説明

乗物用照明装置およびイルミネーションモジュール

【課題】 直径300mm程度の比較的広い照明範囲をスポット状に照明する場合であっても、照明範囲の全体を均一的に照射することができる乗物用照明装置を提供する。
【解決手段】 照明装置10は、LED光源20と、LED20から照射された光を散乱させる導光部材30とを有し、自動車内部の所定の照射面をスポット状に照明する装置である。導光部材30は、LED光源20からの光を透過させる略透明な樹脂母材に光散乱用の微小粒子を分散させた材料からなり、その一部に、LED光源20からの光を上記照射面に向けて集光する集光部35が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の車内をスポット状に照らす乗物用照明装置、および該乗物用照明装置を有する自動車用のイルミネーションモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車内天井部には、車内照明用の照明装置が配置されていることが多く、また、照明装置の種類としては、間接照明型のものと直接照明型のものとに分けられる。あるいは、それらを組み合わせてモジュール化したものも知られおり、これは「イルミネーションモジュール」と呼ばれることもある。
【0003】
ここで間接照明は、車内の比較的広い範囲を照明するためのものであり、例えば乗員の乗降時に使用されるものである。一方、直接照明は、比較的狭い範囲をスポット状に照明するものであり、例えば乗員が車内で地図を見る際に使用されるものである。このような直接照明型の照明装置は、その機能から「マップランプ」と呼ばれることもある。
【0004】
直接照明型の照明装置としては、光源と、その光源からの光を散乱(拡散)させるための導光部材とを有する構成のものが一般的である。光源は、例えばLED(発光ダイオード)であってもよく、LEDは、電球と比較して省電力で駆動でき、発熱量も小さく、さらに小型化にも有利であるといった利点を有している。導光部材は、例えばその表面にシボ加工が施された樹脂成形品であってもよく、このような導光部材を備える照明装置は例えば特許文献1にも開示されている。
【特許文献1】特許第3271445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、直接照明型の照明装置では、乗員(例えば運転手)の手元付近に位置するように設定された照射面における照明範囲が直径300mm程度となるように設定されていることが多い。これは、乗員が例えばA4サイズの地図を全体にわたって良好に見ることができることを想定しているためである。また、この種の照明装置おいては、乗員が細かい文字や図形も視認できるように、照明範囲における「照度ムラ(輝度ムラ)」および「色ムラ」が小さく、均一的に照明できることが望ましい。
【0006】
しかしながら、照明範囲が直径300mm程度の比較的広い範囲を照明しようとすると、中央部付近は明るいものの照明範囲の周縁部側に行くほど暗くなるといったように範囲全体を均一的に照らすことは困難であった。照明装置の実用に際し、「色ムラ」に関していえば、直径300mmの照明範囲に対しXYZ表色系(「CIE1964補助標準表色系」ともいう)での値が±0.015の範囲内に収まっていることが望ましく、「照度ムラ」に関していえば、直径300mmの照明範囲に対し照度差がおよそ±20ルクスの範囲内に収まっていることが望ましい。
【0007】
そこで本発明の目的は、直径300mm程度の比較的広い照明範囲をスポット状に照明する場合であっても、照明範囲の全体を均一的に照射することができる乗物用照明装置およびイルミネーションモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明の乗物用照明装置は、LED光源と、該LED光源から照射された光を散乱させる導光部材とを有し、乗物内部の所定の位置に設定された照射面をスポット状に照明する乗物用照明装置であって、前記導光部材は、前記LED光源からの光を透過させる略透明な樹脂母材に光散乱用の微小粒子を分散させた材料からなり、その一部に、前記LED光源からの光を前記照射面に向けて集光する集光部が形成されている。なお、照射面が設定される乗物内部の「所定の位置」とは、例えば自動車の場合であれば、乗員の手元付近となる位置である。
