、第1センサ34及び第2センサ35の離隔距離X1は踏段軸13の軸間距離Xsnよりも小さく、かつ、軸間距離Xsnに近い距離とする。
更に図1から図8と同符号は同一部分を示し、説明を省く。
【0057】
図9は、この発明の実施の形態2の全体構成を示すブロック図である。図中、40は予め定められた既知の長さXtを有するテンプレートで、詳細を図10及び図11に示したとおり、隣接する踏段軸13に着脱自在に取り付けられて第1センサ34及び第2センサ35を作動させるものである。
【0058】
8はテンプレート40を踏段軸13に取り付けてエスカレータを運転したときの第1センサ34及び第2センサ35の動作時間差から、離隔距離X1を演算する手段で、踏段チェーン18を既知の速度V0で移動させたときに第1センサ34がテンプレート40の一端を検出してから第2センサ35がテンプレート40の他端を検出するまでの動作時間差Δtを演算する動作時間差検出手段81と、テンプレート40の長さXtが記録されたテンプレート長さ設定手段82と、速度V0と動作時間差Δtの乗算から長さXtと離隔距離X1との距離差X2を求め、この距離差X2を長さXtから減算して離隔距離X1を求めるセンサ離隔距離演算手段83とからなる。
【0059】
また、速度設定手段4は、この実施の形態2では踏段チェーン18の速度V0を、テンプレート40の長さXtと、この長さXtを第1センサ34又は第2センサ35が検出するのに要する時間から演算するものとする。
なお、部位間距離特定手段1、動作時間差検出手段2、部位間距離演算手段5、基準値設定手段6及び伸び量演算手段7は、実施の形態1と同様であり説明を省略する。
【0060】
図10は、テンプレート40の詳細を示し、41は方形板からなる前板、42は同じく後板で、前板41との間は中空である。43は前板41と後板42とを連結する連結板、44は前板41の上面に取り付けられて踏段軸13を把持するクリップ、45は同じく後板42の上面に取り付けられたクリップである。
ここで、前板41の反後板42側の縁端から後板42の前板41側の縁端まで、及び前板41の後板42側の縁端から後板42の反前板41側の縁端までが、いずれも予め定められた既知の長さXtに設定されている。
【0061】
図11は、テンプレート40を踏段軸13に取り付けた状態を示し、前板41及び後板42が第1センサ34及び第2センサ35からのビーム34a及び35aを反射させることができるようにクリップ44及び45で踏段軸13を把持している。
エスカレータを運転して踏段チェーン18の速度V0および第1センサ34と第2センサ35の離隔距離X1が検出された後は取り外される。
【0062】
図12において、踏段チェーン18を図示の矢印方向へ前進させると、同図(a)に示したとおり、前板41の縁端を第1センサ34が検出し、図14の時刻t1で立ち上がる。
更に踏段チェーン18を前進させると、同図(b)に示したとおり、後板42の縁端を第2センサ35が検出し、図14の時刻t2で立ち上がる。
更に踏段チェーン18を前進させると、図14の時刻t3で第1センサ34が前板41から離れて立ち下がる。
更に踏段チェーン18を前進させると、図14の時刻t4で第2センサ35が後板41から離れて立ち下がる。
【0063】
更に踏段チェーン18を前進させると、図13に示したとおり、後板42の縁端を第1センサ34が検出し、図14の時刻t5で立ち上がる。
更に踏段チェーン18を前進させると、第2センサ35が踏段軸13を検出し、図14の時刻t6で立ち上がり、時刻t7で立ち下がる。
更に踏段チェーン18を前進させると、図14の時刻t8で第1センサ34が後板42から離れて立ち下がる。
【0064】
図14において、時刻t1から時刻t5までの時間Ttは、踏段チェーン18がテンプレート40の長さXtだけ移動するのに要した時間である。従って、踏段チェーン18の速度V0は、V0=Xt/Ttとなる。
また、時刻t1と時刻t2の動作時間差Δtは、離隔距離X1とテンプレート40の長さXtとの距離差X2に基くものである。従って、動作時間差Δtと速度V0から距離差X2が求められ、更に、この距離差X2を長さXtから減算することによって離隔距離X1を求めることができる。
離隔距離X1と速度V0が算出された後の処理は実施の形態1と同様であり、説明を省く。
【0065】
次に、上記動作を図15に従って説明する。この実施の形態2では、上記のとおり未知の離隔距離X1と速度V0を算出した後、踏段チェーン18の伸び量δnを演算するものである。
手順S31でエスカレータ制御盤58からの始動信号が発せられると、手順S32で第1センサ34が作動するのを待つ。図12(a)の状態になって第1センサ34が作動すると、手順S33で、その作動時間t1をRAM43に記録する。手順S34で第2センサ35が作動すると、手順S35で、その作動時間t2をRAM43に記録する。手順S36で第1センサ34が前板41から外れて復帰し、更に手順S37で第1センサ34が後板42の縁端によって再作動したことが判明すると、手順S38で再作動時刻t5をRAM43に記録する。
