乳腺密度及び/又は乳癌のリスクのバイオマーカーとしての電気生体インピーダンス解析
乳房の上皮下インピーダンスを非侵襲的に測定するため、及び実質的に無症候の女性患者が発生する、又は乳房における増殖性もしくは前癌性変化を発生する実質的に増加したリスク状態にある、又は前癌性もしくは癌性変化を発生させるためのその後のリスク状態にあるリスクを評価する方法及びシステムが提供される。1つ以上の場所で、及び少なくとも1種の周波数、特別には中等度に高い周波数で患者の実質乳腺組織の上皮下インピーダンスを測定するために複数の電極が使用される。乳癌を発生するリスクは、患者についての上皮下インピーダンスの測定及び予測もしくは推定値にしたがって、及び1つ以上の経験に基づくアルゴリズムにしたがって評価される。開示された方法を実施するための器具もまた提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、その開示が参照として本明細書に組み入れられる2007年12月11日に出願された米国特許仮出願第61/007,128号明細書の出願日の利益を主張する。
【0002】
[発明の分野]
乳腺密度及び/又は乳癌のリスクの理想的、又は好ましいバイオマーカーは、以下の特性、(1)生物学的妥当性、(2)低リスク集団に比較して高リスク集団において高い発現率、(3)プロスペクティブ試験における癌との関連付け、(4)正常生理学的過程によってはほとんど影響を受けない発現、又は生理学の影響を制御する能力、(5)低コストで最小侵襲性技術を用いてバイオマーカーを入手できる能力、及び(6)再現性を含んでいる。
本発明のためには、米国立衛生研究所による「バイオマーカー」の一般に容認された定義である「正常生物学的過程、病理学的過程、又は治療的インターベンションに対する薬理学的反応についての指標として客観的に測定及び評価される特性」を採用する(Biomarkers Definitions Working Group:Biomarkers And Surrogate Endpoints:Preferred Definitions And Conceptual Framework.Clin.Pharmacol.Ther.2001;69:89−95)。
以下に示すように、本発明は一般に、乳腺密度を推定するためのバイオマーカーとしての電気生理学的特性、好ましくは上皮下インピーダンスの測定、特別には非侵襲性の測定、及びさらに、好ましくは個人が乳癌もしくは異常な組織を発生するリスクを評価する際に使用するための、乳癌もしくは異常な組織についてのまた別のバイオマーカーとしてのそのような推定乳腺密度の使用に関する。
【0003】
本発明は一般に、増殖性、異常もしくは癌性組織の検出、及びより特別には、増殖性、異常もしくは癌性組織の電気生理学的特性における変化の検出、ならびに悪性腫瘍の発生中の組織の機能的、構造的及びトポグラフィ(形状、位置及び機能の相互作用)関係に関連するそれらの電気生理学的特性における変化の検出に関する。これらの測定は、増殖性、異常もしくは癌性組織の電気生理学的特性を解明及び強調するための薬理学的物質及びホルモン剤の非存在下及び存在下で行うことができる。
【背景技術】
【0004】
癌は、米合衆国内の男女両性における死亡の主要原因である。治療法の選択が実行不能になる前に増殖性、異常な前癌性もしくは癌性組織を検出することの難しさは、死亡率が高い理由の1つである。増殖性、異常もしくは癌性組織の存在を検出することは困難であるが、これは一部には、そのような組織が主として身体内の深部に位置し、費用のかかる複雑な侵襲性の、及び/又は不快な方法を必要とするからである。この理由のため、検出方法の使用は、患者が異常な組織に関連する症状を経験するまでは制限されることが多い。
しかし、癌もしくは腫瘍の多数の形態は、検出可能なサイズに達するには(したがって患者において重大な症状もしくは徴候が生じるには)長期間を要する。そこで現在利用可能な診断様式を用いて検出が実施される時点では、効果的な治療を行うには遅すぎることが多い。
【0005】
乳癌は、西洋諸国の女性が罹患する最も一般的な悪性腫瘍である。この一般的な疾患の死亡率の減少は、早期検出に依存する。早期検出にとっての頼みの綱は、マンモグラフィ(乳房X線撮影法)及び臨床乳房検査である。どちらにも不正確という問題が付随する。
例えば、マンモグラフィは高密度の乳房を備える女性では感受性が低く、形態学的に類似する良性又は悪性の乳房病変を識別することができない。
【0006】
臨床乳房検査は、通例は1cm未満の病変が検出不能であり、より大きい病変はび漫性小結節形成、線維嚢胞性変化によって不明瞭化される、又は臨床検出が不可能なほど乳房内の過度に深部に所在する場合があるために限定される可能性がある。マンモグラフィの陽性所見又は曖昧な臨床所見を備える患者は、確定診断を下すためには生検を必要とすることが多い。さらに、80%までの患者では、生検が悪性腫瘍について陰性となることがある。
【0007】
したがって、マンモグラフィ及び臨床乳房検査は、乳癌を診断する際に相当に不良な特異性を有する。このため、臨床乳房検査で検出された多数の陽性のマンモグラフィ所見又は病変は、最終的には擬陽性であることが判明し、患者にとって身体的及び情緒的外傷を生じさせる。生検を受ける必要がある患者を同定するための改良された方法及び技術は、医療費を減少させ、不必要な診断的生検を回避することになる。
【0008】
他の組織タイプ及び身体の他の場所での前癌性組織及び癌を特徴付けるために適切な改良された技術、特別には例えば前立腺、膵臓などの身体の管状構造、及び乳房の状態を究明するために適切な方法及び器具を開発することもまた望ましい。そのような特性付けは、最終的には診断又はリスク評価において有用である。
【0009】
癌性及び前癌性組織を早期検出するために提案された1つの方法には、生物学的組織の電気インピーダンスの測定が含まれる。例えば、米国特許第3,949,736号明細書は、低レベル電流を組織に通過させ、組織を横断する電圧低下の測定値を取得して、全組織インピーダンスの間接的表示を提供する方法を開示している。この方法は、組織のインピーダンスにおける変化が該組織を構成する細胞の異常な状態と関連し、これが腫瘍、癌腫、又は他の異常な生物学的状態を示すことを教示している。しかしこの開示は、異常な細胞と関連するインピーダンスの上昇又は減少については考察しておらず、電気生理学的特性に影響を及ぼす腫瘍細胞又は他の患者特異的因子を詳細に取り扱っていない。
【0010】
上記及び類似のシステムは上皮のDC電気特性を考察していないこともまた留意されたい。最も一般的な悪性腫瘍は、経上皮電位を維持する、上皮(例えば、腸などの中空器官、又は乳腺もしくは前立腺などの管状構造を内張りする細胞層)内で発生する。悪性腫瘍の経過の早期において、上皮は、特に発生中の悪性腫瘍から少し離れた上皮と比較すると、経上皮電位を消失する。経上皮電位測定値とインピーダンスとを組み合わせると、前癌性及び癌性状態を診断する際に精度がより高くなる。
【0011】
上記に参照したシステムのまた別の利点は、電気信号の周波数範囲が規定されないことである。選択された周波数範囲にしたがって、細胞についての所定の情報が得られる。種々の周波数帯は、組織の様々な構造的又は機能的側面と関連する可能性がある。例えば、F.A.Duck,Physical Properties of Tissues,London:Academic Press,2001;K.R.Foster,H.P.Schwan,Dielectric properties of tissues and biological materials:a critical review,Crit.Rev.Biomed.Eng.,1989,17(1):25−104を参照されたい。例えば、約1GHz(ギガヘルツ)などより高い高周波数では、分子構造は、インピーダンスプロファイルの緩和特性に優勢な作用を有する。緩和特性は、印加された電場における変化への組織の反応における遅延を含んでいる。例えば、印加されたAC電流は、組織のインピーダンス特性のために、遅延又は位相シフトする、組織を越える電圧変化を生じさせる。組織の緩和及び分散特性は、印加された信号の周波数にしたがって変動する。
【0012】
例えば、約100Hz(ヘルツ)未満などの低周波数、もしくはいわゆるα分散範囲では、大細胞膜界面でのイオン輸送及び電荷蓄積の変化がインピーダンスプロファイルの緩和特性を支配する。数KHz(キロヘルツ)〜約1MHz(メガヘルツ)の間の周波数範囲内、もしくはいわゆるβ分散範囲内では、細胞構造が上皮インピーダンスプロファイルの緩和特性を支配する。低kHz周波数のこの範囲内では、印加された電流の大部分は傍細胞経路及び密着帯を通過する。β分散範囲内の高周波数では、電流は細胞膜を貫通することができ、このため細胞間及び細胞内の両方を通過するので、電流密度は細胞質及び細胞核の組成及び容積に依存する。特性の変化は、悪性腫瘍形質転換の過程中に上皮のイオン輸送において発生し、α分散範囲内の周波数で測定された上皮のインピーダンス特性に影響を及ぼす。悪性腫瘍過程の後期には、密着帯の開口及び傍細胞経路の抵抗性の減少を伴う構造変化は、細胞質及び細胞核の組成及び容積における変化と一緒に、β分散範囲内で測定されたインピーダンスに影響を及ぼす。
【0013】
上記に参照したシステムに伴うまた別の欠点は、変化したインピーダンスのトポグラフィが試験されないことである。測定電極を様々な間隔をあけて配置することよって、上皮は、様々な深さまで調査することができる。2つの表面電極によって測定される深さは、電極間の間隔のほぼ半分である。このため1mm離れている電極は、約500μ(ミクロン)の深さまで下にある上皮のインピーダンスを測定する。例えば、腸上皮の厚さは、発生中の腫瘍の辺縁では正常な腸における716±112μと比較して1,356±208μへ増加する。D.Kristt,et al.,Patterns of proliferative changes in crypts bordering colonic tumors:zonal histology and cell cycle marker expression,Pathol.Oncol.Res 1999;5(4):297−303を参照されたい。乳管上皮の肥厚もまた非浸潤性乳管癌が発生するにつれて観察される。約2.8mm離して配置された電極間の測定インピーダンスを約1.4mm離して配置された電極のインピーダンスと比較すると、より深部の肥厚した上皮についての情報もまた得ることができる。例えば、L.Emtestam,S.Ollmar,Electrical impedance index in human skin:measurements after occlusion,in 5 anatomical regions and in mild irritant contact dermatitis,Contact Dermatitis 1993;28(2):104−108を参照されたい。
【0014】
上記に参照した方法のまた別の欠点は、これらの方法が悪性腫瘍過程中に変化する特異的導電経路を調査しないことである。例えば、悪性腫瘍過程の早期における結腸の表面上皮においては、カリウム導電性が減少する。塩化カリウムの濃度を様々に変化させながら1mm未満離した電極を使用することによって、500μ未満から表面までの深さの表面上皮におけるカリウム導電性及び透過性を推定することができる。
【0015】
乳癌を診断することを試みて、多数の非侵襲性インピーダンスイメージング技術が開発されてきた。電気インピーダンス断層撮影法(EIT)は、身体表面上に配置された極めて多数の電極を使用するインピーダンスイメージング技術である。各電極で得られたインピーダンス測定値が次にコンピュータによって処理すると、インピーダンスの二次元又は三次元再構築トポグラフィ画像及びその二次元又は三次元での分布が生成される。このアプローチは、様々な組織タイプ間の導電性及び障害に依存し、臨床的に適用することが困難なデータ収集及び画像再構成に依存する。
【0016】
大多数のEITシステムは、2つ以上の通電電極間に一定AC電流を印加し、身体表面上の他の電圧感知電極間の電圧降下を測定する「電流駆動モード」を使用する。また別のアプローチは、2つ以上の通電電極間に一定AC電流を印加し、次に他の電流感知電極で電流を測定する「電圧駆動アプローチ」を使用する方法である。様々なシステムは、使用する電極の構成、電流又は電圧励起モード、励起信号パターン、及びAC周波数範囲が相違する。
【0017】
乳癌を診断するためにEITを使用することに伴うまた別の欠点は、乳房組織の不均質性である。画像再構成は、電流が乳房組織を均質に通過することを前提としているが、これは乳房を含む様々な組織タイプの変動する電気特性を前提にするとありそうもない。さらに、画像再構成は、公知のインピーダンス分布から乳房の表面上での電圧分布の計算(いわゆる順問題)、及び次に表面電極を用いて測定された測定電圧分布から乳房内でのインピーダンス分布を推定すること(逆問題)に依存している。再構成アルゴリズムは、ポアソンの方程式を用いる、そして大多数のEITシステムにおいて使用される低周波数のために、準静的条件に関連する前提条件を用いた有限要素モデリングに基づくことが多い。
【0018】
癌診断のためのその他の電気に基づく方法は、特許及び雑誌文献に開示されている。そのような開示の簡略な考察は、本発明者による同時係属出願である、その開示が参照として本明細書に組み入れられる2007年7月18日に出願された米国特許出願第11/879,805号明細書から見いだすことができる。
【0019】
異常な組織を検出するためのまた別の可能性のある情報源は、上皮における輸送変化の測定値である。上皮細胞は身体の表面を内張りし、外部世界から身体を隔離するための障壁として機能する。上皮細胞は身体を絶縁するために機能するだけではなく、固有の細胞質環境を相当に狭い限度内に維持しながら細胞障壁を横断して塩類、栄養素、及び水を輸送することによって身体環境を修正する。それによって、上皮層が一持続的な破壊に抵抗する1つの機序は、連続増殖及び障壁の置換による機序である。この持続性の細胞増殖は、80%を超える癌が上皮細胞起源である理由を一部には説明することができる。さらに、血液から外部へ、及びその逆のベクトル的に溶質を輸送する特殊な能力を前提にすると、増殖調節の変化を含む疾患過程は、上皮の輸送特性の変化と関連する可能性があると思われる。
【0020】
上皮細胞は、細胞・細胞間接着分子からなる密着帯によって一緒に結合される。これらの接着タンパク質は、細胞間の分子及びイオンの傍細胞輸送を調節し、物質の移動を防止しながら、又は細胞間を物質が通過するのを緩く許容しながら、上皮をピンと張ることのできる動的構造である。密着帯は、内在性膜タンパク質であるクローディン、オクルーディン及びJAM(接合部接着分子)からなる。密着帯は、細胞内及び細胞外刺激に反応して開閉する。
【0021】
多数の物質が密着帯を開閉させる。炎症誘発剤であるTGF−α、サイトカイン類、IGF及びVEGFは密着帯を開放させる。閉鎖帯毒素、酸化窒素供与体、及びホルボールエステル類もまた密着帯を可逆的に開放させる。カルシウム、H2アンタゴニスト類及びレチノイド類を含むその他の物質は、密着帯を閉鎖させる。例えば、プロラクチン及びグルココルチコイド類などの様々なホルモン類もまた密着帯を調節する。製剤に加えられる、キトサン及びコムギ胚芽アグルチニンを含む他の物質は、非特異的密着帯調節因子として機能する。
【0022】
上記に参照した物質及びその他は、発癌現象中に変化させられる密着帯タンパク質に直接的又は間接的に作用する可能性がある。例えば、クローディン−7は、乳癌の発生中に乳管上皮内では消失する。密着帯の反応は、上皮の悪性状態及びそれらの構成タンパク質にしたがって変動する。結果として、密着帯の開閉は上皮の悪性状態によって影響を受ける。
【0023】
電位又はインピーダンスの表面測定値は、乳管の内腔表面と被覆している皮膚との間で電気接触が行われる乳房上皮を横断して実施される測定値と同一ではない。経上皮脱分極は、上皮の重要な領域に影響を及ぼす(「フィールド欠損」)可能性がある発癌現象中の早期事象である。この脱分極には、イオン輸送及びインピーダンス変化を含む上皮内の機能的変化が付随する。経過における早期には、起電性イオン輸送プロセスが減少するために、これらはインピーダンス増加の形態を取る。腫瘍が前癌状態の上皮内で発生し始めるにつれて、例えば密着帯の破断及び核異型などの構造的変化が形質転換細胞において発生する。構造的変化は、腫瘍のインピーダンスの顕著な減少を生じさせる。本発明者が上述したように、上皮における電気的変化のパターン及び勾配についての理解及び解釈は、DC電気測定値及びインピーダンス測定値の組み合わせから癌の診断を支援することができる。
【0024】
乳癌は、乳房組織の終末乳管小葉単位(TDLU)内の上皮細胞を起源とすると考えられる。これらの細胞は増殖し、休眠中には様々な物質の吸収及び分泌において機能的役割を有し、乳汁分泌中には乳汁を産生することができる。乳房上皮における機能的変化は、乳癌診断のための可能性があるアプローチとしては概して看過されてきた。乳房上皮は、乳汁分泌中の乳汁産生に責任を負っている。閉経前乳房上皮は毎月、月経に続く退縮を伴う妊娠の「リハーサル」を経験する。扁平上皮は、上皮が卵胞期から黄体期に進むにつれてより円柱状になる。さらに、乳管分岐及び腺房の数は黄体期の下半期中に最大値に達する。月経の直前に、上皮のアポトーシスが発生し、女性が妊娠しない限りこの過程は反復して再開される。
【0025】
様々なホルモン類は、乳房上皮イオン輸送に影響を及ぼすことが公知である。例えば、プロラクチンは乳房上皮細胞間の密着帯の透過性を減少させ、粘膜から漿膜へのNa+流入を刺激し、Na+:K+:2Cl−共輸送をアップレギュレートし、乳汁中の[K+]を増加させ、[Na+]を減少させる。グルココルチコイド類は、経上皮抵抗性を増加させ、上皮透過性を減少させる密着帯の形成を制御する。妊娠後期における乳管内へのコルチゾールの投与は、[K+]を増加させ、乳管分泌の[Na+]を減少させることが証明されている。プロゲステロンは、妊娠中の密着帯閉鎖を阻害し、非妊娠女性における月経周期中に観察された乳管中電解質液における変動の原因である可能性がある。エストロゲンは、細胞膜及び経上皮電位を増加させることが観察され、乳房上皮細胞内のK+−チャネルの開口を刺激することができる。上述したホルモン類は、毎日、及び月経周期中に変動する。これらの変動は、内腔内のイオン濃度、経上皮電位及びインピーダンス特性を変化させる乳房上皮の機能的特性に影響を及ぼす可能性が高く、これらは上皮細胞のイオン輸送特性ならびに細胞間及び傍細胞導電性経路に依存する。
【0026】
乳房癌バイオマーカーは、近年、国民的注目を集め、乳癌についてのリスク状態にある女性において研究されてきた様々なマーカーには以下が含まれる。
【0027】
生殖細胞系突然変異及び多型性:有害な生殖細胞系突然変異を備えるBRCA1/BRCA2などの高度に浸透性の遺伝子は乳癌発生の強力な予測因子であるが、乳癌を備える女性の5〜10%未満及び一般集団の1%においてしか見いだされない。それらのタンパク質産物が発癌物質及びホルモン代謝及び/又はDNA修復に関係している遺伝子の一塩基変異多型には1.4〜2.0の相対リスクが結び付いているが、結合多型は有意に高い相対リスクと関連する可能性がある。
【0028】
ホルモン類及び代謝産物類:生態学的に利用可能な血清中エストラジオール及びテストステロンは閉経後女性における、及び血清中インスリン様成長因子I(IGF−I)及びその結合タンパク質3(IGFBP−3)は閉経前女性におけるリスクバイオマーカーを表す可能性がある。しかし、高リスクの女性を断定的に同定すると確定されたものはない。
【0029】
マンモグラフィ乳腺密度及び上皮内新生物:マンモグラフィ乳腺密度及び乳房上皮内新生物は、腫瘍抑制因子遺伝子における生殖細胞系突然変異よりはるかに多くの女性集団に該当する。さらに、それらは変調を免れないので、これらのリスクバイオマーカーを使用すると予防インターベンションの観点から乳癌感受性の変化を監視することができる。マンモグラフィ乳腺密度及び乳房上皮内新生物は、閉経前及び閉経後女性の両方において有用である。しかし、Tice et al.(Breast Cancer Res.Treat.94:115−22,2005)及びChen et al.(J.Natl.Cancer Inst.98:1215−26,2006)は、マンモグラフィ密度がGailモデル(M.H.Gail et al,J.Natl.Cancer Inst.81 (24):1879−86,1989)に識別精度の穏当な改善を加えると報告している。密度の評価は、典型的には放射線に基づく方法の使用を必要とし、観察者間変動性を示す傾向がある。乳腺密度の推定における改善は、容積測定法及び三次元MRI(磁気共鳴イメージング)アプローチを用いて提案されてきた。
【0030】
乳房上皮内新生物は癌との密接な生物学的関連を備えるリスクバイオマーカーであり、少なくとも正常な生理学的過程によって影響を受ける可能性が高いが、乳管増殖は月経周期内の位置によって影響を受ける可能性がある(例えば、概論についてはFabian et al,Endocr.Relat Cancer 12:185−213,2005を参照されたい)。これには、異型性、異型乳管及び小葉過形成を伴わない増殖性乳腺疾患及び上皮内癌が含まれる。上皮内新生物の範囲内では、形態学的異常の増加には相対リスクの進行性増加及び乳癌の発生までの期間短縮(潜伏期間の減少)が結び付いている。異型性(中等度から顕症期の過形成、硬化性腺症、乳頭腫など)を伴わない増殖性乳腺疾患は、診断的生検の約25〜30%において見いだされ、乳癌の相対リスクの1.4〜2.0倍の増加が結び付いている。異型性を伴わない増殖性疾患に結び付いたより高い相対リスク(例、2.0対1.4)には、閉経で増殖をダウンレギュレートする失敗、又は陽性家族歴のために、高齢(>50歳)が結び付いている場合がある。
【0031】
診断的生検で同定された乳管又は小葉異型過形成には、他のリスク因子とは無関係に相対リスクの約5倍の増加が結び付いている。異型性を備えるが、陽性家族歴を備えないと同定された女性は約4〜5倍増加したリスクを有するが、陽性家族歴を備える女性では乳癌の相対リスクは約10倍へ倍増する。異型乳管及び小葉過形成は、無差別の診断的外科的及びコア針生検の3〜10%において観察される。最終的に、癌を発生する女性は異型過形成を示さない女性に比較してより高い比率の異型過形成を示す事前良性生検を有する。数例の研究者らは、異型過形成は通常タイプの異型性(HUT)より広がった小葉(乳管についてはA、小葉についてはB)と呼ばれる中間病変からより一般的に発生する可能性があると提案した。異型過形成及びHUTはどちらも広がった小葉から発生する可能性がある。これらの広がった小葉は、終末小葉乳管単位の拡張を伴う増加した細胞充実度及び増殖を特徴とする。
【0032】
上皮内新生物に関連する遺伝子変化:ADH及びDCISは、免疫細胞学検査又はmRNA遺伝子プロファイルによって評価した場合に類似の分子変化及び遺伝子変化を有することが多い。ADH病変の約50%は異型接合性の消失を示すが、これがHUT病変について観察されることは若干少ない。最も頻回な染色体消失は、DCISに観察されるものに類似して、HUT及び異型過形成の両方について16q及び17pで見られる。非浸潤性及び浸潤性小葉癌についての類似の染色体増加及び消失は、比較ゲノムハイブリダイゼーション技術を用いて観察される。腫瘍抑制因子遺伝子であるE−カドヘリンを含有する16qの消失は、細胞接着及び細胞周期調節に関与していた。E−カドヘリンは正常細胞内では発現するが、LCIS及び浸潤性小葉癌中では消失すると報告されている。ADHは、診断的生検の5%以下で報告され、平均リスク女性由来の剖検標本の9%において報告されてきた。しかし、高リスク女性由来の予防的乳腺切除術標本の39%において観察されている。さらに、BRCA1及び/又はBRCA2における突然変異の家族歴に一致する家族歴を備える女性の57%は異型乳管もしくは小葉病変及び/又は上皮内癌を有し、これらの病変は多病巣性又は多中心性であることが多いことが報告されている。
【0033】
変化したホルモン受容体状態:乳癌を備えていない女性における血清中エストラジオールと乳房上皮のER−αとの間では、月経周期内の位置に依存する逆相関関係が観察されている。この関係は、乳癌を備える女性由来の乳房上皮においては観察されていない。上皮増殖は対照群におけるERと逆相関していたが、乳癌症例では正相関していた。これらの観察所見は、乳癌を備える女性の周囲上皮は月経周期の黄体期におけるERアップレギュレーションを伴うエストラジオールへの異常反応を提示する可能性があるが、乳癌を備えない女性由来の乳房上皮ではダウンレギュレートされるという示唆をもたらした。乳房上皮形態へこの異常反応が及ぼす作用は未知である。増加したリスクを備える女性は、月経周期中には正常リスク女性と同様にダウンレギュレートしないと思われる。増殖性アップレギュレーションは、増殖性乳房疾患のために乳房生検を受けた女性における本発明者の観察所見に基づくと、乳癌のリスクが増加した女性において持続する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
そこで、異常な変化を受け易い組織、特別には乳房組織及び乳腺密度を特徴付けるための、ならびに患者、及び特別には実質的に無症候の患者が増殖性、異常又は前癌性乳房組織を有することが見いだされるリスクを評価する目的でそのような情報を使用するための、有効かつ実際的な方法に対する必要が依然としてある。
【0035】
各々が本発明者であるRichard J.Daviesへの以下の特許出願は、これにより参照として本明細書に組み入れられる。2007年7月18日に出願された「Method and System for Detecting Electrophysiological Changes in Pre−Cancerous and Cancerous Tissue」と題する米国特許出願第11/879,805号明細書。2002年5月20日に出願された「Method and System for Detecting Electrophysiological Changes in Pre−Cancerous and Cancerous Tissue」と題する、現在は2005年7月26日に発行された米国特許第6,922,586号明細書である米国特許出願第10/151,233号明細書。2003年11月19日に出願された「Method And System For Detecting Electrophysiological Changes In Pre−Cancerous And Cancerous Breast Tissue And Epithelium」と題する米国特許出願第10/717,074号明細書。及び2003年11月19日に出願された「Electrophysiological Approaches To Assess Resection and Tumor Ablation Margins and Responses To Drug Therapy」と題する米国特許出願第10/716,789号明細書である。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明の幾つかの実施形態を下記の段落で規定する。
【0037】
1.個人の少なくとも1つの乳房のマンモグラフィ密度(MD)を推定するための方法であって、上記乳房は覆っている皮膚表面及び乳頭を含み、上記方法は以下のステップを含む。
(A)第1電極と個人の乳房内の上皮下実質組織との接続を確立するステップと、
(B)少なくとも1つの第2電極を乳房の乳頭から一定距離で上皮下組織に隣接した乳房の皮膚表面と接触させて配置するステップと、
(C)第1及び第2電極間で1つの周波数を有する少なくとも1つの電気信号を確立するステップと、
(D)第1及び第2電極間で少なくとも1つの周波数で上皮下インピーダンス(Zsub)を測定するステップと、
(E)ステップ(A)〜(D)からは独立した方法にしたがって推定又は計算されたマンモグラフィ乳腺密度へZsubを関連付けるアルゴリズムにしたがって乳腺密度の推定値を得るステップとである。
【0038】
2.段落1に記載の方法であって、アルゴリズムは、(i)個人の特性、(ii)その下で電気的測定が行われる条件、又は(iii)(i)及び(ii)の両方と関連している変量を含む方法である。
【0039】
3.段落2に記載の方法であって、変量は、個人の年齢、BMI、体重、経産歴、当該個人が閉形前女性であるかどうか、当該個人が閉経後女性であるかどうか、女性個人が月経周期中である場合、及び皮膚表面電極が配置されている乳頭からの距離からなる群より選択される方法である。
【0040】
4.段落1に記載の方法であって、乳腺密度を推定又は計算するための独立した方法は、X線、超音波及びMRIからなる群より選択される画像に基づく方法である。
【0041】
5.段落4に記載の方法であって、X線画像に基づく上記方法は以下から選択される。Wolfeパターン、6カテゴリー分類、BI−RADS、ACR BI−RADS、面積測定法、画像デジタル化、デジタルX線画像の双方向性閾値、X線画像のテクスチャ測定、コンピュータ援用計算画像テクスチャ測定、コンピュータ断層撮影(CT)イメージング、乳房断層合成法、二重エネルギーX線吸収法及びデジタルマンモグラフィである。
【0042】
6.段落1に記載の方法であって、アルゴリズムは以下からなる群より選択される。
(I)MD=141.788+(−0.716*年齢)+(−1.113*BMI)+(−0.199*Zsub)
(II)MDpmw=127.770+(−1.339*BMI)+(−0.259*Zsub)
(III)MDpstmw=127.178+(−0.874*年齢)+(−0.219*Zsub)
(式中、記号*は、記号に先行する、及び後に続く用語の乗算を示している。BMI=(体重*703)/身長2(インチ2))、又は(体重*4.88/身長2(フィート2))(式中、体重の単位はポンドである)として計算されたボディマス指数;ZsubはΩで表される。年齢は歳で表される。MDpmw=閉形前女性についてのマンモグラフィ密度。MDpstmw=閉経後女性についてのマンモグラフィ密度)
【0043】
7.段落1に記載の方法であって、Zsubは以下の方程式、
ADJZsub=ZsubM/ZsubDFN(式中、下付きM=測定値)及び
ZsubDFN=169.512+(6.668*DFN)(式中、DFN=電極が配置される乳頭からの距離(cm))にしたがって電極が配置される乳頭からの距離について調整(ADJZsub)される方法である。
【0044】
8.段落1に記載の方法であって、Zsubは電極が配置される乳頭からの距離について調整(ADJZsub)され、アルゴリズムは、
(I)MDpmw=131.936+(−1.444*BMI)+(−54.752*ADJZsub)、又は
(II)MDpstmw=120.178+(−0.869*年齢)+(−39.179*ADJZsub)
からなる群より選択される。
(式中、MDpmwは、閉形前女性についてのマンモグラフィ密度であり、MDpstmwは、閉経後女性についてのマンモグラフィ密度であり、ADJZsubは、ZsubM/ZsubDFN(式中、下付きM=測定値)であり、ZsubDFNは、169.512+(6.668*DFN)(式中、DFN=電極が配置される乳頭からの距離(cm))である。
【0045】
9.実質的に無症候の女性患者が乳房における増殖性もしくは前癌性変化を有することが見いだされる、又は前癌性もしくは癌性変化を発生させる引き続いたリスク状態にある可能性があるリスクを評価するための方法であって、上記方法は以下のステップを含む。
(A)第1電極と患者の乳房内の上皮下実質組織との接続を確立するステップと、
(B)少なくとも1つの第2電極を乳房の乳頭から一定距離で該上皮下組織に隣接した乳房の皮膚表面と接触させて配置するステップと、
(C)第1及び第2電極間で1つの周波数を有する少なくとも1つの電気信号を確立するステップと、
(D)第1及び第2電極間で少なくとも1つの周波数で上皮下インピーダンスを測定するステップと、
(E)患者に関連する変量にしたがって患者についての乳房実質組織の上皮下インピーダンスの推定値(Zsube)を、以下の方程式、
Zsube=107.753+(1.083*年齢)+(−1.074*乳腺密度)+(3.196*BMI)
(式中、年齢は歳で測定される。乳腺密度は%で表示され、マンモグラム上の乳腺の外観から推定される。及びBMIは、体重(ポンド)*703/身長2(インチ2)、又は体重(ポンド)*4.88/身長2(フィート2)と規定される)に基づいて得るステップと、
(F)該患者についての乳房実質組織の上皮下インピーダンス(Zsubm)の少なくとも1つの測定値を得るステップと、
(G)Zsubm/Zsubeの比率についての数値を計算するステップとである。ここで、Zsubm/Zsubeの比率が約0.8未満又は約1.2超であることを前提にして、女性患者が乳癌を有する、もしくは乳癌を発生する増加したリスク状態にあると見いだされる統計的に有意に増加したリスクがある。
【0046】
幾つかのコンピュータ実行方法を下記の段落で規定する。
10.実質的に無症候の女性患者が乳房における増殖性もしくは前癌性変化を有することが見いだされる、又は前癌性もしくは癌性変化を発生させる引き続いたリスク状態にある可能性があるリスクを評価するための方法を実施するためのコンピュータ実行可能な命令を有するコンピュータ可読媒体であって、上記方法は以下のステップを含む。
(A)第1電極と該患者の乳房内の上皮下実質組織との接続を確立するステップと、
(B)少なくとも1つの第2電極を乳房の乳頭から一定距離で該上皮下組織に隣接した乳房の皮膚表面と接触させて配置するステップと、
(C)第1及び第2電極間で1つの周波数を有する少なくとも1つの電気信号を確立するステップと、
(D)第1及び第2電極間で少なくとも1つの周波数で上皮下インピーダンスを測定するステップと、
(E)患者に関連する変量のためのインプット値にしたがって患者についての乳房実質組織の上皮下インピーダンスの推定値(Zsube)を、以下の方程式、
Zsube=107.753+(1.083*年齢)+(−1.074*乳腺密度)+(3.196*BMI)に基づいて計算するステップであって、ここで、年齢は歳で測定され、乳腺密度は%で表示され、マンモグラム上の乳腺の外観から推定される。及びBMIは、体重(ポンド)*703/身長2(インチ2)、又は体重(ポンド)*4.88/身長2(フィート2)と規定されている。
(F)患者についての乳房実質組織の上皮下インピーダンス(Zsubm)の少なくとも1つの測定値を得るステップと、
(G)Zsubm/Zsubeの比率について数値を計算するステップである。ここで、Zsubm/Zsubeの比率が約0.8未満又は約1.2超であることを前提にして、女性患者が乳癌を有すると見いだされる統計的に有意に増加したリスクがある。
【0047】
11.個人の少なくとも1つの乳房のマンモグラフィ密度(MD)を推定するための方法を実施するためのコンピュータ実行可能な命令を有するコンピュータ可読媒体であって、乳房は覆っている皮膚表面及び乳頭を含み、該方法は以下のステップを含む。
(A)第1電極と該個人の乳房内の上皮下実質組織との接続を確立するステップと、
(B)少なくとも1つの第2電極を乳房の乳頭から一定距離で該上皮下組織に隣接した乳房の皮膚表面と接触させて配置するステップと、
(C)第1及び第2電極間で1つの周波数を有する少なくとも1つの電気信号を確立するステップと、
(D)第1及び第2電極間で少なくとも1つの周波数で上皮下インピーダンス(Zsub)を測定するステップと、
(E)ステップ(A)〜(D)から独立した方法にしたがって推定又は計算されたマンモグラフィ乳腺密度へZsubを関連付けるアルゴリズムにしたがって乳腺密度の推定値を計算するステップとである。
【0048】
12.段落11に記載の方法であって、上記アルゴリズムは以下からなる群より選択される。
(I)MD=141.788+(−0.716*年齢)+(−1.113*BMI)+(−0.199*Zsub)、
(II)MDpmw=127.770+(−1.339*BMI)+(−0.259*Zsub)及び
(III)MDpstmw=127.178+(−0.874*年齢)+(−0.219*Zsub)
ここで、記号*は、記号に先行する、及び後に続く用語の乗算を示している。BMI=(体重*703)/身長2(インチ2))、又は(体重*4.88/身長2(フィート2))(式中、体重の単位はポンドである)として計算されたボディマス指数、ZsubはΩで表され、年齢は歳で表される。MDpmwは閉形前女性についてのマンモグラフィ密度である。MDpstmwは閉経後女性についてのマンモグラフィ密度である。
【0049】
13.段落11に記載の方法であって、Zsubは以下の方程式にしたがって電極が配置される乳頭からの距離について調整(ADJZsub)される。
ADJZsub=ZsubM/ZsubDFN(式中、下付きM=測定値)。
ZsubDFN=169.512+(6.668*DFN)(式中、DFN=電極が配置される乳頭からの距離(cm))
【0050】
14.段落11に記載の方法であって、Zsubは電極が配置される乳頭からの距離について調整(ADJZsub)され、アルゴリズムは以下からなる群から選択される。
(I)MDpmw=131.936+(−1.444*BMI)+(−54.752*ADJZsub)又は
(II)MDpstmw=120.178+(−0.869*年齢)+(−39.179*ADJZsub)
式中、MDpmwは、閉形前女性についてのマンモグラフィ密度であり、MDpstmwは、閉経後女性についてのマンモグラフィ密度であり、ADJZsubは、ZsubM/ZsubDFN(式中、下付きM=測定値)であり、ZsubDFNは、169.512+(6.668*DFN)(式中、DFN=電極が配置される乳頭からの距離(cm))である。
【0051】
本明細書に組み入れられ、その一部を構成する添付の図面は、本発明の1つの実施形態を例示し、本記載と一緒に本発明の原理を説明するために役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の1つの実施形態に一致する、DC及びACインピーダンス測定器具の略図である。
【図2】本発明に一致するシステム及び方法を使用するために適切な器具の代表的な実施形態の図である。
【図3】本発明に一致するシステム及び方法を使用するために適切な表面測定プローブの代表的な実施形態の図である。
【図4】本発明に一致するシステム及び方法を使用するために適切な乳頭電極の代表的な実施形態を示す図である。
【図5】乳癌の発生中に乳管上皮内で発生する電気生理学的変化を示す図である。
【図6】管状上皮インピーダンススペクトルに基づく上皮下インピーダンス(Zsub)を測定するためのNyquistプロットを示す図である。
【図7】上皮下インピーダンスを決定するための測定システムの1つの実施形態を示す図である。
【図8】上皮下インピーダンスと年齢との相関を示す図である。
【図9】上皮下インピーダンスに月経周期が及ぼす作用を示す図である。
【図10】経産歴による月経周期中の上皮下インピーダンスにおける変化を示す図である。
【図11】上皮下インピーダンスと体重との相関を示す図である。
【図12】上皮下インピーダンスと電極が配置される乳頭からの距離との相関を示す図である。
【図13】X線マンモグラムについてのBI−RADS分類システムを用いた密度推定値と2人の観察者間の密度推定値との相関を示す図である。
【図14】マンモグラフィ密度の推定値と上皮下インピーダンス(Zsub)との相関を示す図である。
【図15】患者の2つの乳房間の乳腺密度の差を示しているX線マンモグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明のためには、以下の用語は指示した意味を有する。
【0054】
本明細書ではZsubと呼ぶ「上皮下インピーダンス」は、乳管の下方(下)又は向こう側にある乳房組織、すなわち乳房の間質又は間葉組織(脂肪、線維腺組織などを含む)のインピーダンスを意味する。例えば約50KHz〜約60KHz以上などの高周波数では、乳房の上皮(乳管及び乳管−胞単位)及び覆っている皮膚は全測定インピーダンスには極めてわずかしか寄与しないので、残りは上皮下インピーダンス(Zsub)である。技術的には、Zsubは、上皮乳房細胞及び覆っている皮膚の誘電特性が崩壊するので、無限周波数又は測定のために使用された周波数より有意に高い周波数で真正値から試験結果が有意に相違することを引き起こさないように十分に高いことを前提として、無限周波数又は試験した最高周波数でのインピーダンスであると規定されている。典型的には、これは本発明の技術を用いて得られた、ときには曲線が試験した最高周波数でx軸と交差する乳管上皮インピーダンススペクトル(DEIS)と呼ばれる、Nyquistプロット上の地点に相当するインピーダンス値である。
【0055】
「経上皮インピーダンス」は、上皮下インピーダンスとは対照的に、上皮を通して、すなわち乳管の内張り又は上皮を通して測定された乳房のインピーダンスを意味する。
【0056】
「マンモグラフィ乳腺密度(MD)」は、(1)本発明の少なくとも1つの態様によって記載した1つ以上のアルゴリズムにしたがって計算された、及びZsubの測定値を含む数値、又は(2)例えば、X線、核磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT又はCAT)スキャン、二重エネルギーX線吸収法(DXA)、断層合成法、超音波などを使用して得られた個人の少なくとも1つの乳房の1枚以上の画像に由来する、又はそれに基づく数値のいずれかを意味する。この数値は、同一乳房の他の組織に比較してより高密度(「高密度乳房組織」)であると思われる乳房組織の分画量又はパーセンテージを表すが、そのような高密度乳房組織は、典型的には1つ以上の上述した方法によって得られた画像における1つ以上の増加した不透過度、又は輝度の領域によって特徴付けられる。マンモグラフィ密度についての数値は、単一乳房の、使用するイメージング法に依存して、画像面積に基づく分画もしくは百分率、又は容積分画もしくは百分率として表示することができる。又は、数値は、個人の両方の乳房の平均値として表示することができる。マンモグラフィ密度及び乳房イメージングは、典型的には女性の乳房に関するが、本発明の方法、試験及び計算は性別によって限定されず、男性及び女性の両方に適用できる。
【0057】
