説明

乳癌予後診断のための遺伝子発現マーカー

本発明は、遺伝子セットを提供し、この遺伝子セットの発現は、乳癌の診断および/または予後診断において重要である。1つの局面において、本発明は、乳癌患者の、乳癌の再発がない長期生存の可能性を予測する方法に関する。別の局面において、本発明は、浸潤性乳癌と診断された患者の、乳癌の再発がない長期生存の可能性を予測する方法に関する。さらなる局面において、本発明は、エストロゲンレセプター(ER)陽性浸潤性乳癌と診断された患者の、乳癌の再発がない長期生存の可能性を予測する方法に関する。なお別の局面において、本発明は、エストロゲンレセプター(ER)陰性浸潤性乳癌と診断された患者の、乳癌の再発がない長期生存の可能性を予測する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、遺伝子および遺伝子セットを提供し、この遺伝子および遺伝子セットの発現は、乳癌の診断および/または予後診断において重要である。
【背景技術】
【0002】
(従来技術の説明)
癌専門医は、癌専門医にとって利用可能である多くの処置選択肢を有し、これらの処置選択肢としては、「治療基準」として特徴付けられる化学療法薬物との種々の組み合わせと特定の癌についてラベルクレームを保有しないが、その癌における効力の証拠がある多くの薬物が挙げられる。良い処置結果となる可能性が最も高くなるには、患者が最適の利用可能な癌処置をされ、かつ、この処置が診断後可能な限り早く行われることを必要とする。
【0003】
現在のところ、臨床診断において使用される診断試験は、単一分析物であり、従ってこの診断試験は、数十の異なるマーカー間の関係を知ることについての潜在的価値を獲得しない。さらに、診断試験は、しばしば定量的でなく、免疫組織化学に依存している。この方法は、多くの場合、異なる検査室において異なる結果を生じ、このことは一部に、試薬が規格化されていないからであり、そして一部に、解釈が主観的であり、容易に定量化し得ないからである。RNAベースの試験は、時間に伴うRNA分解の問題から、および分析のために患者から新鮮組織サンプルを得ることが難しいという事実から、あまり使用されていない。固定パラフィン包埋組織は、より容易に利用可能であり、固定組織においてRNAを検出するために、方法が確立されている。しかし、これらの方法は、代表的には、少量の材料由来の多数の遺伝子(DNAまたはRNA)の研究を可能にしない。従って、伝統的に、固定組織は、タンパク質の免疫組織化学検出のため以外には、めったに使用されていない。
【0004】
最近、いくつかのグループが、マイクロアレイ遺伝子発現分析による種々の癌型の分類に関する研究を発表した(例えば、Golubら、Science 286:531−537(1999);Bhattacharjaeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:13790−13795(2001);Chen−Hsiangら、Bioinformatics 17(補遺1):S316−S322(2001);Ramaswamyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:15149−15154(2001)を参照のこと)。遺伝子発現パターンに基づくヒト乳癌の特定の分類もまた、報告されている(Martinら、Cancer Res.60:2232−2238(2000)、Westら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:11462−11467(2001);Sorlieら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:10869−10874(2001);Yanら、Cancer Res.61:8375−8380(2001))。しかし、これらの研究は、大部分は、種々の型の癌(乳癌を含む)のすでに確立された分類を改善および細分することに集中しており、そして一般的には、差次的に発現された遺伝子の関係への新たな洞察を提供せず、癌治療の臨床結果を改善させるための処置戦略に対する知見に結びつかない。
【0005】
現代の分子生物学および生化学は、その遺伝子の活性が、腫瘍細胞の挙動、腫瘍細胞の分化の状態、および特定の治療薬に対する腫瘍細胞の感受性または耐性に影響を与える、何百もの遺伝子を明らかにしているが、いくつかの例外があるものの、これらの遺伝子の状態は、薬物処置について慣用的に臨床決定をする目的のためには活用されていない。1つの注目すべき例外は、乳癌におけるエストロゲンレセプター(ER)タンパク質発現の使用であり、抗エストロゲン薬(例えば、タモキシフェン)による処置のための患者を選択する。別の例外的な例は、乳癌におけるErbB2(Her2)タンパク質発現の使用であり、Her2アンタゴニスト薬Herceptin(登録商標)(Genentech,Inc.,South San Francisco,CA)を用いる患者を選択する。
【0006】
最近の進歩にも拘らず、癌処置の課題は、病原が異なる腫瘍型に対する特定の処置レジメンを標的にし、そして最終的には、結果を最大限にするために腫瘍処置を個人化することにとどまる。従って、種々の処置選択肢に対する患者の応答に関する予測的情報を同時に提供する試験についての必要性が存在する。これは、その生態がほとんど理解されていない、乳癌について特に当てはまる。いくつかのサブグループ(例えば、ErbB2サブグループ)ならびにエストロゲンレセプター(ER)およびいくつかのさらなる転写因子の低〜存在しない遺伝子発現によって特徴付けられるサブグループ(Perouら、Nature 406:747−752(2000))への乳癌の分類は、乳癌の細胞異質性および分子異質性を反映せず、そして患者の応答を最大限にする処置戦略の設計を可能にしないことが明らかである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、遺伝子のセットを提供し、この遺伝子セットの発現は、特に病気を有さない生存に関して、予後診断の価値を有する。
【0008】
本発明は、上記セットにおける全てのマーカーのアッセイのために保管されたパラフィン包埋生検材料の使用を提供し、従って本発明は、最も広範に利用可能な型の生検材料に適合する。本発明はまた、例えば、コア生検または細針吸引を介した、腫瘍組織収集のいくつかの異なる方法に適合する。さらに、上記遺伝子セットの各メンバーについて、本発明は、試験に使用され得るオリゴヌクレオチド配列を特定する。
【0009】
1つの局面において、本発明は、乳癌患者の、乳癌の再発がない長期生存の可能性を予測する方法に関し、この方法は、上記患者より得られた乳癌組織サンプルにおける1つ以上の予後診断用RNA転写物もしくはそれらの発現産物の発現レベルであって、この乳癌組織サンプルにおける全てのRNA転写物もしくはそれらの発現産物の発現レベルに対して、またはRNA転写物もしくはそれらの発現産物の基準セットの発現レベルに対して正規化される、発現レベルを決定する工程を包含し、ここで、この予後診断用RNA転写物は:
【0010】
【化13】

からなる群より選択される1つ以上の遺伝子の転写物であり、
ここで:
【0011】
【化14】

のうちの1つ以上の発現は、乳癌の再発がない長期生存の可能性の減少を示し、そして:
【0012】
【化15】

のうちの1つ以上の発現は、乳癌の再発がない長期生存の可能性の増加を示す。
【0013】
特定の実施形態において、少なくとも2つの、または少なくとも5つの、または少なくとも10個の、または少なくとも15個の予後診断用RNA転写物もしくはそれらの発現産物の発現レベルが決定される。別の実施形態において、この方法は、全ての予後診断用RNA転写物またはそれらの発現産物の発現レベルの決定を包含する。
【0014】
別の特定の実施形態において、乳癌は、浸潤性乳癌である。
【0015】
さらなる実施形態において、RNAは、患者の固定蝋包埋乳癌組織標本から単離される。単離は、例えば、コア生検組織または細針吸引細胞から、当該分野で公知の任意の技術によって行われ得る。
【0016】
別の局面において、本発明は、以下の遺伝子:
【0017】
【化16】

の2つ以上にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含むアレイに関する。
【0018】
特定の実施形態において、このアレイは、上に列挙される遺伝子のうち、少なくとも3つ、もしくは少なくとも5つ、もしくは少なくとも10個、もしくは少なくとも15個、もしくは少なくとも20個、または全ての遺伝子にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む。
【0019】
別の特定の実施形態において、このアレイは、以下:
【0020】
【化17】

の遺伝子にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む。
【0021】
このポリヌクレオチドは、cDNA、またはオリゴヌクレオチドであり得、そしてこれらが提示される固体表面は、例えば、ガラスであり得る。
【0022】
別の局面において、本発明は、浸潤性乳癌と診断された患者の、乳癌の再発がない長期生存の可能性を予測する方法に関し、この方法は、以下の工程:
(1)上記患者より得られた乳癌組織サンプルにおける、以下:
【0023】
【化18−1】

【0024】
【化18−2】

【0025】
【化18−3】

からなる群より選択される遺伝子もしくは遺伝子セットのRNA転写物もしくは発現産物の発現レベルであって、上記乳癌組織サンプルにおける全てのRNA転写物もしくはそれらの発現産物の発現レベルに対して、またはRNA転写物もしくはそれらの発現産物の基準セットの発現レベルに対して正規化される、発現レベルを決定する工程;
(2)工程(1)において得られたデータを統計学的分析に供する工程;ならびに
(3)上記長期生存の可能性が、増加したかまたは減少したかどうかを決定する工程、
を包含する。
【0026】
さらなる局面において、本発明は、エストロゲンレセプター(ER)陽性浸潤性乳癌と診断された患者の、乳癌の再発がない長期生存の可能性を予測する方法に関し、この方法は、以下の工程:
(1)以下:
【0027】
【化19−1】

