説明

乳ストリームからの蛋白質組成物の製造、及びチーズの製造における成分としての使用

記載の本発明は、特にチーズの製造における使用に適した乳成分の製造方法である。当該方法は、蛋白質濃縮物及び乳清の形成条件下における乳ストリームの処理を含む。当該ストリームは、場合によっては、分離され得、そして異なる条件/反応剤が、当該分離ストリームを再度併合する前に混入蛋白質を修飾するため、各分離ストリームにおいて使用され得る。当該蛋白質濃縮物は、当該乳清と組み合わせる前に、溶解させられる。当該蛋白濃縮物含有モノ−ジ−原子価カチオンは、当該蛋白質濃縮物が溶解するように、調整され得る。当該製造成分は、チーズ製品の製造において使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳成分の製造方法に関する。より特に、本発明は、乳ストリームからの蛋白質組成物の製造、及びチーズの製造におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
粒状又は粉末形式のどちらの蛋白質濃縮物、及び乳リテンテート粉末は、食品工業界において、特にチーズ及びプロセスチーズの製造において、成分として、広く使用される。これらの成分は、より一般的には蛋白化合物として表される。なぜなら、それらは、水分及び無脂肪基準で表現するとき、典型的には50%より多い蛋白質、しばしば70%より多い蛋白質、及び場合によっては80%より多い蛋白質を有するからである。
【0003】
米国特許第6183804号及び同第6183805号は、限外ろ過、透析ろ過、その後の濃縮、乾燥を使用する、粉状の乳蛋白質濃縮物成分の製造方法を教示する。当該方法は、当該製造物のミネラル含有量を操作する制限された手段、及び当該カゼインと当該ホエイ蛋白質の特性をそれぞれ変化させる取るに足らない手段を供給する。これらの成分は、しばしば、MPCsとして知られている。そのような蛋白質濃縮物の使用は、プロセスチーズの製造において一般的に有用であるけれども、制限がある。高蛋白質濃縮成分を限外ろ過によって製造するのは不釣合いなほど高価である、なぜなら、当該蛋白質含有量を増加させるために要求される、限外ろ過及び透析ろ過ステージ数の不釣合いな増加のためである。より低蛋白質濃縮物成分は、より高いラクトース及びミネラル濃縮物を有する。最終製造物(チーズ)における過度のラクトースは、結果として、褐変、及びフレーバー欠陥、望まない二次発酵の機会、及び存在する水分量に起因するラクトース結晶化を生じ得る。よって、たいていのチーズ及びプロセスチーズ製品は、70%以上の蛋白質を有する蛋白質濃縮物成分が好まれる。
【0004】
蛋白化合物は、例えば、溶解度、チーズ製造特性といった、その機能的特性を1価及び2価のカチオンの操作によって、強化され得る。例えば、限外ろ過の間のpH調整又は塩混和といった、蛋白質濃縮物においてカチオンを操作する方法が知られている(米国特許第5356639号)。カチオン及び蛋白質含有量の操作及び制御のさらに広範囲な方法は、国際特許公開第WO01/341579号に教示され、そこで、蛋白化合物成分は、限外ろ過、透析ろ過、及び陽イオンのイオン交換樹脂媒体を使用するカチオン交換の組み合わせを使用し製造され得る。この方法には制限があり、その制限とは、当該処理ストリーム中の2価のカチオンを置換するための1価のカチオンの交換は、化学量的制御、すなわち、1価のイオン2モルと2価のイオン1モルが置き換わること、に供されることである。結果として、製品中の高レベルのナトリウム又はカリウムイオンは、フレーバーを害し得、特に、低塩分ダイエット製品の使用において、食品表示問題を引き起こす。
【0005】
米国特許第4202907号は、蛋白化合物の製造に対するさらなるアプローチを教示する。脱脂乳は、始めカルシウムイオンの割合を置き換えるためにナトリウムイオンでイオン交換し、次いで当該蛋白質の特性を修飾するためにレンネットを添加する。当該処理された蛋白質は、次いで、乾燥蛋白化合物成分に、濃縮及び乾燥によって転換させられる。この方法も、1価及び2価のカチオンの化学量論的置換の上記の制限に直面する。あるいは、Poarchは、溶媒としてホエイを使用し、次いで当該溶液をレンネットで処理したとき、基本的1価の塩(NaOH)中にカゼインを溶解させることによる(低コストの)蛋白化合物の製造方法を記載する。次いで、当該処理溶液は、イオン交換でカルシウムを除去され、濃縮され乾燥される。この方法は、カチオン濃縮物の化学量論的操作範囲を提示し、及び蛋白質とラクトースの割合、又はホエイ蛋白質+ラクトース濃縮物に対するカゼインの割合の操作範囲を提示する。当該方法は、当該イオンの化学量論的置換の制限からの脱出手段を教示せず、当該カゼイン及びホエイ蛋白質の特性をそれぞれ修飾する手段も教示しない。
