説明

乗用車のバンパー

【課題】本発明は、樹脂製のバンパーモールにおいてゲート部の仕上げ作業を行わなくても良いようにして、コスト低減を図ることを目的とする。
【解決手段】本発明は、バンパーカバー30に対して樹脂製のバンパーモール40を取付ける際に、そのバンパーモール40とバンパーカバー30との隙間に、その隙間を埋めるための板材であるリテーナ50bを介在させる構成の乗用車のバンパーであって、バンパーモール40は、型成形されたそのバンパーモール40から前記型のゲート部分で固化した樹脂を切断したときに生じる切断痕を備えるゲート部43uを備えており、バンパーモール40のゲート部43uがリテーナ50bの端縁(突条部53)で覆われるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパーカバーに対して樹脂製のバンパーモールを取付ける際に、そのバンパーモールと前記バンパーカバーとの隙間に、その隙間を埋めるための板材であるリテーナを介在させる構成の乗用車のバンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車のバンパーカバー、及びそのバンパーカバーの表面に取付けられるバンパーガーニッシュ、バンパーモール等には、一般的に、樹脂の射出成形品が使用されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−119459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂の射出成形では、金型内に形成された製品成形部であるキャビティにゲートを介して溶融した樹脂を圧入し、バンパーモール等の製品を成形する。このため、型開きをして金型内からバンパーモール等の製品を取出す段階では、その製品にゲート部分で固化した樹脂も一体化されている。したがって、製品からゲート部分の樹脂を切り離す必要がある。
前記製品からゲート部分の樹脂を切り離した部分(製品のゲート部)は樹脂の切断痕等で面が粗くなっている。このため、安全性や見栄えを考慮して、後工程で製品のゲート部を切削等により仕上げ加工する必要がある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、樹脂製のバンパーモールにおいてゲート部の仕上げ作業を行わなくても良いようにして、コスト低減を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、バンパーカバーに対して樹脂製のバンパーモールを取付ける際に、そのバンパーモールと前記バンパーカバーとの隙間に、その隙間を埋めるための板材であるリテーナを介在させる構成の乗用車のバンパーであって、前記バンパーモールは、型成形されたそのバンパーモールから前記型のゲート部分で固化した樹脂を切断したときに生じる切断痕を備えるゲート部を備えており、前記バンパーモールのゲート部が前記リテーナの端縁によって覆われるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、バンパーモールのゲート部がリテーナの端縁で覆われているため、切断痕を備えるバンパーモールのゲート部が露出することがない。このため、前記切断痕を削る等のバンパーモールのゲート部における仕上げ加工が不要になり、コスト低減を図ることができる。
【0008】
請求項2の発明によると、バンパーモールのゲート部は、前記バンパーモールの端縁に切欠き状に形成されており、リテーナは、バンパーモールの内壁面に沿って配置されるリテーナ本体部と、そのリテーナ本体部の端縁位置で前記バンパーモールの肉厚分だけそのバンパーモール側に突出する突条部とを備えており、前記リテーナの突条部が前記バンパーモールのゲート部と嵌合することで、前記突条部が前記ゲート部を覆う構成であることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明によると、リテーナの突条部には、バンパーモールのゲート部の壁面に形成された突起を収納可能な窪みが形成されていることを特徴とする。