【0066】
手順S39でテンプレート40の長さXtと、踏段チェーン18が長さXtだけ移動するのに要した時間(t5−t1=Tt)から速度V0を演算する。
また、時刻t1と時刻t2の動作時間差Δtは、図14に示したとおり離隔距離X1とテンプレート40の長さXtとの距離差X2に基くものである。従って、手順S40で動作時間差Δtと速度V0から距離X2が求められる。更に、離隔距離X1はテンプレート40の長さXtから距離X2を減算して求めることができる。手順S41でエスカレータを停止させてテンプレート40を取り外す。
次に、手順S42で踏段チェーン18の伸び量δnを測定する。離隔距離X1と速度V0が既知となったことにより、図8と同じ処理で伸び量δnを測定することができる。
【0067】
上記実施の形態2によれば、長さXtが既知のテンプレート40を使用したので、踏段チェーン18の速度V0及び離隔距離X1のいずれかが未知であっても、また、双方が未知であっても伸び量δnを測定することができる。
特に、速度V0及び離隔距離X1として実測した値を用いるようにしたので、踏段チェーン18の磨耗が進行して初期の速度と異なった値になっていたとしても、実測によって得られた現実の速度に基いて正確な伸び量δnを測定できる。
【0068】
更に、テンプレート40は前板41と後板42を分離して設け、中間部を中空にしたので、第1センサ34及び第2センサ35の有意状態を揃えることができる。即ち、第1センサ34が前板41からの反射ビーム34aを受けて立ち上がったときを有意とし、同様に第2センサ35が後板42からの反射ビーム35aを受けて立ち上がったときを有意とすることができ、制御回路の統一化が可能となる。
【0069】
なお、上記実施の形態2では、テンプレート40は前板41と後板42を分離して設け、中間部を中空にしたが、これに限られるものではなく、連続した平板であってもよい。
また、第1センサ34の作動によって速度V0を算出したが、これに限られるものではなく、第2センサ35又はマーカセンサ36の作動によってもよい。
更に、上記実施の形態1及び実施の形態2では、乗客コンベヤとしてエスカレータを例示したが、移動歩道であっても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明の実施の形態1における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】この発明の実施の形態1及び2における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置のシステム構成を示すブロック図。
【図3】この発明の実施の形態1における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置の要部を示す斜視図。
【図4】図3にIV−IV線断面を矢視方向から見た断面図。
【図5】この発明の実施の形態1における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置による測定過程を示す要部側面図。
【図6】この発明の実施の形態1における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置による測定過程を示す要部側面図。
【図7】この発明の実施の形態1における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置による動作を示すタイムチャート。
【図8】この発明の実施の形態1における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置の動作を示す流れ図。
【図9】この発明の実施の形態2における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置の全体構成を示すブロック図。
【図10】テンプレート40の側面図。
【図11】テンプレート40の取付け状態を示す側面図。
【図12】この発明の実施の形態2における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置による測定過程を示す要部側面図。
【図13】この発明の実施の形態2における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置による測定過程を示す要部側面図。
【図14】この発明の実施の形態2における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置による動作を示すタイムチャート。
【図15】この発明の実施の形態2における乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置の動作を示す流れ図。
【図16】エスカレータの全体構成を示す縦断面図。
【図17】エスカレータの踏段部分を示す斜視図。