本発明のためには、「高密度乳房組織」は、乳房内に存在する線維腺組織及び脂肪組織はマンモグラム上で相違する放射線(又はMRI又は超音波)外観を有するという事実から理解できる。線維腺組織は、乳房を内張りして集合的には実質として公知である線維結合組織(間質)、及び乳管(腺成分)を内張りする機能的上皮細胞の複合体である。脂肪はマンモグラム上でより少ないX線減衰を有し、明るい、白い、又は放射線不透過性に見える線維腺組織に比較して濃く見える。明るい、白い、又は不透過性の領域は、乳房全体と比較した場合に乳腺密度のパターン又は乳房の相違する領域の相対密度を示す、マンモグラフィ密度がより高い領域であると言われる。
【0058】
X線、磁気又は音響技術を用いてマンモグラフィ乳腺密度を推定するためには幾つかの方法及び分類スキームが存在する。予測的バイオマーカーとして乳腺密度を考察している文献の大多数は、密度の数的測定値よりむしろ密度の主観的評価に焦点を当ててきた。これらの分類は、評価が単一ビューマンモグラムから行われるので、面積ベースである。科学文献は「Wolfe」、及び6カテゴリー分類(SCC)を使用することができるが、臨床実践では、ほとんどの放射線科医は乳房画像報告データシステム(Breast Imaging Reporting and Data System)もしくはBI−RADS分類を用いる乳房組成を報告することに留意されたい。さらにまたBI−RADS報告書は、乳腺密度(%)ではなくむしろ乳房組成又はパターンを記載することにも留意されたい。BI−RADSに記載される組成は、パターンと密度の大まかな組み合わせである。放射線科医は一般に、パターンが純粋に主観的視覚評価であって数値的ではないので、密度よりむしろパターンを評価する。以下ではこれらの分類システムについて詳細に考察する(以下に挙げる参考文献についての言及は、本明細書の最後に含めた参考文献のリストの中に見いだすことができる)。
【0059】
1976年に、Wolfeは乳腺密度に関する周知の最初の研究を公表した(Wolfe 1130−37)。Wolfeは乳房の組成を4つのカテゴリーに分割したが、BI−RADS分類スキームを用いて明示された密度による強力なカテゴリー化は行わなかった。
【0060】
【表1】
【0061】
その後の調査では、Wolfeパターンの増加(N1からDYへ)と乳癌との関連が確証され(Goodwin and Boyd 1097−108;Saftlas and Szklo 146−74)、彼らはNとDYパターンとの間に2〜3倍のリスク増加が見られると結論付けた。線維腺組織量の増加はリスク増大の原因となるので、その後の研究の大多数はパターンよりむしろ密度に焦点を当ててきた。
【0062】
6カテゴリー分類もしくはSCC法は、放射線科医による高密度と考えられる乳房領域のパーセンテージの評価に基づいている(Byng,1994)。このアプローチは、デジタル化フィルム−スクリーンマンモグラムに適用された双方向閾値化技術を利用し、放射線画像上で高密度を表すマンモグラフィ画像の比率を評価する。観察者らはコンピュータスクリーン上で画像を視認し、乳房及び乳房内の高密度(X線不透過性)組織の領域が確認されるグレーレベル閾値を選択する。X線密度の比率は、画像ヒストグラムから計算する。この技術は、30例の女性由来のマンモグラムにおけるByngのオリジナル試験において評価され、放射線科医によるX線密度の主観的6カテゴリー分類と明確に相関付けられた(R>0.91、Spearman係数)。この技術はさらに、典型的にはR>0.9の観察者間クラス内相関係数を備え、極めて信頼性が高いと見なされた。SCCは様々な分類に対して非一様な範囲を提供することに留意されたい;0〜25%の密度の4分位は3分類に分けられる。
【0063】
【表2】
【0064】
ACR BI−RADは、BI−RADスキームのさらに変形である。米国内で業務する放射線科医は、乳房の組成を視覚的に評価して、患者について単一評価を与えることが必要とされる。ACR BI−RADは、乳房のZsubと推定密度(ED)とを比較して相関付けるための、本発明の実施例において使用した方法の1つである。ED(%)は、さらにまた、X線マンモグラムを視覚的に試験し、乳房組織の総量に比較した高密度組織率(%)を計算することによっても決定された。しかし、Zsubは、客観的に、そしてX線、MRI、超音波などに基づいて独立して決定されるので、推定密度値を入手するためにそのような他のイメージング法及び他の評価方法を使用できることに留意されたい。
【0065】
ACR BI−RAD評価は、パターン及び密度(%)の組み合わせであるので、このためある程度任意かつ主観的である。ACRは、BI−RADS(登録商標)Atlas(旧BI−RADS Lexiconの後継)が2003年に公表された時点に、各試験に対して乳腺密度分類を報告する要件を追加した。「Report Organization」(第179頁)の章の下のBI−RADS Breast Imaging Reporting and Data System,2003は、以下の評価カテゴリーを推奨している。
【0066】
【表3】
【0067】
一部の放射線科医は、その患者にとっての全体としてとは対照的に、各個別乳房についてのBI−RADS組成を報告するが、それは、乳腺密度は、通常は約5〜10%以下であるので、天然非対称に起因して一方の乳房は他方の乳房とは相違する可能性があるからである。少数の放射線科医又は臨床研究者らは、スクリーニング画像各々についてのBI−RADS組成を報告している。
【0068】
図13は、マンモグラフィ密度、X線画像に基づいてBI−RADSスコア(より詳細には、ACR BI−RADS)及び密度推定値を推定するために使用する2つの方法を図示している。密度推定値は、1つの乳房の2枚のマンモグラフィ画像から入手した(CC(頭尾画像)及びMLO(内外側斜位像))。高密度の領域は、全乳房の全領域の百分率として表示したより放射線不透過性領域として計算された。次に2つの画像間の平均値は、密度推定値(%)として表示された。数値は、乳腺密度の主観的推定値を表し、そのような密度値は乳癌のリスクと相関することが見いだされている。
【0069】
詳細には、図13は、x軸の上方のBI−RADSスコアとy軸の右側の結合密度推定値(2人の観察者に基づく)との相関を図示し、この相関はグラフ上の四角形によって表されるデータに基づいている。2人の独立盲験観察者(左y軸、及び下方x軸)間の密度推定値(DE)の相関は、グラフ上の円として示したデータによって表される。エラーバーは、それらの各軸に対して測定された密度推定値又はBI−RADSスコアについての平均値の標準誤差(SEM)を示している。BI−RADSスコアはDEを過小評価する傾向を示し、密度の中央範囲内では観察者間でDEにおける有意な重複が見られ、これは密度のより客観的尺度の必要性を示唆している。BI−RADSスコアは2〜4の間でスケーリングされるが、これは完全に脂肪置換された乳房(BI−RADSスコア=1)の例がこのシリーズでは全く同定されなかったためである。
【0070】
乳腺密度を測定するための方法についての詳細な検討は、許容される程度まで参照して本明細書に組み入れられるM.Yaffe,「Mammographic Density.Measurement of mammographic density.」Breast Cancer Research,10.3(2008):209の中で詳細に扱われている。以下ではこれらの方法について要約する。
【0071】
定性的密度評価方法には、上記に規定した6カテゴリー分類(SCC)法が含まれる。これは密度を定性的に推定する最初の試みであった。この方法には、ある程度任意の分類という欠点があり、カテゴリーの大部分は密度率の下端にあり、密度率の分布をより連続的に行うという試みを伴わなかった。定性的方法には、同様に上記で考察した、及び定性的方法で密度を推定するために放射線科医が最も広汎に使用している分類システムである乳房画像報告データシステム密度カテゴリー(BI−RADS)が含まれる。この分類法については上記に記載し、1993 lexiconに差し替えるために2003年に更新された。この分類法は、密度及びパターン情報を結合し、依然として高度に主観的である。この分類法は、特に大量の高密度組織が存在する場合には、高密度乳房組織が小さな乳癌をマスクし、リスクを定量しないという性質のために、他のイメージング様式が必要とされることがあることを臨床医にさらに勧告するために使用される(Carney et al.168−75;Buist et al.1432−40)。
【0072】
定量的方法は、例えば二次元及び三次元又は容積法であると特徴付けることができる。
【0073】
二次元法には、以下が含まれる。
【0074】
面積測定法は、面積計と呼ばれる機器を用いてマンモグラム上で所見されるより高密度の領域周囲を追跡する技術である。面積計は、追跡した面積を統合する。類似の追跡するステップは、視認できる場合は胸筋を排除した乳房の全領域上で実施される。次に高密度面積対全乳房面積の比率を使用して、より高密度の乳房組織(又は領域)の率(%)を推定する。これは方程式に高密度を加えなければならない場合には高度に労働集約的であり、Boydのオリジナルの研究において使用された(Wolfe,Saftlas,and Salane 1087−92)。これもまた、三次元密度情報を入手するために二次元画像の使用に関して明示されてきた懸念を和らげることはない。
【0075】
画像デジタル化技術は、面積測定法に大きく取って代わってきた。面積測定法とは相違して、マンモグラフィ画像は少なくとも12ビットの精度、外部グレア光、及び適正な区間分解能を通常は必要とするスキャナ(ラスター走査)を用いてデジタル化されなければならない。テクスチャ推定のためには、50μmまでの分解能が必要とされることがある(Li et al.863−73;Miller and Astley 277−82;Megalooikonomou et al.651421を参照されたい)。
【0076】
時には閾値化と呼ばれるデジタル化(X線)画像の双方向閾値が必要とするヒト相互作用は面積測定法より少ないが、依然として観察者による主観的決定を必要とする。強度(密度)の閾値は、デジタル画像上で選択され、最適レベルが選択される。第2閾値は、胸筋を排除して、バックグラウンドから乳房の辺縁を描出するために選択される。次に各々より高強度の面積が次に加えられ、全乳房面積に対する比率を使用して乳房の二次元X線上のより高密度の面積率が計算される。この推定を実施するためのソフトウエアは、「Cumulus」プログラムとして公知であり、多数の試験に使用されてきた(Khan et al.1011;Vachon et al.1382−88;Palomares et al.1324−30;Mitchell et al.1866−72;Gram et al.R854−R861;Buist et al.2303−06)。二次元考察及び操作者の決定は、このアプローチの広汎な採用を制限する。閾値化に基づく自動密度測定は開発中であるが、未だ臨床使用には至っていない(Karssemeijer 365−78;Sivaramakrishna et al.250−56;Zhou et al.1056−69;Chang et al.899−905;Glide−Hurst,Duric,and Littrup 4491−98)。
【0077】
マンモグラム上のテクスチャ測定値は、乳癌を発生するリスクを予測するために有用な可能性があり、多数の研究者によって使用されてきた。Caldwellは、Wolfeの実質パターンをデジタルマンモグラムのフラクタル次元と相関付けたが(Caldwell et al.235−47)、他の研究者らはリスクを予測するために多数のコンピュータ計算画像テクスチャ測定値を使用してきた(Magnin et al.780−84;Li et al.549−55;Huo et al.4−12)。しかしこれらの技術はいずれも単純又は標準マンモグラフィ密度測定値より大きな精度を示さない。
【0078】
二次元フィルムもしくは画像は三次元密度情報を生じさせることができないので、三次元情報を使用すると密度率をより正確に推定できると推奨されてきた(Kopans 348−53)。二次元フィルムは所定の乳房における高密度乳房組織の容積についての正確な情報を提供できないという認識、及び乳癌を発生するリスクは標的細胞(上皮又は線維腺組織)の容積と関連するという見込みに伴って、容積測定法による密度評価にますます焦点が当てられてきた。
【0079】
三次元法には、以下が含まれる。
【0080】
乳房CTスキャン:容積測定X線密度は、一連の二次元平面画像として提示された一連の画像のX線減衰係数の三次元再構成であるコンピュータ断層撮影(CT)イメージングから計算することができる。有効原子数及び電子密度によるピクセル画像は連続的に表示することができる、又は脂肪様及び水様組織とそれらの各容積とを識別するために単純バイナリー閾値を確立することができる。全乳房容積及び各組織タイプの分画は、次に容積測定法による乳腺密度の推定値として使用される。乳房専用CTシステムは、現在開発中である(Boone et al.2185;Chen and Ning 755−70)。これらのシステムは、若い女性における乳癌のリスク評価は特に重要であるにもかかわらず、X線曝露に関する懸念のために若い女性には定期的に使用できそうもない。乳房の垂れ下がった位置もまた不正確さを導入する可能性がある。
【0081】
乳房断層合成法:おそらく乳房CTより精度が低いのは、限定された範囲の角投影を用いた、乳房組織のX線減衰係数を入手するために使用された準三次元画像のために、断層合成法である。本技術は、線維腺組織から脂肪を識別できる可能性がある(Niklason et al.399−406;Wu et al.365−80)。
【0082】
二重エネルギーX線吸光光度法(DXA):DXAは、乳腺密度の測定を実施するための骨密度測定法から採用された(Shepherd et al.554−57)。骨及び軟組織の代わりに、乳房を通しての透過が、線維腺組織及び脂肪の有効厚さによって測定される。2つのX線エネルギーは、乳房に対して較正するための公知の減衰係数の乳房ファントム上で使用され、次に高及び低X線エネルギーで乳房を通した測定が実施される。このシステムは乳腺密度の極めて正確な推定値を生じさせるが、ファントムもしくは「段階くさび」に対して構成するステップ及びマンモグラムと結合した別個の方法を必要とすることを含む幾つかの欠点を有している。しかし、1つの利点は、この技術を用いた場合にはX線曝露が低い点にある。
【0083】
デジタルマンモグラフィは、上記で考察した定期的マンモグラフィの代替法であると見なすことができる。理論上では、デジタルマンモグラムはマンモグラフィ密度の推定を向上させるはずであるが、それは改善された信号の品質のため、及び標準マンモグラフィフィルム画像を最初に入手し、次に該フィルム画像をスキャン又はデジタル化することが不要なためである。一般にはデジタルマンモグラフィ装置から、2枚の画像が入手される。組成及び密度情報の大半を含有する「生画像」、及び密度情報の大半を除去する、ディスプレイのための画像を最適化する「加工処理画像」である。密度分析のためには、生画像を使用しなければならない。しかし、これは加工処理ソフトウエアの多くはデジタルマンモグラフィ装置製造業者の専売特許製品であるので困難な場合がある。コンピュータ援用検出技術及びソフトウエアを結合したマンモグラフィ(Hologic/R2、Hologic社)は、デジタルマンモグラムから容積測定乳腺密度を推定するソフトウエアプログラム(Quantra(商標))を使用する。この装置はスクリーニングマンモグラム上の容積測定密度情報を入手するためにFDAにより承認されている(Hartman et al.33−39)。これは、「生画像」のピクセル値の加工処理を逆転し、画像内の各ピクセル値がX線曝露よりむしろ、ピクセル上方の高密度組織の高さに関連している乳房内の高密度組織のマップを作成する。乳腺密度は、次に線維腺組織の容積対前乳房容積として表示される。この新規な技術は、依然として、乳癌のリスク評価のための乳腺密度が特に重要な場合に、年齢40歳未満の女性へのX線曝露を回避しない。
【0084】
乳腺密度を評価するための放射線に基づかないイメージング様式を用いる1つの利点は、乳房が電離放射線の潜在的発癌性の影響に曝露させられないことである。これは、乳癌のリスクを評価する際に使用するための正確な密度決定が最も潜在的利点を有する可能性がある若い女性においては特に重要である。そのような代替様式には以下が含まれる。
【0085】
超音波:超音波を用いると、画像は組織境界での組織組成及び音響反射に起因して音波の速度に依存する。超音波画像は高度にオペレータ依存性であり、このアプローチの精度に影響を及ぼす可能性が高い。しかし予備試験報告書は、このアプローチが放射線に基づくマンモグラフィから入手した密度情報と同等の密度情報を提供できると提案している(Graham et al.162−68;Blend et al.293−98;Glide,Duric,and Littrup 744−53;Duric et al.773−85)。
【0086】
磁気共鳴イメージング(MRI):MRIもまた、電離放射線の使用を回避するが、乳腺密度を測定するためのその使用は造影剤(ガンドリニウム)を投与する費用及び必要によって限定される可能性がある。MRIは、線維腺組織の量を指示する含水量と相関する信号、及び脂肪含量と相関するまた別の信号を提供する(Lee et al.501−06;Klifa et al.1667−70)。
【0087】
乳腺密度測定法を比較する試験は、限られた試験しか実施されていない。65例の女性における定性的、定量的、及び半自動方法から引き出された二次元密度測定値を比較する試験は、他の試験*の観察所見と一致する定性的及び定量的方法に基づいて大きな差を見いだした(Martin et al.656−65;Warner et al.67−72)。再現性は定性的評価において少なく、それらは密度値を過大評価する傾向を示した。面積に基づく及び容積に基づく方法間では限られた比較が実施され、容積法に基づくアプローチの理論的利点にもかかわらず、この方法は閾値に基づく二次元評価(The quantitative analysis of mammographic densities.Byng,J.W.et al.Phys Med Biol (1994) 39:1629−1638.)より信頼性が低かったが、これはおそらく乳房の厚さを推定することに関係する困難さのためであった(McCormack et al.1148−54)。容積測定アプローチは、さらにまた乳癌のリスクのより正確な予測因子を提供することができなかった(Ding et al.1074−81)。
【0088】
本出願に記載した電気インピーダンスアプローチは、調査された文献に記載された(X線に依存するDXAとは別に)唯一の非イメージング技術である。さらに、本明細書に記載した技術は、マンモグラフィ密度の標準臨床評価と高度に相関し、乳房組織の導電特性に基づく密度の容積測定値を提供する乳腺密度の客観的尺度を提供する。
【0089】
癌の顕著な特徴の1つは、細隙結合によって媒介されると考えられる細胞間情報伝達の消失である;この過程は、細隙結合細胞間情報伝達(GJIC)とも呼ばれている。コネキシンは、隣接細胞間のイオン及び低分子の通過を許容し、癌発生中にはダウンレギュレートされるタンパク質チャネルである。さらに、細隙結合機能及び細胞間情報伝達は、電気生理学的及び生体電気インピーダンス法を用いて調査することができる。本発明によると、生体電気インピーダンス分析技術の変法を用いて、乳房実質内の変化した細胞間情報伝達を調査することができる。
【0090】
生物学的インピーダンス分析(BIA)は、身体組成を臨床的に測定するために使用されてきた(例えば、U.G.Kyle et al.,2004,Bioelectrical impedance analysis,Parts I and II,Clin.Nutr.23:1226−43 and 1430−53による概説を参照されたい)。癌患者においては癌悪液質(タンパク質消失)、脱水、無脂肪塊などが推定されてきたが、本発明の方法、詳細には特にセグメント生体電気インピーダンス法は、マンモグラフィ乳腺密度率を測定するため、及び/又は患者が乳房内の増殖性もしくは前癌性変化を有することが見いだされる、もしくは乳癌を発生するリスクを評価するためには使用されてこなかった。セグメント−BIAは、例えば典型的には身体組成を推定するために手と足との間で測定が実施される、ならびに各々の低及び高断面積のために、一部の身体部分(例えば、腕)の寄与を過大評価し、その他の部分(例えば、体幹)の寄与を過小評価する傾向がある全身BIAとは相違して、当該の身体部分例えば乳房の上方もしくは上へのセンサ電極の配置を意味している。
【0091】
非侵襲性電気アプローチは、乳房上皮を特徴付けるために使用することができ、これは次にレジスタ及びキャパシタを直列及び並列で備える電気回路としてモデリングできる。インテロゲーティング電気信号の周波数に依存して、皮膚の高インピーダンスは基礎にある乳管上皮の誘電及び抵抗特性を覆い隠す可能性がある。乳房組織を特徴付けるために電気もしくはインピーダンス技術を使用するその他のアプローチは、乳癌の起源となる乳管上皮を調査しない、又は基礎にある組織を覆い隠す皮膚の高インピーダンスを取り扱う。このため、本発明者は、乳管上皮インピーダンス分光法(DEIS)と呼ばれる、新規な技術を開発し、以前に開示した。DEISは、覆っている皮膚の高インピーダンスの問題を回避し、月経周期中ならびに乳癌に至る可能性がある乳房内の増殖性もしくは前癌性変化の経過において乳管上皮の電気シグニチャを特徴付けるために乳管上皮を非侵襲性で調査するために使用できる。さらに、十分に高い周波数で乳管系を通してDEIS測定を適用することによって、乳管系及び覆っている皮膚の曖昧なインピーダンスを排除できるので、乳房実質及び/又は間質の上皮下インピーダンス特性を測定することができる。
【0092】
本発明のためには、そして当業者であれば理解できるように、間質組織及び実質組織との言及は、同一であり、互換的に使用される。乳房の状況においては、これらの用語は任意の非上皮組織を意味することが意図され、実質細胞、脂肪細胞、線維芽細胞、結合組織などを意味することが意図されている。間質もしくは実質組織は成長因子が富裕であり*、マンモグラム上で所見される乳腺密度と関連付けることができる。パラクリン機構及び細隙結合を通る成長因子は、上皮細胞と情報伝達し、増殖を刺激する乳管を形成する。高周波数電流/電圧を印加すると、乳房の皮膚及び乳管上皮のインピーダンス(容量性リアクタンス)は、残留もしくは観察されたインピーダンスが間質/実質組織のインピーダンスに起因するので、崩壊する。高周波数では、電流は細胞内及び細胞間の両方を通過し、インピーダンスは乳房の全細胞塊、つまり間質/実質細胞塊によって支配される。これとは対照的に、低周波数では、インピーダンスの大半は、覆っている皮膚及び乳管を内張りしている上皮細胞、ならびにそれらの密着帯に起因する。典型的には、電流は高周波数で上皮細胞内及び上皮細胞間の両方を通過するが、上皮は厚さが1つ又は2つだけの細胞層であるので、その寄与(高周波数では破壊する、上皮細胞膜の誘電特性を伴わない)はごくわずかである。大多数の乳房組織塊を含む実質/間質細胞塊は、高周波数で細胞間及び細胞内を通過するので、全インピーダンスは、細胞内及び細胞外液の関数であると見なされるが、細隙結合機能にも関連する可能性がある。細隙結合は細胞間の小さな物質、イオン及び電気の通過を許容する、そのような結合部は発癌過程中に崩壊することが見いだされてきた。
【0093】
本発明のためには、生体組織を通る電流の流れに対する電気抵抗の1つの側面は、生体インピーダンスと呼ばれる。単純レジスタのインピーダンスは、直流(I)を用いて測定することができ、V=IR(オームの法則)によって電圧に関連付けられる。生体組織中では、細胞膜は絶縁体として機能し、電流が低インピーダンス経路だけに沿って通過することを許容する。乳房の症例では、本発明の好ましい方法を使用すると(例えば、図6を参照されたい)、低インピーダンス経路は乳頭センサ電極間を通り、乳管口を越え、より大きな集合管に沿って、乳管上皮細胞(密着帯/傍細胞経路)間を通り、乳房実質及び皮膚を越えて表面電極へ至る。典型的には約40KHz〜約80KHz、好ましくは約50KHz〜約60KHzである本発明の好ましいより高い周波数では、主として調査されるのは、乳管上皮ではなく、乳房実質である。又は、交流電流が、例えば一連の相違する周波数正弦波として乳管系に適用される場合は、より多くの電流がより低周波数で終末乳管まで通過する。これとは逆に、より高周波数では、より多くの電流が細胞を通過し、終末乳管には到達しない。本発明は、乳房内の増殖性もしくは前癌性変化の増加したリスク又は乳癌の増加したリスクと結び付いている乳房実質内の密度及び密度変化を推定するために、より高周波数で交流電流を使用して乳房組織を調査又は「インテロゲート」する。
【0094】
上述したように、本発明のためには例えば約50KHz〜約60KHzである高周波数では、電流が乳管系を通過する場合は、大部分の電流は乳房の実質もしくは間質組織を通過するが、これは皮膚及び乳管上皮の誘電特性が崩壊するからである。高周波数インピーダンスもしくは抵抗測定値は、細胞内及び細胞外液ならびに細胞間情報伝達もしくは細隙結合機能の尺度である。
【0095】
本発明のためには、乳管系を通る電気測定を、すなわち本発明者が以前に記載したような乳頭センサを利用して実施することが好ましいが、これは測定値が皮膚単独を通して実施される場合には乳管網を取り囲んでいる実質を調査することはできないからである。そのような測定値は、次に上皮下インピーダンス(Zsub)もしくは上皮下抵抗(Rsub)の堅実な測定値を入手するために使用される、そのような測定値は、乳頭センサが使用されない場合は、典型的には信頼できない。その開示は参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第2004/0253652号明細書として公表された本発明者の同時係属出願には、ヒト乳房における上皮及び間質組織の選択された領域の状態を決定するための方法及びシステムが開示されている。その中に概して記載した乳頭センサもまた有用である。その方法は、乳房組織の組織及び経上皮電位を測定するために複数の測定電極を使用する。表面電位及びインピーダンスもまた、1つ以上の場所で測定される。組織の領域内には、電気生理学的特性を増強するための作用物質を導入することができる。組織の状態は、変化したイオン輸送及び組織の電気生理学的特性に起因する上皮内の機能的変化の推定値と一緒に、上皮、間質、組織、又は器官の様々な深さでの電位及びインピーダンスプロファイルに基づいて決定される。乳頭カップセンサは、内部、ならびに第1及び第2開口部を有するカップ、該内部内に配置された電極、及び該第1開口部に結合できる吸引源を含み、このとき該第2開口部は組織の1領域の上方に配置され、該第1開口部に吸引が適用され、ならびに試験対象の該組織領域と該電極との間で電気接続させられる、組織の1領域の状態を決定するための装置であると説明される。同時係属出願の発明は、上皮乳房組織の領域の状態及び1つの器官内、例えば乳房内の主要の場所を決定するための方法であって、第1電極と乳房の上皮組織との接続を確立するステップと、第2電極を該乳房の表面と接触させて配置するステップと、該第1及び第2電極間で信号を確立するステップと、該第1及び第2電極間の少なくとも1つの電気特性を測定するステップと、及び該第1及び第2電極間の該信号に基づいて上皮組織の領域の状態又は腫瘍の場所を決定するステップとを含む方法を提供する。例えば、少なくとも2つの相違する周波数で測定したインピーダンスを含む複数の電気特性を測定することができる。上述した本発明の特定要件を説明するために調整されたそのような方法及び器具もまた有用な可能性がある。例えば、上述したように、本発明においてはより高い交流電流電気信号周波数が好ましく、シリンジ、又は自動真空ポンプは、吸引源を提供するために、ならびに改善された電気接触を促進するために導電性媒体(ECM)を送達するために乳頭カップセンサに操作可能に接続することができる(図6)。
【0096】
以下の説明では、「器官」を参照されたい。本発明のためには、「器官」は、1つ以上の特殊機能を実行する身体の比較的に独立もしくは分化した部分又は組織の集合体を意味する。器官は、一般には、それらの1つが通常は該器官の主要機能を支配して決定する幾つかの組織タイプから作り上げられる。特別にはヒト身体の主要器官系は、肺、心臓、血液及び血管を含む循環器系と、唾液腺、食道、胃、肝臓、胆嚢、膵臓、腸、直腸及び肛門を含む消化器系と、視床下部、下垂体前葉及び下垂体後葉を含む下垂体、松果体、甲状腺、副甲状腺、及び副腎を含む内分泌系と、皮膚、毛髪及び爪を含む外皮系と、リンパ節及びリンパ液を輸送するリンパ管を含むリンパ系と、扁桃腺、アデノイド、胸腺及び脾臓を含む免疫系と、様々な筋肉を含む筋系;脳、脊髄、末梢神経、及び神経を含む神経系と、例えば卵巣、卵管、子宮、膣、乳房、乳腺、精巣、輸精管、精嚢、前立腺、及び陰茎などの生殖器官を含む生殖器系と、例えば、咽頭、喉頭、気管、気管支、肺、及び横隔膜などの呼吸のために使用される器官を含む呼吸器系と、骨、軟骨、靱帯、及び腱を含む骨格系と、ならびに腎臓、尿管、膀胱及び尿道を含む泌尿器系とを含んでいる。本発明は、好ましくは、乳房に関連する電気生理学的測定値及び特性に向けられる。
【0097】
本発明は、異常又は癌性上皮組織を特徴付けるために使用される先行方法に関連する問題及び欠点を克服する。要約すると、本発明の様々な実施形態は、インピーダンス、主として上皮下インピーダンス、Zsubを測定するが、所望であれば、周辺及び/又は可変性吸引下で、特別に構築された電極を使用して乳房上皮を越えて電流又は信号を通過させることによって、DC測定を行うこともできる。例えば、乳頭電極は、好ましくは乳管上皮、周辺乳腺組織、皮膚及び表面もしくはその他の電極間の電圧及び/又はインピーダンスを測定するために使用される。乳頭電極は、さらにまた乳管系に沿って電流を通過させるためにも使用できる。また別のタイプの電極を使用すると、電圧及び/又はインピーダンス信号を測定する、及び/又は電流を通過させて乳頭表面の個別乳管開口部で信号を測定することができる。また別のタイプの電極を使用すると、電圧及び/又はインピーダンス信号を測定する、及び/又は電流を通過させて、それに付着させた1つ以上の電極を有することができる修飾乳管プローブもしくは乳管鏡を用いて個別乳管内の信号を測定することができる。これらの全電極は、個別に、相互に組み合わせて、及び/又は表面プローブもしくは電極と組み合わせて使用できる。DC測定値は、上皮の機能状態に関する情報を提供することができ、初期前癌性変化及び隣接悪性腫瘍を検出することができる。詳細には、様々な間隔をあけて配置した電極を使用して特別に規定した範囲内の数種の周波数でのインピーダンス測定値は、深さ及びトポグラフィ情報を提供して、調査対象の組織に関する構造的(高周波数範囲)及び機能的(低周波数範囲)情報を生じさせることができる;上述したように、より高周波数測定値は、特に好ましい。
【0098】
本発明者は以前に、異常な前癌性もしくは癌性細胞の存在を決定するためにイオン置換及び/又は薬理学的及びホルモン処置を用いて、上皮組織内の輸送変化を検出及び測定するステップによって異常もしくは癌性組織を検出して特徴付けることができることを開示した。上皮内の輸送における変化に感受性である経上皮DC電位、インピーダンス又はその他の電気生理学的特性のベースライン時レベルを評価対象の組織内で測定する。輸送を増強する、又は輸送変化を検出することを可能にする作用物質を導入することができる。組織の経上皮DC電位及び/又はインピーダンス(又は輸送における変化を検出することに影響を及ぼす、又は可能にする他の電気生理学的特性)を次に測定する。導入される作用物質及び測定された電気生理学的パラメータに基づいて、組織の状態が決定される。対照的に、本発明の方法は、高周波数での上皮下インピーダンスを測定し、無症候の場合がある患者を含む患者が乳房における増殖性もしくは前癌性変化を発生する(又は有する可能性がある)リスクを評価するために使用できる乳腺密度値を入手するために、本発明者が開発したアルゴリズムにしたがって測定値を使用する。
【0099】
推定マンモグラフィ乳腺密度を計算する乳房組織の上皮下インピーダンス、Zsubを測定するための、及び患者、特別には実質的に無症候の女性である患者が乳房における増殖性もしくは前癌性変化を有することが見いだされるリスクを評価するための改良された方法のための方法及びシステムが提供される。例えば、1つ又は2つの通電電極を組織の選択した領域の第1表面と接触させて配置することができる。又は通電電極は組織又は上皮を横断して、例えば乳頭管、乳管内腔、上皮、乳房実質及び乳房の表面の間に電流を通過させることができる。又は、乳管は中央乳管カテーテル又は乳管鏡によってアクセスすることができる。複数の測定電極は、同様に乳房の第1表面と接触させて配置する。1つ以上の測定電極を使用すると、他の電極もしくは基準点に関連付けられたDC電位を測定することができる。通電電極間では信号が確立される。確立された信号と関連するインピーダンスは、1つ以上の測定電極によって測定される。又は、それによって1つの電極が電流注入及び電圧報告の両方のために使用される測定のためには、三電極系を使用することができる。所望であれば、組織の領域内に作用物質を導入し、測定DC経上皮電位、インピーダンス又は他の電気生理学的特性を含む、該作用物質の作用に反応した該組織の状態をさらに決定することができる。上述した方法及び装置における電極は、試験対象の組織と接触させて、組織に近接させて、組織の上方に、又は組織内に挿入して使用することができる。本方法はこれらの配列の1つを含むものとして実施形態において記載してきたが、1つの配列は他の実施形態と互換的にも使用できることが企図されていることを理解されたい。例えば、本方法は組織と接触している電極を有すると記載されている場合、本方法は、電極を組織内に挿入して、又は近接させて使用することもできる。同様に、本方法は組織に近接している電極を有すると記載されている場合、本方法は、電極を組織と接触させて、又は組織内に挿入して使用することもできることが企図されている。
【0100】
そこで、本発明と一致するシステム及び方法は、乳腺密度を推定するため、及び/又は上述したリスクを評価するために、インピーダンス測定値を、任意で例えば経上皮電位などの他の電気特性と組み合わせて使用する。さらに、本発明と一致するシステム及び方法は、好ましい周波数を使用して、以下で詳述するように、推定マンモグラフィ密度を入手するため、及び/又はリスクを評価するために、使用したアルゴリズムのために必要とされる所望の上皮下インピーダンス値を得る。詳細には乳頭からの距離と関連して、間隔をあけて配置した電極を使用することによって、本発明の方法は、マンモグラフィ密度を計算もしくは推定するため、及び/又は乳癌のリスクを評価するためのインピーダンスデータを提供する。
【0101】
上記で考察したように、乳腺密度を測定するために一般に許容された方法には、例えば、患者を組織損傷及びもしかすると癌のリスクに曝露させるX線などの電離放射線の使用、定期的もしくは周期的ベースで使用することを不可能にするほど高価である例えばMRIなどの方法、ならびにオペレータによる感受性又は例えばX線マンモグラム及び超音波スキャンの解釈などの結果の解釈を一般に必要とする方法を含む、幾つかの欠点に悩まされる。対照的に、本発明の方法は高価ではなく、非侵襲性であり、さらに例えばZsubなどの電気測定値は客観的である。結果として、本発明の方法は、連続的及び頻回に適用できるので、疑わしい状態が見いだされると、患者を監視することができる。さらに、異常な組織のリスク増加を信号できる、したがって例えばMRIもしくは生検を含む特異的局所的結果を得るための、1つ以上の費用がかかる、リスキーもしくは侵襲性の方法の使用を必要とする、乳房組織の状態における変化を同定するための試験方法を使用することができる。
【0102】
経上皮もしくは上皮下の乳房インピーダンスもしくはDC電位を測定するためには、乳頭カップ内の凹んだ場所に置かれたAg/AgCl(又は類似の低オフセット白金/水素、チタン、スズ鉛合金、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、炭素、又は他の導電性金属もしくは導電性ポリマー電極)ペレット間を電気接続させるために構築された乳頭電極によって乳管の内腔を電気的にアクセスすることが必要である。カップにはECM(導電媒質)が充填され、これは乳管系との電気接触を受動的に、又はシリンジもしくはポンプを用いた吸引後に確立する。乳房の表面に配置された少なくとも1つの表面電極、好ましくは以下に記載するような2つ以上の表面電極は電気回路を完成するので、経上皮インピーダンス又は電位の測定は、乳管上皮と皮膚表面との間で実施することができる。経上皮又は上皮下ACインピーダンスを測定する際には、測定電極は、乳頭電極、好ましくは上述した乳頭カップ電極を皮膚表面電極と組み合わせて利用することによって、乳管上皮を越える電圧低下及び位相シフトを測定する。このアプローチの他の構成はより侵襲性であるので、それにより乳管鏡を通して挿入した電極又は皮膚もしくはIV(静脈内)、皮内、もしくは皮下電極に関連付けた乳頭管プローブ電極間の測定を行うことができる。また別の実施形態では、乳管は、皮膚を通して挿入された針電極によってアクセスすることもできる。
【0103】
DC経上皮測定値をインピーダンス測定値と結び付けるためには、低接触インピーダンスを備える表面電極、又はIVによる血流、又は針電極によって表面電極に関連付けた電圧感知電極、又は覆っている上皮もしくは他の上皮を透過する電極を用いて、DC電位のベースライン時測定値を入手することが必要である。電極は、それらのECM中に相違するイオン濃度、薬理学的物質又はホルモン剤を含有することができる。本説明において使用するように、ECMは、測定される表面と電極との間の電気信号の伝播を許容する媒質である。作用物質は、所望であれば組織の状態についての詳細な情報を提供するために選択される、ECMに加えられる、さもなければ調査対象の組織に導入される任意のイオン濃度、薬理学的物質、ホルモン剤又はその他の化合物を含んでいる。また別の実施形態では、作用物質の濃度は、システム内を通る流れを用いて変化させることができる。
【0104】
導電性媒質もしくはECMは、電極表面と皮膚もしくは上皮表面との接触のインピーダンス(交流電流に対する抵抗)を減少させるために外部もしくは内部電極とともに使用する導電性流体、クリームもしくはゲルを含むことができる。DC電極の場合には、ECMが電極表面で最低DCオフセット、又は測定可能なオフセットを生じさせることも望ましい。ECMは、表面電極との電気接触を確立するために皮膚のより深部層から流体及び電解質を汲み上げる親水ゲルを含有することが多い。電流を通過させるために使用する電極は、高導電性を備えるECMを必要とする。通常、これは高電解質含量を備えるECMを使用することによって遂行される。頻回に使用される電解質はKCl(塩化カリウム)であるが、これは自由溶液中のこれら2種のイオンのイオン移動度が類似するためであるので、電極の分極は、様々な移動度のイオンが使用される場合より問題が少ない。ECM調製物中では例えばナトリウムなどの他のイオンを使用することができ、電解質濃度が高いほどより迅速な電極平衡を生じさせる。
【0105】
特定イオンへの上皮の透過性についての推定を行う状況では、上皮からカリウムへの導電性は電気生理学的に測定できるように、ECM中のK(カリウム)の濃度が変動させられる。下にある皮膚からECM中の電解質への導電性を増加させるために、増強剤もしくは透過剤をECMに加えることができる。電気接触を改善する、及び/又は表面皮膚インピーダンスを減少させるための他のアプローチには、表面皮膚抵抗を減少させるために軽石及びアルコールを用いた軽度の表面剥削、例えばKendall Excel電極剥離ライナー(Tyco Health Care社、マサチューセッツ州マンスフィールド)、3M Red Dot Trace Prep(3M Corporation社、ミネソタ州セントポール)、アルコールを用いた皮膚の清浄化、皮膚を剥削するためにディスポーザブル電極を回転させる自動皮膚剥削調製器具(QuickPrep system、Quinton社、ワシントン州ボセル)、超音波皮膚透過技術(SonoPrep、Sontra Medical Corporation社、マサチューセッツ州フランクリン;米国特許第6,887,239号明細書、Elstrom et al.)、又は皮膚表面抵抗を減少させるためにまさに角質層に浸透するシリコン製超微針アレイ電極(例えば、P.Griss et al.,IEEE Trans.on Biomedical Eng.,2002,49 (6),597−604を参照されたい)が含まれる(数種の方法の比較及び考察のためには、さらに、Biomedical Instrumentation & Technology,2006;39:72−77を参照されたい。特許及び雑誌文献の内容は、これにより参照して組み入れられる)。
【0106】
経上皮電気測定は、典型的には正確な測定を実施するためには上皮のいずれかの側への電極のポジショニングを必要とする。これは、上皮が内張りした器官(胃、結腸、前立腺、気管支又は乳房)の内腔内に配置された電極及び試験対象の器官の内腔の外側に配置された基準電極を用いて実施することができる。又は、内腔内及び内腔外電極は、電解質液、ゲル、親水ゲル又は他の導電性媒質を使用して上皮の内側及び外側表面と間接的に接触させることができる。
【0107】
上皮の両側へアクセスせずに上皮の経上皮電気特性を測定する試みは、重大な測定誤差源を導入する可能性がある。例えば、胃、結腸、前立腺又は乳房などの上皮が内張りした器官の上方に皮膚電極を配置すると、下にある上皮の経上皮電気特性を正確には反映しない表面測定値を生じさせる場合がある。
【0108】
例えば表面への電圧の印加は、例えば電荷担体が移動しない、すなわち電流が流れない場合でさえ、静電場を生じさせる。特定距離で分離されている2つの地点間で電圧が増加するにつれて、静電場はより強度になる。相互に対して所定の電圧を有する2つの地点間の分離が増大するにつれて、それらの間の領域内の静電流束密度は減少する。この関係は、小さな寸法の1つの静止帯電物体(理想的には、点光源)が他方に発揮する静電力の大きさ及び方向を示す逆二乗関係であるクーロン(Coulomb)の法則によって説明される。クーロンの法則は、以下のように記載することができる。
「2つの点電荷間の静電力の大きさは各電荷の大きさと正比例し、電荷間の距離の二乗と反比例している。」
【0109】
