説明

乳児仙痛を低減するための選択された乳酸菌の使用

【課題】本発明は、本明細書において、乳児仙痛の予防及び/又は治療のために、IL−IOの産生を促進する能力、その結果としてのCD4+CD25+TR細胞の増殖に関して選択された乳酸菌の特定の菌株、このような菌株を選択する方法、及びこのような菌株を含む製品を提供する。
【解決手段】適切な宿主細胞でのIL−10の発現を促進する乳酸菌菌株の能力を試験すること、該宿主細胞によるIL−10産生の増加を引き起こす乳酸菌菌株を選択すること、及び該選択された菌株の細胞を含む製品を製造することを含む、乳児仙痛を低減するための製品を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本明細書において、仙痛の予防及び/又は治療のために、サイトカインIL−10のレベルを増加させる乳酸菌の能力に関して選択された乳酸菌の特定の菌株、このような菌株を選択する方法、及びこのような菌株を含む製品を提供する。
【背景技術】
【0002】
罹患率及び苦痛の両方に関して顕著であるにもかかわらず、乳児仙痛の性質及び原因はまだよく分かっていない。この病態の母親の説明では、乳児は昼間は機嫌がよいが、不機嫌な顔をし始め、顔が赤くなり、足を突っ張り、泣き叫び、約2〜20分間泣き続け、その後この発作が急に終わるというものである。病態を記載するために用いられた用語にさえ論争が生じている。これらの用語には、「乳児仙痛」、痛みが主として夕方に限られるので「夕方仙痛」、及び痛みは出生から約3ヵ月後に消失するという名目で「3ヵ月仙痛」が含まれる。(Illingworth RS.母乳哺育での問題点(Difficulties in breastfeeding)。Ronald S.Illingworth編、The Normal Child。第10版。Harcourt(India)Pvt Ltd.1997;39〜44)。別の著者は、別の定義を用いていた。仙痛は、少なくとも3週間の期間で、1週間当たり3日かそれ以上の間の、1日当たり3時間かそれ以上の間の号泣の発作であるというWesselsの定義が、文献では主に受け入れられている(Sondergaard C,Skajaa E,Henriksen TB.胎児成長及び乳児仙痛(Fetal growth and infantile colic)。Arch Dis Child Fetal−Neonatal Ed 2000;83(1):F44〜47)。これまでのところ、考えられる主要な原因因子が3つのグループに分けられている。すなわち心理社会的障害、消化管障害及び神経発生的障害である。
【0003】
心理社会的因子には、正常号泣の変形、変則的育児の行動的影響及び親と乳児との相互関係における問題の発現が含まれる。
【0004】
ひとしきり泣く間の乳児の肢位及びしかめ面のため、消化管障害は仙痛と関係している。消化管因子を以下に簡潔に概説する。
【0005】
哺乳瓶授乳で育てる様な不適当な授乳技術、水平位置での授乳及び授乳後のげっぷの欠如が原因因子として考えられている。最初の6ヵ月間の母乳哺育が、唯一の保護因子であることが見いだされた。乳児仙痛の危険は、母乳哺育でない乳児の間で1.86倍高い(Saavedra MA,Dacosta JS,Garcias G,Horta BL,Tomasi E,Mendoca R.乳児仙痛発症率及び関連する危険因子:コホート研究(Infantile colic incidence and associated risk factors:a cohort study)。Pediatr(Rio J)2003;79(2):115〜122)。Lotheらは、仙痛は牛乳ホエータンパク質に対する感受性に由来することを示した(Lothe L,Lindberg T.仙痛調合乳で哺育された乳児において、牛乳ホエータンパク質は乳児仙痛の症状を誘発する:二重盲検交叉研究(Cow’s milk whey protein elicits symptoms of infantile colic in colicky formula−fed infants:A double−blind cross over study)Pediatrics 1989;83:262)。
【0006】
最近の研究で、乳児仙痛の少数の症例でのみ、食品に対する過敏性が原因であると定義され得ることが結論づけられた(Hill DJ,Hosking CS.乳児仙痛及び食品過敏性(Infantile colic and food hypersensitivity)。J Pediatr Gastrenterol Nutr 2000;30(Suppl):S67〜76)。最近Buchananは、乳児仙痛における低アレルギー性ミルクの治験は、十分に強固な証拠で裏づけられていないことを示した(Buchanan P.乳児仙痛に対する治療効果。低アレルギー性ミルクの治験は、強い十分な証拠によって裏づけられていない(Effectiveness of treatment for infantile colic.Trial of hypoallergenic milk is not supported by strong enough evidence)。BMJ 1998;317(7170):1451〜1452)。乳児仙痛を有する乳児は、アレルギー性疾患を来たす可能性が高いと考えられている。しかし最近の研究では、アトピーのマーカー、アレルギー性鼻炎、喘息、喘鳴及び最大流速変動性は、乳児仙痛を有するか又は有していない乳児で同程度であることが示されている(Castro− Rodriguez JA,Stern DA,Halonen M,Wright AL,Holberg CJら、乳児仙痛と喘息/アトピーの間の関係:任意抽出集団のプロスペクティブ試験(Relationship between infantile colic and Asthma/atopy:A prospective study in an unselected population)。Pediatrics 2001;108(4):878〜882)。
【0007】
水素呼気テストに基づくラクトース吸収不全が、著者らによって報告された(Hyams J,Geerstama M,Etienne N,Treem W.仙痛を有する乳児における結腸水素産生(Colonic hydrogen production in infants with colic)。J Pediatr 1989;115:592)。乳児仙痛を有するか又は有していない乳児間で、糞便水素濃度に差は見いだされなかった。しかしより高いメタンレベルを産生している乳児は、仙痛の減少を呈することが見いだされ、仙痛の緩和におけるメタン産生の役割を示唆していた(Belson A,Shetty AK,Yorgin PD,Bujanover Y,Peled Y,Dar MH,Riaf S.乳児仙痛症候群を伴う場合と伴わない場合の、乳児における結腸の水素除去及びメタン産生(Colonic hydrogen elimination and methane production in infants with and without infantile colic syndrome)。Dig Dis Sci 2003;48(9):1762〜1766)。
