説明

乗客コンベヤ乗降口の安全装置

【課題】櫛と踏段との間に異物が挟まれたことの検知をより確実に行うことができ、櫛と踏段との間に異物が引き込まれることの防止を図ることができる乗客コンベヤ乗降口の安全装置を得る。
【解決手段】乗降口に配置された櫛7は、コムプレート2の下方を移動される踏段4に設けられたクリート4aに噛み合う櫛歯13を有している。櫛7は、櫛歯13が上下に変位される方向へコムプレート2に対して回動可能で、かつ踏段4の移動方向について、櫛歯13がコムプレート2から離れる前進位置と、前進位置よりも櫛歯13がコムプレート2に近づく後退位置との間で変位可能になっている。前進位置と後退位置との間の櫛7の変位は、コムプレート2と踏段4との間の空間で行われる。櫛歯13が上方へ変位される方向への櫛7の回動は検知装置16により検知される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗客コンベヤ(例えばエスカレータや動く歩道等)の乗降口において櫛と踏段との間に異物が引き込まれることを防止する乗客コンベヤ乗降口の安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乗客コンベヤの乗降口において櫛と踏段との間に異物が引き込まれることを防止するために、櫛が固定された櫛梁を支持梁に対して変位可能に取り付け、櫛梁が支持梁に対して変位したときに安全スイッチを作動させる乗客コンベヤ乗降口の安全装置が提案されている。櫛梁は、支持梁の上面をスライドすることにより支持梁に対して変位される。また、櫛梁は、櫛と踏段との間に異物が挟まることにより、支持梁に対して変位される。安全スイッチが作動したときには、乗客コンベヤの運転が停止される(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−203520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、異物が櫛と踏段との間に挟まって安全スイッチが作動したとしても、移動する踏段は慣性力により急には止まれないので、異物が櫛と踏段との間に引き込まれて破損するおそれがある。
【0005】
また、従来の乗客コンベヤ乗降口の安全装置では、櫛梁が支持梁の上面をスライドされるので、櫛梁を支持梁に対して変位させることができるが、支持梁の上面に固定された乗降板等に櫛梁が当たってしまい、櫛梁の支持梁に対する変位量が制限されてしまう。従って、櫛梁の変位量の不足により、櫛と踏段との間に異物が引き込まれることを回避することができない。
【0006】
さらに、櫛梁と支持梁との間に塵や埃等が進入しやすいので、櫛梁の支持梁に対する変位が塵や埃等により妨げられてしまうおそれもある。櫛梁の支持梁に対する変位が妨げられている場合には、櫛梁が支持梁に対して変位しないので、櫛と踏段との間に異物が挟まれたことが検知されなくなってしまう。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、櫛と踏段との間に異物が挟まれたことの検知をより確実に行うことができ、櫛と踏段との間に異物が引き込まれることの防止を図ることができる乗客コンベヤ乗降口の安全装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る乗客コンベヤ乗降口の安全装置は、乗客コンベヤの乗降口に配置されたコムプレート、コムプレートの下方を移動される踏段に設けられた溝に噛み合う櫛歯を有し、櫛歯が上下に変位される方向へコムプレートに対して回動可能で、かつ踏段の移動方向について、櫛歯がコムプレートから離れる前進位置と、前進位置よりも櫛歯がコムプレートに近づく後退位置との間で変位可能になっており、前進位置と後退位置との間の変位をコムプレートと踏段との間の空間で行う櫛、櫛歯が上方へ変位される方向への櫛の回動を検知する検知装置、及び検知装置からの情報に基づいて、踏段の移動を制御する制御装置を備えている。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る乗客コンベヤ乗降口の安全装置では、櫛歯が上下に変位される方向へ櫛がコムプレートに対して回動可能で、かつ櫛が前進位置と後退位置との間を変位可能になっており、前進位置と後退位置との間の櫛の変位がコムプレートと踏段との間で行われるので、櫛がコムプレートに対して変位される距離を大きくすることができる。従って、櫛と踏段との間に異物が挟まれた後、踏段が完全に停止するまで、踏段の移動とともに櫛をコムプレートに対して変位させることができる。これにより、櫛と踏段との間に異物が引き込まれることの防止を図ることができる。また、櫛の変位がコムプレートと踏段との間で行われるので、塵や埃等が櫛とコムプレートとの間に進入する可能性を低下させることができる。従って、櫛のコムプレートに対する変位をより確実に行うことができ、櫛と踏段との間に異物が挟まれたことの検知をより確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるエスカレータの乗降口を示す上面図である。また、図2は、図1のエスカレータの乗降口の要部を示す拡大図である。さらに、図3は、図2のエスカレータの乗降口の要部を示す側面図である。図において、エスカレータの乗降口は、トラス1の長手方向の上下端部上にそれぞれ設けられている。乗降口には、コムプレート2及び複数の床板3がトラス1の長手方向へ並べて配置されている。コムプレート2は、各床板3よりもトラス1の中間部に近い位置(前端側の位置)に配置されている。