上皮を越える電圧の場合には、数値は、通常は上皮の内腔外側に比較して内腔側上の負電荷に起因する上皮を越える電荷に依存することになる。電荷源からの測定電極の距離が大きいほど、測定静電力は小さくなる。数学的には、クーロンの法則は、以下のように記載することができる。
F=k・[Q1・Q2]/d2
(式中、Q1は物体1上の電荷量(単位:クーロン)を表し、Q2は物体2上の電荷量(単位:同様にクーロン)を表し、dは2つの物体間の分離距離(単位:m)を表す。さらに、kは、電荷間の媒質に左右されるクーロンの法則定数として公知である比例定数であり、空気に対しては約9.0×109Nm2/C2であり、水又は食塩液に対してより2桁小さい)。
【0110】
これは、単一点電荷qによって作り出される電場Eの大きさが、
【数1】
であるローレンツ力(Lorentz Force)法則から得られる。
【0111】
正電荷qに対しては、Eの方向は点電荷の場所から離れて半径方向に向かう線に沿って指し示すが、負電荷に対してはこの方向は反対である。Eは、V(ボルト)/m又はN(ニュートン)/クーロンの単位で表示される。
【0112】
単純に述べると、これは、点電荷から遠く離れるほど、測定電圧は点光源から測定電極への距離の二乗の逆関数として低下することを意味する。皮膚表面のインピーダンスが減少した場合でさえ、表面電極を用いて測定した電圧は上皮からの距離が増加するにつれて重大に低下する。作用電極が上皮の内腔表面と直接又は間接接触すると、皮膚表面で測定された電圧は上皮及び間質腔の外側(内腔外側)表面間の電圧低下を伴って連続して上皮を越える電圧を表し、電圧は皮膚を越えると低下する。
【0113】
上皮の内腔表面と、測定電極との直接的又は間接的接触が確立され、皮膚表面インピーダンスが低下させられると、内腔電極と皮膚表面との間の測定は、真の経上皮電位をより正確に表す。これは、皮膚を越える電圧低下及び電位が部分的に排除されるためである。間質又は皮膚表面の下方の間質組織及び上皮の内腔外側表面に起因する電圧低下は、一般に無視できると考えられる。これを言い換えると、いったん高スキンインピーダンスが実質的に排除されると、基礎にある組織は特に関心のある測定値である、測定経上皮DC電位及び上皮インピーダンスにほとんど影響を及ぼさない。
【0114】
米国特許第6,887,239号明細書(Elstrom,et al.)は、電気信号の伝送及び受信のために細胞、組織、及び器官を非侵襲性で準備するために皮膚のインピーダンスを減少させるためにソノフォレシスの使用を提案している。用語「ソノフォレシス」は、典型的には超音波的に増強された経皮的薬物送達を意味する。本発明のためには、ソノフォレシスは、1つ以上の化合物(例えば、一般的には、薬物、ホルモン剤、規定イオン組成の溶液など含む任意の薬理学的物質)の経皮的送達だけではなく、より広汎には詳細には、好ましくは個人、特別にはそのような個人の組織もしくは器官の物理的特性を測定するステップと結び付けた、電気生理学的特性の改善された測定を含む有益な作用を入手するための、皮膚表面への超音波エネルギーの適用を意味する。上述したように、皮膚表面インピーダンス自体の減少又は排除さえクーロンの逆二乗法則又はローレンツ力の法則を補正しない。腔内測定電極を用いない、又は試験対象の器官の内腔と間接的に接続した場合は、表面電気測定は、真の経上皮電気生理学的測定値を正確には反映しない。
【0115】
経上皮電気測定値については結腸、胃、子宮頸部及びその他の中空器官において記載してきたが、乳管上皮(及びその他のより「アクセス」しにくい器官)における経上皮電気特性の測定値は、より課題が多い。乳管内腔へのアクセスは乳管プローブ、カテーテル又は乳管鏡を用いて得ることができるが、これらのアプローチは侵襲性であり、それらの有用性を制限する可能性がある。対照的に、本発明は、本明細書に記載した改良Sartorius乳頭吸引カップを使用する非侵襲性アプローチを提供する(さらに、例えば米国特許第3,786,801号明細書、Sartorius、及びその中の図4を参照されたい)。好ましい方法では、乳頭は、乳管口を閉鎖する可能性がある、存在する場合がある角栓を除去するために脱角化剤を用いて準備される。カップには、例えば生理食塩液などの電導性媒質を充填し、乳頭の上方に配置する。カップは、空気及び/又は気泡を除去し、生理食塩液導電性媒質によって乳頭カップ及び乳管上皮内の2つのAg−AgCl電極間の電気接触を確立するために数回(例、約4〜5回)吸引される。2つの電極の一方は乳管内腔と皮膚表面電極との間の電圧を測定するために使用され、他方の乳頭電極は乳管内腔と相違する皮膚表面電極との間に電流を通すために使用される。このアプローチを用いると、乳管上皮及び乳房実質のインピーダンス及び/又はインピーダンススペクトルを(例、周波数の関数として)測定することができる。
【0116】
経上皮測定値ならびに上皮が内張りした中空器官の内腔に沿った直列抵抗の組み合わせは、いずれかのアプローチを単独で用いた場合より器官の経上皮電気特性のより正確及びより有効な測定を許容する。例えば、電気生理学的特性に小さな差が存在する場合は、本明細書に記載した結合技術の適用は、組織の状態を診断するために所望の反応を観察するための唯一の機会を提供することができる。様々な実施形態で、これは以下の要素又は特徴の1つ以上を組み合わせて使用することによって実施できる。
(A)乳頭カップセンサ内の高導電性電解質(乳管上皮との電気接触を確立するために特に重要である)。
(B)乳頭を越えるインピーダンスを減少させるための脱角化剤。
(C)乳管内腔内の高導電性電解質。
(D)乳管上皮との接触を直接的に確立するために乳管カテーテルもしくはプローブ。
(E)覆っている皮膚インピーダンスを減少させるためのソノフォレシス。
(F)皮膚インピーダンスを減少するための皮膚透過剤もしくは「湿潤剤」。
(G)角質層を剥ぎ取るための接着テープ。
(H)皮膚インピーダンスを減少させるための皮膚剥削(例、Kendall Excel 電極剥離ライナー、Tyco Health Care社、マサチューセッツ州マンスフィールド;3M Red Dot Trace Prep、3M Corporation社、ミネソタ州セントポール又はQuikPrep System、Quinton社、マサチューセッツ州ボセル)。
(I)皮膚を水和させて皮膚インピーダンスを減少させるための親水ゲルもしくは高張性ゲル電極。
(J)P.Griss et al.,「Characterization of micromachined spiked biopotential electrodes」IEEE Trans Biomed Eng.2002 Jun;49(6):597−604(極微針又は微小電気機械的システム、MEMSとも呼ばれる)によって記載されたように皮膚インピーダンスを減少させるための微小侵襲性表面電極、及び/又は、
(K)皮膚に貫通させるための針電極。
【0117】
ソノフォレシスが本発明と結合して使用される範囲で、ソノフォレシスは、好ましくは皮膚の電気インピーダンスを減少させ、本発明の診断方法を改良するために、皮膚の特性を修正するために結合媒質による超音波エネルギーの適用に関する。例えば本発明者による上皮下インピーダンスの測定に関連するソノフォレシスの使用についての詳細な開示については、その開示が参照として本明細書に組み入れられる2007年7月18日に出願された、本発明者の同時係属出願である米国特許出願第11/879,805号明細書を参照されたい。特に有用なソノフォレシス装置は、Sontra Medical Corporation社、マサチューセッツ州フランクリンから商標名SonoPrep(登録商標)システムの下で、市販で入手することができ、このときソノフォレシス電圧は55,000Hzで12V ACであり、センサ信号は100Hzで100mV ACである。
【0118】
しかし本発明のためには、ソノフォレシスは、電気測定が好ましくは例えば約5KHz〜約10KHz、好ましくは約40KHz〜約80KHz、より好ましくは約50KHz〜約60KHz超の周波数を含む、より高周波数で行われる場合には典型的には必要とされないが、これは皮膚の誘電特性が高周波数では崩壊するからである。測定が、ゼロに近い周波数を含む低周波数、言い換えるとDC測定値で行われる場合は、皮膚表面からの電気的干渉を減少させるためにソノフォレシス及び/又は例えば微針電極などの上述した他の方法を使用するのが望ましい。
【0119】
上述した1つ以上の技術と結合して皮膚表面電極と関連付けた内腔上皮と直接又は間接接触する作用電極を使用する特に好ましい実施形態は、内腔上皮と直接又は間接接触している電極へ関連付けられて異な表面電極より正確な経上皮測定値を生じさせる。特別には器官を内張りした上皮の経上皮及び上皮下電気特性を利用する本発明の改良された測定方法は、例えば癌、例えばポリープ、乳頭腫、過形成、異形成、異所性結腸陰窩、上皮内新生物、白板症、紅色肥厚症などを含む前癌性状態、ならびに上皮起源の良性新生物、炎症、感染、潰瘍などの上皮疾患状態についてのリスクを測定する、特徴付ける、評価するため、又は診断を支援するために使用することができる。
【0120】
好ましくは、本明細書の開示は、マンモグラフィ乳腺密度率を推定する、及び/又は患者が乳房内の増殖性もしくは前癌性変化を有することが見いだされるリスク、特別には実質的に無症候の女性患者を評価するための改良された方法を提供する。本明細書に記載した方法は、増殖性乳房疾患を示す患者ならびに示さない患者についてのマンモグラフィ密度を推定する、及び/又は乳癌のリスクを評価するために適切である。増殖性疾患は、良性又は悪性のいずれかである可能性がある。しかし、例えば過形成、異型乳管過形成、異型小葉過形成、乳頭腫症、小葉新生物などを含む良性増殖性疾患さえ、長期又は継続フォローアップ後には乳癌の増加したリスクを示す場合がある。一部の患者は、後にフォローアップ生検において例えば嚢胞性疾患(FCD)、線維腺腫などの非増殖性良性状態を有することが見いだされることがある。
【0121】
そこで、本発明の方法を使用すると、増殖性、異常な前癌性又は癌性組織を、そのような組織の発生が初期段階にある間に検出することが可能である。一般に、本発明の方法及びシステムは、本方法が乳房に関して詳細に記載されても、例えば、前立腺、結腸、乳房、食道、及び鼻咽頭癌などであるがそれらに限定されない任意の上皮由来癌、ならびに例えば肺、胃、子宮頸部、子宮内膜、皮膚及び膀胱などの他の上皮悪性腫瘍に適用できる。
【0122】
詳細には、本発明の方法を使用すると、以下に記載するアルゴリズムの基準を満たす上皮下インピーダンスの測定値への変化は、それらが極めて多数の細胞に影響を及ぼす初期突然変異の結果であることを示唆する可能性がある(すなわち、フィールド欠損)。そこで、それらはどの患者をより頻回に監視すべきか、又は反対に、生検を必要とする上皮の特定領域を同定すべきかを決定するためのバイオマーカーとして活用できる。後者は特に、例えばX線に基づくマンモグラムの使用を行うなどのマンモグラフィによって、又は侵襲性生検の手段を使用しない臨床的乳房検査によって検出することがより困難である異型乳管過形成又は非浸潤性乳管癌(DCIS)の症例においては有用である。
【0123】
本発明の方法は、乳管を内張りしている細胞及び乳管胞単位、すなわち乳房上皮、ならびに乳房を覆っている皮膚の誘電特性が崩壊し、上皮下インピーダンスもしくはZsubの測定値に有意な影響を及ぼさないほど十分に高い周波数で行われる場合は、特に有用である。測定が約5KHz未満の周波数で行われるまでは、本発明の方法を用いて観察又は測定される容量性リアクタンスにはほんのわずかな上昇しか生じない。好ましくは、インピーダンスは、約5KHz〜約100KHz、例えば、約8,000Hz〜約90,000Hz、又は約10,000Hz〜約80,000Hz、もしくは約70,000Hz、もしくは約60,000Hzを含む1つ以上の周波数で測定される。Zsubを測定して、本発明の1つ以上のアルゴリズムにしたがって乳腺密度の対応する数値を得るためには、Zsubの適切な測定は、例えば、10KHz、約20KHz、約30KHz、約40KHz、約50KHz、約60KHz、約70KHz、約80KHz、約90KHz、及び約100KHzからなる群より選択される少なくとも1つの周波数での測定値を含む約10KHz〜約100KHzの周波数で行うことができる。これに関連して特に有用な観察は、例えば、約50KHz又は約60KHzで行うことができる。又は、有用な情報は、約10KHz〜約100KHz、例えば約20KHz〜約90KHz、又は約30KHz〜約80KHz、例えば約40KHz〜約60KHzの範囲内の周波数で入手できる。さらに、そのような高い周波数で測定値を入手する場合は、ソノフォレシスの使用は任意であり、電気生理学的特性を入手するための準備行為としてのソノフォレシスを使用しても、使用しなくても測定を行うことができる。
【0124】
本発明とともに有用な器具については、多数の変形が可能である。さらに、器具設計内では、変化させることのできる多数の態様がある。以下では、これらの変形やその他の変形について記載する。
【0125】
1つのプローブ又はその他の器具は、凹んだくぼみ内に複数の小型電極を含んでいる。例えばフィルタリングなどの機能を処理する、ディスポーザブルの市販で入手できるシリコンチップは、表面記録及び初期電子的処理を実施できる。各ECM液もしくは作用物質は、チップ上の個別電極及びリザーバに特定であることができる。そこで、1回の測定のためには、特定電極セットが使用される。また別の測定のためには、例えば相違するイオン濃度で、相違する電極セットが使用される。1回の測定のための電極は別の測定と同一地点には配置されないのでこれはある程度の変動を生じさせるが、このシステムは概して信頼できる結果を提供する。
【0126】
また別のアプローチは、より小数の電極を使用し、さらに溶液及び作用物質を変化させるためにフロースルーもしくはマイクロ流体システムを使用することである。詳細には、溶液又は作用物質は溶液又は少量の電流を通して作用物質をチャネルに通して移動させ、プローブの表面にある孔を通して流出させることによって変化させられる。この実施形態では、電極は皮膚又は乳管上皮の同一領域と接触したままであるので、測定における領域毎の変動が排除される。このアプローチは、相違する溶液間を平衡させるための時間を必要とする。
【0127】
異常な前癌性又は癌性乳房組織の存在を検出する際には、皮膚での表面測定値を得るためにハンドヘルド型プローブが用意されている。このプローブは、電流を通すため、ならびに測定するために電極を含むことができる。インピーダンス測定値は、乳頭カップ電極とハンドヘルド型プローブとの間で得ることができる、又はハンドヘルド型プローブ上の電極間で得ることもできる。又は、乳管鏡プローブ又は非光学式乳管プローブに1つ以上の小型電極とインターフェースすることができる。初期DC測定値を得た後、皮膚インピーダンスを減少させるために湿潤剤/透過剤を導入することができる、又は上述した方法の1つを使用することができる。作用物質は、流体を電極表面へ移動させるために、上述したように、マイクロ流体アプローチを用いて導入されることができる。又は、まさに角質層に浸透する表面電極を使用するとインピーダンスを減少させることができる。
【0128】
器具の構成にかかわらず、図1は、本発明に一致する、癌診断に使用されるDC及びACインピーダンス測定システムの略図である。システム100は複数の電極を含むプローブ器具105とインターフェースしているが、このときプローブ器具105の実施は試験対象の器官及び状態に依存する。プローブ器具105は、針、体腔、乳管鏡、非光学式乳管もしくは表面プローブに取り付けられた電極を組み込むことができる。参照プローブ110は、試験状況及び調査対象の乳房の領域に依存して、静脈内プローブ、皮膚表面プローブ、乳頭カップもしくは乳管上皮表面参照プローブの形態を取ることができる。
【0129】
浮遊キャパシタンスを回避するために、電極はシールド線によって、デジタル信号プロセッサ(DSP)130からの指令にしたがって特定プローブ105を選択できる選択スイッチ120に接続することができる。選択スイッチ120はさらにまた、DC測定中に低域フィルタを使用する、及び/又はACインピーダンス測定中に中もしくは高域フィルタを使用するように、プローブ105にインターフェースされる適切なフィルタを選択する。選択スイッチ120は、複数の増幅器から構成されることができる増幅器アレイ140へ電流を印加する、又は複数の電極が使用される場合は同一増幅器を通して相違する電極からの信号を切り換える。好ましい実施形態では、雑音に埋もれた微小信号を検出するために、デジタル又はアナログ式ロックイン増幅器が使用される。これは参照周波数上の振幅変調としての当該の信号の測定を可能にする。スイッチ素子は、測定の状況に依存して、当該の信号を平均化する、サンプリングする、又は選択することができる。この信号の処理は、CPUからの指令にしたがってDSPによって制御される。信号は次にマルチプレクサ150へ通過し、直列化され、その後にADCによってアナログ信号からデジタル信号へ変換される。プログラム可能利得増幅器160は、入力信号をADC170の範囲へ適応させる。ADC170の出力は、DSP130へ移動する。DSP130は情報を処理し、乳管上皮もしくは皮膚表面上ならびに疑わしい領域の上方でのDC電位及びそのパターンを計算する。さらに、様々な深さでのインピーダンスならびに様々なECMのイオン濃度、薬物、ホルモン剤、又はその他の作用物質に対するDC電位及びインピーダンスの反応を使用して癌の確率が推定される。次に、結果はCPU180へ送られ、試験結果185が得られる。
【0130】
又は、信号の解釈は、CPU180において部分的又は完全に行うことができる。任意波形発生器190もしくは正弦波周波数発生器は、プローブ電極及び試験対象の組織へ複合波形信号を送信するために使用される。正弦波形が好ましいが、本発明では、例えば方形波を含む他の波形を使用できる。測定された信号反応(複合波形刺激の場合)は、それから様々な試験条件下でインピーダンスプロファイルが測定されるDSP130又はCPU180においてFFT(高速フーリエ変換)を用いて解析することができる。インピーダンス測定値についての本システムの内部較正のためには、内部較正標準195が使用される。DC較正は、外部標準電解質溶液に対して利用されるプローブを較正して、外部的に実施できる。
【0131】
図2は、乳房の表面に適用できる、本発明に一致するハンドヘルド型プローブ400を含んでいる。このプローブは、ハンドル410を含むことができる。プローブ400は、例えば、ワイヤレス技術を用いて、測定器具420へ直接的又は間接的のいずれかで取り付けることができる。プローブ400は、静脈内電極、皮膚表面電極、他の接地、乳頭電極、又は乳管内もしくは乳頭開口部で乳管プローブ電極に関連付けることができる。図2に例示した1つの実施形態では、拡大図440により詳細に図示した、乳頭電極又は乳管プローブ430に関連付けられている。この構成の1つの利点は、DC電位及びインピーダンスを乳頭電極430とプローブ400との間で測定できる点である。そこで測定は、乳管上皮、非乳管乳房実質、及び皮膚のDC電位及び/又はインピーダンスの組み合わせである。
【0132】
拡大図440を参照すると、乳管プローブは、乳頭の表面へ開いている幾つかの乳管開口部の1つの中に挿入されている。乳管プローブ443は、大きな集合乳管445へ流れる乳管洞444内に示されている。
【0133】
乳頭電極を使用するまた別の利点は、乳管系に潅流させるための溶液をプローブに通して交換することができ、薬理学的物質及び/又はホルモン剤の導入を許容する点にある。拡大した乳管プローブ443に図示したように、443’流体は、サイドポートを通して交換することができる。流体は乳管内に注入し、乳頭プローブの(乳頭から離れた)近位端で吸引することができる。特定イオンの乳管上皮への変化した透過性を測定するために様々な電解質溶液を注入することができる、又は異常領域を同定するために上皮を様々な薬物で検査することができる。上皮内の前癌性もしくは悪性変化に関連する異常な電気反応を測定するためには、エストラジオール、又はその他のホルモン剤を乳管内に注入することができる。
【0134】
例えば、乳頭に吸引を適用する改良Sartoriusカップなどの様々な構成も使用できることも理解されたい。この構成を用いると、乳頭の上方に配置されたカップに穏やかな吸引が適用される。大きな乳管及び乳管洞内の少量の流体は、Sartoriusカップ内の電解質液と接触し、乳管を満たしている流体との電気接触が確立される。次に、カップと表面乳房プローブとの間でDC又はAC測定を行うことができる。
【0135】
図3は、図2のプローブ400をより詳細に図示している。表面450の皮膚接点は、乳房と接触させて配置される。表面電極451は、DC又はAC電圧を測定する。インピーダンス測定のためには、通電電極452が使用される。プローブ400はさらにまた、1つ以上のECMを含有する1つ以上の凹んだくぼみを含有することができる。複数のセンサ電極アレイは、通電電極と一緒に表面プローブに取り付けることができる。個別電極は凹んでいてよく、相違する組成を備えるECMを使用すると、試験対象のより深部の組織もしくは上皮を薬理学的、電気生理学的、又はホルモン的に調査することができる。電極の間隔は、他の器官系より乳房構成のためにはより大きくあることができるので、より深部の組織を電気的に調査し、より深部の組織のインピーダンスを評価することができる。このプローブは、乳房の表面と接触させて受動的に配置されることもでき、又は当該の領域の上方に空気圧吸引によって適所に保持されることもできる。溶液を交換するため、又は流体交換及び吸引のためにポートが配置されてよい(図示していない)。電極間のクロストークを防止するため、そして電流を接触面から乳房へ推進するためには、ガードリング(図示していない)を組み入れることができる。この構成では、各々が半径方向に90°離して配置された4つの通電電極[453]が存在する。これは、電流が流れ、直交フィールド内で電圧反応を測定することを可能にする。電極は、上記の図1に記載した器具を用いて、電線、又はワイヤレス技術によってインターフェースされる。
【0136】
この技術のまた別の実施形態は、乳房の様々な深度を調査するために間隔をあけて配置した電極の使用、及び皮膚表面で測定された良性及び悪性乳房組織からのインピーダンス及び経上皮電位を示差的に変化させるためのホルモン剤、薬物、及びその他の作用物質の使用を含むことができる。これは、診断精度のさらなる改善を可能にする。
【0137】
図4は、参照、通電、電圧測定又は組み合わせ電極[502]として使用できる乳頭カップ電極[500]を図示している。この構成では、吸引及び流体交換は、柔軟性ホース[515]によって吸引器具、アスピレータもしくはシリンジ(図示していない)へ接続されたサイドポート[510]を通して電極ハウジング[501]へ適用される。カップの基部にあるフランジ[503]は、乳輪[520]に適用される。空気圧吸引は、乳房[520]と乳頭電極[501]の間の密閉を得られるように通路[512]によってハウジングに連絡されたサイドポートを通して適用される。カップを充填し、下にある乳管系と電気接触させるために、電解質溶液が使用される。サイドポートを通して交互吸引を適用し、カップ内へ流体又は薬物を注入することによって、流体を交換できる、又は薬理学的物質及びホルモン剤を導入できる。空気圧吸引は、自然に、又は乳頭表面の乳管開口部での角栓を除去するためにアルコールもしくは脱角化剤を用いた準備後に乳管開口部[505]を開放させる。乳頭カップ電極[502]は、DC電位、ACインピーダンス又は組み合わせ測定値を入手するために、図1〜3に図示した器具を用いて、電気接続[530]によって、又はワイヤレス接続(図示していない)によってインターフェースすることができる。
【0138】
図5は、乳癌の発生中に発生する組織学的及び電気生理学的変化を示している。正常乳管上皮から、過形成、異型過形成、非浸潤性乳管癌(DCIS)を経由して浸潤性乳癌までの連続は、10〜15年を要すると考えられている。一部の段階は飛び越される場合があるが、通常は乳癌は無秩序の乳管増殖を背景にして発生する。正常乳管は経上皮電位(負荷電した乳管の内側)及びインピーダンスを維持するが、これらは癌の発生中には脱分極する、及び上昇する。浸潤性乳癌が発生すると、インピーダンスは密着帯完全性の消失に伴って減少し、腫瘍を通る導電性は増強される。無秩序の乳管は、変化した電気生理学的特性及びイオン輸送特性を有する。これらの特性は、図5の下方に示されている。これらの電気生理学的及び輸送の変化は、乳房における乳癌、増殖性及び前癌性変化を診断するために、例えば電位もしくはインピーダンスの経上皮測定値、又は経上皮表面電位測定値、ACインピーダンス測定値及び薬理学的処置の組み合わせを使用して活用される。例えば約5KHz〜約100KHzなどのより高周波数でDEISを使用して、乳房実質の上皮下インピーダンスが、マンモグラフィ密度(非上皮乳房実質の特性)、及び乳癌のリスクを推定するために測定される。
【0139】
図6は、乳管上皮インピーダンススペクトル、言い換えると乳癌についてのリスク因子を備えていない37歳の女性から得られた高周波数でのNyquistプロットに基づいた、上皮下インピーダンス、Zsubの決定を示している。上記に規定したように、Zsubは、曲線が試験した最高周波数でx軸に近似する、交わる、又は交差するNyquistプロット上の地点に対応するインピーダンス値である。例えば、図6では、Zsubは、60KHzの周波数では97Ωである。さらに上記で考察したように、この周波数では、細胞膜及び乳房を覆っている表面皮膚の誘電特性が崩壊するので、Zsubは乳房実質のインピーダンスによって支配されると考えられる。図6において得られた曲線は、数種の周波数での測定値から得られたが、本発明は、Zsubのために有用な数値を得るために実質的数の周波数(例えば、約5種より多い周波数)での試験を必要としない。好ましくは、及び実際的理由から、Zsubのための数値を得るためには約2種の十分に高い周波数でインピーダンス測定値を得ることが適切である。
【0140】
本発明の方法は以下のように適用されてきた。IRB及び患者の同意を得て、乳管上皮との電気接触は、乳房生検が計画された232例の女性において、図7の略図で示したような乳頭カップセンサを用いて非侵襲的に確立された。試験は、以下のように実施された。
1.乳頭カップ/センサを乳頭の上方に配置し、乳頭カップに生理食塩液を充填する。
2.食塩液を吸引して約100mmHgの負圧にする(5mLの食塩液を引き出す)。
3.3mLの食塩液を再び添加する(すなわち、負圧は約20mmHgへ減少する)。
4.気泡を除去し、乳頭をわずかに引き上げるために、ステップ2及び3を2、3回繰り返す。
5.乳頭カップセンサを周波数応答アナライザのリード線に接続する。
6.皮膚電極(親水ゲル)を乳頭からおよそ4cm(内側)及び7cm(外側)の乳頭の各四分円内に配置する。
7.追加の通電電極を最外通電電極(乳頭から7cmの電極)の外側に配置する。これらの電極は乳房のサイズに依存して乳頭から約8〜10cm離れた乳房の辺縁上にある。
【0141】
典型的には、乳頭センサと乳房の4つの四分円各々内に配置した皮膚表面電極との間で2組の測定が実施された。Zsubは、周波数応答アナライザ、及び正弦波相関技術を用いて60KHzで測定した。Zsubは、4つの乳房四分円の各々について平均化された。データは、t検定、マン ホイットニー検定、ANOVA、ピアソン モーメント相関法、及びロジスティック回帰を適切に用いて解析された。
【0142】
上記の検定で得られたデータに基づくと、以下の因子がZsubと相関することが見いだされている:
正相関
1.年齢
2.体重又はボディマス指数(BMI)
3.電極が配置される乳頭からの距離
4.年齢、BMI又はリスクに影響を及ぼすその他の因子に関連する可能性がある、その後の生検での増殖性病変又は癌の存在
5.乳癌の強度の家族歴又は遺伝的リスク
負相関
1.月経周期日(閉経後女性については数値0)
2.マンモグラフィ乳腺密度
初期試験結果及び解析は、小さなサンプルサイズに基づいていた。この後に、増加したサンプルサイズを生じさせる追加の被験者に基づく詳細な解析が実施された。どちらも下記に報告する。それらは相互に一致しているが、後者のより大きな集団はより信頼性が高く有用なアルゴリズムを生成した。
【0143】
最初に、Zsubは良性(BN、n=114)、(相関係数(CC):0.61、p<0.0001)、ならびに悪性疾患及び良性増殖性疾患(CC:0.46、p=0.0001)の両方を含む増殖性疾患(PROL、n=118)である患者の年齢と相関することが見いだされた。同様に、Zsubは、患者の体重及び電極が配置された乳頭からの距離の両方と有意に相関し、BNについては月経周期内の位置と逆相関していたが、PROL患者については逆相関していなかった(図8、9、11及び12を参照されたい)。Zsubは、BN患者(n=97)では170±7Ω、良性増殖性患者(PROL−BN)(n=32)では229±10Ω及びPROL癌(CA)患者(n=61)では258±10Ωであった(p<0.001)。BMI及び乳房サイズは年齢に伴って増大し、BN及びPROL患者の両方におけるZsubと有意に相関していた(データは示していない)。限定された初期試験データを用いた場合でさえ、マンモグラフィ乳腺密度はZsubと反比例することが見いだされた(−0.622CC(相関係数)、p<0.000001)。Zsubは、年齢、BMI及びマンモグラフィ乳腺密度(MD)の組み合わせと相関している(それらによって予測できる)。同様に、MDは、年齢、BMI及びZsubの線形組み合わせによって予測することができ、上述したようにこれらの因子と逆相関している。
【0144】
データの数値を個別に参照する。
図8:良性(初期はn=114、現在は=142)及び増殖性乳房(初期はn=118、現在は=148)における年齢とZsubとの相関。円は、その後の生検が良性変化を示す患者を示し、正方形は増殖性変化又は癌を示す。Zsubは、増殖性乳房に比して良性乳房における方が低かった;
図9:良性(n=78)及び増殖性乳房(n=60)における月経周期日とZsubとの相関。Zsubは、良性乳房については月経周期内の位置と相関するが、増殖性乳房については相関しない。
図10:経産歴による、すなわち経産及び未産女性による月経周期中の経皮下インピーダンスの変化の図示。明らかなように、Zsubは、経産女性における方が高く、Zsubは、卵胞期と黄体期(第3週及び第4週)の間での未産女性においては有意に減少し、同一期間では経産女性におけるより有意に高かった。本明細書で考察したように、マンモグラフィ密度は年齢とともに減少することが見いだされている。マンモグラフィ密度における低下は、「退縮」と呼ばれる。退縮は、女性の生涯を通して発生する。20代前半の女性は、70%を超えるマンモグラフィ密度及び約100Ω〜約130Ωの対応するZsub値を有することが多い。2つの事象が重大な退縮を生じさせる。(1)第1満期妊娠。及び(2)経閉。その後の妊娠はさらなる退縮を生じさせることが多いが、通常は第1満期妊娠ほど大きくはない。加齢、肥満、閉経又は満期妊娠に伴う退縮発生の不全は、乳癌にとっての増加したリスクの指標である。これは、障害の任意の段階にある女性において、本明細書の本発明者が開発した方法である乳管上皮インピーダンス分光光度法(DEIS)、及び詳細には本発明の方法を用いて測定できるが、それは放射線リスクのために一般には40歳を超える女性についてのみ使用される例えばX線マンモグラフィと比較して、本方法の非浸潤性の性質のためである。本発明の方法を使用すると、20歳代の女性はベースライン時Zsub試験を受けることができ、その後に年齢及びBMI関連マンモグラフィ密度変化を監視するために年1回又は年2回の検査によって追跡調査することができる。年齢、増加したBMI、乳房サイズの変化ならびに特別には満期妊娠、及び閉経に伴う退縮不全は、例えばX線マンモグラフィ、乳房MRI、核イメージング、断層合成法、生検、遺伝子検査などを用いる乳房検査などのその後の詳細な評価を用いて乳癌にとっての増加したリスクを備える女性を同定することができる。
図11及び12:患者の体重及び電極が配置される乳頭からの距離と良性(明色の丸)又は増殖性病変(暗色の丸)におけるZsubとの相関。
図15:これは、患者の2つの乳房間の乳腺密度の差を示しているX線マンモグラムである。Zsubの測定は乳房各々において個別に行うことができるので、非対称性の乳腺密度及びそのような非対称性が乳癌の指標である付随リスクを同定することができる。個人の乳房間の乳腺密度の差は、典型的には約5〜約10%であることが観察されている。乳房間のZsub測定値もまた通常は高度に相関し、典型的には約5〜約10%以内である。Zsub測定は、本明細書に記載の方法にしたがって、より高い乳腺密度及び乳癌にとっての増加したリスクを示すより低いZsubを備える乳房間で発生する非対称性を推定するために行うことができる。このため、乳房間のZsub測定値を使用すると、乳癌にとっての増加したリスクを監視することができる。
【0145】
図15に示したX線マンモグラムは、39歳の女性の右乳房における増加した乳腺密度を示している。マンモグラフィ乳腺密度は、左乳房における50%と比較して右乳房における70%(密度率)であるとX線フィルムから視覚的に推定された。電極は、皮膚表面上で乳頭から5cmの場所に配置された。平均Zsub(4つの乳房四分円の平均値)は、左乳房における151Ωの平均Zsubと比較して右乳房では110Ωであったが、これは乳房間の重大な乳房密度及びZsubの非対称性を示している。X線マンモグラムは質量を示さないが(放射線不透過性マーカー、もしくは白色ドットは、患者が「肥厚」であると説明した右乳房の1つの領域上方に配置されたことに留意されたい)、造影剤を用いたその後の乳房MRIは右乳房において発生中の多病巣性乳癌を同定し、その後の生検において確証された。このため、X線マンモグラム及びZsub測定値の両方が、右乳房において発生している非対称性乳腺密度状態を同定した。
【0146】
女性患者が乳房における増殖性もしくは前癌性変化を有すると見いだされるリスクは、本発明の方法に基づいて推定することができる。詳細には、患者の一方又は両方の乳房のZsub、Zsub(測定値)もしくはZsubmが測定される。さらに、Zsubについての数値、Zsub(推定値)もしくはZsubeは、データの前向き段階的回帰から得られる以下のアルゴリズムを使用して推定できる。
Zsube=107.753+(1.083*年齢)+(−1.074*乳腺密度)+(3.196*BMI)
(式中、年齢は歳で測定される;乳腺密度は%で表示され、マンモグラム上の乳腺の外観から推定される。及びBMIは、
体重(ポンド)*703)/身長2(インチ2)、又は
体重(ポンド)*4.88/身長2(フィート2)と規定される)
【0147】
Zsubm及びZsubeの数値から、Zsubm/Zsubeの比率(「リスク比と呼ばれる)が計算される。リスク比は、増殖性乳房疾患又は癌の明白な症状を示していない患者が、例えば生検などのその後の直接検査上でそのような状態を有することが見いだされるリスクを意味する。フォローアップ生検から得られた情報を含むデータの解析に基づいて、リスク比は、以下のように指標として使用できると結論付けられた。
【0148】
Zsubm/Zsubeの比率は、Zsubeが、例えば加齢、より高いBMI及び/又はこれら2つの相互作用に影響を及ぼす公知の因子から正確に予測される場合は、約1.0であると期待される。リスク比が約1.2である場合は、測定Zsub(Zsubm)は年齢及びBMI(及び追加して、本明細書のいずれかで説明したように、この変量がアルゴリズムに含められる場合は電極が配置される乳頭からの距離、DFN)などに基づいた推定値より約20%高い。高齢であり、より高いBMIを有するためにより高リスク状態にあると考えられる患者においては、より高リスクは主として、むしろ組織インピーダンスのリスクに及ぼす作用に起因して予測されるZsubより高いZsubを有するこれらの因子に起因すると予測される。統計学的には、これは相互作用又は交絡作用であると言われる。これを言い換えると、年齢はZsubに影響を及ぼし、さらに乳腺密度はZsubに影響を及ぼし、年齢もまた乳腺密度に影響を及ぼす。次に、単に年齢作用だけではないZsubへの乳腺密度の寄与を分類することが必要である。さらに、年齢及びBMIはどちらも、個人において観察もしくは測定されるZsubに影響を及ぼす独立変量である;そうでなければ、それらはロジスティック回帰モデリングには保持されない。そこで、正常(もしくは典型的)より高いBMIを備え、約1.2より大きい(例えば、約1.1、1.15、1.2、1.25、1.3、1.35などより大きい)Zsubm/Zsubeもしくはリスク比を示す高齢患者は、増殖性疾患又は乳癌の増加したリスク状態にある。
【0149】
他方では、高マンモグラフィ密度が低Zsubと相関することが観察されている。そこで、約0.8未満(例えば約0.9、0.85、0.8、0.75、0.7、0.65など)のZsubm/Zsubeの比率は、その後の生検上で増殖性病変もしくは癌を見いだすより高リスクを示す可能性があるが、それは特に年齢及びBMIの公知の影響について調整した場合に、乳癌にとっての公知のリスク因子である増加したマンモグラフィ密度のためである。そのような低い数値のZsubm/Zsubeは、より若年の、身体的適任者、すなわち正常、典型的又は一層低いBMIを備えるヒトにおいては特に重要である可能性がある。
【0150】
概して、ヒトが約1.0±0.2より大きい、又は小さいリスク比を示す場合は、例えば、生検、MRI、X線(若年患者に対して)などを含むより侵襲性の、リスクがある、及び/又はより費用のかかる試験方法を用いる厳密な試験が必要とされる。
【0151】
初期の試験結果以降、初期データに追加され、より大きなデータセットが生じた。以下では、モデル及びそれに由来するアルゴリズムを含むデータ全部の解析について報告する。便宜性のために、マンモグラフィ密度MDは、時には「密度」と呼ぶ。
【0152】
1.全サンプル集団(閉経前及び閉経後女性の両方を含む)についてのZsubの予測値、Zsubeは、以下のモデル(記号*は乗算を示す)から予測できる。
Zsube=107.753+(1.083*年齢(歳))+(−1.074*乳腺密度(マンモグラムからの密度(%)))+(3.196*BMI)
(式中、BMIは、体重(ポンド)*703)/身長2(インチ2)、又は体重(ポンド)*4.88/身長2(フィート2)であると規定される)
【0153】
【表4】
MDは、Zsubの数値を予測するための最強因子である(p<0.001)。
【0154】
2.又は、乳癌にとっての公知のリスク因子であるマンモグラフィ密度(全集団に対する)は、以下のモデルから予測できる。
マンモグラフィ密度(%)(MD)=141.788+(−0.716*年齢)+(−1.113*BMI)+(−0.199*Zsub(Ω))
【0155】
負係数は、年齢及びBMIが増加する、したがってZsubが増加する(増加したインピーダンス)につれて乳腺密度が減少するので予測できるように、マンモグラフィ密度が年齢、BMI及びZsubと逆相関することを示していることに留意されたい。年齢及びZsubはどちらも、年齢及びZsubが密度と強度に関連し、どちらも乳癌にとっての有意なリスク因子であることから予測されるように、マンモグラフィ密度の最強の予測因子である(p<0.001)。
【0156】
【表5】
【0157】
3.ロジスティック回帰が女性の閉経前集団に適用された場合は、マンモグラフィ密度(MD)は、以下のモデルから予測することができる。
MD=127.770+(−1.339*BMI)+(−0.259*Zsub)
年齢は、閉経前女性における集団についてはモデル内にもはや含まれないが、これは閉経前女性においてはMDを予測する際に肥満症(BMI)が年齢よりはるかに重要であることを意味することに留意されたい。BMIは、p値が有意性に近似するにつれて、モデル内に推進されてきた(p=0.051)。その後のモデリングでは、電極が配置される乳頭からの距離について調整が行われる(したがって、電気的に「インテロゲート」される乳房組織の容積が考慮に入れられる)場合は、BMIは閉経前女性については有意になることに留意されたい。たとえ変動性が電極配置に起因して存在していても、個人のこの特定集団のBMIによって圧倒される可能性がある。
【0158】
【表6】
【0159】
4.ロジスティック回帰を閉経後の女性集団に適用した場合は、マンモグラフィ密度は、以下のモデルから予測することができる。
MD=127.178+(−0.874*年齢)+(−0.219*Zsub)
BMIは閉経後モデルからは除外されるが、これはおそらく閉経期退縮が、BMI状態とは無関係に、高インピーダンス脂肪による高密度乳房組織の重大な置換を生じさせるためであることに留意されたい。
【0160】
【表7】
【0161】
5.初期データ集団の回帰分析では、電極が配置される乳頭からの距離は、Zsubの予測因子としてモデル内に維持される。患者200例を対照とする現在のより大規模試験では、おそらく電極の配置が標準化されているために、余り明白な関連は見られない。しかし、個々の患者においては、電極はZsubについての数値が大きいほど乳頭から離して配置されるが、これはより大量の組織が電気的分析を受けるためである。マンモグラフィ密度のモデリングでは、より簡潔なモデルは、各電極が配置される乳頭からの距離についてZsub測定値を調整することである。これは順に、予測モデルを以下に示すように変化させる。
ZsubDFN(電極が配置される乳頭からの距離について調整されたZsub(単位:cm)は、以下の式によって規定される。
ZsubDFN=Zsub対DFNの線形回帰から引き出された169.512+(6.668*DFN(cm))
調整Zsub(ADJZsub)は、次に、以下の式から引き出される。
ADJZsub=ZsubM/ZsubDFN(式中、下付きM=測定値、すなわち測定Zsubである)
【0162】
6.ロジスティック回帰を閉経前の女性集団に適用した場合は、マンモグラフィ密度(MD)は、以下のモデルから予測することができる。
MD=131.936+(−1.444*BMI)+(−54.752*ADJZsub(上記の5と同様に引き出される任意単位で)
【0163】
【表8】
【0164】
7.ロジスティック回帰が女性の閉経後集団に適用された場合は、マンモグラフィ密度は、以下のモデルから予測することができる。
MD=120.178+(−0.869*年齢)+(−39.179*ADJZsub(上記の5と同様に引き出される任意単位で)
【0165】
【表9】
【0166】