【図18】エスカレータのスプロケット部分を示す側面図。
【図19】エスカレータのスプロケット部分を示す側面図。
【符号の説明】
【0071】
1 部位間距離特定手段、 2 動作時間差検出手段、 3 センサ離隔距離設定手段、 4 速度設定手段、 5 部位間距離演算手段、 6 基準値設定手段、 7 伸び量演算手段、 11 踏段、 12 ブラケット、 13 踏段軸、 14 前輪、 15 後輪、 16 ガイドレール、 17 ガイドレール、 18 踏段チェーン、 19 スカートガード、 20 目地、 21 内側板、 22 ブラケット、 30 センサ組立、 31 基板、 32 吊り手、 33 クリップ、 34 第1センサ、 35 第2センサ、 36 マーカセンサ、 37 マーカ、 40 テンプレート、 41 前板、 42 後板、 43 連結板、 44 クリップ、 45 クリップ、 81 動作時間差検出手段、 82 テンプレート長さ設定手段、 83 センサ離隔距離演算手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏段の両側に延設された踏段軸を踏段チェーンに取り付け、この踏段チェーンをスプロケットに巻き掛けて上記踏段を循環させる乗客コンベヤの上記踏段チェーンの伸び量を測定する装置において、上記踏段チェーンの進行方向に向けて予め知得された離隔距離を隔てて固定部に取り付けられて上記踏段チェーン又は上記踏段チェーンに付随して移動する付属物の所定部位を検出する一対のセンサと、一の上記センサが一の上記所定部位を検出してから他の上記センサが他の上記所定部位を検出するまでの動作時間差から求められる距離差を上記センサの上記離隔距離に加減算して上記所定部位間距離を演算する部位間距離演算手段と、上記所定部位間に対して予め設定された基準値と上記部位間距離演算手段によって演算された上記所定部位間距離とから上記踏段チェーンの上記所定部位間の伸び量を演算する伸び量演算手段とを備えた乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置。
【請求項2】
踏段の両側に延設された踏段軸を踏段チェーンに取り付け、この踏段チェーンをスプロケットに巻き掛けて上記踏段を循環させる乗客コンベヤの上記踏段チェーンの伸び量を測定する装置において、上記踏段チェーンの進行方向に向けて未知の離隔距離を隔てて固定部に取り付けられて上記踏段チェーン又は上記踏段チェーンに付随して移動する付属物の所定部位を検出する一対のセンサと、予め知得された長さを有し、この長手を進行方向に向けて上記踏段チェーン又は上記踏段チェーンに付随して移動する付属物に係止されて移動して上記センサによって検出されるテンプレートと、上記踏段チェーンを所定の速度で移動させたときに一の上記センサが上記テンプレートの一端を検出してから他の上記センサが上記テンプレートの他端を検出するまでの動作時間差から求められた距離差を上記テンプレートの長さに加減算して上記センサの離隔距離を演算するセンサ離隔距離演算手段と、一の上記センサが一の上記所定部位を検出してから他の上記センサが他の上記所定部位を検出するまでの動作時間差から求められる距離差を上記センサの上記離隔距離に加減算して上記所定部位間距離を演算する部位間距離演算手段と、上記所定部位間に対して予め設定された基準値と上記部位間距離演算手段によって演算された上記所定部位間距離とから上記踏段チェーンの上記所定部位間の伸び量を演算する伸び量演算手段とを備えた乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置。
【請求項3】
踏段チェーン又は上記踏段チェーンに付随して移動する付属物に取り付けられたマーカと、固定部に取り付けられて上記マーカを検出するマーカセンサと、上記マーカセンサの上記検出によって始動して所定部位間距離の演算度数を計数し、この演算度数で部位間距離演算手段によって演算された上記所定部位間距離を特定する部位間距離特定手段とを設けた請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置。
【請求項4】
踏段チェーンの速度を、この踏段チェーンが巻き掛けられたスプロケットのピッチ円と回転数とから演算したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置。
【請求項5】
踏段チェーンの速度を、一のセンサでテンプレートの通過時間を検出し、この通過時間と上記テンプレートの長さから演算したことを特徴とする請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置。
【請求項6】
センサは、踏段軸を所定部位として検出し、かつ、隣接する上記踏段軸との軸間距離よりも小さい離隔距離で取り付けられるものとし、部位間距離演算手段は、踏段チェーンの進行方向前方の上記センサが一の上記踏段軸を検出してから進行方向後方の上記センサが隣接する他の上記踏段軸を検出するまでの動作時間差から求められる距離差を上記センサの上記離隔距離に加算して上記所定部位間距離を演算するものとした請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置。
