説明

乳製品および方法

本発明は、香味濃縮物、特に脂質の、凝縮された、固体の香味濃縮物の製造方法、およびそれにより製造される香味濃縮物に関する。本発明方法により、製造される香味濃縮物は、改良された香味およびその他の特性を有し、そして食品および飲料の製造に広い用途を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された香味(flavour)特性を有する、脂質の、濃縮された固体香味濃縮物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バターは、香味を高めるために料理に長く使用されてきた。他のクリーム、またはバターに由来する乳脂肪製品、たとえば無水乳脂肪(AMF:Anhydrous milkfat)、バター油(BO:butter-oil)、澄ましバター、ブールノワール(Beurre-noir)(黒バター)、褐色バター(Beurre-Noisette)およびギー(精製バター)(Ghee)、が長く知られ、調理される食べ物に香味を与えるのに使用されてきた。これらの乳脂肪製品の香味特性は、他のオイルおよび脂肪の香味特性よりも優れていると、消費者にみなされることが多い。バター、AMF,BOおよび澄ましバターに比較すると、伝統的なギー、ブールノワールおよび褐色バターの香味および香り(aroma)特質は、比較的激しく、食べ物の料理加熱に由来するもののような、香味および香りを有する。
【0003】
伝統的なギーは、バターまたはクリームのような水含有材料を蓋をしないパン中で加熱して水を飛散させ、ついで固体非脂肪相から脂肪相(ギー)を分離することにより製造される。バターはギーの製造に最も一般的に用いられる。ブールノワールおよび褐色バターはフランス料理に用いられる類似製品である。
【0004】
伝統的なギー、ブールノワールおよび褐色バターは、他の乳脂肪製品に関して、料理に用いられるときに付与する激しい香味を評価される。しかし、クリームの加熱時に生じる固体非脂肪での加熱表面の汚れは工業的規模の製造に未解決の障害となっているので、それらは小規模(典型的には、台所または家内工業)で製造されるのが一般的である。さらに、製品の過加熱は望ましくない香味を生じ、加熱方法および終点の調節は困難であり、その結果、日付を定める方法は、一貫した特性を持つ製品を製造することができなかった。これらの要因は、工業的規模の製造を妨げるようにすべて作用した。その結果、商業的に入手し得るギーの多くは、単にAMF またはBOであるが、それらは伝統的なギー、ブールノワールおよび褐色バターを望ましいものにする、激しい香味を欠く。
【0005】
Wadhwa,BindalおよびJain(“Simulation of ghee flavour in butter oil”(1977),Indian Journal of Dairy Science, 30:4;314-318)は、AMFまたはバター油から製造された模造ギー製品の乏しい香味を認識しており、さらに、まずBOを5%発酵スキムミルク粉末(スプレー乾燥されたダヒー(dahi))と混合し、ついで混合物を120℃で3分間、加熱して伝統的なデシ・ギー(desi ghee)に類似した製品における、キャラメル化された香味を得ることを開示する。同様に、20%ダヒーをBOと混合し、120℃で3分間、加熱することが、デシ・ギー香味を模倣する手段として記載されている。
【0006】
WadhwaおよJain(“Production of ghee from butter oil-A review”(1991),Indian Journal of Dairy Science, 44:6;372-374)は、バター油からギーを製造する方法を報告する。このような1つの報告された方法は、BOにダヒーを添加し、混合し、ついで混合物を120℃で3分間、加熱することである。そこに報告されている1つの法穂は、加熱されたダヒー−BO混合物にギー残渣(脂肪、タンパク、水および灰分)を添加することを含む。これらの方法により製造された香味は、「強い〜穏やかな凝乳状」、「強い〜穏やかな料理加熱された」、「強い凝乳状+穏やかな料理加熱された」、「穏やかな凝乳状+穏やかな料理加熱された」、「穏やかな凝乳状+強い料理加熱された」、および「強い凝乳状+強い料理加熱された」であると述べられた。
【0007】
乳脂肪は高含量の飽和脂肪を含む。したがって、バター、AMF,BO,澄ましバター、ブールノワール、褐色バターおよびギーは、食物に有意量の飽和脂肪を与え、ならびに脂肪を高くする。米国心臓協会は、ギーなしに調製された料理を選ぶことを薦め(http://www.americanheart. Org/presenter.jhtml?identifier=1097)、そして栄養ガイドラインは、合計および飽和脂肪摂取の減少を薦めるのが一般的である。しかし、食べ物からバターおよび澄ましバターを除去することは、食べ物に、その本質的な民族的香味および香り特性を失わせ、ならびに香味および香りの全般的損失を生じさせ得る。したがって、改良された香味特性を有する脂肪に基づく香味濃縮物を提供することは望ましく、それは食べ物の栄養特性を向上するように伝統的なバターおよび澄ましバターよりも少量で用いられ得、香味および香りの損失なしに用いられる。さらに、良好な品質のギーは現在入手し得るも模造品に比べて効果である。費用効果のよい、高品質ギーの代替物を、好ましくは望ましい香味特性を犠牲にしないで、提供することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、改良された香味特性を有する1つ以上の香味濃縮物を提供すること、または公衆に有用な選択を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様において、本発明は香味濃縮物の製造方法に関し、その方法は、
(1)脂質材料を供給すること、
(2)水性材料を供給すること、ここでその水性材料は1つ以上の砂糖および1つ以上の1級または2級アミンを含む、
(3)水性材料の沸点以上の第1温度に脂質材料を加熱すること、
(4)加熱された脂質材料を水性材料と混合すること、ならびに
(5)水性材料中に存在する実質的にすべての水が少なくとも蒸発されるまで時間、混合物を温度保持すること、を含む。
【0010】
1つの態様において、その方法は段階(5)の後に次の段階:
(6)第1温度とは異なる第2温度で混合物を第2時間保持すること、
をさらに含む。
【0011】
種々の態様において、混合物が段階(5)に保持される温度が、第1温度もしくは概ね第1温度であるか、または第1温度未満もしくはそれより高い、もう1つの温度である。
【0012】
種々の態様において、第2温度は第1温度より高いか、混合物が段階(5)で保持される温度よりも高いか、または第1温度および混合物が段階(5)で保持される温度の両方よりも高い。他の態様において、第2温度は第1温度より低いか、混合物が段階(5)で保持される温度よりも低いか、または第1温度および混合物が段階(5)で保持される温度の両方よりも低い。
【0013】
好適な態様において、水性材料は好ましくは少なくとも約40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90もしくは約95℃で、もしくは、に、加熱され、そして有用な範囲はこれらの前述の値のいずれかの間で選択され得る。
【0014】
好適な態様において、その方法は、段階(5)の後で、または好ましくは段階(6)の後で、次の任意の段階の1つ以上を含む:
(7)混合物が冷却されること、
(8)混合物は、固体物を除去するために分離装置を通過されること、
(9)混合物は包装されること。
【0015】
種々の態様において、脂質材料は、食用油、牛脂、酪農製品脂肪、乳脂、変性食用油、変性牛脂、変性酪農製品脂肪、変性乳脂、またはこれらの混合物、を含み、から本質的になり、またはからなる。
【0016】
その水性材料は、1つ以上のアミノ酸として、もっと好ましくは1つ以上のペプチドまたは1つ以上のタンパクとして、存在する、1つ以上の1級もしくは2級アミンを含むのが好適である。ある態様において、その水性材料は、さらに1つ以上の脂質を含む。その水性材料は、酪農製品材料もしくは変性酪農製品材料、または発酵製品を含み、から本質的になり、またはからなり、そしてその中に分散された有意の割合の脂質を含み得るのが好適である。好適には、その水性材料は、未調理の水性材料である。好適には、その水性材料は、液体水性材料である。好適には、その水性材料は、水中油エマルションまたは油中水エマルションである。
【0017】
いくつかの態様において、混合は密閉可能な容器または系中である。他の態様において、混合は開放容器中であり、または密閉容器中で実施され、そして混合物は開放容器中に取り出される。
【0018】
1つの態様において、段階(5)の保持は周囲圧力よりも大きい。もう1つの態様において、段階(5)の保持は周囲圧力よりも低い。もう1つの態様において、段階(5)の保持は、段階(4)の混合が実施される圧力よりも低い圧力である。好適には、混合は第1温度またはその近傍で実施される。
【0019】
さらなる態様において、本発明は香味濃縮物の製造方法に関し、その方法は、
(1)脂質材料を第1温度に加熱すること、
(2)水性材料を加熱された脂質材料に添加して混合物を形成すること、水性材料は1以上の砂糖および1つ以上のタンパク、ならびに任意に1つ以上の脂質を含み、そして第1温度は水性材料の沸点より高い。
(3)加熱された混合物を容器中に保持すること、そこで混合物中の大部分の水は蒸発される、
(4)その混合物を第1温度より高い第2温度に加熱すること、ならびに
(5)その混合物を少なくとも約1秒間、第2温度に保持すること、
を含む。
【0020】
好適には、材料が段階(3)に保持される容器中の圧力は、蒸気を留去することにより保持される。
もう1つの態様において、本発明は香味濃縮物の製造方法に関し、その方法は、
(1)脂質材料を少なくとも約100℃の第1温度に加熱すること、
(2)水性材料を加熱された脂質材料に添加して混合物を形成すること、水性材料は1以上の砂糖および1つ以上のタンパク、ならびに任意に1つ以上の脂質を含み、
(3)混合物中の大部分の水を蒸発させること、ならびに
(4)その混合物を少なくとも約1秒間、第2温度に加熱すること、そこで第2温度は第1温度と異なる、
ことを含む。
【0021】
好適には、その方法は、追加の段階、
(6)回収された混合物を都合のよい温度に冷却すること、を含む。
【0022】
もう1つの態様において、本発明は香味濃縮物の製造方法に関し、その方法は、
(1)脂質材料を第1温度に加熱すること、その脂質材料はタンパクもしくは水、またはタンパクおよび水の両方、を実質的に含まない、
(2)水性材料を加熱された脂質材料に添加して混合物を形成すること、水性材料は1以上の砂糖および1つ以上のタンパク、ならびに任意に1つ以上の脂質を含み、第1温度は水性材料の沸点より高く、水性材料中に存在する水の少なくともいくらかは蒸発される、
(3)段階(2)で生成される蒸気を留去すること、ならびに
(4)その蒸気を凝縮して濃縮された香味濃縮物を生成させること、
を含む。
【0023】
好適には、その方法は、追加の段階、
(5)回収された脂質混合物を都合のよい温度に保持すること、を含む。
【0024】
1つの態様において、その方法は段階(3)の前の追加の段階、
(2a)加熱された混合物を容器中に導入すること、そこで混合物中の大部分の水は蒸発される、を含む。
【0025】
もう1つの態様において、本発明は固体香味濃縮物の製造方法に関し、その方法は、
(1)脂質材料を用意すること、
(2)水性材料を用意すること、その水性材料は1つ以上の砂糖および1つ以上の遊離アミン基を含み、
(3)脂質材料を水性材料の沸点以上で第1温度に加熱すること、
(4)その加熱された脂質材料および水性材料を混合すること、
(5)水性材料中に存在する水が少なくとも実質的にすべて蒸発されるまでの時間、その混合物を保持すること、ならびに
(6)混合物から固体を分離して固体香味濃縮物を生成させること、
を含む。
【0026】
1つの態様において、本発明は、段階(5)の後に、次の任意の段階の1以上をさらに含む:
(5a)その混合物を、第1温度と異なる第2温度で第2時間保持すること、
(5b)その混合物を冷却すること。
【0027】
もう1つの態様において、本発明は本発明の方法により製造される香味濃縮物に関する。好適には、その香味濃縮物は、タフィ香味、バタースコッチ香味、焼いたビスケット香味、キャラメル香味、麦芽香味、および焙焼ナッツ関連香味、加熱/焙焼ポップコーン、フライドポテトチップス、焼いた未発酵パン、焙焼肉関連香味、ブルーチーズまたは調理されたピザから選ばれる1つ以上の香味特性を含む。
【0028】
もう1つの態様において、本発明は、脂質材料および水性材料の調理された混合物を含み、から本質的になり、またはからなる香味濃縮物に関し、そこでは
脂質材料は、1つ以上の酪農製品油、1つ以上の牛脂、1つ以上の牛油、1つ以上の植物脂、1つ以上の植物油、およびそれらの組み合わせ、から選ばれ、
水性材料は、1つ以上の砂糖、および1つ以上の遊離アミン基、および任意に1つ以上の脂質、ならびに
その組成物は、
・フルフラール1〜100μg/g、
・3,4-ジヒドロキシ-へクス-3−エン-2,5-ジオン[DHHD]0.1〜10μg/g、
・マルトール5〜100μg/g、
・フラネオオール0.1〜10μg/g、
・アセトール2〜30μg/g、
・ペンタン-2-オン1〜5μg/g、
・ヘプタン-2-オン1〜80μg/g、
・3-メチルブタナール0.5〜100μg/g、または
・2-メチルブタナール0〜10μg/g。
からなる群よりなる化合物の少なくとも1つ以上を含む。
【0029】
種々の態様において、組成物は、上記の2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、または9つすべてを含む。
【0030】
1つの例において、組成物は、・フルフラール1〜100μg/g、および・3,4-ジヒドロキシ-へクス-3−エン-2,5-ジオン[DHHD]0.1〜10μg/gを含む。
【0031】
もう1つの例において、組成物は、・フルフラール1〜100μg/g、およびマルトール5〜100μg/gを含む。
【0032】
もう1つの例において、組成物は、・マルトール5〜100μg/g、フラネオオール0.1〜10μg/g、および・3-メチルブタナール0.5〜100μg/gを含む。
【0033】
認識されるように、上記化合物の9!の可能な順列または組み合わせは、個別にここに示されるように明白に期待される。ここに記載されるいかなる態様も上述の態様に関し得る。
【0034】
種々の態様において、脂質材料は、タンパクもしくは水、またはタンパクおよび水の両方、を実質的に含有しない。1つの態様において、脂質材料は、実質的に無水である。1つの態様において、脂質材料は、1つ以上の脂肪もしくは1つ以上の油またはそれらの組み合わせを含む。1つの態様において、脂質材料は、乳脂、1つ以上の牛脂、1つ以上の植物油、またはそれらの組み合わせを含む、1つ以上の酪農製品脂肪から選ばれる。1つの態様において、脂質材料は、少なくとも約80%〜約99%のトリグリセリド、たとえば少なくとも約85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または少なくとも約99%のトリグリセリド、を含み、そして有用な範囲は、これらの値の間で選択され得る(たとえば、約85%〜約99%、約90%〜約99%、約91%〜約99%、約92%〜約99%、約93%〜約99%、約94%〜約99%、約95%〜約99%、約96%〜約99%、約97%〜約99%、および約82%〜約92%、のトリグリセリド)。1つの態様において、脂質材料は、タンパクを実質的に含有しない。1つの態様において、脂質材料は、実質的に無水である。好適には、脂質材料は、無水乳脂、バター油、牛脂、ラード、または植物油の1つ以上を原料とする。適切な植物油は、アーモンド、アマランサ、アプリコット、アーティチョーク、ババスヤシ、モリンガ(ben)、ボルネオタローナッツ、ボトルヒョウタン、ルリヂシャ種子、バッファロヒョウタン、キャノーラ、イナゴマメのサヤ、カシュー、ココア、ココナッツ、コーン、綿実、月見草、亜麻仁、ブドウ種子、ヘーゼルナッツ、麻、カポック種子、マスタード、オリーブ、パーム、ピーナッツ、マツノミ、ポピー種子、パンプキン種子、サフラワー、ゴマ、大豆、ひまわり、クルミ、小麦麦芽油、米ぬか、マメサヤ(legmes)、およびアボガドに由来する油を含む。1つの態様において、脂質材料は、海産油を原料とし、たとえば貝油、魚油、およびそれらの組み合わせから選択される海産油である。1つの態様において、魚油は、アンチョビ、バイカル(Baikal)、ブローター(bloater)、カチャ(cacha)、コイ、ウナギ、ユーラカン(eulachon)、ニシン、ホキ(Hoki)(Macruronus novaezelandiae),ヒルサ(hilsa)、カワカマス、カトラ(katla)、燻製ニシン(kipper)、サバ、オレンジラフィー(orange roughy)、パンガス(pangas)、ヨーロッパマイワシ(pilchard)、ギンダラ、サケ、イワシ、サメ、スプラット(sprat)、マス、マグロ、シラス、およびメカジキ、ならびにそれらの2つ以上の組み合わせ、から選択される。1つの態様において、その油は、ウィンタライズ(低温ろ過)された油である。
【0035】
適切な脂質源は、植物、動物および酪農製品源から得ることができ、種子および穀類、動物組織、乳製品、クリームおよび乳漿源を含むが、これらに限定されない。このような脂質材料源は、この分野における油脂加工の、種々の公知の手段により、食用のために変性または精製され得、遠心分離およびデカンテーション、溶媒抽出、化学的変性、たとえば、水素添加触媒処理、融点に基づくフラクションおよび蒸留を含む。高融点を有する脂質フラクションは、硬フラクションとして知られることが多く、そして低融点フラクションは軟フラクションとして知られる。中間フラクションも知られており、選択された脂質原料とフラクションをブレンドすることにより調製される脂肪および油は、本発明の実施に有用である。水性材料は、1つ以上の砂糖および1つ以上のアミン基を含む。1つの態様において、水性材料は、大豆乳、大豆タンパクから、または再構成、再結合、発酵もしくは新鮮な酪農材料、たとえば再結合もしくは新鮮な全乳、再結合もしくは新鮮なスキムミルク、再構成全乳粉末、再構成スキムミルク粉末、スキムミルク濃縮物、スキムミルク未透過物、濃縮乳、発酵乳、ヨーグルト、ケフィール、限外ろ過乳未透過物、乳タンパク濃縮物(MPC)、乳タンパク単離物(MPI)、カルシウム消去乳タンパク濃縮物(MPC)、低脂肪乳、低脂肪乳タンパク濃縮物(MPC)、カゼイン、カゼイン化物、クリーム、発酵クリーム、バターミルク、バター液(serum)、濃縮発酵品、乳漿、乳漿クリーム、乳漿タンパク濃縮物(WPC)、または発酵乳漿クリーム、から選ばれ、またはそれらに由来する。1つの態様において、水性材料のアミン含量、もしくは砂糖含量、またはアミン含量と砂糖含量の両方は、たとえば1つ以上のアミン基もしくは1つ以上の砂糖、または両方を有する化合物もしくはその化合物源の添加により増加され得る。
【0036】
