乗籠内部の消毒を行うエレベータシステム
【課題】本発明は、乗籠の内部を消毒することで乗籠内で感染するリスクを軽減することのできるエレベータシステムを提供する。
【解決手段】エレベータシステム1は、乗籠2と、噴霧装置3,4と、制御装置5とを備える。噴霧装置3,4は、乗籠2内に消毒液Aを噴霧する。制御装置5は、乗籠2に少なくとも一度乗客が乗ったあと、乗客が全員降りたことを判断して噴霧装置3,4を作動させる。
【解決手段】エレベータシステム1は、乗籠2と、噴霧装置3,4と、制御装置5とを備える。噴霧装置3,4は、乗籠2内に消毒液Aを噴霧する。制御装置5は、乗籠2に少なくとも一度乗客が乗ったあと、乗客が全員降りたことを判断して噴霧装置3,4を作動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗籠の内部を消毒する機構を備えるエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
乗籠の内部に正負イオンを放出するイオン発生装置を備えるエレベータ装置が、特許文献1に記載されている。このエレベータ装置は、イオン発生装置によって交流高電圧を電極間に印加して空気中の酸素や水分を正イオンと負イオンとに電離し、過酸化水素水または水酸基ラジカルを生成することで、空気中の浮遊細菌を不活性化する。また、特許文献1に記載のエレベータ装置は、臭気センサや人体検知センサを備え、設定値以上の臭気を検出した場合や、人の存在を検知した場合に、イオン発生装置を駆動する。
【0003】
また、乗籠の内部を清浄化するために、霧化ミストを放出する静電霧化装置を備えるエレベータ装置が、特許文献2に記載されている。このエレベータ装置は、静電霧化装置によって霧化ミスト(帯電微粒子水)を生成し、乗籠の内部の空気だけでなく、乗客の衣服や籠内の緩衝フェルト繊維の内部まで浸透し、体臭、タバコ臭、籠室内にこびり付いた臭いを脱臭する。また、この霧化ミストは、ノミやダニの死骸などのアレルゲンだけでなくカビや一般生菌などを不活性化したり、特にインフルエンザなどの病原菌ウイルスを不活性化する効果があることが記載されている。特許文献2に記載されたエレベータ装置の静電霧化装置は、乗客が乗籠内にいることを重量検知センサによって検出した場合に、作動する。また、臭気検知センサで臭気を検知した場合にも、静電霧化装置は作動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−99205号公報
【特許文献2】特開2008−184322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載された技術は、いずれも乗籠に乗客が居る状態で適用される。したがって、籠室内の脱臭やウイルスの不活性化を行うとしても、乗客が不快に思うほど多量にイオンや霧化ミストを放出するわけにはいかない。また、乗籠内の混雑状況によっては、空気の循環が十分に行われない。つまり、脱臭やウイルスが不活性化される程度は、そのときの乗籠の混雑の度合いによって変化する。
【0006】
また、インフルエンザなどの感染症によっては、空気中に浮遊する飛沫を吸い込むことによって感染するだけでなく、飛沫の付着したところを触った手を通して口から感染することが知られている。そのため、病院や公共機関では、手で触れる箇所の近くに消毒用アルコールを設置していることもある。
【0007】
エレベータの場合、乗籠という小さな個室に不特定多数の乗客が乗り合わせる。そして、乗客は、行先階を入力するために、操作盤に必ず手で触れる。したがって、飛沫感染であれ、接触感染であれ、インフルエンザなどのはやっている時期にエレベータを利用すると、そのインフルエンザなどに感染するリスクが高くなる。そして、病院のエレベータを利用する場合、さらにそのリスクは高くなる。特許文献1および2に記載された技術では、接触感染に対する積極的な対策が施されていないため、インフルエンザなどに感染するリスクを軽減できているとはいえない。
【0008】
そこで、本発明は、乗籠の内部を消毒することで乗籠内で感染するリスクを軽減することのできるエレベータシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態のエレベータシステムは、乗籠と、噴霧装置と、制御装置とを備える。噴霧装置は、乗籠内に消毒液を噴霧する。制御装置は、乗籠に少なくとも一度乗客が乗ったあと、乗客が全員降りたことを判断して噴霧装置を作動させる。
【0010】
この場合、噴霧装置は、乗籠の中に配置される操作ボタンの近傍の側壁に設置され、操作ボタンに向けて消毒液を噴霧する。または、乗籠は、天井と側壁との間に隙間を有しており、噴霧装置は、乗籠の天井の上に設置され、隙間から消毒液のミストを噴霧する。
【0011】
乗客が消毒液の分に機に晒されることを防止するために、制御装置は、噴霧装置が作動している間および作動後の一定時間、各階の乗場に設置されているホール呼びボタンが操作されても、乗籠のドア装置を開かないようにする。また、制御装置は、ドア装置を開かない間、噴霧装置が作動していることを乗場にいる利用客に報知する。
【0012】
そして、制御装置は、乗籠に移動する方向が設定されていない状態で、一定時間が経過した場合に、噴霧装置を作動させる。または、制御装置は、乗籠の中に設置される操作ボタンから設定された目的階がすべてなくなり、最終到着階の乗場に設置されたホール呼びボタンが操作されていない場合に、噴霧装置を作動させる。または、制御装置は、乗籠が一定時間運転した後で、乗籠の中に設置される操作ボタンから設定された目的階がなく、かつ、各階の乗場に設置されているホール呼びボタンも操作されていない場合に、噴霧装置を作動させる。または、制御装置は、乗籠に積載されているものの重量を検知して乗籠に何も乗っていないと判断した場合に、噴霧装置を作動させる。
【0013】
さらに、このエレベータシステムは、乗籠の中の気温および湿度を調整する空気調節機をさらに備える。そして、制御装置は、噴霧装置を作動させる場合に、空気調節機を噴霧装置が作動していないときと異なる気温および湿度で運転させる。また、このエレベータシステムは、乗籠内に音声で案内を行う報知装置をさらに備える。そして、制御装置は、噴霧装置が一定時間以上、作動していない場合に、報知装置で、乗籠に乗った乗客に対して感染症に対する注意を喚起する。
【0014】
また、制御装置は、各階の乗場に設置されているホール呼びボタンのうち、建物の外部に接続される基準階に向かう方向のホール呼びボタンが操作された場合に、基準階を目的階として自動登録する。乗籠の中に配置された操作ボタンを操作して目的階が設定されている場合、制御装置は、各階の乗場に設置されたホール呼びボタンに応答しない。制御装置は、乗籠を各階に停止させる各階停止運転を自動で行う。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るエレベータシステムによれば、乗籠に乗客が一度乗った後は全員降りた後に必ず消毒液を噴霧する。乗籠内部は、乗客がいない状態で消毒されるので、インフルエンザなどの感染症を確実に除菌できる程度に十分に消毒液を噴霧することができる。したがって、その都度、乗籠内の清浄度が約束されるので、このエレベータシステムは、インフルエンザなどに感染するリスクを確実に軽減できる。
【0016】
また、乗籠の中に配置される操作ボタンに消毒液を噴霧するエレベータシステムによれば、操作ボタンに付着した病原菌なども含む雑菌を死滅させることができ、操作ボタンを介して接触感染するリスクを軽減できる。また、噴霧装置を乗籠の天井の上に設置し、天井と側壁との隙間から消毒液のミストを噴霧するエレベータシステムによれば、乗籠の内壁面および内壁に取り付けられた手摺の除菌とともに乗籠内の空気も浄化することができる。噴霧装置が作動している間およびその後一定の時間、ホール呼びに対してドア装置を開かないエレベータシステムによれば、消毒液による不快感を利用者に与えない。また、噴霧装置が作動していることを乗場に表示するエレベータシステムによれば、待っている利用者に安心感を与えることができる。
【0017】
乗籠に移動方向が設定されていない状態で一定時間が経過した場合に噴霧装置を作動させるエレベータシステムによれば、利用頻度の少ない時間帯に消毒作業を済ませることができる。乗籠内の操作ボタンから設定された目的階がすべてなくなり、最終到着階の乗場に設置されたホール呼びボタンが操作されていない場合に噴霧装置を作動させるエレベータシステムによれば、利用頻度の多い場合でも次に利用客がいないことを判断して消毒作業を行うことができる。
【0018】
乗籠が一定時間運転した後で、乗籠内野操作ボタンから設定された目的階がなく、各階の乗場に設置されたホール呼びボタンも操作されていない場合に噴霧装置を作動させるエレベータシステムによれば、例えば病原菌なども含む雑菌が繁殖するよりも短い時間に一定時間を設定することで、乗籠内の清浄度を維持するための消毒作業の回数を少なくすることができる。また、乗籠に積載されているものの重量を検知して乗籠に何も乗っていないことを判断し噴霧装置を作動させるエレベータシステムによれば、乗籠内に利用客がいないことを確実に判断することができる。たとえ誤って入力された目的階の情報が残留していても、乗客がいないことが確実に判断できる。したがって、利用頻度の高い時間帯でも、利用客がいないことが分かった時点ですぐに消毒作業を実施することができる。
【0019】
乗籠中の温度および湿度を調整できる空気調節器を備え、噴霧装置を作動させる場合にこの空気調節器も併用し、噴霧装置が作動していないときと異なる温度および湿度の設定で運転させるエレベータ装置によれば、利用者がいなくなった時点で、インフルエンザウイルスなど感染症の原因菌が死滅する環境に乗籠内の温度および湿度を調整することができる。消毒液の噴霧装置と併用することで、乗籠の中の除菌をより確実なものにし、感染するリスクを軽減できる。空気調節器の温度および湿度を変化させるのは、噴霧装置が作動するときであり、利用客がいないときであるので、利用客に不快な思いをさせることがない。
【0020】
また、乗籠内に音声で案内を行う報知装置を設け、噴霧装置が一定時間以上作動していない状態である場合に報知装置から乗籠に乗った乗客に対して感染症に対する注意を喚起するエレベータシステムによれば、注意を喚起することで感染のリスクを低減することができる。各階の乗場に設置されているホール呼出ボタンのうち、基準階に向かう方向のホール呼びボタンが操作された場合、基準階を目的階として自動登録するエレベータシステムによれば、不特定多数の利用者が触る基準階を登録するための操作ボタンに触れることなく、移動することができる。特別な装置を採用することなく既存の設備の制御を変えてやることで、感染のリスクを低減できる。さらに、乗籠の中に設置された操作ボタンを操作して目的階が設定されている場合に、各階の乗場に設置されたホール呼びボタンに応答しないエレベータシステムによれば、不特定多数の利用客が同時に乗り合わせる機会を減らすことで、人から人への直接的な飛沫感染を防ぐことで、感染のリスクを軽減することができる。上記各構成に加えて、乗籠を各階に停止させる各階停止運転を自動で行うエレベータシステムによれば、乗籠の中の操作ボタンおよび各階のホール呼びボタンのいずれにも一切触ることなく階層間の移動ができる。接触感染による感染のリスクを排除することができる。また、例えば噴霧装置に貯留されている消毒液が消費されてしまい十分な消毒が行えなくなった場合などにも、この自動運転をすることで、エレベータの利用ができなくなってしまう状況を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態のエレベータシステムの乗籠を示す斜視図。
【図2】図1に示した消毒液噴霧装置を示す斜視図。
【図3】図1に示した乗籠の水平断面図。
【図4】図2に示した消毒液噴霧装置のノズルを模式的に示す断面図。
【図5】図1に示した乗籠の天井側から見た斜視図。
【図6】図1に示したエレベータシステムの第1の制御のフローチャート。
【図7】図1に示したエレベータシステムの第2の制御のフローチャート。