6及び7はどちらも閉形前及び閉経後の女性の両方についてZsubに影響を及ぼす変量としてDFNを組み入れ、たとええ測定を実施する場合に電極を乳頭からの標準距離に配置するため努力が尽くされた場合でさえ、好ましい、より汎用のモデルであることに留意されたい。
【0167】
8.Zsubと密度との間の関係を前提として予測できるように、Zsubは、閉経前患者(前Z’sub)における183.343±5.769Ωと比較して241.938±8.403(平均値±SEM)の平均値を示す閉経後患者(後Z’sub)における方が有意に高い(p<0.001)。
t検定
正規性検定:合格(P=0.097)
等分散性検定:合格(P=0.523)
【0168】
【表10】
【0169】
平均値の差:58.595
t=5.952、自由度116を伴う(P=<0.001)。
平均値の差についての95%信頼区間:39.097〜78.092
そこで2つの群の平均値における差は、偶然によって予測されるより大きい。入力群間には統計的有意差がある(P=<0.001)。
αを用いて実施した検出力=0.050:1.000
【0170】
類似のマンモグラフィ密度(密度率)は、閉経前患者の47.5(25.0〜60.0)%(「Pre Density」)に比較して閉経後患者では17.5(7.5〜32.5)%(メジアン(25〜75%の信頼限界))(「Post Density」)と有意に低い(p<0.001)。
マン ホイットニー順位和検定
【0171】
【表11】
【0172】
マン ホイットニーU統計量=798.000
T=1974.000n(小)=48n(大)=70(P=0.001)
2つの群のメジアン値における差は、偶然によって予測されるより大きい;統計的有意差がある(P=<0.001)。
【0173】
9.図10は、Zsubと月経周期内の位置との相関を示す図である。円は経産(n=16)群を表し、正方形は未経産(n=17)コントロール群を表す。未経産コントロール群は低いZsubを有し、これは特に黄体期中のより導電性の実質を示唆している。経産女性におけるZsubが高いだけではなく、卵胞期と黄体期との間のZsubの変化もまた未経産女性における方が約50%大きい。卵胞期と黄体期との間のZsubにおける減少は、おそらく乳房のより高い流体含量、又は未経産女性におけるZsubに影響を及ぼす乳房組織内の物理的変化に起因するインピーダンスの減少を示唆している。60KHzで測定されたインピーダンス対10KHz又は6KHzで測定されたインピーダンスの比率は、リスクに関してより示差的情報を生じさせることができる。電気信号の周波数を60KHzから10KHzへ減少させた場合にインピーダンスにおける変化が測定された場合は、インピーダンスの有意な増加は経産及び未経産女性両方において同定される。インピーダンスの変化は、周波数が60KHzから6KHzへ変化した場合はさらに大きい。インピーダンスにおける変化が、60から10KHzへの変化に60KHzから6KHzへの変化が掛けると、変化における有意差を示す相互作用項が得られる、すなわち経産女性(P−相互作用)は未経産女性(N−相互作用)に比較して各々766対844(p=0.011)のメジアン結果を有する。これらのデータは、以下の通りに分析された:
t検定
正規性検定:不合格(P<0.050)t検定によるそれ以上の分析は実施しなかった。
マン ホイットニー順位和検定
【0174】
【表12】
【0175】
マン ホイットニーU統計量=131909.000
T=250737.000 n(小)=487 n(大)=595(P=0.011)
2つの群のメジアン値における差は、偶然によって予測されるより大きい。統計的有意差がある(P=0.011)。
【0176】
約5,000Hz(5KHz)を越える周波数では、リアクタンスにおける変化は極めてわずかしかないが、それは皮膚及び上皮の誘電特性が全インピーダンスにはほとんど影響を及ぼさず、電気信号は乳房の上皮下組織をインテロゲートするからである;インピーダンスは、本明細書に開示した乳管内測定アプローチを用いて効果的に5KHzを越える単純抵抗である。そこで、約50KHz又は約60KHzでのZsub測定に加えて、約5KHz〜20KHzの間の1つ以上の周波数での追加のZsub測定値は、より高い、及びより低い周波数ならびにそれらの比率の間の数値における変化の大きさの計算を含めて、乳房の流体状態又は乳房組織の他の特性に関する追加の情報を提供することができる。
【0177】
さらに、上記の試験は、経産状態を除いて、乳癌にとっての公知のリスク因子を備えていない40歳未満の年齢の女性のコントロール群において実施された。家族歴、乳腺密度などのために増加したリスク状態にある女性は、「リスク状態」と「通常リスク」との間のこれらの中周波数測定値においてはより大きな差を有すると予想される場合がある。月経周期中の様々なポイントで試験された経産対未経産女性は、わずかに高いリスクについてのモデルとして機能する、すなわち未経産女性は経産女性より乳癌のより高いリスクを有する。
【0178】
10.上記で考察した初期分析では、月経周期におけるポイントは、Zsubの推定値を予測するアルゴリズムにおける1つの因子である。上記の図10から明らかなように、Zsubは、第1週及び第2週(卵胞期)と比較して月経周期の黄体期には低くなる傾向を示すが、その関係はもはや明確な線形ではなく、第1週及び第2週のデータならびに第3週及び第4週のデータを結合することによってデータを正規化することが必要になる場合がある。そこで、月経周期内の位置は依然として、Zsubと周期中の位置との間の観察された関係のために乳腺密度を推定するために有用な変量を表す。乳腺密度における変化はマンモグラフィ試験において月経周期中に観察されてきたので、これは一般に放射線学の文献では公知である。乳腺密度は、Zsubがより低いという本明細書での観察所見に一致して、黄体期においてより高くなることが観察されている。
【0179】
概して、BMI、年齢、マンモグラフィ乳腺密度(MD)及びZsubの変量間には有意な相互作用が見られるので、Zsubはさらに乳癌を発生するリスクとも関連すると考えられる。さらに、年齢及びBMIはどちらもZsub及びMDと関連し、Zsubと密度との間にはより強力な相関が見られるので、加齢に起因する乳癌を発生するより高い見かけのリスクもまたより高いZsubと相関し、より高いBMIもまた加齢と相関する。ロジスティック回帰モデルでは、概して年齢及びBMIは、Zsubがモデル内の変量として保持されるように制御されるので、Zsubは、年齢及びBMIの作用とは無関係にMDと関連する示唆されている。
【0180】
マンモグラフィ密度を推定するための上述した方法、及び詳細にはACR BI−RADS法を使用して、推定マンモグラフィ密度は上皮下インピーダンス、Zsubと相関付けられてきた:これらの結果は図14に示されている。マンモグラフィ密度の推定は2人の盲験観察者によって実施されたが、それらの推定値は相互に、及びZsubと高度に相関していた(図13を参照されたい)。図14に示した変動性の多くは、上記のアルゴリズムに示したように、年齢及びBMIによって説明される。
【0181】
本発明のまた別の実施形態では、例えば約50KHz又は約60KHzでZsubを測定するための単一周波数の使用に加えて、有意に低い周波数Z0で第2インピーダンス測定を行うことができる。この数値について、インピーダンスは0に近い、もしくは0の周波数又はDC(直流)で測定される。しかし、極めて低い周波数では、皮膚インピーダンスは測定値を支配できるので、上述したように皮膚部位でソノフォレシスを使用することによってそのような緩衝を回避する、又はスパイクもしくは微針電極などを使用することが必要になる。又は、その周波数では皮膚のインピーダンスが及ぼす影響がより少ない、例えば約1,000Hz〜約5,000Hzなどの中継周波数を使用できる。Z0の測定値は、細胞外液の推定値として機能する。すなわちすべての電流は細胞外(間質液)区画を通過し、この状態は高リスク状態の女性では変化する可能性が高い。このため、Zsub/Z0の比率又は各数値は個別に、乳癌のリスクを評価することを含む、様々な目的のために使用できる追加の特徴解析基準を提供することができる。
【0182】
組織の電気生理学的特性ならびに正常及び異常組織間の差を測定するための器具は、例えば、電気計器、デジタル信号プロセッサ、電圧計、発振器、信号プロセッサ、電位差計、又は電圧、導電性、抵抗もしくはインピーダンスを測定するために使用される任意の他の器具などの当技術分野において公知の器具を含むことができる。
【0183】
DC電位は、通常は大きな抵抗、及び2つの電極(1つの作用電極及び1つの基準電極)と直列でつながれた検流計からなる電圧計を使用して測定される。電圧計は、アナログ式であってもデジタル式であることもできる。理想的には、これらは電流引き込みを回避するために極度に高い入力抵抗を有するべきである。DC電位は、さらにまたオシロスコープを用いて測定することもできる。
【0184】
インピーダンスは、多数のアプローチを用いて測定できる。限定なく、例には、デジタル式もしくはアナログ式いずれかのロックイン増幅器であることができる位相固定増幅器が含まれる。精度を改善するために接地への迷走電流を最小限に抑えるためにはロックイン増幅器と結び付けて前置増幅器を使用できる。デジタル式ロックイン増幅器は、当該の振幅変調情報を運ぶ信号であり、もう1つは特定周波数及び位相を備える参照信号である2つの正弦波の乗算に基づいている。信号発生器は、組織を刺激するための正弦波もしくは複合信号を生成するために使用できる。アナログ式ロックイン増幅器は、位相感受性検出器(PSD)及び低域フィルタを含む同期整流器を含有している。その他のアプローチには、AC正弦波を生成するために発振器を備えるインピーダンスブリッジの使用を含んでいる。これらの器具は自動化されると、LCRメータと呼ばれ、自動平衡ブリッジ技術を使用する。定電流又は定電圧電流源を使用できる。1つの好ましい実施形態では、定電流源が使用される。固定周波数信号を備える発振器ではなく、重畳正弦波を生成する信号発生器が使用されることもできる。
【0185】
組織反応は、高速フーリエ変換又はその他の技術を用いてデコンボリューションされる。測定を行うためには、双極、三極又は四極電流及び電圧電極を使用できる。1つの好ましい実施形態では、電極分極及び電極−組織インピーダンス誤差に起因して導入される不正確を回避するために、四極電極構成が使用される。インピーダンスではなく、上皮又は皮膚表面で1アレイの電極を用いると電流密度を測定できる。インピーダンスは、さらにまた電極を皮膚もしくは上皮と接触させる必要を伴わずに電磁誘導を用いて測定することもできる。
【0186】
大量のデータを処理するためには、Zsubを測定するステップを組み合わせて含む本発明の方法は、コンピュータ可読媒体上のソフトウエアによって実施することができ、コンピュータ装置又は中央処理装置によって実行することができる。
【0187】
測定システム及び方法の実施例
本発明の1つの実施形態は、図7に示されている。この図は、上述した乳管上皮インピーダンス及びZsub測定値を作成するために使用されるシステムを示している。乳管上皮との電気接触は、この図及び図4に図示した特殊設計の、乳頭センサ電極と乳管開口部を越える乳管上皮との間の電気接触を確立する生理食塩液が充填された乳頭乳管センサを用いて、(既に試験された患者400例によって報告されたように)非侵襲性及び無痛で確立した。皮膚インピーダンスは、上述したようにソノフォレシスを用いて<3,000Ωcm2へ減少させ、角栓は、乳管開口部を開放させるために脱角化剤を用いて乳頭から除去した。測定は、乳頭センサと低オフセットAg−AgCl皮膚表面電極との間で行った。経上皮電位(TEP)及びDEIS測定値は、0.1Hz〜60KHzの周波数範囲にわたって入手し、周波数応答分析器を用いて処理し、正弦波相関は四極電極技術を用いて処理した。データはZPlotを用いて収集し、ZView(Scribner Associates社)を用いて分析した。4つの四分円各々を各患者において測定した。患者への全電気接続は、IEC−60101電気安全基準を遵守して、生物学的インピーダンスアイソレータ(Solarton 1294、英国ファーンバラ)を通して行った。ラップトップ型コンピュータ(DuCac Tech社)を使用して、FRA、生物学的インピーダンスアナライザを制御し、さらにデータを分析した。
【0188】
代替実施形態では、マンモグラフィ乳腺密度の推定及び/又は乳癌のリスク評価のためのインピーダンスデータは、単一周波数又は2種以上の複数の、しかし上記に報告した全スペクトルデータを入手するために使用される多数の周波数よりは少ない周波数器具を用いて入手することができる。例えば、1種又は2種の周波数で位相及びインピーダンス測定値を得ることが適切な場合がある。さらに、本システム及び方法は、状況が指令するようにソノフォレシスもしくはスパイク電極を用いて、又は用いずに使用できる。適切なソノフォレシス装置は、上述したように市販で入手することができ、スパイクもしくは微針電極もまた例えばSilex Microsystems社(マサチューセッツ州ボストン)から入手できる(例えば、Characterization of Micromachined Spiked Biopotential Electrodes,P.Griss et al.,IEEE Trans.Biomed.Eng.,49,6,597−604(June 2002);米国特許第7,050,847号明細書;及び米国特許出願第2007/0265512号明細書も参照されたい)。好ましくは、上記に記載及び図示した乳頭センサは、上皮下実質のインテロゲーションを促進するために使用される。
【0189】
本発明のまた別の代替実施形態は、インピーダンス指数(IQ)又は抵抗(RQ)を入手することができるように、乳房の各四分円もしくはセグメント内で2つのセンサ電極を使用する。インピーダンスは、年齢、体重、月経周期内の位置などによって影響されるので、乳頭に関して皮膚感知電極間での同一間隔を維持しながら同一乳房における2つの場所でZsub又はZ0を測定するステップによって個別患者において指数を入手することができる。そこで、乳頭センサ電極及び皮内センサ電極及び皮外センサ電極間のインピーダンスの測定は、乳頭から約3cm及び約7cmの場所で、図7に示した構成に加えて外部皮膚センサ電極を用いて行われる。同一患者において測定される指数は、例えば年齢、体重、月経周期などの他の交絡因子について補正され、患者が乳房内の増殖性もしくは前癌性変化又は乳癌を有すると見いだされるリスクに関連する乳房実質について抵抗率又は誘電率を生じさせる。
【0190】
本発明とともに使用するための器具
本発明とともに使用できる器具については、多数の変形が可能である。さらに上述したように、器具設計内では、変化させることのできる多数の態様がある。以下では、これらの変形やその他の変形について記載する。
【0191】
本発明において使用するためのプローブ又はその他の器具の1実施形態では、凹んだくぼみ内に複数の小型電極を含んでいる。表面記録、及び例えばフィルタリングなどの初期電子的処理は、ディスポーザブルの市販で入手できるシリコンチップによって実施できる。各ECM液もしくは作用物質は、チップ上の個別電極及びリザーバに特定であることができる。そこで、1回の測定のためには、特定電極セットが使用される。また別の測定のためには、例えば、相違するイオン濃度で、相違する電極セットが使用される。1回の測定のための電極は別の測定と同一地点には配置されないのでこれはある程度の変動を生じさせるが、このシステムは概して信頼できる結果を提供する。
【0192】
また別のアプローチは、より小数の電極を使用し、さらに溶液及び薬物を変化させるためにフロースルーもしくはマイクロ流体システムを使用することである。詳細には、溶液又は作用物質は、溶液又は作用物質をチャネルに通して移動させ、器具の表面にある孔を通して流出させるため電流を通過させることによって変化させられる。この実施形態では、電極は乳房の表面の同一領域と接触したままであるので、測定における領域毎の変動が排除される。このアプローチは、相違する溶液間を平衡させるための時間を必要とする。増殖性の異常な前癌性又は癌性乳房組織の存在を検出する際には、皮膚での表面測定値を得るためにハンドヘルド型プローブが用意されている。このプローブは、電流を通すため、ならびに測定するために電極を含むことができる。インピーダンス測定値は、乳頭カップ電極とハンドヘルド型プローブとの間、乳頭カップ電極と接着性皮膚電極との間、小型乳管鏡上の電極間、及び皮膚表面電極間で得ることができる、又はハンドヘルド型プローブ上の電極間で得ることもできる。初期DC測定値を得た後、皮膚インピーダンスを減少させるために湿潤剤/透過剤を導入することができる。作用物質は、流体を電極表面へ移動させるために、上述したように、マイクロ流体アプローチを用いて導入されることができる。又は、まさに角質層に貫通する表面電極を使用するとインピーダンスを減少させることができる。
【0193】
本発明とともに使用するための流体は、例えば薬理学的物質を含む、又は含まない生理食塩液(例、リンガー(Ringer)液)などの様々な電解質溶液を含むことができる。乳管系内に注入するための1つの好ましい電解質溶液は、生理的リンガー液を表す。典型的には、これはNaCl 6g、KCl 0.075g、CaCl2 0.1g、NaHCO3 0.1g、及び7.4の生理的pHを備える低濃度の高及び低リン酸ナトリウムからなる。その他の電解質溶液を使用することができ、電解質は溶質の約1%の容積を含んでいる。1%より多い、又は少ない高張液もしくは低張液は、上皮及び/又は腫瘍の誘発試験において使用することができる。Na、K及びClの濃度は、上皮の導電性及び透過性を評価するために様々な条件下で調整される。例えばアミロライド(起電性ナトリウム吸収を遮断するため)、フォルスコリン(もしくは環状AMPを上昇させるための類似薬)及び例えばプロラクチンもしくはエストラジオールなどのホルモン剤などの様々な薬理学的物質もまた、これらの作用物質への上皮及び腫瘍の電気生理学的反応を試験するためにリンガー液を注入することができる。同様に、輸液のカルシウム濃度は、密着帯透過性を変化させ、この処置への上皮の電気生理学的反応を測定するために変化させられる。デキサメタゾンは密着帯の透過性を減少させるために注入することができ、電気生理学的反応が測定される。
【0194】
特定の実施例は上皮及び腫瘍の「挑戦的」試験において使用できる薬物及びホルモン剤を生じさせてきたが、発癌現象中に影響を受けることが公知である特異的イオン輸送、又は密着帯完全性の任意のアゴニスト又はアンタゴニストは、特に上皮又は腫瘍の電気生理学的特性に影響を及ぼすことが公知である場合は使用できる。
【0195】
器具の構成とは無関係に、信号を使用して乳管経上皮電位自体、又は経上皮インピーダンスもしくは上皮下インピーダンスが測定される。測定値は、次に乳房の増殖性及び/又は発生中の異常と関連する上皮の電気特性を特徴付けるために結合することができ、同一又は反対側の乳房の関与していない領域と比較することができる。表面電位測定及びインピーダンス測定は、乳房の非経上皮電気特性を特徴付けるために行うことができる。これらの測定は、DC電位測定を含んでいるが、このとき表面電位は、ECMを通して乳管内腔と直接的又は間接的に接触していない電極と関連付けられる。インピーダンス測定は、表面電極間又は表面電極及び(ECMを通して)乳管内腔と直接的又は間接的に接触していない基準電極間で同様に行われる。これらの測定値は、乳房組織を詳細に特徴付けるために経上皮電気測定値と比較し、結合することができる。
【0196】
さらに、変化したインピーダンス又はDC電位の電気生理学的根拠についての理解は、より正確な診断を許容する。例えば、インピーダンス又はDC電位は、幾つかの因子のために上昇又は下降する可能性がある。乳房の増加した間質密度は、そのインピーダンスを変化させる場合がある。さらに、発生中の悪性腫瘍の周囲での上皮のカリウム透過性の減少はインピーダンスを増加させ、発生中の悪性腫瘍と関連する可能性が高い。追加の情報は、間隔をあけて配置した電圧感知電極を用いて組織を様々な深さで調査することによって本発明の方法から入手される。増殖性、癌傾向、前癌性もしくは悪性腫瘍組織に比較した正常組織においてDC電位及び/又はAC電位を示差的に変化させるための電気生理学的、薬理学的及びホルモン的処置の使用は、本発明の診断精度を増強する、また別の有意差である。
【0197】
皮膚インピーダンスは、乳管上皮及び乳房実質の基礎にあるインピーダンスシグニチャを不明瞭にするほど高い場合は、特に有意であることに留意されたい。しかし、皮膚がソノフォレシスを用いて処置された場合に有意な変化が生じるか否かを事前に知ることは不可能であるので、このため試験結果を解釈するために「一様な」又は標準状態を確立することは不可欠である。ソノフォレシスは、開回路電位雑音及び皮膚インピーダンス雑音の両方の雑音を診断測定値から除去する。
【0198】
高皮膚インピーダンスは、「真の」経上皮インピーダンスプロファイルを覆い隠す場合がある。皮膚インピーダンスの減少は、上皮及び皮下の乳房実質の複数のインピーダンス分散を解明する測定値を生じさせることができる。さらに、経上皮電圧は、皮膚インピーダンス単独を減少させることによっては正確に推定することはできず、経上皮電気信号(インピーダンス又は電圧)の推定は、表面測定を行う場合には乳管上皮の内側を参照することを必要とする。
【0199】
本明細書に記載した実施形態は、ヒトを参照して記載されている。しかし、非ヒトにおける癌もまたこのアプローチを用いて診断することができ、本発明はさらにまた獣医学的用途を有することが意図されている。
【0200】
さらに、本発明の様々な態様又は実施形態は、以下の特徴を含むことができる。
器官の実質インピーダンス特性を測定するための方法であって、皮膚表面電気測定値を基準もしくは作用電極と結び付けるステップ、及び/又は上皮の内腔表面と直接的又は間接的電気接触させる伝導性媒質の使用による方法。
試験対象の器官の特別には実質である上皮下特性を調査するための、正弦波、方形波又はその他の電気信号形状の通過。
詳細には実質である上皮下組織の電圧振幅、位相変化及びその他のインピーダンス特性の測定であって、上皮及び皮膚表面電極の内腔表面と直接的又は間接的電気接触させる基準もしくは作用電極の組み合わせを用いる測定。
Zsubの単独又は他の電気的もしくは患者特性と結び付けた使用であって、個人の一方の乳房の、又は個人の両方の乳房のマンモグラフィ乳腺密度率を推定し、数値を同定して乳房における異常な状態の指標となる可能性があるそれらの数値における変化を同定するために、ある期間に渡り任意の時点又は連続的にそのような数値を比較するための使用。
正常リスクもしくはコントロール集団と比較して癌発生のリスクを推定するために、年齢、体重(もしくは、BMI)、乳房のサイズ、1つ以上の表面電極が配置される乳頭からの距離、電気特性測定の時点での月経周期日(もしくは閉経状態)、経産歴及びマンモグラフィ乳腺密度、乳房の特別には実質である上皮下組織のインピーダンスに影響を及ぼす可能性がある因子に関する情報と結合したインピーダンス測定値の使用。
【0201】
上記の電極組み合わせは、皮膚が組織の上皮下電気特性を不明瞭化しないように皮膚の表面インピーダンスを減少させない任意の方法と結び付けることができる。
【0202】
又は、表面皮膚もしくは内部上皮の誘電特性が上皮下組織をマスキングしないほど十分に高い周波数信号を使用できる。
【0203】
上皮下(実質)インピーダンスに影響を及ぼすリスク(年齢、体重、月経周期微)以外の因子の影響について調整することによって、基礎にある組織について上皮下(実質)インピーダンスもしくは抵抗指数を推定できるように、同一四分円もしくはセグメント内の乳頭から相違する距離で配置された第2表面電極の追加(指数は、乳頭もしくは作用電極から相違する距離にある乳房の同一四分円もしくはセグメント内の2つの相違する場所で測定されたインピーダンスの差又は比率である)。抵抗の場合には、指数は、組織の相対抵抗(ρ)に、又はアドミタンスの場合には、乳頭及び抵抗もしくはインピーダンスに影響を及ぼすその他の因子からの距離について調整された相対誘電率(ε)に類似する。上皮下組織の相対抵抗もしくは誘電率は、次にリスクを推定するために使用できる。
組織の細胞内及び細胞外液区画を調査し、そこで細胞内情報伝達及び傍細胞導電性の両方についての情報を入手するために十分に高い周波数(例えば、約5KHz〜約10KHzを超える、及び典型的には約50KHz〜約60KHz)の使用。
上皮及び皮膚表面電極の内腔表面と直接的又は間接的電気接触させる上記の1)における基準もしくは作用電極の組み合わせを用いた、細胞外液区画を単独で、又は組織の電圧振幅、位相変化及びその他のインピーダンス特性の測定とともに調査するための第2低周波数測定の追加。
細胞内及び細胞外区画間の液体の分布、ならびに癌のリスクを推定するための組織の細胞内情報伝達を推定するための高及び低周波数でのインピーダンス測定値の比率(Z∞/Z0)の使用。
癌のリスクを推定するために、比率値(すなわち、年齢、体重(BMI)、乳房サイズ、電極が配置される乳頭からの距離、月経周期日((もしくは閉経状態)、経産歴及びマンモグラフィ密度)に影響を及ぼすことが公知の因子について調整された比率Z∞a/Z0aの使用。
【0204】
大多数の癌は上皮起源であるので、間質又は非上皮素子は頻回に変化し、細胞間情報伝達が崩壊させられる。細胞間情報伝達は、間質細胞間もしくは上皮及び間質細胞との間で特徴付けることができ、そのような情報伝達は上記に略述したアプローチを用いて評価することができ、それによって例えば胃、腸、前立腺、卵巣、頸部、子宮、膀胱皮膚などの上皮及び間質素子を含む器官内の癌のリスクを評価することに適用できる。
【0205】
上述した様々な態様又は実施形態は、癌もしくは増殖性細胞リスクの変調ならびに例えばホルモン剤、薬物などの一般には化学的予防と呼ばれる作用物質、又は例えば放射線、エレクトロポレーション、遺伝子療法などを含む他の治療様式を用いる予防的戦略に対する反応を評価するために個別に、又は組み合わせて使用できる。
【0206】
本発明の様々な実施形態によって表される技術は、例えば、高密度の領域を発生する癌を正確に局在化する必要があるので、マンモグラフィイメージングに対する必要とともに完全に排除する可能性は低い。しかし、Zsubもしくは乳腺密度の推定値を使用すると、例えばマンモグラム、MRI、核イメージング、「挑戦試験」などのイメージングの必要及び頻度の両方を誘導するために個別患者に対するリスクを推定することができる。さらに、乳腺密度は修正可能なリスク因子である、すなわち例えば分娩、食事、運動及び化学予防薬などのリスク因子及び/又はリスク減少戦略に反応して変化するので、乳腺密度を使用すると、リスク因子の導入もしくは排除、又は薬物もしくはその他のインターベンションを用いた癌予防法に反応して上昇もしくは減少するリスクを評価することができる。さらに、Zsubの測定は、特別には個人、詳細にはX線の使用が増加したリスクを提示する可能性がある若い個人にとって有用な可能性があるが、他方電気的検査測定値はそのようなリスクを回避し、治療経過又は年齢及び/又はライフスタイルに伴う単なる変化にしたがって定期的、複数回又は連続的ベースで反復することができる。
【0207】
上記の明細書で言及した、及び例えば特定セットの特性、尺度単位、条件、物理的状態もしくはパーセンテージを表す態様などの本発明の様々な態様に関連する以下の段落及び特許請求項で言及した任意の数の範囲、さもなければ任意の数のサブセットもしくはそのように言及した任意の範囲内に含まれた範囲を含むそのような範囲内に含まれる任意の数は、参照して本明細書に明示的に文字通り組み入れることが意図されている。さらに、用語「約」は、変量、特徴もしくは状態についての、又はそれと結合した修飾因子として使用される場合は、本明細書に開示した数、範囲、特徴及び状態が柔軟性であること、そして当業者による範囲外もしくは単一値とは相違する温度、周波数、時間、濃度、量、含有量、例えばサイズ、表面積などの特性を用いた本発明の実践は本出願に記載した所望の結果、つまりマンモグラフィ乳腺密度率を推定する、及び/又は乳癌をもしくは乳房の増殖性疾患を発生する患者のリスクを評価するために、正常、前癌性及び癌性の実質組織、好ましくは乳房組織を含む組織及び上皮内の電気生理学的特性を測定する、ならびに電気生理学的変化を検出することを達成する。
【0208】
本発明のためには、以下の用語は指示した意味を有するものとする。
「含む」又は「含んでいる」:請求項を含む本明細書全体を通して、用語「含む」ならびに「含んでいる」及び「有する」、「有している」、「包含する」、「包含している」などのこの用語の変形及びそれらの変形を含めて、それが関連する指名されたステップ、素子もしくは材料は必須であるが、その他のステップ、素子もしくは材料を加えることができ、それでもなお特許請求項又は開示の範囲を備える構築物を形成することを意味している。本発明を記載する際、及び特許請求項に言及される場合は、本発明及び請求される対象は、それに続く、及び潜在的にはそれ以上と考えられることを意味している。これらの用語は、特に請求項に適用される場合は、包含的もしくは無制限であり、追加の言及されていない素子もしくは方法ステップを排除しない。
【0209】
「本質的に〜からなる」:本発明の状況では、「本質的に〜からなる」は、任意の素子もしくは素子の組み合わせならびに本発明の基本的及び新規な特徴を変化させる任意の量の任意の素子もしくは素子の組み合わせを排除することを意味する。そこで、例として、及び限定することなく、マンモグラフィ乳腺密度の推定値及び/又は上皮下インピーダンスを考慮に入れない乳癌のリスク評価は除外されることになる。
【0210】
「実質的に」:特異的な特性、特徴もしくは変量に関して他に特別に規定されない限り、例えば特性、特徴もしくは変量などの任意の基準に適用される用語「実質的に」は当業者であれば利益が達成される、又は所望の状態もしくは特性値が満たされることを理解する手段において上記の基準を満たすことを意味する。
【0211】
任意の特許出願及び/又は試験方法を含む本明細書に記載した全文書は、参照して本明細書に組み入れられる。本発明の原理、好ましい実施形態、及び操作様式は、上記の明細書に記載されている。
【0212】
本発明は、特定の実施形態を参照しながら記載してきたが、これらの実施形態は本発明の原理及び用途の単なる例証であることを理解されたい。このため、本出願及び添付の特許請求項に記載した本発明の様々な態様又は実施形態に規定したように、例示的実施形態には多数の修飾を加えられること、ならびに本発明の精神及び範囲から逸脱せずに他の配列から考案できることを理解されたい。
【0213】
上記に言及した参考文献には、以下が含まれる:
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【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、その開示が参照として本明細書に組み入れられる2007年12月11日に出願された米国特許仮出願第61/007,128号明細書の出願日の利益を主張する。
【0002】
[発明の分野]
乳腺密度及び/又は乳癌のリスクの理想的、又は好ましいバイオマーカーは、以下の特性、(1)生物学的妥当性、(2)低リスク集団に比較して高リスク集団において高い発現率、(3)プロスペクティブ試験における癌との関連付け、(4)正常生理学的過程によってはほとんど影響を受けない発現、又は生理学の影響を制御する能力、(5)低コストで最小侵襲性技術を用いてバイオマーカーを入手できる能力、及び(6)再現性を含んでいる。
本発明のためには、米国立衛生研究所による「バイオマーカー」の一般に容認された定義である「正常生物学的過程、病理学的過程、又は治療的インターベンションに対する薬理学的反応についての指標として客観的に測定及び評価される特性」を採用する(Biomarkers Definitions Working Group:Biomarkers And Surrogate Endpoints:Preferred Definitions And Conceptual Framework.Clin.Pharmacol.Ther.2001;69:89−95)。
以下に示すように、本発明は一般に、乳腺密度を推定するためのバイオマーカーとしての電気生理学的特性、好ましくは上皮下インピーダンスの測定、特別には非侵襲性の測定、及びさらに、好ましくは個人が乳癌もしくは異常な組織を発生するリスクを評価する際に使用するための、乳癌もしくは異常な組織についてのまた別のバイオマーカーとしてのそのような推定乳腺密度の使用に関する。
【0003】
本発明は一般に、増殖性、異常もしくは癌性組織の検出、及びより特別には、増殖性、異常もしくは癌性組織の電気生理学的特性における変化の検出、ならびに悪性腫瘍の発生中の組織の機能的、構造的及びトポグラフィ(形状、位置及び機能の相互作用)関係に関連するそれらの電気生理学的特性における変化の検出に関する。これらの測定は、増殖性、異常もしくは癌性組織の電気生理学的特性を解明及び強調するための薬理学的物質及びホルモン剤の非存在下及び存在下で行うことができる。
【背景技術】
【0004】
癌は、米合衆国内の男女両性における死亡の主要原因である。治療法の選択が実行不能になる前に増殖性、異常な前癌性もしくは癌性組織を検出することの難しさは、死亡率が高い理由の1つである。増殖性、異常もしくは癌性組織の存在を検出することは困難であるが、これは一部には、そのような組織が主として身体内の深部に位置し、費用のかかる複雑な侵襲性の、及び/又は不快な方法を必要とするからである。この理由のため、検出方法の使用は、患者が異常な組織に関連する症状を経験するまでは制限されることが多い。
しかし、癌もしくは腫瘍の多数の形態は、検出可能なサイズに達するには(したがって患者において重大な症状もしくは徴候が生じるには)長期間を要する。そこで現在利用可能な診断様式を用いて検出が実施される時点では、効果的な治療を行うには遅すぎることが多い。
【0005】
乳癌は、西洋諸国の女性が罹患する最も一般的な悪性腫瘍である。この一般的な疾患の死亡率の減少は、早期検出に依存する。早期検出にとっての頼みの綱は、マンモグラフィ(乳房X線撮影法)及び臨床乳房検査である。どちらにも不正確という問題が付随する。
例えば、マンモグラフィは高密度の乳房を備える女性では感受性が低く、形態学的に類似する良性又は悪性の乳房病変を識別することができない。
【0006】
臨床乳房検査は、通例は1cm未満の病変が検出不能であり、より大きい病変はび漫性小結節形成、線維嚢胞性変化によって不明瞭化される、又は臨床検出が不可能なほど乳房内の過度に深部に所在する場合があるために限定される可能性がある。マンモグラフィの陽性所見又は曖昧な臨床所見を備える患者は、確定診断を下すためには生検を必要とすることが多い。さらに、80%までの患者では、生検が悪性腫瘍について陰性となることがある。
【0007】
したがって、マンモグラフィ及び臨床乳房検査は、乳癌を診断する際に相当に不良な特異性を有する。このため、臨床乳房検査で検出された多数の陽性のマンモグラフィ所見又は病変は、最終的には擬陽性であることが判明し、患者にとって身体的及び情緒的外傷を生じさせる。生検を受ける必要がある患者を同定するための改良された方法及び技術は、医療費を減少させ、不必要な診断的生検を回避することになる。
【0008】
他の組織タイプ及び身体の他の場所での前癌性組織及び癌を特徴付けるために適切な改良された技術、特別には例えば前立腺、膵臓などの身体の管状構造、及び乳房の状態を究明するために適切な方法及び器具を開発することもまた望ましい。そのような特性付けは、最終的には診断又はリスク評価において有用である。
【0009】
癌性及び前癌性組織を早期検出するために提案された1つの方法には、生物学的組織の電気インピーダンスの測定が含まれる。例えば、米国特許第3,949,736号明細書は、低レベル電流を組織に通過させ、組織を横断する電圧低下の測定値を取得して、全組織インピーダンスの間接的表示を提供する方法を開示している。この方法は、組織のインピーダンスにおける変化が該組織を構成する細胞の異常な状態と関連し、これが腫瘍、癌腫、又は他の異常な生物学的状態を示すことを教示している。しかしこの開示は、異常な細胞と関連するインピーダンスの上昇又は減少については考察しておらず、電気生理学的特性に影響を及ぼす腫瘍細胞又は他の患者特異的因子を詳細に取り扱っていない。
【0010】
上記及び類似のシステムは上皮のDC電気特性を考察していないこともまた留意されたい。最も一般的な悪性腫瘍は、経上皮電位を維持する、上皮(例えば、腸などの中空器官、又は乳腺もしくは前立腺などの管状構造を内張りする細胞層)内で発生する。悪性腫瘍の経過の早期において、上皮は、特に発生中の悪性腫瘍から少し離れた上皮と比較すると、経上皮電位を消失する。経上皮電位測定値とインピーダンスとを組み合わせると、前癌性及び癌性状態を診断する際に精度がより高くなる。
【0011】
上記に参照したシステムのまた別の利点は、電気信号の周波数範囲が規定されないことである。選択された周波数範囲にしたがって、細胞についての所定の情報が得られる。種々の周波数帯は、組織の様々な構造的又は機能的側面と関連する可能性がある。例えば、F.A.Duck,Physical Properties of Tissues,London:Academic Press,2001;K.R.Foster,H.P.Schwan,Dielectric properties of tissues and biological materials:a critical review,Crit.Rev.Biomed.Eng.,1989,17(1):25−104を参照されたい。例えば、約1GHz(ギガヘルツ)などより高い高周波数では、分子構造は、インピーダンスプロファイルの緩和特性に優勢な作用を有する。緩和特性は、印加された電場における変化への組織の反応における遅延を含んでいる。例えば、印加されたAC電流は、組織のインピーダンス特性のために、遅延又は位相シフトする、組織を越える電圧変化を生じさせる。組織の緩和及び分散特性は、印加された信号の周波数にしたがって変動する。
【0012】
例えば、約100Hz(ヘルツ)未満などの低周波数、もしくはいわゆるα分散範囲では、大細胞膜界面でのイオン輸送及び電荷蓄積の変化がインピーダンスプロファイルの緩和特性を支配する。数KHz(キロヘルツ)〜約1MHz(メガヘルツ)の間の周波数範囲内、もしくはいわゆるβ分散範囲内では、細胞構造が上皮インピーダンスプロファイルの緩和特性を支配する。低kHz周波数のこの範囲内では、印加された電流の大部分は傍細胞経路及び密着帯を通過する。β分散範囲内の高周波数では、電流は細胞膜を貫通することができ、このため細胞間及び細胞内の両方を通過するので、電流密度は細胞質及び細胞核の組成及び容積に依存する。特性の変化は、悪性腫瘍形質転換の過程中に上皮のイオン輸送において発生し、α分散範囲内の周波数で測定された上皮のインピーダンス特性に影響を及ぼす。悪性腫瘍過程の後期には、密着帯の開口及び傍細胞経路の抵抗性の減少を伴う構造変化は、細胞質及び細胞核の組成及び容積における変化と一緒に、β分散範囲内で測定されたインピーダンスに影響を及ぼす。
【0013】
上記に参照したシステムに伴うまた別の欠点は、変化したインピーダンスのトポグラフィが試験されないことである。測定電極を様々な間隔をあけて配置することよって、上皮は、様々な深さまで調査することができる。2つの表面電極によって測定される深さは、電極間の間隔のほぼ半分である。このため1mm離れている電極は、約500μ(ミクロン)の深さまで下にある上皮のインピーダンスを測定する。例えば、腸上皮の厚さは、発生中の腫瘍の辺縁では正常な腸における716±112μと比較して1,356±208μへ増加する。D.Kristt,et al.,Patterns of proliferative changes in crypts bordering colonic tumors:zonal histology and cell cycle marker expression,Pathol.Oncol.Res 1999;5(4):297−303を参照されたい。乳管上皮の肥厚もまた非浸潤性乳管癌が発生するにつれて観察される。約2.8mm離して配置された電極間の測定インピーダンスを約1.4mm離して配置された電極のインピーダンスと比較すると、より深部の肥厚した上皮についての情報もまた得ることができる。例えば、L.Emtestam,S.Ollmar,Electrical impedance index in human skin:measurements after occlusion,in 5 anatomical regions and in mild irritant contact dermatitis,Contact Dermatitis 1993;28(2):104−108を参照されたい。
【0014】
上記に参照した方法のまた別の欠点は、これらの方法が悪性腫瘍過程中に変化する特異的導電経路を調査しないことである。例えば、悪性腫瘍過程の早期における結腸の表面上皮においては、カリウム導電性が減少する。塩化カリウムの濃度を様々に変化させながら1mm未満離した電極を使用することによって、500μ未満から表面までの深さの表面上皮におけるカリウム導電性及び透過性を推定することができる。
【0015】
乳癌を診断することを試みて、多数の非侵襲性インピーダンスイメージング技術が開発されてきた。電気インピーダンス断層撮影法(EIT)は、身体表面上に配置された極めて多数の電極を使用するインピーダンスイメージング技術である。各電極で得られたインピーダンス測定値が次にコンピュータによって処理すると、インピーダンスの二次元又は三次元再構築トポグラフィ画像及びその二次元又は三次元での分布が生成される。このアプローチは、様々な組織タイプ間の導電性及び障害に依存し、臨床的に適用することが困難なデータ収集及び画像再構成に依存する。
【0016】
大多数のEITシステムは、2つ以上の通電電極間に一定AC電流を印加し、身体表面上の他の電圧感知電極間の電圧降下を測定する「電流駆動モード」を使用する。また別のアプローチは、2つ以上の通電電極間に一定AC電流を印加し、次に他の電流感知電極で電流を測定する「電圧駆動アプローチ」を使用する方法である。様々なシステムは、使用する電極の構成、電流又は電圧励起モード、励起信号パターン、及びAC周波数範囲が相違する。
【0017】