1つの態様において、水性材料は、マメサヤ、穀類、種子、果実、または植物抽出物、再結合もしくは新鮮な全乳、再結合もしくは新鮮なスキムミルク、再構成全乳粉末、再構成スキムミルク粉末、発酵乳、ヨーグルト、ケフィール、乳脂、クリーム、乳漿クリーム、発酵クリーム、およびそれらの組み合わせから選ばれる。1つの態様において、水性材料は、発酵乳または発酵クリームのような発酵材料である。好適には、発酵源は、酸生成菌、たとえばヨーグルト、を用いて製造される発酵物である。もっと好ましくは、発酵は、1つ以上、2つ以上、または3つ以上の発酵物からなる。他の発酵は、酵母、かび、および他の細菌のような微生物を用い得る。他の動物または微生物由来の水性材料も考慮される。
【0037】
好適には、水性材料が発酵材料、たとえば発酵クリームであるとき、水性材料は、脂質を少なくとも約10%(w/w)含み、好ましくは水性材料は、少なくとも約10%(w/w)〜約80%(w/w)の脂質を含み、もっと好ましくは水性材料は、少なくとも約10%(w/w)〜約80%(w/w)、たとえば約15,20,25,30,35,40,42,44,46,48または約50%(w/w)の脂質を含み、そして有用な範囲は、これらの値のいかなる範囲でも選ばれ得る(たとえば、約20%〜約42%(w/w)の脂質)。
【0038】
種々の態様において、本発明方法は、タフィ香味、バタースコッチ香味、焼いたビスケット香味、キャラメル香味、麦芽香味、および焙焼ナッツ、加熱/焙焼ポップコーン、フライドポテトチップス、焼いた未発酵パン関連香味、焙焼肉もしくは調理されたピザ関連香味、の1つ以上から選ばれる香味特性を有する、乳脂濃縮物を製造する。
【0039】
1つの態様において、本発明方法は、望ましい香味化学的プロフィール、好ましくはここに、たとえば表1に関連して記載されるような、化学的プロフィール、を有する濃縮物を製造する。
【0040】
1つの態様において、水性材料は、未調理の水性材料である。
【0041】
1つの態様において、第1温度は、水性材料の沸点、すなわち混合が実施される圧力での水性材料の沸点、より高い。1つの態様において、脂質材料は、少なくとも約100〜約180℃、たとえば少なくとも約100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、もしくは約180℃、に加熱され、そして有用な範囲はこれらの前述の値のいずれかの間で選択され得る(たとえば、約100〜約140℃、約100〜約160℃、または約100〜約170℃、)。好適には、脂質材料は、110〜145℃に、もっと好適には約135℃に加熱される。
【0042】
いくつかの態様において、混合は、たとえば混合物中の大部分の湿分が混合時に蒸発されるような、水性材料の脂質材料への添加速度で実施される。たとえば、混合速度または水性材料に対する脂質材料の比は、第1温度および任意に水性材料の温度、にしたがって調節される。他の態様において、実質的にすべての湿分の蒸発は、混合に続く保持段階時に追加的に達成される。
【0043】
1つの態様において、混合物は、少なくとも実質的にすべての水が蒸発されるまで、第1温度もしくは近傍に保持される。もう1つの態様において、混合物は、少なくとも実質的にすべての水が蒸発されるまで、もう1つの温度に保持される。
【0044】
1つの態様において、混合物が少なくとも実質的にすべての水が蒸発されるまで、もう1つの温度に保持されるとき、その温度は少なくとも約100〜約180℃、たとえば少なくとも約100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、もしくは約180℃、であり、そして有用な範囲はこれらの前述の値のいずれかの間で選択され得る(たとえば、約100〜約140℃、約100〜約160℃、または約100〜約170℃)。
【0045】
1つの態様において、第1温度もしくは近傍、またはもう1つの温度に保持されるとき、混合物は、混合が実施される圧力よりも低い圧力に保持される。たとえば、混合物は、混合が実施される圧力よりも低い圧力に保持された容器中に排出される。
【0046】
1つの態様において、混合物は、第1温度もしくは近傍、またはもう1つの温度に、少なくとも約1分間、少なくとも約2分間、約3、4,5,6,7,8,9,10、11、12,13,14,15,16,17,18,19,20、25、30、35、40、45、0、55、または60分間、保持され、そして有用な範囲はこれらの前述の値のいずれかの間で選択され得る(たとえば、約1〜約20分間、約1〜約30分間、約1〜約40分間、約1〜約50分間、または約1〜約60分間)。
【0047】
1つの態様において、混合物は、少なくとも実質的にすべての水が蒸発された後に、第1温度もしくは近傍、またはもう1つの温度に、少なくとも約1分間、少なくとも約2分間、約3、4,5,6,7,8,9,10、11、12,13,14,15,16,17,18,19,20、25、30、35、40、45、50、55、または60分間、保持され、そして有用な範囲はこれらの前述の値のいずれかの間で選択され得る(たとえば、約1〜約20分間、約1〜約30分間、約1〜約40分間、約1〜約50分間、または約1〜約60分間)。
【0048】
他の態様において、少なくとも実質的にすべての水が蒸発されるとき、混合物は第2温度に保持される。1つの態様において、第2温度は、第1温度より低く、または少なくとも実質的にすべての水が蒸発されるまで混合物が保持される温度より低い。好適には、第2温度は、第1温度より高い。好適には、第2温度は、少なくとも実質的にすべての水が蒸発されるまで混合物が保持される温度より高い。
【0049】
1つの態様において、第2温度は、少なくとも約105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、または160℃であり、そして有用な範囲はこれらの前述の値のいずれかの間で選択され得る。好適には、第2温度は、約120〜140℃、もっと好適には約130〜140℃、さらに好適には約135℃である。
【0050】
1つの態様において、混合物は、第2温度に、少なくとも約1秒間、約10秒間、約20秒間、約30秒間、約1分間、約2、3、4,5,6,7,8,9,10、11、12,13,14,15,16,17,18,19,20、25、30、35、40、45、50、55、または60分間、保持され、そして有用な範囲はこれらの前述の値のいずれかの間で選択され得る(たとえば、約1〜約20分間、約1〜約30分間、約1〜約40分間、約1〜約50分間、または約1〜約60分間)。
1つの態様において、混合物は、第2温度で約10〜20分間、もっと好ましくは約12〜15分間、加熱される。
【0051】
他の態様において、第1または第2温度が比較的低い、たとえば約105〜115℃、場合には、混合物は、15,20、25、30、35、40、45、50、55、または60分間、加熱され、そして有用な範囲はこれらの前述の値のいずれかの間で選択され得る。
【0052】
1つの態様において、本発明方法は、加熱処理された混合物から固体物質を取り出す段階を含む。いかなる好都合な装置も使用され得る。好適には、ろ過段階もしくは清澄段階またはその両方、のような分離段階が、混合後に、またはその混合物の加熱後に、含まれる。遠心分離、デカンター、またはろ過膜のような、分離段階で使用するのに適切な装置は、この分野でよく知られており、本発明方法に使用することが考慮される。
【0053】
もう1つの態様において、本発明は、上述の方法から生成される組成物に関する。明白に考慮されるのは、脂質材料と水性材料の混合物、もしくは水性材料とその混合物、により発生される蒸気の凝縮により、またはこれらの混合物の、続く蒸発もしくは加熱により、生成される濃縮物である。さらに、明白に考慮されるのは、脂質材料と水性材料の混合物、もしくは水性材料とその混合物、により発生される蒸気の凝縮により、またはここに記載される、これらの混合物の、続く加熱により、生成される固体香味濃縮物である。もう1つの態様において、本発明は、食品中の香味付与剤として上記組成物の1つ以上を使用することに関する。もう1つの態様において、本発明は、上述の香味濃縮物を含む食品に関する。
【0054】
他の本発明の態様は、例として記載される次の記述から明らかとなり得る。
【0055】
ここで開示される数字の範囲への言及(たとえば、1〜10)は、その範囲内の合理的な全数字(たとえば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9および10)、ならびにその範囲内の合理的数字のいかなる範囲(たとえば、2〜8、1.5〜5.5、および3.1〜4.7)、への言及を組み入れるように意図される。したがって、特定された数字の範囲は、本発明の実施の適用可能な連続した範囲に及ぶパラメータを示す。
【0056】
本明細書において、特許明細書、他の外部文献、または外部源情報に言及がなされている場合、本発明の特徴を検討するための関連を付与する目的であるのが通常である。それとは異なる特別の記載がなければ、そのような外部文献への言及は、そのような文献、またはそのような情報源は先行技術であり、またはこの分野において常識の一部を形成する、と決して承認するものではない。
【0057】
さらに本発明は、本願明細書に言及もしくは指摘された、要素、構成、および特徴を個別にもしくは集合的に、ならびにその要素、構成、または特徴の2つ以上のいかなる、もしくはすべての組み合わせを含み、そして特定の整数がここで言及されているが、本発明が関連する分野で均等物が知られており、その均等物は個別に示されているかのように、ここに組み入れられるとみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明方法の模式的フロー図を示す。
【図2】バッチ処理を用いる、本発明方法の典型的製造方法の模式的図を示す。容器(1)は加熱され、その内容物は撹拌機(2)を用いて撹拌される。多量の脂質材料(3)が容器内に入れられ、撹拌され、第1温度、好ましくは100℃より高く、に加熱される。この温度に達するとき、水性材料、たとえばクリーム、が、ポジティブポンプを用いて入口(4)から導入される。蒸気とともに蒸発される水溶性蒸発物が開口(5)から出る。容器からのボイルオフ速度は、開口(5)への真空適用により助けられ得、蒸発物は蒸留物を凝縮させることにより捕集され得る。すべての水性材料が容器に添加されたとき、加熱は蒸気の最小限の証拠があるまで継続される。ついで、容器内容物は、容器ジャケット(7)に水を導入することにより、混合物が標準ポンプおよびろ過で取り扱われ得るような温度(好ましくは45〜60℃)に冷却される。ついで、その内容物は、生成物出口(6)により容器から取り出される。
【図3】外部ヒーターとともに、バッチ処理を用いる、本発明方法の典型的製造方法の模式的図を示す。容器(1)は、脂質材料(たとえば、AMF)(2)を保持し、ポンプ(3)を用いて熱交換機(9)による外部循環により100℃〜170℃の温度に加熱される。その温度で、ポンプ(7a)および背圧弁(5)近くに配置された弁(4a)により、熱交換器が100〜600kPaの圧力を付与した後に、水性材料(たとえば、クリーム)(6a)が、その回路に導入される。あるいは、水性材料(6b)は、熱交換器がポンプ(7b)および弁(4b)による前に、導入され得る。この代替法において、背圧弁(5)は、その場に留まり、前のと同一圧力範囲に設定される。生成物は、生成物出口(8)から、要求に応じて下流の適用、冷却または包装のために取り出され得、または生成物循環戻り(10)により、さらなる処理のために戻され得る。揮発物は揮発物出口(11)により取り出され得、これらは使用のために凝縮され得、または処分され得る。加熱および冷却用供給(蒸気または水)は供給出口(14)により出る。熱入口(13)で熱交換器へ導入される熱源は、通常蒸気であるが、プラント装置に依存する。プラント排水設備(12)は、便利さ、たとえば洗浄および保全のために備えられる。
【図4】外部ヒーターとともに、バッチ処理を用いる、本発明方法の典型的製造方法の模式的図を示す。容器(1)は、脂質材料(2)を保持し、ポンプ(3)を用いて熱交換機(9)による外部循環により約135℃の温度に加熱される。その温度で、ポンプ(7)および背圧弁(5)近くに配置された弁(4a)により、熱交換器が200〜300kPaの圧力を付与した後に、水性材料(6)が、ヒーター(17)内で加熱され、その回路に導入される。あるいは、水性材料は、熱交換器が弁(4b)による前に、導入され得る。生成物は、生成物出口(8)から、要求に応じて下流の適用、冷却または包装のために取り出され得、または生成物循環戻り(10)により、さらなる処理のために戻され得る。揮発物は揮発物出口(11)により取り出され得、凝縮物は凝縮器(20)を用いて凝縮された香味濃縮物を生じるように回収され得、または処分され得る。加熱用供給(水の場合)は供給出口(14)により出、有用に循環される。この態様において、熱交換器へ導入される熱源は、蒸気(13)の導入により高圧水ヒーター(23)内で加熱された高圧加熱水である。プラント排水設備(12)は、特に便利さ、たとえば洗浄および保全のために備えられる。
【発明を実施するための形態】
【0059】
1.定義
本明細書で使用される、「含む」(comprising)という用語は、少なくとも一部が「からなる」ことを意味する。その用語を含む本明細書の記載を解釈するとき、その用語により記載中に前置きされた特徴、存在することが必要である他の特徴、も存在し得る。「comprise」および「comprised」のような「含む」関連用語も同様に解釈されるべきである。
【0060】
ここで用いられるように、「水性材料」という用語は、湿分含量が10より大きい材料を意味する。
【0061】
ここで用いられるように、「未調理水性材料」という用語は、低温殺菌処理(pasteurized)され、または超熱処理(ultra-heat treatment:UHT)を受けたが、香味を発生させるために熱処理されていない、材料も含む。 本発明の目的のために、未調理水性材料は、調理されていると考えられることなく、混合前にすぐに加熱され得る。
【0062】
ここで用いられるように、「脂質」、「脂肪」および「油」という用語ならびにそれらの各複数は、本質的に交換可能であり、1つ以上の植物、動物もしくは酪農製品源、またはそれらの組み合わせから選ばれ、またはそれらに由来する、トリグリセリドから大部分(約80%より大きい)からなる食用物質をいう。
【0063】
「ギー」(ghee)は、古代より中東からインド亜大陸にわたって広く用いられる、乳由来の伝統的製品であり、開放された炎の上方で、容器中で乳脂、バターまたはクリームを加熱することにより、歴史的に調製され得る。ギーは、http://www.codexalimentarius.net/download/standards/171/CXS A02e.pdf.で利用可能であるCODEX STAN A-2-1973(2006改訂)により付与される、アイデンティティーラベルを有する国際的商品である。
【0064】
「無水乳脂」、「無水バター油」および「バター油」という用語は、ここで交換可能に使用され、クリームの相転移(phase inversion)および濃縮により、または溶融バターから製造される乳脂フラクションをいい、CODEX STAN A-2-1973の下に分類されている。乳脂は、いかなる哺乳動物乳脂であってもよく、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、マウス、スイギュウ、ラクダ、ヤク、ウマ、ロバ、リマ、またはヒトの乳脂を含むが、これらに限定されず、ウシ乳脂が好適な源である。AMFの製造に通常用いられる方法は、Bylund G.(Ed.) Dairy processing handbook. 1995 Tetra Pak Processing Systems AB, S-221 86 Lund, Sweden.に開示されており、ここに全部が組み入れられる。脂肪および油は、トリグリセリドの混合物であるのが通常であり、種々の公知の方法、もっと詳しくは異なる融点に基づく方法により、分離され得る。高融点を有する部分は、「硬フラクション」といわれることが多く、低融点部分は「軟フラクション」等といわれる。中間フラクションおよびフラクションのブレンドが知られている。トリグリセリドの化学も周知であり、関連脂肪酸は、分子内に0個(不飽和)、1個(モノ不飽和)または多数個(ポリ不飽和)の「二重結合」を有する。この分野で周知の標準的命名法が、脂肪酸の二重結合の数および位置を示すのに用いられる。
【0065】
ここで用いられるように、「香味」(flavour)という用語は、食品または他の物質の感覚的印象を意図するものであり、味覚および臭覚の感覚により主に決定される。したがって、「香味」という用語は、香り(aroma),におい(smell),におい(odour)等を含むと考えるべきである。
【0066】
2.香味濃縮物の製造方法
乳脂および植物油は、スプレッドに、そして調味料として、ならびにベーキング、ソース作成、およびフライを揚げるのに、使用されることが多い。その結果、これらの脂質は世界中の多くの場所で毎日消費されている。
【0067】
本発明は、香味濃縮物、特に、優れた香味特性を有する乳脂濃縮物に関する。これは、通常の乳脂製品よりも少量で食品に乳脂濃縮物を添加することを可能にするが、なお所望の香味特性を与え、あるいはその乳脂濃縮物が通常の乳脂製品と同様な量で用いられるとき、増強された香味が付与されるのを可能にする。
【0068】
図1に示されるように、本発明者は、香味濃縮物が次の段階により製造され得ることを見出した:
(1)脂質材料を供給すること、
(2)水性材料を供給すること、ここでその水性材料は1つ以上の砂糖および1つ以上の1級または2級アミンを含む、
(3)水性材料の沸点以上の第1温度に脂質材料を加熱すること、
(4)加熱された脂質材料を水性材料と混合すること、ならびに
(5)水性材料中に存在する実質的にすべての水が少なくとも蒸発されるまで時間、混合物を温度保持すること、を含む。
【0069】
1つの態様において、その方法は段階(5)の後に次の段階:
(6)第1温度とは異なる第2温度で混合物を第2時間保持すること、
をさらに含む。
【0070】
種々の態様において、混合物が段階(5)に保持される温度が、第1温度未満、第1温度もしくはそれより高い。
【0071】
好適な態様において、その方法は、段階(5)の後で、または好ましくは段階(6)の後で、次の任意の段階の1つ以上を含む:
(7)混合物が冷却されること、
(8)混合物は、固体物を除去するために分離装置を通過されること、
(9)混合物は包装されること。
【0072】
もう1つの態様において、本発明は次の段階を含む香味濃縮物の製造方法を提供する:
(1)脂質材料を少なくとも約100℃の第1温度に加熱すること、
(2)水性材料を加熱された脂質材料に添加して混合物を形成すること、水性材料は1以上の砂糖および1つ以上のタンパク、ならびに任意に1つ以上の脂質を含み、
(3)混合物中の大部分の水を蒸発させること、ならびに
(4)その混合物を少なくとも約1秒間、第2温度に加熱すること、そこで第2温度は第1温度と異なる。
【0073】
好適には、その方法は、追加の段階、
(5)回収された混合物を都合のよい温度に冷却すること、を含む。
【0074】
好適な態様において、その方法は、段階(4)の後で、または好ましくは段階(5)の後で、次の任意の段階の1つ以上を含む:
(6)混合物は、固体物を除去するために分離装置を通過されること、
(7)混合物は包装されること。
【0075】
もう1つの態様において、本発明は香味濃縮物の製造方法を提供し、その方法は次の段階を含む:
(1)脂質材料を第1温度に加熱すること、
(2)水性材料を加熱された脂質材料に添加して混合物を形成すること、水性材料は1以上の砂糖および1つ以上のタンパク、ならびに任意に1つ以上の脂質を含み、第1温度は水性材料の沸点より高い、