【図8】図1に示したエレベータシステムの第3の制御のフローチャート。
【図9】図1に示したエレベータシステムの第4の制御のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る第1の実施形態のエレベータシステム1は、図1から図5を参照して説明する。このエレベータシステム1は、図1に示すように、乗籠2と、2つの噴霧装置3,4と、制御装置5と、空気調節機6と、報知装置7と、各階に設置されるホール呼びボタン8と、巻上機9とを備える。本明細書において、以降の説明の便宜上、乗籠2の移動方向を「鉛直方向」として重力に逆らう方向を「上」、重力の作用する方向を「下」、乗籠2の中から乗口21がある側を見て「前」,「後」(または「背」),「右」,「左」をそれぞれ定義する。
【0023】
乗籠2は、乗口21から入ってすぐ振り向いたところに設けられる操作盤22に、操作ボタン220を配置している。目的階を登録するための行先階ボタン221や、ドア装置23の開放および閉鎖を操作する開ボタン222と閉ボタン223のほか、乗籠2内から係員に連絡を取るための非常ボタン224が、この操作ボタン220に含まれる。また、乗籠2の奥行き方向に中程の位置に車椅子利用者専用の操作盤が設けられている場合は、ここに用意されるボタンも、乗籠2内の操作ボタン220に含まれる。乗口21が前面と背面の2方向に用意されている場合は、それぞれの乗口21の脇にある操作盤22に用意される各種のボタンも、操作ボタン220に含まれる。
【0024】
また、図1に示すようにこの乗籠2は、乗口21側を見て右の側壁2aに手摺24が取り付けられている。乗籠2の中が見えるようにするために、乗籠2の後の側壁2bと左の側壁2cは、図1において図示するのを省略している。手摺24は、左の側壁2cや後ろの側壁2bにも設けられる。乗籠2は、操作ボタン220の上部に、移動方向と階床を表示する表示装置25を備えている。報知装置7は、表示装置25と操作ボタン220の間の部分に内蔵されている。報知装置7は、乗籠2が目的階に着床したり、ドア装置23が自動で閉じられたりするときに、音声で案内をする機能を有している。
【0025】
乗籠2の天井2eは、右の側壁2a、左の側壁2b、後の側壁2c、および乗口21の幕板2dに対して、空気が流れるのに十分な数センチの隙間Ga,Gb,Gc,Gdを有している。天井2eの中央部には、照明装置26が取り付けられている。
【0026】
2つある噴霧装置3,4のうち、噴霧装置3は、図1に示すように、操作ボタン220寄りの右の側壁2aに内蔵されている。この噴霧装置3は、制御装置5によって作動を制御され、消毒液Aを操作ボタン220に向けて噴霧する。噴霧装置3は、図2に示すようにタンク31とエアーコンプレッサ32とノズル33とマニホールド34と電磁弁35とを備えている。
【0027】
タンク31は、消毒液Aを貯留している。消毒液Aとして主に利用されるものは、医療用エタノールが好ましい。消毒液Aとして噴霧した後に気化しやすくまた人体に影響のないものであれば、エタノールに代えて利用することもできる。エアーコンプレッサ32は、タンク31の下方に配置されている。
【0028】
エアーコンプレッサ32は、ポンプ321で造られた圧搾空気をいったん蓄圧タンク322に溜める。一度に必要になる流量が少なければ、エアーコンプレッサ32の代わりに圧縮空気や窒素ガス、二酸化炭素の入ったボンベを採用することができる。
【0029】
ノズル33は、図2に示すように、乗籠2の側壁2aに設けられた凸部27の中に固定されている。このノズル33は、図2および図3に示すように、操作ボタン220が配置された範囲全域に消毒液を噴霧できるよう複数の噴射口331を有している。ノズル33は、図2に示すように、各噴射口331に消毒液Aを供給する細管332がマニホールド34から接続されている。マニホールド34は、タンク31の底部に接続されている。また、ノズル33は、噴射口331から消毒液Aを霧状にして噴射するために、エアーコンプレッサ32から圧搾空気Pが供給されている。電磁弁35は、ノズル33とエアーコンプレッサ32とを接続する配管323の途中に設けられている。
【0030】
また、ノズル33は、配管323によって供給された圧搾空気Pを各噴射口331に分配する流路333を内部に備えている。各細管332は、図4に示すように、噴射口331までの間において、流路333に対してほぼ直角に合流している。細管332と流路333の合流点Tは、いわゆるベンチュリのように絞られている。圧搾空気Pは、噴射口331に向けて合流点Tを吹き抜けることで、細管332の出口近傍の気圧を下げ、消毒液Aを吸い出す。合流点Tよりも下流側の流路333内の圧力が上流側よりも下がっており、かつ、消毒液Aが圧搾空気Pによって細粒化されるので、消毒液Aは、噴射口331から霧となって噴射される。
【0031】
噴射口331は、図4に示すようにチョーク331aを有していることによって、消毒液Aが噴霧野Sに満遍なく拡がる。各噴射口331から噴射される消毒液Aの噴霧野Sは、噴射口331の形状を変えることによって、調整することができる。また、各噴射口331から噴射される消毒液Aの量は、合流点Tの形状および、圧搾空気Pの流速で調整できる。したがって、各操作ボタン220に対応する噴射口331の形状および合流点Tの形状は、その噴霧野Sに含まれる操作ボタン220の利用頻度に合わせて設計するとよい。
【0032】
なお、各噴射口331から消毒液Aを噴霧する時間を切り替えたり、消毒液Aを噴霧する対象となる操作ボタン220を一定の領域ごとに選択したりすることができるように、合流点Tの上流に各噴射口331に対応した電磁弁を別途設けることも好ましい。消毒液Aを噴霧した後、噴射口331から液垂れが生じないように、消毒液Aの供給を止めるための電磁弁を、各細管332に設けるか、マニホールド34とタンク31との間に設けてもよい。この場合、消毒液Aの供給を止める電磁弁を先に閉じた後、少しエアブローを行ったのち、圧搾空気側の電磁弁35を閉じることで、液垂れを防止できる。
【0033】
もう一つの噴霧装置4は、乗籠2の中へ全体的に消毒液Aを噴霧する。そのために、この室内用の噴霧装置4は、図1および図5に示したように、乗籠2の天井2eの上に配置されている。この噴霧装置4の基本的な機構は、側壁2aに取り付けられるボタン用の噴霧装置3と同じである。したがって、室内用の噴霧装置4の詳細については、ボタン用の噴霧装置3について記述した説明を参酌するものとする。室内用の噴霧装置4がボタン用の噴霧装置3と異なっているのは、ノズル43a,43bの配置である。
【0034】
ノズル43aは、隙間Gaに沿う天井2eの縁に沿って取り付けられている。ノズル43bは、隙間Gbに沿う天井2eの縁に沿って取り付けられている。ノズル43aに設けられた複数の噴射口431から噴出される消毒液Aは、隙間Gaを通して乗籠2の中に噴出される。またノズル43bに設けられた複数の噴射口431から噴出される消毒液Aは、隙間Gbを通して乗籠2の中に噴出される。このとき、噴霧された消毒液Aがノズル43a,43bの近傍で側壁2a,2cや天井2eに触れて結露しないようにするために、噴霧する消毒液Aの粒径を小さくする。したがって、噴霧装置4として、超音波霧化装置を採用してもよい。
【0035】
空気調節機6は、図5に示すように、乗籠2の天井2eの上に設置されており、ハウジング60と吸気口61とファン62とダクト63と循環路64とを備えている。吸気口61は、ファン62の外周を囲うハウジング60の上面に開口している。ファン62は、乗籠2の外、つまり昇降路から吸気口61を通して空気を吸込む。このファン62は、乗籠2の中から見て、例えば時計回りに回転する場合、回転軸に沿って空気を吸込み、遠心方向に吹き出す。また反時計回りに回転する場合、ファン62は、空気を遠心方向から吸って回転軸方向に吹き出す。なお、ファン62の回転方向と空気の流れとの関係は、前記した方向に限定されるものではない。
【0036】
ダクト63は、図5に示すように、ファン62の外周を囲うハウジング60から右の側壁2a、左の側壁2b、後の側壁2cにそれぞれ面した天井2eの縁まで延びている。天井2eの縁まで延びたダクト63の開放端631は、天井2eの縁に沿って細長く拡がっている。ダクト63は、開放端631の全長に渡って、ほぼ均質に、空気を流出させる。各ダクト63は、天井2eの外周と右の側壁2a、後の側壁2b、左の側壁2cとのそれぞれ隙間Ga,Gb,Gcを通して、ファン62から吹き出された空気を乗籠2の中に流入させる。したがって、噴霧装置4と空気調節機6とが同時に作動すると、噴霧された消毒液Aは、ダクト63から流出する空気に乗って、乗籠2の室内に拡散される。
【0037】
循環路64は、乗口21側の天井2eの縁に沿って設けられたスロット2fと吸気口61との間に装着されている。吸気口61側に固定された循環路64の端部は、吸気口61を部分的に覆っている。したがって、ファン62が乗籠2の中から見て時計回りに回転する場合、ファン62は、循環路64を通して乗籠2の室内の空気を天井2eのスロット2fから吸い込む。
【0038】
この空気調節機6は、乗籠2が乗客を乗せて運転している間、室内の空気を循環させて温度と湿度を快適な状態に保つ。また、温度と湿度を調節できることを利用して、空気調節機6は、乗籠2の中に浮遊するウイルスの効力を弱める温度と湿度の設定に乗籠2の中の環境を変えることもできる。例えば、インフルエンザウイルスの場合、温度が20°以上で湿度が60%以上の場合、活動が弱まり、温度が30°以上で湿度が60%以上の場合、ほとんど生存できなくなることが知られている。そこで、空気調節機6によって乗籠2の中の温度と湿度を乗客が不快に感じない温度20°湿度60%に普段設定しておき、乗客が居ないときに、温度30°湿度60%に設定を切り替えウイルスの殺菌を積極的に行うこともできる。また、空気調節機6は、換気扇としての機能も有しており、乗籠2内の空気を換気する。
【0039】
次に、制御装置5について説明する。このエレベータシステム1において、制御装置5は、少なくとも一度乗客が乗籠2に乗った状況があったあと、乗籠2内に乗客が一人もいなくなったことを判断し、噴霧装置3,4を作動させる。したがって、乗籠2に一度乗客が乗ったこと、および、乗籠からすべての乗客が降りたことを判断するために、制御装置5は、図1に示すように、乗籠2の操作盤22、乗籠2のドア装置23、ボタン用の噴霧装置3、室内用の噴霧装置4、空気調節機6、報知装置7、ホール呼びボタン8、巻上機9にそれぞれ接続されている。
【0040】
制御装置5は、乗籠2の操作盤22と接続されていることによって、行先となる目的階が操作ボタン220から入力(登録)されたか否か、および、設定された目的階が残っているか否かを判断する。また、制御装置5は、ドア装置23に接続されていることによって、着床階でドア装置が開かれているか否かを判断する。制御装置5は、噴霧装置3,4に接続されていることによって、噴霧装置3,4、に対して作動指令を出力するとともに、噴霧装置3,4が作動中であるか、もしくは、作動完了後の経過時間を判断する。制御装置5は、空気調節機6に接続されていることによって、空気調節機6の動作の有無を判断し、温度および湿度の設定の変更の指令を出力する。制御装置5は、報知装置7に接続されていることによって、乗籠2内の乗客に対して感染症に対する注意を喚起するために、音声、表示、警報音などによって報知する。
【0041】
制御装置5は、ホール呼びボタン8に接続されていることによって、乗籠2の操作ボタン220から登録されている最後の目的階に着床した場合に、その着床した階から新たに乗客が乗ってくるか否かを判断する。そして、制御装置5は、巻上機9に接続されていることによって、乗籠2にかかる負荷を検出し、乗籠2内に乗客が残っているか否かを判断する。また、制御装置5は、このエレベータシステム1を保守メンテナンスのために監視している管理センタ100に接続されている。
【0042】
以上のように構成されたエレベータシステム1において、制御装置5が乗籠2の内部の消毒作業を行う場合の制御フローについて以下に説明する。