【請求項7】
センサは、踏段軸を所定部位として検出し、かつ、隣接する上記踏段軸との軸間距離よりも大きい離隔距離で取り付けられるものとし、部位間距離演算手段を、踏段チェーンの進行方向後方の上記センサが一の上記踏段軸を検出してから進行方向前方の上記センサが他の上記踏段軸を検出するまでの動作時間差から求められた距離差を上記センサの上記離隔距離から減算して上記所定部位間距離を演算するものとした請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置。
【請求項8】
テンプレートは、進行方向に向けて前方と後方にそれぞれ被検出片を具備し、両被検出片の前縁間又は後縁間が予め知得された長さに設定されたものとした請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置。
【請求項9】
踏段の両側に延設された踏段軸を踏段チェーンに取り付け、この踏段チェーンをスプロケットに巻き掛けて上記踏段を循環させる乗客コンベヤの上記踏段チェーンの伸び量を測定する方法において、踏段チェーン又はこの踏段チェーンに付随して移動する付属物の所定部位を検出する一対のセンサを踏段チェーンの進行方向に向けて離隔して取り付けると共に、予め定められた長さを有するテンプレートを上記踏段チェーン又は上記踏段チェーンに付随して移動する付属物に係止する測定具取付工程と、上記踏段チェーンを所定の速度で移動させて一の上記センサが上記テンプレートの一端を検出してから他の上記センサが上記テンプレートの他端を検出するまでの動作時間差から距離差を求め、この距離差を上記テンプレートの長さに加減算して上記センサの離隔距離を演算するセンサ離隔距離演算工程と、一の上記センサが一の上記所定部位を検出してから他の上記センサが他の上記所定部位を検出するまでの動作時間差から距離差を求め、この距離差を上記センサの上記離隔距離に加減算して上記所定部位間距離を演算する部位間距離演算工程と、上記所定部位間に対して予め設定された基準値と上記部位間距離演算手段によって演算された上記所定部位間距離とから上記踏段チェーンの上記所定部位間の伸び量を演算する伸び量演算工程とからなる乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定方法。
【請求項1】
踏段の両側に延設された踏段軸を踏段チェーンに取り付け、この踏段チェーンをスプロケットに巻き掛けて上記踏段を循環させる乗客コンベヤの上記踏段チェーンの伸び量を測定する装置において、上記踏段チェーンの進行方向に向けて予め知得された離隔距離を隔てて固定部に取り付けられて上記踏段チェーン又は上記踏段チェーンに付随して移動する付属物の所定部位を検出する一対のセンサと、一の上記センサが一の上記所定部位を検出してから他の上記センサが他の上記所定部位を検出するまでの動作時間差から求められる距離差を上記センサの上記離隔距離に加減算して上記所定部位間距離を演算する部位間距離演算手段と、上記所定部位間に対して予め設定された基準値と上記部位間距離演算手段によって演算された上記所定部位間距離とから上記踏段チェーンの上記所定部位間の伸び量を演算する伸び量演算手段とを備えた乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置。
【請求項2】
踏段の両側に延設された踏段軸を踏段チェーンに取り付け、この踏段チェーンをスプロケットに巻き掛けて上記踏段を循環させる乗客コンベヤの上記踏段チェーンの伸び量を測定する装置において、上記踏段チェーンの進行方向に向けて未知の離隔距離を隔てて固定部に取り付けられて上記踏段チェーン又は上記踏段チェーンに付随して移動する付属物の所定部位を検出する一対のセンサと、予め知得された長さを有し、この長手を進行方向に向けて上記踏段チェーン又は上記踏段チェーンに付随して移動する付属物に係止されて移動して上記センサによって検出されるテンプレートと、上記踏段チェーンを所定の速度で移動させたときに一の上記センサが上記テンプレートの一端を検出してから他の上記センサが上記テンプレートの他端を検出するまでの動作時間差から求められた距離差を上記テンプレートの長さに加減算して上記センサの離隔距離を演算するセンサ離隔距離演算手段と、一の上記センサが一の上記所定部位を検出してから他の上記センサが他の上記所定部位を検出するまでの動作時間差から求められる距離差を上記センサの上記離隔距離に加減算して上記所定部位間距離を演算する部位間距離演算手段と、上記所定部位間に対して予め設定された基準値と上記部位間距離演算手段によって演算された上記所定部位間距離とから上記踏段チェーンの上記所定部位間の伸び量を演算する伸び量演算手段とを備えた乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置。