(3)加熱された混合物を容器中に導入すること、そこで混合物中の大部分の水は蒸発される、
(4)混合物を第1温度より高い第2温度に加熱すること、ならびに
(5)その混合物を少なくとも約1秒間、第2温度に加熱すること。
【0076】
好適には、脂質材料に対して約1%〜約200%(w/w)の水性材料が添加され、もっと好適には、脂質材料に対して約10%〜約200%(w/w)、約20%〜約150%(w/w)、約20%〜約120%(w/w)、または約20%〜約100%(w/w)の水性材料が添加され、または脂質材料に対して約25%〜約80%(w/w)の水性材料が添加される。水性材料および脂質材料が混合される速度は、とりわけ、それらの相対温度、体積および香味濃縮物の製造に用いられる加工装置の特性に依存する。たとえば、いくつかの態様、好適にはバッチ処理態様において、水性材料は脂質材料に対して毎時、約1%〜約200%(w/w)の割合で添加され、もっと好適には、脂質材料に対して毎時、約10%〜約200%(w/w)、約20%〜約150%(w/w)、約20%〜約120%(w/w)、約20%〜約100%(w/w)、または約25%〜約80%(w/w)、または約25%〜約80%(w/w)、さらに好適には約100%(w/w)の割合で添加される。他の態様、好適には連続処理の態様において、水性材料は循環脂質材料に対して毎時、約0.01%〜約50%(w/w)の割合で添加され、もっと好適には、循環脂質材料に対して毎時、約0.1%〜約20%(w/w)、約0.1%〜約10%(w/w)、または約0.5%〜約5%(w/w)の割合で添加される。
【0077】
好適には、水性材料は、脂質材料と迅速に、たとえばフローチャンネルまたは容器内で、混合される。水性材料の加熱脂質材料との迅速混合は、水性混合物中に存在する、大部分の水の迅速加熱および蒸発、すなわち「フラッシュオフ」を可能にする。この水の急速除去は、所望ならば、1つ以上の蒸発段階により増大され得る。ある態様において、蒸発段階は、混合段階と同一の容器中で実施され得る。他の態様において、蒸発段階は、フローチャンネルまたは第2容器内で、たとえば混合段階で使用されるフローチャンネルまたは容器から混合物を回収することにより、実施され得る。好適には、このフローチャンネルまたは第2容器は、混合段階が実施される圧力よりも低い圧力に保持される。
【0078】
1つの態様において、水性材料中に存在する水の蒸発は、水性材料の沸点よりも高い温度に混合物を保持することにより達成される。他の態様において、水性材料中に存在する水の蒸発は、混合物が保持される圧力を低下させることにより、たとえば密閉可能な容器もしくは系の圧力を低下させることにより、または混合物を開放容器中に放出するか、混合物を比較的低い圧力に維持された、密閉可能な容器もしくは系に放出することにより、達成される。たとえば、1つの態様において、段階(5)の保持は、周囲圧力より低い圧力である。もう1つの態様において、段階(5)の保持は、段階(4)の混合が実施される圧力より低い圧力である。
ここで用いられるように、「水性材料中に存在する実質的にすべての水が蒸発される」という用語は、水性材料中に存在する水の少なくとも約65%〜約100%が蒸発されることを意図し、たとえば水性材料中に存在する水の少なくとも約70、75、80、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または少なくとも約99%が蒸発され、そして有用な範囲はこれらの前述の値のいずれかの間で選択され得る(たとえば、水の約82%〜約100%が蒸発される)。
【0079】
ある態様において、たとえば容器またはフローチャンネルの圧力を維持するために、蒸気を除去するのが望ましい。これは処理プラントの設計に依存し、図3に示される典型的なプラントに意図される。好適には、材料が保持される容器の圧力は、蒸気を取り出すことにより維持される。水の沸騰除去(boiling off)に適した条件は、得られる蒸気の除去、混合物の追加加熱、または新鮮な材料の導入の1つ以上により維持され得ることが理解されよう。好適には、取り出された蒸気は、ここに記載されるように、凝縮されて、香味濃縮物を生成する。
【0080】
混合物中に存在する水の大部分が除去されると、添加前の水性材料よりも低い湿分含量である混合物は、第1温度もしくはその近く、またはもう1つの温度に保持され得、および/または第2温度(たとえば、混合物は、第2加熱段階に供される)に保持され得る。
【0081】
その保持段階の時間は変更され得、たとえば第1温度、水性材料の温度、混合および/または保持が実施される圧力、脂質材料に対する水性材料の比、混合速度、脂質材料の組成、水性材料の組成、または香味濃縮物の所望の香味特性、に依存し得る。
【0082】
種々の態様において、第2温度は、第1温度より高い。しかし、第1温度より低い温度も考慮され、たとえば出発材料、開発されるべき香味、プロセス制御を改良すべき処理プラントの能力、または香味濃縮物が置かれる下流に依存して選択され得る。
【0083】
好適には、混合および保持は、水性材料から十分な水を除去する観点で実施され、その結果、たとえば熱交換器表面と接触に至ることにより、脂質でない乳固体が加熱されるとき、それらは粘着せず、プラントを汚さない。
【0084】
本発明方法は、褐色化反応の調節を可能にし、その結果、香味および香りプロフィールおよびそれらの強さは、要求されるような香味および香りの範囲を有する最終製品を与えるように制御され得る。
【0085】
ある態様において、最終保持段階後に、混合物が液体混合物から固体分離のような処理のために、または混合物の包装のような下流処理のために、好都合な温度に冷却され得る。
【0086】
1つの態様において、脂質材料は、フローチャンネル内で、上昇された温度に加熱され、水性材料と混合される。ついで、その混合物は、容器中に放出され、好ましくは、急速沸騰が生じるような、比較的低い圧力で加熱されおよび/または保持され得る。他の態様において、任意に予熱される水性材料は容器中に直接に添加され得、そこに滞留する加熱脂質材料と接触する。
【0087】
種々の態様において、水性材料は、加熱脂質材料と混合する前に、その沸点近くの温度に予熱され得る。これは、水性材料の添加の際に脂質材料の温度低下を最小にし、および/またはたとえば水性材料の添加を容易にするように、処理を改良するためになされ得ることが理解されよう。十分に高い脂質含量を持つ脂質材料が使用され得ることが理解されるべきである。好適には、脂質材料は、約90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%の脂質を含む。適切な脂質材料の例は、植物、動物または酪農製品に由来する脂質を含む。さらに、脂質材料は、1つ以上の食用脂肪もしくは食用油またはそれらの組み合わせを含む。
【0088】
本発明の1つの態様において、脂質材料は実質的に無水である。好適には、脂質材料は、約5、4、3、2または1%より少ない水含量を有する。もっと好適には、脂質材料は、約2%より少ない水含量を有する。
【0089】
理論に拘束されるものではないが、香味特性は、使用される材料および加熱特性に大いに依存する。上述のように、好適には出発材料は脂質材料であり、それに水性材料が添加される。望まれない香味特性、たとえば焼けた香味、が生成されないことを確実にするために、加熱処理は良好に制御される必要がある;これは、沸点未満では望まれない香味を生じさせるにもかかわらず、脂質材料が水性材料の沸点より高い温度に加熱されるときに達成され得る。さらに、熱移動表面での燃焼は、望まれない香味を避けるために回避されるべきである。もっと詳しくは、脂質材料と水性材料の急速混合および大部分の水の蒸発は、望ましい香味成分が生成し、混合物中に保持されるのを可能にし、そして他の成分は精製されず、水蒸気とともに除去され得ることが見出された。さらに、この蒸気に由来する凝縮された香味が回収され得、種々の用途における使用に適した、望ましい香味特性を有することが測定された。
【0090】
本発明の1つの態様において、脂質材料は、少なくとも約100〜約180℃の第1温度、たとえば少なくとも約100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、もしくは約180℃、に加熱され、そして有用な範囲はこれらの前述の値のいずれかの間で選択され得る(たとえば、約100〜約160℃、または約100〜約170℃、)。好適には、脂質材料は、110〜140℃に、もっと好適には約135℃に加熱される。重要な考慮は、第1温度が水性材料の沸点より高いということである、と理解されるべきである。
【0091】
脂質材料と水性材料が一緒にされ、混合されると、その混合物は、少なくとも実質的にすべての残っている水が蒸発されるまで、沸騰を可能にされ(たとえば、フラッシュ容器内)、残る実質的に脱水された混合物は第1温度もしくはその近く、またはもう1つの温度に保持され、またはさらに第1温度と異なる第2温度に保持され得る。理論に拘束しようとするものではないが、この混合物の保持は香味発生反応を継続するのに重要であると考えられる。
【0092】
本発明の1つの態様において、残る実質的に脱水された混合物は脂質材料が加熱される温度より高い温度に加熱される。
【0093】
本発明の1つの態様において、第2温度は、少なくとも約100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、または170℃である。好適には、第2温度は、少なくとも約120〜160℃、もっと好適には約130〜140℃、さらに好適には約135℃である。
種々の態様において、混合物は、第2温度に、少なくとも約1秒間、約10秒間、約20秒間、約30秒間、約40秒間、約50秒間、約1、2、3、4,5,6,7,8,9,10、11、12,13,14,15,16,17,18,19,20、25、30、35、40、45、50、55、または60分間、保持される。好適には、混合物は、約2〜10分間、もっと好ましくは約2〜5分間、または約2〜4分間、加熱される。
【0094】
他の態様において、第1または第2温度が比較的低い、たとえば約105〜115℃、場合には、混合物は、15,20、25、30、35、40、45、50、55、または60分間、加熱される。
【0095】
混合物が加熱される時間は、少なくとも部分的に温度に依存することが理解されよう。たとえば、混合物は、比較的高い温度で、比較的短時間、加熱され得、および逆であり、望ましい香味特性の開発をなお達成する。たとえば、温度が比較的低いとき、たとえば約105〜115℃で、混合物は比較的長い時間、加熱され得、たとえば15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60分間である。逆に、温度が比較的高いとき、たとえば約130〜150℃で、時間は比較的短く、加熱され得、たとえば2〜4分間である。
【0096】
本発明のさらなる態様において、乳脂濃縮物の製造方法は、脂質材料および水性材料の混合および加熱の後の固体除去段階を含む。
【0097】
適切な脂質源は、植物、動物および酪農製品源から得ることができ、種子および穀類、動物組織、乳製品、クリームおよび乳漿源を含むが、これらに限定されない。このような脂質材料源は、この分野における油脂加工の、種々の公知の手段により、食用のために変性または精製され得、遠心分離およびデカンテーション、溶媒抽出、化学的変性、たとえば、水素添加触媒処理、融点に基づく分別および蒸留を含む。高融点を有する脂質フラクションは、硬フラクションとして知られることが多く、そして低融点フラクションは軟フラクションとして知られる。中間フラクションも知られている。選択された脂質原料とフラクションをブレンドすることにより調製される脂肪および油も公知であり、本発明の実施に有用である。好適には、脂質原料は、無水乳脂、もしくはバター油、または牛脂、ラードもしくは他の動物脂肪のような、酪農製品由来の脂質の1つ以上から選択される。
【0098】
変性された、精製された、分別された、誘導された、または他の方法で処理された、脂質材料は、上記のように例示され、または上記のように例示された方法により製造されるが、「変性された」脂質材料として、ここでは集合的にいわれる。たとえば、分別された酪農製品脂肪は、便宜的に「変性された酪農製品脂肪」といわれ得る。
【0099】
酪農製品由来の脂質は、発酵もしくは未発酵の再結合、粉末もしくは新鮮なスキムミルク、再構成された全もしくは濃縮乳、限外ろ過乳未透過物、乳タンパク濃縮物(MPC)、乳タンパク単離物(MPI)、乳脂、クリーム、バター、無水乳脂(AMF)、バターミルク、バター液、硬乳脂フラクション、軟乳脂フラクション、多段分断、微分結晶化、溶媒分断、超臨界分断、近超臨界分断、蒸留、遠心分断、または改質剤での分断(たとえば、石けんまたは乳化剤)により調製される抽出物を含むこれらの乳誘導物、これらの誘導物の加水分解物、加水分解物のフラクション、ならびにこれらの誘導物の組み合わせで加水分解された、もしくは非加水分解のフラクションを含む、である。
【0100】
1つの態様において、水性材料は、大豆乳、大豆タンパクから、または再構成、再結合、発酵もしくは新鮮な酪農製品源(酪農製品材料ともいう)、たとえば全乳、再結合もしくは新鮮なスキムミルク、再構成全乳粉末、再構成スキムミルク粉末、スキムミルク濃縮物、スキムミルク未透過物、濃縮乳、発酵乳、ヨーグルト、ケフィール、限外ろ過乳未透過物、乳タンパク濃縮物(MPC)、乳タンパク単離物(MPI)、カルシウム消去乳タンパク濃縮物(MPC)、低脂肪乳、低脂肪乳タンパク濃縮物(MPC)、カゼイン、カゼイン化物、クリーム、発酵クリーム、バターミルク、バター液(serum)、酪農製品発酵品、乳漿、乳漿タンパク濃縮物(WPC)、乳漿クリーム、または発酵乳漿クリーム、から選ばれ、またはそれらに由来する。
【0101】
1つの態様において、水性材料は、マメサヤ、穀類、種子、ナッツ、果実、または植物抽出物、再結合もしくは新鮮な全乳、再結合もしくは新鮮なスキムミルク、再構成全乳粉末、再構成スキムミルク粉末、発酵乳、ヨーグルト、ケフィール、乳脂、クリーム、乳漿クリーム、発酵クリーム、およびそれらの組み合わせから選ばれる。1つの態様において、水性材料は、発酵乳または発酵クリームのような発酵材料である。好適には、発酵源は、酸生成菌、たとえばヨーグルト、を用いて製造される発酵物である。もっと好ましくは、発酵は、1つ以上、2つ以上、または3つ以上の発酵物からなる。他の発酵は、酵母、かび、および他の細菌のような微生物を用い得る。他の動物または微生物由来の水性材料も考慮される。
【0102】
好適には、水性材料は、クリーム、乳漿クリーム、または発酵クリームの1つ以上から選ばれる。好適には、水性材料は、ここで記載されるような、未調理の水性材料である。
【0103】
水性材料と脂質材料の混合の際に生成される蒸気は、水に加えて揮発性化合物を含むむこと、そしてこの蒸気から回収される凝縮された香味濃縮物は所望の香味特性を有することが測定された。明白に考慮されるのは、脂質材料と水性材料の混合、もしくは水性材料と脂質材料/水性材料混合物との混合物により、またはこれらの混合物の、続く蒸発もしくは加熱により、生成される濃縮物である。
【0104】
したがって、もう1つの態様において、本発明は香味濃縮物の製造方法に関し、その方法は、
(1)脂質材料を第1温度に加熱すること、その脂質材料はタンパクもしくは水、またはタンパクおよび水の両方、を実質的に含まない、
(2)水性材料を加熱された脂質材料に添加して混合物を形成すること、水性材料は1以上の砂糖および1つ以上のタンパク、ならびに任意に1つ以上の脂質を含み、第1温度は水性材料の沸点より高く、水性材料中に存在する水の少なくともいくらかは蒸発される、
(3)段階(2)で生成される蒸気を留去すること、ならびに
(4)その蒸気を凝縮して濃縮された香味濃縮物を生成させること、
を含む。
【0105】
好適には、その方法は、追加の段階、
(6)回収された脂質混合物を都合のよい温度に保持すること、を含む。
【0106】
1つの態様において、その方法は段階(3)の前の追加の段階、
(2a)加熱された混合物を容器中に導入すること、そこで混合物中の大部分の水は蒸発される、を含む。
【0107】
水性材料と脂質材料の混合、および上昇された温度での混合物の保持の際に生成される固体は、有用な化合物を含むこと、そしてこれらの固体からの濃縮物は所望の香味特性を有し得ることが測定された。明白に考慮されるのは、その液体混合物からの固体の分離により生成される濃縮物である。
【0108】
したがって、もう1つの態様において、本発明は固体香味濃縮物の製造方法に関し、その方法は、
(1)脂質材料を用意すること、
(2)性材料を用意すること、その水性材料は1つ以上の砂糖および1つ以上の遊離アミン基を含み、
(3)脂質材料を水性材料の沸点以上で第1温度に加熱すること、
(4)その加熱された脂質材料および水性材料を混合すること、
(5)水性材料中に存在する水が少なくとも実質的にすべて蒸発されるまでの時間、その混合物を保持すること、ならびに
(6)混合物から固体を分離して固体香味濃縮物を生成させること、
を含む。
【0109】
1つの態様において、本発明は、段階(5)の後に、次の任意の段階の1以上をさらに含む:
(5c)その混合物を、第1温度と同様なまたは異なる第2温度で第2時間保持すること、
(5d)その混合物を冷却すること。
【0110】
液体から固体を分離するための方法および装置は、この分野で周知であり、いかなる好都合な装置も使用され得る。分離は、たとえば、ろ過段階もしくは清澄段階またはその両方であり得る。遠心分離、デカンター、またはろ過膜のような、分離段階で使用するのに適切な装置は、この分野でよく知られており、本発明方法に使用することが考慮される。
ある態様において、液体混合物から固体を分離する前に、混合物を冷却するのが好都合である。
【0111】
当業者に理解されるように、本発明方法は、連続またはバッチ法に基づいて好都合に実施され得る。いずれの方法も、水性材料を脂質材料と混合するか、または水性材料を脂質材料または前の混合段階から生じる混合物と繰り返し混合するのを可能にする。ここで示されるように、続く混合段階で添加される水性材料は、前の段階で添加されるものと異なっていてもよい。
【0112】
さらに、本発明は、たとえば現代的な酪農製品処理方法および装置を用いる、商業的規模での製造に特にしたがうことを、当業者は理解するであろう。本発明の香味濃縮物の商業的規模での製造で用いられる典型的なプラント設計は、ここに記載される。非稼動時間(たとえば、熱交換器表面のような、プラントの洗浄にを要求されるような)のない、またはほとんどない連続的なバッチ処理のような、効率的な製造が、本発明方法を用いて達成され得る。
【0113】
与えられたプラント設計およびここで実施される方法は、相互に関係されており、多くのプラント設計は、本発明の種々の態様を実施するのに適し得ることが理解されよう。しかし、汚れおよび燃焼(特に熱交換器表面上)の回避は、非稼動時間がないか、ほとんどない、連続的製造を達成するために、そのようなプラントについての基本設計基準であると決定された。たとえば、試験プラントの実施において、熱交換器での浅い温度勾配の使用(蒸気よりも高圧加熱水を用いて達成されるような)は、検知できる燃焼を生じないか、ほとんど生じないことが見出された。もう1つの実施において、コニカル反応容器の使用は、バッチの間に清浄化を必要としないで、連続的なバッチ処理が実施されるのを可能にした。
2.1 内部加熱を伴うバッチ操業における香味濃縮物の典型的調製

