説明

乗用型作業機の座席支持構造

【課題】収穫作業時には座席が機体にしっかりと固定されて収穫操縦が行い易く畦道の移動走行等には座席が柔らかくサスペンションで機体に支持されて路面の凹凸による走行ショックを吸収して乗り心地を良くする。
【解決手段】乗用型作業機の座席(1)の下部に弾性支持状態と固定支持状態とに切り換え自在な座席支持機構(27)を設ける。また、座席(1)の前側或は後側の一方を横軸(3)で機体側に枢支し、座席(1)の他方の底板(2)を受ける受座(23)をばね受け(5)或は固定受け(7)に切換え可能に設けて座席支持機構(27)を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインや各種収穫機などの乗用型作業機における座席支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用型作業機におけるオペレータが着座する座席は機体に固定するのが一般的であるが、例えば、特開平9−290672号公報に記載の如く、座席を平行リンクで機体に支持すると共に引っ張りスプリングと流体式のダンパでサスペンション支持に構成にしたものがある。
【特許文献1】特開平9−290672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
乗用型作業機で作業を行う場合には、圃場の硬軟や作物の生育状況に応じて操縦ハンドルや操向レバー等の操縦操作具を細かく操作しながら操縦を行うために座席がしっかりと機体に固定されている方が操縦操作を行い易い。一方、単なる路上走行時には、ゆったりと前方を見ながら操縦するために、座席は柔らかいサスペンションで支持されている方が路面の凹凸を吸収して乗り心地を良くする。
【0004】
そこで、本発明では、収穫作業時には座席が機体にしっかりと固定されて収穫操縦が行い易く畦道の移動走行等には座席が柔らかくサスペンションで機体に支持されて路面の凹凸による走行ショックを吸収して乗り心地を良くするようにすることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
すなわち、請求項1記載の発明は、座席(1)の下部に弾性支持状態と固定支持状態とに切り換え自在な座席支持機構(27)を設けたことを特徴とする乗用型作業機の座席支持構造とした。
【0006】
この構成で、収穫作業時には座席支持機構(27)を固定支持状態にすることで座席(1)が機体と一体に動いて細かい操縦操作が行い易く、路上走行時には座席支持機構(25)を弾性支持状態にすることで座席(1)が機体に対して弾性的に柔らかく支持されて乗り心地が良くなる。
【0007】
請求項2記載の発明では、座席(1)の前側或は後側の一方を横軸(3)で機体側に枢支し、座席(1)の他方の底板(2)を受ける受座(23)をばね受け(5)或は固定受け(7)に切換え可能に設けて座席支持機構(27)を構成したことを特徴とする請求項1に記載の乗用型作業機の座席支持構造とした。
【0008】
この構成で、受座(23)を固定受け(7)に切り換えると収穫作業用の座席(1)となり、受座(23)をばね受け(5)に切り換えると路上走行用の座席(1)となる。
また、請求項3記載の発明は、支持台(22)に対して前後に移動固定可能にしたスライド台(4)の前端に横軸(3)で座席(1)を枢支すると共に支持台(22)に座席(1)の底板(2)を受ける圧縮ばね(24)を設け、座席(1)を後方へ移動した場合には圧縮ばね(24)が前記横軸(3)の近くとなって座席(1)の後部に加わるオペレータの重みで弾性支持となり、座席(1)を前方へ移動固定した場合には圧縮ばね(24)が座席(1)の底板(2)後部を受けて圧縮ばね(24)が殆ど撓まないで固定支持となる座席支持機構(25)を構成したことを特徴とする請求項1に記載の乗用型作業機の座席支持構造とした。
【0009】
この構成で、座席(1)を後方へ移動すると座席(1)に加わるオペレータの体重が底板(2)を介して大きなモーメント力となって圧縮ばね(24)に加わって弾性支持状態となり、座席(1)を前方へ移動すると、オペレータの体重が直接圧縮ばね(24)に加わって固い圧縮ばね(24)が殆ど撓まずに固定支持状態となる。
【0010】
また、請求項4記載の発明では、支持台(22)に対して前後に移動固定可能にしたスライド台(4)の前端に横軸(3)で座席(1)を枢支し、支持台(22)に座席(1)の底板(2)を受けるばね受け台(26)を設けると共にスライド台(4)に固定受け台(25)を設け、座席(1)を後方へ移動した場合にはばね受け台(26)が座席(1)の底板(2)を受けて弾性支持となり、座席(1)を前方へ移動固定した場合には底板(2)がばね受け台(26)から外れて固定受け台(25)が底板(2)を受けて固定支持となる座席支持機構(25)を構成したことを特徴とする請求項1に記載の乗用型作業機の座席支持構造とした。
【0011】
この構成で、座席(1)を後方へ移動すると座席(1)をばね受け台(26)で支持して弾性支持状態となり、座席(1)を前方へ移動すると座席(1)を固定受け台(25)で支持して固定支持状態となる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によると、座席(1)の座席支持機構(27)を弾性支持状態に切り換えると路上走行に適した座席支持状態になり、座席支持機構(27)を固定支持状態に切り換えると収穫作業に適した座席支持状態に変えられる。