からなる群より選択される遺伝子セットの遺伝子のRNA転写物もしくは発現産物の発現レベルを決定する工程であって、ここで、ER陽性癌における以下の遺伝子:
【0028】
【化19−2】

の発現は、手術後の癌の再発がない生存の可能性の減少を示し、そして、以下の遺伝子:
【0029】
【化20】

の発現は、手術後の癌の再発がない生存についてのより良い予後診断用を示す、工程;
(2)工程(1)において得られたデータを統計学的分析に供する工程;ならびに
(3)この長期生存の可能性が、増加したかまたは減少したかを決定する工程、
を包含する。
【0030】
なお別の局面において、本発明は、エストロゲンレセプター(ER)陰性浸潤性乳癌と診断された患者の、乳癌の再発がない長期生存の可能性を予測する方法に関し、この方法は、以下の遺伝子セットの遺伝子:
【0031】
【化21】

のRNA転写物または発現産物の発現レベルを決定する工程を包含し、ここで、以下の遺伝子:
【0032】
【化22−1】

の発現は、癌の再発がない生存の可能性の減少を示し、そして以下の遺伝子:
【0033】
【化22−2】

の発現は、癌の再発がない生存についてのより良い予後を示す。
【0034】
異なる局面において、本発明は、患者についての個人化ゲノムプロファイルを作成する方法に関し、この方法は、以下の工程:
(a)上記患者より得られた乳房組織から抽出されたRNAを遺伝子発現分析に供する工程;
(b)表1〜表5のいずれか1つに列挙される乳癌遺伝子セットから選択される1つ以上の遺伝子の発現レベルを決定する工程であって、ここで、この発現レベルは、制御遺伝子に対して正規化され、そして必要に応じて、乳癌基準組織セットにおいて見出される量と比較される、工程;および
(c)この遺伝子発現分析によって得られたデータを要約する報告書を作成する工程、
を包含する。
【0035】
この報告書は、例えば、患者の長期生存の可能性の予測および/またはこの患者の処置様式についての推奨を含み得る。
【0036】
さらなる局面において、本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による表5Aおよび表5Bに列挙される遺伝子の増幅のための方法に関し、この方法は、表5Aおよび表5Bに列挙されるアンプリコンならびに表6A〜表6Fに列挙されるプライマー−プローブのセットを使用することによって、このPCRを行う工程を包含する。
【0037】
よりさらなる局面において、本発明は、表5Aおよび表5Bに列挙される、PCRアンプリコンに関する。
【0038】
なお別の局面において、本発明は、表6A〜表6Fに列挙される、PCRプライマー−プローブのセットに関する。
【0039】
本発明は、さらに予後診断法に関し、この予後診断法は、以下:
(a)患者より得られた乳癌細胞を含むサンプルを、以下:
【0040】
【化23】

からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子のRNA転写物またはそれらの産物の発現レベルの定量分析に供する工程、および
(b)上記遺伝子またはそれらの産物の正規化された発現レベルが規定の発現閾値より上に上昇する場合、乳癌の再発がない長期生存の可能性の減少を有する可能性が高いと該患者を同定する工程、
を包含する。
【0041】
異なる局面において、本発明は、さらに予後診断法に関し、この予後診断法は、以下:
(a)患者より得られた乳癌細胞を含むサンプルを、以下:
【0042】
【化24】

からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子のRNA転写物の発現レベルの定量分析に供する工程、および
(b)上記遺伝子またはそれらの産物の正規化された発現レベルが規定の発現閾値より上に上昇する場合、乳癌の再発がない長期生存の可能性の増加を有する可能性が高いと患者を同定する工程、
を包含する。
【0043】
本発明は、さらにキットに関し、このキットは、上記方法のいずれかを行うのに適切な、(1)抽出用緩衝液/試薬およびプロトコル;(2)逆転写用緩衝液/試薬およびプロトコル;ならびに(3)qPCR用緩衝液/試薬およびプロトコルのうちの1つ以上を備える。
【0044】
(図面の簡単な説明)
表1は、遺伝子の一覧であり、これらの遺伝子の発現は、乳癌生存に関する。遡及的臨床試験からの結果。二元統計学的分析(Binary statistical analysis)。
【0045】
表2は、遺伝子の一覧であり、これらの遺伝子の発現は、エストロゲンレセプター(ER)陽性患者における乳癌生存に関する。遡及的臨床試験からの結果。二元統計学的分析。
【0046】
表3は、遺伝子の一覧であり、これらの遺伝子の発現は、エストロゲンレセプター(ER)陰性患者における乳癌生存に関する。遡及的臨床試験からの結果。二元統計学的分析。
【0047】
表4は、遺伝子の一覧であり、これらの遺伝子の発現は、乳癌生存に関する。遡及的臨床試験からの結果。コックス比例ハザード統計学的分析。
【0048】
表5Aおよび表5Bは、遺伝子の一覧を示し、これらの遺伝子の発現は、乳癌生存に関する。遡及的臨床試験からの結果。この表は、遺伝子についての登録番号、およびPCR増幅に使用されるアンプリコン配列を含む。
【0049】
表6A〜表6Bは、表5A〜表5Bに列挙されるアンプリコンのPCR増幅に使用される、フォワードプライマーおよびリバースプライマー(それぞれ、「f」および「r」で示される)、ならびにプローブ(「p」で示される)についての配列を含む。
【0050】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
(A.定義)
他に規定されない限り、本明細書中で使用される科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者によって、一般的に理解されるものと同一の意味を有する。Singletonら,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology第2版,J.Wiley & Sons(New York,NY 1994),およびMarch,Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure第4版,John Wiley & Sons(New York,NY 1992)は、本出願において使用される多くの用語の一般的な指針を、当業者に提供する。
【0051】
当業者は、本明細書中に記載されるものと類似または同等である多くの方法および物質(これらは、本発明の実施において使用され得る)を認識する。実際、本発明は、決して記載される方法および物質に限定されない。本発明の目的のために、次の用語が、以下に規定される。
【0052】
用語「マイクロアレイ」は、基板上にハイブリダイズ可能なアレイエレメント(好ましくは、ポリヌクレオチドプローブ)の順序付けられた配列物を言う。
【0053】
用語「ポリヌクレオチド」は、単数または複数で使用された場合、概して、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを言い、これらは、非修飾のRNAもしくはDNA、または修飾されたRNAもしくはDNAであり得る。従って、例えば、本明細書中で規定されるようなポリヌクレオチドは、一本鎖および二本鎖のDNA、一本鎖および二本鎖の領域を含むDNA、一本鎖および二本鎖のRNA、ならびに一本鎖および二本鎖の領域を含むRNA、一本鎖もしくは、より代表的には、二本鎖であり得るか、または一本鎖および二本鎖の領域を含み得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書中で使用される場合、RNAもしくはDNA、またはRNAおよびDNAの両方を含む三本鎖領域を言う。このような領域内の鎖は、同一分子または異なる分子由来であり得る。これらの領域は、全ての1つ以上の分子を含み得るが、より代表的には、いくつかの分子の領域しか含まない。三重らせん領域の分子のうちの1つは、しばしば、オリゴヌクレオチドである。具体的には、用語「ポリヌクレオチド」は、cDNAを含む。この用語は、1つ以上の修飾された塩基を含む、DNA(cDNAを含む)およびRNAを含む。従って、安定性または他の理由により修飾された骨格を有するDNAまたはRNAが、この用語が本明細書中で意図される「ポリヌクレオチド」である。さらに、異常な塩基(例えば、イノシン)、または修飾された塩基(例えば、トリチウム化塩基)を含むDNAまたはRNAは、本明細書中で規定されるような用語「ポリヌクレオチド」の範囲内に含まれる。概して、用語「ポリヌクレオチド」は、非修飾のポリヌクレオチドの、全ての化学的、酵素学的および/または代謝的に修飾された形態ならびにウイルスおよび細胞(単細胞および複合細胞を含む)に特徴的なDNAおよびRNAの化学的形態を含む。
【0054】
用語「オリゴヌクレオチド」は、比較的短いポリヌクレオチドを言い、比較的短いポリヌクレオチドとしては、一本鎖デオキシリボヌクレオチド、一本鎖リボヌクレオチドまたは二本鎖リボヌクレオチド、RNA:DNAハイブリッドおよび二本鎖DNAが挙げられるが、これらに限定されない。一本鎖DNAプローブオリゴヌクレオチドのようなオリゴヌクレオチドは、例えば、市販の自動オリゴヌクレオチド合成装置を使用する化学的方法によって、しばしば合成される。しかしながら、オリゴヌクレオチドは、種々の他の方法(インビトロ組換えDNA媒介性技術および細胞および生物体におけるDNAの発現による)によって作製され得る。
【0055】
用語「差次的に発現される遺伝子」、「差次的な遺伝子発現」およびそれらの同義語(これらは、交換可能に使用される)は、遺伝子発現が、正常な被験体またはコントロールの被験体における発現と比較して、疾患、特に癌(例えば、乳癌)を罹患した被験体において、より高いかまたはより低いレベルに活性化された遺伝子を含む。この用語はまた、遺伝子発現が、同一の疾患の異なる段階でより高いまたは低いレベルに活性化された遺伝子を言う。差次的に発現される遺伝子は、核酸レベルもしくはタンパク質レベルで活性化または阻害のいずれかがなされてもよく、または選択的スプライシングを受けて種々のポリペプチド産物を生じてもよいこともまた、理解される。このような差異は、例えば、mRNAレベル、ポリペプチドの表面発現、分泌または他の分割(partitioning)における変化によって証明され得る。差次的な遺伝子発現としては、2つ以上の遺伝子もしくはそれらの遺伝子産物間の発現の比較、または2つ以上の遺伝子もしくはそれらの遺伝子産物間の発現の比の比較、またはさらに、同一遺伝子の2つの異なってプロセスされた産物(これらは、正常な被験体と疾患(特に癌)を罹患した被験体との間、または同一の疾患の種々の段階の間で異なる)の比較が挙げられ得る。差次的な発現としては、例えば、正常細胞と病的細胞との間、または種々の疾患事象もしくは疾患段階を被った細胞間で、遺伝子もしくはその発現産物における、時間的発現パターンまたは細胞性発現パターンの量的差異および質的差異の両方が挙げられる。本発明の目的のために、正常な被験体および罹患した被験体において、または罹患した被験体における疾患発生の種々の段階において、所定の遺伝子の発現の間で、少なくとも約2倍、好ましくは、少なくとも約4倍、より好ましくは、少なくとも約6倍、最も好ましくは、少なくとも約10倍の差異がある場合、「差次的遺伝子発現」が、存在すると考えられる。
【0056】
語句「遺伝子増幅」は、遺伝子または遺伝子フラグメントの複数のコピーが、特定の細胞または細胞株において形成されるプロセスを言う。重複領域(増幅されるDNAの伸長)は、しばしば、「アンプリコン」として呼ばれる。通常、産生されるメッセンジャーRNA(mRNA)の量(すなわち、遺伝子発現のレベル)はまた、特定の発現遺伝子から作製されるコピー数の比率において増加する。
【0057】
用語「診断」は、分子または病理学的状態、病理学的疾患もしくは病理学的条件の同定(例えば、頭頸部癌、結腸癌、または他の型の癌の分子サブタイプの同定)を言うために本明細書中で使用される。
【0058】
用語「予後」は、新生物疾患(例えば、乳癌)の癌起因性の死または進行(これらには、再発、転移性拡散、および薬物耐性が挙げられる)の可能性の予測を言うために本明細書中で使用される。
【0059】
用語「予測」は、患者が、薬物または一組の薬物に対して都合よくもしくは都合悪くのいずれかで反応する可能性およびそれらの反応の程度、または患者が、外科的切除もしくは原発腫瘍および/もしくは化学療法の後、癌の再発なく一定の期間生存する可能性を言うために本明細書中で使用される。本発明の予測方法は、任意の特定の患者にとって最も適切な処置様式を選択することによって処置を決定するために臨床的に使用され得る。本発明の予測方法は、患者が、処置レジメン(例えば、外科的介入、所定の薬物または薬物併用を用いた化学療法、および/または放射線療法)に対して好ましく反応する傾向がある場合、手術(sugery)および/または化学療法もしくは他の処置様式の終了の後、患者の長期生存が、見込みあるか否かを予測する際に価値ある手段である。
【0060】
用語「長期」生存は、手術または他の処置の後、少なくとも3年間、より好ましくは、少なくとも8年間、最も好ましくは、少なくとも10年間の生存を言うために本明細書中で使用される。
【0061】
用語「腫瘍」は、本明細書中で使用される場合、全ての新生細胞増殖(growth)ならびに新生細胞増殖(proliferation)(悪性または良性のいずれにしても)、そして全ての前癌性ならびに癌性の細胞および組織を言う。
【0062】
用語「癌」および「癌性」は、代表的に無秩序な細胞増殖によって特徴付けられる哺乳動物における生理学的条件を言うかまたは記載する。癌の例としては、乳癌、結腸癌、肺癌、前立腺癌、肝細胞癌、胃癌、膵癌、子宮頚癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路の癌、甲状腺癌、腎臓癌、癌腫(carcinoma)、黒色腫、および脳癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
癌の「病理」は、患者の福祉を損なう全ての現象を含む。この癌の「病理」としては、異常または制御不可能な細胞増殖、転移、隣接細胞の正常機能への干渉、異常レベルでのサイトカインまたは他の分泌生成物の放出、炎症性反応または免疫学的反応の抑制または悪化、新生物形成、前悪性腫瘍、悪性腫瘍、周囲または離れた組織または器官(例えば、リンパ節など)への侵襲が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に決定可能であり、そして概して、プローブ長、洗浄温度、および塩濃度に依存する経験的計算予測である。概して、適切なアニーリングについて、より長いプローブは、より高い温度を必要とし、一方より短いプローブは、より低い温度を必要とする。ハイブリダイゼーションは、概して、相補鎖が、融解温度以下の環境において存在する場合に、変性DNAが再びアニールする能力に依存する。プローブとハイブリダイズ可能な配列との間の所望の相同性の程度が高ければ高いほど、使用され得る相対温度は高くなる。結果として、より高い相対温度は反応条件をよりストリンジェントにさせる傾向があり、一方より低い温度は、そうさせない傾向がある。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーのさらなる詳細および説明については、Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience Publishers,(1995)を参照のこと。
【0065】
「ストリンジェントな条件」または「高いストリンジェントな条件」は、本明細書中で規定される場合、代表的に以下の通りである:(1)洗浄のために低いイオン強度および高い温度(例えば、50℃で0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム)を使用する;(2)ハイブリダイゼーションの間、ホルムアミドのような変性剤(例えば、42℃での0.1%ウシ血清アルブミン/0.1% Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを含むpH 6.5の50mMリン酸ナトリウム緩衝液を含む50%(v/v)ホルムアミド)を使用するか;または(3)42℃で50%ホルムアミド,5×SSC(0.75M NaCl,0.075Mクエン酸ナトリウム),50mMリン酸ナトリウム(pH 6.8),0.1%ピロリン酸ナトリウム,5×デンハート液,超音波処理したサケ精子DNA(50μg/ml),0.1% SDS,および10%硫酸デキストランを使用し、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中42℃および50%ホルムアミド中55℃で洗浄し、次いで55℃でEDTA含有0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄を行う。
【0066】
「中程度のストリンジェントな条件」は、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor Press,1989によって記載されるものと同じであり得、そして上記に記載されるものよりもストリンジェントの低い洗浄液およびハイブリダイゼーションの条件(例えば、温度、イオン強度およびSDS%)の使用を含み得る。中程度のストリンジェントな条件の例は、20%ホルムアミド,5×SSC(150mM NaCl,15mMクエン酸三ナトリウム),50mMリン酸ナトリウム(pH 7.6),5×デンハート液,10%硫酸デキストラン,および20mg/ml変性切断されたサケ精子DNAを含む溶液中で37℃で一晩のインキュベーションと、その後の約37〜50℃での1×SSC中でのフィルターの洗浄である。当業者は、プローブ長などの要素を適応する必要がある場合、温度、イオン強度などの調整法を認識する。
【0067】
本発明の文脈において、任意の特定の遺伝子セットに列挙される遺伝子の「少なくとも1つ」、「少なくとも2つ」、「少なくとも5つ」などへの言及は、列挙される遺伝子のうちの任意の1つまたは任意および全ての組み合わせを意味する。
【0068】
用語「発現閾値」および「規定された発現閾値」は、交換可能に使用され、そして遺伝子または遺伝子産物が、癌再発なく患者の生存についての予測マーカーとして機能する、上の該当の遺伝子または遺伝子産物のレベルを言う。閾値は、臨床的研究(例えば、以下の実施例において記載されるもの)から経験的に規定される。この発現閾値は、最大感受性、もしくは最大選択性、または最小誤差のいずれかについて選択され得る。任意の状況における発現閾値の決定は、十分に、当業者の知識の範囲内である。