【0009】
このように構成された本発明の乗物用照明装置によれば、LED光源からの光は、導光部材を通過する際に微小粒子によって散乱させられるため、均一化した状態で導光部材から出射する。また一方で、LED光源からの光は集光部によって集光されるようになっており、本発明は、この集光部による光の集光作用と、微小粒子による上記光の散乱作用とを組み合わせたものである。このような構成の乗物用照明装置によれば、例えば、樹脂母材に分散させる微小粒子の割合および集光部形状を、使用するLED光源の特性に応じて変更することで、照明範囲の全体を均一的に照射することが可能となる。
【0010】
上記本発明の乗物照明装置はまた、LED光源を複数個有すると共に、導光部材には、LED光源のそれぞれに対応して集光部が複数形成されていてもよい。この場合、複数のLED光源は、それぞれのLED光源の光軸が前記照射面において互いに交差しないように(互いに重なり合わないように)配置されていることが好ましい。
【0011】
より具体的には、集光部は凸レンズ状に形成され、そのレンズ厚さは4.0〜8.0mmであり、焦点距離は630〜720mmであることが好ましい。また、LED光源と導光部材との間の距離は0.5〜3.0mmであることが好ましい。また、LED光源としては、白色LEDであり、色度範囲がXYZ表色系でx=0.264〜0.296、y=0.248〜0.305の範囲にあるものを使用可能である。
【0012】
また、本発明は自動車の天井部に取り付けられて使用されるイルミネーションモジュールに適用可能である。
【発明の効果】
【0013】
上述したように、本発明の乗物用照明装置およびイルミネーションモジュールによれば、LED光源からの光を、微小粒子を分散させた導光部材の集光部を通過させて散乱および集光させるように構成したため、直径300mm程度の比較的広い照明範囲をスポット状に照明する場合であっても、照明範囲の全体を均一的に照射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の照明装置が部分的に設けられた自動車天井部のイルミネーションモジュールを示す縦断面図である。図2は、図1のイルミネーションモジュールを下面側から見た平面図である。図3は、図1のイルミネーションモジュールの構成を説明するための分解斜視図である。
【0016】
図1に示すように、イルミネーションモジュール50は、自動車の車内を照明するため自動車の天井部41に取り付けられており、自動車の前後方向(図1の横方向)に延びる長尺な輪郭形状に形成されている。イルミネーションモジュール50の長手方向ほぼ中央には中央部55が形成されており、本実施形態においてはこの中央部55が乗員60のほぼ頭上に位置するようにイルミネーションモジュール50が配置されている。なお、図1に示す乗員60は、車内前部座席に座る乗員(例えば運転手)を示している。
【0017】
イルミネーションモジュール50は、中央部55を挟んで、前側の照明装置10と後側の照明装置11を有しており、これらの照明装置10、11はいずれも直接照明型(スポット型)の照明として構成されており、またその構造はいずれもほぼ同一となっている。前側の照明装置10は、図2に示すように、運転手席側を照らすためのものと、助手席側を照らすためのものとの2つが設けられている。後側の照明装置11は、後部座席側を照射するものであり、前側の照明装置10と同じように2つ設けられている。なお、本発明の主たる特徴部は照明装置10、11の構造であるが、その詳細な構成については他の図面を参照して後述するものとする。また、照明装置10、11はほぼ同一の構成となっているため、以下の説明では必要に応じて、前側の照明装置10のうちの1つのみを代表例として説明する。
【0018】
図3に示すように、イルミネーションモジュール50は、イルミネーションモジュール50全体を自動車の天井部41に取り付けるためのハウジングアッパー51と、照明装置10、11の導光板として機能する導光部材30と、導光部材30を保持するためのハウジングロア52とを有している。
【0019】