まず、乗籠2の利用者がしばらくいない状態のときに乗籠2の内部の消毒作業を行う第1の制御フローを図6に示す。図6に示すように、制御装置5は、乗籠2内に乗客が居ないことを判断するために、まず、移動すべき方向が設定されているか判断(S61)する。移動すべき方向が設定されているということは、つまり、移動中であるか、乗客が設定した目的階がまだ他にも残っているということを意味する。したがって、移動方向の設定を持たなくなるまで確認が繰り返される。移動方向画の設定が無い場合、乗籠2に乗客が居ないことを示唆している。
【0043】
しかし、何らかの理由で乗籠2内に在留している可能性もあるので、一定時間が経過したか確認(S62)する。一定時間が経過していない場合は、引き続き、乗籠2に移動すべき方向が設定されないか判断(S61)する。そして、方向を持っていない状態で、一定時間経過した場合、噴霧装置3,4に噴霧指令を出力(S63)する。経過時間の計測を開始するタイミングは、ドア装置23を閉じる指令信号が出力されたとき、またはドア装置23が閉じられた確認信号が出力されたときとする。
【0044】
このように、エレベータが利用されていない時間が一定時間ある場合に、この時間を利用して、乗籠2の内部の消毒作業を完了させる。噴霧装置3,4を作動させて乗籠2の中の操作ボタン220や乗籠2の室内に消毒液Aを噴霧する消毒作業中である場合、あるいは、消毒作業が完了した後でも乗籠2の内部の環境が乗客を受け入れるのに適した環境になるまでの間、着床階のホール呼びボタン8が操作されても、制御装置5は、乗籠2のドア装置23を開かない。また他の階のホール呼びボタン8が操作された場合、ホール呼びボタン8が操作された階まで乗籠2を移動させてもよいが、ドア装置23を開かないようにする。
【0045】
このようにすることで、乗籠2内に消毒液およびその雰囲気が残留していることによる不快な思いをさせないようにする。また、ホール呼びボタン8が設置されたホール操作盤80において「消毒中」や「清掃中」などの表示や音声案内による報知を行ってもよい。
【0046】
次に、乗籠2の中の操作ボタン220から設定された最後の目的階に応答し、乗客が乗籠2に乗っていないと判断できる場合に消毒作業を行う第2の制御フローを図7に示す。図7に示すように、制御装置5は、次に移動すべき行先となる目的階が乗籠2の操作ボタン220から設定されているか、すなわち「籠呼び」があるか判断(S71)する。籠呼びが無い場合、エレベータを利用する乗客が、乗籠2に乗っていないと判断できる。籠呼びがある場合、乗客が乗籠2に乗っていることが想定される。その籠呼びに対応して目的階に乗籠2を移動し、ドア装置23の開閉を行う。そして、すべての籠呼びに応答したか判断(S72)し、籠呼びがなくなるまで繰り返す。すべての籠呼びに応答し次に設定された籠呼びが無い場合、乗籠2に乗っていた乗客は、すべて降りたと考えられる。
【0047】
ただし、最後に着床した目的階から最後に降りる乗客と入れ替わりに新たに乗客が乗ってくることも想定される。そこで、最後に到着した階のホール呼びボタンが操作されているか、すなわち「ホール呼び」があるか否かを判断(S73)する。ホール呼びがある場合は、着床した会から新たに乗客が乗ってくることを意味する。したがって、この場合は、この制御フローの先頭に戻って、籠呼びがあるか判断(S71)する。
【0048】
ホール呼びが無い場合、最後の籠呼びに応答して着床した目的階に乗籠2に乗っていた最後の乗客が降り、その目的階から新たに乗客が乗ってこないこと、すなわち、最後の目的階でドア装置を閉じたときには乗籠2に乗っている乗客が一人もいないことを意味する。そこで、制御装置5は、すべての籠呼びに応答しかつ最後の目的階のホール呼びが無い場合、ドア装置23を閉じた後、噴霧装置3,4に噴霧指令を出力(S74)し、消毒作業を開始する。
【0049】
第2の制御フローにおいても、噴霧装置3,4が作動している消毒作業中である場合、あるいは、消毒作業が完了した後でも乗籠2の内部の環境が乗客を受け入れるのに適した環境になるまでの間、第1の制御フローの場合と同様に、着床階のホール呼びボタン8が操作されても、制御装置5は、乗籠2のドア装置23を開かない。また他の階のホール呼びボタン8が操作された場合、ホール呼びボタン8が操作された階まで乗籠2を移動させてもよいが、ドア装置23を開かないようにする。
【0050】
この第2の制御フローによれば、乗籠2に乗っている乗客がすべて降り、次に乗客が乗ってこないことをきっかけに、消毒作業を開始することができる。そのため、エレベータシステム1の利用頻度が高い場合でも、乗客がいないことを的確に判断し、乗籠2の内部の消毒作業を実施することができる。
【0051】
次に、運行回数が設定回数を超えた場合に消毒作業を行う制御フローについて説明する。本実施形態では、特に、乗籠2の中の操作ボタン220から設定された最後の目的階に応答した回数、および、乗客が乗籠2に乗っていないと判断された回数が、それぞれ設定された回数になった場合に消毒作業を行う第3の制御フローを図8に示す。
【0052】
ここでは、最下階から最上階までの間で移動方向が変わるまで、「上り」または「下り」へ一方向に乗籠が移動する運行を1回の運行と仮定する。なお、移動方向がなくなった待機状態になったときも1回の運行が完了したと仮定する。その場合、1回の運行によって着床する階が少なく、次の運行まで時間が空くことが多い、あるいは、最終到着階から新たに乗客が乗ってくることがほとんど無いという条件で利用されるエレベータシステム1も想定される。そのような場合、第1の制御フローや第2の制御フローでは、利用率に比べて消毒作業が頻繁に行われることとなる。
【0053】
図8に示す第3の制御フローでは、予め設定された運行回数に達している場合に、制御装置5が噴霧装置3,4に対して噴霧指令を出力するものである。まず、制御装置5は、籠呼びがあるか判断(S81)する。籠呼びがある場合は、乗客が乗っていることであるから、制御装置5は、その登録階へ乗籠2を移動(S82)する。次に制御装置5は、すべての籠呼びに応答したか判断(S83)する。応答していない場合は、次の登録階へ乗籠2を移動(S82)する。すべての籠呼びに応答した場合、乗籠2は、「上り」または「下り」の一方向に移動して1回の運行が終わったと考えられる。そこで、制御装置5は、すべての籠呼びに応答し終わった回数である運行回数mを1つ繰り上げる(S84)。
【0054】
そして、制御装置5は、1回の運行が終わり、すべての籠呼びに応答した最終到着階において、ホール呼びがあるか判断(S85)する。ホール呼びがある場合は、次の運航が開始されることである。したがって、制御装置5は、ドア装置23を閉じたときに乗籠2の籠呼びが設定されたか判断(S81)し、すべての籠呼びに応答し終わるまで運行し(S82〜S84)、再び、最終到着階のホール呼びがあるか判断する(S85)。ホール呼びが無い場合、乗籠2は、待機状態になる。そこで、制御装置5は、この待機状態のときに消毒作業をするか否かを、運行回数mが設定運行回数Mを超えているか、または、先の消毒作業からこれまでの間に待機状態となった回数である待機回数nが設定待機回数Nを超えているか判断(S86)する。なお、第3の制御フローにおいて、設定運行回数Mは、設定待機回数Nよりも大きい数値が設定される。
【0055】
制御装置5は、運行回数mまたは待機回数nのどちらかが設定回数を超えている場合、噴霧装置3,4に噴霧指令を出力(S87)する。運行回数mおよび待機回数nのいずれも設定回数を超えていない場合、制御装置5は、待機回数nを1つ繰り上げ(S88)、次のホール呼びが設定されるまで、待機状態となる。ホール呼びがあった場合、制御装置5は、ホール予備のあった階に乗籠を移動させドア装置23を開く。その階から乗客が乗った場合、籠呼びが設定されるはずである。したがって、制御装置5は、ドア装置23を閉じた後に籠呼びがあるか判断(S81)することで、乗客が乗ってきたかどうか判断する。
【0056】
利用者によっては、ホール呼びボタン8を押したが乗籠2がなかなか来ないので、階段を利用することもある。そのような場合、制御装置5は、ドア装置23を閉じた後に籠呼びがあるか判断(S81)し、籠呼びが無いことによって乗籠2に乗客が乗らなかったと判断する。このことは、最終到着階でホール呼びがあるか判断(S85)し、ホール呼びがあったにもかかわらず乗客が乗らなかった場合も同様である。また、最終到着階から新たに乗客が乗り、待機状態になることなく数回の運行が繰り返されることもありうる。このような場合、運行回数mは、設定運行回数Mを超えていることも想定される。
【0057】
したがって、籠呼びが無い場合、乗籠2に乗客がおらず、消毒作業をするチャンスである。そこで、運行回数mが設定運行回数Mを超えていないか判断(S89)し、超えていない場合、そのまま待機状態へ戻る。運行回数mが設定運行回数Mを超えている場合、制御装置5は、噴霧装置3,4に対して噴霧指令を出力(S87)する。
【0058】
第3の制御フローによって制御されるエレベータシステム1は、例えば、時間帯によって利用者の数が大きく変動する環境で使用されるときに適している。つまり、利用者が多く待機状態になることが少ない時間帯では、運行回数mを目安に、待機状態になった機会を逃すことなく乗籠2の消毒作業を行える。また、利用者が少なく頻繁に待機状態になる時間帯では、待機回数nを目安に、利用頻度を見極めて乗籠2の消毒作業を行える。
【0059】
このように、このエレベータシステム1は、採用される環境条件に応じて、設定運行回数Mおよび設定待機回数Nを最適条件に設定することで、乗籠2の内部の消毒作業の頻度を設定することができる。そして、乗籠2の中の衛生状態は、いずれの場合でも良好に保たれる。
【0060】
また、運行回数mが設定運行回数Mに達した場合と、待機回数nが設定待機回数Nに達した場合とで、異なる消毒作業をすることも可能である。例えば、運行回数nが設定運行回数Mに達したことによって消毒作業が行われる場合、乗客によって乗籠2内の操作ボタン220の中でも行先階ボタン221、開ボタン222、閉ボタン223が頻繁に触られていることが想定される。したがって、この場合、制御装置5は、操作ボタン用の噴霧装置3を作動させる。また、待機回数nが設定待機回数Nに達したことによって消毒作業が行われる場合、乗客が少ないことが想定される。このような場合は、室内用の噴霧装置4を作動させ、乗籠2内を全体的に消毒する。さらに、運行回数mが設定運行回数Mを大幅に超えるようなことがあった場合には、噴霧装置3,4を両方とも作動させるとともに、消毒液Aの噴霧量を増やすなど、入念に消毒作業を実施することもできる。
【0061】
次に、重量を検知することによって乗籠2に乗客が乗っていることを判断する第4の制御フローを図9に示す。百貨店などの場合、複数の乗客が乗籠2に乗り、行き先となる目的階を銘銘に登録していても、途中で気が変わって違う階で降りてしまう乗客も、中には居る。このような場合、乗籠2の操作ボタン220から設定された籠呼びが残っているにもかかわらず、乗客が居ないことも想定される。このエレベータシステム1は、籠呼びが残っているのに乗客が居ないことを判断するために、巻上機9に設置される負荷検知器の負荷信号を重量を検知する手段として採用する。巻上機9の負荷信号の代わりに乗籠2に設置される重量検知器の重量信号を採用してもよい。
【0062】
図9に示す第4の制御フローにおいて、まず、制御装置5は、乗籠2のドア装置23が閉じられた後に籠呼びがあるか判断する(S91)ことによって、乗客が乗籠2に乗ったか判断する。籠呼びが無い場合、少なくとも操作ボタン220に触れていないと考えられる。また、籠呼びがあった場合、少なくとも目的階を登録するために操作ボタン220を操作していると判断できる。そこで制御装置5は、乗籠2のドア装置23を閉じた後に巻上機9の負荷検知器によって乗籠2に何かしら載せられた積載物があるか判断(S92)することによって、乗客が乗っているかいないか判断することができる。積載物が無い場合、制御装置5は、噴霧装置3,4に噴霧指令を出力(S93)することで、乗籠2の中の消毒作業を行う。
【0063】
