説明

乳腺炎の発症を減少する方法

本発明は、感染の減少を含む動物における乳腺炎の発症の減少方法、及びそのための組成物と器具に関する。特に、しかし排他的ではなく、本発明は、乳頭の管及び/または乳頭の腺に外因性ケラチンを含む組成物を適用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2006年8月18日に出願されたニュージーランド仮特許出願549249の優先権の利益を享受し、当該出願は参考として全体としてここに取り込まれる。
【0002】
本発明は、感染の減少を含む動物における乳腺炎の発症の減少方法、及びそのための組成物と器具に関する。特に、しかし排他的ではなく、本発明は、乳頭の管及び/または乳頭の腺に外因性ケラチンを含む組成物を適用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
乳腺炎は、ほとんどの場合乳頭管を介して乳腺に侵入する細菌によって引き起こされる乳腺の炎症である。乳頭管及び線条管におけるケラチンの沈着は、一時的な防御メカニズムを形成する。ケラチンは、乳頭管から槽(乳頭の管)への細菌の移動を制限する高濃度の天然に存在する抗菌物質を含む。
【0004】
線条管に蓄積するケラチンの防御栓は搾乳の間で外れる。更にケラチンの栓は、乳分泌期の牛よりも断乳中の牛において体積が増大している。乳腺炎に対する疑いは、通常の搾乳、特に乳頭の管の周辺における乳頭の組織の損傷を引き起こす機械的な搾乳工程によって悪化する。ケラチンの栓が、搾乳をやめた後に正確に再形成されないのであれば、ウシは乳分泌期間の間で搾乳を再開する際に乳腺炎に罹患するずっと高い可能性を有する。
【0005】
国際特許出願番号PCT/NZ2004/000231(公開番号WO2005/027775)は、乳頭の管内に内因性ケラチンの沈着及び維持を促進するための器具を記載している。更に前記器具は、処理物質を送達できるシリコーンのような事前に形成されたマトリックスからなっても良い。前記器具は、注入される組成物の体積について制御するための物質の正確な配置を提供することができない低粘度のペースト及びゲルと対比される。
【0006】
前記器具は乳頭管に維持され、搾乳の前に除去する必要がある。この必要性は、牛から搾乳する手動の過度の方法に更なる工程を導入する。
【0007】
国際特許出願番号PCT/SE98/00776(公開番号WO98/48627)は、ウシの乳を分泌されるための漬乳頭溶液を記載している。前記漬乳頭溶液は、乳腺炎に対する予防または傷の治癒の治療のために使用される。前記漬乳頭溶液は、ヘパリン、硫酸ヘパリン、及び硫酸デキストランから選択されるポリサッカリドと組み合わせたキトサンを含む。
【0008】
記載された組成物は、米国特許第4,472,374号に記載されたもののような乳腺炎を減少するための他の獣医学的組成物の変形例である。これらの後者の組成物は、乳頭管に直接導入される。乳頭管にこれらの組成物を導入する間、沈着していても良い内因性ケラチンは外れ、それによって感染に対する天然の防御を減少する。更に、処理されたウシから回収された乳がヒトの食物連鎖に入ってもよい場合、これらの組成物の使用は制限を与えられることになる。
【0009】
商標名TEATSEAL及びORBESEALの製品は抗菌組成物である。これらの製品は油性ベースにおいて次硝酸ビスマスを含む。前記組成物は、シールを形成するために乳頭に前記組成物を注入するためのインジェクターにおいて供給される。この処理の三日以内に動物から回収され、ヒトの消費のために企図される乳は廃棄しなければならない。従って、処理されたウシから回収された乳または初乳が販売できないのであれば、酪農家に対して商業上の不利益が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際特許出願番号PCT/NZ2004/000231(公開番号WO2005/027775)
【特許文献2】国際特許出願番号PCT/SE98/00776(公開番号WO98/48627)
【特許文献3】米国特許第4,472,374号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来技術の不利益の一つ以上を解消し、または少なくとも有用な選択肢を公衆に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第一の特徴点では、本発明は、動物の乳頭管にケラチンを含む組成物を導入する工程を含む、動物における乳腺炎の発症の減少方法を広く包含する。典型的に前記方法は、最近断乳された動物において、または動物の非乳分泌期間の間で使用される。好ましくは前記動物はウシである。
【0013】
第一の変形例では、前記組成物は、器具、例えばシリンジによる導入に適した形態を有する。好ましくは前記組成物はペーストの形態を有する。最も好ましくは前記組成物は、0.1×10cPから1.5×10cPの間の粘度を有する。
【0014】
第二の変形例では、前記組成物は手による導入に適した形態を有する。好ましくは前記組成物はワックス様の固体の形態を有する。最も好ましくは前記組成物は、スティックまたはペグの形状に事前に成型される。