ハウジングアッパー51は、詳細には図示しないが、導光部材30との間に所定の空間を形成できるような形状とされており、この空間内に、照明装置10、11に用いられるLED光源20などが配置される。ハウジングロア52は、ハウジングアッパー51に対応する輪郭形状に形成されており、係合爪を介してハウジングアッパー51に取り付けられるように構成されている。ハウジングロア52の中央部には長尺な開口部52aが開口しており、組み立てた際に、導光部材30がこの開口部52aから露出されるようになっている(図2参照)。なお、導光部材30は、ハウジングアッパー51とハウジングロア52とによって挟み込まれるようにして保持されるものであり、導光部材30が脱落しないように開口部52aの輪郭形状は導光部材30の輪郭形状より小さく形成されている。
【0020】
導光部材30は、イルミネーションモジュール50の中央部55に対応する位置に円形部33が形成されており、円形部33の両側から板状部32a、32bが延出している。板状部32aは自動車の前側に向かって延びる部位であり、その先端側に照明装置10が設けられるようになっており、一方、板状部32bは後側に向かって延びる部位であり、その先端側に照明装置11が設けられるようになっている。
【0021】
なお、導光部材30は板状部32a、32bと円形部33とが一体的に形成された樹脂成形品であってもよいが、板状部32a、32bと円形部33とが別部材で構成されたものであってもよい。また、成形方法としては、射出成形や注型成形を利用することができ、板状部32a、32bの板厚(平均板厚)が4.0〜8.0mmであることが好ましい。光の散乱能は、板厚が厚くなるほど向上するが、板厚を厚くしすぎると、光の透過度が低下して照度が不足することもあるため、板厚は、照明装置に必要とされる照度に応じて適宜設定することが望ましい。
【0022】
次に、図4、図5を参照して照明装置10についてより詳細に説明する。図4は、導光部材の一部を上面側から見た拡大斜視図であり、図5は、図4のA−A切断線における断面図を示している。なお、前述したように照明装置10には、運転手席側用と助手席側用との2つがあるが、そのうちの一方についてのみ説明するものとする。
【0023】
図4に示すように、照明装置10は、上述した導光部材30と、光源としてA−A線に沿って一列に配置された3つのLED光源20とで構成されている。
【0024】
LED光源20はそれぞれ基板22に配置されており、各基板22は、例えば樹脂成形品からなる保持部材(不図示)によって保持されている。この保持部材はハウジングアッパー51に取り付けられ、これにより、LED光源20および基板22は保持部材を介してハウジングアッパー51に固定される。なお、照明装置10では、各LED光源20を、独立したそれぞれの基板22で保持させているが、3つのLED光源20を1つの基板に配置してもよい。
【0025】
LED光源20は、詳細には、図5(a)に示すようにLED光源20a、20b、20cとに分けられ、これら3つのLED光源は、それぞれの主光軸2a、2b、2c(以下、単に「主光軸2」ともいう)が略平行となるように、所定の配置ピッチで配置されている。なお、図1では、3本の主光軸2が照射面3上の一点で交差するように図示されているが実際には交差しないようになっている。仮に、光軸同士が交差する構成とすると、各LED光源20からの光が一点に集中し過ぎてしまい、その結果、例えば照度ムラが大きくなってしまう場合が多い。そのため、実際には、照射面3上において、各LED光源20の主光軸2a〜2cが互いに交差しないようにすることが好ましい。また、上記のように主光軸2a〜2cがほぼ平行となっている本実施形態の構成と、主光軸同士が照射面上の一点で交差する構成(主光軸同士が比較的大きな角度で交差する構成)とを比較すると、本実施形態の構成の方が、主光軸に沿う方向のより広い範囲で均一的な照明特性を得ることができるものとなる。この理由は、本実施形態の場合、主光軸2a〜2c同士がほぼ平行となっているため、地図等を実際に見る位置(実際の照射面)が予め設定された照射面3から多少ずれたとしても照明特性が大きく変化しないためである。このように、照明装置10が、主光軸方向の比較的広い範囲にわたって均一的に照明できるということは、乗員60が地図等を見る際に特別な位置合せ等をする必要がない点で好ましい。