積載物がある場合、制御装置5は、乗客が乗っていると判断し、籠呼びに応じた登録階へ乗籠2を移動する(S94)。そして、第2および第3の制御フローと同様に、制御装置5は、すべての籠呼びに応答したか判断(S95)する。すべての籠呼びに応答していない場合、再度、積載物が有るか判断(S92)する。積載物が無い場合、籠呼びの登録が残っているか否かに係らず、制御装置5は、乗客が居ないと判断できるので、噴霧装置3,4に噴霧指令を出力して乗籠2の中の消毒作業を行う。積載物がある場合、制御装置5は、籠呼びが残っておりかつ積載物がある限り、乗客が居ると判断して次の登録階へ乗籠を移動(S94)することを繰り返す。
【0064】
制御装置5は、すべての籠呼びに応答し終えた場合、第2および第3の制御フローと同様に、最終到着階におけるホール呼びがあるか判断(S96)する。ホール呼びがあった場合、制御装置5は、ドア装置23を閉じた後に新たな目的階が設定されていないか、すなわち籠呼びがあるか判断(S97)することで、乗客が乗籠2に乗っているか判断する。籠呼びがある場合、制御装置5は、乗客が居ると判断し、再び、積載物が有るか(S92)、すべての籠予備に応答したか(S95)、到着会のホール呼びがあるか(S96)の判断を繰り返す。
【0065】
ホール呼びが無い場合、制御装置5は、ドア装置23を閉じた後に積載物があるか判断(S98)することによって、再度乗客が乗籠に居ないことを判断する。積載物が無い場合、制御装置5は、乗客が乗籠2内に残っていないと判断できるので、噴霧装置3,4に噴霧指令を出力し、乗籠2の中を消毒する。ホール呼びがあったのに籠呼びが無い場合、制御装置5は、乗客が乗籠2に残っていないか確認するため、乗籠2のドア装置23を閉じた後に積載物があるか判断(S98)する。
【0066】
ホール呼びが無い、あるいは、ホール呼びがあったのに籠呼びが無いと判断した後に積載物があるか判断(S98)し、積載物があった場合、乗籠2に乗客が乗っているかもしれないし、荷物が放置されているのかもしれない。このような場合、安全確認の意味も含め、制御装置5は、運行を休止し、乗籠2のドア装置23を開放するとともに、接続されているこのエレベータシステム1の管理センタ100へ通報する。
【0067】
このように、第4の制御フローによって制御されるエレベータシステム1は、乗籠2に積載物があるかを巻上機9の負荷検知器で検出することによって、乗客が乗籠2に乗っているかどうかを判断する。したがって、乗籠2が待機状態になった場合でも、乗籠2に乗客が乗っている状況で、制御装置5が噴霧装置3,4を作動させてしまうことがない。
【0068】
また、上述の第2の制御フローにおいて、到着階のホール呼びがあるか判断(S73)してホール呼びが無い場合、噴霧装置3,4に対して噴霧指令を出力する(S74)前に一定時間運転したかを判断するようにしてもよい。この場合、設定された時間を超えている場合、制御装置5は、噴霧装置3,4に噴霧指令を出力する。このようにすることで、少なくとも一度乗客が乗籠2に乗った後の経過時間によって、乗籠2の中の消毒をするタイミングを管理することができる。
【0069】
また、第1の制御フローによって制御されるエレベータシステム1において、方向を持っているか判断する(S61)ことを止め、ただ単に、一定時間経過したかのみで制御装置5が噴霧装置3,4を作動させるようにしてもよい。この場合、消毒液Aが乗客にかからないようにするために、制御装置5は、一定時間経過した後の最初の到着階でドア装置23を開いたまま、乗籠2の中に設けた報知装置7から音声案内によって消毒作業が行われることを通知する。また、制御装置5は、巻上機9の負荷検知器で、すべての乗客が乗籠2から降りたことを確認した後でドア装置23を閉じ、噴霧装置3,4に噴霧指令を出力して作動させる。
【0070】
第2から第4の制御フローによって制御されるエレベータシステム1において、すべての籠呼びに応答した後であってもさらにホール呼びがあったために、消毒作業を行えない場合も生じるかもしれない。そのような場合、制御装置5は、一定時間以上、噴霧装置3,4が作動していないことを検出し、乗客に対して感染症に対する注意を喚起する案内を報知装置7から音声案内によって、報知するようにしてもよい。
【0071】
このエレベータシステム1は、管理センタ100に接続されているので、公的機関の注意報や警報などの発表に応じて、制御装置5の設定を管理センタ100から変更することもできる。例えば、報知装置7から注意を喚起する音声案内を流すように制御装置5を管理センタ100から設定することもできる。また、各階の乗場に設置されているホール呼びボタン8のうち、建物の外部に接続される基準階に向かう方向のホール呼びボタン8が操作された場合、その基準階を目標階として籠呼び登録を自動で登録するように制御装置5を設定することもできる。
【0072】
エレベータシステム1が第1から第4の制御フローのいずれによって制御されるばあいでも、乗籠2の中に配置された操作ボタン220を操作して目的階が設定されている、つまり「籠呼び登録」がされている場合、制御装置5は、ホール呼びボタン8に応答することなく、籠呼び登録のみによって運行されるようにしてもよい。このようにすることによって、エレベータシステム1は、不特定多数の乗客が乗籠2に同時に乗り合わせる機会を減らすことができる。このとき、籠呼び登録によって停車した階に乗籠2を待っている乗客がいることも予想される。したがって、籠予備の登録階でホール呼びがあった場合、その階のホール操作盤80から、例えば「降車のみ」の表示をする、または、音声案内をするなど、待機している乗客に対して乗籠2に乗り込まないように報知を行う。
【0073】
噴霧装置3,4の作動頻度が高いと、頻繁に消毒液Aを補充しなければならない。このエレベータシステム1は、管理センタ100に接続されているので、噴霧装置3,4のタンク31の残量を検知する液量センサを設けておき、この検出信号を基に消毒液Aの補充を行うようにすることができる。ただし、補充が間に合わないこともありうる。そこで、制御装置5は、噴霧装置3,4のタンクに貯留されている消毒液Aが消費されたことを液量センサで検出した場合、乗籠2を各階に自動で停止させる、各階停止運転を行うようにしてもよい。このようにすることで、乗客が乗籠2の操作ボタン220や乗場のホール呼びボタン8に触れることなく、エレベータシステム1を利用することができる。この場合、さらに報知装置7やホール操作盤80から各階停止運転を行っていることを放置することが好ましい。
【0074】
なお、室内用の噴霧装置4の代わりに超音波噴霧機構を有するミスト発生器を採用する場合、ミスト発生器は、各ダクト63とハウジング60との連結部にそれぞれ設置する。ミスト発生器によって発生した消毒液Aのミストは、ダクト63によって乗籠2の室内に案内される。このミスト発生器は、超音波によって消毒液Aを霧化させるので、「靄」のようにミストの粒子が非常に細かく、ゆっくりとした空気の流れで消毒液Aのミストを図5に示すように乗籠2の室内全体にいきわたらせることができる。
【0075】
また、このエレベータシステム1は、噴霧装置3,4を作動させるときに空気調節機6の温度および湿度の設定を切り替え、感染症の原因菌が生存できなくなる環境に乗籠2の中の温度および湿度を変えることもできる。例えば、インフルエンザウイルスの場合であれば温度30°以上、湿度60%以上にすることでほとんど生存できなくなることが知られているので、乗客がいない場合に乗籠2の中の温度および湿度を上記設定にすることも好ましい。
【0076】
また、第1から第4の制御フローは、それぞれ組合わせてエレベータシステム1を運行するようにしてもよい。例えば、第2の制御フローと第4の制御フロー、第3の制御フローと第4の制御フローをそれぞれ組合わせることもできる。
【符号の説明】
【0077】
1…エレベータシステム、2…乗籠、2a,2b,2c…側壁、2e…天井、3…噴霧装置、4…噴霧装置、5…制御装置、6…空気調節機、7…報知装置、8…ホール呼びボタン、220…操作ボタン、A…消毒液、Ga,Gb,Gc…隙間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗籠の内部を消毒する機構を備えるエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
乗籠の内部に正負イオンを放出するイオン発生装置を備えるエレベータ装置が、特許文献1に記載されている。このエレベータ装置は、イオン発生装置によって交流高電圧を電極間に印加して空気中の酸素や水分を正イオンと負イオンとに電離し、過酸化水素水または水酸基ラジカルを生成することで、空気中の浮遊細菌を不活性化する。また、特許文献1に記載のエレベータ装置は、臭気センサや人体検知センサを備え、設定値以上の臭気を検出した場合や、人の存在を検知した場合に、イオン発生装置を駆動する。
【0003】
また、乗籠の内部を清浄化するために、霧化ミストを放出する静電霧化装置を備えるエレベータ装置が、特許文献2に記載されている。このエレベータ装置は、静電霧化装置によって霧化ミスト(帯電微粒子水)を生成し、乗籠の内部の空気だけでなく、乗客の衣服や籠内の緩衝フェルト繊維の内部まで浸透し、体臭、タバコ臭、籠室内にこびり付いた臭いを脱臭する。また、この霧化ミストは、ノミやダニの死骸などのアレルゲンだけでなくカビや一般生菌などを不活性化したり、特にインフルエンザなどの病原菌ウイルスを不活性化する効果があることが記載されている。特許文献2に記載されたエレベータ装置の静電霧化装置は、乗客が乗籠内にいることを重量検知センサによって検出した場合に、作動する。また、臭気検知センサで臭気を検知した場合にも、静電霧化装置は作動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−99205号公報
【特許文献2】特開2008−184322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載された技術は、いずれも乗籠に乗客が居る状態で適用される。したがって、籠室内の脱臭やウイルスの不活性化を行うとしても、乗客が不快に思うほど多量にイオンや霧化ミストを放出するわけにはいかない。また、乗籠内の混雑状況によっては、空気の循環が十分に行われない。つまり、脱臭やウイルスが不活性化される程度は、そのときの乗籠の混雑の度合いによって変化する。
【0006】
また、インフルエンザなどの感染症によっては、空気中に浮遊する飛沫を吸い込むことによって感染するだけでなく、飛沫の付着したところを触った手を通して口から感染することが知られている。そのため、病院や公共機関では、手で触れる箇所の近くに消毒用アルコールを設置していることもある。
【0007】
エレベータの場合、乗籠という小さな個室に不特定多数の乗客が乗り合わせる。そして、乗客は、行先階を入力するために、操作盤に必ず手で触れる。したがって、飛沫感染であれ、接触感染であれ、インフルエンザなどのはやっている時期にエレベータを利用すると、そのインフルエンザなどに感染するリスクが高くなる。そして、病院のエレベータを利用する場合、さらにそのリスクは高くなる。特許文献1および2に記載された技術では、接触感染に対する積極的な対策が施されていないため、インフルエンザなどに感染するリスクを軽減できているとはいえない。
【0008】
そこで、本発明は、乗籠の内部を消毒することで乗籠内で感染するリスクを軽減することのできるエレベータシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態のエレベータシステムは、乗籠と、噴霧装置と、制御装置とを備える。噴霧装置は、乗籠内に消毒液を噴霧する。制御装置は、乗籠に少なくとも一度乗客が乗ったあと、乗客が全員降りたことを判断して噴霧装置を作動させる。
【0010】
この場合、噴霧装置は、乗籠の中に配置される操作ボタンの近傍の側壁に設置され、操作ボタンに向けて消毒液を噴霧する。または、乗籠は、天井と側壁との間に隙間を有しており、噴霧装置は、乗籠の天井の上に設置され、隙間から消毒液のミストを噴霧する。
【0011】