【0069】
(B.詳細な説明)
本発明の実施は、他に示されない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、および生化学の慣用的な技術(これらは、当該分野の技術の範囲内である)を使用する。このような技術は、文献(例えば、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」,第2版(Sambrookら,1989);「Oligonucleotide Synthesis」(M.J.Gait,(編),1984);「Animal Cell Culture」(R.I.Freshney,(編),1987);「Methods in Enzymology」(Academic Press,Inc.);「Handbook of Experimental Immunology」,第4版(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell,(編),Blackwell Science Inc.,1987);「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(J.M.MillerおよびM.P.Calos,(編),1987);「Current Protocols in Molecular Biology」(F.M.Ausubelら,(編),1987);および「PCR:The Polymerase Chain Reaction」,(Mullisら,(編),1994)」)に完全に説明される。
【0070】
(1.遺伝子発現プロファイリング)
概して、遺伝子発現プロファイリングの方法は、以下の2つの大きい群に分けられ得る:ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション分析に基づく方法、およびポリヌクレオチドの配列決定に基づく方法。サンプル中のmRNA発現の定量のための、当該分野で公知の最も一般的に使用される方法としては、ノーザンブロッティングおよびインサイチュハイブリダイゼーション(ParkerおよびBarnes,Methods in Molecular Biology 106:247−283(1999));RNAseプロテクションアッセイ(Hod,Biotechniques 13:852−854(1992));および逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)(Weisら,Trends in Genetics 8:263−264(1992))が挙げられる。あるいは、二重鎖(DNA二重鎖、RNA二重鎖、およびDNA−RNAハイブリッド二重鎖またはDNA−タンパク質二重鎖を含む)を特異的に認識し得る抗体が、使用され得る。配列決定ベースの遺伝子発現分析のための代表的な方法としては、遺伝子発現の連続分析(Serial Analysis of Gene Expression)(SAGE)、および超並列的シグニチャー配列決定(massively parallel signature sequencing)(MPSS)による遺伝子発現分析が挙げられる。
【0071】
(2.逆転写PCR(RT−PCR))
上記に列挙された技術の中で、最も感受性があり、最も順応性のある定量的方法は、RT−PCRであり、これは、薬物処置ありかまたはなしの、正常組織および腫瘍組織における種々のサンプル集団におけるmRNAレベルを比較するため、遺伝子発現のパターンを特徴付けるため、密接な関係があるmRNAを区別するため、およびRNA構造を分析するために使用され得る。
【0072】
第一の工程は、標的サンプルからのmRNAの単離である。開始物質は、代表的に、それぞれヒト腫瘍またはヒト腫瘍細胞株、およびそれに対応する正常組織または正常細胞株から単離された全RNAである。従って、RNAは、健康なドナー由来のプールされたDNAとともに、種々の原発腫瘍(乳房、肺、結腸、前立腺、脳、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、胸腺、精巣、卵巣、子宮などの腫瘍または腫瘍細胞株を含む)から単離され得る。mRNAの供給源が、原発腫瘍である場合、mRNAは、例えば、凍結または保管されたパラフィン包埋かつ固定された(例えば、ホルマリン固定)組織サンプルから抽出され得る。
【0073】
mRNA抽出の一般的な方法は、当該分野で周知であり、分子生物学の標準的な教科書(Ausubelら,Current Protocols of Molecular Biology,John Wiley & Sons(1997)が挙げられる)に開示される。パラフィン包埋した組織からのRNA抽出のための方法は、例えば、RuppおよびLocker,Lab Invest.56:A67(1987),およびDe Andresら,BioTechniques 18:42044 (1995)に開示される。特に、RNA単離は、商業的製造者(例えば、Qiagen)製の精製キット、緩衝液セットおよびプロテアーゼを使用し、製造者の取扱説明書に従って行われ得る。例えば、培養中の細胞からの全RNAは、Qiagen RNeasy ミニ−カラムを使用して単離され得る。他の市販されているRNA単離キットとしては、MasterPureTM Complete DNA and RNA Purification Kit(EPICENTRE(登録商標),Madison,WI),およびParaffin Block RNA Isolation Kit(Ambion,Inc.)が挙げられる。組織サンプルからの全RNAは、RNA Stat−60(Tel−Test)を使用して単離され得る。腫瘍から調製されるRNAは、例えば、塩化セシウム密度勾配遠心分離によって単離され得る。
【0074】
RNAが、PCRのためのテンプレートとして機能し得ない場合、RT−PCRによる遺伝子発現プロファイリングにおける第一の工程は、cDNAへのRNAテンプレートの逆転写と、その後のPCR反応におけるその指数関数的増幅である。2つの最も一般的に使用される逆転写酵素は、鳥類(avilo)骨髄芽球症(myeloblastosis)ウイルス逆転写酵素(AMV−RT)およびモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV−RT)である。逆転写工程は、代表的に、環境および発現プロファイリングの目的に依存して、特異的プライマー、ランダムヘキサマー、またはオリゴ−dTプライマーを使用して準備される。例えば、抽出RNAは、製造者の取扱説明書に従って、GeneAmp RNA PCRキット(Perkin Elmer,CA,USA)を使用して逆転写され得る。次いで、生成されたcDNAは、後のPCR反応におけるテンプレートとして使用され得る。
【0075】
PCR工程は、種々の熱安定性のDNA依存性DNAポリメラーゼを使用し得るが、それは、代表的に、Taq DNAポリメラーゼを使用し、これは、5’−3’ヌクレアーゼ活性を有するが、3’−5’プルーフリーディングエンドヌクレアーゼ活性を欠く。従って、TaqMan(登録商標)PCRは、代表的に、TaqポリメラーゼまたはTthポリメラーゼの5’−ヌクレアーゼ活性を利用して、その標的アンプリコンに結合したハイブリダイゼーションプローブを加水分解するが、同等の5’ヌクレアーゼ活性を有する任意の酵素が、使用され得る。2つのオリゴヌクレオチドプライマーは、PCR反応に典型的なアンプリコンを産生するために使用される。第三のオリゴヌクレオチド(すなわち、プローブ)は、2つのPCRプライマー間に位置するヌクレオチド配列を検出するように設計される。このプローブは、Taq DNAポリメラーゼ酵素によって伸長不可能であり、そしてレポーター蛍光色素およびクエンチャー蛍光色素で標識される。レポーター色素からの任意のレーザー誘導性発光は、2つの色素がプローブ上にあり、2つの色素が近くに一緒に位置する場合、消光色素によって消光される。増幅反応の間、Taq DNAポリメラーゼ酵素は、テンプレート依存性様式でプローブを切断する。生じたプローブフラグメントは、溶液中に解離され、そして放出したレポーター色素からのシグナルは、第二のフルオロフォアの消光効果がない。レポーター色素の1つの分子は、合成された新しい分子の各々について遊離され、未消光のレポーター色素の検出は、このデータの定量的解釈の基盤を提供する。
【0076】
TaqMan(登録商標)RT−PCRは、市販されている設備(例えば、ABI PRISM 7700TM Sequence Detection SystemTM(Perkin−Elmer−Applied Biosystems,Foster City,CA,USA)、またはLightcycler(Roche Molecular Biochemicals,Mannheim,Germany)など)を使用して行われ得る。好ましい実施形態において、5’ヌクレアーゼ手順は、リアル−タイム定量PCRデバイス(例えば、ABI PRISM 7700TM Sequence Detection SystemTM)で行われる。このシステムは、サーモサイクラー、レーザー、電荷結合素子(CCD)、カメラおよびコンピュータからなる。このシステムは、サーモサイクラー上の96ウェル形式でのサンプルを増幅する。増幅の間、レーザー励起蛍光シグナルは、全ての96ウェルについて、光ファイバーケーブルを介してリアル−タイムで収集され、そしてCCDで検出される。このシステムは、機器を作動させ、データを分析するためのソフトウェアを含む。
【0077】
5’−ヌクレアーゼアッセイデータは、Ct(すなわち、閾値サイクル)として、初めに表される。上で議論したように、蛍光値は、全サイクルの間記録され、そして増幅反応におけるその時点まで増幅された生成物の量を表す。この蛍光シグナルが、統計学的有意差として最初に記録される時点が、閾値サイクル(Ct)である。
【0078】
サンプル−サンプル間の変化の誤差および効果を最小にするため、RT−PCRは、通常、内部標準を使用して行われる。理想の内部標準は、異なる組織間で一定レベルにて発現され、実験処理によって影響されない。遺伝子発現のパターンを規準化するために最も頻繁に使用されるRNAは、ハウスキーピング遺伝子グリセルアルデヒド−3−ホスフェート−デヒドロゲナーゼ(GAPDH)およびβ−アクチンについてのmRNAである。
【0079】
RT−PCR技術のより最近のバリエーションは、リアルタイム定量PCRであり、これは、二重標識した蛍光発生プローブ(すなわち、TaqMan(登録商標)プローブ)を介して、PCR産物の蓄積を測定する。リアルタイムPCRは、定量的な競合PCR(各標的配列についての内部競合物が、規準化のために使用される)およびサンプル中に含まれる規準化遺伝子または、RT−PCRのためのハウスキーピング遺伝子を使用した定量的な比較PCRの両方に対応する。さらなる詳細については、Heldら,Genome Research 6:986−994(1996)を参照のこと。
【0080】
RNA供給源として固定されパラフィン包埋された組織を使用する遺伝子発現のプロファイリングのための代表的プロトコルの工程は、mRNA単離、精製、プライマー伸長および増幅を包含し、種々の刊行された学術誌論文に示される{例えば:T.E.Godfreyら,J.Molec.Diagnostics 2:84−91[2000];K.Spechtら,Am.J.Pathol.158:419−29[2001]}。簡潔には、代表的なプロセスは、パラフィン包埋された腫瘍組織サンプルの約10μm厚切片の切断から始める。次いで、RNAが抽出され、そしてタンパク質およびDNAは、除去される。RNA濃度の分析後、必要に応じて、RNAの修復工程および/または増幅工程が包含され、そしてRNAは、遺伝子特異的プロモーターを使用して逆転写され、次いでRT−PCRが続く。
【0081】
本発明の一局面によると、PCRプライマーおよびプローブは、増幅されるべき遺伝子内に存在するイントロン配列に基づき設計される。本実施形態において、プライマー/プローブ設計における第一の工程は、遺伝子内のイントロン配列の描写である。これは、公に入手可能なソフトウェア(例えば、Kent,W.J.,Genome Res.12(4):656−64(2002)によって開発されたDNA BLATソフトウェア)、またはそのバリエーションを含むBLASTソフトウェアによってなされ得る。次の工程は、PCRプライマーおよびプローブ設計の十分に確立された方法に続く。
【0082】
非特異的シグナルを回避するため、プライマーおよびプローブを設計する際に、イントロン内の繰り返し配列をマスクすることが重要である。これは、Baylor College of Medicineを通じてオンラインで入手可能なRepeat Maskerプログラム(これは、繰り返しエレメントのライブラリーに対してDNA配列をスクリーニングし、繰り返しエレメントがマスクされたクエリー配列を戻し返す)を使用することによって容易に達成され得る。次いで、マスクされたイントロン配列は、任意の市販されているまたは他に公に入手可能なプライマー/プローブ設計パッケージ(Primer Express(Applied Biosystems);MGB assay−by−design(Applied Biosystems);Primer3(Krawetz S,Misener S(編)Bioinformatics Methods and Protocols:Methods in Molecular Biology.Humana Press,Totowa,NJ,pp 365−386の一般使用者および生物学者プログラマーのためのWWW上のSteve RozenおよびHelen J.Skaletsky(2000)Primer3)を使用してプライマーおよびプローブの配列を設計するために使用され得る。
【0083】
PCRプライマー設計の際に考えられる最も重要な因子としては、プライマー長、融解温度(Tm)、およびG/C含量、特異性、相補プライマー配列、および3’−末端配列が挙げられる。概して、最適なPCRプライマーは、一般的に、17〜30塩基長であり、そして約20%〜80%(例えば、約50%〜60%など)のG+C塩基を含む。50℃と80℃との間(例えば、約50℃〜70℃)のTmが、代表的に好ましい。
【0084】
PCRプライマーおよびプローブのためのさらなる指針については、例えば、PCR Primer,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,1995,pp.133−155のDieffenbach,C.W.ら,「General Concepts for PCR Primer Design」;PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications,CRC Press,London,1994,pp.5−11のInnisおよびGelfand,「Optimization of PCRs」;およびPlasterer,T.N.Primerselect:Primer and probe design.Methods Mol.Biol.70:520−527(1997)(これらの全体の開示が、本明細書中に参考として明白に援用される)を参照のこと。
【0085】