本発明方法を用いて香味濃縮物を製造する典型的なバッチ処理を用いる、本発明方法の典型的製造方法が下に示される。この方法の模式図が図2に示される。容器(1)は加熱され、その内容物は撹拌機(2)(テフロン(登録商標)スクレーパー翼)を用いて撹拌され得る。多量の脂質材料(3)が容器内に入れられ、撹拌され、第1温度、好ましくは100℃より高く、に加熱される。この温度に達するとき、水性材料、たとえばクリーム、が、ポジティブポンプを用いて入口(4)から導入される。添加速度は、水性材料の水性相の蒸発速度により決定され、その蒸発速度は容器の内容物の温度により決定される。処理の間、タンパクおよび他の非脂肪固体(SNF)(非脂肪乳固体(MSNF)のような)はMaillard褐色化反応を受ける。
【0114】
蒸気とともに蒸発される水溶性蒸発物が開口(5)から出る。容器からのボイルオフ(蒸発除去)速度は、開口(5)への真空適用により助けられ得、水溶性蒸発物は蒸留物を凝縮させることにより捕集され得る。すべての水性材料が容器に添加されたとき、加熱は蒸気がもはや出ず、Maillard褐色化反応が生じるまでさらに継続される。ついで、容器内容物は、容器ジャケット(7)に水を導入することにより、混合物が標準ポンプおよびろ過で取り扱われ得るような温度(好ましくは45〜60℃)に冷却される。
【0115】
ついで、その内容物は、生成物出口(6)により容器から取り出される。褐色化された固体は、プレート・フレームフィルタープレスによる、ろ過、遠心分離による分離、デカンター分離機での分離を含む、多くの標準的分離方法を用いて香味脂肪から分離され得る。得られる脂肪生成物および擬乳残渣は、ついで包装され得る。
2.2 外部加熱を伴うバッチ操業における香味濃縮物の典型的調製
本発明の少なくとも1つの態様を実施するためのもう1つの方法が図3に関して下に記載される。図3は、外部加熱回路が適用される方法を示す。たいていの状況下で、これは好適な方法である。容器(1)は、脂質材料(2)を保持し、ポンプ(3)を用いて熱交換機(9)による外部循環により、圧力下に水性材料の沸点より高い温度に加熱される。蒸気入口(13)および凝縮物排水設備(14)が熱交換器上に示される。その温度で、ポンプ(7a)および背圧弁(5)近くに配置された弁(4a)により、熱交換器が100〜600kPaの圧力を付与した後に、水性材料(6a)が、その回路に導入される。あるいは、水性材料(6b)(たとえば、クリーム)は、外部熱交換器がポンプ(7b)および弁(4b)による前に、導入され得る。この代替法において、背圧弁(5)は、その場に留まり、前のと同一圧力範囲に設定される。
【0116】
熱交換器において、脂質材料または脂質および水性材料の混合物は、過熱される。脂肪でない乳固体は、Maillard褐色化反応を受け、そして生成物循環もどり(10)により反応器への再導入に際して、過熱された水は、直ちに蒸気に転換される。
【0117】
蒸気および他の揮発物はフラッシュされ、出口(11)により出る。上述のように、蒸気および他の凝縮可能物は取り出され(たとえば、部分真空により)、凝縮され、捕集され得る。
【0118】
すべての水性材料が添加されると、加熱は蒸気の最小限の証拠があり、さらにMaillard褐色化反応が生じるまで、継続される。生成物循環を維持する間、冷水が熱交換機のサービスサイドを通って循環され、生成物温度を約55℃に低下させる。ついで、生成物は、出口(8)を通って系から取り出され、または排水設備(12)より除去され得る。ついで、褐色化された乳固体は、上述の方法の1つを用いて脂肪から分離され得る。
【0119】
水性材料は、1つより多い段階で添加され得、そして各添加段階は、所望ならば異なる温度で実行され得る。たとえば、1つの態様において、乳脂は、160℃に加熱され得、そしてクリームの半分は、循環乳脂に添加され得る。その乳脂温度は130℃に低下され得、クリームの残りは、固体の除去のために、乳脂/乳固体スラリーが60℃に冷却される前に、添加され得る。冷却は、スクレープ表面熱交換器、管状熱交換機等のような、この分野で周知の方法および装置を用いて、好都合に達成され得る。
【0120】
褐色化された乳固体の除去後(ろ過、デカンテーションまたは機械的分離による)、生成物は40〜100℃(好ましくは90℃)で脱水器内で真空処理により空気を除去され得る。真空処理は、空気(酸素)を除去し、濃縮物の品質保持を向上する。あるいは、窒素のような不活性ガスが、酸素を除去するために生成物に多孔分散され得る。
2.3 外部加熱回路を伴うバッチ操業における香味濃縮物の典型的調製
図4は、処理が、外部加熱回路を適用して実施されるプラント模式的図を示す。容器(1)は、脂質材料(2)を保持し、ポンプ(3)を用いて熱交換機(9)による外部循環により、圧力下に、水性材料の沸点より高い温度に加熱される。この場合、脂質は135℃に加熱される。蒸気出口(13)、高圧供給水(22)、高圧水ヒーター(23)、および供給水排水設備(14)が熱交換器上に示される。ポンプ(7)および背圧弁(5)近くに配置された弁(4a)により、熱交換器が200〜300kPaの圧力を付与した後に、水性材料(6)が、ヒーター(17)内で加熱され、その回路に導入される。この態様において、水性材料は、加熱水(18)を用いてヒーター(17)により、混合前に約70℃〜80℃に加熱される。あるいは、水性材料は、熱交換器が弁(4b)による前に、導入され得る。
【0121】
熱交換器において、脂質材料または脂質および水性材料の混合物は、過熱される。脂肪でない乳固体は、Maillard褐色化反応を受け、そして生成物循環もどり(10)により反応器への再導入に際して、過熱された水は、直ちに蒸気に転換される。
【0122】
混合物は混合時に約135℃で、周囲の圧力未満に保持される。蒸気および他の揮発物はフラッシュされ、出口(11)により出、そしてそれらは凝縮器(20)内で冷却水(19)を用いて凝縮され、凝縮された香味濃縮物(21)を生じる。この凝縮は反応容器にわずかな真空を付与する。
【0123】
すべての水性材料が添加されると、加熱は蒸気の最小限の証拠があり、さらにMaillard褐色化反応が生じるまで、継続される。反応進行は、サイトガラス(15)またはカラーセンサ(16)を用いて、便利に監視され得る。生成物循環を維持する間、冷水が熱交換機のサービスサイドを通って循環され、生成物温度を約80℃に低下させる。これは、水ヒーター(23)を用いて便利に達成される。ついで、生成物は、出口(8)を通って系から取り出され、または排水設備(12)より除去され得る。ついで、褐色化された乳固体は、上述の方法の1つを用いて脂肪から分離され得る。
3.香味化合物
本発明の香味濃縮物に関連して香味プロフィールに重要と考えられる典型的な化合物が下に記載される。
3.1 ラクトース分断化合物
本発明の生成物について、揮発性化合物の最も典型的な種類、ならびに最も重要な有力化合物は、ラクトース分断に由来すると考えられる。ラクトース分断は、(i)Maillard反応(1級もしくは2級アミン(たとえばタンパク)源を必要とする)、および/または(ii)カラメル化反応(砂糖を必要とするが、タンパクを必要としない)(Wadodkar UR, Punjrath JS &Shah AC (2002). Evaluation of volatile compounds in different types of ghee using direct injection with gas chromatography-mass spectrometry. Journal of Dairy Research, 69, pp 163-171参照).バターから製造される伝統的なギーについては、ラクトース分断化合物は、なお有力な香味化合物の最も重要な種類であるが、それらの濃度は、ここに述べられる香味濃縮物にみられる濃度より低い。
【0124】
ここに記載される香味濃縮物のための、最も関連のあるラクトース分断化合物のいくつかは、フルフラール、マルトール、フラネオール、ホモフラネオール、および3,4−ジヒドロキシへクスー3−エンー2,5-ジオンを含む。バターから製造される伝統的ギーよりもここで述べられる香味濃縮物が豊富である、もう1つのラクトース分断化合物は、アセトール(ヒドロキシアセトン)である。マルトールは、加熱バターの重要な香味化合物として知られる(Sulser H &Buchi W (1969), Volatile acids in browned butter. Leitschrift fuer Lebesmittel-untersuchung und Forschung, 141(3)pp145-149参照)。
3.2 乳脂加水分解化合物
伝統的なギーの揮発性化合物の最も豊富な種類は、メチルケトンおよびカルボン酸である。これらの2種類の化合物は、ともに未加熱乳脂に存在するが、比較的低含量である。しかし、乳脂が加熱されると、たとえば伝統的なギーの製造時に、メチルケトンおよびカルボン酸の両方の相対的な含量は増加する。
【0125】
メチルケトン(たとえば、ペンタン−2−オンおよびヘプタン−2−オン)の生成は、乳脂のグリセリルβ−ケトカルボキシレート成分の加水分解(水との)、そして得られるβ−ケトカルボン酸の、続く脱カルボキシ化に依存する。カルボン酸(たとえば酪酸)の生成は、乳脂のグリセリルカルボキシレート成分の加水分解(水との)に依存する。グリセリルβ−ケトカルボキシレートは、乳脂の少量成分に過ぎないが、グリセリルβ−ケトカルボキシレートエステルの加水分解速度は、カルボキシレートエステルの加水分解速度よりもはるかに大きいので、伝統的なギーには揮発物として豊富なメチルケトンをもたらす(Waldhawa BK & Jain MK (1990). Chemistry of Ghee Flavour- A Review. Indian Journal of Dairy science, 43(4)参照)。
3.2 マーカー化合物
本発明方法により製造される香味濃縮物は、出発材料または多くの伝統的なギー製造方法の製品に比べて、マルトール、アセトール、フルフラールのような(これらに限定されない)化合物が多いことを示すことが測定された。同様に、本発明方法により製造される香味濃縮物は、出発材料または多くの伝統的なギー製造方法の製品に比べて、遊離脂肪酸およびメチルケトンのような(これらに限定されない)脂質加水分解物が多い(使用される条件に依存する)ことを示す。
【0126】
したがって、本発明のもう1つの態様において、本発明は、脂質材料および水性材料の調理された混合物を含み、または、からなる香味組成物であり、そこでは
脂質材料は、1つ以上の酪農製品、動物、または植物の脂肪または油であり、水性材料は、1つ以上の砂糖、および1つ以上のタンパク、および任意に1つ以上の脂質または発酵物を含み、ならびに
その組成物は、次のような化合物の1つ以上を含む:
・フルフラール(CAS [98-01-01])1〜100μg/g、
・3,4-ジヒドロキシ-へクス-3−エン-2,5-ジオン[DHHD] (CAS [10153-61-4])0.1〜10μg/g、
・マルトール(CAS [118-71-8])5〜100μg/g、
・フラネオオール(CAS [3658-77-3])0.1〜10μg/g、
・アセトール(CAS [116-09-6])2〜30μg/g、
・ペンタン-2-オン(CAS [107-87-9])1〜5μg/g、
・ヘプタン-2-オン(CAS [110-43-0])1〜80μg/g、
・3-メチルブタナール(CAS [590-86-3])0.5〜100μg/g、
・2-メチルブタナール(CAS [96-17-3])0〜10μg/g。
【0127】
種々の態様において、組成物は次のような1つ以上の化合物を含む。
・フルフラール少なくとも約3μg/g、好ましくはフルフラール少なくとも約5、約10、約15、または約20μg/g、
・DHHD少なくとも約0.2μg/g、好ましくはDHHD少なくとも約0.5、約1、約1.5、または約2μg/g、
・マルトール少なくとも約7.5μg/g、好ましくはマルトール少なくとも約10、約15、約20、または約25μg/g、
・フラネオオール少なくとも約0.2μg/g、好ましくはフラネオオール少なくとも約0.5、約1、約1.5、約2、または約2.5μg/g、
・アセトール少なくとも約2μg/g、好ましくはアセトール少なくとも約2.5、約3、約3.5、または約12μg/g、
・ペンタン-2-オン約20μg/g未満、〜5μg/g、好ましくはペンタン-2-オン約15、約10、約6、約5未満、または約4μg/g未満、
・ヘプタン-2-オン約50μg/g、〜80μg/g、好ましくはヘプタン-2-オン約40、約35、約30、約25未満、または約20μg/g未満、