このため、バンパーモールのゲート部とリテーナの突条部とを隙間無く嵌合させることができ、見栄えが低下しない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、樹脂製のバンパーモールにおいてゲート部の仕上げ加工を行わなくても良くなり、コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1に係る乗用車のフロントバンパーにおけるバンパーカバーの右半分を前方から見た模式正面図である。
【図2】前記バンパーカバーに対するバンパーモールの取付け構造を表す縦断面図(図1のII-II断面図)である。
【図3】前記バンパーモールを裏側から見た斜視図(A図)、及びA図のB部拡大図(B図)である。
【図4】前記バンパーモールを下方から見た斜視図(A図)、A図のB部拡大図(B図)である。
【図5】図2のV部拡大図である。
【図6】図5のVI-VI矢視平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態1]
以下、図1から図6に基づいて本発明の実施形態1に係る乗用車のフロントバンパーについて説明する。
なお、図中の前後左右、及び上下は乗用車の前後左右、及び上下に対応している。
【0013】
<フロントバンパー20の概要について>
フロントバンパー20は、図1、図2に示すように、乗用車の前下部に設けられる衝撃緩和装置であり、車幅方向に延びるバンパーリインフォース(図示省略)と、そのバンパーリインフォースの前面に取付けられる緩衝部材であるバンパーアブソーバ22(図2参照)と、前記バンパーアブソーバ22及びバンパーリインフォースを前方から覆うバンパーカバー30とから構成されている。
バンパーカバー30は、フロントバンパー20の外形意匠を構成する部材であり、図1に示すように、その中央位置に車幅方向に延びる略角形の空気取入れ口34が形成されている。そして、バンパーカバー30の空気取入れ口34の部分に補強用、及び装飾用のバンパーグリル36が嵌め込まれている。
また、バンパーカバー30の空気取入れ口34の左右両側には、図1に示すように、その空気取入れ口34の上側開口縁に沿ってバンパーモール40が取付けられている。
【0014】
<バンパーモール40について>
バンパーモール40は、バンパーカバー30の装飾用部品であり、左右のバンパーモール40が一対で使用される。左右のバンパーモール40は等しい構造であり、それらのバンパーモール40が左右対称に形成されている。このため、以下、代表して右側のバンパーモール40について説明する。
バンパーモール40は、樹脂の射出成形品であり、図1に示すように、縦モール部41と、横モール部43と、その横モール部43、縦モール部41間に形成された湾曲部44とにより正面形状が略横向きL字形に形成されている。さらに、バンパーモール40の縦モール部41、湾曲部44、及び横モール部43は、図2に示すように、バンパーカバー30の空気取入れ口34における開口縁の縦断面形状に合わせて断面略L字形に形成されている。即ち、バンパーモール40は、バンパーカバー30の前面32(意匠面32)と空気取入れ口34の天井面34eとの角部を下側から覆えるように断面略L字形に形成されている。
【0015】
そして、バンパーモール40の凸面側がそのバンパーモール40の意匠面40e(表面)となり、前記バンパーモール40の凹面側がそのバンパーモール40の内壁面40nとなる。
バンパーモール40の内壁面40nには、図2、図3(A)等に示すように、そのバンパーモール40に対して後記する第1リテーナ50a、第2リテーナ50bを位置決めするための位置決め突起47a,47b,47cが形成されている。
【0016】
また、バンパーモール40(縦モール部41、湾曲部44、及び横モール部43)の外周縁(上側周縁)には、図2に示すように、帯状のプロテクタ45が固定されるプロテクタ固定面45pが形成されている。プロテクタ45は、可撓性を有する樹脂材であり、バンパーモール40の外周縁がバンパーカバー30の意匠面32に直接的に接触しないようにして、前記意匠面32の傷付きを防止するものである。
さらに、バンパーモール40の内周縁(下側周縁)には、図3、図4に示すように、バンパーモール40のエッジ部分を断面円弧状に形成した面取り縁部40fが形成されている。
【0017】