【0008】
モチリンなどの消化管(GIT)ホルモンである血管作動性腸管ペプチドが、仙痛を有する乳児で異常に高いことが示された。Lotheらは、乳児仙痛における異常なGIT生理を示唆する、その後に仙痛を発症した乳児において出生当日からの高いレベルを示した。(Lothe L,Ivassson SA,Ekman R,Lindberg T.モチリンと乳児仙痛:プロスペクティブ研究(Motilin and infantile colic:A prospective study)。Acta Pediatr Scand 1990;79(4):410〜416)。
【0009】
提案された神経発生的障害は、腹部痙攣及び仙痛がぜん動亢進の結果であり得ることを示唆している。この理論は、抗コリン作用薬の使用が仙痛症状を低下させるという証拠により裏づけられている(Gupta SK.仙痛は、消化管障害であるか?(Is colic a gastrointestinal disorder?)Curr Opin Pediatr 2002;14:588〜92)。
【0010】
大部分の乳児は、生後4ヵ月の年齢までに仙痛から抜け出すという事実は、仙痛の神経発生的原因に支持を与えるものである(Barr RG.乳児における仙痛及び号泣症候群(Colic and crying syndromes in infants)。Pediatrics 1998;102(5 suppl E):1282〜6)。
【0011】
一般に容認された定義によるプロバイオティクスは、宿主動物の腸内菌叢のバランスを改善することによって、宿主動物に有益に作用する生菌栄養補給補助食品である。本来は家畜用の動物飼料の補充を意味するにもかかわらず、この定義はヒトに容易に適用可能である。ヒトによるプロバイオティクスの主な消費は、ラクトバチルス(lactobacilli)及びビフィドバクテリア(bifidobacteria)の腸内種属を含む酪農に基づく食品の形態である。プロバイオティクスの消費は、腸内ミクロフローラの構成に影響を及ぼすことがこの定義に内在する。
【0012】
腸内生態系に及ぼすプロバイオティクスのこの効果は、使用者に何らかの有利な形で影響を与えることが提案されている。以下を含むプロバイオティクスの作用を介して腸内環境に対する変化から生じる多くの潜在的利点が実証されている。すなわち、特に腸の感染症に対する抵抗性の増加、下痢期間の減少、血圧の低下、血清コレステロール濃度の低下、アレルギーの減衰、末梢血白血球によるファゴサイトーシスの刺激、サイトカイン遺伝子発現の調節、アジュバント効果、腫瘍の退縮、及び発癌物質又は発癌補助物質産生の減少である。
【0013】
Christensenらは、プロバイオティクス・ラクトバチルスは、樹状細胞(DC)のTh1/Th2/Th3/Tr1/Treg促進能力を調節することにより、その免疫調節性効果を及ぼしたことを報告した最初の一グループであった。彼らはマウスのDCをラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)を含む異なるラクトバチルス属種の共培養にさらした場合、これらはサイトカインIl−6、IL−10、IL−12及びTNF−αの産生、並びにMHCクラスII及びCD86表面マーカーの上方制御について濃度依存的に特異的に調節されることを示した。全てのラクトバチルスは、DCの成熟を示す表面MHCクラスII及びCD86マーカーを上方制御した。特にこれらの研究で顕著なのは、L.ロイテリ(L.reuteri)(12246株)は、弱いIL−12インデューサーであったが、L.ジョンソニイ(L.johnsonii)又はL.カゼイ(L.casei)と共培養した場合、L.ロイテリは炎症誘発性サイトカインシグナルIL−12、IL−6及びTNF−aの産生を特異的に阻害し、これらの生産は後者の2つの種によって促進されたことであった。IL−10産生は、これらの条件下では変わらなかった。
【0014】
これらの結果は、「L.ロイテリは、「危険信号(danger signal)」を有していない抗原に対する寛容性を促進する腸内樹状細胞産生の環境調節に関与する可能性があるが、同時にLPS様の危険信号を介して認識される病原体に対して応答する能力を完全に保っている」、「L.ロイテリ は、IL−12及びTNF−α(及びIL−6)の産生の下方制御に有効な有望で見事に標的化された治療である可能性があるが、抗炎症性IL−10を誘導し、したがって炎症誘発性腸内サイトカイン環境とバランスをとる代替の治療的方法を示す」、したがって「摂取したプロバイオティクスを含む消化管のミクロフローラの消費に従って消化管のTh1/Th2/Th3を駆動する能力が調節される可能性が存在する。」という彼らの結論をもたらした。(Christensen HR,Frokiaer H,Pestka JJ(2002)マウスの樹状細胞において、ラクトバチルスは特異的にサイトカイン及び成熟表面マーカーの発現を調節する(Lactobacilli differentially modulate expression of cytokines and maturation surface markers in murine dendritic cells)。J Immunol 168 171〜178)。
【0015】
Smitsらはこれらの観察結果を拡張し、L.ロイテリがDCをプライミングしてT調節(TR)細胞産生を刺激する能力を有することを示した。彼らは、in vitroでヒト単球由来DCと共培養した3つの異なるラクトバチルス属種を用いた。L.プランタルム(L.plantarum)株でなく、ヒトL.ロイテリ株(ATCC 53609)及びL.カゼイの2つのラクトバチルスは、これらのDCをプライミングしてTR細胞の発生を刺激する。これらのTR細胞は、IL−10のレベルの増加を生じることが示され、IL−10依存様式でバイスタンダーT細胞(bystander T cell)の増殖を阻害することができた(Smits HH,Engering A,van der Kleij D,de Jong EC,Schipper K,van Capel TMM,Zaat BAJ.Yazdanbakhsh M,Wierenga EA,van Kooyk Y,Kapsenberg L(2005)選択的プロバイオティクス細菌は、樹状細胞特異的細胞間接着分子3−グラビングノンインテグリンを介して樹状細胞機能を調節することにより、in vitroでIL−10産生調節T細胞を誘導する(Selective probiotic bacteria induce IL−10−producing regulatory T cells in vitro by modulating dendritic cell function through dendritic cell−specific intercellular adhesion molecule 3−grabbing nonintegrin)。J Allergy Clin Immunol 1151 1260〜1267)。
【0016】