【0015】
第二の特徴点では、本発明は、動物の乳頭管に導入するように製剤化されたケラチンを含む組成物を広く包含する。好ましくは前記動物はウシである。
【0016】
第一の実施態様では、前記組成物はペーストである。好ましくは前記組成物は、0.1×10cPから1.5×10cPの間の粘度を有する。
【0017】
第二の実施態様では、前記組成物はワックス様の固体である、好ましくは前記組成物は、スティックまたはペグの形状に事前に形成される。
【0018】
好ましくは前記組成物は、乳由来の媒体に配合されたケラチンを含む。好ましくは前記組成物は、水性媒体に配合されたケラチンを含む。好ましくは前記組成物は、食品グレードの液体媒体に分散されたケラチンを含む。より好ましくは食品グレードの液体は脂肪酸またはグリセリドである。最も好ましくは食品グレードの液体はステアレートである。
【0019】
任意に前記組成物は、一つ以上の外因的に提供される抗菌物質を更に含み、前記物質は脂肪酸及びラクトフェリンからなる群から選択される。
【0020】
第三の特徴点では、本発明は、動物の乳頭管にケラチンを含む組成物を導入するように適応した器具を広く包含する。好ましくは前記ケラチンは、0.1×10cPから1.5×10cPの間の粘度を有する物理的に加工されたケラチンを含む組成物を提供するように物理的に加工される。好ましくは前記器具はシリンジである。
【0021】
第四の特徴点では、本発明は、動物の乳頭管にケラチンを含む組成物を導入する工程を含む、動物の乳腺に白血球増加症、例えば短期的な白血球増加症を誘導する方法を広く包含する。好ましくは前記組成物は、上記記載の形態を有する。
【0022】
特定の実施態様では、前記方法は、細菌感染から乳腺を保護することを目的として、短期的な白血球増加症を刺激し、引き続き分解する。典型的に前記方法は、最近断乳した動物において、または動物の非乳分泌期間の間で使用される。好ましくは前記動物はウシである。
【0023】
本発明は、添付の図面の図と一つ以上の非制限的な実施例を参考にして詳細に記載されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、乳頭管への容易な注入を可能にする本発明の第二の特徴点の第二の実施態様に係る組成物の形状を示す。
【図2】図2は、実施例4に記載された10日間の観察期間に亘る、個々のウシの体細胞カウントの変換された(自然対数+1)を示す。全ての他のウシが処理された。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明者は、出産に引き続く処理されたウシから回収された乳を保留する期間の必要のない、ウシの乳頭管に導入するための組成物を提供するという利点を認識した。確立されている保留期間を導き得る化学的変性または副産物を避ける組成物を提供するためのケラチンの物理的加工の使用が特に有利である。
【0026】
本発明の好ましい実施態様では、動物の乳頭管に導入するための組成物が提供され、前記組成物は、外因的に準備されて物理的に加工されたケラチンと食品グレードの物質のみを含む。ヒトの消費のための乳及び他の乳製品の生産において使用される動物の非乳分泌期間の間で使用される場合、本発明の利点は最も容易に認識されるであろう。別の実施態様では、動物は乳生産動物、例えばウシ、ヤギ、ヒツジ、バッファロー、及びヤクからなる群から選択される乳製品動物である。
【0027】
乳頭管への導入を容易にする粘度を有する組成物を提供するためにケラチンは加工され、乳圧として乳頭管から容易に押し出されて、その後直ぐに搾乳の中断をもたらす組成物を導かないようにする。各種の実施態様では、粘度の範囲は約0.1×10cPから約1.5×10cPである。他の実施態様では、粘度の範囲は約0.5×10cPから約1.0×10cP;約0.75×10cPから約1.25×10cP;または約0.7×10cPから約約0.9×10cPである。更なる実施態様では、粘度は約0.1×10cP、約0.2×10cP、約0.3×10cP、約0.4×10cP、約0.5×10cP、約0.6×10cP、約0.7×10cP、約0.8×10cP、約0.9×10cP、約1.0×10cP、約1.1×10cP、約1.2×10cP、約1.3×10cP、約1.4×10cP、または約1.5×10cPである。
【0028】
任意に前記組成物は、一つ以上の外因的に準備された抗菌物質を更に含み、例えば前記物質は、フコシル化オリゴサッカリド、グリコプロテイン、例えばラクトフェリン及びラクトアドヘリン、脂肪酸、例えば遊離脂肪酸、長鎖不飽和脂肪酸、及び中鎖飽和脂肪酸、及びリゾチームからなる群より選択される。可能であれば抗性処理を避けて、前記組成物は、一つ以上の抗生剤、例えばセファピリン(例えばCEFA−LAK7)及びオキシテトラサイクリン、並びに一つ以上の抗炎症治療剤、例えばオキシトシン及びフルニキシンメグルミン(例えばBANAMINE7)と共に前記組成物を使用できることが好ましい。
【0029】