【0006】
共沈はさらなる蛋白化合物であり、古くから知られている。当該方法は、一般的に、当該蛋白質を沈殿させるために、脱脂乳を85℃〜95℃で1分〜20分間熱処理すること、及びCaCl及び/又は酸での処理を含む。当該回収蛋白質濃縮物は、NaOH処理及び乾燥させることによって溶解させられ得る(Dairy processing handbook 第2版 改定版.Tetra Pak Processing Systems,Lund,Sweden,2003 pp.414−415)。様々な1価のカチオン比率は、当該方法を変化することによって可能となる。蛋白質への熱処理により、当該カゼイン及びホエイ蛋白質の特性の分離操作について、本技術分野でのコントロールの可能性は、ほとんど又は全くない。
【0007】
これらの不利点を克服するのにいくらか助けになること又は少なくとも有効な選択を公衆に提供することは、本発明の目的である。
【発明の開示】
【0008】
本発明の要約
それに応じて、本発明の一側面は、以下のステップ:
a)当該乳ストリームを蛋白質濃縮物及び乳清の形成が生ずる条件下におく、
b)当該蛋白質濃縮物と当該乳清を分離する、
c)水溶液中に当該分離蛋白質濃縮物を溶解させる、
d)当該溶解蛋白質濃縮物を当該分離乳清と併合して、蛋白質組成物の形成させる、及び
e)ステップd)において形成された当該蛋白質組成物を濃縮する、
を含む乳ストリームからの蛋白質組成物の製造方法である。
【0009】
ある態様において、ステップa)の条件は、当該乳ストリームをpH4.5〜4.8に調整すること、そしてその後加熱して蛋白質濃縮物と乳清を形成させること、を含む。
【0010】
さらにある態様において、ステップa)の条件は、カッパ−カゼインをパラ−カッパ−カゼインに転換する能力のある酵素を当該乳ストリームに添加すること、そしてその後加熱して蛋白質濃縮物と乳清を形成させること、を含む。
【0011】
さらなる態様において、ステップa)は、
当該乳蛋白質を含む当該乳ストリーム水媒体を2つの部分:
1の部分をpH4.5〜4.8に調整すること、
他の部分にカッパ−カゼインをパラ−カッパ−カゼインに転換する能力のある酵素を添加すること、
に分離すること、並びに
2つの部分を併合し、当該混合ストリームを加熱することにより、蛋白質濃縮物と乳清を形成させること、
を含む。
【0012】
ある態様において、当該乳ストリームは、脱脂乳である。
【0013】
ある態様において、当該乳ストリームは、低温殺菌される。
【0014】
ある態様において、当該乳ストリームは、膜濃縮ステップに供される。
【0015】
ある態様において、当該膜濃縮ステップは、限外ろ過ステップである。
【0016】
ある態様において、当該pHは、酸、好ましくは食品用に認可された酸、さらに好ましくは塩酸又は硫酸の添加によって、ステップa)において、調整される。
【0017】
ある態様において、当該乳ストリームがラクトースを含むときに、当該pHが、種培養物の添加によって調整され、ラクトースの一部を発酵させて酸、最も一般的には乳酸、にする。
【0018】
ある態様において、当該種培養物は、ラクトースを発酵させて酸を形成し得る、食品用に認可された菌培養物である。
【0019】
ある態様において、当該菌培養物は、ラクトバチルス属の株からのものである。
【0020】
ある態様において、当該pHは、約4.6に調整される。
【0021】
ある態様において、当該乳ストリームが分離されたとき、当該乳ストリームの他の部分は、約15℃未満、より好ましくは少なくとも10℃未満でカッパカゼイン転換酵素と反応する。
【0022】
ある態様において、当該カッパカゼイン転換酵素は、キモシンである。
【0023】
ある態様において、当該カッパカゼイン転換酵素は、レンネット、好ましくは動物起源又は微生物起源由来のレンネット、である。
【0024】
ある態様において、当該蛋白質濃縮物及び乳清は、約25℃〜約70℃間、より好ましくは約30℃〜約55℃間、及び最も好ましくは約40℃〜約50℃間まで加熱することによって形成される。