(3.マイクロアレイ)
差次的遺伝子発現はまた、マイクロアレイ技術を使用して同定または確認され得る。従って、乳癌関連遺伝子の発現プロファイルは、マイクロアレイ技術を使用して、新しい腫瘍組織またはパラフィン包埋された腫瘍組織のいずれかにおいて測定され得る。この方法では、目的のポリヌクレオチド配列(cDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む)は、マイクロチップ基板上にプレートされるか、またはアレイされる。次いで、アレイされた配列は、目的の細胞または組織由来の特異的DNAプローブを用いてハイブリダイズされる。ちょうどRT−PCR法のように、mRNAの供給源は、代表的に、ヒト腫瘍またはヒト腫瘍細胞株および対応する正常組織または正常細胞株から単離される全RNAである。従って、RNAは、種々の原発腫瘍または腫瘍細胞株から単離され得る。mRNAの供給源が、原発腫瘍である場合、mRNAは、例えば、凍結組織サンプルまたは保管されパラフィン包埋かつ固定(例えば、ホルマリン固定)された組織サンプルから抽出され得、これらは、通常の臨床的慣例で、慣例的に調製され、かつ保存される。
【0086】
マイクロアレイ技術の特定の実施形態において、cDNAクローンのPCR増幅された挿入物は、密集したアレイの基板に適用される。好ましくは、少なくとも10,000個のヌクレオチド配列が、基板に適用される。このマイクロアレイされた遺伝子は、各10,000個のエレメントでマイクロチップ上に固定化され、ストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションに適している。蛍光標識cDNAプローブは、蛍光ヌクレオチドを取り込んで、目的の組織から抽出されたRNAを逆転写することにより、産生され得る。チップ上に適用された標識cDNAプローブは、アレイ上の各DNAスポットに対して特異的にハイブリダイズする。非特異的な結合プローブを除くためのストリンジェントな洗浄の後、チップは、共焦点レーザー顕微鏡または別の検出方法(例えば、CCDカメラ)によって走査される。各アレイされたエレメントのハイブリダイゼーションの定量は、対応するmRNA存在量の評価を可能とする。二重色蛍光を用いて、RNAの2つの供給源から産生された別々に標識されたcDNAプローブは、アレイに対でハイブリダイズされる。従って、各特定の遺伝子に対応する2つの供給源由来の転写物の相対存在量が、同時に決定される。ハイブリダイゼーションの小型化スケールは、大量の遺伝子についての発現パターンの簡便性かつ迅速な評価をもたらす。このような方法は、まれな転写物(これらは、1細胞当たり小さいコピーで発現される)を検出するため、そして発現レベルにおいて少なくともおよそ2倍の差異を、再現性をもって検出するために必要とされる感度を有することが、示されている(Schenaら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(2):106−149(1996))。マイクロアレイ分析は、市販されている設備により、製造者のプロトコルに従って(例えば、Affymetrix GenChip技術,またはIncyteのマイクロアレイ技術を使用することによって)行われ得る。
【0087】
遺伝子発現の大規模な分析のためのマイクロアレイ法の開発は、癌分類の分子マーカーおよび種々の腫瘍タイプにおける結果予測を系統的に検索することを可能にする。
【0088】
(4.遺伝子発現の連続分析(SAGE))
遺伝子発現の連続分析(SAGE)は、各転写物についての個々のハイブリダイゼーションプローブを提供する必要なしに、多数の遺伝子転写物の同時定量分析を可能にする方法である。まず、短い配列タグ(約10〜14bp)が、各転写物内の固有の位置から得られるという条件で、転写物を一意的に同定するための十分な情報を含むように作製される。次いで、多くの転写物は、共に結合され配列決定され得る長い連続する分子を形成し、多重タグの同一性を同時に明らかにする。転写物の任意の集合の発現パターンは、個々のタグの存在量を決定し、各タグに対応する遺伝子を同定することによって、定量的に評価され得る。より詳細については、例えば、Velculescuら、Science 270:484−487(1995);およびVelculescuら、Cell 88:243−51(1997)を参照のこと。
【0089】
(5.MassARRAY技術)
MassARRAY(Sequenom,San Diego,California)技術は、検出のための質量分析(MS)を用いる自動化された高処理の遺伝子発現分析の方法である。この方法に従って、RNAの単離、逆転写およびPCR増幅に続いて、cDNAはプライマー伸長に供される。このcDNA由来プライマー伸長生成物は、精製され、MALTI−TOF MSサンプル調製のために必要とされる成分と一緒にプレロードされるチップアレイ上に分配される。反応において存在する種々のcDNAは、質量分析中で得られるピーク領域を分析することによって定量化される。
【0090】
(6.超並列的遺伝子ビーズクローン解析法(MPSS)による遺伝子発現分析)
Brennerら、Nature Biotechnology 18:630−634(2000)により記載されるこの方法は、非ゲルベースのシグニチャー(signature)配列決定を、分離した5μm直径マイクロビーズ上の何百万のテンプレートのインビトロクローニングと結合させる配列決定のアプローチである。まず、DNAテンプレートのマイクロビーズライブラリーが、インビトロクローニングによって構築される。この後、高密度(代表的には、3×10マイクロビーズ/cmを超える)におけるフローセル中のテンプレート含有マイクロビーズのプレナー・アレイの集合が続く。各マイクロビーズ上のクローニングされたテンプレートの遊離端は、DNAフラグメント分離を必要としない蛍光ベースのシグニチャー配列決定方法を用いて、同時に分析される。この方法は、一回の操作で、酵母cDNAライブラリー由来の何十万の遺伝子シグニチャー配列を同時かつ正確に提供することが示されている。
【0091】
(7.免疫組織化学)
免疫組織化学方法はまた、本発明の予後マーカーの発現レベルを検出するために適切である。従って、各マーカーについての特異的な抗体または抗血清(好ましくはポリクローナル抗血清、および最も好ましくはモノクローナル抗体)が、発現を検出するために使用される。これらの抗体は、抗体自身を直接標識することによって検出され得る。標識には、例えば、放射性標識、蛍光標識、ハプテン標識(例えば、ビオチンまたは酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼ)が用いられる。あるいは、未標識の一次抗体が、一次抗体に特異的な抗血清、ポリクローナル抗血清またはモノクローナル抗体を含む標識された二次抗体と結合して用いられる。免疫組織化学プロトコールおよびキットは、当該分野で周知であり、市販されている。
【0092】
(8.プロテオミクス)
用語「プロテオーム」は、特定の時点においてサンプル(例えば、組織、器官または細胞培養物)中に存在するタンパク質の全体として定義される。プロテオミクスは、とりわけ、サンプル中のタンパク質発現の全体的な変化の研究を含む(「発現プロテオミクス」としても称される)。プロテオミクスは、代表的に以下の工程を包含する:(1)サンプル中の個々のタンパク質を、2−Dゲル電気泳動(2−D PAGE)によって分離する工程;(2)ゲルから回収した個々のタンパク質を(例えば、質量分析またはN末端配列決定によって)同定する工程、および(3)バイオインフォマティクスを用いてデータを分析する工程。プロテオミクス方法は、遺伝子発現プロファイリングの他の方法に対して有用な補足物であり、単独または他の方法と組み合わせて、本発明の予後マーカーの生成物を検出するために使用され得る。
【0093】
(9.mRNA単離、精製および増幅の概要)
遺伝子発現をプロファイルするための代表的なプロトコールの工程は、RNA供給源として固定パラフィン包埋組織を用い、mRNA単離、精製、プライマー伸長および増幅を含む。これらの工程は、種々の刊行された学術誌の論文において提供される{例えば:T.E.GodfreyらJ.Molec.Diagnostics 2:84−91[2000];K.spechtら,Am.J.Pathol.158:419−29[2001]}。手短には、代表的なプロセスは、パラフィン包埋された腫瘍組織サンプルの厚さ約10μmの切片を切断することから開始する。次いで、RNAは抽出され、タンパク質およびDNAが除去される。RNA濃縮の分析の後、RNA修復および/または増幅工程が包含され得、必要な場合、RNAは、遺伝子特異的プロモーターを用いて逆転写され、続いてRT−PCRを行う。最後に、このデータは分析され、試験される腫瘍サンプル中で同定される特徴的な遺伝子発現パターンに基づいて、患者に対して利用可能な最良の処置選択肢を同定する。
【0094】
(10.乳癌遺伝子セット、アッセイされる遺伝子サブ配列、および遺伝子発現データの臨床的適用)
本発明の重要な局面は、乳癌組織によって予後情報を提供するために、特定の遺伝子の測定された発現を使用することである。この目的のために、アッセイされるRNAの量における差と使用されるRNAの質における差異との両方を補正する(標準化する)ことが必要である。従って、このアッセイは代表的に、特定の標準化遺伝子発現(周知のハウスキーピング遺伝子(例えば、GAPDHおよびCyp1)を含む)を測定し、組み込む。あるいは、標準化は、すべてのアッセイされる遺伝子もしくはこれらの大きなサブユニットの平均値シグナルまたは中央値シグナル(Ct)(全体的な標準化アプローチ)に基づき得る。遺伝子ごとに、測定される患者腫瘍mRNAの標準化量は、乳癌組織の基準セット中で見出される量と比較される。この基準セット中の乳癌組織の数(N)は、異なる基準セットが(全体として)本質的に同じ様式で挙動することを確実にするために十分大きくなければならない。この条件が満たされる場合、特定のセット中に存在する個々の乳癌組織の同定は、アッセイされる遺伝子の相対量に顕著な影響を与えない。通常は、乳癌組織の基準セットは、少なくとも約30の、好ましくは少なくとも約40の異なるFPE乳癌組織標本からなる。他に記述されない限り、各mRNA/試験された腫瘍/患者についての標準化発現レベルは、基準セットにおいて測定される発現レベルのパーセンテージとして表される。より詳細には、十分多い数(例えば、40)の腫瘍の基準セットは、各mRNA種の標準化レベルの分布を与える。分析される特定の腫瘍サンプル中で測定されるレベルは、数パーセント点の範囲内に収まり、このレベルは、当該分野で周知の方法によって決定され得る。他に記述されない限り、このことは下に常には明示的に述べられないが、遺伝子の発現レベルの言及は、基準セットと比較した標準化発現を前提とする。
【0095】
本発明のさらなる詳細は、以下の非限定な実施例において記載される。
【実施例】
【0096】
(79の悪性乳癌中の遺伝子発現の第II相研究)
パラフィン包埋し、固定した浸潤性乳腺管癌の組織サンプル中の遺伝子発現を分子的に特徴付け、そしてこのような分子プロファイルと病気でない生存との間の相関を調査するという主要な目的で、遺伝子発現研究を計画し、行った。
【0097】
(研究設計)
浸潤性乳癌と診断された79人の個々の患者から得られた、パラフィン包埋し、ホルマリン固定した主要な乳癌組織上で、分子アッセイを実施した。この研究のすべての患者は、10以上の陽性結節を有した。平均年齢は57歳であり、平均臨床腫瘍サイズは4.4cmであった。材料および方法の節において記載のように実施した組織病理学的評価が、腫瘍組織の適当な量および均質な病理学を示した場合のみ患者を本研究に含めた。
【0098】
(材料および方法)
各代表的な腫瘍ブロックを、診断、半定量的な腫瘍量の評価、および腫瘍段階について、標準的な組織病理学により特徴付けた。全部で6個の切片(各々、厚さ10ミクロン)を調製し、2つのCostar Brand Microcentrifuge Tube(ポリプロピレン、1.7mLチューブ、透明;各チューブに3切片)中に配置した。この腫瘍が全標本領域の30%未満を構成する場合、全体の顕微解剖を用いて、病理学者がそのサンプルを粗く解体し得、直接的にCostar tube中に腫瘍組織を配置し得る。
【0099】
外科的手順の一部として2以上の腫瘍ブロックを得た場合は、病理学的により代表的なブロックを、分析のために使用した。
【0100】
(遺伝子発現分析)
固定したパラフィン包埋の組織サンプルからmRNAを抽出し、精製し、そして上の9節に記載される遺伝子発現分析のために調製した。
【0101】
ABI PRISM 7900TM Sequence Detection SystemTM(Perkin−Elmer−Applied Biosystems,Foster City,CA,USA)を用いて、RT−PCRによって、定量的遺伝子発現の分子アッセイを実施した。ABI PRISM7900TMは、熱サイクラー、レーザー、電荷結合素子(CCD)、カメラおよびコンピューターからなる。このシステムは、熱サイクラー上の384ウェルのフォーマット中のサンプルを増幅する。増幅の間、レーザー誘導された蛍光シグナルを、すべての384ウェルについての光ファイバーケーブルを介して、リアルタイム(real−time)で収集し、CCDで検出した。このシステムは、機器を作動するための、およびデータを分析するためのソフトウェアを含む。
【0102】
(分析および結果)
185の癌関連遺伝子および7の基準遺伝子について、腫瘍組織を分析した。各患者についての閾値サイクル(threshold cycle)(CT)値を、特定の患者についての7の基準遺伝子の中央値に基づいて標準化した。臨床的な結果のデータは、記載データの総説および選択された患者の病歴から、すべての患者について利用可能であった。
【0103】
結果を以下のように分類した:
0 乳癌もしくは不明の原因によって死亡、または乳癌再発を伴って生存;
1 乳癌再発を伴わずに生存、または乳癌以外の原因によって死亡。
【0104】
分析は、以下のように行った:
1.標準化遺伝子発現と0または1の二元の結果との間の関係の分析。
【0105】
2.乳癌再発を伴わずに生存した患者または乳癌以外の原因によって死亡した患者の場合の標準化遺伝子発現と結果(上に定義したように、0または1)までの時間との間の関係の分析を行った。このアプローチを用いて、個々の遺伝子の予後の影響および複数の遺伝子のセットの予後の影響もまた評価した。
【0106】
(二元アプローチによる浸潤性乳腺癌を有する患者の分析)
第一の(二元)アプローチにおいて、浸潤性乳腺癌を有する79人の患者すべてに関して、分析を実施した。再発がなく、かつ3年において乳癌に関連する死亡がないと分類された患者の群の、再発、すなわち3年において乳癌に関連する死亡として分類された患者の群に対するt検定を実施した。そして各遺伝子について群の間での差異について、p値を計算した。
【0107】
表1は、群の間の差異についてのp値が、<0.10である47遺伝子を列挙する。平均発現値の第一の縦列は、転移性再発を有さず乳癌で死亡していない患者に関する。平均発現値の第二の縦列は、転移性再発を有したか、または乳癌で死亡したかのどちらかの患者に関する。
【0108】
【表1−1】