前記組成物は、一つ以上の生理学的に許容可能な成分、例えば希釈剤、担体及び/または賦形剤、及び/または一つ以上の安定剤、増粘剤、フィラー、乳化剤、コーティング剤、潤滑剤、バインダー、バッファー、界面活性剤、可塑剤、着色剤、防腐剤(例えば抗菌剤)、製剤ビヒクル、またはそれらのいずれかの組合わせを含むこともできる。特定の特徴点では、前記組成物は、挿入のための滅菌形態で提供される。例えば前記組成物は、ガンマ線、X線、または電子ビーム照射、あるいはラジオアイソトープ源照射、例えばコバルト−60によって滅菌できる。
【0030】
前記組成物は、手によって、または器具の使用によって挿入できる。乳頭管への本発明の組成物の導入に適した器具は当業者に既知である。例えば、国際特許出願番号PCT/US02/07100(公開番号WO02/070057)は、一方の末端で提供される複合平滑先端カニューレを有する延長シリンジから形成された医薬の投与のためのアプリケーターを記載している。事前に決められた量の組成物を乳頭管に導入し、その後断乳前に最後の搾乳をすることにより、乳腺炎に対するウシの天然の防御を高めるという更なる利点が提供される。外因的に準備されたケラチンの導入によって提供されたバリア保護を内因性ケラチンの沈着と組み合わせて増強する。
【0031】
本発明の組成物及び方法は、感染(例えば細菌感染)の発症を減少するために使用できる。好ましい実施態様では、本発明は、動物における乳腺炎の発症を減少する方法を包含する。本発明は更に、動物における白血球増大症を誘導する方法を包含する。特定の特徴点では、前記方法は、断乳させた後の期間の間で細菌感染から乳腺を保護することを補助するために、短期的な白血球増加症を刺激するために使用できる。これは、感染に対して最も感受性の期間であろう。ここで使用される用語「減少」(例えば感染の発症の減少)は、感染を防止、治癒、または改善すること、あるいは少なくともそのような感染の症状を減少することを含むことができる。特にこれは、感染の発症を防止または遅延すること;感染の物理的効果を治癒、矯正、減少、遅延、または改善すること;及び/または感染から由来する苦痛または苦しみを防止、終結、減少、または改善することを含む。
【0032】
以下の非制限的な実施例は、本発明の提案された組成物及び方法を記載する。
【実施例】
【0033】
ここに記載される実施例は、本発明の実施態様を説明する目的を有する。他の実施態様、方法、及び分析のタイプは当業者の範囲内にあり、ここに詳細に記載される必要はない。当該技術分野の範囲内にある他の実施態様は、本発明の一部であるとして考慮される。
【0034】
実施例1
組成物は、水性または液体媒体のいずれかの中のケラチンである。軟膏またはゲルの形態である場合、前記組成物は、0.1×10cPから1.5×10cPの範囲内の粘度を有する。適当なノズル(例えば挿入を妨げる首当てを有する断乳したウシの処置のために使用されるノズル)を有するシリンジを使用して、乳頭管に前記組成物を導入する。固体または半固体の形態で存在する場合、前記組成物は手動で挿入できるペグまたはピン内に搭載される。乳頭管に容易に挿入可能である形状(1)が図1に説明されている。
【0035】
前記組成物は、断乳(非乳分泌期間)の前で最後の搾乳の直後に導入される。いずれかの残余の材料を取り出すために、最初の搾乳の前三ヶ月ごとに4分の一ずつを手で搾り出す。内因性ケラチンの分泌と移動によってこれの前に栓を手で押し出しても良い。有利には、ケラチン単独、またはケラチンと食品グレードの物質とを含む組成物は、ヒトの消費のために企図される乳または初乳を保留する期間を設ける必要がないであろう。本発明者は、例えば初乳製品の価値としてこの重要性が増大していることを認識している。
【0036】
実施例2
ケラチンの乳頭シールの研究
乳腺内注入のための適切な稠性を有する加工化ケラチンの提供を得た。最初にin vitroで、次いでin vivoでの試験のために製品を使用した。ウシの乳頭と似た環境において物理的形態を維持するための製剤の能力を測定するために、最初の実験を実施した。
【0037】
乳及び水中でのケラチンベースの乳頭密封材についての観察
この研究の目的は、水と乳という二つの異なる環境においてin vitroで含漬した際の、ケラチンベースの乳頭密封材の安定性についての観察を得ることを目標に含んだ。
【0038】
試験材料
試験材料は、所望の孔より小さい注入のための取り付け具を有する2mlのシリンジとしての実装体に達した。試験材料はガンマ線(潜在的に非滅菌性であるが)に曝露されていることが報告された。
【0039】
研究方法
約0.5mlの試験製品を二つの60mlの滅菌容器に搾り出し、約35mlの乳または水を各容器に添加した。容器をダンボール箱中で冷蔵庫のドアに貯蔵し、試験製品に対する巨視的な変化を毎日一度視覚的に観察した。
【0040】
観察時に、ダンボール箱を約5分間冷蔵庫から取り出して容器を取り出した。各容器を開き、乳を捨てて視覚的観察を実施し、乳を容器に戻した。水の容器の蓋を外し、観察を実施して蓋を戻した。
【0041】
箱を冷蔵庫に戻した直後に、観察を以下のように毎日記録した。
【0042】
現象のスケジュール
【表1】