経口投与したL.ロイテリの宿主に及ぼす効果に関する最初の1つの証拠それ自体は、ニワトリ回腸で観察された増加したCD4+/CD8+T細胞比率であった(Walter J.Dobrogosz,NUTRAfoods 2005 4(2/3)15〜28)。Valeurらは、最近この観察結果を拡張してヒト回腸を含めた。彼らは、(a)ヒト消化管全体にわたる個々のヒト特異的L.ロイテリATCC 55730細胞の分布及び(b)特に腸の回腸部位でのCD4+T細胞の動員及び/又は増殖におけるL.ロイテリATCC55730の明白な関与を示す、ヒト対象における直接的なin situでの証拠を得た。彼らは、「L.ロイテリの投与は、ヒト上皮へのCD4+Tヘルパー細胞の動員を誘発した。この動員は、ヒトでこのL.ロイテリ株のプロバイオティクス効果を説明する1つの要素であるかもしれない」と結論づけた(Valeur N,Engel P,Carbajal N,Connolly E,Ladefoged K(2004)ヒト消化管におけるラクトバチルス・ロイテリATCC 55730によるコロニー形成及び免疫調節(Colonization and immunomodulation by Lactobacillus reuteri ATCC 55730 in the human gastrointestinal tract)、Appl Environ Microbiol 70 1176〜1181)。
【0017】
Toll様リセプター(TLR)は、微生物モティーフを認識してサイトカイン産生に導く一連の遺伝子を活性化する。従来はTLRは微生物感染のセンサーと考えられていて、その役割は炎症反応を誘導することである。しかしTLRによって認識されるモティーフは病原体に特有ではなく微生物の全部のクラスによって共有される一般的なモティーフであるが、どのようにして免疫系がTLRを介して片利共生細菌と病原性細菌とを区別するかについてはまだ充分には分かっていない。最近ではデータは、炎症反応の誘導におけるTLRの役割にもかかわらず、片利共生ミクロフローラを認識することにより、TLRは腸内ホメオスタシスを維持することにおいても役割を果たすことを示した(Rakoff−Nahoum S,Paglino J,Eslami−Varzaneh F,Edberg S,Medzhitov R.toll様リセプターによる片利共生ミクロフローラの認識には、腸内ホメオスタシスが必要である(Recognition of commensal microflora by toll−like receptors is required for intestinal homeostasis)。Cell.2004 Jul 23;118(2):229〜41)。
【0018】
L.ロイテリを含む様々なラクトバチルス属種の菌株が、プロバイオティクス処方において用いられている。L.ロイテリは、動物消化管に天然に存在する生物の1つであり、通常ヒトを含む健常動物の腸に認められる。これは抗菌活性を有することが知られている。例えば、米国特許第5,439,678号、同第5,458,875号、同第5,534,253号、同第5,837,238号、及び同第5,849,289号を参照のこと。L.ロイテリ細胞がグリセロール存在下の嫌気的条件下で増殖するとき、これらはβ−ヒドロキシ−プロピオンアルデヒド(3−HPA)として知られている抗菌物質を産生する。
【0019】
腸内免疫系と片利共生フローラ間に明白で複雑な関係が存在する。最近、管腔内在性フローラは、腸内上皮細胞上に位置するtoll様リセプター(TLRs)及びNODリセプターの活性化を介する細菌誘発性の生得的及び適応宿主応答の重要な過程を開始することができることが示された(Haller D,Jobin C.常在性第一胃細菌と宿主間の相互作用:健全な関係がまずくなるか?(Interaction between resident ruminal bacteria and the host:can a healthy relationship turn sour?)J Pediatr Gastroenterol Nutr 2004;38:123〜36.Rakoff−Naholm S,Paglino J,Eslami−Varzaneh F,Edberg S,Medzhitov R.Toll様リセプターによる片利共生ミクロフローラの認識には、腸内ホメオスタシスが必要である(Recognition of commensal microflora by Toll−like receptors is required for intestinal homeostasis)。Cell 2004;118:229〜241)。動物モデルにおいて、サイトカインは神経及び筋免疫相互作用(neuro− and myo−immune interactions)を介して腸神経筋肉組織の反射亢進を開始することができる(Milla PJ.炎症細胞及び腸運動性の制御(Inflammatory cells and the regulation of gut motility)。J Pediatr Gastroenterol Nutr 2004;39:S750)。
【0020】
実験的研究及び臨床的研究において、特異的なプロバイオティクス菌株はT細胞の増殖を阻害し、Th1及びTh2サイトカイン両方の分泌を低減するが、IL−10及びTGF−βなどの抑圧性サイトカインを選択的に産生することが示された(Rautava S,Kalliomaki M,Isolauri E.妊娠及び母乳哺育中のプロバイオティクスが、乳児におけるアトピー性疾患に対して免疫調節性保護を与える可能性がある(Probiotics during pregnancy and breast−feeding might confer immunomodulatory protection against atopic disease in the infants)。 J Allergy Clin Immunol 2002;109:119〜121)。さらにヒトボランティアにおいて、L.ロイテリはヒト消化管でコロニーを形成し、ヒト回腸上皮におけるCD4+Tヘルパー細胞の摂取を含む免疫調節性活性を発揮することができる(Valeur N,Engel P,Carbajal N,Connolly E,Ladefoged K.ヒト消化管のラクトバチルス・ロイテリATCC 55730によるコロニー形成及び免疫調節(Colonization and immunomodulation by Lactobacillus reuteri ATCC 55730 in the human gastrointestinal tract)。Appl Environ Microbiol 2004;70:1176〜81)。DCの成熟は、未成熟DCをリンパ節に遊走する熟成抗原提示細胞に変換する過程である。この過程は、未成熟のDCを特徴づける強力な抗原取り込み能力の喪失並びに同時刺激性分子及び種々のサイトカインの上方制御を生じる(Mellman I,Steinman RM:樹状細胞:特殊化及び調節された抗原プロセシング装置(Dendritic cells:specialized and regulated antigen processing machines)。Cell 2001,106:255〜8.Banchereau J,Briere F,Caux C,Davoust J,Lebecque S,Liu YJ,Pulendran B,Palucka K:樹状細胞の免疫生物学(Immunobiology of dendritic cells)。Annu Rev Immunol 2000,18:767〜811)。