【0109】
【表1−2】

前述の表1において、陰性のt値は、より悪い結果に関連するより高い発現を示し、そして逆に、より高い(陽性)t値は、よりよい結果と関連するより高い発現を示す。従って、例えば、CD68遺伝子の上昇した発現(t値=−3.41、生存のCT平均値<死亡のCT平均値)は、疾患のない生存の減少した可能性を示す。同様に、BCl2遺伝子の上昇した発現(t値=4.00;生存のCT平均値>死亡のCT平均値)は、疾患のない生存の増加した可能性を示す。
【0110】
表1に示されたデータに基づいて、定義した発現閾値を上回る乳癌中の以下の遺伝子のいずれの発現も、外科手術後の癌再発を伴わない生存の減少した可能性を示す:Grb7、CD68、CTSL、Chkl、Her2、STK15、AIB1、SURV、EGFR、MYBL2、HIFlα。
【0111】
表1に示されたデータに基づいて、定義した発現閾値を上回る乳癌中の以下の遺伝子のいずれの発現も、外科手術後の癌再発を伴わない生存についてのよりよい予後を示す:TP53BP2、PR、Bcl2、KRT14、EstRl、IGFBP2、BAG1、CEGP1、KLK10、βカテニン、GSTM1、FHIT、Rizl、IGF1、BBC3、IGFR1、TBP、p27、IRS1、IGF1R、GATA3、CEGP1、ZNF217、CD9、pS2、ErbB3、TOP2B、MDM2、RAD51、およびKRT19。
【0112】
(二元アプローチによるER陽性患者の分析)
エストロゲンレセプター(ER)について標準化のCT>0を有する57人の患者(すなわち、ER陽性患者)を、別々の分析に供した。再発がなく、かつ3年において乳癌に関連する死亡がないと分類された患者群、または再発もしくは3年において乳癌関連する死亡として分類された患者群の2つの群に対して、t検定を実施した。そして各遺伝子についての群の間での差異について、p値を計算した。下の表2は、群の間の差異についてのp値が、<0.105であった遺伝子を列挙する。平均発現値の第一の縦列は、転移性再発を有さず乳癌で死亡していない患者に関する。平均発現値の第二の縦列は、転移性再発を有したか、または乳癌で死亡したかのどちらかの患者に関する。
【0113】
【表2−1】