【0043】
結果
【表2】

【0044】
結論
ケラチンは、環境中の浸透圧の差異に非常に感受性であるようであった。断乳期間に亘るいずれかの時期で、乳頭中には低浸透圧環境が存在するであろう。高浸透圧環境が存在する可能性も高い。
【0045】
更に、乳中の成分に対する表面曝露により、ケラチンベースの乳頭密封材のわずかな分解が生じることもあり得る。そうであれば、このタイプの曝露は、断乳期間の間で、断乳したウシの分泌物が乳とほぼ同様である退縮と初乳生成の間で、生じる可能性が非常に高い。このため、より定量的なアプローチで、浸透圧の影響を単純に調査することを可能にするために、媒体として通常の塩水を含むように、観察を繰り返すべきであることが結論付けられた。
【0046】
実施例3
各種の浸透圧の影響を測定するための、乳、蒸留水、及び塩水中の提案されたケラチンベースの乳頭密封材についてのin vitro観察
この研究の目的は、蒸留水、塩水、及び乳中にin vitroで含浸した際の、ケラチンベースの乳頭密封材の安定性の観察を得ることを目標に含んだ。
【0047】
試験材料
試験材料は、所望の孔より小さい注入のための取り付け具を有する2mlのシリンジとしての実装体に達した。試験材料はガンマ線(潜在的に非滅菌性であるが)に曝露されていることが報告された。受け取った材料の半分を、前記実施例に記載されたように予備的観察のために使用した。
【0048】
研究方法
少量の試験製品(それぞれ約0.3ml)を3つの滅菌容器に搾り出し、約12mlの蒸留水、塩水、または乳を容器の一つずつに添加した。空の場合、ケラチンベースの乳頭密封材を添加した後、及び処理液を添加した後の3つの場合で各容器を計量した。容器を発泡スチロールの箱中で室温に貯蔵し、試験製品に対する巨視的変化について毎日一度視覚的に観察した。
【0049】
観察時に、約5分間容器を発泡スチロールの箱から取り出した。試験物質を含む容器を調べ、(必要であれば)試験材料の寸法の測定と記録を可能にするように逆さまにした。観察後、各容器を発泡スチロールの箱に戻した。各観察時で結果を記録した。重量を測り、試験の最後で記録した(観察6)。開口前と液を捨てた後に、各容器を計量した。特に蒸留水を含む容器においては、いくらかの残余の液が存在した。可能であれば、異なる媒体中の試験材料の写真を撮影した。
【0050】
現象のスケジュール
【表3】