【0021】
既知の成熟化プロトコルは、DCが抗原に曝露後又は曝露中に遭遇すると考えられている環境に基づいている。この方法の最適例は、単球馴化培地(MCM)の使用である。MCMは、単球を培養後、成熟因子の供給源として培養上清液を用いることによりin vitroで作製する。成熟に関与するMCMの主要成分は、炎症誘発性サイトカインであるインターロイキン−1ベータ(IL−1β)、IL−6及びTNF−αである(Reddy A,Sapp M,Feldman M,Subklewe M,Bhardwaj N:単球馴化培地は、ヒト樹状細胞の末期成熟の媒介において定義されたサイトカインより効果的である(A monocyte conditioned medium is more effective than defined cytokines in mediating the terminal maturation of human dendritic cells)。Blood 1997,90:3640〜6)。熟成したDCは、T細胞応答を促進し指令する種々のサイトカインを産生する。これらのサイトカインの2つは、IL−10及びIL−12である。これらのサイトカインは、誘導されたT細胞応答の方向に対して反対の作用を有する。すなわちIL−12はTh1タイプ応答を誘導するが、一方IL−10はそのような応答を阻害する。
【0022】
したがって、DCを含むAPCの活性化状態(抗原提示細胞)が、CD4T細胞応答のタイプと強度を決定する。休止APC(胸腺の上皮細胞を含む)は、CD4CD25TR細胞の発生を促進することができる。病原体による感染の間に、TLRによる微生物分子の認識はAPCの活性化を生じる。次いでAPCは、全体としてTR細胞の抑制効果よりも優位になるIL−6及び別の可溶性因子を産生して、病原体に対するT(エフェクターT細胞)細胞の効率的な産生を可能にする。休止及び活性化APC間の動的平衡は、TR及びTE細胞の両方の作用によっても影響を受けるであろう(図1)。
【0023】
Pessiら(2000)は、経口でのラクトバチルス・ラムノサスGG(Lactobacillus rhamnosus GG)に続くアトピーの子供におけるIL−10産生を記載している。しかし本明細書におけるこの発明と異なり、この研究は、運動障害及び仙痛に対する菌株の効率に関して選択された、大量のIL−10を産生する能力を有する菌株を具体的には記載していない(Pessi T,Sutas Y,Hurme M.Isolauri E.経口でのラクトバチルス・ラムノサスGGに続く、アトピーの子供におけるインターロイキン−10の産生(Interleukin−10 generation in atopic children following oral Lactobacillus rhamnosus.GG.)Clin Exp Allergy.2000 Dec;30(12):1804〜8)。
【0024】
Hermelijnらによる研究(2005)は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)ではなく、L.ロイテリ及びラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)は、単球由来DCをプライミングしてTR細胞の発生を促進することを示している。これらのTR細胞は、IL−10のレベルの増加を生じた。本明細書におけるこの発明と異なり、この著者らは腸運動性又は仙痛とIL−10の上昇を結び付けていない。菌株に関してさえも、この著者らはIL−10レベルを増加させるのに効率が良い2つの異なる細菌種を述べている。これは、仙痛を低減するのに最も有効なプロバイオティクスを決定し、IL−10レベルを増加させるのに有効である異なる能力を有する同じ種の異なる菌株として菌株レベルで選択されなければならないことを示した本明細書におけるこの発明とは対照的である。
【0025】
現在、仙痛の治療薬は存在しない。仙痛のための現在の治療パラダイムは、薬理学的及び/又は非薬理学的方法から成り、症状のせいぜいわずかな緩和を与える。親に提供される仙痛の典型的な治療的介入は、食餌的、物理的、行動的及び薬理学的介入を含む4つのカテゴリーの中に含まれる。食事療法には、種々の授乳技術についての専門家の助言又は低アレルギー性ミルクの使用、大豆若しくはラクトースを含まない調合乳、及び早い段階での固形食の採用が含まれる(Lothe,L.ら、乳児仙痛の原因としての牛乳からの調合乳:二重盲検試験(cow’s milk formula as a cause of infantile colic:a double−blind study)。Pediatrics 1982;70:7〜10;Forsyth B W C.仙痛と調合乳を変える効果:二重盲検多段交叉研究(Colic and the effect of changing formulas:a double−blind multiple−crossover study)。J Pediatr 1989;115,521〜6;Treem,W Rら、乳児仙痛に及ぼす繊維強化調合乳の効果の評価(Evaluation of the effect of a fiber−enriched formula on infant colic)。J Pediatr 1991;119695〜701)。しかし大豆調合乳の使用、又は授乳技術の変更のどちらも、仙痛のすべての症例に効果的に作用する訳ではない。これらの推奨を研究するデータの再検討では、低アレルギー性調合乳、例えば部分的に加水分解した又はアミノ酸に基づく調合乳の使用は、約25%の乳児にしか恩恵をもたらし得ないことを示した(Lucassen,P L B Jら、乳児仙痛:ホエー水解物を用いる号泣時間の減少:二重盲検、無作為プラセボ対照試験(Infantile colic:crying time reduction with a whey hydrolysate:a double−blind,randomized placebo−controlled trial)。Pediatrics 2000;106:1349〜54;Estep,D Cら、アミノ酸に基づく特殊調合乳を用いる小児仙痛の治療:予備的研究(Treatment of infant colic with amino acid−based infant formula:a preliminary study)。Acta Paediatr 2000;89:22〜7)。
【0026】
