説明

乳製品の製造方法

【課題】 善玉菌を腸内で繁殖し易くすることが可能な乳製品の製造方法または乳製品を提供することである。
【解決手段】 本発明の乳製品の製造方法は、大豆から豆乳を得る工程と、前記豆乳の一部を取り出し、その一部の豆乳に発酵乳酸菌を混合して所定時間寝かせる第1の混合工程と、前記豆乳の残りに植物性オリゴ糖を混合し、その混合物に、所定時間寝かせた前記豆乳の一部を混合して更に所定時間寝かせる第2の混合工程と、を備え、前記第1および第2の混合工程の少なくともいずれかに、おからも併せて混合することを特徴とする乳製品の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳製品の製造方法に関し、特に、乳酸菌を媒介として各種善玉菌を大腸内に送り、それら善玉菌を大腸内で繁殖させる乳製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康を促進する目的で、腸内で善玉菌を繁殖させることが行われている。この目的に沿って、各種の乳製品が考えられている。
例えば、下記特許文献1に開示される乳製品では、豆乳から作られる乳製品であって、植物性の糖と動物性乳糖とを混合した乳製品が開示されている。
【特許文献1】特表2001−503605号公報 「ダイズ豆からチーズ、カード及びヨーグルト製品を製造するための方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献1に開示される乳製品の製造方法では、腸内で善玉菌を繁殖し易くする方法については述べられていない。
本発明の課題は、善玉菌を腸内で繁殖し易くすることが可能な乳製品の製造方法または乳製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1態様の乳製品の製造方法は、大豆から豆乳を得る工程と、前記豆乳の一部を取り出し、その一部の豆乳に発酵乳酸菌を混合して所定時間寝かせる第1の混合工程と、前記豆乳の残りに植物性オリゴ糖を混合し、その混合物に、所定時間寝かせた前記豆乳の一部を混合して更に所定時間寝かせる第2の混合工程と、を備え、前記第1および第2の混合工程の少なくともいずれかに、おからも併せて混合することを特徴とする乳製品の製造方法である。
【0005】
ここで、第1および第2の混合工程の少なくともいずれかに、おからも併せて混合することにより、乳酸菌を介して植物性オリゴ糖とともに、おからも腸内に送ることができる。腸内では、そのおからの作用により善玉菌が繁殖し悪玉菌が駆逐される。また、豆乳の一部を取り出し、その一部の豆乳に発酵乳酸菌を加えて、発酵させてから、豆乳の残りに再び戻すことで、発酵の度合いを控えているので(半発酵としているので)、大腸内に送り届ける目的物としての植物性オリゴ糖の乳酸菌による消耗を抑えることができる。
【0006】
上記第1態様において、前記第2の混合工程の結果物に対して、乳糖を混合する第3の混合工程、をさらに備えるようにしてもよい。
乳糖は植物性オリゴ糖とは異なり、善玉菌だけでなく悪玉菌の餌にもなり、したがって、善玉菌と悪玉菌の両方を大腸内で繁殖させることになるが、大腸内での発酵速度が植物性オリゴ糖より速いので、排便期間を短縮させ、大腸内の掃除を植物性オリゴ糖のみを摂取する場合に比較して短期間で行える。
【0007】
本発明の第2態様の乳製品の製造方法は、大豆から豆乳を得る工程と、前記豆乳の一部を取り出し、その一部の豆乳に発酵乳酸菌を混合して所定時間寝かせる第1の混合工程と、前記豆乳の残りに乳糖を混合し、その混合物に、所定時間寝かせた前記豆乳の一部を混合して更に所定時間寝かせる第2の混合工程と、を備え、前記第1および第2の混合工程の少なくともいずれかに、おからも併せて混合することを特徴とする乳製品の製造方法である。
【0008】
上記第2態様において、前記第2の混合工程の結果物に対して、植物性オリゴ糖を混合する第3の混合工程、をさらに備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、豆乳の一部を取り出し、その一部の豆乳に発酵乳酸菌を混合して所定時間寝かせる第1の混合工程と、その豆乳の残りに植物性オリゴ糖または乳糖を混合し、その混合物に、所定時間寝かせた豆乳の一部を混合して更に所定時間寝かせる第2の混合工程と、の少なくともいずれかに、おからも併せて混合することにより、乳酸菌を介して植物性オリゴ糖とともに、おからも腸内に送ることができる。腸内では、そのおからの作用により善玉菌が繁殖し悪玉菌が駆逐される。
【0010】
また、豆乳の一部を取り出し、その一部の豆乳に発酵乳酸菌を加えて、発酵させてから、豆乳の残りに再び戻すことで、発酵の度合いを控えているので(半発酵としているので)、大腸内に送り届ける目的物(特定善玉菌の餌)としての植物性オリゴ糖の乳酸菌による消耗を抑えることができる。
【0011】