【0051】
結果
表1:試験の開始時の測定
【表4】

グラム単位;ミリメーター単位;ケラチンベースの乳頭密封材の添加後の容器の重量;ケラチンベースの乳頭密封材と媒体の添加後の容器の重量
【0052】
各試験時の測定値と視覚的観察が、各媒体について表2−4で示されている。
【0053】
表2:乳中のケラチンベースの乳頭密封材についての各観察の記録
【表5】

試験数;以前の観察からの幅の変化(=以前の観察−今回の観察);以前の観察からの高さの変化(=以前の観察−今回の観察);明白な変化なし
【0054】
表3:蒸留水中のケラチンベースの乳頭密封材についての各観察の記録
【表6】

試験数;以前の観察からの幅の変化(=以前の観察−今回の観察);以前の観察からの高さの変化(=以前の観察−今回の観察);試験材料が一片となっていない;5明白な変化なし
【0055】
表4:塩水中のケラチンベースの乳頭密封材についての各観察の記録
【表7】

試験数;以前の観察からの幅の変化(=以前の観察−今回の観察);以前の観察からの高さの変化(=以前の観察−今回の観察);明白な変化なし
【0056】
各種の媒体中の試験材料の幅または高さで生じた変化が表5に示されている。乳及び塩水中では幅または高さのいくらかの減少が存在し、蒸留水中では測定値の増大が存在した。NB:蒸留水中での測定値は、容器によって規定された試験材料の形態として基づく。
【0057】
表5:試験の間の試験材料の幅と高さの変化(ミリメーター単位)
【表8】

【0058】
各種の媒体中の試験材料の重量で生じた変化が表6及び7に示されている。全ての3種の媒体中の試験材料の重量において有意な増大が存在し、蒸留水中で最高の増大が存在した。
【0059】
表6:試験の前後での各種の媒体中のケラチンベースの乳頭密封材の重量の変化(グラム単位)
【表9】

容器のみの重量;容器とケラチンベースの乳頭密封材(KBTS)との重量;容器、KBTS、及び液体の重量;容器とKBTSとの試験の最後での重量;容器、KBTS、及び液体の試験の最後での重量
【0060】
表7:試験の開始時と最後で比較した、各種の媒体中の試験物質の重量の変化(グラム単位)
【表10】

【0061】
試験の間で媒体の重量で生じた変化が表8に示されている。媒体の重量は減少し、蒸留水の重量の減少が最も大きかった。
【0062】
表8:試験の開始時と最後で比較した媒体の重量の変化(グラム単位)
【表11】