仙痛管理に対する物理的な方法には、ガスの産生/還流を緩和する体位の物理的な動き、乳児を抱きかかえること、スワドリング、腹圧をかけること、又はマッサージをすることが含まれる。他の方法には、仙痛に幼児が気づくのを最小限にするように気をそらすこと、例えば乳児を車に乗せること、乗車シミュレータの使用、ベビーベッド振動器、又は幼児用ブランコが含まれる(Lipton E L.スワドリングと小児ケアの実施:歴史的、文化的及び経験的観察(Swaddling and child care practice:historical,cultural and experimental observations)。Pediatrics 1965;35:521〜67;Byrne J M,Horowitz F D.鎮痛介入としてのロッキング:身動きの方向とタイプの影響(Rocking as a soothing intervention:the influence of direction and type of movement)。Infant Behav Dev 1981;4:207〜18)。
【0027】
別の方法は、乳児をなだめるといわれている音の録音を再生することである。しかし医学文献に、これらの方法は効果が無いという証拠が存在する(Parkin P C,Schwartz C J,Manuel B A.乳児期の持続的号泣管理における3つの介入の無作為対照臨床試験(Randomized controlled trial of three interventions in the management of persistent crying of infancy)Pediatrics 1993;92(2):197〜201)。これらの方法は、仙痛症状の緩和にせいぜいわずかに効果があるのみである。
【0028】
仙痛治療のための行動に関する介入の推奨は、利用できる最も一貫しない治療法である。一部の著者は感覚刺激を増大させることを勧めるが、他の著者はそのような刺激を低下させることを勧めている(Balon A J.乳児仙痛の管理(Management of infantile colic)。Amer Pham Physician 1997;55:235〜242;Lucassen P L B J,Assendelft W J J,Gubbels J W,van Eijk T M,van Geldrop W J.乳児仙痛に対する治療の効果:系統的再検討(Effectiveness of treatments for infantile colic:systematic review)。BMJ 1998;316(5):1563〜9;及びCarey W B.「仙痛」−乳児−環境相互作用としての主要な過剰号泣(“Colic”−primary excessive crying as an infant−environmental interaction)。Pediatr Clin North Am 1984;31:993〜1005)。その他の推奨には、号泣に対する早い段階での対応又は乳児を泣かせること、おしゃぶりを与えること、通常の授乳スケジュールの実施、視線を交わすこと及び対話型の遊びを用いることが含まれる。
【0029】
仙痛の治療の薬理学的介入により、処方薬及び非処方薬を使用するようになった。現在使用されている処方薬には、緩和を与え得るが錐体外路系症状、呼吸抑制、及び便秘を含む危険を伴うベラドンナアルカロイド及びオピエイト(鎮痛剤)が含まれる。例えばアトロピンとその効果が類似した抗コリン剤、例えばヒヨスチアミン(LEVISINE(登録商標)、又はGASTROSED(登録商標))及びジサイクロミンは、瞳孔を拡大し、心拍数を増加し、唾液産生を減少させ、消化管及び尿路並びに気管支の痙攣を緩和する。抗コリン剤が、乳児仙痛を常に効果的に治療することが示された米国市場での唯一の処方薬であるにもかかわらず、残念なことに治療を受けた乳児の5%までもが呼吸困難、無呼吸、発作、失神、窒息、昏睡及び筋緊張低下を含む副作用を生じることがある(Williams J,Watkin−Jones R.ジサイクロミン:一部の小さい乳児におけるこの使用に伴う憂慮すべき症状(Dicyclomine:worrying symptoms associated with its use in some small babies)(BMJ 1984;288:901;Myers J H,Moro−Sutherland D,Shook J E.硫酸ヒオスシアミンを用いて治療した仙痛の乳児における抗コリン作用性中毒(Anticholinergic poisoning in colicky infants treated with hyoscyamine sulfate)。Am J Emerg Med 1997;15:532〜5)。さらに数例の死亡が、ジサイクロミンを服用している乳児で報告された(Garriott J C,Rodriguez R,Norton L E.乳児におけるジサイクロミンが関与する2例の死亡(Two cases of death involving dicyclomine in infants)。Clinical Toxicol 1984;22(5):455〜462)。
【0030】
乳児仙痛に有効な治療として報告された非処方薬には、超生理学的(高用量)ジフェンヒドラミン(BENADRYL(登録商標))、フェノバルビタール、抱水クロラール、及びアルコールさえも含むいくつかの鎮静剤又は睡眠導入剤が含まれる。しかし呼吸器疾患を伴う子供においていくつかのこれらの薬剤に関連した重篤な副作用の可能性があり、したがって、仙痛治療におけるこれらの広範な使用を制限している(Balon A J.乳児仙痛の管理(Management of infantile colic)。Amer Pham Physician 1997;55:235〜242;Gurry D.Infantile colic.Australian Pham Phys 1994;23(3):337〜34632)。
【0031】
仙痛治療のより安全な非処方薬は、腸内ガス泡の量を低減する非吸収性の市販薬であるシメチコン又はジメチルポリシロキサンの投与を概して含んでいた。シメチコンは、非常に安全なプロフィールを有し、乳児仙痛に対するシメチコンの効果はプラセボと同じであることを示すいくつかの研究にもかかわらず多くの場合推奨されている(Metcalf,T Jら、Pediatrics 1994 July;94(1):29〜34.Sferra,T Jら、Pediatr Clin North Am 1996 April;43(2):489〜510.Danielson,B.ら、Acta Paediatr Scand 1985 May;74(3):446〜50.Colon,A Rら、Am Fam Physician 1989 December;40(6):122〜4)。その結果、今日の仙痛の最も一般的な治療は、乳児が成長して病態から脱するのを待つことだけである。
【0032】
したがって現在、乳児及び幼児における仙痛治療に役立つ安全で有効な化合物及び組成物並びに技術に対する要望がある。本発明の組成物及び方法は、この必要に応えて乳児における仙痛に伴う症状を安全且つ効果的に治療することができる製品を提供する。特許出願EP1364483A10には、乳児における仙痛などの消化管−神経筋異常の治療用プロバイオティクスが記載されている。プロバイオティクスとして、この出願人はいくつかの異なる細菌種について言及している。これは、仙痛を最も効果的に低減するプロバイオティクスはIL−10レベルの増加に有効であるように選択された特定の乳酸菌株であり、本発明の発明者がまた同種の菌株間でもIL−10産生の刺激にかなりの差異があることを示したように全ての細菌種ではないという本明細書における本発明と対照的である。