また、バンパーモール40の縦モール部41の内周縁と、横モール部43の内周縁(下側周縁)には、図3(B)、図4(B)等に示すように、面取り縁部40fを浅い角形窪み状に切り欠いた状態で複数のゲート部41u,43uが形成されている。ゲート部41u,43uは、バンパーモール40を射出成形する際、金型のキャビティ(製品成形部)内で成形されたバンパーモール40(製品)と金型のゲート部分で固化した樹脂とを切断する際に形成された切断痕を備える部位である。このため、ゲート部41u,43uの壁面には、図6に示すように、鋭い突起43tや凹部(図示省略)等が形成されている。
【0018】
<第1リテーナ50a、第2リテーナ50bについて>
バンパーモール40とバンパーカバー30との間には、図2に示すように、そのバンパーモール40とバンパーカバー30との隙間を埋めるための樹脂製の板材である第1リテーナ50a、第2リテーナ50bが挟まれている。ここで、バンパーモール40は、肉厚寸法をほぼ一定に設定することで、そのバンパーモール40の成形時に金型のキャビティ(製品成形部)内の樹脂がほぼ均一に冷却されるようにし、樹脂の凝固過程で意匠面40eに窪み等が生じないようにしている。このように、バンパーモール40の肉厚寸法がほぼ一定であるため、そのバンパーモール40とバンパーカバー30との間には形状の違いに起因して部分的に隙間が形成されることがある。第1リテーナ50a、第2リテーナ50bは、バンパーモール40とバンパーカバー30間の隙間を埋めて、バンパーモール40を安定した状態でバンパーカバー30に取付けられるようにする部材である。
【0019】
第1リテーナ50aは、図3(A)に示すように、バンパーモール40の縦モール部41とバンパーカバー30間の隙間を埋める板状部材であり、第2リテーナ50bはバンパーモール40の横モール部43とバンパーカバー30間の隙間を埋める板状部材である。
第1リテーナ50aは、図3(A)に示すように、バンパーモール40(縦モール部41)の内壁面40nに沿って配置されるリテーナ本体部51と、そのリテーナ本体部51の端縁位置で、縦モール部41のゲート部41uに対応する位置に形成された突条部53とを備えている。第2リテーナ50bは、図2、図3(A)(B)に示すように、バンパーモール40(横モール部43)の内壁面40nに沿って配置されるリテーナ本体部51と、そのリテーナ本体部51の端縁位置で、横モール部43のゲート部43uに対応する位置に形成された突条部53とを備えている。
【0020】
第1、第2リテーナ50a,50bの突条部53は、バンパーモール40のゲート部41u,43uと嵌合してそれらのゲート部41u,43uを覆う部分である。突条部53は、図2、図3(B)等に示すように、リテーナ本体部51の端縁位置でそのリテーナ本体部51に対してバンパーモール40側に突出するように形成されている。そして、突条部53の突出寸法が、図5(図2のV矢視拡大図)に示すように、バンパーモール40の肉厚寸法にほぼ等しい値に設定されている。また、突条部53の長さ寸法が、図6(図5のVI-VI矢視断面図)に示すように、バンパーモール40のゲート部41u,43uの幅寸法とほぼ等しい値に設定されている。さらに、突条部53の段差面53d(図5、図6参照)には、バンパーモール40のゲート部41u,43uの壁面に形成された鋭い突起43t等を収納できる窪み53hが形成されている。
【0021】
また、第1、第2リテーナ50a,50bのリテーナ本体部51には、バンパーモール40の内壁面40nに形成された位置決め突起47a,47b,47cが嵌合する位置決め用開口(図番省略)が形成されている。このため、リテーナ本体部51の位置決め用開口とバンパーモール40の位置決め突起47a,47b,47cとを嵌合させることで、バンパーモール40に対して第1、第2リテーナ50a,50bが位置決めされ、第1、第2リテーナ50a,50bの突条部53がバンパーモール40のゲート部41u,43uと嵌合するようになる。これにより、バンパーモール40のゲート部41u,43uが第1、第2リテーナ50a,50bの突条部53により覆われるようになる。
【0022】
<バンパーカバー30に対するバンパーモール40の取付けについて>
バンパーカバー30に対してバンパーモール40を取付ける場合には、先ず、バンパーモール40の内壁面40nに第1、第2リテーナ50a,50bをセットする。即ち、バンパーモール40の位置決め突起47a,47b,47cを第1、第2リテーナ50a,50bのリテーナ本体部51の位置決め用開口に嵌合させることで、バンパーモール40に対して第1、第2リテーナ50a,50bが位置決めされる。これにより、第1、第2リテーナ50a,50bの突条部53がバンパーモール40のゲート部41u,43uと嵌合するようになる。即ち、バンパーモール40のゲート部41u,43uが第1、第2リテーナ50a,50bの突条部53によって覆われる。