【0063】
議論と結論
台所の冷蔵庫の温度で維持した際の二つの異なる媒体(乳及び生水)における予備的観察により、ケラチンベースの乳頭密封材に対する浸透圧の見かけの著しい効果が示された。本試験は、室温で異なる浸透圧を有する媒体に曝露した際の、ケラチンベースの乳頭密封材の重量の変化と膨潤を定量するために実施された。
【0064】
予備的観察(実施例2)及び本試験の結果は、環境の浸透圧の変化にケラチンが高度に感受性であるようであるという観察で一致する。低浸透圧環境は、断乳期間に亘るいずれかの時点の乳頭末端で存在するという可能性はあまりない。かくして、少なくとも搾乳期間での適用の後、ケラチンベースの乳頭密封材の物理的特徴に浸透圧が影響する可能性はほとんどない。
【0065】
本試験の間で、試験材料の重量は各種の媒体において有意に影響され、低浸透圧媒体中のケラチンの親水性と見かけ上関連している。興味深いことに、同じ浸透圧を有する媒体では、より大きな重量の増加が塩水よりも乳で生じたが、これは重要性を確立するために複数でデザインされた実験において更に試験される必要があるであろう。
【0066】
前記材料の表面は乳中でよりペースト状になるようであったが、これは乳中の物質の曝露が、ケラチンベースの試験密封材への部分的な分解または吸着していたことを示唆している。そのような曝露は、断乳期間の間、特に退縮と初乳生成の間で生じる可能性がある。塩水中より乳中でのより大きな重量の増加は、乳中の物質と反応して生ずると仮説付けられた。
【0067】
試験材料の物理的寸法もまた、高さと幅の変化によって示されるように変化した。蒸留水中での膨潤は試験材料の完全性の変化を導き、試験材料が粒状となりより小さな断片に壊れた。乳及び塩水中では、幅と高さの小さな変化が観察された。これらは材料の圧縮(密度の増大)のため、または乳中でのいくらかの分解のため、おそらくこの媒体中の物質との化学的反応のために生じたと説明された。
【0068】
乳はヨーグルト状となり、そのため重量の最後の測定は過剰見積もりであったため、観察6では、乳からの試験材料の抽出は困難であったことに注意すべきである。更に、搾り出す間で、空気に曝露されたケラチンベースの乳頭密封材はノズル中で乾き、ノズルの取り付け具を通じて搾り出すのが困難となることが見出された。見かけの水和または脱水に対する感受性の意味は、シリンジに貯蔵され、各種の湿度条件下で貯蔵された際のケラチンの性質の変化の可能性を示すが、これは処理チューブをキャップすることによって制御できる。
【0069】
このため、製品のバッチが、この製品がウシの乳頭に以前に配置されていない、フィールド試験においてこの提案された製品を試験する前の少数のウシにおいて提案された処理の刺激性をチェックするための試験を実施するために得られるはずであると結論付けされた。
【0070】
実施例4
乳分泌期間の乳製品家畜に投与された調査中のケラチンベースの乳頭内への内部乳頭密封材の刺激性と許容性の測定
この調査の目的は、3ヶ月当たり1のシリンジを乳分泌中の乳製品家畜に注入した際の投与の刺激性と許容性について、乳頭内ケラチンベースの内部乳頭密封材製剤を評価することを目的に含んだ。この製品の刺激性は、ウシにおける実験によってのみ試験できた。断乳中の乳製品家畜は、製品の提案された使用のための標的動物である。初期の刺激性と許容性の試験のため、乳分泌中のウシを使用した。この実験は、獣医学的医薬スタンダードのコンプライアンスのためにデザインされた。
【0071】
材料と方法
Massey Universityのナンバー1乳製品群での臨床上健康な家畜を使用した。研究の開始の30日以内で抗生調製物で処理されているウシ、または衰弱し、疾患に罹患し、若しくは怪我した気難しい、またはさもなければ注入に不適切なウシは使用しなかった。乳腺の健康状態を、触診及びRapid Mastitis Testによってチェックした。いずれかの三ヶ月で触診異常を有した動物、または1日目でRMT試験のポジティブを有したウシ(微量以上)を試験に割り振らなかった。規則群試験スキームからウシの体細胞情報をスクリーニングした。遅くとも処理日前に>250,000細胞/mlのカウントを有する動物は、この試験に割り振らなかった。最低のSCCを有し、RMT試験でネガティブであり、4期の機能的な三ヶ月を有し、乳腺炎または乳頭の異常の臨床的な兆候のないウシを試験に割り振った。
【0072】
Massey University, Palmerston NorthのAgricultural Farm Servicesの乳製品ナンバー1から選択され、100,000未満の個々のウシの体細胞カウントを有し、RMTチェックでネガティブであり、乳腺が三ヶ月のいずれでの触診異常を有さない8頭のウシを実験に割り振った。試験に割り振られた全てのウシは、4期の機能的な三ヶ月を有する乳分泌動物であった。実験動物を牧場に囲み、実験の間で単一の群れとして放牧した。ウシを同じように管理し、その健康状態に関して注意した。
【0073】
実験は、その耳のタグの数字を使用して公平な態様で割り当てられた6頭の処理ウシと2頭の非処理コントロールウシを含んだ。ウシを昇り順で耳のタグの数字に従ってランク付けし、ネガティブコントロール(ランク4及び5に配置されたなら)または処理群(記録されたウシの残りについて)に割り付けた。実験ユニットはSCCレベル用のウシであったが、データは残余の製品及び処理後の臨床上の試験観察について三ヶ月レベルで集積した。処理群由来のウシは、午後の授乳時に乳頭内注入により試験中のケラチンベースの内部乳頭密封材の一回の処理を受け、ネガティブコントロールのウシは処理されなかった。