【0013】
請求項2記載の発明によると、受座(23)を固定受け(7)側にするかばね受け(5)側にするかの簡単な操作で座席支持機構(27)を切り換えられる。
請求項3記載の発明によると、座席(1)を前後に移動するだけで、弾性支持状態或は固定支持状態に切り換えられる。
【0014】
請求項4記載の発明によると、座席(1)前後に移動するだけで、弾性支持状態或は固定支持状態に切り換えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。
本明細書では、左側及び右側とはコンバインが前進する方向に向いたときの方向を言う。
【0016】
図10は、コンバインの右側面図で、機体の最前部に刈取装置10を設け、この刈取装置10で刈り取った穀稈を機体の左側に設ける脱穀装置11へ搬送する穀稈搬送装置12を設け、機体の右側に操向レバー13を立設するフロントパネル14と変速レバー15を立設するサイドパネル16で前側と左側が囲まれた乗車部17を設け、この乗車部17後部の原動枠21上に座席1を設けている。この座席1の後側に収穫穀粒を貯留するグレンタンク18を設け、グレンタンク18の後部から立ち上げた揚穀筒19に連接して起伏可能に穀粒排出オーガ20を設けている。
【0017】
図1(a),(b)は、座席1の座席支持機構27の第一実施例で、原動枠21に取り付けた支持筒8に上下調節可能に嵌装する支持軸9の上端に支持台22を固着し、この支持台22にスライド台4を前後にスライドして適宜の位置で固定可能に設けている。
【0018】
さらに、スライド台4の前端に横軸3を設け、この横軸3に座席1の底板2の先端を枢支し、該底板2の後部を受ける位置にばね受け5と固定受け7を一体にした受座23を支軸6で回動してばね受け5で底板2を受けたり固定受け7で底板2を受けたりするように切換え固定可能にした座席支持機構27を設けている。
【0019】
図1(a)は、収穫作業時の座席1で、前記受座23を固定受け7で座席1の底板2を受ける状態にしている。この状態では座席1が機体の動きに追従して動き、圃場の状態や作物の生育状況に応じた操縦操作が行い易い。
【0020】
図1(b)の状態は、路上走行時の座席1で、前記受座23をばね受け5で座席1の底板2を受ける状態にしている。この状態では座席1が弾力的に支持されるので、機体の前方を見ながらゆったりと操縦出来て乗り心地が良い。
【0021】
図2(a),(b)は、座席1の座席支持機構27の第二実施例で、第一実施例の受座23が無く、代わりに横軸3の近くに硬めの圧縮ばね24を設けている。
図2(a)は、収穫作業時の座席1で、スライド台4を前へ移動して固定することで、圧縮ばね24が底板2を受けるが、圧縮ばね24の底板2を受けている位置が座席1の後部で圧縮ばね24が固いために殆ど撓まず実質的に固定支持となって、座席1が機体の動きに追従して動き、圃場の状態や作物の生育状況に応じた操縦操作が行い易い。また、座席1が前傾になっていることで座席1に座ったオペレータが機体の前側を見易い効果も有る。
【0022】
図2(b)の状態は、路上走行時の座席1で、スライド台4を後へ移動して固定することで、圧縮ばね24が底板2の凹部28に入り込んで座席1の荷重を受けている。この圧縮ばね24の位置は横軸3の近くであるために座席1のモーメント荷重を強く受けて硬めの圧縮ばね24であっても撓んで弾力的に支持されるので、路面の凹凸が座席で吸収されて機体の前方を見ながらゆったりと操縦出来て乗り心地が良い。
【0023】
図3(a),(b)は、座席1の座席支持機構27の第三実施例で、第一実施例の受座23の代わりに、スライド台4に固定受け台25を設け、支持台22にばね受け台26を設けている。図示のばね受け台26は板ばねで示しているが、圧縮ばねであっても良い。
【0024】
図3(a)は、収穫作業時の座席1で、スライド台4を後へ移動して固定することで、座席1の底板2が固定受け台25に載って座席1が機体の動きに追従して動き、圃場の状態や作物の生育状況に応じた操縦操作が行い易い。
【0025】
図3(b)の状態は、路上走行時の座席1で、スライド台4を後へ移動して固定することで、座席1の底板2がばね受け台26に載って座席1を弾力的に支持して、乗り心地の良い状態で操縦できる。
【0026】
図4乃至図7は、穀粒排出オーガ20の構成を示している。
この穀粒排出オーガ20は、揚穀筒19に屈曲可能に設ける第一オーガ30と第一オーガ30に対して伸縮可能にする第二オーガ31と先端の排出シュート32で構成し、第二オーガ31を第一オーガ30に対して180°回転するようにしている。なお、排出シュート32を第二オーガ31に対して約30°回転スイングするようにしても良い。
【0027】
第二オーガ31の略全長にわたって排出シュート32の排出口32a側と反対側に膨出部33を設けている。この膨出部33の前後左右膨出壁面33a,33bは約45°の傾斜面に形成している。
【0028】