乳癌を診断するためにEITを使用することに伴うまた別の欠点は、乳房組織の不均質性である。画像再構成は、電流が乳房組織を均質に通過することを前提としているが、これは乳房を含む様々な組織タイプの変動する電気特性を前提にするとありそうもない。さらに、画像再構成は、公知のインピーダンス分布から乳房の表面上での電圧分布の計算(いわゆる順問題)、及び次に表面電極を用いて測定された測定電圧分布から乳房内でのインピーダンス分布を推定すること(逆問題)に依存している。再構成アルゴリズムは、ポアソンの方程式を用いる、そして大多数のEITシステムにおいて使用される低周波数のために、準静的条件に関連する前提条件を用いた有限要素モデリングに基づくことが多い。
【0018】
癌診断のためのその他の電気に基づく方法は、特許及び雑誌文献に開示されている。そのような開示の簡略な考察は、本発明者による同時係属出願である、その開示が参照として本明細書に組み入れられる2007年7月18日に出願された米国特許出願第11/879,805号明細書から見いだすことができる。
【0019】
異常な組織を検出するためのまた別の可能性のある情報源は、上皮における輸送変化の測定値である。上皮細胞は身体の表面を内張りし、外部世界から身体を隔離するための障壁として機能する。上皮細胞は身体を絶縁するために機能するだけではなく、固有の細胞質環境を相当に狭い限度内に維持しながら細胞障壁を横断して塩類、栄養素、及び水を輸送することによって身体環境を修正する。それによって、上皮層が一持続的な破壊に抵抗する1つの機序は、連続増殖及び障壁の置換による機序である。この持続性の細胞増殖は、80%を超える癌が上皮細胞起源である理由を一部には説明することができる。さらに、血液から外部へ、及びその逆のベクトル的に溶質を輸送する特殊な能力を前提にすると、増殖調節の変化を含む疾患過程は、上皮の輸送特性の変化と関連する可能性があると思われる。
【0020】
上皮細胞は、細胞・細胞間接着分子からなる密着帯によって一緒に結合される。これらの接着タンパク質は、細胞間の分子及びイオンの傍細胞輸送を調節し、物質の移動を防止しながら、又は細胞間を物質が通過するのを緩く許容しながら、上皮をピンと張ることのできる動的構造である。密着帯は、内在性膜タンパク質であるクローディン、オクルーディン及びJAM(接合部接着分子)からなる。密着帯は、細胞内及び細胞外刺激に反応して開閉する。
【0021】
多数の物質が密着帯を開閉させる。炎症誘発剤であるTGF−α、サイトカイン類、IGF及びVEGFは密着帯を開放させる。閉鎖帯毒素、酸化窒素供与体、及びホルボールエステル類もまた密着帯を可逆的に開放させる。カルシウム、H2アンタゴニスト類及びレチノイド類を含むその他の物質は、密着帯を閉鎖させる。例えば、プロラクチン及びグルココルチコイド類などの様々なホルモン類もまた密着帯を調節する。製剤に加えられる、キトサン及びコムギ胚芽アグルチニンを含む他の物質は、非特異的密着帯調節因子として機能する。
【0022】
上記に参照した物質及びその他は、発癌現象中に変化させられる密着帯タンパク質に直接的又は間接的に作用する可能性がある。例えば、クローディン−7は、乳癌の発生中に乳管上皮内では消失する。密着帯の反応は、上皮の悪性状態及びそれらの構成タンパク質にしたがって変動する。結果として、密着帯の開閉は上皮の悪性状態によって影響を受ける。
【0023】
電位又はインピーダンスの表面測定値は、乳管の内腔表面と被覆している皮膚との間で電気接触が行われる乳房上皮を横断して実施される測定値と同一ではない。経上皮脱分極は、上皮の重要な領域に影響を及ぼす(「フィールド欠損」)可能性がある発癌現象中の早期事象である。この脱分極には、イオン輸送及びインピーダンス変化を含む上皮内の機能的変化が付随する。経過における早期には、起電性イオン輸送プロセスが減少するために、これらはインピーダンス増加の形態を取る。腫瘍が前癌状態の上皮内で発生し始めるにつれて、例えば密着帯の破断及び核異型などの構造的変化が形質転換細胞において発生する。構造的変化は、腫瘍のインピーダンスの顕著な減少を生じさせる。本発明者が上述したように、上皮における電気的変化のパターン及び勾配についての理解及び解釈は、DC電気測定値及びインピーダンス測定値の組み合わせから癌の診断を支援することができる。
【0024】
乳癌は、乳房組織の終末乳管小葉単位(TDLU)内の上皮細胞を起源とすると考えられる。これらの細胞は増殖し、休眠中には様々な物質の吸収及び分泌において機能的役割を有し、乳汁分泌中には乳汁を産生することができる。乳房上皮における機能的変化は、乳癌診断のための可能性があるアプローチとしては概して看過されてきた。乳房上皮は、乳汁分泌中の乳汁産生に責任を負っている。閉経前乳房上皮は毎月、月経に続く退縮を伴う妊娠の「リハーサル」を経験する。扁平上皮は、上皮が卵胞期から黄体期に進むにつれてより円柱状になる。さらに、乳管分岐及び腺房の数は黄体期の下半期中に最大値に達する。月経の直前に、上皮のアポトーシスが発生し、女性が妊娠しない限りこの過程は反復して再開される。
【0025】
様々なホルモン類は、乳房上皮イオン輸送に影響を及ぼすことが公知である。例えば、プロラクチンは乳房上皮細胞間の密着帯の透過性を減少させ、粘膜から漿膜へのNa+流入を刺激し、Na+:K+:2Cl−共輸送をアップレギュレートし、乳汁中の[K+]を増加させ、[Na+]を減少させる。グルココルチコイド類は、経上皮抵抗性を増加させ、上皮透過性を減少させる密着帯の形成を制御する。妊娠後期における乳管内へのコルチゾールの投与は、[K+]を増加させ、乳管分泌の[Na+]を減少させることが証明されている。プロゲステロンは、妊娠中の密着帯閉鎖を阻害し、非妊娠女性における月経周期中に観察された乳管中電解質液における変動の原因である可能性がある。エストロゲンは、細胞膜及び経上皮電位を増加させることが観察され、乳房上皮細胞内のK+−チャネルの開口を刺激することができる。上述したホルモン類は、毎日、及び月経周期中に変動する。これらの変動は、内腔内のイオン濃度、経上皮電位及びインピーダンス特性を変化させる乳房上皮の機能的特性に影響を及ぼす可能性が高く、これらは上皮細胞のイオン輸送特性ならびに細胞間及び傍細胞導電性経路に依存する。
【0026】
乳房癌バイオマーカーは、近年、国民的注目を集め、乳癌についてのリスク状態にある女性において研究されてきた様々なマーカーには以下が含まれる。
【0027】
生殖細胞系突然変異及び多型性:有害な生殖細胞系突然変異を備えるBRCA1/BRCA2などの高度に浸透性の遺伝子は乳癌発生の強力な予測因子であるが、乳癌を備える女性の5〜10%未満及び一般集団の1%においてしか見いだされない。それらのタンパク質産物が発癌物質及びホルモン代謝及び/又はDNA修復に関係している遺伝子の一塩基変異多型には1.4〜2.0の相対リスクが結び付いているが、結合多型は有意に高い相対リスクと関連する可能性がある。
【0028】
ホルモン類及び代謝産物類:生態学的に利用可能な血清中エストラジオール及びテストステロンは閉経後女性における、及び血清中インスリン様成長因子I(IGF−I)及びその結合タンパク質3(IGFBP−3)は閉経前女性におけるリスクバイオマーカーを表す可能性がある。しかし、高リスクの女性を断定的に同定すると確定されたものはない。
【0029】
マンモグラフィ乳腺密度及び上皮内新生物:マンモグラフィ乳腺密度及び乳房上皮内新生物は、腫瘍抑制因子遺伝子における生殖細胞系突然変異よりはるかに多くの女性集団に該当する。さらに、それらは変調を免れないので、これらのリスクバイオマーカーを使用すると予防インターベンションの観点から乳癌感受性の変化を監視することができる。マンモグラフィ乳腺密度及び乳房上皮内新生物は、閉経前及び閉経後女性の両方において有用である。しかし、Tice et al.(Breast Cancer Res.Treat.94:115−22,2005)及びChen et al.(J.Natl.Cancer Inst.98:1215−26,2006)は、マンモグラフィ密度がGailモデル(M.H.Gail et al,J.Natl.Cancer Inst.81 (24):1879−86,1989)に識別精度の穏当な改善を加えると報告している。密度の評価は、典型的には放射線に基づく方法の使用を必要とし、観察者間変動性を示す傾向がある。乳腺密度の推定における改善は、容積測定法及び三次元MRI(磁気共鳴イメージング)アプローチを用いて提案されてきた。
【0030】
乳房上皮内新生物は癌との密接な生物学的関連を備えるリスクバイオマーカーであり、少なくとも正常な生理学的過程によって影響を受ける可能性が高いが、乳管増殖は月経周期内の位置によって影響を受ける可能性がある(例えば、概論についてはFabian et al,Endocr.Relat Cancer 12:185−213,2005を参照されたい)。これには、異型性、異型乳管及び小葉過形成を伴わない増殖性乳腺疾患及び上皮内癌が含まれる。上皮内新生物の範囲内では、形態学的異常の増加には相対リスクの進行性増加及び乳癌の発生までの期間短縮(潜伏期間の減少)が結び付いている。異型性(中等度から顕症期の過形成、硬化性腺症、乳頭腫など)を伴わない増殖性乳腺疾患は、診断的生検の約25〜30%において見いだされ、乳癌の相対リスクの1.4〜2.0倍の増加が結び付いている。異型性を伴わない増殖性疾患に結び付いたより高い相対リスク(例、2.0対1.4)には、閉経で増殖をダウンレギュレートする失敗、又は陽性家族歴のために、高齢(>50歳)が結び付いている場合がある。
【0031】
診断的生検で同定された乳管又は小葉異型過形成には、他のリスク因子とは無関係に相対リスクの約5倍の増加が結び付いている。異型性を備えるが、陽性家族歴を備えないと同定された女性は約4〜5倍増加したリスクを有するが、陽性家族歴を備える女性では乳癌の相対リスクは約10倍へ倍増する。異型乳管及び小葉過形成は、無差別の診断的外科的及びコア針生検の3〜10%において観察される。最終的に、癌を発生する女性は異型過形成を示さない女性に比較してより高い比率の異型過形成を示す事前良性生検を有する。数例の研究者らは、異型過形成は通常タイプの異型性(HUT)より広がった小葉(乳管についてはA、小葉についてはB)と呼ばれる中間病変からより一般的に発生する可能性があると提案した。異型過形成及びHUTはどちらも広がった小葉から発生する可能性がある。これらの広がった小葉は、終末小葉乳管単位の拡張を伴う増加した細胞充実度及び増殖を特徴とする。
【0032】
上皮内新生物に関連する遺伝子変化:ADH及びDCISは、免疫細胞学検査又はmRNA遺伝子プロファイルによって評価した場合に類似の分子変化及び遺伝子変化を有することが多い。ADH病変の約50%は異型接合性の消失を示すが、これがHUT病変について観察されることは若干少ない。最も頻回な染色体消失は、DCISに観察されるものに類似して、HUT及び異型過形成の両方について16q及び17pで見られる。非浸潤性及び浸潤性小葉癌についての類似の染色体増加及び消失は、比較ゲノムハイブリダイゼーション技術を用いて観察される。腫瘍抑制因子遺伝子であるE−カドヘリンを含有する16qの消失は、細胞接着及び細胞周期調節に関与していた。E−カドヘリンは正常細胞内では発現するが、LCIS及び浸潤性小葉癌中では消失すると報告されている。ADHは、診断的生検の5%以下で報告され、平均リスク女性由来の剖検標本の9%において報告されてきた。しかし、高リスク女性由来の予防的乳腺切除術標本の39%において観察されている。さらに、BRCA1及び/又はBRCA2における突然変異の家族歴に一致する家族歴を備える女性の57%は異型乳管もしくは小葉病変及び/又は上皮内癌を有し、これらの病変は多病巣性又は多中心性であることが多いことが報告されている。
【0033】
変化したホルモン受容体状態:乳癌を備えていない女性における血清中エストラジオールと乳房上皮のER−αとの間では、月経周期内の位置に依存する逆相関関係が観察されている。この関係は、乳癌を備える女性由来の乳房上皮においては観察されていない。上皮増殖は対照群におけるERと逆相関していたが、乳癌症例では正相関していた。これらの観察所見は、乳癌を備える女性の周囲上皮は月経周期の黄体期におけるERアップレギュレーションを伴うエストラジオールへの異常反応を提示する可能性があるが、乳癌を備えない女性由来の乳房上皮ではダウンレギュレートされるという示唆をもたらした。乳房上皮形態へこの異常反応が及ぼす作用は未知である。増加したリスクを備える女性は、月経周期中には正常リスク女性と同様にダウンレギュレートしないと思われる。増殖性アップレギュレーションは、増殖性乳房疾患のために乳房生検を受けた女性における本発明者の観察所見に基づくと、乳癌のリスクが増加した女性において持続する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
そこで、異常な変化を受け易い組織、特別には乳房組織及び乳腺密度を特徴付けるための、ならびに患者、及び特別には実質的に無症候の患者が増殖性、異常又は前癌性乳房組織を有することが見いだされるリスクを評価する目的でそのような情報を使用するための、有効かつ実際的な方法に対する必要が依然としてある。
【0035】
各々が本発明者であるRichard J.Daviesへの以下の特許出願は、これにより参照として本明細書に組み入れられる。2007年7月18日に出願された「Method and System for Detecting Electrophysiological Changes in Pre−Cancerous and Cancerous Tissue」と題する米国特許出願第11/879,805号明細書。2002年5月20日に出願された「Method and System for Detecting Electrophysiological Changes in Pre−Cancerous and Cancerous Tissue」と題する、現在は2005年7月26日に発行された米国特許第6,922,586号明細書である米国特許出願第10/151,233号明細書。2003年11月19日に出願された「Method And System For Detecting Electrophysiological Changes In Pre−Cancerous And Cancerous Breast Tissue And Epithelium」と題する米国特許出願第10/717,074号明細書。及び2003年11月19日に出願された「Electrophysiological Approaches To Assess Resection and Tumor Ablation Margins and Responses To Drug Therapy」と題する米国特許出願第10/716,789号明細書である。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明の幾つかの実施形態を下記の段落で規定する。
【0037】
1.個人の少なくとも1つの乳房のマンモグラフィ密度(MD)を推定するための方法であって、上記乳房は覆っている皮膚表面及び乳頭を含み、上記方法は以下のステップを含む。
(A)第1電極と個人の乳房内の上皮下実質組織との接続を確立するステップと、
(B)少なくとも1つの第2電極を乳房の乳頭から一定距離で上皮下組織に隣接した乳房の皮膚表面と接触させて配置するステップと、
(C)第1及び第2電極間で1つの周波数を有する少なくとも1つの電気信号を確立するステップと、
(D)第1及び第2電極間で少なくとも1つの周波数で上皮下インピーダンス(Zsub)を測定するステップと、
(E)ステップ(A)〜(D)からは独立した方法にしたがって推定又は計算されたマンモグラフィ乳腺密度へZsubを関連付けるアルゴリズムにしたがって乳腺密度の推定値を得るステップとである。
【0038】
2.段落1に記載の方法であって、アルゴリズムは、(i)個人の特性、(ii)その下で電気的測定が行われる条件、又は(iii)(i)及び(ii)の両方と関連している変量を含む方法である。
【0039】
3.段落2に記載の方法であって、変量は、個人の年齢、BMI、体重、経産歴、当該個人が閉形前女性であるかどうか、当該個人が閉経後女性であるかどうか、女性個人が月経周期中である場合、及び皮膚表面電極が配置されている乳頭からの距離からなる群より選択される方法である。
【0040】
4.段落1に記載の方法であって、乳腺密度を推定又は計算するための独立した方法は、X線、超音波及びMRIからなる群より選択される画像に基づく方法である。
【0041】
5.段落4に記載の方法であって、X線画像に基づく上記方法は以下から選択される。Wolfeパターン、6カテゴリー分類、BI−RADS、ACR BI−RADS、面積測定法、画像デジタル化、デジタルX線画像の双方向性閾値、X線画像のテクスチャ測定、コンピュータ援用計算画像テクスチャ測定、コンピュータ断層撮影(CT)イメージング、乳房断層合成法、二重エネルギーX線吸収法及びデジタルマンモグラフィである。
【0042】
6.段落1に記載の方法であって、アルゴリズムは以下からなる群より選択される。
(I)MD=141.788+(−0.716*年齢)+(−1.113*BMI)+(−0.199*Zsub)
(II)MDpmw=127.770+(−1.339*BMI)+(−0.259*Zsub)
(III)MDpstmw=127.178+(−0.874*年齢)+(−0.219*Zsub)
(式中、記号*は、記号に先行する、及び後に続く用語の乗算を示している。BMI=(体重*703)/身長2(インチ2))、又は(体重*4.88/身長2(フィート2))(式中、体重の単位はポンドである)として計算されたボディマス指数;ZsubはΩで表される。年齢は歳で表される。MDpmw=閉形前女性についてのマンモグラフィ密度。MDpstmw=閉経後女性についてのマンモグラフィ密度)
【0043】
7.段落1に記載の方法であって、Zsubは以下の方程式、
ADJZsub=ZsubM/ZsubDFN(式中、下付きM=測定値)及び
ZsubDFN=169.512+(6.668*DFN)(式中、DFN=電極が配置される乳頭からの距離(cm))にしたがって電極が配置される乳頭からの距離について調整(ADJZsub)される方法である。
【0044】
8.段落1に記載の方法であって、Zsubは電極が配置される乳頭からの距離について調整(ADJZsub)され、アルゴリズムは、
(I)MDpmw=131.936+(−1.444*BMI)+(−54.752*ADJZsub)、又は
(II)MDpstmw=120.178+(−0.869*年齢)+(−39.179*ADJZsub)
からなる群より選択される。
(式中、MDpmwは、閉形前女性についてのマンモグラフィ密度であり、MDpstmwは、閉経後女性についてのマンモグラフィ密度であり、ADJZsubは、ZsubM/ZsubDFN(式中、下付きM=測定値)であり、ZsubDFNは、169.512+(6.668*DFN)(式中、DFN=電極が配置される乳頭からの距離(cm))である。
【0045】
9.実質的に無症候の女性患者が乳房における増殖性もしくは前癌性変化を有することが見いだされる、又は前癌性もしくは癌性変化を発生させる引き続いたリスク状態にある可能性があるリスクを評価するための方法であって、上記方法は以下のステップを含む。
(A)第1電極と患者の乳房内の上皮下実質組織との接続を確立するステップと、
(B)少なくとも1つの第2電極を乳房の乳頭から一定距離で該上皮下組織に隣接した乳房の皮膚表面と接触させて配置するステップと、
(C)第1及び第2電極間で1つの周波数を有する少なくとも1つの電気信号を確立するステップと、
(D)第1及び第2電極間で少なくとも1つの周波数で上皮下インピーダンスを測定するステップと、
(E)患者に関連する変量にしたがって患者についての乳房実質組織の上皮下インピーダンスの推定値(Zsube)を、以下の方程式、
Zsube=107.753+(1.083*年齢)+(−1.074*乳腺密度)+(3.196*BMI)
(式中、年齢は歳で測定される。乳腺密度は%で表示され、マンモグラム上の乳腺の外観から推定される。及びBMIは、体重(ポンド)*703/身長2(インチ2)、又は体重(ポンド)*4.88/身長2(フィート2)と規定される)に基づいて得るステップと、
(F)該患者についての乳房実質組織の上皮下インピーダンス(Zsubm)の少なくとも1つの測定値を得るステップと、
(G)Zsubm/Zsubeの比率についての数値を計算するステップとである。ここで、Zsubm/Zsubeの比率が約0.8未満又は約1.2超であることを前提にして、女性患者が乳癌を有する、もしくは乳癌を発生する増加したリスク状態にあると見いだされる統計的に有意に増加したリスクがある。
【0046】
幾つかのコンピュータ実行方法を下記の段落で規定する。
10.実質的に無症候の女性患者が乳房における増殖性もしくは前癌性変化を有することが見いだされる、又は前癌性もしくは癌性変化を発生させる引き続いたリスク状態にある可能性があるリスクを評価するための方法を実施するためのコンピュータ実行可能な命令を有するコンピュータ可読媒体であって、上記方法は以下のステップを含む。
(A)第1電極と該患者の乳房内の上皮下実質組織との接続を確立するステップと、
(B)少なくとも1つの第2電極を乳房の乳頭から一定距離で該上皮下組織に隣接した乳房の皮膚表面と接触させて配置するステップと、
(C)第1及び第2電極間で1つの周波数を有する少なくとも1つの電気信号を確立するステップと、
(D)第1及び第2電極間で少なくとも1つの周波数で上皮下インピーダンスを測定するステップと、
(E)患者に関連する変量のためのインプット値にしたがって患者についての乳房実質組織の上皮下インピーダンスの推定値(Zsube)を、以下の方程式、
Zsube=107.753+(1.083*年齢)+(−1.074*乳腺密度)+(3.196*BMI)に基づいて計算するステップであって、ここで、年齢は歳で測定され、乳腺密度は%で表示され、マンモグラム上の乳腺の外観から推定される。及びBMIは、体重(ポンド)*703/身長2(インチ2)、又は体重(ポンド)*4.88/身長2(フィート2)と規定されている。
(F)患者についての乳房実質組織の上皮下インピーダンス(Zsubm)の少なくとも1つの測定値を得るステップと、
(G)Zsubm/Zsubeの比率について数値を計算するステップである。ここで、Zsubm/Zsubeの比率が約0.8未満又は約1.2超であることを前提にして、女性患者が乳癌を有すると見いだされる統計的に有意に増加したリスクがある。
【0047】
11.個人の少なくとも1つの乳房のマンモグラフィ密度(MD)を推定するための方法を実施するためのコンピュータ実行可能な命令を有するコンピュータ可読媒体であって、乳房は覆っている皮膚表面及び乳頭を含み、該方法は以下のステップを含む。
(A)第1電極と該個人の乳房内の上皮下実質組織との接続を確立するステップと、
(B)少なくとも1つの第2電極を乳房の乳頭から一定距離で該上皮下組織に隣接した乳房の皮膚表面と接触させて配置するステップと、
(C)第1及び第2電極間で1つの周波数を有する少なくとも1つの電気信号を確立するステップと、
(D)第1及び第2電極間で少なくとも1つの周波数で上皮下インピーダンス(Zsub)を測定するステップと、
(E)ステップ(A)〜(D)から独立した方法にしたがって推定又は計算されたマンモグラフィ乳腺密度へZsubを関連付けるアルゴリズムにしたがって乳腺密度の推定値を計算するステップとである。
【0048】
12.段落11に記載の方法であって、上記アルゴリズムは以下からなる群より選択される。
(I)MD=141.788+(−0.716*年齢)+(−1.113*BMI)+(−0.199*Zsub)、
(II)MDpmw=127.770+(−1.339*BMI)+(−0.259*Zsub)及び
(III)MDpstmw=127.178+(−0.874*年齢)+(−0.219*Zsub)
ここで、記号*は、記号に先行する、及び後に続く用語の乗算を示している。BMI=(体重*703)/身長2(インチ2))、又は(体重*4.88/身長2(フィート2))(式中、体重の単位はポンドである)として計算されたボディマス指数、ZsubはΩで表され、年齢は歳で表される。MDpmwは閉形前女性についてのマンモグラフィ密度である。MDpstmwは閉経後女性についてのマンモグラフィ密度である。
【0049】
13.段落11に記載の方法であって、Zsubは以下の方程式にしたがって電極が配置される乳頭からの距離について調整(ADJZsub)される。
ADJZsub=ZsubM/ZsubDFN(式中、下付きM=測定値)。
ZsubDFN=169.512+(6.668*DFN)(式中、DFN=電極が配置される乳頭からの距離(cm))
【0050】
14.段落11に記載の方法であって、Zsubは電極が配置される乳頭からの距離について調整(ADJZsub)され、アルゴリズムは以下からなる群から選択される。
(I)MDpmw=131.936+(−1.444*BMI)+(−54.752*ADJZsub)又は
(II)MDpstmw=120.178+(−0.869*年齢)+(−39.179*ADJZsub)
式中、MDpmwは、閉形前女性についてのマンモグラフィ密度であり、MDpstmwは、閉経後女性についてのマンモグラフィ密度であり、ADJZsubは、ZsubM/ZsubDFN(式中、下付きM=測定値)であり、ZsubDFNは、169.512+(6.668*DFN)(式中、DFN=電極が配置される乳頭からの距離(cm))である。
【0051】
本明細書に組み入れられ、その一部を構成する添付の図面は、本発明の1つの実施形態を例示し、本記載と一緒に本発明の原理を説明するために役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の1つの実施形態に一致する、DC及びACインピーダンス測定器具の略図である。
【図2】本発明に一致するシステム及び方法を使用するために適切な器具の代表的な実施形態の図である。
【図3】本発明に一致するシステム及び方法を使用するために適切な表面測定プローブの代表的な実施形態の図である。
【図4】本発明に一致するシステム及び方法を使用するために適切な乳頭電極の代表的な実施形態を示す図である。
【図5】乳癌の発生中に乳管上皮内で発生する電気生理学的変化を示す図である。
【図6】管状上皮インピーダンススペクトルに基づく上皮下インピーダンス(Zsub)を測定するためのNyquistプロットを示す図である。
【図7】上皮下インピーダンスを決定するための測定システムの1つの実施形態を示す図である。
【図8】上皮下インピーダンスと年齢との相関を示す図である。
【図9】上皮下インピーダンスに月経周期が及ぼす作用を示す図である。
【図10】経産歴による月経周期中の上皮下インピーダンスにおける変化を示す図である。
【図11】上皮下インピーダンスと体重との相関を示す図である。
【図12】上皮下インピーダンスと電極が配置される乳頭からの距離との相関を示す図である。
【図13】X線マンモグラムについてのBI−RADS分類システムを用いた密度推定値と2人の観察者間の密度推定値との相関を示す図である。
【図14】マンモグラフィ密度の推定値と上皮下インピーダンス(Zsub)との相関を示す図である。
【図15】患者の2つの乳房間の乳腺密度の差を示しているX線マンモグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明のためには、以下の用語は指示した意味を有する。
【0054】
本明細書ではZsubと呼ぶ「上皮下インピーダンス」は、乳管の下方(下)又は向こう側にある乳房組織、すなわち乳房の間質又は間葉組織(脂肪、線維腺組織などを含む)のインピーダンスを意味する。例えば約50KHz〜約60KHz以上などの高周波数では、乳房の上皮(乳管及び乳管−胞単位)及び覆っている皮膚は全測定インピーダンスには極めてわずかしか寄与しないので、残りは上皮下インピーダンス(Zsub)である。技術的には、Zsubは、上皮乳房細胞及び覆っている皮膚の誘電特性が崩壊するので、無限周波数又は測定のために使用された周波数より有意に高い周波数で真正値から試験結果が有意に相違することを引き起こさないように十分に高いことを前提として、無限周波数又は試験した最高周波数でのインピーダンスであると規定されている。典型的には、これは本発明の技術を用いて得られた、ときには曲線が試験した最高周波数でx軸と交差する乳管上皮インピーダンススペクトル(DEIS)と呼ばれる、Nyquistプロット上の地点に相当するインピーダンス値である。
【0055】
「経上皮インピーダンス」は、上皮下インピーダンスとは対照的に、上皮を通して、すなわち乳管の内張り又は上皮を通して測定された乳房のインピーダンスを意味する。
【0056】
「マンモグラフィ乳腺密度(MD)」は、(1)本発明の少なくとも1つの態様によって記載した1つ以上のアルゴリズムにしたがって計算された、及びZsubの測定値を含む数値、又は(2)例えば、X線、核磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT又はCAT)スキャン、二重エネルギーX線吸収法(DXA)、断層合成法、超音波などを使用して得られた個人の少なくとも1つの乳房の1枚以上の画像に由来する、又はそれに基づく数値のいずれかを意味する。この数値は、同一乳房の他の組織に比較してより高密度(「高密度乳房組織」)であると思われる乳房組織の分画量又はパーセンテージを表すが、そのような高密度乳房組織は、典型的には1つ以上の上述した方法によって得られた画像における1つ以上の増加した不透過度、又は輝度の領域によって特徴付けられる。マンモグラフィ密度についての数値は、単一乳房の、使用するイメージング法に依存して、画像面積に基づく分画もしくは百分率、又は容積分画もしくは百分率として表示することができる。又は、数値は、個人の両方の乳房の平均値として表示することができる。マンモグラフィ密度及び乳房イメージングは、典型的には女性の乳房に関するが、本発明の方法、試験及び計算は性別によって限定されず、男性及び女性の両方に適用できる。
【0057】
本発明のためには、「高密度乳房組織」は、乳房内に存在する線維腺組織及び脂肪組織はマンモグラム上で相違する放射線(又はMRI又は超音波)外観を有するという事実から理解できる。線維腺組織は、乳房を内張りして集合的には実質として公知である線維結合組織(間質)、及び乳管(腺成分)を内張りする機能的上皮細胞の複合体である。脂肪はマンモグラム上でより少ないX線減衰を有し、明るい、白い、又は放射線不透過性に見える線維腺組織に比較して濃く見える。明るい、白い、又は不透過性の領域は、乳房全体と比較した場合に乳腺密度のパターン又は乳房の相違する領域の相対密度を示す、マンモグラフィ密度がより高い領域であると言われる。
【0058】
X線、磁気又は音響技術を用いてマンモグラフィ乳腺密度を推定するためには幾つかの方法及び分類スキームが存在する。予測的バイオマーカーとして乳腺密度を考察している文献の大多数は、密度の数的測定値よりむしろ密度の主観的評価に焦点を当ててきた。これらの分類は、評価が単一ビューマンモグラムから行われるので、面積ベースである。科学文献は「Wolfe」、及び6カテゴリー分類(SCC)を使用することができるが、臨床実践では、ほとんどの放射線科医は乳房画像報告データシステム(Breast Imaging Reporting and Data System)もしくはBI−RADS分類を用いる乳房組成を報告することに留意されたい。さらにまたBI−RADS報告書は、乳腺密度(%)ではなくむしろ乳房組成又はパターンを記載することにも留意されたい。BI−RADSに記載される組成は、パターンと密度の大まかな組み合わせである。放射線科医は一般に、パターンが純粋に主観的視覚評価であって数値的ではないので、密度よりむしろパターンを評価する。以下ではこれらの分類システムについて詳細に考察する(以下に挙げる参考文献についての言及は、本明細書の最後に含めた参考文献のリストの中に見いだすことができる)。
【0059】
1976年に、Wolfeは乳腺密度に関する周知の最初の研究を公表した(Wolfe 1130−37)。Wolfeは乳房の組成を4つのカテゴリーに分割したが、BI−RADS分類スキームを用いて明示された密度による強力なカテゴリー化は行わなかった。
【0060】
【表1】
【0061】
その後の調査では、Wolfeパターンの増加(N1からDYへ)と乳癌との関連が確証され(Goodwin and Boyd 1097−108;Saftlas and Szklo 146−74)、彼らはNとDYパターンとの間に2〜3倍のリスク増加が見られると結論付けた。線維腺組織量の増加はリスク増大の原因となるので、その後の研究の大多数はパターンよりむしろ密度に焦点を当ててきた。
【0062】
6カテゴリー分類もしくはSCC法は、放射線科医による高密度と考えられる乳房領域のパーセンテージの評価に基づいている(Byng,1994)。このアプローチは、デジタル化フィルム−スクリーンマンモグラムに適用された双方向閾値化技術を利用し、放射線画像上で高密度を表すマンモグラフィ画像の比率を評価する。観察者らはコンピュータスクリーン上で画像を視認し、乳房及び乳房内の高密度(X線不透過性)組織の領域が確認されるグレーレベル閾値を選択する。X線密度の比率は、画像ヒストグラムから計算する。この技術は、30例の女性由来のマンモグラムにおけるByngのオリジナル試験において評価され、放射線科医によるX線密度の主観的6カテゴリー分類と明確に相関付けられた(R>0.91、Spearman係数)。この技術はさらに、典型的にはR>0.9の観察者間クラス内相関係数を備え、極めて信頼性が高いと見なされた。SCCは様々な分類に対して非一様な範囲を提供することに留意されたい;0〜25%の密度の4分位は3分類に分けられる。
【0063】
【表2】
【0064】
ACR BI−RADは、BI−RADスキームのさらに変形である。米国内で業務する放射線科医は、乳房の組成を視覚的に評価して、患者について単一評価を与えることが必要とされる。ACR BI−RADは、乳房のZsubと推定密度(ED)とを比較して相関付けるための、本発明の実施例において使用した方法の1つである。ED(%)は、さらにまた、X線マンモグラムを視覚的に試験し、乳房組織の総量に比較した高密度組織率(%)を計算することによっても決定された。しかし、Zsubは、客観的に、そしてX線、MRI、超音波などに基づいて独立して決定されるので、推定密度値を入手するためにそのような他のイメージング法及び他の評価方法を使用できることに留意されたい。
【0065】
ACR BI−RAD評価は、パターン及び密度(%)の組み合わせであるので、このためある程度任意かつ主観的である。ACRは、BI−RADS(登録商標)Atlas(旧BI−RADS Lexiconの後継)が2003年に公表された時点に、各試験に対して乳腺密度分類を報告する要件を追加した。「Report Organization」(第179頁)の章の下のBI−RADS Breast Imaging Reporting and Data System,2003は、以下の評価カテゴリーを推奨している。
【0066】
【表3】
【0067】
一部の放射線科医は、その患者にとっての全体としてとは対照的に、各個別乳房についてのBI−RADS組成を報告するが、それは、乳腺密度は、通常は約5〜10%以下であるので、天然非対称に起因して一方の乳房は他方の乳房とは相違する可能性があるからである。少数の放射線科医又は臨床研究者らは、スクリーニング画像各々についてのBI−RADS組成を報告している。
【0068】
図13は、マンモグラフィ密度、X線画像に基づいてBI−RADSスコア(より詳細には、ACR BI−RADS)及び密度推定値を推定するために使用する2つの方法を図示している。密度推定値は、1つの乳房の2枚のマンモグラフィ画像から入手した(CC(頭尾画像)及びMLO(内外側斜位像))。高密度の領域は、全乳房の全領域の百分率として表示したより放射線不透過性領域として計算された。次に2つの画像間の平均値は、密度推定値(%)として表示された。数値は、乳腺密度の主観的推定値を表し、そのような密度値は乳癌のリスクと相関することが見いだされている。
【0069】
詳細には、図13は、x軸の上方のBI−RADSスコアとy軸の右側の結合密度推定値(2人の観察者に基づく)との相関を図示し、この相関はグラフ上の四角形によって表されるデータに基づいている。2人の独立盲験観察者(左y軸、及び下方x軸)間の密度推定値(DE)の相関は、グラフ上の円として示したデータによって表される。エラーバーは、それらの各軸に対して測定された密度推定値又はBI−RADSスコアについての平均値の標準誤差(SEM)を示している。BI−RADSスコアはDEを過小評価する傾向を示し、密度の中央範囲内では観察者間でDEにおける有意な重複が見られ、これは密度のより客観的尺度の必要性を示唆している。BI−RADSスコアは2〜4の間でスケーリングされるが、これは完全に脂肪置換された乳房(BI−RADSスコア=1)の例がこのシリーズでは全く同定されなかったためである。
【0070】
乳腺密度を測定するための方法についての詳細な検討は、許容される程度まで参照して本明細書に組み入れられるM.Yaffe,「Mammographic Density.Measurement of mammographic density.」Breast Cancer Research,10.3(2008):209の中で詳細に扱われている。以下ではこれらの方法について要約する。
【0071】
定性的密度評価方法には、上記に規定した6カテゴリー分類(SCC)法が含まれる。これは密度を定性的に推定する最初の試みであった。この方法には、ある程度任意の分類という欠点があり、カテゴリーの大部分は密度率の下端にあり、密度率の分布をより連続的に行うという試みを伴わなかった。定性的方法には、同様に上記で考察した、及び定性的方法で密度を推定するために放射線科医が最も広汎に使用している分類システムである乳房画像報告データシステム密度カテゴリー(BI−RADS)が含まれる。この分類法については上記に記載し、1993 lexiconに差し替えるために2003年に更新された。この分類法は、密度及びパターン情報を結合し、依然として高度に主観的である。この分類法は、特に大量の高密度組織が存在する場合には、高密度乳房組織が小さな乳癌をマスクし、リスクを定量しないという性質のために、他のイメージング様式が必要とされることがあることを臨床医にさらに勧告するために使用される(Carney et al.168−75;Buist et al.1432−40)。
【0072】
定量的方法は、例えば二次元及び三次元又は容積法であると特徴付けることができる。
【0073】
二次元法には、以下が含まれる。
【0074】
面積測定法は、面積計と呼ばれる機器を用いてマンモグラム上で所見されるより高密度の領域周囲を追跡する技術である。面積計は、追跡した面積を統合する。類似の追跡するステップは、視認できる場合は胸筋を排除した乳房の全領域上で実施される。次に高密度面積対全乳房面積の比率を使用して、より高密度の乳房組織(又は領域)の率(%)を推定する。これは方程式に高密度を加えなければならない場合には高度に労働集約的であり、Boydのオリジナルの研究において使用された(Wolfe,Saftlas,and Salane 1087−92)。これもまた、三次元密度情報を入手するために二次元画像の使用に関して明示されてきた懸念を和らげることはない。
【0075】
画像デジタル化技術は、面積測定法に大きく取って代わってきた。面積測定法とは相違して、マンモグラフィ画像は少なくとも12ビットの精度、外部グレア光、及び適正な区間分解能を通常は必要とするスキャナ(ラスター走査)を用いてデジタル化されなければならない。テクスチャ推定のためには、50μmまでの分解能が必要とされることがある(Li et al.863−73;Miller and Astley 277−82;Megalooikonomou et al.651421を参照されたい)。
【0076】
時には閾値化と呼ばれるデジタル化(X線)画像の双方向閾値が必要とするヒト相互作用は面積測定法より少ないが、依然として観察者による主観的決定を必要とする。強度(密度)の閾値は、デジタル画像上で選択され、最適レベルが選択される。第2閾値は、胸筋を排除して、バックグラウンドから乳房の辺縁を描出するために選択される。次に各々より高強度の面積が次に加えられ、全乳房面積に対する比率を使用して乳房の二次元X線上のより高密度の面積率が計算される。この推定を実施するためのソフトウエアは、「Cumulus」プログラムとして公知であり、多数の試験に使用されてきた(Khan et al.1011;Vachon et al.1382−88;Palomares et al.1324−30;Mitchell et al.1866−72;Gram et al.R854−R861;Buist et al.2303−06)。二次元考察及び操作者の決定は、このアプローチの広汎な採用を制限する。閾値化に基づく自動密度測定は開発中であるが、未だ臨床使用には至っていない(Karssemeijer 365−78;Sivaramakrishna et al.250−56;Zhou et al.1056−69;Chang et al.899−905;Glide−Hurst,Duric,and Littrup 4491−98)。
【0077】
マンモグラム上のテクスチャ測定値は、乳癌を発生するリスクを予測するために有用な可能性があり、多数の研究者によって使用されてきた。Caldwellは、Wolfeの実質パターンをデジタルマンモグラムのフラクタル次元と相関付けたが(Caldwell et al.235−47)、他の研究者らはリスクを予測するために多数のコンピュータ計算画像テクスチャ測定値を使用してきた(Magnin et al.780−84;Li et al.549−55;Huo et al.4−12)。しかしこれらの技術はいずれも単純又は標準マンモグラフィ密度測定値より大きな精度を示さない。
【0078】
二次元フィルムもしくは画像は三次元密度情報を生じさせることができないので、三次元情報を使用すると密度率をより正確に推定できると推奨されてきた(Kopans 348−53)。二次元フィルムは所定の乳房における高密度乳房組織の容積についての正確な情報を提供できないという認識、及び乳癌を発生するリスクは標的細胞(上皮又は線維腺組織)の容積と関連するという見込みに伴って、容積測定法による密度評価にますます焦点が当てられてきた。
【0079】
三次元法には、以下が含まれる。
【0080】