【0025】
ある態様において、当該加熱は、1秒〜600秒間、好ましくは5秒〜200秒間、より好ましくは10〜50秒間の保持時間で実施される。
【0026】
ある態様において、当該ステップb)において分離された蛋白質濃縮物は、水で洗浄される。
【0027】
ある態様において、当該ステップb)において分離された蛋白質濃縮物は、粉砕される。
【0028】
ある態様において、当該ステップc)において、当該蛋白質濃縮物は、アルカリ性溶液に溶解される。
【0029】
ある態様において、当該アルカリ性溶液は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムを含むカチオン又はその混合を含む。
【0030】
ある態様において、当該ステップb)において分離された当該乳清の蛋白質レベルは、当該蛋白質の追加、除去、修飾によって調整される。
【0031】
ある態様において、当該ステップb)において分離された乳清は、ステップd)における溶解させられた前記蛋白質濃縮物と併合される前に、濃縮される。
【0032】
ある態様において、当該ステップb)において分離された当該乳清は、蛋白質に富むストリーム及びラクトースに富むストリームに、さらに分離される。
【0033】
ある態様において、当該ステップd)において、濃縮蛋白質溶液は、当該蛋白質組成物形成のために、蛋白質に富む乳清、ストリームの全て又は一部、又はラクトースに富むストリームの全て又は一部と混合される。
【0034】
ある態様において、脂肪、油、又は乳脂は、当該ステップd)において形成された蛋白質組成物に添加される。
【0035】
ある態様において、当該蛋白質組成物は、均質化される。
【0036】
ある態様において、当該蛋白質組成物は、乾燥される。
【0037】
ある態様において、当該蛋白質組成物は、チーズの製造に使用される。
【0038】
本発明は、上記の方法によって製造された蛋白質組成物も含む。
【0039】
ある態様において、本発明は、上記の蛋白質組成物を使用して製造されたチーズである。
【0040】
本発明のある態様は、濃縮したときにゲル形成しない、パラ−カッパ−カゼインとホエイ蛋白質の双方を含む乳蛋白化合物組成物である。
【0041】
ある態様において、当該乳蛋白化合物組成物は、2,700mg/kg〜15,000mg/kgのカルシウム濃縮物、及び11,000mg/kg〜1,300mg/kgのナトリウム濃縮物を有する。
【0042】
ある態様において、当該乳蛋白化合物組成物は、粉末である。
【0043】
本発明のある態様は、上記の蛋白化合物組成物を使用して製造されたチーズである。
【0044】
本発明は、本出願明細書において、個別に又は集合的に、言及又は提示する部分、要素、及び特徴、並びに、上記部分、要素、又は特徴の2以上のいずれかの又は全ての組み合わせに広く存するともいえ、本発明が属する技術において均等と知られる特定の完全なものが本明細書中に言及されている、そのように知られる均等なものは、あたかも個別に言及されているかのごとく本明細書中に援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
好ましい態様の詳細な説明
本明細書における用語“乳ストリーム”は、乳蛋白質のいかなる液体源をも含み得る。本発明において使用される乳ストリームの最も一般的な型は、脱脂乳であるけれども、乳ストリームは、濃縮型、又は溶解型、又は懸濁型としての乳蛋白質濃縮物(MPCs)を含み得る。
【0046】
本明細書における“脱脂乳”は、低脂肪分、好ましくは1%w/w未満の乳をいう。そのような乳は、本分野において“低脂肪乳”ともいわれる。
【0047】
本明細書における“乳清”とは、カゼインの沈殿後に残っている上清を意味する。乳清は、上清液及びその中に溶解又は懸濁されている蛋白質を含む。
【0048】
図の詳細な説明
以下の記載は、図1に図解される本発明の実施の仕方についてのものである。
【0049】
脱脂乳は、全乳、還元全乳から分離され得、又は脱脂粉乳から再構成され得る。好ましくは、当該脱脂乳は、低温殺菌される。
【0050】
場合によっては、当該脱脂乳は、膜技術を使用して濃縮され、蛋白質中にリテンテ−トが豊富となる。好ましい膜技術は、限外ろ過である。当該蛋白質濃縮は、元の脱脂乳の20%〜80%の量に濃縮する。
【0051】