【請求項3】
踏段チェーン又は上記踏段チェーンに付随して移動する付属物に取り付けられたマーカと、固定部に取り付けられて上記マーカを検出するマーカセンサと、上記マーカセンサの上記検出によって始動して所定部位間距離の演算度数を計数し、この演算度数で部位間距離演算手段によって演算された上記所定部位間距離を特定する部位間距離特定手段とを設けた請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置。
【請求項4】
踏段チェーンの速度を、この踏段チェーンが巻き掛けられたスプロケットのピッチ円と回転数とから演算したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置。
【請求項5】
踏段チェーンの速度を、一のセンサでテンプレートの通過時間を検出し、この通過時間と上記テンプレートの長さから演算したことを特徴とする請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置。
【請求項6】
センサは、踏段軸を所定部位として検出し、かつ、隣接する上記踏段軸との軸間距離よりも小さい離隔距離で取り付けられるものとし、部位間距離演算手段は、踏段チェーンの進行方向前方の上記センサが一の上記踏段軸を検出してから進行方向後方の上記センサが隣接する他の上記踏段軸を検出するまでの動作時間差から求められる距離差を上記センサの上記離隔距離に加算して上記所定部位間距離を演算するものとした請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置。
【請求項7】
センサは、踏段軸を所定部位として検出し、かつ、隣接する上記踏段軸との軸間距離よりも大きい離隔距離で取り付けられるものとし、部位間距離演算手段を、踏段チェーンの進行方向後方の上記センサが一の上記踏段軸を検出してから進行方向前方の上記センサが他の上記踏段軸を検出するまでの動作時間差から求められた距離差を上記センサの上記離隔距離から減算して上記所定部位間距離を演算するものとした請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置。
【請求項8】
テンプレートは、進行方向に向けて前方と後方にそれぞれ被検出片を具備し、両被検出片の前縁間又は後縁間が予め知得された長さに設定されたものとした請求項2に記載の乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定装置。
【請求項9】
踏段の両側に延設された踏段軸を踏段チェーンに取り付け、この踏段チェーンをスプロケットに巻き掛けて上記踏段を循環させる乗客コンベヤの上記踏段チェーンの伸び量を測定する方法において、踏段チェーン又はこの踏段チェーンに付随して移動する付属物の所定部位を検出する一対のセンサを踏段チェーンの進行方向に向けて離隔して取り付けると共に、予め定められた長さを有するテンプレートを上記踏段チェーン又は上記踏段チェーンに付随して移動する付属物に係止する測定具取付工程と、上記踏段チェーンを所定の速度で移動させて一の上記センサが上記テンプレートの一端を検出してから他の上記センサが上記テンプレートの他端を検出するまでの動作時間差から距離差を求め、この距離差を上記テンプレートの長さに加減算して上記センサの離隔距離を演算するセンサ離隔距離演算工程と、一の上記センサが一の上記所定部位を検出してから他の上記センサが他の上記所定部位を検出するまでの動作時間差から距離差を求め、この距離差を上記センサの上記離隔距離に加減算して上記所定部位間距離を演算する部位間距離演算工程と、上記所定部位間に対して予め設定された基準値と上記部位間距離演算手段によって演算された上記所定部位間距離とから上記踏段チェーンの上記所定部位間の伸び量を演算する伸び量演算工程とからなる乗客コンベヤの踏段チェーンの伸び量測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−239349(P2008−239349A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130853(P2008−130853)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【分割の表示】特願2001−42934(P2001−42934)の分割
【原出願日】平成13年2月20日(2001.2.20)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【分割の表示】特願2001−42934(P2001−42934)の分割
【原出願日】平成13年2月20日(2001.2.20)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】
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