【0026】
なお、図5の構成において主光軸2a〜2cは、垂直軸(不図示)に対して約30°の傾斜角で交差している。また、LED光源20は、例えば白色LEDであってもよく、また、その色特性としてはXYZ表色系でx=0.290〜0.300、y=0.290〜0.305の範囲内にあり、光度が7000〜15000mcdの範囲内にあるものが好ましい。
【0027】
導光部材30の板状部32aには、上記LED光源20a、20b、20cのそれぞれに対応して、各LEDから照射された光を照射面3に向けて集光するための集光部35a、35b、35c(以下、単に「集光部35」ともいう)が部分的に形成されている。このように、本実施形態の集光部35は導光部材30と一体的に形成されているため、当然ながら、導光部材30自体の材質が集光部35の材質となる。このように集光部35を導光部材30の一部に一体的に設けることは、例えば別部材として設けた集光部を後工程で導光部材に取り付ける方法と比較して、組立時の工程を減らすことができる点で好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。要するに、LED光源20からの光を集光するための集光部35が設けられていることが重要であり、集光部35の取付け構造など、集光部35の周辺構造については種々変更可能である。
【0028】
集光部35の材質、言い換えれば導光部材30の材質は、LED光源20からの光を透過する略透明なアクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂等からなる母材に、光を散乱させるための微小粒子を分散させたものである。この微小粒子は、例えば直径が2〜100μm程度の球状のシリコーン樹脂であり、母材に対して0.02〜0.06重量%の割合で分散している。このように微小粒子を分散させた母材に対して、可視域波長が400〜800nm程度の光が入射すると、光は母材内の微小粒子に反射されて光散乱(ミー散乱現象)を起こすため、光の指向性が比較的強いLED光源20の光を効果的に散乱させることができる。
【0029】
集光部35の形状は、LED光源20の発光特性、集光部35に必要とされる集光特性、集光部35と光源20との位置関係、および乗員60の手元までの距離(すなわち照射面3までの距離)などの基づいて設定されている。本実施形態では、集光部35は、入射面36と出射面37とを有する凸レンズ状となっており、入射面36および出射面37はいずれも凸状で鏡面処理された湾曲面となっている。
【0030】
より具体的には、入射面36および出射面37の曲率としては、乗員60の手元までの距離を考慮して焦点距離を650〜700±20mmに有するものが適している。また、主光軸2方向における集光部35の厚さ(レンズ厚さ)t35は、4.0〜8.0mmであることが好ましい。集光部35の直径、すなわち主光軸2に直交する平面に投影して見たときの集光部35の直径は、5.0〜10.0mmであることが好ましい。また、LED光源20と集光部35との間の距離L1は、0.5〜3.0mmであることが好ましい。
【0031】
導光部材30に集光部35が形成されていない場合、すなわち、単なる板状の導光部材にLED光源20からの光を入射させた場合、LED光源20の位置が導光部材に近すぎると(特に2mm以下程度)、乗員60側から見てLED光源20の配置された部位のみが局所的に明るくなってしまい、外観的に品位を低下させるおそれもある。これに対して、LED光源20の位置を導光部材から遠ざけることで対応することも可能であるが、これはイルミネーションモジュール50を大型化させる原因となる。したがって、本実施形態のように集光部35を利用することは、イルミネーションモジュール50を小型化できる点でも有利である。
【0032】
なお、導光部材30の上面には、例えばアルミ箔などのシート材からなり、集光部35の部位がくり抜かれた光遮断材(不図示)を配置することが好ましく、これにより、導光部材30のうちの集光部35以外の領域から光が漏れることが防止される。
【0033】