【0033】
2005年に、Savinoは治療の7日以内にシメチコンを用いる標準的治療法と比べて、L.ロイテリATCC55730の補充は、母乳哺育児における仙痛症状を有意に改善したことを示した。L.ロイテリを用いる治療に対する反応率は95%であったが、一方シメチコンに反応したのは乳児の7%のみであった。彼は、2005年8月31日〜2005年9月3日、イタリア国シエナでの欧州小児研究会議(European Society for Pediatric Research(ESPR),Meeting)で結果を発表した(Pediatr Res.2005;58(2):411)。Savinoの結果が有益な効果を示したにもかかわらず、彼はIL−10産生を促進する特定の菌株と腸運動性の減少、その結果としての仙痛の減少との間の関連に気づいていなかった。本発明は、本明細書においてそのような最良の菌株を選択する方法を提供する。
【0034】
Collinsは運動機能の障害は、様々な消化管部位で炎症又は免疫の活性化に関連して生じる場合がある種々の症状を生じ、食道炎、胃炎、及び突発性炎症性腸疾患(IBD)などの一般的な疾患を含むことを記載した。これらの観察は、消化管の運動性は免疫系の影響も受けやすいことを示唆している。このような関係において、運動系は内腔に存在する侵害刺激から消化管を防御する重要な役割を果たす可能性がある(Collins S.,腸神経筋機能の免疫調節:運動性及び炎症性障害に対する影響(The Immunomodulation of Enteric Neuromuscular Function:Implications for Motility and Inflammatory Disorders)。Gastroentrology 1996;111:1683〜1699)。例えばこの概念はVantrappenらの観察を反映しており、彼は小腸での細菌の異常増殖が、小腸における空腹時の運動性の正常な周期性パターンの破壊を伴うことを示した(Vantrappen G,Jannssens J,Hellemans J,Ghoos Y.正常対象及び小腸で細菌の異常増殖を有する患者の空腹時運動複合体(The interdigestive motor complex of normal subjects and patients with bacterial overgrowth of the small intestine)。J Clin Invest 1977;9:1158〜1168)。
【0035】
高いIL−10のレベルが、過度に活性化された免疫系を抑制することは長年よく知られていた。腸運動性は腸内免疫系に接続されている神経学的シグナルにより調節されること、及び仙痛は腸運動性が、例えば細菌異常増殖により増加した結果であることもまた既に示されていた。
【0036】
先進工業国では、母親の消化管ミクロフローラを取り込む新生児能力を阻害する衛生処置が早くも分娩過程で始まっている。その結果、異なるミクロフローラが乳児で確立される。例えば大腸菌(Escherichia coli)及びラクトバチルスを保菌する代わりに、新生児には黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)及び他の皮膚細菌が定着していることの方が多い。
【0037】
本発明の発明者らは、皮膚細菌の異常増殖は乳児の免疫系を過剰に活性化して、過剰に活性化された腸運動性及びその結果として仙痛を引き起こすが、IL−10産生を促進する能力を有するL.ロイテリDSM 17938などのさらに多数の特定の消化管細菌は、TR系の成熟、すなわちCD4+CD25+TR細胞の増殖をもたらすという予想外の発見をした。CD4+CD25+細胞の上方制御は穏やかな腸運動性をもたらし、その結果として仙痛を有する乳児に有益な効果をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
これらの所見のために、非病原性細菌菌株をIL−10増加特性に関して選択した。そして意外にもこの菌株のこの特性が、乳児仙痛の減少と相関することを見いだした。したがって本発明は、仙痛の予防及び/又は治療用の医薬品の製造のためのL.ロイテリDSM 17938の使用並びに同じようにして選択された他の菌株の使用に関する。
【0039】
本発明のさらなる目的は、ヒトを含む動物へ投与するための、前記菌株を含む製品を提供することである。他の目的及び効果は、下記の開示及び添付の特許請求の範囲からより明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0040】
本発明は、本明細書において、仙痛の予防及び/又は治療のために、IL−10の産生を促進する能力、その結果としてのCD4+CD25+TR細胞の増殖に関して選択された乳酸菌の特定の菌株、このような菌株を選択する方法、及びこのような菌株を含む製品を提供する。
【0041】
本発明のその他の目的と特徴は、下記の開示及び添付の特許請求の範囲からより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】CD4CD25TR細胞の発生促進における、特定の選択された乳酸菌菌株に対する提案された役割を示す図である。
【図2a】棒グラフ形式でのDC細胞によるIL10産生を示す図である。
【図2b】表形式でのDC細胞によるIL10産生を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
消化管での皮膚細菌のコロニー形成及びTR−細胞の欠乏は、新生乳児の免疫系を過剰に活性化して、過剰に活性化された腸運動性及びその結果として仙痛を引き起こす。IL−10の産生を促進する能力を有するL.ロイテリDSM 17938などの多数の特定の消化管細菌細胞は、TR系の成熟、すなわちCD4+CD25+TR細胞の増殖をもたらす。その他のラクトバチルス菌株がIL−10の産生を誘導することが、多くの研究者、例えばRautavaら(上記)により既に報告された。CD4+CD25+細胞の上方制御は穏やかな腸運動性をもたらし、その結果として仙痛に有益な効果をもたらす。意外にも、サイトカインIL−10のレベルの増加をもたらす菌株は、平均的号泣時間を低下させることができる同じ菌株であることが見いだされた(実施例2)。
【0044】
本明細書において、本発明は、L.ロイテリDSM 17938を含む仙痛を低減する能力に関して選択した乳酸菌の菌株を含む。食品などの製品、栄養的添加物及び処方、完全な細胞若しくはこれらの菌株に由来する成分を含む薬剤又は医療用具は、当技術分野で知られるように製剤化することができ、知られているように摂取可能な支持体に加えてラクトバチルス菌株、又はこの菌株に由来する成分を一般に含んでいる。
【0045】
in vitroでの研究を、単球由来のDCでのIL−10の産生を促進し、それによりCD4+CD25+TR細胞の発生を誘導する能力に関してラクトバチルスの菌株を選択する方法として使用することができる(実施例1)。
【0046】