場合によっては、当該脱脂乳又は蛋白質濃縮物は、カッパ−カゼインからパラ−カッパ−カゼインを形成する酵素で処理される。酵素反応のための好ましい温度は、15℃未満である。
【0052】
図1に示す方法において、当該脱脂乳又は蛋白質濃縮物(乳)ストリームは、異なった条件下で処理される2つの部分に分けられる。次いで、当該2つの部分は、以下の記載のように併合され、そして蛋白質濃縮物を形成するために加熱される。
【0053】
あるいは、示されていないが、当該乳ストリームは分けられず、しかし、種培養物又は酸を加え続いて加熱すること、又は酵素を加え続いて加熱すること、のどちらかによって処理される。
【0054】
示された態様において、左の部分において、脱脂乳又は蛋白質濃縮物は、加熱により不溶性蛋白質が速く沈殿するように、約pH4.6となるまで酸を投与される。
【0055】
右の部分には、酵素を加える。キモシン(レンネット)は、好まれる酵素である。酸性度は、硫酸、塩酸のような希鉱酸の混合によって供給され、又あるいは、当該酸は、適した菌種培養物の添加における溶液中に存在するラクトースを発酵させることによって発生する。
【0056】
当該左及び右のストリーム部分は、次いで併合される。それらは、約1秒〜約600秒間、好ましくは5秒〜200秒間の保持時間、好ましい温度範囲、例えば25℃〜70℃まで加熱される。これらの制限内であればいかなる範囲をも使用し得る。最も好まれる範囲は、30℃〜55℃の温度範囲、10秒〜50秒の時間範囲である。
【0057】
場合によって、当該回収された不溶性蛋白質濃縮物は水で洗浄され得、又は、好ましい態様において、当該不溶性蛋白質は細かく粉砕され、相対的に小さな均一の粒子径となる。さらに好ましくは、カードの粉砕は、コロイドミルを使用して実施される。
【0058】
次いで、当該不溶性蛋白質濃縮物は、1価及び2価カチオンを含む溶液中に溶解させられる。好ましい1価のカチオンはナトリウムイオン又はカリウムイオンであり、好ましい2価のカチオンはカルシウムイオン又はマグネシウムイオンであり、及び好ましい当該各イオンのデリバリー媒介物は、その水酸化物又は酸化物である。1価及び2価のカチオンの利用割合は、最終製造物(成分)において当該イオン対の望まれる割合である。好ましい態様は、20%〜90%1価カチオンの範囲内(2価カチオンはバランスをとり80%〜10%)である。
【0059】
あるいは、当該溶解蛋白質濃縮物は、酵素で処理され得る。好ましい酵素は、カッパ−カゼインをパラ−カッパ−カゼインに転換するものである。当該酵素は、十分な処理後、熱の利用によって失活させ得る。
【0060】
乳清は、ホエイ蛋白質、ラクトース、及び様々な塩と微量成分を含む。
【0061】
当該乳清は、多種多様な方法によって処理されることにより、精製され、その特性を強化、修飾される。使用され得る好ましい技術は、非制限的に、限外ろ過、電気透析法、イオン交換及びアフィニティクロマトグラフィー、ミネラル及び/又はpH調整、熱処理、せん断及び濃縮である。
【0062】
もう1つの側面において、当該乳清は、複数のサブ−ストリームに分けられ得る。1のストリームは蛋白質に富み得、他のストリームはラクトースに富み得る。当該ストリームのそれぞれは、以前に明らかとなっている好ましい技術によって処理され得る。
【0063】
溶解した蛋白質濃縮物ストリームは、次いで、乳清由来の処理された蛋白質に富むストリームの全て又は一部と、乳清由来のラクトースに富むストリームの全て又は一部と併合される。好ましい態様において、当該混合割合は、最終製造物におけるカゼイン蛋白質、ホエイ蛋白質、及びラクトースの所望の割合によって決定される。好ましい態様において、当該所望の混合は、少なくとも40%であり90%未満の(無水ベースで表現される)蛋白質含有量を有する。
【0064】
場合によっては、食用油、脂肪、乳脂肪、クリーム(乳脂)及び高脂肪クリーム(高脂肪乳脂)を当該混合ストリームに加え得る。
【0065】
場合によっては、当該併合したストリームは、均質化され、水相において脂肪担持相の細かい均一な分散となり得る。
【0066】
好ましくは、当該混合物は濃縮される。好ましい濃縮装置は、多段エバポレーションである。
【0067】
場合によっては、濃縮後及び乾燥に先立って、成分が加えられ得る。
【0068】
場合によっては、乾燥に先立って、当該pH及び/又は温度は、調整され、当該溶液の粘度を最適化する。
【0069】
濃縮後、当該製造物は乾燥される。好ましい乾燥装置は、スプレードライである。