次に、上述のように構成された本照明装置10の動作について説明する。まず、乗員60が不図示のスイッチを押すことにより、照明装置10のLED光源20が点灯する。LED光源20から照射された光は、導光部材30の集光部35に入射する。集光部35に入射した光は、集光部35内に分散された微小粒子に反射することで散乱し、それと共にレンズとして構成された集光部35の集光効果により照射面3(図1参照)をスポット状に照らす。
【実施例】
【0034】
以下、本発明について実施例によって具体的に説明する。
(実施例)
本実施例では、下記条件にて照明装置10を作製した。
(1)導光部材
母材樹脂:アクリル樹脂(三菱レイヨン株式会社製)
微小粒子:シリコーン樹脂粒子(ジーイー東芝シリコーン株式会社製)、平均粒子径=4.5μm、分散濃度=0.04重量%。
集光部形状:外径=φ6.5mm、厚さt35=6.9mm、焦点距離=710mm
(2)光源LED
種類:白色LED(日亜化学株式会社製、型名「NSPW500BS」)
〔色度範囲(x=0.264〜0.296、y=0.248〜0.305)、光度=11000mcd、発光スペクトル=400〜800nm〕
周辺構造:配置ピッチ=15mm、光源と集光部との間の距離L1=1.0mm、3光源LEDの光軸の収束径=10mm以内、集光部から照射面までの距離=710mm
なお、ここで「3光源LEDの光軸の収束径」とは、照射面において、LED光源の各主光軸2a〜2cが収まる範囲の直径を意味するものである。
(比較例)
比較例として、光散乱用の微小粒子を分散させていない導光部材を用いて照明装置を作製した。
(1)導光部材
母材樹脂:アクリル樹脂(三菱レイヨン株式会社製)
微小粒子:なし
集光部形状:上記実施例と同じ(外径=φ6.5mm、厚さt35=6.9mm、焦点距離=710mm)
(2)光源LED
種類、周辺構造ともに上記実施例と同じ。
【0035】
(測定方法)
上記のように作製した実施例および比較例の照明装置を自動車の天井部41に配し、その自動車(5人乗りセダン型乗用車)を暗室内に置いた。照明装置を点灯させた状態で、照射面の位置で直径300mm範囲内の色度の測定(XYZ系)および照度の測定を行った。なお、色度の測定(XYZ系)および照度の測定には、コニカミノルタ社製の測定装置、色彩照度計CL−200を使用した。
【0036】
(測定結果および評価)
図6は、実施例および比較例の色ムラの評価グラフを示している。図6から分かるように、測定結果は、
(1)実施例
x座標系での値のばらつき:0.290〜0.300(最大差Δ=0.010)
y座標系での値のばらつき:0.290〜0.305(最大差Δ=0.015)
(2)比較例
x座標系での値のばらつき:0.288〜0.303(最大差Δ=0.015)
y座標系での値のばらつき:0.283〜0.307(最大差Δ=0.020)
であり、本実施例の照明装置は、比較例のものと比べて色度の差(色ムラ)が小さくなっていた。また、数値では示さないが、比較例では色の不連続的なムラ、線状の模様などが確認された。
【0037】
次に、図7は、実施例および比較例の照度ムラの評価グラフを示している。図7から分かるように、測定結果は、
(1)実施例の照度:10.1〜31.2ルクス(最大差Δ=21.1)
(2)比較例の照度:7.3〜51.2ルクス(最大差Δ=43.9)
であり、実施例の照明装置は、比較例のものと比べて照射面の測定範囲における照度ムラが小さくなっていた。これに対し、比較例では、光軸近傍である中央付近の照度が部分的に高くなる一方、周辺部にいくにつれて照度は大きく低下して、照度ムラが大きくなっていた。また、このような結果は、集光部35から照射面3までの距離が630〜720mmの範囲内で同様に得られることが確認された。これは、乗員60が見るマップの位置が予め設定された照射面3から多少はずれたとしてもマップは良好に照明されることを意味する。
【0038】
以上説明したような本実施例の照明装置によれば、集光部35から630〜720mm離れた照射面内であって、光軸2を中心とする直径300mmの測定範囲で、照射色が、XYZ表色系でx=0.290〜0.300、y=0.290〜0.305の範囲にあり、そのばらつきが±0.015内に収まる、「色ムラ」の小さい良好な照射特性を得ることができた。また、同測定範囲での照度は、10.0〜40.0ルクスの範囲にあり、そのばらつきはおよそ±20ルクス内に収まる、「照度ムラ」の小さい良好な照射特性を得ることができた。