乳房CTスキャン:容積測定X線密度は、一連の二次元平面画像として提示された一連の画像のX線減衰係数の三次元再構成であるコンピュータ断層撮影(CT)イメージングから計算することができる。有効原子数及び電子密度によるピクセル画像は連続的に表示することができる、又は脂肪様及び水様組織とそれらの各容積とを識別するために単純バイナリー閾値を確立することができる。全乳房容積及び各組織タイプの分画は、次に容積測定法による乳腺密度の推定値として使用される。乳房専用CTシステムは、現在開発中である(Boone et al.2185;Chen and Ning 755−70)。これらのシステムは、若い女性における乳癌のリスク評価は特に重要であるにもかかわらず、X線曝露に関する懸念のために若い女性には定期的に使用できそうもない。乳房の垂れ下がった位置もまた不正確さを導入する可能性がある。
【0081】
乳房断層合成法:おそらく乳房CTより精度が低いのは、限定された範囲の角投影を用いた、乳房組織のX線減衰係数を入手するために使用された準三次元画像のために、断層合成法である。本技術は、線維腺組織から脂肪を識別できる可能性がある(Niklason et al.399−406;Wu et al.365−80)。
【0082】
二重エネルギーX線吸光光度法(DXA):DXAは、乳腺密度の測定を実施するための骨密度測定法から採用された(Shepherd et al.554−57)。骨及び軟組織の代わりに、乳房を通しての透過が、線維腺組織及び脂肪の有効厚さによって測定される。2つのX線エネルギーは、乳房に対して較正するための公知の減衰係数の乳房ファントム上で使用され、次に高及び低X線エネルギーで乳房を通した測定が実施される。このシステムは乳腺密度の極めて正確な推定値を生じさせるが、ファントムもしくは「段階くさび」に対して構成するステップ及びマンモグラムと結合した別個の方法を必要とすることを含む幾つかの欠点を有している。しかし、1つの利点は、この技術を用いた場合にはX線曝露が低い点にある。
【0083】
デジタルマンモグラフィは、上記で考察した定期的マンモグラフィの代替法であると見なすことができる。理論上では、デジタルマンモグラムはマンモグラフィ密度の推定を向上させるはずであるが、それは改善された信号の品質のため、及び標準マンモグラフィフィルム画像を最初に入手し、次に該フィルム画像をスキャン又はデジタル化することが不要なためである。一般にはデジタルマンモグラフィ装置から、2枚の画像が入手される。組成及び密度情報の大半を含有する「生画像」、及び密度情報の大半を除去する、ディスプレイのための画像を最適化する「加工処理画像」である。密度分析のためには、生画像を使用しなければならない。しかし、これは加工処理ソフトウエアの多くはデジタルマンモグラフィ装置製造業者の専売特許製品であるので困難な場合がある。コンピュータ援用検出技術及びソフトウエアを結合したマンモグラフィ(Hologic/R2、Hologic社)は、デジタルマンモグラムから容積測定乳腺密度を推定するソフトウエアプログラム(Quantra(商標))を使用する。この装置はスクリーニングマンモグラム上の容積測定密度情報を入手するためにFDAにより承認されている(Hartman et al.33−39)。これは、「生画像」のピクセル値の加工処理を逆転し、画像内の各ピクセル値がX線曝露よりむしろ、ピクセル上方の高密度組織の高さに関連している乳房内の高密度組織のマップを作成する。乳腺密度は、次に線維腺組織の容積対前乳房容積として表示される。この新規な技術は、依然として、乳癌のリスク評価のための乳腺密度が特に重要な場合に、年齢40歳未満の女性へのX線曝露を回避しない。
【0084】
乳腺密度を評価するための放射線に基づかないイメージング様式を用いる1つの利点は、乳房が電離放射線の潜在的発癌性の影響に曝露させられないことである。これは、乳癌のリスクを評価する際に使用するための正確な密度決定が最も潜在的利点を有する可能性がある若い女性においては特に重要である。そのような代替様式には以下が含まれる。
【0085】
超音波:超音波を用いると、画像は組織境界での組織組成及び音響反射に起因して音波の速度に依存する。超音波画像は高度にオペレータ依存性であり、このアプローチの精度に影響を及ぼす可能性が高い。しかし予備試験報告書は、このアプローチが放射線に基づくマンモグラフィから入手した密度情報と同等の密度情報を提供できると提案している(Graham et al.162−68;Blend et al.293−98;Glide,Duric,and Littrup 744−53;Duric et al.773−85)。
【0086】
磁気共鳴イメージング(MRI):MRIもまた、電離放射線の使用を回避するが、乳腺密度を測定するためのその使用は造影剤(ガンドリニウム)を投与する費用及び必要によって限定される可能性がある。MRIは、線維腺組織の量を指示する含水量と相関する信号、及び脂肪含量と相関するまた別の信号を提供する(Lee et al.501−06;Klifa et al.1667−70)。
【0087】
乳腺密度測定法を比較する試験は、限られた試験しか実施されていない。65例の女性における定性的、定量的、及び半自動方法から引き出された二次元密度測定値を比較する試験は、他の試験*の観察所見と一致する定性的及び定量的方法に基づいて大きな差を見いだした(Martin et al.656−65;Warner et al.67−72)。再現性は定性的評価において少なく、それらは密度値を過大評価する傾向を示した。面積に基づく及び容積に基づく方法間では限られた比較が実施され、容積法に基づくアプローチの理論的利点にもかかわらず、この方法は閾値に基づく二次元評価(The quantitative analysis of mammographic densities.Byng,J.W.et al.Phys Med Biol (1994) 39:1629−1638.)より信頼性が低かったが、これはおそらく乳房の厚さを推定することに関係する困難さのためであった(McCormack et al.1148−54)。容積測定アプローチは、さらにまた乳癌のリスクのより正確な予測因子を提供することができなかった(Ding et al.1074−81)。
【0088】
本出願に記載した電気インピーダンスアプローチは、調査された文献に記載された(X線に依存するDXAとは別に)唯一の非イメージング技術である。さらに、本明細書に記載した技術は、マンモグラフィ密度の標準臨床評価と高度に相関し、乳房組織の導電特性に基づく密度の容積測定値を提供する乳腺密度の客観的尺度を提供する。
【0089】
癌の顕著な特徴の1つは、細隙結合によって媒介されると考えられる細胞間情報伝達の消失である;この過程は、細隙結合細胞間情報伝達(GJIC)とも呼ばれている。コネキシンは、隣接細胞間のイオン及び低分子の通過を許容し、癌発生中にはダウンレギュレートされるタンパク質チャネルである。さらに、細隙結合機能及び細胞間情報伝達は、電気生理学的及び生体電気インピーダンス法を用いて調査することができる。本発明によると、生体電気インピーダンス分析技術の変法を用いて、乳房実質内の変化した細胞間情報伝達を調査することができる。
【0090】
生物学的インピーダンス分析(BIA)は、身体組成を臨床的に測定するために使用されてきた(例えば、U.G.Kyle et al.,2004,Bioelectrical impedance analysis,Parts I and II,Clin.Nutr.23:1226−43 and 1430−53による概説を参照されたい)。癌患者においては癌悪液質(タンパク質消失)、脱水、無脂肪塊などが推定されてきたが、本発明の方法、詳細には特にセグメント生体電気インピーダンス法は、マンモグラフィ乳腺密度率を測定するため、及び/又は患者が乳房内の増殖性もしくは前癌性変化を有することが見いだされる、もしくは乳癌を発生するリスクを評価するためには使用されてこなかった。セグメント−BIAは、例えば典型的には身体組成を推定するために手と足との間で測定が実施される、ならびに各々の低及び高断面積のために、一部の身体部分(例えば、腕)の寄与を過大評価し、その他の部分(例えば、体幹)の寄与を過小評価する傾向がある全身BIAとは相違して、当該の身体部分例えば乳房の上方もしくは上へのセンサ電極の配置を意味している。
【0091】
非侵襲性電気アプローチは、乳房上皮を特徴付けるために使用することができ、これは次にレジスタ及びキャパシタを直列及び並列で備える電気回路としてモデリングできる。インテロゲーティング電気信号の周波数に依存して、皮膚の高インピーダンスは基礎にある乳管上皮の誘電及び抵抗特性を覆い隠す可能性がある。乳房組織を特徴付けるために電気もしくはインピーダンス技術を使用するその他のアプローチは、乳癌の起源となる乳管上皮を調査しない、又は基礎にある組織を覆い隠す皮膚の高インピーダンスを取り扱う。このため、本発明者は、乳管上皮インピーダンス分光法(DEIS)と呼ばれる、新規な技術を開発し、以前に開示した。DEISは、覆っている皮膚の高インピーダンスの問題を回避し、月経周期中ならびに乳癌に至る可能性がある乳房内の増殖性もしくは前癌性変化の経過において乳管上皮の電気シグニチャを特徴付けるために乳管上皮を非侵襲性で調査するために使用できる。さらに、十分に高い周波数で乳管系を通してDEIS測定を適用することによって、乳管系及び覆っている皮膚の曖昧なインピーダンスを排除できるので、乳房実質及び/又は間質の上皮下インピーダンス特性を測定することができる。
【0092】
本発明のためには、そして当業者であれば理解できるように、間質組織及び実質組織との言及は、同一であり、互換的に使用される。乳房の状況においては、これらの用語は任意の非上皮組織を意味することが意図され、実質細胞、脂肪細胞、線維芽細胞、結合組織などを意味することが意図されている。間質もしくは実質組織は成長因子が富裕であり*、マンモグラム上で所見される乳腺密度と関連付けることができる。パラクリン機構及び細隙結合を通る成長因子は、上皮細胞と情報伝達し、増殖を刺激する乳管を形成する。高周波数電流/電圧を印加すると、乳房の皮膚及び乳管上皮のインピーダンス(容量性リアクタンス)は、残留もしくは観察されたインピーダンスが間質/実質組織のインピーダンスに起因するので、崩壊する。高周波数では、電流は細胞内及び細胞間の両方を通過し、インピーダンスは乳房の全細胞塊、つまり間質/実質細胞塊によって支配される。これとは対照的に、低周波数では、インピーダンスの大半は、覆っている皮膚及び乳管を内張りしている上皮細胞、ならびにそれらの密着帯に起因する。典型的には、電流は高周波数で上皮細胞内及び上皮細胞間の両方を通過するが、上皮は厚さが1つ又は2つだけの細胞層であるので、その寄与(高周波数では破壊する、上皮細胞膜の誘電特性を伴わない)はごくわずかである。大多数の乳房組織塊を含む実質/間質細胞塊は、高周波数で細胞間及び細胞内を通過するので、全インピーダンスは、細胞内及び細胞外液の関数であると見なされるが、細隙結合機能にも関連する可能性がある。細隙結合は細胞間の小さな物質、イオン及び電気の通過を許容する、そのような結合部は発癌過程中に崩壊することが見いだされてきた。
【0093】
本発明のためには、生体組織を通る電流の流れに対する電気抵抗の1つの側面は、生体インピーダンスと呼ばれる。単純レジスタのインピーダンスは、直流(I)を用いて測定することができ、V=IR(オームの法則)によって電圧に関連付けられる。生体組織中では、細胞膜は絶縁体として機能し、電流が低インピーダンス経路だけに沿って通過することを許容する。乳房の症例では、本発明の好ましい方法を使用すると(例えば、図6を参照されたい)、低インピーダンス経路は乳頭センサ電極間を通り、乳管口を越え、より大きな集合管に沿って、乳管上皮細胞(密着帯/傍細胞経路)間を通り、乳房実質及び皮膚を越えて表面電極へ至る。典型的には約40KHz〜約80KHz、好ましくは約50KHz〜約60KHzである本発明の好ましいより高い周波数では、主として調査されるのは、乳管上皮ではなく、乳房実質である。又は、交流電流が、例えば一連の相違する周波数正弦波として乳管系に適用される場合は、より多くの電流がより低周波数で終末乳管まで通過する。これとは逆に、より高周波数では、より多くの電流が細胞を通過し、終末乳管には到達しない。本発明は、乳房内の増殖性もしくは前癌性変化の増加したリスク又は乳癌の増加したリスクと結び付いている乳房実質内の密度及び密度変化を推定するために、より高周波数で交流電流を使用して乳房組織を調査又は「インテロゲート」する。
【0094】
上述したように、本発明のためには例えば約50KHz〜約60KHzである高周波数では、電流が乳管系を通過する場合は、大部分の電流は乳房の実質もしくは間質組織を通過するが、これは皮膚及び乳管上皮の誘電特性が崩壊するからである。高周波数インピーダンスもしくは抵抗測定値は、細胞内及び細胞外液ならびに細胞間情報伝達もしくは細隙結合機能の尺度である。
【0095】
本発明のためには、乳管系を通る電気測定を、すなわち本発明者が以前に記載したような乳頭センサを利用して実施することが好ましいが、これは測定値が皮膚単独を通して実施される場合には乳管網を取り囲んでいる実質を調査することはできないからである。そのような測定値は、次に上皮下インピーダンス(Zsub)もしくは上皮下抵抗(Rsub)の堅実な測定値を入手するために使用される、そのような測定値は、乳頭センサが使用されない場合は、典型的には信頼できない。その開示は参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第2004/0253652号明細書として公表された本発明者の同時係属出願には、ヒト乳房における上皮及び間質組織の選択された領域の状態を決定するための方法及びシステムが開示されている。その中に概して記載した乳頭センサもまた有用である。その方法は、乳房組織の組織及び経上皮電位を測定するために複数の測定電極を使用する。表面電位及びインピーダンスもまた、1つ以上の場所で測定される。組織の領域内には、電気生理学的特性を増強するための作用物質を導入することができる。組織の状態は、変化したイオン輸送及び組織の電気生理学的特性に起因する上皮内の機能的変化の推定値と一緒に、上皮、間質、組織、又は器官の様々な深さでの電位及びインピーダンスプロファイルに基づいて決定される。乳頭カップセンサは、内部、ならびに第1及び第2開口部を有するカップ、該内部内に配置された電極、及び該第1開口部に結合できる吸引源を含み、このとき該第2開口部は組織の1領域の上方に配置され、該第1開口部に吸引が適用され、ならびに試験対象の該組織領域と該電極との間で電気接続させられる、組織の1領域の状態を決定するための装置であると説明される。同時係属出願の発明は、上皮乳房組織の領域の状態及び1つの器官内、例えば乳房内の主要の場所を決定するための方法であって、第1電極と乳房の上皮組織との接続を確立するステップと、第2電極を該乳房の表面と接触させて配置するステップと、該第1及び第2電極間で信号を確立するステップと、該第1及び第2電極間の少なくとも1つの電気特性を測定するステップと、及び該第1及び第2電極間の該信号に基づいて上皮組織の領域の状態又は腫瘍の場所を決定するステップとを含む方法を提供する。例えば、少なくとも2つの相違する周波数で測定したインピーダンスを含む複数の電気特性を測定することができる。上述した本発明の特定要件を説明するために調整されたそのような方法及び器具もまた有用な可能性がある。例えば、上述したように、本発明においてはより高い交流電流電気信号周波数が好ましく、シリンジ、又は自動真空ポンプは、吸引源を提供するために、ならびに改善された電気接触を促進するために導電性媒体(ECM)を送達するために乳頭カップセンサに操作可能に接続することができる(図6)。
【0096】
以下の説明では、「器官」を参照されたい。本発明のためには、「器官」は、1つ以上の特殊機能を実行する身体の比較的に独立もしくは分化した部分又は組織の集合体を意味する。器官は、一般には、それらの1つが通常は該器官の主要機能を支配して決定する幾つかの組織タイプから作り上げられる。特別にはヒト身体の主要器官系は、肺、心臓、血液及び血管を含む循環器系と、唾液腺、食道、胃、肝臓、胆嚢、膵臓、腸、直腸及び肛門を含む消化器系と、視床下部、下垂体前葉及び下垂体後葉を含む下垂体、松果体、甲状腺、副甲状腺、及び副腎を含む内分泌系と、皮膚、毛髪及び爪を含む外皮系と、リンパ節及びリンパ液を輸送するリンパ管を含むリンパ系と、扁桃腺、アデノイド、胸腺及び脾臓を含む免疫系と、様々な筋肉を含む筋系;脳、脊髄、末梢神経、及び神経を含む神経系と、例えば卵巣、卵管、子宮、膣、乳房、乳腺、精巣、輸精管、精嚢、前立腺、及び陰茎などの生殖器官を含む生殖器系と、例えば、咽頭、喉頭、気管、気管支、肺、及び横隔膜などの呼吸のために使用される器官を含む呼吸器系と、骨、軟骨、靱帯、及び腱を含む骨格系と、ならびに腎臓、尿管、膀胱及び尿道を含む泌尿器系とを含んでいる。本発明は、好ましくは、乳房に関連する電気生理学的測定値及び特性に向けられる。
【0097】
本発明は、異常又は癌性上皮組織を特徴付けるために使用される先行方法に関連する問題及び欠点を克服する。要約すると、本発明の様々な実施形態は、インピーダンス、主として上皮下インピーダンス、Zsubを測定するが、所望であれば、周辺及び/又は可変性吸引下で、特別に構築された電極を使用して乳房上皮を越えて電流又は信号を通過させることによって、DC測定を行うこともできる。例えば、乳頭電極は、好ましくは乳管上皮、周辺乳腺組織、皮膚及び表面もしくはその他の電極間の電圧及び/又はインピーダンスを測定するために使用される。乳頭電極は、さらにまた乳管系に沿って電流を通過させるためにも使用できる。また別のタイプの電極を使用すると、電圧及び/又はインピーダンス信号を測定する、及び/又は電流を通過させて乳頭表面の個別乳管開口部で信号を測定することができる。また別のタイプの電極を使用すると、電圧及び/又はインピーダンス信号を測定する、及び/又は電流を通過させて、それに付着させた1つ以上の電極を有することができる修飾乳管プローブもしくは乳管鏡を用いて個別乳管内の信号を測定することができる。これらの全電極は、個別に、相互に組み合わせて、及び/又は表面プローブもしくは電極と組み合わせて使用できる。DC測定値は、上皮の機能状態に関する情報を提供することができ、初期前癌性変化及び隣接悪性腫瘍を検出することができる。詳細には、様々な間隔をあけて配置した電極を使用して特別に規定した範囲内の数種の周波数でのインピーダンス測定値は、深さ及びトポグラフィ情報を提供して、調査対象の組織に関する構造的(高周波数範囲)及び機能的(低周波数範囲)情報を生じさせることができる;上述したように、より高周波数測定値は、特に好ましい。
【0098】
本発明者は以前に、異常な前癌性もしくは癌性細胞の存在を決定するためにイオン置換及び/又は薬理学的及びホルモン処置を用いて、上皮組織内の輸送変化を検出及び測定するステップによって異常もしくは癌性組織を検出して特徴付けることができることを開示した。上皮内の輸送における変化に感受性である経上皮DC電位、インピーダンス又はその他の電気生理学的特性のベースライン時レベルを評価対象の組織内で測定する。輸送を増強する、又は輸送変化を検出することを可能にする作用物質を導入することができる。組織の経上皮DC電位及び/又はインピーダンス(又は輸送における変化を検出することに影響を及ぼす、又は可能にする他の電気生理学的特性)を次に測定する。導入される作用物質及び測定された電気生理学的パラメータに基づいて、組織の状態が決定される。対照的に、本発明の方法は、高周波数での上皮下インピーダンスを測定し、無症候の場合がある患者を含む患者が乳房における増殖性もしくは前癌性変化を発生する(又は有する可能性がある)リスクを評価するために使用できる乳腺密度値を入手するために、本発明者が開発したアルゴリズムにしたがって測定値を使用する。
【0099】
推定マンモグラフィ乳腺密度を計算する乳房組織の上皮下インピーダンス、Zsubを測定するための、及び患者、特別には実質的に無症候の女性である患者が乳房における増殖性もしくは前癌性変化を有することが見いだされるリスクを評価するための改良された方法のための方法及びシステムが提供される。例えば、1つ又は2つの通電電極を組織の選択した領域の第1表面と接触させて配置することができる。又は通電電極は組織又は上皮を横断して、例えば乳頭管、乳管内腔、上皮、乳房実質及び乳房の表面の間に電流を通過させることができる。又は、乳管は中央乳管カテーテル又は乳管鏡によってアクセスすることができる。複数の測定電極は、同様に乳房の第1表面と接触させて配置する。1つ以上の測定電極を使用すると、他の電極もしくは基準点に関連付けられたDC電位を測定することができる。通電電極間では信号が確立される。確立された信号と関連するインピーダンスは、1つ以上の測定電極によって測定される。又は、それによって1つの電極が電流注入及び電圧報告の両方のために使用される測定のためには、三電極系を使用することができる。所望であれば、組織の領域内に作用物質を導入し、測定DC経上皮電位、インピーダンス又は他の電気生理学的特性を含む、該作用物質の作用に反応した該組織の状態をさらに決定することができる。上述した方法及び装置における電極は、試験対象の組織と接触させて、組織に近接させて、組織の上方に、又は組織内に挿入して使用することができる。本方法はこれらの配列の1つを含むものとして実施形態において記載してきたが、1つの配列は他の実施形態と互換的にも使用できることが企図されていることを理解されたい。例えば、本方法は組織と接触している電極を有すると記載されている場合、本方法は、電極を組織内に挿入して、又は近接させて使用することもできる。同様に、本方法は組織に近接している電極を有すると記載されている場合、本方法は、電極を組織と接触させて、又は組織内に挿入して使用することもできることが企図されている。
【0100】
そこで、本発明と一致するシステム及び方法は、乳腺密度を推定するため、及び/又は上述したリスクを評価するために、インピーダンス測定値を、任意で例えば経上皮電位などの他の電気特性と組み合わせて使用する。さらに、本発明と一致するシステム及び方法は、好ましい周波数を使用して、以下で詳述するように、推定マンモグラフィ密度を入手するため、及び/又はリスクを評価するために、使用したアルゴリズムのために必要とされる所望の上皮下インピーダンス値を得る。詳細には乳頭からの距離と関連して、間隔をあけて配置した電極を使用することによって、本発明の方法は、マンモグラフィ密度を計算もしくは推定するため、及び/又は乳癌のリスクを評価するためのインピーダンスデータを提供する。
【0101】
上記で考察したように、乳腺密度を測定するために一般に許容された方法には、例えば、患者を組織損傷及びもしかすると癌のリスクに曝露させるX線などの電離放射線の使用、定期的もしくは周期的ベースで使用することを不可能にするほど高価である例えばMRIなどの方法、ならびにオペレータによる感受性又は例えばX線マンモグラム及び超音波スキャンの解釈などの結果の解釈を一般に必要とする方法を含む、幾つかの欠点に悩まされる。対照的に、本発明の方法は高価ではなく、非侵襲性であり、さらに例えばZsubなどの電気測定値は客観的である。結果として、本発明の方法は、連続的及び頻回に適用できるので、疑わしい状態が見いだされると、患者を監視することができる。さらに、異常な組織のリスク増加を信号できる、したがって例えばMRIもしくは生検を含む特異的局所的結果を得るための、1つ以上の費用がかかる、リスキーもしくは侵襲性の方法の使用を必要とする、乳房組織の状態における変化を同定するための試験方法を使用することができる。
【0102】
経上皮もしくは上皮下の乳房インピーダンスもしくはDC電位を測定するためには、乳頭カップ内の凹んだ場所に置かれたAg/AgCl(又は類似の低オフセット白金/水素、チタン、スズ鉛合金、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、炭素、又は他の導電性金属もしくは導電性ポリマー電極)ペレット間を電気接続させるために構築された乳頭電極によって乳管の内腔を電気的にアクセスすることが必要である。カップにはECM(導電媒質)が充填され、これは乳管系との電気接触を受動的に、又はシリンジもしくはポンプを用いた吸引後に確立する。乳房の表面に配置された少なくとも1つの表面電極、好ましくは以下に記載するような2つ以上の表面電極は電気回路を完成するので、経上皮インピーダンス又は電位の測定は、乳管上皮と皮膚表面との間で実施することができる。経上皮又は上皮下ACインピーダンスを測定する際には、測定電極は、乳頭電極、好ましくは上述した乳頭カップ電極を皮膚表面電極と組み合わせて利用することによって、乳管上皮を越える電圧低下及び位相シフトを測定する。このアプローチの他の構成はより侵襲性であるので、それにより乳管鏡を通して挿入した電極又は皮膚もしくはIV(静脈内)、皮内、もしくは皮下電極に関連付けた乳頭管プローブ電極間の測定を行うことができる。また別の実施形態では、乳管は、皮膚を通して挿入された針電極によってアクセスすることもできる。
【0103】
DC経上皮測定値をインピーダンス測定値と結び付けるためには、低接触インピーダンスを備える表面電極、又はIVによる血流、又は針電極によって表面電極に関連付けた電圧感知電極、又は覆っている上皮もしくは他の上皮を透過する電極を用いて、DC電位のベースライン時測定値を入手することが必要である。電極は、それらのECM中に相違するイオン濃度、薬理学的物質又はホルモン剤を含有することができる。本説明において使用するように、ECMは、測定される表面と電極との間の電気信号の伝播を許容する媒質である。作用物質は、所望であれば組織の状態についての詳細な情報を提供するために選択される、ECMに加えられる、さもなければ調査対象の組織に導入される任意のイオン濃度、薬理学的物質、ホルモン剤又はその他の化合物を含んでいる。また別の実施形態では、作用物質の濃度は、システム内を通る流れを用いて変化させることができる。
【0104】
導電性媒質もしくはECMは、電極表面と皮膚もしくは上皮表面との接触のインピーダンス(交流電流に対する抵抗)を減少させるために外部もしくは内部電極とともに使用する導電性流体、クリームもしくはゲルを含むことができる。DC電極の場合には、ECMが電極表面で最低DCオフセット、又は測定可能なオフセットを生じさせることも望ましい。ECMは、表面電極との電気接触を確立するために皮膚のより深部層から流体及び電解質を汲み上げる親水ゲルを含有することが多い。電流を通過させるために使用する電極は、高導電性を備えるECMを必要とする。通常、これは高電解質含量を備えるECMを使用することによって遂行される。頻回に使用される電解質はKCl(塩化カリウム)であるが、これは自由溶液中のこれら2種のイオンのイオン移動度が類似するためであるので、電極の分極は、様々な移動度のイオンが使用される場合より問題が少ない。ECM調製物中では例えばナトリウムなどの他のイオンを使用することができ、電解質濃度が高いほどより迅速な電極平衡を生じさせる。
【0105】
特定イオンへの上皮の透過性についての推定を行う状況では、上皮からカリウムへの導電性は電気生理学的に測定できるように、ECM中のK(カリウム)の濃度が変動させられる。下にある皮膚からECM中の電解質への導電性を増加させるために、増強剤もしくは透過剤をECMに加えることができる。電気接触を改善する、及び/又は表面皮膚インピーダンスを減少させるための他のアプローチには、表面皮膚抵抗を減少させるために軽石及びアルコールを用いた軽度の表面剥削、例えばKendall Excel電極剥離ライナー(Tyco Health Care社、マサチューセッツ州マンスフィールド)、3M Red Dot Trace Prep(3M Corporation社、ミネソタ州セントポール)、アルコールを用いた皮膚の清浄化、皮膚を剥削するためにディスポーザブル電極を回転させる自動皮膚剥削調製器具(QuickPrep system、Quinton社、ワシントン州ボセル)、超音波皮膚透過技術(SonoPrep、Sontra Medical Corporation社、マサチューセッツ州フランクリン;米国特許第6,887,239号明細書、Elstrom et al.)、又は皮膚表面抵抗を減少させるためにまさに角質層に浸透するシリコン製超微針アレイ電極(例えば、P.Griss et al.,IEEE Trans.on Biomedical Eng.,2002,49 (6),597−604を参照されたい)が含まれる(数種の方法の比較及び考察のためには、さらに、Biomedical Instrumentation & Technology,2006;39:72−77を参照されたい。特許及び雑誌文献の内容は、これにより参照して組み入れられる)。
【0106】
経上皮電気測定は、典型的には正確な測定を実施するためには上皮のいずれかの側への電極のポジショニングを必要とする。これは、上皮が内張りした器官(胃、結腸、前立腺、気管支又は乳房)の内腔内に配置された電極及び試験対象の器官の内腔の外側に配置された基準電極を用いて実施することができる。又は、内腔内及び内腔外電極は、電解質液、ゲル、親水ゲル又は他の導電性媒質を使用して上皮の内側及び外側表面と間接的に接触させることができる。
【0107】
上皮の両側へアクセスせずに上皮の経上皮電気特性を測定する試みは、重大な測定誤差源を導入する可能性がある。例えば、胃、結腸、前立腺又は乳房などの上皮が内張りした器官の上方に皮膚電極を配置すると、下にある上皮の経上皮電気特性を正確には反映しない表面測定値を生じさせる場合がある。
【0108】
例えば表面への電圧の印加は、例えば電荷担体が移動しない、すなわち電流が流れない場合でさえ、静電場を生じさせる。特定距離で分離されている2つの地点間で電圧が増加するにつれて、静電場はより強度になる。相互に対して所定の電圧を有する2つの地点間の分離が増大するにつれて、それらの間の領域内の静電流束密度は減少する。この関係は、小さな寸法の1つの静止帯電物体(理想的には、点光源)が他方に発揮する静電力の大きさ及び方向を示す逆二乗関係であるクーロン(Coulomb)の法則によって説明される。クーロンの法則は、以下のように記載することができる。
「2つの点電荷間の静電力の大きさは各電荷の大きさと正比例し、電荷間の距離の二乗と反比例している。」
【0109】
上皮を越える電圧の場合には、数値は、通常は上皮の内腔外側に比較して内腔側上の負電荷に起因する上皮を越える電荷に依存することになる。電荷源からの測定電極の距離が大きいほど、測定静電力は小さくなる。数学的には、クーロンの法則は、以下のように記載することができる。
F=k・[Q1・Q2]/d2
(式中、Q1は物体1上の電荷量(単位:クーロン)を表し、Q2は物体2上の電荷量(単位:同様にクーロン)を表し、dは2つの物体間の分離距離(単位:m)を表す。さらに、kは、電荷間の媒質に左右されるクーロンの法則定数として公知である比例定数であり、空気に対しては約9.0×109Nm2/C2であり、水又は食塩液に対してより2桁小さい)。
【0110】
これは、単一点電荷qによって作り出される電場Eの大きさが、
【数1】
であるローレンツ力(Lorentz Force)法則から得られる。
【0111】
正電荷qに対しては、Eの方向は点電荷の場所から離れて半径方向に向かう線に沿って指し示すが、負電荷に対してはこの方向は反対である。Eは、V(ボルト)/m又はN(ニュートン)/クーロンの単位で表示される。
【0112】
単純に述べると、これは、点電荷から遠く離れるほど、測定電圧は点光源から測定電極への距離の二乗の逆関数として低下することを意味する。皮膚表面のインピーダンスが減少した場合でさえ、表面電極を用いて測定した電圧は上皮からの距離が増加するにつれて重大に低下する。作用電極が上皮の内腔表面と直接又は間接接触すると、皮膚表面で測定された電圧は上皮及び間質腔の外側(内腔外側)表面間の電圧低下を伴って連続して上皮を越える電圧を表し、電圧は皮膚を越えると低下する。
【0113】
上皮の内腔表面と、測定電極との直接的又は間接的接触が確立され、皮膚表面インピーダンスが低下させられると、内腔電極と皮膚表面との間の測定は、真の経上皮電位をより正確に表す。これは、皮膚を越える電圧低下及び電位が部分的に排除されるためである。間質又は皮膚表面の下方の間質組織及び上皮の内腔外側表面に起因する電圧低下は、一般に無視できると考えられる。これを言い換えると、いったん高スキンインピーダンスが実質的に排除されると、基礎にある組織は特に関心のある測定値である、測定経上皮DC電位及び上皮インピーダンスにほとんど影響を及ぼさない。
【0114】
米国特許第6,887,239号明細書(Elstrom,et al.)は、電気信号の伝送及び受信のために細胞、組織、及び器官を非侵襲性で準備するために皮膚のインピーダンスを減少させるためにソノフォレシスの使用を提案している。用語「ソノフォレシス」は、典型的には超音波的に増強された経皮的薬物送達を意味する。本発明のためには、ソノフォレシスは、1つ以上の化合物(例えば、一般的には、薬物、ホルモン剤、規定イオン組成の溶液など含む任意の薬理学的物質)の経皮的送達だけではなく、より広汎には詳細には、好ましくは個人、特別にはそのような個人の組織もしくは器官の物理的特性を測定するステップと結び付けた、電気生理学的特性の改善された測定を含む有益な作用を入手するための、皮膚表面への超音波エネルギーの適用を意味する。上述したように、皮膚表面インピーダンス自体の減少又は排除さえクーロンの逆二乗法則又はローレンツ力の法則を補正しない。腔内測定電極を用いない、又は試験対象の器官の内腔と間接的に接続した場合は、表面電気測定は、真の経上皮電気生理学的測定値を正確には反映しない。
【0115】
経上皮電気測定値については結腸、胃、子宮頸部及びその他の中空器官において記載してきたが、乳管上皮(及びその他のより「アクセス」しにくい器官)における経上皮電気特性の測定値は、より課題が多い。乳管内腔へのアクセスは乳管プローブ、カテーテル又は乳管鏡を用いて得ることができるが、これらのアプローチは侵襲性であり、それらの有用性を制限する可能性がある。対照的に、本発明は、本明細書に記載した改良Sartorius乳頭吸引カップを使用する非侵襲性アプローチを提供する(さらに、例えば米国特許第3,786,801号明細書、Sartorius、及びその中の図4を参照されたい)。好ましい方法では、乳頭は、乳管口を閉鎖する可能性がある、存在する場合がある角栓を除去するために脱角化剤を用いて準備される。カップには、例えば生理食塩液などの電導性媒質を充填し、乳頭の上方に配置する。カップは、空気及び/又は気泡を除去し、生理食塩液導電性媒質によって乳頭カップ及び乳管上皮内の2つのAg−AgCl電極間の電気接触を確立するために数回(例、約4〜5回)吸引される。2つの電極の一方は乳管内腔と皮膚表面電極との間の電圧を測定するために使用され、他方の乳頭電極は乳管内腔と相違する皮膚表面電極との間に電流を通すために使用される。このアプローチを用いると、乳管上皮及び乳房実質のインピーダンス及び/又はインピーダンススペクトルを(例、周波数の関数として)測定することができる。
【0116】
経上皮測定値ならびに上皮が内張りした中空器官の内腔に沿った直列抵抗の組み合わせは、いずれかのアプローチを単独で用いた場合より器官の経上皮電気特性のより正確及びより有効な測定を許容する。例えば、電気生理学的特性に小さな差が存在する場合は、本明細書に記載した結合技術の適用は、組織の状態を診断するために所望の反応を観察するための唯一の機会を提供することができる。様々な実施形態で、これは以下の要素又は特徴の1つ以上を組み合わせて使用することによって実施できる。
(A)乳頭カップセンサ内の高導電性電解質(乳管上皮との電気接触を確立するために特に重要である)。
(B)乳頭を越えるインピーダンスを減少させるための脱角化剤。
(C)乳管内腔内の高導電性電解質。
(D)乳管上皮との接触を直接的に確立するために乳管カテーテルもしくはプローブ。
(E)覆っている皮膚インピーダンスを減少させるためのソノフォレシス。
(F)皮膚インピーダンスを減少するための皮膚透過剤もしくは「湿潤剤」。
(G)角質層を剥ぎ取るための接着テープ。
(H)皮膚インピーダンスを減少させるための皮膚剥削(例、Kendall Excel 電極剥離ライナー、Tyco Health Care社、マサチューセッツ州マンスフィールド;3M Red Dot Trace Prep、3M Corporation社、ミネソタ州セントポール又はQuikPrep System、Quinton社、マサチューセッツ州ボセル)。
(I)皮膚を水和させて皮膚インピーダンスを減少させるための親水ゲルもしくは高張性ゲル電極。
(J)P.Griss et al.,「Characterization of micromachined spiked biopotential electrodes」IEEE Trans Biomed Eng.2002 Jun;49(6):597−604(極微針又は微小電気機械的システム、MEMSとも呼ばれる)によって記載されたように皮膚インピーダンスを減少させるための微小侵襲性表面電極、及び/又は、
(K)皮膚に貫通させるための針電極。
【0117】
ソノフォレシスが本発明と結合して使用される範囲で、ソノフォレシスは、好ましくは皮膚の電気インピーダンスを減少させ、本発明の診断方法を改良するために、皮膚の特性を修正するために結合媒質による超音波エネルギーの適用に関する。例えば本発明者による上皮下インピーダンスの測定に関連するソノフォレシスの使用についての詳細な開示については、その開示が参照として本明細書に組み入れられる2007年7月18日に出願された、本発明者の同時係属出願である米国特許出願第11/879,805号明細書を参照されたい。特に有用なソノフォレシス装置は、Sontra Medical Corporation社、マサチューセッツ州フランクリンから商標名SonoPrep(登録商標)システムの下で、市販で入手することができ、このときソノフォレシス電圧は55,000Hzで12V ACであり、センサ信号は100Hzで100mV ACである。
【0118】
しかし本発明のためには、ソノフォレシスは、電気測定が好ましくは例えば約5KHz〜約10KHz、好ましくは約40KHz〜約80KHz、より好ましくは約50KHz〜約60KHz超の周波数を含む、より高周波数で行われる場合には典型的には必要とされないが、これは皮膚の誘電特性が高周波数では崩壊するからである。測定が、ゼロに近い周波数を含む低周波数、言い換えるとDC測定値で行われる場合は、皮膚表面からの電気的干渉を減少させるためにソノフォレシス及び/又は例えば微針電極などの上述した他の方法を使用するのが望ましい。
【0119】
上述した1つ以上の技術と結合して皮膚表面電極と関連付けた内腔上皮と直接又は間接接触する作用電極を使用する特に好ましい実施形態は、内腔上皮と直接又は間接接触している電極へ関連付けられて異な表面電極より正確な経上皮測定値を生じさせる。特別には器官を内張りした上皮の経上皮及び上皮下電気特性を利用する本発明の改良された測定方法は、例えば癌、例えばポリープ、乳頭腫、過形成、異形成、異所性結腸陰窩、上皮内新生物、白板症、紅色肥厚症などを含む前癌性状態、ならびに上皮起源の良性新生物、炎症、感染、潰瘍などの上皮疾患状態についてのリスクを測定する、特徴付ける、評価するため、又は診断を支援するために使用することができる。
【0120】
好ましくは、本明細書の開示は、マンモグラフィ乳腺密度率を推定する、及び/又は患者が乳房内の増殖性もしくは前癌性変化を有することが見いだされるリスク、特別には実質的に無症候の女性患者を評価するための改良された方法を提供する。本明細書に記載した方法は、増殖性乳房疾患を示す患者ならびに示さない患者についてのマンモグラフィ密度を推定する、及び/又は乳癌のリスクを評価するために適切である。増殖性疾患は、良性又は悪性のいずれかである可能性がある。しかし、例えば過形成、異型乳管過形成、異型小葉過形成、乳頭腫症、小葉新生物などを含む良性増殖性疾患さえ、長期又は継続フォローアップ後には乳癌の増加したリスクを示す場合がある。一部の患者は、後にフォローアップ生検において例えば嚢胞性疾患(FCD)、線維腺腫などの非増殖性良性状態を有することが見いだされることがある。
【0121】
そこで、本発明の方法を使用すると、増殖性、異常な前癌性又は癌性組織を、そのような組織の発生が初期段階にある間に検出することが可能である。一般に、本発明の方法及びシステムは、本方法が乳房に関して詳細に記載されても、例えば、前立腺、結腸、乳房、食道、及び鼻咽頭癌などであるがそれらに限定されない任意の上皮由来癌、ならびに例えば肺、胃、子宮頸部、子宮内膜、皮膚及び膀胱などの他の上皮悪性腫瘍に適用できる。
【0122】
詳細には、本発明の方法を使用すると、以下に記載するアルゴリズムの基準を満たす上皮下インピーダンスの測定値への変化は、それらが極めて多数の細胞に影響を及ぼす初期突然変異の結果であることを示唆する可能性がある(すなわち、フィールド欠損)。そこで、それらはどの患者をより頻回に監視すべきか、又は反対に、生検を必要とする上皮の特定領域を同定すべきかを決定するためのバイオマーカーとして活用できる。後者は特に、例えばX線に基づくマンモグラムの使用を行うなどのマンモグラフィによって、又は侵襲性生検の手段を使用しない臨床的乳房検査によって検出することがより困難である異型乳管過形成又は非浸潤性乳管癌(DCIS)の症例においては有用である。
【0123】
本発明の方法は、乳管を内張りしている細胞及び乳管胞単位、すなわち乳房上皮、ならびに乳房を覆っている皮膚の誘電特性が崩壊し、上皮下インピーダンスもしくはZsubの測定値に有意な影響を及ぼさないほど十分に高い周波数で行われる場合は、特に有用である。測定が約5KHz未満の周波数で行われるまでは、本発明の方法を用いて観察又は測定される容量性リアクタンスにはほんのわずかな上昇しか生じない。好ましくは、インピーダンスは、約5KHz〜約100KHz、例えば、約8,000Hz〜約90,000Hz、又は約10,000Hz〜約80,000Hz、もしくは約70,000Hz、もしくは約60,000Hzを含む1つ以上の周波数で測定される。Zsubを測定して、本発明の1つ以上のアルゴリズムにしたがって乳腺密度の対応する数値を得るためには、Zsubの適切な測定は、例えば、10KHz、約20KHz、約30KHz、約40KHz、約50KHz、約60KHz、約70KHz、約80KHz、約90KHz、及び約100KHzからなる群より選択される少なくとも1つの周波数での測定値を含む約10KHz〜約100KHzの周波数で行うことができる。これに関連して特に有用な観察は、例えば、約50KHz又は約60KHzで行うことができる。又は、有用な情報は、約10KHz〜約100KHz、例えば約20KHz〜約90KHz、又は約30KHz〜約80KHz、例えば約40KHz〜約60KHzの範囲内の周波数で入手できる。さらに、そのような高い周波数で測定値を入手する場合は、ソノフォレシスの使用は任意であり、電気生理学的特性を入手するための準備行為としてのソノフォレシスを使用しても、使用しなくても測定を行うことができる。
