説明

乳成分入りコーヒー飲料

【課題】近年の乳成分入りコーヒーはコーヒー含有量が多くなる傾向にあり、120〜130℃、20分程度の高温殺菌によるゲル状沈殿物の発生が問題になったり、保存安定性が悪く著しい沈殿が発生する場合もある。本発明は、コーヒー含有量がコーヒー生豆換算10%を超えるような乳成分入りコーヒー飲料について、レトルト殺菌あるいはUHT殺菌を行った後でも凝集物の発生を抑え、また長期間保存しても凝集の発生しない乳成分入りコーヒー飲料の開発することを課題とする。
【解決手段】フレッシュチーズ、乳化剤およびカゼインナトリウムを含有する乳化組成物を含有させることにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー含有量がコーヒー生豆換算10%を超えるコーヒー飲料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、乳成分入りコーヒーは缶、ペットボトルならびにビン等の容器に入った市場に広く流通し飲用されている嗜好性飲料の一つである。しかしながら、近年の乳成分入りコーヒーはコーヒー含有量が多くなる傾向にあり、120〜130℃、20分程度の高温殺菌によるゲル状沈殿物の発生が問題になったり、保存安定性が悪く著しい沈殿が発生する場合もある。
【0003】
コーヒー飲料の製造時の沈殿物発生を防止し、かつ保存安定性を確保するため、従来より各種乳化剤、安定剤が単独もしくは多種多様の組み合わせで使用されてきた。
具体的には、HLB15〜16のショ糖脂肪酸エステルとHLB3〜7の乳化剤の1種または2種以上組み合わせて、平均HLBを13.3〜14.4に調整した乳化剤混合製剤を添加する乳入り缶コーヒーの沈殿防止法が出願されているが、生豆換算で10重量%を越える場合は沈殿を十分に抑制できない(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、コーヒー抽出液に生クリームやバターを添加して、乳化剤と結晶セルロースと組み合わせてpH5.0から6.5に調整して加熱殺菌をする方法が提案されているが、特にコーヒー生豆含有量についてふれているわけではない(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
さらに、レトルト殺菌により乳タンパクが分離しない低酸性のミルク入り飲料に関する報告がされているが、この報告は安定剤にイオタ−カラギーナンを使用することを特徴としており、本発明は安定剤を使用しなくてもレトルト殺菌あるいはUHT殺菌後の凝集の発生を抑えるものであり内容に差異がある(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特許第3490529号公報
【特許文献2】特許第3384824号公報
【特許文献3】特開2004−321007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コーヒー含有量がコーヒー生豆換算10%を超えるような乳成分入りコーヒー飲料について、レトルト殺菌あるいはUHT殺菌を行った後でも凝集物の発生を抑え、また長期間保存しても凝集の発生しない乳成分入りコーヒー飲料の開発が期待されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者は、鋭意検討した結果、フレッシュチーズ、乳化剤およびカゼインナトリウムを含有する乳化組成物を含有させることにより、コーヒー生豆換算10%を越えるような乳成分入りコーヒー飲料の、レトルト殺菌あるいはUHT殺菌を行った後でも凝集物の発生を押さえ、また長期間保存しても凝集の発生しない乳成分入りコーヒー飲料を提供する。
【0008】
また、本発明は、フレッシュチーズ、乳化剤およびカゼインナトリウムを含有する乳化組成物を含有ことにより、コーヒー含有量がコーヒー生豆換算10%を越えるような乳成分入りコーヒー飲料の、レトルト殺菌あるいはUHT殺菌を行った後でも凝集物の発生を抑えることができるが、さらに牛乳、濃縮乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、練乳からなる群から少なくとも1種類の乳成分を含むコーヒー飲料においても、レトルト殺菌あるいはUHT殺菌を行った後でも凝集物の発生を抑えた乳成分入りコーヒー飲料を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、乳成分入りコーヒー飲料で、コーヒー生豆換算10%を超えるコーヒー成分を含有するコーヒー飲料を、殺菌後の凝集物の発生もなく長期間保存しても凝集物の発生もしない、今まで以上にコーヒーの風味を感じることのできるコーヒー飲料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の乳成分入りコーヒー飲料は、フレッシュチーズ、乳化剤、およびカゼインナトリウムを含有する乳化組成物を含有し、かつ生豆換算で10%を越えるような乳成分入りコーヒー飲料で、レトルト殺菌あるいはUHT殺菌を行った後でも凝集物の発生が起こらないことを特徴とするものである。
【0011】
さらに、牛乳、濃縮乳、全脂粉乳、脱脂粉乳および練乳からなる群から少なくとも1種以上の乳成分を含むコーヒー飲料においても、レトルト殺菌あるいはUHT殺菌を行った後でも凝集物の発生を抑えた乳成分入りコーヒー飲料を提供する。
【0012】
本発明では原料としてフレッシュチーズを使用するが、使用しうるフレッシュチーズについては特に制限があるわけではなく、従来より公知とされているものであればどのようなものでもよい。
【0013】