また、乳糖もさらに加える場合には、乳糖は植物性オリゴ糖とは異なり、善玉菌だけでなく悪玉菌の餌にもなり、したがって、善玉菌と悪玉菌の両方を大腸内で繁殖させることになるが、大腸内での発酵速度が植物性オリゴ糖より速いので、植物性オリゴ糖のみを摂取する場合に比較し排便期間を短縮させ、大腸内の掃除を短期間で行える。
【0012】
すなわち、乳酸菌を媒介として腸内に送られた植物性オリゴ糖は腸内で特定善玉菌の餌となることによりその特定善玉菌を繁殖させ、動物性の乳糖は腸内で善玉菌および悪玉菌の餌となることによりそれら善玉菌および悪玉菌を繁殖させるとともに、第1および第2の混合工程の少なくとも1つの工程において併せて混入されたおからの作用により、その腸内の善玉菌が増え、悪玉菌が駆逐される。よって、悪玉菌の繁殖は抑えつつ善玉菌を繁殖させ短期間で発酵させることができる。
【0013】
また、人固有の善玉菌(ビフィズス菌や乳酸菌)は加齢とともに減少すると言われ、例えば、生まれた時点と比較し、30%以下の割合まで善玉菌が減少すると、感染症や成人病にかかり易くなると言われている。植物性オリゴ糖は難消化糖で胃では分解されず、大腸までたどり着き他の悪玉菌の餌にならず、特定善玉菌(ビフィズス菌や乳酸菌)の餌となり増殖させる作用がある。また、乳糖は難消化糖で胃では分解されず、大腸までたどり着き善玉菌および悪玉菌の餌となり増殖させる作用がある。よって、本乳製品を摂取することで、感染症や成人病に対するリスクを軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、詳細に説明する。
本発明の一実施形態の乳製品の製造方法は、大豆から豆乳を得る工程と、前記豆乳の一部を取り出し、その一部の豆乳に発酵乳酸菌を混合して所定時間寝かせる第1の混合工程と、前記豆乳の残りに植物性オリゴ糖を混合し、その混合物に、所定時間寝かせた前記豆乳の一部を混合して更に所定時間寝かせる第2の混合工程と、を備える。そして、前記第1および第2の混合工程の少なくともいずれかに、おからも併せて混合する。
【0015】
なお、前記第2の混合工程の結果物に対して、乳糖を混合する第3の混合工程、をさらに備えてもよい。
以下に、具体的な分量を指定して、乳製品(ヨーグルト)の製造方法を説明するが、その説明に用いられる分量または混合比は、味がなじむ、適度に発酵する、等の所定の観点を満たす範囲で必要に応じて適宜調整可能なことは言うまでもない。
【0016】
まず、大豆から所定の工程を経て豆乳1,000cc(1リットル)を得る。そして、第1の混合工程において、得られた1,000ccの豆乳から200ccを取り出し、この200ccの豆乳に対して、おから50g、発酵乳酸菌1gを混合して、少なくとも発酵するのに必要な時間、例えば10〜12時間、寝かせる。
【0017】
その後、第2の混合工程において、200ccが取り出された残りの豆乳800ccに対して、おから80g、植物性オリゴ糖100cc〜150ccを混合して、その混合物に、上記の発酵するのに必要な時間寝かされた豆乳の一部(200cc)を混合して更にその全体が発酵するのに必要な時間、例えば3時間、寝かせる。
【0018】
その後、必要に応じて、その全体が発酵するのに必要な時間寝かせた結果物(第2の混合工程の結果物)に対して、乳糖200ccを混合してもよい。
上記第1の混合工程においては、おからが発酵乳酸菌と併せて混合されているが、出願人において、実験したところ、おからを発酵乳酸菌に併せて加えることによって豆乳の発酵がより速く進むことが判明した。おから等の繊維質には、発酵を促す作用があるのではないかと推測される。
【0019】
すなわち、第1の混合工程において、おからを発酵乳酸菌とともに豆乳に加えた場合には、そのおからの作用により、発酵に必要な時間を短縮することができる。
なお、下記非特許文献1には、植物繊維(おから等)には善玉菌を増やして悪玉菌を駆逐する作用がある、という記載がある。
【非特許文献1】「腸内クリーニングの驚異」64ページ、光岡知足、祥伝社、平成6年2月20日(第3刷発行) すなわち、乳酸菌を媒介として腸内に送られた植物性オリゴ糖は腸内で特定善玉菌の餌となることによりその特定善玉菌を繁殖させ、動物性の乳糖は腸内で善玉菌および悪玉菌の餌となることによりそれら善玉菌および悪玉菌を繁殖させるとともに、第1および第2の混合工程の少なくとも1つの工程において併せて混入されたおからの作用により、その腸内の善玉菌が増え、悪玉菌が駆逐される。よって、悪玉菌の繁殖は抑えつつ(悪玉菌は乳糖を餌とすることで増えるとともにおからの作用により駆逐され)、善玉菌を繁殖させ(善玉菌は植物性オリゴ糖および乳糖を餌として増え、また、おからの作用によっても増える、すなわち、植物性オリゴ糖、乳糖、おからの3者による相乗効果によって増える)、短期間で発酵させることができる。なお、繊維質は老廃物を排出する作用がある。
【0020】