・3-メチルブタナール少なくとも約0.2μg/g、好ましくは3-メチルブタナール少なくとも約0.25、約0.3、約0.4、約0.5、または約6μg/g、または
・2-メチルブタナール少なくとも約0.1μg/g、好ましくは2-メチルブタナール少なくとも約0.15、約0.2、約0.25、約0.3、約0.35、または約0.4μg/g。
【0128】
種々の態様において、組成物は、上記化合物の2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、または9つ全部、を含む。
【0129】
たとえば、1つの典型的な組成物は、
・フルフラール1〜100μg/g、および
・3,4-ジヒドロキシ-へクス-3−エン-2,5-ジオン[DHHD] 0.1〜10μg/g、
を含む。
【0130】
たとえば、もう1つの典型的な組成物は、
・フルフラール1〜100μg/g、および
・マルトール5〜100μg/g、
を含む。
【0131】
たとえば、もう1つの典型的な組成物は、
・マルトール5〜100μg/g、
・フラネオオール0.1〜10μg/g、および
・3-メチルブタナール0.5〜100μg/g、
・を含む。
【0132】
理解されるように、上記化合物の9!の可能な順列または組み合わせは、個別にここに示されるように明白に期待される。ここに記載されるいかなる態様も上述の態様に関し得る。
【0133】
種々の態様において、本発明方法は、タフィ香味、バタースコッチ香味、焼いたビスケット香味、キャラメル香味、麦芽香味、および焙焼ナッツ、加熱/焙焼ポップコーン、フライドポテトチップス、焼いた未発酵パン関連香味、焙焼肉、ブルーチーズもしくは調理されたピザ関連香味、の1つ以上から選ばれる香味特性を有する、乳脂濃縮物が製造される。
【0134】
下の表1は、AMF,ギーおよび例1〜5に記載される、本発明の濃縮物の典型的な試料を示す、種々のマーカー化合物の濃度の要約を示す。濃度は、ヘッドスペース/固相ミクロ抽出/ガスクロマトグラフィー条件は、Bendall JG (2001), “Aroma compounds of fresh milk from New Zealand cows fed different diets”,Journal Of Agricultutral And Food Chemistry 49(10): 4825-4832 Oct 2001.に記載のとおりである。
【0135】
【表1】