乗客が消毒液の分に機に晒されることを防止するために、制御装置は、噴霧装置が作動している間および作動後の一定時間、各階の乗場に設置されているホール呼びボタンが操作されても、乗籠のドア装置を開かないようにする。また、制御装置は、ドア装置を開かない間、噴霧装置が作動していることを乗場にいる利用客に報知する。
【0012】
そして、制御装置は、乗籠に移動する方向が設定されていない状態で、一定時間が経過した場合に、噴霧装置を作動させる。または、制御装置は、乗籠の中に設置される操作ボタンから設定された目的階がすべてなくなり、最終到着階の乗場に設置されたホール呼びボタンが操作されていない場合に、噴霧装置を作動させる。または、制御装置は、乗籠が一定時間運転した後で、乗籠の中に設置される操作ボタンから設定された目的階がなく、かつ、各階の乗場に設置されているホール呼びボタンも操作されていない場合に、噴霧装置を作動させる。または、制御装置は、乗籠に積載されているものの重量を検知して乗籠に何も乗っていないと判断した場合に、噴霧装置を作動させる。
【0013】
さらに、このエレベータシステムは、乗籠の中の気温および湿度を調整する空気調節機をさらに備える。そして、制御装置は、噴霧装置を作動させる場合に、空気調節機を噴霧装置が作動していないときと異なる気温および湿度で運転させる。また、このエレベータシステムは、乗籠内に音声で案内を行う報知装置をさらに備える。そして、制御装置は、噴霧装置が一定時間以上、作動していない場合に、報知装置で、乗籠に乗った乗客に対して感染症に対する注意を喚起する。
【0014】
また、制御装置は、各階の乗場に設置されているホール呼びボタンのうち、建物の外部に接続される基準階に向かう方向のホール呼びボタンが操作された場合に、基準階を目的階として自動登録する。乗籠の中に配置された操作ボタンを操作して目的階が設定されている場合、制御装置は、各階の乗場に設置されたホール呼びボタンに応答しない。制御装置は、乗籠を各階に停止させる各階停止運転を自動で行う。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るエレベータシステムによれば、乗籠に乗客が一度乗った後は全員降りた後に必ず消毒液を噴霧する。乗籠内部は、乗客がいない状態で消毒されるので、インフルエンザなどの感染症を確実に除菌できる程度に十分に消毒液を噴霧することができる。したがって、その都度、乗籠内の清浄度が約束されるので、このエレベータシステムは、インフルエンザなどに感染するリスクを確実に軽減できる。
【0016】
また、乗籠の中に配置される操作ボタンに消毒液を噴霧するエレベータシステムによれば、操作ボタンに付着した病原菌なども含む雑菌を死滅させることができ、操作ボタンを介して接触感染するリスクを軽減できる。また、噴霧装置を乗籠の天井の上に設置し、天井と側壁との隙間から消毒液のミストを噴霧するエレベータシステムによれば、乗籠の内壁面および内壁に取り付けられた手摺の除菌とともに乗籠内の空気も浄化することができる。噴霧装置が作動している間およびその後一定の時間、ホール呼びに対してドア装置を開かないエレベータシステムによれば、消毒液による不快感を利用者に与えない。また、噴霧装置が作動していることを乗場に表示するエレベータシステムによれば、待っている利用者に安心感を与えることができる。
【0017】
乗籠に移動方向が設定されていない状態で一定時間が経過した場合に噴霧装置を作動させるエレベータシステムによれば、利用頻度の少ない時間帯に消毒作業を済ませることができる。乗籠内の操作ボタンから設定された目的階がすべてなくなり、最終到着階の乗場に設置されたホール呼びボタンが操作されていない場合に噴霧装置を作動させるエレベータシステムによれば、利用頻度の多い場合でも次に利用客がいないことを判断して消毒作業を行うことができる。
【0018】
乗籠が一定時間運転した後で、乗籠内野操作ボタンから設定された目的階がなく、各階の乗場に設置されたホール呼びボタンも操作されていない場合に噴霧装置を作動させるエレベータシステムによれば、例えば病原菌なども含む雑菌が繁殖するよりも短い時間に一定時間を設定することで、乗籠内の清浄度を維持するための消毒作業の回数を少なくすることができる。また、乗籠に積載されているものの重量を検知して乗籠に何も乗っていないことを判断し噴霧装置を作動させるエレベータシステムによれば、乗籠内に利用客がいないことを確実に判断することができる。たとえ誤って入力された目的階の情報が残留していても、乗客がいないことが確実に判断できる。したがって、利用頻度の高い時間帯でも、利用客がいないことが分かった時点ですぐに消毒作業を実施することができる。
【0019】
乗籠中の温度および湿度を調整できる空気調節器を備え、噴霧装置を作動させる場合にこの空気調節器も併用し、噴霧装置が作動していないときと異なる温度および湿度の設定で運転させるエレベータ装置によれば、利用者がいなくなった時点で、インフルエンザウイルスなど感染症の原因菌が死滅する環境に乗籠内の温度および湿度を調整することができる。消毒液の噴霧装置と併用することで、乗籠の中の除菌をより確実なものにし、感染するリスクを軽減できる。空気調節器の温度および湿度を変化させるのは、噴霧装置が作動するときであり、利用客がいないときであるので、利用客に不快な思いをさせることがない。
【0020】
また、乗籠内に音声で案内を行う報知装置を設け、噴霧装置が一定時間以上作動していない状態である場合に報知装置から乗籠に乗った乗客に対して感染症に対する注意を喚起するエレベータシステムによれば、注意を喚起することで感染のリスクを低減することができる。各階の乗場に設置されているホール呼出ボタンのうち、基準階に向かう方向のホール呼びボタンが操作された場合、基準階を目的階として自動登録するエレベータシステムによれば、不特定多数の利用者が触る基準階を登録するための操作ボタンに触れることなく、移動することができる。特別な装置を採用することなく既存の設備の制御を変えてやることで、感染のリスクを低減できる。さらに、乗籠の中に設置された操作ボタンを操作して目的階が設定されている場合に、各階の乗場に設置されたホール呼びボタンに応答しないエレベータシステムによれば、不特定多数の利用客が同時に乗り合わせる機会を減らすことで、人から人への直接的な飛沫感染を防ぐことで、感染のリスクを軽減することができる。上記各構成に加えて、乗籠を各階に停止させる各階停止運転を自動で行うエレベータシステムによれば、乗籠の中の操作ボタンおよび各階のホール呼びボタンのいずれにも一切触ることなく階層間の移動ができる。接触感染による感染のリスクを排除することができる。また、例えば噴霧装置に貯留されている消毒液が消費されてしまい十分な消毒が行えなくなった場合などにも、この自動運転をすることで、エレベータの利用ができなくなってしまう状況を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態のエレベータシステムの乗籠を示す斜視図。
【図2】図1に示した消毒液噴霧装置を示す斜視図。
【図3】図1に示した乗籠の水平断面図。
【図4】図2に示した消毒液噴霧装置のノズルを模式的に示す断面図。
【図5】図1に示した乗籠の天井側から見た斜視図。
【図6】図1に示したエレベータシステムの第1の制御のフローチャート。
【図7】図1に示したエレベータシステムの第2の制御のフローチャート。
【図8】図1に示したエレベータシステムの第3の制御のフローチャート。
【図9】図1に示したエレベータシステムの第4の制御のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る第1の実施形態のエレベータシステム1は、図1から図5を参照して説明する。このエレベータシステム1は、図1に示すように、乗籠2と、2つの噴霧装置3,4と、制御装置5と、空気調節機6と、報知装置7と、各階に設置されるホール呼びボタン8と、巻上機9とを備える。本明細書において、以降の説明の便宜上、乗籠2の移動方向を「鉛直方向」として重力に逆らう方向を「上」、重力の作用する方向を「下」、乗籠2の中から乗口21がある側を見て「前」,「後」(または「背」),「右」,「左」をそれぞれ定義する。
【0023】
乗籠2は、乗口21から入ってすぐ振り向いたところに設けられる操作盤22に、操作ボタン220を配置している。目的階を登録するための行先階ボタン221や、ドア装置23の開放および閉鎖を操作する開ボタン222と閉ボタン223のほか、乗籠2内から係員に連絡を取るための非常ボタン224が、この操作ボタン220に含まれる。また、乗籠2の奥行き方向に中程の位置に車椅子利用者専用の操作盤が設けられている場合は、ここに用意されるボタンも、乗籠2内の操作ボタン220に含まれる。乗口21が前面と背面の2方向に用意されている場合は、それぞれの乗口21の脇にある操作盤22に用意される各種のボタンも、操作ボタン220に含まれる。
【0024】
また、図1に示すようにこの乗籠2は、乗口21側を見て右の側壁2aに手摺24が取り付けられている。乗籠2の中が見えるようにするために、乗籠2の後の側壁2bと左の側壁2cは、図1において図示するのを省略している。手摺24は、左の側壁2cや後ろの側壁2bにも設けられる。乗籠2は、操作ボタン220の上部に、移動方向と階床を表示する表示装置25を備えている。報知装置7は、表示装置25と操作ボタン220の間の部分に内蔵されている。報知装置7は、乗籠2が目的階に着床したり、ドア装置23が自動で閉じられたりするときに、音声で案内をする機能を有している。
【0025】
乗籠2の天井2eは、右の側壁2a、左の側壁2b、後の側壁2c、および乗口21の幕板2dに対して、空気が流れるのに十分な数センチの隙間Ga,Gb,Gc,Gdを有している。天井2eの中央部には、照明装置26が取り付けられている。
【0026】
2つある噴霧装置3,4のうち、噴霧装置3は、図1に示すように、操作ボタン220寄りの右の側壁2aに内蔵されている。この噴霧装置3は、制御装置5によって作動を制御され、消毒液Aを操作ボタン220に向けて噴霧する。噴霧装置3は、図2に示すようにタンク31とエアーコンプレッサ32とノズル33とマニホールド34と電磁弁35とを備えている。
【0027】
タンク31は、消毒液Aを貯留している。消毒液Aとして主に利用されるものは、医療用エタノールが好ましい。消毒液Aとして噴霧した後に気化しやすくまた人体に影響のないものであれば、エタノールに代えて利用することもできる。エアーコンプレッサ32は、タンク31の下方に配置されている。
【0028】
エアーコンプレッサ32は、ポンプ321で造られた圧搾空気をいったん蓄圧タンク322に溜める。一度に必要になる流量が少なければ、エアーコンプレッサ32の代わりに圧縮空気や窒素ガス、二酸化炭素の入ったボンベを採用することができる。
【0029】
ノズル33は、図2に示すように、乗籠2の側壁2aに設けられた凸部27の中に固定されている。このノズル33は、図2および図3に示すように、操作ボタン220が配置された範囲全域に消毒液を噴霧できるよう複数の噴射口331を有している。ノズル33は、図2に示すように、各噴射口331に消毒液Aを供給する細管332がマニホールド34から接続されている。マニホールド34は、タンク31の底部に接続されている。また、ノズル33は、噴射口331から消毒液Aを霧状にして噴射するために、エアーコンプレッサ32から圧搾空気Pが供給されている。電磁弁35は、ノズル33とエアーコンプレッサ32とを接続する配管323の途中に設けられている。
【0030】
また、ノズル33は、配管323によって供給された圧搾空気Pを各噴射口331に分配する流路333を内部に備えている。各細管332は、図4に示すように、噴射口331までの間において、流路333に対してほぼ直角に合流している。細管332と流路333の合流点Tは、いわゆるベンチュリのように絞られている。圧搾空気Pは、噴射口331に向けて合流点Tを吹き抜けることで、細管332の出口近傍の気圧を下げ、消毒液Aを吸い出す。合流点Tよりも下流側の流路333内の圧力が上流側よりも下がっており、かつ、消毒液Aが圧搾空気Pによって細粒化されるので、消毒液Aは、噴射口331から霧となって噴射される。