【0011】
トラス1には、無端状に連結された複数の踏段4が支持されている。各踏段4は、トラス1の長手方向へ循環移動される。乗降口においては、図3に示すように、踏段4はコムプレート2の下方を水平方向へ移動される。踏段4の踏み面には、複数のクリート(溝)4aが互いに同一の方向に沿って設けられている。
【0012】
トラス1には、一対の固定ブロック5が固定されている。各固定ブロック5は、図1に示すように、トラス1の幅方向について互いに対向する位置に配置されている。
【0013】
ここで、図4は、図2のIV-IV線に沿った断面図である。図に示すように、コムプレート2は、固定ブロック5上に載せられている。コムプレート2の材質としては、例えば鉄等が用いられている。また、コムプレート2は、各固定ブロック5に複数のボルト6で固定されている。即ち、コムプレート2は、固定ブロック5を介してトラス1に固定され、トラス1の上面の位置よりも高位置に配置されている。
【0014】
コムプレート2には、図1に示すように、踏段4の幅寸法に亘って配置された櫛(コム)7が支持されている。コムプレート2の下面には、櫛7を支持する一対の支持装置8が取り付けられている。各支持装置8は、トラス1の幅方向について櫛7を挟む位置に配置されている。
【0015】
ここで、図5は、図2のV-V線に沿った断面図である。図に示すように、各支持装置8は、ブラケット10と、ブラケット10に固定された支持軸11とを有している。各ブラケット10は、複数のボルト9でコムプレート2の下面に固定されている。各支持軸11は、トラス1の幅方向に沿って互いに対向して配置されている。
【0016】
櫛7は、図2及び図3に示すように、板状の櫛本体12と、櫛本体12に設けられ、クリート4aに噛み合う櫛歯13とを有している。
【0017】
櫛本体12の両側部には、支持軸11が挿入されたスライド用溝14がそれぞれ設けられている。櫛7は、支持軸11がスライド用溝14に挿入されることにより、コムプレート2に支持されている。
【0018】
支持軸11は、スライド用溝14の長さ方向に沿ってスライド用溝14内をスライド可能になっている。櫛7は、支持軸11に対してスライド用溝14の長さ方向へスライドされることにより、踏段4が移動される方向へコムプレート2に対して変位可能になっている。また、櫛7は、スライド用溝14の長さの範囲でコムプレート2に対して変位される。スライド用溝14の長さは、踏段4の移動の停止制御の開始時から踏段4の移動が完全に停止するまでに踏段4が惰性で移動される所定の距離以上の長さとされている。
【0019】
櫛7は、支持軸11に対してスライドされることにより、櫛歯13がコムプレート2に対して離れる方向又は近づく方向へ変位される。即ち、櫛7は、踏段4の移動方向について、櫛歯13がコムプレート2から離れる前進位置と、前進位置よりも櫛歯13がコムプレート2に近づく後退位置との間で変位可能になっている。
【0020】
櫛7は、コムプレート2の下面に接触しながら前進位置と後退位置との間で変位される。従って、櫛7の前進位置と後退位置との間の変位は、コムプレート2と踏段4との間の空間で行われる。
【0021】
また、櫛7は、支持軸11を中心に回動可能になっている。即ち、櫛7は、櫛歯13が上下に変位される方向へコムプレート2に対して回動可能になっている。櫛本体12には、図3に示すように、櫛7のコムプレート2に対する回動によりコムプレート2の下面に接離する傾斜面15が設けられている。
【0022】
櫛歯13は、傾斜面15がコムプレート2の下面に接触する方向へ櫛7が回動されることにより下方へ変位され、傾斜面15がコムプレート2の下面から離れる方向へ櫛7が回動されることにより上方へ変位される。また、櫛歯13は、下方への変位によりクリート4aに噛み合い、上方への変位によりクリート4aとの噛み合いを外す。
【0023】
通常時は、櫛7が前進位置に変位されている。また、通常時は、櫛歯13が自重により下方へ変位されており、クリート4aに噛み合っている。
【0024】
櫛歯13が上方へ変位される方向への櫛7の回動は、検知装置16によって検知される。検知装置16は、櫛本体12の側部に固定された作動片17と、作動片17の上方への変位を検知する検知スイッチ18とを有している。