【0114】
【表2−2】

各遺伝子について、分類アルゴリズムを利用し、臨床的結果を予測する際に各遺伝子を単独で使用するための最良の閾値(CT)を同定した。
【0115】
表2に記載されたデータに基づいて、規定した発現レベルを上回るER陽性癌中の以下の遺伝子の発現は、外科手術後の癌再発を伴わない生存の可能性の減少を示す:CD68;CTSL;FBXO5;SURV;CCNB1;MCM2;Chkl;MYBL2;HIF1A;cMET;EGFR;TS;STK15。これらの遺伝子の多く(CD68、CTSL、SURV、CCNB1、MCM2、Chkl、MYBL2、EGFR、およびSTK15)をまた、以前の分析における予後不良の指標として同定した。これらは、ER陽性乳癌に限定されない。表2に記載されたデータに基づいて、規定した発現レベルを上回るER陽性癌中の以下の遺伝子の発現は、外科手術後の癌再発を伴わない生存のよりよい予後を示す:IGFR1;BCl2;HNF3A;TP53BP2;GATA3;BBC3;RAD51C;BAG1;IGFBP2;PR;CD9;RB1;EPHX1;CEGP1;TRAIL;DR5;p27;p53;MTA;RIZ1;ErbB3;TOP2B;EIF4E。後者の遺伝子のうち、IGFR1;BCl2;TP53BP2;GATA3;BBC3;RAD51C;BAG1;IGFBP2;PR;CD9;CEGP1;DR5;p27;RIZ1;ErbB3;TOP2B;EIF4Eをまた、以前の分析における良好な予後の指標として同定した。これらは、ER陽性乳癌に限定されない。
【0116】
(二元のアプローチによるER陰性患者の分析)
エストロゲンレセプター(ER)について正規化CT<1.6を有する20人の患者(すなわち、ER陰性患者)を、分離分析に供した。再発がなく、かつ3年において乳癌に関連する死亡なし、または再発もしくは3年において乳癌に関連する死亡ありのどちらかとして分類した2つの群の患者に関して、t検定を実施した。そして各遺伝子についての群の間での差異について、p値を計算した。表3は、これらの群の間の差異についてのp値が、<0.118である遺伝子を記載する。平均発現値の第一の列は、転移性再発を有さず乳癌で死亡してもいない患者に関する。平均発現値の第二の列は、転移性再発を有したか、または乳癌で死亡したかのどちらかの患者に関する。
【0117】
【表3】

表3に記載されたデータに基づいて、規定した発現レベルを上回るER陰性癌中の以下の遺伝子の発現は、癌再発を伴わない生存の可能性の減少を示す(p<0.05):CCND1;UPA;HNF3A;CDH1;Her2;GRB7;AKT1;STMY3;α−カテニン;VDR;GRO1。これらの遺伝子の2つのみ(Her2およびGrb7)をまた、以前の分析における予後不良の指標として同定した。これらは、ER陰性乳癌に限定されない。表3に記載されたデータに基づいて、規定した発現レベルを上回るER陰性癌中の以下の遺伝子の発現は、癌再発を伴わない生存についてのよりよい予後を示す:KT14;KLK10;マスピン、TGFα、およびFRP1。後者の遺伝子のうち、KLK10のみをまた、以前の分析における良好な予後の指標として同定した。これは、ER陰性乳癌に限定されない。
【0118】
(複数の遺伝子の分析および結果の指標)
複数の遺伝子を用いることが結果の間のよりよい識別能を提供するか否かを決定するために、2つのアプローチを行った。
【0119】
まず、フォワードステップワイズアプローチ(forward stepwise approach)を用いて、判別分析を実施した。任意の1つの遺伝子単独で得られたものを超える識別能を有する結果を分類するモデルを作製した。
【0120】
第二のアプローチ(時間事象(time−to−event)アプローチ)に従って、各遺伝子についてコックス比例ハザードモデル(例えば、Cox,D.R.,およびOakes,D.(1984),Analysis of Survival Data,Chapman and Hall,London,New Yorkを参照のこと)を、再発または死までの時間を従属変数とし、遺伝子の発現レベルを独立変数として定義した。コックスモデルにおいて、p値<0.10を有する遺伝子を同定した。各遺伝子について、このコックスモデルは、遺伝子発現における単位変化(unit change)について再発または死の相対危険度(RR)を提供する。測定した発現の任意の閾値(CTスケールで)においてサブグループに分割するために、患者を選択し得る。その遺伝子が、予後不良(RR>1.01)であるかまたは予後良好(RR<1.01)の指標であるかに依存して、閾値を上回る発現値を有するすべての患者は、より高い危険を有し、閾値を下回る発現値を有するすべての患者は、より低い危険を有する。逆もまた同じである。従って、任意の閾値が、それぞれ増大する危険性または減少した危険性を有する患者のサブグループを定義する。この結果を、表4に要約する。表題:exp(係数)の第三の列は、RR値を示す。
【0121】
【表4】

二元分析および時間事象分析は、ほとんど例外なしに予後マーカーとして同じ遺伝子を同定した。例えば、表1と表4との比較は、10遺伝子が、両方のリストにおける上位15遺伝子を表したことを示す。さらに、両方の分析が[p<0.10]で同じ遺伝子を同定した場合(これは21遺伝子について起こった)、これらは、生存/再発の相関の方向(陽性サインまたは陰性サイン)に関して常に一致した。全体的に、これらの結果は、同定したマーカーが、有意な予後値を有するという結論を強化する。
【0122】
3以上の遺伝子を含むコックスモデル(多変数モデル)について、各個々の遺伝子のモデルへの段階的エントリーを実施した。エントリーした第一の遺伝子を、有意な一変量p値を有する遺伝子の中から前選択する。続く各工程におけるモデルへのエントリーのために選択する遺伝子は、モデルのデータへの適合を最もよく改善する遺伝子である。この分析は、任意の総数の遺伝子で実施され得る。下に示す結果の分析において、段階的エントリーを10遺伝子までについて実施した。
【0123】
多変量分析を、以下の方程式を用いて実施した:
RR=exp[coef(遺伝子A)×Ct(遺伝子A)+coef(遺伝子B)×Ct(遺伝子B)+coef(遺伝子C)×Ct(遺伝子C)+・・・・・]
この方程式において、有益な結果の予報値である遺伝子についての係数は、陽性の数であり、好ましくない結果の予報値である遺伝子についての係数は、陰性の数である。この方程式中の「Ct」値はΔCtであり、すなわち、母集団の平均正規化Ct値と当該の患者で測定された正規化Ctとの間の差異を反映する。この分析で使用される慣習は、母集団の平均を下回るΔCtおよび上回るΔCtは、それぞれ陽性サインおよび陰性サインを有するということである(より多いmRNA存在量またはより少ないmRNA量を反映する)。この方程式を解くことで計算される相対危険度(RR)は、患者が癌再発を伴わない長期生存の機会の増加または減少を有するか否かを示す。
【0124】
(浸潤性乳癌を有する79人の患者の多変量遺伝子分析)
浸潤性乳癌を有する79人の患者すべてについて得た遺伝子発現データに関して、コックス比例ハザードモデルを用いた多変量段階的分析を実施した。以下の10遺伝子のセットを、患者の生存の特に強力な予測値を有するように、この分析によって同定した:
【0125】
【化25−1】

【0126】
【化25−2】

本発明は、特定の実施形態であるとみなされるものを参照して記載されたが、本発明が、このような実施形態に限定されないことが理解される。反対に、本発明は添付された特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれる種々の改変ならびに等価物を網羅することが意図される。例えば、本開示は、種々の乳癌関連遺伝子および遺伝子セットの同定、ならびに乳癌の個別化された予後に焦点を当てるが、他の型の癌に関係する類似の遺伝子、遺伝子セットおよび方法は、明確に本発明の範囲内である。
【0127】
本開示全体で引用されるすべての参考文献は、本明細書によって明白に参考として援用される。
【0128】
【表5A】

【0129】
【表5B】

【0130】
【表6A】

【0131】
【表6B】

【0132】
【表6C】

【0133】
【表6D】

【0134】
【表6E】

【0135】
【表6F】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳癌患者の、乳癌の再発がない長期生存の可能性を予測する方法であって、該方法は、該患者より得られた乳癌組織サンプルにおける1つ以上の予後診断用RNA転写物もしくはそれらの発現産物の発現レベルであって、該乳癌組織サンプルにおける全てのRNA転写物もしくはそれらの発現産物の発現レベルに対して、またはRNA転写物もしくはそれらの発現産物の基準セットの発現レベルに対して正規化される、発現レベルを決定する工程を包含し、ここで、該予後診断用RNA転写物は:
【化1】