【0070】
好ましい、乾燥機から取り出した製造物における水分は、0.5重量%より大きく、10重量%未満である。
【0071】
包装後、当該製造物は貯蔵され得、成分として望まれる時と場所で使用され得る。
【0072】
活性乳蛋白質に富み、高栄養の成分は、特にチーズ様製品の製造において、またさらに好ましくはプロセスチーズ様製品の製造において有用である。当該成分の特性は、本分野において知られる他の方法によって効果的に手に入れ得るものを超えて、これらの用途に合わせて調整し得ることである。
【0073】
好ましい態様において、当該成分は、プロセスチーズの製造において、飲料に適した溶媒(水が好ましい)、乳脂肪、塩、融解塩、及び香料添加剤の添加によって使用され得る。当該混合物はせん断(調理)と共に加熱され、そして溶融的一塊が形成されたら、プロセスチーズ又はプロセスチーズ様製品に充填・包装される。
【0074】
本発明は、さらなる成分又は消費者製品の製造のための成分として有用な蛋白質組成物の製造において応用できる。当該成分のレベルは、当該組成物製造の間に所望通りに調整され得、そしてこれらの成分の当該レベルは、最終製品まで“維持される”得るものである。
【実施例】
【0075】
実施例1:成分サンプルの製造
カード1
脱脂乳3000Lからのカゼイン蛋白質を希硫酸で酸性にすることによって、pH4.6で乳清に分離し、過剰な乳清を抜くことにより180kgの湿潤乳蛋白質を製造した。当該湿潤蛋白質は洗浄しなかった。これを‘蛋白質濃縮物1’と表す。
【0076】
カード2
10℃で脱脂乳1500Lをレンネット(10,000脱脂乳に対し1パートレンネットで使用する“Australian Double Strength”)で反応させた。翌日、当該カゼイン蛋白質を希硫酸で酸性にすることによって、pH4.6で乳清から分離した。過剰な乳清を抜くことにより90kgの湿潤乳蛋白質を製造した。当該湿潤蛋白質は洗浄しなかった。これを‘蛋白質濃縮物2’と表す。
【0077】
【表1】

【0078】
実施例2:ホエイ蛋白質溶液の製造
ホエイ蛋白質濃縮物(WPC)の17.2kg(Alacen392TM,Fonterra Cooperative Group Limited,Aucklandとして販売された)を脱塩水260kgに溶解させ、6%WPC溶液(天然の(変性していない)ホエイ蛋白質を含む)を製造した。ホエイ蛋白質溶液の半分を当該蛋白質を変性させるためにエバポレーターの予熱ホールディングチューブ中を循環させることによって、115℃まで加熱することにより4分間加熱処理した。
【0079】
実施例3:可溶性鉱化蛋白化合物溶液の製造
Run1
実施例1からの蛋白質濃縮物1の30kgを実施例2の当該天然ホエイ蛋白質溶液70Lと混合した。当該混合物を攪拌しながら65℃で水酸化ナトリウム(約100Lの水に溶解させた0.2kgNaOH)で処理した。一旦当該混合物のpHを6.8に安定させ、当該溶液を乾燥し、粉末状の蛋白質化合物成分を産生させた。
【0080】
Run2
実施例1からの蛋白質濃縮物1の30kgを実施例2の当該天然ホエイ蛋白質溶液70Lで混合した。当該混合物を攪拌しながら65℃で水酸化カルシウム(約100Lの水に溶解させた0.3kgCa(OH))で処理した。一旦当該混合物のpHを6.9に安定させ、当該溶液を乾燥し、粉末状の蛋白質化合物成分を産生させた。
【0081】
Run3
実施例1からの蛋白質濃縮物2の30kgを実施例2の当該天然ホエイ蛋白質溶液70Lで混合した。当該混合物を攪拌しながら65℃で水酸化ナトリウム(約100Lの水に溶解させた0.2kgNaOH)で処理した。一旦当該混合物のpHを6.8に安定させ、当該溶液を乾燥し、粉末状の蛋白質化合物成分を産生させた。
【0082】
実施例4:乾燥粉末の製造
実施例3におけるRun1,2、及び3の各々からの蛋白化合物溶液を温度200℃の吸気及び20MPaのノズルへのフィード圧を有する1段式乾燥機の使用によってスプレードライした。
【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
表3における当該蛋白化合物成分粉末は、少なくとも2790〜14,900mg/kgの範囲にあるカルシウム濃縮物、一方、少なくとも10,800〜1330mg/kgの範囲にあるナトリウム濃縮物、及び一定の蛋白質処理で製造された。いわゆる当業者は、ありとあらゆる他の蛋白化合物成分が、本発明に従って、上記手順に僅かな変化を加えること、又は当該濃縮、乾燥ステージの前に、複数の溶液ストリームを割合を変えて併合することによって製造され得ることを認識するであろう。