【0074】
処理を適用する前と、操作者から最も遠い部分の乳腺の乳頭で開始する際に、私物の乳頭ワイプ(エタノール70%、クロルヘキシジン0.1%、及びセトリミド0.16%)で乳頭を二度拭き取った。乳頭の末端は視覚的に清浄であり、汚物や糞便の混在は有していなかった。第二の拭き取りまたは試験密封材の適用の前に、乳頭を完全に乾かした。操作者から最も近い乳頭を、混在を最小化するために最初に処理した。部分的な挿入法を使用して処理を投与した。適用後、両群の全ての乳頭を希釈したヨウ素試験スプレーでスプレー処理した。供給者によって製造された製品の試験バッチを使用した。
【0075】
刺激の検出のための実験を、経験的な乳製品技術によって全ての三ヶ月で実施した。個々の三ヶ月で、刺激と乳腺炎の指標である臨床上の兆候、即ち熱、膨潤、乳腺の痛み、または分泌物中の凝集物や塊の存在の有無を観察して触診した。各三ヶ月で、上述の指標に従って刺激性(一日に亘り2より多いスコア、トータル4以上のスコアの点数の変化)または非刺激性として主観的に判断した。乳腺と試験実験結果の両者を、以下のパラメーターを使用して記録した:
【0076】
臨床上の評価スコアリングシステム
1:ストレス、刺激、痛み、紅斑、または浮腫なしまたは視覚的になし;
2:わずかな強度のストレス、刺激、または痛み、あるいはわずかな紅斑または浮腫(十分に規定される);
3:中程度のストレス、刺激、または痛み、あるいは中程度の紅斑または浮腫;
4:重篤なストレス、刺激、または痛み、あるいは重篤な紅斑(激しい赤みからわずかにかさぶたの形成)または重篤な浮腫(1mmを超え、曝露の領域よりも広がっている);
5:重篤なかさぶた及び/または腐食。
【0077】
処理後の最初の乳搾りで残った製品の量のスコアリング
処理後の最初の搾乳で残って搾り出された製品の量を、乳搾り前の乳頭の触診によって4のレベルで、及び搾り出された材料の視覚的観察で主観的に記録した。
【0078】
製品残存スコアリングシステム
「−」視覚的になし、乳頭は製品が中にあるとは感じない;
「+」1−2のみの少量のみが観察される、乳頭は製品が中にあるとは感じない;
「++」いくつかの紐、乳頭は小さな小球が中にあるように感じる;
「+++」いくらかの製品が搾り出された、乳頭の半分は製品でいっぱいである;
「++++」おそらく全ての量が搾り出された、乳頭は完全に一杯であると感じる。
【0079】
ウシは翌朝搾り出されたいずれかの残余のケラチン乳頭密封材を有し、受け取った残余の試験材料の量を記録した。処理後の最初の3日間についての各搾乳時で、組織の刺激または乳腺炎の兆候についてウシを臨床的に評価した。処理後の10日間で、搾乳を通じて集積した乳の約2%のサンプルである代表的な乳サンプルを、"Westfalia"インラインサンプリング容器にウシから回収した。乳サンプルは、ウシのレベルを代表するものであり、SCCの試験と記録のためのサブサンプルであった。体細胞カウンティングのためのサンプルを、2007年8月6日にSCCレベル測定についてLivestock Improvement Corporation(LIC)研究所(Testlink)に提出した。ICSCCをFossomatic細胞カウンターを使用して測定した。SCCレベルの変化を計算するために、自然対数+1の平均値とその95%信頼区間を使用した。
【0080】
結果
研究の質または完全性に影響する環境は知られていなかった。調査中の処理と関連する健康上の問題または副作用は観察されなかった。処理は管理者及び試験システムの両者に許容可能であったが、小さなノズルのシリンジの使用は、製品のシリンジ能力を幾分減少した。炎症または刺激の視覚的なまたは触診可能な臨床上の兆候は、表9に示されているように評価期間の間で観察されなかった。
【0081】
ネガティブコントロール群と比較した場合の処理群における体細胞カウントは3−4日間で評価され、9日目までにネガティブコントロール動物のレベルに達した。体細胞の増大は、乳腺の防御機構の刺激を表している。ケラチンは、処理された乳腺における乳中に短期間の多形核細胞の著しい流入を引き起こすようであるタンパク質である。挿入された量に近づく試験材料の残余レベルは、表10に示されるように他の搾り取った結果を有する1頭のウシから回収された。SCCの迅速で有意な増大レベルは、9日までに非処理群のICSCCレベルに戻る処理後の一過的免疫刺激反応を示した(表11及び図2を参照)。
【0082】
結論
この試験は、乳分泌期間の乳製品のウシに対するケラチンベースの乳頭密封材の挿入から生ずる臨床上の認識可能な刺激が存在しないことを示している。乳腺の乳へ白血球を誘引する臨床下の炎症応用の点で、ケラチンの挿入に対して応答が存在した。臨床下の性質の点で、自発的な分解と結果のような短い継続時間は、細菌感染に最も感受性である断乳期間の最初の週において感染から乳頭を保護するように機能できた。試験製品の安全性の点で、断乳時の乳製品のウシにおいて製品を更に試験し、次いで断乳期間の乳腺炎の予防における製品の効力を試験する態様が明確に現れる。
【0083】
表9:乳製品の臨床上の実験スコア
【表12】