からなる群より選択される1つ以上の遺伝子の転写物であり、
ここで:
【化2】

のうちの1つ以上の発現は、乳癌の再発がない長期生存の可能性の減少を示し、そして:
【化3】

のうちの1つ以上の発現は、乳癌の再発がない長期生存の可能性の増加を示す、方法。
【請求項2】
少なくとも2つの前記予後診断用RNA転写物またはそれらの発現産物の発現レベルを決定する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも5つの前記予後診断用RNA転写物またはそれらの発現産物の発現レベルを決定する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも10個の前記予後診断用RNA転写物またはそれらの発現産物の発現レベルを決定する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも15個の前記予後診断用転写物またはそれらの発現産物の発現レベルを決定する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記乳癌が、浸潤性乳癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の予後診断用RNA転写物の発現レベルが決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記RNAが、前記患者の、固定蝋包埋乳癌組織検体から単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記RNAが、コア生検組織または細針吸引細胞から単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
アレイであって、以下の遺伝子:
【化4】

のうちの2つ以上にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、アレイ。
【請求項11】
前記遺伝子のうちの少なくとも3つにハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、請求項10に記載のアレイ。
【請求項12】
前記遺伝子のうちの少なくとも5つにハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、請求項10に記載のアレイ。
【請求項13】
前記遺伝子のうちの少なくとも10個にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、請求項10に記載のアレイ。
【請求項14】
請求項10に記載のアレイであって、以下の遺伝子:
【化5】

にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、アレイ。
【請求項15】
前記ポリヌクレオチドが、cDNAである、請求項10または請求項14に記載のアレイ。
【請求項16】
前記cDNAが、約500塩基長〜約5000塩基長である、請求項15に記載のアレイ。
【請求項17】
前記ポリヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドである、請求項10または請求項14に記載のアレイ。
【請求項18】
前記オリゴヌクレオチドが、約20塩基長〜約80塩基長である、請求項17に記載のアレイ。
【請求項19】
固体表面が、ガラスである、請求項10または請求項14に記載のアレイ。
【請求項20】
約330,000個のオリゴヌクレオチドを含む、請求項19に記載のアレイ。
【請求項21】
浸潤性乳癌と診断された患者の、乳癌の再発がない長期生存の可能性を予測する方法であって、以下の工程:
(1)該患者より得られた乳癌組織サンプルにおける、以下:
【化6−1】

【化6−2】

からなる群より選択される遺伝子もしくは遺伝子セットのRNA転写物もしくは発現産物の発現レベルであって、該乳癌組織サンプルにおける全てのRNA転写物もしくはそれらの発現産物の発現レベルに対して、またはRNA転写物もしくはそれらの発現産物の基準セットの発現レベルに対して正規化される、発現レベルを決定する工程;
(2)工程(1)において得られたデータを統計学的分析に供する工程;ならびに
(3)該長期生存の可能性が、増加したかまたは減少したかを決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項22】
エストロゲンレセプター(ER)陽性浸潤性乳癌と診断された患者の、乳癌の再発がない長期生存の可能性を予測する方法であって、以下の工程:
(1)以下:
【化7】

からなる群より選択される遺伝子セットの遺伝子のRNA転写物もしくは発現産物の発現レベルを決定する工程であって、ここで、ER陽性癌における以下の遺伝子:
【化8】

の発現は、手術後の癌の再発がない生存の可能性の減少を示し、そして、以下の遺伝子:
【化9】

の発現は、手術後の癌の再発がない生存についてのより良い予後診断用を示す、工程;
(2)工程(1)において得られたデータを統計学的分析に供する工程;ならびに
(3)該長期生存の可能性が、増加したかまたは減少したかを決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項23】
前記統計学的分析が、コックス比例ハザードモデルを使用して行われる、請求項21または請求項22に記載の方法。
【請求項24】
エストロゲンレセプター(ER)陰性浸潤性乳癌と診断された患者の、乳癌の再発がない長期生存の可能性を予測する方法であって、以下の遺伝子セット:
【化10−1】

の遺伝子のRNA転写物もしくは発現産物の発現レベルを決定する工程であって、ここで、以下の遺伝子:
【化10−2】

の発現は、癌の再発がない生存の可能性の減少を示し、そして以下の遺伝子:
【化10−3】

の発現が、癌の再発がない生存についてのより良い予後を示す、工程を包含する、方法。
【請求項25】
患者についての個人化ゲノムプロファイルを作成する方法であって、以下の工程:
(a)該患者より得られた乳房組織から抽出されたRNAを遺伝子発現分析に供する工程;
(b)表1〜表5のいずれか1つに列挙される乳癌遺伝子セットから選択される1つ以上の遺伝子の発現レベルを決定する工程であって、ここで、該発現レベルは、制御遺伝子に対して正規化され、必要に応じて、乳癌基準組織セットにおいて見出される量と比較される、工程;および
(c)該遺伝子発現分析によって得られたデータを要約する報告書を作成する工程、
を包含する、方法。
【請求項26】
前記乳房組織が、乳癌細胞を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記乳房組織が、固定パラフィン包埋生検サンプルから得られる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記RNAが、フラグメント化される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記報告書が、前記患者の長期生存の可能性の予測を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記報告書が、前記患者の処置様式についての推奨を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による表5Aおよび表5Bに列挙される遺伝子の増幅のための方法であって、表5Aおよび表5Bに列挙されるアンプリコンならびに表6A〜表6Fに列挙されるプライマー−プローブのセットを使用することによって、該PCRを行う工程を包含する、方法。
【請求項32】
表5Aおよび表5Bに列挙される、PCRアンプリコン。
【請求項33】
表6A〜表6Fに列挙される、PCRプライマー−プローブのセット。
【請求項34】
予後診断方法であって、以下:
(a)患者より得られた乳癌細胞を含むサンプルを、以下:
【化11】

からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子のRNA転写物またはそれらの産物の発現レベルの定量分析に供する工程、および
(b)該遺伝子またはそれらの産物の正規化された発現レベルが規定の発現閾値より上に上昇する場合、乳癌の再発がない長期生存の可能性の減少を有する可能性が高いと該患者を同定する工程、
を包含する、方法。
【請求項35】
予後診断方法であって、以下:
(a)患者より得られた乳癌細胞を含むサンプルを、以下:
【化12】

からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子のRNA転写物の発現レベルの定量分析に供する工程、および
(b)該遺伝子またはそれらの産物の正規化された発現レベルが規定の発現閾値より上に上昇する場合、乳癌の再発がない長期生存の可能性の増加を有する可能性が高いと該患者を同定する工程、
を包含する、方法。
【請求項36】
前記遺伝子のRNA転写物のレベルが、2つ以上のハウスキーピング遺伝子のRNA転写物または産物の平均レベルと比較して正規化される、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記ハウスキーピング遺伝子が、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、Cyp1、アルブミン、アクチン、チューブリン、シクロフィリンヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HRPT)、L32、28S、および18Sからなる群より選択される、請求項34または請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記サンプルが、検出限界の上に存在する全ての遺伝子の包括的遺伝子発現分析に供される、請求項34または請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記遺伝子のRNA転写物のレベルが、アッセイされた遺伝子の全てまたはその一部のRNA転写物または産物の平均シグナルと比較して正規化される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記RNA転写物のレベルが、定量RT−PCR(qRT−PCR)によって決定され、そして前記シグナルが、Ct値である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記アッセイされた遺伝子が、少なくとも50の癌関連遺伝子を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記アッセイされた遺伝子が、少なくとも100の癌関連遺伝子を含む、請求項39に記載の方法
【請求項43】
前記患者が、ヒトである、請求項34または請求項35に記載の方法。
【請求項44】
前記サンプルが、固定パラフィン包埋組織(FPET)サンプルであるか、または新鮮組織サンプルもしくは凍結組織サンプルである、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記サンプルが、細針生検、コア生検、または他の型の生検由来の組織サンプルである、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記定量分析が、qRT−PCRによって行われる、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記定量分析が、前記遺伝子産物を定量することによって行われる、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
前記産物が、免疫組織化学またはプロテオミクス技術によって定量される、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記患者が、乳癌の再発がない長期生存の可能性の減少を有することを示す報告書を作成する工程をさらに包含する、請求項34に記載の方法。
【請求項50】
前記患者が乳癌の再発がない長期生存の可能性の増加を有することを示す、報告書を作成する工程をさらに包含する、請求項35に記載の方法。
【請求項51】
キットであって、請求項1、34および35のいずれか1項に記載の方法を行うのに適切な、(1)抽出用緩衝液/試薬およびプロトコル;(2)逆転写用緩衝液/試薬およびプロトコル;ならびに(3)qPCR用緩衝液/試薬およびプロトコル、のうちの1つ以上を備える、キット。

【公表番号】特表2006−516897(P2006−516897A)
【公表日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500964(P2006−500964)
【出願日】平成16年1月14日(2004.1.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/000985
【国際公開番号】WO2004/065583
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(504345126)ジェノミック ヘルス, インコーポレイテッド (17)
【出願人】(505266776)ラッシュ ユニバーシティ メディカル センター (1)
【Fターム(参考)】