【0086】
実施例5:プロセスチーズスプレッドの製造
スプレッドサンプルの配合
表3の当該3つの蛋白化合物成分粉末の使用によりプロセスチーズスプレッド配合を製造し、各々の、認容され得るスプレッドの形成能力及びテクスチャの決定能力をテストした。コントロール成分粉末も対照として使用した。コントロールスプレッドを標準70%乳蛋白質濃縮物[MPC70](ALAPRO4700TM,Fonterra Cooperative Group Limited,Auckland)成分粉末の使用により製造した。
【0087】
蛋白質成分組成物
当該スプレッドに使用される蛋白化合物成分は表3に示される組成物を有し、当該MPC70コントロールの組成物を表4に示す。
【0088】
【表4】

【0089】
スプレッドサンプルを表5の配合の使用によって製造した。
【0090】
【表5】

【0091】
スプレッド製造方法
当該スプレッドを2L許容量Vorwerk Thermomix TM21料理用ミキサー(Vorwerk Australia Pty.Ltd.,Granville,Australia)の使用及び上記手順によって製造した。
【0092】
当該蛋白化合物成分、例えばMPC70(70%蛋白質(無水ベース))、を塩溶液中(13.28gのクエン酸tri−ナトリウム(Jungbunzlauer GmbH,Perhofen,Austria),3.35gのクエン酸(Jungbunzlauer GmbH,Perhofen,Austria),6.0gの塩化ナトリウム(Pacific Salt,Christchurch,New Zealand)、及び200gの水)にて、水酸化した。当該混合物を(水酸化させるために)一夜4℃で保持した。
【0093】
大豆油(AMCOTM,Goodman Fielder,Auckland,New Zealand)を100℃にセットした温度、1にセットしたスピードで(これは油の温度を60℃までもっていく)、1分間加熱した。
【0094】
水酸化された蛋白化合物成分(MPC70),ラクトース、及び残存水(97.6g)を当該油に加えた。当該混合物を4にセットしたスピード(2000rpm)、85℃にセットした温度で、7分間加熱した。各々の時間の終了時、燃える又は当該調理器の壁に粘着することを妨げるためだけでなく、当該乳液を十分に混合するために、当該スピードを3秒間“ターボ”(12,000rpm)にセットした。当該熱い乳液をプラスチックのねじ込みキャップポトルに注ぎ、逆さにし4℃で貯蔵した。当該スプレッドの最終pHは、5.75±0.05であった。
【0095】
当該貯蔵スプレッドサンプルのテクスチャを1週間後に測定した。
【0096】
当該乳液の組成物
当該スプレッドは、水分51.0%、脂肪31.4%、蛋白質10.0%、ラクトース5.9%、及び残り1.7%の見掛けの組成式をもっていた。
【0097】
プロセスチーズスプレッド・サンプルのテクスチャ
本発明の成分を使用して製造されたプロセスチーズスプレッドのテクスチャを測定し、標準MPC70成分を使用して製造されたコントロールと比較した。テクスチャを結果物のサンプルの弾性率、G’測定から評価した。当該弾性率は、20℃で、Lee S.K.及びKlostermeyer H.,Lebensm.−wiss.U−Technol.,34,288−292(2001)に記載されている方法を使用して、テクスチャ分析器TA AR2000レオメーター(TA Instruments−WatersLLC,NEW Castle,USA)を使用して0.1Hz、20℃で0.005のひずみで得られる。(弾性率の説明は、Ferry(Ferry,J.D.,(ED.),ポリマーの粘弾性的特性,第3版 改訂版.New York.John Wiley及びSons.1980)に詳細に載っている。)ゲルの堅さの観測結果は、製品(異なるポトル)の同じバッチから得られた異なるサンプルから得られる複製の測定であった。
【0098】
G’として測定された当該スプレッドのテクスチャを表6に示す。
【0099】
【表6】

【0100】