この状態で、図1、図2に示すように、バンパーモール40と第1、第2リテーナ50a,50bをバンパーカバー30の所定位置にセットし、連結用クリップ(図示省略)等でバンパーモール40と第1、第2リテーナ50a,50bをバンパーカバー30に取付ける。
このとき、バンパーモール40のゲート部41u,43uが第1、第2リテーナ50a,50bの突条部53に覆われているため、ゲート部41u,43uの鋭い突起43t等に手が触れることがなく安全である。さらに、ゲート部41u,43uが外から見えないため、見栄えが低下しない。
【0023】
<本実施形態に係る乗用車のフロントバンパー20の長所について>
本実施形態に係る乗用車のフロントバンパー20によると、バンパーモール40のゲート部41u,43uが第1、第2リテーナ50a,50bの突条部53に覆われているため、切断痕を備えるバンパーモール40のゲート部41u,43uが露出することがない。このため、前記切断痕を削る等のバンパーモール40のゲート部41u,43uにおける仕上げ加工が不要になり、コスト低減を図ることができる。
また、第1、第2リテーナ50a,50bの突条部53には、バンパーモール40のゲート部41u,43uの壁面に形成された突起43tを収納可能な窪み53hが形成されているため、バンパーモール40のゲート部41u,43uと第1、第2リテーナ50a,50bの突条部53とを隙間無く嵌合させることができ、見栄えが低下しない。
【0024】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態に係る乗用車のフロントバンパー20では、リテーナを第1、第2リテーナ50a,50bの二部品から構成する例を示したが、前記リテーナを一部品で構成することも可能である。また、樹脂製のリテーナを例示したが、前記リテーナをゴム、その他の材料で形成することも可能である。
さらに、本実施形態では、フロントバンパー20について本発明を適用する例を示したが、リヤバンパーについて本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0025】
20・・・・フロントバンパー
30・・・・バンパーカバー
40・・・・バンパーモール
40n・・・内壁面
41u・・・ゲート部
43u・・・ゲート部
43t・・・突起
50a・・・第1リテーナ
50b・・・第2リテーナ
51・・・・リテーナ本体部
53・・・・突条部(端縁)
53h・・・窪み


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンパーカバーに対して樹脂製のバンパーモールを取付ける際に、そのバンパーモールと前記バンパーカバーとの隙間に、その隙間を埋めるための板材であるリテーナを介在させる構成の乗用車のバンパーであって、
前記バンパーモールは、型成形されたそのバンパーモールから前記型のゲート部分で固化した樹脂を切断したときに生じる切断痕を備えるゲート部を備えており、
前記バンパーモールのゲート部が前記リテーナの端縁によって覆われるように構成されていることを特徴とする乗用車のバンパー。
【請求項2】
請求項1に記載の乗用車のバンパーであって、
前記バンパーモールのゲート部は、前記バンパーモールの端縁に切欠き状に形成されており、
前記リテーナは、バンパーモールの内壁面に沿って配置されるリテーナ本体部と、そのリテーナ本体部の端縁位置で前記バンパーモールの肉厚分だけそのバンパーモール側に突出する突条部とを備えており、
前記リテーナの突条部が前記バンパーモールのゲート部と嵌合することで、前記突条部が前記ゲート部を覆う構成であることを特徴とする乗用車のバンパー。
【請求項3】
請求項2に記載の乗用車のバンパーであって、
前記リテーナの突条部には、前記バンパーモールのゲート部の壁面に形成された突起を収納可能な窪みが形成されていることを特徴とする乗用車のバンパー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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