【0124】
本発明とともに有用な器具については、多数の変形が可能である。さらに、器具設計内では、変化させることのできる多数の態様がある。以下では、これらの変形やその他の変形について記載する。
【0125】
1つのプローブ又はその他の器具は、凹んだくぼみ内に複数の小型電極を含んでいる。例えばフィルタリングなどの機能を処理する、ディスポーザブルの市販で入手できるシリコンチップは、表面記録及び初期電子的処理を実施できる。各ECM液もしくは作用物質は、チップ上の個別電極及びリザーバに特定であることができる。そこで、1回の測定のためには、特定電極セットが使用される。また別の測定のためには、例えば相違するイオン濃度で、相違する電極セットが使用される。1回の測定のための電極は別の測定と同一地点には配置されないのでこれはある程度の変動を生じさせるが、このシステムは概して信頼できる結果を提供する。
【0126】
また別のアプローチは、より小数の電極を使用し、さらに溶液及び作用物質を変化させるためにフロースルーもしくはマイクロ流体システムを使用することである。詳細には、溶液又は作用物質は溶液又は少量の電流を通して作用物質をチャネルに通して移動させ、プローブの表面にある孔を通して流出させることによって変化させられる。この実施形態では、電極は皮膚又は乳管上皮の同一領域と接触したままであるので、測定における領域毎の変動が排除される。このアプローチは、相違する溶液間を平衡させるための時間を必要とする。
【0127】
異常な前癌性又は癌性乳房組織の存在を検出する際には、皮膚での表面測定値を得るためにハンドヘルド型プローブが用意されている。このプローブは、電流を通すため、ならびに測定するために電極を含むことができる。インピーダンス測定値は、乳頭カップ電極とハンドヘルド型プローブとの間で得ることができる、又はハンドヘルド型プローブ上の電極間で得ることもできる。又は、乳管鏡プローブ又は非光学式乳管プローブに1つ以上の小型電極とインターフェースすることができる。初期DC測定値を得た後、皮膚インピーダンスを減少させるために湿潤剤/透過剤を導入することができる、又は上述した方法の1つを使用することができる。作用物質は、流体を電極表面へ移動させるために、上述したように、マイクロ流体アプローチを用いて導入されることができる。又は、まさに角質層に浸透する表面電極を使用するとインピーダンスを減少させることができる。
【0128】
器具の構成にかかわらず、図1は、本発明に一致する、癌診断に使用されるDC及びACインピーダンス測定システムの略図である。システム100は複数の電極を含むプローブ器具105とインターフェースしているが、このときプローブ器具105の実施は試験対象の器官及び状態に依存する。プローブ器具105は、針、体腔、乳管鏡、非光学式乳管もしくは表面プローブに取り付けられた電極を組み込むことができる。参照プローブ110は、試験状況及び調査対象の乳房の領域に依存して、静脈内プローブ、皮膚表面プローブ、乳頭カップもしくは乳管上皮表面参照プローブの形態を取ることができる。
【0129】
浮遊キャパシタンスを回避するために、電極はシールド線によって、デジタル信号プロセッサ(DSP)130からの指令にしたがって特定プローブ105を選択できる選択スイッチ120に接続することができる。選択スイッチ120はさらにまた、DC測定中に低域フィルタを使用する、及び/又はACインピーダンス測定中に中もしくは高域フィルタを使用するように、プローブ105にインターフェースされる適切なフィルタを選択する。選択スイッチ120は、複数の増幅器から構成されることができる増幅器アレイ140へ電流を印加する、又は複数の電極が使用される場合は同一増幅器を通して相違する電極からの信号を切り換える。好ましい実施形態では、雑音に埋もれた微小信号を検出するために、デジタル又はアナログ式ロックイン増幅器が使用される。これは参照周波数上の振幅変調としての当該の信号の測定を可能にする。スイッチ素子は、測定の状況に依存して、当該の信号を平均化する、サンプリングする、又は選択することができる。この信号の処理は、CPUからの指令にしたがってDSPによって制御される。信号は次にマルチプレクサ150へ通過し、直列化され、その後にADCによってアナログ信号からデジタル信号へ変換される。プログラム可能利得増幅器160は、入力信号をADC170の範囲へ適応させる。ADC170の出力は、DSP130へ移動する。DSP130は情報を処理し、乳管上皮もしくは皮膚表面上ならびに疑わしい領域の上方でのDC電位及びそのパターンを計算する。さらに、様々な深さでのインピーダンスならびに様々なECMのイオン濃度、薬物、ホルモン剤、又はその他の作用物質に対するDC電位及びインピーダンスの反応を使用して癌の確率が推定される。次に、結果はCPU180へ送られ、試験結果185が得られる。
【0130】
又は、信号の解釈は、CPU180において部分的又は完全に行うことができる。任意波形発生器190もしくは正弦波周波数発生器は、プローブ電極及び試験対象の組織へ複合波形信号を送信するために使用される。正弦波形が好ましいが、本発明では、例えば方形波を含む他の波形を使用できる。測定された信号反応(複合波形刺激の場合)は、それから様々な試験条件下でインピーダンスプロファイルが測定されるDSP130又はCPU180においてFFT(高速フーリエ変換)を用いて解析することができる。インピーダンス測定値についての本システムの内部較正のためには、内部較正標準195が使用される。DC較正は、外部標準電解質溶液に対して利用されるプローブを較正して、外部的に実施できる。
【0131】
図2は、乳房の表面に適用できる、本発明に一致するハンドヘルド型プローブ400を含んでいる。このプローブは、ハンドル410を含むことができる。プローブ400は、例えば、ワイヤレス技術を用いて、測定器具420へ直接的又は間接的のいずれかで取り付けることができる。プローブ400は、静脈内電極、皮膚表面電極、他の接地、乳頭電極、又は乳管内もしくは乳頭開口部で乳管プローブ電極に関連付けることができる。図2に例示した1つの実施形態では、拡大図440により詳細に図示した、乳頭電極又は乳管プローブ430に関連付けられている。この構成の1つの利点は、DC電位及びインピーダンスを乳頭電極430とプローブ400との間で測定できる点である。そこで測定は、乳管上皮、非乳管乳房実質、及び皮膚のDC電位及び/又はインピーダンスの組み合わせである。
【0132】
拡大図440を参照すると、乳管プローブは、乳頭の表面へ開いている幾つかの乳管開口部の1つの中に挿入されている。乳管プローブ443は、大きな集合乳管445へ流れる乳管洞444内に示されている。
【0133】
乳頭電極を使用するまた別の利点は、乳管系に潅流させるための溶液をプローブに通して交換することができ、薬理学的物質及び/又はホルモン剤の導入を許容する点にある。拡大した乳管プローブ443に図示したように、443’流体は、サイドポートを通して交換することができる。流体は乳管内に注入し、乳頭プローブの(乳頭から離れた)近位端で吸引することができる。特定イオンの乳管上皮への変化した透過性を測定するために様々な電解質溶液を注入することができる、又は異常領域を同定するために上皮を様々な薬物で検査することができる。上皮内の前癌性もしくは悪性変化に関連する異常な電気反応を測定するためには、エストラジオール、又はその他のホルモン剤を乳管内に注入することができる。
【0134】
例えば、乳頭に吸引を適用する改良Sartoriusカップなどの様々な構成も使用できることも理解されたい。この構成を用いると、乳頭の上方に配置されたカップに穏やかな吸引が適用される。大きな乳管及び乳管洞内の少量の流体は、Sartoriusカップ内の電解質液と接触し、乳管を満たしている流体との電気接触が確立される。次に、カップと表面乳房プローブとの間でDC又はAC測定を行うことができる。
【0135】
図3は、図2のプローブ400をより詳細に図示している。表面450の皮膚接点は、乳房と接触させて配置される。表面電極451は、DC又はAC電圧を測定する。インピーダンス測定のためには、通電電極452が使用される。プローブ400はさらにまた、1つ以上のECMを含有する1つ以上の凹んだくぼみを含有することができる。複数のセンサ電極アレイは、通電電極と一緒に表面プローブに取り付けることができる。個別電極は凹んでいてよく、相違する組成を備えるECMを使用すると、試験対象のより深部の組織もしくは上皮を薬理学的、電気生理学的、又はホルモン的に調査することができる。電極の間隔は、他の器官系より乳房構成のためにはより大きくあることができるので、より深部の組織を電気的に調査し、より深部の組織のインピーダンスを評価することができる。このプローブは、乳房の表面と接触させて受動的に配置されることもでき、又は当該の領域の上方に空気圧吸引によって適所に保持されることもできる。溶液を交換するため、又は流体交換及び吸引のためにポートが配置されてよい(図示していない)。電極間のクロストークを防止するため、そして電流を接触面から乳房へ推進するためには、ガードリング(図示していない)を組み入れることができる。この構成では、各々が半径方向に90°離して配置された4つの通電電極[453]が存在する。これは、電流が流れ、直交フィールド内で電圧反応を測定することを可能にする。電極は、上記の図1に記載した器具を用いて、電線、又はワイヤレス技術によってインターフェースされる。
【0136】
この技術のまた別の実施形態は、乳房の様々な深度を調査するために間隔をあけて配置した電極の使用、及び皮膚表面で測定された良性及び悪性乳房組織からのインピーダンス及び経上皮電位を示差的に変化させるためのホルモン剤、薬物、及びその他の作用物質の使用を含むことができる。これは、診断精度のさらなる改善を可能にする。
【0137】
図4は、参照、通電、電圧測定又は組み合わせ電極[502]として使用できる乳頭カップ電極[500]を図示している。この構成では、吸引及び流体交換は、柔軟性ホース[515]によって吸引器具、アスピレータもしくはシリンジ(図示していない)へ接続されたサイドポート[510]を通して電極ハウジング[501]へ適用される。カップの基部にあるフランジ[503]は、乳輪[520]に適用される。空気圧吸引は、乳房[520]と乳頭電極[501]の間の密閉を得られるように通路[512]によってハウジングに連絡されたサイドポートを通して適用される。カップを充填し、下にある乳管系と電気接触させるために、電解質溶液が使用される。サイドポートを通して交互吸引を適用し、カップ内へ流体又は薬物を注入することによって、流体を交換できる、又は薬理学的物質及びホルモン剤を導入できる。空気圧吸引は、自然に、又は乳頭表面の乳管開口部での角栓を除去するためにアルコールもしくは脱角化剤を用いた準備後に乳管開口部[505]を開放させる。乳頭カップ電極[502]は、DC電位、ACインピーダンス又は組み合わせ測定値を入手するために、図1〜3に図示した器具を用いて、電気接続[530]によって、又はワイヤレス接続(図示していない)によってインターフェースすることができる。
【0138】
図5は、乳癌の発生中に発生する組織学的及び電気生理学的変化を示している。正常乳管上皮から、過形成、異型過形成、非浸潤性乳管癌(DCIS)を経由して浸潤性乳癌までの連続は、10〜15年を要すると考えられている。一部の段階は飛び越される場合があるが、通常は乳癌は無秩序の乳管増殖を背景にして発生する。正常乳管は経上皮電位(負荷電した乳管の内側)及びインピーダンスを維持するが、これらは癌の発生中には脱分極する、及び上昇する。浸潤性乳癌が発生すると、インピーダンスは密着帯完全性の消失に伴って減少し、腫瘍を通る導電性は増強される。無秩序の乳管は、変化した電気生理学的特性及びイオン輸送特性を有する。これらの特性は、図5の下方に示されている。これらの電気生理学的及び輸送の変化は、乳房における乳癌、増殖性及び前癌性変化を診断するために、例えば電位もしくはインピーダンスの経上皮測定値、又は経上皮表面電位測定値、ACインピーダンス測定値及び薬理学的処置の組み合わせを使用して活用される。例えば約5KHz〜約100KHzなどのより高周波数でDEISを使用して、乳房実質の上皮下インピーダンスが、マンモグラフィ密度(非上皮乳房実質の特性)、及び乳癌のリスクを推定するために測定される。
【0139】
図6は、乳管上皮インピーダンススペクトル、言い換えると乳癌についてのリスク因子を備えていない37歳の女性から得られた高周波数でのNyquistプロットに基づいた、上皮下インピーダンス、Zsubの決定を示している。上記に規定したように、Zsubは、曲線が試験した最高周波数でx軸に近似する、交わる、又は交差するNyquistプロット上の地点に対応するインピーダンス値である。例えば、図6では、Zsubは、60KHzの周波数では97Ωである。さらに上記で考察したように、この周波数では、細胞膜及び乳房を覆っている表面皮膚の誘電特性が崩壊するので、Zsubは乳房実質のインピーダンスによって支配されると考えられる。図6において得られた曲線は、数種の周波数での測定値から得られたが、本発明は、Zsubのために有用な数値を得るために実質的数の周波数(例えば、約5種より多い周波数)での試験を必要としない。好ましくは、及び実際的理由から、Zsubのための数値を得るためには約2種の十分に高い周波数でインピーダンス測定値を得ることが適切である。
【0140】
本発明の方法は以下のように適用されてきた。IRB及び患者の同意を得て、乳管上皮との電気接触は、乳房生検が計画された232例の女性において、図7の略図で示したような乳頭カップセンサを用いて非侵襲的に確立された。試験は、以下のように実施された。
1.乳頭カップ/センサを乳頭の上方に配置し、乳頭カップに生理食塩液を充填する。
2.食塩液を吸引して約100mmHgの負圧にする(5mLの食塩液を引き出す)。
3.3mLの食塩液を再び添加する(すなわち、負圧は約20mmHgへ減少する)。
4.気泡を除去し、乳頭をわずかに引き上げるために、ステップ2及び3を2、3回繰り返す。
5.乳頭カップセンサを周波数応答アナライザのリード線に接続する。
6.皮膚電極(親水ゲル)を乳頭からおよそ4cm(内側)及び7cm(外側)の乳頭の各四分円内に配置する。
7.追加の通電電極を最外通電電極(乳頭から7cmの電極)の外側に配置する。これらの電極は乳房のサイズに依存して乳頭から約8〜10cm離れた乳房の辺縁上にある。
【0141】
典型的には、乳頭センサと乳房の4つの四分円各々内に配置した皮膚表面電極との間で2組の測定が実施された。Zsubは、周波数応答アナライザ、及び正弦波相関技術を用いて60KHzで測定した。Zsubは、4つの乳房四分円の各々について平均化された。データは、t検定、マン ホイットニー検定、ANOVA、ピアソン モーメント相関法、及びロジスティック回帰を適切に用いて解析された。
【0142】
上記の検定で得られたデータに基づくと、以下の因子がZsubと相関することが見いだされている:
正相関
1.年齢
2.体重又はボディマス指数(BMI)
3.電極が配置される乳頭からの距離
4.年齢、BMI又はリスクに影響を及ぼすその他の因子に関連する可能性がある、その後の生検での増殖性病変又は癌の存在
5.乳癌の強度の家族歴又は遺伝的リスク
負相関
1.月経周期日(閉経後女性については数値0)
2.マンモグラフィ乳腺密度
初期試験結果及び解析は、小さなサンプルサイズに基づいていた。この後に、増加したサンプルサイズを生じさせる追加の被験者に基づく詳細な解析が実施された。どちらも下記に報告する。それらは相互に一致しているが、後者のより大きな集団はより信頼性が高く有用なアルゴリズムを生成した。
【0143】
最初に、Zsubは良性(BN、n=114)、(相関係数(CC):0.61、p<0.0001)、ならびに悪性疾患及び良性増殖性疾患(CC:0.46、p=0.0001)の両方を含む増殖性疾患(PROL、n=118)である患者の年齢と相関することが見いだされた。同様に、Zsubは、患者の体重及び電極が配置された乳頭からの距離の両方と有意に相関し、BNについては月経周期内の位置と逆相関していたが、PROL患者については逆相関していなかった(図8、9、11及び12を参照されたい)。Zsubは、BN患者(n=97)では170±7Ω、良性増殖性患者(PROL−BN)(n=32)では229±10Ω及びPROL癌(CA)患者(n=61)では258±10Ωであった(p<0.001)。BMI及び乳房サイズは年齢に伴って増大し、BN及びPROL患者の両方におけるZsubと有意に相関していた(データは示していない)。限定された初期試験データを用いた場合でさえ、マンモグラフィ乳腺密度はZsubと反比例することが見いだされた(−0.622CC(相関係数)、p<0.000001)。Zsubは、年齢、BMI及びマンモグラフィ乳腺密度(MD)の組み合わせと相関している(それらによって予測できる)。同様に、MDは、年齢、BMI及びZsubの線形組み合わせによって予測することができ、上述したようにこれらの因子と逆相関している。
【0144】
データの数値を個別に参照する。
図8:良性(初期はn=114、現在は=142)及び増殖性乳房(初期はn=118、現在は=148)における年齢とZsubとの相関。円は、その後の生検が良性変化を示す患者を示し、正方形は増殖性変化又は癌を示す。Zsubは、増殖性乳房に比して良性乳房における方が低かった;
図9:良性(n=78)及び増殖性乳房(n=60)における月経周期日とZsubとの相関。Zsubは、良性乳房については月経周期内の位置と相関するが、増殖性乳房については相関しない。
図10:経産歴による、すなわち経産及び未産女性による月経周期中の経皮下インピーダンスの変化の図示。明らかなように、Zsubは、経産女性における方が高く、Zsubは、卵胞期と黄体期(第3週及び第4週)の間での未産女性においては有意に減少し、同一期間では経産女性におけるより有意に高かった。本明細書で考察したように、マンモグラフィ密度は年齢とともに減少することが見いだされている。マンモグラフィ密度における低下は、「退縮」と呼ばれる。退縮は、女性の生涯を通して発生する。20代前半の女性は、70%を超えるマンモグラフィ密度及び約100Ω〜約130Ωの対応するZsub値を有することが多い。2つの事象が重大な退縮を生じさせる。(1)第1満期妊娠。及び(2)経閉。その後の妊娠はさらなる退縮を生じさせることが多いが、通常は第1満期妊娠ほど大きくはない。加齢、肥満、閉経又は満期妊娠に伴う退縮発生の不全は、乳癌にとっての増加したリスクの指標である。これは、障害の任意の段階にある女性において、本明細書の本発明者が開発した方法である乳管上皮インピーダンス分光光度法(DEIS)、及び詳細には本発明の方法を用いて測定できるが、それは放射線リスクのために一般には40歳を超える女性についてのみ使用される例えばX線マンモグラフィと比較して、本方法の非浸潤性の性質のためである。本発明の方法を使用すると、20歳代の女性はベースライン時Zsub試験を受けることができ、その後に年齢及びBMI関連マンモグラフィ密度変化を監視するために年1回又は年2回の検査によって追跡調査することができる。年齢、増加したBMI、乳房サイズの変化ならびに特別には満期妊娠、及び閉経に伴う退縮不全は、例えばX線マンモグラフィ、乳房MRI、核イメージング、断層合成法、生検、遺伝子検査などを用いる乳房検査などのその後の詳細な評価を用いて乳癌にとっての増加したリスクを備える女性を同定することができる。
図11及び12:患者の体重及び電極が配置される乳頭からの距離と良性(明色の丸)又は増殖性病変(暗色の丸)におけるZsubとの相関。
図15:これは、患者の2つの乳房間の乳腺密度の差を示しているX線マンモグラムである。Zsubの測定は乳房各々において個別に行うことができるので、非対称性の乳腺密度及びそのような非対称性が乳癌の指標である付随リスクを同定することができる。個人の乳房間の乳腺密度の差は、典型的には約5〜約10%であることが観察されている。乳房間のZsub測定値もまた通常は高度に相関し、典型的には約5〜約10%以内である。Zsub測定は、本明細書に記載の方法にしたがって、より高い乳腺密度及び乳癌にとっての増加したリスクを示すより低いZsubを備える乳房間で発生する非対称性を推定するために行うことができる。このため、乳房間のZsub測定値を使用すると、乳癌にとっての増加したリスクを監視することができる。
【0145】
図15に示したX線マンモグラムは、39歳の女性の右乳房における増加した乳腺密度を示している。マンモグラフィ乳腺密度は、左乳房における50%と比較して右乳房における70%(密度率)であるとX線フィルムから視覚的に推定された。電極は、皮膚表面上で乳頭から5cmの場所に配置された。平均Zsub(4つの乳房四分円の平均値)は、左乳房における151Ωの平均Zsubと比較して右乳房では110Ωであったが、これは乳房間の重大な乳房密度及びZsubの非対称性を示している。X線マンモグラムは質量を示さないが(放射線不透過性マーカー、もしくは白色ドットは、患者が「肥厚」であると説明した右乳房の1つの領域上方に配置されたことに留意されたい)、造影剤を用いたその後の乳房MRIは右乳房において発生中の多病巣性乳癌を同定し、その後の生検において確証された。このため、X線マンモグラム及びZsub測定値の両方が、右乳房において発生している非対称性乳腺密度状態を同定した。
【0146】
女性患者が乳房における増殖性もしくは前癌性変化を有すると見いだされるリスクは、本発明の方法に基づいて推定することができる。詳細には、患者の一方又は両方の乳房のZsub、Zsub(測定値)もしくはZsubmが測定される。さらに、Zsubについての数値、Zsub(推定値)もしくはZsubeは、データの前向き段階的回帰から得られる以下のアルゴリズムを使用して推定できる。
Zsube=107.753+(1.083*年齢)+(−1.074*乳腺密度)+(3.196*BMI)
(式中、年齢は歳で測定される;乳腺密度は%で表示され、マンモグラム上の乳腺の外観から推定される。及びBMIは、
体重(ポンド)*703)/身長2(インチ2)、又は
体重(ポンド)*4.88/身長2(フィート2)と規定される)
【0147】
Zsubm及びZsubeの数値から、Zsubm/Zsubeの比率(「リスク比と呼ばれる)が計算される。リスク比は、増殖性乳房疾患又は癌の明白な症状を示していない患者が、例えば生検などのその後の直接検査上でそのような状態を有することが見いだされるリスクを意味する。フォローアップ生検から得られた情報を含むデータの解析に基づいて、リスク比は、以下のように指標として使用できると結論付けられた。
【0148】
Zsubm/Zsubeの比率は、Zsubeが、例えば加齢、より高いBMI及び/又はこれら2つの相互作用に影響を及ぼす公知の因子から正確に予測される場合は、約1.0であると期待される。リスク比が約1.2である場合は、測定Zsub(Zsubm)は年齢及びBMI(及び追加して、本明細書のいずれかで説明したように、この変量がアルゴリズムに含められる場合は電極が配置される乳頭からの距離、DFN)などに基づいた推定値より約20%高い。高齢であり、より高いBMIを有するためにより高リスク状態にあると考えられる患者においては、より高リスクは主として、むしろ組織インピーダンスのリスクに及ぼす作用に起因して予測されるZsubより高いZsubを有するこれらの因子に起因すると予測される。統計学的には、これは相互作用又は交絡作用であると言われる。これを言い換えると、年齢はZsubに影響を及ぼし、さらに乳腺密度はZsubに影響を及ぼし、年齢もまた乳腺密度に影響を及ぼす。次に、単に年齢作用だけではないZsubへの乳腺密度の寄与を分類することが必要である。さらに、年齢及びBMIはどちらも、個人において観察もしくは測定されるZsubに影響を及ぼす独立変量である;そうでなければ、それらはロジスティック回帰モデリングには保持されない。そこで、正常(もしくは典型的)より高いBMIを備え、約1.2より大きい(例えば、約1.1、1.15、1.2、1.25、1.3、1.35などより大きい)Zsubm/Zsubeもしくはリスク比を示す高齢患者は、増殖性疾患又は乳癌の増加したリスク状態にある。
【0149】
他方では、高マンモグラフィ密度が低Zsubと相関することが観察されている。そこで、約0.8未満(例えば約0.9、0.85、0.8、0.75、0.7、0.65など)のZsubm/Zsubeの比率は、その後の生検上で増殖性病変もしくは癌を見いだすより高リスクを示す可能性があるが、それは特に年齢及びBMIの公知の影響について調整した場合に、乳癌にとっての公知のリスク因子である増加したマンモグラフィ密度のためである。そのような低い数値のZsubm/Zsubeは、より若年の、身体的適任者、すなわち正常、典型的又は一層低いBMIを備えるヒトにおいては特に重要である可能性がある。
【0150】
概して、ヒトが約1.0±0.2より大きい、又は小さいリスク比を示す場合は、例えば、生検、MRI、X線(若年患者に対して)などを含むより侵襲性の、リスクがある、及び/又はより費用のかかる試験方法を用いる厳密な試験が必要とされる。
【0151】
初期の試験結果以降、初期データに追加され、より大きなデータセットが生じた。以下では、モデル及びそれに由来するアルゴリズムを含むデータ全部の解析について報告する。便宜性のために、マンモグラフィ密度MDは、時には「密度」と呼ぶ。
【0152】
1.全サンプル集団(閉経前及び閉経後女性の両方を含む)についてのZsubの予測値、Zsubeは、以下のモデル(記号*は乗算を示す)から予測できる。
Zsube=107.753+(1.083*年齢(歳))+(−1.074*乳腺密度(マンモグラムからの密度(%)))+(3.196*BMI)
(式中、BMIは、体重(ポンド)*703)/身長2(インチ2)、又は体重(ポンド)*4.88/身長2(フィート2)であると規定される)
【0153】
【表4】
MDは、Zsubの数値を予測するための最強因子である(p<0.001)。
【0154】
2.又は、乳癌にとっての公知のリスク因子であるマンモグラフィ密度(全集団に対する)は、以下のモデルから予測できる。
マンモグラフィ密度(%)(MD)=141.788+(−0.716*年齢)+(−1.113*BMI)+(−0.199*Zsub(Ω))
【0155】
負係数は、年齢及びBMIが増加する、したがってZsubが増加する(増加したインピーダンス)につれて乳腺密度が減少するので予測できるように、マンモグラフィ密度が年齢、BMI及びZsubと逆相関することを示していることに留意されたい。年齢及びZsubはどちらも、年齢及びZsubが密度と強度に関連し、どちらも乳癌にとっての有意なリスク因子であることから予測されるように、マンモグラフィ密度の最強の予測因子である(p<0.001)。
【0156】
【表5】
【0157】
3.ロジスティック回帰が女性の閉経前集団に適用された場合は、マンモグラフィ密度(MD)は、以下のモデルから予測することができる。
MD=127.770+(−1.339*BMI)+(−0.259*Zsub)
年齢は、閉経前女性における集団についてはモデル内にもはや含まれないが、これは閉経前女性においてはMDを予測する際に肥満症(BMI)が年齢よりはるかに重要であることを意味することに留意されたい。BMIは、p値が有意性に近似するにつれて、モデル内に推進されてきた(p=0.051)。その後のモデリングでは、電極が配置される乳頭からの距離について調整が行われる(したがって、電気的に「インテロゲート」される乳房組織の容積が考慮に入れられる)場合は、BMIは閉経前女性については有意になることに留意されたい。たとえ変動性が電極配置に起因して存在していても、個人のこの特定集団のBMIによって圧倒される可能性がある。
【0158】
【表6】
【0159】
4.ロジスティック回帰を閉経後の女性集団に適用した場合は、マンモグラフィ密度は、以下のモデルから予測することができる。
MD=127.178+(−0.874*年齢)+(−0.219*Zsub)
BMIは閉経後モデルからは除外されるが、これはおそらく閉経期退縮が、BMI状態とは無関係に、高インピーダンス脂肪による高密度乳房組織の重大な置換を生じさせるためであることに留意されたい。
【0160】
【表7】
【0161】
5.初期データ集団の回帰分析では、電極が配置される乳頭からの距離は、Zsubの予測因子としてモデル内に維持される。患者200例を対照とする現在のより大規模試験では、おそらく電極の配置が標準化されているために、余り明白な関連は見られない。しかし、個々の患者においては、電極はZsubについての数値が大きいほど乳頭から離して配置されるが、これはより大量の組織が電気的分析を受けるためである。マンモグラフィ密度のモデリングでは、より簡潔なモデルは、各電極が配置される乳頭からの距離についてZsub測定値を調整することである。これは順に、予測モデルを以下に示すように変化させる。
ZsubDFN(電極が配置される乳頭からの距離について調整されたZsub(単位:cm)は、以下の式によって規定される。
ZsubDFN=Zsub対DFNの線形回帰から引き出された169.512+(6.668*DFN(cm))
調整Zsub(ADJZsub)は、次に、以下の式から引き出される。
ADJZsub=ZsubM/ZsubDFN(式中、下付きM=測定値、すなわち測定Zsubである)
【0162】
6.ロジスティック回帰を閉経前の女性集団に適用した場合は、マンモグラフィ密度(MD)は、以下のモデルから予測することができる。
MD=131.936+(−1.444*BMI)+(−54.752*ADJZsub(上記の5と同様に引き出される任意単位で)
【0163】
【表8】
【0164】
7.ロジスティック回帰が女性の閉経後集団に適用された場合は、マンモグラフィ密度は、以下のモデルから予測することができる。
MD=120.178+(−0.869*年齢)+(−39.179*ADJZsub(上記の5と同様に引き出される任意単位で)
【0165】
【表9】
【0166】
6及び7はどちらも閉形前及び閉経後の女性の両方についてZsubに影響を及ぼす変量としてDFNを組み入れ、たとええ測定を実施する場合に電極を乳頭からの標準距離に配置するため努力が尽くされた場合でさえ、好ましい、より汎用のモデルであることに留意されたい。
【0167】
8.Zsubと密度との間の関係を前提として予測できるように、Zsubは、閉経前患者(前Z’sub)における183.343±5.769Ωと比較して241.938±8.403(平均値±SEM)の平均値を示す閉経後患者(後Z’sub)における方が有意に高い(p<0.001)。
t検定
正規性検定:合格(P=0.097)
等分散性検定:合格(P=0.523)
【0168】
【表10】
【0169】
平均値の差:58.595
t=5.952、自由度116を伴う(P=<0.001)。
平均値の差についての95%信頼区間:39.097〜78.092
そこで2つの群の平均値における差は、偶然によって予測されるより大きい。入力群間には統計的有意差がある(P=<0.001)。
αを用いて実施した検出力=0.050:1.000
【0170】
類似のマンモグラフィ密度(密度率)は、閉経前患者の47.5(25.0〜60.0)%(「Pre Density」)に比較して閉経後患者では17.5(7.5〜32.5)%(メジアン(25〜75%の信頼限界))(「Post Density」)と有意に低い(p<0.001)。
マン ホイットニー順位和検定
【0171】
【表11】
【0172】
マン ホイットニーU統計量=798.000
T=1974.000n(小)=48n(大)=70(P=0.001)
2つの群のメジアン値における差は、偶然によって予測されるより大きい;統計的有意差がある(P=<0.001)。
【0173】
9.図10は、Zsubと月経周期内の位置との相関を示す図である。円は経産(n=16)群を表し、正方形は未経産(n=17)コントロール群を表す。未経産コントロール群は低いZsubを有し、これは特に黄体期中のより導電性の実質を示唆している。経産女性におけるZsubが高いだけではなく、卵胞期と黄体期との間のZsubの変化もまた未経産女性における方が約50%大きい。卵胞期と黄体期との間のZsubにおける減少は、おそらく乳房のより高い流体含量、又は未経産女性におけるZsubに影響を及ぼす乳房組織内の物理的変化に起因するインピーダンスの減少を示唆している。60KHzで測定されたインピーダンス対10KHz又は6KHzで測定されたインピーダンスの比率は、リスクに関してより示差的情報を生じさせることができる。電気信号の周波数を60KHzから10KHzへ減少させた場合にインピーダンスにおける変化が測定された場合は、インピーダンスの有意な増加は経産及び未経産女性両方において同定される。インピーダンスの変化は、周波数が60KHzから6KHzへ変化した場合はさらに大きい。インピーダンスにおける変化が、60から10KHzへの変化に60KHzから6KHzへの変化が掛けると、変化における有意差を示す相互作用項が得られる、すなわち経産女性(P−相互作用)は未経産女性(N−相互作用)に比較して各々766対844(p=0.011)のメジアン結果を有する。これらのデータは、以下の通りに分析された:
t検定
正規性検定:不合格(P<0.050)t検定によるそれ以上の分析は実施しなかった。
マン ホイットニー順位和検定
【0174】
【表12】
【0175】
マン ホイットニーU統計量=131909.000
T=250737.000 n(小)=487 n(大)=595(P=0.011)
2つの群のメジアン値における差は、偶然によって予測されるより大きい。統計的有意差がある(P=0.011)。
【0176】
約5,000Hz(5KHz)を越える周波数では、リアクタンスにおける変化は極めてわずかしかないが、それは皮膚及び上皮の誘電特性が全インピーダンスにはほとんど影響を及ぼさず、電気信号は乳房の上皮下組織をインテロゲートするからである;インピーダンスは、本明細書に開示した乳管内測定アプローチを用いて効果的に5KHzを越える単純抵抗である。そこで、約50KHz又は約60KHzでのZsub測定に加えて、約5KHz〜20KHzの間の1つ以上の周波数での追加のZsub測定値は、より高い、及びより低い周波数ならびにそれらの比率の間の数値における変化の大きさの計算を含めて、乳房の流体状態又は乳房組織の他の特性に関する追加の情報を提供することができる。
【0177】
さらに、上記の試験は、経産状態を除いて、乳癌にとっての公知のリスク因子を備えていない40歳未満の年齢の女性のコントロール群において実施された。家族歴、乳腺密度などのために増加したリスク状態にある女性は、「リスク状態」と「通常リスク」との間のこれらの中周波数測定値においてはより大きな差を有すると予想される場合がある。月経周期中の様々なポイントで試験された経産対未経産女性は、わずかに高いリスクについてのモデルとして機能する、すなわち未経産女性は経産女性より乳癌のより高いリスクを有する。
【0178】
10.上記で考察した初期分析では、月経周期におけるポイントは、Zsubの推定値を予測するアルゴリズムにおける1つの因子である。上記の図10から明らかなように、Zsubは、第1週及び第2週(卵胞期)と比較して月経周期の黄体期には低くなる傾向を示すが、その関係はもはや明確な線形ではなく、第1週及び第2週のデータならびに第3週及び第4週のデータを結合することによってデータを正規化することが必要になる場合がある。そこで、月経周期内の位置は依然として、Zsubと周期中の位置との間の観察された関係のために乳腺密度を推定するために有用な変量を表す。乳腺密度における変化はマンモグラフィ試験において月経周期中に観察されてきたので、これは一般に放射線学の文献では公知である。乳腺密度は、Zsubがより低いという本明細書での観察所見に一致して、黄体期においてより高くなることが観察されている。
【0179】
概して、BMI、年齢、マンモグラフィ乳腺密度(MD)及びZsubの変量間には有意な相互作用が見られるので、Zsubはさらに乳癌を発生するリスクとも関連すると考えられる。さらに、年齢及びBMIはどちらもZsub及びMDと関連し、Zsubと密度との間にはより強力な相関が見られるので、加齢に起因する乳癌を発生するより高い見かけのリスクもまたより高いZsubと相関し、より高いBMIもまた加齢と相関する。ロジスティック回帰モデルでは、概して年齢及びBMIは、Zsubがモデル内の変量として保持されるように制御されるので、Zsubは、年齢及びBMIの作用とは無関係にMDと関連する示唆されている。
【0180】
マンモグラフィ密度を推定するための上述した方法、及び詳細にはACR BI−RADS法を使用して、推定マンモグラフィ密度は上皮下インピーダンス、Zsubと相関付けられてきた:これらの結果は図14に示されている。マンモグラフィ密度の推定は2人の盲験観察者によって実施されたが、それらの推定値は相互に、及びZsubと高度に相関していた(図13を参照されたい)。図14に示した変動性の多くは、上記のアルゴリズムに示したように、年齢及びBMIによって説明される。
【0181】
本発明のまた別の実施形態では、例えば約50KHz又は約60KHzでZsubを測定するための単一周波数の使用に加えて、有意に低い周波数Z0で第2インピーダンス測定を行うことができる。この数値について、インピーダンスは0に近い、もしくは0の周波数又はDC(直流)で測定される。しかし、極めて低い周波数では、皮膚インピーダンスは測定値を支配できるので、上述したように皮膚部位でソノフォレシスを使用することによってそのような緩衝を回避する、又はスパイクもしくは微針電極などを使用することが必要になる。又は、その周波数では皮膚のインピーダンスが及ぼす影響がより少ない、例えば約1,000Hz〜約5,000Hzなどの中継周波数を使用できる。Z0の測定値は、細胞外液の推定値として機能する。すなわちすべての電流は細胞外(間質液)区画を通過し、この状態は高リスク状態の女性では変化する可能性が高い。このため、Zsub/Z0の比率又は各数値は個別に、乳癌のリスクを評価することを含む、様々な目的のために使用できる追加の特徴解析基準を提供することができる。
【0182】
組織の電気生理学的特性ならびに正常及び異常組織間の差を測定するための器具は、例えば、電気計器、デジタル信号プロセッサ、電圧計、発振器、信号プロセッサ、電位差計、又は電圧、導電性、抵抗もしくはインピーダンスを測定するために使用される任意の他の器具などの当技術分野において公知の器具を含むことができる。
【0183】
DC電位は、通常は大きな抵抗、及び2つの電極(1つの作用電極及び1つの基準電極)と直列でつながれた検流計からなる電圧計を使用して測定される。電圧計は、アナログ式であってもデジタル式であることもできる。理想的には、これらは電流引き込みを回避するために極度に高い入力抵抗を有するべきである。DC電位は、さらにまたオシロスコープを用いて測定することもできる。
【0184】
インピーダンスは、多数のアプローチを用いて測定できる。限定なく、例には、デジタル式もしくはアナログ式いずれかのロックイン増幅器であることができる位相固定増幅器が含まれる。精度を改善するために接地への迷走電流を最小限に抑えるためにはロックイン増幅器と結び付けて前置増幅器を使用できる。デジタル式ロックイン増幅器は、当該の振幅変調情報を運ぶ信号であり、もう1つは特定周波数及び位相を備える参照信号である2つの正弦波の乗算に基づいている。信号発生器は、組織を刺激するための正弦波もしくは複合信号を生成するために使用できる。アナログ式ロックイン増幅器は、位相感受性検出器(PSD)及び低域フィルタを含む同期整流器を含有している。その他のアプローチには、AC正弦波を生成するために発振器を備えるインピーダンスブリッジの使用を含んでいる。これらの器具は自動化されると、LCRメータと呼ばれ、自動平衡ブリッジ技術を使用する。定電流又は定電圧電流源を使用できる。1つの好ましい実施形態では、定電流源が使用される。固定周波数信号を備える発振器ではなく、重畳正弦波を生成する信号発生器が使用されることもできる。
【0185】
組織反応は、高速フーリエ変換又はその他の技術を用いてデコンボリューションされる。測定を行うためには、双極、三極又は四極電流及び電圧電極を使用できる。1つの好ましい実施形態では、電極分極及び電極−組織インピーダンス誤差に起因して導入される不正確を回避するために、四極電極構成が使用される。インピーダンスではなく、上皮又は皮膚表面で1アレイの電極を用いると電流密度を測定できる。インピーダンスは、さらにまた電極を皮膚もしくは上皮と接触させる必要を伴わずに電磁誘導を用いて測定することもできる。
【0186】
大量のデータを処理するためには、Zsubを測定するステップを組み合わせて含む本発明の方法は、コンピュータ可読媒体上のソフトウエアによって実施することができ、コンピュータ装置又は中央処理装置によって実行することができる。
【0187】
測定システム及び方法の実施例
本発明の1つの実施形態は、図7に示されている。この図は、上述した乳管上皮インピーダンス及びZsub測定値を作成するために使用されるシステムを示している。乳管上皮との電気接触は、この図及び図4に図示した特殊設計の、乳頭センサ電極と乳管開口部を越える乳管上皮との間の電気接触を確立する生理食塩液が充填された乳頭乳管センサを用いて、(既に試験された患者400例によって報告されたように)非侵襲性及び無痛で確立した。皮膚インピーダンスは、上述したようにソノフォレシスを用いて<3,000Ωcm2へ減少させ、角栓は、乳管開口部を開放させるために脱角化剤を用いて乳頭から除去した。測定は、乳頭センサと低オフセットAg−AgCl皮膚表面電極との間で行った。経上皮電位(TEP)及びDEIS測定値は、0.1Hz〜60KHzの周波数範囲にわたって入手し、周波数応答分析器を用いて処理し、正弦波相関は四極電極技術を用いて処理した。データはZPlotを用いて収集し、ZView(Scribner Associates社)を用いて分析した。4つの四分円各々を各患者において測定した。患者への全電気接続は、IEC−60101電気安全基準を遵守して、生物学的インピーダンスアイソレータ(Solarton 1294、英国ファーンバラ)を通して行った。ラップトップ型コンピュータ(DuCac Tech社)を使用して、FRA、生物学的インピーダンスアナライザを制御し、さらにデータを分析した。
【0188】