データは、特定の菌株L.ロイテリATCC 55730及びL.ロイテリDSM 17938によるIL−10の効果的な刺激の指標を開示し、この調節は後期対数増殖期/定常増殖期の間にこれらの2つの特定の菌株によって増殖培地に放出される物質により媒介される。これに反してL.ロイテリの他の2つの菌株は、関連するIL−10産生を促進することができなかった。
【0047】
仙痛の予防又は治療のために選択された菌株の臨床的な適切さを確かめるために、乳児仙痛の診断を受けた母乳哺育児においてさらに研究を実施する。
【0048】
本発明の特徴は、以下の実施例を参照することによりさらに明確に理解されるが、本発明を限定するものとこれらを解釈すべきではない。
【実施例】
【0049】
(実施例1)
単球由来のDCによりIL−10の発現を促進するプロバイオティクス菌株の能力の研究:
未成熟DCは、10% FCS HyClone、Logan、UT)、組み換え型のヒト(rh)GM−CSF(500 U/ml;Schering−Plough、Uden、The Netherlands)、及びrhIL−4(250 U/ml;Pharma Biotechnologie Hannover、Hannover、Germany)を含むIMDM(Life Technologies、Paisley、U.K.)で培養された末梢血単球から生成される(Hilkens,C.M.U.,P.Kalinski,M.de Boer,and Kapsenberg.1997.ヒト樹状細胞は、ナイーヴなTヘルパー細胞のTh1表現型への発生を指令するために外来性のインターロイキン−12誘導性因子を必要とする(Human dendritic cells require exogenous interleukin−12−inducing factors to direct the development of naive T−helper cells toward the Th1 phenotype)。Blood 90:1920)(Kalinski,P.,J.H.N.Schuitemaker,C.M.U.Hilkens,E.A.Wierenga,and M.L.Kapsenberg.1999。樹状細胞の最終的な成熟は、IFN−γ及び細菌のIL−12インデューサーに対する反応性の減少を伴い、Th細胞との相互作用の間にIL−12を産生する熟成した樹状細胞の能力の減少を伴う(Final maturation of dendritic cells is associated with impaired responsiveness to IFN−γ and to bacterial IL−12 inducers:decreased ability of mature dendritic cells to produce IL−12 during the interaction with Th cells)。J.Immunol.162:3231)。
【0050】
この実施例で試験される菌株は、ATCC(Manassas、VA、USA及びDSMZ、Braunschweig、Germany)から入手可能なラクトバチルス・ロイテリATCC 55730,ラクトバチルス・ロイテリDSM 17938,ラクトバチルス・ロイテリATCC PTA 4660及びラクトバチルス・ロイテリATCC PTA 4964である。菌株は、6.25%ヒツジ血液を含むコロンビア寒天培地(Oxoid、Basingstoke、United Kingdom)で培養される。ラクトバチルスは5%CO雰囲気中で37℃で培養する。3日後に、細菌数を620nmでの吸光度(OD620)を測定することにより決定する。通常は、OD620の0.35が全ての試験菌株について1×10コロニー形成ユニット(cfu)に対応した。
【0051】
6日目に、成熟因子(Peprotech、Rocky Hill、NJ.から購入したサイトカイン)として全てを一緒に使用したサイトカインIL−1β(25ng/mL)及びTNF−α(50ng/mL)の組合せの存在下で、LPS(大腸菌;Sigma−Aldrich、St Louis、Mo)並びに試験ラクトバチルスによって未成熟DCの成熟を誘導する。
【0052】
熟成したDCによるIL−12、IL−10及びIL−6サイトカイン産生を、Vieira PLらによる記載のようにCD40リガンド発現マウスプラズマ細胞腫細胞(J558)を用いる24時間の刺激によって測定する(Vieira PL,de Jong EC,Wierenga EA,Kapsenberg ML,Kalinski P.骨髄系樹状細胞におけるTh1誘導能力の発生には、環境的指示を必要とする(Development of Th1 −inducing capacity in myeloid dendritic cells requires environmental instruction)。J Immunol 2000;164:4507〜12)。上清を24時間後に採取して、IL−10の濃度をELISAにより測定する。結果は図2を参照のこと。結果から分かるように、DCによるIL−10産生を促進する菌株の能力に関して異なるラクトバチルス菌株による影響にかなりの差が存在する。
【0053】
(実施例2)
乳児仙痛の治療において、選択されたプロバイオティクス菌株対シメチコン
乳児仙痛の診断を受けた母乳哺育児が、小児及び青年期科学科(Department of Pediatric and Adolescence Science)(Drottning Silvias University Hospital、Goteborg)で募集された。2500と4000gの間の出生時体重を有する適切な在胎月齢で、Wesselのクライテリアに当てはまり且つ登録前6±1日に生じた仙痛症状を有し、生後21〜90日の患者が、この研究への参加に考慮される(Wessel MA,Cobb JC,Jackson EB,Harris GS,Detwiler AC.時には、「仙痛」と呼ばれている乳児期におけるパロキシスマルファッシング(Paroxismal fussing)(Paroxismal fussing in infancy,sometimes called “colic”)。Pediatrics 1954;14:421〜35)。参加した全ての乳児には、やはりプロバイオティクスに対する反応に影響を与え得る食事の変動による腸内ミクロフローラの変動を減らすために、全て母乳だけを与える。乳児が慢性疾患若しくは消化器障害の臨床所見を有する場合、又は募集に先立つ1週間に乳児に抗生物質若しくはプロバイオティクスのいずれかを投与された場合には、乳児は除外される。
【0054】
この研究において、仙痛の乳児は以下の治療におけるプロバイオティクス又はシメチコンを投与されるためにランダム化される。すなわち、
(P1)ラクトバチルス・ロイテリ株ATCC 55730(SD2112とも呼ばれる)、
(P2)ラクトバチルス・ロイテリ株DSM 17938(2006年2月6日にブダペスト条約に基づいてDSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(Mascheroder Weg l b、D−38124 Braunschweig)に寄託された)
(P3)ラクトバチルス・ロイテリ株ATCC PTA 4660 及び
(S)シメチコンである。
【0055】