触診の際に、この三ヶ月は他のものよりわずかに固いが、臨床上は正常であった。より残余の乳が存在したということはないであろう。このスコアリングシステムでは、これを反映するカテゴリーは存在せず、この三ヶ月は2として悪いスコアが記載された。
【0084】
表10:搾り出された製品の量のスコア
【表13】

【0085】
表11:ICSCC詳細
【表14】

【0086】
上述の記載において、同等物が知られている数字または成分が参考とされる際、そのような同等物は個々的に示されているように取り込まれる。
【0087】
本発明は、実施例によって考えうる実施態様を参考にして記載されているが、本発明の範囲から離れることなく改良及び/または修飾がなされ得ることが予測されるべきである。
【0088】
本明細書で言及される全ての文献及び特許が、参考としてここに取り込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチンを含む組成物を動物の乳頭管に導入し、それによって前記動物における乳腺炎の発症を減少する工程を含む、動物における乳腺炎の発症を減少する方法。
【請求項2】
前記動物の非乳分泌期間の間で用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記動物がウシである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物がシリンジによる導入に適した形態で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物がペーストである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が0.1×10cPから1.5×10cPの間の粘度を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が手による導入に適した形態で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物がワックス様の固体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物はスティックまたはペグの形状に事前成型される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
動物の乳頭管に導入するように製剤化されたケラチンを含む組成物。
【請求項11】
前記動物がウシである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
ペーストである、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
0.1×10cPから1.5×10cPの間の粘度を有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
ワックス様の固体である、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
スティックまたはペグの形状に事前成型される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
乳由来の媒体に分散されたケラチンを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項17】
水性媒体に分散されたケラチンを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項18】
食品グレードの液体媒体に分散されたケラチンを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項19】
前記食品グレードの液体が脂肪酸またはグリセリドである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記食品グレードの液体がステアレートである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
脂肪酸及びラクトフェリンからなる群から選択される、一つ以上の外因的に準備された抗菌物質を更に含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項22】
動物の乳頭管にケラチンを含む組成物を導入するように適応した器具。
【請求項23】
0.1×10cPから1.5×10cPの間の粘度を有するケラチンを含む組成物を含む、請求項22に記載の器具。
【請求項24】
0.1×10cPから1.5×10cPの間の粘度を有する組成物を提供するように、ケラチンが物理的に加工されている、請求項23に記載の器具。
【請求項25】
シリンジである、請求項23に記載の器具。
【請求項26】
ケラチンを含む組成物を動物の乳頭管に導入し、それによって前記動物の乳腺中に白血球増加症を誘導する工程を含む、動物の乳腺中に白血球増加症を誘導する方法。
【請求項27】
前記動物の非乳分泌期間の間で用いる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記動物がウシである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物がシリンジによる導入に適した形態で存在する、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物がペーストである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物が0.1×10cPから1.5×10cPの間の粘度を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が手による導入に適した形態で存在する、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物がワックス様の固体である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物はスティックまたはペグの形状に事前成型される、請求項33に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−501484(P2010−501484A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524575(P2009−524575)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【国際出願番号】PCT/NZ2007/000219
【国際公開番号】WO2008/020769
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(509046114)マッセイ・ユニヴァーシティー (1)
【Fターム(参考)】