なお、乳糖は、大腸内での発酵速度が植物性オリゴ糖より速いので、植物性オリゴ糖のみを摂取する場合に比較し排便期間を短縮させ、大腸内の掃除を短期間で行える。
なお、以上の説明では、第2の混合工程において、植物性オリゴ糖を混合し、その後、必要に応じて、第3の混合工程を実施し、そこで、乳糖を混合する構成であったが、替わりに、第2の混合工程において、乳糖を混合し、その後、必要に応じて実施される第3の混合工程において、植物性オリゴ糖を混合するようにしてもよい。
【0021】
また、以上の説明では、発酵乳酸菌を豆乳に混合して発酵させていたが、豆乳の替わりに、玄米乳または牛乳を用いてもよい。
また、以上の説明では、おからを第1および第2の混合工程で混合させていたが、おからの替わりに、もずく、または、もずくとおからの混合物を用いてもよい。おから、及び、もずくはいずれも繊維質であり、善玉菌の腸内での繁殖を行い易くし悪玉菌を駆逐する作用を有すると考えられる。
【0022】
豆乳も自家製とした場合には、乳製品は、化学物質を含まない自然な成分から構成されるので好ましいことになるが、この場合、さらに、上記繊維質としておからを用いれば、乳製品の製造工程において、中間物として本来廃棄されるべきおからを有効活用できる。
【0023】
豆乳も自家製とした場合の大豆から豆乳を得る工程の一例を以下に示す。
まず、大豆120gをよく洗い、酵母菌(約10g)とともに、水(分量は、例えば大豆の量の10倍程度)に混合させて、大豆のアク抜きができる程度の時間、例えば、6〜8時間、その水に浸す。
【0024】
そして、1000ccの水と、上述のアク抜きがされた大豆とを用いて豆乳を製造する。なお、その際、得られたおからは、上述の第1および第2の混合工程の少なくとも1つの工程での混合に用いられる。
【0025】
なお、以上の説明は、専ら乳製品の製造方法についてのものであったが、その製造方法によって製造された乳製品、すなわち、発酵乳酸菌を用いて発酵させた豆乳に、植物性オリゴ糖、乳糖、おからを加えて製造された乳製品においても、上述の善玉菌の腸内で繁殖し易くする作用を有することは言うまでもない。
【0026】
なお、その乳製品において、豆乳の替わりに、玄米乳または牛乳を用いるようにしてもよいし、また、おからの替わりに、もずく、または、もずくとおからの混合物を用いるようにしてもよい。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆から豆乳を得る工程と、
前記豆乳の一部を取り出し、その一部の豆乳に発酵乳酸菌を混合して所定時間寝かせる第1の混合工程と、
前記豆乳の残りに植物性オリゴ糖を混合し、その混合物に、所定時間寝かせた前記豆乳の一部を混合して更に所定時間寝かせる第2の混合工程と、を備え、
前記第1および第2の混合工程の少なくともいずれかに、おからも併せて混合することを特徴とする乳製品の製造方法。
【請求項2】
前記第2の混合工程の結果物に対して、乳糖を混合する第3の混合工程、をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の乳製品の製造方法。
【請求項3】
大豆から豆乳を得る工程と、
前記豆乳の一部を取り出し、その一部の豆乳に発酵乳酸菌を混合して所定時間寝かせる第1の混合工程と、
前記豆乳の残りに乳糖を混合し、その混合物に、所定時間寝かせた前記豆乳の一部を混合して更に所定時間寝かせる第2の混合工程と、を備え、
前記第1および第2の混合工程の少なくともいずれかに、おからも併せて混合することを特徴とする乳製品の製造方法。
【請求項4】
前記第2の混合工程の結果物に対して、植物性オリゴ糖を混合する第3の混合工程、をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の乳製品の製造方法。
【請求項5】
前記豆乳の替わりに、玄米乳または牛乳を用いることを特徴とする請求項1、または、3記載の乳製品の製造方法。
【請求項6】
前記おからの替わりに、もずく、または、もずくとおからの混合物を用いることを特徴とする請求項1、または、3記載の乳製品の製造方法。
【請求項7】
発酵乳酸菌を用いて発酵させた豆乳に、植物性の糖、乳糖、おからを加えて製造された乳製品。
【請求項8】
前記豆乳の替わりに、玄米乳または牛乳を用いることを特徴とする請求項7記載の乳製品。
【請求項9】
前記おからの替わりに、もずく、または、もずくとおからの混合物を用いることを特徴とする請求項7記載の乳製品。



【公開番号】特開2006−87338(P2006−87338A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276178(P2004−276178)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(504358698)
【出願人】(504358713)
【Fターム(参考)】