L.ロイテリは、28日間、1日につき1回、授乳後30分に、市販のMCT油(中鎖脂肪酸トリグリセリド油)懸濁液5滴中の10コロニー形成単位(CFU)の用量で投与される。MCT油は天然に存在しており、最も豊富な供給源はヤシ油である。ほとんどのMCT油は、ヤシ油から精製される。MCT油は、無味で低粘性の透明な薄い色の液体である。この油懸濁液は、2〜8℃で21ヵ月間安定である(製造業者(BioGaia AB、Stockholm、Sweden)によって実証されたように)、(MCT油の他の製造業者は、Akomed R、by Karlshamns AB、Karlshamn、Swedenである)。研究の間、親は使用しないときは冷蔵庫で製品を保管するように指示されている。シメチコン(S)は、1日に2回、28日間、授乳後に市販溶液(Mylicon Infants Gas Relief Drops、J&J、7050 Camp Hill Rd.、Fort Washington、Pennsylvania、19034−2210、USA)の3mL中60mg/日の用量で投与された。登録時に全ての母親は報告されるような牛乳が含まれていない食べ物に従うよう要請された。すなわち、ミルク、ヨーグルト、新鮮な臭いの強いチーズ、クリーム、バター、ビスケットを避けること。食事の順守は、全治療期間続けた食事日記で監視される。7日、14日、21日及び28日目に、1つの研究でこの食事のコンプライアンスを調べた。
【0056】
実施施設の倫理委員会は、研究プロトコルを承認し、乳児は文書によるインフォームドコンセントが親から得られた後に初めてこの研究に登録される。
【0057】
追跡訪問
小児科医が初めて乳児を診察した日を、1日目として定義する。この時にそれぞれの乳児は診察を受け、分娩のタイプ、出生時体重並びに在胎月齢、消化器疾患及びアトピーの家族歴に関する背景データを得るために親は面接を受けた。特に、乳児がアトピー性湿疹、アレルギー性鼻炎若しくは喘息を有する1人又は複数の家族(母親、父親及び/又は年長の兄弟姉妹)を有する場合、最後の1つはポジティブとみなされる。さらに研究期間でのアトピー性疾患のあらゆる徴候及び症状が記録された。また親も、募集(0日目)以後の毎日の平均号泣時間及び仙痛症状の回数についてデータを記録するように要請された。医師は研究群のいずれかに子供を無作為割付けした。研究製品の投与を1日目に始めた。
【0058】
親には研究に関する文書による情報が与えられ、体系化した日記を使用して0日目から開始して28日目まで、慰めることができない号泣症状の毎日の回数及びその持続時間、便の硬さ及び回数並びに何らかの観察された副作用(便秘、嘔吐、皮膚反応など)を記録するように求められる。全ての親が、同一のやり方で号泣時間を記載したこと及び乳児が薬物を適切に与えられたことを確認するために、親を助けるために研究者の1人が何時も電話で対応できる。
【0059】
それぞれの患者は、1日、7日、14日、21日及び28日目に同じ小児科医によって再検査される。
【0060】
結果
登録された母乳栄養仙痛乳児120人のうち、30人をL.ロイテリATCC 55730を用いる治療に無作為割付けし(P1)、30人をL.ロイテリDSM 17938用いる治療に無作為割付けし(P2)、30人をL.ロイテリATCC PTA 4660を用いる治療に無作為割付けし(P3)、30人をシメチコンを用いる治療に無作為割付けする(S)。本治験に関連する何らかの副作用のために治験から脱落した乳児はいない。いずれの群も、年齢、出生時体重、性別、分娩のタイプ、アトピー又は消化器疾患の家族歴及び喫煙に対する曝露に関して類似している。
【0061】
1日当たりの平均号泣時間は、0日及び1日目においては投与群間で類似している。L.ロイテリATCC 55730(P1)及びDSM 17938(P2)を投与されている乳児は、ATCC PTA 4660及びシメチコン(S)で治療された乳児に比べて、7日目までに毎日の号泣時間の有意な減少を示した。14日、21日及び28日目で、号泣時間は4つの投与群間で有意に異なる。28日目でこの研究の開始からの終わりまでの1日当たりの平均号泣時間における(P1)と(S)との間の差は82分であり、この研究の開始からの終わりまでの1日当たりの平均号泣時間における(P2)と(S)との間の差は83分である(表1)。この結果から分かるように、試験製品の投与前、この4つの投与群はかなり同等である。既に7日後に、2つのその他の代替物に対してL.ロイテリ株ATCC 55730 及びDSM 17938を優勢にする明らかな差が存在する。28日後にこの差はさらに大きくなった。
表1.L.ロイテリ及びとシメチコン群における号泣時間(1日当たりの平均分)
【表1】

【0062】
本発明について特定の実施例に関して説明してきたが、多くの変形、修正、及び実施形態が可能であり、したがって全てのそのような多くの変形、修正及び実施形態は本発明の趣旨及び範囲内にあるとみなされるべきであることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適切な宿主細胞でのIL−10の発現を促進する乳酸菌菌株の能力を試験すること、該宿主細胞によるIL−10産生の増加を引き起こす乳酸菌菌株を選択すること、及び該選択された菌株の細胞を含む製品を製造することを含む、乳児仙痛を低減するための製品を製造する方法。
【請求項2】
前記乳酸菌菌株が、ラクトバチルス・ロイテリの菌株である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記乳酸菌菌株が、ラクトバチルス・ロイテリ菌株DSM 17938である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の前記選択された乳酸菌菌株の生物学的純粋培養物を本質的に含む乳児仙痛を低減するための細菌製品であって、該菌株がIL−10産生を増加させる能力に関して選択されたたものである、上記細菌製品。
【請求項5】
前記乳酸菌菌株が、ラクトバチルス・ロイテリの菌株である、請求項4に記載の製品。
【請求項6】
前記乳酸菌菌株が、ラクトバチルス・ロイテリ菌株DSM 17938である、請求項5に記載の製品。
【請求項7】
中鎖脂肪酸トリグリセリド油をさらに含む、請求項4〜6のいずれか一項に記載の製品。
【請求項8】
乳児仙痛と診断された乳児に投与するための、請求項1に記載の方法によって製造された製品。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【公開番号】特開2010−202654(P2010−202654A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92728(P2010−92728)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【分割の表示】特願2009−514239(P2009−514239)の分割
【原出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(500155578)バイオガイア・エイビー (13)
【氏名又は名称原語表記】Biogaia AB
【Fターム(参考)】