【0136】
表1からわかるように、本発明の香味濃縮物における典型的なメチルケトンであるペンタン−2−オンおよびヘプタン−2−オンの濃度は、バターから製造されるギーに存在する下限以下である。同様に、典型的な望ましい香味化合物、たとえばフルフラールおよびマントール、の濃度は、バターからのギーに存在するものと比べて、本発明の香味濃縮物において実質的に高い。
3.3 発酵の効果
異なる微生物による発酵は、それにより製造される発酵生成物の濃度および量の差異を生じさせることは周知である。たとえば、香味濃縮物製造に用いられる水性材料、たとえば酪農製品クリームの発酵は、ラクトース分断化合物のいくつかの相対的濃度を変更し、しかもこれらの相対的濃度は、微生物または発酵に用いられる微生物に依存して異なり得る。好適な微生物は、リパーゼおよびプロテアーゼ分泌物を含み、たとえば乳酸分泌物、またはその組み合わせ、もしくはその代謝物である。このような好適な微生物の例は、t中温のチーズ開始剤種である、Lactococcus lactis subsp. lactis およびLactococcus lactis subsp. cremorisからの株を含む。本発明における使用に適する微生物のさらなる例は、Lactococcus lactis subsp. diacetylactisのような他のLactococcus種、たとえばLeuconostoc cremoris,Streptococcus thermophilusのようなLeuconostoc種,およびLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus, Lactobacillus acidophilis, Lactobacillus helveticus,Lactobacillus lactis,Lactobacillus rhamnosis,を含むLactobacillus種、ならびにBifidobacterium 種を含む。真菌も本発明に使用される発酵の調製に使用され得る。好適な微生物は、水性材料もしくは香味濃縮物における所望の香味化合物またはその前駆体の量もしくは濃度を製造または増加する微生物である。たとえば、ある態様において、化合物(2−メチルブタナールおよび3−メチルブタナールが香味濃縮物における例である)の濃度を製造または増加する微生物が好適である。これらの化合物は、望ましい、麦芽の、もしくはナッツの香味特性を付与し得る。
【0137】
したがって、本発明の1つの態様において、水性材料は、培養、すなわち発酵からの生成物であるか、または含む。好適な態様において、水性材料は、発酵クリームのような酪農製品材料である。
【0138】
ある態様において、水性材料は、上述のように、微生物で処理される。他の態様において、水性材料は、1つ以上の酵素、1つ以上の酸、もしくは1つ以上の塩基、またはそれらの組み合わせで処理される。適切な酵素は、リパーゼおよびプロテアーゼを含む。適切な酸はこの分野で周知であり、乳酸および酢酸のような食品グレードを含む。適切な塩基もの分野で周知であり、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムを含む。
【実施例】
【0139】
本発明の種々の態様が、次の例に関して非制限的に示される。
例1 香味濃縮物の調製
キャラメル/タフィ香味を有するバター濃縮物が製造されたが、調理において、調理された/キャラメルバター香味を増強するのに用いられ得る。その方法は、大部分の水が追い出され、擬乳が褐色となって、キャラメル香味を生じるまで、水性材料を徐々に添加しながら、脂質材料を加熱することを含んでいた。
【0140】
Meadow Fresh Limited (ニュージーランド)からのMeadowfresh クリーム(低温殺菌)600gがガラスビーカーに入れられ、秤量され、水浴中で50℃に加熱された。
【0141】
Fonterra Cooperative Group Ltd からの無水乳脂(AMF)(Edgecube site で製造、23/5/05)600gがステンレス鋼ビーカーに入れられ、ガスキャンプバーナーで加熱された。温度プローブが、ビーカーの底に接触しないように、AMF中に浸漬された。AMFは高架式(オーバーヘッド)実験室用撹拌機を用いて撹拌された。
【0142】
AMFは120℃に加熱され、ガス流動は温度を維持するように調節され、滴下ロートによりクリームが添加されたが、クリームを急速分散させるに十分な速度で、温度を120℃に保持し、そして水をボイルオフさせるように撹拌された。
【0143】
大部分の水が蒸発されたとき、温度は強撹拌下に135℃に上昇された。その温度は、擬乳が発泡を停止し、赤み褐色を帯びるまで維持された。
【0144】
ガスが停止され、混合物は室温で撹拌しながら50℃に冷却された。混合物は、2層の折り畳まれた紙タオルで内張りされた、ステンレス鋼ロートを用いてろ過され、褐色粒子のない脂質香味濃縮物を得た。
【0145】
3つの試料が製造され、表2に要約される。試料1はさらに処理されないで試料3の製造に用いられたAMFであった。試料1は、市場で入手し得るギーの代表例であった。試料3は、上述のように製造された。試料2は、AMfが無塩ニュージーランドバターに代えられ、水性材料が添加されないことを除けば、試料3と同様に製造された。試料2の製造は、バターおよびブールノワール/ブールノワゼットから製造される大量生産ギーの代表例である。試料4は、異なるバッチの原材料を用いて試料3と同一方法で製造された。
【0146】
【表2】