【0025】
ここで、図6は、図2のVI-VI線に沿った断面図である。図に示すように、作動片17は、板状部材の両端部を曲げて形成されている。櫛本体12には、作動片17の曲げられた一端部が固定されている。作動片17は、トラス1の幅方向へ櫛本体12から突出している。
【0026】
検知スイッチ18は、トラス1に固定されたスイッチブラケット19に複数のねじ20で取り付けられている。また、検知スイッチ18は、作動片17の他端部の上方に配置されている。さらに、検知スイッチ18は、スイッチ本体21と、スイッチ本体21に対して変位可能な操作部22とを有する接触式のリミットスイッチとされている。
【0027】
操作部22は、櫛7が回動されて櫛歯13がクリート4aから上方へ外れることにより、作動片17に押されて操作される。検知スイッチ18は、操作部22が操作されることにより検知信号を発生する。
【0028】
コムプレート2には、図3に示すように、前進位置から後退位置への櫛7の変位を阻止可能なストッパ装置23が設けられている。ストッパ装置23は、コムプレート2の下面に設けられた複数の凹部24内に収容される収容位置とコムプレート2の下面から下方へ突出する係合位置との間を変位可能な複数の係合体25と、給電を受けることにより係合体25を収容位置に保持する複数の電磁コイル26とを有している。前進位置から後退位置への櫛7の変位は、櫛7が各係合体25と係合することにより阻止される。
【0029】
ここで、図7は図1のコムプレート2を下方から見たときの状態を示す下面図、図8は図7のコムプレート2を前方から見たときの状態を示す前面図、図9は図7のコムプレート2の側方から見たときの状態を示す側面図である。図に示すように、コムプレート2の前端部にはトラス1の幅方向について対向する一対のブラケット取付部2aが形成され、コムプレート2の後端部にはトラス1の幅方向外側へ突出する一対のブロック取付部2bが形成されている。また、コムプレート2の各ブラケット取付部2a間の部分には、図9に示すように、丸め加工が施されて曲面部2cが形成されている。
【0030】
各ブラケット取付部2aには複数のねじ穴27が設けられ、各ブロック取付部2bには複数のボルト通し穴28が設けられている。ねじ穴27には、ブラケット10をコムプレート2に取り付けるためのボルト9が螺合される。ボルト通し穴28には、コムプレート2を固定ブロック5に取り付けるためのボルト6が通される。
【0031】
コムプレート2の下面には、一対の櫛案内部材29が固定されている。各櫛案内部材29は、トラス1の幅方向について櫛7を挟む位置に配置されている。櫛7は、各櫛案内部材29に案内されながら前進位置と後退位置との間を変位される。この例では、各櫛案内部材29間の距離は、トラス1の幅方向についての櫛7の長さよりも1〜2mm広くされている。櫛案内部材29の素材は、硬質で平滑な素材とされている。
【0032】
各凹部24は、トラス1の幅方向へ間隔を置いてコムプレート2に設けられている。各凹部24内には、段部30が設けられている。電磁コイル26は、トラス1内に設けられた複数の挿入穴にそれぞれ挿入されている。また、各電磁コイル26は、各凹部24に重なる位置にトラス1の幅方向に沿って配置されている。
【0033】
図10は、図3のストッパ装置23を示す拡大図である。また、図11は、図10の係合体25が収容位置に配置されている状態を示す斜視図である。さらに、図12は、図11の係合体25の取り付け状態を示す分解斜視図である。図において、係合体25は、ヒンジ31を介して段部30に取付られている。ヒンジ31は、係合体25及び段部30のそれぞれに複数のねじ32で固定されている。これにより、係合体25は、段部30に対してヒンジ31の軸を中心に回動可能になっている。係合体25は、ヒンジ31の軸を中心とした回動により、収容位置と係合位置との間を変位される。
【0034】
係合体25は、収容位置にあるときに段部30を避けて凹部24内に収容される。係合体25の大きさは、係合体25が収容位置にあるときに凹部24の内面に対して隙間が生じる大きさとされ、凹部24内の空間よりも小さくされている。係合体25の素材としては、例えば繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastic(FRP))等、軽量で所定の強度を持つ素材が用いられる。
【0035】
係合体25には、磁性体である鉄片32が固定されている。電磁コイル26は、給電を受けることにより鉄片32を吸引する電磁吸引力を発生する。電磁吸引力は、電磁コイル26への給電が停止されることにより消滅する。
【0036】
係合体25は、電磁コイル26への給電が停止されることにより、自重で係合位置へ変位される。また、係合体25は、電磁コイル26への給電が行われることにより、自重に逆らって上方へ変位され、係合位置から収容位置へ変位される。電磁コイル26への給電が継続しているときには、係合体25が収容位置に保持される。