【0031】
噴射口331は、図4に示すようにチョーク331aを有していることによって、消毒液Aが噴霧野Sに満遍なく拡がる。各噴射口331から噴射される消毒液Aの噴霧野Sは、噴射口331の形状を変えることによって、調整することができる。また、各噴射口331から噴射される消毒液Aの量は、合流点Tの形状および、圧搾空気Pの流速で調整できる。したがって、各操作ボタン220に対応する噴射口331の形状および合流点Tの形状は、その噴霧野Sに含まれる操作ボタン220の利用頻度に合わせて設計するとよい。
【0032】
なお、各噴射口331から消毒液Aを噴霧する時間を切り替えたり、消毒液Aを噴霧する対象となる操作ボタン220を一定の領域ごとに選択したりすることができるように、合流点Tの上流に各噴射口331に対応した電磁弁を別途設けることも好ましい。消毒液Aを噴霧した後、噴射口331から液垂れが生じないように、消毒液Aの供給を止めるための電磁弁を、各細管332に設けるか、マニホールド34とタンク31との間に設けてもよい。この場合、消毒液Aの供給を止める電磁弁を先に閉じた後、少しエアブローを行ったのち、圧搾空気側の電磁弁35を閉じることで、液垂れを防止できる。
【0033】
もう一つの噴霧装置4は、乗籠2の中へ全体的に消毒液Aを噴霧する。そのために、この室内用の噴霧装置4は、図1および図5に示したように、乗籠2の天井2eの上に配置されている。この噴霧装置4の基本的な機構は、側壁2aに取り付けられるボタン用の噴霧装置3と同じである。したがって、室内用の噴霧装置4の詳細については、ボタン用の噴霧装置3について記述した説明を参酌するものとする。室内用の噴霧装置4がボタン用の噴霧装置3と異なっているのは、ノズル43a,43bの配置である。
【0034】
ノズル43aは、隙間Gaに沿う天井2eの縁に沿って取り付けられている。ノズル43bは、隙間Gbに沿う天井2eの縁に沿って取り付けられている。ノズル43aに設けられた複数の噴射口431から噴出される消毒液Aは、隙間Gaを通して乗籠2の中に噴出される。またノズル43bに設けられた複数の噴射口431から噴出される消毒液Aは、隙間Gbを通して乗籠2の中に噴出される。このとき、噴霧された消毒液Aがノズル43a,43bの近傍で側壁2a,2cや天井2eに触れて結露しないようにするために、噴霧する消毒液Aの粒径を小さくする。したがって、噴霧装置4として、超音波霧化装置を採用してもよい。
【0035】
空気調節機6は、図5に示すように、乗籠2の天井2eの上に設置されており、ハウジング60と吸気口61とファン62とダクト63と循環路64とを備えている。吸気口61は、ファン62の外周を囲うハウジング60の上面に開口している。ファン62は、乗籠2の外、つまり昇降路から吸気口61を通して空気を吸込む。このファン62は、乗籠2の中から見て、例えば時計回りに回転する場合、回転軸に沿って空気を吸込み、遠心方向に吹き出す。また反時計回りに回転する場合、ファン62は、空気を遠心方向から吸って回転軸方向に吹き出す。なお、ファン62の回転方向と空気の流れとの関係は、前記した方向に限定されるものではない。
【0036】
ダクト63は、図5に示すように、ファン62の外周を囲うハウジング60から右の側壁2a、左の側壁2b、後の側壁2cにそれぞれ面した天井2eの縁まで延びている。天井2eの縁まで延びたダクト63の開放端631は、天井2eの縁に沿って細長く拡がっている。ダクト63は、開放端631の全長に渡って、ほぼ均質に、空気を流出させる。各ダクト63は、天井2eの外周と右の側壁2a、後の側壁2b、左の側壁2cとのそれぞれ隙間Ga,Gb,Gcを通して、ファン62から吹き出された空気を乗籠2の中に流入させる。したがって、噴霧装置4と空気調節機6とが同時に作動すると、噴霧された消毒液Aは、ダクト63から流出する空気に乗って、乗籠2の室内に拡散される。
【0037】
循環路64は、乗口21側の天井2eの縁に沿って設けられたスロット2fと吸気口61との間に装着されている。吸気口61側に固定された循環路64の端部は、吸気口61を部分的に覆っている。したがって、ファン62が乗籠2の中から見て時計回りに回転する場合、ファン62は、循環路64を通して乗籠2の室内の空気を天井2eのスロット2fから吸い込む。
【0038】
この空気調節機6は、乗籠2が乗客を乗せて運転している間、室内の空気を循環させて温度と湿度を快適な状態に保つ。また、温度と湿度を調節できることを利用して、空気調節機6は、乗籠2の中に浮遊するウイルスの効力を弱める温度と湿度の設定に乗籠2の中の環境を変えることもできる。例えば、インフルエンザウイルスの場合、温度が20°以上で湿度が60%以上の場合、活動が弱まり、温度が30°以上で湿度が60%以上の場合、ほとんど生存できなくなることが知られている。そこで、空気調節機6によって乗籠2の中の温度と湿度を乗客が不快に感じない温度20°湿度60%に普段設定しておき、乗客が居ないときに、温度30°湿度60%に設定を切り替えウイルスの殺菌を積極的に行うこともできる。また、空気調節機6は、換気扇としての機能も有しており、乗籠2内の空気を換気する。
【0039】
次に、制御装置5について説明する。このエレベータシステム1において、制御装置5は、少なくとも一度乗客が乗籠2に乗った状況があったあと、乗籠2内に乗客が一人もいなくなったことを判断し、噴霧装置3,4を作動させる。したがって、乗籠2に一度乗客が乗ったこと、および、乗籠からすべての乗客が降りたことを判断するために、制御装置5は、図1に示すように、乗籠2の操作盤22、乗籠2のドア装置23、ボタン用の噴霧装置3、室内用の噴霧装置4、空気調節機6、報知装置7、ホール呼びボタン8、巻上機9にそれぞれ接続されている。
【0040】
制御装置5は、乗籠2の操作盤22と接続されていることによって、行先となる目的階が操作ボタン220から入力(登録)されたか否か、および、設定された目的階が残っているか否かを判断する。また、制御装置5は、ドア装置23に接続されていることによって、着床階でドア装置が開かれているか否かを判断する。制御装置5は、噴霧装置3,4に接続されていることによって、噴霧装置3,4、に対して作動指令を出力するとともに、噴霧装置3,4が作動中であるか、もしくは、作動完了後の経過時間を判断する。制御装置5は、空気調節機6に接続されていることによって、空気調節機6の動作の有無を判断し、温度および湿度の設定の変更の指令を出力する。制御装置5は、報知装置7に接続されていることによって、乗籠2内の乗客に対して感染症に対する注意を喚起するために、音声、表示、警報音などによって報知する。
【0041】
制御装置5は、ホール呼びボタン8に接続されていることによって、乗籠2の操作ボタン220から登録されている最後の目的階に着床した場合に、その着床した階から新たに乗客が乗ってくるか否かを判断する。そして、制御装置5は、巻上機9に接続されていることによって、乗籠2にかかる負荷を検出し、乗籠2内に乗客が残っているか否かを判断する。また、制御装置5は、このエレベータシステム1を保守メンテナンスのために監視している管理センタ100に接続されている。
【0042】
以上のように構成されたエレベータシステム1において、制御装置5が乗籠2の内部の消毒作業を行う場合の制御フローについて以下に説明する。
まず、乗籠2の利用者がしばらくいない状態のときに乗籠2の内部の消毒作業を行う第1の制御フローを図6に示す。図6に示すように、制御装置5は、乗籠2内に乗客が居ないことを判断するために、まず、移動すべき方向が設定されているか判断(S61)する。移動すべき方向が設定されているということは、つまり、移動中であるか、乗客が設定した目的階がまだ他にも残っているということを意味する。したがって、移動方向の設定を持たなくなるまで確認が繰り返される。移動方向画の設定が無い場合、乗籠2に乗客が居ないことを示唆している。
【0043】
しかし、何らかの理由で乗籠2内に在留している可能性もあるので、一定時間が経過したか確認(S62)する。一定時間が経過していない場合は、引き続き、乗籠2に移動すべき方向が設定されないか判断(S61)する。そして、方向を持っていない状態で、一定時間経過した場合、噴霧装置3,4に噴霧指令を出力(S63)する。経過時間の計測を開始するタイミングは、ドア装置23を閉じる指令信号が出力されたとき、またはドア装置23が閉じられた確認信号が出力されたときとする。
【0044】
このように、エレベータが利用されていない時間が一定時間ある場合に、この時間を利用して、乗籠2の内部の消毒作業を完了させる。噴霧装置3,4を作動させて乗籠2の中の操作ボタン220や乗籠2の室内に消毒液Aを噴霧する消毒作業中である場合、あるいは、消毒作業が完了した後でも乗籠2の内部の環境が乗客を受け入れるのに適した環境になるまでの間、着床階のホール呼びボタン8が操作されても、制御装置5は、乗籠2のドア装置23を開かない。また他の階のホール呼びボタン8が操作された場合、ホール呼びボタン8が操作された階まで乗籠2を移動させてもよいが、ドア装置23を開かないようにする。
【0045】
このようにすることで、乗籠2内に消毒液およびその雰囲気が残留していることによる不快な思いをさせないようにする。また、ホール呼びボタン8が設置されたホール操作盤80において「消毒中」や「清掃中」などの表示や音声案内による報知を行ってもよい。
【0046】
次に、乗籠2の中の操作ボタン220から設定された最後の目的階に応答し、乗客が乗籠2に乗っていないと判断できる場合に消毒作業を行う第2の制御フローを図7に示す。図7に示すように、制御装置5は、次に移動すべき行先となる目的階が乗籠2の操作ボタン220から設定されているか、すなわち「籠呼び」があるか判断(S71)する。籠呼びが無い場合、エレベータを利用する乗客が、乗籠2に乗っていないと判断できる。籠呼びがある場合、乗客が乗籠2に乗っていることが想定される。その籠呼びに対応して目的階に乗籠2を移動し、ドア装置23の開閉を行う。そして、すべての籠呼びに応答したか判断(S72)し、籠呼びがなくなるまで繰り返す。すべての籠呼びに応答し次に設定された籠呼びが無い場合、乗籠2に乗っていた乗客は、すべて降りたと考えられる。
【0047】
ただし、最後に着床した目的階から最後に降りる乗客と入れ替わりに新たに乗客が乗ってくることも想定される。そこで、最後に到着した階のホール呼びボタンが操作されているか、すなわち「ホール呼び」があるか否かを判断(S73)する。ホール呼びがある場合は、着床した会から新たに乗客が乗ってくることを意味する。したがって、この場合は、この制御フローの先頭に戻って、籠呼びがあるか判断(S71)する。
【0048】
ホール呼びが無い場合、最後の籠呼びに応答して着床した目的階に乗籠2に乗っていた最後の乗客が降り、その目的階から新たに乗客が乗ってこないこと、すなわち、最後の目的階でドア装置を閉じたときには乗籠2に乗っている乗客が一人もいないことを意味する。そこで、制御装置5は、すべての籠呼びに応答しかつ最後の目的階のホール呼びが無い場合、ドア装置23を閉じた後、噴霧装置3,4に噴霧指令を出力(S74)し、消毒作業を開始する。
【0049】
第2の制御フローにおいても、噴霧装置3,4が作動している消毒作業中である場合、あるいは、消毒作業が完了した後でも乗籠2の内部の環境が乗客を受け入れるのに適した環境になるまでの間、第1の制御フローの場合と同様に、着床階のホール呼びボタン8が操作されても、制御装置5は、乗籠2のドア装置23を開かない。また他の階のホール呼びボタン8が操作された場合、ホール呼びボタン8が操作された階まで乗籠2を移動させてもよいが、ドア装置23を開かないようにする。
【0050】
この第2の制御フローによれば、乗籠2に乗っている乗客がすべて降り、次に乗客が乗ってこないことをきっかけに、消毒作業を開始することができる。そのため、エレベータシステム1の利用頻度が高い場合でも、乗客がいないことを的確に判断し、乗籠2の内部の消毒作業を実施することができる。
【0051】