本発明において使用される乳化剤は食品分野で通常使用されている乳化剤であればなんら制限を受けるものではない。例示するならば、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリド、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル)、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、サポニン、ポリソルベート等があげられる。
【0014】
本発明で使用されるコーヒー豆は特に制限されるものではなく、1種類もしくは2種類以上のコーヒー豆を混合して使用してもよい。通常コーヒー飲料の製造には焙煎豆が使用されるが、焙煎方法としては、直火式焙煎機、熱風式焙煎機などの装置を使用し焙煎された焙煎豆を使用する。
【0015】
また、本発明に使用される焙煎豆の焙煎の程度は、通常のコーヒー製造に用いられるL値が15〜35位のもので、L値が15未満の場合はコーヒーの苦味が強くなりすぎ、逆にL値が35より大きくなると酸味が強くなりすぎる。
【0016】
L値とはコーヒー豆の焙煎の程度を表すために使用される指標であり、その測定には色差計が使用される。具体的には黒をL値0、白をL値100で表され、コーヒーの焙煎の程度が深いほど焙煎豆の色が黒っぽくなるため、L値は低い値になる。逆に焙煎の度合いが浅いほどL値は高い値になる。
【0017】
本発明に使用する乳化組成物は次のように調製する。まずフレッシュチーズと水を混合の上70℃まで加熱し、攪拌しながらカゼインナトリウムと各種乳化剤を添加して分散溶解する。溶解後ホモミキサーにて混合液を予備乳化し均質化することにより得ることができる(特開2004−267013参照)。
【0018】
使用するフレッシュチーズは特に限定はないが、乳脂肪含量が10%以上のものが好ましく、更には30%であればより好ましく、最も好ましくは50%以上含有することである。乳化組成物における乳脂肪含量は5〜50%の範囲が好ましく、更には10〜40%の範囲がより好ましい。
【0019】
乳化剤の添加量は特に限定されるものではないが、乳化組成物に対して0.01〜6%、好ましくは0.1〜3%、更に好ましくは0.2〜2%の範囲内で添加することが望ましい。
【0020】
カゼインナトリウムの添加量は特に限定されるものではないが、乳化組成物に対し0.1〜15%、好ましくは0.5〜10%、更に好ましくは1〜6%が望ましい。
【0021】
本発明の乳成分入りコーヒー飲料は、コーヒーが生豆換算で10%を越えることが特徴であるが、風味の点より15%までの範囲内であることが好ましい。また、コーヒー豆量に対しコーヒー抽出液量は1:3〜1:15、好ましくは1:4〜1:12の範囲内であることがよい。さらにコーヒー豆の抽出率は15〜35%、好ましくは20〜35%がよい。ここでいう抽出率とは、コーヒー豆量に対してコーヒー抽出液中に溶け出している可溶性固形分(Bx値)の割合を百分率で表した値である。
例えば、コーヒー豆量10gからコーヒー抽出液100gをとり、そのときのBx値が3の場合、その抽出率は((100g×0.03)/10g)×100=30%
と表される。本発明において、Bx値は屈折率計(株式会社アタゴ社製 N−10E)を用いて測定した値を用いることができる。
【0022】
また、本発明に使用される乳成分は特に限定されるものではないが、乳タンパクをより良好な風味を得るということを考えると、牛乳、濃縮乳、全脂粉乳、脱脂粉乳が特に挙げられる。乳成分の含有量は特に限定されるものではないが、
乳化組成物:乳成分が1:99〜100:0、好ましくは20:80〜100:0、さらに好ましくは40:60〜100:0である。
【0023】
本発明は、フレッシュチーズ、乳化剤およびカゼインナトリウムを含有する乳化組成物を含有することにより、生豆換算で10%を越えるような乳成分入りコーヒー飲料の、レトルト殺菌あるいはUHT殺菌を行った後でも凝集物の発生を抑えることができるが、さらに牛乳、濃縮乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、練乳からなる群から少なくとも1種類の乳成分を含むコーヒー飲料においても、レトルト殺菌あるいはUHT殺菌を行った後でも凝集物の発生を抑えた乳成分入りコーヒー飲料を提供する。
【0024】
ここで、レトルト殺菌およびUHT殺菌の条件としては、通常の乳成分入りコーヒー飲料において用いられている条件であれば特に限定させるものではないが、一般的に120℃〜145℃の範囲で、15秒〜60分の範囲内で行われる。
【0025】
以下に本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
実施例および比較例に使用した乳化組成物は次のように調製した。乳脂肪含有量50%のフレッシュチーズ50重量%と水45重量%を混合した後70℃まで加熱し、攪拌しながらグリセリン脂肪酸エステル1重量%およびカゼインナトリウム4重量%を分散溶解する。つぎに溶解液をホモミキサー(特殊機化工業(株)製 ロボミックス)で予備乳化し、この予備均質化液を高圧ホモジナイザー(イズミフードマテリアル(株)製)で高圧均質化処理することにより目的の乳化組成物を調製した。
レトルト殺菌後及びUHT殺菌後の凝集の有無を表1〜表6に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
レトルト殺菌機:(株)日阪製作所製 RCS−40RTGN
UHT殺菌機 :(株)日阪製作所製 RMS−2LS
焙煎コーヒー豆:L値20 生豆10.6%相当(10.62=8.5×1.25:生豆量=焙煎豆量×1.25)
コーヒー抽出率:26%
ショ糖脂肪酸エステル:三菱化学フーズ社製 リョートーシュガーエステルP−1670
表1より明らかなようにコーヒー生豆換算10%を超えるコーヒーで、レトルトもしくはUHT殺菌後に凝集物は発生していない。
【0029】
【表2】