【0147】
これらの試料の知覚評価は、試料3および4が、クリーム香味の減少なしに、そして時間経過に関連した香味の増加なしに、試料1(AMF)と比較して、タフィ、バタースコッチ、焼いたビスケットおよびキャラメルとして記載されるような、調理に関連した香味および香りの著しく高いレベルを有することを示した。試料2は、試料1よりも増加したレベルの、調理に関連した香味を有していたが、これらは試料3および4よりもはるかに低かった。
【0148】
試料は、以下のように、香味化合物に関して分析された。濃度は、ヘッドスペース/固相ミクロ抽出/ガスクロマトグラフィーを用いて測定されたが、その条件は、Bendall JG (2001), “Aroma compounds of fresh milk from New Zealand cows fed different diets”,Journal Of Agricultutral And Food Chemistry 49(10): 4825-4832 Oct 2001.に記載のとおりである。この分析の結果は、下の表3に示される。
【0149】
【表3】

【0150】
表3は、試料3および4が増加した香味プロフィールを生じた、試料1と比較して、上昇したレベルの基本香味化学品(マルトールおよびフルフラール)を有していた。試料2は、最小限の上昇した基本香味化学品を有し、試料3および4よりもはるかに弱い香味プロフィールを示した。
例2 内部加熱を伴うバッチ処理を用いる香味濃縮物の調製
この例は、上記のように、内部加熱を伴うバッチ処理を用いる香味濃縮物の調製を記載する。
【0151】
無水乳脂(AMF)15kgが、図2に示されるジャケット付容器内で、120℃に加熱された。低温殺菌クリーム(脂肪分約40%)12kgが約15kg/時の速度で容器にポンプで送られ、 蒸気が放出されなくなるまで処理は続行された。すべてのクリームが使用されたとき、容器の温度は、140℃に5分間、昇温され、Maillard 褐色化反応を完了させた。ついで、容器の内容物は、容器ジャケットに冷水を導入して、55℃に冷却された。ついで、内容物が取り出され、固体はGAFFフィルターでろ過され、脂質香味濃縮物を得た。
この香味濃縮物は、例1からの試料3および4と類似した香味および香り特性を有し、出発材料AMFと比較して、高いレベルの調理関連香味を有していた。
例3 外部加熱を伴うバッチ処理を用いる香味濃縮物の調製
この例は、上記のように、外部加熱を伴うバッチ処理を用いる香味濃縮物の調製を記載し、クリーム導入点は、図3に関して上記のように熱交換器の前である。
【0152】
無水乳脂52kgが、保持容器内に入れられ、循環ポンプは約2500kg/時で稼動された。蒸気が熱交換器に適用され、脂質は140℃に加熱された。背圧弁は400kPaに設定された。熱交換器出口での温度が140℃に達したとき、クリームのポンプが開始され、クリーム流量は60kg/時に設定された。低温殺菌クリーム(脂肪分40%)30kgが添加された。温度は、添加時、およびすべてのクリームが使用された後に5分間、140℃に維持された。この時点で、クリーム供給は停止され、熱交換器の供給側に冷水を導入して、褐色化された乳固体の循環混合物および脂質の温度が55℃に冷却された。ついで、褐色化された乳固体が、Sharplesデカンターを用いて脂質と分離され、脂質香味濃縮物を得た。
【0153】
この香味濃縮物は、例1からの試料3および4の両方、ならびに例2で製造された材料と類似した香味および香り特性を有していた。再び、出発材料AMFと比較した、高いレベルの調理関連香味が記載された。
例4 外部加熱を伴うバッチ処理を用いる香味濃縮物の調製
この例は、上記のように、外部加熱を伴うバッチ処理を用いるもう1つの香味濃縮物の調製を記載し、クリーム導入点は、図3に関して上記のように熱交換器の前である。
【0154】
ラクトース0.45kgおよびラクトース加水分解された乳粉末0.45kgが、保低温殺菌クリーム(脂肪分40%)30kgに添加された。混合物は、20℃で強く撹拌しながら混合され、粉末を水和し、クリームの水性相チュで量成分を溶解させた。ラクトースおよびラクトース加水分解された乳粉末の添加は、クリームのラクトース含量を3wt%から約6〜7wt%に増加させ、結合グルコースおよびガラクトース含量を0wt%から約1〜2wt%に増加させた。クリームはAMF52kgに添加され、脂質香味濃縮物を得る上記の例3と同一の条件で処理された。得られた香味濃縮物は強いキャラメル/バタースコッチ香味を有していた。
例3 外部加熱を伴うバッチ処理を用いる香味濃縮物の調製
この例は、上記の例3ように、外部加熱を伴うバッチ処理を用いる香味濃縮物の調製を記載する。しかし、この例では、水性材料について2つの添加段階が用いられた。さらに、水性材料の組成は、第2点か段階で変更された。
【0155】
無水乳脂52kgが、約2500kg/時の熱交換器循環ループで約160℃に加熱され、甘いクリーム15kgが、60kg/時で300kPaに設定された均一化弁を用いて添加された。すべてのクリームがポンプで送られ、蒸気が放出されないとき、生成物は10分間、維持され、ついで温度は130℃に低下された。さらにクリーム15kgに、ラクトース450gおよびラクトース加水分解された乳粉末450gが同一流速で添加され、これらは脂質混合物に添加された。すべてのクリームが添加され、蒸気が放出されないとき、生成物は5分間、維持され、ついで55℃に冷却された。脂質香味濃縮物が、分離後に、例1に記載の方法を用いて香味化合物について分析された、その結果は、表4に示される。
【0156】
【表4】

【0157】
この方法で得られた香味濃縮物は強いキャラメル/バタースコッチ香味を有していた。
【0158】
例6 香味濃縮物の知覚評価
例1に記載され、表3に示される試料3および4が、溶融AMF160mLに溶融試料40mLを添加して、AMF中に20%に希釈された。各試料は、知覚プロフィールを決定する味覚パネルにより、他の試料および対照標準AMFと比較された。パネリストは、評価前に、表5に記載される香味属性に習熟していた。
【0159】
【表5】

【0160】
各パネリストは、各無水液体バター試料(40℃)約20mLを受領した。パネリストは、各資料について13の香味属性(甘み、塩味、クリーミー、タフィ、バタースコッチ、焼きビスケット、キャメル、麦芽、酸化、乳、チーズ質、焦げた、牛の)を格付けするように指示された。「他の」のカテゴリーもパネリストが12の属性によりカバーされない特別の香味を認識するのに用いられ得る。
【0161】
パネリストは、赤色光の下で各ブースで全試料を格付けした。各試料間で、1分間の遅れがあり、そこでパネリストは、24℃のろ過水、ソーダ水および「Crisp」Fresh upリンゴ果汁で味覚を清浄にした。標準AMF試料は、クリーミーであるが、タフィ、バタースコッチ、焼きビスケット、およびキャメルを欠き、焦げた香味が試料3および4に見出された。
例7 酪農製品および非酪農製品を用いる香味濃縮物の調製
この例は、非酪農製品材料ならびに酪農および非酪農製品材料の組み合わせを用いる香味濃縮物の調製を記載する。
【0162】
8つの香味濃縮物が表6に要約して示される、種々の出発材料を用いて製造された。表6に示される、いくつかの水性材料は、発酵されていた。その量は、30℃に加熱され、1%のDanisco Flora Danica 開始剤培地がその中に分散された。この混合物は、夜通し30℃で発酵され、表6に示されるpH6を与えた。これらの水性相は、使用前に60℃に加熱された。
【0163】
各場合において、脂質材料は、開放容器内に入れられ、ガスバーナーで加熱された。温度プローブは、ビーカーの底に接触しないように、脂質中に浸漬された。AMFはスパチュラを用いて撹拌された。
【0164】
脂質は、約120℃に加熱され、ガス流速は温度を維持するように調節され、ピペットによりクリームがゆっくり添加されたが、クリームを急速分散させるに十分な速度で、温度を120℃に保持し、そして水をボイルオフさせるように撹拌された。
【0165】
大部分の水が蒸発されたとき、温度は強撹拌下に130℃に上昇された。その温度は、擬乳が発泡を停止し、赤み褐色を帯びるまで維持された。
【0166】
ガスが停止され、混合物はステンレス鋼ビーカーに入れて、80℃に冷却され、氷水のミキサーに浸漬された。混合物は、2層の折り畳まれた紙タオルで内張りされた、ステンレス鋼ロートを用いてろ過され、褐色粒子のない脂質香味濃縮物を得た。
【0167】
7つの試料が製造され、表6に要約される。試料は、表6に示されるように、本発明方法と種々の脂質および水性材料を用いて製造された。豆乳とオレンジ果汁を用いて製造された試料は、非常に粘着性の固体残渣であり、粗い大きな固まりを製造した。表6に示されるように、試料5および7の調製に用いられたクリームは、Flora Danica培地、典型的な混合乳酸開始剤培地(培養された酪農製品材料の調製に通常使用される)で発酵された。
【0168】
【表6】