【0037】
各係合体25が係合位置にあり、かつ櫛7が前進位置に存在しているときには、櫛歯13がクリート4aに噛み合う(即ち、傾斜面15がコムプレート2の下面に接触する)ことにより櫛7が各係合体25と係合し、櫛歯13が上方へ変位される方向(即ち、傾斜面15がコムプレート2の下面から離れる方向)へ櫛7が回動されることにより櫛7と各係合体25との係合が外れる。櫛7が各係合体25と係合しているときには、櫛7の変位が阻止され、櫛7と各係合体25との係合が外れているときには櫛7の変位の阻止が解除される。
【0038】
各係合体25が収容位置にあるときには、櫛7と各係合体25との係合は常に外れており、櫛7の変位の阻止は常に解除されている。
【0039】
検知スイッチ18からの検知信号(情報)は、エスカレータの運転を制御する制御装置(図示せず)へ送られる。制御装置は、検知スイッチ18からの情報に基づいて、エスカレータの運転を制御する。即ち、制御装置は、検知スイッチ18からの検知信号を受けていない状態では通常運転の制御を行い、検知スイッチ18からの検知信号を受けると、踏段4の移動を停止する制御を行う。また、制御装置は、検知スイッチ18からの検知信号を受けた後は、解除操作により解除されない限り、運転の停止を継続する。
【0040】
次に、動作について説明する。通常運転時には、櫛7が前進位置にあり、かつ櫛歯13がクリート4aに噛み合っている(図3)。このときには、各係合体25は係合位置に変位されており、櫛7の前進位置から後退位置への変位が、櫛7と各係合体25との係合により阻止されている。
【0041】
図13は、図3の櫛7と踏段4との間に異物が挟まったときの状態を示す側面図である。何らかの原因で例えば傘33の先端部等の異物が櫛7と踏段4との間に挟まると、櫛歯13が上方へ変位される方向へ櫛7が回動される。これにより、操作部22が作動片17により操作され、検知スイッチ18から検知信号が発生する。制御装置は、検知スイッチ18からの検知信号を受けると、踏段4の移動を停止する制御と、電磁コイル26への給電を行う制御とを行う。
【0042】
電磁コイル26への給電が行われると、電磁コイル26が鉄片32を吸引する電磁吸引力を発生し、係合体25が係合位置から収容位置へ変位される。これにより、櫛7と各係合体25との係合が外れる。
【0043】
また、踏段4の移動を停止する制御が行われると、踏段4は、慣性力を受けているため、直ちに停止されることはなく、減速しながら停止される。このとき、櫛7と各係合体25との係合が外れているので、傘33の先端部は櫛7を押しながら踏段4とともに移動される。
【0044】
図14は、図13の櫛7が異物に押されて変位された状態を示す側面図である。櫛7は、傘33の先端部により押されると、前進位置から後退位置へ向かって変位される。踏段4は、櫛7が後退位置に達するまでに完全に停止する。従って、傘33の先端部が櫛7と踏段4との間に引き込まれることが防止される。
【0045】
傘33の先端部が櫛7と踏段4との間に挟まれたときに、何らかの原因(例えば停電等)で係合体25が変位されず、係合体25の位置が係合位置のままになっている場合であっても、櫛歯13が上方へ変位される方向へ櫛7が回動されることにより、櫛7と各係合体25との係合が外れる。これにより、櫛7の前進位置から後退位置への変位が可能になり、傘33の先端部が櫛7と踏段4との間に引き込まれることが防止される。
【0046】
このようなエスカレータ乗降口の安全装置では、櫛歯13が上下に変位される方向へ櫛7がコムプレート2に対して回動可能で、かつ櫛7が前進位置と後退位置との間を変位可能になっており、前進位置と後退位置との間の櫛7の変位がコムプレート2と踏段4との間で行われるので、櫛7がコムプレート2に対して変位される距離を大きくすることができる。従って、櫛7と踏段4との間に異物が挟まれた後、踏段4が完全に停止するまで、踏段4の移動とともに櫛7をコムプレート2に対して変位させることができる。これにより、異物が櫛7と踏段4との間に挟まれた状態で踏段4が櫛7に対して移動されることを防止することができ、櫛7と踏段4との間に異物が引き込まれることの防止を図ることができる。従って、傘33等の異物や櫛7の破損の防止を図ることができる。
【0047】
また、櫛7の変位が櫛7と踏段4との間で行われるので、塵や埃等が櫛7とコムプレート2との間に進入する可能性を低下させることができる。従って、櫛7のコムプレート2に対する変位をより確実に行うことができ、櫛7と踏段4との間に異物が挟まれたことの検知をより確実に行うことができる。
【0048】