本発明の当該蛋白化合物成分は、一定範囲のテクスチャにおいて、プロセスチーズスプレッドの製造に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1は、本発明の一態様に従い当該方法を示す、フローダイヤグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
a)乳ストリームを蛋白質濃縮物及び乳清の形成が生ずる条件下におく、
b)当該蛋白質濃縮物と当該乳清を分離する、
c)当該蛋白質濃縮物を水溶液に溶解させる、
d)当該溶解蛋白質濃縮物を当該分離乳清と併合して、蛋白質組成物の形成させる、及び
e)ステップdにおいて形成された蛋白質組成物を濃縮する、
を含む乳ストリームからの蛋白質組成物の製造方法。
【請求項2】
前記ステップa)における条件が、乳ストリームをpH4.5〜4.8に調整すること、そしてその後加熱して蛋白質濃縮物と乳清を形成させること含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップa)における条件が、カッパ−カゼインをパラ−カッパ−カゼインへ転換し得る酵素を乳ストリームに添加すること、そしてその後加熱して蛋白質濃縮物と乳清を形成させること含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップa)が、
乳蛋白質を含む前記乳ストリーム水媒体を以下の2つの部分:
・1の部分をpH4.5〜4.8に調整すること、
・他の部分にカッパ−カゼインをパラ−カッパ−カゼインへ転換し得る酵素を添加すること、
に分離すること、並びに、
当該2つの部分を併合し、当該併合ストリームを加熱することにより、蛋白質濃縮物と乳清を形成させること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記乳ストリームが脱脂乳である、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記乳ストリームが低温殺菌される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記乳ストリームが膜濃縮ステップに供される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記膜濃縮ステップが、限外ろ過ステップである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記乳ストリームの又は前記1の部分のpHが、酸、好ましくは食品用に認可された酸、さらに好ましくは塩酸又は硫酸、の添加によって調整される、請求項2又は請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記乳ストリームがラクトースを含むときに、当該乳ストリーム又は前記1の部分のpHが、種培養物の添加によって調整され、ラクトースの一部を発酵させて、酸、最も一般的には乳酸にする、請求項2又は請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記種培養物が、ラクトースを発酵させて酸を形成し得る、食品用に認可された菌培養物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記菌培養物が、ラクトバチルス属の株からのものである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記pHが約4.6に調整される、請求項2,請求項4、及び請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記乳ストリームの分離した他の部分が、約15℃未満、より好ましくは少なくとも10℃未満でカッパカゼイン転換酵素と反応する、請求項3又は請求項4に記載の方法。
【請求項15】