次に、運行回数が設定回数を超えた場合に消毒作業を行う制御フローについて説明する。本実施形態では、特に、乗籠2の中の操作ボタン220から設定された最後の目的階に応答した回数、および、乗客が乗籠2に乗っていないと判断された回数が、それぞれ設定された回数になった場合に消毒作業を行う第3の制御フローを図8に示す。
【0052】
ここでは、最下階から最上階までの間で移動方向が変わるまで、「上り」または「下り」へ一方向に乗籠が移動する運行を1回の運行と仮定する。なお、移動方向がなくなった待機状態になったときも1回の運行が完了したと仮定する。その場合、1回の運行によって着床する階が少なく、次の運行まで時間が空くことが多い、あるいは、最終到着階から新たに乗客が乗ってくることがほとんど無いという条件で利用されるエレベータシステム1も想定される。そのような場合、第1の制御フローや第2の制御フローでは、利用率に比べて消毒作業が頻繁に行われることとなる。
【0053】
図8に示す第3の制御フローでは、予め設定された運行回数に達している場合に、制御装置5が噴霧装置3,4に対して噴霧指令を出力するものである。まず、制御装置5は、籠呼びがあるか判断(S81)する。籠呼びがある場合は、乗客が乗っていることであるから、制御装置5は、その登録階へ乗籠2を移動(S82)する。次に制御装置5は、すべての籠呼びに応答したか判断(S83)する。応答していない場合は、次の登録階へ乗籠2を移動(S82)する。すべての籠呼びに応答した場合、乗籠2は、「上り」または「下り」の一方向に移動して1回の運行が終わったと考えられる。そこで、制御装置5は、すべての籠呼びに応答し終わった回数である運行回数mを1つ繰り上げる(S84)。
【0054】
そして、制御装置5は、1回の運行が終わり、すべての籠呼びに応答した最終到着階において、ホール呼びがあるか判断(S85)する。ホール呼びがある場合は、次の運航が開始されることである。したがって、制御装置5は、ドア装置23を閉じたときに乗籠2の籠呼びが設定されたか判断(S81)し、すべての籠呼びに応答し終わるまで運行し(S82〜S84)、再び、最終到着階のホール呼びがあるか判断する(S85)。ホール呼びが無い場合、乗籠2は、待機状態になる。そこで、制御装置5は、この待機状態のときに消毒作業をするか否かを、運行回数mが設定運行回数Mを超えているか、または、先の消毒作業からこれまでの間に待機状態となった回数である待機回数nが設定待機回数Nを超えているか判断(S86)する。なお、第3の制御フローにおいて、設定運行回数Mは、設定待機回数Nよりも大きい数値が設定される。
【0055】
制御装置5は、運行回数mまたは待機回数nのどちらかが設定回数を超えている場合、噴霧装置3,4に噴霧指令を出力(S87)する。運行回数mおよび待機回数nのいずれも設定回数を超えていない場合、制御装置5は、待機回数nを1つ繰り上げ(S88)、次のホール呼びが設定されるまで、待機状態となる。ホール呼びがあった場合、制御装置5は、ホール予備のあった階に乗籠を移動させドア装置23を開く。その階から乗客が乗った場合、籠呼びが設定されるはずである。したがって、制御装置5は、ドア装置23を閉じた後に籠呼びがあるか判断(S81)することで、乗客が乗ってきたかどうか判断する。
【0056】
利用者によっては、ホール呼びボタン8を押したが乗籠2がなかなか来ないので、階段を利用することもある。そのような場合、制御装置5は、ドア装置23を閉じた後に籠呼びがあるか判断(S81)し、籠呼びが無いことによって乗籠2に乗客が乗らなかったと判断する。このことは、最終到着階でホール呼びがあるか判断(S85)し、ホール呼びがあったにもかかわらず乗客が乗らなかった場合も同様である。また、最終到着階から新たに乗客が乗り、待機状態になることなく数回の運行が繰り返されることもありうる。このような場合、運行回数mは、設定運行回数Mを超えていることも想定される。
【0057】
したがって、籠呼びが無い場合、乗籠2に乗客がおらず、消毒作業をするチャンスである。そこで、運行回数mが設定運行回数Mを超えていないか判断(S89)し、超えていない場合、そのまま待機状態へ戻る。運行回数mが設定運行回数Mを超えている場合、制御装置5は、噴霧装置3,4に対して噴霧指令を出力(S87)する。
【0058】
第3の制御フローによって制御されるエレベータシステム1は、例えば、時間帯によって利用者の数が大きく変動する環境で使用されるときに適している。つまり、利用者が多く待機状態になることが少ない時間帯では、運行回数mを目安に、待機状態になった機会を逃すことなく乗籠2の消毒作業を行える。また、利用者が少なく頻繁に待機状態になる時間帯では、待機回数nを目安に、利用頻度を見極めて乗籠2の消毒作業を行える。
【0059】
このように、このエレベータシステム1は、採用される環境条件に応じて、設定運行回数Mおよび設定待機回数Nを最適条件に設定することで、乗籠2の内部の消毒作業の頻度を設定することができる。そして、乗籠2の中の衛生状態は、いずれの場合でも良好に保たれる。
【0060】
また、運行回数mが設定運行回数Mに達した場合と、待機回数nが設定待機回数Nに達した場合とで、異なる消毒作業をすることも可能である。例えば、運行回数nが設定運行回数Mに達したことによって消毒作業が行われる場合、乗客によって乗籠2内の操作ボタン220の中でも行先階ボタン221、開ボタン222、閉ボタン223が頻繁に触られていることが想定される。したがって、この場合、制御装置5は、操作ボタン用の噴霧装置3を作動させる。また、待機回数nが設定待機回数Nに達したことによって消毒作業が行われる場合、乗客が少ないことが想定される。このような場合は、室内用の噴霧装置4を作動させ、乗籠2内を全体的に消毒する。さらに、運行回数mが設定運行回数Mを大幅に超えるようなことがあった場合には、噴霧装置3,4を両方とも作動させるとともに、消毒液Aの噴霧量を増やすなど、入念に消毒作業を実施することもできる。
【0061】
次に、重量を検知することによって乗籠2に乗客が乗っていることを判断する第4の制御フローを図9に示す。百貨店などの場合、複数の乗客が乗籠2に乗り、行き先となる目的階を銘銘に登録していても、途中で気が変わって違う階で降りてしまう乗客も、中には居る。このような場合、乗籠2の操作ボタン220から設定された籠呼びが残っているにもかかわらず、乗客が居ないことも想定される。このエレベータシステム1は、籠呼びが残っているのに乗客が居ないことを判断するために、巻上機9に設置される負荷検知器の負荷信号を重量を検知する手段として採用する。巻上機9の負荷信号の代わりに乗籠2に設置される重量検知器の重量信号を採用してもよい。
【0062】
図9に示す第4の制御フローにおいて、まず、制御装置5は、乗籠2のドア装置23が閉じられた後に籠呼びがあるか判断する(S91)ことによって、乗客が乗籠2に乗ったか判断する。籠呼びが無い場合、少なくとも操作ボタン220に触れていないと考えられる。また、籠呼びがあった場合、少なくとも目的階を登録するために操作ボタン220を操作していると判断できる。そこで制御装置5は、乗籠2のドア装置23を閉じた後に巻上機9の負荷検知器によって乗籠2に何かしら載せられた積載物があるか判断(S92)することによって、乗客が乗っているかいないか判断することができる。積載物が無い場合、制御装置5は、噴霧装置3,4に噴霧指令を出力(S93)することで、乗籠2の中の消毒作業を行う。
【0063】
積載物がある場合、制御装置5は、乗客が乗っていると判断し、籠呼びに応じた登録階へ乗籠2を移動する(S94)。そして、第2および第3の制御フローと同様に、制御装置5は、すべての籠呼びに応答したか判断(S95)する。すべての籠呼びに応答していない場合、再度、積載物が有るか判断(S92)する。積載物が無い場合、籠呼びの登録が残っているか否かに係らず、制御装置5は、乗客が居ないと判断できるので、噴霧装置3,4に噴霧指令を出力して乗籠2の中の消毒作業を行う。積載物がある場合、制御装置5は、籠呼びが残っておりかつ積載物がある限り、乗客が居ると判断して次の登録階へ乗籠を移動(S94)することを繰り返す。
【0064】
制御装置5は、すべての籠呼びに応答し終えた場合、第2および第3の制御フローと同様に、最終到着階におけるホール呼びがあるか判断(S96)する。ホール呼びがあった場合、制御装置5は、ドア装置23を閉じた後に新たな目的階が設定されていないか、すなわち籠呼びがあるか判断(S97)することで、乗客が乗籠2に乗っているか判断する。籠呼びがある場合、制御装置5は、乗客が居ると判断し、再び、積載物が有るか(S92)、すべての籠予備に応答したか(S95)、到着会のホール呼びがあるか(S96)の判断を繰り返す。
【0065】
ホール呼びが無い場合、制御装置5は、ドア装置23を閉じた後に積載物があるか判断(S98)することによって、再度乗客が乗籠に居ないことを判断する。積載物が無い場合、制御装置5は、乗客が乗籠2内に残っていないと判断できるので、噴霧装置3,4に噴霧指令を出力し、乗籠2の中を消毒する。ホール呼びがあったのに籠呼びが無い場合、制御装置5は、乗客が乗籠2に残っていないか確認するため、乗籠2のドア装置23を閉じた後に積載物があるか判断(S98)する。
【0066】
ホール呼びが無い、あるいは、ホール呼びがあったのに籠呼びが無いと判断した後に積載物があるか判断(S98)し、積載物があった場合、乗籠2に乗客が乗っているかもしれないし、荷物が放置されているのかもしれない。このような場合、安全確認の意味も含め、制御装置5は、運行を休止し、乗籠2のドア装置23を開放するとともに、接続されているこのエレベータシステム1の管理センタ100へ通報する。
【0067】
このように、第4の制御フローによって制御されるエレベータシステム1は、乗籠2に積載物があるかを巻上機9の負荷検知器で検出することによって、乗客が乗籠2に乗っているかどうかを判断する。したがって、乗籠2が待機状態になった場合でも、乗籠2に乗客が乗っている状況で、制御装置5が噴霧装置3,4を作動させてしまうことがない。
【0068】
また、上述の第2の制御フローにおいて、到着階のホール呼びがあるか判断(S73)してホール呼びが無い場合、噴霧装置3,4に対して噴霧指令を出力する(S74)前に一定時間運転したかを判断するようにしてもよい。この場合、設定された時間を超えている場合、制御装置5は、噴霧装置3,4に噴霧指令を出力する。このようにすることで、少なくとも一度乗客が乗籠2に乗った後の経過時間によって、乗籠2の中の消毒をするタイミングを管理することができる。
【0069】
また、第1の制御フローによって制御されるエレベータシステム1において、方向を持っているか判断する(S61)ことを止め、ただ単に、一定時間経過したかのみで制御装置5が噴霧装置3,4を作動させるようにしてもよい。この場合、消毒液Aが乗客にかからないようにするために、制御装置5は、一定時間経過した後の最初の到着階でドア装置23を開いたまま、乗籠2の中に設けた報知装置7から音声案内によって消毒作業が行われることを通知する。また、制御装置5は、巻上機9の負荷検知器で、すべての乗客が乗籠2から降りたことを確認した後でドア装置23を閉じ、噴霧装置3,4に噴霧指令を出力して作動させる。
【0070】
第2から第4の制御フローによって制御されるエレベータシステム1において、すべての籠呼びに応答した後であってもさらにホール呼びがあったために、消毒作業を行えない場合も生じるかもしれない。そのような場合、制御装置5は、一定時間以上、噴霧装置3,4が作動していないことを検出し、乗客に対して感染症に対する注意を喚起する案内を報知装置7から音声案内によって、報知するようにしてもよい。
【0071】
このエレベータシステム1は、管理センタ100に接続されているので、公的機関の注意報や警報などの発表に応じて、制御装置5の設定を管理センタ100から変更することもできる。例えば、報知装置7から注意を喚起する音声案内を流すように制御装置5を管理センタ100から設定することもできる。また、各階の乗場に設置されているホール呼びボタン8のうち、建物の外部に接続される基準階に向かう方向のホール呼びボタン8が操作された場合、その基準階を目標階として籠呼び登録を自動で登録するように制御装置5を設定することもできる。
【0072】