また、前進位置から後退位置への櫛7の変位は、櫛7がストッパ装置23と係合されることにより阻止され、ストッパ装置23と櫛7との係合は、櫛歯13が上方へ変位される方向へ櫛7が回動されることにより、外れるようになっているので、異物が櫛7と踏段4との間に挟まったときにのみ、前進位置から後退位置へ櫛7を変位可能にすることができる。これにより、通常運転時に櫛7が後退位置へ変位してしまうことを防止することができる。
【0049】
さらに、ストッパ装置23は、コムプレート2に設けられた凹部24に収容される収容位置とコムプレート2から下方へ突出する係合位置との間を変位可能な係合体25と、給電を受けることにより係合体25を収容位置に保持する電磁コイル26とを有しているので、異物が櫛7と踏段4との間に挟まったときに、櫛7と係合体25との係合をより確実に外すことができる。
【0050】
なお、上記の例では、踏段4の幅方向に亘って一体成形された櫛7がコムプレート2に支持されているが、複数の単位櫛と、各単位櫛を踏段4の幅方向へ並べて取り付けた共通の梁部材とを有する櫛がコムプレート2に支持されていてもよい。
【0051】
また、上記の例では、この発明がエスカレータに適用されているが、動く歩道にこの発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の実施の形態1によるエスカレータの乗降口を示す上面図である。
【図2】図1のエスカレータの乗降口の要部を示す拡大図である。
【図3】図2のエスカレータの乗降口の要部を示す側面図である。
【図4】図2のIV-IV線に沿った断面図である。
【図5】図2のV-V線に沿った断面図である。
【図6】図2のVI-VI線に沿った断面図である。
【図7】図1のコムプレートを下方から見たときの状態を示す下面図である。
【図8】図7のコムプレートを前方から見たときの状態を示す前面図である。
【図9】図7のコムプレートの側方から見たときの状態を示す側面図である。
【図10】図3のストッパ装置を示す拡大図である。
【図11】図10の係合体が収容位置に配置されている状態を示す斜視図である。
【図12】図11の係合体の取り付け状態を示す分解斜視図である。
【図13】図3の櫛と踏段との間に異物が挟まったときの状態を示す側面図である。
【図14】図13の櫛が異物に押されて変位された状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0053】
2 コムプレート、4 踏段、4a クリート(溝)、7 櫛(コム)、13 櫛歯、16 検知装置、23 ストッパ装置、24 凹部、25 係合体、26 電磁コイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベヤの乗降口に配置されたコムプレート、
上記コムプレートの下方を移動される踏段に設けられた溝に噛み合う櫛歯を有し、上記櫛歯が上下に変位される方向へ上記コムプレートに対して回動可能で、かつ上記踏段の移動方向について、上記櫛歯が上記コムプレートから離れる前進位置と、上記前進位置よりも上記櫛歯が上記コムプレートに近づく後退位置との間で変位可能になっており、上記前進位置と上記後退位置との間の変位を上記コムプレートと上記踏段との間の空間で行う櫛、
上記櫛歯が上方へ変位される方向への上記櫛の回動を検知する検知装置、及び
上記検知装置からの情報に基づいて、上記踏段の移動を制御する制御装置
を備えていることを特徴とする乗客コンベヤ乗降口の安全装置。
【請求項2】
上記コムプレートに設けられ、上記櫛と係合することにより上記前進位置から上記後退位置への上記櫛の変位を阻止するストッパ装置をさらに備え、
上記櫛は、上記櫛歯が上記溝に噛み合っているときに上記ストッパ装置と係合し、上記櫛と上記ストッパ装置との係合は、上記櫛歯が上方へ変位される方向へ上記櫛が回動されることにより外れるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベヤ乗降口の安全装置。
【請求項3】
上記コムプレートの下面に設けられた凹部に収容される収容位置と上記コムプレートから下方へ突出して上記踏段の移動方向について上記櫛に係合する係合位置との間で変位可能な係合体と、給電を受けることにより上記係合体を上記収容位置に保持する電磁コイルとを有するストッパ装置をさらに備え、
上記制御装置は、上記検知装置によって上記櫛の回動が検知されることにより、上記電磁コイルへの給電を行うことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベヤ乗降口の安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−52857(P2010−52857A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217018(P2008−217018)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】