【0039】
以上、本発明についてイルミネーションモジュール50およびそれに設けられた照明装置10、11を例に挙げて説明したが、本発明はそれに限らず種々変更可能である。例えば、イルミネーションモジュールは、照明装置10、11をそれぞれ2つずつ有してなくてもよく、例えば運転手席側を照らす照明装置10を1つだけ有するものであってもよい。また、集光部35の形状も必要に応じて変更可能であり、例えば一方の面が凸状であり、他方の面が平面状または凹状となっていてもよい。そして、3つの集光部35a〜35cの形状は同一であってもよいし、配置される位置に応じて異なるものとしてもよい。また、照明装置10において、必要であれば、3つのLED光源20の内の1つまたは2つのみを選択的に点灯させることができるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の照明装置が部分的に設けられた自動車天井部のイルミネーションモジュールを示す縦断面図である。
【図2】図1のイルミネーションモジュールを下面側から見た平面図である
【図3】図1のイルミネーションモジュールの構成を説明するための分解斜視図である
【図4】導光部材の一部を上面側から見た拡大斜視図である。
【図5】図4のA−A切断線における断面図である。
【図6】実施例および比較例の色ムラの評価グラフを示す図である。
【図7】実施例および比較例の照度ムラの評価グラフを示す図である。
【符号の説明】
【0041】
2、2a、2b、2c 主光軸
3 照射面
10、11 照明装置
20、20a、20b、20c LED光源
22 基板
30 導光部材
32a、32b 板状部
33 円形部
35、35a、35b、35c 集光部
36 入射面
37 出射面
50 イルミネーションモジュール
51 ハウジングアッパー
52 ハウジングロア
52a 開口部
55 中央部
60 乗員

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED光源と、該LED光源から照射された光を散乱させる導光部材とを有し、乗物内部の所定の位置に設定された照射面をスポット状に照明する乗物用照明装置であって、
前記導光部材は、前記LED光源からの光を透過させる略透明な樹脂母材に光散乱用の微小粒子を分散させた材料からなり、その一部に、前記LED光源からの光を前記照射面に向けて集光する集光部が形成されている乗物用照明装置。
【請求項2】
前記LED光源を複数個有すると共に、前記導光部材には、前記LED光源のそれぞれに対応して前記集光部が複数形成されている、請求項1に記載の乗物用照明装置。
【請求項3】
前記複数のLED光源は、それぞれのLED光源の光軸が前記照射面において互いに交差しないように配置されている、請求項2に記載の乗物用照明装置。
【請求項4】
前記集光部は凸レンズ状に形成され、そのレンズ厚さは4.0〜8.0mmであり、焦点距離は630〜720mmである、請求項1から3のいずれか1項に記載の乗物照明装置。
【請求項5】
前記LED光源と前記導光部材との間の距離が0.5〜3.0mmである、請求項1から4のいずれか1項に記載の乗物照明装置。
【請求項6】
前記LED光源は白色LEDであり、色度範囲がXYZ表色系でx=0.264〜0.296、y=0.248〜0.305の範囲にある、請求項1から5のいずれか1項に記載の乗物照明装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の乗物用照明装置を1つ以上有し、自動車の天井部に取り付けられて使用されるイルミネーションモジュール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−123794(P2006−123794A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316048(P2004−316048)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000251060)林テレンプ株式会社 (134)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】