カッパカゼイン転換酵素がキモシンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記カッパカゼイン転換酵素がレンネット、好ましくは動物起源又は微生物起源由来のレンネット、である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記蛋白質濃縮物及び乳清が、約25℃〜約70℃間、より好ましくは約30℃〜約55℃間、及び最も好ましくは約40℃〜約50℃間まで加熱することによって形成される、請求項2〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記加熱が、1秒〜600秒間、好ましくは5秒〜200秒間、より好ましくは10〜50秒間の保持時間で実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ステップb)において分離された蛋白質濃縮物が水で洗浄される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ステップb)において分離された蛋白質濃縮物が粉砕される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ステップc)において、蛋白質濃縮物がアルカリ性溶液に溶解される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記アルカリ性溶液が、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、を含むカチオン又はその混合物を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ステップb)において分離された乳清の蛋白質レベルが、当該蛋白質の追加、除去、又は修飾によって調整される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記ステップb)において分離された乳清が、ステップd)における溶解させられた蛋白質濃縮物と併合される前に濃縮される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記ステップb)において分離された乳清が、蛋白質に富むストリーム及びラクトースに富むストリームに、さらに分離される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ステップd)において、濃縮蛋白質溶液が、蛋白質に富むストリームの全て又は一部、及びラクトースに富むストリームの全て又は一部と混合され、前記蛋白質組成物を形成する、請求項24又は請求項25に記載の方法。
【請求項27】
脂肪、油、又は乳脂が、前記ステップd)において形成された蛋白質組成物に添加される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記蛋白質組成物が均質化される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記蛋白質組成物が乾燥される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記蛋白質組成物がチーズの製造に使用される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
請求項1〜29のいずれか1項の記載に従って製造された蛋白質組成物。
【請求項32】
請求項31の蛋白質組成物を使用して製造されたチーズ。
【請求項33】
濃縮したときにゲル形成しない、パラ−カッパ−カゼイン及びホエイ蛋白質の双方を含む、乳蛋白化合物組成物。
【請求項34】
2,700mg/kg〜15,000mg/kgのカルシウム濃縮物、及び11,000mg/kg〜1,300mg/kgのナトリウム濃縮物を有す(双方共に無水ベース)、請求項33の前記乳蛋白化合物組成物。
【請求項35】
粉末としての、請求項33又は請求項34の前記乳蛋白化合物組成物。
【請求項36】
請求項33〜35のいずれか1項に記載の蛋白化合物組成物を使用して製造されたチーズ。

【図1】
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【公表番号】特表2007−501609(P2007−501609A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522522(P2006−522522)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【国際出願番号】PCT/NZ2004/000176
【国際公開番号】WO2005/013709
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(504214246)フォンテラ コ−オペレイティブ グループ リミティド (17)
【Fターム(参考)】