【0169】
この例で使用された脂質および水性材料源は、表7に示される。そこにみられるように、すべては容易に入手し得る製品であり、本発明に使用するのに適切な代表的な材料である。
【0170】
【表7】

【0171】
これらの脂質香味濃縮物試料の知覚評価の結果は、表8に示される。すべての場合に、本発明方法は、出発油−たとえば、キャノーラ油、牛脂、およびココナッツ油にみられる不快な豆臭さは、香味濃縮物で検出されなかった。乳脂に基づく香味濃縮物は、甘いタフィ、キャラメルおよび焼いたビスケットの香味を有していた。他の油に基づく香味濃縮物は、もっと風味のよい、フライドバターおよびドーナッツの香味を有していた。強いフライドマシュルームの香味が、試料4で明らかにこれらの試料を製造するのに用いられたクリームの培養は、製品に培養香味を付与して試料の香味プロフィールを向上させた。これらの試料は、本発明により得られることができる広い範囲の香味を示す。
【0172】
【表8】

【0173】
この例で使用された出発脂質材料および上記のように製造された脂質香味濃縮物試料は、例1に説明された方法を用いて、香味化合物について分析された。出発脂質材料の分析結果は、表9に示されるが、種々の香味濃縮物試料の分析けっかも表10に示される。
【0174】
【表9】

【0175】
【表10】

【0176】
表9および10に見られるように、本発明方法は、出発油に比較して、試料中の基本香味化学品の含量を実質的に増加させた。特に、高レベルのマルトールが試料1で観察され、高レベルのDHHDが試料4で観察され、高レベルの3−メチルブタノールが試料1で観察され、そして高レベルのフルフラールが試料1および4ならびに乳脂からのもの(試料5〜7)で観察された。
例8 脂質の、凝縮された、固体香味濃縮物の調製
この例は、脂質の、凝縮された、固体香味濃縮物の調製を記載し、そこでは第2加熱段階が第1加熱段階よりも低い温度で実施される方法を用いる。外部加熱を伴うバッチ処理が用いられ、水性材料は、図3に関連して記載され、および図4に示されるように、熱交換器の前に導入された。
【0177】
乳漿クリーム由来の無水乳脂(Fonterra Cooperative Group Limited)45kgが保持容器内に入れられ、約2500kg/時の循環ポンプで循環された。蒸気が熱交換器に適用され、脂質材料は120℃に加熱された。背圧弁は300kPaに設定された。熱交換器出口での温度が120℃に達したとき、クリームのポンプが開始され、クリーム流量は60kg/時に設定され、低温殺菌クリーム(脂肪分40%)45kgが40℃で、流速55〜60kg/時で添加された。蒸気は、反応容器から取り出され、冷水を用いて冷却された熱交換器を用いて、図4に示されるように凝縮された。凝縮物は、凝縮された香味濃縮物として回収された。温度は、添加時およびすべてのクリームが添加された後、約5分間、維持された。ついで混合物の温度は、1155℃に低下され、試料は115℃で、0、5、10、20、30および40分間、保持された。試料は取り出しの際に、氷水で冷却された。つで、試料は、炉内に50℃で数時間、保持され、静置された。実質的に清澄な脂質相が、試料の頂部からデカンションされ、脂質香味濃縮物を得た。
【0178】
固体香味濃縮物の香味プロフィールが、Nestle Highlander Sweetened Condensed Milk (オークランド、ニュージーランド)46g に、スプーンで固体4g(8%)を分散させて、評価された。このような分散は、固体香味濃縮物の調理された香味を評価する良好な方法として選ばれ、キャラメル源に類似する適用の典型であった。脂質香味濃縮物は、溶融され、更なる変性を加えないで香味を評価された。
【0179】
表11は、固体香味濃縮物が、望ましいキャラメルおよびロシアファッジ香味を甘い、濃縮ミルクに付与したことを示す。115℃での保持時間を増加させると、もっと強いファッジ香味ともっと暗色が付与された。表11は、115℃での保持時間を増加させると、バターからキャラメルを通って焼きビスケットへ、脂質香味濃縮物の香味と香りが進展することを示す。凝縮された香味濃縮物は、調理された、ウシ風のブルーチーズの強い香りを有していた。
【0180】
【表11】

【0181】
表12は、115℃での保持時間をもっと長くすると、脂質香味濃縮物中の基本香味化合物の含量が次第に増加することを示す。理論に拘束されることなしに、香味製造反応の結果は、もっと進展されると考えられる。香味化合物の含量は、はるかに長い保持時間にもかかわらず、例1の試料2および4で観察されるものより通常ひくかった。再び、理論に拘束されることなしに、香味付与反応は135℃よりも115℃でもっとゆっくり生じ、115℃での保持時間は、比較的短い135℃での保持時間で達成されるのと同一のレベルを達成するのに、40分より長いことが必要であると考えられる。
【0182】
【表12】

【0183】
表13は、固体濃縮物が、上述の脂質香味濃縮物のものと類似の香味化合物の含量を有していたことを示すが、マルトールは対応する脂質香味濃縮物よりも高い濃度で存在した。表13は、ヘプタンー2−オンの有意の含量を示し、そしてフルフラールおよびマルトールは凝縮された香味濃縮物に存在していたことを示す。ヘプタンー2−オンは、この材料のブルーチーズのにおいの原因のようである。
【0184】
【表13】

【0185】
前述の記載において、言及が要素または公知の均等物を有する整数についてなされているとき、そのような場合には、それらは個別に説明されているのと同様に包含される。本発明は、および特定の態様により記載されているが、変更または改良も、本発明の範囲および精神を逸脱することなく、なされ得ることが理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明方法により製造される香味濃縮物は、改良された香味および他の特性を有し、特に伝統的な香味源、たとえばバターもしくはギーが使用されるような、食品および飲料の製造に広い用途を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香味濃縮物の製造方法であり、
a)脂質材料を供給すること、
b)水性材料を供給すること、ここでその水性材料は1つ以上の砂糖および1つ以上の1級または2級アミンを含む、
c)水性材料の沸点以上の第1温度に脂質材料を加熱すること、
d)加熱された脂質材料を水性材料と混合すること、ならびに
e)水性材料中に存在する実質的にすべての水が少なくとも蒸発されるまで時間、混合物を温度保持すること、を含む方法。
【請求項2】
段階e)で混合物が保持される温度が、第1温度もしくはその近く、または第1温度未満または超える、もう1つの温度である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階e)の後に次の段階:f)第1温度とは異なる第2温度で混合物を第2時間保持すること、をさらに含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
段階e)の後に次の段階:f)第1温度またはそれに近い温度で、混合物を第2時間保持すること、をさらに含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
水性材料が、混合前に、約60℃に、または少なくとも約60℃に、加熱される請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
段階e)またはf)の後で、次の段階の1つ以上を含む請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
g)混合物が冷却されること、
h)混合物は、固体物を除去するために分離装置を通過されること、
i)混合物は包装されること。
【請求項7】
脂質材料が、食用油、動物脂肪、酪農製品脂肪、魚油、変性食用油、変性動物脂肪、変性酪農製品脂肪、およびそれらの組み合わせである請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
脂質材料がAMFである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
水性材料における、1つ以上の1級または2級アミンが、1つ以上のアミノ酸、1つ以上のペプチド、または1つ以上のタンパクからなる群の1つ以上として存在する請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
水性材料がさらに1つ以上の脂質材料を含む請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
水性材料が未調理の水性材料である請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
水性材料が大豆乳、大豆タンパク、または再構成、再結合、発酵もしくは新鮮な酪農製品材料からなる群より選ばれる請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
酪農製品材料が、再結合もしくは新鮮な全乳、再結合もしくは新鮮なスキムミルク、再構成全乳粉末、再構成スキムミルク粉末、スキムミルク濃縮物、スキムミルク未透過物、濃縮乳、発酵乳、ヨーグルト、ケフィール、限外ろ過乳未透過物、乳タンパク濃縮物、乳タンパク単離物、カルシウム消去乳タンパク濃縮物、低脂肪乳、低脂肪乳タンパク濃縮物、カゼイン、カゼイン化物、クリーム、発酵クリーム、バターミルク、バター液、酪農製品発酵品、乳漿、乳漿タンパク濃縮物、乳漿クリーム、または発酵乳漿クリーム、からなる群より選ばれる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
水性材料が培養酪農製品材料である請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
培養源が酸製造菌を用いて製造された発酵物である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
香味濃縮物の製造方法であり、
a)脂質材料を第1温度に加熱すること、その脂質材料はタンパクもしくは水、またはタンパクおよび水の両方、を実質的に含まない、
b)水性材料を加熱された脂質材料に添加して混合物を形成すること、水性材料は1以上の砂糖および1つ以上のタンパク、ならびに任意に1つ以上の脂質を含み、第1温度は水性材料の沸点より高く、水性材料中に存在する水の少なくともいくらかは蒸発される、
c)段階(2)で生成される蒸気を留去すること、ならびに
d)その蒸気を凝縮して濃縮された香味濃縮物を生成させること、
を含む方法。
【請求項17】
追加の段階、e)回収された脂質混合物を都合のよい温度に保持すること、を含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
段階c)の前の追加の段階、b‘)加熱された混合物を容器中に導入すること、そこで混合物中の大部分の水は蒸発される、を含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
固体香味濃縮物の製造方法であり、
a)脂質材料を用意すること、
b)水性材料を用意すること、その水性材料は1つ以上の砂糖および1つ以上の遊離アミン基を含み、
c)脂質材料を水性材料の沸点以上で第1温度に加熱すること、
d)その加熱された脂質材料および水性材料を混合すること、
e)水性材料中に存在する水が少なくとも実質的にすべて蒸発されるまでの時間、その混合物を保持すること、ならびに
f)混合物から固体を分離して固体香味濃縮物を生成させること、を含む方法。
【請求項20】
段階e)の後に、次の任意の段階の1以上をさらに含む請求項19に記載の方法。
e’)その混合物を、第1温度もしくはその近くで第2時間保持すること、または
e’’)その混合物を、第1温度と異なる第2温度で第2時間保持すること、または
g)その混合物を冷却すること。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれかに記載の方法で得られた香味濃縮物。
【請求項22】
タフィ香味、バタースコッチ香味、焼いたビスケット香味、キャラメル香味、麦芽香味、および焙焼ナッツ関連香味、加熱/焙焼ポップコーン、フライドポテトチップス、焼いた未発酵パン、焙焼肉関連香味、ブルーチーズまたは調理されたピザから選ばれる1つ以上の香味特性を含む請求項21に記載の香味濃縮物。
【請求項23】
脂質材料および水性材料の調理された混合物を含み、そこでは
脂質材料は、1つ以上の酪農製品油、1つ以上の牛脂、1つ以上の牛油、1つ以上の植物脂、1つ以上の植物油、およびそれらの組み合わせ、から選ばれ、
水性材料は、1つ以上の砂糖、および1つ以上の遊離アミン基、および任意に1つ以上の脂質、ならびに
その組成物は、
・フルフラール1〜100μg/g、
・3,4-ジヒドロキシ-へクス-3−エン-2,5-ジオン0.1〜10μg/g、
・マルトール5〜100μg/g、
・フラネオオール0.1〜10μg/g、
・アセトール2〜30μg/g、
・ペンタン-2-オン1〜5μg/g、
・ヘプタン-2-オン1〜80μg/g、
・3-メチルブタナール0.5〜100μg/g、または
・2-メチルブタナール0〜10μg/g。
からなる群よりなる化合物の少なくとも1つ以上を含む。
【請求項24】
例に関連して、および図面を参照または参照しないで、ここに記載されるような香味濃縮物の製造方法。
【請求項25】
例に関連して、ここに記載されるような香味濃縮物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−532990(P2010−532990A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515997(P2010−515997)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【国際出願番号】PCT/NZ2008/000168
【国際公開番号】WO2009/011598
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(509059549)フォンテラ コ−オペレイティブ グループ リミティド (5)
【Fターム(参考)】