【0030】
焙煎コーヒー豆:L値20 生豆12%相当(12=9.6×1.25:生豆量=焙煎豆量×1.25)
コーヒー抽出率:25%
表2より明らかなようにコーヒー生豆換算12%を超えるコーヒーで、レトルトもしくはUHT殺菌後に凝集物は発生していない。
【0031】
【表3】

【0032】
焙煎コーヒー豆:L値20 生豆14%相当(14=11.2×1.25:生豆量=焙煎豆量×1.25)
コーヒー抽出率:24%
表3より明らかなようにコーヒー生豆換算14%を超えるコーヒーで、レトルトもしくはUHT殺菌後に凝集物は発生していない。
【0033】
【表4】

【0034】
焙煎コーヒー豆:L値20 生豆10.6%相当(10.62=8.5×1.25:生豆量=焙煎豆量×1.25)
コーヒー抽出率:26%
表4より明らかなようにコーヒー生豆換算10%を超えるコーヒーで、レトルトもしくはUHT殺菌後に凝集物は発生している。
【0035】
【表5】

【0036】
焙煎コーヒー豆:L値20 生豆12%相当(12=9.6×1.25:生豆量=焙煎豆量×1.25)
コーヒー抽出率:25%
表5より明らかなようにコーヒー生豆換算12%を超えるコーヒーで、レトルトもしくはUHT殺菌後に凝集物は発生している。
【0037】
【表6】

【0038】
焙煎コーヒー豆:L値20 生豆14%相当(14=11.2×1.25:生豆量=焙煎豆量×1.25)
コーヒー抽出率:24%
表6より明らかなようにコーヒー生豆換算14%を超えるコーヒーで、レトルトもしくはUHT殺菌後に凝集物は発生している。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、乳成分入りコーヒー飲料で、コーヒー含有量がコーヒー生豆換算10%を越えるコーヒー成分を含有するコーヒー飲料を、殺菌後の凝集物の発生もなく、今まで以上にコーヒーの風味を感じることのできるコーヒー飲料提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー含有量がコーヒー生豆換算10%を超える乳成分入りコーヒー飲料において、フレッシュチーズ、乳化剤およびカゼインナトリウムを含有することを特徴とする乳成分入りコーヒー飲料。
【請求項2】
牛乳、濃縮乳、全脂粉乳、脱脂粉乳及び練乳からなる群から少なくとも1種以上の乳成分を含むことを特徴とする請求項1に記載の乳成分入りコーヒー飲料。

【公開番号】特開2009−261277(P2009−261277A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112379(P2008−112379)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】