代替実施形態では、マンモグラフィ乳腺密度の推定及び/又は乳癌のリスク評価のためのインピーダンスデータは、単一周波数又は2種以上の複数の、しかし上記に報告した全スペクトルデータを入手するために使用される多数の周波数よりは少ない周波数器具を用いて入手することができる。例えば、1種又は2種の周波数で位相及びインピーダンス測定値を得ることが適切な場合がある。さらに、本システム及び方法は、状況が指令するようにソノフォレシスもしくはスパイク電極を用いて、又は用いずに使用できる。適切なソノフォレシス装置は、上述したように市販で入手することができ、スパイクもしくは微針電極もまた例えばSilex Microsystems社(マサチューセッツ州ボストン)から入手できる(例えば、Characterization of Micromachined Spiked Biopotential Electrodes,P.Griss et al.,IEEE Trans.Biomed.Eng.,49,6,597−604(June 2002);米国特許第7,050,847号明細書;及び米国特許出願第2007/0265512号明細書も参照されたい)。好ましくは、上記に記載及び図示した乳頭センサは、上皮下実質のインテロゲーションを促進するために使用される。
【0189】
本発明のまた別の代替実施形態は、インピーダンス指数(IQ)又は抵抗(RQ)を入手することができるように、乳房の各四分円もしくはセグメント内で2つのセンサ電極を使用する。インピーダンスは、年齢、体重、月経周期内の位置などによって影響されるので、乳頭に関して皮膚感知電極間での同一間隔を維持しながら同一乳房における2つの場所でZsub又はZ0を測定するステップによって個別患者において指数を入手することができる。そこで、乳頭センサ電極及び皮内センサ電極及び皮外センサ電極間のインピーダンスの測定は、乳頭から約3cm及び約7cmの場所で、図7に示した構成に加えて外部皮膚センサ電極を用いて行われる。同一患者において測定される指数は、例えば年齢、体重、月経周期などの他の交絡因子について補正され、患者が乳房内の増殖性もしくは前癌性変化又は乳癌を有すると見いだされるリスクに関連する乳房実質について抵抗率又は誘電率を生じさせる。
【0190】
本発明とともに使用するための器具
本発明とともに使用できる器具については、多数の変形が可能である。さらに上述したように、器具設計内では、変化させることのできる多数の態様がある。以下では、これらの変形やその他の変形について記載する。
【0191】
本発明において使用するためのプローブ又はその他の器具の1実施形態では、凹んだくぼみ内に複数の小型電極を含んでいる。表面記録、及び例えばフィルタリングなどの初期電子的処理は、ディスポーザブルの市販で入手できるシリコンチップによって実施できる。各ECM液もしくは作用物質は、チップ上の個別電極及びリザーバに特定であることができる。そこで、1回の測定のためには、特定電極セットが使用される。また別の測定のためには、例えば、相違するイオン濃度で、相違する電極セットが使用される。1回の測定のための電極は別の測定と同一地点には配置されないのでこれはある程度の変動を生じさせるが、このシステムは概して信頼できる結果を提供する。
【0192】
また別のアプローチは、より小数の電極を使用し、さらに溶液及び薬物を変化させるためにフロースルーもしくはマイクロ流体システムを使用することである。詳細には、溶液又は作用物質は、溶液又は作用物質をチャネルに通して移動させ、器具の表面にある孔を通して流出させるため電流を通過させることによって変化させられる。この実施形態では、電極は乳房の表面の同一領域と接触したままであるので、測定における領域毎の変動が排除される。このアプローチは、相違する溶液間を平衡させるための時間を必要とする。増殖性の異常な前癌性又は癌性乳房組織の存在を検出する際には、皮膚での表面測定値を得るためにハンドヘルド型プローブが用意されている。このプローブは、電流を通すため、ならびに測定するために電極を含むことができる。インピーダンス測定値は、乳頭カップ電極とハンドヘルド型プローブとの間、乳頭カップ電極と接着性皮膚電極との間、小型乳管鏡上の電極間、及び皮膚表面電極間で得ることができる、又はハンドヘルド型プローブ上の電極間で得ることもできる。初期DC測定値を得た後、皮膚インピーダンスを減少させるために湿潤剤/透過剤を導入することができる。作用物質は、流体を電極表面へ移動させるために、上述したように、マイクロ流体アプローチを用いて導入されることができる。又は、まさに角質層に貫通する表面電極を使用するとインピーダンスを減少させることができる。
【0193】
本発明とともに使用するための流体は、例えば薬理学的物質を含む、又は含まない生理食塩液(例、リンガー(Ringer)液)などの様々な電解質溶液を含むことができる。乳管系内に注入するための1つの好ましい電解質溶液は、生理的リンガー液を表す。典型的には、これはNaCl 6g、KCl 0.075g、CaCl2 0.1g、NaHCO3 0.1g、及び7.4の生理的pHを備える低濃度の高及び低リン酸ナトリウムからなる。その他の電解質溶液を使用することができ、電解質は溶質の約1%の容積を含んでいる。1%より多い、又は少ない高張液もしくは低張液は、上皮及び/又は腫瘍の誘発試験において使用することができる。Na、K及びClの濃度は、上皮の導電性及び透過性を評価するために様々な条件下で調整される。例えばアミロライド(起電性ナトリウム吸収を遮断するため)、フォルスコリン(もしくは環状AMPを上昇させるための類似薬)及び例えばプロラクチンもしくはエストラジオールなどのホルモン剤などの様々な薬理学的物質もまた、これらの作用物質への上皮及び腫瘍の電気生理学的反応を試験するためにリンガー液を注入することができる。同様に、輸液のカルシウム濃度は、密着帯透過性を変化させ、この処置への上皮の電気生理学的反応を測定するために変化させられる。デキサメタゾンは密着帯の透過性を減少させるために注入することができ、電気生理学的反応が測定される。
【0194】
特定の実施例は上皮及び腫瘍の「挑戦的」試験において使用できる薬物及びホルモン剤を生じさせてきたが、発癌現象中に影響を受けることが公知である特異的イオン輸送、又は密着帯完全性の任意のアゴニスト又はアンタゴニストは、特に上皮又は腫瘍の電気生理学的特性に影響を及ぼすことが公知である場合は使用できる。
【0195】
器具の構成とは無関係に、信号を使用して乳管経上皮電位自体、又は経上皮インピーダンスもしくは上皮下インピーダンスが測定される。測定値は、次に乳房の増殖性及び/又は発生中の異常と関連する上皮の電気特性を特徴付けるために結合することができ、同一又は反対側の乳房の関与していない領域と比較することができる。表面電位測定及びインピーダンス測定は、乳房の非経上皮電気特性を特徴付けるために行うことができる。これらの測定は、DC電位測定を含んでいるが、このとき表面電位は、ECMを通して乳管内腔と直接的又は間接的に接触していない電極と関連付けられる。インピーダンス測定は、表面電極間又は表面電極及び(ECMを通して)乳管内腔と直接的又は間接的に接触していない基準電極間で同様に行われる。これらの測定値は、乳房組織を詳細に特徴付けるために経上皮電気測定値と比較し、結合することができる。
【0196】
さらに、変化したインピーダンス又はDC電位の電気生理学的根拠についての理解は、より正確な診断を許容する。例えば、インピーダンス又はDC電位は、幾つかの因子のために上昇又は下降する可能性がある。乳房の増加した間質密度は、そのインピーダンスを変化させる場合がある。さらに、発生中の悪性腫瘍の周囲での上皮のカリウム透過性の減少はインピーダンスを増加させ、発生中の悪性腫瘍と関連する可能性が高い。追加の情報は、間隔をあけて配置した電圧感知電極を用いて組織を様々な深さで調査することによって本発明の方法から入手される。増殖性、癌傾向、前癌性もしくは悪性腫瘍組織に比較した正常組織においてDC電位及び/又はAC電位を示差的に変化させるための電気生理学的、薬理学的及びホルモン的処置の使用は、本発明の診断精度を増強する、また別の有意差である。
【0197】
皮膚インピーダンスは、乳管上皮及び乳房実質の基礎にあるインピーダンスシグニチャを不明瞭にするほど高い場合は、特に有意であることに留意されたい。しかし、皮膚がソノフォレシスを用いて処置された場合に有意な変化が生じるか否かを事前に知ることは不可能であるので、このため試験結果を解釈するために「一様な」又は標準状態を確立することは不可欠である。ソノフォレシスは、開回路電位雑音及び皮膚インピーダンス雑音の両方の雑音を診断測定値から除去する。
【0198】
高皮膚インピーダンスは、「真の」経上皮インピーダンスプロファイルを覆い隠す場合がある。皮膚インピーダンスの減少は、上皮及び皮下の乳房実質の複数のインピーダンス分散を解明する測定値を生じさせることができる。さらに、経上皮電圧は、皮膚インピーダンス単独を減少させることによっては正確に推定することはできず、経上皮電気信号(インピーダンス又は電圧)の推定は、表面測定を行う場合には乳管上皮の内側を参照することを必要とする。
【0199】
本明細書に記載した実施形態は、ヒトを参照して記載されている。しかし、非ヒトにおける癌もまたこのアプローチを用いて診断することができ、本発明はさらにまた獣医学的用途を有することが意図されている。
【0200】
さらに、本発明の様々な態様又は実施形態は、以下の特徴を含むことができる。
器官の実質インピーダンス特性を測定するための方法であって、皮膚表面電気測定値を基準もしくは作用電極と結び付けるステップ、及び/又は上皮の内腔表面と直接的又は間接的電気接触させる伝導性媒質の使用による方法。
試験対象の器官の特別には実質である上皮下特性を調査するための、正弦波、方形波又はその他の電気信号形状の通過。
詳細には実質である上皮下組織の電圧振幅、位相変化及びその他のインピーダンス特性の測定であって、上皮及び皮膚表面電極の内腔表面と直接的又は間接的電気接触させる基準もしくは作用電極の組み合わせを用いる測定。
Zsubの単独又は他の電気的もしくは患者特性と結び付けた使用であって、個人の一方の乳房の、又は個人の両方の乳房のマンモグラフィ乳腺密度率を推定し、数値を同定して乳房における異常な状態の指標となる可能性があるそれらの数値における変化を同定するために、ある期間に渡り任意の時点又は連続的にそのような数値を比較するための使用。
正常リスクもしくはコントロール集団と比較して癌発生のリスクを推定するために、年齢、体重(もしくは、BMI)、乳房のサイズ、1つ以上の表面電極が配置される乳頭からの距離、電気特性測定の時点での月経周期日(もしくは閉経状態)、経産歴及びマンモグラフィ乳腺密度、乳房の特別には実質である上皮下組織のインピーダンスに影響を及ぼす可能性がある因子に関する情報と結合したインピーダンス測定値の使用。
【0201】
上記の電極組み合わせは、皮膚が組織の上皮下電気特性を不明瞭化しないように皮膚の表面インピーダンスを減少させない任意の方法と結び付けることができる。
【0202】
又は、表面皮膚もしくは内部上皮の誘電特性が上皮下組織をマスキングしないほど十分に高い周波数信号を使用できる。
【0203】
上皮下(実質)インピーダンスに影響を及ぼすリスク(年齢、体重、月経周期微)以外の因子の影響について調整することによって、基礎にある組織について上皮下(実質)インピーダンスもしくは抵抗指数を推定できるように、同一四分円もしくはセグメント内の乳頭から相違する距離で配置された第2表面電極の追加(指数は、乳頭もしくは作用電極から相違する距離にある乳房の同一四分円もしくはセグメント内の2つの相違する場所で測定されたインピーダンスの差又は比率である)。抵抗の場合には、指数は、組織の相対抵抗(ρ)に、又はアドミタンスの場合には、乳頭及び抵抗もしくはインピーダンスに影響を及ぼすその他の因子からの距離について調整された相対誘電率(ε)に類似する。上皮下組織の相対抵抗もしくは誘電率は、次にリスクを推定するために使用できる。
組織の細胞内及び細胞外液区画を調査し、そこで細胞内情報伝達及び傍細胞導電性の両方についての情報を入手するために十分に高い周波数(例えば、約5KHz〜約10KHzを超える、及び典型的には約50KHz〜約60KHz)の使用。
上皮及び皮膚表面電極の内腔表面と直接的又は間接的電気接触させる上記の1)における基準もしくは作用電極の組み合わせを用いた、細胞外液区画を単独で、又は組織の電圧振幅、位相変化及びその他のインピーダンス特性の測定とともに調査するための第2低周波数測定の追加。
細胞内及び細胞外区画間の液体の分布、ならびに癌のリスクを推定するための組織の細胞内情報伝達を推定するための高及び低周波数でのインピーダンス測定値の比率(Z∞/Z0)の使用。
癌のリスクを推定するために、比率値(すなわち、年齢、体重(BMI)、乳房サイズ、電極が配置される乳頭からの距離、月経周期日((もしくは閉経状態)、経産歴及びマンモグラフィ密度)に影響を及ぼすことが公知の因子について調整された比率Z∞a/Z0aの使用。
【0204】
大多数の癌は上皮起源であるので、間質又は非上皮素子は頻回に変化し、細胞間情報伝達が崩壊させられる。細胞間情報伝達は、間質細胞間もしくは上皮及び間質細胞との間で特徴付けることができ、そのような情報伝達は上記に略述したアプローチを用いて評価することができ、それによって例えば胃、腸、前立腺、卵巣、頸部、子宮、膀胱皮膚などの上皮及び間質素子を含む器官内の癌のリスクを評価することに適用できる。
【0205】
上述した様々な態様又は実施形態は、癌もしくは増殖性細胞リスクの変調ならびに例えばホルモン剤、薬物などの一般には化学的予防と呼ばれる作用物質、又は例えば放射線、エレクトロポレーション、遺伝子療法などを含む他の治療様式を用いる予防的戦略に対する反応を評価するために個別に、又は組み合わせて使用できる。
【0206】
本発明の様々な実施形態によって表される技術は、例えば、高密度の領域を発生する癌を正確に局在化する必要があるので、マンモグラフィイメージングに対する必要とともに完全に排除する可能性は低い。しかし、Zsubもしくは乳腺密度の推定値を使用すると、例えばマンモグラム、MRI、核イメージング、「挑戦試験」などのイメージングの必要及び頻度の両方を誘導するために個別患者に対するリスクを推定することができる。さらに、乳腺密度は修正可能なリスク因子である、すなわち例えば分娩、食事、運動及び化学予防薬などのリスク因子及び/又はリスク減少戦略に反応して変化するので、乳腺密度を使用すると、リスク因子の導入もしくは排除、又は薬物もしくはその他のインターベンションを用いた癌予防法に反応して上昇もしくは減少するリスクを評価することができる。さらに、Zsubの測定は、特別には個人、詳細にはX線の使用が増加したリスクを提示する可能性がある若い個人にとって有用な可能性があるが、他方電気的検査測定値はそのようなリスクを回避し、治療経過又は年齢及び/又はライフスタイルに伴う単なる変化にしたがって定期的、複数回又は連続的ベースで反復することができる。
【0207】
上記の明細書で言及した、及び例えば特定セットの特性、尺度単位、条件、物理的状態もしくはパーセンテージを表す態様などの本発明の様々な態様に関連する以下の段落及び特許請求項で言及した任意の数の範囲、さもなければ任意の数のサブセットもしくはそのように言及した任意の範囲内に含まれた範囲を含むそのような範囲内に含まれる任意の数は、参照して本明細書に明示的に文字通り組み入れることが意図されている。さらに、用語「約」は、変量、特徴もしくは状態についての、又はそれと結合した修飾因子として使用される場合は、本明細書に開示した数、範囲、特徴及び状態が柔軟性であること、そして当業者による範囲外もしくは単一値とは相違する温度、周波数、時間、濃度、量、含有量、例えばサイズ、表面積などの特性を用いた本発明の実践は本出願に記載した所望の結果、つまりマンモグラフィ乳腺密度率を推定する、及び/又は乳癌をもしくは乳房の増殖性疾患を発生する患者のリスクを評価するために、正常、前癌性及び癌性の実質組織、好ましくは乳房組織を含む組織及び上皮内の電気生理学的特性を測定する、ならびに電気生理学的変化を検出することを達成する。
【0208】
本発明のためには、以下の用語は指示した意味を有するものとする。
「含む」又は「含んでいる」:請求項を含む本明細書全体を通して、用語「含む」ならびに「含んでいる」及び「有する」、「有している」、「包含する」、「包含している」などのこの用語の変形及びそれらの変形を含めて、それが関連する指名されたステップ、素子もしくは材料は必須であるが、その他のステップ、素子もしくは材料を加えることができ、それでもなお特許請求項又は開示の範囲を備える構築物を形成することを意味している。本発明を記載する際、及び特許請求項に言及される場合は、本発明及び請求される対象は、それに続く、及び潜在的にはそれ以上と考えられることを意味している。これらの用語は、特に請求項に適用される場合は、包含的もしくは無制限であり、追加の言及されていない素子もしくは方法ステップを排除しない。
【0209】
「本質的に〜からなる」:本発明の状況では、「本質的に〜からなる」は、任意の素子もしくは素子の組み合わせならびに本発明の基本的及び新規な特徴を変化させる任意の量の任意の素子もしくは素子の組み合わせを排除することを意味する。そこで、例として、及び限定することなく、マンモグラフィ乳腺密度の推定値及び/又は上皮下インピーダンスを考慮に入れない乳癌のリスク評価は除外されることになる。
【0210】
「実質的に」:特異的な特性、特徴もしくは変量に関して他に特別に規定されない限り、例えば特性、特徴もしくは変量などの任意の基準に適用される用語「実質的に」は当業者であれば利益が達成される、又は所望の状態もしくは特性値が満たされることを理解する手段において上記の基準を満たすことを意味する。
【0211】
任意の特許出願及び/又は試験方法を含む本明細書に記載した全文書は、参照して本明細書に組み入れられる。本発明の原理、好ましい実施形態、及び操作様式は、上記の明細書に記載されている。
【0212】
本発明は、特定の実施形態を参照しながら記載してきたが、これらの実施形態は本発明の原理及び用途の単なる例証であることを理解されたい。このため、本出願及び添付の特許請求項に記載した本発明の様々な態様又は実施形態に規定したように、例示的実施形態には多数の修飾を加えられること、ならびに本発明の精神及び範囲から逸脱せずに他の配列から考案できることを理解されたい。
【0213】
上記に言及した参考文献には、以下が含まれる:
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Zhou,C.,et al.Med Phys 28 1056−69.
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人の少なくとも1つの乳房のマンモグラフィ密度(MD)を推定する方法であって、前記乳房は、覆っている皮膚表面及び乳頭を含み、
(A)第1電極と、前記個人の乳房内の上皮下実質組織との接続を確立するステップと、
(B)少なくとも1つの第2電極を、前記乳房の前記乳頭から一定距離で前記上皮下組織に隣接した前記乳房の皮膚表面と接触させて配置するステップと、
(C)前記第1及び第2電極間で1つの周波数を有する少なくとも1つの電気信号を確立するステップと、
(D)前記第1及び第2電極間で少なくとも1つの周波数で上皮下インピーダンス(Zsub)を測定するステップと、
(E)ステップ(A)〜(D)からは独立した方法によって、推定又は計算されたマンモグラフィ乳腺密度へZsubを関連付けるアルゴリズムにしたがって前記乳腺密度の推定値を取得するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記アルゴリズムは、(i)前記個人の特性、(ii)その下で電気的測定が行われる条件、又は(iii)(i)及び(ii)の両方と関連している変量を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変量は、個人の年齢、BMI(ボディマス指数)、体重、経産歴、前記個人が閉形前女性であるかどうか、前記個人が閉経後女性であるかどうか、女性個人が月経周期中である場合、及び皮膚表面電極が配置されている前記乳頭からの距離からなる群より選択される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
乳腺密度を推定又は計算するための前記独立した方法は、X線、超音波及びMRI(磁気共鳴イメージング)からなる群より選択される画像に基づくことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
X線画像に基づく前記方法は、Wolfeパターン、6カテゴリー分類、BI−RADS、ACR BI−RADS、面積測定法、画像デジタル化、デジタルX線画像の双方向性閾値、X線画像のテクスチャ測定、コンピュータ援用計算画像テクスチャ測定、コンピュータ断層撮影(CT)イメージング、乳房断層合成法、二重エネルギーX線吸収法及びデジタルマンモグラフィからなる群から選択される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アルゴリズムは、
(I)MD=141.788+(−0.716*年齢)+(−1.113*BMI)+(−0.199*Zsub)、
(II)MDpmw=127.770+(−1.339*BMI)+(−0.259*Zsub)及び
(III)MDpstmw=127.178+(−0.874*年齢)+(−0.219*Zsub)
からなる群より選択される、ここで、記号*は、記号に先行する、及び後に続く用語の乗算を示し、BMIは、(体重*703)/身長2(インチ2)、又は、体重*4.88/身長2(フィート2)として計算されたボディマス指数であり、体重の単位はポンドであり、ZsubはΩで表され、年齢は歳で表され、MDpmwは、閉形前女性についてのマンモグラフィ乳腺密度であり、MDpstmwは、閉経後女性についてのマンモグラフィ乳腺密度である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
Zsubは、以下の方程式、
ADJZsub=ZsubM/ZsubDFN(式中、下付きM=測定値)及び
ZsubDFN=169.512+(6.668*DFN)
にしたがって、前記電極が配置される前記乳頭からの距離について調整(ADJZsub)される、ここで、DFNは、電極が配置される乳頭からの距離(cm)である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
Zsubは、前記電極が配置される前記乳頭からの前記距離について調整(ADJZsub)され、前記アルゴリズムは、
(I)MDpmw=131.936+(−1.444*BMI)+(−54.752*ADJZsub)、又は
(II)MDpstmw=120.178+(−0.869*年齢)+(−39.179*ADJZsub)
からなる群より選択される、ここで、MDpmwは、閉形前女性についてのマンモグラフィ密度であり、MDpstmwは、閉経後女性についてのマンモグラフィ密度であり、ADJZsubは、ZsubM/ZsubDFN(下付きMは測定値)であり、ZsubDFNは、169.512+(6.668*DFN)であり、DFNは、前記電極が配置される前記乳頭からの距離(cm)である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
実質的に無症候の女性患者が乳房における増殖性もしくは前癌性変化を有することが見いだされる、又は前癌性もしくは癌性変化を発生させる引き続いたリスク状態にある可能性があるリスクを評価する方法であって、
(A)第1電極と、前記患者の乳房内の上皮下実質組織との接続を確立するステップと、
(B)少なくとも1つの第2電極を、前記乳房の前記乳頭から一定距離で前記上皮下組織に隣接した前記乳房の皮膚表面と接触させて配置するステップと、
(C)前記第1及び第2電極間で1つの周波数を有する少なくとも1つの電気信号を確立するステップと、
(D)前記第1及び第2電極間で少なくとも1つの周波数で上皮下インピーダンスを測定するステップと、
(E)前記患者に関連する変量に応じて前記患者についての乳房実質組織の上皮下インピーダンスの推定値(Zsube)を取得するステップであって、
当該ステップは、以下の方程式、
Zsube=107.753+(1.083*年齢)+(−1.074*乳腺密度)+(3.196*BMI)に基づいて取得され、ここで、年齢は歳で測定される。乳腺密度は%で表示され、マンモグラム上の乳腺の外観から推定される。また、BMIは、体重(ポンド)*703/身長2(インチ2)、又は体重(ポンド)*4.88/身長2(フィート2)と規定される、ステップと、
(F)前記患者についての乳房実質組織の上皮下インピーダンス(Zsubm)の少なくとも1つの測定値を取得するステップと、
(G)Zsubm/Zsubeの比率についての数値を計算するステップであって、ここで、Zsubm/Zsubeの比率が約0.8未満又は約1.2超であることを前提にして、女性患者が乳癌を有する、もしくは乳癌を発生する増加したリスク状態にあると見いだされる統計的に有意に増加したリスクがあるものである、ステップと
を含む、方法。
【請求項10】
実質的に無症候の女性患者が乳房における増殖性もしくは前癌性変化を有することが見いだされる、又は前癌性もしくは癌性変化を発生させる引き続いたリスク状態にある可能性があるリスクを評価する方法を実施するためのコンピュータ実行可能な命令を有するコンピュータ可読媒体であって、前記方法は、
(A)第1電極と、前記患者の乳房内の上皮下実質組織との接続を確立するステップと、
(B)少なくとも1つの第2電極を、前記乳房の前記乳頭から一定距離で前記上皮下組織に隣接した前記乳房の皮膚表面と接触させて配置するステップと、
(C)前記第1及び第2電極間で1つの周波数を有する少なくとも1つの電気信号を確立するステップと、
(D)前記第1及び第2電極間で少なくとも1つの周波数で前記上皮下インピーダンスを測定するステップと、
(E)前記患者に関連する変量のためのインプット値に基づいて前記患者についての乳房実質組織の上皮下インピーダンスの推定値(Zsube)を計算するステップであって、
当該ステップは、以下の方程式、
Zsube=107.753+(1.083*年齢)+(−1.074*乳腺密度)+(3.196*BMI)
に基づいて計算され、ここで、年齢は歳で測定され、乳腺密度は%で表示され、マンモグラム上の乳腺の外観から推定され、BMIは、体重(ポンド)*703/身長2(インチ2)、又は、体重(ポンド)*4.88/身長2(フィート2)と規定されている、ステップと、
(F)前記患者についての乳房実質組織の上皮下インピーダンス(Zsubm)の少なくとも1つの測定値を得るステップと、
(G)Zsubm/Zsubeの比率についての数値を計算するステップであって、ここで、Zsubm/Zsubeの比率が約0.8未満又は約1.2超であることを前提にして、女性患者が乳癌を有すると見いだされる統計的に有意に増加したリスクがあるものである、ステップと
を含む、コンピュータ可読媒体。
【請求項11】
個人の少なくとも1つの乳房のマンモグラフィ密度(MD)を推定する方法を実施するためのコンピュータ実行可能な命令を有するコンピュータ可読媒体であって、前記乳房は覆っている皮膚表面及び乳頭を含み、当該方法が、
(A)第1電極と、前記個人の乳房内の上皮下実質組織との接続を確立するステップと、
(B)少なくとも1つの第2電極を前記乳房の前記乳頭から一定距離で前記上皮下組織に隣接した前記乳房の皮膚表面と接触させて配置するステップと、
(C)前記第1及び第2電極間で1つの周波数を有する少なくとも1つの電気信号を確立するステップと、
(D)前記第1及び第2電極間で少なくとも1つの周波数で前記上皮下インピーダンス(Zsub)を測定するステップと、
(E)ステップ(A)〜(D)から独立した方法によって、推定又は計算されたマンモグラフィ乳腺密度へZsubを関連付けるアルゴリズムにしたがって前記乳腺密度の推定値を計算するステップと
を含む、コンピュータ可読媒体。
【請求項12】
前記アルゴリズムが、
(I)MD=141.788+(−0.716*年齢)+(−1.113*BMI)+(−0.199*Zsub)、
(II)MDpmw=127.770+(−1.339*BMI)+(−0.259*Zsub)及び
(III)MDpstmw=127.178+(−0.874*年齢)+(−0.219*Zsub)
からなる群から選択され、ここで、記号*は、記号に先行する、及び後に続く用語の乗算を示し、BMIは、(体重*703)/身長2(インチ2)、又は(体重*4.88/身長2(フィート2)(式中、体重の単位はポンドである)として計算されたボディマス指数であり、ZsubはΩで表され、年齢は歳で表され、MDpmwは、閉形前女性についてのマンモグラフィ密度であり、MDpstmwは、閉経後女性についてのマンモグラフィ密度である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Zsubは、以下の方程式、
ADJZsub=ZsubM/ZsubDFN(下付きMは測定値)、及び
ZsubDFN=169.512+(6.668*DFN)
に従って、前記電極が配置される前記乳頭からの前記距離について調整(ADJZsub)される、ここで、DFNは、前記電極が配置される前記乳頭からの距離(cm)である請求項11に記載の方法。
【請求項14】
Zsubは前記電極が配置される前記乳頭からの前記距離について調整(ADJZsub)され、前記アルゴリズムは、
(I)MDpmw=131.936+(−1.444*BMI)+(−54.752*ADJZsub)、又は
(II)MDpstmw=120.178+(−0.869*年齢)+(−39.179*ADJZsub)
からなる群より選択され、ここで、MDpmwは、閉形前女性についてのマンモグラフィ密度であり、MDpstmwは、閉経後女性についてのマンモグラフィ密度であり、ADJZsubは、ZsubM/ZsubDFN(下付きMは測定値)であり、ZsubDFNは、169.512+(6.668*DFN)(DFNは、前記電極が配置される前記乳頭からの前記距離(cm))である請求項11に記載の方法。
【請求項1】
個人の少なくとも1つの乳房のマンモグラフィ密度(MD)を推定する方法であって、前記乳房は、覆っている皮膚表面及び乳頭を含み、
(A)第1電極と、前記個人の乳房内の上皮下実質組織との接続を確立するステップと、
(B)少なくとも1つの第2電極を、前記乳房の前記乳頭から一定距離で前記上皮下組織に隣接した前記乳房の皮膚表面と接触させて配置するステップと、
(C)前記第1及び第2電極間で1つの周波数を有する少なくとも1つの電気信号を確立するステップと、
(D)前記第1及び第2電極間で少なくとも1つの周波数で上皮下インピーダンス(Zsub)を測定するステップと、
(E)ステップ(A)〜(D)からは独立した方法によって、推定又は計算されたマンモグラフィ乳腺密度へZsubを関連付けるアルゴリズムにしたがって前記乳腺密度の推定値を取得するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記アルゴリズムは、(i)前記個人の特性、(ii)その下で電気的測定が行われる条件、又は(iii)(i)及び(ii)の両方と関連している変量を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変量は、個人の年齢、BMI(ボディマス指数)、体重、経産歴、前記個人が閉形前女性であるかどうか、前記個人が閉経後女性であるかどうか、女性個人が月経周期中である場合、及び皮膚表面電極が配置されている前記乳頭からの距離からなる群より選択される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
乳腺密度を推定又は計算するための前記独立した方法は、X線、超音波及びMRI(磁気共鳴イメージング)からなる群より選択される画像に基づくことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
X線画像に基づく前記方法は、Wolfeパターン、6カテゴリー分類、BI−RADS、ACR BI−RADS、面積測定法、画像デジタル化、デジタルX線画像の双方向性閾値、X線画像のテクスチャ測定、コンピュータ援用計算画像テクスチャ測定、コンピュータ断層撮影(CT)イメージング、乳房断層合成法、二重エネルギーX線吸収法及びデジタルマンモグラフィからなる群から選択される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アルゴリズムは、
(I)MD=141.788+(−0.716*年齢)+(−1.113*BMI)+(−0.199*Zsub)、
(II)MDpmw=127.770+(−1.339*BMI)+(−0.259*Zsub)及び
(III)MDpstmw=127.178+(−0.874*年齢)+(−0.219*Zsub)
からなる群より選択される、ここで、記号*は、記号に先行する、及び後に続く用語の乗算を示し、BMIは、(体重*703)/身長2(インチ2)、又は、体重*4.88/身長2(フィート2)として計算されたボディマス指数であり、体重の単位はポンドであり、ZsubはΩで表され、年齢は歳で表され、MDpmwは、閉形前女性についてのマンモグラフィ乳腺密度であり、MDpstmwは、閉経後女性についてのマンモグラフィ乳腺密度である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
Zsubは、以下の方程式、
ADJZsub=ZsubM/ZsubDFN(式中、下付きM=測定値)及び
ZsubDFN=169.512+(6.668*DFN)
にしたがって、前記電極が配置される前記乳頭からの距離について調整(ADJZsub)される、ここで、DFNは、電極が配置される乳頭からの距離(cm)である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
Zsubは、前記電極が配置される前記乳頭からの前記距離について調整(ADJZsub)され、前記アルゴリズムは、
(I)MDpmw=131.936+(−1.444*BMI)+(−54.752*ADJZsub)、又は
(II)MDpstmw=120.178+(−0.869*年齢)+(−39.179*ADJZsub)
からなる群より選択される、ここで、MDpmwは、閉形前女性についてのマンモグラフィ密度であり、MDpstmwは、閉経後女性についてのマンモグラフィ密度であり、ADJZsubは、ZsubM/ZsubDFN(下付きMは測定値)であり、ZsubDFNは、169.512+(6.668*DFN)であり、DFNは、前記電極が配置される前記乳頭からの距離(cm)である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
実質的に無症候の女性患者が乳房における増殖性もしくは前癌性変化を有することが見いだされる、又は前癌性もしくは癌性変化を発生させる引き続いたリスク状態にある可能性があるリスクを評価する方法であって、
(A)第1電極と、前記患者の乳房内の上皮下実質組織との接続を確立するステップと、
(B)少なくとも1つの第2電極を、前記乳房の前記乳頭から一定距離で前記上皮下組織に隣接した前記乳房の皮膚表面と接触させて配置するステップと、
(C)前記第1及び第2電極間で1つの周波数を有する少なくとも1つの電気信号を確立するステップと、
(D)前記第1及び第2電極間で少なくとも1つの周波数で上皮下インピーダンスを測定するステップと、
(E)前記患者に関連する変量に応じて前記患者についての乳房実質組織の上皮下インピーダンスの推定値(Zsube)を取得するステップであって、
当該ステップは、以下の方程式、
Zsube=107.753+(1.083*年齢)+(−1.074*乳腺密度)+(3.196*BMI)に基づいて取得され、ここで、年齢は歳で測定される。乳腺密度は%で表示され、マンモグラム上の乳腺の外観から推定される。また、BMIは、体重(ポンド)*703/身長2(インチ2)、又は体重(ポンド)*4.88/身長2(フィート2)と規定される、ステップと、
(F)前記患者についての乳房実質組織の上皮下インピーダンス(Zsubm)の少なくとも1つの測定値を取得するステップと、
(G)Zsubm/Zsubeの比率についての数値を計算するステップであって、ここで、Zsubm/Zsubeの比率が約0.8未満又は約1.2超であることを前提にして、女性患者が乳癌を有する、もしくは乳癌を発生する増加したリスク状態にあると見いだされる統計的に有意に増加したリスクがあるものである、ステップと
を含む、方法。
【請求項10】
実質的に無症候の女性患者が乳房における増殖性もしくは前癌性変化を有することが見いだされる、又は前癌性もしくは癌性変化を発生させる引き続いたリスク状態にある可能性があるリスクを評価する方法を実施するためのコンピュータ実行可能な命令を有するコンピュータ可読媒体であって、前記方法は、
(A)第1電極と、前記患者の乳房内の上皮下実質組織との接続を確立するステップと、
(B)少なくとも1つの第2電極を、前記乳房の前記乳頭から一定距離で前記上皮下組織に隣接した前記乳房の皮膚表面と接触させて配置するステップと、
(C)前記第1及び第2電極間で1つの周波数を有する少なくとも1つの電気信号を確立するステップと、
(D)前記第1及び第2電極間で少なくとも1つの周波数で前記上皮下インピーダンスを測定するステップと、
(E)前記患者に関連する変量のためのインプット値に基づいて前記患者についての乳房実質組織の上皮下インピーダンスの推定値(Zsube)を計算するステップであって、
当該ステップは、以下の方程式、
Zsube=107.753+(1.083*年齢)+(−1.074*乳腺密度)+(3.196*BMI)
に基づいて計算され、ここで、年齢は歳で測定され、乳腺密度は%で表示され、マンモグラム上の乳腺の外観から推定され、BMIは、体重(ポンド)*703/身長2(インチ2)、又は、体重(ポンド)*4.88/身長2(フィート2)と規定されている、ステップと、
(F)前記患者についての乳房実質組織の上皮下インピーダンス(Zsubm)の少なくとも1つの測定値を得るステップと、
(G)Zsubm/Zsubeの比率についての数値を計算するステップであって、ここで、Zsubm/Zsubeの比率が約0.8未満又は約1.2超であることを前提にして、女性患者が乳癌を有すると見いだされる統計的に有意に増加したリスクがあるものである、ステップと
を含む、コンピュータ可読媒体。
【請求項11】
個人の少なくとも1つの乳房のマンモグラフィ密度(MD)を推定する方法を実施するためのコンピュータ実行可能な命令を有するコンピュータ可読媒体であって、前記乳房は覆っている皮膚表面及び乳頭を含み、当該方法が、
(A)第1電極と、前記個人の乳房内の上皮下実質組織との接続を確立するステップと、
(B)少なくとも1つの第2電極を前記乳房の前記乳頭から一定距離で前記上皮下組織に隣接した前記乳房の皮膚表面と接触させて配置するステップと、
(C)前記第1及び第2電極間で1つの周波数を有する少なくとも1つの電気信号を確立するステップと、
(D)前記第1及び第2電極間で少なくとも1つの周波数で前記上皮下インピーダンス(Zsub)を測定するステップと、
(E)ステップ(A)〜(D)から独立した方法によって、推定又は計算されたマンモグラフィ乳腺密度へZsubを関連付けるアルゴリズムにしたがって前記乳腺密度の推定値を計算するステップと
を含む、コンピュータ可読媒体。
【請求項12】
前記アルゴリズムが、
(I)MD=141.788+(−0.716*年齢)+(−1.113*BMI)+(−0.199*Zsub)、
(II)MDpmw=127.770+(−1.339*BMI)+(−0.259*Zsub)及び
(III)MDpstmw=127.178+(−0.874*年齢)+(−0.219*Zsub)
からなる群から選択され、ここで、記号*は、記号に先行する、及び後に続く用語の乗算を示し、BMIは、(体重*703)/身長2(インチ2)、又は(体重*4.88/身長2(フィート2)(式中、体重の単位はポンドである)として計算されたボディマス指数であり、ZsubはΩで表され、年齢は歳で表され、MDpmwは、閉形前女性についてのマンモグラフィ密度であり、MDpstmwは、閉経後女性についてのマンモグラフィ密度である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Zsubは、以下の方程式、
ADJZsub=ZsubM/ZsubDFN(下付きMは測定値)、及び
ZsubDFN=169.512+(6.668*DFN)
に従って、前記電極が配置される前記乳頭からの前記距離について調整(ADJZsub)される、ここで、DFNは、前記電極が配置される前記乳頭からの距離(cm)である請求項11に記載の方法。
【請求項14】
Zsubは前記電極が配置される前記乳頭からの前記距離について調整(ADJZsub)され、前記アルゴリズムは、
(I)MDpmw=131.936+(−1.444*BMI)+(−54.752*ADJZsub)、又は
(II)MDpstmw=120.178+(−0.869*年齢)+(−39.179*ADJZsub)
からなる群より選択され、ここで、MDpmwは、閉形前女性についてのマンモグラフィ密度であり、MDpstmwは、閉経後女性についてのマンモグラフィ密度であり、ADJZsubは、ZsubM/ZsubDFN(下付きMは測定値)であり、ZsubDFNは、169.512+(6.668*DFN)(DFNは、前記電極が配置される前記乳頭からの前記距離(cm))である請求項11に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2011−505966(P2011−505966A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537954(P2010−537954)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/013567
【国際公開番号】WO2009/082434
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(507349477)エピ‐サイ,リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/013567
【国際公開番号】WO2009/082434
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(507349477)エピ‐サイ,リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (3)
【Fターム(参考)】
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