エレベータシステム1が第1から第4の制御フローのいずれによって制御されるばあいでも、乗籠2の中に配置された操作ボタン220を操作して目的階が設定されている、つまり「籠呼び登録」がされている場合、制御装置5は、ホール呼びボタン8に応答することなく、籠呼び登録のみによって運行されるようにしてもよい。このようにすることによって、エレベータシステム1は、不特定多数の乗客が乗籠2に同時に乗り合わせる機会を減らすことができる。このとき、籠呼び登録によって停車した階に乗籠2を待っている乗客がいることも予想される。したがって、籠予備の登録階でホール呼びがあった場合、その階のホール操作盤80から、例えば「降車のみ」の表示をする、または、音声案内をするなど、待機している乗客に対して乗籠2に乗り込まないように報知を行う。
【0073】
噴霧装置3,4の作動頻度が高いと、頻繁に消毒液Aを補充しなければならない。このエレベータシステム1は、管理センタ100に接続されているので、噴霧装置3,4のタンク31の残量を検知する液量センサを設けておき、この検出信号を基に消毒液Aの補充を行うようにすることができる。ただし、補充が間に合わないこともありうる。そこで、制御装置5は、噴霧装置3,4のタンクに貯留されている消毒液Aが消費されたことを液量センサで検出した場合、乗籠2を各階に自動で停止させる、各階停止運転を行うようにしてもよい。このようにすることで、乗客が乗籠2の操作ボタン220や乗場のホール呼びボタン8に触れることなく、エレベータシステム1を利用することができる。この場合、さらに報知装置7やホール操作盤80から各階停止運転を行っていることを放置することが好ましい。
【0074】
なお、室内用の噴霧装置4の代わりに超音波噴霧機構を有するミスト発生器を採用する場合、ミスト発生器は、各ダクト63とハウジング60との連結部にそれぞれ設置する。ミスト発生器によって発生した消毒液Aのミストは、ダクト63によって乗籠2の室内に案内される。このミスト発生器は、超音波によって消毒液Aを霧化させるので、「靄」のようにミストの粒子が非常に細かく、ゆっくりとした空気の流れで消毒液Aのミストを図5に示すように乗籠2の室内全体にいきわたらせることができる。
【0075】
また、このエレベータシステム1は、噴霧装置3,4を作動させるときに空気調節機6の温度および湿度の設定を切り替え、感染症の原因菌が生存できなくなる環境に乗籠2の中の温度および湿度を変えることもできる。例えば、インフルエンザウイルスの場合であれば温度30°以上、湿度60%以上にすることでほとんど生存できなくなることが知られているので、乗客がいない場合に乗籠2の中の温度および湿度を上記設定にすることも好ましい。
【0076】
また、第1から第4の制御フローは、それぞれ組合わせてエレベータシステム1を運行するようにしてもよい。例えば、第2の制御フローと第4の制御フロー、第3の制御フローと第4の制御フローをそれぞれ組合わせることもできる。
【符号の説明】
【0077】
1…エレベータシステム、2…乗籠、2a,2b,2c…側壁、2e…天井、3…噴霧装置、4…噴霧装置、5…制御装置、6…空気調節機、7…報知装置、8…ホール呼びボタン、220…操作ボタン、A…消毒液、Ga,Gb,Gc…隙間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗籠と、
前記乗籠内に消毒液を噴霧する噴霧装置と、
前記乗籠に少なくとも一度乗客が乗ったあと、前記乗客が全員降りたことを判断して前記噴霧装置を作動させる制御装置と
を備えることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
前記噴霧装置は、
前記乗籠の中に配置される操作ボタンの近傍の側壁に設置され、前記操作ボタンに向けて前記消毒液を噴霧する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記乗籠は、天井と側壁との間に隙間を有しており、
前記噴霧装置は、前記乗籠の天井の上に設置され、前記隙間から前記消毒液のミストを噴霧する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記噴霧装置が作動している間および作動後の一定時間、各階の乗場に設置されているホール呼びボタンが操作されても、前記乗籠のドア装置を開かない
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記ドア装置を開かない間、前記噴霧装置が作動していることを前記乗場に報知する
ことを特徴とする請求項4に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記乗籠に移動する方向が設定されていない状態で、一定時間が経過した場合に、前記噴霧装置を作動させる
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記乗籠の中に設置される操作ボタンから設定された目的階がすべてなくなり、最終到着階の乗場に設置されたホール呼びボタンも操作されていない場合に、前記噴霧装置を作動させる
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記乗籠が一定時間運転した後で、前記乗籠の中に設置される操作ボタンから設定された目的階がなく、かつ、各階の乗場に設置されているホール呼びボタンも操作されていない場合に、前記噴霧装置を作動させる
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記乗籠に積載されているものの重量を検知して前記乗籠に何も乗っていないと判断した場合に、前記噴霧装置を作動させる
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項10】
前記乗籠の中の気温および湿度を調整する空気調節機をさらに備え、
前記制御装置は、前記噴霧装置を作動させる場合に、前記空気調節機を前記噴霧装置が作動していないときと異なる気温および湿度で運転させる
ことを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか1項に記載のエレベータシステム。
【請求項11】
前記乗籠内に音声で案内を行う報知装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記噴霧装置が一定時間以上、作動していない場合に、前記報知装置で、前記乗籠に乗った乗客に対して感染症に対する注意を喚起する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項12】
前記制御装置は、各階の乗場に設置されているホール呼びボタンのうち、建物の外部に接続される基準階に向かう方向の前記ホール呼びボタンが操作された場合に、前記基準階を目的階として自動登録する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項13】
前記乗籠の中に配置された操作ボタンを操作して目的階が設定されている場合、
前記制御装置は、各階の乗場に設置されたホール呼びボタンに応答しない
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項14】
前記制御装置は、前記乗籠を各階に停止させる各階停止運転を自動で行う
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項1】
乗籠と、
前記乗籠内に消毒液を噴霧する噴霧装置と、
前記乗籠に少なくとも一度乗客が乗ったあと、前記乗客が全員降りたことを判断して前記噴霧装置を作動させる制御装置と
を備えることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
前記噴霧装置は、
前記乗籠の中に配置される操作ボタンの近傍の側壁に設置され、前記操作ボタンに向けて前記消毒液を噴霧する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記乗籠は、天井と側壁との間に隙間を有しており、
前記噴霧装置は、前記乗籠の天井の上に設置され、前記隙間から前記消毒液のミストを噴霧する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記噴霧装置が作動している間および作動後の一定時間、各階の乗場に設置されているホール呼びボタンが操作されても、前記乗籠のドア装置を開かない
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記ドア装置を開かない間、前記噴霧装置が作動していることを前記乗場に報知する
ことを特徴とする請求項4に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記乗籠に移動する方向が設定されていない状態で、一定時間が経過した場合に、前記噴霧装置を作動させる
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記乗籠の中に設置される操作ボタンから設定された目的階がすべてなくなり、最終到着階の乗場に設置されたホール呼びボタンも操作されていない場合に、前記噴霧装置を作動させる
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記乗籠が一定時間運転した後で、前記乗籠の中に設置される操作ボタンから設定された目的階がなく、かつ、各階の乗場に設置されているホール呼びボタンも操作されていない場合に、前記噴霧装置を作動させる
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記乗籠に積載されているものの重量を検知して前記乗籠に何も乗っていないと判断した場合に、前記噴霧装置を作動させる
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項10】
前記乗籠の中の気温および湿度を調整する空気調節機をさらに備え、
前記制御装置は、前記噴霧装置を作動させる場合に、前記空気調節機を前記噴霧装置が作動していないときと異なる気温および湿度で運転させる
ことを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか1項に記載のエレベータシステム。
【請求項11】
前記乗籠内に音声で案内を行う報知装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記噴霧装置が一定時間以上、作動していない場合に、前記報知装置で、前記乗籠に乗った乗客に対して感染症に対する注意を喚起する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項12】
前記制御装置は、各階の乗場に設置されているホール呼びボタンのうち、建物の外部に接続される基準階に向かう方向の前記ホール呼びボタンが操作された場合に、前記基準階を目的階として自動登録する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項13】
前記乗籠の中に配置された操作ボタンを操作して目的階が設定されている場合、
前記制御装置は、各階の乗場に設置されたホール呼びボタンに応答しない
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項14】
前記制御装置は、前記乗籠を各階に停止させる各階停止運転を自動で行う
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−51715(P2011−51715A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201838(P2009−201838)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
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