第一オーガ30に対して第二オーガ31を回動可能に連結し第一オーガ30に取り付けたスイングモータ34のピニオンギヤ35を第二オーガ31に固着の大ギヤ36に噛み合わせ、第二オーガ31を回動する。回動角度は大ギヤ36に取り付けたセンサプレート39が第一オーガ30に取り付けたスイングセンサ38に当たることで検出する。
【0029】
穀粒排出オーガ20で穀粒を排出中に排出を中断し収穫作業を継続する場合には、まず第二オーガ31を180°回転して排出シュート32をその排出口32aを上向きにして、第二オーガ31が第一オーガ30に収納されて縮むが、その時に筒内の穀粒が膨出部33に落下して穀粒が第二オーガ31内螺旋の縮みに邪魔にならず穀粒が損傷されることもない。
【0030】
なお、図示を省略するが、排出シュート32を第二オーガ31に対して回動可能にする場合において、穀粒排出オーガ20を機体上に収納して刈取装置10を上昇すると、排出シュート32が刈取装置10に当たるのを防ぐために、刈取装置10が一定高さ以上に上昇すると自動で排出口32aを横にα°傾いた第二収納位置(図6参照)へ回動させるようにする。この第二収納位置になると手動で排出シュート32を回そうとしても上向きに回動することは可能でもこの第二収納位置から下方へは回動出来なくする。
【0031】
第二収納位置は、制御装置のメンテナンスモードで変更可能にして、適宜の角度を第二収納位置とすることが出来る。
また、第一オーガ30に対する第二オーガ31の伸び長さは、最伸びと半分伸びと標準伸びの三段階設定にしたり、伸び設定ダイヤルで適宜の伸び長さに設定したり出来て、伸びが完了するまで穀粒の排出が始まらないようにしている。
【0032】
図8と図9は、穀稈搬送装置12から穀稈を受け継ぎ脱穀装置11へ穀稈の穂先を供給するフィードチェン40の前部を示す図面である。
フィードチェン40の外側部を覆う側壁板41を外側へ回動して脱穀装置11の側面を解放して点検、修理を行うが、側壁板41の開度を規制する規制プレート42を側壁板41の内側で機体フレームの側壁板支点軸44の近傍に設け、この規制プレート42の端部に設ける長穴43内で側壁板41を開くようにした。
【0033】
また、フィードチェン40に注油する注油ノズル45への注油ホース46をフィードチェンフレーム47の先端に設ける孔を通して配管している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a)、(b)本発明第一実施例を示す座席の左側面図である。
【図2】(a)、(b)本発明第第二実施例を示す座席の左側面図である。
【図3】(a)、(b)本発明第第三実施例を示す座席の左側面図である。
【図4】穀粒排出オーガの一部を断面にした右側面図である。
【図5】穀粒排出オーガの一部拡大右側面図である。
【図6】穀粒排出オーガの正面図である。
【図7】穀粒排出オーガの正断面図である。
【図8】コンバインの一部拡大平面図である。
【図9】コンバインの一部拡大右側面図である。
【図10】コンバイン全体の右側面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 座席
3 横軸
4 スライド台
5 ばね受け
7 固定受け
22 支持台
23 受座
24 圧縮ばね
25 固定受け台
26 ばね受け台
27 座席支持機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席(1)の下部に弾性支持状態と固定支持状態とに切り換え自在な座席支持機構(27)を設けたことを特徴とする乗用型作業機の座席支持構造。
【請求項2】
座席(1)の前側或は後側の一方を横軸(3)で機体側に枢支し、座席(1)の他方の底板(2)を受ける受座(23)をばね受け(5)或は固定受け(7)に切換え可能に設けて座席支持機構(27)を構成したことを特徴とする請求項1に記載の乗用型作業機の座席支持構造。
【請求項3】
支持台(22)に対して前後に移動固定可能にしたスライド台(4)の前端に横軸(3)で座席(1)を枢支すると共に支持台(22)に座席(1)の底板(2)を受ける圧縮ばね(24)を設け、座席(1)を後方へ移動した場合には圧縮ばね(24)が前記横軸(3)の近くとなって座席(1)の後部に加わるオペレータの重みで弾性支持となり、座席(1)を前方へ移動固定した場合には圧縮ばね(24)が座席(1)の底板(2)後部を受けて圧縮ばね(24)が殆ど撓まないで固定支持となる座席支持機構(25)を構成したことを特徴とする請求項1に記載の乗用型作業機の座席支持構造。
【請求項4】
支持台(22)に対して前後に移動固定可能にしたスライド台(4)の前端に横軸(3)で座席(1)を枢支し、支持台(22)に座席(1)の底板(2)を受けるばね受け台(26)を設けると共にスライド台(4)に固定受け台(25)を設け、座席(1)を後方へ移動した場合にはばね受け台(26)が座席(1)の底板(2)を受けて弾性支持となり、座席(1)を前方へ移動固定した場合には底板(2)がばね受け台(26)から外れて固定受け台(25)が底板(2)を受けて固定支持となる座席支持機構(25)を構成したことを特徴とする請求項1に記載の乗用型作業機の座席支持構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate